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JP2006161103A - アルミニウム合金部材およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金部材およびその製造方法 Download PDF

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俊男 堀江
Munehisa Matsui
宗久 松井
Hiroaki Iwabori
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Abstract

【課題】 高強度かつ高靱性のアルミニウム合金部材を低コストに製造することのできる方法を提供する。また、高強度かつ高靱性のアルミニウム合金部材を提供する。
【解決手段】 アルミニウム合金部材の製造方法を、時効性のアルミニウム合金鋳物を溶体化処理する溶体化処理工程と、該溶体化処理後のアルミニウム合金鋳物を、後に行う人工時効処理の温度の±100℃以内の温度で、時効硬化が最大となるのに要する時間の半分以下の時間保持して中間時効処理する中間時効処理工程と、該中間時効処理後のアルミニウム合金鋳物を塑性加工する塑性加工工程と、該塑性加工後の部材を人工時効処理してアルミニウム合金部材を得る人工時効処理工程と、を備えて構成する。アルミニウム合金部材は、時効硬化により析出した析出物の大きさが50nm以下の組織を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高強度かつ高靱性のアルミニウム合金部材、およびその製造方法に関する。
近年、軽量化の要請から、各種製品がアルミニウム合金製へと移行しつつある。特に、自動車分野では、軽量化による燃費向上により、環境負荷の低減が図られる。自動車用部品には高強度、高靱性といった優れた機械的特性が要求される。例えば、展伸用アルミニウム合金を鍛造した鍛造品は、機械的特性に優れる。しかし、製造コストが高いため、鍛造品は一部の部品に適用されているに過ぎない。アルミニウム合金の自動車用部品への適用を拡大するためには、高強度かつ高靱性のアルミニウム合金部材を、低コストに製造する技術が必要となる。
その技術の一つとして、鍛造する素材に鋳物を使用する鋳造鍛造法が注目されている。例えば、特許文献1には、アルミニウム合金鋳物を溶体化処理した後、塑性加工し、その後に人工時効処理するというアルミニウム合金部材の製造方法が開示されている。また、非特許文献1には、アルミニウム合金鋳物を鍛造した後、熱処理(溶体化処理、人工時効処理)する方法が開示されている。
特開平8−246118号公報 神戸洋史、他5名、"鋳造鍛造プロセスによるアルミニウムロ ードホイールの実用化"、「軽金属」、1998年、第48巻、第2号、 p.103−108
しかし、上記特許文献1に記載されているように、単に鋳物に歪みを与えて人工時効処理を行うだけでは、充分な時効硬化が起こらない。つまり、溶体化処理→塑性加工→人工時効処理というプロセスでは、高強度と高靱性とを両立したアルミニウム合金部材を実現することはできない。また、非特許文献1に記載されているように、鍛造後に熱処理を行うと、鍛造で導入された歪みが熱処理で回復して無くなってしまう。よって、得られたアルミニウム合金部材の組織は、鋳造品とほとんど変わらない。また、得られるアルミニウム合金部材の0.2%耐力は220MPa程度であり、強度も充分ではない。
本発明は、このような実状を鑑みてなされたものであり、アルミニウム合金鋳物を塑性加工するプロセスを利用して、高強度かつ高靱性のアルミニウム合金部材を低コストに製造することのできる方法を提供することを課題とする。また、安価で高強度かつ高靱性のアルミニウム合金部材を提供することを課題とする。
(1)本発明のアルミニウム合金部材の製造方法は、時効性のアルミニウム合金鋳物を溶体化処理する溶体化処理工程と、該溶体化処理後のアルミニウム合金鋳物を、後に行う人工時効処理の温度の±100℃以内の温度で、時効硬化が最大となるのに要する時間の半分以下の時間保持して中間時効処理する中間時効処理工程と、該中間時効処理後のアルミニウム合金鋳物を塑性加工する塑性加工工程と、該塑性加工後の部材を人工時効処理してアルミニウム合金部材を得る人工時効処理工程と、を備えることを特徴とする(請求項1に対応)。
すなわち、本発明のアルミニウム合金部材の製造方法は、塑性加工工程の前に中間時効処理工程を備える。中間時効処理工程では、溶体化処理後のアルミニウム合金鋳物を、後の人工時効処理の温度の±100℃以内の温度で、人工時効処理の時間よりも短い時間保持する。これにより、人工時効処理で析出する成分とほぼ同じ成分の析出物を、少しだけ析出させる。つまり、中間時効処理は、予備的な人工時効処理と考えることができる。
本発明のアルミニウム合金部材の製造方法では、中間時効処理工程を備えることで、従来実現できなかった高強度かつ高靱性のアルミニウム合金部材を製造することができる。これが可能となったメカニズムは必ずしも定かではないが、現状、次のように考えられる。
析出物が存在する状態で塑性加工を行うと、析出物の周りに歪み場が不均一に形成される。なお、従来のように析出物を析出させずに塑性加工を行うと、歪み場は結晶単位にほぼ均一に形成される。塑性加工で形成された歪み場は、後の人工時効処理における析出物の析出起点となる。本発明のアルミニウム合金部材の製造方法では、析出物単位に歪み場が不均一に形成されるため、析出起点が増加する。よって、析出物は微細化し、析出物間の距離は短くなる。つまり、析出物の数および分布という点で、従来とは異なる析出状態が創出される。これより、製造されるアルミニウム合金部材の強度および靱性は高くなる。また、人工時効処理工程では、析出物の析出の短時間化も図られる。このため、短時間の人工時効処理で、最大時効硬さを得ることができる。
ここで、アルミニウム合金部材の「強度」は、室温下での引張強さ、0.2%耐力により評価すればよい。例えば、室温下での引張強さおよび0.2%耐力の少なくとも一方が250MPa以上であれば、高強度といえる。「靱性」は、室温における破断伸びにより評価すればよい。例えば、室温における破断伸びが8%以上であれば高靱性といえる。
(2)本発明のアルミニウム合金部材は、時効性のアルミニウム合金鋳物を塑性加工して得られたアルミニウム合金部材であって、時効硬化により析出した析出物の大きさが50nm以下の組織を有することを特徴とする(請求項7に対応)。
後に詳しく説明するが、通常、時効性のアルミニウム合金鋳物を溶体化処理した後、人工時効処理すると(T6処理)、200〜300nm程度の大きさの析出物が析出する。これに対して、本発明のアルミニウム合金部材では、時効硬化により析出した析出物の大きさが50nm以下と小さい。微細な析出物が分散しているため、本発明のアルミニウム合金部材は、高強度かつ高靱性である。
以下、実施形態を挙げ、本発明のアルミニウム合金部材の製造方法、およびアルミニウム合金部材について詳細に説明する。
〈アルミニウム合金部材の製造方法〉
本発明のアルミニウム合金部材の製造方法は、溶体化処理工程と、中間時効処理工程と、塑性加工工程と、人工時効処理工程と、を備える。以下、各工程について説明する。
(1)溶体化処理工程
本工程は、時効性のアルミニウム合金鋳物を溶体化処理する工程である。「時効性のアルミニウム合金」とは、過飽和固溶体から過飽和に固溶した成分を析出して硬化する合金をいう。例えば、Al−Si−Mg系合金、Al−Si−Cu−Mg系合金、Si過剰側のAl−Mg2Si合金、Al−Cu系合金、Al−Zn−Mg系合金等が挙げられる。なかでも、鋳造性の良好なAl−Si−Mg系合金、Al−Si−Cu−Mg系合金、Si過剰側のAl−Mg2Si合金が好適である。
アルミニウム合金鋳物として、例えば、Al−Si−Mg系合金鋳物、またはAl−Si−Cu−Mg系合金鋳物を採用する場合には、各々の全体を100質量%(以下、単に「%」と表記する。)としたときに、Siを1〜7%、Mgを0.1〜1%含むことが望ましい。なお、本明細書中「〜」を用いて記載された数値範囲には、その下限値および上限値が含まれる。例えば、「1〜7%」は、「1%以上7%以下」を意味する。
Si量が1%未満では、鋳造性が悪くなり、鋳物中に鋳造欠陥を生じ易い。また、鋳物の熱膨張係数が大きくなる。一方、Si量が7%を超えると、脆いSi粒子が増加して、鋳物の延性や靭性が低下する。この場合、塑性加工により割れ等の欠陥を生じるおそれがある。好適なSi量は、2〜6%である。Si量がこの範囲内であると、安定した鋳造性が得られ、塑性加工による欠陥もない。
Mg量が0.1%未満では、鋳物の強度が低くなる。一方、Mg量が1%を超えると鋳物の延性や靱性が低下する。好適なMg量は、0.2〜0.7%である。Mg量がこの範囲内であると、強度と靱性とのバランスが最適になる。
また、Al−Si−Mg系合金鋳物は、Cuを含んでいてもよい。Cuを含むAl−Si−Mg系合金鋳物や、Al−Si−Cu−Mg系合金鋳物のCu量は、0.1〜1%であることが望ましい。Cu量が0.1%未満では、鋳物の硬さ、強度が低下する。一方、Cu量が1%を超えると、熱的に不安定な析出物が生成され易く、鋳物の延性や靭性の低下を招き、耐食性も低下する。好適なCu量は、0.3〜0.7%である。Cu量がこの範囲内であると、強度と靱性とのバランスが最適になり、耐食性の低下も少ない。
上記Al−Si−Mg系合金鋳物、Al−Si−Cu−Mg系合金鋳物、およびSi過剰側のAl−Mg2Si合金鋳物は、さらに、Ti、Cr、Mn、Fe、Vから選ばれる一種以上を含む態様が好適である。これらの元素は、鋳造性や強度、靱性の向上に有効な元素である。但し、これらの元素の含有量が過少であると、添加効果が発揮されない。一方、これらの元素の含有量が過多となると、鋳物の延性や靭性の低下を招く。
例えば、Tiを含む場合には、Ti量を0.15〜0.3%とすることが望ましい。Ti量が0.15%未満では、基地相の強化効果が充分発揮されない。Tiが0.3%を超えると、基地相に固溶するTiが増加して、基地相が硬くなりすぎ、鋳物がせん断破壊を生じるおそれがある。また、基地相中に粗大なTi化合物を生成するようになり、鋳物の延性や靭性を低下させるおそれもある。好適なTi量は、0.2〜0.3%である。
Crを含む場合には、Cr量を0.05〜0.7%とすることが望ましい。Cr量が0.05%未満では、基地相の強化効果が充分発揮されない。Crが0.7%を超えると、粗大晶出物が晶出して、鋳物の延性の低下を招く。好適なCr量は、0.1〜0.5%である。
Mnを含む場合には、Mn量を0.1〜0.7%とすることが望ましい。Mn量が0.1%未満では、基地相の強化効果が充分発揮されない。Mnが0.7%を超えると、粗大晶出物が晶出して、鋳物の延性の低下を招く。好適なMn量は、0.2〜0.5%である。
Feを含む場合には、Fe量を0.1〜0.7%とすることが望ましい。Fe量が0.1%未満では、基地相の強化効果が充分発揮されない。Fe量が0.7%を超えると、粗大なFe化合物が生成し易くなり、鋳物の延性や靭性が低下するおそれがある。好適なFe量は0.2〜0.6%である。
Vを含む場合には、V量を0.02〜0.5%とすることが望ましい。Fe量が0.02%未満では、基地相の強化効果が充分発揮されない。V量が0.5%を超えると、粗大な初晶化合物が生成して、鋳物の延性や靭性が低下するおそれがある。好適なV量は0.02〜0.15%である。
なお、アルミニウム合金鋳物の鋳造方法は特に限定されない。砂型鋳造でも金型鋳造でもよいし、重力鋳造、低圧鋳造または高圧鋳造でもよい。鋳物の量産性を考慮すれば、ダイキャスト鋳造、低圧鋳造が好適である。
溶体化処理は、アルミニウム合金鋳物を高温で保持した後に水冷等によって急冷し、時効硬化を示す元素をα相中に固溶させて過飽和固溶体を形成する処理である。溶体化処理の条件は、アルミニウム合金鋳物の組成や所望特性に応じて適宜選択すればよい。一例を挙げると、Al−Si−Cu−Mg系合金鋳物では、500〜550℃で1〜10時間保持した後に急冷すればよい。
(2)中間時効処理工程
本工程は、溶体化処理工程を経たアルミニウム合金鋳物を、後に行う人工時効処理の温度の±100℃以内の温度で、時効硬化が最大となるのに要する時間の半分以下の時間保持して中間時効処理する工程である。
中間時効処理は、後の人工時効処理で析出する成分とほぼ同じ成分の析出物を、少しだけ析出させる処理である。したがって、中間時効処理の温度は、人工時効処理の温度を基準にして決定される。すなわち、中間時効処理の温度は、人工時効処理の温度の±100℃以内の温度とする。人工時効処理で析出する成分と同じ成分を析出させるという観点から、中間時効処理の温度は、人工時効処理の温度と近い方が望ましい。よって、中間時効処理の温度を、人工時効処理の温度の±50℃以内の温度とするとよい。±10℃以内の温度とするとより好適である。さらには、人工時効処理の温度と同じ温度としてもよい。
また、上記温度で保持する時間(処理時間)は、溶体化処理したアルミニウム合金鋳物を、人工時効処理した場合に、時効硬化が最大となるのに要する時間の半分以下の時間とする。1/4以下の時間とすると好適である。例えば、100時間で時効硬化が最大となる場合には、処理時間を50時間以下とすればよい。25時間以下とすると好適である。本工程では、人工時効処理による析出物の一部を析出させればよい。また、処理時間が短いほど、コストを低減することができ、生産性も向上する。よって、処理時間は短い方が望ましい。例えば、比較的高温で保持する場合には、処理時間は1〜2時間程度で充分である。
(3)塑性加工工程
本工程は、中間時効処理工程を経たアルミニウム合金鋳物を塑性加工する工程である。塑性加工により、アルミニウム合金鋳物を所望の形状の部材とするとともに、中間時効処理で析出した析出物の周りに歪み場を形成する。塑性加工の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、鍛造、圧延、押出等を行えばよい。なかでも、鍛造は、高強度の多様な部品を容易に製造できることから好適である。この場合、アルミニウム合金製鋳物を、液圧プレス、ハンマー等により特定形状に鍛造すればよい。
鍛造法には、熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造、恒温鍛造がある。析出物の周りに析出起点となる歪み場を形成するという観点から、冷間鍛造を採用するとよい。塑性加工の際の加工率は、アルミニウム合金鋳物を塑性変形させることができれば、特に限定されるものではない。例えば、加工率を2%以上とすればよい。また、加工率を10%を超え、さらには30%以上とすると好適である。
(4)人工時効処理工程
本工程は、塑性加工工程を経て得られた部材を人工時効処理してアルミニウム合金部材を得る工程である。人工時効処理は、比較的低温で加熱保持し、過飽和に固溶していた成分を歪み場に析出させて、硬化させる処理である。人工時効処理の条件は、アルミニウム合金鋳物の組成や所望特性に応じて適宜選択すればよい。一例を挙げると、Al−Si−Cu−Mg系合金鋳物では、140〜200℃で1〜20時間保持すればよい。
以上、溶体化処理→中間時効処理→塑性加工→人工時効処理という一連の工程により得られるアルミニウム合金部材は、50nm以下の微細な析出物が分散した組織を有し、高強度かつ高靱性である。次に、このような組織を有する本発明のアルミニウム合金部材について説明する。
〈アルミニウム合金部材〉
本発明のアルミニウム合金部材は、時効性のアルミニウム合金鋳物を塑性加工して得られたアルミニウム合金部材であって、時効硬化により析出した析出物の大きさが50nm以下の組織を有する。組織観察は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)等で行えばよい。なお、「析出物の大きさ」は析出物の長軸径、つまり、析出物を2本の平行線で挟んだ場合の最大長さとする。
本発明のアルミニウム合金部材は、上述した本発明のアルミニウム合金部材の製造方法により製造することができる。よって、本発明のアルミニウム合金部材を、「時効性のアルミニウム合金鋳物を溶体化処理した後、後に行う人工時効処理の温度の±100℃以内の温度で、時効硬化が最大となるのに要する時間の半分以下の時間保持する中間時効処理を行い、該中間時効処理後のアルミニウム合金鋳物を塑性加工し、さらに人工時効処理することにより得られたアルミニウム合金部材であって、該人工時効処理により析出した析出物の大きさが50nm以下の組織を有するアルミニウム合金部材」と把握することができる。なお、本発明のアルミニウム合金部材においても、前述した好適な態様を適宜採用すればよい。
本発明のアルミニウム合金部材は、そのサイズ、形状、使用環境等が特に限定されるものではないが、強度および靱性が同時に要求される部材に好適である。例えば、エンジン用部材、モータ用部材、放熱用部材等がある。例えば、エンジン用部材には、シリンダヘッド、ターボロータ等がある。また、自動車分野に限らず、それ以外の分野であっても、高強度、高靱性が要求される部材に本発明のアルミニウム合金部材を適用すれば、それらの軽量化および性能向上を図ることができる。
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
〈アルミニウム合金部材の製造〉
(1)Al−3%Si−0.4%Cu−0.25%Mg−0.25%Ti−0.1%Crの組成のアルミニウム合金部材を、鋳造鍛造法により製造した。まず、添加元素を含む種々の母合金(アルミニウム合金)を、木ぶし粘度とアルミナとの混合物でライニングした黒鉛るつぼ中で溶解した。溶湯温度は750〜760℃とした。この溶湯中に、溶湯量の0.3%のフラックス(NaCl+25%AlF3)を添加して脱滓した。その後、溶湯量の0.3%のC2Clを添加して脱ガスした。次に、この溶湯を、t=12の銅鋳型に注湯し、放冷して凝固させた。得られたアルミニウム合金鋳物に、540℃で8時間保持した後、水冷する溶体化処理を施した。続いて、145℃で1時間保持する中間時効処理を施した。このアルミニウム合金鋳物を、ナックルプレス(AIDA製、型番PK−25)により冷間据え込み鍛造した。据え込み率は30%とした。鍛造により得られた部材に、150℃で10時間保持する人工時効処理を施し、アルミニウム合金部材を得た。これら一連の製造工程を図1に示す。また、得られたアルミニウム合金部材を、以下、実施例のアルミニウム合金部材と称す。
〈組織観察〉
実施例のアルミニウム合金部材の組織をTEMで観察した。図2に、同アルミニウム合金部材のTEM写真を示す。また、比較のため、上記製造過程で得られたアルミニウム合金鋳物をT6処理し(溶体化処理:540℃×8時間→人工時効処理:150℃×24時間)、その組織をTEMで観察した。図3に、同アルミニウム合金鋳物のTEM写真を示す。図3に示すように、アルミニウム合金鋳物では、短辺50〜100nm程度、長辺200〜600nmの針状の析出物が認められる。これに対して、図2では、歪み場が黒っぽく見えており、析出物を判別することはできない。しかし、実施例のアルミニウム合金部材の人工時効処理の際には、時間の経過とともに硬化が進んだため、析出物が析出していることは確かである。したがって、本TEM写真では判別できないが、実施例のアルミニウム合金部材では、50nm以下の非常に微細な析出物が析出していると推測される。
〈引張試験および評価〉
実施例のアルミニウム合金部材から、試験片(直径6mm、平行部長さ34mm)を切り出して、引張試験を行った。引張試験の方法は、JIS Z 2241に従った。図4に、本試験片の室温における0.2%耐力、および破断伸びの値を示す。なお、比較例として、図4には、従来の鋳造鍛造法で製造された種々のアルミニウム合金部材についての各値も示す。これら比較例のアルミニウム合金部材の組成は、Al−2.7〜3.3%Si−0.4〜0.5%Mg−0.4〜0.5%Cuである。また、製造工程は、鋳造→冷間鍛造→溶体化処理(530〜540℃、3〜10時間)→人工時効処理(140〜160℃、4〜8時間)である。
図4に示すように、実施例のアルミニウム合金部材の0.2%耐力は350MPaを超え、破断伸びは10%となった。また、引張強さは約380MPa、ビッカース硬さはHv120であった。このように、実施例のアルミニウム合金部材では、高強度、高靱性が両立されている。一方、比較例のアルミニウム合金部材では、破断伸びは10%以上であるが、0.2%耐力は200〜250MPaと低くなった。
以上より、中間時効処理工程を備えた本発明の製造方法によれば、高強度かつ高靱性のアルミニウム合金部材を製造できることが確認された。
アルミニウム合金部材の製造工程の一例を示す図である。 実施例のアルミニウム合金部材の組織を示すTEM写真である。 T6処理したアルミニウム合金鋳物の組織を示すTEM写真である。 実施例および比較例のアルミニウム合金部材の0.2%耐力および破断伸びの値を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 時効性のアルミニウム合金鋳物を溶体化処理する溶体化処理工程と、
    該溶体化処理後のアルミニウム合金鋳物を、後に行う人工時効処理の温度の±100℃以内の温度で、時効硬化が最大となるのに要する時間の半分以下の時間保持して中間時効処理する中間時効処理工程と、
    該中間時効処理後のアルミニウム合金鋳物を塑性加工する塑性加工工程と、
    該塑性加工後の部材を人工時効処理してアルミニウム合金部材を得る人工時効処理工程と、
    を備えることを特徴とするアルミニウム合金部材の製造方法。
  2. 前記アルミニウム合金鋳物は、Al−Si−Mg系合金、Al−Si−Cu−Mg系合金、およびSi過剰側のAl−Mg2Si合金のいずれかからなる請求項1に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
  3. 前記Al−Si−Mg系合金および前記Al−Si−Cu−Mg系合金は、全体を100質量%(以下、単に「%」と表記する。)としたときに、Siを1〜7%、Mgを0.1〜1%含む請求項2に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
  4. 前記Al−Si−Mg系合金、前記Al−Si−Cu−Mg系合金、および前記Si過剰側のAl−Mg2Si合金は、さらに、Ti、Cr、Mn、Fe、Vから選ばれる一種以上を含む請求項2に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
  5. 前記中間時効処理は、前記人工時効処理の温度の±50℃以内の温度で行う請求項1に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
  6. 前記アルミニウム合金部材は、時効硬化により析出した析出物の大きさが50nm以下の組織を有する請求項1に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
  7. 時効性のアルミニウム合金鋳物を塑性加工して得られたアルミニウム合金部材であって、
    時効硬化により析出した析出物の大きさが50nm以下の組織を有することを特徴とするアルミニウム合金部材。
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