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JP2006099094A - プラスチック製光学部品、これを用いた光学ユニット - Google Patents

プラスチック製光学部品、これを用いた光学ユニット Download PDF

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JP2006099094A JP2005253396A JP2005253396A JP2006099094A JP 2006099094 A JP2006099094 A JP 2006099094A JP 2005253396 A JP2005253396 A JP 2005253396A JP 2005253396 A JP2005253396 A JP 2005253396A JP 2006099094 A JP2006099094 A JP 2006099094A
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Fumiyuki Suzuki
文行 鈴木
Noriko Sakaeba
範子 榮羽
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Fujifilm Holdings Corp
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

【課題】軽量、低コスト、大量生産適性等に優れた特性に加え、優れた防湿性能を有し、環境に存在する水分の影響を受けても屈折率等の光学性能の変化が極めて少ないプラスチック製光学部品、および該プラスチック製光学部品を用いた光学ユニットの提供。
【解決手段】少なくとも外気接触面に防湿皮膜が形成されたプラスチック製光学部品であって、環境の変化により表面部および中心部での吸水率が変化を始めてから飽和吸水率に至る間の過渡期において、表面部および中心部の屈折率の差が0.0002以下であるプラスチック製光学部品。
【選択図】なし

Description

本発明は、レンズやプリズム等のプラスチック製光学部品の技術分野に属し、詳しくは吸湿による光学性能の変化がきわめて少ないプラスチック製光学部品に関する。また、本発明は該プラスチック製光学部品を用いた光学ユニットに関する。
従来、カメラのレンズやファインダ、コピー機器、プリンタ、プロジェクタ、光通信等に用いられる各種のレンズやプリズム、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、拡大鏡等の光学部品は、その多くがガラスを材料として製造されている。
しかしながら、近年のプラスチック素材やプラスチック成形技術の進歩に伴い、安価な光学部品として原料が安く、軽量で、大量生産適性のあるプラスチックによってレンズやプリズム等の光学部品が製造されるようになって来ている。
ところが、プラスチックは、吸湿によって屈折率等の光学性能が変化してしまうので、高級な一眼レフカメラ用のレンズなどの、高解像度等の高い精度が要求される用途には、依然としてガラスレンズが使用されている。
このような問題点を解決するために、ポリマー構造の設計等により、高い防湿性を有する、すなわち、吸湿性が低いプラスチック素材自体の開発も行われているが、そのコストが高くなってしまい、プラスチックのコストメリットがなくなるという問題がある。
また、防湿性を有するプラスチック製光学部品を得るために、光学部品の成形段階等において疎水性物質を添加したり、光学部品を非透湿性のバリア膜で覆ったり、光学部品の反射防止膜の上表面に、撥水撥油処理した反射防止層被覆層を設けたりすることが行われている(特許文献1参照)。また、プラスチック製光学部品の湿度安定性を向上させるために、ゲートカット部のみに吸湿調整膜を形成することも知られている(特許文献2参照)。さらに、光学系に低吸湿性材料からできた光学ブロックを設置して吸湿による性能変化を光学的に補償することも行われている(特許文献3参照)。
しかし、上記従来技術の方法で得られた防湿性プラスチック製光学部品や特許文献1に記載のバリア膜や反射防止層および反射防止層被覆層を持つプラスチック製光学部品は、十分な防湿性を得ることができておらず、吸湿による屈折率等の光学性能の変化を防止することはできないという問題があった。また、特許文献2に記載の技術では、ゲート部分のみに吸湿調整膜を設けても、周囲からの吸湿速度を一定化することは実質的に困難であるし、表面からの吸湿とあいまって、光学部品内部に光学的に好ましくない屈折率分布やその偏りが生じてしまうことは避けられないという問題があった。さらに、特許文献3に記載の技術では、光学系が複雑になり、コストアップとなるという問題があった。
特開2002−148402号公報 特開平11−109107号公報 特開2000−137166号公報
本発明の課題は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、プラスチック製光学部品の持つ軽量、低コスト、大量生産適性等に優れた特性に加え、優れた防湿性能を有し、環境に存在する水分の影響を受けても、光学部品内部に屈折率分布の偏りを生じることのないプラスチック製光学部品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、プラスチック製光学部品の吸湿による光学性能の変化について鋭意研究を重ねた結果、プラスチック製光学部品の吸湿による光学性能の変化は、主として吸湿もしくは脱湿過程におけるプラスチック製光学部品の内部における甚だしい吸水率分布の偏りに起因する屈折率分布の偏りによることを見出し、本発明に到ったものである。
すなわち本発明は、少なくとも外気接触面に防湿皮膜が形成されたプラスチック製光学部品であって、
環境の変化により表面部および中心部での吸水率が変化を始めてから飽和吸水率に至る間の過渡期において、表面部および中心部の屈折率の差が0.0002以下であるプラスチック製光学部品を提供する。
また、本発明は、互いにアッベ数が異なる少なくとも2つのレンズを含み、前記レンズの少なくとも1つは、本発明のプラスチック製光学部品である光学ユニットを提供する。
本発明の光学ユニットは、オートフォーカス機構を有することが好ましい。
本発明によれば、軽量、低コスト、生産性等の優れたプラスチック製光学部品の性能を維持したまま、優れた防湿性能を有し、環境に存在する水分の影響を受けても、光学部品内部に屈折率分布の偏りを生じることのないプラスチック製光学部品を容易に実現でき、提供できるという効果を奏する。
本発明の光学ユニットは、本発明のプラスチック製光学部品を使用するため、環境変化、具体的には、環境中の湿度が変化した場合であっても、レンズ内部に屈折率分布の偏りを生じることがなく、レンズ自体の屈折率の変化もゆるやかであり、かつその変化も均一である。レンズ自体の屈折率が均一に変化する場合、吸湿による変化程度に微小な変化であれば、光学性能への実質的な影響は焦点位置の変化のみに留まり、この変化はオートフォーカス機構を使用することで解消される。
したがって、本発明によれば、環境変化によってその光学特性が影響を受けることがない優れた光学ユニットを実現することができる。
本発明のプラスチック製光学部品を添付の図面に示す好適実施例に基づいて以下に詳細に説明する。
図1は、レンズの形状をした本発明のプラスチック製光学部品の一実施形態を示した概念図であり、図1(a)は該光学部品の正面図(光軸方向から見た図)であり、図1(b)は光軸を含む平面で切断した断面図である。
図1(a)および(b)に示すように、本発明の光学部品1は、プラスチック製の光学部品本体(ここでは、レンズ)10と、該光学部品本体10の少なくとも外気接触面上に形成される防湿皮膜2と、で構成される。なお、図1(a)および(b)に示す光学部品1では、光学部品本体10の表面全体に防湿皮膜2が形成されている。
以下、本明細書において、光学部品本体とは、レンズ等、公知の光学部品を広く表すものとし、光学部品とは、該光学部品本体の少なくとも外気接触面上に防湿皮膜が形成されたものを表す。
図1(a)および(b)に示す光学部品本体10は、一般的なプラスチックレンズの形状であり、光学面を有するレンズ部10aと、レンズ部10aの外側に設けられたフランジ部10bと、で構成される。図(1)および(b)に示す光学部品1では、レンズ部10aとフランジ10bとを含めた光学部品本体10の表面全体に防湿皮膜2が形成されている。
本発明の光学部品1は、光学部品本体10の少なくとも外気接触面に防湿皮膜2が形成されることにより、光学部品本体10の吸湿過程または脱湿過程においても、光学部品本体10内部における吸水率分布の偏り、およびこれに起因する屈折率分布の偏りが極めて小さいことを特徴とする。
メタクリル樹脂(例えば、PMMA等)やポリカーボネート樹脂といった光学部品に通常使用されるプラスチックは、ガラスに比べて吸湿性が高い。そのため、プラスチック製の光学部品本体は、環境変化、すなわち環境中の湿度の変化によって、その吸水率が変化する。この吸水率の変化が光学部品本体の光学性能に悪影響を及ぼす。
この点について、以下により具体的に説明する。
絶乾状態から水蒸気の存在する環境にプラスチック製の光学部品本体を移すと、該光学部品本体が吸湿を開始し、光学部品本体の吸水率が変化し始める。光学部品本体の吸水率は、環境変化、より具体的には環境中の湿度の増加にしたがって増加し、ある時点、すなわち、光学部品本体を構成する材料によって決定される飽和吸水率に達した時点で平衡状態となる。
光学部品本体の吸水率の変化は、光学部品本体全体で一定ではなく、その部位、例えば、光学部品本体の表面部と中心部とで異なっている。この結果、光学部品本体内部に吸水率分布の偏りが生じる。そしてこの吸水率分布の偏りに起因して、光学部品本体内部には、屈折率分布の偏りが生じることとなる。
本発明の光学部品は、光学部品本体の少なくとも外気接触面に防湿皮膜が形成されていることにより、環境の変化によって光学部品本体の表面部および中心部の吸水率が変化し始めてから、飽和吸水率に至る間の過渡期において、光学部品本体の表面部および中心部の屈折率の差(以下、単に「過渡期における屈折率差」とする。)が0.0002以下であることを特徴とする。
光学部品本体の形状にもよるが、本明細書において、光学部品本体の表面部および中心部とは、各々以下のように定義される。
表面部:光学部品本体の厚みに対する比率で、光学部品本体表面から20%までの部分、好ましくは5〜10%の部分。ここでいう、光学部品本体の厚みとは、該光学部品の光学的方向、すなわち、光学面から垂直方向の厚みを指す。
中心部:光学部品本体の厚みに対する比率で、光学部品本体の中心部分から20%までの部分、好ましくは5〜10%の部分。
本発明において、光学部品本体の表面部および中心部の屈折率は、該当する部位の含水率に基づいて以下の手順で求める。
光学部品本体表面部および中心部の屈折率測定方法
同一形状の光学部品本体を複数個準備して、常温で湿度90%以上の雰囲気に所定時間、例えば12時間、放置する。該雰囲気から取り出した光学部品を液体窒素凍結法で割断する。光学部品本体の表面部および中心部から質量約1〜20mgの測定用の小片を採取し、乾燥窒素雰囲気下で室温まで戻す。この小片を熱質量分析装置(TGA)にかけ、80〜100℃、窒素雰囲気下で質量減少を求める。TGAで測定された初期質量をW、乾燥後の質量をW0として下記式により吸水率を求める。
吸水率=(W−W0)/W0×100(%)
ここで、温度一定の場合、光学部品本体を構成するプラスチック材料の吸水率と屈折率とは比例関係にあることが知られている。図2は、光学部品本体の代表的な構成材料であるポリカーボネート樹脂について、常温(25℃)における吸水率と屈折率の関係を示したグラフである。
このようなグラフと上記手順で求めた吸水率から、光学部品本体表面部および中心部の屈折率を求めることができる。
本発明の光学部品では、光学部品本体の少なくとも外気接触面に防湿皮膜を形成することにより、過渡期における屈折率差が0.0002以下に保たれる。
過渡期における屈折率差が0.0002以下であれば、仮に、環境変化により光学部品本体への吸湿または脱湿があったとしても、光学部品本体内部に吸水率分布の偏りが生じることがなく、吸水率分布の偏りに起因する屈折率分布の偏りが生じない。
本発明の光学部品は、過渡期における屈折率差が0.0001以下であることが好ましい。
本発明の光学部品において、防湿皮膜は光学部品本体の少なくとも外気接触面に形成されていればよく、図1に示した光学部品1のように、光学部品本体10の表面全体に形成することは必須ではない。
図3は、本発明の光学部品の別の実施形態を示した概念断面図(光軸を含む平面で切断)であり、レンズの形態をした本発明の光学部品1’は、光学ユニット100に組み込まれている。図3に示す光学ユニット100は、銀塩カメラのレンズ機構や、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話組み込み用小型カメラの撮像モジュールに使用される一般的な光学ユニットの構成である。すなわち、図3の光学ユニット100は、略円筒状をした鏡筒30内に、互いにアッベ数が異なる2枚のレンズ1’,20を組み込み、レンズ押さえ50で該レンズ1’,20を固定してなるものである。
また、図3の光学ユニット100では、レンズ1’およびレンズ20の間にスペーサ40が配置されている。
ここで、レンズ20は、アッベ数が高い、具体的にはアッベ数45〜60程度のレンズである。
このようなアッベ数を有するレンズとしては、具体的には、例えばガラス製のレンズや、日本ゼオン社製のゼオネックス(ZEONEX)TMに代表される脂環式ポリオレフィン製のレンズが挙げられる。これらのレンズ材料は、一般に飽和吸湿率が0.02質量%以下と極めて低いものが知られている。このような吸湿率の低いレンズ材料で作製されたレンズ20には防湿皮膜を形成する必要はない。
一方、レンズ1’は、本発明の光学部品1’であり、レンズ20と組み合わせて色収差の補正を行うのに相応しいアッベ数のプラスチックレンズ、具体的にはアッベ数が23〜35程度のプラスチックレンズを光学部品本体10’とする。
図3に示す光学ユニット100の構成について、より具体的に説明する。鏡筒30は中心が一致し、かつ互いに径が異なる3つの円筒状の領域を、径が大きい側から順に、光学ユニット100の光軸方向に配列させた構成を有している。鏡筒30の、最も小径の円筒領域の端面には、円環状のリブ部30aが内側に突出して形成されている。このリブ部30aの内側が光(撮影光等)が入射する開口となる。
鏡筒30において、最も小径の領域は、レンズ20を組み込み可能である。すなわち、その内径がレンズ20の外径と略同一で、レンズ20の外径よりも若干大きくなっている。また、最も大径の領域は、本発明の光学部品1’を組み込み可能である。すなわち、その内径が本発明の光学部品1’の外径と略同一で、該光学部品1’の外径よりも若干大きくなっている。
レンズ20は、鏡筒30の前記リブ部30a側(開口=光入射側)の最も小径の領域に組み込まれ、リブ部30aにフランジ部を当接することにより、光軸方向の位置が決定される。一方、本発明の光学部品1’は、鏡筒30の最大径の領域に組み込まれる。
スペーサ40は、両端部にレンズ20および本発明の光学部品1’と当接する部分を有する略円筒状の部材で、上記したように鏡筒30内においてレンズ20および本発明の光学部品1’の間に挿入される。スペーサ40の光軸方向の長さを選択することにより、レンズ20および本発明の光学部品1’の光軸方向における相対位置を適正な位置に位置決めすることができる。
また、レンズ20、本発明の光学部品1’、鏡筒30、およびスペーサ40は、鏡筒30にレンズ20および本発明の光学部品1’を適正に組み込んだ状態で、レンズ20および本発明の光学部品1’の光軸が一致するように成形されている。
図3に示す光学ユニット100は、鏡筒30内に、レンズ20、スペーサ40、および本発明の光学部品1’を順次組み込み、レンズ押さえ50により本発明の光学部品1’をリブ30aに向けて押圧する。この状態で接着剤等によってレンズ押さえ50を鏡筒30に固定することにより、光学ユニット100が組み立てられる。
図4(a)および(b)は、本発明の光学部品1’の正面図(光軸方向から見た図)であり、図4(b)は図3と同方向の断面図である。図4(a)および(b)に示すように、本発明の光学部品1’において、光学部品本体10’は図1(a)および(b)に示した光学部品本体10と同様に、レンズ部10’aとフランジ部10’bとで構成されている。
図3に示す光学ユニット100において、本発明の光学部品1’は、フランジ部がリブ部30aおよびスペーサ40により挟持されており、この部分は外気と接触しない。したがって、この部分からの吸湿および脱湿はほとんどないと考えられる。
このため、図4(b)に示すように、本発明の光学部品1’では、光学部品本体10’のレンズ部10’a表面にのみ防湿皮膜2が形成されており、フランジ部10’bには防湿皮膜2が形成されていない。過渡期における屈折率差が0.0002以下となる限りこのような構成であってもよく、光学ユニット100の組立上むしろ好ましい。
防湿皮膜の形成方法にもよるが、概して図4(a)および(b)に示す形状の光学部品本体10’では、レンズ部10’aと比較すると、フランジ部10’bは、防湿皮膜を均等に形成するのが困難であり、形成される防湿皮膜の膜厚にムラが生じやすい。フランジ部10’bは、光学ユニット100に組み込んだ際に、光軸合わせおよび光軸方向における位置合わせを行う部分であるため、防湿皮膜の膜厚にムラが生じると、光軸合わせおよび光軸方向における位置合わせが困難になり、さらには、光学ユニット100の光学性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、防湿皮膜の形成の困難性により、フランジ部10’bに形成された防湿皮膜は、密着性に劣る場合がある。この結果、光学ユニット100の供用時に、防湿皮膜がフランジ部10’bから容易に剥離して、汚染源となるおそれがある。
また、図3に示す構成の光学ユニット100において、鏡筒30内が気密に保持されている、または鏡筒30に存在する開口部が非常に小さく、外部から鏡筒30への空気の流通が少なくなるように構成されているのであれば、光学部品本体10’のレンズ部10’a表面のうち鏡筒30内に位置する側の表面、すなわち凹面部における吸湿および脱湿の影響は非常に小さいと考えられる。このような場合、該凹面部には防湿皮膜2を形成しなくてもよい。
一方、レンズを構成する素材によっては、高アッベ数レンズをなすレンズ20が吸湿および脱湿による影響を受ける場合もある。このような場合、レンズ20を本発明の光学部品で構成してもよい。
なお、図4(a)および(b)に示す光学部品1’のように、光学部品本体10’の外気接触面、すなわちレンズ部10’aにのみ防湿皮膜2を形成するには、後述する手順で防湿皮膜を形成する際に、フランジ部10’bをマスクする、またはホルダ等で挟持した状態で防湿皮膜2を形成すればよい。
本発明の光学部品は、環境変化により吸湿または脱湿があったとしても、光学部品本体内部に屈折率分布の偏りが生じることがないため、図3に示すような光学ユニット100に組み込んで使用されるプラスチック製レンズとして好適である。
本発明は、上記した本発明の光学部品をプラスチック製レンズとして組み込んだ光学ユニットも提供する。すなわち、本発明は、互いにアッベ数が異なる少なくとも2つのレンズを含み、前記レンズの少なくとも1つは、本発明のプラスチック製光学部品である光学ユニットを提供する。したがって、図3は、本発明の光学ユニットの1実施形態を示す図でもある。
但し、本発明の光学ユニットは、互いにアッベ数が異なるレンズを少なくとも2つ含み、そのうち1つのレンズが本発明の光学部品である限り特に限定されず、図3に示す光学ユニット100とは異なる構成であってもよい。例えば、高解像度用途の光学ユニットでは、複数、例えば3つ以上の結像レンズを組み合わせて使用することで、所望の解像力や精度を達成している。本発明の光学ユニットは、少なくとも1つのレンズが本発明の光学部品である限り、このような3つ以上のレンズを含むものであってもよい。
本発明の光学ユニットが、3つ以上のレンズを含む場合、全てのレンズが互いに異なるアッベ数を有する必要はない。光学ユニットに含まれるレンズのうち少なくとも2つが互いに異なるアッベ数を有しており、全体として色収差が補正されるように光学設計されるのであれば、同程度のアッベ数を有するレンズを2つ以上含んでいてもよい。
銀塩カメラのレンズ機構や、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話組み込み用小型カメラ等の撮像モジュールに使用する場合、本発明の光学ユニットはオートフォーカス機構を有していることが好ましい。
本発明のプラスチック製光学部品は、環境変化により吸湿または脱湿があったとしても、その内部に屈折率分布の偏りを生じることはないが、光学部品全体としての屈折率は環境変化によって徐々に変化する。したがって、該光学部品を用いた光学ユニットは、環境変化によって、その光学特性が変化する。但し、この屈折率の変化は、ゆるやかで、かつ均一である。プラスチック製レンズである光学部品自体の屈折率が均一に変化する場合、吸湿による変化程度に微小な変化であれば、光学性能への実質的な影響は焦点位置の変化のみに留まり、この変化はオートフォーカス機構を使用することで解消される。したがって、オートフォーカス機構を有する本発明の光学ユニットは、環境変化によって、その光学特性が影響を受けることがなく、優れた光学特性を常に発揮することができる。
銀塩カメラのレンズ機構や、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話組み込み用小型カメラ等の撮像モジュールに使用されるオートフォーカス機構としては、様々な原理および制御手法を用いたものが知られている。本発明の光学ユニットに使用されるオートフォーカス機構は、このような公知のオートフォーカス機構の中でも、光学ユニットを通して得られる画像に基づいて、被写体のピント状態を直接検知し、該ピント状態が適正になるように、光学ユニットを構成するレンズの光軸方向における位置を制御する方法を用いた機構であることが好ましい。
図5は、本発明の光学ユニットと、オートフォーカス機構と、を用いた撮像モジュールの1構成例を示した概念図であり、一般的なデジタルカメラの構成が簡略して示されている。図5の撮像モジュール1000において、光学ユニット100’は、互いにアッベ数が異なるレンズを少なくとも2つ含み、そのうち1つのレンズが本発明の光学部品で構成される本発明の光学ユニットである。光学ユニット100’を通過した画像は、CCDイメージセンサ200に取り込まれる。イメージセンサ200に取り込まれた光学的な画像情報は、電気信号として出力されてAF処理部300へと送られる。AF処理部300はイメージセンサ200から送られた画像情報に基づいて被写体のピント状態を検知し、アクチュエータ400に駆動信号を送る。アクチュエータ400は、AF処理部300からの駆動信号に基づいて、適正なピント状態になるように、光学ユニット100’を構成する全てのレンズ、または一部のレンズを光軸方向に前後に移動させる。アクチュエータ400としては、各種手段が使用可能であり、具体的には、例えばステッピングモータ、リニヤモータ、圧電素子、電圧屈曲ポリマー等を使用することができる。
本発明の光学部品について、光学ユニットに使用されるプラスチックレンズを例に説明したが、本発明の光学部品はこれに限定されない。本発明において、少なくとも外気接触面に防湿皮膜を形成する光学部品本体は、プラスチック製光学部品として公知の構造を広く含む。したがって、図示したレンズ以外の様々な形状や機能を持つレンズ等の光学素子はもちろん、レンズの他にも、例えば、プリズム、光学フィルタ、光学スクリーン、偏向素子、偏光素子、光反射部材、ファインダ、眼鏡、コンタクトレンズ、反射鏡、曲面鏡等の公知の光学素子または光学部品を広く含む。また、カメラ(銀塩カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ等)などの撮像装置の撮影光学系、複写機やプリンタなどの画像形成装置、プロジェクタ、望遠鏡や双眼鏡や拡大鏡などの各種の光学機器に組み込んで使用される公知の光学素子または光学部品を広く含む。
また、光学部品本体の形成材料にも限定はなく、公知の光学素子や通常の光学部品で利用されている、各種のプラスチック材料(樹脂材料)が利用可能である。一例として、メタクリル樹脂(例えば、PMMA等)、脂環式アクリル樹脂を含むアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、脂環式ポリオレフィン、トリシクロデカン環を含む樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルペンテン、スチレン・ブタジエンコポリマー、フルオレン基を有するポリエステル等が挙げられる。
光学部品本体内部に吸水率分布の偏りを発生させないという本発明の光学部品の特徴から、これらのプラスチック材料の中でも、比較的吸水率が高い、具体的には飽和吸水率が0.02質量%超のプラスチック材料が好ましく、具体的には、メタクリル樹脂、脂環式アクリル樹脂を含むアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、脂環式ポリオレフィン等が挙げられる。上記したように、脂環式ポリオレフィンには、ゼオネックス(ZEONEX)TMのように飽和吸湿率が0.02質量%以下のものも存在しているが、その一方で、飽和吸湿率が0.02質量%超のものも存在している。
また、図3に示す光学ユニット100の光学部品1’として使用する場合、光学部品本体は、高アッベ数、具体的にはアッベ数45〜60のレンズ20と組み合わせて、色収差の補正を行うのに相応しいアッベ数を有することが好ましく、具体的にはアッベ数が23〜35程度であることが好ましい。このようなアッベ数を有する材料としては、ポリカーボネート樹脂や芳香族ポリエステル樹脂が好適である。
さらに、光学部品本体の形成方法にも、特に限定はなく、使用するプラスチック材料に応じて、射出成形、射出圧縮形成、圧縮成形等、公知のプラスチックの成形方法が全て利用可能である。
なお、光学部品本体の形状およびサイズ(長さや直径および厚さ)も、特に限定はなく、上記光学部品の用途に応じて適宜選択すればよい。
防湿皮膜は、光学部品本体の少なくとも外気接触面に形成することで、過渡期における屈折率差を0.0002以下とすることができる限り、特に限定されない。したがって、単層膜であっても良いし、多層膜であっても良い。単層膜は、無機系皮膜であっても、有機系皮膜であっても良い。さらに、多層膜も、無機系皮膜の多層膜であっても、有機系皮膜の多層膜であっても良いし、また、無機系皮膜と有機系皮膜との複合膜であっても良い。
なお、本発明の光学部品において、防湿皮膜に単層膜として、または多層膜や多層複合膜の一部として用いられる無機系皮膜には、特に限定はなく、十分な透明性を有し、かつ、透湿性が低い、もしくは透湿性を示さないものであれば、無機材料を主成分とする各種の薄膜が利用可能である。
好適な無機材料の一例として、SiOx(0<x≦2)で表されるケイ素酸化物、Si34で表されるケイ素窒化物、SiOxy(0<x<2,0<y<1.33,2x+1.33y≦4)で表されるケイ素酸窒化物、ZrO2、TiO2 、TiOまたはTi23のようなチタン酸化物、Al23、Ta25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、MgF2、WO3、InとSnの混合酸化物からなる混合物が挙げられる。
何れの皮膜であっても、無機系皮膜は、できるだけ緻密な構造を有し、かつ目的とする波長の光線の吸収が少ない皮膜であるのが好ましい。
ここで、防湿皮膜に無機系皮膜を用いる場合には、無機系皮膜を構成する無機材料は、SiOx(0<x≦2)で表されるケイ素酸化物、Si34で表されるケイ素窒化物、またはSiOxy(0<x<2,0<y<1.33,2x+1.33y≦4)で表されるケイ素酸窒化物であることが好ましい。なお、SiOx(0<x≦2)で表されるケイ素酸化物を使用した場合、無機系皮膜はガラス質膜となる。
したがって、防湿皮膜に単層膜として、または多層膜や多層複合膜の一部として無機系皮膜を用いる場合には、無機系皮膜を構成する無機材料は、SiOx(0<x≦2)で表されるケイ素酸化物、Si34で表されるケイ素窒化物、またはSiOxy(0<x<2,0<y<1.33,2x+1.33y≦4)で表されるケイ素酸窒化物であることが好ましい。
また、防湿皮膜に無機系皮膜を用いる場合、光学部品本体の少なくとも外気接触面に形成することで、過渡期における屈折率差が0.0002以下となるのであれば、無機系皮膜の膜厚には特に限定はなく、無機系皮膜の組成や、単層膜として用いるか多層膜として用いるか、多層複合膜として有機系皮膜と組み合わせるかに応じて、必要な透明性が確保でき、かつ目的とする防湿性能を発揮できる膜厚を、適宜、設定すればよい。
無機系皮膜を防湿皮膜として用いる場合の膜厚は、10nm〜1000nm(1μm)であるのが好ましい。この膜厚は、特に、無機系皮膜の単層膜または無機系皮膜のみの多層膜の膜厚、もしくは有機系皮膜との多層複合膜の場合の無機系皮膜のみの合計厚さを意味する。この膜厚がこのような範囲であれば、防湿性能に影響を与えるピンホールの数が少ないからである。すなわち、無機系皮膜の膜厚を上記範囲に限定する理由は、膜厚が、10nmより薄いとピンホールの発生の懸念があるし、また、1000nmより厚くしても、防湿性という観点からは、その寄与はもはや少ないし、膜厚を厚くすると、生産性が低下する、特に乾式成膜法では生産性が低下するし、また、残留応力によりクラックが入りやすくなるからである。
このような無機系皮膜の形成方法には、特に限定は無く、真空蒸着、スパッタリング、例えば、インピーダンス制御による反応性スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(Chemical Vapor Deposition)、例えば、プラズマCVD等の各種の乾式成膜法や、ゾル−ゲル法などの各種の湿式成膜法が利用可能であり、形成する無機系皮膜の組成や膜厚等に応じて、適宜、選択すればよい。特に、乾式成膜法による無機系皮膜の膜厚は、上述した10nm〜1μmであるのがより好ましい。この理由は、上記限定理由がより顕著だからである。
さらに、ゾル−ゲル法などの湿式の成膜法を利用する際における溶液の塗布方法にも、特に限定は無く、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等各種の塗布方法が利用可能であるが、容易に光学部品本体の防湿皮膜を形成することが必要な表面に溶液を塗布、すなわち無機系皮膜を成膜できる等の点で、ディップコート(浸漬塗布)が好ましく例示される。
ゾル−ゲル法による場合、無機系皮膜は、例えば、アルコキシシラン化合物を加水分解することにより得られるが、市販品では日本ダクロシャムロック社製のソルガード(SolGard)TM等を用いることができる。
なお、本発明の光学部品において、防湿皮膜に単層膜として、または多層膜や多層複合膜の一部として用いられる有機系皮膜には、特に限定はなく、十分な透明性を有し、かつ、透湿性が低い、もしくは透湿性を示さないものであれば、有機材料を主成分とする各種の薄膜が利用可能である。
好適な有機系皮膜の一例として、ポリ塩化ビニリデンや塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体などを主成分とする皮膜、日本ゼオン社製のゼオネックス(ZEONEX)TMなどのシクロオレフィン系樹脂を主成分とする皮膜、旭硝子社製のサイトップ(CYTOP)TMやデュポン社製のテフロン(登録商標)AF(TeflonAF)などの非晶フッ素樹脂(アモルファスフルオロポリマー)を主成分とする皮膜、住友3M社製のノベック(Novec)TMなどのフッ素系樹脂を主成分とする皮膜、信越化学工業の信越シリコーンKR251、KR400、KR114A等のシリコーン系樹脂を主成分とする皮膜等が例示される。
ここで、防湿皮膜は、有機系皮膜を用いる場合には、塩化ビニリデン膜であるのが好ましい。すなわち、防湿皮膜に単層膜としてまたは多層膜や多層複合膜の一部として有機系皮膜を用いる場合には、有機系皮膜は、特に、塩化ビニリデン膜であるのが好ましい。
また、防湿皮膜に有機系皮膜を用いる場合、光学部品本体の少なくとも外気接触面に形成することで、過渡期における屈折率差が0.0002以下となるのであれば、有機系皮膜の膜厚には特に限定はなく、有機系皮膜の組成や、単層膜として用いるか多層膜として用いるか、多層複合膜として無機系皮膜と組み合わせるかに応じて、必要な透明性が確保でき、かつ、目的とする防湿性能を発揮できる膜厚を、適宜、設定すればよい。
有機系皮膜を防湿皮膜として用いる場合の膜厚は、100nm〜10000nm(10μm)であるのが好ましい。この膜厚は、特に、有機系皮膜の単層膜または有機系皮膜のみの多層膜の膜厚、もしくは、無機系皮膜との多層複合膜の場合の有機系皮膜のみの合計厚さを意味する。膜厚がこのような範囲であれば、防湿性能および光学性能のいずれにも優れている。同じ膜厚での防湿性能を比較した場合、有機系皮膜はケイ素酸化物、ケイ素窒化物もしくはケイ素酸窒化物等の無機化合物で構成される無機系皮膜より防湿性能が低い。このため、膜厚が100nm未満であると、所望の防湿性能を得ることができないおそれがある。また、膜厚が100nm未満であると、ピンホール等の欠陥が生じやすくなる。一方、膜厚を10μmより厚くしても、防湿性という観点からは、その寄与はもはや少なく、極端に厚いと、形状が設計から大きくはずれることによる光学性能低下や、厚みが不均一となりやすいために生じる光学性能低下を引き起こすおそれがある。
さらに、有機系皮膜の光学特性としては、光線透過性が良好で、屈折率が低いことが好ましい。屈折率が低いと入射光の表面反射によるロスが少なく、結果として光線透過率が向上するからである。光学的な設計を適切に行い、本発明になる防湿皮膜に、反射防止、ハードコート等の機能を併せ持たせることも可能である。
このような有機系皮膜の形成方法には、特に限定は無く、皮膜となる樹脂成分を溶解あるいは分散してなる塗料を調整して塗布/乾燥する成膜法などの各種の湿式成膜法や、プラズマ重合やCVDなどの各種の乾式成膜法が利用可能であり、形成する皮膜の組成や膜厚等に応じて、適宜、選択すればよい。
また、塗料を用いる湿式の成膜法において、塗料の塗布方法には、特に限定はなく、スプレー塗布、刷毛による塗布、ディップコートなど、各種の方法が利用可能であるが、先と同様、容易に光学部品本体の防湿皮膜を形成することが必要な表面に溶液を塗布すなわち有機系皮膜を成膜できる等の点で、ディップコートが好ましく例示される。
特に、塗布成膜法による無機系皮膜の膜厚は、上述した100nm〜10μmであるのがより好ましい。この理由は、上記限定理由がより顕著だからである。
なお、本発明の防湿皮膜として、無機系皮膜と有機系皮膜との複合皮膜を用いる場合には、有機系皮膜の成膜に先立ち、必要に応じて無機系皮膜と有機系皮膜との密着性を向上させるために、無機系皮膜の表面にアンカーコート等の密着性向上処理を施してもよい。
また、防湿皮膜が無機系皮膜または無機系皮膜と有機系皮膜との複合皮膜である場合、防湿皮膜にクラックが発生するのを防止するために、より柔軟な物性を持つ透明下地膜を設けても良い。このような目的で設ける透明下地膜としては、SiOx(0<x<2)で表されるケイ素酸化物膜、Si34で表されるケイ素窒化物膜、若しくはSiOxy(0<x<2,0<y<1.33,2x+1.33y≦4)で表されるケイ素酸窒化物膜、または有機系皮膜として上記した有機材料を主成分とする膜を用いることができる。
本発明の光学部品において、防湿皮膜の膜厚、すなわち防湿皮膜を形成する無機系皮膜および/または有機系皮膜の膜厚は、均一であるのが最も好ましいが、光学部品本体の少なくとも外気接触面に防湿皮膜を形成することで、過渡期における屈折率差が0.0002以下となるのであれば、特に限定的ではない。
例えば、図1(a)および(b)に示す光学部品1の場合、基本的に、光学部品本体10のレンズ部10a等の光学的に作用する領域のみが、光学特性に対応する所定の膜厚となっていればよく、例えば、フランジ部10b等の光線透過に関与しない縁や端部領域の膜厚が他の領域に比して厚いもしくは薄い等の構成であってもよい。特に、図3に示す光学ユニットで使用される光学部品1’のように、光学部品1’のフランジ部が外気と接触しない場合に、光学部品本体の全表面に防湿皮膜を形成するのであれば、フランジ部表面の防湿皮膜の膜厚は、レンズ部表面の防湿皮膜の膜厚に比べて薄くてもよい。
また、レンズ部等の光学的に作用する領域についても、必ずしも均一な膜厚である必要はなく、要求される光学特性に対応できれば、ある程度の膜厚分布を有してもよい。
本発明において、防湿皮膜として、無機系皮膜と有機系皮膜とを併用した多層膜を用いる場合には、特に、優れた防湿性を発現する。その理由は定かでは無いが、無機系皮膜と有機系皮膜との両者は、互いに異なる積層原理や皮膜構成を有するので、互いの欠陥や欠点を埋め合うあるいは補い合うと共に、それぞれの皮膜が有する防湿性能を相乗的に得ることができ、その結果、非常に優れた耐湿性を得ることができると考えられる。
また、一般的に、無機系皮膜は硬質でピンホールやクラック等が多く、逆に、有機系皮膜はある程度の弾性を有する。そのため、防湿皮膜として多層膜を用いる場合、下層に無機系皮膜、上層に有機系皮膜を設けることにより、無機系皮膜のピンホール等を有機系皮膜が好適に埋めて、結果的に欠陥の無い皮膜を形成でき、無機系皮膜の防湿性能を完全に生かした非常に高い防湿性能を発現できる。しかも、弾性を有する有機系皮膜が、外部からのストレスに対する耐性や、熱等による光学部品本体の膨張/収縮に対して無機系皮膜を保護する保護膜としても作用するので、強度も十分に確保して、長期にわたって良好な耐湿性を発揮できる。
以上、本発明に係るプラスチック製光学部品について、実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は上述の実施例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
例えば、図示した光学部品では、光学部品本体の表面上に、直接、防湿皮膜を形成しているが、本発明は、これに限定はされず、光学部品本体と防湿皮膜との間に、屈折率調整用の皮膜、反射防止膜、密着性向上のための皮膜等を有していてもよい。また、防湿皮膜を覆って、反射防止膜、屈折率調整用の皮膜、密着性向上のための皮膜、損傷防止用のバリア膜等を有していてもよい。すなわち、本発明のプラスチック製光学部品においては、光学部品本体の少なくとも外気接触面を防湿皮膜で被覆していれば、各種の皮膜を形成してなる層構成が利用可能である。
以下、本発明に係るプラスチック製光学部品の具体的実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
実施例においては、本発明のプラスチック製光学部品の光学性能を評価するために、図3に示す光学ユニット100を使用した。図3の光学ユニット100において、レンズ20はアッベ数56のガラス製レンズ(入射側のレンズ部半径6.4mm、出射側のレンズ部半径4.9mm、平均厚み2.9mm)である。光学部品本体10’は、アッベ数30のポリカーボネート樹脂(飽和吸水率0.3質量%)製のレンズ(入射側のレンズ部10’a半径9.0mm、出射側のレンズ部10’a半径7.5mm、平均厚み2.5mm)である。
この光学(レンズ)ユニット100の解像度を、温度25℃湿度30%の環境下に1週間放置した後に測定すると、コントラスト50%のMTF(変調伝達関数)は、光軸中心で30本/ mm、周辺部の平均で25本/ mmであった。
実施例1
本実施例では、図1に示す光学部品1と同様に、ポリカーボネート樹脂製のレンズ(光学部品本体)10の表面全体に防湿皮膜2を形成した。防湿皮膜2としては、厚さ約100nmのケイ素酸化物膜をスパッタリング法により成膜した。成膜の際のスパッタターゲットにはシリコンプレートを用いた。スパッタリングにおいては、圧力が7×10-4Paに到達したところでArを導入し、処理圧力0.3Paで5分間放電してレンズ10表面のプラズマ処理を行った。次いで、Siターゲットのプレスパッタを3分間行った。その後、放電電力を4倍に高め反応ガスとしてO2を導入し、圧力0.3Paでレンズ10への成膜処理を行い、厚さ100nmの透明な防湿皮膜2を成膜した。これにより得られた光学部品1をサンプル1とする。
光学部品表面部および中心部の屈折率測定
上記の手順でサンプル1を複数個準備して、常温で湿度90%以上の雰囲気に12時間放置した。該雰囲気から取り出したサンプル1を液体窒素凍結法で割断し、各々表面部および中心部を代表する測定用の小片を採取した。表面部を代表する測定片は、レンズ(光学部品本体)10のレンズ部10aの表面から約0.5mm以内の部分から採取したものであり、中心部を代表する測定片はレンズ(光学部品本体)10の中心部分から約0.5mm以内の部分から採取したものである。なお、サンプルは、当該部分を容易に特定できるように、予め着色したものを使用した。採取した小片を乾燥窒素雰囲気下で室温まで戻し、続いてこの小片を熱質量分析装置(TGA)にかけて、80〜100℃、窒素雰囲気下で質量減少を求めた。TGAで測定された初期質量をW、乾燥後の質量をW0として下記式により吸水率を求めた。
吸水率=(W−W0)/W0×100(%)
上記により得られたW、W0および吸水率を以下に示す。
表面部 W=10.132mg、W0=10.122mg、吸水率=0.1%
中心部 W= 8.546mg、W0= 8.538mg、吸水率=0.09%
次に、得られた吸水率と図2に示すグラフを用いて、常温におけるサンプル1の表面部および中心部の屈折率を求めた。結果を以下に示す。
表面部の屈折率=1.5836、中心部の屈折率=1.5835
この結果から、サンプル1では、表面部および中心部の屈折率差が0.0001であることが確認された。
光学性能評価
上記手順で得たサンプル1を50℃の乾燥機に7日間入れて充分乾燥した後、図3に示す光学ユニット100に光学部品1’として組み込んだ。同様にアッベ数56のガラス製のレンズをレンズ20として光学ユニット100に組み込んだ。その後、レンズの向きと各レンズ間隔を微調整して、それぞれ所定の解像度を得た。次いで、光学ユニット100を25℃湿度30%の環境下に1週間放置した後、相対湿度90%、温度25℃の条件に置き、解像度の時間的変化を測定した。解像度測定には、トライオプティックス社製のMTF測定器を用いた。コントラスト50%のMTFとして解像度を測定した。周辺部の解像度は、接線(tangential)方向と、球欠(sagital)方向のMTFの平均値で表した。結果を表1に示した。
実施例2
スパッタリングの際にフランジ部10bにマスクをした点以外は実施例1と同様の手順で実施し、フランジ部10bを除いたポリカーボネート製のレンズ(光学部品本体)10の表面に厚さ100nmのケイ素酸化物層を防湿皮膜2として成膜し、サンプル2を得た。このサンプル2を光学部品10’として図3に示す光学ユニット100に組み込んで、実施例1と同様に光学性能評価を実施した。結果を表1に示した。
実施例3
本実施例では、ポリカーボネート製レンズ(光学部品本体)10の表面全体に防湿皮膜2として、塗布法により厚さ8μmの塩化ビニリデン層を成膜した。実際の手順としては、レンズ表面全体にアンダーコート剤(WS−5000:三井武田ケミカル社製) を塗布した後、80℃で30分乾燥させた。次いで、塩化ビニリデンラテックス(L551B:旭化成社製) を塗布し、110℃で30分乾燥させた。その後、35℃で2日放置して、厚さ8μmの透明な防湿皮膜2を成膜し、サンプル3を得た。なお、ここでいう厚さとは、アンダーコート層も含めた膜厚である。
得られたサンプル3について、実施例1と同様に光学部品表面部および中心部の屈折率を測定した。その結果、表面部および中心部から採取した測定用小片のW、W0、吸水率および屈折率は以下の通りであった。
表面部 W=11.427mg、W0=11.420mg、吸水率=0.06%
中心部 W=10.683mg、W0=10.676mg、吸水率=0.06%
表面部の屈折率=1.5834、 中心部の屈折率=1.5834
ここから、サンプル3の表面部および中心部の屈折率差が0であることが確認された。
また、サンプル3を光学部品1’として図3に示す光学ユニット100に組み込んで、実施例1と同様に光学性能評価を実施した。結果を表1に示した。
比較例
光学部品として、表面に防湿皮膜を形成していないポリカーボネート樹脂製レンズを使用して、実施例1と同様に光学部品表面部および中心部の屈折率を測定した。その結果、表面部および中心部から採取した測定用小片のW、W0、吸水率および屈折率は以下の通りであった。
表面部 W=10.755mg、W0=10.730mg、吸水率=0.23%
中心部 W= 9.548mg、W0= 9.538mg、吸水率=0.10%
表面部の屈折率=1.5839、中心部の屈折率=1.5836
ここから表面に防湿皮膜を形成しなかった比較例のレンズでは、表面部および中心部の屈折率差が0.0002以上であることが確認された。
上記のポリカーボネート製レンズをレンズユニット100に光学部品1’として組み込んで、実施例1と同様に光学性能評価を実施した。結果を表1に示した。
Figure 2006099094
表1から明らかなように、実施例1〜3の光学ユニットでは、解像度の測定開始から時間が経過しても、光学ユニットの中心部および周辺部のいずれにおいても、解像度の変化、すなわち低下が極めて少ないことが確認された。
これに対し、比較例の光学ユニットでは、測定開始から36時間後には、測定開始時点の解像度に戻るものの、測定開始12時間後および24時間後には、光学ユニットの中心部および周辺部のいずれにおいても、解像度が明らかに低下していることが確認された。
実施例4
本実施例では、ポリカーボネート製レンズ(光学部品本体)10の表面全体に防湿皮膜2として厚さ約100nmのケイ素窒化物(Si34)膜を形成する。ケイ素窒化物膜の形成には、インピーダンス制御による反応性スパッタリングを用いる。
ケイ素窒化物膜の形成は具体的には以下の手順で実施する。
真空槽内にポリカーボネート樹脂製のレンズ10をケイ素ターゲットと対面するように配置する。真空槽内の圧力が4×10-4Paになるまで排気した後、放電ガスであるアルゴンガスを真空槽内に導入する。放電ガス導入後、真空槽内の圧力を0.27Paとし、放電電源から7kWの成膜パワーを供給してプレスパッタを実施する。
プレスパッタ開始から5分経過した時点で、反応ガスとしてSiH4とNH3を1:3の供給比で供給する。インピーダンス制御により放電電圧を610Vに制御しつつ、最終的な成膜圧力を0.03Paまで下げ、レンズ10の表面全体に膜厚約100nmのケイ素窒化物(Si34)膜を形成してサンプル4を得る。
サンプル4について、実施例1と同様の手順で光学部品表面部および中心部の屈折率を測定すると、表面部および中心部の屈折率差が0.0002以下であることが確認される。また、サンプル4を光学部品1’として図3に示す光学ユニット100に組み込んで、実施例1と同様に光学性能評価を実施すると、解像度の測定開始から時間が経過しても、光学ユニットの中心部および周辺部のいずれにおいても、解像度の変化がないことが確認される。
実施例5
本実施例では、プラズマCVD法を用いて、ポリカーボネート製レンズ(光学部品本体)10の表面全体に防湿皮膜2として厚さ約100nmのケイ素窒化物(Si34)膜を形成する。
ケイ素窒化物膜の形成は具体的には以下の手順で実施する。
ポリカーボネート樹脂製のレンズ10を真空下、50℃で48時間乾燥した後、平行平板型容量結合方式のプラズマCVD装置のチャンバにセットし、0.4MPaでSiH4/N2=5/95のガスを流しながら13.56MHzの高周波でプラズマを発生させて、レンズ10の表面全体に膜厚約100nmのケイ素窒化物(Si34)膜を形成してサンプル5を得る。
サンプル5について、実施例1と同様の手順で光学部品表面部および中心部の屈折率を測定すると、表面部および中心部の屈折率差が0.0002以下であることが確認される。また、サンプル5を光学部品1’として図3に示す光学ユニット100に組み込んで、実施例1と同様に光学性能評価を実施すると、解像度の測定開始から時間が経過しても、光学ユニットの中心部および周辺部のいずれにおいても、解像度の変化がないことが確認される。
図1は、レンズの形状をした本発明のプラスチック製光学部品の一実施形態を示した概念図であり、図1(a)は該光学部品の正面図(光軸方向から見た図)であり、図1(b)は光軸を含む平面で切断した断面図である。 図2は、ポリカーボネート樹脂について、常温(25℃)における吸水率と屈折率の関係を示したグラフである。 図3は、本発明の光学部品を使用した光学ユニットの1実施形態の概略断面図(光軸を含む平面で切断)である。 図4は、図3に示す本発明の光学部品1’の形状を説明するための図であり、図4(a)は光学部品1’の正面図(光軸方向から見た図)であり、図4(b)は図3と同方向の断面図である。 図5は、本発明の光学ユニットと、オートフォーカス機構と、を用いた撮像モジュールの1構成例を示した概念図である。
符号の説明
1,1’:光学部品
10,10’:光学部品本体
10a,10’a:レンズ部
10b,10’b:フランジ部
2:防湿皮膜
20:レンズ
30:鏡筒
30a:リブ部
40:スペーサ
50:レンズ押さえ
100,100’:光学ユニット
200:イメージセンサ
300:AF処理部
400:アクチュエータ

Claims (3)

  1. 少なくとも外気接触面に防湿皮膜が形成されたプラスチック製光学部品であって、
    環境の変化により表面部および中心部での吸水率が変化を始めてから飽和吸水率に至る間の過渡期において、表面部および中心部の屈折率の差が0.0002以下であるプラスチック製光学部品。
  2. 互いにアッベ数が異なる少なくとも2つのレンズを含み、前記レンズの少なくとも1つは、請求項1に記載のプラスチック製光学部品である光学ユニット。
  3. オートフォーカス機構を有する請求項2に記載の光学ユニット。
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