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JP2006035775A - 制電性樹脂成形体 - Google Patents

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JP2006035775A JP2004222453A JP2004222453A JP2006035775A JP 2006035775 A JP2006035775 A JP 2006035775A JP 2004222453 A JP2004222453 A JP 2004222453A JP 2004222453 A JP2004222453 A JP 2004222453A JP 2006035775 A JP2006035775 A JP 2006035775A
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Masahito Sakai
将人 坂井
Chieko Uchiyama
千栄子 内山
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Takiron Co Ltd
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Abstract

【課題】耐アルコール類拭き取り性に富み、アルコール類を含んだワイピングクロス等で表面の拭き取り洗浄を繰り返しても表面抵抗率の上昇が少なく、実用上十分な制電性能を維持できる制電性樹脂成形体を提供する。
【解決手段】樹脂成形体1の少なくとも片面に接着層2aを介して制電層2bを積層した制電性樹脂成形体であって、上記制電層2bがバインダー樹脂2cと極細導電繊維3とからなり、且つ、バインダー樹脂2c中に硬化剤4が含有されている構成の制電性樹脂成形体とする。バインダー樹脂2cと硬化剤4との反応や硬化剤4それ自体により制電層2bが強化されてアルコール類で侵され難くなるため、アルコール類で表面の拭き取り洗浄を繰り返しても制電層2bの剥離が大幅に抑制され、制電層の剥離に伴う表面抵抗率の上昇が僅かになって実用上十分な当初の制電性能が維持される。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルコール類、特にイソプロピルアルコール(以下、IPAと記す)でワイピングクロス等による表面の拭き取り洗浄を繰り返しても、表面抵抗率の上昇が少ない制電性樹脂成形体に関する。
従来より、クリーンルームのパーティション、半導体・液晶製造に用いるキャリアーボックス、製造装置の外板のごとき塵埃を嫌う用途には、静電気を逃がして塵埃の付着を防止する制電性樹脂板が使用されている。また、クリーンルームのクリーン度を一定レベル以上に確保するために、クリーンルームの施工後若しくはクリーンルームの定期的なメンテナンスの際などには汚染分子を除去する作業が不可欠であり、パーティション(制電性樹脂板)をアルコール類等を含ませたワイピングクロス等で拭き取る作業が行われている。
かかる制電性樹脂板として、本出願人は、透明な熱可塑性樹脂基板の表面に、曲がりくねって絡み合う極細の長炭素繊維を含んだ透明な熱可塑性樹脂の制電層を形成してなる制電性樹脂板を提案した(特許文献1)。
特開2001−62952号公報
特許文献1に記載の制電性樹脂板は、表面抵抗率のバラツキが少なく、適度な制電性を有し、透明性も良好であるなど、多くの長所を有するものであったが、IPA等のアルコール類を含んだワイピングクロスで制電性樹脂板表面の拭き取り洗浄を繰り返すと、表面抵抗率が大幅に上昇して満足な制電性能(帯電防止性能)を発現し難くなる。この原因は、表面の制電層と基材との界面がアルコール類に侵されて劣化が促進され、基材から制電層が少しずつ剥離するためであると考えられる。
本発明は上記の問題に対処するためになされたもので、耐アルコール類拭き取り性に富み、アルコール類を含んだワイピングクロス等で表面の拭き取り洗浄を繰り返しても表面抵抗率の上昇が少なく、実用上十分な制電性能を維持できる制電性樹脂成形体を提供することを解決課題としている。
上記の課題を解決するため、本発明の制電性樹脂成形体は、樹脂成形体の少なくとも片面に接着層を介して制電層を積層した制電性樹脂成形体であって、上記制電層がバインダー樹脂と極細導電繊維とからなり、且つ、バインダー樹脂中に硬化剤が含有されていることを特徴とするものである。
本発明の制電性樹脂成形体においては、硬化剤がバインダー樹脂中に2〜20質量%含有されていることが望ましい。また、バインダー樹脂が塩化ビニル系樹脂であり、硬化剤がポリイソシアネートであることも望ましい。更に、制電層の極細導電繊維が1本ずつ分離した状態で、若しくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で、凝集することなく分散して互いに接触していることが望ましく、特に、極細導電繊維がカーボンナノチューブであることが望ましい。なお、本発明において「接触」とは、極細導電繊維が現実に接触している場合と、極細導電繊維が導通可能な微小間隔をあけて近接している場合の双方を意味する用語である。
本発明の制電性樹脂成形体のように、制電層のバインダー樹脂中に硬化剤が含有されていると、バインダー樹脂と硬化剤との反応や硬化剤それ自体により制電層が強化されてアルコール類で侵され難くなるため、IPA等のアルコール類で表面の拭き取り洗浄を繰り返しても、接着層までアルコール類が浸透して接着層の劣化により制電層が剥離することは大幅に抑制される。従って、制電層の剥離に伴う表面抵抗率の上昇は僅かになり、実用上十分な当初の制電性能が維持される。このような作用効果は、制電層のバインダー樹脂中に硬化剤が2〜20質量%含有されている制電性樹脂成形体において顕著である。
そして、制電層のバインダー樹脂が塩化ビニル系樹脂であり、硬化剤がポリイソシアネートである制電性樹脂成形体では、ポリイソシアネートが塩化ビニル系樹脂に起因する水酸基とウレタン結合して網目構造が形成されることによりバインダー樹脂部分がかなり強化されるため、IPA等のアルコール類による拭き取り洗浄を繰り返しても、制電層の剥離に伴う表面抵抗率の上昇を十分抑えることができる。
また、制電層の極細導電繊維が1本ずつ分離した状態で、若しくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で、凝集することなく分散して互いに接触している制電性樹脂成形体は、極細導電繊維の含有量を少なくしても極細導電繊維が相互に接触して十分な制電性能を発揮できるため、透明な制電性樹脂成形体を得る場合に有利であり、特に、極細導電繊維がカーボンナノチューブである場合は、該カーボンナノチューブが細くて長いため、相互に接触して充分な制電性を維持しながら含有量をさらに少なくして透明性を向上させる上で極めて有利である。
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
図1は本発明の一実施形態に係る制電性樹脂成形体を一部拡大して示す模式断面図である。
この実施形態は透明な板状の制電性樹脂成形体を示したもので、基本的には、透明な板状の樹脂成形体1と、その表面に積層された接着層2aと制電層2bとで構成されている。
樹脂成形体1は透明な熱可塑性樹脂や、熱、紫外線、電子線、放射線などで硬化する硬化性樹脂を板状に成形したものであって、熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等のビニル系樹脂、ニトロセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリジメチルシクロヘキサンテレフタレート、芳香族ポリエステル等のエステル系樹脂、ABS樹脂、これらの樹脂の共重合体樹脂、これらの樹脂の混合樹脂などが使用され、また、硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂などが使用される。この樹脂成形体1には可塑剤、安定剤、紫外線吸収剤等が適宜配合され、成形性、熱安定性、耐候性等が高められる。この樹脂成形体1は用途に応じた厚さとすればよく、例えばフィルム並びにプレートの通常の厚さである0.03〜10mm程度とするのがよい。
この実施形態では、樹脂成形体1を透明な板状体に成形しているが、それ以外の異型形状に成形してもよく、また、フィラーや着色剤を配合して不透明にしてもよい。
この樹脂成形体1の表面に積層された接着層2aと制電層2bは、本実施形態では、これらが積層一体化された制電性フィルム2として提供され、ラミネートなどの方法で積層されたものである。つまり、接着性樹脂のフィルムの表面に制電層を設けた制電性フィルム2を樹脂成形体1の表面に積層することにより、該接着性樹脂のフィルムを接着層2aとしたものである。
上記のように、接着層2aは接着性樹脂のフィルムからなるものであり、このようなフィルムとしては、上述した樹脂成形体1と同種もくしは相溶性のある熱可塑性樹脂からなる透明なフィルムが好ましく、その代表的なものとしては、接着性に優れるアクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂のいずれか単独又はこれらの混合樹脂からなるフィルムが挙げられる。このように、接着層2aとして接着性樹脂のフィルムを使用すると、その上に制電層2bを積層した制電性フィルム2を、例えば、熱圧着や押出ラミネートや転写等の手段によって樹脂成形体1の表面に容易かつ強固にラミネートすることが可能となり、それによって制電層2bを樹脂成形体1の表面に接着層2aを介して大きい接着強度で積層一体化できるようになる。この場合、接着層2aの厚さは特に限定されないが、制電性フィルム2のベースフィルムとしての強度を有する50〜250μm程度の厚さの接着層フィルム2aを使用することが好ましい。
接着層3の上に積層された制電層2bは、接着層2aとの相溶性があるバインダー樹脂2cと極細導電繊維3とからなる透明な層であって、このバインダー樹脂2cには硬化剤4が含有されている。そして、極細導電繊維3は1本ずつ分離した状態で、もしくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で、凝集することなく分散して互いに接触している。すなわち、図2(A)に示すように、極細導電繊維3はバインダー樹脂2cの内部に埋没して上記の分散状態で分散して互いに接触しているか、或は、図2(B)に示すように、極細導電繊維3の一部がバインダー樹脂2cに入り込み、他の部分がバインダー樹脂2cの表面から突出ないし露出して、上記の分散状態で分散して互いに接触しているか、或は、一部の極細導電繊維3が図2(A)のようにバインダー樹脂2cの内部に埋没し、他の極細導電繊維3は図2(B)のようにバインダー樹脂2cの表面から突出ないし露出した状態で分散して互いに接触している。
この極細導電繊維3の平面的な分散状態を模式的に示したものが図3である。この図3から理解できるように、極細導電繊維3は多少曲がっているが1本ずつ或は1束ずつ分離し、互いに複雑に絡み合うことなく、即ち凝集することなく、単純に交差した状態で制電層2bのバインダー樹脂2cの内部又は表面に分散し、それぞれの交点で接触している。このように分散していると、凝集している場合に比べて、極細導電繊維3が解れて広範囲に存在し、極細導電繊維同士の接触する機会が著しく増加するため、極細導電繊維3の含有量を少なくしても、制電層2bが実用上十分な制電性を発揮できるようになる。従って、極細導電繊維3の量が少なくなった分だけ透明性が向上し、また、制電層2bを薄くすることもできるので一層透明性を向上させることができる。更に、上記のような分散状態であると、制電性樹脂成形体を曲げ加工した場合でも、極細導電繊維3の曲がった部分が伸びたり、たとえ接触点が外れても他の極細導電繊維3と再接触するので、極細導電繊維3同士の接触がなくなり表面抵抗率が低下する心配もない。なお、図3では硬化剤4が図示されていない。
上記の極細導電繊維3は完全に1本ずつ或は1束ずつ分離し分散している必要はなく、一部に絡み合った小さな凝集塊があってもよいが、その大きさは制電層2bを光学顕微鏡で観察し、凝集している塊があれば、その長径と短径とを測定し、その平均値が0.5μm以下であることが好ましい。
制電層2bの厚みは30〜500nmと薄くすることが好ましく、このように薄く形成しても極細導電繊維3の接触が実用上十分な制電性を発揮できる程度に十分に保たれるうえに、透明性も高められることになる。制電層2bの更に好ましい厚みは50〜300nmである。
極細導電繊維3としては、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細長炭素繊維、或いは、白金、金、銀、ニッケル、シリコンなどの金属ナノチューブ、ナノワイヤなどの極細長金属繊維、或いは、酸化亜鉛などの金属酸化物ナノチューブ、ナノワイヤなどの極細長金属酸化物繊維など、直径が0.3〜100nmで長さが0.1〜20μm、好ましくは長さが0.1〜10μmである極細導電繊維が好ましく用いられる。
これらの極細導電繊維の中では、カーボンナノチューブが最も好ましく使用される。このカーボンナノチューブには、中心軸線の周りに直径が異なる複数の円筒状に閉じたカーボン壁を同心的に備えた多層カーボンナノチューブや、中心軸線の周りに単独の円筒状に閉じたカーボン壁を備えた単層カーボンナノチューブがあるが、いずれも好ましく使用される。多層カーボンナノチューブは1本ずつ分離した状態で分散するものが殆どであるが、2〜3層カーボンナノチューブは、束になって分散する場合もある。一方、単層カーボンナノチューブは単独で存在することがなく、2本以上が束になった状態で存在し、その束が1束ずつ分離した状態で分散する。
制電層2b中の極細導電繊維3の含有量は、制電性能を得るために2〜90質量%とする必要があり、より好ましい含有量は4〜30質量%の範囲である。極細導電繊維3の含有量を2質量%より少なくした場合、制電層の厚みを500nmとしても、表面抵抗率が10Ω/□〜1011Ω/□の実用上十分な制電性を有する樹脂成形体を得ることが難しくなるので好ましくない。他方、極細導電繊維3の含有量を90質量%より多くした場合は、極細導電繊維を十分に分散させることが困難になり、又は塗液の分散安定性が極度に低下するので好ましくない。また、制電層2bの厚みは20〜500nmとする必要があり、より好ましい厚みは50〜300nmの範囲である。制電層2bの厚みが20nmより小さいと、制電層2bが均一に層を形成せず実用上十分な制電性を発現しないので好ましくない。
制電層2bのバインダー樹脂2cとしては、接着層2aと同種又は相溶性のある樹脂が使用される。従って、接着層2aが前述の塩化ビニル系樹脂層やアクリル系樹脂である場合は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(酢酸ビニルの占める割合が20質量%以下のもの)、塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との混合樹脂(酢酸ビニル樹脂の占める割合が20質量%以下のもの)などの塩化ビニル系樹脂等の樹脂が好ましく使用される。
制電層2bのバインダー樹脂2c中に含有される硬化剤4は、制電層2bを強化して耐アルコール類拭き取り性を向上させる役目を果たすものであり、例えばバインダー樹脂2cと反応して架橋する硬化剤や、硬化性の樹脂などが使用される。
バインダー樹脂2cが前述した塩化ビニル系樹脂である場合、これと反応する硬化剤4としてはポリイソシアネート、例えば、2,4―トリレンジイソシアネートとその異性体又は異性体の混合物等のジイソシアネート類が好ましく使用される。かかるイソシアネート化合物を含有させると、該イソシアネート化合物が塩化ビニル系樹脂に起因する水酸基とウレタン結合して網目構造が形成されることにより、バインダー樹脂部分が強化されて制電層2bがアルコール類で侵され難くなるため、IPA等のアルコール類で表面の拭き取り洗浄を繰り返しても、接着層2aまでアルコール類が浸透して接着層2aの劣化により制電層2bが剥離することは大幅に抑制され、制電層の剥離に伴う表面抵抗率の上昇が僅かになって、実用上十分な当初の制電性能が維持される。
また、制電層2bのバインダー樹脂2cに硬化剤4として含有させる硬化性樹脂としては、自然硬化型、光硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型、熱硬化型などのいずれの樹脂も使用可能であり、これらの硬化性樹脂をバインダー樹脂中に均等に含有させて強化すると、上記の反応型の硬化剤と同様に、IPA等のアルコール類による制電層2bの劣化、浸透が抑制されて表面抵抗率の上昇が少なくなる。具体的な硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化アクリル樹脂等が好ましく使用される。
上記硬化剤4の含有量は、制電層2bのバインダー樹脂2cに対して2〜20質量%とすることが好ましい。2質量%未満では、制電層強化によるアルコール類の浸透抑制作用が不十分で表面抵抗率の上昇抑制効果が殆ど見られなくなり、一方、20質量%を越えると、バインダー樹脂2cに起因する反応基以上の含有量となつたり、硬化性樹脂による強化が見られず材料の無駄遣いとなる。
制電層2bの形成は、上記のバインダー樹脂を揮発性溶剤に上記の極細導電繊維を均一に分散させ更に上記の硬化剤を加えて塗液を調製し、この塗液を接着層2a(接着性樹脂のフィルム)の表面に塗布して乾燥固化させることが望ましい。その場合、制電性に優れた制電層2bを形成するには、極細導電繊維を非常に細かく均一に分散させた塗液を調製する必要があるので、高速インぺラー、サンドミル、アトライター、三本ロール、その他公知の方法・装置で十分に混合、分散させることが大切である。
また、制電層2b中の極細導電繊維3の分散性を高めるためには、分散剤を配合することが望ましい。かかる分散剤としては、酸性ポリマーのアルキルアンモニウム塩溶液や3級アミン修飾アクリル共重合物やポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物などの高分子系分散剤、カップリング剤などが使用される。なお、この制電層2cには紫外線吸収剤、表面改質剤、安定剤等の添加剤を適宜加えて、耐候性その他の物性を向上させてもよい。
上記構成の制電性樹脂成形体は、例えば次の方法で製造される。まず、接着性樹脂から作製されたフィルム(接着層2aとなるフィルム)の表面に、極細導電繊維をバインダー樹脂溶液に分散させ更に硬化剤を加えて調製した塗液を塗布、乾燥して制電層2bを形成することにより、制電性フィルム2を作製する。そして、この制電性フィルム2を熱圧着、押出ラミネート、接着などの手段で樹脂成形体1の表面にラミネートして、制電性樹脂成形体を製造する。
もう一つの方法は、剥離フィルムの上に、極細導電繊維をバインダー樹脂溶液に分散させ更に硬化剤を加えて調製した塗液を塗布、乾燥して制電層2bを形成し、その上に接着性樹脂からなる樹脂溶液を塗布、乾燥して接着層2aを形成することにより、転写フィルムを形成する。そして、樹脂成形体1の表面に転写フィルムをその接着層2aが樹脂成形体側となるように重ねて熱圧着、転写することにより制電性樹脂成形体を製造する方法である。
このようにして製造される制電性樹脂成形体は、樹脂成形体1の表面に接着層2aを介して積層された制電層2bが、そのバインダー樹脂2cに含有された硬化剤4により強化されてアルコール類に侵され難いため、IPA等のアルコール類で表面の拭き取り洗浄を繰り返しても、接着層2aまでアルコール類が浸透して接着層2aの劣化により制電層2bが剥離することは大幅に抑制される。そのため、耐アルコール類拭き取り性が向上して、制電層2bの剥離に伴う表面抵抗率の上昇は僅かになり、実用上十分な当初の制電性能を維持することができる。しかも、制電層2bの極細導電繊維3が1本ずつ分離した状態で、又は、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で、凝集することなく分散して互いに接触しているため、この制電性樹脂成形体は、極細導電繊維3の含有量を少なくしても極細導電繊維相互の接触を確保して充分な制電性を発現することができ、極細導電繊維3を減量できる分だけ透明性を向上させることができる。
なお、本実施形態の制電性樹脂成形体は、樹脂成形体1の表面に接着層2aと制電層2bを積層したものであるが、さらに制電層2bの上に薄い樹脂のトップコート層を形成してもよい。かかるトップコート層を形成しても制電層2bによる制電性能が発現されて、制電性を有する成形体とすることができる。
次に、本発明に係る制電性樹脂成形体の更に具体的な実施例を説明する。
[実施例1]
溶媒(シクロヘキサノン)中に、バインダー樹脂として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの占める割合が10質量%のもの)を溶解すると共に、単層カーボンナノチューブ[文献Chemical Physics Letters,323(2000),P580−585に基づいて合成したもの、直径1.3〜1.8nm]と、分散剤として酸性ポリマーのアルキルアンモニウム塩溶液を加えて均一に混合、分散させ、更にジイソシアネート類硬化剤としてXOX80ハードナー(大日本インキ化学工業株式会社製)を配合して、単層カーボンナノチューブを0.3質量%、分散剤を0.1質量%、バインダー樹脂を2.0質量%、ジイソシアネート類硬化剤を0.1質量%含む塗液(以下、硬化剤含有CNT塗液と記す)を調製した。
そして、接着層となるフィルムとして厚み100μm、全光線透過率94%、ヘーズ0.6%のポリメチルメタクリレートフィルム(PMMAフィルム)を使用し、その表面に上記の硬化剤含有CNT塗液を塗布して50℃で60分加熱しながら硬化剤をバインダー樹脂と反応させることにより,厚み240nmの制電層(バインダー樹脂に対する硬化剤の含有率は5質量%)を形成して、制電性フィルムを作製した。
この制電性フィルムを、厚み5.0mmのポリカーボネート樹脂板(全光線透過率89.5%、ヘーズ0.2%)の表面に重ねて熱圧着することにより、制電層のバインダー樹脂中に硬化剤を5質量%含む透明な制電性樹脂板を製造した。
上記の制電性樹脂板について、表面抵抗率、全光線透過率、ヘーズを測定した結果を下記の表1に示す。また、この制電性樹脂板の表面(制電層表面)をIPAを含ませたワイピングクロスで拭き取る作業を繰り返し、100回、200回、300回後の表面抵抗率、全光線透過率、ヘーズを測定して、その結果を下記の表1に併記する。
尚、表面抵抗率は三菱化学(株)製のハイレスタで測定した値であり、全光線透過率とヘーズはASTM D1003に準拠してスガ試験機(株)製の直読ヘーズコンピューターHGM−2DPで測定した値である。
[実施例2]
実施例1の硬化剤含有CNT塗液のジイソシアネート類硬化剤の配合量を0.1質量%から0.2質量%に変更した以外は実施例1と同じ組成の硬化剤含有CNT塗液を調製し、実施例1と同様にして、制電層のバインダー樹脂中に硬化剤を10質量%含む制電性樹脂板を製造した。そして、この制電性樹脂板について、実施例1と同様に表面抵抗率、全光線透過率、ヘーズを測定すると共に、IPAを含ませたワイピングクロスで拭き取る作業を100回、200回、300回繰り返した後の表面抵抗率、全光線透過率、ヘーズを測定して、その結果を下記の表1に併記した。
実施例1の硬化剤含有CNT塗液のジイソシアネート類硬化剤の配合量を0.1質量%から0.3質量%に変更した以外は実施例1と同じ組成の硬化剤含有CNT塗液を調製し、実施例1と同様にして、制電層のバインダー樹脂中に硬化剤を15質量%含む制電性樹脂板を製造した。そして、この制電性樹脂板について、実施例1と同様に表面抵抗率、全光線透過率、ヘーズを測定すると共に、IPAを含ませたワイピングクロスで拭き取る作業を100回、200回、300回繰り返した後の表面抵抗率、全光線透過率、ヘーズを測定して、その結果を下記の表1に併記した。
[比較例1]
ジイソシアネート類硬化剤を含まない点を除いて実施例1と同じ組成のCNT塗液を調製し、実施例1と同様にして、制電層のバインダー樹脂中に硬化剤を含まない制電性樹脂板を製造した。そして、この制電性樹脂板について、実施例1と同様に表面抵抗率、全光線透過率、ヘーズを測定すると共に、IPAを含ませたワイピングクロスで拭き取る作業を100回、200回、300回繰り返した後の表面抵抗率、全光線透過率、ヘーズを測定して、その結果を下記の表1に併記した。
Figure 2006035775
表1から、制電層のバインダー樹脂中にジイソシアネート類硬化剤を含まない比較例1の制電性樹脂板は、当初の表面抵抗率が10Ω/□オーダーで実施例1〜3の制電性樹脂板のそれと大差ないにも拘わらず、IPAを含浸させたワイピングクロスを用いた拭き取り回数が多くなるに従って表面抵抗率が急増し、300回の拭き取り作業を行ったときには、表面抵抗率が1014Ω/□以上にまで上昇して、制電性能を発揮できないことが分かる。
これに対し、制電層のバインダー樹脂中にジイソシアネート類硬化剤をそれぞれ5質量%、10質量%、15質量%含んだ実施例1〜3の制電性樹脂板は、拭き取り回数が多くなるに従って表面抵抗率が増加するというものの、その増加は緩やかであり、300回の拭き取り作業を行っても表面抵抗率が10Ω/□〜1011Ω/□オーダーの範囲にあって、実用上十分な制電性能を発揮できることが分かる。特に、ジイソシアネート類硬化剤を10質量%含んだ実施例2の制電性樹脂板は表面抵抗率の増加が緩やかで、300回の拭き取り作業を行っても表面抵抗率が10Ω/□オーダーであり、耐アルコール類拭き取り性が顕著である。
以上のことから、ジイソシアネート類硬化剤を制電層のバインダー樹脂中に含有させることは、制電層の耐アルコール類拭き取り性を高め、表面抵抗率の上昇を抑えるのに有効であり、特に硬化剤を10質量%前後の含有率で含有させると優れた耐アルコール類拭き取り性を発揮することが分かる。
また、実施例1〜3の制電性樹脂板及び比較例1の制電性樹脂板はいずれも、当初の全光線透過率が82.5%以上、当初のヘーズが6.5%以下であり、CNTを含んだ制電層を形成しているにも拘わらず透明性が良好である。これは、CNTが十分に分散して接触導通する結果、CNTの含有量を減らすことができたからである。
さらに、制電層のバインダー樹脂中にジイソシアネート類硬化剤を含有させた実施例1〜3の制電性樹脂板は、該硬化剤を含まない比較例1の制電性樹脂板に比べてヘーズが低くなっており、このことから、硬化剤を含有させることは、ヘーズを低下させて透明性を高める上でも有利であることがわかる。
本発明の一実施形態に係る制電性樹脂成形体を一部拡大して示す模式断面図である。 (A)は制電層内部における極細導電繊維の分散状態を示す模式断面図であり、(B)は制電層表面における極細導電繊維の分散状態を示す模式断面図である。 制電層における極細導電繊維の平面的な分散状態を示す模式平面図である。
符号の説明
1 樹脂成形体
2 制電性フィルム
2a 接着層
2b 制電層
2c バインダー樹脂
3 極細導電繊維
4 硬化剤

Claims (5)

  1. 樹脂成形体の少なくとも片面に接着層を介して制電層を積層した制電性樹脂成形体であって、上記制電層がバインダー樹脂と極細導電繊維とからなり、且つ、バインダー樹脂中に硬化剤が含有されていることを特徴とする制電性樹脂成形体。
  2. 硬化剤がバインダー樹脂中に2〜20質量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載の制電性樹脂成形体。
  3. バインダー樹脂が塩化ビニル系樹脂であり、硬化剤がポリイソシアネートであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制電性樹脂成形体。
  4. 制電層の極細導電繊維が1本ずつ分離した状態で、若しくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で、凝集することなく分散して互いに接触していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の制電性樹脂成形体。
  5. 極細導電繊維がカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1ないし
    請求項4のいずれかに記載の制電性樹脂成形体。
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