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JP2005314830A - ポリアクリロニトリル系炭素繊維及びその製造方法 - Google Patents

ポリアクリロニトリル系炭素繊維及びその製造方法 Download PDF

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JP2005314830A JP2004132618A JP2004132618A JP2005314830A JP 2005314830 A JP2005314830 A JP 2005314830A JP 2004132618 A JP2004132618 A JP 2004132618A JP 2004132618 A JP2004132618 A JP 2004132618A JP 2005314830 A JP2005314830 A JP 2005314830A
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Hiroyuki Sato
弘幸 佐藤
Yoshinobu Suzuki
慶宜 鈴木
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Teijin Ltd
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Toho Tenax Co Ltd
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Abstract

【課題】 樹脂との濡れ性が向上し、層間剪断強度(ILSS)等のコンポジットとしての性能が高い、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を提供する。
【解決手段】 ストランド強度が4600〜5800MPa、弾性率が220〜250GPa、密度が1.74g/cm3以上1.80g/cm3未満、且つ珪素を含有するPAN系炭素繊維であって、その含有された珪素がSiOx(1≦x≦3)構造を有し、その含有量が元素珪素として、当該炭素繊維質量の110〜500ppmであるPAN系炭素繊維とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂と炭素繊維を複合化してコンポジットを作製する際に用いる、界面特性に優れたポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維及びその製造方法に関する。
炭素繊維の製造方法としては、原料繊維にPAN系前駆体繊維(プリカーサー)を使用し、耐炎化処理及び炭素化処理を経て炭素繊維を得る方法が広く知られている。このようにして得られた炭素繊維は、高い比強度、比弾性率など良好な特性を有している。
近年、炭素繊維を利用した複合材料の工業的な用途は、多目的に広がりつつある。特にスポーツ・レジャー分野、航空宇宙分野、自動車分野においては、(1)より高性能化(高強度化、高弾性化)、(2)より軽量化(繊維軽量化及び繊維含有量低減)、(3)複合した際のより高いコンポジット物性の発現性向上(炭素繊維表面・界面特性の向上)に向けた要求が強まっている。
炭素繊維と樹脂との複合化において高性能化を追求する為には、樹脂が有する特性も重要であるが、炭素繊維そのもの自体の表面特性を向上させることが必要不可欠である。つまり、炭素繊維表面の樹脂に対する濡れ性の向上を図った炭素繊維を用いて樹脂と複合化し、樹脂と炭素繊維をより均一に分散することで、複合材料のより高性能なもの(高強度、高弾性)を得ることができる。
また、高いコンポジット物性の発現性向上が図れれば、コンポジット中の炭素繊維の配合比率を、従来のものよりも少なくすることができる。これにより、原材料の値段において炭素繊維の値段が樹脂の値段よりも高いので、コンポジットとしての軽量化や低コスト化を図ることができる。
特に、最近では炭素繊維及び複合材料の高性能化のみでなく、低コスト化もユーザーから強く要望されており、高性能を有する炭素繊維及び複合材料を安価に効率よく生産することが望まれている。
一方のユーザー要望事項である炭素繊維の強度や品位の向上を図るには、炭素繊維の表面欠陥を減少させることが望ましい。炭素繊維製造過程で発生した表面欠陥をその発生後に除去する方法として、炭素繊維表面をエッチング処理などの表面処理を施すことにより表面欠陥を除去する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
このような表面欠陥の除去方法により、炭素繊維のストランド強度は向上する。しかし、表面欠陥の発生後除去は後処理設備が複雑で煩雑になり、他方のユーザー要望事項である低コスト化に反するため、実用化は難しいと考えられる。
表面欠陥の発生後除去ではなく、表面欠陥の発生を未然に防ぐ手法として、プリカーサーの紡糸油剤にアミノシリコーン系油剤を用いる手法がある。この油剤を用いる従来技術としては、例えば特許文献2に開示されているように、プリカーサーを乾燥緻密化した後に、シリコーン系油剤を付与し、表面近傍のみに油剤を存在させることで、油剤を繊維内部に奥深く浸透させずに高強度の繊維を得る技術がある。
しかし、表面近傍のみに油剤を塗布してなる繊維の場合には、焼成過程で油剤が空気酸化、加熱分解、不活性ガス雰囲気下での加熱分解、熱反応により、最終的に得られる炭素繊維は、窒化珪素誘導体構造に起因した表面構造のものが多くなる。この炭素繊維を将来樹脂と複合した場合、樹脂との濡れ性が低下し、コンポジットとしての強度が低下する。
また、窒化珪素誘導体構造が形成した表面は、それが多く形成していない表面と比較して脆性な表面構造となり、欠陥が発生しやすく、将来炭素繊維の強度や品位(毛羽の抑制)に悪影響を及ぼすことが懸念される。
特開昭61−225330号公報 (特許請求の範囲) 特開2000−136485号公報 (特許請求の範囲)
本発明者等の1人は、上記問題を解決するために種々検討しているうちに、プリカーサーの製造過程で、乾燥緻密化前にアミノシリコーン油剤を付与し、乾燥緻密化後にはシリコーン系油剤を付与しないで製造したプリカーサーを耐炎化処理、次いで炭素化処理することにより、従来の汎用炭素繊維と同等の性能(強度、弾性率)を有し、且つ軽量なコンポジットの原料として適した低密度PAN系炭素繊維が得られることを知得し、先に出願した(特願2003−24730)。
しかし、このPAN系炭素繊維の性能、例えばコンポジットとした時の層間剪断強度(ILSS)等の性能は、あまり高くない。そこで、本発明者等は、更なる性能向上のために検討を重ねるうちに、乾燥緻密化前にアミノシリコーン油剤を付与し、乾燥緻密化後にはシリコーン系油剤を付与しないで且つ密度を低下させずに製造したPAN系炭素繊維は、耐炎化焼成過程で油剤が空気酸化、加熱分解しにくいことを知得した。
しかも、炭素化焼成過程における不活性ガス雰囲気下での加熱分解、熱反応で表面に窒化珪素誘導体構造が形成しにくく、その代わりにSiOx構造が形成される。更に、炭素化焼成後表面処理することにより、シラノール基(Si−OH)等が形成したPAN系炭素繊維が得られる。この表面特性が改善されたPAN系炭素繊維を樹脂と複合した場合、樹脂との濡れ性が向上し、層間剪断強度(ILSS)等のコンポジットとしての性能を向上できることを、本発明者等は知得し、本発明を完成するに到った。
よって、本発明の目的とするところは、上記問題を解決した、表面特性が改善されたPAN系炭素繊維及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
[1] ストランド強度が4600〜5800MPa、弾性率が220〜250GPa、密度が1.74g/cm3以上1.80g/cm3未満、且つ珪素を含有するポリアクリロニトリル系炭素繊維であって、その含有された珪素がSiOx(1≦x≦3)構造を有し、その含有量が元素珪素として、当該炭素繊維質量の110〜500ppmであるポリアクリロニトリル系炭素繊維。
[2] 炭素繊維ストランドの単繊維平均直径が6〜8μmであり、炭素繊維ストランドの電気抵抗値が29〜32Ω・g/m2、且つ、X線光電子分光法により測定される表面珪素量(Si)を示すSi/Cが0.10〜0.15、表面酸素量(O)を示すO/Cが0.15〜0.30である[1]に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維。
[3] X線光電子分光法により測定されるSiの結合エネルギーのピークが102〜104eVの範囲に存在する珪素を含む構造を、表面に有する[1]又は[2]に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維。
[4] アクリロニトリルを94質量%以上含有する単量体を重合した共重合体を紡糸して得られた糸を、油剤としてアミノ変性シリコーン及びジアルキルスルホサクシネートを含むエマルジョン水溶液を乾燥質量で0.1〜0.3%付着させた後、70〜150℃の乾燥機で乾燥緻密化後、温度100〜130℃、延伸比4.0〜7.0の条件で湿熱延伸処理して単繊維繊度0.96〜1.2dの炭素繊維用前駆体繊維を得、得られた前駆体繊維を、そのまま加熱空気中230〜290℃、延伸比1.02〜1.08で熱処理して耐炎化繊維を得、得られた耐炎化繊維を、不活性ガス雰囲気中で昇温し、最高温度領域で550〜750℃、延伸比1.01〜1.07で予備炭素化し、更に不活性ガス雰囲気中で昇温し、最高温度領域で1180〜1320℃、延伸比0.90〜1.00で炭素化し、水溶液中で炭素繊維1g当り電気量15クーロン以上の電解酸化法により表面処理することを特徴とするポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
[5] 炭素繊維用前駆体繊維の水分率が20〜60質量%である[4]に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
本発明によれば、樹脂と複合した場合、樹脂との濡れ性が向上し、層間剪断強度(ILSS)等のコンポジットとしての性能を向上できる、表面特性が改善されたPAN系炭素繊維及びその製造方法を提供することができる。
以下は、本発明について更に詳しく説明する。
[表面特性を改善したPAN系炭素繊維]
本発明の表面特性が改善されたPAN系炭素繊維(以下、『炭素繊維』と略記することがある)は、ストランド強度が4600〜5800MPa、弾性率が220〜250GPa、密度が1.74g/〜1.80g/cm3、且つ珪素を含有するPAN系炭素繊維であって、その含有珪素が、SiOx(1≦x≦3)構造を有し、珪素としての含有量が、当該炭素繊維質量の110〜500ppmであることを特徴とする。
本発明の炭素繊維は、従来の汎用タイプの炭素繊維に比較して、ストランドの強度、弾性率、伸度、密度が同等の性能を有し、且つ表面近傍に炭素繊維前駆体繊維の製造過程で付与したシリコーン系油剤の影響で珪素が、当該炭素繊維質量の110〜500ppm含有される。
上記炭素繊維ストランドは、単繊維径の平均が6〜8μmであり、炭素繊維ストランドの電気抵抗値が29〜32Ω・g/m2であり、且つ、X線光電子分光法により測定される表面珪素量(Si)を示すSi/Cが0.10〜0.15であることが好ましい。更に、X線光電子分光法により測定される表面酸素量(O)を示すO/Cは0.15〜0.30が好ましく、0.21〜0.30が特に好ましい。
炭素繊維を製造する上で、不活性ガス雰囲気、特に窒素雰囲気のもとで、1500℃以下で炭素化する。その際の焼成温度は、炭素繊維の内部構造、特にグラファイト化成長に大きな影響を与え、また、同時にガスとして分解、例えばアンモニアとして分解し、表面近傍に残る珪素の含有率や珪素を含む構造が異なっていく。
炭素繊維表層部のグラファイト構造を簡便に評価する手法として、1m当りの電気抵抗値の値で代用することができる。炭素繊維は繊維内部にグラファイト構造を有しているため、電気伝導性を示す。この内部のグラファイト構造が発達するにつれて、電気伝導性が高くなっていく。特に電子は炭素繊維のより表面付近に流れ易いため、炭素繊維表面付近のグラファイト構造の成長を示す指標として、電気抵抗値を用いることがある。この電気抵抗値は、より高温で焼成された炭素繊維ほど、表面付近のグラファイト構造が成長し、電子が移動しやすいために、電気抵抗値が低い値を示す関係にある。
この電気抵抗値が低い場合、つまりより高温で炭素化した場合、繊維表面に残存する炭素繊維前駆体繊維に使用した油剤に由来した珪素化合物が熱により分解、また繊維内部から発生するガス、特にアンモニア若しくはその同類化合物によって反応が生じ、目的の含有珪素構造、SiOx(1≦x≦3)構造を有せず、代わりに、窒化珪素誘導体構造が形成して、表面特性が改善できない炭素繊維が得られる。
電気抵抗値が高い場合、即ちより低温で炭素化した場合、炭素繊維内部の構造、特にグラファイト構造の成長がそれほど進まないことによって、得られる炭素繊維の性能、例えば、ストランド強度、弾性率、密度の低下を招き好ましくない。また、炭素繊維表面により多くの含有珪素構造、SiOx(1≦x≦3)構造が層として厚く形成(残存)してしまう。このSiOx(1≦x≦3)構造を有する厚い珪素含有層が、将来得られた炭素繊維と樹脂とを複合化した際に、コンポジット物性の低下を招き好ましくない。
炭素繊維内部の高次構造から見ると、珪素が含有した層が厚く存在する、即ち不純な構造が表面に多く存在すると、炭素繊維内部の構造との乖離が大きくなり、表面に欠陥が生じやすくなり好ましくない。また、炭素繊維の密度が大きくなってしまい好ましくない。従って、電気抵抗値は29〜32Ω・g/m2の範囲が特に好ましい。
このように、電気抵抗値に代表される、焼成度合いは、炭素繊維表面の含有珪素構造、SiOx(1≦x≦3)構造に大きな影響を与える。
なお、炭素繊維前駆体繊維の製造過程で、工程安定性や、後の焼成時、特に耐炎化工程での工程安定性や膠着発生を抑制する目的で種々の油剤を付与し、繊維表面に皮膜を形成させる。この油剤の付与による皮膜の形成は、耐炎化時における、繊維内部への酸素透過性に影響を与える。また、繊維内部から発生する分解ガスの放出にも影響を与える。したがって、耐炎化糸の構造に大きな影響を与えるので、付与する油剤の種類(構造)や付着量を後述する条件に制御する必要がある。
一般の炭素繊維の製造方法では、耐炎化時に、より空気中高温で熱処理すると、耐炎化糸の比重が増加するに伴い、分子内環化は進み、酸素の付加率も高くなっていく。しかし、本発明では、特定の油剤を炭素繊維前駆体繊維の製造過程で、乾燥緻密化前に付与し、表面近傍に浸透させて耐炎化し、第一炭素化炉での初期炭素化、第二炭素化炉で炭素化する際の温度を的確に制御することにより、従来の汎用炭素繊維が有する繊維特性を有し、更には表面特性の優れた炭素繊維を得ることができる。
本発明の炭素繊維の原料であるPAN系炭素繊維の炭素繊維用前駆体繊維としては、アクリロニトリルと、このアクリロニトリルと共重合可能なオレフィン構造を有するコモノマーとの共重合体を用いることができる。
この共重合体中のアクリロニトリル含有量は94質量%以上が好ましく、95質量%以上が更に好ましい。また、共重合体中のコモノマー含有量は6質量%以下が好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
コモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらのアンモニウム塩及びアルキルエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド及びそれらの誘導体等を挙げることができ、それらを2種類以上組み合わせることもできる。
特に低コスト化を進める上で、コモノマーとして不飽和カルボン酸を用いることは、耐炎化反応を促進させる意味で好ましいものである。不飽和カルボン酸の共重合体中の含有量は、0.1〜3質量%であることが好ましく、特に0.5〜2質量%がより好ましい。
不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等をあげることができる。
なお、高強度の炭素繊維を得る為には、炭素繊維用前駆体繊維の分子配向性を高くする必要性がある。そのため、炭素繊維用前駆体繊維製造工程で、高延伸しやすくする為に、炭素繊維用前駆体繊維中の分子自由度を高くする目的で、不飽和カルボン酸エステルを共重合することが好ましい。不飽和カルボン酸エステルの共重合体中の含有量は、0.1〜6質量%が好ましく、2〜5質量%が更に好ましい。
不飽和カルボン酸エステルの例としては、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキルがある。好ましいアルキル基の長さは、炭素数(C)が1〜4であり、特に好ましいアルキル基の長さは、Cが1〜2である。
上記モノマーとコモノマーとの重合方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等を用いることができるが、そのまま紡糸できることにより溶液重合が最も好ましい。
紡糸する際の液(紡糸原液)は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等の有機溶媒や、硝酸、塩化亜鉛水溶液、ロダン塩水溶液等の無機溶媒を溶媒として用い、上記モノマーとコモノマーとを重合させたポリマー溶液を、紡糸原液とすることが好ましい。その中でも、高分子量ポリマーを溶解させるのに優位性がある塩化亜鉛水溶液を溶媒に用いるのがより好ましい。
紡糸原液の濃度は、炭素繊維前駆体繊維の比重に影響を与えるので、溶媒として塩化亜鉛水溶液を用いた場合、5質量%以上10質量%以下が好ましい。更に好ましくは7質量%以上9質量%以下が更に好ましい。紡糸原液の濃度が低すぎる場合は、得られる炭素繊維前駆体繊維の比重が低くなり、低比重の炭素繊維が得られなくなる。一方、濃度が高すぎる場合は、ポリマーの溶媒に対する溶解度には限界があるため、紡糸原液が不均一な溶液になり好ましくない。
紡糸は、低温に冷却した凝固液(紡糸する際の溶媒−水混合液)を入れた凝固浴中に直接紡出する湿式紡糸が好ましい。また、空気中にまず吐出させた後、3〜5mm程度の空間を有して凝固浴に投入し凝固させる乾湿式紡糸法でもよい。
紡出糸は、濃度勾配をかけた凝固浴で徐々に凝固させ、同時に溶媒を除去しながら、水洗して直接浴中延伸する。浴中延伸では、数種の水洗〜熱水浴中で、延伸比2.0〜6.0、特に延伸比4.0〜6.0で紡出糸を延伸するのが好ましい。
浴中延伸の条件については、上記凝固浴温度と、水洗温度又は熱水浴温度との温度勾配は最大で98℃にするのが好ましい。
その後、乾燥緻密化に先立って、耐熱性向上や紡糸安定性を目的として、親水基を持つ浸透性油剤とシリコーン系油剤を組み合わせた炭素繊維用前駆体繊維油剤を付与することが、炭素繊維を軽量化する場合には、この炭素繊維を品位よく得る点から好ましい。
浸透性油剤とシリコーン系油剤との配合割合は65:35〜75:25(質量基準)が好ましい。
浸透性油剤は官能基として、スルフィン酸、スルホン酸、燐酸、カルボン酸やそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、その誘導体を有するものが好ましい。これらの浸透性油剤のうちでも、浸透しやすいジアルキルスルホサクシネート若しくはその誘導体を用いるのが特に好ましい。
シリコーン系油剤は、未変性あるいは変性されたもののいずれでもよいが、中でもエポキシ変性シリコーン、エチレンオキサイド変性シリコーン、ポリシロキサン、アミノ変性シリコーンが好ましく、アミノ変性シリコーンが特に好ましい。
浸透性油剤とシリコーン系油剤とが配合された油剤のアクリル繊維への付与の割合(付着量)は、アクリル繊維乾燥質量当り0.1〜0.3質量%である。
油剤付着量が0.1質量%より少ない場合は、耐炎化工程でのアクリル繊維の収束性が劣り、この耐炎化工程以降での工程通過性は著しく損なわれるので好ましくない。
一方、油剤付着量が0.3質量%を超える場合は、目的とする単繊維強度を得ることが出来ないので好ましくない。
乾燥緻密化においては、温度勾配をかけた幾層にも連なる部屋を有する熱風乾燥機で乾燥することが好ましい。乾燥温度については、より緻密性が向上するように、70〜150℃で適宜調節して行うことが好ましく、80〜140℃で適宜調節して行うことが更に好ましい。乾燥時間については、1〜10分間が好ましい。
また、高温での延伸を行うことによって、作製される炭素繊維用前駆体繊維の繊度や分子配向を整えることができる。特に加圧スチーム中での熱延伸は有効であり、温度100〜130℃、延伸比4.0〜6.0の条件で湿熱延伸処理することが特に好ましい。この熱延伸の条件は、炭素繊維用前駆体繊維の緻密性に大きな影響を与える。
緻密性を評価する手段として、アルキメデス法による見かけ比重の評価がある。
炭素繊維用前駆体繊維を約2g採取し、直径3cm以内の円状にまとめ、形状が崩れないようにする。測定溶剤には、水、若しくは親水性溶媒が好ましい。なお、炭素繊維用前駆体繊維に付与させた油剤の影響等で脱泡時に泡が取れ難い場合がある。この場合は、エタノール若しくはアセトンを用いるのが最も好ましい。
次に、上記円状のサンプルを溶媒中に浸漬し、減圧下で脱泡する。常温下で、溶媒中の質量を測定し、更にサンプルを加熱乾燥して乾燥質量を求め、炭素繊維用前駆体繊維の見かけ比重を求める。この比重は、PANの比重1.18より低くなるが、好ましくは1.160〜1.175、より好ましくは1.163〜1.174、更に好ましくは1.165〜1.173になるように乾燥緻密化及び熱延伸条件を変更する。
本発明において、炭素繊維用前駆体繊維の単繊維繊度は、強度向上の観点から、耐炎化工程での酸化斑(むら)が生じ難いように、細い方が好ましい。具体的には、1.2d以下が好ましく、0.9〜1.2dがより好ましく、0.96〜1.18dが更に好ましい。
得られた炭素繊維用前駆体繊維は、分子配向の緩和が生じ難いように、糸(前駆体繊維)の乾燥を防ぐ必要がある。そのため、前駆体繊維の水分率は、好ましくは20〜60質量%、特に好ましくは30〜50質量%に保つ必要がある。炭素繊維用前駆体繊維の水分率が低くなりすぎると、集束性が低下することによって取扱性が悪くなり、また、水分率が高すぎると水の表面張力により、耐炎化工程中のローラーに巻き付きやすくなりトラブルの原因になる。
上記のようにして作製され、適宜調節された水分率を有する炭素繊維用前駆体繊維は、密閉容器中に一時保存することが可能である。保存容器としては、円筒形の容器が好ましく、ビニール袋も好ましい。但し、保存する際は、内部の水分が保持できるものでなければいけない。
なお、本発明で用いられる炭素繊維用前駆体繊維は、乾熱ローラー等の熱処理を施しておらず、湿熱延伸後の糸を用いているため、そのままの状態で保存すると、繊維の配向緩和が生じ、炭素繊維の強度低下を招いてしまう。
この炭素繊維用前駆体繊維の配向緩和を防ぐ方法としては、以下に示す、従来既存の技術が応用できる。
即ち、炭素繊維用前駆体繊維の製造後の後工程(耐炎化工程、炭素化工程)において、繊維内部の分子配向性を向上させるための方法として、湿熱延伸して前駆体繊維の糸を製造した後における、純水等で濡れたままの状態の糸を、収納容器に蓄える方法が利用できる。
この濡れたまま糸を収納容器に蓄える方法によれば、繊維が乾燥することによって生ずる配向緩和や空気による酸化、空気中の異物の付加等が防止でき、高強度の炭素繊維を製造する事ができる。
次いで、上記前工程で製造した炭素繊維用前駆体繊維を、耐炎化工程で耐炎化処理する。この耐炎化処理は、例えば加熱空気中2室以上に分かれた横型炉で、多段ローラー群を介して、温度230〜290℃、好ましくは230〜270℃、延伸比1.02〜1.08、好ましくは1.03〜1.07で熱処理して行うことができる。
耐炎化の延伸比が低いと、分子配向が緩和されてしまう為好ましくない。また、通常耐炎化が進むにつれて繊維が脆弱化するので、延伸比が高すぎると、単糸切れによる毛羽が発生し、後に得られる炭素繊維の品位を著しく低下させるので好ましくない。
従って、耐炎化時の延伸比については、1.02〜1.08で熱処理することが好ましく、1.03〜1.07で熱処理することが更に好ましい。
耐炎化反応については、初期にニトリル基への酸化によって反応が開始され、環化反応が生じ、更に環への酸素の付加により、耐炎化構造となる。従って、環化の度合いと酸化の度合いを規定することにより、好ましい耐炎化糸を製造することが可能である。
耐炎化繊維の比重は、好ましくは1.360〜1.385、より好ましくは1.363〜1.383、更に好ましくは1.365〜1.380がよい。
耐炎化糸の表面付近では、炭素繊維用前駆体繊維に付与した油剤の影響によるSiの酸化物、ポリアクリロニトリルの酸化によるアミド形成、その環化物への酸化等により、さまざまな酸化物の構造を有しているが、表面付近の元素割合として酸素と珪素の比が1以上の際に好ましい構造となる。
上記耐炎化繊維は、窒素等の不活性ガス雰囲気下300〜750℃で3室以上に分けた焼成炉(第一炭素化炉)で徐々に温度勾配をかけ、耐炎化繊維の張力を制御して緊張下で1段目の炭素化(予備炭素化)をする。
緊張条件については、収縮比(緊張後の長さ/緊張前の長さ)が好ましくは1.01〜1.07の範囲、より好ましくは1.02〜1.05の範囲がよい。
焼成温度については、第一炭素化炉で温度勾配をかけていき、最高温度領域で、好ましくは550〜750℃、より好ましくは600〜700℃とすることがよい。
より炭素化を進め且つグラファイト化(炭素の高結晶化)を進める為に、窒素等の不活性ガス雰囲気下で昇温し、2室以上に分けた焼成炉(第二炭素化炉)で徐々に温度勾配をかけ、糸(予備炭素化繊維)の張力を制御して弛緩条件で焼成する。
弛緩条件については、収縮比(弛緩後の長さ/弛緩前の長さ)が好ましくは0.9〜1.0の範囲、より好ましくは0.92〜0.99の範囲、更に好ましくは0.95〜0.98の範囲がよい。
焼成温度については、第二炭素化炉で温度勾配をかけていき、最高温度領域で、好ましくは1180〜1320℃、より好ましくは1200〜1300℃とすることがよい。
温度勾配については、好ましくは、400℃/分以上の昇温、より好ましくは400〜1000℃/分の昇温、更に好ましくは、500〜900℃/分の昇温である。生産性やコスト面から炉長があまり長すぎるのは好ましくなく、また、炉内の高温部での滞留時間が長くなると、グラファイト化が進み過ぎ、脆性化した炭素繊維が得られることになるので好ましくない。
また、温度勾配が緩く、滞留時間が長くなると、炭素繊維内部の構造において、緻密化が進んでしまうため、炭素繊維の密度が高くなり過ぎるので好ましくない。上記範囲の温度勾配、最高温度領域で、滞留時間を設定することにより、炭素繊維内部の構造が適正化され、従来の汎用炭素繊維が有する繊維特性を有することができる。
得られた炭素繊維は、酸若しくはアルカリ水溶液を用いた電解層中で電解酸化処理して、表面処理する。炭素繊維を樹脂と複合化させて材料として使用する場合は、炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性を向上させる目的で行う必要がある。
電解処理の電解液としては、酸性若しくはアルカリ性のものが使用できる。酸性のものとして、硝酸、硫酸、塩酸、酢酸、それらのアンモニウム塩、硫酸水素アンモニウム等がある。
これらの電解液のうちでも、好ましくは、弱酸性を示す硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム等のアンモニウム塩がよい。また、アルカリ性のものは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。
電解酸化する際の電気量は、炭素繊維外層部のグラファイト化の度合いに伴い調整する必要がある。樹脂との複合化をすることを踏まえると、親和性を向上する炭素繊維1g当り15クーロン以上が好ましく、18クーロン以上が特に好ましい。なお、電気量が多すぎると炭素繊維表面の小規模欠陥を取り除く以上に表面が酸化され、欠陥を新たに生じさせる場合があり、多くとも30クーロン以下が好ましい。
また、電解酸化による表面処理を施した後は、電解液やその副生成物等が炭素繊維に付着しているので、よく水洗し、乾燥する必要がある。更に、炭素繊維の後加工をしやすくし、取扱性を向上させる目的で、サイジング処理する。サイジング方法は、従来の公知の方法で行うことができ、サイジング剤は、用途に即して適宜組成を変更して使用し、均一付着させた後に、乾燥する。付着量は、好ましくは、0.1〜2.0質量%、より好ましくは、0.5〜1.5質量%である。
以下の実施例及び比較例に記載した条件によりポリアミド被覆炭素繊維を作製した。なお、各ポリアミド被覆炭素繊維の諸物性値は、前述の方法又は以下の方法により測定した。
[X線回折測定での配向度]
なお、X線回折測定での配向度測定については、次のようにして求めることができる。
炭素繊維前駆体繊維を、単繊維約24000本(例えば単繊維12000本の炭素繊維束を2束)で構成させ、アセトンを用いて収束して繊維軸方向に繊維を引揃える。
直径1cmの穴をあけた台紙に、穴の部分が繊維の中央に来るように、繊維を引揃えた長さ3cmの炭素繊維前駆体繊維束を貼付ける。繊維軸と治具の軸が平行になるように、台紙に貼った炭素繊維前駆体繊維束を試料調整用治具に、緊張させた状態で固定する。
更に、この治具を透過法による広角X線回折測定試料台に固定する。X線源として、CuのKα線を使用し、試料に照射すると、2θが17度付近に回折パターンが現れる。
上記の測定によって得た回折パターンのピーク(2θ)の位置で、測定試料台を0〜360度回転させ円周方向にスキャンして得られた2つのピークから、各の半値幅を求め、平均して半値幅Hとし、下式
配向度(%)=[(180−H)/180]×100
によって求めることができる。
[炭素繊維表面の表面酸素及び珪素の濃度O/C、Si/C、並びに、Siの結合エネルギー]
炭素繊維表面の表面酸素及び珪素の濃度O/C、Si/Cは、次の手順に従ってXPS(ESCA)によって求めた。
炭素繊維をカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90度に設定し、X線源としてMgKαを用い、試料チャンバー内を1×10-6Paの真空度に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わせる。Si1sピーク面積は、92〜116eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、O1sピーク面積は、528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、C1sピーク面積は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。炭素繊維表面の表面酸素濃度O/Cは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比で計算して求めた。炭素繊維表面の表面珪素濃度Si/Cは、上記Si1sピーク面積とC1sピーク面積の比で計算して求めた。
また、X線光電子分光法により測定されるSiの結合エネルギーのピークは、拡大し、最大点の位置を求めた。
[電気抵抗値]
電気抵抗値の測定に関しては、JIS−R−7601に規定する体積抵抗率のストランドの試験A法を参考に行うことができる。ただし、JIS−R−7601では、電気抵抗値に、炭素繊維の比重を掛け合わせた体積抵抗率を求めており、電気抵抗値[X(Ω・g/m2)]を求めるには、下式
X = Rb×t/L
Rb:試験片長Lのときの電気抵抗(Ω)、t:試験片の繊度(tex)、L:抵抗測定時の試験片長(m)
を用いて行った。
尚、抵抗測定時の試験片長については、1m程度で測定することが好ましい。
[炭素繊維ストランド強度、弾性率]
JIS R 7601に規定された方法により測定した。
[コンポジットの層間剪断強度(ILSS)]
エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、商品名:エピコート)に、硬化剤、促進剤を加え、炭素繊維含浸用エポキシ樹脂組成物を作製した。
この樹脂組成物をフィルムコーターにより、離型紙の上に塗布し、樹脂フィルムとした。この樹脂フィルム上に炭素繊維を等間隔に引き揃え並べた後、加熱して樹脂を炭素繊維に含浸させ、目付350g/m2、樹脂含浸率35質量%の炭素繊維強化エポキシ樹脂組成物を作製した。
上記にて作製した炭素繊維強化エポキシ樹脂組成物を成型後の厚みが2.8mmとなるように積層し、金型に入れ、130℃で1.5時間、0.49MPa-Gauge(5.0kgf/cm2-Gauge)の圧力で成型し、繊維が1方向に配列した炭素繊維強化成型板(CFRP板:コンポジット)を作製した。このCFRP板のILSSをASTM−D−2344に準拠し、室温にて測定を行った。
[実施例1]
塩化亜鉛水溶液を溶媒とする溶液重合法により、アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%とからなる重合度が1.6、ポリマー濃度7.5質量%のポリマー原液を得た。
このポリマー原液を、12000フィラメント用の口金を通して、5℃の25質量%塩化亜鉛水溶液中に吐出して凝固させ、凝固糸を得た。
この凝固糸を水洗し、90℃で熱延伸し、アミノ変性シリコーン油剤(アミノシリコーン 竹本油脂株式会社製 BS−379)を7g/l、ジオクチルスルフォサクシネートを3g/l(70:30)含むエマルジョン溶液に浸漬した後、0.2質量%付着させ、熱風乾燥機を用いて70〜140℃で乾燥緻密化、110〜120℃で延伸比4.6にて湿熱延伸し、水分率を40質量%に調整して、単繊維繊度が1.17dの炭素繊維用前駆体繊維を得た。繊維比重は、1.165、X線回折による配向度は、89.6%であった。
得られた炭素繊維用前駆体繊維を空気中250℃から270℃の温度分布を持った雰囲気下で、延伸比1.05で耐炎化させた。耐炎化糸の比重は1.36であった。
この耐炎化糸を、不活性雰囲気中300〜650℃の温度分布を持った第一炭素化炉において、延伸比1.03で炭素化させ、更に、不活性雰囲気中で最高温度が1250℃になるように設定(雰囲気中の温度分布:300〜1250℃)した第二炭素化炉で炭素化させた。
次に、10質量%硫酸アンモニウム水溶液を電解液として、炭素繊維1g当り20クーロンの電解酸化処理をした後、水洗し、更にサイジング処理してサイジング剤−水エマルジョン溶液(濃度3質量%)を付着させ、これを150℃で乾燥した。サイジング剤の付着量は1.3質量%であった。このようにして得られた炭素繊維の特性を表1に示す。
[実施例2]
炭素化後、10質量%硫酸アンモニウム水溶液を電解液として、炭素繊維1g当り25クーロンの電解酸化処理をしたのち、水洗した以外は、実施例1と同様に行った。このようにして得られた炭素繊維の特性を表1に示す。
[実施例3]
不活性雰囲気中で最高温度が1300℃になるように設定(雰囲気中の温度分布:300〜1300℃)した第二炭素化炉で炭素化させた以外は、実施例1と同様に行った。このようにして得られた炭素繊維の特性を表1に示す。
[実施例4]
不活性雰囲気中で最高温度が1200℃になるように設定(雰囲気中の温度分布:300〜1200℃)した第二炭素化炉で炭素化させた以外は、実施例1と同様に行った。このようにして得られた炭素繊維の特性を表1に示す。
[比較例1]
炭素繊維前駆体繊維に油剤を、乾燥緻密化前ではなく、乾燥緻密化後に付与させ、更に、120℃で乾燥させ炭素繊維前駆体繊維を得た。その後の焼成工程は、実施例1と同様に行った。このようにして得られた炭素繊維の特性を表1に示す。
[比較例2]
炭素繊維前駆体繊維の油剤に、アミノ変性シリコーン油剤とジオクチルスルホサクシネートの混合物を0.2質量%付着させる代わりに、燐酸アンモニウム誘導体を有する浸透性油剤を同量で0.1質量%付着させた以外は、実施例1と同様に行った。このようにして得られた炭素繊維の特性を表1に示す。
[比較例3]
炭素繊維前駆体繊維の油剤に、アミノ変性シリコーン油剤とジオクチルスルホサクシネートの混合物を0.2質量%付着させる代わりに、アミノ変性シリコーン油剤と燐酸アンモニウム誘導体を有する浸透性油剤を同量で0.1質量%付着させた以外は、実施例1と同様に行った。このようにして得られた炭素繊維の特性を表1に示す。
[比較例4]
不活性雰囲気中で最高温度が1400℃になるように設定(雰囲気中の温度分布:300〜1400℃)した第二炭素化炉で炭素化させた以外は、実施例1と同様に行った。このようにして得られた炭素繊維の特性を表1に示す。
[比較例5]
不活性雰囲気中で最高温度が1150℃になるように設定(雰囲気中の温度分布:300〜1150℃)した第二炭素化炉で炭素化させた以外は、実施例1と同様に行った。このようにして得られた炭素繊維の特性を表1に示す。
[比較例6]
電解酸化処理における炭素繊維1g当りの電気量を12クーロンにした以外は、実施例1と同様に行った。このようにして得られた炭素繊維の特性を表1に示す。
Figure 2005314830

Claims (5)

  1. ストランド強度が4600〜5800MPa、弾性率が220〜250GPa、密度が1.74g/cm3以上1.80g/cm3未満、且つ珪素を含有するポリアクリロニトリル系炭素繊維であって、その含有された珪素がSiOx(1≦x≦3)構造を有し、その含有量が元素珪素として、当該炭素繊維質量の110〜500ppmであるポリアクリロニトリル系炭素繊維。
  2. 炭素繊維ストランドの単繊維平均直径が6〜8μmであり、炭素繊維ストランドの電気抵抗値が29〜32Ω・g/m2、且つ、X線光電子分光法により測定される表面珪素量(Si)を示すSi/Cが0.10〜0.15、表面酸素量(O)を示すO/Cが0.15〜0.30である請求項1に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維。
  3. X線光電子分光法により測定されるSiの結合エネルギーのピークが102〜104eVの範囲に存在する珪素を含む構造を、表面に有する請求項1又は2に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維。
  4. アクリロニトリルを94質量%以上含有する単量体を重合した共重合体を紡糸して得られた糸を、油剤としてアミノ変性シリコーン及びジアルキルスルホサクシネートを含むエマルジョン水溶液を乾燥質量で0.1〜0.3%付着させた後、70〜150℃の乾燥機で乾燥緻密化後、温度100〜130℃、延伸比4.0〜7.0の条件で湿熱延伸処理して単繊維繊度0.96〜1.2dの炭素繊維用前駆体繊維を得、得られた前駆体繊維を、そのまま加熱空気中230〜290℃、延伸比1.02〜1.08で熱処理して耐炎化繊維を得、得られた耐炎化繊維を、不活性ガス雰囲気中で昇温し、最高温度領域で550〜750℃、延伸比1.01〜1.07で予備炭素化し、更に不活性ガス雰囲気中で昇温し、最高温度領域で1180〜1320℃、延伸比0.90〜1.00で炭素化し、水溶液中で炭素繊維1g当り電気量15クーロン以上の電解酸化法により表面処理することを特徴とするポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
  5. 炭素繊維用前駆体繊維の水分率が20〜60質量%である請求項4に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
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