しかしながら、上述した電気二重層キャパシタは以下の示す課題を有していた。
即ち上記電気二重層キャパシタは、電気二重層キャパシタを内蔵するハードディスク装置の製造途中において、電気二重層キャパシタをハードディスク装置に設置する際に、作業者が静電気を帯びていると、その静電気が電気二重層キャパシタを通じて磁気ヘッドに伝わるおそれがある。ここで、磁気ヘッドの読出し部は、GMR(Giant Magneto-Resistance)素子を備えているが、このGMR素子は、極めて薄い膜を積層してなる薄膜積層部である。このため、静電気が読出し部に急激に伝わると、その読出し機能に悪影響を与えるおそれがあり、最悪の場合読み出し部分を破壊してしまうおそれがある。上記の問題は、ハードディスク装置に限らず、PCカード、ICカード等、薄膜積層部を有する電子装置の製造途中においても生じる可能性がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電子装置における薄膜積層部への悪影響を十分に防止できる電気化学素子及びこれを用いた電子装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下の発明により、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、第1リード端子部を有する第1の導電性外装体と、前記第1の導電性外装体に対向して配置され、第2リード端子部を有する第2の導電性外装体と、前記第1の導電性外装体と前記第2の導電性外装体とによって挟まれる被挟持部と、前記第1の導電性外装体及び前記第2の導電性外装体を被覆する最外層とを備えており、前記被挟持部が、一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられる電解質とを備えており、前記第1リード端子部の少なくとも一部、及び前記第2リード端子部の少なくとも一部が露出しており、前記最外層が1.0×104Ωcm以上1.0×1012Ωcm以下の比抵抗を有する高抵抗材料で構成されていることを特徴とする電気化学素子である。
この電気化学素子によれば、電気化学素子及び薄膜積層部を有する電子装置の製造過程において以下の利点が得られる。即ち、薄膜積層部を設置した後に、静電気を帯びた作業者が、電子装置に当該電気化学素子を取り付ける場合でも、作業者から第1の導電性外装体及び第2の導電性外装体を通って、薄膜積層部へ電流が急激に流れることを十分に防止することが可能となる。
上記電気化学素子においては、被挟持部が一対の電極間にセパレータを更に備えてもよい。
上記最外層は、前記第1の導電性外装体と、前記第2の導電性外装体と、前記被挟持部とを備える電気化学素体を、前記第1リード端子部の少なくとも一部及び前記第2リード端子部の少なくとも一部が露出されるように、1.0×104Ωcm以上1.0×1012Ωcm以下の比抵抗を有する高抵抗材料を含む塗料中に浸漬して乾燥することにより得られるものであることが好ましい。
この電気化学素子によれば、上記最外層が上記電気化学素体を上記塗料中に浸漬し乾燥してなるため、第1の導電性外装体及び第2の導電性外装体のそれぞれが、1.0×104Ωcm以上1.0×1012Ωcm以下の比抵抗を有する高抵抗材料で十分に被覆されることになる。即ち第1の導電性外装体及び第2の導電性外装体が露出されることが十分に防止される。このため、静電気を帯びた作業者が、薄膜積層部を有する電子装置に当該電気化学素子を取り付ける場合でも、作業者から薄膜積層部への電流の急激な流れをより十分に防止することが可能となる。また、最外層が上記電気化学素体を上記塗料中に浸漬し乾燥してなるため、第1の導電性外装体及び第2の導電性外装体とこれらを被覆する最外層との間で隙間の形成が十分に防止され、隙間に起因する電荷のチャージが十分に防止される。このため、チャージした電荷による薄膜積層部への電流の急激な流れも十分に防止される。
上記電気化学素子においては、最外層がシート状となっており、接着剤層を介して前記第1の導電性外装体及び前記第2の導電性外装体のそれぞれを被覆していることが好ましい。この場合、接着剤層によって最外層が第1の導電性外装体及び第2の導電性外装体のそれぞれに密着しているため、最外層と第1の導電性外装体及び第2の導電性外装体との間で隙間の形成が十分に防止され、隙間に起因する電荷のチャージが十分に防止される。このため、チャージした電荷による薄膜積層部への電流の急激な流れも十分に防止される。
上記電気化学素子において、1.0×104Ωcm以上1.0×1012Ωcm以下の比抵抗を有する高抵抗材料とは、例えば、アルミナ、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの無機酸化物、炭化ケイ素、炭化チタンなどの無機炭化物、窒化タンタル、窒化ニオブ、窒化バナジウムなどの無機窒化物からなる群より選ばれる1種を含むものである。
高抵抗材料の比抵抗が1.0×104Ωcm以上1.0×1010Ωcm以下であると、より好ましい。また、高抵抗材料の比抵抗が1.0×104Ωcm以上1.0×106Ωcm以下であると、さらに好ましい。このような高抵抗材料としては、例えば、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化タンタル、窒化ニオブ、窒化バナジウムなどを用いることができる。高抵抗材料の比抵抗が1.0×104Ωcm以下の場合、電気化学素子表面からの電荷の移動が急激に生じ、周囲の電子部品を破壊してしまう傾向がある。また、高抵抗材料の比抵抗が1.0×1010Ωcm以上であると、電気化学素子の表面にチャージがより溜まり易くなる傾向がある。
ポリイミド及びポリアミドは、水分阻止能が高いため電子部品の外装部品材料として広く用いられている。しかし、一般にポリイミド及びポリアミドは、1017Ωcm〜1022Ωcmの高い比抵抗を有するため、チャージアップを生じやすい傾向にある。この場合、汎用のポリイミド又はポリアミドのシートを導電性の接着剤によって第1及び第2導電性外装体の表面に接着して用いることができる。この場合の接着剤は、1.0×104Ωcm以上1.0×1010Ωcm以下の比抵抗を有する接着剤を選択して用いることができる。つまり、この発明において、最外層は1.0×104Ωcm以上1.0×1010Ωcm以下の比抵抗を有する接着剤と、ポリイミド及びポリアミド又はこれらのいずれか一方からなる層とを含んで構成されている。例えば、グラファイト、アルミニウム、錫などのフィラーを分散させた接着剤を用いるのが好ましい。これにより、ポリイミド及びポリアミドの水分阻止能を維持しつつ、導電性の外装体を得ることができる。
さらに、ポリイミド及びポリアミドに帯電防止処理を行ったものは、本発明に用いる最外層として好適に用いることができる。帯電防止処理としては、電子線などのエネルギー照射によって表面の一部をグラファイト化する方法を用いることができる。あるいは、高分子骨格中にスルホン酸基やスルフィン酸基を導入した構造としてもよい。これにより、ポリイミド及びポリアミドが帯電防止構造を有するものとなる。これらの方法によっても、ポリイミド及びポリアミドの水分阻止能を維持しつつ、導電性の外装体を得ることができる。このような帯電防止処理されたポリイミド及びポリアミドは、シート状に加工して接着して用いても良い。特にスルホン酸基やスルフィン酸基を導入したポリイミド及びポリアミドは、適当な溶媒に分散させて塗布しても良い。分散溶媒としては、水、アルコール、ジメチルホルムアミドなどの極性溶媒を用いることが好ましい。
上記電気化学素子は、前記高抵抗材料が、アルミナ、マグネシア、シリカ、チタニア、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化タンタル、窒化ニオブ、窒化バナジウム及びジルコニアからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、前記最外層が薄膜であることが好ましい。
この場合、最外層が薄膜でない場合に比べて、軽量・省スペース化のニーズに対応できるという利点がある。
本発明において、「薄膜」とは、常温大気圧の環境下において、自立が困難なもの(基体の補助無くして形状を維持できないもの)を言う。本発明の薄膜は、2μm〜100μmの膜厚範囲であることが好ましい。また、前記高抵抗材料の膜厚は2μm〜70μmであることがより好ましい。加えて、前記高抵抗材料の膜厚は2μm〜50μmであることがさらに好ましい。膜厚が2μm未満の場合、実際の抵抗値が膜全体あるいは部分的に高くなってしまうため、電荷のチャージが生じやすくなる傾向にある。また、膜厚が100μmを越えた場合、薄膜に蓄積される内部応力(全応力)が大きくなるため、薄膜の破壊や剥離が生じやすくなる傾向にある。内部応力(全応力)は膜厚の増加と共に大きくなっていくが、本発明の場合、膜厚が100μm以下であれば実用上問題のない範囲である。
また本発明は、上述した電気化学素子と、電気化学素子を収容する収容部及び薄膜積層部を有する電子装置本体部とを備えており、収容部には、電気化学素子を構成する第1リード端子部及び第2リード端子部と接触される接続端子が設けられており、収容部が、前記電子装置本体部の表面側に設けられており、電気化学素子が収容部に対して着脱可能に収容されていることを特徴とする電子装置である。
この電子装置によれば、静電気を帯びた作業者が電子装置本体部の収容部から電気化学素子を電子装置本体部の外側に取り外す場合でも、作業者から薄膜積層部への電流の流れが十分に防止される。
上記電子装置においては、電気化学素子が電気二重層キャパシタであることが好ましい。この場合、電気化学素子として、電気二重層キャパシタ以外のものを用いる場合と比較して、瞬時に充放電が可能で、かつ、高エネルギー密度が得られるという利点がある。
上記電子装置においては、例えば前記電子装置本体部が、少なくとも1枚の磁気ディスクと、前記磁気ディスクに記録された磁気情報を読み出す読出し部を有する磁気ヘッドとを備えており、前記読出し部が、前記薄膜積層部を有するものである。
なお、本発明の電子装置において、薄膜積層部とは、薄膜の積層体であって、電子装置の機能を果たすために必要不可欠なものであり、且つ静電気により電子装置を正常に機能させられなくなる程度の耐電圧特性を有するものを言う。
本発明の電気化学素子によれば、薄膜積層部を有する電子装置の製造過程において、静電気を帯びた作業者から薄膜積層部への電流の急激な流れを十分に防止することが可能となる。このため、電子装置における薄膜積層部への悪影響を十分に防止でき、電子装置の製造歩留まりの低下を十分に防止することができる。
また本発明の電子装置によれば、静電気を帯びた作業者が電子装置本体部の収容部から電気化学素子を電子装置本体部の外側に取り外す場合でも、作業者から薄膜積層部への電流の急激な流れを十分に防止することが可能となる。このため、電子装置における薄膜積層部への悪影響を十分に防止できる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明に係る電気化学素子の第1実施形態を示す平面図、図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
図2に示すように、電気二重層キャパシタ(電気化学素子)100は、第1の導電性外装体2と、第2の導電性外装体4とを備えており、第1の導電性外装体2と第2の導電性外装体4とは互いに対向して配置されている。
第1の導電性外装体2は、平板状の本体部2aと、第1のリード端子部2bと、本体部2a及び第1のリード端子部2bとを連結する連結部2cとで構成されており、第2の導電性外装体4も、平板状の本体部4aと、第2のリード端子部4bと、本体部4a及び第2のリード端子部4bとを連結する連結部4cとで構成されている(図1参照)。
第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4は、導電性を有するものであれば特に限定されず、第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4としては、例えばアルミニウム、ニッケル、銅等が用いられる。これらのうち、電解質溶液に対して耐食性に優れているという観点から、アルミニウムが好ましく用いられる。
なお、第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4は同一材料であっても、異なる材料で構成されても構わない。
第1の導電性外装体2と第2の導電性外装体4との間には、電荷を蓄える機能を有する蓄電部(被挟持部)6が設けられており、蓄電部6は、本体部2aと本体部4aとによって挟まれている。
蓄電部6は、第1蓄電部8と第2蓄電部10とを有しており、第1蓄電部8と第2蓄電部10とは、集電体12を介して直列に接続されている。第1蓄電部8及び第2蓄電部10は、互いに対向する第1電極20及び第2電極22を備えており、第1電極20と第2電極22との間にはセパレータ24が設けられている。セパレータ24は、第1電極20と第2電極22とによって挟まれている。そして、セパレータ24には電解質溶液(電解質)が含浸されている。これにより、第1電極20と第2電極22との間に電解液が設けられることになる。
第1電極20及び第2電極22は、例えば、活物質とフッ素ゴムとの混合物で構成される。活物質には、例えば、アセチレンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭などを選択して、あるいは、これらのうちのいずれかを混合して用いることができる。セパレータ24は、絶縁性の多孔体で構成されている。絶縁性の多孔体としては、例えばセルロース不織布が挙げられる。電解質溶液には、水系電解液と有機系電解液とがあるが、有機系電解液が好ましい。このような有機系電解液としては、例えばトリエチルメチルアンモニウムフルオロボーレート(TEMABF4)からなる溶質をプロピレンカーボネート(PC)からなる溶媒に混合させたものが挙げられる。溶質としては、上記のほか、Et4NBF4、Et4NPF6、Et4PBF4、Et3MeNBF4が挙げられ、溶媒としては、上記のほか、ガンマブチロラクトン(GBL)、エチレンカーボネート(EC)、スルフォラン(SFL)等が挙げられる。
そして、第1蓄電部8の周縁部及び第2蓄電部10の周縁部は、封止材14によって封止されている。これにより、第1蓄電部8及び第2蓄電部10中の電解液への水分の浸入が防止され、耐電圧の低下が十分に防止される。封止材14は、外部からの水分の浸入を防止できるものであればよく、封止材14としては、例えばポリプロピレン系材料が用いられる。こうして電気化学素体16が構成されている。
この電気化学素体16の表面は最外層18で被覆されており、最外層18には、第1開口部26が形成され、これにより第1リード端子部2bの一部が露出している。また図1に示すように、最外層18には、第2開口部28が形成され、これにより、第2リード端子部4bの一部が露出している。このように第1リード端子部2b及び第2リード端子部4bを露出させるのは、第1リード端子部2b及び第2リード端子部4bと、電気二重層キャパシタ100が設置されるべき電子装置本体部側の接続端子との接触を可能とするためである。
ここで、最外層18は、上記電気化学素体16を、第1リード端子部2bの一部及び第2リード端子部4bの一部が露出されるように、1.0×104Ωcm以上1.0×1012Ωcm以下の比抵抗を有する高抵抗材料を含む塗料中に浸漬し乾燥することにより得られるものである。上記塗料は、上記高抵抗材料のほか、上記高抵抗材料を溶解又は分散させる溶媒を含み、かかる溶媒としては、例えばターピネオール、アセトン、アルコール、ジメチルホルムアミド、水などが用いられる。
従って、最外層18は、1.0×104Ωcm以上1.0×1012Ωcm以下の比抵抗を有する高抵抗材料で構成されている。
上記電気二重層キャパシタ100によれば、最外層18が電気化学素体16を上記塗料中に浸漬し乾燥してなるため、第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4のそれぞれが、1.0×104Ωcm以上1.0×1012Ωcm以下の比抵抗を有する高抵抗材料で十分に覆われることになる。即ち第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4が露出されることが十分に防止される。
このため、電気二重層キャパシタ100によれば、例えばGMR素子を有する読出し部を備えた磁気ヘッドと、電気二重層キャパシタ100の第1リード端子部2bおよび第2リード端子部4bと接触される接続端子とを有するハードディスク装置の製造過程において次のような利点が得られる。
即ち、磁気ヘッド及び接続端子が設置された後に、静電気を帯びた作業者が当該電気二重層キャパシタ100を接続端子に接触させる場合でも、第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4が最外層18で覆われることにより、作業者から第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4への静電気の急激な流れが十分に防止される。このため、作業者から読出し部への電流の急激な流れによる読み出し部分の破壊を十分に防止することが可能となる。
また、最外層18が電気化学素体16を上記塗料中に浸漬し乾燥してなるため、第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4と最外層18との間で隙間の形成が十分に防止され、隙間に起因する電荷のチャージが十分に防止される。このため、チャージした電荷による読出し部への電流の急激な流れも十分に防止される。
以上より、電気二重層キャパシタ100によれば、ハードディスク装置における読出し部の破壊などの悪影響を十分に防止でき、ハードディスク装置の製造歩留まりの低下を十分に防止することができる。
上記のような高抵抗材料は、1×104Ωcm以上1×1012Ωcm以下の比抵抗を有するものであれば特に限定されず、高抵抗材料としては、例えば、アルミナ、マグネシア、シリカ、チタニア、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化タンタル、窒化ニオブ、窒化バナジウム、ジルコニア又はこれらの1つ以上を含むものが挙げられる。また、ポリイミド、ポリアミド又はこれらの両方を含むものであってもよい。
また、高抵抗材料の比抵抗は、外部(例えば、作業者の身体)の静電気の電荷を、電子部品を破壊しないよう緩やかに移動させるという理由から、1×105Ωcm以上であることが好ましい。また高抵抗材料の比抵抗は、帯電を防止するという理由から、好ましくは1×1010Ωcm以下である。
次に、本発明の電気化学素子の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明に係る電気化学素子の第2実施形態を示す断面図である。図3に示すように、電気二重層キャパシタ200は、シート状の最外層18a及び18bが、接着剤層201を介して第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4を被覆している点で第1実施形態の電気二重層キャパシタ100と相違する。即ち、本実施形態の電気二重層キャパシタ200は、第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4の表面の大きさ及び形状に合わせて、シート状の最外層18a,18bが接着剤層201を介して第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4の表面に貼り付けられている点で第1実施形態の電気二重層キャパシタ100と相違する。
このようにシート状の最外層18が接着剤層201を介して第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4に貼り付けられているため、接着剤層201によって最外層18が第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4のそれぞれに密着している。このため、最外層18と第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4との間で隙間の形成が十分に防止され、隙間に起因する電荷のチャージが十分に防止される。このため、チャージした電荷による読出し部への電流の急激な流れも十分に防止される。その結果、ハードディスク装置における読出し部の破壊などの悪影響を十分に防止でき、ハードディスク装置の製造歩留まりの低下を十分に防止することができる。
次に、本発明に係る電子装置の第1実施形態について説明する。
図4は本実施形態に係る電子装置としてのハードディスク装置を概略的に示す斜視図、図5は、図4の薄膜積層部を拡大して示す平面図である。なお、図4においては、ハードディスク装置から電気二重層キャパシタ100を取り外した状態が示されている。
図4に示すように、ハードディスク装置300は、薄型直方体形状の本体部(電子装置本体部)301を備えており、本体部301にはケーブル接続用コネクタ302が設けられている。本体部301の表面側であって、コネクタ302と反対側の面301aには、電気二重層キャパシタ100を収容するための差込穴(収容部)303が形成されている。差込穴303には、電気二重層キャパシタ100が着脱可能に収容されるようになっている。このため、電気二重層キャパシタ100,200は、本体部301の外側に自由に取り出すことが可能であり、本体部301の外側から自由に装着することも可能である。また、電気二重層キャパシタ100が第1リード端子部2b及び第2リード端子部4b側から差込穴303に差し込まれると、第1リード端子部2b及び第2リード端子部4bが本体部301内の2つの接続端子304,305のそれぞれに接触するようになっている。
本体部301の内部には、磁気ディスク306が、回転軸307によって回転可能に設けられており、回転軸307には、回転モータ(図示せず)により回転駆動力が付与されるようになっている。
また本体部301の内部には回転軸308が設けられ、回転軸308は、回転モータ(図示せず)により回転可能とされている。回転軸308には、磁気ヘッド組立体309が固定されている。磁気ヘッド組立体309は、回転軸308に固定されるアーム部310と、アーム部310の先端に設けられる磁気ヘッド312とで構成されており、磁気ヘッド312は、読出し部314及び書込み部316を有している。ここで、読出し部314はGMR素子を有しており、GMR素子は、反強磁性層であるピン層315、固定磁性層であるピンド層318、非磁性層320、フリー層322を順次積層してなる積層体324を含んでいる。
ピン層315は、PtMn、NiO等の反強磁性体を材料とし、ピン層315の厚みは通常、3nm〜50nmである。ピンド層318は、Fe、Co、Ni、NiFe、CoFe、CoZrNb、FeCoNi等の強磁性体を材料とし、ピンド層318の厚みは通常、0.5nm〜5nmである。非磁性層320は、Cu、Ru、Rh、Ir、Au、Ag等の非磁性体を材料とし、非磁性層320の厚みは通常、1nm〜4nmである。フリー層322は、Fe、Co、Ni、NiFe、CoFe、CoZrNb、FeCoNi等の強磁性体を材料とし、フリー層322の厚みは通常、0.5nm〜10nmである。このように、積層体324は、極めて薄い膜を積層してなり、薄膜積層部を構成している。
上記ハードディスク装置300においては、本体部301の収容穴303に電気二重層キャパシタ100が着脱可能に収容されているが、電気二重層キャパシタ100は、1.0×104Ωcm以上1.0×1012Ωcm以下の比抵抗を有する高抵抗材料を含んで構成される最外層18を有する。特に、電気二重層キャパシタ100においては、最外層18が電気化学素体16を上記塗料中に浸漬し乾燥してなるものである。このため、第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4のそれぞれが、1.0×104Ωcm以上1.0×1012Ωcm以下の比抵抗を有する高抵抗材料で十分に被覆されることになる。即ち第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4が露出されることが十分に防止される。
従って、静電気を帯びた作業者が、本体部301の収容穴303から電気二重層キャパシタ100を取り外す場合でも、作業者から第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4への静電気の急激な流れが十分に防止される。従って、作業者から読出し部314への電流の急激な流れも十分に防止され、その結果、作業者の静電気に起因する読出し部314の損傷が十分に防止されることになる。
特に、最外層18が電気化学素体16を上記塗料中に浸漬し乾燥してなるため、第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4と最外層18との間で隙間の形成が十分に防止され、隙間に起因する電荷のチャージが十分に防止される。このため、チャージした電荷による読出し部314への電流の急激な流れも十分に防止される。
よって、ハードディスク装置300によれば、電気二重層キャパシタ100を取り外す場合でも、読出し部314への悪影響を十分に防止でき、ハードディスク装置300の損傷が十分に防止される。
次に、本発明に係る電子装置の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の電子装置の第2実施形態を示す斜視図であり、ハードディスク装置から電気二重層キャパシタ100を取り外した状態が示されている。
図6に示すように、本実施形態のハードディスク装置400は、まず、収容部としての嵌込部403が、本体部401の表面のうち磁気ディスク306と対向する表面401a側に形成されている点でハードディスク装置300と相違する。また、嵌込部403は、電気二重層キャパシタ100が嵌め込まれる形状とされ、嵌込部403の底部403aに、電気二重層キャパシタ100の露出された第1リード端子部2b及び第2リード端子部4bと接触される接続端子404,405が設けられる点でもハードディスク装置300と相違する。
このハードディスク装置400によれば、ハードディスク装置300と同様に、電気二重層キャパシタ100を取り外す場合でも、読出し部314への悪影響を十分に防止でき、ハードディスク装置400の損傷が十分に防止される。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、電気化学素子として、電気二重層キャパシタ100,200が用いられているが、電気二重層キャパシタ100,200に代えて、1次電池やリチウムイオン電池等の2次電池が用いられても構わない。この場合、被挟持部は、蓄電部6ではなく、発電機能を有する発電部となる。但し、電気化学素子が電気二重層キャパシタである場合には、電気化学素子として電気二重層キャパシタ以外のものを用いる場合と比較して、瞬時に充放電が可能で、かつ、高エネルギーが得られるという利点がある。
また、上記実施形態では、電子装置として、ハードディスク装置が用いられているが、本発明の電子装置は、ハードディスク装置に限られるものでなく、PCカード、ICカード等であってもよい。ここで、PCカード、ICカード等における薄膜積層部は、MOSにおける絶縁膜やFETゲート絶縁膜等で構成される集積回路である。この場合でも、電気化学素子を取り外す場合に、薄膜積層部への悪影響を十分に防止でき、電子装置の機能が損なわれることを十分に防止することができる。
更に、本発明の電気化学素子に係る実施形態では、最外層18が、塗料に浸漬して乾燥するか、シート状とし接着剤層を介して貼り付けることによって形成されているが、最外層18がアルミナ又はジルコニアを含む薄膜である場合には、最外層18は、気相合成によって製造することができる。この場合でも、塗料中に電気化学素体を浸漬塗布する場合と同様に、第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4の露出を十分に防止することができ、静電気を帯びた作業者から、第1の導電性外装体2及び第2の導電性外装体4を経て、磁気ヘッドの読出し部等へ急激に電流が流れることを十分に防止することができる。
ここで、気相合成は、容器内に、支持体と、アルミニウム又はジルコニウムのターゲットを配置し、容器内の真空度を例えば10〜20Paとし、アルゴンガスと酸素ガスをそれぞれ20sccm、15sccずつ真空容器内に導入しながら、支持体とターゲットとの間に、13.56HzのRF周波数の電界を印加することにより行えばよい。
なお、上記薄膜には、アルミナ又はジルコニアに代えて、マグネシア、シリカ、チタニア、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化タンタル、窒化ニオブ、窒化バナジウムが含まれていてもよく、この場合でも、アルミナ又はジルコニアが含まれる場合と同様の効果が得られる。
更に、上記実施形態の電気二重層キャパシタ100,200では、第1リード端子部2b及び第2リード端子部4bがそれぞれ本体部2a,4aの外側に設けられているが、図7に示す電気二重層キャパシタ150のように、第1リード端子部2b及び第2リード端子部4bがそれぞれ本体部2a,4aの内側に設けられてもよい。この場合、電気二重層キャパシタ150の小型化を図ることができる。なお、図7において、露出している部分が第1リード端子部2b及び第2リード端子部4bであり、この形態では、連結部2c、4cは不要である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下の手順により、図2に示した電気二重層キャパシタ100と同様の構成を有する実施例1の電気二重層キャパシタを作製した。
(電気二重層キャパシタ素体の作製)
まず、電極を有する集電体を以下のようにして作製した。即ち、集電体には、アルミニウム箔(厚さ50μm)を矩形状に切断したもの(10×10mm)を採用し、これら集電体上に電極を形成した。具体的には、賦活処理した活性炭(比表面積2000m2/g、クラレケミカル製BP−20)と、バインダーとしてのフッ素ゴム(デュポン社製、Viton−GF)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(電気化学工業製、DENKABLACK)とを、所定量のメチルイソブチルケトンにそれぞれ80重量%、10重量%、10重量%となるように混合・混練した後にペースト化し、メタルマスク法で集電体の主面(両面)の中央部(8×8mm)に塗布し、乾燥して電極とした。電極の乾燥後の厚さは50μmであった。
次に、導電性外装体を2枚作成した。2枚の導電性外装体は上記の集電体の中心軸に対し、図2のリード端子部(2b、4b)と、連結部(2c、4c)とを、中心軸から片方の側にずらした形状とした。このとき、リード端子部と連結部を除いた部分の形状は上記集電体と同一とした。
次に、上記2枚の導電性外装体に対し、上記集電体における電極の作製に用いたペーストと同じペーストを、上記導電性外装体における集電体と対応する部分(8×8mm)に塗布し、乾燥して電極を形成した。電極の乾燥後の厚さは50μmであった。電極形成面の位置は、2枚の導電性外装体を電極形成面同士が対向するように重ねたときに、一方の導電性外装体のリード端子部と連結部(例えば、2bと2c)が、他方のリード端子部と連結部(例えば、4bと4c)に重ならない位置を選択した。具体的には図1に示す構成となる。
次に、セパレータを用意した。セパレータは、厚さ50μmの紙(ニッポン高度紙工業製、TF4050)を、電極の面に対応する大きさ(8×8mm)に切り出して形成した。
続いて、単層の酸変性ポリエチレンシート(厚さ150μm)からなる封口材を2枚用意した。封口材は、酸変性ポリエチレンシートに対して中央部を打ち抜き、外形寸法が10×10mm、内形寸法が8.1×8.1mmの枠状になるように作成した。
次に、一方の導電性外装体における電極が形成された面の周縁部上に、電極を取り囲むように枠状の封口材を載置した後、導電性外装体側から封口材を加熱して溶融し封口材と一方の集電体とを170℃で熱融着した。続いて、電極に適当量の電解質溶液を滴下し、この電極の上にセパレータを積層し、さらに、セパレータ上に適当量の電解質溶液を滴下した。電解質溶液としては、4フッ化トリエチルメチルアンモニウム塩をプロピレンカーボネート溶液に1.8mol/Lの濃度に溶解させたものを用いた。他方の導電性外装体にも同様の処理を行った。
続いて、集電体の電極上にも適当量の電解質溶液を滴下した。そして、集電体を挟み込むように、2枚の導電最外装体を重ね合わせた。このとき、集電体の電極が導電性外装体上のセパレータと接触し、また、全ての電極の周縁部が枠状の封口材で囲まれるようにした。これに170℃の加熱プレスをおこなって封口材を溶融させた。以上の手順で、電気二重層キャパシタ素体を得た。
(高抵抗外装体による被覆)
以上の手順で作製した電気二重層キャパシタ素体のリード端子部に、レジストによって約Φ2mmの被覆を施した。
次に、ジルコニア−アルミナ粉体が混入されたセラミックコーティング材(東亜合成株式会社製、商品名:アラルダイトE)に電気二重層キャパシタ素体を浸漬した。浸漬処理の際は、リード端子部のレジスト塗布部分によって電気二重層キャパシタ素体を保持した。セラミックコーティング材への浸漬が完了した電気二重層キャパシタ素体をオーブン中で155℃に加熱して規定時間の効果処理を行い、膜厚20μmの最外層を形成した。以上の工程により、実施例1の電気二重層キャパシタを得た。
別途、溶融石英基板上に同様の手法でダミーの最外層を形成し、2端子プローブによって導電性外装体の影響を除去した最外層の比抵抗を測定した。50点測定の結果、比抵抗は2.6〜7.2×105Ωcmであった。
(実施例2)
実施例2では、市販の帯電防止ポリイミドテープ(住友スリーエム製、商品名:ポリイミドテープNo.5419)を電気二重層キャパシタ素体の全面に貼付け、リード端子部を切り抜きによって露出させた以外は実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。溶融石英基板上に貼付けた帯電防止ポリイミドテープの比抵抗を実施例1と同様に測定したところ、比抵抗は6.3〜7.7×1010Ωcmであった。
(実施例3)
実施例3では、プロピレンモノマー分散溶液中に市販のアセチレンブラック(電気化学工業製、商品名:デンカブラック)を20重量部加えて混練したモノマー溶液に電気二重層キャパシタ素体を浸漬し、引き上げ後に重合反応させ、膜厚20μmの高分子膜を最外層として形成させた以外は実施例1と同様にして、実施例2の電気二重層キャパシタを作製した。溶融石英基板上に重合させた膜の比抵抗を実施例1と同様に測定したところ、比抵抗は4.3〜8.0×107Ωcmであった。
(比較例1)
比較例1では、帯電防止処理をされていない市販のポリイミドテープ(住友スリーエム製、商品名:ポリイミドテープNo.5413)を電気二重層キャパシタ素体の全面に貼付け、リード端子部を切り抜きによって露出させた以外は実施例1と同様にして、比較例1の電気二重層キャパシタを作製した。溶融石英基板上に貼付けたポリイミドテープの比抵抗を実施例1と同様に測定したところ、比抵抗は1.7〜9.1×1013Ωcmであった。
(比較例2)
比較例2では、スパッタリング装置を用い、リード端子部以外の電気二重層キャパシタ素体表面に膜厚10μmのタングステン薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして、比較例2の電気二重層キャパシタを作製した。溶融石英基板上に成膜したタングステン薄膜の比抵抗を実施例1と同様に測定したところ、比抵抗は1.7〜9.1×102Ωcmであった。
(静電気破壊発生率の評価)
読み取り部分のみを形成した評価用ダミー薄膜磁気ヘッドを100ピース作成した。これらダミー薄膜磁気ヘッドは全てサスペンション上に載置し、読み取り部分のみ外部に電気的に接続した。実施例1〜3、比較例1および2の電気二重層キャパシタを各々10ピースのサスペンション部分に接触させた。作業時の室温は24℃、湿度は38%とした。また、作業時には、サスペンション付の磁気ヘッドを除電マット上に置き、除電シャワーを当て、作業者はリストバンド等の除電気具を装着した状態でおこなった。なお、電気二重層キャパシタには充電は行わなかった。
記録済みハードディスク用メディアを用意し、電気二重層キャパシタとの接触前後における磁気ヘッド読み取り特性変化を評価した。測定には、ハードディスク用ダイナミックテスター(GUZIK社製、製品名: S1701A(スピンスタンド)、RWA2585(リードライトアナライザ))を中心とする評価装置を用いた。接触後に読み取り可能であったダミー薄膜磁気ヘッドの個数(正常個数)を表1に示す。
以上の結果から、本発明の実施によって電子部品への静電気による悪影響を防止することが可能であることを確認できた。
以上、実施例と比較例によって本発明を詳細に説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではなく、多くの応用が可能である。
例えば、上記比較例では帯電防止処理のないポリイミドを外装体として用いた場合には電子部品への悪影響が生じることが証明されたが、同じく帯電防止処理のない高分子材料であっても、下地接着層を導電性の材料とすることで本発明と同じ効果を得ることができる。こうした接着層としては、金属やカーボンブラックなどのフィラーを混合したものを用いることができる。
あるいは、スパッタリングなどの真空製膜法や、めっき法等によって形成された金属薄膜を、酸化処理することによって抵抗値を調整し、用いることができる。酸化の方法は、熱酸化、プラズマやイオンによる酸化、オゾンによる酸化、紫外線などの光による酸化、電子線による酸化など、適宜選択して行なうことができる。
2b…第1リード端子部、2…第1の導電性外装体、4b…第2リード端子部、4…第2の導電性外装体、6…蓄電部(被挟持部)、18,18a,18b…最外層、20,22…電極、24…セパレータ、201…接着剤層、300,400…ハードディスク装置(電子装置)、301…本体部(電子装置本体部)、303…収容部、304,305…接続端子、306…磁気ディスク、312…磁気ヘッド、314…読出し部(薄膜積層部)。