JP2005255730A - 透明吸湿性高分子膜とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高分子とシリカの複合材料において、透明性と吸湿性に優れ、体積膨張による形状変化の少ない材料を得る。
【解決手段】 負に帯電した弱酸性の高分子とシリカ又はオルガノシリカを含有した高分子とシリカの複合材料とする。負に帯電した弱酸性の高分子とケイ素化合物を混合した水溶液のpHを4を越え6未満に調整した後、室温ないし該水溶液の沸点以下の温度で反応させることにより得られる。
【選択図】 図1
【解決手段】 負に帯電した弱酸性の高分子とシリカ又はオルガノシリカを含有した高分子とシリカの複合材料とする。負に帯電した弱酸性の高分子とケイ素化合物を混合した水溶液のpHを4を越え6未満に調整した後、室温ないし該水溶液の沸点以下の温度で反応させることにより得られる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、無機有機ナノ複合化技術であるゾル‐ゲル法により製造される透明で吸湿性を有する複合材料に関する。
近年、透明で吸湿性を有する高分子膜は、その取扱い易さから従来のシリカゲル等のペレットあるいは粉末状吸湿性材料に代わるものとして期待されている。特にエレクトロニクス分野においては、液晶ディスプレイ等の電子デバイスの構成材料としての利用が見込まれている。
膜状の吸湿性材料としては、室温で安定した吸湿性を示す硫酸塩等の吸湿性無機物質を高分子膜に微粉末状に分散したものが知られている。この吸湿性材料は透明性に欠けるのが難点である。また、乳児用おむつ等の衛生用品として広く普及している吸水性ポリマーを膜状に加工する方法においては、この種のポリマーの一般的性質として吸湿に伴い体積が大きく膨張するといった特徴を有することから、寸法安定性を要求される電子デバイスの構成材料用途で利用できる膜材料とするには適さない。
一方、近年、機械的強度や耐熱性に優れた無機物と、選択的な物質透過性等の様々な機能を有する有機ポリマーとを、ナノレベルで複合化することができる有力な化学的合成手法としてゾル‐ゲル法が開発されている。この方法は、例えば靱性と成形加工性に優れた選択的物質透過膜のように、無機物と有機ポリマーの双方の特徴を合わせ持ち、従来の複合材料では達成できなかった高水準の機能性材料を創製できる方法として注目されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照。)。
膜状の吸湿性材料としては、室温で安定した吸湿性を示す硫酸塩等の吸湿性無機物質を高分子膜に微粉末状に分散したものが知られている。この吸湿性材料は透明性に欠けるのが難点である。また、乳児用おむつ等の衛生用品として広く普及している吸水性ポリマーを膜状に加工する方法においては、この種のポリマーの一般的性質として吸湿に伴い体積が大きく膨張するといった特徴を有することから、寸法安定性を要求される電子デバイスの構成材料用途で利用できる膜材料とするには適さない。
一方、近年、機械的強度や耐熱性に優れた無機物と、選択的な物質透過性等の様々な機能を有する有機ポリマーとを、ナノレベルで複合化することができる有力な化学的合成手法としてゾル‐ゲル法が開発されている。この方法は、例えば靱性と成形加工性に優れた選択的物質透過膜のように、無機物と有機ポリマーの双方の特徴を合わせ持ち、従来の複合材料では達成できなかった高水準の機能性材料を創製できる方法として注目されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照。)。
ナノレベルでの複合化を実現するにあたっては、無機物と有機ポリマーの相互作用が必要となる。これまでに、水素結合やフェニル基間のπ−π電子相互作用、カチオンとアニオンによるイオン間相互作用、疎水性相互作用、金属とリガンドの配位結合、ドナーとアクセプター間の電子移動等が知られている。
ナノレベルでの複合材料においては、これらの相互作用により有機ポリマーは無機物中に均一分散し、そのため通常の複合材料とは異なり透明性を有するのが一般的である。
また、ゾル‐ゲル法においては、通常シリカに代表されるように、結合価数が3以上の無機物により材料の基本骨格が形成される。このため、結合価数の異なる無機物原料を組み合わせる等の方法で骨格の構造を変えることにより、熱膨張係数や膨潤にともなう体積膨張率を自在に制御できる。複合化する有機ポリマーとの比率を変えることによっても同様の制御が可能である。
ナノレベルでの複合材料においては、これらの相互作用により有機ポリマーは無機物中に均一分散し、そのため通常の複合材料とは異なり透明性を有するのが一般的である。
また、ゾル‐ゲル法においては、通常シリカに代表されるように、結合価数が3以上の無機物により材料の基本骨格が形成される。このため、結合価数の異なる無機物原料を組み合わせる等の方法で骨格の構造を変えることにより、熱膨張係数や膨潤にともなう体積膨張率を自在に制御できる。複合化する有機ポリマーとの比率を変えることによっても同様の制御が可能である。
吸湿性に優れた有機ポリマーの代表的なものとしてはポリアクリル酸が良く知られている(例えば、非特許文献4参照。)。このポリマーはカルボキシル基のような弱酸性の置換基を有することから、水素結合による無機物との相互作用を期待することができる。
ゾル‐ゲル法によりシリカと複合化した場合、透明で吸湿性と寸法安定性を併せ持った高分子膜を得られる可能性が高い。しかしながら、通常の反応条件下では透明な膜材料を得ることができない(例えば、非特許文献5参照。)。
「無機有機ナノ複合物質」、日本化学会編、季刊化学総説、42巻、1999年(学会出版センター);。 Y. Chujo, R. Tamaki, MRS Bull., 26, 389 (2001) Y. Chujo, Curr. Opin. Solid State Mater. Sci., 1, 806 (1996) 戸嶋 直樹、「化学」、50(2)、74(1995) C. K. Chan, I. M. Chu, Polymer, 42, 6089 (2001)
ゾル‐ゲル法によりシリカと複合化した場合、透明で吸湿性と寸法安定性を併せ持った高分子膜を得られる可能性が高い。しかしながら、通常の反応条件下では透明な膜材料を得ることができない(例えば、非特許文献5参照。)。
「無機有機ナノ複合物質」、日本化学会編、季刊化学総説、42巻、1999年(学会出版センター);。 Y. Chujo, R. Tamaki, MRS Bull., 26, 389 (2001) Y. Chujo, Curr. Opin. Solid State Mater. Sci., 1, 806 (1996) 戸嶋 直樹、「化学」、50(2)、74(1995) C. K. Chan, I. M. Chu, Polymer, 42, 6089 (2001)
したがって、ポリアクリル酸に代表される吸湿性の弱酸性ポリマーをシリカマトリックス中に均一に分散させて透明性を確保するためには、新しい相互作用を捻出しそれに適した製造方法を見いだすことが必要であった。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、吸湿性に優れかつ透明な複合材料、特に膜状の形態をした複合材料とその製造方法を提供しようとするものである。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、吸湿性に優れかつ透明な複合材料、特に膜状の形態をした複合材料とその製造方法を提供しようとするものである。
上記課題を解決するため本発明の複合材料は、負に帯電した弱酸性の高分子化合物とシリカ又はオルガノシリカを含有してなる複合材料とした。高分子化合物を負に帯電させることにより互いに反発し、シリカマトリックス中に均一に分散するので透明性を確保することが可能となる。
本発明においては、高分子化合物としてポリアクリル酸を使用することができる。製造過程でpH調整することにより、弱酸性のポリアクリル酸は負に帯電し、シリカマトリックス中での均一分散が可能となる。
また、本発明においては前記複合材料の形態を膜状とすることが好ましい。電子デバイス用用途として極めて有用だからである。
本発明においては、高分子化合物としてポリアクリル酸を使用することができる。製造過程でpH調整することにより、弱酸性のポリアクリル酸は負に帯電し、シリカマトリックス中での均一分散が可能となる。
また、本発明においては前記複合材料の形態を膜状とすることが好ましい。電子デバイス用用途として極めて有用だからである。
本発明の複合材料の製造方法は、弱酸性高分子化合物と、下記化学式(1)又は化学式(2)で示されるケイ素化合物を混合した水溶液のpHを4を越え6未満に調整した後、室温ないし該水溶液の沸点以下の温度で反応させる方法とした。
ここで、
Si(OR)4 (Rはメチル基又はエチル基)・・・・・・(1)
R’Si(OR)3 (R’はアミノプロピル基、Rはメチル基又はエチル基)
・・・・・・(2)
pHを上記の範囲に調整することにより、高分子化合物が効率よく解離し、負に帯電させることが可能となるからである。
本発明の複合材料の製造方法においては、前記高分子化合物としてポリアクリル酸を使用することができる。ポリアクリル酸が有する吸湿性を利用することができるからである。
ここで、
Si(OR)4 (Rはメチル基又はエチル基)・・・・・・(1)
R’Si(OR)3 (R’はアミノプロピル基、Rはメチル基又はエチル基)
・・・・・・(2)
pHを上記の範囲に調整することにより、高分子化合物が効率よく解離し、負に帯電させることが可能となるからである。
本発明の複合材料の製造方法においては、前記高分子化合物としてポリアクリル酸を使用することができる。ポリアクリル酸が有する吸湿性を利用することができるからである。
本発明の透明吸湿性高分子膜は透明で、かつ吸湿に伴う形状変化が少なくなると期待できる。したがってフィルム状吸湿材料とした場合には、他の材料と積層して使用すると吸湿による剥離の可能性が少なくなる。したがって、ポリエステル等の包装用基材フィルムとの積層化が可能であり、基材フィルムをわずかに透過してきた水分を本発明の高分子膜に捕捉させて、水蒸気バリア性がより向上した包装用パッケージ袋を作製することができる。
また、ELや太陽電池等に用いるフレキシブルポリマーガラスには酸素ガスバリア性と並んで水蒸気バリア性が求められている。本発明の高分子膜を塗布、ラミネート等の積層法によりフレキシブルポリマーガラスと組み合わせるとことにより、水蒸気バリア性を一層向上させることができる。それにより電子デバイスの耐久性や性能を一層向上させることが可能となるので、電子デバイス用の材料として極めて有用である。
また、ELや太陽電池等に用いるフレキシブルポリマーガラスには酸素ガスバリア性と並んで水蒸気バリア性が求められている。本発明の高分子膜を塗布、ラミネート等の積層法によりフレキシブルポリマーガラスと組み合わせるとことにより、水蒸気バリア性を一層向上させることができる。それにより電子デバイスの耐久性や性能を一層向上させることが可能となるので、電子デバイス用の材料として極めて有用である。
一般に、弱酸性ポリマーは水溶液中で解離しており、その解離度は溶液のpHに依存して変化する。充分に解離した状態にあっては、負に帯電したアニオン間に静電反発作用が働き、高分子鎖間の凝集が抑制される。この凝集抑制効果をシリカマトリクス中で発現させることができれば、弱酸性ポリマーが均一に分散したシリカ複合材料を創製することができると考えて本発明に至った。
本発明においては、このような弱酸性ポリマーの解離状態を実現するために、ゾル‐ゲル反応を行う際に酸と塩基を用いて溶液のpHを一定の範囲内に制御する。pHの制御範囲は高分子鎖同士が凝集しない程度に解離する範囲であればよい。また、弱酸性ポリマーとシリカ原料は任意の混合比で複合化することができるが、通常この種のポリマーに見られるような吸湿による膨潤を極力抑えるためには、シリカ原料の割合を多くして変形し難い骨格を形成することが好ましい。
本発明においては、このような弱酸性ポリマーの解離状態を実現するために、ゾル‐ゲル反応を行う際に酸と塩基を用いて溶液のpHを一定の範囲内に制御する。pHの制御範囲は高分子鎖同士が凝集しない程度に解離する範囲であればよい。また、弱酸性ポリマーとシリカ原料は任意の混合比で複合化することができるが、通常この種のポリマーに見られるような吸湿による膨潤を極力抑えるためには、シリカ原料の割合を多くして変形し難い骨格を形成することが好ましい。
本発明の第1の特徴は、負に帯電した有機ポリマー間の相互反発という新しい分子間相互作用を捻出し、それを吸収性に優れた弱酸性ポリマーとアルコキシシランとのゾル−ゲル反応に適用したことである。
第2の特徴は、それらのゾル−ゲル反応を水溶液中で進行させるに際して、pHを4を越え6未満の一定範囲内に制御することにより、弱酸性ポリマーの均一分散を達成し、透明で形状変化が少なく、しかも吸湿性に優れた複合材料を創製したことである。
第2の特徴は、それらのゾル−ゲル反応を水溶液中で進行させるに際して、pHを4を越え6未満の一定範囲内に制御することにより、弱酸性ポリマーの均一分散を達成し、透明で形状変化が少なく、しかも吸湿性に優れた複合材料を創製したことである。
先ず、本発明の透明吸湿性高分子膜の製造方法を説明する。
本発明のゾル−ゲル反応で用いる弱酸性ポリマーとしては、カルボキシル基のような弱酸性の置換基を有するものであれば何でもよく、前記ポリアクリル酸の他に、ポリメタクリル酸、ポリスチレンカルボン酸等も使用できる。
当該ポリマーを水溶媒に溶解後、塩酸またはアンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液あるいはアミン化合物を用いてpHを4を越え6未満の範囲に調整する。特に、pHを4.5〜5.5の範囲に調整する。例えば弱酸性ポリマーとしてポリアクリル酸を用いる場合には、その水溶液のpHは2.75であるから、適当な塩基を用いてpHを4を越え6未満の範囲に調整するのが好ましい。アミン化合物としては水溶液中で塩基性を示すものであれば何でもよく、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン等が使用できる。その溶液に所定量のケイ素化合物を混合する。ケイ素化合物としては下記化学式(1)又は(2)で示されるアルコキシシランを用いるのが好ましい。
Si(OR)4 (Rはメチル基又はエチル基)・・・・・・(1)
R’Si(OR)3 (R’はアミノプロピル基、Rはメチル基又はエチル基)
・・・・・・(2)
アルコキシシランは3官能性以上のものであれば何でもよく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の4官能性アルコキシシラン、あるいはアルコキシ基の一つが親水性を有するアルキル基で置換されたアミノプロピルトリメトキシシラン等の3官能性アルコキシシラン、さらにはそれらを組み合わせたものを用いることができる。
本発明のゾル−ゲル反応で用いる弱酸性ポリマーとしては、カルボキシル基のような弱酸性の置換基を有するものであれば何でもよく、前記ポリアクリル酸の他に、ポリメタクリル酸、ポリスチレンカルボン酸等も使用できる。
当該ポリマーを水溶媒に溶解後、塩酸またはアンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液あるいはアミン化合物を用いてpHを4を越え6未満の範囲に調整する。特に、pHを4.5〜5.5の範囲に調整する。例えば弱酸性ポリマーとしてポリアクリル酸を用いる場合には、その水溶液のpHは2.75であるから、適当な塩基を用いてpHを4を越え6未満の範囲に調整するのが好ましい。アミン化合物としては水溶液中で塩基性を示すものであれば何でもよく、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン等が使用できる。その溶液に所定量のケイ素化合物を混合する。ケイ素化合物としては下記化学式(1)又は(2)で示されるアルコキシシランを用いるのが好ましい。
Si(OR)4 (Rはメチル基又はエチル基)・・・・・・(1)
R’Si(OR)3 (R’はアミノプロピル基、Rはメチル基又はエチル基)
・・・・・・(2)
アルコキシシランは3官能性以上のものであれば何でもよく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の4官能性アルコキシシラン、あるいはアルコキシ基の一つが親水性を有するアルキル基で置換されたアミノプロピルトリメトキシシラン等の3官能性アルコキシシラン、さらにはそれらを組み合わせたものを用いることができる。
上記混合溶液を密閉下、室温にて攪拌する。攪拌時間は混合溶液が充分に均一化し、攪拌終了後も濃度むらを生じることなく均一状態を保持できる程度の時間とする。通常、1時間程度が望ましい。その後、一定温度に設定した恒温槽中に静置する。溶媒をゆっくりと蒸発させて乾燥させると、目的とする透明で吸湿性を有する複合材料膜が得られる。
ここで良質な膜を得るためには撹拌溶液を任意の基材に塗布し、溶媒をゆっくりと蒸発させて乾燥させることが肝要であることから、恒温槽の温度を室温以上水溶液の沸点以下に設定し、数分〜10日間程度静置する。効率性の観点から望ましくは60℃で1週間程度静置するのが良い。これにより本発明の吸湿性透明高分子膜を得ることができる。
自立膜を得るためには、基材にフッ素樹脂やポリプロピレン等の接着性の良くない基材を用いると良い。複合材料膜を基材から容易に剥がすことができる。
ここで良質な膜を得るためには撹拌溶液を任意の基材に塗布し、溶媒をゆっくりと蒸発させて乾燥させることが肝要であることから、恒温槽の温度を室温以上水溶液の沸点以下に設定し、数分〜10日間程度静置する。効率性の観点から望ましくは60℃で1週間程度静置するのが良い。これにより本発明の吸湿性透明高分子膜を得ることができる。
自立膜を得るためには、基材にフッ素樹脂やポリプロピレン等の接着性の良くない基材を用いると良い。複合材料膜を基材から容易に剥がすことができる。
また、成膜にあたっては上記のキャスト法以外にも種々の方法を用いることができる。例えば、回転基板上に溶液を注下して成膜するスピンコート法や、ドクターブレードあるいはバーコーターにより平面基板上に塗布する方法、塗布対象を溶液中に浸漬した後、引き上げるディッピング法、さらには溶液をスプレーガンで噴霧して塗布するスプレー法により成膜することもできる。スピンコート法においては、回転している基板上に溶液を注下しても良いし、注下後に回転させても良い。いずれの場合においても、溶液は上記キャスト操作で調整した塗布前の撹拌溶液を用いるのが良い。これらの方法により任意の形状、膜厚の膜を作製することができる。
上記のようにして得られた複合材料は、溶媒が揮散してシリカマトリクス中にポリアクリル酸が微細に均一分散した形態を有し、ポリアクリル酸が有する吸湿性と透明性を兼ね備えた材料が得られる。しかも薄膜に成形することも容易で、電子デバイス用の材料用途として期待できるものである。
上記の製造方法においてはpH調整が重要である。pHの適正値を求めるために、以下のような実験を行った。すなわち、弱酸性ポリマーとして200mgのポリアクリル酸を用いた水溶液に、1Nの塩酸もしくはアンモニア水を用いてpHを表1に示すように1.55から9.54の範囲に調整し、その溶液に100mgのテトラメトキシシラン(Si(OCH3)4 )を混合して密閉下室温にて1時間攪拌した。この溶液をガラス基板上に塗布し、60℃に設定した恒温槽中でゆっくりと溶媒を蒸発・乾燥させて厚さ100μmの高分子膜を得た。得られた高分子膜の波長400nmにおける光透過率を図1に示す。また、酸または塩基の添加量、pHおよび透明性の判定結果を表1にまとめて示す。
図1及び表1の結果から明らかなように、pHを4を越え6未満の範囲に制御することにより透明な高分子膜を得られることが判る。pHが4を越え6未満の範囲では、ポリアクリル酸が良く解離しており、これがシリカマトリクス中でのポリアクリル酸の凝集を防いでいるので、高い透明性が確保されるものと推定できる。特に、pHが4.5〜5.5の範囲で著しい。
次に、アルコキシシランの種類を変えて高分子膜の作製実験をした場合の成膜結果を表2に示す。表2から明らかなように、pHを4を越え6未満の範囲に制御することにより、アルコキシシランの種類が4官能性の場合だけでなく、3官能性の場合にも透明な高分子膜が得られることが判る。
次に、pH調整剤として各種の塩基を用いた場合の結果を表3に示す。
ポリアクリル酸50mgを水3mLに添加し、10重量%の塩基水溶液0.03mLを使用してpH5前後に調整した後、テトラメトキシシラン250mgを加えて1時間撹拌した。この溶液をポリプロピレンシート表面に塗布し、60℃に設定した恒温槽中でゆっくりと溶媒を蒸発・乾燥させた。
アンモニア水に代えてアミン化合物や水酸化ナトリウムを用いた場合にも、アンモニア水を用いた場合と同様に透明な高分子膜が得られることが判る。
ポリアクリル酸50mgを水3mLに添加し、10重量%の塩基水溶液0.03mLを使用してpH5前後に調整した後、テトラメトキシシラン250mgを加えて1時間撹拌した。この溶液をポリプロピレンシート表面に塗布し、60℃に設定した恒温槽中でゆっくりと溶媒を蒸発・乾燥させた。
アンモニア水に代えてアミン化合物や水酸化ナトリウムを用いた場合にも、アンモニア水を用いた場合と同様に透明な高分子膜が得られることが判る。
次に、ポリアクリル酸とシリカの割合を変えた高分子膜について、吸湿率の時間変化を測定した。高分子膜は乾燥後のシリカの組成比が80%及び17%のものについて測定した。この時の測定に用いた膜の作製条件を表4に示す。吸湿率の時間変化を図2に経日変化として示す。さらに図2中の初期特性部分を拡大した経時変化を図3に示す。
図2および図3において白丸(曲線:a)はシリカの組成比が17%の場合、黒丸(曲線:b)はシリカの組成比が80%の場合を示す。
図2および図3において白丸(曲線:a)はシリカの組成比が17%の場合、黒丸(曲線:b)はシリカの組成比が80%の場合を示す。
シリカの組成比が小さくポリアクリル酸の量が相対的に多いもの(曲線:a)は、長時間の放置により大きな吸湿性を示すが、6時間までの吸湿初期においてはシリカの相対量の多いものほど吸湿率が大きい。また、シリカ組成比が大きいものは、比較的短時間に吸湿率がほぼ一定値に達することから、膨潤に伴う体積変化を一定の範囲内に抑えることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
弱酸性ポリマーとしてポリアクリル酸を用いる場合について説明する。
200mgのポリアクリル酸(−(CH2CHCOOH)n−、ただしnは1以上の自然数)を10mLの水に溶解後、1Nの塩酸または1Nのアンモニア水を用いてpHを4.67に調整した。その溶液に100mgのテトラメトキシシラン(Si(OCH3)4 )を混合して密閉下室温にて1時間攪拌した。その後、ポリプロピレンシート表面に塗布し60℃に設定した恒温槽中でゆっくりと溶媒を蒸発・乾燥させて、下記に示すような吸湿性透明高分子膜の自立膜を得た。
膜 組 成:ポリアクリル酸20%、シリカ80% (ゾルーゲル反応後に得られるシリ カ重量はテトラメトキシシラン仕込み量の40%)
膜 厚:600μm(吸湿前)
膨 潤 率:1%未満
吸 湿 率:2.4%(測定条件は25℃1気圧の飽和水蒸気雰囲気下で1時間放置。) 吸湿率=(吸湿後の重量−吸湿前の重量)/吸湿前の重量
透 過 率:98%以上(波長:350nm〜1,000nmの範囲、吸湿後も透明)
弱酸性ポリマーとしてポリアクリル酸を用いる場合について説明する。
200mgのポリアクリル酸(−(CH2CHCOOH)n−、ただしnは1以上の自然数)を10mLの水に溶解後、1Nの塩酸または1Nのアンモニア水を用いてpHを4.67に調整した。その溶液に100mgのテトラメトキシシラン(Si(OCH3)4 )を混合して密閉下室温にて1時間攪拌した。その後、ポリプロピレンシート表面に塗布し60℃に設定した恒温槽中でゆっくりと溶媒を蒸発・乾燥させて、下記に示すような吸湿性透明高分子膜の自立膜を得た。
膜 組 成:ポリアクリル酸20%、シリカ80% (ゾルーゲル反応後に得られるシリ カ重量はテトラメトキシシラン仕込み量の40%)
膜 厚:600μm(吸湿前)
膨 潤 率:1%未満
吸 湿 率:2.4%(測定条件は25℃1気圧の飽和水蒸気雰囲気下で1時間放置。) 吸湿率=(吸湿後の重量−吸湿前の重量)/吸湿前の重量
透 過 率:98%以上(波長:350nm〜1,000nmの範囲、吸湿後も透明)
本実施例で作製された透明高分子膜の赤外吸収スペクトルを図4(a)に示す。1,710cm−1に−COOH基に基づく吸収スペクトルが観測され、1,550cm−1に−COO− 基に基づく吸収スペクトルを確認することができ、ポリアクリル酸が負に帯電していることが判る。図4(b)はpHを2.75に調整して合成したもの、図4(c)はポリアクリル酸単体の赤外吸収スペクトルであって、−COO− 基に基づく1,550cm−1の吸収スペクトルは現れていない。
また、示差走査熱分析の結果を図5(a)に示す。明確なガラス転移温度は観測することができず、有機ポリマーがナノレベルでシリカマトリクス中に分散・固定されている様子がわかる。これに対して図5(b)に示すポリアクリル酸単体の示差走査熱分析では、123℃でガラス転移に伴う吸熱側へのベースラインのシフトが観測される。
また、熱重量分析の結果を図6(a)に示す。図6(b)はポリアクリル酸単体の熱重量分析結果である。5%重量減少温度はいずれも190℃であり、良好な耐熱性を示していることが判る。
また、熱重量分析の結果を図6(a)に示す。図6(b)はポリアクリル酸単体の熱重量分析結果である。5%重量減少温度はいずれも190℃であり、良好な耐熱性を示していることが判る。
本実施例で作製された透明高分子膜(膜厚:100μm)について、350〜1,000nmの波長範囲で測定した透過率を図7に示す。図7に示すように、全波長域において透過率は98%以上の優れた透明性を有していることが判る。
本発明によれば機械的強度や耐熱性に優れた無機物と、選択的な物質透過性や吸湿性等の様々な機能を有する有機ポリマーとがナノレベルで複合化されているので、室温で安定した吸湿性を示し、かつ光透過性にも優れているので、液晶ディスプレイ等の電子デバイスの構成材料として利用でき、エレクトロニクス分野の材料として寄与する点がまことに大である。
Claims (5)
- 負に帯電した弱酸性の高分子化合物とシリカ又はオルガノシリカを含有してなることを特徴とする複合材料。
- 前記高分子化合物がポリアクリル酸であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
- 前記複合材料の形態が透明膜状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合材料。
- 弱酸性高分子化合物と、下記化学式(1)又は化学式(2)で示されるケイ素化合物を混合した水溶液のpHを4を越えて6未満に調整した後、室温ないし該水溶液の沸点以下の温度で反応させることを特徴とする請求項1に記載の複合材料の製造方法。
ここで、
Si(OR)4 (Rはメチル基又はエチル基)・・・・・・(1)
R’Si(OR)3 (R’はアミノプロピル基、Rはメチル基又はエチル基)
・・・・・・(2) - 前記高分子化合物がポリアクリル酸であることを特徴とする請求項4に記載の複合材料の製造方法。
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-
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- 2004-03-09 JP JP2004066067A patent/JP2005255730A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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KR102042241B1 (ko) | 2019-02-01 | 2019-11-08 | 삼성디스플레이 주식회사 | 유기 발광 표시 장치 및 그 제조 방법 |
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