そこで、この発明の課題は、赤色レーザ光を出射する半導体レーザ装置を構成するのに適し、その半導体レーザ装置の低発振閾値電流と高信頼性を両立しつつ、製造工程を大幅に削減し、製造歩留りを向上することができる化合物半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
また、この発明の課題は、そのような半導体レーザ装置を構成する化合物半導体装置を備えた光ディスク装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の化合物半導体装置は、
GaAs基板上に積層された、Pを含みAlを含まないIII−V族化合物半導体を結晶材料とする下地半導体層と、
P、AlおよびInを含むIII−V族化合物を結晶材料とし、かつ上記下地半導体層の表面上に形成されたストライプ状のリッジをなす直上半導体層と、
上記リッジの頂部および少なくとも一方の側面、並びに上記下地半導体層の上面のうち上記リッジの側方に相当する部分を被覆する電極層とを備え、
上記下地半導体層のうち少なくとも上記電極層と接する部分の導電型を定める不純物のドーピング濃度が、上記下地半導体層と電極層との界面で電流が阻止されるように1×1017cm-3以下に設定されていることを特徴とする。
ここで、「導電型」とはn型またはp型を指す。
「Pを含みAlを含まないIII−V族化合物半導体」とは例えばInGaPやInGaAsPであり、「P、AlおよびInを含むIII−V族化合物」とは例えばInGaAlPである(ただし、いずれも組成比を省略した表記である。)。
また、上記下地半導体層のうち上記電極層と接する部分だけでなく、上記下地半導体層の全域について、導電型を定める不純物のドーピング濃度が1×1017cm-3以下に設定されていても良い。
この発明の化合物半導体装置は、概略、GaAs基板上に下地半導体層、直上半導体層を順に結晶成長して積層し、直上半導体層をストライプ状のリッジをなすようにエッチング加工するとともにその側方に下地半導体層を露出させ、それらの上に電極層を形成することによって容易に作製され得る。このようにした場合、製造段階で結晶成長工程を1度で済ませることができる。したがって、一般的なリッジ埋め込み構造の半導体レーザ装置を製造する場合に比して、大幅に製造工程が削減され、製造歩留りが向上する。したがって、この発明の化合物半導体装置およびそれを適用して構成された半導体レーザ装置は、低コストで作製される。
また、この発明の化合物半導体装置の電極層とGaAs基板との間に電流を流す場合、上記下地半導体層のうち上記電極層と接する部分の導電型を定める不純物のドーピング濃度が1×1017cm-3以下に設定されているので、上記リッジの側方では上記下地半導体層と電極層との界面で電流が阻止される。したがって、上記電極層と上記リッジの頂部との接合のみを通して電流が流すことができる。これにより、電流狭窄が行われる。したがって、結晶成長工程で、上記GaAs基板と下地半導体層との間にInGaAlP系の半導体層群(レーザ発振を行うための活性層を含む半導体層群)を積層しておくことにより、赤色レーザ光を出射する半導体レーザ装置を好適に構成することができる。
また、この発明の化合物半導体装置を適用して構成された半導体レーザ装置は、低発振閾値電流と高信頼性を両立することができる(後にデータを示して詳述する。)。
なお、上記半導体基板の、上記各層が積層された面とは反対側の面に、この面とオーミック接合をなす別の電極層が設けられるのが望ましい。これにより、上記二つの電極層間で上記活性層を含む半導体層群を通して容易に通電が行われ、レーザ発振が実現される。
さらに、上記リッジが順メサ形状の断面を有するのが望ましい。その場合、この化合物半導体装置の製造段階で、上記リッジ上に電極層を例えば蒸着するだけで、上記電極層は上記リッジの頂部および側面、並びに上記下地半導体層の上面のうち上記リッジの側方に相当する部分を連なって被覆する状態になる。つまり、上記電極層が上記リッジの頂部と上記下地半導体層の上面との間で段切れすることがない。したがって、この発明の化合物半導体装置およびそれを適用して構成された半導体レーザ装置は、歩留りよくさらに安価で製造される。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記リッジは、上記直上半導体層と、この直上半導体層上に順に積層されたInGaP層と、GaAs層とを含むことを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記GaAs層の導電型を定める不純物のドーピング濃度を或る値以上に設定してコンタクト層を構成することにより、上記リッジの頂部(コンタクト層)と電極層とがオーミック接合をなすように容易に設定できる。これにより、上記リッジの頂部と電極層との間の接触抵抗を低減できる。また、上記直上半導体層と上記GaAs層との間にInGaP層が設けられているので、上記直上半導体層と上記GaAs層との間で生じるエネルギーバンドオフセットに起因する抵抗値の増大を防止できる。したがって、素子抵抗を低減することができる。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記リッジは、さらに上記GaAs層上に積層されたInGaAs層を含むことを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記InGaAs層の導電型を定める不純物のドーピング濃度を或る値以上に設定してコンタクト層を構成することにより、上記リッジの頂部(コンタクト層)と電極層とがオーミック接合をなすように容易に設定できる。これにより、上記リッジの頂部と電極層との間の接触抵抗を低減できる。そのことにより、上記リッジのストライプ幅をより狭めることが可能となる。その結果、この化合物半導体装置を適用して構成された半導体レーザ装置の、発振閾値電流の低減やキンク発生出力の向上を図ることができる。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記直上半導体層をなす結晶材料が、InGaAlPまたはInGaAlAsPのいずれかからなることを特徴とする。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記下地半導体層をなす結晶材料が、InGaPまたはInGaAsPのいずれかからなることを特徴とする。
上記二つの実施形態によれば、上記下地半導体層と直上半導体層との間にエッチング選択性を持たせることができる。したがって、この化合物半導体装置の製造段階で、上記リッジを制御性よく簡便に形成することが可能となる。
一実施形態の化合物半導体装置は、上記下地半導体層の層厚が30Å以上であることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記下地半導体層の層厚が30Å以上であるから、この化合物半導体装置の製造段階における、直上半導体層をストライプ状のリッジをなすようにエッチング加工する工程で、深さ方向に関して上記下地半導体層でエッチングを停止させて、上記リッジの側方に下地半導体層を露出させることが容易になる。したがって、さらに上記リッジを制御性よく簡便に形成することができる。
一実施形態の化合物半導体装置は、上記下地半導体層の層厚が0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記下地半導体層の層厚が0.1μm以上であるから、上記下地半導体層のうち上記リッジの側方に相当する部分と電極層との界面で電流が十分に阻止される。したがって、電流ブロック層の再成長や、あるいは絶縁膜を挿入することなしに、電流狭窄が有効に行われる。また、上記下地半導体層の層厚が0.4μm以下であるから、上記電極層とGaAs基板との間で上記下地半導体層(のうち上記リッジ直下に相当する部分)を通して電流が流される場合に、実質的に素子抵抗が増大することはない。
一実施形態の化合物半導体装置では、
上記GaAs基板と下地半導体層との間で上記下地半導体層の下面に接した位置に、この下地半導体層の導電型と同じ導電型を持ち、かつその導電型を定める不純物のドーピング濃度が1×1017cm-3以下に設定された第二半導体層を備え、
上記下地半導体層と第二半導体層の層厚の総和が0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記GaAs基板と下地半導体層との間で上記下地半導体層の下面に接した位置に設けられた第二半導体層は、下地半導体層の導電型と同じ導電型を持ち、かつその導電型を定める不純物のドーピング濃度が1×1017cm-3以下に設定されているので、上記下地半導体層と同様に働く。したがって、上記下地半導体層の層厚が0.1μmに満たない場合であっても、上記下地半導体層と第二半導体層の層厚の総和が0.1μm以上であるから、十分な電流狭窄性が得られる。また、上記下地半導体層と第二半導体層の層厚の総和が0.4μm以下であるから、上記電極層とGaAs基板との間で上記下地半導体層と第二半導体層(のうち上記リッジ直下に相当する部分)を通して電流が流される場合に、実質的に素子抵抗が増大することはない。
上記第二半導体層をなす結晶材料は、P、AlおよびInを含むIII−V族化合物であるのが望ましく、例えばInGaAlAsPであっても良い。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記リッジに含まれた上記GaAs層の導電型を定める不純物のドーピング濃度が5×1018cm-3以上であることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記リッジに含まれた上記GaAs層の導電型を定める不純物のドーピング濃度が5×1018cm-3以上であるから、上記電極層とGaAs基板との間で電流が流される場合に、素子抵抗を十分に低減することができる。その結果、消費電力を低減することが可能となる。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記リッジに含まれた上記InGaAs層の導電型を定める不純物のドーピング濃度が5×1018cm-3以上であることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記電極層直下のInGaAsからなる層のドーピング濃度が5×1018cm-3以上であるから、上記電極層とGaAs基板との間で電流が流される場合に、素子抵抗を十分に低減することができる。その結果、消費電力を低減することが可能となる。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記下地半導体層をなす結晶材料がInGaPからなり、このInGaPにおけるIII族元素中のGa組成比が0.367以上0.665以下であることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記下地半導体層をなす結晶材料がInGaPからなり、このInGaPにおけるIII族元素中のGa組成比(In1-xGaxPと表したときのxの値)が0.367以上0.665以下であるから、上記下地半導体層の上下に形成された半導体層との界面における格子不整合によって生じる結晶性の悪化や、抵抗の増大が生じない。したがって、良好な素子特性を維持することができる。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記下地半導体層をなす結晶材料がInGaAsPからなり、上記下地半導体層とGaAs基板との格子不整合率が±1.5%以下であることを特徴とする。ここで、格子不整合率が±1.5%以下であるとは、格子不整合率の絶対値が1.5%以下であることを意味する。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記下地半導体層をなす結晶材料がInGaAsPからなり、上記下地半導体層とGaAs基板との格子不整合率が±1.5%以下であるから、上記下地半導体層の組成がInGaAsPの場合でも、結晶性の悪化や、抵抗の増大が生じない。したがって、良好な素子特性を維持することができる。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記GaAs基板と下地半導体層との間に、レーザ発振を行うための活性層を含む半導体層群を備えたことを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記GaAs基板と下地半導体層との間に、レーザ発振を行うための活性層を含む半導体層群を備える。これにより、半導体レーザ装置が構成される。
上記電極層とGaAs基板との間に通電されたとき、上記活性層は上記リッジがストライプ状に延びる方向に対して垂直な二つの端面間でレーザ発振を行うようになっているの
が望ましい。これにより、安定したレーザ発振が可能となる。
また、上記GaAs基板と上記活性層との間の半導体層は第1導電型であり、上記活性層と電極層との間の半導体層は第2導電型であるのが望ましい。なお、「第1導電型」とはn型またはp型のうち一方の導電型を指し、「第2導電型」とはn型とp型のうち他方の導電型を指す。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記ストライプ状のリッジをなす直上半導体層の両脇の上記下地半導体層表面上に、上記リッジ以上の高さを有するストライプ状構造体をさらに有することを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記リッジの両脇にリッジ以上の高さを有するストライプ状の構造体を有するために、リッジ側に設けられた電極をステムや放熱体にダイボンドするいわゆるジャンクションダウン型の実装を行う際にも、リッジ部が破損したりすることを防止することができる。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記電極層は、さらに上記ストライプ状構造体上に形成されていることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記ストライプ状構造体上に上記電極層が形成されているために、上述のジャンクションダウン型実装の際、ステムや放熱体の導電体と上記ストライプ状構造体上の電極層との間で容易に電気的な導通を取ることができるようになる。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記ストライプ状構造体が半導体層からなり、上記ストライプ状構造体と上記電極層との界面に絶縁体が挿入されていることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記ストライプ状構造体と上記電極層との界面に絶縁体が挿入されているために、上記ストライプ状構造体を介して上記電極層から下地半導体層へ電流が流れることがない。したがって余分なリーク電流を生じさせることがなく、低い閾値電流値を有する化合物半導体装置を提供することができる。
ここで、上記絶縁体としては、SiO2やSiNxなどの無機絶縁体の他、有機樹脂などを好適に適用することができる。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記ストライプ状構造体が半導体層からなり、上記ストライプ状構造体の少なくとも頂部の上記電極層と接する半導体層の導電型を定める不純物のドーピング濃度が、上記ストライプ状構造体の頂部と電極層との界面で電流が阻止されるように1×1017cm-3以下に設定されていることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記ストライプ状構造体の頂部であって上記電極層と接する半導体層のドーピング濃度を1×1017cm−3以下とすることによって、別途絶縁体等を設けることなく、上記電極層と上記ストライプ状構造体との界面で電流を遮断できるようになる。したがって、ジャンクションダウン型実装時のリッジ破損防止に効果のあるストライプ状構造体が低コストで形成可能となる。
一実施形態の化合物半導体装置では、上記電極層は、上記ストライプ状構造体は、上記電極層上に形成された導電体であることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置では、上記ストライプ状構造体は、上記電極層上に形成され、かつ導電体であることにより、ステムや放熱体と電極層との導通をとりつつ、リッジ部の破損を防止することができる。このとき、活性層で発生した熱をより効率的に外部に放出できる効果がある。さらに、電流遮断を行うための絶縁体やドーピング濃度が1×1017cm−3以下の半導体層を形成する必要がないため、製造工程がより簡略化でき、歩留まりがよく製造コストの安い半導体レーザ装置を提供することが可能となる。
この発明の化合物半導体装置の製造方法は、
GaAs基板上に少なくとも、Pを含みAlを含まないIII−V族化合物半導体を結晶材料とし、かつ導電型を定める不純物のドーピング濃度が1×1017cm-3以下である下地半導体層と、P、AlおよびInを含むIII−V族化合物を結晶材料とする直上半導体層とを順に積層する結晶成長工程と、
上記直上半導体層上にストライプ状のパターンを持つエッチングマスクを形成する工程と、
上記エッチングマスクを用いて上記直上半導体層のうち上記エッチングマスクの側方に相当する部分をエッチングして除去して、上記下地半導体層の表面上に上記直上半導体層からなるストライプ状のリッジを形成するとともに、上記下地半導体層のうち上記リッジの側方に相当する部分を露出させるエッチング工程と、
上記エッチングマスクを除去した後、上記リッジの頂部および少なくとも一方の側面、並びに上記下地半導体層の上面のうち上記リッジの側方に相当する部分を被覆するように電極層を形成する電極形成工程と、
を含むことを特徴とする。
この発明の化合物半導体装置の製造方法によれば、上述の化合物半導体装置が容易に製造される。また、製造段階で結晶成長工程を1度で済ませることができるので、一般的なリッジ埋め込み構造の半導体レーザ装置を製造する場合に比して、大幅に製造工程が削減され、製造歩留りが向上する。したがって、この発明の化合物半導体装置およびそれを適用して構成された半導体レーザ装置は、低コストで作製される。製造された化合物半導体装置では、上記リッジの側方では上記下地半導体層と電極層との界面で電流が阻止される。
一実施形態の化合物半導体装置の製造方法では、上記エッチング工程における、上記下地半導体層に対するエッチング速度が、上記直上半導体層に対するエッチング速度よりも遅いことを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置の製造方法では、上記直上半導体層のうち上記エッチングマスクの側方に相当する部分をエッチングして除去するとき、上記下地半導体層でエッチングを容易に停止させることができる。したがって、上記リッジを制御性よく簡便に形成することができる。
一実施形態の化合物半導体装置の製造方法では、
上記結晶成長工程で、上記直上半導体層上にさらにInGaP層とGaAs層とをこの順に積層し、
上記エッチング工程で、上記GaAs層、InGaP層および直上半導体層のうち上記エッチングマスクの側方に相当する部分をエッチング対象とし、このエッチングを、深さ方向に関して上記GaAs層の上面側から上記直上半導体層の途中まで乾式エッチング法により行い、続いて上記直上半導体層の途中から上記下地半導体層が露出するまで湿式エッチング法により行うことを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置の製造方法によれば、乾式エッチング法によりエッチングを行う間、横方向へのエッチング進行を比較的少なくできる。したがって、上記リッジを順メサ形状に制御性よく簡便に形成することができる。
一実施形態の化合物半導体装置の製造方法は、上記乾式エッチング法および湿式エッチング法によるエッチング後に、上記直上半導体層とGaAs層の側面の間から側方へ突出する態様で残ったInGaP層の端部を、超音波を加えた純水洗浄によって除去する工程とを含むことを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置の製造方法によれば、上記直上半導体層とGaAs層の側面の間から側方へ突出する態様で残ったInGaP層の端部が、超音波を加えた純水洗浄によって除去される。したがって、上記リッジを順メサ形状に制御性よく簡便に形成することができる。
一実施形態の化合物半導体装置の製造方法は、上記InGaP層の層厚が0.1μm以下であることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置の製造方法によれば、上記InGaP層の層厚が0.1μm以下であるから、上記直上半導体層とGaAs層との間に側方へ突出する態様で残ったInGaP層の端部が、超音波を加えた純水洗浄によって容易に除去される。
一実施形態の化合物半導体装置の製造方法は、上記純水洗浄に加える超音波の振動数が20kHz乃至350kHzであることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置の製造方法によれば、上記純水洗浄に加える超音波の振動数が20kHz乃至350kHzであるから、純水中に破壊的なキャビテーションがランダムに発生して、上記直上半導体層とGaAs層との間に側方へ突出する態様で残ったInGaP層の端部がさらに容易に除去される。
一実施形態の化合物半導体装置の製造方法は、
上記結晶成長工程で、上記直上半導体層上にこの直上半導体層よりもIII族元素中のAl混晶比が小さいようなInGaAlP層と、GaAs層とをこの順に積層し、
上記エッチング工程で、上記GaAs層、InGaAlP層および直上半導体層のうち上記エッチングマスクの側方に相当する部分をエッチングして除去するとともに、このエッチングを、深さ方向に関して上記GaAs層の上面側から上記直上半導体層の途中まで乾式エッチング法により行い、続いて上記直上半導体層の途中から上記下地半導体層が露出するまで湿式エッチング法により行うことを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置の製造方法によれば、乾式エッチング法によりエッチングを行う間、湿式エッチング法による場合に比して、横方向へのエッチング進行を比較的少なくできる。したがって、上記リッジを順メサ形状に制御性よく簡便に形成することができる。
一実施形態の化合物半導体装置の製造方法は、上記乾式エッチング法で用いるエッチングガスが、塩素系ガスであることを特徴とする。
ここで「塩素系ガス」とは、塩素または塩素化合物を含むガスを意味する。
この一実施形態の化合物半導体装置の製造方法では、乾式エッチング法によりエッチングを行う間、エッチングガスとして塩素系ガスを用いるので、横方向へのエッチング進行を殆ど無くすことができる。この結果、乾式エッチング法によるエッチングの終了時点で、上記エッチングマスクの直下に残される半導体層の側面が基板面に対してほぼ垂直になる。したがって、続いて上記直上半導体層の途中から上記下地半導体層が露出するまで湿式エッチング法によりエッチングを行うことによって、上記リッジを順メサ形状に制御性よく簡便に形成することができる。
一実施形態の化合物半導体装置の製造方法では、上記塩素系ガスに不活性ガスが添加されていることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置の製造方法では、上記塩素系ガスに不活性ガスが添加されているので、乾式エッチング法によりエッチングを行う際に、上記エッチングマスクの直下に残される半導体層の側面の荒れが防止される。
一実施形態の化合物半導体装置の製造方法では、上記湿式エッチング法で用いるエッチャントが、過酸化水素水にリン酸または硫酸を加えた混合水溶液であることを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置の製造方法では、上記湿式エッチング法で用いるエッチャントが、過酸化水素水にリン酸または硫酸を加えた混合水溶液であるから、順メサ形状にするための異方性エッチングを好適に行うことができ、極めて簡略に順メサ形状のリッジを形成することができる。
一実施形態の化合物半導体装置の製造方法では、上記結晶成長工程で、上記GaAs基板と下地半導体層との間に、レーザ発振を行うための活性層を含む半導体層群を積層することを特徴とする。
この一実施形態の化合物半導体装置の製造方法によれば、半導体レーザ装置が製造される。
この発明の光ディスク装置は、本発明の化合物半導体装置であって、上記GaAs基板と下地半導体層との間に、レーザ発振を行うための活性層を含む半導体層群を備えたものを有することを特徴とする。つまり、この発明の光ディスク装置は、本発明の化合物半導体装置を適用して構成された半導体レーザ装置を備える。
上述のように、本発明の化合物半導体装置を適用して構成された半導体レーザ装置は、低発振閾値電流と高信頼性を両立できるので、この発明の光ディスク装置は、データを高速に読み書きできるとともに、長期信頼性を実現できる。また、本発明の化合物半導体装置を適用して構成された半導体レーザ装置は、安価に製造されるので、この発明の光ディスク装置も安価に製造される。
この発明の化合物半導体装置は、赤色レーザ光を出射する半導体レーザ装置を構成するのに適し、その半導体レーザ装置の低発振閾値電流と高信頼性を両立しつつ、製造工程を大幅に削減し、製造歩留りを向上することができる。
また、この発明の化合物半導体装置の製造方法によれば、そのような化合物半導体装置を、一般的なリッジ埋め込み構造の半導体レーザ装置を製造する場合に比して大幅に削減された製造工程で、製造歩留り良く製造でき、したがって安価に製造できる。
さらに、本発明の光ディスク装置は、データを高速に読み書きできるとともに、長期信頼性を実現でき、また、安価に製造される。
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、この発明の化合物半導体装置を適用して構成された第1実施形態の半導体レーザ装置の概略構造を示す断面図であり、図2はその半導体レーザ装置の斜視図である。
この半導体レーザ装置は、n−GaAs基板101上に、n−In0.5Ga0.5Pバッファ層102、n−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P下クラッド層103、多重量子井戸活性層104、p−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第一上クラッド層105、第二半導体層としてのp−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第二上クラッド層106、および下地半導体層としてのp−In0.5Ga0.5Pエッチストップ層107が順次積層されている。上記多重量子井戸活性層104は、In0.5Ga0.5P量子井戸層(歪0.22%、層厚50Å、4層)とIn0.5(Ga0.5Al0.5)0.5Pバリア層(基板側から層厚500Å、50Å3層、500Å)を交互に配置して形成されている。また、上記p−In0.5Ga0.5Pエッチストップ層107上に、順メサストライプ形状のリッジ130をなすように、直上半導体層としてのp−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第三上クラッド層108、InGaP層としてのp−In0.5Ga0.5P中間層109、およびGaAs層としてのp+−GaAsコンタクト層110が設けられている。さらに、リッジ130の頂部、側面部、およびエッチストップ層107の上面(リッジ130の直下を除いた、リッジ130の側方に相当する部分。)を連なって被覆する態様で、電極層としてTi/Pt/Auの順に積層して形成された多層金属薄膜からなるp側電極111が設けられている。なお、111a、111b、111cがそれぞれ、上記リッジ130の頂部、側面部、エッチストップ層107の上面を被覆する部分(これを適宜「電極部分」と呼ぶ。)を表している。電極部分111aとリッジ130の頂部(コンタクト層110)との間のコンタクト抵抗は十分に低い値(1×10-6Ωcm2)になっている。一方、電極部分111cとエッチストップ層107とがなす界面は、図1において下向きの電流を阻止する機能を有している。また、基板101の裏面側には、別の電極層として、AuGe/Ni/Auからなる多層金属薄膜からなるn側電極112が形成されている。図2に示すように、この半導体レーザ装置は、所望の共振器長を有するチップサイズに分割されており、リッジ130のストライプ方向に垂直な両端面に反射膜(不図示)がコーティングされている。これにより、InGaAlP系の赤色半導体レーザ装置が構成されている。
この半導体レーザ装置は、次のようにして作製される。
まず、図3中に示すn−GaAs基板101の(100)面の全域に、n−In0.5Ga0.5Pバッファ層102(層厚:0.25μm、Siドーピング濃度:1×1018cm-3)、n−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P下クラッド層103(層厚:1.2μm、Siドーピング濃度:1×1018cm-3)、多重量子井戸活性層104、p−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第一上クラッド層105(層厚:0.2μm、Beドーピング濃度:1×1018cm-3)、p−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第二上クラッド層106(層厚:0.1μm、Beドーピング濃度:1×1017cm-3)、p−In0.5Ga0.5Pエッチストップ層107(層厚:50Å、Beドーピング濃度:1×1017cm-3)、p−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第三上クラッド層108(層厚:1.2μm、Beドーピング濃度:1.3×1018cm-3)、p−In0.5Ga0.5P中間層109(層厚:500Å、Beドーピング濃度:7×1018cm-3)、p+−GaAsコンタクト層110(層厚:0.3μm、Beドーピング濃度:2×1019cm-3)を順次、MBE法(分子線エピタキシ法)にて結晶成長させる(結晶成長工程)。
次に、リッジ130を形成すべき領域(図1参照)上に、エッチングマスクとしてのレジストマスク113(マスク幅3.5μm)をフォトリソグラフィ工程により作製する。このレジストマスク113は、形成すべきリッジ130が延びる方向に対応して、<0−11>方向にストライプ状に延びるように形成される。
次に、図3〜図5に示すように、半導体層110、109、108のうちレジストマスク113の側方に相当する部分をエッチングして除去する(エッチング工程)。
具体的には、このエッチング工程では、まず図3に示すように、深さ方向に関してp+−GaAsコンタクト層110の上面側からp−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第三上クラッド層108の途中まで乾式(ドライ)エッチング法によりエッチングして除去する。この例では、エッチングガスとして、Cl2とBCl3の1:1混合ガスを用い、それに不活性ガスとしてArガスを添加した。ドライエッチング時の圧力は10mTorrとした。エッチングガスとして塩素系ガスを用いているので、横方向へのエッチング進行を殆ど無くすことができ、この結果、このドライエッチングの終了時点で、レジストマスク113の直下に残される半導体層110、109、108の側面Vが基板面に対してほぼ垂直な形状になる。
続いて、図4に示すように、深さ方向に関してp−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第三上クラッド層108の途中からp−In0.5Ga0.5Pエッチストップ層107が露出するまで湿式エッチング法によりエッチングして除去する。この例では、エッチャントとして、リン酸と過酸化水素水の混合水溶液を用いる。この結果、p+−GaAsコンタクト層110およびp−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第三上クラッド層108の側面Sが基板面に対して斜面をなす形状(順メサ)となる。一方、p−In0.5Ga0.5P中間層109はエッチングされず、その端部109bは、上下の層110、108の側面Sから側方へ突出する態様で残る。
続いて、図5に示すように、超音波を加えた純水洗浄を行って、p−In0.5Ga0.5P中間層109の端部109bを除去する。これにより、斜面130bを両側に有する順メサ形状のリッジ130を形成する。この時、純水洗浄に加える超音波は、ウルトラソニック帯(20KHz〜350kHz)である。この後、レジストマスク113を除去する。
続いて、図6に示すように、電子ビーム蒸着法を用いて、表面側にp側電極111としてTi(層厚:1000Å)/Pt(層厚:500Å)/Au(層厚:3000Å)の順に金属薄膜を積層形成する(電極形成工程)。
続いて、図1に示したように、n−GaAs基板101を裏面側から所望の厚さに研削する。そして、裏面側から抵抗加熱蒸着法を用いて、n側電極112としてAuGe(層厚:1500Å)/Ni(層厚:150Å)/Au(層厚:3000Å)の順に金属薄膜を積層形成する。
その後、N2またはH2雰囲気中で1分間、390℃に加熱して、電極材料の合金化処理を行う。これで半導体レーザ装置が得られる。
なお、超音波を加えた純水洗浄は、レジストマスク113を除去した後に行ってもよい。
本実施形態においては、InGaAlP系の半導体レーザ装置を例にとって説明しているが、本発明はこれに限るものではなく、InGaAlP系材料を用いる他の化合物半導体装置に適用できることは言うまでも無い。
本実施形態のInGaAlP系赤色半導体レーザ装置は、上述したように結晶成長工程が一度であるという特徴を有する。このため、3回の結晶成長を経て製造される従来のリッジ埋め込み型のInGaAlP系赤色半導体レーザ装置に比べて、圧倒的に製造コストを削減でき、またプロセス工程数が少ないために、歩留りが向上するという効果がある。したがって、本実施形態の半導体レーザ装置は安価に製造される。
上述の半導体レーザ装置においては、動作時にp側電極111とn側電極112との間に通電されるとき、リッジ130の頂部を覆う電極部分111aおよびリッジ130の側面部を覆う電極部分111bの一部からのみ電流注入が行われ、p−In0.5Ga0.5Pエッチストップ層107を覆う電極部分111cからは電流が注入されない。このような公知の電流ブロック層の機能に相当する電流狭窄を実現しつつ、素子抵抗を悪化させず、さらに長期信頼性をも有する半導体レーザ装置を提供するためには、以下に説明するような構成を有することが重要である。
まず、電流をブロックしたい領域(リッジ130の側方でp側電極111と接する部分)の半導体層の不純物(この例ではp型不純物)ドーピング濃度を1×1017cm-3以下にすることが肝要である。半導体レーザ装置では、後述するように、発振させたレーザ光が吸収されないよう、ごく薄い(300Å以下)エッチストップ層を用いる。その場合、その直下の半導体層(この例では第二上クラッド層106)のドーピング濃度も1×1017cm-3以下である必要がある。図7に、電流をブロックしたい領域のドーピング濃度を1×1017cm-3と1×1018cm-3で作り比べた時の、電流狭窄性および通電安定性の比較グラフを示す。この第1実施形態の半導体レーザ装置において、発振動作時の電圧は+2V前後(この例では2.17V)であったが、その時のリーク電流は、図7から分かるように、1×1017cm-3ドーピングの場合、2×10-4A程度であり、複数回(この例では5回)通電しても、リーク電流値に変化はなかった。一方、1×1018cm-3ドーピングの場合は、+2Vにおける初期(通電1回目)のリーク電流値は17乗ドーピング時の約100倍であり、通電を重ねると(通電2回目)、さらに10倍以上増大してしまった。以上のように、低ドーピング濃度半導体層(この例ではエッチストップ層107および第二上クラッド層106に相当する。以下同様。)のドーピング濃度は、1×1017cm-3以下が望ましい。また、この時、上記低ドーピング濃度半導体層は、およそ0.1μm以上の層厚が無いと十分な電流狭窄を行うことができない。さらに、通電領域(ストライプ内)の素子抵抗の悪化を防止するために、上記低ドーピング濃度半導体層の層厚は、厚くても0.4μm以下としなければならない。このような構成とすることで長期通電時にも安定した電流狭窄性を得ることが可能となる。また、所望の光学設計を実現し、かつ素子抵抗を低減するために、上記低ドーピング濃度半導体層の直下には、それより高ドーピングの上クラッド層(この例では第一上クラッド層105)を有することが望ましい。光学設計から要求される上クラッド層の厚みの調整は、その高ドーピングの上クラッド層で行う。同時に、電流注入領域の抵抗を低減するために、リッジ130の頂部を形成するp+−GaAsコンタクト層110の不純物ドーピング濃度は、5×1018cm-3以上とする。このような条件下で、その上にノンアロイ系電極材料(Ti/Pt/Au)からなるp側電極111を形成すると、p側電極111とコンタクト層110との間のコンタクト抵抗は、十分低い値(1×10-6Ωcm2)を実現でき、微小なストライプ構造に対しても良好な電流注入を行うことができる。さらに、リッジ130の頂部からリッジ130の側方へ電極を引き出すためには、逆メサ形状では何らかの手段を使ってメサ段差を解消させる必要があるが、本実施形態のようにリッジ130が順メサ形状になっていれば、そういった別手段を講じずとも、リッジ130の側方の相対的に広くて、強度が高い領域上で外部回路への電気的接続を行うことができるようになる。
なお、本実施形態のようにp側電極111から活性層104までの距離が2μm程度以下の場合、p側電極材料として一般的に用いられているAuZnは、意図しないZnの拡散を考えて、使用しないほうがよい。
また、本実施形態では、エッチストップ層107の結晶材料として、In0.5Ga0.5Pを使用しているが、その厚みは少なくとも30Åあれば、上述した製造工程によって十分な選択エッチング性が得られる。また、InGaP層におけるGaの混晶比は、0.5である必要は無く、検討の結果、0.367以上0.665以下であれば素子特性の悪化も無く、良好なプロセス制御性を示すことが分かった。
さらに、半導体レーザ装置では、量子効果も考慮してエッチストップ層107のバンドギャップが発振レーザ光を吸収しない値になるように、エッチストップ層107の組成、層厚を設定することが重要である。これにより、良好な特性を得ることができる。
ただし用途によっては、レーザ光を吸収するようにエッチストップ層107の組成を設定することで自励発振型の半導体レーザを実現することも可能である。この場合は、例えばエッチストップ層107の厚みを0.1μm程度とすることで可飽和吸収層として機能させることができる。
本実施形態のようにエッチストップ層107直下のクラッド層106の結晶材料としてAlを含む場合は、エッチストップ層107を除去しない方がより好ましい。その理由は、Alを含むInGaAlPクラッド層106が、製造工程途中で大気中に暴露されるとAlの酸化を誘発し、そのAl酸化に起因する表面準位がその後上部に電極111を形成した際に、リークパスとなって電流狭窄性を悪化させてしまうからである。また、そういったAl酸化に起因する準位は信頼性をも低下させてしまう。
本実施形態においては、既述のように、リッジ130形成するエッチング工程で、まずドライエッチング法を用いて、半導体層110、109、108の側面をほぼ垂直形状Vに加工し、その後ウエットエッチング法にて、順メサ状のテーパー角を有する斜面Sに成型した。このように、まずドライエッチング法を用いて、ストライプ状のリッジを予め大まかに作っておくことで、ウエットエッチング実施後のリッジ130のストライプ幅の制御性が大幅に向上する。これにより、電流注入を行うコンタクト層幅の加工精度がよくなるため、素子抵抗のバラツキを小さくすることができる。
また、本実施形態のように、半導体層110、109、108をなすGaAs、InGaP、InGaAlP材料に対し、ドライエッチング法で垂直エッチングするためには、エッチングマスクとして、SiO2やSiNxといった無機膜ではなく、レジストマスクを使用することと、エッチングガスとしてCl2を使うことを併用することが有効である。また、Cl2流量を10としたときBCl3を1〜10の比率で添加することで、より垂直性が向上すると共に、エッチングマスク直下に残された半導体層の側面の荒れが軽減される。さらに、Arガスのような不活性ガスを添加すると、より低速イオンのプラズマ状態においても、プラズマが安定化し、かつイオン衝撃性が増すため、結果的に半導体レーザ装置に与えるダメージを低減でき、素子寿命を向上させることができる。
また、リッジ130形成するエッチング工程で、ウエットエッチング法には、リン酸と過酸化水素水の混合水溶液を使用することで、順メサ形状にするための異方性エッチングを好適に行うことができる。
上述のような構成の半導体レーザ装置において、p+−GaAsコンタクト層110直下には、InGaPからなる中間層109を有することで、素子抵抗が悪化することを防止することができる。しかしながら、InGaP中間層109は、エッチストップ層107と同材料のため、上述のドライエッチング法およびウエットエッチング法によるエッチング後に、図4に示したようにInGaP中間層109の端部109bが上下の層110、108の側面Sから側方へ突出する態様で残ってしまう。そこで、本実施形態では、このInGaP中間層109の端部109bをエッチング後の水洗工程にて、超音波を加えることで除去した。加える超音波としては、ウルトラソニック帯の20kHzから350kHzが有効であり、この種の超音波を加えると破壊的なキャビテーションが純水中でランダムに発生するために、突出した端部109bを極めて効率よく破壊・除去することができる。ただし、InGaP中間層109の層厚が0.1μm以上となると除去後の順メサ側面にバリが多く残るようになるので、InGaP中間層109の層厚は0.1μm以下であることが好ましい。層厚が0.1μm以下であっても中間層としての効果は十分維持される。なお、メガソニック帯の超音波(750kHz〜3MHz)を加えた際には、発生するキャビテーションが非破壊的で、かつ振動子が向き合った面にのみ発生するため、突出した端部109bの除去効果が十分ではなくなる。
本実施形態のInGaAlP系赤色半導体レーザ装置は、その発振閾値電流は40mA、端面破壊(COD)が発生する光出力は150mWであり、従来の3回の結晶成長工程を経て製造される赤色半導体レーザ装置に比して、遜色の無いものである。また、70℃、100mWのパルスエージング試験において2500時間以上安定した動作を示しており、光ディスク用光源として十分な特性と信頼性を有していることが分かった。
〔第2実施形態〕
図8は、本発明の化合物半導体装置を適用して構成された第2実施形態の半導体レーザ装置の概略構造を示す断面図である。本実施形態では、リッジ頂部の半導体層と電極層(p側電極)の構成が、第1実施形態におけるものとは異なっている。
この半導体レーザ装置は、n−GaAs基板201上に、n−In0.5Ga0.5Pバッファ層202、n−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P下クラッド層203、多重量子井戸活性層204、p−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第一上クラッド層205、第二半導体層としてのp−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第二上クラッド層206、および下地半導体層としてのp−In0.15Ga0.85As0.3P0.7エッチストップ層207が順次積層されている。上記多重量子井戸活性層204は、In0.5Ga0.5P量子井戸層(歪0.22%、層厚:50Å、4層)とIn0.5(Ga0.5Al0.5)0.5Pバリア層(基板側から層厚500Å、50Å3層、500Å)を交互に配置して形成されている。また、上記p−In0.15Ga0.85As0.3P0.7エッチストップ層207上に、順メサストライプ形状のリッジ230をなすように、直上半導体層としてのp−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第三上クラッド層208とp−In0.5(Ga0.75Al0.25)0.5P中間層209、p−GaAsコンタクト層210、p−InxGa1-xAsグレーディッド層211(図8において下から上へ向かって組成比xが0から0.5まで徐々に変化している。)およびp+−In0.5Ga0.5Asコンタクト層212が設けられている。さらに、リッジ230の頂部、側面部、およびエッチストップ層207の上面(リッジ230の直下を除いた、リッジ230の側方に相当する部分。)を連なって被覆する態様で、電極層としてPt/Ti/Pt/Auの順に積層して形成された多層金属薄膜からなるp側電極213が設けられている。なお、213a、213b、213cがそれぞれ、上記リッジ230の頂部、側面部、エッチストップ層207の上面を被覆する部分(これを適宜「電極部分」と呼ぶ。)を表している。電極部分213aとリッジ230の頂部(コンタクト層212)との間のコンタクト抵抗は十分に低い値(1×10-6Ωcm2以下)になっている。一方、電極部分213cとエッチストップ層207とがなす界面は、図8において下向きの電流を阻止する機能を有している。また、基板101の裏面側には、別の電極層として、AuGe/Ni/Auからなる多層金属薄膜からなるn側電極214が形成されている。この半導体レーザ装置は、第1実施形態と同様に、所望の共振器長を有するチップサイズに分割されており、リッジ230のストライプ方向に垂直な両端面に反射膜(不図示)がコーティングされている。これにより、InGaAlP系の赤色半導体レーザ装置が構成されている。
この半導体レーザ装置は、次のようにして作製される。
まず図9中に示すn−GaAs基板201の(100)面の全域に、n−In0.5Ga0.5Pバッファ層202(層厚:0.25μm、Siドーピング濃度:1×1018cm-3)、n−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P下クラッド層203(層厚:1.2μm、Siドーピング濃度:1×1018cm-3)、多重量子井戸活性層204、p−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第一上クラッド層205(層厚:0.2μm、Cドーピング濃度:1×1018cm-3)、p−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第二上クラッド層206(層厚:0.1μm、Cドーピング濃度:1×1017cm-3)、p−In0.15Ga0.85As0.3P0.7エッチストップ層207(歪−1.4%、層厚:50Å、Cドーピング濃度:1×1017cm-3)、p−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第三上クラッド層208(層厚:1.2μm、Cドーピング濃度:1.3×1018cm-3)、p−In0.5(Ga0.75Al0.25)0.5P中間層209(層厚:500Å、Cドーピング濃度:7×1018cm-3)、p−GaAsコンタクト層210(層厚:0.3μm、Cドーピング濃度:1×1019cm-3)、p−InxGa1-xAsグレーディッド層211(x:0→0.5、層厚:500Å、Cドーピング濃度:2×1019cm-3)およびp+−In0.5Ga0.5Asコンタクト層212(層厚:0.1μm、Cドーピング濃度:2×1019cm-3)を順次、MOCVD法(有機金属化学気相成長法)にて結晶成長させる(結晶成長工程)。
次に、リッジ230を形成すべき領域(図8参照)上に、エッチングマスクとしてのレジストマスク215(マスク幅3μm)をフォトリソグラフィ工程により作製する。このレジストマスク215は、形成すべきリッジ230が延びる方向に対応して、<0−11>方向にストライプ状に延びるように形成される。
次に、図9〜図10に示すように、半導体層212、211、210、209、208のうちレジストマスク215の側方に相当する部分をエッチングして除去する(エッチング工程)。
具体的には、このエッチング工程では、まず図9に示すように、深さ方向に関してp+−In0.5Ga0.5Asコンタクト層212の上面側からp−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第三上クラッド層208の途中まで乾式(ドライ)エッチング法によりエッチングして除去する。この例では、エッチングガスとして、Cl2とSiCl4の混合ガスを用い、それに不活性ガスとしてHeガスを添加した。ドライエッチング時の圧力は10mTorrとした。エッチングガスとして塩素系ガスを用いているので、第1実施形態におけるのと同様に横方向へのエッチング進行を殆ど無くすことができ、この結果、このドライエッチングの終了時点で、レジストマスク215の直下に残される半導体層212、211、210、209、208の側面Vが基板面に対してほぼ垂直な形状になる。
続いて、図10に示すように、深さ方向に関してp−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第三上クラッド層208の途中からp−In0.15Ga0.85As0.3P0.7エッチストップ層207が露出するまで湿式エッチング法によりエッチングして除去する。この例では、エッチャントとして、硫酸と過酸化水素水の混合水溶液を用いる。この時、第1実施形態におけるのとは異なり、p−In0.5(Ga0.75Al0.25)0.5P中間層209もその上下の層と同様にエッチングされる。この結果、わざわざ超音波を加えた純水洗浄を行わなくとも、斜面230bを両側に有する順メサ形状のリッジ230を形成することができる。この後、レジストマスク215を除去する。
続いて、図11に示すように、電子ビーム蒸着法を用いて、表面側にp側電極213としてPt(層厚:250Å)/Ti(層厚:500Å)/Pt(層厚:500Å)/Au(層厚:3000Å)の順に金属薄膜を積層形成する(電極形成工程)。
続いて、図8に示したように、n−GaAs基板201を裏面側から所望の厚さに研削する。そして、裏面側から抵抗加熱蒸着法を用いて、n側電極112としてAuGe(層厚:1500Å)/Ni(層厚:150Å)/Au(層厚:3000Å)の順に金属薄膜を積層形成する。
その後、N2またはH2雰囲気中で1分間、390℃に加熱して、p側電極213とn側電極214のための合金化処理を行う。これで半導体レーザ装置が得られる。
本実施形態において、第1実施形態と異なる点について特に説明する。まず、本実施形態では、電流注入を行うp側電極213と接するリッジ230の頂部に、III族元素中のIn組成比が0.5であるIn0.5Ga0.5Asコンタクト層212を備えている。さらに、このコンタクト層212の下に接する位置に、GaAsとの格子定数の違いを吸収して良好なInGaAs結晶を積層するためにInxGa1-xAsグレーディッド層211を介挿し、このグレーディッド層211のIn組成を変化させて、下地のGaAs層210との界面におけるIn組成xを0とし、かつInGaAsコンタクト層212との界面におけるxを0.5としている。このような構成とすることによって、第1実施形態におけるよりもストライプ幅の狭いリッジ230であっても、良好なコンタクト抵抗を維持することが可能となる。これにより、リッジ230直下の活性層204への注入電流密度を高め、閾値電流を低減することができた。本実施形態の半導体レーザ装置における発振閾値電流値は、36mAであった。
上記InGaAsコンタクト層212のドーピング濃度は、少なくとも5×1018cm-3以上であれば、良好な素子抵抗が実現できる。また、InGaAs層212におけるIII族元素中のIn組成比は、少なくとも0よりも大きければ、GaAsコンタクト層よりも抵抗低減の効果が発生するが、0.5程度が適当である。それ以上にしてもコンタクト抵抗の低減にはあまり効果が無いかわりに、グレーディッド層211に要する層厚が増え、結果的にリッジ230の頂部の幅を減少させてしまうこととなる。
また、本実施形態においては、エッチストップ層207をなす結晶材料としてInGaAsPを使用した。InGaAsPの組成は、GaAs基板との格子不整合率が±1.5%以内であれば、その上に積層する結晶の品質を低下させることが無く好適に使用できる。
さらに、本実施形態の半導体レーザ装置でも、エッチストップ層207をなすInGaAsP層の格子不整合率の制限に加えて、エッチストップ層207のバンドギャップが発振レーザ光を吸収しない値になるように、エッチストップ層207の組成、層厚を設定することが重要である。
本実施形態でも、エッチストップ層207を除去しない方が良い。その理由は第1実施形態におけるのと同様に、エッチストップ層207直下のInGaAlPクラッド層206に含まれたAlが製造工程途中で大気中に暴露されて酸化されるのを避けるためである。この場合も、エッチストップ層207を可飽和吸収層として設計し、自励発振レーザを得ることも可能である。
本実施形態では、第三上クラッド層208とGaAs層210の間に挿入される中間層209をなす結晶材料として、第三上クラッド層208よりもAl混晶比が小さいInGaAlPを用いた。この時、硫酸と過酸化水素水の混合水溶液を用いてエッチングを実施すると、InGaAsPエッチストップ層207はエッチングされず、ストライプ構造を構成するInGaAs、InGaAlP、GaAsだけがエッチング除去される。したがって、極めて簡略に順メサ形状のリッジ230を形成することができる。
また、ウエットエッチングに先立つ、ドライエッチングにおいて、本実施形態では、Cl2ガスに同量のSiCl4ガスを混合し、さらにHeガスを添加してエッチングした。SiCl4ガスを用いた場合、第1実施形態で使用したBCl3と比較して、垂直エッチング性を保ったまま、そのエッチング速度を早くできるという効果がある。またHeガスを添加しても第1実施形態のArガスと同様の効果があった。
本実施形態の半導体レーザ装置は、前述したように発振閾値電流値が36mAと良好な値を達成し、かつストライプ幅を狭めた効果により、端面破壊光出力である150mWまでキンクフリーを実現することができた。また、本半導体レーザ装置も、第1実施形態の半導体レーザ装置と同様に、70℃、100mWのパルスエージング試験において、2500時間以上の安定した動作を実現している。
〔第3実施形態〕
図12は、本発明の化合物半導体装置を適用して構成された第3実施形態の半導体レーザ装置の概略構造を示す断面図である。本実施形態では、リッジの両脇にストライプ状構造体が形成されている点が第1実施形態および第2実施形態とは異なっている。
以下、特にこのリッジの両脇に形成されたストライプ状構造体の構成および製造方法について説明し、第1実施形態および第2実施形態と共通の構成要素については説明を省略する。
この半導体レーザ装置は、下地半導体層としてのp−In0.5Ga0.5Pエッチストップ層307上に、順メサストライプ形状のリッジ330をなすように、直上半導体層としてのp−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第三上クラッド層308、InGaP層としてのp−In0.5Ga0.5P中間層309、およびGaAs層としてのp+−GaAsコンタクト層310が設けられている。さらに、リッジ330の両脇に、リッジ330と同様の第三上クラッド層308、InGaP層309、およびGaAs層310に加えて、GaAs層310上に積層されたp−In0.5Ga0.5P電流遮断層314を有し、リッジと同じ方向に延びるストライプ状構造体313が形成されている。この電流遮断層314の存在によって、ストライプ状構造体313の高さは、リッジ330の高さよりも高くなっている。
リッジ330の頂部、側面部、エッチストップ層307の上面(リッジ330の直下を除いた、リッジ330の側方に相当する部分。)、およびストライプ状構造体313の側面部、頂部を連なって被覆する態様で、電極層としてTi/Pt/Auの順に積層して形成された多層金属薄膜からなるp側電極311が設けられている。上述したように、エッチストップ層307上のp側電極311の表面からストライプ状構造体313上のp側電極311の表面までの高さh2は、エッチストップ層307上のp側電極311の表面からリッジ330上のp側電極311の表面までの高さh1よりも高くなっている。
電極311とリッジ330の頂部(コンタクト層310)との間のコンタクト抵抗は第1実施形態同様、十分に低い値(1×10-6Ωcm2)になっており、一方、電極311とエッチストップ層307およびストライプ状構造体313とがなす界面は、図12において下向きの電流を阻止する機能を有している。また、基板301の裏面側には、別の電極層として、AuGe/Ni/Auからなる多層金属薄膜からなるn側電極312が形成されている。図2同様、この半導体レーザ装置は、所望の共振器長を有するチップサイズに分割されており、リッジ330のストライプ方向に垂直な両端面に反射膜(不図示)がコーティングされている。これにより、InGaAlP系の赤色半導体レーザ装置が構成されている。
この半導体レーザ装置は、次のようにして作製される。
まず、n−GaAs基板301の(100)面の全域に、n−In0.5Ga0.5Pバッファ層302(層厚:0.25μm、Siドーピング濃度:1×1018cm-3)、n−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P下クラッド層303(層厚:1.2μm、Siドーピング濃度:1×1018cm-3)、多重量子井戸活性層304、p−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第一上クラッド層305(層厚:0.2μm、Beドーピング濃度:1×1018cm-3)、p−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第二上クラッド層306(層厚:0.1μm、Beドーピング濃度:1×1017cm-3)、p−In0.5Ga0.5Pエッチストップ層307(層厚:50Å、Beドーピング濃度:1×1017cm-3)、p−In0.5(Ga0.3Al0.7)0.5P第三上クラッド層308(層厚:1.2μm、Beドーピング濃度:1.3×1018cm-3)、p−In0.5Ga0.5P中間層309(層厚:500Å、Beドーピング濃度:7×1018cm-3)、p+−GaAsコンタクト層310(層厚:0.3μm、Beドーピング濃度:2×1019cm-3)、p−In0.5Ga0.5P電流遮断層314(層厚0.2μm、Beドーピング濃度:1×1017cm−3)を順次、MBE法(分子線エピタキシ法)にて結晶成長させる。
次に、ストライプ状構造体313を形成する領域上に、レジストを用いたエッチングマスクを作成し、HClを用いてそれ以外の領域のInGaP電流遮断層314をエッチングにより除去し、その後レジストマスクを剥離する。
次に、リッジ330およびストライプ状構造体313を形成すべき領域(図12参照)上に、エッチングマスクとしてのレジストマスクをフォトリソグラフィ工程により作製する。このレジストマスクは、形成すべきリッジ330およびストライプ状構造体313が延びる方向に対応して、<0−11>方向にストライプ状に延びるように形成される。
次に、半導体層310、309、308のうちレジストマスクの側方に相当する部分をエッチングして除去し、下地半導体層であるp−InGaPエッチストップ層307を露出させる。
以下、第1実施形態の半導体レーザ装置の製造方法と同様の工程により、本第3実施形態の半導体レーザ装置が完成する。この半導体レーザ装置は、ステム、あるいはサブマウントと呼ばれる放熱体に電極311側をダイボンドする、いわゆるジャンクションダウン型のチップ実装を行った。
この半導体レーザ装置においては、上述のようにレーザ発振が起こる活性層に近い側の電極311をステムや放熱体にダイボンドするジャンクションダウン型実装を行っているため、活性層で発生した熱を放熱させやすく、素子信頼性を向上させることができる。この時、本実施形態においては、リッジ330よりも電流遮断層314の分だけその高さが大きいストライプ状構造体313をリッジ330の両脇に設けた構成としたために、ジャンクションダウン型実装を行った際にもリッジ330に応力がかからず、リッジは破損することがない。
さらに、結晶成長工程の一環として、コンタクト層310に引き続いて電流遮断層314を形成する構成としているため、別途電流遮断用の絶縁膜等を形成する工程を行う場合に比べて、製造工程を簡略化することができる。上記電流遮断層314としては、その不純物ドーピング濃度が1×1017cm−3以下となるように形成することによって、その上に、直接電極311を設けても、界面に形成されるショットキーバリアのために十分な電流遮断を実現できる。
上記第3実施形態においては、リッジ330よりも高さの大きいストライプ状構造体313上に電極層311が形成されているために、上述のジャンクションダウン型実装の際、ステムや放熱体の導電体に対して、上記ストライプ状構造体313上の電極層311との間で電気的な導通を取る構成となり、レーザ発振に必要な電流注入を容易に行うことができる。
これらのことによって、放熱性が良く素子信頼性を向上させることのできるジャンクション型実装をリッジ330を破損させることなく実現でき、かつ安価な製造コストで製造可能な半導体レーザ装置とその製造方法を提供することができるようになる。
もちろん、ストライプ状構造体313と電極層311との界面に絶縁体が挿入されていてもよい。絶縁体を形成することで、上記ストライプ状構造体313を介して上記電極層311から下地半導体層307へ電流が流れることがない。したがって余分なリーク電流を生じさせることがなく、よって、低い閾値電流値を有する化合物半導体装置を提供することができる。
この場合、上述した電流遮断層314は必ずしも形成する必要はなく、半導体基板上の半導体層構造としては、第1実施形態あるいは第2実施形態と同様、最上層がコンタクト層となる構成であってもよい。この時絶縁体は、リッジ330上にはなく、ストライプ状構造体側に存在するため、やはりストライプ状構造体側の高さを大きくすることができるため、リッジの破損を防止する効果がある。
ここで、上記絶縁体としては、酸化珪素膜(SiO2)や窒化珪素膜(SiNx)などの無機絶縁体の他、有機樹脂(例えばボリイミド樹脂)などを好適に適用することができる。
さらに、上述の第3実施形態では、電極311はストライプ状構造体上に形成されている例を示したが、例えば、ストライプ状構造体は電極311上に形成されていても良い。この例としては、第1実施形態や第2実施形態の半導体レーザ装置のリッジ部の両脇に導電性を有し、リッジよりも高さの大きいストライプ状の構造体を金メッキなどで形成することにより実現できる。
この場合、上述した電流遮断層や絶縁体を形成する工程を不要とすることができ、さらに活性層からステムあるいは放熱体の間の放熱経路に熱伝導に優れた導電体が形成されるため、より放熱性が向上するという効果もある。
〔第4実施形態〕
図13は、本発明にかかる光ディスク装置400の構造の一例を示したものである。これは光ディスク401にデータを書き込んだり、書き込まれたデータを再生したりするためのものであり、その際用いられる発光素子として、先に説明した第1実施形態の半導体レーザ装置(波長650nm帯)402を備えている。
この光ディスク装置についてさらに詳しく説明する。書き込みの際は、半導体レーザ装置402から出射された信号光がコリメートレンズ403により平行光とされ、ビームスプリッタ404を透過しλ/4偏光板405で偏光状態が調節された後、対物レンズ406で集光され光ディスク401に照射される。読み出し時には、データ信号がのっていないレーザ光が書き込み時と同じ経路をたどって光ディスク401に照射される。このレーザ光がデータの記録された光ディスク401の表面で反射され、レーザ光照射用対物レンズ406、λ/4偏光板405を経た後、ビームスプリッタ404で反射され90°角度を変えた後、受光素子用対物レンズ407で集光され、信号検出用受光素子408に入射する。信号検出用受光素子408内で入射したレーザ光の強弱によって記録されたデータ信号が電気信号に変換され、信号光再生回路409において元の信号に再生される。
この第4実施形態の光ディスク装置では、従来よりも高い光出力で動作する半導体レーザ装置402を用いているため、ディスクの回転数を従来よりさらに高速化してもデータの読み書きが可能となった。従って特に書き込み時に問題となっていたディスクへのアクセス時間が従来の半導体レーザ装置を用いた装置よりも格段に短くなった。また、半導体レーザ装置402が従来よりも低いコストで作製可能であるから、より快適に操作できる光ディスク装置を安価に提供することができた。
なお、ここでは第1実施形態の半導体レーザ装置402を記録再生型の光ディスク装置に適用した例について説明したが、同じ波長650nm帯を用いる光ディスク記録装置、光ディスク再生装置や、他の波長帯(例えば780nm帯)の光ディスク装置にも適用可能であることはいうまでもない。
さらに、本発明の化合物半導体装置は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、例えば半導体レーザ装置の量子井戸活性層を構成する井戸層・バリア層の層厚や層数など、本発明を逸脱しない範囲において種々変更を加え得る事はもちろんである。また、第1実施形態と第2実施形態および第3実施形態の個々の構成要素は相互に入れ替えが可能である。