本発明は、高分子電解質材料、高分子電解質部品、膜電極複合体、および高分子電解質型燃料電池に関する。
燃料電池は、排出物が少なく、かつエネルギー効率が高く、環境への負担の低い発電装置である。このため、近年の地球環境保護への高まりの中で再び脚光を浴びている。燃料電池は、比較的小規模の分散型発電施設や、自動車、船舶などの移動体の発電装置として、将来的にも期待されている発電装置である。また、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどの小型移動機器への搭載も期待されている。
高分子電解質型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell。以下、PEFCとも記載する。)においては、水素ガスを燃料とする従来型のものに加えて、メタノールなどの燃料を直接供給する直接型燃料電池(以下、DFCとも記載する。)も注目されている。DFCは、従来のPEFCに比べて出力が低いものの、燃料が液体で改質器を用いないために、エネルギー密度が高くなり、一充填あたりの発電時間が長時間になるという利点がある。
高分子電解質型燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソードとの間でプロトン伝導体となる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(MEA)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。ここで、電極は、ガス拡散の促進と集電(あるいは給電)を行う電極基材(ガス拡散電極あるいは集電体とも云う)と、実際に電気化学的反応場となる電極触媒層とから構成されている。たとえばPEFCのアノード電極では、水素ガスなどの燃料がアノード電極の触媒層で反応してプロトンと電子を生じ、電子は電極基材に伝導し、プロトンは高分子電解質膜へと伝導する。このため、アノード電極には、ガスの拡散性、電子伝導性、プロトン伝導性が良好なことが要求される。一方、カソード電極では、酸素や空気などの酸化ガスがカソード電極の触媒層で、高分子電解質膜から伝導してきたプロトンと、電極基材から伝導してきた電子とが反応して水を生成する。このため、カソード電極においては、ガス拡散性、電子伝導性、プロトン伝導性に加えて、生成した水を効率よく排出することも要求される。
特に、固体高分子型燃料電池の中でも、メタノールなどの有機化合物を燃料とするDFC用電解質膜においては、水素ガスを燃料とする従来のPEFC用の電解質膜に要求される性能に加えて、燃料の透過抑制も要求される。電解質膜中の燃料透過は、燃料クロスオーバー(FCO)、ケミカルショートとも呼ばれ、電池出力およびエネルギー容量が低下するという問題を引き起こす。
また、直接型燃料電池においては、水素ガスを燃料とする従来のPEFCとは異なる性能が要求される。すなわち、直接型燃料電池においては、アノード電極ではメタノール水溶液などの燃料がアノード電極の触媒層で反応してプロトン、電子、二酸化炭素を生じ、電子は電極基材に伝導し、プロトンは高分子電解質に伝導し、二酸化炭素は電極基材を通過して系外へ放出される。このため、従来のPEFCのアノード電極の要求特性に加えて、メタノール水溶液などの燃料透過性や二酸化炭素の排出性も要求される。さらに、直接型燃料電池のカソード電極では、従来のPEFCと同様な反応に加えて、電解質膜を透過したメタノールなどの燃料と酸素あるいは空気などの酸化ガスがカソード電極の触媒層で、二酸化炭素と水を生成する反応も起こる。このため、従来のPEFCよりも生成水が多くなるため、さらに効率よく水を排出することが必要となる。
従来、高分子電解質膜として“ナフィオン”(デュポン社製、商品名)に代表されるパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマー膜が使用されてきた。しかし、これらのパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマー膜は直接型燃料電池においてはメタノールなどの燃料透過量が大きく、電池出力やエネルギー容量が十分でないという問題があった。またパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーは、フッ素を使用するという点から価格も非常に高いものである。
そこで、非フッ素系のプロトン伝導体の高分子電解質が市場から望まれて、非フッ素系ポリマーをベースとした高分子電解質膜についても既にいくつかの取り組みがなされている。
例えば1950年代には、スチレン系の陽イオン交換樹脂が検討された。しかしながら、通常燃料電池に使用する際の形態である膜としての強度が十分ではなかったため、十分な電池寿命を得るには至らなかった。
スルホン化芳香族ポリエーテルエーテルケトンを電解質に用いた燃料電池の検討もなされている。例えば、有機溶媒に難溶性の芳香族ポリエーテルエーテルケトン(以降、PEEKと略称することがある。)が、高度にスルホン化することにより有機溶媒に可溶となり成膜が容易になることが紹介されている(非特許文献1参照。)。しかしながら、これらのスルホン化PEEKは、同時に親水性も向上し、水溶性となったり、あるいは吸水時の強度低下などを引き起こす。高分子電解質型燃料電池は、通常燃料と酸素の反応により水を副生するし、またDFCにおいては燃料自体に水を含む場合がほとんどであることから、特にかかるスルホン化PEEKが水溶性となる場合にはそのまま燃料電池用電解質へ利用するには適さない。
また、非特許文献2には芳香族ポリエーテルスルホンであるPSF(UDELP−1700)やPESのスルホン化物について記載されている(非特許文献2参照)。それにはスルホン化PSFは完全に水溶性となってしまい、電解質としての評価ができないとされている。スルホン化PESについては水溶性とはならないけれども、高吸水率の問題があり、高い燃料クロスオーバーの抑制効果は期待できない。
また例えば、非特許文献3には、リン系ポリマーをベースとした高分子プロトン伝導体として、ポリホスファゼンのスルホン化物について記載されている。しかしながら、スルホン化ポリホスファゼンは主鎖自身が極めて親水性であり、含水率が高すぎて、高い燃料クロスオーバーの抑制効果は期待できない。
また、非フッ素系の芳香族系高分子にアニオン性基を導入した高分子電解質膜は他にも種々提案されている(特許文献1,2、非特許文献1)。
しかし、これら従来の高分子電解質膜では、高伝導度を得るためにイオン性基の導入量を多くすると内部に水を取り込み易くなり、メタノールなどの燃料クロスオーバーが大きいという欠点があった。この高分子電解質膜では、膜中に低融点水が多く存在し、不凍水の分率が少ないので、低融点水中をメタノールなどの燃料が透過しやすく、燃料クロスオーバーが大きくなっているものと推測される。
特許文献3には、フルオレン成分を含むスルホン化されたポリエーテル系共重合体からなる高分子電解質材料が紹介されている。しかしながら、当該文献では燃料遮断性に有効な基や、製膜方法等についての十分な開示がなく、我々の追試においては、記載された方法では製膜が困難で、高分子電解質膜とすることができなかった。
また、特許文献4の例19および例24にはフルオレン成分およびフェニレン成分を両方含むスルホン化されたポリエーテル系共重合体からなる高分子電解質材料の記載がある。しかしながら、フルオレン成分を20モル%しか導入しておらず、また製造方法および製膜方法が本発明とは異なるため、燃料に対する膨潤が著しく、燃料クロスオーバーも大きく、実用的な高分子電解質材料ではなく、この高分子電解質材料は不凍水の分率が低いものであった。
また、プロトン伝導性ポリマーと他の高分子との複合膜も提案されている。例えば、スルホン化ポリフェニレンオキシドとポリビニリデンフルオライドからなる複合膜(特許文献5)が知られている。またスルホン化ポリスチレンとポリビニリデンフルオライドからなる複合膜(特許文献6)も知られている。しかし、これらの文献に記載の高分子電解質膜は、イオン伝導性ポリマーとポリビニリデンフルオライドとのブレンドポリマからなる膜であって、ポリマどうしの相溶性が悪く、μmオーダーの大きな相分離構造を取りやすく、高伝導度と燃料クロスオーバー抑制を両立させることは難しかった。この高分子電解質膜では相間に低融点水やバルク水が存在し、電解質膜中の不凍水の分率が少ないので、燃料クロスオーバーの抑制が困難なものと推測される。
また、プロトン伝導性ポリマーおよび窒素原子含有基を有するシロキサンと金属酸化物との共重合体からなる複合体(特許文献7)からなる膜が知られている。また、“ナフィオン”(デュポン社製、商品名)とシロキサンとの複合体(非特許文献5,6)などからなる膜も知られている。しかし、これら文献に記載の膜は、パーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーである“ナフィオン”を用いていることから、他の高分子との複合体膜であっても高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーの両立は困難であった。
また、不飽和結合を有する単量体と架橋構造を導入できる単量体を含む組成物を多孔性基材に含浸させた後に重合し、その後スルホン化して得られるイオン交換材料が知られている(特許文献8参照)。しかし、この膜は、直接メタノール形燃料電池(以下、DMFCとも記載する)用途に使用する場合、スルホン化時間が長いのにもかかわらず、プロトン伝導度が不十分であり、DMFCの実用化レベルのプロトン伝導度は得ることは困難であった。
これら従来の技術においては、得られる電解質が高価であったり、耐水性が不足して強度が不十分かあるいは燃料クロスオーバーが大きく、耐酸化性や耐ラジカル性に劣る等の問題点があった。
米国特許出願公開第2002/91225号明細書
米国特許第5403675号明細書
特開2002−226575号公報
特表2002−524631号公報
米国特許第6103414号明細書
特表2001−504636号公報
特開2002−110200号公報
特開2003−12835号公報
「ポリマー(Polymer)」, 1987年, vol.28, 1009.
「ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス(Journal of Membrane Science)」, 1993年, Vol.83, 211-220.
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「ポリマー(Polymers)」, 2002年, Vol.43, 2311-2320
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本発明は、プロトン伝導性に優れ、かつ、燃料遮断性にも優れた高分子電解質材料を提供し、ひいては、効率の高い高分子電解質型燃料電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、高分子電解質材料の高プロトン伝導度と燃料クロスオーバー抑制の性能は、高分子電解質材料中に含まれる水分の存在状態、およびその量に大きく左右されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、以下の構成よりなる。
[1] 含水状態において下記式(S1)で表される不凍水の分率Rw1が20〜100重量%である高分子電解質材料。
Rw1=[Wnf/(Wfc+Wnf)]×100 ……(S1)
Wnf:高分子電解質材料の乾燥重量1g当たりの不凍水量
Wfc:高分子電解質材料の乾燥重量1g当たりの低融点水量
[2] 含水状態において下記式(S2)で表される不凍水の分率Rw2が50〜100重量%である上記[1]記載の高分子電解質材料。
Rw2=[Wnf/(Wnf+Wfc+Wf)]×100 ……(S2)
Wf :高分子電解質材料の乾燥重量1g当たりのバルク水量
[3] 含水状態においてWnfが0.05〜2である上記[1]または[2]記載の高分子電解質材料。
[4] 非架橋構造であり、Rw1が60重量%以上である上記[1]〜[3]のいずれか記載の高分子電解質材料。
[5] 膜状の形態を有する上記[1]〜[4]のいずれか記載の高分子電解質材料。
[6] 30重量%メタノール水溶液に対する単位面積当たりのメタノール透過量が40μmol・min-1・cm-2以下であり、かつ、単位面積当たりのプロトン伝導度が4S・cm-2以上である上記[5]記載の高分子電解質材料。
[7] 30重量%メタノール水溶液に対する単位面積・単位厚み当たりのメタノール透過量が1000nmol・min-1・cm-1以下であり、かつ単位面積・単位厚み当たりのプロトン伝導度が10mS・cm-1以上である上記[5]記載の高分子電解質材料。
[8] 含水状態での全光線透過率が30%以上である上記[5]〜[7]のいずれか記載の高分子電解質材料。
[9] イオン性基を有する上記[1]〜[8]のいずれか記載の高分子電解質材料。
[10] イオン性基がスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基およびカルボン酸基から選ばれた少なくとも1種である、上記[9]記載の高分子電解質材料。
[11] イオン性基がスルホン酸基である、上記[10]記載の高分子電解質材料。
[12] スルホン酸基密度が0.1〜5.0mmol/gである、上記[11]記載の高分子電解質材料。
[13] スルホン酸基密度が0.5〜3.5mmol/gである、上記[12]記載の高分子電解質材料。
[14] スルホン酸基密度が1.0〜3.5mmol/gである、上記[13]記載の高分子電解質材料。
[15] 主鎖に下記一般式(I)で表される基を有する芳香族リン系ポリマーを含む上記[9]〜[14]のいずれか記載の高分子電解質材料。
(式中、R
1は有機基、Xは酸素、硫黄またはセレンを表し、高分子電解質材料中にR
1および/またはXの異なる置換基を2種以上含んでもよい。)
[16] 芳香族リン系ポリマーが主鎖に炭素−リン−炭素結合を有する、上記[9]〜[15]のいずれか記載の高分子電解質材料。
[17] 芳香族リン系ポリマーが芳香族ポリエーテルホスフィンオキシドである、上記[9]〜[16]のいずれか記載の高分子電解質材料。
[18] 芳香族リン系ポリマーが芳香族ポリ(エーテルホスフィンオキシド/エーテルケトン)共重合体である、上記[9]〜[16]のいずれか記載の高分子電解質材料。
[19] 空隙を有し、空隙率が5〜80体積%、空隙の孔径の平均が50nm未満であり、かつ、イオン性基を有する上記[9]〜[18]のいずれか記載の高分子電解質材料。
[20] 架橋構造を有する重合体からなる上記[1]〜[19]のいずれか記載の高分子電解質材料。
[21] 架橋構造が放射線架橋によるものである、上記[20]記載の高分子電解質膜。
[22] 芳香族環を有する2価の基を含む上記[1]〜[21]のいずれか記載の高分子電解質材料。
[23] 芳香族環を有する2価の基として下記一般式(II)で表される基を含む上記[22]記載の高分子電解質材料。
(式中、R
2は水素原子、ハロゲン原子、1価の有機基またはイオン性基を表し、aは0〜4の整数を表す。また、高分子電解質材料中にR
2および/またはaの異なるものを2種以上含んでいてもよい。)
[24] 芳香族環を有する2価の基として下記一般式(III)で表される基を含む、上記[22]または[23]記載の高分子電解質材料。
(式中、R
3,R
4は水素原子、ハロゲン原子、1価の有機基またはイオン性基を表し、b,cは0〜4の整数、Zは直接結合、−O−、−S−、−Se−、−CQ
1Q
2−、アルキレン基、アリーレン基、アルキリデン基、またはシクロアルキリデン基を表す。ここでQ
1およびQ
2は同一または異なり、水素原子、ハロゲン基、アルキル基、ハロ置換アルキル基またはアリール基を表し、Q
1およびQ
2のいずれかは水素原子、ハロゲン基、アルキル基、ハロ置換アルキル基から選ばれた少なくとも1種であり、高分子電解質材料中にR
3,R
4および/またはb,cの異なるものを2種以上含んでいてもよい。)
[25] 前記一般式(III)中において、Zは直接結合または−CQ1Q2−を表し、ここでQ1およびQ2は同一または異なり、水素原子、ハロ置換アルキル基またはアリール基を表し、Q1およびQ2のいずれかは水素原子、ハロ置換アルキル基から選ばれた少なくとも1種である、上記[24]記載の高分子電解質材料。
[26] 芳香族環を有する2価の基として下記一般式(IV)で表される基を含む上記[22]〜[25]のいずれか記載の高分子電解質材料。
(式中、Ar
1〜Ar
4はアリール基またはアリーレン基を表し、置換基を有していてもよい。Ar
1〜Ar
4は任意の1ヶ所以上で結合していてもよく、高分子電解質材料中にAr
1〜Ar
4の異なるものを2種以上含んでいてもよい。)
[27] 芳香族環を有する2価の基として下記一般式(IV−2)で表される基を含む上記[26]記載の高分子電解質材料。
(式中、点線は結合していても結合していなくてもよく、R
5〜R
8はハロゲン原子、1価の有機基またはイオン性基を表し、dおよびeは0〜4の整数を表し、fおよびgは0〜5の整数を表し、高分子電解質材料中にR
5〜R
8および/またはd〜gの異なるものを2種以上含んでいてもよい。)
[28] 前記一般式(IV−2)において、d〜gがd+e+f+g≧2を満たす、上記[27]記載の高分子電解質材料。
[29] 芳香族環を有する2価の基として下記一般式(IV−3)で表される基を含む、上記[22]〜[28]のいずれか記載の高分子電解質材料。
(式中、点線は結合していても結合していなくてもよく、R
5〜R
8はハロゲン原子、1価の有機基またはイオン性基を表し、dおよびeは0〜4の整数を表し、fおよびgは0〜5の整数を表し、高分子電解質材料中にR
5〜R
8および/またはd〜gの異なるものを2種以上含んでいてもよい。)
[30] 前記一般式(IV−3)において、d〜gがd+e+f+g≧2を満たす基を含む、上記[29]記載の高分子電解質材料。
[31] 前記一般式(IV−3)中において、R5〜R8のうち少なくとも2つがアルキル基である基を含む、上記[30]記載の高分子電解質材料。
[32] 下記一般式(V)で表されるポリマーを含む上記[22]〜[31]のいずれか記載の高分子電解質材料。
(式中、Eは芳香族環を有する2価の基で、前記一般式(II),(III),(IV),(IV−2)または(IV−3)により表される。Ar
5およびAr
6は置換されていてもよい2価のアリーレン基、Wは電子吸引性の2価の基、Yは酸素、硫黄またはセレンを表す。E、Ar
5、Ar
6、Wおよび/またはYはそれぞれが2種類以上の基を表してもよい。)
[33] 前記一般式(V)中において、Wが、−CO−、−SO2−、−P(R1)O−(R1は任意の有機基)から選ばれた少なくとも1種である、上記[32]記載の高分子電解質材料。
[34] 前記一般式(V)中において、Wが−CO−であり、かつ、Yが酸素である、上記[32]記載の高分子電解質材料。
[35] 前記一般式(V)中において、−Ar
5−W−Ar
6−が、下記一般式(VI)で表されるものを含む、上記[32]記載の高分子電解質材料。
(式中、Wは電子吸引性の2価の基、R
9はスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基およびカルボン酸基から選ばれた少なくとも1種のイオン性基、hおよびiは1〜4の整数を表す。)
[36] 前記一般式(VI)中において、Wが−CO−である、上記[35]記載の高分子電解質材料。
[37] 前記一般式(V)中において、Eとして前記一般式(IV−3)で表される基を含む、上記[35]または[36]記載の高分子電解質材料。
[38] 上記[1]〜[37]のいずれか記載の高分子電解質材料を用いてなる高分子電解質部品。
[39] 上記[1]〜[37]のいずれか記載の高分子電解質材料を用いてなる膜電極複合体。
[40] 上記[1]〜[37]のいずれか記載の高分子電解質材料を用いてなる高分子電解質型燃料電池。
[41] 炭素数1〜6の有機化合物およびこれと水との混合物から選ばれた少なくとも1種を燃料に用いる直接型燃料電池である上記[40]記載の高分子電解質型燃料電池。
[42] 膜電極複合体に供給される燃料中の炭素数1〜6の有機化合物の含有量が20〜70重量%である上記[40]記載の高分子電解質型燃料電池。
[43] 空隙率が5〜80%、空隙の孔径の平均が50nm未満である空隙を有し、かつ、空隙の内部にはイオン性基が存在する高分子電解質材料。
[44] 上記[43]記載の高分子電解質材料を用いてなる高分子電解質部品。
[45] 上記[43]記載の高分子電解質材料を用いてなる膜電極複合体。
[46] 上記[43]記載の高分子電解質材料を用いてなる高分子電解質型燃料電池。
[47] 炭素数1〜6の有機化合物およびこれと水との混合物から選ばれた少なくとも1種を燃料に用いる直接型燃料電池である上記[46]記載の高分子電解質型燃料電池。
[48] 膜電極複合体に供給される燃料中の炭素数1〜6の有機化合物の含有量が20〜70重量%である上記[46]記載の高分子電解質型燃料電池。
[49] イオン性基を導入可能な単量体と開孔剤とを含む単量体組成物から膜状の重合体を得た後、または、イオン性基導入可能な重合体と開孔剤とを含む重合体組成物から製膜した後、膜中から開孔剤を除去する工程と、重合体にイオン性基を導入する工程を含む高分子電解質膜の製造方法。
[50] 膜中からの開孔剤の除去と、重合体へのイオン性基の導入とを同一の工程で行う上記[49]記載の高分子電解質膜の製造方法。
[51] 開孔剤を除去可能な溶剤にイオン性基導入剤を添加してなる溶液中に膜を浸漬することにより、膜中からの開孔剤の除去と重合体中へのイオン性基の導入とを行う上記[50]記載の高分子電解質膜の製造方法。
本発明により、プロトン伝導性に優れ、かつ、燃料遮断性にも優れた高分子電解質材料を提供し、ひいては、効率の高い高分子電解質型燃料電池を提供することができる。
本発明においては、高分子電解質材料中に存在する水分を、
バルク水:0℃以上で融点が観測される水、
低融点水:0℃未満、−30℃以上で融点が観測される水、および
不凍水:−30℃以上では融点が観測されない水、
に定義・分類し、これらの割合、特に、不凍水の割合を制御することによって高分子電解質材料の性能を大きく高めた。
この測定法については、「Journal of Colloid and Interface Science, Vol.171, 92-102 (1995) 」の文献に記載がある。
すなわち本発明の高分子電解質材料は、含水状態において下記式(S1)で表される不凍水の分率Rw1が20〜100重量%であることが重要である。
Rw1=[Wnf/(Wfc+Wnf)]×100 ……(S1)
Wnf:高分子電解質材料の乾燥重量1g当たりの不凍水量
Wfc:高分子電解質材料の乾燥重量1g当たりの低融点水量
高分子電解質材料において、メタノールなどの燃料は主として低融点水中を透過し、その割合が大きいと燃料クロスオーバーが大きくなると考えられる。一方、不凍水は、高分子電解質材料中でイオン性基および極性基の近傍に存在すると推測され、この不凍水中はメタノールなどの燃料は容易には透過しないものと推測される。従って、このような不凍水の含有割合が大きな高分子電解質材料(膜)を実現することによって、高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーを両立でき、高分子電解質型燃料電池においては高出力と高エネルギー容量を達成することが可能になる。
Rw1が小さすぎると、燃料クロスオーバー抑制効果が不十分となる。かかる観点ではRw1はできる限り100重量%に近い方が好ましいが、低融点水が全く含まれない場合、プロトン伝導度の低下が懸念されるのでRw1の上限としては99.9重量%程度が好ましい。
また上記Rw1としては、40〜99.9重量%がより好ましく、60〜99.9重量%がさらに好ましく、80〜99.9重量%がさらに好ましく、90〜99.9重量%がさらに好ましい。
本発明においてRw1の数値範囲は、高分子電解質材料が架橋構造を有する場合と、非架橋構造である場合で区別することが好ましい。本発明者らは架橋構造の場合と非架橋構造の場合でRw1の好適な範囲が異なることを実験で確認しているからである。
本発明の高分子電解質材料が架橋構造を有する場合は、Rw1は20〜100重量%であることが必要であり、40〜99.9重量%がより好ましく、60〜99.9重量%がさらに好ましい。本発明の高分子電解質材料が非架橋構造を有する場合は、Rw1は60〜100重量%が好ましく、80〜99.9重量%がより好ましく、90〜99.9重量%がさらに好ましい。
ここで、架橋構造とは、熱に対しての流動性が実質的に無い状態か、溶剤に対して実質的に不溶の状態を意味する。また、非架橋構造とは架橋構造でないことを意味する。その判定は、以下の方法でするものとする。
検体となる高分子電解質材料(約0.1g)を純水で洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して重量を測定する。高分子電解質材料を100倍重量の溶剤に浸漬し、密閉容器中、撹拌しながら70℃、40時間加熱する。次に、アドバンテック社製濾紙(No.2)を用いて濾過を行う。濾過時に100倍重量の同一溶剤で濾紙と残渣を洗浄し、十分に溶出物を溶剤中に溶出させる。濾液を乾固させ、溶出分の重量を求める。溶出重量が初期重量の10%未満の場合は、その溶剤に対して実質的に不溶と判定する。この試験をトルエン、ヘキサン、N−メチルピロリドン、メタノールおよび水の5種類の溶剤について行い、全ての溶剤で実質的に不溶と判定された場合に、その高分子電解質材料は架橋構造であるとして判定し、架橋構造でないものを非架橋構造と判定する。
さらに、本発明の高分子電解質材料は、含水状態において下記式(S2)で表される不凍水の分率Rw2が50〜100重量%であることが好ましい。
Rw2=[Wnf/(Wnf+Wfc+Wf)]×100 ……(S2)
Wf :高分子電解質材料の乾燥重量1g当たりのバルク水量
バルク水中は、低融点水中と同様にメタノールなどの燃料の透過が容易であり、バルク水および低融点水の割合が大きいと燃料クロスオーバーが大きくなると考えられる。一方、前述したように、不凍水中はメタノールなどの燃料は容易には透過しないものと推測される。従って、不凍水の分率Rw2が50重量%以上であることにより、燃料クロスオーバー抑制の実効を期待できる。かかる観点ではRw2はできる限り100重量%に近い方が好ましいが、バルク水および低融点水が全く含まれない場合、伝導度の低下が懸念されるのでRw2の上限としては99.9重量%程度が好ましい。
Rw2としては、60〜99.9重量%がより好ましく、70〜99.9重量%がさらに好ましい。
また、本発明の高分子電解質材料は、含水状態においてWnfが0.05〜2であることが好ましい。
Wnfが0.05以上であることで、プロトン伝導度を確保することができ、2以下とすることで、燃料クロスオーバーの抑制の実効を期待できる。Wnfとしては0.065〜1がより好ましく、0.08〜0.8がさらに好ましい。
Wnf、WfcおよびWfで表される各数値は、示差走査熱量分析(DSC)法により求められる値である。
すなわち、高分子電解質材料を20℃の水に12時間浸漬した後、水中から取り出し、過剰な表面付着水をできるだけ素早くガーゼで拭き取って除去してから、あらかじめ重量(Gp)を測定してあるアルミナコートされたアルミニウム製密閉型試料容器に入れてクリンプした後、できるだけ素早く試料と密閉型試料容器の合計重量(Gw)を測定し、直ちにDSC測定を実施する。測定温度プログラムは、室温から−30℃まで10℃/分の速度で冷却した後、0.3℃/分の速度で5℃まで昇温するものであり、この昇温過程のDSC曲線から下記の数式(n1)を使ってバルク水量(Wf)を求め、下記の数式(n2)を使って低融点水量(Wfc)を求め、また、全水分率(Wt)からそれらの値を差し引くことで、不凍水量(Wnf)を求める〔下記の数式(n3)〕。
ここで、バルク水量(Wf)、低融点水量(Wfc)、不凍水量(Wnf)、および全水分率(Wt)は、乾燥試料の単位重量あたりの重量で表される値である。mは乾燥試料重量、dq/dtはDSCの熱流束シグナル、T0はバルク水の融点、ΔH0はバルク水の融点(T0)での融解エンタルピーである。
本発明の高分子電解質材料は、膜状の形態を有することが好ましい。燃料電池用として使用する場合、通常、膜の状態で高分子電解質膜や電極触媒層として使用されるからである。
本発明の高分子電解質材料は、膜状の形態を有する場合において、20℃の条件下、30重量%メタノール水溶液に対する単位面積当たりのメタノール透過量が40μmol・min-1・cm-2以下であることが好ましい。高分子電解質材料の膜を用いた燃料電池において、燃料濃度が高い領域において高出力および高エネルギー容量が得られるという観点から、高い燃料濃度を保持すべく、燃料透過量が小さいことが望まれるからである。
かかる観点からは、0μmol・min-1・cm-2が最も好ましいが、プロトン伝導度を確保する観点からは0.01μmol・min-1・cm-2以上が好ましい。
なおかつ、本発明の高分子電解質材料は、膜状の形態を有する場合において、単位面積当たりのプロトン伝導度が4S・cm-2以上であることが好ましい。プロトン伝導度は、25℃の純水に膜状の試料を24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、できるだけ素早く行う定電位交流インピーダンス法により測定することができる。
単位面積当たりのプロトン伝導度を4S・cm-2以上とすることにより、燃料電池用高分子電解質膜として使用する際に、十分なプロトン伝導性、すなわち十分な電池出力を得ることができる。プロトン伝導度は高い方が好ましいが、高プロトン伝導度の膜はメタノール水などの燃料により溶解や崩壊しやすくなり、また燃料透過量も大きくなる傾向があるので、現実的な上限は50S・cm-2である。
また、本発明の高分子電解質材料の前記条件での単位面積・単位厚み当たりのメタノール透過量は1000nmol・min-1・cm-1以下であることが好ましく、より好ましくは500nnmol・min-1・cm-1以下、さらに好ましくは250nmol・min-1・cm-1以下である。1000nmol・min-1・cm-1以下とすることで、DFCに使用した場合、エネルギー容量の低下を防ぐことができる。一方、プロトン伝導度を確保する観点からは1nmol・min-1・cm-1以上が好ましい。
なおかつ、前記条件で測定した単位面積・単位厚み当たりのプロトン伝導度としては10mS・cm-1以上が好ましく、より好ましくは40mS・cm-1以上、さらに好ましくは60mS・cm-1以上である。10mS・cm-1以上とすることにより、電池として高出力が得られる。一方、高プロトン伝導度の膜はメタノール水などの燃料により溶解や崩壊しやすくなり、また燃料透過量も大きくなる傾向があるので、現実的な上限は5000mS・cm-1である。
本発明の高分子電解質材料は、上記したような低メタノール透過量と高プロトン伝導度を同時に達成することが好ましい。これらのうち一方だけを達成することは従来技術においても容易であるが、両方を達成してこそ高出力と高エネルギー容量の両立が可能となるからである。
上記のメタノール透過量およびプロトン伝導度は、後述する実施例において、メタノール透過量Aおよびプロトン伝導度Aとして定義される。
また、電極基材と電極触媒層とから構成される電極と組み合わせてMEAとして加工する場合、アノード電極とカソード電極をできる限り無駄がないように対向させることが、触媒使用量(コスト)、電池出力の観点から好ましい。したがってアノード電極とカソード電極の位置決めの観点から、本発明の高分子電解質材料からなる膜は水を含んだ状態でも全光線透過率が30%以上であることが好ましく、50%以上がさらに好ましい。上限としては、膜表面での光反射を考慮して99.5%である。ここでの全光線透過率は25℃水中に6時間以上浸漬した高分子電解質膜を使用し、表面の水滴を拭き取った後、スガ試験機株式会社製“SMカラーコンピューターSM−7−CH”で測定した値である。
なお、本発明の高分子電解質材料が、それを構成する重合体と他の物質(後述の例では多孔基材)との複合体である場合は、メタノール透過量、プロトン伝導度ならびに全光線透過率の測定においては複合体全体を高分子電解質材料として扱い測定を行うものとする。
本発明の高分子電解質材料は、イオン性基を有することが好ましい態様の一つである。イオン性基を有することで、高分子電解質材料が高プロトン伝導度を有するようになる。
本発明における高分子電解質材料中のイオン性基は、負電荷を有する原子団が好ましく、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、スルホン酸基( −SO2(OH) )、硫酸基( −OSO2(OH) )、スルホンイミド基( −SO2NHSO2R(Rは有機基を表す。) )、ホスホン酸基( −PO(OH)2 )、リン酸基( −OPO(OH)2 )、カルボン酸基( −CO(OH) )、およびこれらの塩等を好ましく採用することができる。これらのイオン性基は前記高分子電解質材を構成する重合体中に2種類以上含むことができ、組み合わせることにより好ましくなる場合がある。組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基のいずれかを有することがより好ましく、耐加水分解性の点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。
本発明の高分子電解質材料がスルホン酸基を有する場合、そのスルホン酸基密度は、プロトン伝導性および燃料クロスオーバー抑制の点から0.1〜5.0mmol/gが好ましく、より好ましくは0.5〜3.5mmol/g、さらに好ましくは1.0〜3.5mmol/gである。スルホン酸基密度を0.1mmol/g以上とすることにより、伝導度すなわち出力性能を維持することができ、また5.0mmol/g以下とすることで、燃料電池用電解質膜として使用する際に、十分な燃料遮断性および含水時の機械的強度を得ることができる。
ここで、スルホン酸基密度とは、高分子電解質材料の単位乾燥重量当たりに導入されたスルホン酸基のモル量であり、この値が大きいほどスルホン化の度合いが高いことを示す。スルホン酸基密度は、元素分析、中和滴定あるいは核磁気共鳴スペクトル法等により測定が可能である。スルホン酸基密度測定の容易さや精度の点で、元素分析が好ましく、通常はこの方法で分析を行う。ただし、スルホン酸基以外に硫黄源を含む場合など元素分析法では正確なスルホン酸基密度の算出が困難な場合には中和滴定法を用いるものとする。さらに、これらの方法でもスルホン酸基密度の決定が困難な場合においては、核磁気共鳴スペクトル法を用いることが可能である。
本発明の高分子電解質材料の好ましい態様の1つは、イオン性基を有し、かつ主鎖に下記一般式(I)で表される基を有する芳香族リン系ポリマーを含むものである(以下、態様1と呼ぶ場合がある)。
(式中、R
1は有機基、Xは酸素、硫黄またはセレンを表し、高分子電解質材料中にR
1および/またはXの異なる置換基を2種以上含んでもよい。)
主鎖に前記一般式(I)に示すような5価のリン原子を導入することにより、優れた耐熱・耐候性、耐酸化性・耐ラジカル性を有し、四面体構造のため主鎖が極めて剛直かつ安定で水やメタノール水溶液中での膨潤が抑制されて燃料クロスオーバーが低減し、膜の強度低下も抑えられるという効果を奏するものである。また、前記一般式(I)の極性基の存在により、多くの一般的溶媒への溶解性が向上し、製造や成形加工が容易なものとなる。
従来のイオン性基を有する芳香族炭化水素系ポリマーを単独で高分子電解質材料として用いた場合、高いプロトン伝導性を得るためにイオン性基の含有量を増加すると、高分子電解質材料自身がメタノール水溶液中で溶解する、あるいは激しく膨潤してしまうため、内部に径の大きな水のクラスターができ、高分子電解質材料中に低融点水およびバルク水が多くなる。低融点水およびバルク水においては、燃料の移動が容易に行なわれるため、十分な燃料クロスオーバー抑制効果が得られず、従来の芳香族炭化水素系ポリマーでは、プロトン伝導性と燃料クロスオーバー抑制効果を両立することが出来なかった。
これに対して、本発明の高分子電解質材料として用いられる芳香族リン系ポリマーは、剛直なポリマー骨格とリン原子から垂下する有機置換基R1に疎水性の高い置換基を用いることにより、メタノール水溶液中での膨潤を抑制することが出来るため、高プロトン伝導性と燃料クロスオーバー抑制効果を両立することができ、また、膨潤変形や機械強度低下などを抑制する効果もある。さらに、驚くべきことに5価のリン原子を導入することにより、従来のイオン性基を有する芳香族炭化水素系ポリマーで通常見られた脱スルホン化反応を抑制できることも発見した。
前記一般式(I)中の有機基R1として好ましくは炭素数1〜20の炭化水素残基およびその誘導体残基であり、より好ましくは1〜8の炭化水素残基およびその誘導体残基である。この有機基R1は、高分子電解質材料の耐水性と燃料クロスオーバー抑制の両方の点から疎水性基であることが好ましく、主鎖の剛直性と立体障害による安定性の点から、芳香環を含んでいることがより好ましい。好ましい有機基(置換基)の例を挙げれば、アルキル基、アルケニル基、アミノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロ置換アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、ハロ置換アリール基、アルコキシアリール基、アミノアリール基およびヒドロキシアリール基等が挙げられる。この置換基R1を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ベンジル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモ基、2−クロロエチル基、1,2−ジクロロエチル基、2−ブロモエチル基、1,2−ジブロモエチル基、3−クロロプロピル基、2,3−ジクロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、2,3−ジブロモプロピル基、2−クロロー1−メチルエチル基、1,2−ジクロロー1−メチルエチル基、2−ブロモー1−メチルエチル基、1,2−ジブロモー1−メチルエチル基、4−クロロブチル基、3,4−ジクロロブチル基、4−ブロモブチル基、3,4−ジブロモブチル基、3−クロロー1−メチルプロピル基、2,3−ジクロロ−1−メチルプロピル基、3−ブロモ−1メチルプロピル基、2,3−ジブロモ−1−メチル基、1−クロロメチルプロピル基、1−クロロー1−クロロメチルプロピル基、1−ブロモメチルプロピル基、1−ブロモ−1−ブロモメチルプロピル基、5−クロロペンチル基、4,5−ジクロロペンチル基、5−ブロモペンチル基、4,5−ジブロモペンチル基、1−ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、1−アミノメチル基、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基、4−アミノブチル基、5−アミノペンチル基、メチルチオメチル基、メチルチオエチル基、メチルチオプロピル基、メチルチオブチル基、エチルチオメチル基、エチルチオエチル基、エチルチオプロピル基、プロピルチオメチル基、プロピルチオエチル基、ブチルチオメチル基、トリフェニルホスフィンオキシド、4−クロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、3,4−ブロモフェニル基、3,5−ブロモフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基、ベンジル基、4−ブロモフェニルメチル基、3,4−ジブロモフェニルメチル基、3,5−ジブロモフェニルメチル基、2−フェニルエチル基、2−(4−ブロモフェニル)エチル基、2−(3,4−ジブロモフェニル)エチル基、2−(3,5−ジブロモフェニル)エチル基、3−フェニルプロピル基、3−(4−ブロモフェニル)プロピル基、3−(3,4−ジブロモフェニル)プロピル基、3−(3,5−ジブロモフェニル)プロピル基、4−フェニルブチル基、4−(4−ブロモフェニル)ブチル基、4−(3,4−ジブロモフェニル)ブチル基、4−(3,5−ジブロモフェニル)ブチル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、1−ピロリジノメチル基、1−ピロリジノエチル基、1−ピロリジノプロピル基、1−ピロリジノブチル基、ピロール−1−基、ピロール−2−基、ピロール−3−基、チオフェン−2−基、チオフェン−3−基、ジチアン−2−基、トリチアン−2−基、フラン−2−基、フラン−3−基、ビニル基およびアリル基などが挙げられる。
これらの中でもメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、アミノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロ置換アルキル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ハロ置換フェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、アミノアリール基、ヒドロキシアリール基およびハロ置換アリール基が好ましく、さらに、有機溶媒への可溶性と高重合度ポリマー合成の容易さの点からフェニル基またはメチル基がより好ましく用いられる。
本発明の態様1の芳香族リン系ポリマーは、耐水性、耐熱性、燃料クロスオーバー抑制、機械強度および耐久性の点から、好ましいものとして、具体的には、芳香族ポリホスフィンオキシド、すなわち主鎖にC−P(=O)(R1)−Cで示される部位を有するもの、芳香族ポリホスフィナート、すなわち主鎖にC−P(=O)(R1)−O−Cで示される部位を有するもの、芳香族ポリホスホナート、すなわち主鎖にC−O−P(=O)(R1)−O−Cで示される部位を有するもの、芳香族ポリホスファート、すなわち主鎖にC−O−P(=O)(OR)−O−Cで示される部位(Rは有機基を表し、高分子電解質材料中にRの異なる置換基を2種以上含んでもよい。)を有するもの、およびこれらと芳香族ポリケトンや芳香族ポリスルホンとの共重合体、さらにこれらの酸素原子を硫黄原子やセレン原子に部分的あるいは全て置き換えたポリマー等を挙げることができる。これらの構造は、前記高分子電解質材料中に2種類以上含むことができ、組み合わせることにより好ましくなる場合がある。組み合わせはポリマーのプロトン伝導度、燃料クロスオーバー抑制効果、耐水性、耐熱性、製膜性および機械強度などにより適宜決められる。
中でも、高分子電解質材料が通常強酸水溶液中で長期に使用されることを考えると、耐加水分解性の点から、主鎖に炭素−リン−炭素を有するポリマーがより好ましい。さらに、高分子量ポリマーの合成およびモノマー入手の容易さから、芳香族ポリエーテルホスフィンオキシド(以降、芳香族PEPOと称することがある。)がとりわけ好ましい。
芳香族PEPOは、例えば、「ハイ パフォーム ポリマー」(High. Perform. Polym.), 3, 211 (1991).に記載の方法によって重合することができ、重合度は、一般的溶媒への溶解度、機械強度を考慮して便宜調節することができる。また芳香族ポリ(エーテルホスフィンオキシド/エーテルケトン)共重合体や芳香族ポリ(エーテルホスフィンオキシド/エーテルスルホン)共重合体も、ビス(ハロアリール)ホスフィンオキシドモノマーのうち必要な量を相当するビス(ハロアリール)ケトンモノマーや ビス(ハロアリール)スルホンモノマーに置き換えて、上記方法と同様に共重合することができる。
芳香族PEPOとしては、次のようなポリマーを好ましく用いることができる。すなわち、少なくとも下記一般式(A1)で示される基、および下記一般式(A2)で示される2価フェノール残基を含んで構成される。
(一般式(A1)中、R
1は有機基を表し、高分子固体電解質中にR
1の異なる置換基を2種以上含んでもよい。一般式(A1)中のAr
7およびAr
8は芳香族環を表し、同一のリン原子に結合する両者が同じであっても異なっていてもよい。また、高分子固体電解質中にR
1,Ar
7および/またはAr
8の異なる芳香族環を2種以上含んでもよい。)
−O−E1−O− (A2)
(一般式(A2)中、E1は芳香族環を有する2価の基を表し、E1の異なる基を2種以上含んでもよい。)
また、芳香族環Ar7およびAr8としては例えば、フェニレン、ナフチレン、アントラシレンおよびビフェニレンなどが挙げられる。
前記一般式(A1)で表される基の中でも、一般的溶媒への溶解度、機械強度およびモノマーの入手の容易さ等の観点から、下記に示す基(a1)〜(a12)がより好ましく、さらに高重合度ポリマーの合成とモノマー入手の容易さの点から、基(a1)、(a8)がとりわけ好ましい。
また、これらジアリールホスフィンオキシド基については、それぞれ対応する3価のリン官能基であるホスフィン基に一部置き換えてもよい。これにより電解質に耐酸化性を付与することができるが、機械強度等を考慮すると、その置換比率は50%以下が好ましく、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは10%以下である。
また、これらジアリールホスフィンオキシド基については、それぞれ対応するケトン基あるいはスルホン基に一部置き換えてもよい。これにより電解質の一般的溶媒に対する溶解性が向上する場合があるが、燃料クロスオーバー抑制効果等を考慮すると、その置換比率は75%以下が好ましく、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは25%以下である。特に、製膜性および耐水性の点から芳香族ポリ(エーテルホスフィンオキシド/エーテルケトン)共重合体はより好ましく用いられる。
また、一般式(A2)で表される2価フェノール残基を構成する2価フェノールを具体的に例示すると、ハイドロキノン、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−secブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールフローレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4’−〔1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)〕−ビス(2−メチルフェノール)、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−ブタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジsecブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチルエステル、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチル−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、1,1−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸メチルエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エチルエステル、1,3−ビスフェノール、1,3−ビスクレゾール、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ビフェノール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−スチリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−ニトロフェニル)エタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチル−2,2’−ビフェノール、2,2’−ジアリル−4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,4−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサンおよびα、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
これら2価フェノール残基を構成する2価フェノールの中でも、一般的溶媒への溶解度と高重合度ポリマーの合成の点から、ハイドロキノン、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンがより好ましく用いられる。
上記式(A2)で示される2価フェノール残基の使用割合は、上記式(A1)で示される基と2価フェノール残基の合計モル量に対して45〜55mol%がより好ましく、さらに好ましくは48〜52mol%である。式(A2)で表される2価フェノール残基の使用割合を45〜55mol%とすることにより、ポリマーの分子量が上昇し易く、良好な機械強度を得ることができる。
また本発明の高分子電解質材料は、得られる高分子電解質材料の性能に応じて多価フェノールを共重合することができる。このような多価フェノールを具体的に例示すると、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−〔1−〔4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル〕−4−メチルフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メチルフェニル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、4−〔(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、2,4−ビス〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−エトキシフェノール、2−〔ビス(2,3−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、3,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2,3,6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、2,4,6−〔トリス(4−ヒドロキシフェニルメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1,2,2−テトラ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラ(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,4−〔〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、4−〔1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕アニリン、(2,4−ジヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノールおよび1,3,3−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
多価フェノールの共重合割合としては、5モル%未満が好ましく、より好ましくは1モル%未満である。5モル%未満とすることで、製膜性を維持することができる。
本発明の高分子電解質材料の好ましい態様の1つは、芳香族環を有する2価の基を含むものである(以下、態様2と呼ぶ場合がある)。
従来のイオン性基を有するポリマーを単独で高分子電解質材料として用いた場合、プロトン伝導性を高めるためにイオン性基の含有量を増加すると、高分子電解質材料がアルコール水溶液などの燃料に対して易溶解性化するので、高分子電解質材料中の含水率が増加し、高分子電解質材料中の低融点水およびバルク水が多くなるため、燃料クロスオーバーが大きくなり、高いプロトン伝導性を維持しながら燃料クロスオーバーを抑制することができなかった。
一方、態様2において、芳香族環を有する2価の基の、あるものは燃料遮断性付与効果のある成分として作用し、またあるものは製膜性付与効果のある成分として作用し、またあるものは双方の効果を有する成分として作用する。燃料遮断性付与効果のある成分および/または製膜性付与効果のある成分を導入された重合体で構成することにより、プロトン伝導性が高く、かつ燃料クロスオーバーが小さく、さらに多くの一般的溶媒に可溶性で製造や製膜などの成形加工が容易な高分子電解質材料とすることができる。また、燃料遮断性付与成分の存在により、水やアルコールなどの燃料に対する膨潤が抑制され、膜の強度低下も抑えられるという効果もある。
これに対して、本態様では、燃料遮断性付与効果のある成分または製膜性付与効果のある成分を含む重合体を用いているので、プロトン伝導性が高く、機械強度に優れ、燃料クロスオーバーが抑制され、かつ溶媒に可溶性で製膜性に優れた高分子電解質材料とすることできる。この高分子電解質材料を構成する重合体の種類としては、例えばブロック重合体でもよいし、ランダム重合体でもよいし、交互重合体でもよい。
態様2における芳香族環を有する2価の基として、下記一般式(II)で表される基を含む高分子電解質材料は好ましい。一般式(II)で表される基は製膜性付与効果のある成分である。
(式中、R
2は水素原子、ハロゲン原子、1価の有機基またはイオン性基を表し、aは0〜4の整数を表す。また、高分子電解質材料中にR
2および/またはaの異なるものを2種以上含んでいてもよい。)
一般式(II)中、R2として用いられる1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、アルキルアリル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、ハロゲ化アルキル基、アルキルアリール基、ハロゲン化アリール基などを挙げることができる。イオン性基としてはスルホン酸基、硫酸基、スルホンイミド基、ホスホン酸基、リン酸基およびカルボン酸基などが挙げられる。
態様2における芳香族環を有する2価の基として、下記一般式(III)で表される基を含む高分子電解質材料も好ましい。一般式(III)で表される基は製膜性付与効果のある成分である。
(式中、R
3,R
4は水素原子、ハロゲン原子、1価の有機基またはイオン性基を表し、b,cは0〜4の整数、Zは直接結合、−O−、−S−、−Se−、−CQ
1Q
2−、アルキレン基、アリーレン基、アルキリデン基、またはシクロアルキリデン基を表す。ここでQ
1およびQ
2は同一または異なり、水素原子、ハロゲン基、アルキル基、ハロ置換アルキル基またはアリール基を表し、Q
1およびQ
2のいずれかは水素原子、ハロゲン基、アルキル基、ハロ置換アルキル基から選ばれた少なくとも1種であり、高分子電解質材料中にR
3,R
4,bおよび/またはcの異なるものを2種以上含んでいてもよい。)
式(III)中、R3,R4として用いられる1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、アルキルアリル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルアリール基、ハロゲン化アリール基などを挙げることができる。イオン性基としてはスルホン酸基、硫酸基、スルホンイミド基、ホスホン酸基、リン酸基およびカルボン酸基などが挙げられる。
前記一般式(III)中において、原料入手の容易さおよび製膜性付与効果の大きさの点で、Zは直接結合または−CQ1Q2−を表し、ここでQ1およびQ2は同一または異なり、水素原子、ハロ置換アルキル基またはアリール基を表し、Q1およびQ2のいずれかは水素原子、ハロ置換アルキル基から選ばれた少なくとも1種であることがさらに好ましい。
態様2における芳香族環を有する2価の基として、下記一般式(IV)で表される基を含む高分子電解質材料も好ましい。一般式(IV)で表される基は極めて高い効果を有する燃料遮断性付与成分であり、燃料クロスオーバーを大きく抑制することができることを発明者らは見出した。
(式中、Ar
1〜Ar
4はアリール基またはアリーレン基を表し、置換基を有していてもよい。Ar
1〜Ar
4は任意の1ヶ所以上で結合していてもよく、高分子電解質材料中にAr
1〜Ar
4の異なるものを2種以上含んでいてもよい。)
一般式(IV)で表される基の具体例としては、下記一般式(B1)〜(B6)で表される基が挙げられる。
ここで、Ar1〜Ar4の具体例としては、フェニル基、アルキルフェニル基、アリールフェニル基、ハロ置換フェニル基、ハロ置換アルキルフェニル基、ナフチル基、アルキルナフチル基、ハロ置換ナフチル基、アントラシル基などのアリール基、およびこれらに対応するアリーレン基などが挙げられる。溶媒に対する溶解性、高分子量ポリマー重合の容易さおよび入手の容易さからさらに好ましいAr1〜Ar4はフェニル基、アルキルフェニル基、アリールフェニル基、ナフチル基などのアリール基およびこれらに対応するアリーレン基である。
一般式(IV)で表される基の中でも、燃料クロスオーバー抑制効果および工業的入手の容易さの点から、下記式(IV−2)で示される基がより好ましく、さらに好ましくは下記式(IV−3)で示される基である。
(式(IV−2)または(IV−3)中、点線は結合していても結合していなくてもよく、R5〜R8はハロゲン原子、1価の有機基またはイオン性基を表し、dおよびeは0〜4の整数を表し、fおよびgは0〜5の整数を表し、高分子電解質材料中にR5〜R8および/またはd〜gの異なるものを2種以上含んでいてもよい。)
前記一般式(IV−2)または(IV−3)において、d〜gがd+e+f+g≧2を満たす場合は、一般式(IV−2)または(IV−3)で表される基は燃料遮断性付与と製膜性付与の両方の効果があるために好ましい。また、一般式(IV−3)中において、R5〜R8のうち少なくとも2つがアルキル基である基は、原料入手が容易であり、燃料遮断性付与と製膜性付与の両方の効果がより顕著であるために、より好ましい。
式(IV−2)または(IV−3)中、R5〜R8として用いられる1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、アルキルアリル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、ハロ置換アルキル基、アルキルアリール基、ハロ置換アリール基が挙げられる。イオン性基としてはスルホン酸基、硫酸基、スルホンイミド基等が挙げられる。
前記一般式(IV−2)または(IV−3)で表される基のより好ましい例を挙げると、下記式(b1)〜(b6)で表される基である。
本発明の高分子電解質材料(態様2)として用いられるポリマーの種類としては例えば、イオン性基を有し、耐加水分解性に優れるポリマーが好ましい。その具体例としては、イオン性基含有ポリフェニレンオキシド、イオン性基含有ポリエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルスルホン、イオン性基含有ポリエーテルエーテルスルホン、イオン性基含有ポリエーテルホスフィンオキシド、イオン性基含有ポリエーテルエーテルホスフィンオキシド、イオン性基含有ポリフェニレンスルフィド、イオン性基含有ポリアミド、イオン性基含有ポリイミド、イオン性基含有ポリエーテルイミド、イオン性基含有ポリイミダゾール、イオン性基含有ポリオキサゾール、イオン性基含有ポリフェニレンなどの、イオン性基を有する芳香族炭化水素系ポリマーが挙げられる。ここで、イオン性基については前述のとおりである。
これらポリマーの合成方法は、前記した特性や要件を満足できれば特に限定されるものではなく、例えば重合して得たポリマーにイオン性基を導入してもよく、モノマーにイオン性基を導入後、該モノマーを重合して得ても構わない。
中でも、良好な機械強度を有する高分子量ポリマーを容易に製造でき、溶媒に対する溶解性および耐加水分解性が良好である点から、下記一般式(V)で表されるポリマーがより好ましい。
(式中、Eは芳香族環を有する2価の基で、前記一般式(II),(III),(IV),(IV−2)または(IV−3)により表される。Ar
5およびAr
6は置換されていてもよい2価のアリーレン基、Wは電子吸引性の2価の基、Yは酸素、硫黄またはセレンを表す。E、Ar
5、Ar
6、Wおよび/またはYはそれぞれが2種類以上の基を表してもよい。)
式(V)のEにおいて、(IV)、(IV−2)および(IV−3)のいずれかで表される2価のフェノール残基が含まれていることが、高分子電解質材料の製膜性および燃料クロスオーバー低減効果の点から好ましく、その含有率としては、Eに対し25〜100mol%が好ましく、より好ましくは40〜100mol%である。25mol%以上とすることにより、燃料クロスオーバー低減効果の実効を期待できる。
また、原料入手の容易さおよび燃料クロスオーバー低減効果の大きさの点で、Eとして前記一般式(IV−3)で表される基を含むものは特に好ましい。
一般式(V)において、Ar5およびAr6として好適な基は、合成の容易さ、高分子量ポリマーの得られやすさの点で、置換されていてもよいフェニレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、ビフェニレン基であり、置換されていてもよいフェニレン基が特に好ましい。
原料入手の容易さ、高分子量ポリマーの合成の容易さから、前記一般式(V)中において、Wが、−CO−、−SO2−、−P(R)O−(Rは任意の有機基)から選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、これらの中でも、製膜性、水やアルコールなどの燃料に対する膨潤抑制、および燃料遮断性に特に優れている−CO−が特に好ましい。Yとしては、高分子量体ポリマーの合成の容易さから酸素および硫黄がより好ましく、溶媒に対する溶解性の点から酸素が特に好ましい。前記一般式(V)中において、Wが−CO−であり、かつ、Yが酸素であることが特に好ましい。
本発明の態様2として、前記一般式(V)中において、−Ar5−W−Ar6−が下記一般式(VI)で表されるものを含むものも好ましい。
(式中、Wは電子吸引性の2価の基、R
9はスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基およびカルボン酸基から選ばれた少なくとも1種のイオン性基、hおよびiは1〜4の整数を表す。)
一般式(VI)で表される基が導入された重合体で構成することにより、プロトン伝導性が高く、多くの一般的溶媒に可溶性で製造や製膜などの成形加工が容易な高分子電解質材料とすることができる。
前記一般式(V)で表される芳香族ポリマーの合成法としては、例えば前記Yが酸素である場合には、下記一般式(C1)で示される芳香族活性ジハライド化合物と、下記一般式(C2)で示される2価のフェノール化合物とを反応させることによって製造することができる。
G−Ar5−W−Ar6−G (C1)
(式(C1)中、Gは、ハロゲンを表す。W、Ar5、Ar6は、それぞれ前述の基を表す。)
HO−E−OH (C2)
(式(C2)中、Eは前述の基を表す。)
前記一般式(C1)で表される芳香族活性ジハライド化合物中の2価の基Wは、電子吸引性の基であれば特に限定されるものでない。Wの具体例としては、−CO−、−CONH−、−(CF2)n−(nは1〜10の整数)、−C(CF3)2−、−COO−、−SO2−、−SO−、−PO(R1)−(R1は任意の有機基)、−CO−A−CO−(Aは芳香環を含む任意の2価の基)、−SO2−B−SO2−(Bは芳香環を含む任意の2価の基)などが挙げられる。中でも、高分子量ポリマーの合成の容易さ、製膜性および入手の容易さの点から、−CO−、−SO2−、−PO(R1)−がさらに好ましく、製膜性および燃料遮断性の点から−CO−が特に好ましい。
前記−PO(R1)−における有機基R1の好ましい態様としては、前述の式(I)中のR1と同様である。また、本態様中にR1の異なる置換基を2種以上含んでいてもよい。
また、前記一般式(C1)で表される芳香族活性ジハライド化合物中のAr5およびAr6としては、同じWに結合するAr5およびAr6が同じであっても異なるものでもよい。また、高分子電解質材料中に前記一般式(C1)で表される芳香族活性ジハライド化合物の異なるものを2種以上重合せしめてもよい。
式(C1)で表される芳香族活性ジハライド化合物としては例えば、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロベンゾフェノンおよびその塩、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンおよびその塩、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホンおよびその塩、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンおよびその塩、ビス(4−クロロフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−クロロフェニル)フェニルホスフィンオキシドのスルホン化物およびその塩、ビス(4−フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシドのスルホン化物およびその塩、ビス(4−フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシドビス(4−クロロフェニル)メチルホスフィンオキシド、ビス(4−フルオロフェニル)メチルホスフィンオキシド、ヘキサフルオロベンゼン、オクタフルオロビフェニル、1,3−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾフェノン、2,6−ジクロロベンゾニトリル、4,4'−ビス(4−フルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロベンゾイル)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−フルオロフェニルスルホン)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロフェニルスルホン)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス〔フェノキシ−4−(4−クロロベンゾイル)〕ジフェニルスルホン、4,4'−ビス〔フェノキシ−4−(4−フルオロベンゾイル)〕ジフェニルスルホンなどが挙げられる。
中でも高分子量ポリマーの合成の容易さおよび工業的入手の容易さの点から、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロベンゾフェノンおよびその塩、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンおよびその塩、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホンおよびその塩、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンおよびその塩、ビス(4−クロロフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−クロロフェニル)フェニルホスフィンオキシドのスルホン化物のナトリウム塩、ビス(4−フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシドのスルホン化物のナトリウム塩、ビス(4−クロロフェニル)メチルホスフィンオキシド、ビス(4−フルオロフェニル)メチルホスフィンオキシドなどがより好ましく、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロベンゾフェノンおよびその塩、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンおよびその塩、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホンおよびその塩、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンおよびその塩がさらに好ましい。
一般式(C2)の2価フェノールにおいてEは芳香族環を有する2価の基で、前記一般式(II),(III),(IV),(IV−2)または(IV−3)により表され、一般式(C2)で表される化合物としては例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、3,3'−ジフルオロ[(1,1'−ビフェニル)4,4'−ジオール]、3,3',5,5'−テトラフルオロ[(1,1'−ビフェニル)4,4'−ジオール]、3,3'−ジメチル[(1,1'−ビフェニル)−4,4'−ジオール]、5,5'−ジメチル[(1,1'−ビフェニル)−2,2'−ジオール]、2,2'−メチレンビスフェノール、2,2'−メチレンビス[3,6−ジメチルフェノール]、2,2'−メチレンビス[3,6−ジメチルフェノール]、4,4'−メチレンビス[4−(1−メチルエチル)フェノール]、4,4'−メチレンビス[2−メチルフェノール]、2,4'−メチレンビスフェノール、4,4'―(1,2−エタンジイル)ビスフェノール、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチルフェノール]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、2−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチルフェノール]、3−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチルフェノール]、4,4'−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール、4,4'−(2−メチルプロピリデン)[2−メチルフェノール]、4,4'−シクロペンチリデンビスフェノール、4,4'−シクロペンチリデン[2−メチルフェノール]、4,4'−シクロペンチリデン[2−シクロヘキシルフェノール]、4,4'−シクロペキシリデンビスフェノール、4,4'−シクロヘキシリデン[2−メチルフェノール]、4,4'−シクロヘキシリデン[2−シクロヘキシルフェノール]、4,4'−(4−メチルシクロヘキシリデンビスフェノール)、4,4'−(4−メチルシクロヘキシリデン[2−シクロヘキシルフェノール])、4−[1−[4−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−シクロヘキシル]−1−メチルエチル]フェノール、4−[1−[4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−4−メチル−シクロヘキシル]−1−メチルエチル]−2−メチルフェノール、ジシクロペンタジエニルビス[4−メチルフェノール]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、4,4'−オキシビスフェノール、4,4'−(ジメチルシリレン)ビスフェノール、4,4'−[2、2、2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ビスフェノール、4,4'−メチレンビス[2−フルオロフェノール]、2,2'−メチレンビス[4−フルオロフェノール]、4,4'−イソプロピリデンビス[2−フルオロフェノール]、2,4−ジヒドロキシビフェニル、2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,4−ジヒドロキシ−メチルビフェニル、2,5−ジヒドロキシ−メチルビフェニル、2,4−ジヒドロキシ−エチルビフェニル、2,5−ジヒドロキシ−エチルビフェニル、2,4−ジヒドロキシ−プロピルビフェニル、2,5−ジヒドロキシ−プロルビフェニル、2,4−ジヒドロキシ−ブチルビフェニル、2,5−ジヒドロキシ−ブチルビフェニル、2,4−ジヒドロキシ−ペンチルビフェニル、2,5−ジヒドロキシ−ペンチルビフェニル、2,4−ジヒドロキシ−ヘキシルビフェニル、2,5−ジヒドロキシ−ヘキシルビフェニル、2,4−ジヒドロキシ−ジメチルビフェニル、2,5−ジヒドロキシ−ジメチルビフェニル、2,4−ジヒドロキシ−ジエチルビフェニル、2,5−ジヒドロキシ−ジエチルビフェニル、2,4−ジヒドロキシ−ジプロピルビフェニル、2,5−ジヒドロキシ−ジプロルビフェニル、4−ジヒドロキシ−ジブチルビフェニル、2,5−ジヒドロキシ−ジブチルビフェニル、フェノキシハイドロキノン、フェノキシレゾルシノール、メチルフェノキシハイドロキノン、メチルフェノキシレゾルシノール、エチルフェノキシハイドロキノン、エチルフェノキシレゾルシノール、プロピルフェノキシハイドロキノン、プロピルフェノキシレゾルシノール、ブチルフェノキシハイドロキノン、ブチルフェノキシレゾルシノール、ペンチルフェノキシハイドロキノン、ペンチルフェノキシレゾルシノール、ヘキシルフェノキシハイドロキノン、ヘキシルルフェノキシレゾルシノール、ジメチルフェノキシハイドロキノン、ジメチルフェノキシレゾルシノール、ジエチルフェノキシハイドロキノン、ジエチルフェノキシレゾルシノール、ジプロピルフェノキシハイドロキノン、ジプロピルフェノキシレゾルシノール、ジブチルフェノキシハイドロキノン、ジブチルフェノキシレゾルシノール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシメチルベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシメチルベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシエチルベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシエチルベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシプロピルベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシプロピルベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシブチルベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシブチルベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシペンチルベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシペンチルベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシヘキシルベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシヘキシルチルベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシジメチルベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシジメチルベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシジエチルベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシジエチルベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシジプロピルベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシジプロピルベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシジブチルベンゾフェノン、フェニルチオハイドロキノン、フェニルチオレゾルシノール、メチルフェニルチオハイドロキノン、メチルフェニルチオレゾルシノール、エチルフェニルチオハイドロキノン、エチルフェニルチオレゾルシノール、プロピルフェニルチオハイドロキノン、プロピルフェニルチオレゾルシノール、ブチルフェニルチオハイドロキノン、ブチルフェニルチオレゾルシノール、ペンチルフェニルチオハイドロキノン、ペンチルフェニルチオレゾルシノール、ペキシルフェニルチオハイドロキノン、ヘキシルフェニルチオレゾルシノール、ジメチルフェニルチオハイドロキノン、ジメチルフェニルチオレゾルシノール、ジエチルフェニルチオハイドロキノン、ジエチルフェニルチオレゾルシノール、ジプロピルフェニルチオハイドロキノン、ジプロピルフェニルチオレゾルシノール、ジブチルフェニルチオハイドロキノン、ジブチルフェニルチオレゾルシノール、
4−ジヒドロキシフェニルフェニルスルホン、2,5−ジヒドロキシフェニルフェニルスルホン、2,4−ジヒドロキシフェニルメチルフェニルスルホン、2,5−ジヒドロキシフェニルメチルフェニルスルホン、2,4−ジヒドロキシフェニルエチルフェニルスルホン、2,5−ジヒドロキシフェニルエチルフェニルスルホン、2,4−ジヒドロキシフェニルプロピルフェニルスルホン、2,5−ジヒドロキシフェニルプロピルフェニルスルホン、2,4−ジヒドロキシフェニルブチルフェニルスルホン、2,5−ジヒドロキシフェニルブチルフェニルスルホン、2,4−ジヒドロキシフェニルペンチルフェニルスルホン、2,5−ジヒドロキシフェニルペンチルフェニルスルホン、2,4−ジヒドロキシフェニルヘキシルフェニルスルホン、2,5−ジヒドロキシフェニルヘキシルフェニルスルホン、2,4−ジヒドロキシフェニルジメチルフェニルスルホン、2,5−ジヒドロキシフェニルジメチルフェニルスルホン、2,4−ジヒドロキシフェニルジエチルフェニルスルホン、2,5−ジヒドロキシフェニルジエチルフェニルスルホン、4−ジヒドロキシ−4'−フェノキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−4'−フェノキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−4'−メチルフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−4'−メチルフェノキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−4'−エチルフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−4'−エチルフェノキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−4'−プロピルフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−4'−プロピルフェノキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−4'−ブチルフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−4'−ブチルフェノキシベンゾフェノン、4−フェニルメチル−1,3−ベンゼンジオール、2−フェニルメチル−1,4−ベンゼンジオール、4−(1−メチル−フェニルエチル)−1,3−ベンゼンジオール、3−(1−メチル−フェニルエチル)−1,4−ベンゼンジオール、5,5'−(1−メチルエチリデン)ビス[1,1'−(ビフェニル)−2−オール]、5、5'−(1、1−シクロペンチリデン)ビス[1,1'−(ビフェニル)−2−オール]、5、5'−(1、1−シクロヘキシリデン)ビス[1,1'−(ビフェニル)−2−オール]、5'−(1−フェニルエチリデン)ビス[1,1'−(ビフェニル)−2−オール]、5,5'−(1−フェニルプロピリデン)ビス[1,1'−(ビフェニル)−2−オール]、5,5'−(1−フェニルブチリデン)ビス[1,1'−(ビフェニル)−2−オール]、2、2'−メチレンビス[1,1'−ビフェニル−4−オール]、2,2'−エチレンビス[1,1'−ビフェニル−4−オール]、4,4'−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、4,4'−(1−フェニルエチリデン)−(2−メチルフェノール)、4,4'−(1−フェニルエチリデン)−(3−メチルフェノール)、4,4'−(1−フェニルエチリデン)−(2−フェニルフェノール)、4,4'−(4−メチルフェニルメチレン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4'−(4−メチルフェニルメチレン)ビス(2,3−ジメチルフェノール)、4,4'―(ジフェニルメチレン)ビスフェノール、4,4'―(ジフェニルメチレン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4'―(ジフェニルメチレン)ビス(2−フルオロフェノール)、4,4'−(ジフェニルメチレン)ビス(2,6−ジフルオロフェノル)、4,4'−[4−(1,1'−ビフェニル)メチレン]ビスフェノール、4,4'−[4−(1,1'−ビフェニル)メチレン](2−メチルフェノール)、4,4'−(1−フェニルメチリデン)ビスフェノール、4,4'−(1−フェニルメチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4'−(1−フェニルメチリデン)ビス(2−シクロヘキシルフェノール)、4,4'−(4−メチル−フェニルメチレン)ビス(5−メチルフェノール)、4,4'−(4−メチル−フェニルメチレン)ビス(2−シクロヘキシルフェノール)4,4'−(4−メチル−フェニルメチレン)ビス(2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール)、5,5−[4−(1,1'−ビフェニル)メチレン]ビス[(1,1'−ビフェニル)−2−オール]、4、4'−[4−(1,1'−ビフェニル)メチレン]ビス(2−シクロヘキシルフェノール)、4,4'−[4−(1,1'−ビフェニル)メチレン]ビス(2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール)、4,4'−[(4−フルロフェニル)メチレン]ビスフェノール、4,4−(フェニルメチレン)ビス(2−フルオロフェノール)、5,5'−(1−フェニルエチリデン)ビス[(1,1'−ビフェニル)−2オール]、4,4'−(1−フェニルエチリデン)ビス(2−シクロヘキシルフェノール)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−メチルフェノール]、2,2'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[4−メチルフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2,5−ジメチルフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4'−(ジフェニルメチレン)ビス[2−メチルフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−フルオロフェノール]、2,2'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[4−フルオロフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−フェニルフェノール]、2,2'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[4−フェニルフェノール]、4,4'−ジヒドロキシテトラフェニルメタンおよび2,2'−ジヒドロキシ−9,9’−スピロビフルオレン等が挙げられる。
これらの2価フェノールの中でも、工業的入手の容易さ、製膜性付与と燃料遮断性付与とのバランスから、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、フェニルヒドロキノン、2,5−ヒドロキシ−4’−メチルビフェニル、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−イソプロピルベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−メチルフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[4−メチルフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−フェニルフェノール]、2,2'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[4−メチルフェノール]、 4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2,5−ジメチルフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4'−ジヒドロキシテトラフェニルメタン、4,4'−ジヒドロキシテトラ(3−メチルフェニル)メタンなどがより好ましい。
中でも、燃料遮断性付与と製膜性付与との点から、ハイドロキノン、フェニルヒドロキノン、2,5−ヒドロキシ−4’−メチルビフェニル、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−メチルフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−フェニルフェノール]、4,4'−ジヒドロキシテトラフェニルメタンがさらに好ましく、さらにより好ましくは、ハイドロキノン、フェニルヒドロキノン、2,5−ヒドロキシ−4’−メチルビフェニル、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、4,4'−ジヒドロキシテトラフェニルメタン、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−メチルフェノール]、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[2−フェニルフェノール]である。
式(C2)で表される2価のフェノール化合物は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
式(C1)の芳香族活性ジハライド化合物と式(C2)の2価のフェノール化合物との使用割合としては、式(C2)の2価のフェノール化合物が好ましくは45〜55mol%、より好ましくは48〜52mol%、式(C1)の芳香族活性ジハライド化合物が好ましくは55〜45mol%、より好ましくは52〜48mol%である。式(C2)の2価のフェノール化合物の使用割合が45〜55mol%の範囲で有れば、重合体の分子量が上昇しやすく、塗膜の塗布性に優れるために好適である。
式(C1)で表される芳香族活性ジハライド化合物と式(C2)の2価のフェノール化合物から得られるポリエーテル系共重合体のGPC法による重量平均分子量としては、1万〜500万が好ましく、より好ましくは3万〜100万である。1万以上とすることで、製膜性や強度を得ることができ、成形膜にクラックが発生するのを防ぐことができる。一方、500万以下とすることで、溶解性を充分なものとし、また溶液粘度が高くなるのを抑え、良好な加工性を得ることができる。
また、本態様の高分子電解質材料で用いられる重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分を共重合せしめることができる。
また、多価フェノールについては、態様1におけるものと同様の思想を適用することができる。
このポリエーテル系共重合体の構造は、例えば、赤外線吸収スペクトルによって、1,640〜1,660cm-1のC=O吸収などにより確認でき、また、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)により、6.8〜8.0ppmの芳香族プロトンのピークから、その構造を確認することができる。
上記したポリエーテル系共重合体は、式(C2)の2価のフェノール化合物と式(C1)の芳香族活性ジハライド化合物とをアルカリ金属化合物の存在下で、溶剤中で加熱することにより得ることができる。
この際使用するアルカリ金属化合物としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム、金属リチウムなどを挙げることができる。これらは、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。アルカリ金属化合物の使用量としては、2価のフェノール化合物に対して、100〜400mol%が好ましく、より好ましくは100〜250mol%である。
反応に使用する溶剤としては例えば、ベンゾフェノン、ジフェニルエーテル、ジアルコキシベンゼン(アルコキシル基の炭素数は1〜4)、トリアルコキシベンゼン(アルコキシル基の炭素数は1〜4)、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを使用することができる。これらは、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
このポリエーテル系共重合体を合成する際の、反応濃度としてはモノマーの重量が溶剤を含めた反応系の全重量に対し2〜50重量%が好ましく、反応温度としては50〜250℃が好ましい。また、重合体合成時に生じる金属塩や未反応モノマーを除去するため、反応溶液をろ過することや反応溶液を重合体に対して貧溶剤である溶媒により再沈殿させたり、酸性あるいはアルカリ性の水溶液により洗浄することが好ましい。
本発明の高分子電解質材料の態様1および態様2にイオン性基を導入する方法について以下に述べる。
上記したポリエーテル系共重合体にイオン性基を導入する方法としては、重合体にイオン性基を導入してもよいし、イオン性基を有するモノマーを重合してもよい。
重合体へのホスホン酸基の導入は、例えば、「ポリマー プレプリンツ」(Polymer Preprints), Japan , 51, 750 (2002). 等に記載の方法によって可能である。重合体へのリン酸基の導入は、例えば、ヒドロキシル基を有するポリマーのリン酸エステル化によって可能である。重合体へのカルボン酸基の導入は、例えば、アルキル基やヒドロキシアルキル基を有するポリマーを酸化することによって可能である。重合体へのスルホンイミド基の導入は、例えば、スルホン酸基を有するポリマーをアルキルスルホンアミドで処理するによって可能である。重合体への硫酸基の導入は、例えば、ヒドロキシル基を有するポリマーの硫酸エステル化によって可能である。
重合体へのスルホン酸基の導入は例えば、重合体をクロロスルホン酸と反応させる方法により行うことができる。この方法により重合体をスルホン化する場合には、スルホン化の度合いはクロロスルホン酸の使用量と反応温度および反応時間により、容易に制御することができる。また、理由は明らかではないが、この方法でスルホン化することによって本発明の不凍水の分率Rw1、Rw2および/またはWnfが得られ、高伝導度と低燃料クロスオーバーが両立される。一方、例えば濃硫酸や発煙硫酸と反応させる方法では、スルホン酸基密度の制御が困難な場合が多く、その結果として本発明の不凍水の分率Rw1、Rw2および/またはWnfを得ることが困難となる傾向があるために、好ましくない。
また、イオン性基を有するモノマーを重合する方法としては、例えば、「ポリマー プレプリンツ」(Polymer Preprints), 41(1) (2000) 237. 等に記載の方法によって可能である。この方法により重合体を得る場合には、スルホン化の度合いはスルホン酸基を有するモノマーの仕込比率により、容易に制御することができる。また、スルホン酸基をポリマー中にランダムに導入することができるためと推定されるが、重合体へ後からスルホン酸基を導入した場合に比べて溶解性が大きく向上する。従って、スルホン酸基を有するモノマーを重合する方法によれば、例えば前記式(VI)で表される基を含む重合体の場合に、溶媒に可溶性で機械強度に優れた重合体とすることができるので、本発明の不凍水の分率Rw1、Rw2および/またはWnfを得ることができ、高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーの両立が可能となる。
本発明の高分子電解質材料の態様1および態様2において、それらが非架橋構造を有する場合、それらのGPC法による重量平均分子量は1万〜500万が好ましく、より好ましくは3万〜100万である。重量平均分子量を1万以上とすることで、高分子電解質材料として実用に供しうる機械的強度を得ることができる。一方、500万以下とすることで、十分な溶解性を得ることができ、溶液粘度が高くなりすぎるのを防ぎ良好な加工性を維持することができる。
本発明の高分子電解質材料は、燃料電池用として使用する場合、各種高分子電解質部品として使用できる。高分子電解質部品の例は高分子電解質膜および電極触媒層である。
以下、本発明の高分子電解質材料の好ましい態様1および態様2について、高分子電解質膜の製法を述べる。スルホン酸基を有する重合体を膜へ転化する方法としては、−SO3M型(Mは金属)のポリマーを溶液状態より製膜し、その後高温で熱処理し、プロトン置換して膜とする方法が挙げられる。前記の金属Mはスルホン酸と塩を形成しうるものであればよいが、価格および環境負荷の点からはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Wなどが好ましく、これらの中でもLi、Na、K、Ca、Sr、Baがより好ましく、Li、Na、Kがさらに好ましい。理由は明らかではないが、この方法で製膜することによって本発明の不凍水の分率Rw1、Rw2およびWnfが得られ、高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーが両立可能となる。
前記熱処理の温度としては、得られる膜の不凍水の分率および燃料遮断性の点で200〜500℃が好ましく、250〜400℃がより好ましく、300〜350℃がさらに好ましい。200℃以上とするのは、本発明で規定する不凍水の分率を得る上で好ましい。一方、500℃以下することで、ポリマーが分解するのを防ぐことができる。
また、熱処理時間としては、得られる膜の不凍水の分率、プロトン伝導性および生産性の点で1分〜24時間が好ましく、3分〜1時間がより好ましく、5分〜30分がさらに好ましい。熱処理時間が短すぎると、効果が薄く本発明の不凍水の分率が得られない場合があり、長すぎるとポリマーの分解が起きプロトン伝導性が低下する場合があり、また生産性が低くなる。
−SO3M型のポリマーを溶液状態より製膜する方法としては例えば、粉砕した−SO3H型のポリマーをMの塩またはMの水酸化物の水溶液に浸漬し、水で充分洗浄した後、乾燥し、次に非プロトン性極性溶媒等に溶解して溶液を調製し、該溶液よりガラス板あるいはフィルム上に適当なコーティング法で塗布し、溶媒を除去し、酸処理する方法を例示することができる。
コーティング法としては、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、カーテンコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷などの手法が適用できる。
製膜に用いる溶媒としては、高分子化合物を溶解し、その後に除去し得るものであればよく、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロパノールなどのアルコール系溶媒が好適に用いられる。
本発明の高分子電解質材料からなる高分子電解質膜の膜厚としては、通常3〜2000μmのものが好適に使用される。実用に耐える膜の強度を得るには3μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには2000μmより薄い方が好ましい。膜厚のより好ましい範囲は5〜1000μm、さらに好ましい範囲は10〜500μmである。
膜厚は、種々の方法で制御できる。例えば、溶媒キャスト法で製膜する場合は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御することができるし、また、例えばキャスト重合法で製膜する場合は板間のスペーサー厚みによって調製することもできる。
また、本発明の高分子電解質材料には、通常の高分子化合物に使用される可塑剤、安定剤あるいは離型剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内で添加することができる。
本発明の高分子電解質材料の態様1,2から作製した高分子電解質膜は、必要に応じて放射線照射などの手段によって高分子構造を架橋せしめることもできる。架橋せしめることにより、燃料クロスオーバーおよび燃料に対する膨潤をさらに抑制する効果が期待でき、機械的強度が向上し、より好ましくなる場合がある。放射線照射の種類としては例えば、電子線照射やγ線照射を挙げることができる。
本発明の高分子電解質材料の好適な別の態様は、空隙を有し、空隙率が5〜80体積%、空隙の孔径の平均が50nm未満であり、かつ、イオン性基を有する高分子電解質材料である(以下、態様3と呼ぶ場合がある)。
以下、この高分子電解質材料(態様3)についての詳細な実施形態を説明する。
本発明の高分子電解質材料(態様3)を構成する重合体としては、熱硬化性樹脂でもよいし結晶性または非晶性の熱可塑性樹脂でもよいし、また無機物や無機酸化物や有機無機複合体などが含まれていてもよいが、空隙を形成でき、また、空隙の内部にイオン性基が存在できるように構成されているものを用いる。
従って重合体を構成する単量体の1種以上は、イオン性基を有するか、または後処理でイオン性基が導入可能なものが好ましい。ここでの「導入」とは、重合体自身にイオン性基が化学的に結合された状態やイオン性基を有する物質が重合体表面に強く吸着された状態やイオン性基を有する物質がドープされた状態などのように、洗浄等の物理的手段により容易にイオン性基が脱離されない状態にすることをさす。
また、本発明の高分子電解質材料(態様3)を構成する重合体において、イオン性基を有する繰り返し単位とそうでない繰り返し単位とが、交互に共存し、イオン性基を有する繰り返し単位の繰り返しの連続性がプロトン伝導を損なわない程度に適度に分断されていることが好ましい。そうすることにより、イオン性基を有する繰り返し単位の部分が低融点水などを過剰に含有することを防ぎ、すなわち燃料クロスオーバーを低く抑えることができる。加えて、高分子電解質材料の耐水性も向上させ、クラックの発生や崩壊を防ぐこともできる。
つまり、イオン性基を有するか導入可能な単量体とそうでない単量体との共重合体が好ましい。さらに、燃料クロスオーバーとプロトン伝導度のバランスから、イオン性基を有する単位とそうでない単位が交互に連結されている、すなわち交互重合の部分が多く存在することが好ましい。交互共重合の繰り返し単位を多く有する共重合体は、ビニル単量体のe値が正のものと負のものとを共重合することで得ることができる。ここでのe値とは、単量体のビニル基やラジカル末端の荷電状態を表し、「POLYMER HANDBOOK」(J.BRANDRUPら著)等に詳細に記載されているQe概念のe値である。
態様3に使用可能なビニル単量体としては例えば、下記一般式(D1)〜(D3)で表されるものを挙げることができる。
CH2=C(J1)COOJ2 (D1)
(式中、J1は水素、メチル基およびシアノ基から選ばれる置換基を表し、J2は水素、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基およびこれらの誘導体から選ばれる置換基を表す。)
(式中、J
3は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基およびシクロアルキル基から選ばれる置換基を表す。)
CH2=C(J4)(J5) (D3)
(式中、J4は水素、メチル基から選ばれる置換基を表し、J5は水素、水酸基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、およびフェニル基、シクロヘキシル基、シアノ基、アミド基、ハロゲン含有アルキル基およびこれらの誘導体から選ばれる置換基を表す。)
ビニル単量体の具体例を挙げると、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、インデン、アセナフチレンなどの芳香族ビニル単量体、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル系単量体、N−メチルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミドマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド、N−o−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−m−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−p−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−o−メトキシフェニルマレイミド、N−m−メトキシフェニルマレイミド、N−p−メトキシフェニルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミド、N−m−クロロフェニルマレイミド、N−p−クロロフェニルマレイミド、N−o−カルボキシフェニルマレイミド、N−m−カルボキシフェニルマレイミド、N−p−カルボキシフェニルマレイミド、N−o−ニトロフェニルマレイミド、N−m−ニトロフェニルマレイミド、N−p−ニトロフェニルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、メタリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホメチルスチレン、p−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸カリウム、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸ナトリウム塩、ビニル安息香酸カリウム塩、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルスルホン酸、ビニル硫酸、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどの含フッ素単量体等が挙げられる。
中でも、イオン性基の導入の容易さや重合作業性の観点からスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、インデン、アセナフチレンなどの芳香族ビニル単量体の使用が好ましい。
また、組み合わせとしては、e値が負のスチレンやα−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体を選択した場合、先述した理由からe値が正でイオン性基の導入が困難なビニル単量体の使用が好ましく、燃料クロスオーバー抑制効果の観点から、アクリロニトリル、メタクリロニトリ、N−フェニルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどの含フッ素単量体が好ましい。
また、本発明の高分子電解質材料(態様3)は架橋構造を有することがより好ましい。架橋構造の定義は前述のとおりである。架橋構造を有することにより、水分や燃料の浸入に対する高分子鎖間の広がりを抑えることができる。そのため、プロトン伝導に対して過剰な低融点水などの水分含量を低く抑えることができ、また、燃料に対する膨潤や崩壊も抑制できることから、結果的に燃料クロスオーバーを低減できる。また、高分子鎖を拘束できるため耐熱性、剛性、耐薬品性なども付与できる。また、後述するような空隙の形態の保持性にも優れる。さらに、重合後にイオン性基を導入する場合には、空隙内壁部に効率よく選択的にイオン性基を導入することが可能となる。ここでの架橋は、化学架橋であっても物理架橋であってもよい。この架橋構造は例えば、多官能単量体の共重合や電子線、γ線などの放射線照射によって形成できる。特に多官能単量体による架橋が経済的観点から好ましい。
架橋構造の形成に採用される多官能単量体の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール(ジ/トリ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(ジ/トリ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(ジ/トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(ジ/トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸ビフェノール、ビスフェノキシエタノール(メタ)フルオレンジアクリレート、などの多価アルコールのジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(好ましくはポリエチレングリコール部分の平均分子量;400〜1000程度)、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド30モル付加物のジ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ソルビトールエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ソルビトールエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールエチレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレートおよびソルビトールエチレンオキサイド付加物のヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン系ポリエーテル類、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレンなどの芳香族多官能単量体、ジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸ジアリルエステル、アジピン酸ジビニルなどのエステル類、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルフタレートなどのジアリル化合物、ブタジエン、ヘキサジエン、ペンタジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン類、ジクロロホスファゼンを原料として重合性多官能基を導入したホスファゼン骨格を有する単量体、トリアリルジイソシアヌレートなどの異原子環状骨格を有する多官能単量体、ビスマレイミド、メチレンビスアクリルアミド類などが挙げられる。
これらの中でも、機械的強度やイオン性基の導入時の耐薬品性の観点から、ジビニルベンゼンなどの芳香族多官能単量体類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノール(メタ)フルオレンジアクリレートなどの多価アルコールのジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
以上のような単量体から得られる共重合体の分子量としては、形態保持の観点から、重量平均分子量で4000以上であることが好ましい。また、架橋構造でもよいことから上限には特に制限はない。
また、架橋構造の形成に用いる多官能単量体は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明の高分子電解質材料(態様3)は空隙を有しているものであり、この空隙には高分子電解質材料としての通常使用時においては、水などの媒体が充填されて使用される。高分子電解質材料中に空隙があれば燃料クロスオーバーは増大すると、通常は考えられるが、本発明の空隙を有する高分子電解質材料(態様3)においては、特定の空隙を設けることによって、燃料クロスオーバーを抑制しつつ高いプロトン伝導性を達成できたものである。特に、本発明の高分子電解質材料(態様3)は、例えば燃料としてメタノール水を使用する場合に、メタノール水中のメタノール濃度による高分子電解質材料全体の膨潤度合いの変化が小さいため、高濃度燃料になるほど既存材料(例えばパーフルオロ系電解質ポリマー)と比較してメタノールクロスオーバーの抑制効果が大きくなる利点がある。
態様3の高分子電解質材料に対する空隙率としては、5〜80体積%とし、10〜60体積%が好ましく、20〜50体積%がより好ましい。燃料クロスオーバーは高分子電解質材料中の水分量に関係する可能性があるが、水分含有量も空隙率を制御することで最適化することが可能である。希望するプロトン伝導性と燃料クロスオーバー値のバランスで空隙率を決めることができる。プロトン伝導性を向上させる観点からは、空隙率を5%以上とし、燃料クロスオーバー抑制の観点からは空隙率を80%以下とする。
この空隙率は、高分子電解質材料について、25℃の水中に24時間浸漬後の体積A(cm3)と、60℃で6時間熱風乾燥した後の重量W(g)とを測定し、乾燥した重合体の真密度D(g/cm3)の値を用いて次式で求めることができる。
空隙率(%)=[(A−W/D)/A]×100
なお、真密度Dはユアサアイオニクス株式会社製 ポリマー密度測定装置“ULTRAPYCNOMETER 1000”にて求めることができる。
なお、上記測定条件では除去困難な結晶水や不凍水が膜中に存在する場合、これらが占める体積は本発明においては空隙として扱わない。
空隙の形態としては、例えば膜状の形態において膜の片側表面から反対側の表面に貫通するもの(連続孔)であってもよいし、独立孔であってもよいが、プロトン伝導性が良好であることから連続孔であることが好ましい。また、孔は分岐するものであってもよい。
この空隙は連続孔でも単独孔でもよいが、プロトン伝導性と燃料クロスオーバー抑制効果のバランスの観点からは不定形な網目状の空隙、逆に述べれば、重合体が立体的に繋がった三次元網目構造が好ましい。また、この空隙が連続孔である場合は、表裏につながった全ての経路が50nm以下であることが好ましい。
また、空隙の孔径の平均は、50nm未満とし、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下である。50nm以上の場合は、燃料クロスオーバー抑制効果が不十分となる傾向にある。一方、空隙の孔径の平均の下限としては、0.1nm以上が好ましく、0.1nm以上とすることにより、水が高分子電解質材料中に滲入することによる、プロトン伝導を確保できる。
ここで空隙の孔径は、高分子電解質材料断面の空隙の孔径の平均値でもって表す。この空隙は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などによる観察から測定できる。平均値は高分子電解質材料断面の100nm±30nm超薄切片を四酸化オスミウムで染色して撮影した像から、斑点状に染色されたの部分の最大径を空隙の孔径とし、20個以上好ましくは100個以上の空隙から求めることができる。通常は100個の空隙で測定する。膜自身が四酸化オスミウムに染まってしまう場合などで、染色剤の変更や四酸化オスミウムを使用せずに測定する方が良い場合は、像の陰影で斑点に見える部分を空隙として測定する。なお、明らかに線状に染色された部分(切片作製時のクラック等)は除外する。
また、本発明の高分子電解質材料(態様3)中にはイオン性基が存在している。好ましくはその空隙の内部にイオン性基が存在している。内部とは空隙の内表面及び空隙部分それ自身をいう。好ましくは空隙の内表面にイオン性基が存在している状態である。空隙の内部以外の部分にもイオン性基が存在していることは差し支えない。イオン性基が存在しているとは、重合体自身にイオン性基が化学的に結合された状態や、イオン性基を有する物質が重合体表面に強く吸着された状態や、イオン性基を有する物質が空隙内に保持された状態などのことを言い、洗浄等の物理的手段により容易にイオン性基が空隙内から脱離されない状態である。
態様3におけるイオン性基については、態様1におけるものと同様の思想を適用することができる。
本発明の高分子電解質材料(態様3)にイオン性基を導入するにあたり、重合前の単量体があらかじめイオン性基を有していてもよいが、重合後にイオン性基を導入してもよい。原料の選択性の広さ、モノマー調整の容易性からは、重合後にイオン性基を導入するのが良い。
すなわち本発明の高分子電解質膜の製造方法は、態様3に関係するものであり、イオン性基を導入可能な単量体と開孔剤とを含む単量体組成物から膜状の重合体を得た後、または、イオン性基導入可能な重合体と開孔剤とを含む重合体組成物から製膜した後、膜中から開孔剤を除去する工程と、重合体にイオン性基を導入する工程を含むものである。
イオン性基を導入可能な単量体としては、前述のように、ビニル単量体の内e値が負のスチレンやα−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体を採用することができる。
これらを含む前述のようなビニル単量体の重合としては例えばラジカル重合が作業性の観点で好ましい。ラジカル発生性開始剤としては、各種パーオキシド化合物、アゾ化合物、過酸化物、セリウムアンモニウム塩などが挙げられる。
その具体例としては、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]フォルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾニトリル化合物、2,2´−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)二塩基酸塩などのアゾアミジン化合物、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩基酸塩などの環状アゾアミジン化合物、2,2´−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}などのアゾアミド化合物、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)などのアルキルアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、硫酸第2セリウムアンモニウム、硝酸第2セリウムアンモニウム等のセリウムアンモニウム塩などが挙げられる。
また、放射線、電子線、紫外線などを利用した光開始剤による重合も利用することができる。
光開始剤としては、カルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物および金属塩などが挙げられる。
また、多官能単量体を含む場合は、熱や光を利用したキャスト重合による成形および製膜が好ましい。キャスト重合とは、各種単量体や開孔剤および開始剤などを混合したものを、ガスケットやスペーサーにより所定のクリアランスに設定した2枚の板、シート、フィルムの間に注入し、熱や光などのエネルギーを与えることにより重合する方法であり、枚葉式でも連続式でもよい。
例えば、使用する単量体組成物に、“ダロキュア”、“イルガキュア”(CIBA社製)等に代表される光開始剤を0.01〜2重量部程度添加した組成物溶液を、2枚の石英ガラスや、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは非晶性ポリオレフィン製などのシート間に注入し、密封し、紫外線灯を用いて照度0.01〜100mW/cm2程度、0.1秒〜1時間程度にて光照射して重合することができる。
重合体に求める特性として、プロトン伝導性を優先させる場合には、重合体の内部までイオン性基を導入することも好ましく、そのためには、重合前の単量体中にあらかじめイオン性基の導入を補助する開孔剤を添加しておいた上で重合することが有効である。該開孔剤は、それ自身が直接的にイオン性基を導入する能力を有している必要はない。すなわち、イオン性基を導入可能な物質の重合体中への浸透を、自ら、分解、反応、蒸発、昇華、あるいは流出等しイオン性基を導入可能な物質、またはそれを含有する溶剤と置換することにより少なくとも開孔剤の一部分が除去され、重合体の表層だけではなく、重合体内部のイオン性基導入可能な部分にもイオン性基が導入されやすくするものである。
開孔剤は、重合あるいは製膜の際に単量体組成物あるいは重合体組成物の一部を占め、重合あるいは製膜の後にこれを除去することで、高分子電解質材料の内部に空隙を形成せしめるものである。
開孔剤の種類としては、重合体の材料との相溶性、抽出や分解に使用する薬液や溶剤および加熱、溶剤浸漬、光、電子線、放射線処理などの開孔剤除去方法によって有機化合物、溶剤類、可溶性ポリマー類、塩類、金属類などから適宜選択できる。開孔剤は液体状であっても粉末状であってもよいし、使用した単量体からなるオリゴマーや未反応単量体や副生成物を開孔剤として積極的に残すような手法をとってもよい。また、金属アルコキシドなどのように反応することによって液体と固体になるものでもよい。
また、イオン性基導入後に重合体中に開孔剤の一部が残留しても、反応によって生成したものが残留しても高分子電解質材料に悪影響を与えないものを選択するのが好ましい。
また、重合前に開孔剤を配合する場合は、重合温度よりもその沸点や分解温度が高い開孔剤が好ましい。
開孔剤の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルセロソルブ、ジグライム、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,4−ジオキサン、四塩化炭素、ジクロロメタン、ニトロメタン、ニトロエタン、酢酸、無水酢酸、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、リン酸トリオクチル、デカリン、デカン、ヘキサデカン、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられ、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また開孔剤の使用量は、使用する開孔剤と単量体の組み合わせや所望の空隙率、孔径により適宜設定するとよいが、開孔剤も含めた全組成物中の1〜80重量%添加するのが好ましく、より好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。1重量%以上であれば重合体内部までイオン性基が導入されやすく、プロトン伝導度が良好となる。また、80重量%以下であれば、低融点水含量が減少し、燃料透過量が小さくなり好ましい。
膜状の重合体を得た後、または、重合体組成物から製膜した後、膜中から開孔剤を除去する。空隙形成のためである。
開孔剤を除去する手段としては例えば、開孔剤を除去可能な溶剤中に、膜を浸漬するとよい。開孔剤を除去可能な溶剤としては、水および有機溶剤の中から適宜選択される。有機溶剤としては例えば、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ化炭化水素、メタノール、エタノールなどのアルコール類、トルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類等が好ましい。また、これらのうち1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
重合体から開孔剤を除去した後、前記溶剤は乾燥等によって除いてもよく、除かなくてもよい。
高分子反応によってイオン性基を導入する方法は、前述の態様1および態様2にイオン性基を導入する方法についての記載のとおりである。
次に、膜中の前記重合体にイオン性基を導入させることについて説明する。開孔剤を含む重合体から製膜された膜を高分子電解質膜とするためには、少なくとも膜中の空隙内部にイオン性基を存在させることが重要であり、そのためにイオン性基導入剤によってイオン性基を導入させる。ここでいうイオン性基導入剤は、イオン性基を、重合体を構成するイオン性基可能な繰り返し単位の一部に導入することができる化合物であり、通常公知のものを使用することができる。イオン性基導入剤の具体例としては、スルホン酸基を導入する場合は、濃硫酸、クロロスルホン酸あるいは発煙硫酸、三酸化硫黄等が好適であり、反応制御の容易さおよび生産性の観点で最も好ましいのはクロロスルホン酸である。またスルホンイミド基を導入する場合はスルホンアミドが好適である。
膜中の前記共重合体にイオン性基を導入させるためには、具体的には、イオン性基導入剤またはイオン性基導入剤と溶剤の混合物中に膜を浸漬する手段を採用すればよい。イオン性基導入剤と混合する溶剤は、イオン性基導入剤と反応しないかまたは反応が激しくなく、重合体内に浸透可能であれば使用できる。かかる溶剤の例を挙げると、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ化炭化水素、アセトニトリルなどのニトリル類等が好ましい。溶剤およびイオン性基導入剤は単一でも二種類以上の混合物でもよい。
膜中からの開孔剤の除去と、重合体中へのイオン性基の導入とを同一の工程で行うことも、工程数短縮の点で好ましい。
より具体的には、開孔剤を除去可能な溶剤にイオン性基導入剤(たとえば上記スルホン化剤)を添加してなる溶液中に膜を浸漬することにより、膜中からの開孔剤の除去と重合体へのイオン性基の導入(スルホン化)とを同時に行うことが好ましい。この場合、膜中の開孔剤が、イオン性基を含む溶液に置換されながら除去されることになる。この方法は、イオン性基の導入の度合いを精度よく制御できるという点からも好ましい。この場合、開孔剤を除去可能な溶剤としては、イオン性基導入剤と反応しないかまたは反応が激しくなく、重合体内に浸透可能なものを用いる。また、開孔剤を除去可能な溶剤は単一系でも二種類以上の混合系でもよい。
製膜前の単量体/重合体組成物中にイオン性基の導入を補助するためのイオン性基導入助剤が含有されている場合には、イオン性基導入助剤も除去可能な溶剤であることが好ましい。
以上のような観点から、開孔剤を除去可能な溶剤としては例えば、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ化炭化水素、アセトニトリルなどのニトリル類等が好ましい。
また、本発明の高分子電解質材料には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分を共重合せしめたり、他の高分子化合物をブレンドしたりすることができる。また、その特性を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、チオエーテル系およびリン系の各種抗酸化剤等の安定剤や、可塑剤、着色剤に代表される各種添加剤を添加することができる。
また、本発明の高分子電解質材料には、前述の諸特性に悪影響をおよぼさない範囲内で機械的強度、熱安定性、加工性などの向上を目的に、各種ポリマー、エラストマー、フィラー、微粒子、各種添加剤などを含有させてもよい。
本発明の高分子電解質材料は、それを構成する重合体を膜状の多孔基材に充填させて使用することも可能であり、この様にして得られた高分子電解質膜は膨潤による変形が抑制され好ましい。
多孔基材の形状としては、複数個の孔を有するものが例として挙げられる。具体的にはメッシュ、織布、不織布、抄紙、複数個の独立した貫通孔や三次元網目構造を有する多孔基材が好ましい。
三次元網目構造では、多孔基材を構成するポリマーが立体的に繋がった連続孔を有している。
多孔基材が三次元網目構造を有している場合、その孔径としては0.05〜5μmが好ましく、より好ましくは、0.1〜1μmである。孔径は、走査型電子顕微鏡(SEM)などで、表面を撮影した写真から、20個以上好ましくは100個以上の孔の平均から求めることができ、通常は100個で測定する。たとえば、湿式凝固法によって製造された三次元網目の多孔基材は、孔径の分布が広いので、できるだけ多く、たとえば100〜500個の孔径の平均をとることが好ましい。
また、高分子電解質型燃料電池の部材に用いる態様において、中央部が比較的多孔であり周辺部が比較的基材として緻密な構造とすることも好ましい。
三次元網目構造の空隙率としては、10〜95%が好ましく、より好ましくは50〜90%である。ここで、空隙率とは、多孔基材全体積からポリマーの占める体積を減じたものを、多孔基材全体積で除した百分率(%)である。
本発明に用いられる多孔基材に用いられるポリマーとしては例えば、ポリイミド(PI)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリフェニレンスルフィドスルフォン(PPSS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリアミドなど、またはこれらの共重合体、他のモノマとの共重合体(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体等)、もしくは、ブレンドなども用いることができる。これらのポリマーは、耐酸化性、強度、湿式凝固の容易性などから好ましいものである。
上記の三次元網目構造を有する多孔基材の製造方法としては、湿式凝固法が好ましく用いられる。
また、中央部が比較的多孔であり周辺部が比較的基材として緻密な構造は、たとえば以下の2つの方法が好ましく用いられる。
第一の方法:予め周辺部のみの緻密フィルムを作製し、その後に中央部の多孔フィルムを作製する方法。周辺部の緻密なフィルムは、例えば基板上に全面分のポリマー溶液を塗工し、乾燥してから中央部を後で切り取っても良いし、塗工時にマスキングを行うことで中央を未塗工としてもよい。その後、中央部にポリマー溶液を塗工した後、当該部分を多孔化する。
第二の方法:全体を多孔化したフィルムを作製し、周辺部の孔を閉塞する。孔の閉塞には、加熱プレスで潰す方法、あるいは孔に非プロトン伝導性ポリマーを充填する方法などを用いることができる。
複数個の独立した貫通孔を作成する方法の例としては、フォトリソグラフィー法、化学エッチング法、ニードルパンチ法、ウォータージェット法、レーザー法、中性子線法などを挙げることができる。
多孔基材に上記高分子電解質材料を構成する重合体を充填する方法としては例えば、高分子電解質材料を構成する重合体を溶液として、多孔基材への塗工あるいは浸漬することにより空隙内への充填が可能となる。塗工あるいは浸漬時に超音波や減圧を併用すると、充填効率が向上し好ましい。また、高分子電解質材料を構成する重合体の前駆体であるモノマーを空隙内に充填した後に空隙内で重合する、あるいはモノマーを気化してプラズマ重合を行う、などの方法を行ってもよい。
本発明の高分子電解質部品は、本発明の高分子電解質材料を用いてなるものである。その形状としては、前述の膜状の他、板状、繊維状、中空糸状、粒子状、塊状など、使用用途によって様々な形態をとりうる。
これらのような形状への加工は、押し出し成形、プレス成形、キャスト重合法などにより行うことができるが、高分子電解質材料に三次元架橋構造を付与する場合には、ガラス板や連続ベルト間での加熱や光を利用したキャスト重合法が好ましい。
次に、本発明の膜電極複合体は、本発明の高分子電解質材料を用いてなる。
膜電極複合体(MEA)は、高分子電解質材料からなる膜、ならびに、電極触媒層および電極基材からなる電極からなる。
電極触媒層は、電極反応を促進する電極触媒、電子伝導体、イオン伝導体などを含む層である。
電極触媒層に含まれる電極触媒としては例えば、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金などの貴金属触媒が好ましく用いられる。これらの内の1種類を単独で用いてもよいし、合金、混合物など、2種類以上を併用してもよい。
電極触媒層に含まれる電子伝導体(導電材)としては、電子伝導性や化学的な安定性の点から炭素材料、無機導電材料が好ましく用いられる。なかでも、非晶質、結晶質の炭素材料が挙げられる。例えば、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが電子伝導性と比表面積の大きさから好ましく用いられる。ファーネスブラックとしては、キャボット社製“バルカンXC−72”、“バルカンP”、“ブラックパールズ880”、“ブラックパールズ1100”、“ブラックパールズ1300”、“ブラックパールズ2000”、“リーガル400”、ケッチェンブラック・インターナショナル社製“ケッチェンブラック”EC、EC600JD、三菱化学社製#3150、#3250などが挙げられ、アセチレンブラックとしては電気化学工業社製“デンカブラック”などが挙げられる。またカーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素なども使用することができる。これらの炭素材料の形態としては、不定形粒子状のほか繊維状、鱗片状、チューブ状、円錐状、メガホン状のものも用いることができる。また、これら炭素材料を後処理加工したものを用いてもよい。
また、電子伝導体は、触媒粒子と均一に分散していることが電極性能の点で好ましい。このため、触媒粒子と電子伝導体は予め塗液として良く分散しておくことが好ましい。さらに、電極触媒層として、触媒と電子伝導体とが一体化した触媒担持カーボン等を用いることも好ましい実施態様である。この触媒担持カーボンを用いることにより、触媒の利用効率が向上し、電池性能の向上および低コスト化に寄与できる。ここで、電極触媒層に触媒担持カーボンを用いた場合においても、電子伝導性をさらに高めるために導電剤を添加することも可能である。このような導電剤としては、上述のカーボンブラックが好ましく用いられる。
電極触媒層に用いられるイオン伝導性を有する物質(イオン伝導体)としては、一般的に、種々の有機、無機材料が公知であるが、燃料電池に用いる場合には、イオン伝導性を向上するスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などのイオン性基を有するポリマー(イオン伝導性ポリマー)が好ましく用いられる。なかでも、イオン性基の安定性の観点から、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるイオン伝導性を有するポリマー、あるいは本発明の高分子電解質材料が好ましく用いられる。パーフルオロ系イオン伝導性ポリマーとしては、例えばデュポン社製の“ナフィオン”、旭化成社製の“Aciplex”、旭硝子社製“フレミオン”などが好ましく用いられる。これらのイオン伝導性ポリマーは、溶液または分散液の状態で電極触媒層中に設ける。この際に、ポリマを溶解あるいは分散化する溶媒は特に限定されるものではないが、イオン伝導性ポリマーの溶解性の点から極性溶媒が好ましい。
前記、触媒と電子伝導体類は通常粉体であるので、イオン伝導体はこれらを固める役割を担うことが通常である。イオン伝導体は、電極触媒層を作製する際に電極触媒粒子と電子伝導体とを主たる構成物質とする塗液に予め添加し、均一に分散した状態で塗布することが電極性能の点から好ましいものであるが、電極触媒層を塗布した後にイオン伝導体を塗布してもよい。ここで、電極触媒層にイオン伝導体を塗布する方法としては、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、カーテンコート、フローコートなどが挙げられ、特に限定されるものではない。電極触媒層に含まれるイオン伝導体の量としては、要求される電極特性や用いられるイオン伝導体の伝導度などに応じて適宜決められるべきものであり、特に限定されるものではないが、重量比で1〜80%の範囲が好ましく、5〜50%の範囲がさらに好ましい。イオン伝導体は、少な過ぎる場合はイオン伝導度が低く、多過ぎる場合はガス透過性を阻害する点で、いずれも電極性能を低下させることがある。
電極触媒層には、上記の触媒、電子伝導体、イオン伝導体の他に、種々の物質を含んでいてもよい。特に、電極触媒層中に含まれる物質の結着性を高めるために、上述のイオン伝導性ポリマー以外のポリマーを含んでもよい。このようなポリマーとしては例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)などのフッ素原子を含むポリマー、これらの共重合体、これらのポリマーを構成するモノマ単位とエチレンやスチレンなどの他のモノマーとの共重合体、あるいは、ブレンドポリマーなどを用いることができる。これらポリマーの電極触媒層中の含有量としては、重量比で5〜40%の範囲が好ましい。ポリマー含有量が多すぎる場合、電子およびイオン抵抗が増大し電極性能が低下する傾向がある。
また電極触媒層は、燃料が液体や気体の場合には、その液体や気体が透過しやすい構造を有していることが好ましく、電極反応に伴う副生成物質の排出も促す構造が好ましい。
電極基材としては、電気抵抗が低く、集電あるいは給電を行えるものを用いることができる。また、前記電極触媒層を集電体兼用で使用する場合は、特に電極基材を用いなくてもよい。電極基材の構成材としては、たとえば、炭素質、導電性無機物質が挙げられ、例えば、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどが例示される。これらの、形態は特に限定されず、たとえば繊維状あるいは粒子状で用いられるが、燃料透過性の点から炭素繊維などの繊維状導電性物質(導電性繊維)が好ましい。導電性繊維を用いた電極基材としては、織布あるいは不織布いずれの構造も使用可能である。たとえば、東レ(株)製カーボンペーパーTGPシリーズ、SOシリーズ、E-TEK社製カーボンクロスなどが用いられる。織布としては、平織、斜文織、朱子織、紋織、綴織など、特に限定されること無く用いられる。また、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法によるものなど特に限定されること無く用いられる。また編物であってもよい。これらの布帛において、特に炭素繊維を用いた場合、耐炎化紡績糸を用いた平織物を炭化あるいは黒鉛化した織布、耐炎化糸をニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法などによる不織布加工した後に炭化あるいは黒鉛化した不織布、耐炎化糸あるいは炭化糸あるいは黒鉛化糸を用いた抄紙法によるマット不織布などが好ましく用いられる。特に、薄く強度のある布帛が得られる点から不織布を用いるのが好ましい。
電極基材に炭素繊維からなる導電性繊維を用いた場合、炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などがあげられる。
また電極基材には、水の滞留によるガス拡散・透過性の低下を防ぐための撥水処理や、水の排出路を形成するための部分的撥水、親水処理や、抵抗を下げるための炭素粉末の添加等を行うこともできる。
本発明の高分子電解質型燃料電池においては、電極基材と電極触媒層の間に、少なくとも無機導電性物質と疎水性ポリマを含む導電性中間層を設けることが好ましい。特に、電極基材が空隙率の大きい炭素繊維織物や不織布である場合、導電性中間層を設けることで、電極触媒層が電極基材にしみ込むことによる性能低下を抑えることができる。
本発明の高分子電解質膜を使用して、電極触媒層あるいは電極触媒層と電極基材を用いて膜電極複合体(MEA)を作製する方法は特に限定されるものではない。公知の方法(例えば、「電気化学」1985, 53, 269.記載の化学メッキ法、「ジェイ エレクトロケミカル サイエンス」(J. Electrochem. Soc.): Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209. 記載のガス拡散電極の熱プレス接合法など)を適用することが可能である。熱プレスにより一体化することは好ましい方法であるが、その温度や圧力は、高分子電解質膜の厚さ、水分率、電極触媒層や電極基材により適宜選択すればよい。また、高分子電解質膜が含水した状態でプレスしてもよいし、イオン伝導性を有するポリマーで接着してもよい。
本発明の高分子電解質型燃料電池の燃料としては、酸素、水素およびメタン、エタン、プロパン、ブタン、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、エチレングリコール、ギ酸、酢酸、ジメチルエーテル、ハイドロキノン、シクロヘキサンなどの炭素数1〜6の有機化合物およびこれらと水との混合物等が挙げられ、1種または2種以上の混合物でもよい。特に発電効率や電池全体のシステム簡素化の観点から炭素数1〜6の有機化合物を含む燃料が好適に使用され、発電効率の点でとりわけ好ましいのはメタノール水溶液である。
膜電極複合体に供給される燃料中の炭素数1〜6の有機化合物の含有量は20〜70重量%が好ましい。含有量を20重量%以上とすることで実用的な高いエネルギー容量を得ることができ、70重量%以下とすることで発電効率が上がり、実用的な高い出力を得ることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本実施例中には化学構造式を挿入するが、該化学構造式は読み手の理解を助ける目的で挿入するものであり、ポリマーの重合成分の並び方、スルホン酸基の数、分子量などを必ずしも正確に表すわけではないことを断っておく。
[測定方法]
(1)スルホン酸基密度
精製、乾燥後のポリマーについて、元素分析により測定した。C、H、Nの分析は、全自動元素分析装置varioELで、また、Sの分析はフラスコ燃焼法・酢酸バリウム滴定、Pの分析についてはフラスコ燃焼法・リンバナドモリブデン酸比色法で実施した。それぞれのポリマーの組成比から単位グラムあたりのスルホン酸基密度(mmol/g)を算出した。
(2)重量平均分子量
ポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー製HLC−8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK gel SuperHM−H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N−メチル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピロリドン溶媒にて、流量0.2mL/minで測定し、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。
(3)不凍水の量Wnf、および不凍水の分率Rw1,Rw2
高分子電解質材料を20℃の水に12時間浸漬した後、水中から取り出し、過剰な表面付着水をできるだけ素早くガーゼで拭き取って除去してから、あらかじめ重量Gpを測定してある密閉型試料容器に入れ、クリンプし、できるだけ素早く試料と密閉型試料容器の合計重量Gwを測定した後、直ちに示差走査熱量分析(DSC)にかけた。
DSCの温度プログラムとしては、まず室温から−30℃まで10℃/分の速度で冷却し、その後、0.3℃/分の速度で5℃まで昇温し当該昇温過程にて測定を行った。
DSC測定の機器および条件は下記のようにした。
DSC装置:TA Instruments社製“DSC Q100”
データ処理装置:東レリサーチセンター製“TRC−THADAP−DSC”
測定温度範囲:−30〜5℃
走査速度:0.3℃/分
試料量:約5mg
試料パン:アルミナコートされたアルミニウム製密閉型試料容器
DSC測定後に、試料の入った密閉型試料容器に小さな穴を開け、真空乾燥機にて110℃で24時間真空乾燥した後、できるだけ素早く試料と密閉型試料容器の合計重量Gdを測定した。乾燥試料重量mは、
m=Gd−Gp
により求め、また、全水分量Wtは、
Wt=(Gw−Gd)/m
により求めた。
上記の昇温過程で得られるDSC曲線から、前出の数式(n1)を使ってバルク水量(Wf)を、また前出の数式(n2)を使って低融点水量(Wfc)を求め、また、全水分量(Wt)からバルク水量および低融点水量を差し引くことで、不凍水量(Wnf)を求めた(前出の数式(n3))。
計算にあたり、バルク水の融点T0およびバルク水の融点での融解エンタルピーΔH0は、次の値を用いた。
T0=0.0(℃)
ΔH0=79.7(cal/g)
=334(J/g)
なお、本測定は株式会社東レリサーチセンターに委託して行った。
(4)膜厚
接触式膜厚計にて測定した。
(5)プロトン伝導度A
膜状の試料を25℃の純水に24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、できるだけ素早く定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度を測定した。
測定装置としては、Solartron製電気化学測定システム(Solartron 1287 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency Response Analyzer)を使用した。サンプルは、φ2mmおよびφ10mmの2枚の円形電極(ステンレス製)間に加重1kgをかけて挟持した。有効電極面積は0.0314cm2である。サンプルと電極の界面には、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)の15%水溶液を塗布した。25℃において、交流振幅50mVの定電位インピーダンス測定を行い、膜厚方向のプロトン伝導度Aを求めた。またその値は、単位面積当たりのものと、単位面積・単位厚み当たりの2通りで表した。
(6)プロトン伝導度B
膜状の試料を25℃の純水に24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、できるだけ素早く定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度を測定した。
測定装置としては、北斗電工製電気化学測定システムHAG5010(HZ−3000 50V 10A Power Unit, HZ−3000 Automatic Polarization System)およびエヌエフ回路設計ブロック製周波数特性分析器(Frequency Response Analyzer)5010を使用し、25℃において、2端子法で定電位インピーダンス測定を行い、Nykist図からプロトン伝導度を求めた。交流振幅は、500mVとした。サンプルは幅10mm程度、長さ10〜30mm程度の膜を用いた。サンプルは、測定直前まで水中に浸漬したものを用いた。電極として、直径100μmの白金線(2本)を使用した。電極はサンプル膜の表側と裏側に、互いに平行にかつサンプル膜の長手方向に対して直交するように配置した。
(7)メタノール透過量A
膜状の試料を25℃の純水に24時間浸漬した後、20℃において30重量%メタノール水溶液を用いて測定した。
H型セル間にサンプル膜を挟み、一方のセルには純水(60mL)を入れ、他方のセルには30重量%メタノール水溶液(60mL)を入れた。セルの容量は各80mLであった。また、セル間の開口部面積は1.77cm2であった。20℃において両方のセルを撹拌した。1時間、2時間および3時間経過時点で純水中に溶出したメタノール量を島津製作所製ガスクロマトグラフィ(GC−2010)で測定し定量した。グラフの傾きから単位時間あたりのメタノール透過量を求めた。またその値は、単位面積当たりのものと、単位面積・単位厚み当たりの2通りで表した。
(8)メタノール透過量B
30重量%メタノール水溶液のかわりに1Mメタノール水溶液を用いる他は、上記(7)のメタノール透過量Aと同様に行った。
(9)スルホン酸基の分布状態の観察
日本電子製 電子線マイクロアナライザー(EPMA)JXA−8621MXにより下記条件にて膜断面方向の硫黄元素の分布として観察した。
二次電子像、反射電子像観察条件
加速電圧 15kV
元素分布分析(波長分散法)
加速電圧 15kV
照射電流 50nA
計測時間 30msec
画素数・画素長 256×256pixel・0.336μm/pixel
分析ビーム径 〜1μmφ
分析X線・分光結晶 SKα(5.373オングストローム)・PET
試料調製 ミクロトームにより断面試料作製後、カーボン蒸着。
(9)MEAおよび高分子電解質型燃料電池の評価
膜電極複合体(MEA)をエレクトロケム社製セルにセットし、アノード側に30%メタノール水溶液、カソード側に空気を流してMEA評価を行った。評価はMEAに定電流を流し、その時の電圧を測定した。電流を順次増加させ電圧が10mV以下になるまで測定を行った。各測定点での電流と電圧の積が出力となるが、その最大値(MEAの単位面積あたり)を出力(mW/cm2)とした。
エネルギー容量は、出力、MEAでのMCOを基に下記式(n4)にて計算した。
MEAでのMCOは、カソードからの排出ガスを捕集管でサンプリングした。これを全有機炭素計TOC-VCSH(島津製作所製測定器)、あるいはMeOH透過量測定装置Maicro GC CP-4900(ジ−エルサイエンス製ガスクロマトグラフ)を用い評価した。MCOは、サンプリングガス中のMeOHと二酸化炭素の合計を測定して算出した。
エネルギー容量:Wh
出力:最大出力密度(mW/cm2)
容積:燃料の容積(本実施例では10mLとして計算した。)
濃度:燃料のメタノール濃度(%)
MCO:MEAでのMCO(μmol・min-1・cm-2)
電流密度:最大出力密度が得られるときの電流密度(mA/cm2)
(未スルホン化ポリマーの合成)
炭酸カリウム17g、 ヒドロキノン11g、 およびビス(4−フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシド31gを用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、160℃で重合を行った。
重合後、多量のメタノール水で再沈することで精製を行い、上記式(e1)にて示されるHQPEPOを定量的に得た。
(スルホン化)
室温、N2雰囲気下で、上記で得られた重合体(HQPEPO)5gをクロロホルムに溶解させた後、激しく撹拌しながらクロロスルホン酸8mLをゆっくり滴下し、30分反応させた。白色沈殿を濾別し、粉砕し、水で十分洗浄した後、乾燥し、目的のスルホン化HQPEPOを得た。
得られたスルホン化HQPEPOは、スルホン酸基密度2.1mmol/gであり、重量平均分子量20万であった。
(製膜)
上記のスルホン化ポリマーをN,N−ジメチルアセトアミドを溶媒とする溶液とし、当該溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥して溶媒を除去した。得られた膜は、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は68重量%、Wnfは0.58であった。
膜は2種類の膜厚のものを得て、膜厚210μmのものについては、メタノール透過量Aは25μmol・min-1・cm-2、520nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.2S・cm-2、98mS・cm-1であった。
また膜厚105μmのものについては、メタノール透過量Bは51nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Bは75mS・cm-1であった。
比較例1の“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性はやや劣るものの、燃料遮断性には優れていた。
(膜電極複合体の作製)
炭素繊維クロス基材に20%ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)撥水処理を施し、その上にPTFEを20%含むカーボンブラック分散液を塗工し、焼成して電極基材を2枚作製した。
1枚の電極基材上に、Pt−Ru担持カーボンと“ナフィオン”溶液とからなるアノード電極触媒塗液を塗工し、乾燥して、アノード電極を作製した。
また、もう1枚の電極基材上に、Pt担持カーボンと“ナフィオン”溶液とからなるカソード電極触媒塗液を塗工し、乾燥して、カソード電極を作製した。
上記で得られた高分子固体電解質膜を、アノード電極とカソード電極とで夾持し、加熱プレスすることで膜電極複合体(MEA)を作製した。
(高分子電解質型燃料電池の作製)
得られた膜電極複合体(MEA)をエレクトロケム社製セルにセットし、アノード側に3%メタノール水溶液、カソード側に空気を流して高分子電解質型燃料電池とした。
比較例1の“ナフィオン”117を使用したMEAに対して、本実施例のMEAは出力で1.5倍、エネルギー容量で1.8倍の値を示した。
[比較例1] “ナフィオン”117
市販の“ナフィオン”117膜(デュポン社製(商品名))を用い、プロトン伝導度およびメタノール透過量を評価した。ナフィオン117膜は、100℃の5%過酸化水素水中にて30分、続いて100℃の5%希硫酸中にて30分浸漬した後、100℃の脱イオン水でよく洗浄した。
Rw1は49重量%、Rw2は44重量%、Wnfは0.18であった。
膜厚は210μmであり、メタノール透過量Aは60μmol・min-1・cm-2、
1260nmol・min-1・cm-1、メタノール透過量Bは113nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.0S・cm-2、105mS・cm-1、プロトン伝導度Bは80mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117膜を用い、膜電極複合体と高分子電解質型燃料電池の作製は実施例1と同様にして行った。出力は8mW/cm2、エネルギー容量は0.2Whであった。
[実施例2] スルホン化HQPEPO
実施例1と同様にして得たスルホン化HQPEPOを用いて、次の手順で製膜を行った。
(製膜)
上記のスルホン化ポリマーを、飽和食塩水浸漬によりNa置換後、N,N−ジメチルアセトアミドを溶媒とする溶液とし、当該溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4時間乾燥して溶媒を除去した。さらに、窒素ガス雰囲気下、200〜300℃まで1時間かけて昇温し、300℃で10分間加熱する条件で熱処理した後、放冷した。1N塩酸に3日間以上浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純水に3日間以上浸漬して充分洗浄した。
Rw1は80重量%、Wnfは0.53であった。実施例1で得られた膜に比べ、Rw1が大きかった。
膜は2種類の膜厚のものを得て、膜厚200μmのものについては、メタノール透過量Aは17μmol・min-1・cm-2、340nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.0S・cm-2、100mS・cm-1であった。
また膜厚105μmのものについては、メタノール透過量Bは33nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Bは77mS・cm-1であった。
比較例1の“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性は同等で、燃料遮断性には優れていた。
未スルホン化ポリマーの合成において、ヒドロキノン11gをジヒドロキシビフェニル19gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(e2)にて示されるBPPEPOを合成し、さらにスルホン化および製膜までを行った。
得られたスルホン化物は、スルホン酸基密度2.7mmol/g、重量平均分子量22万であった。
また、Rw1は65重量%、Wnfは0.46であった。
膜は2種類の膜厚のものを得て、膜厚220μmのものについては、メタノール透過量Aは35μmol・min-1・cm-2、780nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.1S・cm-2、135mS・cm-1であった。
また膜厚95μmのものについては、メタノール透過量Bは77nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Bは105mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性、燃料遮断性の両方において優れていた。
[比較例2] BISAPEPO
スルホン化を省略し、また製膜における溶媒をN,N−ジメチルアセトアミドからクロロホルムにかえた以外は実施例3と同様にして、製膜までを行った。
Wnfは0であった。
膜厚は90μmであり、メタノール透過量Aは0μmol・min-1・cm-2、
0nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは0S・cm-2、0mS・cm-1であった。
プロトン伝導性が全くなかった。
未スルホン化ポリマーの合成において、ヒドロキノン11gをビスフェノールA22.8gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(e3)にて示されるBISAPEPOを合成し、さらにスルホン化および製膜までを行った。
得られたスルホン化物は、スルホン酸基密度2.7mmol/g、重量平均分子量18万であった。
Rw1は63重量%、Wnfは0.50であった。
膜は2種類の膜厚のものを得て、膜厚205μmのものについては、メタノール透過量Aは39μmol・min-1・cm-2、790nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.5S・cm-2、133mS・cm-1であった。
また膜厚97μmのものについては、メタノール透過量Bは78nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Bは102mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性、燃料遮断性の両方において優れていた。
未スルホン化ポリマーの合成において、ビス(4−フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシド31gをビス(4−フルオロフェニル)メチルホスフィンオキシド25gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(e4)にて示されるHQPEMPOを合成し、さらにスルホン化および製膜までを行った。
得られたスルホン化物は、スルホン酸基密度2.7mmol/g、重量平均分子量15万であった。
Rw1は63重量%、Wnfは0.48であった。
膜は2種類の膜厚のものを得て、膜厚235μmのものについては、メタノール透過量Aは36μmol・min-1・cm-2、840nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは4.7S・cm-2、111mS・cm-1であった。
また膜厚105μmのものについては、メタノール透過量Bは85nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Bは85mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、燃料遮断性に優れていた。
[実施例6] スルホン化BISAPEPO/BISAPEEK
未スルホン化ポリマーの合成において、ヒドロキノン11gをビスフェノールA22.8gに変え、ビス(4−フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシド31gを23gに変え、ビス(4−フルオロフェニル)ケトン5gを追加したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(e5)にて示されるBISAPEPO/BISAPEEKを合成し、さらにスルホン化および製膜までを行った。
得られたスルホン化物は、スルホン酸基密度2.6mmol/g、重量平均分子量35万であった。
Rw1は65重量%、Wnfは0.45であった。
膜は2種類の膜厚のものを得て、膜厚220μmのものについては、メタノール透過量Aは27μmol・min-1・cm-2、600nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.1S・cm-2、134mS・cm-1であった。
また膜厚104μmのものについては、メタノール透過量Bは61nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Bは103mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性、燃料遮断性の両方において優れていた。
未スルホン化ポリマーの合成において、ビス(4−フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシド31gを23gに変え、ビス(4−フルオロフェニル)ケトン5gを追加したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(e6)にて示されるHQPEPO/PEEKを合成し、さらにスルホン化および製膜までを行った。
得られたスルホン化物は、スルホン酸基密度2.7mmol/g、重量平均分子量35万であった。
Rw1は64重量%、Wnfは0.47であった。
膜は2種類の膜厚のものを得て、膜厚205μmのものについては、メタノール透過量Aは38μmol・min-1・cm-2、780nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.3S・cm-2、130mS・cm-1であった。
また膜厚104μmのものについては、メタノール透過量Bは77nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Bは100mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性、燃料遮断性の両方において優れていた。
未スルホン化ポリマーの合成において、ビス(4−フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシド31gを23gに変え、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン6gを追加したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(e7)にて示されるHQPEPO/PEESを合成し、さらにスルホン化および製膜までを行った。
得られたスルホン化物は、スルホン酸基密度2.4mmol/g、重量平均分子量22万であった。
Rw1は61重量%、Wnfは0.49であった。
膜は2種類の膜厚のものを得て、膜厚220μmのものについては、メタノール透過量Aは39μmol・min-1・cm-2、860nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.0S・cm-2、110mS・cm-1であった。
また膜厚95μmのものについては、メタノール透過量Bは85nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Bは80mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、燃料遮断性において優れていた。
(未スルホン化ポリマーの合成)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン40mmol、 フェニルホスホン酸ジクロリド40mmol、 およびトリエチルアミン88mmolを用いて、1,2−ジクロロエタン中、氷冷下で重合を行った。
重合後、多量のメタノール水で再沈することで精製を行い、上記式(e8)にて示されるポリホスファートを定量的に得た。
スルホン化および製膜は、実施例1と同様にして行った。
得られたスルホン化物は、スルホン酸基密度2.3mmol/g、重量平均分子量8万であった。
Rw1は62重量%、Wnfは0.45であった。
膜は2種類の膜厚のものを得て、膜厚210μmのものについては、メタノール透過量Aは50μmol・min-1・cm-2、1050nmol・min-1・cm-1、
プロトン伝導度Aは5.0S・cm-2、104mS・cm-1であった。
また膜厚110μmのものについては、メタノール透過量Bは100nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Bは80mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、燃料遮断性において優れていた。
[実施例10] 放射線架橋したスルホン化BISAPEPO
実施例3で得られたものと同様の高分子固体電解質膜に、エリアビーム型電子線照射装置(日新ハイボルテージ社製キュアトロンEBC300−60)を使って窒素雰囲気下、300kGyの線量を照射した。
Rw1は65重量%、Wnfは0.50であった。
膜は2種類の膜厚のものを得て、膜厚200μmのものについては、メタノール透過量Aは21μmol・min-1・cm-2、410nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.5S・cm-2、110mS・cm-1であった。
また膜厚90μmのものについては、メタノール透過量Bは40nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Bは85mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、燃料遮断性において特に顕著に優れていた。
[比較例3] スルホン化ポリエーテルエーテルケトン
ポリエーテルエーテルケトンとしてビクトレックス社製450PFを用い、Polymer, 28, 1009 (1987).に記載の方法でスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを合成した。
得られたスルホン化物は、スルホン酸基密度2.5mmol/g、重量平均分子量18万であった。
製膜は、塗布厚み等の細部を除き、実施例1と同様にして行った。
Rw1は47重量%、Wnfは0.43であった。
この膜は水に激しく膨潤した。
膜厚は280μmであり、メタノール透過量Aは112μmol・min-1・cm-2、3140nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.1S・cm-2、143mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性は同等であるものの、燃料遮断性は劣っていた。
(未スルホン化ポリマーの合成)
炭酸カリウム35g、 ヒドロキノン11g、 4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール35g、 および4,4'−ジフルオロベンゾフェノン44gを用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、160℃で重合を行った。
重合後、水洗し、多量のメタノールで再沈することで精製を行い、上記式(e9)で示されるFL50PEEKを定量的に得た。その重量平均分子量は11万であった。
(スルホン化)
室温、N2雰囲気下で、上記で得られた重合体(FL50PEEK)10gをクロロホルムに溶解させた後、激しく撹拌しながらクロロスルホン酸14mLをゆっくり滴下し、5分反応させた。白色沈殿を濾別し、粉砕し、水で十分洗浄した後、乾燥し、目的のスルホン化FL50PEEKを得た。
得られたスルホン化FL50PEEKは、スルホン酸基密度2.3mmol/gであった。
(製膜)
上記のスルホン化ポリマーを、飽和食塩水浸漬によりNa置換後、N,N−ジメチルアセトアミドを溶媒とする溶液とし、当該溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4時間乾燥して溶媒を除去した。さらに、窒素ガス雰囲気下、200〜300℃まで1時間かけて昇温し、300℃で10分間加熱する条件で熱処理した後、放冷した。1N塩酸に3日間以上浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純水に3日間以上浸漬して充分洗浄した。
Rw1は86重量%、Rw2は68重量%、Wnfは0.54であった。
得られた膜は、膜厚160μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
また、メタノール透過量Aは19μmol・min-1・cm-2、304nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.0S・cm-2、96mS・cm-1、であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
(膜電極複合体の作製)
炭素繊維クロス基材に20%ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)懸濁液を用いて撥水処理を施し、焼成して電極基材を2枚作製した。
1枚の電極基材上に、Pt−Ru担持カーボンと“ナフィオン”溶液とからなるアノード電極触媒塗液を塗工し、乾燥して、アノード電極を作製した。
また、もう1枚の電極基材上に、Pt担持カーボンと“ナフィオン”溶液とからなるカソード電極触媒塗液を塗工し、乾燥して、カソード電極を作製した。
上記で得られた高分子電解質膜を、アノード電極とカソード電極とで夾持し、加熱プレスすることで膜電極複合体(MEA)を作製した。
(高分子電解質型燃料電池の作製)
得られたMEAをエレクトロケム社製セルに挟みアノード側に30重量%メタノール水溶液、カソード側に空気を流して高分子電解質型燃料電池とした。
実施例11の高分子電解質膜を使用したMEAの方が“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で2.1倍、エネルギー容量(Wh)で3.1倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例12] スルホン化FL50PEEK
実施例11と同様にして得たスルホン化FL50PEEKを、N,N−ジメチルアセトアミド溶液としてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去して、製膜した。
得られた膜は、膜厚240μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は68重量%、Rw2は53重量%、Wnfは0.56であった。
また、メタノール透過量Aは12μmol・min-1・cm-2、288nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.1S・cm-2、145mS・cm-1、プロトン伝導度Bは5.5S・cm-2、132mS・cm-1 であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
ヒドロキノン11gを6gにかえ、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール35gを52gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e10)で示されるFL75PEEKを合成し、さらにスルホン化、製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量13万であった。
また、得られたスルホン化FL75PEEKは、スルホン酸基密度2.2mmol/gであった。
Rw1は71重量%、Rw2は64重量%、Wnfは0.52であった。
また、得られた膜は、膜厚150μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
また、メタノール透過量Aは29μmol・min-1・cm-2、435nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.8S・cm-2、87mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性がやや大きく、燃料遮断性に優れて、また不凍水の分率が大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で1.5倍、エネルギー容量(Wh)で1.9倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例14] スルホン化FL75PEEK
実施例13と同様にして得たスルホン化FL75PEEKを、N,N−ジメチルアセトアミド溶液としてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去して製膜した。
得られた膜は、膜厚180μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は63重量%であった。
また、メタノール透過量Aは15μmol・min-1・cm-2、270nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.4S・cm-2、115mS・cm-1、プロトン伝導度Bは5.8S・cm-2、104mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
未スルホン化ポリマーの合成において、ヒドロキノン11gを17gにかえ、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール35gを18gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e11)で示されるFL25PEEKを合成し、さらにスルホン化、製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量5万であった。
また、得られたスルホン化FL25PEEKは、スルホン酸基密度2.5mmol/gであった。
Rw1は69重量%、Rw2は55重量%、Wnfは0.63であった。
また、得られた膜は、膜厚180μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
また、メタノール透過量Aは35μmol・min-1・cm-2、630nmol・min-1・cm、プロトン伝導度Aは6.6S・cm-2、119mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性が大きく、燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で1.8倍、エネルギー容量(Wh)で2.1倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例16] スルホン化FL25PEEK
実施例15と同様にして得たスルホン化FL25PEEKを、N,N−ジメチルアセトアミド溶液としてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去して製膜した。
得られた膜は、膜厚180μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は61重量%であった。
また、メタノール透過量Aは15μmol・min-1・cm-2、270nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.4S・cm-2、115mS・cm-1、プロトン伝導度Bは5.8S・cm-2、104mS・cm-1 であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
未スルホン化ポリマーの合成において、ヒドロキノン11gを省略し、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール35gを70gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e12)で示されるFL100PEEKを合成し、さらにスルホン化までを行った。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量15万であった。
また、得られたスルホン化FL100PEEKは、スルホン酸基密度2.5mmol/gであった。
次いで実施例11と同様にして製膜を試みたが、スルホン化FL100PEEKがN,N−ジメチルアセトアミドに溶解せず、以降の評価に堪える膜を作製することができなかった。
未スルホン化ポリマーの合成において、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール35gを4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス(2−メチルフェノール)38gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e13)で示されるCF50PEEKを合成し、さらにスルホン化、製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量15万であった。
また、得られたスルホン化CF50PEEKは、スルホン酸基密度2.2mmol/gであった。
また、得られた膜は、膜厚180μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は97重量%、Rw2は75重量%、Wnfは0.37であった。
また、メタノール透過量Aは21μmol・min-1・cm-2、378nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.2S・cm-2、112mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性がやや大きく、燃料遮断性に優れて、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で2.1倍、エネルギー容量(Wh)で2.8倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例18] スルホン化CF50PEEK
実施例17と同様にして得たスルホン化CF50PEEKを、N,N−ジメチルアセトアミド溶液としてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去して製膜した。
得られた膜は、膜厚220μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は73重量%であった。
また、メタノール透過量Aは12μmol・min-1・cm-2、264nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.9S・cm-2、131mS・cm-1、プロトン伝導度Bは5.4S・cm-2、119mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
未スルホン化ポリマーの合成において、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール35gを4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン35gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e14)で示されるTP50PEEKを合成し、さらにスルホン化、製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量15万であった。
また、得られたスルホン化TP50PEEKは、スルホン酸基密度2.2mmol/gであった。
Rw1は95重量%、Rw2は74重量%、Wnfは0.37であった。
また、得られた膜は、膜厚200μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
また、メタノール透過量Aは22μmol・min-1・cm-2、440nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.0S・cm-2、120mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性が大きく、燃料遮断性に優れて、また不凍水の分率が非常に大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で1.9倍、エネルギー容量(Wh)で2.5倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例20] スルホン化TP50PEEK
実施例19と同様にして得たスルホン化TP50PEEKを、N,N−ジメチルアセトアミド溶液としてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去して製膜した。
得られた膜は、膜厚230μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は68重量%であった。
また、メタノール透過量Aは15μmol・min-1・cm-2、345nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.6S・cm-2、152mS・cm-1、プロトン伝導度Bは6.0S・cm-2、138mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
未スルホン化ポリマーの合成において、ヒドロキノン11gをレゾルシノール11gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e15)で示されるFL50R50PEEKを合成し、さらにスルホン化、製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量13万であった。
また、得られたスルホン化FL50R50PEEKは、スルホン酸基密度1.9mmol/gであった。
Rw1は65重量%、Rw2は55重量%、Wnfは0.45であった。
また、得られた膜は、膜厚80μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
また、メタノール透過量Aは34μmol・min-1・cm-2、272nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.1S・cm-2、41mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性はほぼ同等で、燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で1.5倍、エネルギー容量(Wh)で1.8倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例22] スルホン化FL50R50PEEK
実施例21で得たスルホン化FL50R50PEEKを、N,N−ジメチルアセトアミド溶液としてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去して製膜した。
得られた膜は、膜厚250μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は60重量%であった。
また、メタノール透過量Aは40μmol・min-1・cm-2、1000nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.0S・cm-2、124mS・cm-1、プロトン伝導度Bは4.5S・cm-2、113mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
[実施例23] スルホン化FL50BPA50PEEK
未スルホン化ポリマーの合成において、ヒドロキノン11gを2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン23gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e16)で示されるFL50BPA50PEEKを合成した。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量25万であった。
次にスルホン化反応時間を5分から3分にかえた以外は実施例11と同様にしてスルホン化、製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られたスルホン化FL50BPA50PEEKは、スルホン酸基密度1.8mmol/gであった。
得られた膜は、膜厚210μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は62重量%、Rw2は54重量%、Wnfは0.48であった。
また、メタノール透過量Aは38μmol・min-1・cm-2、798nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.5S・cm-2、116mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117膜(比較例1)に比べ燃料クロスオーバー抑制効果が大きく、不凍水の分率が大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で1.2倍、エネルギー容量(Wh)で1.5倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例24] スルホン化FL50BPA50PEEK
実施例23と同様にして得たスルホン化FL50BPA50PEEKを、N,N−ジメチルアセトアミド溶液としてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去して製膜した。
得られた膜は、膜厚210μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は61重量%であった。
また、メタノール透過量Aは40μmol・min-1・cm-2、840nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.1S・cm-2、127mS・cm-1、プロトン伝導度Bは5.5S・cm-2、116mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
[実施例25] スルホン化FL50BF50PEEK
未スルホン化ポリマーの合成において、ヒドロキノン11gを2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン34gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e17)で示されるFL50BF50PEEKを合成し、さらにスルホン化、製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量13万であった。
また、得られたスルホン化FL50BF50PEEKは、スルホン酸基密度2.2mmol/gであった。
得られた膜は、膜厚180μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は84重量%、Rw2は68重量%、Wnfは0.40であった。
また、メタノール透過量Aは19μmol・min-1・cm-2、342nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.0S・cm-2、108mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で2.1倍、エネルギー容量(Wh)で3.0倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例26] スルホン化FL50BF50PEEK
実施例25と同様にして得たスルホン化FL50BF50PEEKを、N,N−ジメチルアセトアミド溶液としてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去して製膜した。
得られた膜は、膜厚230μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は65重量%であった。
また、メタノール透過量Aは20μmol・min-1・cm-2、460nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.1S・cm-2、139mS・cm-1、プロトン伝導度Bは5.5S・cm-2、127mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
[実施例27] スルホン化FL50PH50PEEK
未スルホン化ポリマーの合成において、ヒドロキノン11gを4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール29gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e18)で示されるFL50PH50PEEKを合成し、さらにスルホン化、製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量13万であった。
また、得られたスルホン化FL50PH50PEEKは、スルホン酸基密度2.0mmol/gであった。
得られた膜は、膜厚210μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は80重量%、Rw2は66重量%、Wnfは0.40であった。
また、メタノール透過量Aは23μmol・min-1・cm-2、483nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.5S・cm-2、116mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で1.8倍、エネルギー容量(Wh)で2.2倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例28] スルホン化FL50PH50PEEK
実施例27と同様にして得たスルホン化FL50PH50PEEKを、N,N−ジメチルアセトアミド溶液としてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去して製膜した。
得られた膜は、膜厚240μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は66重量%であった。
また、メタノール透過量Aは12μmol・min-1・cm-2、288nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.1S・cm-2、145mS・cm-1、プロトン伝導度Bは5.8S・cm-2、132mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
[実施例29] スルホン化FL50PHQ50PEEK
未スルホン化ポリマーの合成において、ヒドロキノン11gをフェニルヒドロキノン19gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e19)で示されるFL50PHQ50PEEKを合成し、さらにスルホン化、製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量12万であった。
また、得られたスルホン化FL50PHQ50PEEKは、スルホン酸基密度2.2mmol/gであった。
Rw1は86重量%、Rw2は66重量%、Wnfは0.40であった。
得られた膜は、膜厚170μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
また、メタノール透過量Aは21μmol・min-1・cm-2、357nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.0S・cm-2、102mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で1.9倍、エネルギー容量(Wh)で2.9倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例30] スルホン化FL50PHQ50PEEK
実施例29と同様にして得たスルホン化FL50PHQ50PEEKを、N,N−ジメチルアセトアミド溶液としてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去して製膜した。
得られた膜は、膜厚200μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は67重量%であった。
また、メタノール透過量Aは20μmol・min-1・cm-2、400nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.5S・cm-2、110mS・cm-1、プロトン伝導度Bは5.0S・cm-2、100mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
未スルホン化ポリマーの合成において、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン44gをビス(4−フルオロフェニル)スルホン51gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e20)で示されるFL50PEESを合成し、さらにスルホン化、製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量18万であった。
また、得られたスルホン化FL50PEESは、スルホン酸基密度1.7mmol/gであった。
得られた膜は、膜厚120μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は65重量%、Rw2は52重量%、Wnfは0.51であった。
また、メタノール透過量Aは35μmol・min-1・cm-2、420nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.0S・cm-2、72mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で1.2倍、エネルギー容量(Wh)で1.8倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例32] スルホン化FL50PEES
実施例31と同様にして得たスルホン化FL50PEESを、N,N−ジメチルアセトアミド溶液としてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去して製膜した。
得られた膜は、膜厚250μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は60重量%であった。
また、メタノール透過量Aは42μmol・min-1・cm-2、1050nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.5S・cm-2、138mS・cm-1、プロトン伝導度Bは5.0S・cm-2、125mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
未スルホン化ポリマーの合成において、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン44gをビス(4−フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシド63gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e21)で示されるFL50PEPOを合成し、さらにスルホン化、製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量7万であった。
また、得られたスルホン化FL50PEPOは、スルホン酸基密度2.2mmol/gであった。
得られた膜は、膜厚170μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は85重量%、Rw2は65重量%、Wnfは0.48であった。
また、メタノール透過量Aは21μmol・min-1・cm-2、357nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.9S・cm-2、100mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で1.9倍、エネルギー容量(Wh)で2.8倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例34] スルホン化FL50PEPO
実施例33と同様にして得たスルホン化FL50PEPOを、N,N−ジメチルアセトアミド溶液としてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去して製膜した。
得られた膜は、膜厚210μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は61重量%であった。
また、メタノール透過量Aは20μmol・min-1・cm-2、420nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.5S・cm-2、116mS・cm-1、プロトン伝導度Bは5.0S・cm-2、105mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
[実施例35] スルホン化FL50CF50PEEK
未スルホン化ポリマーの合成において、ヒドロキノン11gを4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス(2−メチルフェノール)38gにかえた以外は実施例11と同様にして、上記式(e22)で示されるFL50CF50PEEKを合成し、さらにスルホン化、製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られた未スルホン化ポリマーは、重量平均分子量15万であった。
また、得られたスルホン化FL50CF50PEEKは、スルホン酸基密度2.2mmol/gであった。
得られた膜は、膜厚180μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は84重量%、Rw2は69重量%、Wnfは0.45であった。
また、メタノール透過量Aは24μmol・min-1・cm-2、432nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.2S・cm-2、112mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で2.0倍、エネルギー容量(Wh)で2.5倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例36] 放射線架橋したスルホン化FL50PEEK
実施例11と同様にして得たスルホン化FL50PEEKの膜に、架橋処理として、エリアビーム型電子線照射装置(日新ハイボルテージ社製キュアトロンEBC300−60)を使って窒素雰囲気下、300kGyの線量を照射した。
得られた膜は、膜厚190μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は86重量%、Rw2は68重量%、Wnfは0.42であった。
また、メタノール透過量Aは17μmol・min-1・cm-2、323nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは4.5S・cm-2、86mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で1.8倍、エネルギー容量(Wh)で2.8倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[比較例5] FL50PEEK
スルホン化を省略し、また製膜における溶媒をN,N−ジメチルアセトアミドからクロロホルムにかえた以外は実施例11と同様にして、製膜までを行った。
Rw1は0重量%であった。
膜厚は90μmであり、メタノール透過量Aは0μmol・min-1・cm-2、0nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは0S・cm-2、0mS・cm-1であり、プロトン伝導性が全くなかった。
特開2002−226575号公報の実施例4記載の方法で式(f1)のポリエーテルケトンのスルホン化物を合成した。スルホン酸基密度は1.5mmol/gであり、重量平均分子量は9万であった。得られたポリマーはいずれの溶媒にも溶解せず、製膜が困難であり、プロトン伝導度、メタノール透過量、Rw1、Rw2、WnfおよびMEAの評価に至らなかった。
特表2002−524631号公報の例19および例24に記載の方法で式(f2)のポリエーテルケトンのスルホン化物を合成した。スルホン酸基密度は1.8mmol/gであり、重量平均分子量は18万であった。
上記のスルホン化ポリマーをN−メチルピロリドンを溶媒とする溶液とし、当該溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて24時間真空乾燥して溶媒を除去した。
得られた膜は、膜厚101μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は51重量%、Rw2は18重量%、Wnfは0.43であった。
また、メタノール透過量Aは95μmol・min-1・cm-2、960nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは4.8S・cm-2、48mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、燃料遮断性に劣り、また不凍水の分率が“ナフィオン”117とほぼ同等であった。
本比較例の高分子電解質膜は、30重量%メタノール水溶液に激しく膨潤したため、MEAの評価には至らなかった。
[合成例1]
(ジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの合成)
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン109.1gを発煙硫酸(50%SO3)150mL中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、上記式(e23)で示されるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得た。(収量181g、収率86%)。
[実施例37] スルホン化FL50BF50PEEK
(式中、*はその位置で上式の右端と下式の左端とが結合していることを表す。)
炭酸カリウム6.9g、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン6.7g、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール7.0g、および4,4'−ジフルオロベンゾフェノン4.4g、および上記合成例1で得たジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン8.4gを用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、190℃で重合を行った。多量の水で再沈することで精製を行い、上記式(e24)で示されるスルホン化FL50BF50PEEKを得た。
得られたスルホン化FL50BF50PEEKのスルホン酸基密度は、元素分析より1.7mmol/g、重量平均分子量29万であった。
得られたポリマーを、N,N−ジメチルアセトアミドを溶媒とする溶液とし、当該溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4時間乾燥して溶媒を除去した。さらに、窒素ガス雰囲気下、200〜300℃まで1時間かけて昇温し、300℃で10分間加熱する条件で熱処理した後、放冷した。1N塩酸に3日間以上浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純水に3日間以上浸漬して充分洗浄した。
Rw1は98重量%、Rw2は80重量%、Wnfは0.34であった。
得られた膜の膜厚102μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
また、メタノール透過量Aは12μmol・min-1・cm-2、122nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは6.1S・cm-2、62mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で2.1倍、エネルギー容量(Wh)で3.0倍の値を示し、優れた特性を有していた。
(式中、*はその位置で上式の右端と下式の左端とが結合していることを表す。)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン6.7gを4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス(2−メチルフェノール)7.6gにかえた以外は実施例37と同様にして、上記式(e25)で示されるポリマーを合成し、さらに製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られたポリマーのスルホン酸基密度は1.6mmol/g、重量平均分子量22万であった。
得られた膜は、膜厚95μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は83重量%、Rw2は70重量%、Wnfは0.45であった。
また、メタノール透過量Aは13μmol・min-1・cm-2、124nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.9S・cm-2、56mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で2.0倍、エネルギー容量(Wh)で2.5倍の値を示し、優れた特性を有していた。
(式中、*はその位置で上式の右端と下式の左端とが結合していることを表す。)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン6.7gをハイドロキノン2.2gにかえた以外は実施例37と同様にして、上記式(e26)で示されるポリマーを合成し、さらに製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られたポリマーのスルホン酸基密度は1.6mmol/g、重量平均分子量16万であった。
得られた膜は、膜厚95μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は86重量%、Rw2は67重量%、Wnfは0.43であった。
また、メタノール透過量Aは19μmol・min-1・cm-2、181nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.9S・cm-2、56mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で2.0倍、エネルギー容量(Wh)で3.0倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例40]
(式中、*はその位置で上式の右端と下式の左端とが結合していることを表す。)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン6.7gを使用せず、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール7.0gを14.1gにかえた以外は実施例37と同様にして、上記式(e27)で示されるポリマーを合成し、さらに製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られたポリマーはスルホン酸基密度1.9mmol/g、重量平均分子量19万であった。
得られた膜は膜厚95μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は98重量%、Rw2は92重量%、Wnfは0.29であった。
また、メタノール透過量Aは8μmol・min-1・cm-2、76nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.7S・cm-2、54mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で2.1倍、エネルギー容量(Wh)で3.0倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例41]
(式中、*はその位置で上式の右端と下式の左端とが結合していることを表す。)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン6.7gを使用せず、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール7.0gを4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス(2−フェニル)フェノール20.1gにかえた以外は実施例37と同様にして、上記式(e28)で示されるポリマーを合成し、さらに製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られたポリマーはスルホン酸基密度1.8mmol/g、重量平均分子量18万であった。
得られた膜は膜厚95μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は91重量%、Rw2は80重量%、Wnfは0.55であった。
また、メタノール透過量Aは11μmol・min-1・cm-2、105nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.8S・cm-2、55mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で2.0倍、エネルギー容量(Wh)で2.8倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例42]
(式中、*はその位置で上式の右端と下式の左端とが結合していることを表す。)
4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール7.0gを4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス(2−フェニルフェノール)10.0g、にかえた以外は実施例37と同様にして、上記式(e29)で示されるポリマーを合成し、さらに製膜、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製までを行った。
得られたポリマーはスルホン酸基密度1.8mmol/g、重量平均分子量20万であった。
得られた膜は膜厚95μmであり、淡褐色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は88重量%、Rw2は82重量%、Wnfは0.50であった。
また、メタノール透過量Aは8μmol・min-1・cm-2、76nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.7S・cm-2、54mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、プロトン伝導性および燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が極めて大きかった。
本実施例の高分子電解質膜を使用したMEAは、“ナフィオン”117膜を使用したMEA(比較例1)より出力(mW/cm2)で1.9倍、エネルギー容量(Wh)で2.5倍の値を示し、優れた特性を有していた。
[実施例43] 放射線架橋したスルホン化FL50PEEK
実施例12と同様にして得たのスルホン化FL50PEEKの膜に、架橋処理として、エリアビーム型電子線照射装置(日新ハイボルテージ社製キュアトロンEBC300−60)を使って窒素雰囲気下、300kGyの線量を照射した。
得られた膜は、膜厚190μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。
Rw1は68重量%であった。
また、メタノール透過量Aは10μmol・min-1・cm-2、190nmol・min-1・cm-1、プロトン伝導度Aは5.0S・cm-2、94mS・cm-1、プロトン伝導度Bは4.5S・cm-2、86mS・cm-1であった。
“ナフィオン”117に比べ、燃料遮断性に優れ、また不凍水の分率が大きかった。
[実施例44]
(単量体組成物の調製)
ビーカーに、スチレン13g、N−シクロヘキシルマレイミド9g、多官能単量体であるエチレングリコールジメタクリレート6g、開孔剤であるプロピレンカーボネートを6g、重合開始剤である2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.05gを仕込み、マグネッチクスターラーにて撹拌し均一に溶解し、単量体組成物溶液とした。
(キャスト成型)
厚み5mmで30cm×30cmサイズのガラス板2枚をその間隔が0.2mmとなるようにガスケットで調整したモールドを準備し、ガラス板間に上記の単量体組成物溶液をガスケット内が満たされるまで注入した。
次に65℃の熱風乾燥機内で8時間、板間重合したのち、ガラス板間から膜状の重合体を取り出した。
膜厚は190μmであった。
(高分子電解質膜化)
開孔剤の除去とイオン性基の導入として、上記の膜状の重合体を、5重量%のクロロスルホン酸を添加した1,2−ジクロロエタン中に30分間浸漬した後、取り出し、メタノールで1,2−ジクロロエタンを洗浄し、さらに洗浄液が中性になるまで水洗し、高分子電解質膜を得た。
スルホン酸基の分布状態の観察の結果、当該高分子電解質膜の断面全体に渡ってスルホン酸基が分布しており、空隙内にイオン性基が導入されていることが確認できた。
(膜電極複合体の作製)
2枚の炭素繊維クロス基材を“POLYFLON PTFE D−1”(R)(ダイキン工業株式会社製)に浸漬し、380℃で焼成し撥水処理を行った。次に、該撥水処理を施した炭素繊維クロス基材に、アセチレンブラック4gと“POLYFLON PTFE D−1”4g、水10gからなる分散液を塗工し、380℃で焼成し、電極基材を作製した。
1枚の電極基材上に、Pt−Ru担持カーボンと“ナフィオン”溶液とからなるアノード電極触媒塗液を塗工し、乾燥して、アノード電極を作製した。
また、もう1枚の電極基材上に、Pt担持カーボンと“ナフィオン”溶液とからなるカソード電極触媒塗液を塗工し、乾燥して、カソード電極を作製した。
上記で得られた高分子電解質膜を、アノード電極とカソード電極とで夾持し、90℃30分間加熱プレスすることで膜電極複合体(MEA)を作製した。
(高分子電解質型燃料電池の作製)
得られたMEAをエレクトロケム社製セルにセットし、アノード側に30重量%メタノール水溶液、カソード側に空気を流して高分子電解質型燃料電池とした。
実施例44の高分子電解質膜を使用したMEAの方が“ナフィオン”117膜を使用したMEAより出力(mW/cm2)で1.9倍、エネルギー容量(Wh)で3.0倍の値を示し優れた特性を有していた。
[実施例45〜53]
実施例44の単量体組成物のビニル系単官能単量体、多官能単量体、開孔剤の種類、量を表1のとおりに変更した以外は実施例44と同様にして、単量体組成物の調製、キャスト成型、高分子電解質膜化、膜電極複合体の作製、高分子電解質型燃料電池の作製を行った。
実施例44〜53の、単量体組成物の仕込みの内訳を表1に示す。
表1中の略記号
St: スチレン
CHM: N−シクロヘキシルマレイミド
AN: アクリロニトリル
17F: 1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート
DVB: ジビニルベンゼン
1G: エチレングリコールジメタクリレート
BPEFL: ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート
PC: プロピレンカーボネート
NE: ニトロエタン
TOP: リン酸トリオクチル
TMB: トリメチルベンゼン
GBL: γ−ブチロラクトン
また、実施例44〜53と比較例との各評価結果を表2,表3に示す。
また、実施例45〜53のMEA・高分子電解質型燃料電池の評価結果として出力およびエネルギー容量を、比較例1(“ナフィオン”117膜使い)を基準とした比で表したものを、表4に示す。
表3から明らかなように、実施例45〜53は、出力(mW/cm2)とエネルギー容量(Wh)とも“ナフィオン117”を使用した高分子電解質型燃料電池より優れていた。
[比較例8]
開孔剤であるプロピレンカーボネートを使用しなかった以外は実施例44と同様にして、高分子電解質膜を作製した。
スルホン酸基の分布状態の観察の結果、膜の表裏の表層にのみスルホン酸基が分布しており、膜内部にはイオン性基が導入されていなかった。
また、プロトン伝度度Aは1.5mS・cm-1であり不十分であった。
[比較例9]
多官能単量体であるジビニルベンゼンを使用しなかった以外は実施例44と同様にしてキャスト成型まで行った。
しかし、さらに高分子電解質化を試みたが、5重量%のクロロスルホン酸を添加した1,2−ジクロロエタン中に浸漬したところ膜が溶解し、高分子電解質膜とすることができなかった。
[実施例54] スルホン化ポリフェニレンオキシド
室温、窒素雰囲気下で三菱エンジニアリングプラスチック社製ポリフェニレンオキシド(商品名“YPX−100L”)100gを、クロロホルム1000gに溶解させた後、その溶液を撹拌しながらそこにクロロスルホン酸(34mL)をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で30分間、さらに撹拌を続けた。析出したポリマーを濾別後、ミルで粉砕し、水で十分に洗浄後、真空乾燥し、スルホン化ポリフェニレンオキシドとした。
このスルホン化ポリフェニレンオキシドを、ジメチルアセトアミドに15wt%溶液となるように溶解した。このポリマー溶液をナイフコーターでガラス板上に塗布し、水中で湿式凝固後、90℃で乾燥し、高分子電解質膜とした。
[実施例55]
(単量体組成物の調製)
ビーカーにスチレン10g、ジビニルベンゼン5g、フェニルマレイミド10g、開孔剤であるプロピレンカーボネートを30g、重合開始剤である2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.1gを仕込み、マグネチックスターラーにて撹拌し均一に溶解し単量体組成物溶液とした。
(キャスト成型)
厚み5mmで30cm×30cmサイズのガラス板2枚の間隔が0.2mmとなるようにガスケットで調整したモールドを準備し、ガラス板間に上記の単量体組成物溶液をガスケット内が満たされるまで注入した。
次に65℃の熱風乾燥機内で8時間、板間で重合したのち、ガラス板間から重合体の膜を取り出した。
(高分子電解質膜化)
開孔剤の除去とイオン性基の導入として、上記の膜状の重合体を、5重量%のクロロスルホン酸を添加した1,2−ジクロロエタン中に30分間浸漬した後、洗浄液が中性になるまで水洗し、高分子電解質膜を得た。
スルホン酸基の分布状態の観察の結果、当該高分子電解質膜の断面全体に渡ってスルホン酸基が分布しており、空隙内にイオン性基が導入されていることを確認した。
(膜電極複合体の作製)
2枚の炭素繊維クロス基材に20%四フッ化エチレン溶液にて撥水処理を行ったのち、四フッ化エチレンを20%含むカーボンブラック分散液を塗工し、焼成して電極基材を作製した。
1枚の電極基材上に、Pt−Ru担持カーボンと“ナフィオン”溶液とからなるアノード電極触媒塗液を塗工し、乾燥してアノード電極を作製した。
また、もう1枚の電極基材上に、Pt担持カーボンと“ナフィオン”溶液とからなるカソード電極触媒塗液を塗工し、乾燥して、カソード電極を作製した。
上記で得られた高分子電解質膜を、アノード電極とカソード電極とで夾持し、加熱プレスすることで膜電極複合体(MEA)を作製した。
(高分子電解質型燃料電池の作製)
得られたMEAをエレクトロケム社製セルにセットし、アノード側に30%メタノール水溶液、カソード側に空気を流して高分子電解質型燃料電池とした。
実施例55の高分子電解質膜を使用したMEAの方が“ナフィオン”117膜を使用したMEAより優れた特性を有していた。
[実施例56]
単量体組成物の調製において、開孔剤であるプロピレンカーボネート6gを11gにかえた以外は実施例55と同様にして、高分子電解質膜を得た。
[実施例57]
単量体組成物の調製において、仕込みの内訳を、スチレン15g、ジビニルベンゼン5g、シクロヘキシルマレイミド10g、開孔剤であるプロピレンカーボネートを7.5g、重合開始剤である2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.2gとした以外は実施例55と同様にして、高分子電解質膜を得た。
実施例55〜57の各評価結果を表5、表6に示す。
本発明の高分子電解質材料あるいは高分子電解質部品は、種々の用途に適用可能である。例えば、体外循環カラム、人工皮膚などの医療用途、ろ過用用途、イオン交換樹脂用途、各種構造材用途、電気化学用途に適用可能である。また例えば、電気化学用途としては、燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置およびクロロアルカリ電解装置等が挙げられ、中でも燃料電池がとりわけ好ましく、例えば、メタノールなどを燃料とする直接型燃料電池に用いられる。
本発明の高分子電解質型燃料電池の用途としては、移動体の電力供給源が好ましいものである。特に、携帯電話、パソコン、PDA(Portable Digital Assistance)、ビデオカメラ(カムコーダー)、デジタルカメラなどの携帯機器、電動シェーバー、掃除機等の家電、電動工具、乗用車、バスおよびトラックなどの自動車、二輪車、電動アシスト付自転車、電動カート、電動車椅子や船舶および鉄道などの移動体の電力供給源として好ましく用いられる。