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JP2005015962A - 細繊度光学干渉性繊維およびその製造方法 - Google Patents

細繊度光学干渉性繊維およびその製造方法 Download PDF

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JP2005015962A
JP2005015962A JP2003184334A JP2003184334A JP2005015962A JP 2005015962 A JP2005015962 A JP 2005015962A JP 2003184334 A JP2003184334 A JP 2003184334A JP 2003184334 A JP2003184334 A JP 2003184334A JP 2005015962 A JP2005015962 A JP 2005015962A
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polymer
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Mitsue Yoshimura
三枝 吉村
Hironori Aida
裕憲 合田
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Teijin Frontier Co Ltd
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Teijin Fibers Ltd
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Abstract

【課題】細繊度であっても優れた光学干渉効果を発現することができ、さらなる審美性が要求される商品分野への展開に適した新規な細繊度光学干渉性繊維およびそれを安定に製造することができる方法を提供すること。
【解決手段】高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP2)の比率(SP比)が0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲にある、互いに屈折率の異なるポリマー層が扁平断面の長軸方向に平行に交互に積層してなる交互積層体部と、該交互積層体部を被覆してなる保護層とから構成される未延伸繊維を、両ポリマーのガラス転移温度以上結晶化温度以下の加熱浴中、歪み速度10分−1以下の速度で5.0〜20.0倍にフロー延伸した後にネック延伸して、保護層の厚さが0.1〜5.0μmで単繊維繊度が4.0dtex以下の光学干渉性繊維を得る。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細繊度の光学干渉性繊維およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、種々の用途分野において優れた光輝剤として使用することができ、しかも、製糸時の工程安定性が良好で安定に製造することができる細繊度光学干渉性繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
屈折率の異なる互いに独立したポリマー層の交互積層体からなる光学干渉性繊維は、自然光の反射・干渉作用によって可視光線領域の波長を干渉発色する。その発色は金属光沢のような明るさがあり、特性波長の純粋で鮮明な色(単色)を呈し、染料や顔料の光吸収による発色とは全く異なった審美性を発現する。そのような光学干渉性繊維の典型的な例は、国際公開第98/46815号パンフレットに開示されている。
【0003】
しかしながら、該パンフレットに開示されている光学干渉性繊維は、その繊度を小さくしようとすると交互積層体が剥離したり、たとえ剥離が生じなくとも延伸時に斑が発生して光干渉効果が低下したりするため、さらなる審美性の向上が要求される応用商品への展開には問題がある。すなわち、従来の技術では細繊度化しようとすると、紡糸時のポリマー吐出量が著しく減少するためにポリマーのパック内滞留時間が増加し、ポリマー劣化が進行して積層部の厚みが不均一となったり着色したりするため、安定な光学干渉効果を得ることはできない。
【0004】
【特許文献1】
国際公開第98/46815号パンフレット
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来技術の有する問題を改善し、細繊度であっても優れた光学干渉効果を発現することができ、さらなる審美性が要求される商品分野への展開に適した新規な細繊度光学干渉性繊維およびそれを安定に製造することができる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、屈折率の異なる独立したポリマー層の積層体からなり、保護層で被覆された構造の未延伸光学干渉性繊維を、先ずフロー延伸した後にネック延伸することにより、優れた光学干渉性を有する細繊度光学干渉性繊維が安定して得られることを見出し本発明に到達した。
【0007】
かくして、本発明の第1の目的は、「高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP2)の比率(SP比)が0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲にある、互いに屈折率の異なるポリマー層が扁平断面の長軸方向に平行に交互に積層してなる交互積層体部を、厚さが0.1〜5.0μmの保護層で被覆してなる光学干渉性繊維であって、その繊度が4.0dtex以下である細繊度光学干渉性繊維。」により達成される。
【0008】
また別の目的は、「高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP2)の比率(SP比)が0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲にある、互いに屈折率の異なるポリマー層が扁平断面の長軸方向に平行に交互に積層してなる交互積層体部と、該交互積層体部を被覆してなる保護層とから構成される未延伸繊維を、両ポリマーのガラス転移温度以上結晶化温度以下の加熱浴中、歪み速度10分−1以下の速度で5.0〜20.0倍にフロー延伸し、次いでネック延伸することを特徴とする請求項1記載の細繊度光学干渉性繊維の製造方法。」により達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
先ず、本発明の光学干渉繊維は、その単繊維繊度は4.0dtex以下、好ましくは0.2〜2.0dtexの範囲であることが肝要である。単繊維繊度が4.0dtexを超える場合には、高度の審美性が要求される商品分野への展開が困難となり本発明の目的を達成できなくなるので好ましくない。例えば、塗料、インク、コーティング剤等の用途では、単繊維繊度が4.0dtexを超えると、短繊維として用いてもスプレーガンや印刷機のノズルやコーティングダイに詰まったり、得られる製品の樹脂層から一部の繊維が浮き上がり、ざらつき感を伴い、高級感を損うので好ましくない。また、紙の材料繊維と一緒に混ぜて使用する場合にも、表面の平滑性が乏しくなり、かつ該繊維のしなやかさが不十分で折れ曲がったりパルプとのなじみが低下したりするため、得られる製品の均一性が低下する。さらに、化粧品のように、特に微粒子パウダーとして肌に直接接触するような用途では、単繊維繊度が上記範囲を超えると粒粒子の粗さが目立つようになり、使用感、審美性共に不十分なものとなる。
【0010】
次に本発明の光学干渉性繊維は、その繊維の長さ方向に直角に切断した横断面の形状が扁平状であり、その扁平断面の長軸方向に平行に交互に、屈折率の異なる互いに独立したポリマー層が多数積層されている交互積層体部を、厚さが0.1〜5.0μm、好ましくは0.2〜2.0μm、特に好ましくは0.3〜1.0μmの保護層で被覆してなる構造を有している。このように、交互積層体部の周囲に保護層を設けることにより、溶融紡糸時に最終吐出孔内部で受ける壁面近傍と内部とのポリマー流分布を緩和することができ、積層部の受ける剪断応力分布が低減して内外層に亘る各層の厚みがより均一な交互積層体が得られ、優れた光学干渉機能が得られる。
【0011】
しかし、保護層の厚さが薄すぎて0.1μm未満の場合には、積層部界面でポリマー層の剥離や破壊が起こりやすくなるだけでなく、積層構造に斑を生じやすくなり、光学干渉機能が低下して十分な審美性が得られなくなるので好ましくない。一方、5.0μmを超える場合には、細繊度繊維においては交互積層体部の厚みが低下せざるを得なくなるため、交互積層体部の積層数が小さくなって十分な光学干渉機能を発揮することができなくなるので好ましくない。
【0012】
なおこの保護層部は、交互積層されたポリマー層のいずれのポリマーで形成されていてもよく、また、これらのポリマー以外のもので形成されてもよい。なかでも、交互積層されたポリマーのうちの高融点側ポリマーとすると、溶融紡糸時に冷却固化速度の速い高融点側ポリマーで保護層部が先ず形成されるので、界面エネルギーやベイラス効果による偏平断面形状の変形を抑えることができ、積層構造の平行性が維持されて審美性が向上するので好ましい。
【0013】
次に、本発明の光学干渉性繊維の繊維軸直角断面構造について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の繊維をその長さ方向に直角に切断した場合の断面形状を模式的に示したものである。2種のポリマー層からなる交互積層体部2は扁平状断面形状を有しており、その外周部を保護層1が取り囲んでいる。そして、2種のポリマー層は、扁平断面の長軸方向(図面では水平方向)と平行に多数交互に積層されている。
【0014】
このような交互積層体部におけるそれぞれのポリマー層の厚みは、0.02〜0.5μmの範囲であることが好ましい。厚みが0.02μm未満の場合や0.5μmを超える場合には、期待する光学干渉効果を有益な波長領域で得ることが困難となる。さらに厚みは、0.05〜0.15μmの範囲であることが好ましい。また、2種の成分における光学距離、すなわち、層の厚みと屈折率の積が等しいとき、さらに高い光学干渉効果を得ることができる。特に、一次の反射に等しい2種の光学距離の和の2倍が、欲する色の波長の距離と等しいとき、最大の干渉色となるので好ましい。
【0015】
本発明の繊維の交互積層体部断面は、図1に示すように扁平状であり、長軸(図面上は水平方向)および短軸(図面上は垂直方向)を有している。その断面の扁平率(長軸/短軸)が大きいものは、光の干渉に有効な面積を大きくとることができるために好ましい繊維断面形態である。繊維の断面の扁平率は、4以上、好ましくは4.5以上、特に好ましくは7以上の場合、使用時に各繊維の扁平長軸面が互いに平行方向に配列しやすくなり、光学干渉機能が向上するので好ましい。しかし、扁平率が大きくなりすぎると、製糸性が大きく低下するので、15以下、特に10以下とするのが好ましい。なお該扁平率は、扁平断面の外周部に形成されている保護層部も含めて算出したものである。
【0016】
本発明の繊維の断面において、異なるポリマー層の交互積層体部における互いに独立したポリマー層の積層数は、5〜120層であることが好ましい。積層数が5層より少なくなると、干渉効果が小さいばかりでなく、干渉色が見る角度によって大きく変化してしまい、安価な質感しか得られないので好ましくない。さらには10層以上の交互積層が好ましい。一方、積層数が120層を超えると、得られる光の反射量の増大がもはや期待できないばかりか、口金構造が複雑になり製糸が困難になるとともに、層流に乱れが発生し易くなる。さらには70層以下、特に50層以下が好ましい。
【0017】
以上に説明したように、本発明の繊維の断面形状は、屈折率の異なるポリマー層が多数交互に積層した偏平状の形をしているものであるが、その光学干渉機能は、交互積層の平行性、すなわち各層の光学的距離が偏平断面の長軸方向にも短軸方向にも均一であることが、反射強度および単色性(鮮明発色)に極めて重要である。かかる界面面積の多い扁平上の積層体構造を形成するには、複雑な口金流路内での積層形成プロセス、吐出後のベーラス、界面張力等を制御して均一な積層厚みを実現することが重要で、そのためには、屈折率の異なるポリマー層間の溶解度パラメーター(SP値)の比を特定することが大切である。すなわち、高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター(SP2)の比率(SP比)を0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲、特に0.85≦SP1/SP2≦1.05の範囲にすることが必要である。このようなポリマーの組合せにすると、2種ポリマーの交互積層流を紡糸口金から吐出したとき、界面に作用する界面張力が小さくなるので均一な交互積層体構造を容易に得ることができる。これに対して、SP比が上記範囲外の場合には、吐出ポリマー流は表面張力で丸くなろうとし、また、両ポリマー積層界面の接触面積を最小にするように収縮力が働き、しかも積層構造体が多層であるのでその収縮力は大きくなるため、積層面が湾曲しながら丸くなって良好な扁平形状が得られなくなるので好ましくない。さらには、ポリマー流は口金出口で解放されると膨らもうとするベイラス効果も大きくなる。
【0018】
上記の要件を満足する好ましい組合せとしては、例えば、スルホン酸金属塩基を有する二塩基酸成分をポリエステルを形成している全二塩基酸成分当たり0.3〜10モル%共重合しているポリエチレンテレフタレートと酸価が3以上を有するポリメチルメタクリレートとの組合せ、スルホン酸金属塩を有する二塩基酸成分をポリエステルを形成している全二塩基酸成分あたり0.3〜5モル%共重合しているポリエチレンナフタレートと脂肪族ポリアミドとの組合せ、側鎖にアルキル基を有する二塩基酸成またはグリコール成分を全繰り返し単位当たり5〜30モル%共重合している共重合芳香族ポリエステルとポリメチルメタクリレートとの組合せ、4,4−ヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンを二価フェノール成分とするポリカーボネートとポリメチルメタクリレートとの組合せ、4,4−ヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンを二価フェノール成分とするポリカーボネートとポリ−4−メチルペンテンとの組合せ、ポリエチレンテレフタレートと脂肪族ポリアミドとの組合せなどを例示することができる。
【0019】
また、本発明の光学干渉性繊維は、その伸度が10〜60%の範囲、特に20〜40%の範囲にあることが好ましい。この伸度が大きすぎる場合には、織編物やカットファイバーとする工程において、繊維に負荷される張力によって繊維が変形しやすくなるため、工程通過性が低下する傾向にある。一方、伸度が小さすぎる場合には、繊維に負荷される張力を吸収しがたくなるため、毛羽や断糸が増加する傾向にある。また、伸度がこの範囲と、用いるポリマーの種類によっては、紡出され一旦冷却固化された繊維を延伸(フロー延伸+ネック延伸)することにより複屈折率(△n)がより高められ、2種のポリマー間の屈折率差を「ポリマーの屈折率差プラス繊維の複屈折率差」として、結果的に全体として屈折率差を拡大させるができるので、光学干渉性機能が高められる。
【0020】
さらに、本発明の光学干渉性繊維は、その130℃〜150℃における熱収縮率が3%以下であることが好ましい。熱収縮率がこの範囲を超える場合には、布帛、刺繍糸、紙・塗料・インク・化粧品用などのカットファイバー等各種製品に加工する時、該製品を使用する時、またはアイロンなどで該製品のメンテナンスする時に、繊維の収縮など変形が起こって光学干渉機能が低下しやすい。例えば、布帛とした場合には、150℃での収縮率が3%を超えるとアイロンにより繊維が収縮し、フラットな扁平断面の変形が起こり光学干渉機能が低下しやすい。特に収縮率が極端に高い場合には、例えば製糸工程で全く熱処理による構造固定が行われていない場合には、交互積層体構造の各層の厚みが大きくなり、干渉発色自身の色相が変化しやすい。また、例えば塗料に利用する場合でも、塗装工程や捺染工程で同様の温度での乾燥・熱固定が施されるため、品質の面から同様の耐熱性を有していることが好ましい。
【0021】
以上に説明した本発明の光学干渉性繊維は、例えば以下の方法により製造することができる。すなわち、国際公開98/46815号に記載の方法により、先ず高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター(SP2)の比率(SP比)を0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲に維持しつつ交互積層体構造に溶融吐出する際、高屈折率側ポリマーと低屈折率側ポリマーのいずれか融点が高い方のポリマーで該交互積層体構造を被覆するようにして、交互積層体部が保護層により被覆された構造の未延伸繊維を得る。未延伸繊維の単繊維繊度は、後述するフロー延伸倍率およびネック延伸倍率によって異るが、最終的に得られる光学干渉性繊維の繊度が4.0dtex以下となる範囲であれば任意である。また、保護層の厚さも、最終的に得られる光学干渉性繊維の保護層厚さが0.1〜5.0μmの範囲であれば任意である。
【0022】
ついで該未延伸繊維を、高屈折率側ポリマーと低屈折率側ポリマーの両ポリマーのガラス転移温度以上であって、両ポリマーの結晶化温度以下の温度の加熱浴中で、延伸歪み速度10分−1以下、好ましくは0.3〜5分−1の範囲で5.0〜20.0倍、好ましくは8〜15倍に延伸することが肝要である。
【0023】
ここで、加熱浴温度は、両ポリマーのガラス温度以上結晶化温度以下の範囲にとすることが大切である。フロー延伸性は、未延伸繊維を特定の高温下で張力をかけることにより、高度の配向を伴わずに、単に形態的に細繊度化する方法であり、一種の流動現象である。したがって、光干渉繊維を構成する各ポリマーの流動性を与えるために、両ポリマーのガラス温度以上結晶化温度以下の加熱浴中で加熱して延伸することが大切である。加熱浴による作用には、ポリマー鎖の動きを柔軟にして流動性を高める作用と、結晶前駆体としてローカルにポリマー鎖が集合した部位における結晶化を早める作用とがあり、これらの作用を勘案する必要がある。すなわち、加熱浴の温度が、構成するポリマーのいずれかのガラス転移温度以下である場合には、ガラス転移温度が加熱浴温度より高い方のポリマーはフロー延伸されずにネック延伸となるため、フロー延伸+ネック延伸による高倍率延伸で細繊度光学干渉繊維を安定して得るという本発明の目的を達成できなくなる。一方、加熱浴温度が構成するポリマーのいずれかの結晶化温度以上の場合には、結晶化温度が加熱浴温度より低い方のポリマーは、フロー延伸中にローカルでランダムな微結晶が形成され、それらがポリマー鎖の再配列を妨げるために安定にフロー延伸することができなくなる。
【0024】
なお、結晶化温度は未延伸繊維の配向性に依存するため、配向度の高いほど、すなわち未延伸繊維の紡糸速度が速いほど、加熱浴温度の上限は低くする必要がある。したがって、未延伸繊維の紡糸速度によって異なってくるが、目安として加熱浴温度は、光干渉性繊維を構成するポリマーの内高い方のガラス転移温度をTgとすると、Tg〜Tg+30℃の範囲とするのが好ましい。該温度がTg+30℃を超える場合には、通常、光干渉性繊維を構成するポリマーの内低い方の結晶化温度を超えている場合が多く、安定にフロー延伸することが困難になる。
【0025】
次に、フロー延伸における最重要な要件は、その歪み速度を10分−1以下とすることである。本発明の光干渉繊維は、積層界面面積が非常に大きな形状を持っているため、その交互積層構造を保ちつつ変形させていくためには、10分−1以下の小さな延伸歪み速度でゆっくりと流動変形させていく必要がある。このひずみ速度が上記範囲を超える場合には、積層界面の破壊が起こり、本発明の目的とする高倍率延伸が不可能となる。なお、延伸歪み速度は小さくなっても特に大きな問題となることはないが、フロー延伸に要する時間が長くなるので、加熱浴温度を両ポリマーの結晶化温度よりもかなり低めとすることが大切になる。しかし、装置的な面および経済的な面(延伸速度が遅くなるので生産性が低下する)からフロー延伸の歪み速度は0.3分−1以上が好ましい。
【0026】
フロー延伸後のネック延伸の条件は特に限定する必要はなく、従来公知の未延伸繊維を延伸する条件を採用すればよい。すなわち、両ポリマーのガラス転移温度の近傍(Tg±15℃)の温度で、ポリマー分子鎖の配向が進む温度であれば任意の温度で延伸することができる。なお、ここでいう温度は、熱板や加熱ローラー等の加熱媒体の温度である。延伸倍率は、最終的に得られる延伸繊維にどの程度の強伸度特性や熱収縮特性を付与するかに応じて適宜設定すればよいが、通常最大延伸倍率の0.70〜0.95倍に延伸すればよい。なお、熱収縮特性等の耐熱性を向上させるため、延伸に引き続いて熱処理を施してもかまわない。
【0027】
延伸・熱処理を施された本発明の光学干渉性繊維は、そのまま長繊維として使用しても、いったん切断して短繊維として使用してもかまわない。短繊維とする場合には、その用途に応じた長さに切断すればよいが、紙、塗料、インク、化粧品、コーティング剤の用途分野に用いる場合には、使用時の取扱い性や得られる最終製品の審美性の点から0.01〜50mm、特に化粧品等の細かく分散させたい用途の場合には、0.01〜1mmの範囲の長さが好ましい。
【0028】
以上に説明した本発明の細繊度光学干渉性繊維は、繊維長が短いカットファイバーとして使用することにより、従来の単繊維繊度では工程通過性および得られる製品の品位の点から展開が困難であった各種用途分野でも、従来の無機物材料と同等の工程通過性や製品品位を得ることができるのである。
【0029】
なお、光学干渉性繊維は、入射光と反射光との干渉によって発色する。ところで、人間の目は、干渉光とその他の部位から反射されて目に入る迷光との差によって色の強度を認識している。そのため、回りからの迷光が強いときは、たとえ干渉光が十分あったとしても色として認識できなくなる。この迷光を防ぐ方法としては、回りからの光の反射、特に光学干渉性繊維に最も近いところにある他の繊維として、迷光を吸収する機能がある繊維を用いるのが好ましい。このような繊維としては、濃色に染色された繊維や原着繊維をあげることができる。特に黒色は全ての光を吸収するため、迷光を取り除く効果が大きいので好ましい。また、光学干渉性繊維の発色と補色関係にある色相を有する濃色繊維を用いてもよい。このような繊維は、補色の光を吸収すると共に干渉光付近の波長の光は反射するため、迷光のうち、干渉光付近の波長成分を反射光として利用できるため、反射光の強度がさらに強くなるので好ましい。
【0030】
なお、短繊維として塗装やコーティング剤として使用する場合には、審美性・デザイン性等の点から、迷光作用を取り除いて光干渉効果を際立たせるため、加工面の下地を黒系や紺系にするのが有効である。勿論、干渉光と白地から発せられる散乱光との協働により、独自の輝きを発現させることも可能である。
【0031】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中におけるポリマーの溶解度パラメーター値(SP値)、繊維断面内各寸法は下記の方法で測定した。
【0032】
<SP値およびSP比>
SP値は、凝集エネルギー密度(Ec)の平方根で表される値である。ポリマーのEcは、種々の溶剤に該ポリマーを浸漬させ、膨潤の圧が極大となる溶剤のEcを該ポリマーのEcとすることにより求められる。このようにして求められた各ポリマーのSP値は、「PROPERTIES OF POLYMERS」第3版(ELSEVIER)792頁に記載されている。また、Ecが不明なポリマーの場合には、ポリマーの化学構造から計算できる。すなわち、該ポリマーを構成する置換基それぞれのEcの和として求めることができる。各置換基のEcについては、上述した文献第192頁に記載されている。そして、SP比は次式から算出する。
SP比=高屈折率ポリマーのSP値(SP1)/低屈折率ポリマーのSP値(SP2)
【0033】
<繊維断面測定>
平板シリコンプレートとビームカプセルにサンプル繊維を固定し、エポキシ樹脂で5日間包埋する。次いで、ミクロトームULTRACUT−Sを用い、繊維軸に垂直方向に切断し、厚さが50〜100nmの超薄切りサンプルを作成してグリッドに載台する。2%四酸化オスミウムで温度60℃下2時間蒸気処理を施した後、透過型電子顕微鏡LEM−2000を用いて加速電圧100kVで写真撮影(倍率20000倍)する。得られた写真より積層構造体部分の各層の平均厚さ及び保護層の厚さを測定した。
【0034】
[実施例1〜4、比較例1〜6]
表1に記載の高屈折率ポリマー(ポリマー1)と低屈折率ポリマー(ポリマー2)とを、交互積層体部の層数が61層で周りをポリマー1が被覆している構造となるように溶融紡糸し、1000m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸繊維を、表1記載の温度の加熱浴(温水)中で表1記載の歪み速度および倍率でフロー延伸後、同じく表1記載の延伸温度(加熱媒体の温度)および倍率にてネック延伸して図1で示されるような断面形状の光学干渉性繊維を得た。結果を表1に示す。なお、未延伸繊維の結晶化温度を表1にあわせて示す。
【0035】
【表1】
Figure 2005015962
【0036】
実施例1は、5−ナトリクムイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートとナイロン−6の組み合わせとし、交互積層層数が61層の構造をもつ未延伸糸を紡糸速度1000m/分で得たものであり、ガラス転移温度は各々70℃、40℃であり、結晶化温度は135℃、125℃であった。本例では、加熱浴温度およびフロー延伸歪み速度が適切な条件にあるため、フロー延伸倍率は10倍が可能であり、その後のネック延伸により高配向糸が得られている。また、保護層厚みおよびポリマー層厚みは、細繊度化に適合する厚みを実現している。実施例2〜4は、フロー延伸の加熱浴90℃の場合に延伸歪み速度を変化させた場合であり、歪み速度の小さい順に延伸倍率は大きくなった。そして、保護層厚み、ポリマー厚みは細繊度化を実現できる高延伸倍率性を示すものであった。比較例1は、フロー延伸工程がなくネック延伸工程のみの場合、1000m/分で紡糸した未延伸糸の延伸倍率は、3.5倍と非常に小さかった。得られた繊維の単繊維繊度は大きく、本発明の目的とする細繊度化を達成していない。そこで、比較例2では、ネック延伸倍率のみで実施例1で得られた保護層厚みおよびポリマー層厚みの延伸糸を得るために、紡糸時のポリマー吐出量を3.5/20=1/5.7倍に低減した。しかし、紡糸時のパック内の滞留時間は5.7倍となるため、熱によるポリマー劣化が著しく、紡糸時の断糸・毛羽など工程不良が発生するとともに、ネック延伸倍率の3.5倍の延伸時も断糸が頻発した。比較例3は、加熱浴温度がポリマー1のガラス転移温度よりも低いために、フロー延伸倍率は小さく、本発明の目的とする細繊度化延伸が達成できていない。比較例4は、延伸歪み速度が大きいために、積層部界面破壊が観察されるとともに、フロー延伸倍率が低く、本発明の目的が達成できていない。
【0037】
比較例5は、ポリカーボネートとポリメチルメタクリレートとの組合せであるが、水を加熱浴媒体とする場合の最高温度が100℃であるため、極めて低速の歪み温度で延伸したが、ポリカーボネートのガラス転移温度が100℃より高いために、フロー延伸倍率を実施例1ほど大きくすることができなかった。比較例6は、ポリマー同士のSP比が大きいため、口金から吐出された繊維は、その積層部界面の面積を減らすべく丸くなり、薄膜積層構造をとることができなかった。また、両ポリマーの均一な流動延伸性は乏しく、フロー延伸倍率およびネック延伸倍率ともに小さかった。
【0038】
[実施例5]
実施例1と同じポリマーの組合せとし、ポリマー1の積層厚み80nm、ポリマー2の積層厚み85nmを交互に21層積層した交互積層体部の周囲を、厚さが0.2μmのポリマー1からなる保護層が被覆された扁平度が4、単繊維繊度が0.2dtexの細繊度光学干渉性繊維を得た。得られた繊維を0.025mmの長さにカットし、該カットファイバーを20重量%の割合でパルプと混合して定法にしたがって抄紙して得られた紙は、審美的な緑色の光を放った。また、プリントインク・塗料・コーティング剤などとして、そのマトリックスに10重量%の割合で分散させ、Tシャツへの捺染、金属板への塗装、人工皮革基材へのコーティング等を施した製品は、いずれも正面から見た場合には緑色を呈し、角度をつけてみた場合には青や紫色を呈する、優れた光学干渉性を示した。また、アクリル樹脂マトリックスに5重量%の割合で分散させたマニュキュアは、細繊度化および微細カット化されたことにより、繊維質感は全く感じられず、光輝剤粒子のニュアンスをもち、しかも仕上がりが非常に滑らかで、従来のざらざらした感触は全くない極めて高品位のものであった。
【0039】
【発明の効果】
本発明の細繊度光学干渉性繊維の製造方法によれば、紡糸延伸時の工程安定性が著しく向上しているので、従来のものより小さい繊度であっても、光学干渉性に優れた高品質のものを安定して提供することができる。また、本発明の細繊度光学干渉性繊維は、例えば長さの短いカットファイバーとすれば、塗料、インク、コーティング剤、化粧品等に利用する場合、分散性が良好となるだけでなく、得られる製品の表面平滑性が向上し、光学干渉機能も良好で審美性も良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる光学干渉性繊維の横断面形状を示す一概略図である。
【符号の説明】
1 保護層
2 交互積層体部

Claims (5)

  1. 高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP2)の比率(SP比)が0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲にある、互いに屈折率の異なるポリマー層が扁平断面の長軸方向に平行に交互に積層してなる交互積層体部を、厚さが0.1〜5.0μmの保護層で被覆してなる光学干渉性繊維であって、その繊度が4.0dtex以下である細繊度光学干渉性繊維。
  2. 交互積層体部における各ポリマー層の厚みが0.02〜0.5μmである請求項1記載の細繊度光学干渉性繊維。
  3. 繊維軸方向の繊維長が0.01〜50mmであるである請求項1または2記載の細繊度光学干渉性繊維。
  4. 高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP2)の比率(SP比)が0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲にある、互いに屈折率の異なるポリマー層が扁平断面の長軸方向に平行に交互に積層してなる交互積層体部と、該交互積層体部を被覆してなる保護層とから構成される未延伸繊維を、両ポリマーのガラス転移温度以上結晶化温度以下の加熱浴中、歪み速度10分−1以下の速度で5.0〜20.0倍にフロー延伸し、次いでネック延伸することを特徴とする請求項1記載の細繊度光学干渉性繊維の製造方法。
  5. 請求項3記載の細繊度光学干渉性繊維を構成成分として含む紙、塗料、インク、化粧品またはコーティング剤である光学干渉機能を有する製品。
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