JP2004353514A - 2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法とその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】水噴射量を多くするのが困難で、また、水噴射装置が、常に高温・高圧の燃焼ガス中に曝され信頼性を確保するのが難しい。
【解決手段】2ストロークディーゼル機関11のシリンダ7内で往復運動するピストン7が下降して掃気を開始する前又は掃気時に、ピストン7の上部に存在する膨張した高温の排気ガスGに向けてシリンダ1の側面から水Wを噴射して、ピストン上部に近い領域の排気ガスGを冷却する。このようにシリンダ内の排気ガスGを外に出さずに中で冷やして再使用することにより、排気ガス温度の低減と次行程で圧縮する空気中の酸素濃度を下げて、効果的なNOxの低減を図る。
【選択図】 図1
【解決手段】2ストロークディーゼル機関11のシリンダ7内で往復運動するピストン7が下降して掃気を開始する前又は掃気時に、ピストン7の上部に存在する膨張した高温の排気ガスGに向けてシリンダ1の側面から水Wを噴射して、ピストン上部に近い領域の排気ガスGを冷却する。このようにシリンダ内の排気ガスGを外に出さずに中で冷やして再使用することにより、排気ガス温度の低減と次行程で圧縮する空気中の酸素濃度を下げて、効果的なNOxの低減を図る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、車両や舶用等に使用される2ストロークディーゼル機関において、排気ガス中の窒素酸化物(以下、「NOx」という)を低減させる方法とその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両や船舶等の2ストロークディーゼル機関は、爆発、膨張するピストン下死点の前後で排気弁を開放し、同時に掃気ポートを開放することにより、燃焼した排気ガスの排出と空気の給気とを同時に行うような給排気の開閉タイミングで運転されている。
【0003】
また、この種の2ストロークディーゼル機関として、高効率の運転が可能なユニフロー掃気の2ストロークディーゼル機関を採用することがある。このユニフロー掃気は、シリンダヘッドに排気弁を設け、ピストンの下死点に近い位置のシリンダに掃気ポートを設け、ピストンが下がった時にこの掃気ポートからシリンダ内に吸込まれる給気で排気ガスをシリンダヘッドの排気弁から排出するように構成したものである。このユニフロー掃気の場合、ガスの流れが一方通行になるため、迅速な排気と空気の給気で高効率の運転を可能としている。
【0004】
一方、近年、環境保護の観点から、このような2ストロークディーゼル機関の排気ガス中のNOxを低減させようとする技術が多く提案されている。その方法として、例えば、排気ガスの一部をシリンダ内部に残留させ、掃気終了後の排気弁が閉じた状態で、シリンダヘッドに設けた水噴射弁からシリンダ内部に残留する排気ガスに水を噴射するものがある。図5は、このような2ストロークディーゼル機関におけるバルブタイミングと水噴射タイミングとの関係を示すタイムチャートであり、クランクシャフトの1回転毎に爆発して往復運動するピストンが、クランク角180度のピストン下死点からピストン上死点に至る間の排気・給気を行って空気を圧縮している行程の途中で水噴射を行い、残留した排気ガスの温度で水蒸気を発生させている。そのため、この方法によれば、残した排気ガスの温度で水蒸気を発生させて排気ガスを冷却することができ、この排気ガスと水蒸気と新たな空気との混合物は、空気のみと比較して酸素の含有量が少ないので、燃焼過程で発生するNOxを低減することができる、というものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、他の従来技術として、シリンダヘッドから水噴射する場合の水噴射ノズルの位置を工夫したもの(例えば、特許文献2参照。)や、燃焼・膨張行程における燃焼ガスの熱エネルギーを利用して水を水蒸気化することによりピストン出力に転化しようとするものがある(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−54843号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】
特開平9−112354号公報(第2頁、図1)
【特許文献3】
特開平7−224724号公報(第2頁、図4)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1では、シリンダ内に排気ガスが残留しているとはいえ、空気と混合した排気ガス温度は低下しており、水蒸気になりづらい。そのため水噴射量を多くしてNOxの大幅な低減を図ることはできない。
【0008】
また、水噴射装置が、高温・高圧に曝される燃焼室上部に設置されているので、高負荷の場合、常に高温・高圧の燃焼ガス中に曝される水噴射装置の信頼性を確保するのは難しい。前記特許文献2も同様である。しかも、これらは水噴射装置によってピストン上死点の圧力が高い位置で水を噴射するため、ピストン周囲のシリンダライナ上部摺動面に形成された潤滑油膜を水で損なう可能性がある。
【0009】
なお、前記特許文献3では、冷却損失を抑制することはできても、NOxを低減した運転を安定して継続することができるものではない。
【0010】
そこで、本願発明は、高負荷でも、近年の地球的な環境保護の観点から要望されている更なるNOxの低減が可能な、2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法とその装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願発明に係る2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法は、2ストロークディーゼル機関のシリンダ内で往復運動するピストンが下降して掃気を開始する前又は掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けてシリンダ側面から水を噴射して、ピストン上部に近い領域の排気ガスを冷却するようにしている。これにより、ピストンが下降して掃気を開始する前又は掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガス中またはピストン頂面に噴射された水が水蒸気となってピストン上部に近い領域の排気ガス温度を下げることができる。また、シリンダ内の排気ガスを外に出さずに中で冷やして再使用することにより、他の構成を要することなく、排気ガス温度の低減と次行程で圧縮する空気中の酸素濃度を下げて、効果的なNOxの低減を図ることができる。
【0012】
前記2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法において、前記水の噴射時期を、ピストン上死点から70度〜180度のクランク角の範囲とすれば、水の噴射はシリンダライナ(シリンダ)の下方となり、シリンダライナ上方に形成された重要性の高い潤滑油膜を水で損なうことなく排気ガスの温度を下げることができる。
【0013】
また、前記2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法において、前記水の噴射で冷却するピストン上部に近い排気ガスの領域を、ピストンの行程容積の1〜50%の範囲とすれば、排気行程終了時のシリンダ内に冷却された排出ガスを安定した量で残すことができる。
【0014】
さらに、2ストロークディーゼル機関のシリンダ内で往復運動するピストンが下降した掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けて掃気ポートから水を噴射して、ピストン上部に近い領域の排気ガスを冷却するようにすれば、ピストンが下降した掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガス中またはピストン頂面に噴射された水が水蒸気となってピストン上部に近い領域の排気ガス温度を下げることができる。このように、シリンダ内の排気ガスを外に出さずに中で冷やして再使用することにより、排気ガス温度の低減と次行程で圧縮する空気中の酸素濃度を下げて、効果的なNOxの低減を図ることができる。
【0015】
その上、前記いずれかの2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法において、前記掃気行程の全域でピストン上部に向けて水を噴射するようにすれば、水噴射量の調整や十分な水噴射量の供給により更なるNOxの低減を図ることができる。
【0016】
また、前記いずれかの2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法において、前記水に代えて蒸気を噴射するようにすれば、より短時間で気化させる必要がある使用条件において、迅速な排気ガスの冷却を行ってNOxを低減させることができる。
【0017】
一方、本願発明に係る2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置は、シリンダヘッドに設けた排気ガスを排出する排気弁と、シリンダに設けた空気を供給するための掃気ポートと、該シリンダの内部で往復運動するピストンと、前記シリンダの側面にシリンダ内部に向けて設けられた水噴射部材と、該水噴射部材で、前記ピストンが下降して掃気を開始する前又は掃気時のピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けて水を噴射する水供給装置とを備えている。これにより、シリンダに設けた掃気ポートから空気を供給してシリンダヘッドの排気弁から排出するように構成したユニフロー掃気の2ストロークディーゼル機関において、ピストンが下降して掃気を開始する前又は掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガス中またはピストン頂面に噴射された水が水蒸気となってピストン上部に近い領域の排気ガス温度を下げるので、排気ガス温度の低減と、次行程で圧縮する空気の酸素濃度を下げて、効率的なNOxの低減を図ることができる。
【0018】
また、前記2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置において、前記水供給装置を、機械式又は電気式もしくはそれらを組合わせた構成とし、該水供給装置に、ディーゼル機関運転中に前記水噴射部材からの噴射タイミングと噴射量とを調整する機能を具備させれば、ディーゼル機関の運転中に最適な水噴射タイミングと噴射量とに調整することができ、運転効率を維持しながらNOxの低減を図ることができる。
【0019】
さらに、前記2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置において、前記水噴射部材を、前記ピストンの中心軸に向けてシリンダの側面から均等に水を噴射する複数個の水噴射弁又は水噴射ノズルで構成すれば、複数個の水噴射弁又は水噴射ノズルによって、短時間で水を均等に噴射して水蒸気にすることができる。
【0020】
また、シリンダヘッドに設けた排気ガスを排出する排気弁と、シリンダに設けた空気を供給するための掃気ポートと、該シリンダの内部で往復運動するピストンと、前記掃気ポートからシリンダ内部に向けて水を噴射する水噴射部材と、該水噴射部材で、前記ピストンが下降して掃気ポートが開放した時にピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けてに水を噴射する水供給装置とを備え、シリンダに設けた掃気ポートから空気を供給してシリンダヘッドの排気弁から排出するように構成したユニフロー掃気の2ストロークディーゼル機関において、ピストンが下降して掃気を開始する前又は掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガス中またはピストン頂面に噴射された水が水蒸気となってピストン上部に近い領域の排気ガス温度を下げるので、排気ガス温度の低減と、次行程で圧縮する空気の酸素濃度を下げて、効率的なNOxの低減を図ることができる。
【0021】
しかも、前記いずれかの2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置において、前記水供給装置に、前記ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けて水を噴射する機能に加え、掃気行程の全域でピストン上部に向けて水を噴射する機能を具備させれば、掃気開始前又は掃気時の水噴射に加え、掃気行程の全域で更に微量の水噴射を行うことによって更なるNOxの低減を図ることができる。
【0022】
さらに、前記いずれかの2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置において、前記水供給装置に、水に代えて蒸気を噴射する機能を具備させれば、より短時間で気化させる必要がある使用条件において、迅速な排気ガスの冷却を行ってNOxを低減させることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本願発明の第1実施形態に係る2ストロークディーゼル機関を示す縦断面図であり、図2は同2ストロークディーゼル機関のバルブタイミングと水噴射タイミングとの関係を示すタイムチャートである。なお、図1は模式的に示している。
【0024】
図1に示すように、シリンダ1の上部にシリンダヘッド2が設けられ、このシリンダヘッド2に排気弁4が設けられている。6は排気口である。シリンダ1の下部には掃気ポート3が設けられており、掃気室5に供給された空気が掃気ポート3からシリンダ1の内部に供給されるように構成されている。シリンダ1の内部には、図の上下方向に往復運動するピストン7が設けられている。この2ストロークディーゼル機関11は、排気ガスを排出するための排気弁をシリンダヘッド2に設け、空気を供給するための掃気ポート3をシリンダ1の下部に有するユニフロー掃気の2ストロークディーゼル機関である。なお、実際にはシリンダ1内にシリンダライナが設けられるが、この明細書では、シリンダライナを含む構成をシリンダ1として示す。また、排気弁4の駆動機構、点火機構は省略されている。
【0025】
そして、シリンダ1の側部の掃気ポート3に近い上部位置には、ピストン7が下降して上部が掃気ポート3付近に位置した時に、ピストン上部の排気ガスGに向けて水Wを噴射する水噴射部材8が設けられている。この水噴射部材8は、図示する例では左右対称に設けられている。この水噴射部材8の数は限定されるものではなく、ピストン7が下降して掃気を開始する前又は掃気の時に、ピストン7の上部の排気ガスGに向けて効率良く水Wを噴射できる数と配置であればよい。なお、水噴射部材8の好ましい配置としては、ピストン7の中心部に向けて均等に水Wを噴射できるような配置がよい。また、水噴射部材8の配置として、シリンダ1内では低圧、低温となるピストン7が下降して掃気ポート3が開く前のシリンダ側面としている。図示する例では、ピストン7が下降して掃気が開始される前にピストン上部の排気ガスGに水Wを噴射する例を示しており、二点鎖線で示すピストン上部に近い領域V2の排気ガスGを冷却している。
【0026】
しかも、ピストン7が下降して掃気を開始する前は、シリンダ1内では低圧、低温であるが、大気と比較すれば高圧、高温であるため、噴射された水は瞬間的に蒸発して排気ガスGの温度を下げることができる。
【0027】
また、この実施形態では、水を噴射する時期として、掃気が開始される前に水を噴射する例を示しているが、この水Wを噴射する時期としては、クランク角がピストン上死点から70度〜180度の範囲であれば、水の噴射はシリンダ1の下方となり、シリンダ1の上方に形成された重要性の高い潤滑油膜を水で損なうことなく排気ガスGの温度を下げることができる。この水を噴射する時期としては、クランク角がピストン上死点から90度〜160度の範囲が好ましい。
【0028】
さらに、この例では、水Wの噴射で冷却するピストン上部に近い排気ガスGの領域を、ピストン7の全行程容積V1の約20〜25%の容積V2としている。この水Wの噴射で冷却するピストン上部の排気ガスGの領域としては、ピストン7の行程容積の1〜50%の容積、好ましくは10〜30%の容積とすれば、排気行程終了時のシリンダ1内に冷却された排気ガスGを安定して残すことができる。前記容積V2は、ディーゼル機関の排気量や出力、NOx低減率に応じて決定すればよい。
【0029】
一方、前記水噴射部材8は、供給管9によって水供給装置10と接続されている。この水供給装置10によって水噴射部材8に水が供給される。水供給装置10としては、例えば、機械式(カム駆動式ポンプ)、または電気式(電磁弁付の水噴射弁)、もしくはそれらの組合わせによって構成することができ、運転中に噴射タイミング及び噴射量の調整を行うことが可能なように構成されている。この水供給装置10は、ディーゼル機関11を制御する図示しない制御装置と接続されており、ピストン7の位置や給気弁3、排気弁4の開閉タイミングと連動するように構成されている。
【0030】
したがって、水供給装置10による水Wの噴射タイミング及び噴射量の調整は、変化するディーゼル機関の運転条件に応じた制御装置からの信号により、運転効率を保ちながらNOxの低減を図ることができる最適な噴射タイミングと噴射量とに調整される。このように連動させて制御する機能は、コンピュータ等によって実現することができる。
【0031】
図2に示すように、このような2ストロークディーゼル機関のバルブタイミングと水噴射タイミングとしては、例えば、クランクシャフトの回転角が0度のピストン上死点から爆発・膨張によって下降するピストン7が、ピストン上死点から約100度のクランク角で排気弁4が開き始め、その後、約120度のクランク角で掃気ポート3が開き始め、この掃気ポート3から流入した空気で排気を押出すように構成される。
【0032】
そして、この実施形態における水噴射タイミングは、ピストン7が下降して掃気ポート3が開く前後のクランク角が約90度〜160度の間に、水噴射部材8からピストン上部の領域の排気ガスGに向けて水Wが噴射される。この例では排気ガスGに向けて水Wを噴射しているが、ピストン7の頂面に向けて噴射するようにしてもよい。この場合も水の噴射はシリンダ1の下方となり、シリンダ1の上方に形成された重要性の高い潤滑油膜を水で損なうことなく排気ガスGの温度を下げることができる。しかも、燃焼後の高温の排気ガスGに水Wを噴射するので、噴射した水Wは気化し易く、ピストン上部の排気ガスGを効率良く冷却することができる。
【0033】
また、このように水Wを噴射して冷却する排気ガスGの領域としては、ピストン7の行程容積V1の1〜50%の範囲で、ピストン7の上部に近い排気ガスの領域が冷却されている。この例では、冷却する容積として、ピストン7の行程容積V1の10〜30%が冷却される。
【0034】
その後、水噴射が止められ、ピストン7は下死点を経て上昇しながら掃気ポート3を閉じ、排気弁4が閉じられて、圧縮、点火、燃焼、排気が繰り返される。
【0035】
このようにしてシリンダ内に残される排気ガスGが混ざった空気としては、前記したようにしてピストン7の上部の冷却された排気ガスGが、掃気時に供給される空気と混ざって排気弁4側へと排出されるので、排気弁4からは上部の排気ガスGから排出されて、ピストン7の上部に近い領域V2の冷却された排気ガスGと混ざった空気を効率良くシリンダ1内に残すことができる。つまり、ピストン7の上部の冷却した排気ガスGで排気弁4側の排気ガスGを押出し、冷却した排気ガスGの部分が最後に残るようにしている。
【0036】
そのため、このようにしてシリンダ1内に残した排気ガスGとの混合物は、冷却された排気ガスGが新たな空気に混ざっているので、新たな空気のみに比べて酸素の含有量が少なく、また温度を比較的低くできるため、後の燃焼過程で発生するNOxを大幅に低減することができる。
【0037】
図3は本願発明の第2実施形態に係る2ストロークディーゼル機関を示す縦断面図であり、図4は同2ストロークディーゼル機関のバルブタイミングと水噴射タイミングとの関係を示すタイムチャートである。なお、図3は模式的に示している。また、上述した第1実施形態と同一の構成には、同一符号を付して説明する。
【0038】
図3に示すように、シリンダ1の上部にシリンダヘッド2が設けられ、このシリンダヘッド2に排気弁4が設けられている。6は排気口である。シリンダ1の下部には掃気ポート3が設けられており、掃気室5に供給された空気が掃気ポート3からシリンダ1の内部に供給されるように構成されている。シリンダ1の内部には、図の上下方向に往復運動するピストン7が設けられている。この2ストロークディーゼル機関13は、排気ガスを排出するための排気弁をシリンダヘッド2に有し、空気を供給するための掃気ポート3をシリンダ1の下部に有するユニフロー掃気の2ストロークディーゼル機関である。なお、実際にはシリンダ1内にシリンダライナが設けられるが、この明細書では、シリンダライナを含む構成をシリンダ1として示す。また、排気弁4の駆動機構、点火機構は省略されている。
【0039】
そして、掃気ポート3には、ピストン7が下降して掃気ポート3が開いた時に、ピストン上部の排気ガスGに向けて水Wを噴射する水噴射部材12が設けられている。この水噴射部材12は、図示する例では左右対称に設けられている。この水噴射部材12の数は限定されるものではなく、ピストン7が下降して掃気する時に、ピストン7の上部の排気ガスG又はピストン頂面に向けて効率良く水Wを噴射できる数と配置であればよい。この水噴射部材12の好ましい配置としては、ピストン7の中心軸、すなわちシリンダ1の中心部に向けて均等に水Wを噴射できるような配置にすれば、シリンダ1内にほぼ均等に水噴射して排気ガスGをほぼ均等に冷却できるのでよい。また、水噴射部材12の配置として、シリンダ1内では低圧、低温となるピストン7が下降した掃気時の掃気ポート3としている。図示する例では、ピストン7が下降して掃気が開始された時にピストン上部の排気ガスGに水Wを噴射する例を示しており、二点鎖線で示すピストン上部に近い領域V2の排気ガスGを冷却している。
【0040】
しかも、ピストン7が下降して掃気を開始する時の排気ガスGは、シリンダ1内では低圧、低温であるが、大気と比較すれば高圧、高温であるため、噴射された水は瞬間的に蒸発して排気ガスGの温度を下げることができる。
【0041】
また、この実施形態では、水を噴射する時期として、掃気が開始された時に水を噴射する例を示しているが、クランクシャフトの回転角がピストン上死点から約120度〜180度の範囲であれば、水の噴射はシリンダ1の下方となり、シリンダ1の上方に形成された重要性の高い潤滑油膜を水で損なうことなく排気ガスGの温度を下げることができる。この水Wを噴射する時期としては、ディーゼル機関の排気量や出力、NOx低減率に応じて、掃気ポート3が開いている間で設定すればよい。
【0042】
さらに、この例では、水Wの噴射で冷却するピストン上部に近い排気ガスGの領域を、ピストン7の全行程容積V1の約20〜25%の容積V2としている。この水Wの噴射で冷却するピストン上部の排気ガスGの領域としては、ピストン7の行程容積の1〜50%の容積、好ましくは10〜30%の容積とすれば、排気行程終了時のシリンダ1内に冷却された排気ガスGを安定して残すことができる。前記容積V2は、ディーゼル機関の排気量や出力、NOx低減率に応じて決定すればよい。
【0043】
一方、前記水噴射部材12は、供給管9によって水供給装置10と接続されている。この水供給装置10によって水噴射部材12に水が供給される。水供給装置10としては、例えば、機械式(カム駆動式ポンプ)、または電気式(電磁弁付の水噴射弁)、もしくはそれらの組合わせによって構成することができ、運転中に噴射タイミング及び噴射量の調整を行うことが可能なように構成されている。この水供給装置10は、ディーゼル機関11を制御する図示しない制御装置と接続されており、ピストン7の位置や掃気ポート3、排気弁4の開閉タイミングと連動するように構成されている。
【0044】
したがって、水供給装置10による水Wの噴射タイミング及び噴射量の調整は、変化するディーゼル機関の運転条件に応じた制御装置からの信号により、運転効率を保ちながらNOxの低減を図ることができる最適な噴射タイミングと噴射量とに調整される。このように連動させて制御する機能は、コンピュータ等によって実現することができる。
【0045】
図4に示すように、このような2ストロークディーゼル機関のバルブタイミングと水噴射タイミングとしては、例えば、クランクシャフトの回転角が0度のピストン上死点から爆発・膨張によって下降するピストン7が、ピストン上死点から約100度のクランク角で排気弁4が開き始め、その後、約120度のクランク角で掃気ポート3が開き始め、この掃気ポート3から流入した空気で排気を押出すように構成される。
【0046】
そして、この実施形態における水噴射タイミングは、ピストン7が下降して掃気ポート3が開いた時のクランクシャフト回転角が約120度〜180度の間に、水噴射部材12からピストン上部の領域の排気ガスGに向けて水Wが噴射される。この例では排気ガスGに向けて水Wを噴射しているが、ピストン7の頂面に向けて噴射するようにしてもよい。この水Wの噴射時期は、掃気ポート3が開いている間の好ましいタイミングに設定される。この場合も水の噴射はシリンダ1の下方となり、シリンダ1の上方に形成された重要性の高い潤滑油膜を水で損なうことなく排気ガスGの温度を下げることができる。しかも、燃焼後の高温の排気ガスGに水Wを噴射するので、噴射した水Wは気化し易く、ピストン上部の排気ガスGを効率良く冷却することができる。
【0047】
また、このように水Wを噴射して冷却する排気ガスGの領域としては、ピストン7の行程容積V1の1〜50%の範囲で、ピストン7の上部に近い排気ガスの領域が冷却されている。この例では、冷却する容積として、ピストン7の行程容積V1の10〜30%が冷却される。
【0048】
その後、水噴射が止められ、ピストン7は下死点を経て上昇しながら掃気ポート3を閉じ、排気弁4が閉じられて、圧縮・点火・燃焼、排気が繰り返される。
【0049】
このようにしてシリンダ内に残される排気ガスGが混ざった空気としては、前記したようにしてピストン7の上部の冷却された排気ガスGが、掃気時に供給される空気と混ざって排気弁4側へと排出されるので、排気弁4からは上部の排気ガスGから排出されて、ピストン7の上部に近い領域V2の冷却された排気ガスGと混ざった空気を効率良くシリンダ1内に残すことができる。つまり、ピストン7の上部の冷却した排気ガスGで排気弁4側の排気ガスGを押出し、冷却した排気ガスGの部分が最後に残るようにしている。
【0050】
そのため、このようにしてシリンダ1内に残した排気ガスGとの混合物は、冷却された排気ガスGが新たな空気に混ざっているので、新たな空気のみに比べて酸素の含有量が少なく、また温度を比較的低くできるため、後の燃焼過程で発生するNOxを大幅に低減することができる。
【0051】
このように、本願発明では、多くの構成を要することなく、シリンダ1内の排気ガスを外に出さずに中で冷やして効果的に再使用する、内部クール排気再循環方式で、排気ガス温度の低減と次行程で圧縮する空気中の酸素濃度を下げて、更なるNOxの低減を安定して図ることができる。
【0052】
また、冷却した排気ガスGによって空気との混合物の温度を低くすることができるので、ピストン7等の燃焼室の構成を冷却して燃焼面温度を低くすることもできる。
【0053】
なお、前記いずれの実施形態も、それぞれの実施の形態における水の噴射に加え、掃気ポート3が開いている掃気行程の全域で行うことにより、水噴射量を増加して更なるNOxの低減の増加を図ることもできる。この水噴射量は、水供給装置10によって調整することができ、燃焼条件等に応じて調整される。
【0054】
また、前記水の代わりに蒸気を噴射するようにすれば、より短時間で気化させる必要がある使用条件において、NOxを安定して低減させることができる。この場合、水供給装置10に蒸気供給機能が追加される。
【0055】
さらに、上述した実施形態は一実施形態であり、本願発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本願発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0056】
【発明の効果】
本願発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載するような効果を奏する。
【0057】
シリンダ内の排気ガスを外に出さずに中で冷やして再使用することにより、高負荷でも排気ガス温度の低減と次行程で圧縮する空気中の酸素濃度を下げて、安定した更なる窒素酸化物の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の第1実施形態に係る2ストロークディーゼル機関を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す2ストロークディーゼル機関のバルブタイミングと水噴射タイミングとの関係を示すタイムチャートである。
【図3】本願発明の第2実施形態に係る2ストロークディーゼル機関を示す縦断面図である。
【図4】図3に示す2ストロークディーゼル機関のバルブタイミングと水噴射タイミングとの関係を示すタイムチャートである。
【図5】従来の2ストロークディーゼル機関における、バルブタイミングと水噴射タイミングとの関係を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1…シリンダ
2…シリンダヘッド
3…掃気ポート
4…排気弁
5…掃気室
6…排気口
7…ピストン
8…水噴射部材
9…供給管
10…水供給装置
11…2ストロークディーゼル機関
12…水噴射部材
13…2ストロークディーゼル機関
G…排気ガス
W…水
V1,V2…容積
【発明の属する技術分野】
本願発明は、車両や舶用等に使用される2ストロークディーゼル機関において、排気ガス中の窒素酸化物(以下、「NOx」という)を低減させる方法とその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両や船舶等の2ストロークディーゼル機関は、爆発、膨張するピストン下死点の前後で排気弁を開放し、同時に掃気ポートを開放することにより、燃焼した排気ガスの排出と空気の給気とを同時に行うような給排気の開閉タイミングで運転されている。
【0003】
また、この種の2ストロークディーゼル機関として、高効率の運転が可能なユニフロー掃気の2ストロークディーゼル機関を採用することがある。このユニフロー掃気は、シリンダヘッドに排気弁を設け、ピストンの下死点に近い位置のシリンダに掃気ポートを設け、ピストンが下がった時にこの掃気ポートからシリンダ内に吸込まれる給気で排気ガスをシリンダヘッドの排気弁から排出するように構成したものである。このユニフロー掃気の場合、ガスの流れが一方通行になるため、迅速な排気と空気の給気で高効率の運転を可能としている。
【0004】
一方、近年、環境保護の観点から、このような2ストロークディーゼル機関の排気ガス中のNOxを低減させようとする技術が多く提案されている。その方法として、例えば、排気ガスの一部をシリンダ内部に残留させ、掃気終了後の排気弁が閉じた状態で、シリンダヘッドに設けた水噴射弁からシリンダ内部に残留する排気ガスに水を噴射するものがある。図5は、このような2ストロークディーゼル機関におけるバルブタイミングと水噴射タイミングとの関係を示すタイムチャートであり、クランクシャフトの1回転毎に爆発して往復運動するピストンが、クランク角180度のピストン下死点からピストン上死点に至る間の排気・給気を行って空気を圧縮している行程の途中で水噴射を行い、残留した排気ガスの温度で水蒸気を発生させている。そのため、この方法によれば、残した排気ガスの温度で水蒸気を発生させて排気ガスを冷却することができ、この排気ガスと水蒸気と新たな空気との混合物は、空気のみと比較して酸素の含有量が少ないので、燃焼過程で発生するNOxを低減することができる、というものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、他の従来技術として、シリンダヘッドから水噴射する場合の水噴射ノズルの位置を工夫したもの(例えば、特許文献2参照。)や、燃焼・膨張行程における燃焼ガスの熱エネルギーを利用して水を水蒸気化することによりピストン出力に転化しようとするものがある(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−54843号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】
特開平9−112354号公報(第2頁、図1)
【特許文献3】
特開平7−224724号公報(第2頁、図4)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1では、シリンダ内に排気ガスが残留しているとはいえ、空気と混合した排気ガス温度は低下しており、水蒸気になりづらい。そのため水噴射量を多くしてNOxの大幅な低減を図ることはできない。
【0008】
また、水噴射装置が、高温・高圧に曝される燃焼室上部に設置されているので、高負荷の場合、常に高温・高圧の燃焼ガス中に曝される水噴射装置の信頼性を確保するのは難しい。前記特許文献2も同様である。しかも、これらは水噴射装置によってピストン上死点の圧力が高い位置で水を噴射するため、ピストン周囲のシリンダライナ上部摺動面に形成された潤滑油膜を水で損なう可能性がある。
【0009】
なお、前記特許文献3では、冷却損失を抑制することはできても、NOxを低減した運転を安定して継続することができるものではない。
【0010】
そこで、本願発明は、高負荷でも、近年の地球的な環境保護の観点から要望されている更なるNOxの低減が可能な、2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法とその装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願発明に係る2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法は、2ストロークディーゼル機関のシリンダ内で往復運動するピストンが下降して掃気を開始する前又は掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けてシリンダ側面から水を噴射して、ピストン上部に近い領域の排気ガスを冷却するようにしている。これにより、ピストンが下降して掃気を開始する前又は掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガス中またはピストン頂面に噴射された水が水蒸気となってピストン上部に近い領域の排気ガス温度を下げることができる。また、シリンダ内の排気ガスを外に出さずに中で冷やして再使用することにより、他の構成を要することなく、排気ガス温度の低減と次行程で圧縮する空気中の酸素濃度を下げて、効果的なNOxの低減を図ることができる。
【0012】
前記2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法において、前記水の噴射時期を、ピストン上死点から70度〜180度のクランク角の範囲とすれば、水の噴射はシリンダライナ(シリンダ)の下方となり、シリンダライナ上方に形成された重要性の高い潤滑油膜を水で損なうことなく排気ガスの温度を下げることができる。
【0013】
また、前記2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法において、前記水の噴射で冷却するピストン上部に近い排気ガスの領域を、ピストンの行程容積の1〜50%の範囲とすれば、排気行程終了時のシリンダ内に冷却された排出ガスを安定した量で残すことができる。
【0014】
さらに、2ストロークディーゼル機関のシリンダ内で往復運動するピストンが下降した掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けて掃気ポートから水を噴射して、ピストン上部に近い領域の排気ガスを冷却するようにすれば、ピストンが下降した掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガス中またはピストン頂面に噴射された水が水蒸気となってピストン上部に近い領域の排気ガス温度を下げることができる。このように、シリンダ内の排気ガスを外に出さずに中で冷やして再使用することにより、排気ガス温度の低減と次行程で圧縮する空気中の酸素濃度を下げて、効果的なNOxの低減を図ることができる。
【0015】
その上、前記いずれかの2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法において、前記掃気行程の全域でピストン上部に向けて水を噴射するようにすれば、水噴射量の調整や十分な水噴射量の供給により更なるNOxの低減を図ることができる。
【0016】
また、前記いずれかの2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法において、前記水に代えて蒸気を噴射するようにすれば、より短時間で気化させる必要がある使用条件において、迅速な排気ガスの冷却を行ってNOxを低減させることができる。
【0017】
一方、本願発明に係る2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置は、シリンダヘッドに設けた排気ガスを排出する排気弁と、シリンダに設けた空気を供給するための掃気ポートと、該シリンダの内部で往復運動するピストンと、前記シリンダの側面にシリンダ内部に向けて設けられた水噴射部材と、該水噴射部材で、前記ピストンが下降して掃気を開始する前又は掃気時のピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けて水を噴射する水供給装置とを備えている。これにより、シリンダに設けた掃気ポートから空気を供給してシリンダヘッドの排気弁から排出するように構成したユニフロー掃気の2ストロークディーゼル機関において、ピストンが下降して掃気を開始する前又は掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガス中またはピストン頂面に噴射された水が水蒸気となってピストン上部に近い領域の排気ガス温度を下げるので、排気ガス温度の低減と、次行程で圧縮する空気の酸素濃度を下げて、効率的なNOxの低減を図ることができる。
【0018】
また、前記2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置において、前記水供給装置を、機械式又は電気式もしくはそれらを組合わせた構成とし、該水供給装置に、ディーゼル機関運転中に前記水噴射部材からの噴射タイミングと噴射量とを調整する機能を具備させれば、ディーゼル機関の運転中に最適な水噴射タイミングと噴射量とに調整することができ、運転効率を維持しながらNOxの低減を図ることができる。
【0019】
さらに、前記2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置において、前記水噴射部材を、前記ピストンの中心軸に向けてシリンダの側面から均等に水を噴射する複数個の水噴射弁又は水噴射ノズルで構成すれば、複数個の水噴射弁又は水噴射ノズルによって、短時間で水を均等に噴射して水蒸気にすることができる。
【0020】
また、シリンダヘッドに設けた排気ガスを排出する排気弁と、シリンダに設けた空気を供給するための掃気ポートと、該シリンダの内部で往復運動するピストンと、前記掃気ポートからシリンダ内部に向けて水を噴射する水噴射部材と、該水噴射部材で、前記ピストンが下降して掃気ポートが開放した時にピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けてに水を噴射する水供給装置とを備え、シリンダに設けた掃気ポートから空気を供給してシリンダヘッドの排気弁から排出するように構成したユニフロー掃気の2ストロークディーゼル機関において、ピストンが下降して掃気を開始する前又は掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガス中またはピストン頂面に噴射された水が水蒸気となってピストン上部に近い領域の排気ガス温度を下げるので、排気ガス温度の低減と、次行程で圧縮する空気の酸素濃度を下げて、効率的なNOxの低減を図ることができる。
【0021】
しかも、前記いずれかの2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置において、前記水供給装置に、前記ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けて水を噴射する機能に加え、掃気行程の全域でピストン上部に向けて水を噴射する機能を具備させれば、掃気開始前又は掃気時の水噴射に加え、掃気行程の全域で更に微量の水噴射を行うことによって更なるNOxの低減を図ることができる。
【0022】
さらに、前記いずれかの2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置において、前記水供給装置に、水に代えて蒸気を噴射する機能を具備させれば、より短時間で気化させる必要がある使用条件において、迅速な排気ガスの冷却を行ってNOxを低減させることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本願発明の第1実施形態に係る2ストロークディーゼル機関を示す縦断面図であり、図2は同2ストロークディーゼル機関のバルブタイミングと水噴射タイミングとの関係を示すタイムチャートである。なお、図1は模式的に示している。
【0024】
図1に示すように、シリンダ1の上部にシリンダヘッド2が設けられ、このシリンダヘッド2に排気弁4が設けられている。6は排気口である。シリンダ1の下部には掃気ポート3が設けられており、掃気室5に供給された空気が掃気ポート3からシリンダ1の内部に供給されるように構成されている。シリンダ1の内部には、図の上下方向に往復運動するピストン7が設けられている。この2ストロークディーゼル機関11は、排気ガスを排出するための排気弁をシリンダヘッド2に設け、空気を供給するための掃気ポート3をシリンダ1の下部に有するユニフロー掃気の2ストロークディーゼル機関である。なお、実際にはシリンダ1内にシリンダライナが設けられるが、この明細書では、シリンダライナを含む構成をシリンダ1として示す。また、排気弁4の駆動機構、点火機構は省略されている。
【0025】
そして、シリンダ1の側部の掃気ポート3に近い上部位置には、ピストン7が下降して上部が掃気ポート3付近に位置した時に、ピストン上部の排気ガスGに向けて水Wを噴射する水噴射部材8が設けられている。この水噴射部材8は、図示する例では左右対称に設けられている。この水噴射部材8の数は限定されるものではなく、ピストン7が下降して掃気を開始する前又は掃気の時に、ピストン7の上部の排気ガスGに向けて効率良く水Wを噴射できる数と配置であればよい。なお、水噴射部材8の好ましい配置としては、ピストン7の中心部に向けて均等に水Wを噴射できるような配置がよい。また、水噴射部材8の配置として、シリンダ1内では低圧、低温となるピストン7が下降して掃気ポート3が開く前のシリンダ側面としている。図示する例では、ピストン7が下降して掃気が開始される前にピストン上部の排気ガスGに水Wを噴射する例を示しており、二点鎖線で示すピストン上部に近い領域V2の排気ガスGを冷却している。
【0026】
しかも、ピストン7が下降して掃気を開始する前は、シリンダ1内では低圧、低温であるが、大気と比較すれば高圧、高温であるため、噴射された水は瞬間的に蒸発して排気ガスGの温度を下げることができる。
【0027】
また、この実施形態では、水を噴射する時期として、掃気が開始される前に水を噴射する例を示しているが、この水Wを噴射する時期としては、クランク角がピストン上死点から70度〜180度の範囲であれば、水の噴射はシリンダ1の下方となり、シリンダ1の上方に形成された重要性の高い潤滑油膜を水で損なうことなく排気ガスGの温度を下げることができる。この水を噴射する時期としては、クランク角がピストン上死点から90度〜160度の範囲が好ましい。
【0028】
さらに、この例では、水Wの噴射で冷却するピストン上部に近い排気ガスGの領域を、ピストン7の全行程容積V1の約20〜25%の容積V2としている。この水Wの噴射で冷却するピストン上部の排気ガスGの領域としては、ピストン7の行程容積の1〜50%の容積、好ましくは10〜30%の容積とすれば、排気行程終了時のシリンダ1内に冷却された排気ガスGを安定して残すことができる。前記容積V2は、ディーゼル機関の排気量や出力、NOx低減率に応じて決定すればよい。
【0029】
一方、前記水噴射部材8は、供給管9によって水供給装置10と接続されている。この水供給装置10によって水噴射部材8に水が供給される。水供給装置10としては、例えば、機械式(カム駆動式ポンプ)、または電気式(電磁弁付の水噴射弁)、もしくはそれらの組合わせによって構成することができ、運転中に噴射タイミング及び噴射量の調整を行うことが可能なように構成されている。この水供給装置10は、ディーゼル機関11を制御する図示しない制御装置と接続されており、ピストン7の位置や給気弁3、排気弁4の開閉タイミングと連動するように構成されている。
【0030】
したがって、水供給装置10による水Wの噴射タイミング及び噴射量の調整は、変化するディーゼル機関の運転条件に応じた制御装置からの信号により、運転効率を保ちながらNOxの低減を図ることができる最適な噴射タイミングと噴射量とに調整される。このように連動させて制御する機能は、コンピュータ等によって実現することができる。
【0031】
図2に示すように、このような2ストロークディーゼル機関のバルブタイミングと水噴射タイミングとしては、例えば、クランクシャフトの回転角が0度のピストン上死点から爆発・膨張によって下降するピストン7が、ピストン上死点から約100度のクランク角で排気弁4が開き始め、その後、約120度のクランク角で掃気ポート3が開き始め、この掃気ポート3から流入した空気で排気を押出すように構成される。
【0032】
そして、この実施形態における水噴射タイミングは、ピストン7が下降して掃気ポート3が開く前後のクランク角が約90度〜160度の間に、水噴射部材8からピストン上部の領域の排気ガスGに向けて水Wが噴射される。この例では排気ガスGに向けて水Wを噴射しているが、ピストン7の頂面に向けて噴射するようにしてもよい。この場合も水の噴射はシリンダ1の下方となり、シリンダ1の上方に形成された重要性の高い潤滑油膜を水で損なうことなく排気ガスGの温度を下げることができる。しかも、燃焼後の高温の排気ガスGに水Wを噴射するので、噴射した水Wは気化し易く、ピストン上部の排気ガスGを効率良く冷却することができる。
【0033】
また、このように水Wを噴射して冷却する排気ガスGの領域としては、ピストン7の行程容積V1の1〜50%の範囲で、ピストン7の上部に近い排気ガスの領域が冷却されている。この例では、冷却する容積として、ピストン7の行程容積V1の10〜30%が冷却される。
【0034】
その後、水噴射が止められ、ピストン7は下死点を経て上昇しながら掃気ポート3を閉じ、排気弁4が閉じられて、圧縮、点火、燃焼、排気が繰り返される。
【0035】
このようにしてシリンダ内に残される排気ガスGが混ざった空気としては、前記したようにしてピストン7の上部の冷却された排気ガスGが、掃気時に供給される空気と混ざって排気弁4側へと排出されるので、排気弁4からは上部の排気ガスGから排出されて、ピストン7の上部に近い領域V2の冷却された排気ガスGと混ざった空気を効率良くシリンダ1内に残すことができる。つまり、ピストン7の上部の冷却した排気ガスGで排気弁4側の排気ガスGを押出し、冷却した排気ガスGの部分が最後に残るようにしている。
【0036】
そのため、このようにしてシリンダ1内に残した排気ガスGとの混合物は、冷却された排気ガスGが新たな空気に混ざっているので、新たな空気のみに比べて酸素の含有量が少なく、また温度を比較的低くできるため、後の燃焼過程で発生するNOxを大幅に低減することができる。
【0037】
図3は本願発明の第2実施形態に係る2ストロークディーゼル機関を示す縦断面図であり、図4は同2ストロークディーゼル機関のバルブタイミングと水噴射タイミングとの関係を示すタイムチャートである。なお、図3は模式的に示している。また、上述した第1実施形態と同一の構成には、同一符号を付して説明する。
【0038】
図3に示すように、シリンダ1の上部にシリンダヘッド2が設けられ、このシリンダヘッド2に排気弁4が設けられている。6は排気口である。シリンダ1の下部には掃気ポート3が設けられており、掃気室5に供給された空気が掃気ポート3からシリンダ1の内部に供給されるように構成されている。シリンダ1の内部には、図の上下方向に往復運動するピストン7が設けられている。この2ストロークディーゼル機関13は、排気ガスを排出するための排気弁をシリンダヘッド2に有し、空気を供給するための掃気ポート3をシリンダ1の下部に有するユニフロー掃気の2ストロークディーゼル機関である。なお、実際にはシリンダ1内にシリンダライナが設けられるが、この明細書では、シリンダライナを含む構成をシリンダ1として示す。また、排気弁4の駆動機構、点火機構は省略されている。
【0039】
そして、掃気ポート3には、ピストン7が下降して掃気ポート3が開いた時に、ピストン上部の排気ガスGに向けて水Wを噴射する水噴射部材12が設けられている。この水噴射部材12は、図示する例では左右対称に設けられている。この水噴射部材12の数は限定されるものではなく、ピストン7が下降して掃気する時に、ピストン7の上部の排気ガスG又はピストン頂面に向けて効率良く水Wを噴射できる数と配置であればよい。この水噴射部材12の好ましい配置としては、ピストン7の中心軸、すなわちシリンダ1の中心部に向けて均等に水Wを噴射できるような配置にすれば、シリンダ1内にほぼ均等に水噴射して排気ガスGをほぼ均等に冷却できるのでよい。また、水噴射部材12の配置として、シリンダ1内では低圧、低温となるピストン7が下降した掃気時の掃気ポート3としている。図示する例では、ピストン7が下降して掃気が開始された時にピストン上部の排気ガスGに水Wを噴射する例を示しており、二点鎖線で示すピストン上部に近い領域V2の排気ガスGを冷却している。
【0040】
しかも、ピストン7が下降して掃気を開始する時の排気ガスGは、シリンダ1内では低圧、低温であるが、大気と比較すれば高圧、高温であるため、噴射された水は瞬間的に蒸発して排気ガスGの温度を下げることができる。
【0041】
また、この実施形態では、水を噴射する時期として、掃気が開始された時に水を噴射する例を示しているが、クランクシャフトの回転角がピストン上死点から約120度〜180度の範囲であれば、水の噴射はシリンダ1の下方となり、シリンダ1の上方に形成された重要性の高い潤滑油膜を水で損なうことなく排気ガスGの温度を下げることができる。この水Wを噴射する時期としては、ディーゼル機関の排気量や出力、NOx低減率に応じて、掃気ポート3が開いている間で設定すればよい。
【0042】
さらに、この例では、水Wの噴射で冷却するピストン上部に近い排気ガスGの領域を、ピストン7の全行程容積V1の約20〜25%の容積V2としている。この水Wの噴射で冷却するピストン上部の排気ガスGの領域としては、ピストン7の行程容積の1〜50%の容積、好ましくは10〜30%の容積とすれば、排気行程終了時のシリンダ1内に冷却された排気ガスGを安定して残すことができる。前記容積V2は、ディーゼル機関の排気量や出力、NOx低減率に応じて決定すればよい。
【0043】
一方、前記水噴射部材12は、供給管9によって水供給装置10と接続されている。この水供給装置10によって水噴射部材12に水が供給される。水供給装置10としては、例えば、機械式(カム駆動式ポンプ)、または電気式(電磁弁付の水噴射弁)、もしくはそれらの組合わせによって構成することができ、運転中に噴射タイミング及び噴射量の調整を行うことが可能なように構成されている。この水供給装置10は、ディーゼル機関11を制御する図示しない制御装置と接続されており、ピストン7の位置や掃気ポート3、排気弁4の開閉タイミングと連動するように構成されている。
【0044】
したがって、水供給装置10による水Wの噴射タイミング及び噴射量の調整は、変化するディーゼル機関の運転条件に応じた制御装置からの信号により、運転効率を保ちながらNOxの低減を図ることができる最適な噴射タイミングと噴射量とに調整される。このように連動させて制御する機能は、コンピュータ等によって実現することができる。
【0045】
図4に示すように、このような2ストロークディーゼル機関のバルブタイミングと水噴射タイミングとしては、例えば、クランクシャフトの回転角が0度のピストン上死点から爆発・膨張によって下降するピストン7が、ピストン上死点から約100度のクランク角で排気弁4が開き始め、その後、約120度のクランク角で掃気ポート3が開き始め、この掃気ポート3から流入した空気で排気を押出すように構成される。
【0046】
そして、この実施形態における水噴射タイミングは、ピストン7が下降して掃気ポート3が開いた時のクランクシャフト回転角が約120度〜180度の間に、水噴射部材12からピストン上部の領域の排気ガスGに向けて水Wが噴射される。この例では排気ガスGに向けて水Wを噴射しているが、ピストン7の頂面に向けて噴射するようにしてもよい。この水Wの噴射時期は、掃気ポート3が開いている間の好ましいタイミングに設定される。この場合も水の噴射はシリンダ1の下方となり、シリンダ1の上方に形成された重要性の高い潤滑油膜を水で損なうことなく排気ガスGの温度を下げることができる。しかも、燃焼後の高温の排気ガスGに水Wを噴射するので、噴射した水Wは気化し易く、ピストン上部の排気ガスGを効率良く冷却することができる。
【0047】
また、このように水Wを噴射して冷却する排気ガスGの領域としては、ピストン7の行程容積V1の1〜50%の範囲で、ピストン7の上部に近い排気ガスの領域が冷却されている。この例では、冷却する容積として、ピストン7の行程容積V1の10〜30%が冷却される。
【0048】
その後、水噴射が止められ、ピストン7は下死点を経て上昇しながら掃気ポート3を閉じ、排気弁4が閉じられて、圧縮・点火・燃焼、排気が繰り返される。
【0049】
このようにしてシリンダ内に残される排気ガスGが混ざった空気としては、前記したようにしてピストン7の上部の冷却された排気ガスGが、掃気時に供給される空気と混ざって排気弁4側へと排出されるので、排気弁4からは上部の排気ガスGから排出されて、ピストン7の上部に近い領域V2の冷却された排気ガスGと混ざった空気を効率良くシリンダ1内に残すことができる。つまり、ピストン7の上部の冷却した排気ガスGで排気弁4側の排気ガスGを押出し、冷却した排気ガスGの部分が最後に残るようにしている。
【0050】
そのため、このようにしてシリンダ1内に残した排気ガスGとの混合物は、冷却された排気ガスGが新たな空気に混ざっているので、新たな空気のみに比べて酸素の含有量が少なく、また温度を比較的低くできるため、後の燃焼過程で発生するNOxを大幅に低減することができる。
【0051】
このように、本願発明では、多くの構成を要することなく、シリンダ1内の排気ガスを外に出さずに中で冷やして効果的に再使用する、内部クール排気再循環方式で、排気ガス温度の低減と次行程で圧縮する空気中の酸素濃度を下げて、更なるNOxの低減を安定して図ることができる。
【0052】
また、冷却した排気ガスGによって空気との混合物の温度を低くすることができるので、ピストン7等の燃焼室の構成を冷却して燃焼面温度を低くすることもできる。
【0053】
なお、前記いずれの実施形態も、それぞれの実施の形態における水の噴射に加え、掃気ポート3が開いている掃気行程の全域で行うことにより、水噴射量を増加して更なるNOxの低減の増加を図ることもできる。この水噴射量は、水供給装置10によって調整することができ、燃焼条件等に応じて調整される。
【0054】
また、前記水の代わりに蒸気を噴射するようにすれば、より短時間で気化させる必要がある使用条件において、NOxを安定して低減させることができる。この場合、水供給装置10に蒸気供給機能が追加される。
【0055】
さらに、上述した実施形態は一実施形態であり、本願発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本願発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0056】
【発明の効果】
本願発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載するような効果を奏する。
【0057】
シリンダ内の排気ガスを外に出さずに中で冷やして再使用することにより、高負荷でも排気ガス温度の低減と次行程で圧縮する空気中の酸素濃度を下げて、安定した更なる窒素酸化物の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の第1実施形態に係る2ストロークディーゼル機関を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す2ストロークディーゼル機関のバルブタイミングと水噴射タイミングとの関係を示すタイムチャートである。
【図3】本願発明の第2実施形態に係る2ストロークディーゼル機関を示す縦断面図である。
【図4】図3に示す2ストロークディーゼル機関のバルブタイミングと水噴射タイミングとの関係を示すタイムチャートである。
【図5】従来の2ストロークディーゼル機関における、バルブタイミングと水噴射タイミングとの関係を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1…シリンダ
2…シリンダヘッド
3…掃気ポート
4…排気弁
5…掃気室
6…排気口
7…ピストン
8…水噴射部材
9…供給管
10…水供給装置
11…2ストロークディーゼル機関
12…水噴射部材
13…2ストロークディーゼル機関
G…排気ガス
W…水
V1,V2…容積
Claims (12)
- 2ストロークディーゼル機関のシリンダ内で往復運動するピストンが下降して掃気を開始する前又は掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けてシリンダ側面から水を噴射して、ピストン上部に近い領域の排気ガスを冷却するようにした2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法。
- 請求項1記載の2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法において、
前記水の噴射時期を、ピストン上死点から70度〜180度のクランク角の範囲とした2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法。 - 請求項1記載の2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法において、
前記水の噴射で冷却するピストン上部に近い排気ガスの領域を、ピストンの行程容積の1〜50%の範囲とした2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法。 - 2ストロークディーゼル機関のシリンダ内で往復運動するピストンが下降した掃気時に、ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けて掃気ポートから水を噴射して、ピストン上部に近い領域の排気ガスを冷却するようにした2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法において、
前記掃気行程の全域でピストン上部に向けて水を噴射するようにした2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法において、
前記水に代えて蒸気を噴射するようにした2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減方法。 - シリンダヘッドに設けた排気ガスを排出する排気弁と、シリンダに設けた空気を供給するための掃気ポートと、該シリンダの内部で往復運動するピストンと、前記シリンダの側面にシリンダ内部に向けて設けられた水噴射部材と、該水噴射部材で、前記ピストンが下降して掃気を開始する前又は掃気時のピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けて水を噴射する水供給装置とを備えた2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置。
- 請求項7記載の2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置において、
前記水供給装置を、機械式又は電気式もしくはそれらを組合わせた構成とし、該水供給装置に、ディーゼル機関運転中に前記水噴射部材からの噴射タイミングと噴射量とを調整する機能を具備させた2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置。 - 請求項7記載の2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置において、
前記水噴射部材を、前記ピストンの中心軸に向けてシリンダの側面から均等に水を噴射する複数個の水噴射弁又は水噴射ノズルで構成した2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置。 - シリンダヘッドに設けた排気ガスを排出する排気弁と、シリンダに設けた空気を供給するための掃気ポートと、該シリンダの内部で往復運動するピストンと、前記掃気ポートからシリンダ内部に向けて水を噴射する水噴射部材と、該水噴射部材で、前記ピストンが下降して掃気ポートが開放した時にピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けて水を噴射する水供給装置とを備えた2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置。
- 請求項7〜10のいずれか1項に記載の2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置において、
前記水供給装置に、前記ピストン上部に存在する膨張した高温の排気ガスに向けて又はピストン頂面に向けて水を噴射する機能に加え、掃気行程の全域でピストン上部に向けて水を噴射する機能を具備させた2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置。 - 請求項7〜11のいずれか1項に記載の2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置において、
前記水供給装置に、水に代えて蒸気を噴射する機能を具備させた2ストロークディーゼル機関の窒素酸化物低減装置。
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