JP2004349862A - フィルタ装置並びにインピーダンス変換回路、平衡−不平衡分配回路及びプッシュプル増幅回路 - Google Patents
フィルタ装置並びにインピーダンス変換回路、平衡−不平衡分配回路及びプッシュプル増幅回路 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】1/2波長共振器の短絡点となる中間部にバイアス回路を接続することにより、バイアス回路を搭載したフィルタの特性を安定させる。
【解決手段】フィルタ装置1の基板2には、1/2波長共振器3,4、入力端子5、出力端子6等を設ける。また、共振器4の線路長Lを2等分する位置にある短絡部4Aには、バイアス電源11と接続する抵抗体7を設ける。そして、フィルタ装置1の作動時には、トランジスタ等の電子部品10を出力端子6に接続し、バイアス電源11から抵抗体7、共振器4、出力端子6等を介して電子部品10にバイアス電圧を印加する。これにより、1/2波長共振器4のうち外部インピーダンスの影響を受け難い短絡部4Aにバイアス用の回路を接続できるから、簡単な構造のバイアス回路を搭載しつつ、フィルタ装置を安定的に作動させることができる。
【選択図】 図3
【解決手段】フィルタ装置1の基板2には、1/2波長共振器3,4、入力端子5、出力端子6等を設ける。また、共振器4の線路長Lを2等分する位置にある短絡部4Aには、バイアス電源11と接続する抵抗体7を設ける。そして、フィルタ装置1の作動時には、トランジスタ等の電子部品10を出力端子6に接続し、バイアス電源11から抵抗体7、共振器4、出力端子6等を介して電子部品10にバイアス電圧を印加する。これにより、1/2波長共振器4のうち外部インピーダンスの影響を受け難い短絡部4Aにバイアス用の回路を接続できるから、簡単な構造のバイアス回路を搭載しつつ、フィルタ装置を安定的に作動させることができる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば無線通信用の高周波回路等に好適に用いられるフィルタ装置並びにインピーダンス変換回路、平衡−不平衡分配回路及びプッシュプル増幅回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、高周波回路等に用いられるフィルタ装置としては、例えば1/4波長共振器等を用いて構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−23102号公報
【0004】
この種の従来技術によるフィルタ装置は、誘電体からなる基板上に略コ字状の入力共振電極と出力共振電極とが所定の長さをもって形成され、これらの共振電極にはそれぞれ入力端子、出力端子が設けられている。そして、フィルタ装置は、入力端子から入力共振電極に高周波信号が入力されると、この電極の長さを1/4波長(λ/4)とする高周波信号が共振状態で出力共振電極に伝達され、出力端子から外部に出力されるものである。
【0005】
ここで、フィルタ装置を用いて高周波回路等を構成するときには、例えばトランジスタ等からなる電子部品の電源端子をフィルタ装置の入力端子や出力端子に接続し、この状態で電源端子にバイアス電圧を印加することがある。
【0006】
このため、従来技術では、例えばフィルタ装置の基板を積層基板により形成し、この積層基板の表面および内部には、バイアス用の直流電源等に接続される電源プレーンと、接地電位に保持される接地プレーンとを金属膜等によって形成する構成としている。そして、電源プレーンは、スルーホール等を介して一方の共振電極(例えば、出力共振電極)の接地端側に接続され、接地プレーンは、他方の共振電極(入力共振電極)の接地端側に接続されている。
【0007】
これにより、フィルタ装置の作動時には、入力共振電極と出力共振電極との間で高周波信号のフィルタ処理を行いつつ、バイアス用の直流電源等から電源プレーン、出力共振電極、出力端子等を介して電子部品の電源端子にバイアス電圧を印加するものである。
【0008】
この場合、従来技術では、出力共振電極の接地端側に接続された電源プレーンを接地プレーンの近傍に配置し、これらのプレーンを低インピーダンス状態で互いに対向させることにより、高周波信号に対して出力共振電極の接地端側を直接接地した場合と近い状態に保持し、電源プレーンのインピーダンス等によってフィルタの特性が変動するのを防止している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、例えば積層基板の内部および表面に電源プレーンと接地プレーンとを設け、出力共振電極の接地端側に電源プレーンを接続する構成としている。
【0010】
しかし、フィルタ装置の形成時には、電源プレーン、接地プレーン、各スルーホール等が設けられた積層基板を形成する必要がある。このため、従来技術では、バイアス用の回路を搭載することによってフィルタ装置の構造や形成工程が複雑化し、生産性の低下やコストアップを招くという問題がある。
【0011】
また、1/4波長共振器を用いたフィルタ装置は、出力共振電極の接地端側に電源プレーン等のインピーダンスが接続されることによってフィルタの特性が変動し易いため、従来技術では、電源プレーンと接地プレーンとを低インピーダンス状態で対向させる構成としている。
【0012】
しかし、出力共振電極の接地端側は、電源プレーン等を介して接地した場合と近い状態に保持されているに過ぎず、厳密には接地されていない。このため、電源プレーンと接地プレーンとの間のインピーダンス等によってフィルタの特性が悪影響を受け、例えば共振周波数のずれが生じたり、フィルタの挿入損失が増大し易くなるという問題がある。
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、簡単な構造によってバイアス用の回路を搭載でき、この状態でフィルタとして高い性能を維持できるようにしたフィルタ装置並びにインピーダンス変換回路、平衡−不平衡分配回路及びプッシュプル増幅回路を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために請求項1の発明は、誘電体により形成された基板と、該基板に設けられ線路長が波長の1/2となる高周波信号が互いの間に共振状態で伝達する一対の1/2波長共振器と、該各1/2波長共振器のうち一方の共振器に設けられ外部から高周波信号が入力される入力端子と、前記各1/2波長共振器のうち他方の共振器に設けられ前記線路長が波長の1/2となる高周波信号を出力する出力端子と、前記各1/2波長共振器のうち少なくとも片方の共振器の長さ方向中間部に一定のインピーダンスをもって接続され当該共振器を介して前記入力端子または出力端子にバイアス電圧を印加するバイアス回路とからなる構成を採用している。
【0015】
このように構成することにより、入力側と出力側の1/2波長共振器の間には、これらの線路長を1/2波長とする高周波信号を伝達させることができる。この場合、共振器の長さ方向中間部は、高周波信号が伝わるときに電圧が零に保持される仮想的な短絡点となる。このため、共振器の短絡点に一定のインピーダンスをもつバイアス回路を接続したとしても、フィルタの特性(例えば共振周波数、挿入損失等)が変動するのを抑制でき、例えばバイアス回路を高インピーダンスに設定しなくても、フィルタを安定的に作動させることができる。
【0016】
従って、例えばフィルタ装置の入力端子(または出力端子)にトランジスタ等の電子部品を接続し、この電子部品にバイアス回路から共振器を介してバイアス電圧を印加しつつ、フィルタ装置を安定した状態で作動させることができる。
【0017】
また、請求項2の発明によると、バイアス回路は抵抗体により構成し、抵抗体の一端側を1/2波長共振器の中間部に接続し前記抵抗体の他端側をバイアス電源に接続する構成としている。
【0018】
これにより、例えばフィルタ装置の入力端子(または出力端子)に接続した電子部品等に対して、バイアス電源から抵抗体、共振器等を介してバイアス電圧を印加することができる。そして、バイアス電圧の大きさを抵抗体の抵抗値に応じて適切に設定することができる。
【0019】
また、請求項3の発明によると、抵抗体の抵抗値は5Ω以上に形成する構成としている。これにより、抵抗値が5Ωよりも小さい場合と比較して、フィルタの挿入損失を十分に低減することができる。
【0020】
また、請求項4の発明によると、バイアス回路はマイクロストリップラインまたはストリップラインからなる付加線路により構成し、付加線路の一端側を1/2波長共振器の中間部に接続し付加線路の他端側をバイアス電源に接続する構成としている。これにより、例えば金属膜等を用いて共振器と付加線路とを同じ工程で一緒に形成でき、この付加線路をバイアス電源と接続することができる。
【0021】
また、請求項5の発明によると、付加線路の線路長は高周波信号の波長の1/24〜1/1.1に形成する構成としている。これにより、付加線路の線路長が波長の1/24〜1/1.1となる範囲から外れている場合と比較して、フィルタの挿入損失を十分に低減することができる。
【0022】
また、請求項6の発明によると、バイアス回路はインダクタにより構成し、インダクタの一端側を1/2波長共振器の中間部に接続しインダクタの他端側をバイアス電源に接続する構成としている。これにより、例えばコイル等の金属膜からなるインダクタと共振器とを同じ工程で一緒に形成でき、このインダクタをバイアス電源と接続することができる。
【0023】
また、請求項7の発明によると、各1/2波長共振器の線路長を互いに異ならしめる構成としている。これにより、各共振器の線路長を、例えば濾波する高周波信号の1/2波長に近い寸法の範囲内で互いに異ならしめることができ、線路長の寸法差等によってフィルタ装置全体のインピーダンスを調整することができる。また、少なくとも一方の共振器の線路長を1/2波長からずらすことにより、共振器に生じる不要な高調波を減衰させることができる。
【0024】
さらに、請求項8の発明によると、一対の1/2波長共振器の間には該各共振器と間隔をもって延びる1本または複数本の1/2波長共振器を設ける構成としている。これにより、入力端子および出力端子を設ける共振器を含めて3本以上の1/2波長共振器を並べて配置でき、3段以上のフィルタ装置を構成することができる。
【0025】
また、請求項9の発明に係るインピーダンス変換回路は、フィルタ装置を含んで構成している。これにより、フィルタ装置に機能を付加してインピーダンス変換回路を構成することができる。
【0026】
また、請求項10の発明に係る平衡−不平衡分配回路は、フィルタ装置を含んで構成している。
【0027】
さらに、請求項11の発明に係るプッシュプル増幅回路は、フィルタ装置を含んで構成している。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態によるフィルタ装置並びにインピーダンス変換回路、平衡−不平衡分配回路及びプッシュプル増幅回路について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
ここで、図1ないし図4は本発明による第1の実施の形態を示し、本実施の形態では、フィルタ装置としてベアチップ型の2段フィルタを例に挙げて述べる。
【0030】
図中、1はフィルタ装置で、該フィルタ装置1は、例えば誘電体等からなる基板2に2本の1/2波長共振器3,4等を搭載したベアチップ型の2段フィルタとして構成され、外部のマザーボード(図示せず)等に実装されるものである。
【0031】
3,4は基板2の表面側に設けられた一対の1/2波長共振器(以下、共振器3,4という)で、該共振器3,4は、図1、図2に示す如く、例えば金、銀、銅等の導電率が大きな金属材料により薄膜または厚膜として形成され、高周波信号用のマイクロストリップラインとして構成されている。この場合、共振器3,4は、例えば蒸着、スパッタ、メッキ、印刷等の手段によって後述の端子5,6,8と一緒に形成されている。
【0032】
そして、共振器3,4は、例えば細長い四角形の帯状体として形成され、図1中の左,右方向に所定の線路長Lをもって平行に延びると共に、互いに隣接した位置で一定の間隔をもって対向している。
【0033】
ここで、1/2波長共振器3,4の線路長Lは、例えばマイクロ波、ミリ波等に属する所望の共振周波数と、基板2の実効誘電率等とに応じて定められる特定の波長λに対して、この波長λの1/2となる寸法値に予め設定されている(L=λ/2)。
【0034】
これにより、共振器3,4の間には、波長λの高周波信号が共振状態で伝達され、この共振状態において、共振器3,4の長さ方向の中間部(図1中の線路長Lを2等分する中心線M−M上に位置する部位)は、電圧が零に保持される仮想的な短絡部3A,4Aとなり、長さ方向の両端側は開放端3B,4Bとなる。
【0035】
5は入力側の共振器3と接続して基板2上に設けられた入力端子で、該入力端子5は、例えば帯状の金属膜等からなり、共振器3の短絡部3Aと開放端3Bとの間に位置する部位に一体に形成され、共振器3,4から外向きに垂直に延びている。そして、入力端子5には、例えばマザーボード側の信号処理回路(図示せず)等が接続され、入力側の共振器3には、この信号処理回路から入力端子5を介して高周波信号が入力される。
【0036】
6は出力側の共振器4と接続して基板2上に設けられた出力端子で、該出力端子6は、入力端子5とほぼ同様に、共振器4の短絡部4Aと開放端4Bとの間に位置する部位から外向きに垂直に延びて形成され、共振器3,4の長さ方向に対して入力端子5とほぼ等しい位置に配設されている。
【0037】
そして、出力端子6は、前述した特定周波数(波長λ)の高周波信号を共振器4から外部に出力するものであり、本実施の形態では、図3に示す如く、後述する電子部品10の電源端子に接続されるものである。
【0038】
7は基板2上に設けられたバイアス回路としての抵抗体を示し、該抵抗体7は、後述のバイアス電源11から共振器4、出力端子6等を介して電子部品10にバイアス電圧を印加するものである。
【0039】
この場合、抵抗体7は、フィルタ装置1の出力側に接続される電子部品10の接続位置に対応して、例えば出力側の共振器4の短絡部4Aとバイアス電源11との間に接続され、その抵抗値rは、下記数1の式に示すように、例えば5Ω以上(好ましくは10Ω以上)の値に予め設定されている。
【0040】
【数1】
r≧5
【0041】
また、抵抗体7は、例えば窒化タンタル(TaN)、または他の汎用的な抵抗体材料等からなり、例えば蒸着、スパッタ、CVD法等を含めた各種の薄膜プロセスによって成膜するか、またはスクリーン印刷等の圧膜プロセスで塗布することにより形成されている。
【0042】
また、抵抗体7は、例えば細長い四角形状の薄膜または圧膜として形成され、その一端側が共振器4の短絡部4Aに接続されると共に、共振器4から外向きに垂直に延びている。そして、抵抗体7の他端側には、基板2上に設けられた金属膜等からなるバイアス端子8が接続され、このバイアス端子8にはバイアス電源11が接続されるものである。なお、9はグランド側に接続される接地用の導体パターンで、該導体パターン9は、図2に示す如く、基板2の裏面側に全面にわたって設けられている。
【0043】
一方、10は例えばフィルタ装置1の出力端子6に接続される電子部品で、該電子部品10は、例えばトランジスタ、半導体IC等の能動素子からなり、フィルタ装置1と一緒にマザーボード上に実装されると共に、出力端子6から出力される高周波信号に対して所定の信号処理を行うものである。この場合、電子部品10は、例えば出力端子6に接続される端子が電源端子となり、この電源端子にバイアス電圧を印加されることにより作動する構成となっている。
【0044】
11はフィルタ装置1のバイアス端子8に接続されるバイアス電源で、該バイアス電源11は、例えばマザーボード側に配置され、バイアス端子8から抵抗体7、共振器4および出力端子6を介して電子部品10の電源端子に所定の直流電圧(バイアス電圧)を印加するものである。
【0045】
ここで、フィルタ装置1とバイアス電圧との関係について述べると、フィルタ装置1は、1/2波長マイクロストリップライン共振器3,4を用いて構成されているため、その短絡部3A,4Aは、電圧が零に保持される短絡点(接地点)となっている。このため、例えば共振器4の短絡部4Aに対して、インピーダンス(抵抗値r)が比較的低い抵抗体7を接続し、この抵抗体7を介してバイアス電圧を印加したとしても、フィルタの特性(例えば共振周波数、挿入損失等)が設計上の規格等に対して変動するのを抑えることができる。
【0046】
この場合、例えば抵抗値rが極端に小さな抵抗体7を介してバイアス電圧を印加すると、フィルタの挿入損失ILは、図4中の特性線に示す如く、バイアス電圧を印加しない状態での挿入損失値(例えば、0.7dB)と比較して大きくなる。しかし、この特性線から判るように、例えば抵抗値rを5Ω以上に設定した場合には、挿入損失ILを十分に低減することができ、さらに抵抗値rを10Ω以上に設定した場合には、バイアス電圧がない状態とほぼ同様の小さな挿入損失ILを得ることができる。なお、図4に示す特性線は、例えば5GHz程度の周波数帯に用いられ、共振器の無負荷Qが300程度の値に設定された2段フィルタの特性を示すものである。
【0047】
本実施の形態によるフィルタ装置1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0048】
まず、フィルタ装置1は、例えばワイヤボンディング、半田付け、バンプ実装等の手段を用いてマザーボード上に実装される。この場合、フィルタ装置1の入力端子5はマザーボード側の信号処理回路等に接続され、出力端子6は電子部品10の電源端子に接続され、バイアス端子8はバイアス電源11に接続される。
【0049】
そして、マザーボードから入力端子5に高周波信号が入力されると、この信号のうち波長λを有する特定の高周波信号は、共振器3から共振器4へと共振状態で伝達されることにより、出力端子6から電子部品10に出力される。
【0050】
このとき、電子部品10の電源端子には、マザーボード側のバイアス電源11からバイアス端子8、抵抗体7、共振器4および出力端子6を介してバイアス電圧が印加されているため、電子部品10は、出力端子6から出力される高周波信号に対して所定の信号処理を行うことができる。
【0051】
かくして、本実施の形態によれば、1/2波長共振器4の短絡部4Aに抵抗体7を接続し、この抵抗体7等を介してバイアス電源11から電子部品10にバイアス電圧を印加する構成としたので、共振器4のうち外部インピーダンスの影響を受け難い短絡部4Aに抵抗体7を介してバイアス電源11を接続でき、これらを接続することによってフィルタ装置1の共振周波数がずれたり、挿入損失が増大するのを確実に防止することができる。
【0052】
これにより、例えば抵抗体7の抵抗値を極端に大きくしなくても、フィルタ装置1を安定的に作動させることができ、この状態でフィルタ装置1を介して電子部品10にバイアス電圧を確実に印加することができる。
【0053】
従って、フィルタ装置1の基板2上に小さな抵抗体7等を配置するだけで、バイアス電源11側を高インピーダンスに設定する必要がなくなり、1/2波長共振器の特性を利用した簡単な構造によってバイアス用の回路を容易に実現できると共に、バイアス用の抵抗体7を搭載した状態でも、フィルタとしての高い性能を維持することができる。
【0054】
そして、例えば信号カット用のインダクタ、抵抗等からなる大きな回路部品を介してバイアス電源11を高インピーダンスで共振器4と接続したり、従来技術のように電源プレーン、接地プレーン等を積層してバイアス用の複雑な回路を形成する必要がなくなるから、バイアス用の回路を含めてフィルタ装置1全体の構造や形成工程を簡略化でき、これらを小型化できると共に、生産性を高めてコストダウンを促進することができる。
【0055】
また、グランド側から絶縁された共振器4を用いて電子部品10の電源端子にバイアス電圧を印加できるので、共振器4とグランド側との間を絶縁する直流カット用のコンデンサ等も不要となり、フィルタ装置1を含めて高周波回路全体の部品点数を削減することができる。
【0056】
そして、前述した信号カット用のインダクタや直流カット用のコンデンサ等を用いることにより、これらの定数ばらつき等によってフィルタの特性が変動するのを防止でき、高周波回路を安定的に作動させることができる。
【0057】
また、抵抗体7の抵抗値rを、例えば5Ω以上、好ましくは10Ω以上に設定したので、フィルタ装置1の挿入損失を、バイアス電圧を印加しない場合とほぼ同様に小さく抑えることができ、バイアス用の抵抗体7を搭載した状態でも、信号を効率よく伝送することができる。
【0058】
また、バイアス電源11により抵抗体7を介して電子部品10にバイアス電圧を印加できるから、バイアス電圧の大きさを抵抗体7の抵抗値に応じて適切に設定でき、バイアス用の外部回路等も簡略化することができる。
【0059】
さらに、例えばワイヤボンディング、半田付け、バンプ実装等の手段によりフィルタ装置1をマザーボードに実装するときには、ワイヤ、半田、バンプの形状ばらつき等が原因でバイアス端子8とマザーボード側との間のインダクタンス成分にばらつきが生じ易い。
【0060】
しかし、このインダクタンス成分は、外部インピーダンスの影響を受け難い短絡部4Aで共振器4に接続されているので、フィルタ装置1の性能が実装状態のばらつき等により変動するのを防止することができる。これにより、安定した性能をもつベアチップ型のフィルタ装置1を用いてMCM(Multi Chip
Module)構造の高周波回路等を容易に実現することができる。
【0061】
次に、図5ないし図7は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、バイアス回路をマイクロストリップラインにより構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0062】
21はフィルタ装置で、該フィルタ装置21は、第1の実施の形態とほぼ同様に、基板2、1/2波長共振器3,4、入力端子5、出力端子6等によって構成されている。しかし、フィルタ装置21には、第1の実施の形態の抵抗体7に代えて後述の付加線路22が搭載されている。
【0063】
22は基板2上に設けられたバイアス回路としての付加線路で、該付加線路22は、例えば帯状の金属膜等からなり、共振器3,4等と同じ工程で一緒に形成されると共に、マイクロストリップラインとして構成されている。
【0064】
ここで、付加線路22は、その一端側が例えば出力側の共振器4の短絡部4Aに接続され、共振器3,4から外向きに所定の線路長L′をもって垂直に延びている。また、付加線路22の他端側には、図6に示す如く、バイアス電源11が接続されるものである。
【0065】
そして、付加線路22は、共振器4の短絡部4Aとバイアス電源11との間に線路長L′に応じた所定のインダクタンスをもって接続され、バイアス電源11から共振器4、出力端子6等を介して電子部品10にバイアス電圧を印加する構成となっている。
【0066】
この場合、付加線路22の線路長L′とフィルタ装置21の挿入損失ILとの関係について述べると、図7に示す特性線のようになる。この特性線は、第1の実施の形態とほぼ同様に、例えば5GHz程度の周波数帯に用いられる2段フィルタの特性を示している。また、付加線路22の位相とは、その一端側(共振器4の短絡部4A)と他端側との間における高周波信号の位相差であり、付加線路22の線路長L′(インダクタンス)に応じて増減するものである。
【0067】
そして、この特性線から判るように、例えば付加線路22の位相が15°〜330°の範囲内となる場合には、バイアス電圧を印加しない状態とほぼ同様の小さな挿入損失ILを得ることができる。また、本実施の形態において、この位相範囲(15°〜330°)の下限値となる位相15°は、例えば付加線路22の線路長L′をλ/24とした場合に相当し、上限値となる位相330°は、線路長L′をλ/1.1とした場合に相当している。この場合、波長λは、フィルタ装置21により濾波する周波数帯の中心周波数に対応する波長である。
【0068】
従って、下記数2の式に示すように、付加線路22の線路長L′をλ/24〜λ/1.1の範囲に設定することにより、フィルタ装置21を介して電子部品10にバイアス電圧を印加しつつ、挿入損失ILを十分に低減することができる。
【0069】
【数2】
λ/1.1≧L′≧λ/24
但し、λ:濾波する中心周波数の波長
【0070】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、バイアス回路として付加線路22を用いる構成としたので、例えば蒸着、スパッタ、メッキ、印刷等の手段によって共振器3,4、各端子5,6および付加線路22を同じ工程で一緒に効率良く形成でき、これらの構造や形成工程をより簡略化できると共に、フィルタ装置21をさらに小型化することができる。
【0071】
また、付加線路22の線路長L′をλ/24〜λ/1.1の範囲に設定したので、バイアス用の付加線路22を搭載した状態でも、フィルタの挿入損失ILを十分に低減でき、その性能を高めることができる。
【0072】
次に、図8および図9は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、バイアス回路をコイルにより構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0073】
31はフィルタ装置で、該フィルタ装置31は、第1の実施の形態とほぼ同様に、基板32、1/2波長共振器3,4、入力端子5、出力端子6等により構成されている。しかし、基板32は、例えば複数の誘電体層を積層した積層基板として形成され、この基板32には後述のコイル33が搭載されている。
【0074】
33は基板32に設けられたバイアス回路としてのコイルで、該コイル33は、図9に示す如く、例えば渦巻き状の細幅な金属膜等によりインダクタとして形成され、共振器3,4等と同じ工程で一緒に形成されている。そして、コイル33は、第2の実施の形態とほぼ同様に、共振器4の短絡部4Aとバイアス電源(図示せず)との間に所定のインダクタンスをもって接続され、バイアス電源から共振器4、出力端子6等を介して電子部品10にバイアス電圧を印加するものである。
【0075】
ここで、コイル33は、その一端側(外周側)が共振器4の短絡部4Aに接続され、コイル33の他端側(内周側)は、例えば基板32に設けられたワイヤ34を介してバイアス端子35に接続されている。この場合、バイアス端子35は、コイル33の外周側に位置して基板32上に設けられ、バイアス電源に接続されるものである。
【0076】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1,第2の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、コイル33を用いる構成としたので、例えばコイル33の巻き数等に応じて大きなインダクタンスを形成でき、設計自由度を高めることができる。
【0077】
次に、図10は本発明による第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、入力側と出力側の共振器の線路長を互いに異ならしめる構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0078】
41はフィルタ装置で、該フィルタ装置41は、第2の実施の形態とほぼ同様に、基板2、入力端子5、出力端子6と、後述の1/2波長共振器42,43、付加線路44とを含んで構成されている。
【0079】
42,43は基板2上に設けられた一対の1/2波長共振器(以下、共振器42,43という)で、該共振器42,43は、第1の実施の形態とほぼ同様に、例えば帯状の金属膜等からなり、互いに一定の間隔Dをもって対向するように平行に配置されている。そして、共振器42には、短絡部42Aと開放端42Bとの間に入力端子5が設けられ、共振器43には、短絡部43Aと開放端43Bとの間に出力端子6が設けられている。
【0080】
ここで、入力側の共振器42は、例えば濾波する高周波信号に対して、その波長λの1/2となる所定の線路長L1をもって形成されている(L1=λ/2)。また、出力側の共振器43は、例えば波長λの1/2に近い線路長L2をもって形成されているものの、この線路長L2は、共振器42の線路長L1と異なる寸法値に設定されている(L2≠L1)。
【0081】
これにより、共振器42,43は、波長λの高周波信号を互いの間に共振状態で伝達しつつ、波長が(2n−1)×λ/2となる高調波の伝達を抑制する構成となっている(nは1よりも大きな整数)。
【0082】
44は基板2上に設けられたバイアス回路としての付加線路で、該付加線路44は、第2の実施の形態とほぼ同様に、例えば出力側の共振器43の短絡部43Aに接続されている。この場合、付加線路44と出力端子6とは、共振器43の長さ方向に沿って所定の寸法S分だけ離間している。
【0083】
そして、フィルタ装置41は、例えば共振器42,43の線路長L1,L2、間隔D、付加線路44と出力端子6との間の寸法S等を変更することにより、装置全体としてのインピーダンスを調整できるものである。
【0084】
この場合、フィルタ装置41全体のインピーダンスをZ(=R+jX)とすると、インピーダンスZの調整時には、例えば共振器42,43の線路長L1,L2の差を大きくするか、または両者の間隔Dを狭くすることにより、実部Rを減少させることができる。また、例えば付加線路44と出力端子6との間の寸法Sを小さくすることにより、虚部Xを減少させることができる。
【0085】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、共振器42,43の線路長L1,L2を異ならしめる構成としたので、フィルタ装置41を形成するときには、これらの線路長L1,L2や間隔D、寸法S等を変更することにより装置全体のインピーダンスを容易に調整することができる。
【0086】
これにより、フィルタ装置41のインピーダンスと、これに接続される電子部品10等のインピーダンスとを高い精度で整合でき、高周波回路の動作を安定させることができる。また、例えば専用の整合回路等が必要なくなり、回路全体をより小型化することができる。
【0087】
また、例えば共振器43の線路長L2をλ/2から僅かにずらすことにより、共振器42,43に生じる不要な高調波を効率よく減衰させることができる。これにより、各共振器42,43の間に高調波が伝達するのを抑制でき、フィルタ装置41の減衰特性を良好な状態に設定することができる。
【0088】
次に、図11は本発明による第5の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、入力端子側の共振器に電子部品とバイアス回路とを接続する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0089】
51はフィルタ装置で、該フィルタ装置51は、第1の実施の形態とほぼ同様に、基板2、1/2波長共振器3,4、入力端子5、出力端子6と、後述のバイアス回路52等により構成されている。しかし、フィルタ装置51には、その入力端子5に電子部品10の電源端子が接続される構成となっている。
【0090】
52は基板2に設けられたバイアス回路で、該バイアス回路52は、第1ないし第3の実施の形態で用いた抵抗体7、付加線路22またはコイル33のいずれかにより構成されている。そして、バイアス回路52は、入力側の共振器3の短絡部3Aとバイアス電源11との間に所定のインピーダンスをもって接続され、バイアス電源11から共振器3、入力端子5等を介して電子部品10にバイアス電圧を印加するものである。
【0091】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、フィルタ装置51の入力側に電子部品10を接続する場合にも適用でき、設計自由度を高めることができる。
【0092】
次に、図12は本発明による第6の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、入力側と出力側の共振器の間に他の共振器を設け、3段以上のフィルタ装置を構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0093】
61はフィルタ装置で、該フィルタ装置61は、第1の実施の形態とほぼ同様に、基板2、1/2波長共振器3,4、入力端子5、出力端子6と、後述のバイアス回路63とにより構成されている。しかし、フィルタ装置61は、共振器3,4間に後述する1本または複数本の1/2波長共振器62が設けられ、3段以上のフィルタとして構成されている。
【0094】
62は入力側の共振器3と出力側の共振器4との間に1本または複数本設けられた中間位置の1/2波長共振器(以下、共振器62という)で、該中間位置の共振器62は、共振器3,4とほぼ同様に、帯状の金属膜等として基板2に設けられ、これらの共振器3,4,62は互いに一定の間隔をもって並んだ状態で平行に延びている。
【0095】
63は基板2に設けられたバイアス回路で、該バイアス回路63は、第1ないし第3の実施の形態で用いた抵抗体7、付加線路22またはコイル33のいずれかにより構成され、例えば共振器4の短絡部4Aとバイアス電源11との間に接続されているものである。
【0096】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、共振器3,4と、1本または複数本の共振器62とによって3段以上のフィルタ装置61を構成したので、例えば濾波する信号の周波数帯域が狭いフィルタを必要に応じて形成でき、設計自由度を高めることができる。
【0097】
次に、図13は本発明による第7の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、フィルタ装置を用いてインピーダンス変換回路を構成したことにある。
【0098】
71はインピーダンス変換回路で、該インピーダンス変換回路71は、高周波信号を増幅する増幅器72と、該増幅器72の入力側に接続されたフィルタ装置73と、増幅器72の出力側に接続された他のフィルタ装置74とを含んで構成されている。
【0099】
ここで、フィルタ装置73,74は、例えば第1ないし第6の実施の形態によるフィルタ装置1,21,31,41,51,61のいずれかを用いてそれぞれ構成され、インピーダンスの変換機能を有している。そして、入力側のフィルタ装置73は、変換回路71の入力側に接続される回路(図示せず)のインピーダンスと増幅器72の入力インピーダンスとを整合する。また、出力側のフィルタ装置74は、変換回路71の出力側に接続される回路(図示せず)のインピーダンスと増幅器72の出力インピーダンスとを整合するものである。
【0100】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1ないし第6の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、例えば2個のフィルタ装置73,74を用いてインピーダンス変換回路71を構成したので、インピーダンス変換回路71は、入力側の回路と出力側の回路との間で高周波信号のフィルタ、増幅等を行いつつ、これらの回路間のインピーダンスを容易に整合することができる。これにより、フィルタ機能を有する低損失なインピーダンス変換回路71をコンパクトに形成でき、回路全体の小型化を図ることができる。
【0101】
次に、図14は本発明による第8の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、フィルタ装置を用いて平衡−不平衡分配回路を構成したことにある。
【0102】
81は平衡−不平衡分配回路、82は該平衡−不平衡分配回路81を構成するフィルタ装置で、該フィルタ装置82は、前記第1ないし第6の実施の形態によるフィルタ装置1,21,31,41,51,61のいずれかを用いて構成されている。そして、フィルタ装置82は、基板83、1/2波長共振器84,85、信号端子86,87、バイアス回路88等を有している。
【0103】
ここで、共振器84,85は、第4の実施の形態とほぼ同様に、互いに異なる線路長L1′,L2′をもって形成され、入力側と出力側との間でインピーダンスの変換を行う構成となっている。また、一方の共振器84には、例えば中心線M−Mから離れた位置に信号端子86が設けられている。また、他方の共振器85には、例えば2個の信号端子87が設けられ、これらの信号端子87は中心線M−Mから長さ方向の両側に互いに等しい寸法S′分だけ離間している。
【0104】
そして、平衡−不平衡分配回路81は、信号端子86,87のうちいずれか一方を入力端子とし、他方を出力端子として作動する。この場合、例えば信号端子86に高周波信号(不平衡信号)を入力したときには、各信号端子87から互いに180°の位相差をもつ信号(位相差が180°に分配された平衡信号)がそれぞれ出力される。
【0105】
また、平衡−不平衡分配回路81は、各信号端子87に対して互いに180°の位相差をもつ平衡信号をそれぞれ入力したときに、これらの信号を合成した不平衡信号を信号端子86から出力する構成となっている。
【0106】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1ないし第6の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、フィルタ装置82に機能を付加することにより、小型で低損失な平衡−不平衡分配回路81を容易に実現することができる。
【0107】
次に、図15は本発明による第9の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、フィルタ装置を用いてプッシュプル増幅回路を構成したことにある。
【0108】
91はプッシュプル増幅回路で、該プッシュプル増幅回路91は、プッシュプル動作(平衡動作)を行う2個の増幅器92と、該各増幅器92の入力側に接続されたフィルタ装置93と、各増幅器92の出力側に接続された他のフィルタ装置94とを含んで構成されている。
【0109】
この場合、フィルタ装置93,94は、第1ないし第6の実施の形態によるフィルタ装置1,21,31,41,51,61のいずれかを用いてそれぞれ構成されている。また、プッシュプル増幅回路91は、フィルタ装置93,94を用いたインピーダンスの変換機能と、前記第8の実施の形態とほぼ同様の平衡−不平衡変換機能とを備えている。
【0110】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1ないし第6の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、フィルタ装置93,94に機能を付加することにより、小型で低損失なプッシュプル増幅回路91を容易に構成することができる。
【0111】
なお、前記各実施の形態では、入力側または出力側の共振器3,4,42,43に抵抗体7、付加線路22,44、コイル33、バイアス回路52,63等を介してバイアス電源11を接続する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、バイアス回路の接続箇所が1/2波長共振器の中央からずれたときの高周波信号の損失をなくすため、例えば図16に示す第1の変形例のように構成してもよい。この場合、フィルタ装置101は、前記第5の実施の形態とほぼ同様のバイアス回路102を有し、このバイアス回路102とバイアス電源11との間には、これらの接続部位とグランド側との間に位置してコンデンサ103が接続されている。
【0112】
また、本発明のフィルタ装置は、例えば図17に示す第2の変形例のように構成してもよい。この場合、フィルタ装置111のバイアス回路112とバイアス電源11との間には、例えばマイクロストリップライン等の線路部材113が接続され、この線路部材113は、例えば濾波する高周波信号の波長λの1/4となる線路長L″をもって形成されている。
【0113】
また、実施の形態では、共振器3,4のいずれかに抵抗体7、付加線路22,44、コイル33、バイアス回路52,63等を設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図18に示す第3の変形例のように構成してもよい。この場合、フィルタ装置121の入力側の共振器3には、バイアス電源11から電子部品10にバイアス電圧を印加する入力側のバイアス回路122が設けられ、出力側の共振器4には、バイアス電源11から他の電子部品10′にバイアス電圧を印加する出力側のバイアス回路123が設けられている。
【0114】
一方、前記各実施の形態では、共振器3,4,42,43,62、付加線路22,44等をマイクロストリップラインにより構成した。しかし、本発明では、これらの線路をストリップラインによって構成してもよいのは勿論である。
【0115】
また、前記各実施の形態では、これらの線路をストリップラインにより構成する場合に限らず、フィルタ装置を多層基板により形成し、例えば共振器、各端子、バイアス回路等を多層基板の内部に埋設する構成としてもよい。
【0116】
また、第1の実施の形態では、抵抗体材料の薄膜または厚膜からなる抵抗体7を用いる構成とした。この場合、本発明は、抵抗体7の材料を限定するものではなく、例えばチップ抵抗等を含めて任意の抵抗体材料を用いることができる。
【0117】
また、第3の実施の形態では、バイアス印加用のインダクタンスとしてコイル33を用いる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、インダクタンスをもつ任意の材料を使用でき、例えば基板の表面、内部等に設けた薄膜または厚膜状の金属材料や、チップ素子あるいはマザーボードとの接続用であるワイヤ等によりインダクタンスを構成してもよい。
【0118】
また、第4の実施の形態では、入力側の共振器42の線路長L1をλ/2に形成し、これと出力側の共振器43の線路長L2とを異ならしめる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば出力側の共振器の線路長をλ/2に形成し、これと入力側の共振器の線路長とを異ならしめる構成としてもよく、さらには入力側と出力側の共振器が両方ともλ/2に対して僅かに異なる寸法値をもつ構成としてもよい。
【0119】
また、実施の形態では、付加線路44を用いる第4の実施の形態で共振器42,43の線路長L1,L2を異ならしめる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、抵抗体7やコイル33(バイアス回路52,63)を用いる第1,第3,第5,第6の実施の形態においても、共振器3,4の線路長が互いに異なる構成としてもよい。
【0120】
さらに、実施の形態では、ベアチップ型のフィルタ装置1,21,31,41,51,61をマザーボードに実装する場合を例に挙げて述べた。しかし、本発明はこれに限らず、例えばフィルタ装置の共振器、各端子およびバイアス回路を、基板としてのマザーボードに対して周囲の電子部品、バイアス電源等と一緒に実装する構成としてもよい。
【0121】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1の発明によれば、一対の1/2波長共振器のうち少なくとも片方の共振器の中間部に一定のインピーダンスをもつバイアス回路を接続する構成としたので、1/2波長共振器のうち外部インピーダンスの影響を受け難い中間部にバイアス回路を接続することができる。これにより、例えばバイアス回路を高インピーダンスに設定しなくても、フィルタ装置を安定的に作動させることができ、この状態でフィルタ装置を介して電子部品にバイアス電圧を確実に印加することができる。従って、1/2波長共振器の特性を利用した簡単な構造によってバイアス回路を容易に実現でき、バイアス回路を搭載した状態でも、フィルタとしての高い性能を維持することができる。そして、従来技術の電源プレーン、接地プレーンだけでなく、信号カット用インダクタや直流カット用コンデンサ等の部品点数を削減でき、フィルタ全体の構造や形成工程を簡略化できると共に、生産性を高め、小型化やコストダウンを促進することができる。
【0122】
また、請求項2の発明によれば、バイアス回路を抵抗体により構成したので、簡単な構造の抵抗体を用いてバイアス回路を容易に実現でき、フィルタ全体を小型化することができる。また、バイアス電圧の大きさを抵抗体の抵抗値に応じて適切に設定できるから、バイアス用の外部回路等も簡略化することができる。
【0123】
また、請求項3の発明によれば、抵抗体の抵抗値を5Ω以上に形成する構成としたので、フィルタ装置の挿入損失を、バイアス電圧を印加しない場合とほぼ同様に小さく抑えることができ、バイアス回路を搭載した状態でも、信号を効率よく伝送することができる。
【0124】
また、請求項4の発明によれば、バイアス回路をマイクロストリップラインまたはストリップラインからなる付加線路により構成したので、例えば金属膜等を用いて共振器と付加線路とを同じ工程で一緒に形成でき、これらの構造や形成工程をより簡略化することができる。これにより、バイアス回路を搭載したフィルタ装置を効率よく形成でき、装置全体をより小型化することができる。
【0125】
また、請求項5の発明によれば、付加線路の線路長を高周波信号の波長の1/24〜1/1.1に形成する構成としたので、バイアス用の付加線路を搭載した状態でも、フィルタの挿入損失を十分に低減させることができ、その性能を高めることができる。
【0126】
また、請求項6の発明によれば、バイアス回路をインダクタにより構成したので、例えばコイル等の金属膜からなるインダクタと共振器とを同じ工程で一緒に形成でき、これらの構造や形成工程をより簡略化できると共に、バイアス回路を搭載したフィルタ装置を効率よく形成することができる。また、例えばコイルの巻き数等に応じて大きなインダクタンスを形成でき、設計自由度を高めることができる。
【0127】
また、請求項7の発明によれば、各1/2波長共振器の線路長を互いに異ならしめる構成としたので、フィルタ装置のインピーダンスと、これに接続される電子部品等のインピーダンスとを共振器の寸法差等に応じて容易に整合でき、回路の動作を安定させることができる。また、例えば専用の整合回路等が必要なくなり、回路全体を小型化することができる。また、例えば共振器の線路長を1/2波長から僅かにずらすことにより、1/2波長共振器に生じる不要な高調波を効率よく減衰でき、フィルタの減衰特性を良好な状態に設定することができる。
【0128】
さらに、請求項8の発明によれば、一対の1/2波長共振器の間には、1本または複数本の1/2波長共振器を設ける構成としたので、例えば濾波する信号の周波数帯域が狭い3段以上のフィルタを必要に応じて構成することができ、設計自由度を高めることができる。
【0129】
また、請求項9の発明によれば、フィルタ装置によりインピーダンス変換回路を構成したので、フィルタ装置に機能を付加してインピーダンス変換回路を形成することができる。これにより、フィルタ機能を有する低損失なインピーダンス変換回路をコンパクトに形成でき、回路全体の小型化を図ることができる。
【0130】
また、請求項10の発明によれば、フィルタ装置により平衡−不平衡分配回路を構成したので、フィルタ装置を利用して小型で低損失な平衡−不平衡分配回路を容易に実現することができる。
【0131】
さらに、請求項11の発明によれば、フィルタ装置によりプッシュプル増幅回路を構成したので、フィルタ装置に機能を付加することにより、小型で低損失なプッシュプル増幅回路を容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるフィルタ装置を示す平面図である。
【図2】図1中の矢示II−II方向からみたフィルタ装置の断面図である。
【図3】フィルタ装置、電子部品およびバイアス電源を接続した状態を示す等価的な回路図である。
【図4】バイアス印加用の抵抗体の抵抗値とフィルタの挿入損失との関係を示す特性線図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態によるフィルタ装置を示す平面図である。
【図6】フィルタ装置、電子部品およびバイアス電源を示す等価的な回路図である。
【図7】付加線路の位相とフィルタの挿入損失との関係を示す特性線図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態によるフィルタ装置を示す平面図である。
【図9】図8中のコイル等を拡大して示すフィルタ装置の要部拡大図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態によるフィルタ装置を示す平面図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態によるフィルタ装置を示す回路図である。
【図12】本発明の第6の実施の形態によるフィルタ装置を示す回路図である。
【図13】本発明の第7の実施の形態によるインピーダンス変換回路を示す回路図である。
【図14】本発明の第8の実施の形態による平衡−不平衡分配回路を示す回路図である。
【図15】本発明の第9の実施の形態によるプッシュプル増幅回路を示す回路図である。
【図16】本発明の第1の変形例によるフィルタ装置を示す回路図である。
【図17】本発明の第2の変形例によるフィルタ装置を示す回路図である。
【図18】本発明の第3の変形例によるフィルタ装置を示す回路図である。
【符号の説明】
1,21,31,41,51,61,73,74,82,93,94,101,111,121 フィルタ装置
2,32,83 基板
3,4,42,43,62,84,85 1/2波長共振器
3A,4A,42A,43A 短絡部(中間部)
3B,4B,42B,43B 開放端
5 入力端子
6 出力端子
7 抵抗体(バイアス回路)
8,35 バイアス端子
10,10′ 電子部品
11 バイアス電源
22,44 付加線路(バイアス回路)
33 コイル(バイアス回路)
34 ワイヤ
35 バイアス端子
52,63,88,102,112,122,123 バイアス回路
71 インピーダンス変換回路
72,92 増幅器
81 平衡−不平衡分配回路
86,87 信号端子
91 プッシュプル増幅回路
L,L′,L1,L2,L1′,L2′ 線路長
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば無線通信用の高周波回路等に好適に用いられるフィルタ装置並びにインピーダンス変換回路、平衡−不平衡分配回路及びプッシュプル増幅回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、高周波回路等に用いられるフィルタ装置としては、例えば1/4波長共振器等を用いて構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−23102号公報
【0004】
この種の従来技術によるフィルタ装置は、誘電体からなる基板上に略コ字状の入力共振電極と出力共振電極とが所定の長さをもって形成され、これらの共振電極にはそれぞれ入力端子、出力端子が設けられている。そして、フィルタ装置は、入力端子から入力共振電極に高周波信号が入力されると、この電極の長さを1/4波長(λ/4)とする高周波信号が共振状態で出力共振電極に伝達され、出力端子から外部に出力されるものである。
【0005】
ここで、フィルタ装置を用いて高周波回路等を構成するときには、例えばトランジスタ等からなる電子部品の電源端子をフィルタ装置の入力端子や出力端子に接続し、この状態で電源端子にバイアス電圧を印加することがある。
【0006】
このため、従来技術では、例えばフィルタ装置の基板を積層基板により形成し、この積層基板の表面および内部には、バイアス用の直流電源等に接続される電源プレーンと、接地電位に保持される接地プレーンとを金属膜等によって形成する構成としている。そして、電源プレーンは、スルーホール等を介して一方の共振電極(例えば、出力共振電極)の接地端側に接続され、接地プレーンは、他方の共振電極(入力共振電極)の接地端側に接続されている。
【0007】
これにより、フィルタ装置の作動時には、入力共振電極と出力共振電極との間で高周波信号のフィルタ処理を行いつつ、バイアス用の直流電源等から電源プレーン、出力共振電極、出力端子等を介して電子部品の電源端子にバイアス電圧を印加するものである。
【0008】
この場合、従来技術では、出力共振電極の接地端側に接続された電源プレーンを接地プレーンの近傍に配置し、これらのプレーンを低インピーダンス状態で互いに対向させることにより、高周波信号に対して出力共振電極の接地端側を直接接地した場合と近い状態に保持し、電源プレーンのインピーダンス等によってフィルタの特性が変動するのを防止している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、例えば積層基板の内部および表面に電源プレーンと接地プレーンとを設け、出力共振電極の接地端側に電源プレーンを接続する構成としている。
【0010】
しかし、フィルタ装置の形成時には、電源プレーン、接地プレーン、各スルーホール等が設けられた積層基板を形成する必要がある。このため、従来技術では、バイアス用の回路を搭載することによってフィルタ装置の構造や形成工程が複雑化し、生産性の低下やコストアップを招くという問題がある。
【0011】
また、1/4波長共振器を用いたフィルタ装置は、出力共振電極の接地端側に電源プレーン等のインピーダンスが接続されることによってフィルタの特性が変動し易いため、従来技術では、電源プレーンと接地プレーンとを低インピーダンス状態で対向させる構成としている。
【0012】
しかし、出力共振電極の接地端側は、電源プレーン等を介して接地した場合と近い状態に保持されているに過ぎず、厳密には接地されていない。このため、電源プレーンと接地プレーンとの間のインピーダンス等によってフィルタの特性が悪影響を受け、例えば共振周波数のずれが生じたり、フィルタの挿入損失が増大し易くなるという問題がある。
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、簡単な構造によってバイアス用の回路を搭載でき、この状態でフィルタとして高い性能を維持できるようにしたフィルタ装置並びにインピーダンス変換回路、平衡−不平衡分配回路及びプッシュプル増幅回路を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために請求項1の発明は、誘電体により形成された基板と、該基板に設けられ線路長が波長の1/2となる高周波信号が互いの間に共振状態で伝達する一対の1/2波長共振器と、該各1/2波長共振器のうち一方の共振器に設けられ外部から高周波信号が入力される入力端子と、前記各1/2波長共振器のうち他方の共振器に設けられ前記線路長が波長の1/2となる高周波信号を出力する出力端子と、前記各1/2波長共振器のうち少なくとも片方の共振器の長さ方向中間部に一定のインピーダンスをもって接続され当該共振器を介して前記入力端子または出力端子にバイアス電圧を印加するバイアス回路とからなる構成を採用している。
【0015】
このように構成することにより、入力側と出力側の1/2波長共振器の間には、これらの線路長を1/2波長とする高周波信号を伝達させることができる。この場合、共振器の長さ方向中間部は、高周波信号が伝わるときに電圧が零に保持される仮想的な短絡点となる。このため、共振器の短絡点に一定のインピーダンスをもつバイアス回路を接続したとしても、フィルタの特性(例えば共振周波数、挿入損失等)が変動するのを抑制でき、例えばバイアス回路を高インピーダンスに設定しなくても、フィルタを安定的に作動させることができる。
【0016】
従って、例えばフィルタ装置の入力端子(または出力端子)にトランジスタ等の電子部品を接続し、この電子部品にバイアス回路から共振器を介してバイアス電圧を印加しつつ、フィルタ装置を安定した状態で作動させることができる。
【0017】
また、請求項2の発明によると、バイアス回路は抵抗体により構成し、抵抗体の一端側を1/2波長共振器の中間部に接続し前記抵抗体の他端側をバイアス電源に接続する構成としている。
【0018】
これにより、例えばフィルタ装置の入力端子(または出力端子)に接続した電子部品等に対して、バイアス電源から抵抗体、共振器等を介してバイアス電圧を印加することができる。そして、バイアス電圧の大きさを抵抗体の抵抗値に応じて適切に設定することができる。
【0019】
また、請求項3の発明によると、抵抗体の抵抗値は5Ω以上に形成する構成としている。これにより、抵抗値が5Ωよりも小さい場合と比較して、フィルタの挿入損失を十分に低減することができる。
【0020】
また、請求項4の発明によると、バイアス回路はマイクロストリップラインまたはストリップラインからなる付加線路により構成し、付加線路の一端側を1/2波長共振器の中間部に接続し付加線路の他端側をバイアス電源に接続する構成としている。これにより、例えば金属膜等を用いて共振器と付加線路とを同じ工程で一緒に形成でき、この付加線路をバイアス電源と接続することができる。
【0021】
また、請求項5の発明によると、付加線路の線路長は高周波信号の波長の1/24〜1/1.1に形成する構成としている。これにより、付加線路の線路長が波長の1/24〜1/1.1となる範囲から外れている場合と比較して、フィルタの挿入損失を十分に低減することができる。
【0022】
また、請求項6の発明によると、バイアス回路はインダクタにより構成し、インダクタの一端側を1/2波長共振器の中間部に接続しインダクタの他端側をバイアス電源に接続する構成としている。これにより、例えばコイル等の金属膜からなるインダクタと共振器とを同じ工程で一緒に形成でき、このインダクタをバイアス電源と接続することができる。
【0023】
また、請求項7の発明によると、各1/2波長共振器の線路長を互いに異ならしめる構成としている。これにより、各共振器の線路長を、例えば濾波する高周波信号の1/2波長に近い寸法の範囲内で互いに異ならしめることができ、線路長の寸法差等によってフィルタ装置全体のインピーダンスを調整することができる。また、少なくとも一方の共振器の線路長を1/2波長からずらすことにより、共振器に生じる不要な高調波を減衰させることができる。
【0024】
さらに、請求項8の発明によると、一対の1/2波長共振器の間には該各共振器と間隔をもって延びる1本または複数本の1/2波長共振器を設ける構成としている。これにより、入力端子および出力端子を設ける共振器を含めて3本以上の1/2波長共振器を並べて配置でき、3段以上のフィルタ装置を構成することができる。
【0025】
また、請求項9の発明に係るインピーダンス変換回路は、フィルタ装置を含んで構成している。これにより、フィルタ装置に機能を付加してインピーダンス変換回路を構成することができる。
【0026】
また、請求項10の発明に係る平衡−不平衡分配回路は、フィルタ装置を含んで構成している。
【0027】
さらに、請求項11の発明に係るプッシュプル増幅回路は、フィルタ装置を含んで構成している。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態によるフィルタ装置並びにインピーダンス変換回路、平衡−不平衡分配回路及びプッシュプル増幅回路について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
ここで、図1ないし図4は本発明による第1の実施の形態を示し、本実施の形態では、フィルタ装置としてベアチップ型の2段フィルタを例に挙げて述べる。
【0030】
図中、1はフィルタ装置で、該フィルタ装置1は、例えば誘電体等からなる基板2に2本の1/2波長共振器3,4等を搭載したベアチップ型の2段フィルタとして構成され、外部のマザーボード(図示せず)等に実装されるものである。
【0031】
3,4は基板2の表面側に設けられた一対の1/2波長共振器(以下、共振器3,4という)で、該共振器3,4は、図1、図2に示す如く、例えば金、銀、銅等の導電率が大きな金属材料により薄膜または厚膜として形成され、高周波信号用のマイクロストリップラインとして構成されている。この場合、共振器3,4は、例えば蒸着、スパッタ、メッキ、印刷等の手段によって後述の端子5,6,8と一緒に形成されている。
【0032】
そして、共振器3,4は、例えば細長い四角形の帯状体として形成され、図1中の左,右方向に所定の線路長Lをもって平行に延びると共に、互いに隣接した位置で一定の間隔をもって対向している。
【0033】
ここで、1/2波長共振器3,4の線路長Lは、例えばマイクロ波、ミリ波等に属する所望の共振周波数と、基板2の実効誘電率等とに応じて定められる特定の波長λに対して、この波長λの1/2となる寸法値に予め設定されている(L=λ/2)。
【0034】
これにより、共振器3,4の間には、波長λの高周波信号が共振状態で伝達され、この共振状態において、共振器3,4の長さ方向の中間部(図1中の線路長Lを2等分する中心線M−M上に位置する部位)は、電圧が零に保持される仮想的な短絡部3A,4Aとなり、長さ方向の両端側は開放端3B,4Bとなる。
【0035】
5は入力側の共振器3と接続して基板2上に設けられた入力端子で、該入力端子5は、例えば帯状の金属膜等からなり、共振器3の短絡部3Aと開放端3Bとの間に位置する部位に一体に形成され、共振器3,4から外向きに垂直に延びている。そして、入力端子5には、例えばマザーボード側の信号処理回路(図示せず)等が接続され、入力側の共振器3には、この信号処理回路から入力端子5を介して高周波信号が入力される。
【0036】
6は出力側の共振器4と接続して基板2上に設けられた出力端子で、該出力端子6は、入力端子5とほぼ同様に、共振器4の短絡部4Aと開放端4Bとの間に位置する部位から外向きに垂直に延びて形成され、共振器3,4の長さ方向に対して入力端子5とほぼ等しい位置に配設されている。
【0037】
そして、出力端子6は、前述した特定周波数(波長λ)の高周波信号を共振器4から外部に出力するものであり、本実施の形態では、図3に示す如く、後述する電子部品10の電源端子に接続されるものである。
【0038】
7は基板2上に設けられたバイアス回路としての抵抗体を示し、該抵抗体7は、後述のバイアス電源11から共振器4、出力端子6等を介して電子部品10にバイアス電圧を印加するものである。
【0039】
この場合、抵抗体7は、フィルタ装置1の出力側に接続される電子部品10の接続位置に対応して、例えば出力側の共振器4の短絡部4Aとバイアス電源11との間に接続され、その抵抗値rは、下記数1の式に示すように、例えば5Ω以上(好ましくは10Ω以上)の値に予め設定されている。
【0040】
【数1】
r≧5
【0041】
また、抵抗体7は、例えば窒化タンタル(TaN)、または他の汎用的な抵抗体材料等からなり、例えば蒸着、スパッタ、CVD法等を含めた各種の薄膜プロセスによって成膜するか、またはスクリーン印刷等の圧膜プロセスで塗布することにより形成されている。
【0042】
また、抵抗体7は、例えば細長い四角形状の薄膜または圧膜として形成され、その一端側が共振器4の短絡部4Aに接続されると共に、共振器4から外向きに垂直に延びている。そして、抵抗体7の他端側には、基板2上に設けられた金属膜等からなるバイアス端子8が接続され、このバイアス端子8にはバイアス電源11が接続されるものである。なお、9はグランド側に接続される接地用の導体パターンで、該導体パターン9は、図2に示す如く、基板2の裏面側に全面にわたって設けられている。
【0043】
一方、10は例えばフィルタ装置1の出力端子6に接続される電子部品で、該電子部品10は、例えばトランジスタ、半導体IC等の能動素子からなり、フィルタ装置1と一緒にマザーボード上に実装されると共に、出力端子6から出力される高周波信号に対して所定の信号処理を行うものである。この場合、電子部品10は、例えば出力端子6に接続される端子が電源端子となり、この電源端子にバイアス電圧を印加されることにより作動する構成となっている。
【0044】
11はフィルタ装置1のバイアス端子8に接続されるバイアス電源で、該バイアス電源11は、例えばマザーボード側に配置され、バイアス端子8から抵抗体7、共振器4および出力端子6を介して電子部品10の電源端子に所定の直流電圧(バイアス電圧)を印加するものである。
【0045】
ここで、フィルタ装置1とバイアス電圧との関係について述べると、フィルタ装置1は、1/2波長マイクロストリップライン共振器3,4を用いて構成されているため、その短絡部3A,4Aは、電圧が零に保持される短絡点(接地点)となっている。このため、例えば共振器4の短絡部4Aに対して、インピーダンス(抵抗値r)が比較的低い抵抗体7を接続し、この抵抗体7を介してバイアス電圧を印加したとしても、フィルタの特性(例えば共振周波数、挿入損失等)が設計上の規格等に対して変動するのを抑えることができる。
【0046】
この場合、例えば抵抗値rが極端に小さな抵抗体7を介してバイアス電圧を印加すると、フィルタの挿入損失ILは、図4中の特性線に示す如く、バイアス電圧を印加しない状態での挿入損失値(例えば、0.7dB)と比較して大きくなる。しかし、この特性線から判るように、例えば抵抗値rを5Ω以上に設定した場合には、挿入損失ILを十分に低減することができ、さらに抵抗値rを10Ω以上に設定した場合には、バイアス電圧がない状態とほぼ同様の小さな挿入損失ILを得ることができる。なお、図4に示す特性線は、例えば5GHz程度の周波数帯に用いられ、共振器の無負荷Qが300程度の値に設定された2段フィルタの特性を示すものである。
【0047】
本実施の形態によるフィルタ装置1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0048】
まず、フィルタ装置1は、例えばワイヤボンディング、半田付け、バンプ実装等の手段を用いてマザーボード上に実装される。この場合、フィルタ装置1の入力端子5はマザーボード側の信号処理回路等に接続され、出力端子6は電子部品10の電源端子に接続され、バイアス端子8はバイアス電源11に接続される。
【0049】
そして、マザーボードから入力端子5に高周波信号が入力されると、この信号のうち波長λを有する特定の高周波信号は、共振器3から共振器4へと共振状態で伝達されることにより、出力端子6から電子部品10に出力される。
【0050】
このとき、電子部品10の電源端子には、マザーボード側のバイアス電源11からバイアス端子8、抵抗体7、共振器4および出力端子6を介してバイアス電圧が印加されているため、電子部品10は、出力端子6から出力される高周波信号に対して所定の信号処理を行うことができる。
【0051】
かくして、本実施の形態によれば、1/2波長共振器4の短絡部4Aに抵抗体7を接続し、この抵抗体7等を介してバイアス電源11から電子部品10にバイアス電圧を印加する構成としたので、共振器4のうち外部インピーダンスの影響を受け難い短絡部4Aに抵抗体7を介してバイアス電源11を接続でき、これらを接続することによってフィルタ装置1の共振周波数がずれたり、挿入損失が増大するのを確実に防止することができる。
【0052】
これにより、例えば抵抗体7の抵抗値を極端に大きくしなくても、フィルタ装置1を安定的に作動させることができ、この状態でフィルタ装置1を介して電子部品10にバイアス電圧を確実に印加することができる。
【0053】
従って、フィルタ装置1の基板2上に小さな抵抗体7等を配置するだけで、バイアス電源11側を高インピーダンスに設定する必要がなくなり、1/2波長共振器の特性を利用した簡単な構造によってバイアス用の回路を容易に実現できると共に、バイアス用の抵抗体7を搭載した状態でも、フィルタとしての高い性能を維持することができる。
【0054】
そして、例えば信号カット用のインダクタ、抵抗等からなる大きな回路部品を介してバイアス電源11を高インピーダンスで共振器4と接続したり、従来技術のように電源プレーン、接地プレーン等を積層してバイアス用の複雑な回路を形成する必要がなくなるから、バイアス用の回路を含めてフィルタ装置1全体の構造や形成工程を簡略化でき、これらを小型化できると共に、生産性を高めてコストダウンを促進することができる。
【0055】
また、グランド側から絶縁された共振器4を用いて電子部品10の電源端子にバイアス電圧を印加できるので、共振器4とグランド側との間を絶縁する直流カット用のコンデンサ等も不要となり、フィルタ装置1を含めて高周波回路全体の部品点数を削減することができる。
【0056】
そして、前述した信号カット用のインダクタや直流カット用のコンデンサ等を用いることにより、これらの定数ばらつき等によってフィルタの特性が変動するのを防止でき、高周波回路を安定的に作動させることができる。
【0057】
また、抵抗体7の抵抗値rを、例えば5Ω以上、好ましくは10Ω以上に設定したので、フィルタ装置1の挿入損失を、バイアス電圧を印加しない場合とほぼ同様に小さく抑えることができ、バイアス用の抵抗体7を搭載した状態でも、信号を効率よく伝送することができる。
【0058】
また、バイアス電源11により抵抗体7を介して電子部品10にバイアス電圧を印加できるから、バイアス電圧の大きさを抵抗体7の抵抗値に応じて適切に設定でき、バイアス用の外部回路等も簡略化することができる。
【0059】
さらに、例えばワイヤボンディング、半田付け、バンプ実装等の手段によりフィルタ装置1をマザーボードに実装するときには、ワイヤ、半田、バンプの形状ばらつき等が原因でバイアス端子8とマザーボード側との間のインダクタンス成分にばらつきが生じ易い。
【0060】
しかし、このインダクタンス成分は、外部インピーダンスの影響を受け難い短絡部4Aで共振器4に接続されているので、フィルタ装置1の性能が実装状態のばらつき等により変動するのを防止することができる。これにより、安定した性能をもつベアチップ型のフィルタ装置1を用いてMCM(Multi Chip
Module)構造の高周波回路等を容易に実現することができる。
【0061】
次に、図5ないし図7は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、バイアス回路をマイクロストリップラインにより構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0062】
21はフィルタ装置で、該フィルタ装置21は、第1の実施の形態とほぼ同様に、基板2、1/2波長共振器3,4、入力端子5、出力端子6等によって構成されている。しかし、フィルタ装置21には、第1の実施の形態の抵抗体7に代えて後述の付加線路22が搭載されている。
【0063】
22は基板2上に設けられたバイアス回路としての付加線路で、該付加線路22は、例えば帯状の金属膜等からなり、共振器3,4等と同じ工程で一緒に形成されると共に、マイクロストリップラインとして構成されている。
【0064】
ここで、付加線路22は、その一端側が例えば出力側の共振器4の短絡部4Aに接続され、共振器3,4から外向きに所定の線路長L′をもって垂直に延びている。また、付加線路22の他端側には、図6に示す如く、バイアス電源11が接続されるものである。
【0065】
そして、付加線路22は、共振器4の短絡部4Aとバイアス電源11との間に線路長L′に応じた所定のインダクタンスをもって接続され、バイアス電源11から共振器4、出力端子6等を介して電子部品10にバイアス電圧を印加する構成となっている。
【0066】
この場合、付加線路22の線路長L′とフィルタ装置21の挿入損失ILとの関係について述べると、図7に示す特性線のようになる。この特性線は、第1の実施の形態とほぼ同様に、例えば5GHz程度の周波数帯に用いられる2段フィルタの特性を示している。また、付加線路22の位相とは、その一端側(共振器4の短絡部4A)と他端側との間における高周波信号の位相差であり、付加線路22の線路長L′(インダクタンス)に応じて増減するものである。
【0067】
そして、この特性線から判るように、例えば付加線路22の位相が15°〜330°の範囲内となる場合には、バイアス電圧を印加しない状態とほぼ同様の小さな挿入損失ILを得ることができる。また、本実施の形態において、この位相範囲(15°〜330°)の下限値となる位相15°は、例えば付加線路22の線路長L′をλ/24とした場合に相当し、上限値となる位相330°は、線路長L′をλ/1.1とした場合に相当している。この場合、波長λは、フィルタ装置21により濾波する周波数帯の中心周波数に対応する波長である。
【0068】
従って、下記数2の式に示すように、付加線路22の線路長L′をλ/24〜λ/1.1の範囲に設定することにより、フィルタ装置21を介して電子部品10にバイアス電圧を印加しつつ、挿入損失ILを十分に低減することができる。
【0069】
【数2】
λ/1.1≧L′≧λ/24
但し、λ:濾波する中心周波数の波長
【0070】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、バイアス回路として付加線路22を用いる構成としたので、例えば蒸着、スパッタ、メッキ、印刷等の手段によって共振器3,4、各端子5,6および付加線路22を同じ工程で一緒に効率良く形成でき、これらの構造や形成工程をより簡略化できると共に、フィルタ装置21をさらに小型化することができる。
【0071】
また、付加線路22の線路長L′をλ/24〜λ/1.1の範囲に設定したので、バイアス用の付加線路22を搭載した状態でも、フィルタの挿入損失ILを十分に低減でき、その性能を高めることができる。
【0072】
次に、図8および図9は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、バイアス回路をコイルにより構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0073】
31はフィルタ装置で、該フィルタ装置31は、第1の実施の形態とほぼ同様に、基板32、1/2波長共振器3,4、入力端子5、出力端子6等により構成されている。しかし、基板32は、例えば複数の誘電体層を積層した積層基板として形成され、この基板32には後述のコイル33が搭載されている。
【0074】
33は基板32に設けられたバイアス回路としてのコイルで、該コイル33は、図9に示す如く、例えば渦巻き状の細幅な金属膜等によりインダクタとして形成され、共振器3,4等と同じ工程で一緒に形成されている。そして、コイル33は、第2の実施の形態とほぼ同様に、共振器4の短絡部4Aとバイアス電源(図示せず)との間に所定のインダクタンスをもって接続され、バイアス電源から共振器4、出力端子6等を介して電子部品10にバイアス電圧を印加するものである。
【0075】
ここで、コイル33は、その一端側(外周側)が共振器4の短絡部4Aに接続され、コイル33の他端側(内周側)は、例えば基板32に設けられたワイヤ34を介してバイアス端子35に接続されている。この場合、バイアス端子35は、コイル33の外周側に位置して基板32上に設けられ、バイアス電源に接続されるものである。
【0076】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1,第2の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、コイル33を用いる構成としたので、例えばコイル33の巻き数等に応じて大きなインダクタンスを形成でき、設計自由度を高めることができる。
【0077】
次に、図10は本発明による第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、入力側と出力側の共振器の線路長を互いに異ならしめる構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0078】
41はフィルタ装置で、該フィルタ装置41は、第2の実施の形態とほぼ同様に、基板2、入力端子5、出力端子6と、後述の1/2波長共振器42,43、付加線路44とを含んで構成されている。
【0079】
42,43は基板2上に設けられた一対の1/2波長共振器(以下、共振器42,43という)で、該共振器42,43は、第1の実施の形態とほぼ同様に、例えば帯状の金属膜等からなり、互いに一定の間隔Dをもって対向するように平行に配置されている。そして、共振器42には、短絡部42Aと開放端42Bとの間に入力端子5が設けられ、共振器43には、短絡部43Aと開放端43Bとの間に出力端子6が設けられている。
【0080】
ここで、入力側の共振器42は、例えば濾波する高周波信号に対して、その波長λの1/2となる所定の線路長L1をもって形成されている(L1=λ/2)。また、出力側の共振器43は、例えば波長λの1/2に近い線路長L2をもって形成されているものの、この線路長L2は、共振器42の線路長L1と異なる寸法値に設定されている(L2≠L1)。
【0081】
これにより、共振器42,43は、波長λの高周波信号を互いの間に共振状態で伝達しつつ、波長が(2n−1)×λ/2となる高調波の伝達を抑制する構成となっている(nは1よりも大きな整数)。
【0082】
44は基板2上に設けられたバイアス回路としての付加線路で、該付加線路44は、第2の実施の形態とほぼ同様に、例えば出力側の共振器43の短絡部43Aに接続されている。この場合、付加線路44と出力端子6とは、共振器43の長さ方向に沿って所定の寸法S分だけ離間している。
【0083】
そして、フィルタ装置41は、例えば共振器42,43の線路長L1,L2、間隔D、付加線路44と出力端子6との間の寸法S等を変更することにより、装置全体としてのインピーダンスを調整できるものである。
【0084】
この場合、フィルタ装置41全体のインピーダンスをZ(=R+jX)とすると、インピーダンスZの調整時には、例えば共振器42,43の線路長L1,L2の差を大きくするか、または両者の間隔Dを狭くすることにより、実部Rを減少させることができる。また、例えば付加線路44と出力端子6との間の寸法Sを小さくすることにより、虚部Xを減少させることができる。
【0085】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、共振器42,43の線路長L1,L2を異ならしめる構成としたので、フィルタ装置41を形成するときには、これらの線路長L1,L2や間隔D、寸法S等を変更することにより装置全体のインピーダンスを容易に調整することができる。
【0086】
これにより、フィルタ装置41のインピーダンスと、これに接続される電子部品10等のインピーダンスとを高い精度で整合でき、高周波回路の動作を安定させることができる。また、例えば専用の整合回路等が必要なくなり、回路全体をより小型化することができる。
【0087】
また、例えば共振器43の線路長L2をλ/2から僅かにずらすことにより、共振器42,43に生じる不要な高調波を効率よく減衰させることができる。これにより、各共振器42,43の間に高調波が伝達するのを抑制でき、フィルタ装置41の減衰特性を良好な状態に設定することができる。
【0088】
次に、図11は本発明による第5の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、入力端子側の共振器に電子部品とバイアス回路とを接続する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0089】
51はフィルタ装置で、該フィルタ装置51は、第1の実施の形態とほぼ同様に、基板2、1/2波長共振器3,4、入力端子5、出力端子6と、後述のバイアス回路52等により構成されている。しかし、フィルタ装置51には、その入力端子5に電子部品10の電源端子が接続される構成となっている。
【0090】
52は基板2に設けられたバイアス回路で、該バイアス回路52は、第1ないし第3の実施の形態で用いた抵抗体7、付加線路22またはコイル33のいずれかにより構成されている。そして、バイアス回路52は、入力側の共振器3の短絡部3Aとバイアス電源11との間に所定のインピーダンスをもって接続され、バイアス電源11から共振器3、入力端子5等を介して電子部品10にバイアス電圧を印加するものである。
【0091】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、フィルタ装置51の入力側に電子部品10を接続する場合にも適用でき、設計自由度を高めることができる。
【0092】
次に、図12は本発明による第6の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、入力側と出力側の共振器の間に他の共振器を設け、3段以上のフィルタ装置を構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0093】
61はフィルタ装置で、該フィルタ装置61は、第1の実施の形態とほぼ同様に、基板2、1/2波長共振器3,4、入力端子5、出力端子6と、後述のバイアス回路63とにより構成されている。しかし、フィルタ装置61は、共振器3,4間に後述する1本または複数本の1/2波長共振器62が設けられ、3段以上のフィルタとして構成されている。
【0094】
62は入力側の共振器3と出力側の共振器4との間に1本または複数本設けられた中間位置の1/2波長共振器(以下、共振器62という)で、該中間位置の共振器62は、共振器3,4とほぼ同様に、帯状の金属膜等として基板2に設けられ、これらの共振器3,4,62は互いに一定の間隔をもって並んだ状態で平行に延びている。
【0095】
63は基板2に設けられたバイアス回路で、該バイアス回路63は、第1ないし第3の実施の形態で用いた抵抗体7、付加線路22またはコイル33のいずれかにより構成され、例えば共振器4の短絡部4Aとバイアス電源11との間に接続されているものである。
【0096】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、共振器3,4と、1本または複数本の共振器62とによって3段以上のフィルタ装置61を構成したので、例えば濾波する信号の周波数帯域が狭いフィルタを必要に応じて形成でき、設計自由度を高めることができる。
【0097】
次に、図13は本発明による第7の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、フィルタ装置を用いてインピーダンス変換回路を構成したことにある。
【0098】
71はインピーダンス変換回路で、該インピーダンス変換回路71は、高周波信号を増幅する増幅器72と、該増幅器72の入力側に接続されたフィルタ装置73と、増幅器72の出力側に接続された他のフィルタ装置74とを含んで構成されている。
【0099】
ここで、フィルタ装置73,74は、例えば第1ないし第6の実施の形態によるフィルタ装置1,21,31,41,51,61のいずれかを用いてそれぞれ構成され、インピーダンスの変換機能を有している。そして、入力側のフィルタ装置73は、変換回路71の入力側に接続される回路(図示せず)のインピーダンスと増幅器72の入力インピーダンスとを整合する。また、出力側のフィルタ装置74は、変換回路71の出力側に接続される回路(図示せず)のインピーダンスと増幅器72の出力インピーダンスとを整合するものである。
【0100】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1ないし第6の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、例えば2個のフィルタ装置73,74を用いてインピーダンス変換回路71を構成したので、インピーダンス変換回路71は、入力側の回路と出力側の回路との間で高周波信号のフィルタ、増幅等を行いつつ、これらの回路間のインピーダンスを容易に整合することができる。これにより、フィルタ機能を有する低損失なインピーダンス変換回路71をコンパクトに形成でき、回路全体の小型化を図ることができる。
【0101】
次に、図14は本発明による第8の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、フィルタ装置を用いて平衡−不平衡分配回路を構成したことにある。
【0102】
81は平衡−不平衡分配回路、82は該平衡−不平衡分配回路81を構成するフィルタ装置で、該フィルタ装置82は、前記第1ないし第6の実施の形態によるフィルタ装置1,21,31,41,51,61のいずれかを用いて構成されている。そして、フィルタ装置82は、基板83、1/2波長共振器84,85、信号端子86,87、バイアス回路88等を有している。
【0103】
ここで、共振器84,85は、第4の実施の形態とほぼ同様に、互いに異なる線路長L1′,L2′をもって形成され、入力側と出力側との間でインピーダンスの変換を行う構成となっている。また、一方の共振器84には、例えば中心線M−Mから離れた位置に信号端子86が設けられている。また、他方の共振器85には、例えば2個の信号端子87が設けられ、これらの信号端子87は中心線M−Mから長さ方向の両側に互いに等しい寸法S′分だけ離間している。
【0104】
そして、平衡−不平衡分配回路81は、信号端子86,87のうちいずれか一方を入力端子とし、他方を出力端子として作動する。この場合、例えば信号端子86に高周波信号(不平衡信号)を入力したときには、各信号端子87から互いに180°の位相差をもつ信号(位相差が180°に分配された平衡信号)がそれぞれ出力される。
【0105】
また、平衡−不平衡分配回路81は、各信号端子87に対して互いに180°の位相差をもつ平衡信号をそれぞれ入力したときに、これらの信号を合成した不平衡信号を信号端子86から出力する構成となっている。
【0106】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1ないし第6の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、フィルタ装置82に機能を付加することにより、小型で低損失な平衡−不平衡分配回路81を容易に実現することができる。
【0107】
次に、図15は本発明による第9の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、フィルタ装置を用いてプッシュプル増幅回路を構成したことにある。
【0108】
91はプッシュプル増幅回路で、該プッシュプル増幅回路91は、プッシュプル動作(平衡動作)を行う2個の増幅器92と、該各増幅器92の入力側に接続されたフィルタ装置93と、各増幅器92の出力側に接続された他のフィルタ装置94とを含んで構成されている。
【0109】
この場合、フィルタ装置93,94は、第1ないし第6の実施の形態によるフィルタ装置1,21,31,41,51,61のいずれかを用いてそれぞれ構成されている。また、プッシュプル増幅回路91は、フィルタ装置93,94を用いたインピーダンスの変換機能と、前記第8の実施の形態とほぼ同様の平衡−不平衡変換機能とを備えている。
【0110】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1ないし第6の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、フィルタ装置93,94に機能を付加することにより、小型で低損失なプッシュプル増幅回路91を容易に構成することができる。
【0111】
なお、前記各実施の形態では、入力側または出力側の共振器3,4,42,43に抵抗体7、付加線路22,44、コイル33、バイアス回路52,63等を介してバイアス電源11を接続する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、バイアス回路の接続箇所が1/2波長共振器の中央からずれたときの高周波信号の損失をなくすため、例えば図16に示す第1の変形例のように構成してもよい。この場合、フィルタ装置101は、前記第5の実施の形態とほぼ同様のバイアス回路102を有し、このバイアス回路102とバイアス電源11との間には、これらの接続部位とグランド側との間に位置してコンデンサ103が接続されている。
【0112】
また、本発明のフィルタ装置は、例えば図17に示す第2の変形例のように構成してもよい。この場合、フィルタ装置111のバイアス回路112とバイアス電源11との間には、例えばマイクロストリップライン等の線路部材113が接続され、この線路部材113は、例えば濾波する高周波信号の波長λの1/4となる線路長L″をもって形成されている。
【0113】
また、実施の形態では、共振器3,4のいずれかに抵抗体7、付加線路22,44、コイル33、バイアス回路52,63等を設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図18に示す第3の変形例のように構成してもよい。この場合、フィルタ装置121の入力側の共振器3には、バイアス電源11から電子部品10にバイアス電圧を印加する入力側のバイアス回路122が設けられ、出力側の共振器4には、バイアス電源11から他の電子部品10′にバイアス電圧を印加する出力側のバイアス回路123が設けられている。
【0114】
一方、前記各実施の形態では、共振器3,4,42,43,62、付加線路22,44等をマイクロストリップラインにより構成した。しかし、本発明では、これらの線路をストリップラインによって構成してもよいのは勿論である。
【0115】
また、前記各実施の形態では、これらの線路をストリップラインにより構成する場合に限らず、フィルタ装置を多層基板により形成し、例えば共振器、各端子、バイアス回路等を多層基板の内部に埋設する構成としてもよい。
【0116】
また、第1の実施の形態では、抵抗体材料の薄膜または厚膜からなる抵抗体7を用いる構成とした。この場合、本発明は、抵抗体7の材料を限定するものではなく、例えばチップ抵抗等を含めて任意の抵抗体材料を用いることができる。
【0117】
また、第3の実施の形態では、バイアス印加用のインダクタンスとしてコイル33を用いる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、インダクタンスをもつ任意の材料を使用でき、例えば基板の表面、内部等に設けた薄膜または厚膜状の金属材料や、チップ素子あるいはマザーボードとの接続用であるワイヤ等によりインダクタンスを構成してもよい。
【0118】
また、第4の実施の形態では、入力側の共振器42の線路長L1をλ/2に形成し、これと出力側の共振器43の線路長L2とを異ならしめる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば出力側の共振器の線路長をλ/2に形成し、これと入力側の共振器の線路長とを異ならしめる構成としてもよく、さらには入力側と出力側の共振器が両方ともλ/2に対して僅かに異なる寸法値をもつ構成としてもよい。
【0119】
また、実施の形態では、付加線路44を用いる第4の実施の形態で共振器42,43の線路長L1,L2を異ならしめる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、抵抗体7やコイル33(バイアス回路52,63)を用いる第1,第3,第5,第6の実施の形態においても、共振器3,4の線路長が互いに異なる構成としてもよい。
【0120】
さらに、実施の形態では、ベアチップ型のフィルタ装置1,21,31,41,51,61をマザーボードに実装する場合を例に挙げて述べた。しかし、本発明はこれに限らず、例えばフィルタ装置の共振器、各端子およびバイアス回路を、基板としてのマザーボードに対して周囲の電子部品、バイアス電源等と一緒に実装する構成としてもよい。
【0121】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1の発明によれば、一対の1/2波長共振器のうち少なくとも片方の共振器の中間部に一定のインピーダンスをもつバイアス回路を接続する構成としたので、1/2波長共振器のうち外部インピーダンスの影響を受け難い中間部にバイアス回路を接続することができる。これにより、例えばバイアス回路を高インピーダンスに設定しなくても、フィルタ装置を安定的に作動させることができ、この状態でフィルタ装置を介して電子部品にバイアス電圧を確実に印加することができる。従って、1/2波長共振器の特性を利用した簡単な構造によってバイアス回路を容易に実現でき、バイアス回路を搭載した状態でも、フィルタとしての高い性能を維持することができる。そして、従来技術の電源プレーン、接地プレーンだけでなく、信号カット用インダクタや直流カット用コンデンサ等の部品点数を削減でき、フィルタ全体の構造や形成工程を簡略化できると共に、生産性を高め、小型化やコストダウンを促進することができる。
【0122】
また、請求項2の発明によれば、バイアス回路を抵抗体により構成したので、簡単な構造の抵抗体を用いてバイアス回路を容易に実現でき、フィルタ全体を小型化することができる。また、バイアス電圧の大きさを抵抗体の抵抗値に応じて適切に設定できるから、バイアス用の外部回路等も簡略化することができる。
【0123】
また、請求項3の発明によれば、抵抗体の抵抗値を5Ω以上に形成する構成としたので、フィルタ装置の挿入損失を、バイアス電圧を印加しない場合とほぼ同様に小さく抑えることができ、バイアス回路を搭載した状態でも、信号を効率よく伝送することができる。
【0124】
また、請求項4の発明によれば、バイアス回路をマイクロストリップラインまたはストリップラインからなる付加線路により構成したので、例えば金属膜等を用いて共振器と付加線路とを同じ工程で一緒に形成でき、これらの構造や形成工程をより簡略化することができる。これにより、バイアス回路を搭載したフィルタ装置を効率よく形成でき、装置全体をより小型化することができる。
【0125】
また、請求項5の発明によれば、付加線路の線路長を高周波信号の波長の1/24〜1/1.1に形成する構成としたので、バイアス用の付加線路を搭載した状態でも、フィルタの挿入損失を十分に低減させることができ、その性能を高めることができる。
【0126】
また、請求項6の発明によれば、バイアス回路をインダクタにより構成したので、例えばコイル等の金属膜からなるインダクタと共振器とを同じ工程で一緒に形成でき、これらの構造や形成工程をより簡略化できると共に、バイアス回路を搭載したフィルタ装置を効率よく形成することができる。また、例えばコイルの巻き数等に応じて大きなインダクタンスを形成でき、設計自由度を高めることができる。
【0127】
また、請求項7の発明によれば、各1/2波長共振器の線路長を互いに異ならしめる構成としたので、フィルタ装置のインピーダンスと、これに接続される電子部品等のインピーダンスとを共振器の寸法差等に応じて容易に整合でき、回路の動作を安定させることができる。また、例えば専用の整合回路等が必要なくなり、回路全体を小型化することができる。また、例えば共振器の線路長を1/2波長から僅かにずらすことにより、1/2波長共振器に生じる不要な高調波を効率よく減衰でき、フィルタの減衰特性を良好な状態に設定することができる。
【0128】
さらに、請求項8の発明によれば、一対の1/2波長共振器の間には、1本または複数本の1/2波長共振器を設ける構成としたので、例えば濾波する信号の周波数帯域が狭い3段以上のフィルタを必要に応じて構成することができ、設計自由度を高めることができる。
【0129】
また、請求項9の発明によれば、フィルタ装置によりインピーダンス変換回路を構成したので、フィルタ装置に機能を付加してインピーダンス変換回路を形成することができる。これにより、フィルタ機能を有する低損失なインピーダンス変換回路をコンパクトに形成でき、回路全体の小型化を図ることができる。
【0130】
また、請求項10の発明によれば、フィルタ装置により平衡−不平衡分配回路を構成したので、フィルタ装置を利用して小型で低損失な平衡−不平衡分配回路を容易に実現することができる。
【0131】
さらに、請求項11の発明によれば、フィルタ装置によりプッシュプル増幅回路を構成したので、フィルタ装置に機能を付加することにより、小型で低損失なプッシュプル増幅回路を容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるフィルタ装置を示す平面図である。
【図2】図1中の矢示II−II方向からみたフィルタ装置の断面図である。
【図3】フィルタ装置、電子部品およびバイアス電源を接続した状態を示す等価的な回路図である。
【図4】バイアス印加用の抵抗体の抵抗値とフィルタの挿入損失との関係を示す特性線図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態によるフィルタ装置を示す平面図である。
【図6】フィルタ装置、電子部品およびバイアス電源を示す等価的な回路図である。
【図7】付加線路の位相とフィルタの挿入損失との関係を示す特性線図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態によるフィルタ装置を示す平面図である。
【図9】図8中のコイル等を拡大して示すフィルタ装置の要部拡大図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態によるフィルタ装置を示す平面図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態によるフィルタ装置を示す回路図である。
【図12】本発明の第6の実施の形態によるフィルタ装置を示す回路図である。
【図13】本発明の第7の実施の形態によるインピーダンス変換回路を示す回路図である。
【図14】本発明の第8の実施の形態による平衡−不平衡分配回路を示す回路図である。
【図15】本発明の第9の実施の形態によるプッシュプル増幅回路を示す回路図である。
【図16】本発明の第1の変形例によるフィルタ装置を示す回路図である。
【図17】本発明の第2の変形例によるフィルタ装置を示す回路図である。
【図18】本発明の第3の変形例によるフィルタ装置を示す回路図である。
【符号の説明】
1,21,31,41,51,61,73,74,82,93,94,101,111,121 フィルタ装置
2,32,83 基板
3,4,42,43,62,84,85 1/2波長共振器
3A,4A,42A,43A 短絡部(中間部)
3B,4B,42B,43B 開放端
5 入力端子
6 出力端子
7 抵抗体(バイアス回路)
8,35 バイアス端子
10,10′ 電子部品
11 バイアス電源
22,44 付加線路(バイアス回路)
33 コイル(バイアス回路)
34 ワイヤ
35 バイアス端子
52,63,88,102,112,122,123 バイアス回路
71 インピーダンス変換回路
72,92 増幅器
81 平衡−不平衡分配回路
86,87 信号端子
91 プッシュプル増幅回路
L,L′,L1,L2,L1′,L2′ 線路長
Claims (11)
- 誘電体により形成された基板と、
該基板に設けられ線路長が波長の1/2となる高周波信号が互いの間に共振状態で伝達する一対の1/2波長共振器と、
該各1/2波長共振器のうち一方の共振器に設けられ外部から高周波信号が入力される入力端子と、
前記各1/2波長共振器のうち他方の共振器に設けられ前記線路長が波長の1/2となる高周波信号を出力する出力端子と、
前記各1/2波長共振器のうち少なくとも片方の共振器の長さ方向中間部に一定のインピーダンスをもって接続され当該共振器を介して前記入力端子または出力端子にバイアス電圧を印加するバイアス回路とにより構成してなるフィルタ装置。 - 前記バイアス回路は抵抗体により構成し、前記抵抗体の一端側を前記1/2波長共振器の中間部に接続し前記抵抗体の他端側をバイアス電源に接続する構成としてなる請求項1に記載のフィルタ装置。
- 前記抵抗体の抵抗値は5Ω以上に形成してなる請求項2に記載のフィルタ装置。
- 前記バイアス回路はマイクロストリップラインまたはストリップラインからなる付加線路により構成し、前記付加線路の一端側を前記1/2波長共振器の中間部に接続し前記付加線路の他端側をバイアス電源に接続する構成としてなる請求項1に記載のフィルタ装置。
- 前記付加線路の線路長は前記高周波信号の波長の1/24〜1/1.1に形成してなる請求項4に記載のフィルタ装置。
- 前記バイアス回路はインダクタにより構成し、前記インダクタの一端側を前記1/2波長共振器の中間部に接続し前記インダクタの他端側をバイアス電源に接続する構成としてなる請求項1に記載のフィルタ装置。
- 前記各1/2波長共振器の線路長を互いに異ならしめる構成としてなる請求項1,2,3,4,5または6に記載のフィルタ装置。
- 前記一対の1/2波長共振器の間には該各共振器と間隔をもって延びる1本または複数本の1/2波長共振器を設けてなる請求項1,2,3,4,5,6または7に記載のフィルタ装置。
- 請求項1ないし8のいずれかに記載のフィルタ装置を含んで構成してなるインピーダンス変換回路。
- 請求項1ないし8のいずれかに記載のフィルタ装置を含んで構成してなる平衡−不平衡分配回路。
- 請求項1ないし8のいずれかに記載のフィルタ装置を含んで構成してなるプッシュプル増幅回路。
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