JP2004330876A - 車両用液圧ブレーキ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液圧系に対し調圧弁の出力液圧を供給する液圧路を、開閉弁によって開閉する車両用液圧ブレーキ装置において、アンチロック制御開始時に開閉弁の作動状態を判定し得る簡単且つ安価な装置を提供する。
【解決手段】マスタシリンダMCからホイールシリンダW1等に至る液圧系MHに対し調圧弁RGの出力液圧を供給する液圧路Hbを接続し、この液圧路を開閉する電磁開閉弁NCを設け、この電磁開閉弁が閉位置にあるときに調圧弁RGの出力液圧をマスタシリンダMCの出力ブレーキ液圧より高圧に設定する差圧設定手段(例えば圧縮スプリング8)を設ける。アンチロック制御が開始し電磁開閉弁を開位置としたときに、圧力センサSmcによって検出した液圧系MHの検出液圧と、ブレーキ操作量に応じた圧力センサSrgの検出液圧の比較結果に応じて電磁開閉弁の作動状態を判定する。
【選択図】 図1
【解決手段】マスタシリンダMCからホイールシリンダW1等に至る液圧系MHに対し調圧弁RGの出力液圧を供給する液圧路Hbを接続し、この液圧路を開閉する電磁開閉弁NCを設け、この電磁開閉弁が閉位置にあるときに調圧弁RGの出力液圧をマスタシリンダMCの出力ブレーキ液圧より高圧に設定する差圧設定手段(例えば圧縮スプリング8)を設ける。アンチロック制御が開始し電磁開閉弁を開位置としたときに、圧力センサSmcによって検出した液圧系MHの検出液圧と、ブレーキ操作量に応じた圧力センサSrgの検出液圧の比較結果に応じて電磁開閉弁の作動状態を判定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の車輪ブレーキ機構のホイールシリンダにブレーキ液圧を供給する液圧ブレーキ装置に関し、特に、マスタシリンダからホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を制御する液圧制御弁を備え、この液圧制御弁によりアンチロック制御を行い得る車両用液圧ブレーキ装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
マスタシリンダからホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を制御する液圧制御弁を備え、この液圧制御弁によりアンチスキッド制御(アンチロック制御)等を行う車両用液圧ブレーキ装置が知られており、例えば下記の特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭59−130769号公報
【0004】
上記の特許文献1には、「本発明は、ブレーキ力倍力装置とアンチスキッド装置とを備えた油圧式の自動車ブレーキ系であって、マスタブレーキシリンダを備えた少なくとも1つの閉回路が設けられていて、該マスタブレーキシリンダのピストンが、ペダル操作されるブレーキ圧制御弁によって一方の圧力源の圧力から導かれた前圧によって負荷されるようになっており、前記マスタブレーキシリンダの少なくとも1つと、所属の車輪がロックされそうになった時にブレーキ圧を制御するために操作される車輪ブレーキシリンダとの間に少なくとも1つのアンチスキッド弁が設けられており、さらに、所定のシチュエーションでこのアンチスキッド弁に他方の圧力源からの圧力を作用せしめるための弁装置が設けられている形式のものに関する」と記載され、その第6図に構造が開示されている。
【0005】
そして、「本発明による自動車ブレーキ系は、他方の圧力源からの圧力が前圧であって、マスタシリンダピストン又はブレーキペダルが所定の程度だけ変位せしめられた時に及び(又は)ロック傾向が生じたときに弁装置が制御されるように構成されている」旨記載されている。
【0006】
更に、上記の特許文献1には、その第6図による4ポート4位置弁のための切換え制御回路が第7図に示され、これに関し、「さらに、アンド・ゲート72は、マスタシリンダに接続されたブレーキ回路が断絶した時にしや断されるようになっている。これはスイッチ57、58によって検出される。つまり、スイッチ57(端子69)と、スイッチ58(端子70)の第1段とが応答し、スイッチ58(端子71)の第2段が応答しない時にしや断される」旨記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、アンチスキッド制御(アンチロック制御)を行い得る車両用液圧ブレーキ装置においては、所定の液圧を発生して出力する液圧源と、この液圧源の出力液圧を運転者のブレーキ操作に応じて制御し、マスタピストンを前進駆動してマスタ液圧室からブレーキ液圧を出力するマスタシリンダと、このマスタシリンダの出力ブレーキ液圧によって車両の各車輪に対し制動力を付与するホイールシリンダと、ホイールシリンダとマスタ液圧室との間の液圧路(マスタシリンダ液圧系)に介装しホイールシリンダ内のブレーキ液圧を制御する液圧制御弁とを備えている。
【0008】
更に、上記の構成に加え、運転者のブレーキ操作に応じて、液圧源の出力液圧を調圧して出力する調圧弁を備え、この調圧弁の出力液圧を圧力室に導入し、圧力室の液圧によってマスタピストンを前進駆動するように構成した液圧ブレーキ装置も知られており、特許文献1に記載の装置も同様と解される。
【0009】
このような液圧ブレーキ装置においては、液圧制御弁によってホイールシリンダ内が減圧される場合に、マスタシリンダ用の大気圧リザーバにブレーキ液が排出されるように構成することが簡便であり、安価な装置となる。しかし、このような装置においては、減圧作動が繰り返されるとマスタピストンが前進し、シリンダ内の前端まで達すると、マスタシリンダからホイールシリンダへのブレーキ液圧の供給ができなくなる。
【0010】
前掲の特許文献1において、その第6図に記載された装置も同様に、圧力源45の出力液圧を制御室44内で制御圧に調整し(調圧し)、ピストン47を前進駆動するように構成されている。そして、上記の問題を解決するため、ブレーキ圧制御弁(液圧制御弁)51,52によって車輪ブレーキシリンダ内が減圧される場合に、制御室44内で調整された制御圧が車輪ブレーキシリンダ(液圧系)に供給されるようブレーキ圧制御弁53が構成されている。しかし、同装置においても、例えばブレーキ圧制御弁53が正常に作動せず、制御室44内で調整された制御圧が車輪ブレーキシリンダ(液圧系)に供給できない場合には、減圧作動が繰り返されるとマスタピストンが前進するので、シリンダ内の前端まで達すると、マスタシリンダから車輪ブレーキシリンダへのブレーキ液圧の供給ができなくなる。これに対処するため、特許文献1においては、その第6図に示すようなスイッチ57,58が設けられているものと解されるが、これらは極めて複雑な構造となり、高価な装置となることは必至である。
【0011】
そこで、本発明は、マスタシリンダからホイールシリンダに至る液圧系に対し調圧弁の出力液圧を供給する液圧路を接続し、この液圧路を開閉する開閉弁を備えた車両用液圧ブレーキ装置において、複雑なスイッチ機構を必要とすることなく、車輪のアンチロック制御開始時に開閉弁の作動状態を判定し得る簡単且つ安価な装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を達成するため、本発明は、請求項1に記載のように、所定の液圧を発生して出力する液圧源と、該液圧源の出力液圧を運転者のブレーキ操作に応じて調圧して出力する調圧弁と、該調圧弁の出力液圧を圧力室に導入し、該圧力室の液圧によってマスタピストンを前進駆動してマスタ液圧室からブレーキ液圧を出力するマスタシリンダと、該マスタシリンダの出力ブレーキ液圧によって車両の各車輪に対し制動力を付与するホイールシリンダと、該ホイールシリンダと前記マスタシリンダを接続する液圧路に介装し、前記車両の各車輪に制動力を付与したときにロック傾向を示す車輪に対し、前記ホイールシリンダ内の液圧を調整してアンチロック制御を行なう液圧制御弁と、前記マスタシリンダから前記ホイールシリンダに至る液圧系に対し前記調圧弁の出力液圧を供給する液圧路に介装し、該液圧路を開閉する開閉弁を備えた車両用液圧ブレーキ装置において、前記開閉弁が閉位置にあるときに前記調圧弁の出力液圧を前記マスタシリンダの出力ブレーキ液圧より高圧に設定する差圧設定手段と、前記液圧系の液圧を検出する液圧検出手段と、前記運転者のブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、前記車輪に対するアンチロック制御時に前記開閉弁を開位置とし、前記ブレーキ操作量検出手段が検出したブレーキ操作量と前記液圧検出手段の検出液圧の比較結果に応じて前記開閉弁の作動状態を判定する判定手段を備えることとしたものである。
【0013】
前記差圧設定手段は、請求項2に記載のように、前記マスタピストンを初期位置方向に付勢するリターンスプリングで構成することができる。即ち、このリターンスプリングの取付荷重を、調圧弁の出力液圧とマスタシリンダの出力ブレーキ液圧との間に差圧が生ずる値に調整して設定すればよい。また、これに加え、請求項3に記載のように、前記マスタピストンの前記圧力室側の受圧面積を前記マスタ液圧室側の受圧面積より小に設定すれば、大きな差圧を設定することができる。あるいは、請求項3に記載のように構成することによって、前記リターンスプリングの取付荷重を調整することなく、請求項1に記載の差圧設定手段を構成することもできる。
【0014】
上記請求項1乃至3に記載の装置において、前記ブレーキ操作量検出手段は、請求項4に記載のように、前記調圧弁の出力液圧を検出する液圧検出手段を備えたものとし、該液圧検出手段の検出液圧に基づき前記ブレーキ操作量を検出するように構成することができる。即ち、前記調圧弁の出力液圧は、ブレーキ操作量に応じて所定の関係で変化するので、この検出液圧に基づいてブレーキ操作量を検出することができる。
【0015】
更に、上記請求項1乃至4に記載の装置において、前記判定手段は、請求項5に記載のように、前記調圧弁の出力液圧を前記液圧系に供給した時間が所定時間経過した後も、前記開閉弁の正常な作動状態と判定できないときには、前記開閉弁の異常と判定するように構成してもよい。
【0016】
上記請求項5に記載の装置において、請求項6に記載のように、前記判定手段が前記開閉弁の異常と判定したときには、前記液圧制御弁による前記車輪に対するアンチロック制御を禁止するように構成してもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る車両用液圧ブレーキ装置を示すもので、ブレーキ操作部材たるブレーキペダル2の操作(運転者のブレーキ操作)に応じて液圧を発生する液圧発生装置PGと、その出力液圧によって車両の各車輪に対し制動力を付与するホイールシリンダW1乃至W4を備えている。そして、液圧発生装置PGとホイールシリンダW1乃至W4との間に液圧制御弁PCが介装されている。
【0018】
先ず、本実施形態の液圧発生装置PGは、運転者のブレーキ操作とは無関係に所定の液圧を発生し出力する液圧源PSと、この液圧源PSの出力液圧を運転者のブレーキ操作に応じて調圧して出力する調圧弁RGと、この調圧弁RGの出力液圧を圧力室C2に導入し、この圧力室C2の液圧によってマスタピストン11を前進駆動してマスタ液圧室C1からブレーキ液圧を出力するマスタシリンダMCを備えている。上記液圧源PSは、電子制御装置ECUによって制御される電動モータMと、この電動モータMによって駆動される液圧ポンプHPを備え、その入力側が大気圧リザーバRS(以下、単にリザーバRSという)に連通接続され、出力側がアキュムレータACに連通接続されている。本実施形態では出力側に圧力センサSpsが接続されており、電子制御装置ECUによって圧力センサSpsの検出圧力が監視される。この監視結果に基づき、アキュムレータACの液圧が所定の上限値と下限値の間の圧力に維持されるように、電子制御装置ECUにより電動モータMが制御される。
【0019】
液圧発生装置PGの本体を構成するシリンダ1内には、内径が異なる孔1a,1b,1c,1dから成る段付シリンダ孔が形成されており、この中にマスタピストン11及び補助ピストン12が収容されている。後者の補助ピストン12内には調圧弁RG及び分配装置5が収容されており、これらについては後述する。尚、シリンダ1は、図1では説明を容易にするため一体として示したが、実際には複数のシリンダ部材が組み合わされて構成される。
【0020】
図1において、シリンダ1の孔1dの内面には環状カップ形状のシール部材S1と通常のシール部材S2が配置され、これに有底筒体のマスタピストン11が液密的摺動自在に嵌合されている。一方、補助ピストン12の外面には複数のランド段が形成されており、これらに夫々シール部材S3乃至S5が配置されている。そして、補助ピストン12はシール部材S3及びS4を介して孔1b内に、シール部材S5を介して孔1bより大径の孔1c内に、夫々液密的摺動自在に嵌合されている。このように補助ピストン12は段付シリンダ孔に収容されており、通常は後方に押圧され、図1に示す初期位置に保持される。万一、液圧源PSが失陥し、その出力液圧が消失すると、補助ピストン12の保持が解除され、前方に摺動し得る状態となるように構成されている。
【0021】
而して、シリンダ1の孔1a内の、マスタピストン11及びシール部材S1とシリンダ1の内壁前端との間にマスタ液圧室C1が郭成されると共に、孔1b内の、シール部材S2と補助ピストン12及びシール部材S3との間に圧力室C2が郭成されている(尚、図1の左方を前方とする。以下、同様)。このように、本実施形態においてはシリンダ1の前方部分にマスタシリンダMCが構成されており、更に、シリンダ1には、補助ピストン12の外周面と孔1b,1cの内周面との間の、シール部材S3とシール部材S4との間に環状室C3が、シール部材S4とシール部材S5との間に環状室C4が夫々郭成されている。
【0022】
補助ピストン12内には、本実施形態の調圧弁RGを構成するスプール弁機構が収容されており、その構成部材であるスプール6の前方に、圧力室C2に連通する調圧室C5が形成されると共に、スプール6の後方に、環状室C4に連通する低圧室C6が形成されている。更に、シール部材S6を介して入力ピストン3が補助ピストン12内に液密的摺動自在に嵌合され、その前方に上記の低圧室C6が郭成されている。この低圧室C6内には、入力ピストン3に加えられるブレーキ操作力を伝達すると共にブレーキ操作力に応じたストロークを入力ピストン3に付与する圧縮スプリング4が収容されると共に、分配装置5が収容されている。
【0023】
本実施形態の分配装置5は、ブレーキペダル2に対するブレーキ操作力と調圧弁RGの出力液圧との相関を調整するもので、前端が補助ピストン12の低圧室C6内の前端壁に当接し、後端に樹脂製の環状部材が設けられた筒状部材5dと、これを摺動自在に収容する有底筒体のケース5aと、これらの間に介装されるゴムディスク5b、前端に鋼球が設けられた伝達部材5cによって構成されている。この分配装置5によれば、ブレーキペダル2が操作されると、入力ピストン3、圧縮スプリング4、ケース5a、ゴムディスク5b、伝達部材5cを介してスプール6にブレーキ操作力が伝達され、後述するように調圧弁RGが作動し、調圧室C5内に形成された出力液圧が圧力室C2から出力される。そして、ブレーキ操作力が所定値を越えると、弾性変形したゴムディスク5bが筒状部材5dの樹脂製環状部材に当接し、ブレーキ操作力の一部がゴムディスク5bを介して補助ピストン12に分配されて伝達される。
【0024】
而して、ブレーキ操作開始時の立ち上がりを急峻とするジャンピング特性を設定することができる。また、筒状部材5dの内径と伝達部材5cの外径を変更することにより、スプール6に伝達されるブレーキ操作力の分配比率を変更することができる。更に、伝達部材5cの長さを変更することにより分配開始時期を変更することもできる。従って、異なる寸法の筒状部材5d及び伝達部材5cを適宜組み合わせることにより、ブレーキ操作力に対する調圧弁RGの出力特性を任意に設定することができる。尚、上記の分配装置5を省略し、スプール6に対してブレーキ操作力を直接伝達することとしてもよい。
【0025】
また、本実施形態の調圧弁RGについては、リターンスプリングとして機能する圧縮スプリング7が調圧室C5内に収容されており、その付勢力によってスプール6が後方に押圧されている。尚、圧縮スプリング7の取付荷重は圧縮スプリング4の取付荷重より大に設定され、ブレーキペダル2が操作されていないときには、図1に示す状態が維持されるように構成されている。上記の低圧室C6は環状室C4を介して液圧源PSの入力側と共にリザーバRSに接続されており、リザーバRS内の略大気圧のブレーキ液が環状室C4及び低圧室C6に充填されている。一方、環状室C3は液圧源PSのアキュムレータACに接続されており、液圧源PSの出力液圧が供給されるので高圧室となる。
【0026】
而して、図1に示すようにスプール6が後端の初期位置にあるときには、調圧室C5はスプール6を介して低圧室C6に連通し、リザーバRS内と同様略大気圧となっている。入力ピストン3が前方に移動し、これに伴いスプール6が前進して調圧室C5が低圧室C6と遮断された状態となると、調圧室C5内は出力保持状態となる。更にスプール6が前進すると、調圧室C5は、スプール6、補助ピストン12及び環状室C3を介して液圧源PSと連通するので、液圧源PSの出力液圧が調圧室C5内に供給されて昇圧し、出力増加状態となる。このように、補助ピストン12に対するスプール6の相対移動の繰り返しによって、調圧室C5内の液圧が所定の圧力に調整され、圧力室C2に供給されると共に、更に電磁開閉弁PC3及びPC4(後述する)を介して、ホイールシリンダW3及びW4にブレーキ液圧として出力されるように構成されている。
【0027】
一方、マスタ液圧室C1内には、マスタピストン11を初期位置方向に付勢するリターンスプリングとして機能する圧縮スプリング8が収容されており、この付勢力によってマスタピストン11の後端面が補助ピストン12の前端面に押接されている。この圧縮スプリング8の取付荷重は、本発明の差圧設定手段を構成し得る付勢力が生ずるように設定されている。即ち、後述する電磁開閉弁NO及びNCが図1に示す状態にあって、マスタ液圧室C1と圧力室C2とが連通されていないときには、調圧弁RGの出力液圧がマスタシリンダMCの出力ブレーキ液圧より高圧となるように、圧縮スプリング8の取付荷重が設定されている。そして、図1に示すようにマスタピストン11が後端の初期位置にあるときには、マスタピストン11のスカート部に形成された連通孔11aとシリンダ1に形成された連通孔1rがリザーバRSと連通し、マスタ液圧室C1はリザーバRS内と同様略大気圧となっている。マスタピストン11が前進すると、シール部材S1によって連通孔11aが遮蔽され、マスタ液圧室C1はリザーバRSとの連通が遮断された状態に維持される。而して、この状態で更にマスタピストン11が前進するとマスタ液圧室C1内の液圧が上昇するように構成されている。
【0028】
また、本実施形態では図1に示すように、例えば車両前方の車輪のホイールシリンダW1及びW2は、夫々電磁開閉弁PC1及びPC2を介してマスタ液圧室C1に接続されている。これに対し、例えば車両後方の車輪のホイールシリンダW3及びW4は、夫々電磁開閉弁PC3及びPC4を介して圧力室C2(ひいては調圧室C5)に接続されている。而して、調圧室C5の出力液圧が圧力室C2から開位置の電磁開閉弁PC3及びPC4を介してホイールシリンダW3及びW4にブレーキ液圧として供給される。また、調圧室C5の出力液圧は圧力室C2に供給されるので、マスタピストン11が前進し、マスタ液圧室C1の出力液圧が、開位置の電磁開閉弁PC1及びPC2を介してホイールシリンダW1及びW2に供給される。
【0029】
本実施形態においては、マスタ液圧室C1の出力側の液圧路には、その液圧検出手段たる圧力センサSmcが接続されると共に、圧力室C2(調圧室C5)の出力側の液圧路にもその液圧検出手段たる圧力センサSrgが接続されており、これらの検出信号が電子制御装置ECUに供給される。これにより、マスタ液圧室C1及び圧力室C2の出力液圧(Pmc及びPrg)が監視され、後述するように制御される。尚、アンチロック制御等に供する車輪速度センサ、加速度センサ等のセンサSNが設けられており、これらの検出信号が電子制御装置ECUに入力される。
【0030】
而して、図1に示すように、電磁開閉弁PC1乃至PC8等によって液圧制御弁PCが構成されており、例えばアンチロック制御におけるブレーキ液圧(ホイールシリンダ液圧)制御が行われる。図1において、マスタ液圧室C1とホイールシリンダW1及びW2の各々を接続する前輪側の液圧路には、夫々給排制御用の電磁開閉弁PC1及びPC5、並びに電磁開閉弁PC2及びPC6が接続されている。また、圧力室C2とホイールシリンダW3及びW4の各々を接続する後輪側の液圧路には、夫々給排制御用の電磁開閉弁PC3及びPC7、並びに電磁開閉弁PC4及びPC8が接続されている。供給側の電磁開閉弁PC1乃至PC4は常開で、上記の各液圧路に介装されているが、排出側の電磁開閉弁PC5乃至PC8は常閉で、夫々リザーバRSに接続されている。更に、電磁開閉弁PC1乃至PC4に対して並列に夫々逆止弁CVが接続されており、ブレーキペダル2が開放されたときには、ホイールシリンダW1乃至W4のブレーキ液のマスタ液圧室C1及び圧力室C2への流れは許容されるが逆方向の流れは阻止される。尚、例えば電磁開閉弁PC1及びPC5並びに逆止弁CVを統合して、給排制御用の電磁切換弁を構成することとしてもよい。
【0031】
更に、マスタ液圧室C1とリザーバRSとを接続する液圧路Haに、2ポート2位置の常開の電磁開閉弁NOが介装され、この電磁開閉弁NOと圧力室C2とを接続する液圧路Hbに2ポート2位置の常閉の電磁開閉弁NCが介装されている。而して、マスタシリンダMCからホイールシリンダW1及びW2(電磁開閉弁PC1及びPC2)に至る液圧系MHに対し、電磁開閉弁NCを介して圧力室C2ひいては調圧室C5の出力液圧を供給し得る。上記電磁開閉弁NCは、これを制御する電子制御装置ECUと共に液圧系MHに対する液圧供給手段として機能し、非励磁時には図1に示す閉位置にあって連通が遮断されており、励磁時には、圧力室C2はマスタ液圧室C1と連通する。これにより、アンチロック制御時には、電磁開閉弁NOを閉位置とすると共に電磁開閉弁NCを開位置とすれば、マスタシリンダMCからホイールシリンダW1及びW2(電磁開閉弁PC1及びPC2)に至る液圧系MHに圧力室C2、電磁開閉弁NCを介して調圧弁RGの出力液圧を供給することができる。
【0032】
上記の構成になる本実施形態の液圧ブレーキ装置において、先ず液圧発生装置PGの作動を説明すると、ブレーキペダル2が非操作状態にあるときには、入力ピストン3及び調圧弁RGのスプール6は図1に示す状態にある。即ち、圧縮スプリング7の付勢力によってスプール6が補助ピストン12に押接されており、この状態では、調圧室C5と環状室C3との連通は遮断され、調圧室C5は低圧室C6に連通している。而して、調圧室C5は低圧室C6を介してリザーバRSに連通し略大気圧とされており、調圧弁RGの出力液圧は圧力室C2には供給されないので、マスタピストン11は図1に示す初期位置に維持される。
【0033】
ブレーキペダル2に踏力が付与されると、入力ピストン3、圧縮スプリング4、分配装置5及びスプール6を介してブレーキ操作力が伝達され、先ず圧縮スプリング7が圧縮されつつスプール6が駆動されて前進する。更に、圧縮スプリング7の付勢力に抗してブレーキペダル2に踏力が付与され、スプール6が前進駆動されて調圧室C5が環状室C3及び低圧室C6の何れとも連通しない位置となると、出力保持状態となる。更にブレーキペダル2に踏力が付与されてスプール6が前進すると、調圧室C5と低圧室C6との連通が遮断された状態で、調圧室C5が環状室C3と連通し、液圧源PSの出力液圧が環状室C3を介して調圧室C5に供給され、出力増加状態となる。
【0034】
而して、図1に示す状態から、ブレーキペダル2が操作されると、調圧弁RGによって、調圧室C5内の液圧が、入力ピストン3から圧縮スプリング4及び分配装置5を介してスプール6に伝達される力に応じた液圧に調整されて圧力室C2に供給され、開位置の電磁開閉弁PC3及びPC4を介してホイールシリンダW3及びW4に供給されると共に、この圧力室C2内の液圧によって補助ピストン12が後方に押圧され、またマスタピストン11が前進駆動される。これにより、マスタ液圧室C1からブレーキ操作力に応じた液圧が開位置の電磁開閉弁PC1及びPC2を介してホイールシリンダW1及びW2に供給される。そして、アンチロック制御が開始すると、電磁開閉弁NO及びNC並びに電磁開閉弁PC1乃至PC8が開閉制御される。
【0035】
即ち、本実施形態においては、電磁開閉弁PC1乃至PC8が電子制御装置ECUによって駆動制御される。例えば、各センサSNの検出結果に基づき電子制御装置ECUによって電磁開閉弁PC1乃至PC8を適宜開閉制御することによって各ホイールシリンダ内のブレーキ液圧を急増圧、パルス増圧(緩増圧)、パルス減圧(緩減圧)、急減圧、及び保持状態とし、アンチロック制御に必要な液圧制御を行なうことができるが、従来と同様であるのでその作動説明は省略する。
【0036】
尚、液圧発生装置PGの作動中、万一液圧源PSが失陥した場合には、液圧源PSの出力液圧が環状室C3に供給されず、従って圧力室C2には液圧が供給されない。この場合には、ブレーキペダル2の操作に応じて入力ピストン3が前進駆動されると、スプール6が圧縮スプリング7の付勢力に抗して前進すると共に、入力ピストン3が圧縮スプリング4の付勢力に抗して前進し、ブレーキペダル2の操作力が分配装置5を介して補助ピストン12に伝達され、更にこれに当接するマスタピストン11に伝達され、マスタ液圧室C1からホイールシリンダW1及びW2にブレーキ液圧が出力される。
【0037】
本実施形態においては、電磁開閉弁NO及びNC並びに電磁開閉弁PC1乃至PC8は、電子制御装置ECUによって駆動制御され、各車輪に対するアンチロック制御が行なわれる。このアンチロック制御の一環として、特に電磁開閉弁NCの異常判定を含む処理を図3に示す。尚、この処理はアンチロック制御時の電磁開閉弁PC1乃至PC8の駆動制御と並行して行なわれ、例えば電磁開閉弁NCが異常と判定されたときには、電磁開閉弁PC1乃至PC8の駆動制御を停止するように構成することができる。
【0038】
而して、図3においては、先ずステップ101にて、アンチロック制御の開始条件を充足したか否かが判定される。このアンチロック制御の開始条件は従来と同様であるので詳細な説明は省略するが、例えば、車輪速度に基づき車輪のロック傾向が検出されるとアンチロック制御が開始するように設定される。ここでアンチロック制御開始と判定されると、ステップ102にて電磁開閉弁NO及びNCが励磁され(オンとされ)、電磁開閉弁NOが閉位置となり、電磁開閉弁NCが開位置となる。
【0039】
このときのマスタピストン11等の状態は、図2に示すように、マスタピストン11が前進し、連通孔1rはマスタピストン11の連通孔11aとは連通しなくなり、マスタ液圧室C1との間にシール部材S1が存在する状態となる。このシール部材S1はカップ状に形成されており一方向弁として機能するので、マスタ液圧室C1から連通孔1rへのブレーキ液の流れは阻止されるが、シール部材S1の前後の圧力差に応じて連通孔1rからマスタ液圧室C1への連通が許容される。従って、圧力室C2内の液圧、即ち調圧弁RGの出力液圧は、開位置の電磁開閉弁NCを介してマスタ液圧室C1に供給され得る状態となる。
【0040】
この場合において、電磁開閉弁NO及びNCが図1に示す状態にあって、マスタ液圧室C1と圧力室C2とが連通されていないときには、圧縮スプリング8の付勢力が付加されることによって、調圧弁RGの出力液圧がマスタシリンダMCの出力ブレーキ液圧より高圧となるように設定されている。これに対し、図2に示す状態となり、開位置の電磁開閉弁NCを介してマスタ液圧室C1と圧力室C2が連通し、調圧弁RGの出力液圧が圧力室C2及びマスタ液圧室C1に供給されると、液圧系MHの液圧は調圧弁RGの出力液圧と等しくなる。
【0041】
而して図3に戻り、ステップ102からステップ103に進むと、液圧系MHの検出液圧である圧力センサSmcの検出圧力Pmcが圧力センサSrgの検出圧力Prgと比較される。この圧力センサSrgの検出圧力Prgはブレーキ操作量に対応した値となるので、圧力センサSrgは本発明のブレーキ操作量検出手段を構成する。而して、ステップ103において、圧力センサSmcの検出圧力Pmcが圧力センサSrgの検出圧力Prgと等しいと判定されれば電磁開閉弁NCは正常と判定され、後述するステップ107を経てメインルーチン(図示せず)に戻る。
【0042】
これに対し、ステップ103において圧力センサSmcの検出圧力Pmcが圧力センサSrgの検出圧力Prg未満と判定されたときには、更にステップ104に進み、経過時間Ts(初回は0)が所定時間Ktsと比較され、所定時間Kts以下であれば、ステップ105にて経過時間Tsがインクリメント(Ts+1)されてステップ103に戻る。この間に圧力センサSmcの検出圧力Pmcが圧力センサSrgの検出圧力Prgと等しくなれば、正常と判定されてステップ103からステップ107に進み、経過時間Tsがクリア(0)されて、メインルーチン(図示せず)に戻る。しかし、圧力センサSmcの検出圧力Pmcが圧力センサSrgの検出圧力Prg未満と判定された経過時間Tsが所定時間Ktsを越えると、異常と判定され、ステップ104からステップ106に進み、例えば警報装置ALが駆動され、及び/又はアンチロック制御作動が禁止(もしくは停止)される。
【0043】
図4は本発明の他の実施形態に係る車両用液圧ブレーキ装置を示すもので、図1の実施形態におけるマスタピストン11の前方に拡径部11bが一体的に形成され、その前方にシール部材S1が図1と同様の方向に配置されており、マスタピストン11の圧力室C2側の受圧面積(シール部材S2内側の面積)がマスタ液圧室C1側の受圧面積(シール部材S1外側の面積)より小に設定されている。これにより、前述の圧縮スプリング8の付勢力に加え、マスタピストン11の受圧面積差による差圧が付加されるので、マスタ液圧室C1と圧力室C2との間に更に大きな差圧を設定することができる。即ち、電磁開閉弁NO及びNCが図4に示す状態にあって、マスタ液圧室C1と圧力室C2とが連通されていないときに、調圧弁RGの出力液圧がマスタシリンダMCの出力ブレーキ液圧より一層高圧となるように設定することができる。
【0044】
尚、本実施形態においては、マスタピストン11には連通孔11aは形成されておらず、マスタ液圧室C1に連通する連通孔1sがシリンダ1に形成されており、図4に示すように、ブレーキペダル2の非操作時には、連通孔1sが開位置の電磁開閉弁NOを介してリザーバRSと連通し、マスタ液圧室C1はリザーバRS内と同様略大気圧となっている。これに対し、マスタピストン11が前進すると、図5に示すようにシール部材S1によって連通孔1sが遮蔽され、リザーバRSとの連通が遮断される。而して、この状態で更にマスタピストン11が前進するとマスタ液圧室C1内の液圧が上昇するように構成されており、更に、電磁開閉弁NOが閉位置とされた後、開位置の電磁開閉弁NCを介してマスタ液圧室C1と圧力室C2が連通し、調圧弁RGの出力液圧が連通孔1r及び1sとシール部材S1を介してマスタ液圧室C1に供給されると、マスタ液圧室C1内の液圧は上昇し、圧力室C2内の液圧と等しくなる。
【0045】
また、図4の実施形態においては、圧縮スプリング8の取付荷重を、図1の実施形態のように差圧設定手段を構成し得る付勢力が生ずるように設定しなくとも、マスタピストン11の受圧面積差によって本発明の差圧設定手段を構成することができる。本実施形態のその他の構成は図1の実施形態と同様であるので、同一の符号を付して説明は省略する。而して、本実施形態においても図3と同様の異常判定処理を行なうことができる。
【0046】
ところで、ブレーキ操作量検出手段が検出したブレーキ操作量と液圧系MHの検出液圧(圧力センサSmcの検出圧力Pmc)の比較に関し、例えば前述の図3のステップ103に示した判定処理においては、圧力センサSmcの検出圧力Pmc(液圧系MHの検出液圧)が圧力センサSrgの検出圧力Prg(調圧弁RGの出力液圧)と等しいと判定されれば電磁開閉弁NCが正常と判定されるように構成されているが、例えば、液圧系MHの検出液圧が、調圧弁RGの出力液圧に応じた液圧系MHの液圧より大となったときに、電磁開閉弁NCが正常と判定されるように構成してもよい。これに関し、図6を参照して説明すると、電磁開閉弁NCが開位置となったときには液圧系MHの液圧特性は実線で示すようになるが、電磁開閉弁NCが閉位置にあるときには前述の差圧設定手段の存在によって液圧系MHの液圧特性は破線で示すようになる。従って、後者の特性に基づいて判定することとすれば、前述のように電磁開閉弁NCが開位置とされて液圧系MHの検出液圧が調圧弁RGの出力液圧と等しくなるまで待つことなく、電磁開閉弁NCの作動状態を判定することができる。
【0047】
図6において、調圧弁RGの出力液圧が例えばPrga であるときには、電磁開閉弁NCが開位置とされ、液圧系MHの液圧が安定する時間を経過すれば、液圧系MHの検出液圧(圧力センサSmcの検出圧力)はPmcaとなる。この場合において、電磁開閉弁NCが開位置とされると同時に、圧力センサSmcの検出圧力は、Pmcaには到達しないものの、直ちにPmcbを越えた値となる。従って、調圧弁RGの出力液圧がPrgaであるときの液圧系MHの検出液圧(圧力センサSmcの検出圧力)がPmcbより大となったか否かを判定すれば、電磁開閉弁NCを介して液圧が供給されたことが分かるので、実線上のPmcaに到達したか否かを判定する場合(図3に示す態様)に比べ、電磁開閉弁NCの作動状態を早く判定することが可能となる。
【0048】
また、上記の実施形態では、ブレーキ操作量に応じた値として、調圧弁RGの出力液圧を検出することとしたが、ブレーキペダル2のストロークや、ブレーキペダル2に付与されるブレーキ操作力を検出することとし、これらの値に応じた調圧弁RGの出力液圧を演算し、これを液圧系MHの検出液圧と比較するように構成してもよい。更に、このブレーキ操作量に応じた調圧弁RGの出力液圧に対し、液圧系MHの検出液圧が図6の破線で示す特性を越えたときに、電磁開閉弁NCが正常と判定されるように構成すれば、一層迅速な判定が可能となる。
【0049】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されているので以下に記載の効果を奏する。即ち、請求項1に記載の車両用液圧ブレーキ装置においては、開閉弁が閉位置にあるときに調圧弁の出力液圧をマスタシリンダの出力ブレーキ液圧より高圧に設定する差圧設定手段を設け、車輪に対するアンチロック制御時に開閉弁を開位置とし、ブレーキ操作量検出手段が検出したブレーキ操作量と液圧検出手段の検出液圧の比較結果に応じて開閉弁の作動状態を判定することとしているので、複雑なスイッチ機構を必要とすることなく、簡単且つ安価に、アンチロック制御開始時に開閉弁の作動状態を判定することができる。そして、車輪のアンチロック制御に移行したときに万一開閉弁が正常に作動しない場合には適切に警報等を行ない、あるいは直ちにアンチロック制御作動を停止することができる。
【0050】
上記差圧設定手段は、請求項2に記載のように、初期位置方向に付勢するリターンスプリングで構成することができ、また、請求項3に記載のように、マスタピストンの前記圧力室側の受圧面積をマスタ液圧室側の受圧面積より小に設定すれば、大きな差圧を設定することができるので、開閉弁の作動状態を容易且つ確実に判定することができる。
【0051】
上記ブレーキ操作量検出手段は、請求項4に記載のように、調圧弁の出力液圧を検出する液圧検出手段を備えたものとし、その検出液圧に基づきブレーキ操作量を検出することができる。
【0052】
更に、請求項5に記載のように、差圧設定手段によって液圧源の出力液圧を液圧系に供給した時間が所定時間経過した後も、開閉弁の正常な作動状態と判定できないときには、開閉弁の異常と判定するように構成すれば、誤判定を抑え、開閉弁の作動状態を適切に判定することができる。
【0053】
また、請求項6に記載のように、判定手段が開閉弁の異常と判定したときにはアンチロック制御を禁止するように構成すれば、開閉弁が正常であるときにのみアンチロック制御を行ない適切な制動作動を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用液圧ブレーキ装置の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における作動状態を示す車両用液圧ブレーキ装置の一部の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用液圧ブレーキ装置における判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施形態に係る車両用液圧ブレーキ装置の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態における作動状態を示す車両用液圧ブレーキ装置の一部の断面図である。
【図6】本発明の各実施形態における調圧弁の出力液圧に対する液圧系の液圧特性を示すグラフである。
【符号の説明】
PG 液圧発生装置, PS 液圧源, RG 調圧弁, MH 液圧系,
MC マスタシリンダ, RS リザーバ, 1 シリンダ,
2 ブレーキペダル, 3 入力ピストン, 5 分配装置,
6 スプール, 11 マスタピストン, 12 補助ピストン,
C1 マスタ液圧室, C2 圧力室, C3,C4 環状室,
C5 調圧室, C6 低圧室, NC,NO 電磁開閉弁
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の車輪ブレーキ機構のホイールシリンダにブレーキ液圧を供給する液圧ブレーキ装置に関し、特に、マスタシリンダからホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を制御する液圧制御弁を備え、この液圧制御弁によりアンチロック制御を行い得る車両用液圧ブレーキ装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
マスタシリンダからホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を制御する液圧制御弁を備え、この液圧制御弁によりアンチスキッド制御(アンチロック制御)等を行う車両用液圧ブレーキ装置が知られており、例えば下記の特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭59−130769号公報
【0004】
上記の特許文献1には、「本発明は、ブレーキ力倍力装置とアンチスキッド装置とを備えた油圧式の自動車ブレーキ系であって、マスタブレーキシリンダを備えた少なくとも1つの閉回路が設けられていて、該マスタブレーキシリンダのピストンが、ペダル操作されるブレーキ圧制御弁によって一方の圧力源の圧力から導かれた前圧によって負荷されるようになっており、前記マスタブレーキシリンダの少なくとも1つと、所属の車輪がロックされそうになった時にブレーキ圧を制御するために操作される車輪ブレーキシリンダとの間に少なくとも1つのアンチスキッド弁が設けられており、さらに、所定のシチュエーションでこのアンチスキッド弁に他方の圧力源からの圧力を作用せしめるための弁装置が設けられている形式のものに関する」と記載され、その第6図に構造が開示されている。
【0005】
そして、「本発明による自動車ブレーキ系は、他方の圧力源からの圧力が前圧であって、マスタシリンダピストン又はブレーキペダルが所定の程度だけ変位せしめられた時に及び(又は)ロック傾向が生じたときに弁装置が制御されるように構成されている」旨記載されている。
【0006】
更に、上記の特許文献1には、その第6図による4ポート4位置弁のための切換え制御回路が第7図に示され、これに関し、「さらに、アンド・ゲート72は、マスタシリンダに接続されたブレーキ回路が断絶した時にしや断されるようになっている。これはスイッチ57、58によって検出される。つまり、スイッチ57(端子69)と、スイッチ58(端子70)の第1段とが応答し、スイッチ58(端子71)の第2段が応答しない時にしや断される」旨記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、アンチスキッド制御(アンチロック制御)を行い得る車両用液圧ブレーキ装置においては、所定の液圧を発生して出力する液圧源と、この液圧源の出力液圧を運転者のブレーキ操作に応じて制御し、マスタピストンを前進駆動してマスタ液圧室からブレーキ液圧を出力するマスタシリンダと、このマスタシリンダの出力ブレーキ液圧によって車両の各車輪に対し制動力を付与するホイールシリンダと、ホイールシリンダとマスタ液圧室との間の液圧路(マスタシリンダ液圧系)に介装しホイールシリンダ内のブレーキ液圧を制御する液圧制御弁とを備えている。
【0008】
更に、上記の構成に加え、運転者のブレーキ操作に応じて、液圧源の出力液圧を調圧して出力する調圧弁を備え、この調圧弁の出力液圧を圧力室に導入し、圧力室の液圧によってマスタピストンを前進駆動するように構成した液圧ブレーキ装置も知られており、特許文献1に記載の装置も同様と解される。
【0009】
このような液圧ブレーキ装置においては、液圧制御弁によってホイールシリンダ内が減圧される場合に、マスタシリンダ用の大気圧リザーバにブレーキ液が排出されるように構成することが簡便であり、安価な装置となる。しかし、このような装置においては、減圧作動が繰り返されるとマスタピストンが前進し、シリンダ内の前端まで達すると、マスタシリンダからホイールシリンダへのブレーキ液圧の供給ができなくなる。
【0010】
前掲の特許文献1において、その第6図に記載された装置も同様に、圧力源45の出力液圧を制御室44内で制御圧に調整し(調圧し)、ピストン47を前進駆動するように構成されている。そして、上記の問題を解決するため、ブレーキ圧制御弁(液圧制御弁)51,52によって車輪ブレーキシリンダ内が減圧される場合に、制御室44内で調整された制御圧が車輪ブレーキシリンダ(液圧系)に供給されるようブレーキ圧制御弁53が構成されている。しかし、同装置においても、例えばブレーキ圧制御弁53が正常に作動せず、制御室44内で調整された制御圧が車輪ブレーキシリンダ(液圧系)に供給できない場合には、減圧作動が繰り返されるとマスタピストンが前進するので、シリンダ内の前端まで達すると、マスタシリンダから車輪ブレーキシリンダへのブレーキ液圧の供給ができなくなる。これに対処するため、特許文献1においては、その第6図に示すようなスイッチ57,58が設けられているものと解されるが、これらは極めて複雑な構造となり、高価な装置となることは必至である。
【0011】
そこで、本発明は、マスタシリンダからホイールシリンダに至る液圧系に対し調圧弁の出力液圧を供給する液圧路を接続し、この液圧路を開閉する開閉弁を備えた車両用液圧ブレーキ装置において、複雑なスイッチ機構を必要とすることなく、車輪のアンチロック制御開始時に開閉弁の作動状態を判定し得る簡単且つ安価な装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を達成するため、本発明は、請求項1に記載のように、所定の液圧を発生して出力する液圧源と、該液圧源の出力液圧を運転者のブレーキ操作に応じて調圧して出力する調圧弁と、該調圧弁の出力液圧を圧力室に導入し、該圧力室の液圧によってマスタピストンを前進駆動してマスタ液圧室からブレーキ液圧を出力するマスタシリンダと、該マスタシリンダの出力ブレーキ液圧によって車両の各車輪に対し制動力を付与するホイールシリンダと、該ホイールシリンダと前記マスタシリンダを接続する液圧路に介装し、前記車両の各車輪に制動力を付与したときにロック傾向を示す車輪に対し、前記ホイールシリンダ内の液圧を調整してアンチロック制御を行なう液圧制御弁と、前記マスタシリンダから前記ホイールシリンダに至る液圧系に対し前記調圧弁の出力液圧を供給する液圧路に介装し、該液圧路を開閉する開閉弁を備えた車両用液圧ブレーキ装置において、前記開閉弁が閉位置にあるときに前記調圧弁の出力液圧を前記マスタシリンダの出力ブレーキ液圧より高圧に設定する差圧設定手段と、前記液圧系の液圧を検出する液圧検出手段と、前記運転者のブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、前記車輪に対するアンチロック制御時に前記開閉弁を開位置とし、前記ブレーキ操作量検出手段が検出したブレーキ操作量と前記液圧検出手段の検出液圧の比較結果に応じて前記開閉弁の作動状態を判定する判定手段を備えることとしたものである。
【0013】
前記差圧設定手段は、請求項2に記載のように、前記マスタピストンを初期位置方向に付勢するリターンスプリングで構成することができる。即ち、このリターンスプリングの取付荷重を、調圧弁の出力液圧とマスタシリンダの出力ブレーキ液圧との間に差圧が生ずる値に調整して設定すればよい。また、これに加え、請求項3に記載のように、前記マスタピストンの前記圧力室側の受圧面積を前記マスタ液圧室側の受圧面積より小に設定すれば、大きな差圧を設定することができる。あるいは、請求項3に記載のように構成することによって、前記リターンスプリングの取付荷重を調整することなく、請求項1に記載の差圧設定手段を構成することもできる。
【0014】
上記請求項1乃至3に記載の装置において、前記ブレーキ操作量検出手段は、請求項4に記載のように、前記調圧弁の出力液圧を検出する液圧検出手段を備えたものとし、該液圧検出手段の検出液圧に基づき前記ブレーキ操作量を検出するように構成することができる。即ち、前記調圧弁の出力液圧は、ブレーキ操作量に応じて所定の関係で変化するので、この検出液圧に基づいてブレーキ操作量を検出することができる。
【0015】
更に、上記請求項1乃至4に記載の装置において、前記判定手段は、請求項5に記載のように、前記調圧弁の出力液圧を前記液圧系に供給した時間が所定時間経過した後も、前記開閉弁の正常な作動状態と判定できないときには、前記開閉弁の異常と判定するように構成してもよい。
【0016】
上記請求項5に記載の装置において、請求項6に記載のように、前記判定手段が前記開閉弁の異常と判定したときには、前記液圧制御弁による前記車輪に対するアンチロック制御を禁止するように構成してもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る車両用液圧ブレーキ装置を示すもので、ブレーキ操作部材たるブレーキペダル2の操作(運転者のブレーキ操作)に応じて液圧を発生する液圧発生装置PGと、その出力液圧によって車両の各車輪に対し制動力を付与するホイールシリンダW1乃至W4を備えている。そして、液圧発生装置PGとホイールシリンダW1乃至W4との間に液圧制御弁PCが介装されている。
【0018】
先ず、本実施形態の液圧発生装置PGは、運転者のブレーキ操作とは無関係に所定の液圧を発生し出力する液圧源PSと、この液圧源PSの出力液圧を運転者のブレーキ操作に応じて調圧して出力する調圧弁RGと、この調圧弁RGの出力液圧を圧力室C2に導入し、この圧力室C2の液圧によってマスタピストン11を前進駆動してマスタ液圧室C1からブレーキ液圧を出力するマスタシリンダMCを備えている。上記液圧源PSは、電子制御装置ECUによって制御される電動モータMと、この電動モータMによって駆動される液圧ポンプHPを備え、その入力側が大気圧リザーバRS(以下、単にリザーバRSという)に連通接続され、出力側がアキュムレータACに連通接続されている。本実施形態では出力側に圧力センサSpsが接続されており、電子制御装置ECUによって圧力センサSpsの検出圧力が監視される。この監視結果に基づき、アキュムレータACの液圧が所定の上限値と下限値の間の圧力に維持されるように、電子制御装置ECUにより電動モータMが制御される。
【0019】
液圧発生装置PGの本体を構成するシリンダ1内には、内径が異なる孔1a,1b,1c,1dから成る段付シリンダ孔が形成されており、この中にマスタピストン11及び補助ピストン12が収容されている。後者の補助ピストン12内には調圧弁RG及び分配装置5が収容されており、これらについては後述する。尚、シリンダ1は、図1では説明を容易にするため一体として示したが、実際には複数のシリンダ部材が組み合わされて構成される。
【0020】
図1において、シリンダ1の孔1dの内面には環状カップ形状のシール部材S1と通常のシール部材S2が配置され、これに有底筒体のマスタピストン11が液密的摺動自在に嵌合されている。一方、補助ピストン12の外面には複数のランド段が形成されており、これらに夫々シール部材S3乃至S5が配置されている。そして、補助ピストン12はシール部材S3及びS4を介して孔1b内に、シール部材S5を介して孔1bより大径の孔1c内に、夫々液密的摺動自在に嵌合されている。このように補助ピストン12は段付シリンダ孔に収容されており、通常は後方に押圧され、図1に示す初期位置に保持される。万一、液圧源PSが失陥し、その出力液圧が消失すると、補助ピストン12の保持が解除され、前方に摺動し得る状態となるように構成されている。
【0021】
而して、シリンダ1の孔1a内の、マスタピストン11及びシール部材S1とシリンダ1の内壁前端との間にマスタ液圧室C1が郭成されると共に、孔1b内の、シール部材S2と補助ピストン12及びシール部材S3との間に圧力室C2が郭成されている(尚、図1の左方を前方とする。以下、同様)。このように、本実施形態においてはシリンダ1の前方部分にマスタシリンダMCが構成されており、更に、シリンダ1には、補助ピストン12の外周面と孔1b,1cの内周面との間の、シール部材S3とシール部材S4との間に環状室C3が、シール部材S4とシール部材S5との間に環状室C4が夫々郭成されている。
【0022】
補助ピストン12内には、本実施形態の調圧弁RGを構成するスプール弁機構が収容されており、その構成部材であるスプール6の前方に、圧力室C2に連通する調圧室C5が形成されると共に、スプール6の後方に、環状室C4に連通する低圧室C6が形成されている。更に、シール部材S6を介して入力ピストン3が補助ピストン12内に液密的摺動自在に嵌合され、その前方に上記の低圧室C6が郭成されている。この低圧室C6内には、入力ピストン3に加えられるブレーキ操作力を伝達すると共にブレーキ操作力に応じたストロークを入力ピストン3に付与する圧縮スプリング4が収容されると共に、分配装置5が収容されている。
【0023】
本実施形態の分配装置5は、ブレーキペダル2に対するブレーキ操作力と調圧弁RGの出力液圧との相関を調整するもので、前端が補助ピストン12の低圧室C6内の前端壁に当接し、後端に樹脂製の環状部材が設けられた筒状部材5dと、これを摺動自在に収容する有底筒体のケース5aと、これらの間に介装されるゴムディスク5b、前端に鋼球が設けられた伝達部材5cによって構成されている。この分配装置5によれば、ブレーキペダル2が操作されると、入力ピストン3、圧縮スプリング4、ケース5a、ゴムディスク5b、伝達部材5cを介してスプール6にブレーキ操作力が伝達され、後述するように調圧弁RGが作動し、調圧室C5内に形成された出力液圧が圧力室C2から出力される。そして、ブレーキ操作力が所定値を越えると、弾性変形したゴムディスク5bが筒状部材5dの樹脂製環状部材に当接し、ブレーキ操作力の一部がゴムディスク5bを介して補助ピストン12に分配されて伝達される。
【0024】
而して、ブレーキ操作開始時の立ち上がりを急峻とするジャンピング特性を設定することができる。また、筒状部材5dの内径と伝達部材5cの外径を変更することにより、スプール6に伝達されるブレーキ操作力の分配比率を変更することができる。更に、伝達部材5cの長さを変更することにより分配開始時期を変更することもできる。従って、異なる寸法の筒状部材5d及び伝達部材5cを適宜組み合わせることにより、ブレーキ操作力に対する調圧弁RGの出力特性を任意に設定することができる。尚、上記の分配装置5を省略し、スプール6に対してブレーキ操作力を直接伝達することとしてもよい。
【0025】
また、本実施形態の調圧弁RGについては、リターンスプリングとして機能する圧縮スプリング7が調圧室C5内に収容されており、その付勢力によってスプール6が後方に押圧されている。尚、圧縮スプリング7の取付荷重は圧縮スプリング4の取付荷重より大に設定され、ブレーキペダル2が操作されていないときには、図1に示す状態が維持されるように構成されている。上記の低圧室C6は環状室C4を介して液圧源PSの入力側と共にリザーバRSに接続されており、リザーバRS内の略大気圧のブレーキ液が環状室C4及び低圧室C6に充填されている。一方、環状室C3は液圧源PSのアキュムレータACに接続されており、液圧源PSの出力液圧が供給されるので高圧室となる。
【0026】
而して、図1に示すようにスプール6が後端の初期位置にあるときには、調圧室C5はスプール6を介して低圧室C6に連通し、リザーバRS内と同様略大気圧となっている。入力ピストン3が前方に移動し、これに伴いスプール6が前進して調圧室C5が低圧室C6と遮断された状態となると、調圧室C5内は出力保持状態となる。更にスプール6が前進すると、調圧室C5は、スプール6、補助ピストン12及び環状室C3を介して液圧源PSと連通するので、液圧源PSの出力液圧が調圧室C5内に供給されて昇圧し、出力増加状態となる。このように、補助ピストン12に対するスプール6の相対移動の繰り返しによって、調圧室C5内の液圧が所定の圧力に調整され、圧力室C2に供給されると共に、更に電磁開閉弁PC3及びPC4(後述する)を介して、ホイールシリンダW3及びW4にブレーキ液圧として出力されるように構成されている。
【0027】
一方、マスタ液圧室C1内には、マスタピストン11を初期位置方向に付勢するリターンスプリングとして機能する圧縮スプリング8が収容されており、この付勢力によってマスタピストン11の後端面が補助ピストン12の前端面に押接されている。この圧縮スプリング8の取付荷重は、本発明の差圧設定手段を構成し得る付勢力が生ずるように設定されている。即ち、後述する電磁開閉弁NO及びNCが図1に示す状態にあって、マスタ液圧室C1と圧力室C2とが連通されていないときには、調圧弁RGの出力液圧がマスタシリンダMCの出力ブレーキ液圧より高圧となるように、圧縮スプリング8の取付荷重が設定されている。そして、図1に示すようにマスタピストン11が後端の初期位置にあるときには、マスタピストン11のスカート部に形成された連通孔11aとシリンダ1に形成された連通孔1rがリザーバRSと連通し、マスタ液圧室C1はリザーバRS内と同様略大気圧となっている。マスタピストン11が前進すると、シール部材S1によって連通孔11aが遮蔽され、マスタ液圧室C1はリザーバRSとの連通が遮断された状態に維持される。而して、この状態で更にマスタピストン11が前進するとマスタ液圧室C1内の液圧が上昇するように構成されている。
【0028】
また、本実施形態では図1に示すように、例えば車両前方の車輪のホイールシリンダW1及びW2は、夫々電磁開閉弁PC1及びPC2を介してマスタ液圧室C1に接続されている。これに対し、例えば車両後方の車輪のホイールシリンダW3及びW4は、夫々電磁開閉弁PC3及びPC4を介して圧力室C2(ひいては調圧室C5)に接続されている。而して、調圧室C5の出力液圧が圧力室C2から開位置の電磁開閉弁PC3及びPC4を介してホイールシリンダW3及びW4にブレーキ液圧として供給される。また、調圧室C5の出力液圧は圧力室C2に供給されるので、マスタピストン11が前進し、マスタ液圧室C1の出力液圧が、開位置の電磁開閉弁PC1及びPC2を介してホイールシリンダW1及びW2に供給される。
【0029】
本実施形態においては、マスタ液圧室C1の出力側の液圧路には、その液圧検出手段たる圧力センサSmcが接続されると共に、圧力室C2(調圧室C5)の出力側の液圧路にもその液圧検出手段たる圧力センサSrgが接続されており、これらの検出信号が電子制御装置ECUに供給される。これにより、マスタ液圧室C1及び圧力室C2の出力液圧(Pmc及びPrg)が監視され、後述するように制御される。尚、アンチロック制御等に供する車輪速度センサ、加速度センサ等のセンサSNが設けられており、これらの検出信号が電子制御装置ECUに入力される。
【0030】
而して、図1に示すように、電磁開閉弁PC1乃至PC8等によって液圧制御弁PCが構成されており、例えばアンチロック制御におけるブレーキ液圧(ホイールシリンダ液圧)制御が行われる。図1において、マスタ液圧室C1とホイールシリンダW1及びW2の各々を接続する前輪側の液圧路には、夫々給排制御用の電磁開閉弁PC1及びPC5、並びに電磁開閉弁PC2及びPC6が接続されている。また、圧力室C2とホイールシリンダW3及びW4の各々を接続する後輪側の液圧路には、夫々給排制御用の電磁開閉弁PC3及びPC7、並びに電磁開閉弁PC4及びPC8が接続されている。供給側の電磁開閉弁PC1乃至PC4は常開で、上記の各液圧路に介装されているが、排出側の電磁開閉弁PC5乃至PC8は常閉で、夫々リザーバRSに接続されている。更に、電磁開閉弁PC1乃至PC4に対して並列に夫々逆止弁CVが接続されており、ブレーキペダル2が開放されたときには、ホイールシリンダW1乃至W4のブレーキ液のマスタ液圧室C1及び圧力室C2への流れは許容されるが逆方向の流れは阻止される。尚、例えば電磁開閉弁PC1及びPC5並びに逆止弁CVを統合して、給排制御用の電磁切換弁を構成することとしてもよい。
【0031】
更に、マスタ液圧室C1とリザーバRSとを接続する液圧路Haに、2ポート2位置の常開の電磁開閉弁NOが介装され、この電磁開閉弁NOと圧力室C2とを接続する液圧路Hbに2ポート2位置の常閉の電磁開閉弁NCが介装されている。而して、マスタシリンダMCからホイールシリンダW1及びW2(電磁開閉弁PC1及びPC2)に至る液圧系MHに対し、電磁開閉弁NCを介して圧力室C2ひいては調圧室C5の出力液圧を供給し得る。上記電磁開閉弁NCは、これを制御する電子制御装置ECUと共に液圧系MHに対する液圧供給手段として機能し、非励磁時には図1に示す閉位置にあって連通が遮断されており、励磁時には、圧力室C2はマスタ液圧室C1と連通する。これにより、アンチロック制御時には、電磁開閉弁NOを閉位置とすると共に電磁開閉弁NCを開位置とすれば、マスタシリンダMCからホイールシリンダW1及びW2(電磁開閉弁PC1及びPC2)に至る液圧系MHに圧力室C2、電磁開閉弁NCを介して調圧弁RGの出力液圧を供給することができる。
【0032】
上記の構成になる本実施形態の液圧ブレーキ装置において、先ず液圧発生装置PGの作動を説明すると、ブレーキペダル2が非操作状態にあるときには、入力ピストン3及び調圧弁RGのスプール6は図1に示す状態にある。即ち、圧縮スプリング7の付勢力によってスプール6が補助ピストン12に押接されており、この状態では、調圧室C5と環状室C3との連通は遮断され、調圧室C5は低圧室C6に連通している。而して、調圧室C5は低圧室C6を介してリザーバRSに連通し略大気圧とされており、調圧弁RGの出力液圧は圧力室C2には供給されないので、マスタピストン11は図1に示す初期位置に維持される。
【0033】
ブレーキペダル2に踏力が付与されると、入力ピストン3、圧縮スプリング4、分配装置5及びスプール6を介してブレーキ操作力が伝達され、先ず圧縮スプリング7が圧縮されつつスプール6が駆動されて前進する。更に、圧縮スプリング7の付勢力に抗してブレーキペダル2に踏力が付与され、スプール6が前進駆動されて調圧室C5が環状室C3及び低圧室C6の何れとも連通しない位置となると、出力保持状態となる。更にブレーキペダル2に踏力が付与されてスプール6が前進すると、調圧室C5と低圧室C6との連通が遮断された状態で、調圧室C5が環状室C3と連通し、液圧源PSの出力液圧が環状室C3を介して調圧室C5に供給され、出力増加状態となる。
【0034】
而して、図1に示す状態から、ブレーキペダル2が操作されると、調圧弁RGによって、調圧室C5内の液圧が、入力ピストン3から圧縮スプリング4及び分配装置5を介してスプール6に伝達される力に応じた液圧に調整されて圧力室C2に供給され、開位置の電磁開閉弁PC3及びPC4を介してホイールシリンダW3及びW4に供給されると共に、この圧力室C2内の液圧によって補助ピストン12が後方に押圧され、またマスタピストン11が前進駆動される。これにより、マスタ液圧室C1からブレーキ操作力に応じた液圧が開位置の電磁開閉弁PC1及びPC2を介してホイールシリンダW1及びW2に供給される。そして、アンチロック制御が開始すると、電磁開閉弁NO及びNC並びに電磁開閉弁PC1乃至PC8が開閉制御される。
【0035】
即ち、本実施形態においては、電磁開閉弁PC1乃至PC8が電子制御装置ECUによって駆動制御される。例えば、各センサSNの検出結果に基づき電子制御装置ECUによって電磁開閉弁PC1乃至PC8を適宜開閉制御することによって各ホイールシリンダ内のブレーキ液圧を急増圧、パルス増圧(緩増圧)、パルス減圧(緩減圧)、急減圧、及び保持状態とし、アンチロック制御に必要な液圧制御を行なうことができるが、従来と同様であるのでその作動説明は省略する。
【0036】
尚、液圧発生装置PGの作動中、万一液圧源PSが失陥した場合には、液圧源PSの出力液圧が環状室C3に供給されず、従って圧力室C2には液圧が供給されない。この場合には、ブレーキペダル2の操作に応じて入力ピストン3が前進駆動されると、スプール6が圧縮スプリング7の付勢力に抗して前進すると共に、入力ピストン3が圧縮スプリング4の付勢力に抗して前進し、ブレーキペダル2の操作力が分配装置5を介して補助ピストン12に伝達され、更にこれに当接するマスタピストン11に伝達され、マスタ液圧室C1からホイールシリンダW1及びW2にブレーキ液圧が出力される。
【0037】
本実施形態においては、電磁開閉弁NO及びNC並びに電磁開閉弁PC1乃至PC8は、電子制御装置ECUによって駆動制御され、各車輪に対するアンチロック制御が行なわれる。このアンチロック制御の一環として、特に電磁開閉弁NCの異常判定を含む処理を図3に示す。尚、この処理はアンチロック制御時の電磁開閉弁PC1乃至PC8の駆動制御と並行して行なわれ、例えば電磁開閉弁NCが異常と判定されたときには、電磁開閉弁PC1乃至PC8の駆動制御を停止するように構成することができる。
【0038】
而して、図3においては、先ずステップ101にて、アンチロック制御の開始条件を充足したか否かが判定される。このアンチロック制御の開始条件は従来と同様であるので詳細な説明は省略するが、例えば、車輪速度に基づき車輪のロック傾向が検出されるとアンチロック制御が開始するように設定される。ここでアンチロック制御開始と判定されると、ステップ102にて電磁開閉弁NO及びNCが励磁され(オンとされ)、電磁開閉弁NOが閉位置となり、電磁開閉弁NCが開位置となる。
【0039】
このときのマスタピストン11等の状態は、図2に示すように、マスタピストン11が前進し、連通孔1rはマスタピストン11の連通孔11aとは連通しなくなり、マスタ液圧室C1との間にシール部材S1が存在する状態となる。このシール部材S1はカップ状に形成されており一方向弁として機能するので、マスタ液圧室C1から連通孔1rへのブレーキ液の流れは阻止されるが、シール部材S1の前後の圧力差に応じて連通孔1rからマスタ液圧室C1への連通が許容される。従って、圧力室C2内の液圧、即ち調圧弁RGの出力液圧は、開位置の電磁開閉弁NCを介してマスタ液圧室C1に供給され得る状態となる。
【0040】
この場合において、電磁開閉弁NO及びNCが図1に示す状態にあって、マスタ液圧室C1と圧力室C2とが連通されていないときには、圧縮スプリング8の付勢力が付加されることによって、調圧弁RGの出力液圧がマスタシリンダMCの出力ブレーキ液圧より高圧となるように設定されている。これに対し、図2に示す状態となり、開位置の電磁開閉弁NCを介してマスタ液圧室C1と圧力室C2が連通し、調圧弁RGの出力液圧が圧力室C2及びマスタ液圧室C1に供給されると、液圧系MHの液圧は調圧弁RGの出力液圧と等しくなる。
【0041】
而して図3に戻り、ステップ102からステップ103に進むと、液圧系MHの検出液圧である圧力センサSmcの検出圧力Pmcが圧力センサSrgの検出圧力Prgと比較される。この圧力センサSrgの検出圧力Prgはブレーキ操作量に対応した値となるので、圧力センサSrgは本発明のブレーキ操作量検出手段を構成する。而して、ステップ103において、圧力センサSmcの検出圧力Pmcが圧力センサSrgの検出圧力Prgと等しいと判定されれば電磁開閉弁NCは正常と判定され、後述するステップ107を経てメインルーチン(図示せず)に戻る。
【0042】
これに対し、ステップ103において圧力センサSmcの検出圧力Pmcが圧力センサSrgの検出圧力Prg未満と判定されたときには、更にステップ104に進み、経過時間Ts(初回は0)が所定時間Ktsと比較され、所定時間Kts以下であれば、ステップ105にて経過時間Tsがインクリメント(Ts+1)されてステップ103に戻る。この間に圧力センサSmcの検出圧力Pmcが圧力センサSrgの検出圧力Prgと等しくなれば、正常と判定されてステップ103からステップ107に進み、経過時間Tsがクリア(0)されて、メインルーチン(図示せず)に戻る。しかし、圧力センサSmcの検出圧力Pmcが圧力センサSrgの検出圧力Prg未満と判定された経過時間Tsが所定時間Ktsを越えると、異常と判定され、ステップ104からステップ106に進み、例えば警報装置ALが駆動され、及び/又はアンチロック制御作動が禁止(もしくは停止)される。
【0043】
図4は本発明の他の実施形態に係る車両用液圧ブレーキ装置を示すもので、図1の実施形態におけるマスタピストン11の前方に拡径部11bが一体的に形成され、その前方にシール部材S1が図1と同様の方向に配置されており、マスタピストン11の圧力室C2側の受圧面積(シール部材S2内側の面積)がマスタ液圧室C1側の受圧面積(シール部材S1外側の面積)より小に設定されている。これにより、前述の圧縮スプリング8の付勢力に加え、マスタピストン11の受圧面積差による差圧が付加されるので、マスタ液圧室C1と圧力室C2との間に更に大きな差圧を設定することができる。即ち、電磁開閉弁NO及びNCが図4に示す状態にあって、マスタ液圧室C1と圧力室C2とが連通されていないときに、調圧弁RGの出力液圧がマスタシリンダMCの出力ブレーキ液圧より一層高圧となるように設定することができる。
【0044】
尚、本実施形態においては、マスタピストン11には連通孔11aは形成されておらず、マスタ液圧室C1に連通する連通孔1sがシリンダ1に形成されており、図4に示すように、ブレーキペダル2の非操作時には、連通孔1sが開位置の電磁開閉弁NOを介してリザーバRSと連通し、マスタ液圧室C1はリザーバRS内と同様略大気圧となっている。これに対し、マスタピストン11が前進すると、図5に示すようにシール部材S1によって連通孔1sが遮蔽され、リザーバRSとの連通が遮断される。而して、この状態で更にマスタピストン11が前進するとマスタ液圧室C1内の液圧が上昇するように構成されており、更に、電磁開閉弁NOが閉位置とされた後、開位置の電磁開閉弁NCを介してマスタ液圧室C1と圧力室C2が連通し、調圧弁RGの出力液圧が連通孔1r及び1sとシール部材S1を介してマスタ液圧室C1に供給されると、マスタ液圧室C1内の液圧は上昇し、圧力室C2内の液圧と等しくなる。
【0045】
また、図4の実施形態においては、圧縮スプリング8の取付荷重を、図1の実施形態のように差圧設定手段を構成し得る付勢力が生ずるように設定しなくとも、マスタピストン11の受圧面積差によって本発明の差圧設定手段を構成することができる。本実施形態のその他の構成は図1の実施形態と同様であるので、同一の符号を付して説明は省略する。而して、本実施形態においても図3と同様の異常判定処理を行なうことができる。
【0046】
ところで、ブレーキ操作量検出手段が検出したブレーキ操作量と液圧系MHの検出液圧(圧力センサSmcの検出圧力Pmc)の比較に関し、例えば前述の図3のステップ103に示した判定処理においては、圧力センサSmcの検出圧力Pmc(液圧系MHの検出液圧)が圧力センサSrgの検出圧力Prg(調圧弁RGの出力液圧)と等しいと判定されれば電磁開閉弁NCが正常と判定されるように構成されているが、例えば、液圧系MHの検出液圧が、調圧弁RGの出力液圧に応じた液圧系MHの液圧より大となったときに、電磁開閉弁NCが正常と判定されるように構成してもよい。これに関し、図6を参照して説明すると、電磁開閉弁NCが開位置となったときには液圧系MHの液圧特性は実線で示すようになるが、電磁開閉弁NCが閉位置にあるときには前述の差圧設定手段の存在によって液圧系MHの液圧特性は破線で示すようになる。従って、後者の特性に基づいて判定することとすれば、前述のように電磁開閉弁NCが開位置とされて液圧系MHの検出液圧が調圧弁RGの出力液圧と等しくなるまで待つことなく、電磁開閉弁NCの作動状態を判定することができる。
【0047】
図6において、調圧弁RGの出力液圧が例えばPrga であるときには、電磁開閉弁NCが開位置とされ、液圧系MHの液圧が安定する時間を経過すれば、液圧系MHの検出液圧(圧力センサSmcの検出圧力)はPmcaとなる。この場合において、電磁開閉弁NCが開位置とされると同時に、圧力センサSmcの検出圧力は、Pmcaには到達しないものの、直ちにPmcbを越えた値となる。従って、調圧弁RGの出力液圧がPrgaであるときの液圧系MHの検出液圧(圧力センサSmcの検出圧力)がPmcbより大となったか否かを判定すれば、電磁開閉弁NCを介して液圧が供給されたことが分かるので、実線上のPmcaに到達したか否かを判定する場合(図3に示す態様)に比べ、電磁開閉弁NCの作動状態を早く判定することが可能となる。
【0048】
また、上記の実施形態では、ブレーキ操作量に応じた値として、調圧弁RGの出力液圧を検出することとしたが、ブレーキペダル2のストロークや、ブレーキペダル2に付与されるブレーキ操作力を検出することとし、これらの値に応じた調圧弁RGの出力液圧を演算し、これを液圧系MHの検出液圧と比較するように構成してもよい。更に、このブレーキ操作量に応じた調圧弁RGの出力液圧に対し、液圧系MHの検出液圧が図6の破線で示す特性を越えたときに、電磁開閉弁NCが正常と判定されるように構成すれば、一層迅速な判定が可能となる。
【0049】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されているので以下に記載の効果を奏する。即ち、請求項1に記載の車両用液圧ブレーキ装置においては、開閉弁が閉位置にあるときに調圧弁の出力液圧をマスタシリンダの出力ブレーキ液圧より高圧に設定する差圧設定手段を設け、車輪に対するアンチロック制御時に開閉弁を開位置とし、ブレーキ操作量検出手段が検出したブレーキ操作量と液圧検出手段の検出液圧の比較結果に応じて開閉弁の作動状態を判定することとしているので、複雑なスイッチ機構を必要とすることなく、簡単且つ安価に、アンチロック制御開始時に開閉弁の作動状態を判定することができる。そして、車輪のアンチロック制御に移行したときに万一開閉弁が正常に作動しない場合には適切に警報等を行ない、あるいは直ちにアンチロック制御作動を停止することができる。
【0050】
上記差圧設定手段は、請求項2に記載のように、初期位置方向に付勢するリターンスプリングで構成することができ、また、請求項3に記載のように、マスタピストンの前記圧力室側の受圧面積をマスタ液圧室側の受圧面積より小に設定すれば、大きな差圧を設定することができるので、開閉弁の作動状態を容易且つ確実に判定することができる。
【0051】
上記ブレーキ操作量検出手段は、請求項4に記載のように、調圧弁の出力液圧を検出する液圧検出手段を備えたものとし、その検出液圧に基づきブレーキ操作量を検出することができる。
【0052】
更に、請求項5に記載のように、差圧設定手段によって液圧源の出力液圧を液圧系に供給した時間が所定時間経過した後も、開閉弁の正常な作動状態と判定できないときには、開閉弁の異常と判定するように構成すれば、誤判定を抑え、開閉弁の作動状態を適切に判定することができる。
【0053】
また、請求項6に記載のように、判定手段が開閉弁の異常と判定したときにはアンチロック制御を禁止するように構成すれば、開閉弁が正常であるときにのみアンチロック制御を行ない適切な制動作動を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用液圧ブレーキ装置の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における作動状態を示す車両用液圧ブレーキ装置の一部の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用液圧ブレーキ装置における判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施形態に係る車両用液圧ブレーキ装置の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態における作動状態を示す車両用液圧ブレーキ装置の一部の断面図である。
【図6】本発明の各実施形態における調圧弁の出力液圧に対する液圧系の液圧特性を示すグラフである。
【符号の説明】
PG 液圧発生装置, PS 液圧源, RG 調圧弁, MH 液圧系,
MC マスタシリンダ, RS リザーバ, 1 シリンダ,
2 ブレーキペダル, 3 入力ピストン, 5 分配装置,
6 スプール, 11 マスタピストン, 12 補助ピストン,
C1 マスタ液圧室, C2 圧力室, C3,C4 環状室,
C5 調圧室, C6 低圧室, NC,NO 電磁開閉弁
Claims (6)
- 所定の液圧を発生して出力する液圧源と、該液圧源の出力液圧を運転者のブレーキ操作に応じて調圧して出力する調圧弁と、該調圧弁の出力液圧を圧力室に導入し、該圧力室の液圧によってマスタピストンを前進駆動してマスタ液圧室からブレーキ液圧を出力するマスタシリンダと、該マスタシリンダの出力ブレーキ液圧によって車両の各車輪に対し制動力を付与するホイールシリンダと、該ホイールシリンダと前記マスタシリンダを接続する液圧路に介装し、前記車両の各車輪に制動力を付与したときにロック傾向を示す車輪に対し、前記ホイールシリンダ内の液圧を調整してアンチロック制御を行なう液圧制御弁と、前記マスタシリンダから前記ホイールシリンダに至る液圧系に対し前記調圧弁の出力液圧を供給する液圧路に介装し、該液圧路を開閉する開閉弁を備えた車両用液圧ブレーキ装置において、前記開閉弁が閉位置にあるときに前記調圧弁の出力液圧を前記マスタシリンダの出力ブレーキ液圧より高圧に設定する差圧設定手段と、前記液圧系の液圧を検出する液圧検出手段と、前記運転者のブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、前記車輪に対するアンチロック制御時に前記開閉弁を開位置とし、前記ブレーキ操作量検出手段が検出したブレーキ操作量と前記液圧検出手段の検出液圧の比較結果に応じて前記開閉弁の作動状態を判定する判定手段を備えたことを特徴とする車両用液圧ブレーキ装置。
- 前記差圧設定手段は、前記マスタピストンを初期位置方向に付勢するリターンスプリングで構成したことを特徴とする請求項1記載の車両用液圧ブレーキ装置。
- 前記マスタピストンの前記圧力室側の受圧面積を前記マスタ液圧室側の受圧面積より小に設定して成ることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用液圧ブレーキ装置。
- 前記ブレーキ操作量検出手段は、前記調圧弁の出力液圧を検出する液圧検出手段を備え、該液圧検出手段の検出液圧に基づき前記ブレーキ操作量を検出するように構成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車両用液圧ブレーキ装置。
- 前記判定手段は、前記調圧弁の出力液圧を前記液圧系に供給した時間が所定時間経過した後も、前記開閉弁の正常な作動状態と判定できないときには、前記開閉弁の異常と判定するように構成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の車両用液圧ブレーキ装置。
- 前記判定手段が前記開閉弁の異常と判定したときには、前記液圧制御弁による前記車輪に対するアンチロック制御を禁止するように構成したことを特徴とする請求項5に記載の車両用液圧ブレーキ装置。
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- 2003-05-07 JP JP2003129419A patent/JP2004330876A/ja active Pending
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