JP2004322660A - 車両用制動システム - Google Patents
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Abstract
【課題】構成装置の構造に起因して生じるヒステリシスを緩和する等の適切な制御を行うことで、操作フィーリングが良好な車両用制動システムを得る。
【解決手段】操作部材の操作状態量に基づいて目標制御量を決定する際、同じ操作状態であっても操作部材の操作方向(制動力増大方向と制動力減少方向)に依拠して目標制御値を異ならせ[S13〜S18]、その目標制御値に基づいて制動装置を制御する[S25,S26]。低制動制御域において、制動力減少方向における目標制御値の方を小さくする。また、高制動制御域において、制動力減少方向の目標制御値を大きくする。このようにすれば、液圧式摩擦ブレーキ特有のヒステリシスを緩和することができる。さらに、操作方向の切り替わり時点で生じるところの目標制御値の差異に起因する制動力の急変を緩和すべく、目標制御値の補正を行えば[S19〜S26]、操作フィーリングがより向上する。
【選択図】 図11
【解決手段】操作部材の操作状態量に基づいて目標制御量を決定する際、同じ操作状態であっても操作部材の操作方向(制動力増大方向と制動力減少方向)に依拠して目標制御値を異ならせ[S13〜S18]、その目標制御値に基づいて制動装置を制御する[S25,S26]。低制動制御域において、制動力減少方向における目標制御値の方を小さくする。また、高制動制御域において、制動力減少方向の目標制御値を大きくする。このようにすれば、液圧式摩擦ブレーキ特有のヒステリシスを緩和することができる。さらに、操作方向の切り替わり時点で生じるところの目標制御値の差異に起因する制動力の急変を緩和すべく、目標制御値の補正を行えば[S19〜S26]、操作フィーリングがより向上する。
【選択図】 図11
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用制動システムに関し、詳しくは、電子制御式制動システムにおける制動装置の制御の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、電子制御式の車両用制動システムでは、主に操作部材の操作力とは別の駆動力によって制動装置が駆動され、操作部材の操作に応じた制動力を発生させるように制御される。操作部材の操作力のみによって車輪に直接制動力を付与するものではないため、操作部材の操作感の良し悪しは、重要な特性の1つである。代表的な液圧ブレーキシステムは、例えば、操作部材であるブレーキペダルの操作状態を検出し、その検出した状態に基づいて、ブレーキパッドを押付けるホイールシリンダの液圧をコントロールするような構造とされている。ブレーキペダルの操作には、制動力を増大させるための踏込操作と制動力を減少させるための踏戻操作とがあるが、それら両者は、制動力との関係において同じ操作感を伴うものであることが望ましい。ところが、ブレーキシステムを構成する各種装置が有する機械的な抵抗等の原因によって、例えば、ブレーキペダルの戻し操作を行うときに、操作者の意図ほどには制動力が減少しなかったり、あるいは逆に、操作者の意図にもまして制動力が減少しすぎるといった現象が発生する。そのような現象は、ブレーキシステムの構成態様に応じて生じるヒステリシス的な現象であり、ブレーキシステムの操作フィーリングに大きな影響を与える。
【0003】
これまでに、例えば下記特許文献に記載されているように、ブレーキ操作と制動力との関係において意図的にヒステリシスを与えることによって、ブレーキシステムの操作感を向上させるといった技術が存在する。ところが、操作フィーリングは微妙なものであり、ヒステリシスを発生させることによって操作感が向上するとは限らず、むしろ実際に発生するヒステリシスを解消することによって操作感が向上する場合も多い。
【特許文献1】
特開2001−239925号公報
【特許文献2】
特開2001−206208号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
本発明は、適切な制御が行われることで操作フィーリングが良好な車両用制動システムを得ることを課題とする。また、上記実情に鑑み、下位の課題として、操作状態と制動力との関係において、構成装置の構造に起因して生じるヒステリシスであって、操作感に悪影響を与えるところのヒステリシスを緩和させる制御を実行することによって、車両用制動システムの操作フィーリングを向上させることを課題とする。そして、本発明によって、それらの課題を解決すべく、下記各態様の車両用制動システムが得られる。なお、各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能である。
【0005】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項〜(7)項がそれぞれ請求項2〜請求項7に相当する。また、(10)項が請求項8に、(12)項ないし(14)項を合わせたものが請求項9に、(15)項,(16)項がそれぞれ請求項10,請求項11に、(17)項と(18)項とを合わせたものが請求項12に、それぞれ相当する。
【0006】
(1)車両を制動する制動装置と、
前記車両の運転者によって、前記制動装置の制動力が増大する操作方向である制動力増大方向と、制動力が減少する操作方向である制動力減少方向とに操作される操作部材を有する操作装置と
前記制動装置を制御するための目標制御値を、前記操作部材の操作状態量に基づいて決定し、その決定された目標制御値に基づいて前記制動装置を制御する制御装置と
を備えた車両用制動システムであって、
前記制御装置が、少なくとも一部の制御域において、前記操作部材が制動力増大方向に操作されるときの前記目標制御値である増大方向目標制御値と、制動力減少方向に操作されるときの前記目標制御値である減少方向目標制御値とを、互いに異なる値に決定する操作方向依拠目標制御値決定部を有することを特徴とする車両用制動システム。
【0007】
本発明の制動システムは、平たく言えば、操作部材の操作方向によって、制動装置を制御するための目標制御値を、異なる値に決定して制御を行う制動システムである。操作状態と制動力との関係において、操作部材の操作方向をも加味した制御を行うことができるため、本発明によれば、操作フィーリングが良好な制動システムを実現することが可能である。また、本発明によれば、システムの構造に起因する現象であって、同じ操作状態であっても操作方向によって制動力が異なるといったヒステリシス的な現象を、容易に緩和することが可能である。
【0008】
本発明のシステムが備える制動装置は、特に限定されるものではないが、例えば、一般的な車両に用いられている摩擦制動装置を備えて構成されるものであってよい。本発明は、具体的には、ディスクブレーキ,ドラムブレーキといった種々の態様のブレーキ装置に対して適用が可能である。
【0009】
操作装置は操作部材を備えるものであり、その操作部材には、操作者が足で操作する操作ペダルや、操作者が手で操作する操作桿といった種々のものが含まれる。一般の車両は、ブレーキペダルを有しており、このブレーキペダルが操作部材に相当する。操作部材は、1つの軌道に沿って操作されることが多く、その場合における操作方向は、その軌道に沿った一方向の操作方向が制動力増大方向に相当し、その一方向と逆の方向の操作方向が制動力減少方向に相当する。例えば、一般的なブレーキペダルの場合であれば、ペダルを踏み込む方向である踏込方向が制動力増大方向であり、ペダルを戻す方向である踏戻方向が制動力減少方向である。
【0010】
制御装置は、操作部材の操作状態に応じて制動装置を制御するものであり、例えば、コンピュータ等を主体として電子制御を行い得るものであってよい。制御の基礎となる量である操作部材の操作状態量は、例えば、操作部材の操作量,操作力,操作速度等が含まれ、それらの直接的な量だけでなく、それらの各々の間接的なパラメータとしての関連量であってもよい。操作部材がブレーキペダルである場合は、例えば、ペダルストローク,ペダル踏力,ペダルが操作される速度等に基づく制御を行うことができ、またペダル踏力に関連する量として、例えば、ブレーキペダルに連係するマスタシリンダの液圧等に基づく制御を行うことができる。なお、制御の基礎となる操作状態量は1つに限られず、2つ以上のものに基づく制御を行うことも可能である。例えば、操作力と操作量との両者,操作量と操作速度との両者に基づいて目標制御値を決定するといった態様であってもよい。また、操作部材の操作状態量の他に、車両減速度,車両速度といった他の状態量をも基礎にして目標制御値を決定する態様であってもよい。目標制御値は、特に限定されるものではなく、制動装置が発生する制動力を制御可能な種々のパラメータを採用することが可能である。例えば、得ようとする車両減速度の値を目標制御値とすることもでき、また、一般的な液圧式ディスクブレーキ装置の場合、ブレーキパッドの押付力の値であるとか、そのブレーキ装置が備えるホイールシリンダ液圧の値等を目標制御値とすることも可能である。また、一旦、1つの仮想的な目標制御値を決定し、その仮想的な目標制御値に基づいて他の種類の目標制御値を定め、その目標制御値に基づいて実際の制御を行うものであってもよい。具体的には、目標車両減速度を決定した上で、その目標車両減速度に基づいて各車輪についての目標ホイールシリンダ液圧を決定し、その目標液圧に基づいて各車輪を制御するような態様である。
【0011】
目標制御値の決定は、例えば、操作部材の操作状態量と目標制御値とがある関係式によって関係付けられている場合は、その関係式に従って行うものであってもよい。また、操作状態量と目標制御値とを関係付ける対応データ(いわゆる、マップと呼ばれるようなもの)が規定されている場合であれば、その対応データに基づいて決定するものであってもよい。操作方向依拠目標制御値決定部は、制動力増大方向の目標制御値と制動力減少方向の目標値とを互いに異ならせるものであり、その態様としては、例えば、上記関係式,対応データ等の操作状態量と目標制御値とを関係付けるもの(「操作状態量−目標制御値ファンクション」と呼ぶことができる。以下、単に「ファンクション」と呼ぶ場合がある。)を、操作方向に応じて使い分けて目標制御値を決定する態様を採用することができる。また、目標制御値を操作方向に依拠して相違させる場合、制御域の全域にわたって相違させる態様であってもよく、また、制御の目的,システムの特性等に応じて、一部の制御域のみにおいて異ならせる態様であってもよい。なお、ここでいう制御域には、例えば、制動力をパラメータとする制御域、操作部材の操作状態量をパラメータとする制御域、車速をパラメータとする制御域等、種々のものが含まれる。
【0012】
目標制御値に基づく制動装置の制御は、その具体的な態様が特に限定されるものではない。通常行われている制御に従えばよく、例えば、一般的な液圧ブレーキ装置の場合であれば、ホイールシリンダ液圧に基づくフィードバック制御,フィードフォワード制御等を行うといった態様等を採用することができる。
【0013】
(2)前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記減少方向目標制御値を前記増大方向目標制御値より低い値に決定する減少方向低値決定を行うものである(1)項に記載の車両用制動システム。
【0014】
本項に記載の態様は、ある操作状態にあるときに、制動力減少方向の操作において、制動力増大方向の操作に比べて、制動力が高くなる傾向にあるような場合に好適な態様である。つまり、そのようなヒステリシスが生じるような制動システムに好適な態様である。具体的には、例えば、制動力増大方向の操作から制動力減少方向の操作へ操作方向が切替えられる場合に、制動力が意図したほどには低下しないような現象が生じる場合等に有効な態様である。例えば、制動装置の構造上の要因(制動装置の円滑な動作を阻害する抵抗等)等により、制動力が予定した程に緩まらないといった現象が起こり得る。本態様によれば、システムの構造に起因するそのような現象を緩和して、操作フィーリングを向上させることができる。
【0015】
(3)前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記制動装置の制動力の低い制御域である低制動制御域において、前記減少方向低値決定を行うものである(2)項に記載の車両用制動システム。
【0016】
後に詳しく説明するように、例えば、制動装置が、液圧式ブレーキ装置のような場合に特にそうであるが、例えば、制動装置の円滑な操作を阻害する抵抗がある場合には、制動力が低い状態において、制動力減少方向の操作において制動力が意図する程に減少しないといった傾向が強く現れる。本項に記載の態様によれば、例えば、そのような特性を有する制動システムにおいて、低制動力制御域における操作フィーリングを効果的に向上させることができる。
【0017】
(4)前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記減少方向目標制御値を前記増大方向目標制御値より高い値に決定する減少方向高値決定を行うものである(1)項に記載の車両用制動システム。
【0018】
本項に記載の態様は、前述した態様とは逆に、ある操作状態にあるときに、制動力減少方向の操作において、制動力増大方向の操作に比べて、制動力が低くなる傾向にあるような場合に好適な態様である。つまり、そのようなヒステリシスが生じるような制動システムに好適な態様である。具体的には、例えば、制動力増大方向の操作から制動力減少方向の操作へ操作方向が切替えられる場合に、制動力が意図した程度を超えて減少する現象が生じる場合等に有効な態様である。例えば、操作装置の構造上の要因(操作装置の動作を阻害する抵抗等)等によって、操作部材の操作状態量が適正な値とならないといった現象が起こり得る。本態様によれば、システムの構造に起因するそのような現象を緩和して、操作フィーリングを向上させることができる。
【0019】
(5)前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記制動装置の制動力の高い制御域である高制動制御域において、前記減少方向高値決定を行うものである(4)項に記載の車両用制動システム。
【0020】
後に詳しく説明するように、操作部材の操作量が多くなるにつれて操作力を大きくするような操作装置とするのが一般的であり、そのような操作装置において操作状態量として操作部材の操作力を採用する制御を行う場合、制動力増大方向から制動力減少方向に切替えたときに、操作装置の構造上の特性から操作部材の操作力が急に小さくなる現象が生じ得る。かかる場合、目標制御値が低くなりすぎて制動力が小さくなりすぎることがある。このような現象による制動力の変化は、制動力が高い状態においてより顕著に出現する傾向にある。本項に記載の態様によれば、例えば、そのような特性を有する制動システムにおいて、高制動力制御域における操作フィーリングを効果的に向上させることができる。
【0021】
(6)前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記制動装置の制動力の低い制御域である低制動制御域において、前記減少方向目標制御値を前記増大方向目標制御値より低い値に決定する減少方向低値決定を行い、かつ、前記制動装置の制動力の高い制御域である高制動制御域において、前記減少方向目標制御値を前記増大方向目標制御値より高い値に決定する減少方向高値決定を行うものである(1)項に記載の車両用制動システム。
【0022】
本項に記載の態様は、前述したように、低制動制御域と高制動制御域とにおいて互いに逆の現象が生じる制動システムにおいて、その制御域のいずれににおいて操作フィーリングを向上させ得る態様である。後に説明するように、多くの液圧式ブレーキシステムの場合、液圧式ブレーキシステム固有の現象として、上記現象が生じるため、本項に記載の態様は、多くの一般的な態様の制動システムに広く適用可能な態様である。なお、本項の態様とは異なる態様であるが、本発明は、制御の目的,制動システムの特性等に応じて、低制動制御域において減少方向高値決定を行い、かつ、高制動制御域において減少方向低値決定を行う態様で実施することもできる。
【0023】
(7)前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記操作部材の操作方向の切替えである操作方向切替えが行われた際、その操作方向切替えの時点において、前記増大方向目標制御値と前記減少方向目標制御値との間の差異である制御値差異が存在する場合に、その制御値差異に起因する前記目標制御値の急変を緩和すべく補正を行う目標制御値補正部を有する(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の車両用制動システム。
【0024】
操作部材の操作方向に依拠して目標制御値を異ならせる場合、操作方向の切り替わりの時点で、目標制御値の変化にギャップが存在することで、制動力が急変することが予想される。本項に記載の態様は、目標制御値を補正することにより、かかる制動力の急変を抑え、操作フィーリングをより良好なものとすることができる。
【0025】
(8)前記目標制御値補正部が、前記操作方向切替えの後において、前記制御値差異が存在しなくなるまで、前記操作方向切替えの直前の前記目標制御値を維持する目標制御値維持補正部を有する(7)項に記載の車両用制動システム。
【0026】
本項に記載の態様は、操作方向の切り替わり時における制動力の急変を抑制するための一態様である。本項に記載の態様には、具体的には例えば、切替え直後において、切替え後の操作方向についての所定のファンクションに基づいて決定された目標制御値を採用するのではなく、そのファンクションに基づいて決定された目標制御値が切り替わり直前の目標制御値と同じ値になるまで、その直前の目標制御値を採用して制動装置の制御を行う態様が含まれる。
【0027】
(9)前記目標制御値補正部が、前記操作方向切替の後における設定された前記操作部材の操作範囲において、前記前記操作方向切替えの時点での前記制御値差異を一定の割合で漸減させる値に基づいて補正を行う制御値差異漸減補正部を有する(7)項または(8)項に記載の車両用制動システム。
【0028】
本項に記載の態様は、操作方向の切り替わり時における制動力の急変を抑制するための一態様である。本項に記載の態様には、具体的には例えば、切替え後において、切替え後の操作方向についての所定のファンクションに基づいて決定された目標制御値をそのまま採用するのではなく、その目標制御値に、制御値差異を操作部材の操作状態の変化等に応じた所定の割合で減じた値を補正値として加える補正を行い、目標制御値の変化に大きなギャップが存在しない操作状態までその補正を継続するような態様が含まれる。
【0029】
(10)前記制御装置が、前記目標制御値として目標車両減速度を決定し、その目標車両減速度に基づいて前記制動装置を制御するものである(1)項ないし(9)項のいずれかに記載の車両用制動システム。
【0030】
先に説明したように、制動装置を制御する制御値はどのようなパラメータであってもよいが、本項に記載の態様のように、車両減速度とすることができる。車両減速度は、操作者が望む制動状態を的確に表すパラメータとなることから、操作状態量に基づく制動装置の制御を実情に即したものとすることができる。本項に記載の態様には、車両減速度に基づく制御を行う態様の他、一旦決定した目標車両減速度を別のパラメータの目標制御値(例えば液圧式ブレーキ装置の場合の目標ホイールシリンダ液圧)に変換し、その変換した目標制御値に基づいて制御を行うような態様も含まれる。
【0031】
(11)前記制御装置が、前記操作状態量として、少なくとも前記操作部材の操作量に基づいて前記目標制御値を決定するものである(1)項ないし(10)項のいずれかに記載の車両用制動システム。
【0032】
先に述べたように、操作状態量は、特に限定されるものではないが、本項に記載の態様のように、操作部材の操作量を採用することができる。操作量は、いわゆる操作部材の操作ストロークを含む概念である。操作装置がブレーキペダルである場合は、ペダルストローク、つまり、ペダルの踏込量が操作量に相当するものとなる。操作量は、操作感として容易に体感できるパラメータであり、それにに基づく制動力の制御を行えば、操作者の意図に沿った制動力が得られる制動システムが実現する。
【0033】
(12)前記制御装置が、前記操作状態量として、少なくとも前記操作部材の操作力関連量に基づいて前記目標制御値を決定するものである(1)項ないし(11)項のいずれかに記載の車両用制動システム。
【0034】
操作量と同様に、操作部材の操作力も、操作感として容易に体感できるパラメータであり、本項に記載の態様によれば、操作者の意図に沿った制動力が得られる制動システムが実現する。操作力関連量は、操作力(操作部材がブレーキペダルである場合は、ペダル踏力)そのものであってもよく、また、操作力を間接的にあるいは近似的に表すパラメータであればよい。
【0035】
(13)前記操作装置が、液体を収容したシリンダと、前記操作部材に連係させられて前記液体を加圧するピストンとを有するシリンダ装置を備え、前記制御装置が、少なくとも、前記操作力関連量としての前記液体の圧力に基づいて前記目標制御置を決定するものである(12)項に記載の車両用制動システム。
【0036】
本項に記載の態様は、操作部材の操作力関連量に基づく制御に関する具体的な一態様である。液圧式のブレーキシステムの場合、例えば、ブレーキペダルによって操作されるいわゆるマスタシリンダ(通常制御状態では、マスタシリンダとホイールシリンダとが連通しない状態のシステムもあり、その場合はマスタシリンダとしての機能を発揮しないことがある)を有しており、そのマスタシリンダの液圧とペダル踏力とが一定の相関関係にあるため、その液圧を操作力関連量として採用することもできるのである。
【0037】
(14)前記操作装置が、前記シリンダ装置と連係して前記操作部材の前記操作力に応じた操作量を生じさせるストロークシミュレータを備えた(13)項に記載の車両用制動システム。
【0038】
ブレーキペダルを操作する操作装置では、ペダル踏力に応じたペダルストロークを確保するために、ストロークシミュレータを採用することが一般的である。液圧式のブレーキシステムでは、ストロークシミュレータは、いわゆるウェット式ストロークシミュレータと呼ばれるものが用いられることがある。そのシミュレータには、例えば、シリンダと、そのシリンダ内を2つの空間に区画しつつそれらの空間体積を相対的に変化させて移動するピストンを備え、一方の空間にマスタシリンダからの作動液が流入されるとともに、他方の空間にピストンを上記一方の空間の体積が減少する方向に付勢する付勢部材が設けられた構造のものが存在する。そのようなストロークシミュレータは、ペダルストロークに応じた操作反力を生じるようにされている。ところが、ペダルを踏み込んだ状態から戻す場合に、上記ピストンの上記シリンダに対する摺動抵抗や、マスタシリンダとストロークシミュレータとを連通する配管を作動液が通過する際の抵抗等が起因して、ペダルの戻し量に応じた以上にマスタシリンダ液圧が低下する。マスタシリンダ液圧に基づく制動力の制御を行う場合、その現象により、戻し操作への切替えが行われた際、意図した以上に得られる制動力が低下することになる。つまり、ある種のヒステリシスが存在するのである。上記操作方向切替え時における制動力の低下傾向は、ペダルが大きく踏み込まれる程、すなわち制動力が高い操作状態である程強くなり、操作フィーリングを悪化させる一因となる。本項に記載の態様では、かかるストロークシミュレータの構造に起因する操作感の悪化現象を、操作方向に依拠して目標制御値を変更することにより、効果的に緩和することができる。
【0039】
(15)前記制動装置が摩擦制動装置を備えた(1)項ないし(14)項のいずれかに記載の車両用制動システム。
【0040】
(16)前記摩擦制動装置が液圧式摩擦制動装置である(15)項に記載の車両用制動システム。
【0041】
(17)前記摩擦制動装置が、車輪と一体的に回転する回転体と、その回転体と摺接することにより摩擦力を発生させる摩擦摺接部材と、その摩擦摺接部材を前記回転体に対して接近・離間可能に保持する摩擦摺接部材保持装置と、前記摩擦摺接部材を前記回転体に押付ける摩擦摺接部材押付装置とを有する(15)項または(16)項に記載の車両用制動システム。
【0042】
(18)前記摩擦制動装置が液圧式摩擦制動装置であり、前記摩擦摺接部材押付装置が、ピストンと作動液体を収容するシリンダとを有して前記作動液体の圧力により前記摩擦摺接部材を前記回転体に押付ける押付シリンダ装置を有する(17)項に記載の車両用制動システム。
【0043】
本発明は、上記一連の項に示すように、ドラムブレーキ,ディスクブレーキといった摩擦力を利用した制動システムに広く適用可能である。摩擦制動装置は、摩擦摺接部材であるブレーキパッドを、ブレーキドラム,ブレーキディスクといった車輪とともに回転する回転体に押付ける機構を有しており、その機構における各構成要素のあるいは構成要素間に生じる摺動抵抗等に起因して、操作者の意図程には制動力が減少しないといった現象が生じる。ブレーキペダルの操作に関連して詳しく言えば、ペダルの踏込操作後に踏戻操作を行った際、ブレーキパッドとそれを保持する保持部材(例えばマウンティングブラケット等)との間の摺動抵抗であるとか、ブレーキパッド押付装置(液圧ブレーキ装置であれば、例えば、ホイールシリンダ等)内部の摺動抵抗とかによって、ブレーキパッドを回転体に押付ける力が充分に抜けきらないとった減少である。この現象は、一種のヒステリシスであり、制動力が小さい状態つまり低制動力制御域において、いわゆるブレーキの引き摺り現象として操作者に体感され、操作フィーリングに与える影響が大きい。本発明は、上記構成の制動装置を備える制動システムにおいて、その構成に起因する操作フィーリングの悪化を、操作部材の操作方向に依拠して目標制御値を変更することにより、効果的に抑制することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態およびその変形態様を、図を参照しつつ説明する。なお、本発明は、下記の実施形態等に限定されるものではなく、下記実施形態等の他、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【0045】
<車両用制動システムの構成>
図1に、本発明の実施形態である4輪自動車に用いられている車両用制動システムの全体構成を示す。制動システムは、よく知られた構造の液圧式ブレーキシステムであり、大きくは、車両に制動力を付与する制動装置10と、操作者が当該システムを操作するための操作装置12と、操作装置12の操作の状態に応じた制動装置10の制御を行う制御装置14とを備えて構成されている。
【0046】
操作装置12は、操作部材であるブレーキペダル20と、そのブレーキペダル20と連係するマスタシリンダ22と、マスタシリンダ22に接続されたリザーバ24と、ブレーキペダル20に反力を付与するととともに踏力に応じたペダルストロークを発生させるためのストロークシミュレータ26とを含んで構成される。マスタシリンダ22には、2つの液通路30,32が接続されており、それぞれの液通路30,32は、常開の電磁開閉弁34L,34R(以下、単に「電磁開閉弁34」と呼ぶ場合がある)を介して左前輪40FLおよび右前輪40FRに繋がっている。
【0047】
マスタシリンダ22は、シリンダとしてのハウジング50とピストン52とを備えたシリンダ装置であり、ピストン52はブレーキペダル20に連係させられており、ブレーキペダル20の踏込操作により内在する作動液が加圧される構造とされている。マスタシリンダ22に収容された作動液の液圧であるマスタシリンダ液圧Pm(以下、単に「マスタ圧Pm」と呼ぶことがある)は、マスタ圧センサ54によって検出される。このマスタ圧Pmは、操作部材であるブレーキペダル20の踏力、つまり操作力の大きさを示す操作力関連量である。また、ブレーキペダル20の踏込量つまり操作量であるペダルストロークSTは、ストロークセンサ56によって検出されようになっている。なお、ブレーキペダル20が操作状態にあるか否かは、ブレーキランプのスイッチを兼ねる操作ON/OFFセンサ58によって検出される。
【0048】
ストロークシミュレータ26は、液通路30に設けられている。ストロークシミュレータ26は、いわゆるウェット式のストロークシミュレータであり、図2に示すように、シリンダハウジング60と、シリンダハウジング60の内部を2つの空間に区画するとともにそれらの空間の容積を相対変化させるように移動するピストン62とを含むシリンダ装置とされている。一方の空間は液室64とされるとともに、ポート66が液通路30に接続され、また、他方の空間には、ピストン62を液室64に向かって付勢する付勢部材としてのスプリング68が配設されている。ブレーキペダル20が踏み込まれた際に、作動液の一部が液室64に流入するとともに、スプリング68の付勢力に抗ってピストン62が移動させられる。また、ブレーキペダル20が踏み戻された場合には、スプリング68の付勢力によりピストン62が移動させられ、液室64に流入させられていた作動液が排出される。ストロークシミュレータ26は、このようにして、踏力に応じたペダルストロークをブレーキペダル20の操作において生じさせるのである。
【0049】
制動装置10は、各車輪40FL,40FR,40RL,40RR(以下単に「車輪40」と略す場合がある)に対して設けられた車輪ブレーキ装置80FL,80FR,80RL,80RR(以下単に「車輪ブレーキ装置80」と略す場合がある)と、駆動源としてのポンプ装置82と、ポンプ装置82からの作動液を車輪ブレーキ装置80に適切な圧力で供給するための電磁弁装置84とを含んで構成されている。
【0050】
車輪ブレーキ装置80は、図3に示すように、摩擦制動装置の一種であるディスクブレーキ装置である。車輪ブレーキ装置80は、よく知られた構造のものであるため簡単に説明すれば、マウンティングブラケット90と、パッド材91とそれをバックアップするバックアップ材92とを有する1対のブレーキパッド94と、ホイールシリンダ96を有するキャリパ98とを含んで構成されている。1対のブレーキパッド94は、摩擦摺接部材として機能するものであり、車輪と一体的に回転する回転体であるデイスクロータ100の側面を挟んで対向している。マウンティングブラケット90は、車輪を回転可能に保持する部材に固定的に設けられ、摩擦摺接部材保持部材として機能し、ブレーキパッド94をディスクロータ100に対して接近・離間可能に保持している。また、キャリパ98は、2つの顎部102,103を有し、それらの顎部102,103がディスクロータ100およびブレーキパッド94を挟むように位置している。マウンティングブラケット90は、2つのロッド状のガイド104を有し、それらガイド104をキャリパ98の2つのスライド部106のそれぞれに挿通させることで、キャリパ98を摺動可能に保持している。キャリパ98は、2つの顎部102,103の一方に、押付シリンダ装置(摩擦摺接部材押付装置の一種である)として機能するホイールシリンダ装置96(以下、単に「ホイールシリンダ96」と略す場合がある)を備えている。一方の顎部102の一部分はシリンダ108とされ、その内部にピストンを110が摺動可能に設けられているのである。シリンダ108には、作動液が流入するポート112を有しており、加圧された作動液がこのポート112から流入することによって、ピストン110が前進し、2つのブレーキパッド94がディスクロータ100を挟み付けるようにしてそれの表面に押付けられ、制動力が付与されるのである。
【0051】
ポンプ装置82は、リザーバ24側から作動液を汲み出して吐出するポンプ120と、そのポンプ120を駆動する電動モータ122と、ポンプ120の吐出側に設けられたアキュムレータ124とを含んで構成されている。ポンプ装置82は、液通路128によって、電磁弁装置84に接続されている。なお、ポンプ装置82によって供給される作動液の液圧であるポンプ圧Ppは、ポンプ圧センサ126によって検出されるようにされている。また、ポンプ装置82には、リリーフ弁130が設けられており、ポンプ120の吐出側の圧力が高くなりすぎる場合に、低圧側であるリザーバ24に作動液を逃がすようにされている。
【0052】
電磁弁装置84は、各車輪40に対応する制御弁として、各ホイールシリンダ96のシリンダ液圧を制御する増圧制御弁140FL,140FR,140RL,140RRおよび減圧制御弁142FL,142FR,142RL,142RR(以下単に「増圧制御弁140」,「減圧制御弁142」と略す場合がある)を有している。各増圧制御弁140と減圧制御弁142は直列に接続された制御弁対を構成し、それら制御弁対は各車輪に対応して並列に設けられている。各増圧制御弁140の入液ポートは、液通路128に接続され、各減圧制御弁142の出液ポートは、リザーバ24に通じる液通路144に接続されている。互いに接続された各増圧制御弁140の出液ポートおよび各減圧制御弁142の入液ポートが、液通路を通じて各車輪40のホイールシリンダ96に接続されている。詳しい説明は省略するが、増圧制御弁140および減圧制御弁142は、常開のリニア弁であり、入液側と出液側とに励磁電流の大きさに応じた差圧を生じさせる構造とされており、これらへの供給電力を制御することで、各ホイールシリンダの液圧であるシリンダ液圧Pwcが制御され、各車輪ブレーキ装置80による制動力が適切なものとされるのである。なお、各シリンダ液圧Pwcは、シリンダ液圧センサ146FL,146FR,146RL,146RR(以下単に「シリンダ液圧センサ146」と略す場合がある)によって検出される。
【0053】
制御装置14は、CPU150,RAM152,ROM154,入出力インターフェース156,それらを繋ぐバス158等によって構成されるコンピュータ160を主体とするブレーキ電子制御ユニット162(以下単に「ブレーキECU」162と略す場合がある)を有している。ブレーキECU162は、他に、電動モータ122を駆動する駆動回路164と、各増圧制御弁140および各減圧制御弁142を制御する制御回路166とを有しており、これらは、コンピュータ160の入出力インターフェース156に接続されている。また、入出力インターフェース156には、マスタ圧センサ54,ストロークセンサ56,操作ON/OFFセンサ58、ポンプ圧センサ126,シリンダ液圧センサ146等の各種センサが接続されている。
【0054】
制動装置10の制御は、制御装置14に備わるコンピュータ160が、ROM154に格納されている所定のブレーキ制御プログラムを実行することによって行われる。詳しい説明は後に行うが、通常ブレーキ時においては、電磁開閉弁34を閉じた状態において、ポンプ装置82によるポンプ圧Ppを各ホイールシリンダ96に要求される液圧より高くするとともに、電磁弁装置84を制御して、ブレーキペダル20の操作状態に応じた制動力を得るように、各ホイールシリンダ96のシリンダ液圧Pwcが制御される。また、上記ブレーキ制御プログラムは、アンチロック(ABS)制御,トラクションコントロール(TRC)制御,車両姿勢制御(VSC)制御等も可能とされている。なお、電源供給の遮断等の場合においては、電磁開閉弁34が開いた状態とされ、ブレーキペダル20の踏力によって発生するマスタ圧Pmがそのまま前輪40FR,40FLの車輪ブレーキ装置80に供給され、それによって制動力が得られるようにされている。
【0055】
<目標制御値とヒステリシス>
上記制動システムは、通常ブレーキ時において、ブレーキペダル20の操作状態に応じた値に、各ホイールシリンダ96のシリンダ液圧Pwcが制御される。つまり、目標シリンダ液圧Pwc*が決定され、実際のシリンダ液圧Pwcがその目標シリンダ液圧Pwc*となるように制御されるのである。本実施形態では、目標シリンダ液圧Pwc*の決定に先立って、ブレーキペダル20の操作状態に応じた目標車両減速度G*が決定され、それに基づいて、目標シリンダ液圧Pwc*が決定される。つまり、第1の目標制御値である目標車両減速度G*が決定され、それに基づいて、第2の目標制御値である目標シリンダ液圧Pwc *が決定されるのである。
【0056】
目標車両減速度G*の決定は、図4に示すところの、上記ブレーキ制御プログラムの目標車両減速度決定サブルーチンが実行されることによって行われる。目標車両減速度決定サブルーチンでは、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様とする)において、ブレーキペダル20の現時点でのペダルストロークSTが特定される。後に説明するが、ペダルストロークSTは、ストロークセンサ56による検出値として既に取得されてRAM152に記憶されている。ペダルストロークSTは、操作部材の操作状態量の1種であり、操作量として位置付けられるものである。なお、ペダルストロークSTは、踏み込まれていない状態を0とし、踏込量が多くなるにつれてその値が大きくなるものとされている。続く、S2において、特定されたペダルストロークSTに対応するストローク対応目標車両減速度GST *が、ROM156に格納されているST−GS T *マップから読み出される。本実施形態では、ST−GST *マップは、図5に示すように、ペダルストロークSTが大きくなるにつれて目標車両減速度GST *の増加勾配が大きくなるようにされている。
【0057】
次いで、S3において、現時点でのマスタシリンダ22の液圧であるマスタ圧Pmが特定される。マスタ圧Pmは、ペダルストロークSTと同様、マスタ圧センサ54による検出値として既に取得されてRAM152に記憶されている。マスタ圧Pmも操作部材の操作状態量の1種であり、操作力関連量として位置付けられるものである。なお、マスタ圧Pmは大気圧との相対圧であり、ブレーキペダル20が踏み込まれていない状態を0とし、踏込量が多くなるにつれてその値が大きくなるものとされている。続くS4において、特定されたマスタ圧Pmに対応するマスタ圧対応目標車両減速度GPm *が、ROM156に格納されているPm−GPm *マップから読み出される。本実施形態では、Pm−GPm *マップは、図6に示すように、マスタ圧Pmが大きくなるにつれて目標車両減速度GPm *が概ね直線的に増加するものとされている。
【0058】
本実施形態では、目標車両減速度G*は、GST *とGPm *との重み付け和として決定される。S5では、その重み付けのための係数である重み付け係数αが、ROM156に格納されている重み付け係数マップから読み取られる。重み付け係数αは、図7に示すように、マスタ圧対応車両目標減速度GPm *と関係付けられており、重み付け係数マップから、S4において読み出されたGPm *に対応する重み付け係数αの値が読み取られる。本実施形態では、αは0以上,1以下の値とされ、GPm *が大きくなるにつれて、その値が大きくなるようにされている。そして、S6において、関係式
G*=α・GPm *+(1−α)・GST *
に基づいて、目標車両減速度G*が求められる。
【0059】
ブレーキペダル20の操作は、制動力増大方向の操作である踏込操作と、制動力減少方向の操作である踏戻操作とに分けられ、本実施形態では、それぞれの操作方向における目標制御値を異ならせるため、上記目標車両減速度G*の決定において、それぞれの操作方向ごとに互いに異なるマップが用いられる。つまり、上記ST−GST *マップ,Pm−GPm *マップ,重み付け係数マップのそれぞれがについて、踏込操作に対するものと踏戻操作に対するものとの2つがROM154に格納されており、操作方向に応じて選択して使い分けられるのである。
【0060】
ここで仮に踏込操作における目標車両減速度G*と踏戻操作における目標車両減速度G*が同じ値とされて制御されると仮定した場合の問題を考える。その場合における低制動力制御域の実際の車両減速度Gと、ペダルストロークSTとの関係を、図8に示す。この図は、ある踏込状態までブレーキペダル20の踏込操作を行ってそこから踏戻操作を行った場合のグラフであり、低制動力制御域においては、図に示すようなヒステリシスが発生する。このヒステリシスは、主に、先に述べた車輪ブレーキ装置80の構造、詳しくは摺動抵抗に起因するものであると考えられる。図3を参照すれば理解できるように、車輪ブレーキ装置80において、例えば、キャリパ98とマウンティングブラケット90との間、ブレーキパッド94とマウンティングブラケット90との間、キャリパ98のシリンダ108とピストン110との間等には、互いに摺動することによる摺動抵抗が生じる。したがって、ブレーキペダル20の踏戻操作を行った場合でも、それらの摺動抵抗により、ブレーキパッド94のディスクロータ100に対する押付け力が素直に緩まらず、いわゆる引き摺り現象を生じ、そのために同じ操作状態において踏戻操作方向のほうが制動力が高くなるものと推定される。
【0061】
図9には、高制動力制御域における実際の車両減速度GとペダルストロークSTとの関係を示す。この図も、ある踏込状態までブレーキペダル20の踏込操作を行ってそこから踏戻操作を行った場合のグラフであり、高制動力制御域において、図に示すようなヒステリシスが発生する。このヒステリシスは、主に、ストロークシミュレータ26の構造に起因するものであると考えられる。図2に示すように、ストロークシミュレータ26は、シリンダハウジング60内をピストン62が摺動して移動する構造となっており、これら両者の間に摺動抵抗が発生する。また、ストロークシミュレータ26とマスタシリンダ22とは、液通路によって接続されており、シリンダハウジング60の内径に比較してその液通路の径が小さくされているため、作動液の戻りに対しての通液抵抗も生じる。これらの抵抗が原因するため、踏戻操作において検出されるマスタ圧Pmの値は、踏込操作における検出値より小さくなってしまう。その結果、目標車両減速度G*が小さくなり、踏戻操作方向の制動力が小さくなってしまうのである。
【0062】
以上のようなヒステリシスは、液圧式ブレーキ装置に特有の現象であり、その存在は、操作者による操作フィーリングを悪化させる一因となる。そこで本実施形態では、それらヒステリシスを緩和するため、ブレーキペダル20にの操作方向に依拠して目標車両減速度G*を異なる値に決定するようにされている。詳しく言えば、同じ操作状態においても、制動力増大方向である踏込方向における増大方向目標制御値と、制動力減少方向である踏戻方向における減少方向目標制御値とを、互いに異なる値に決定しているのである。具体的に言えば、図10に模式的に示すように、G*が決定される。図におけるfwは、踏込方向における目標車両減速度線であり、bwは、踏戻方向における目標車両減速度線である。図から解るように、低制動制御域においては、踏戻操作のほうがG*が小さくなるようにされており、減少方向低値決定が行われる。また、高制動制御域においては、踏戻操作のほうがG*が大きくなるようにるようにされており、減少方向高値決定が行われる。マップについての例示は省略するが、適正なマップを設定すれば、操作方向に依拠して図に示すような互いに異なる操作状態量と目標制御値との関係が実現される。なお、図10は、横軸にペダルストロークSTを採用しているが、この図は、本実施形態における目標制御値の態様を図式化によって理解を容易にするために、便宜的にかかげたものである。上記決定プロセスから理解できるように、実際上は、ペダルストロークSTのみによって目標車両減速度G*が一元的に定まるものではない。
【0063】
<車両用制動システムの制御>
目標車両減速度の決定を上述のように行うことを前提として、本実施形態の制御について説明する。説明を単純化するため、通常ブレーキ時の制御に関する部分のみを説明する。図11に、前述のブレーキ制御プログラムから抜粋した通常ブレーキ時制御ルーチンのフローチャートを示す。以下、このフローチャートに従って説明する。なお、この通常ブレーキ時制御ルーチンは、車両のイグニッションスイッチがON状態にある間、数msecという短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0064】
まず、S10において、ブレーキペダル20が操作されている状態にあるか否か判断される。具体的には、操作ON/OFFセンサ58による検出値でもって判断される。操作OFF状態である場合は、S11において、操作方向フラグDFが“fw”(踏込方向であることを示す)にセットされるとともに、操作方向切替時目標車両減速度ギヤップΔG0(以下、単に「切替時ギャップΔG0」と呼ぶことがある)、および、操作方向切替時ストロークST0(以下、単に「切替時ストロークST0」と呼ぶことがある)の値が0にリセットされる。ΔG0およびST0については、後に詳しく説明する。S10において操作ON状態と判断された場合は、S12において、マスタ圧センサ54の検出値であるマスタ圧Pm、および、ストロークセンサ56の検出値であるペダルストロークSTが取得される。
【0065】
続いて、図12にフローチャートを示すところのS13の操作方向判定サブルーチンが実行される。S13においては、操作方向の判定を行うための操作状態量が制動力に応じて変更される。操作方向は、制動力が低い場合には、ペダルストロークSTの変化状態によって判定され、制動力が高い場合には、マスタ圧Pmの変化状態によって判定される。具体的には、S131において、マスタ圧Pmが変更のための閾値である変更マスタ圧Pm0(例えば、0.15MPaといった値)より高いと判定された場合は、S133以下のステップを実行するようにされ、また、S132において、マスタ圧Pmが変更マスタ圧Pm0より低いと判定された場合は、S135以下のステップが実行される。
【0066】
S133およびS134においては、ブレーキペダル20の操作方向が、マスタ圧Pmの変化状態によって判定される。RAM152には、前回の本ルーチンの実行時のマスタ圧である前回マスタ圧Pmoldが記憶されており、PmoldとPmの比較によって判断される。また、前々回以前の所定回数分のマスタ圧も記憶されており、所定時間内の経時的な変化によっても判断される。具体的には、S133においては、Pm>Pmoldの状態が30msec継続した場合に、現在の操作方向が踏込方向であると判定され、S134においては、Pm<Pmoldの状態が30msec継続した場合に、現在の操作方向が踏戻方向であると判定される。
【0067】
S135およびS136においては、ブレーキペダル20の操作方向が、ペダルストロークSTの変化状態によって判定される。RAM152には、前回の本ルーチンの実行時のペダルストロークである前回ペダルストロークSToldが記憶されており、SToldとSTの比較によって判断される。また、前々回以前の所定回数分のペダルストロークも記憶されており、所定時間内の経時的な変化によっても判断される。具体的には、S135においては、ST>SToldの状態が30msec継続した場合に、現在の操作方向が踏込方向であると判定され、S136においては、ST<SToldの状態が30msec継続した場合に、現在の操作方向が踏戻方向であると判定される。
【0068】
踏込方向であると判定された場合は、S137において、操作方向フラグDFが“fw”とされ、また、踏戻方向であると判断された場合は、S138において、操作方向フラグDFが“bw”(踏戻方向を示す)とされ、本操作方向判定サブルーチンの実行が終了する。なお、S131〜S136のいずれの判定もYESとならない場合は、操作方向フラグDFが前回の値を維持した状態で、本サブルーチンが終了する。
【0069】
S12のサブルーチンが終了した後、続くS14において、操作方向フラグDFが参照されて現在の操作方向が確認され、その確認の結果、踏込操作である場合には、S15において、前述のST−GST *マップ,Pm−GPm *マップ,重み付け係数マップの3つのマップとして、踏込操作におけるマップが選択される。そしてS16において、先に説明した目標車両減速度決定サブルーチンに従い、選択されたマップを用いて、増大方向目標制御値としての目標車両減速度G*が決定される。S14で踏戻操作と確認された場合には、S17において、踏戻操作のマップが選択され、S18において目標車両減速度決定サブルーチンに従い、選択されたマップを用いて、減少方向目標制御値としての目標車両減速度G*が決定される。
【0070】
本実施形態の制動システムでは、同じ操作状態量であっても、操作方向に依拠して目標車両減速度G*が互いに異なる値に決定されるため、操作方向の切替え時において、目標車両減速度G*がステップ的に急変することがある。つまり、増大方向目標制御値と前記減少方向目標制御値との間の差異である制御値差異、いわゆるギャップが発生する可能性があるのである。そこで、本実施形態のシステムでは、そのギャップを排除して上記急変を緩和するために、決定された目標車両減速度G*に対して補正を行っている。S19〜S21が踏込方向における補正の処理を行うステップであり、S22〜S24が踏戻方向における補正の処理を行うステップである。
【0071】
踏込方向の補正について説明すれば、まず、S19において、今回の制御サイクルにおいて、操作方向が踏戻方向から踏込方向に切り替わったか否かが判断される。RAM152には、前回の操作方向フラグDFoldの値も記憶されており、DFとDFoldとの比較により判断される。今回のサイクルにおいて操作方向が踏込方向に切り替わったと判断された場合は、図13にフローチャートを示すS20の踏込切替処理サブルーチンが実行される。このサブルーチンでは、まず、S201において、ブレーキペダル20の現在のペダルストロークSTを切替時ストロークST0と認定する。次に、S202において、切替時ギャップΔG0が求められる。RAM152には、前回の制御サイクルにおける目標車両減速度である前回減速度G* oldが記憶されており、今回決定されたG*からG* oldを減じることによって、ΔG0が求められる。次いで、S203において、ΔG0の正負が判断される。本実施形態では、図10から解るように、低制動制御域においては、踏戻操作におけるG*のほうが踏込操作におけるG*より小さな値となるため、ΔG0が正となる可能性が高い。逆に、高制動制御域においては、踏込操作におけるG*のほうが踏戻操作におけるG*より小さな値となるため、ΔG0が負となる可能性が高い。本実施形態においては、ΔG0の正負によって補正の方法を相違させるようにされており、また、ΔG0の値に基づいて補正値を決定するようにされている。そのための便宜として、ΔG0<0の場合に、S204においてΔG0を0と擬制する処理が行われる。
【0072】
上記踏込切替処理サブルーチンが実行された後、あるいは、操作方向の切替えが行われれなった場合に、図14にフローチャートを示すところの、S21の踏込方向補正サブルーチンが実行される。本サブルーチンでは、まず、S211において、切替時ギャップΔG0が0であるか否かの判定が行われ、S212おいて、現在のペダルストロークSTが、ST0から所定ストロークST2隔たった範囲であるところの補正操作範囲にあるか否かが判断される。ST2は、ペダルストロークをパラメータとする補正操作範囲規定量(例えば15mmといった値を採用することができる)である。ΔG0が0の場合若しくは0と擬制されている場合、または、STが補正操作範囲にない場合は、S213において、後に詳しく説明する漸減補正値ΔGtmpが0に決定され、続くS214において、ΔG0が0とされる。
【0073】
S211およびS212の判定により、ΔG0が0でなくかつSTが補正操作範囲にあると判定された場合は、S215において、上述の漸減補正値ΔGtmpが、
ΔGtmp=ΔG0×(ST0+ST2−ST)/ST2
という式に従って決定される。この式による漸減補正値ΔGtmpは、その値が、踏込操作が進むにつれて漸減する値となり、補正操作範囲において、操作状態に応じて切替時ギャップΔG0を漸減させる補正を行うための補正値とされているのである。
【0074】
漸減補正値ΔGtmpが決定された後、S216において、既に決定されている目標車両減速度G*が補正される。具体的には、(G*−ΔGtmp)と、前回目標車両減速度であるG* oldとを比較して、大きな方の値を目標車両減速度G*として再決定する。これら一連の処理を終了して、踏込方向補正サブルーチンの実行が終了する。
【0075】
次に、踏戻方向の補正について説明すれば、まず、S22において、今回の制御サイクルにおいて、操作方向が踏込方向から踏戻方向に切り替わったか否かが、DFとDFoldとの比較により判断される。今回のサイクルにおいて操作方向が踏戻方向に切り替わったと判断された場合は、図15にフローチャートを示すS23の踏戻切替処理サブルーチンが実行される。このサブルーチンでは、S20の踏込切替処理サブルーチンと同様に、まず、S231において切替時ストロークST0が認定され、次に、S232において、切替時ギャップΔG0が求められる。次のS233において、ペダルストロークSTが所定の値であるST10より小さいか否かが判定される。後に詳しく説明するが、低制動制御域における補正は、切り替わり時から目標車両減速度G*が実質的に0になる操作状態までの間で補正を行うため、その補正操作範囲の終点として補正終点ストロークST1が設定されている。詳しく言えば、踏込方向のマップによって決定されるG*が実質的に0になるSTを、ST1(例えば、4mmといった値)としている。ST10が示すペダルストロークは、以後のステップの計算式において0で除することを禁止すべく、ST1より若干量大きな値(例えば、4.1mmといった値)とされているのである。次いで、S234において、ΔG0の正負が判断される。踏戻方向への切替えの場合も、踏込方向の切替えの場合において説明したのと同様に、ΔG0の正負によって補正の方法を相違させており、S234の判断は、そのための判断である。S233においてST<ST10と判断された場合、または、S234においてΔG0>0と判断された場合には、S235において、便宜的にΔG0を0と擬制する処理が行われる。
【0076】
上記踏戻切替処理サブルーチンが実行された後、あるいは、操作方向の切替えが行われれなった場合に、図16にフローチャートを示すところの、S24の踏戻方向補正サブルーチンが実行される。本サブルーチンでは、まず、S241において、切替時ギャップΔG0が0であるか否かの判定が行われ、S212おいて、現在のペダルストロークSTが、前述の補正操作範囲の終点である補正終点ストロークST1より大きいか否かが判定される。ΔG0が0の場合若しくは0と擬制されている場合、または、STが補正操作範囲でないと判断された場合は、踏込方向の補正の場合と同様、S243において、今回のサイクルにおける漸減補正値ΔGtmpが0に決定され、続くS244において、ΔG0が0とされる。
【0077】
S241およびS242の判定により、ΔG0が0でなくかつSTが補正操作範囲にあると判定された場合は、S245において、漸減補正値ΔGtmpが、
ΔGtmp=ΔG0×(ST−ST1)/(ST0−ST1)
という式に従って決定される。この式による漸減補正値ΔGtmpは、踏込方向の補正の場合と同様、踏戻操作が進むにて漸減する値となり、補正操作範囲において、操作状態に応じて、切替時ギャップΔG0を漸減させるための補正値とされているのである。
【0078】
漸減補正値ΔGtmpが決定された後、S246において、既に決定されている目標車両減速度G*が補正される。具体的には、踏込方向の補正の場合とは逆に、(G*−ΔGtmp)と、前回目標車両減速度であるG* oldとを比較して、小さな方の値を目標車両減速度G*として再決定する。これら一連の処理を終了して、踏戻方向補正サブルーチンの実行が終了する。
【0079】
以上、補正に関する処理を説明したが、理解をより容易にするために、具体例を掲げて説明する。図17に、操作方向が踏込方向に切替えられた場合において、補正を行った結果による実際の目標車両減速度G*の変化を模式的に示す。なお、図17(a)は、低制動制御域における変化を、図17(b)は、高制動制御域における変化を、それぞれ示している。
【0080】
図17(a)に示す低制動制御域の場合について説明すれば、補正が行われない場合には、ST0において操作方向が踏込方向に切り替わったときに、太鎖線のように目標車両減速度G*が変化してしまう。上記補正処理を行う場合、まず、切り替わり時点における制御サイクルにおいて、S20の踏込切替処理サブルーチンが実行され、切替時ギャップΔG0は、0以上であるため、そのままの値として認定される。続くS21の踏込方向補正サブルーチンにおいて、S215で漸減補正値ΔGtmpが演算され、S216でG*が(G*−ΔGtmp)の値に補正される。以後の何回かの制御サイクルにおいて、S215,S216が繰り返され、STが(ST0+ST2)となるまで、ΔGtmpが漸減させられつつ補正が行われる。そして、何回目かの制御サイクルにおいて、ST=ST0+ST2となった後には補正が行われなくなるのである。つまり、そのような補正の結果、図に太実線で示すように、所定の操作範囲において、切替時ギャップΔG0がブレーキペダル20の操作状態に応じて漸減させられる状態で、目標車両減速度G*が補正されるのである。
【0081】
図17(b)に示す高制動制御域の場合について説明すれば、補正が行われない場合には、ST0において操作方向が踏込方向に切り替わったときに、太鎖線のように目標車両減速度G*が変化してしまう。上記補正処理を行う場合、まず、切り替わり時点における制御サイクルにおいて、S20の踏込切替処理サブルーチンが実行されるが、切替時ギャップΔG0は、0より小さいため、0と擬制される。続くS21の踏込方向補正サブルーチンにおいて、S215の漸減補正値ΔGtmpの演算はスキップされ、S216においては、G*は、前回値であるG* oldの値に補正される。以後の何回かの制御サイクルにおいて、G*はG* oldの値に維持され、そして、何回目かの制御サイクルにおいて決定されたG*がG* oldと略同じ値となったときに、補正が終了する。つまりそのような補正の結果、図に太実線で示すように、あるの操作範囲において切替え直前の値を維持するように目標車両減速度G*が補正されるのである。
【0082】
図18に、操作方向が踏戻方向に切替えられた場合において、補正を行った結果による実際の目標車両減速度G*の変化を模式的に示す。なお、図18(a)は、低制動制御域における変化を、図18(b)は、高制動制御域における変化を、それぞれ示している。
【0083】
図18(a)に示す低制動制御域の場合について説明すれば、補正が行われない場合には、ST0において操作方向が踏戻方向に切り替わったときに、太鎖線のように目標車両減速度G*が変化してしまう。上記補正処理を行う場合、まず、切り替わり時点における制御サイクルにおいて、S23の踏戻切替処理サブルーチンが実行され、切替時ギャップΔG0は、0以下であるため、そのままの値として認定される。続くS24の踏戻方向補正サブルーチンにおいて、S245で漸減補正値ΔGtmpが演算され、S246で、G*は、(G*−ΔGtmp)の値に補正される。以後の何回かの制御サイクルにおいて、S215,S216が繰り返され、STがST1となるまで、ΔGtmpが漸減させられつつ補正が行われる。そして、何回目かの制御サイクルにおいて、STがST1より小さな値となったときに補正が行われなくなるのである。つまり、そのような補正の結果、図に太実線で示すように、所定の操作範囲において、切替時ギャップΔG0がブレーキペダル20の操作状態に応じて漸減させられる状態で、目標車両減速度G*が補正されるのである。
【0084】
図18(b)に示す高制動制御域の場合について説明すれば、補正が行われない場合には、ST0において操作方向が踏戻方向に切り替わったときに、太鎖線のように目標車両減速度G*が変化してしまう。上記補正処理を行う場合、まず、切り替わり時点における制御サイクルにおいて、S23の踏戻切替処理サブルーチンが実行されるが、切替時ギャップΔG0は、0より大きいため、0と擬制される。続くS24の踏戻方向補正サブルーチンにおいて、S245の漸減補正値ΔGtmpの演算はスキップされ、S246においては、G*は、前回値であるG* oldの値に補正される。以後の何回かの制御サイクルにおいて、G*はG* oldの値に維持され、そして、何回目かの制御サイクルにおいて決定されたG*がG* oldと略同じ値となったときに、補正が終了する。つまりそのような補正の結果、図に太実線で示すように、あるの操作範囲において切替え直前の値を維持するように目標車両減速度G*が補正されるのである。
【0085】
以上説明した操作方向変更時の補正処理を行った後、本制御ルーチンでは、S25において、各ホイールシリンダ96の目標シリンダ液圧Pwc*が、先に決定されたあるいは決定されて補正された目標車両減速度G*に基づいて決定される。そして、S26において、目標シリンダ液圧Pwc*に基づくホイールシリンダ96の液圧制御がなされる。具体的に言えば、各ホイールシリンダ96のシリンダ液圧Pwcは、シリンダ液圧センサ146により検知されており、Pwc*とPwcとの偏差に基づいて車輪ブレーキ装置80が制御される。S25およびS26は、既に一般的な制御処理であるため、ここでの説明は省略する。
【0086】
以上、本実施形態の制動システムの制御について説明したが、先に示したように制御は制御装置14によって行われる。この制御装置14は、先に説明したように、ハード的にはブレーキ電子制御ユニット162を主体とするものである。この制御装置14を、便宜的に機能部分に分けてブロック図として示せば、図19のように示すことができる。以下、制御装置14の各機能部について簡単に説明する。
【0087】
制御装置14は、操作状態量であるマスタ圧Pm,ペダルストロークSTを取得する操作状態量取得部170を有しおり、操作状態量取得部170は、コンピュータ160の、マスタ圧センサ54,ストロークセンサ56,操作ON/OFFセンサ58からの検出信号を受ける入出力インターフェース156の一部分、前述のS12を実行する部分等を含んで構成されている。また、制御装置14は、目標制御値決定データ保有部172を有しており、前述したマップがコンピュータ160のROM166に格納されており、そのマップを格納する部分が、目標制御値決定データ保有部172を構成するものとされている。また、制御装置14は、ブレーキペダル20の操作方向を判定する部分として、操作方向判定部174を有している。この操作方向判定部174は、コンピュータ160の前記S12の操作方向判定サブルーチンを実行する部分を含んで構成されている。
【0088】
また、制御装置14は、操作状態量取得部170が取得した操作状態量と、目標制御値決定データ保有部172に保有されているデータと、操作方向判定部174によって判定された操作部材の操作方向に基づいて、目標制御値を決定する操作方向依拠目標制御値決定部176を有している。この操作方向依拠目標制御値決定部176は、コンピュータ160の前記S14〜S18を実行する部分を含んで構成されている。さらに、制御装置14は、操作方向依拠目標制御値決定部176によって決定された目標制御値を補正する目標制御値補正部178を有している。目標制御値補正部178は、コンピュータ160の前記S19〜S24を実行する部分を含んで構成されている。目標制御値補正部178は、それぞれが2つの互いに異なる方式による補正を行うところの、目標制御値維持補正部180と制御値差異漸減補正部182とを有している。目標制御値維持補正部180は、図17(b)および図18(b)に関して説明した処理を行う部分であり、また、制御値差異漸減補正部182は、図17(a)および図18(a)に関して説明した処理を行う部分である。さらにまた、制御装置14は、操作方向依拠目標制御値決定部176によって決定された目標制御値、あるいは、目標制御値補正部178によって補正された目標制御値に基づいて、制動装置10を制御する目標制御値依拠制御部184を有しており、この目標制御値依拠制御部184は、コンピュータ160の前記S26を実行する部分、駆動回路164,制御回路166等を含んで構成されている。
【0089】
<制御に関する変形態様>
上記実施形態の制動システムは、制御に関して、以下の変形態様で実施することもできる。その変形態様は、概して言えば、操作方向の判定に関して上述のものとは別の手法によって行うものである。図20に変形態様の制御に関する通常ブレーキ時制御ルーチンのフローチャートを示す。このフローチャートは、図11に示すものの一部を変更するものであり、同じ処理を行うステップについては、先のステップ番号と同じ番号を使用するものする。以下に、そのフローチャートに基づいて、変更された箇所を中心に簡単に説明し、同じ処理とされる箇所についての説明は省略する。
【0090】
変形態様の通常ブレーキ時制御ルーチンにおいては、S12においてマスタ圧Pm,ペダルストロークSTが取得された後、S15〜S18において、踏込方向の目標車両減速度Gfw *と、踏戻方向の目標車両減速度Gbw *との両者が決定される。上記実施形態のS15〜S18の処理と同じである。
【0091】
両方の目標車両減速度Gfw *,Gbw *が決定された後、S31の操作方向判定サブルーチンが実行される。図21に、変形態様における操作方向判定サブルーチンのフローチャートを示す。S31のサブルーチンでは、まず、S311において、踏込方向の目標車両減速度Gfw *に基づいて、ブレーキペダル20の操作方向が判定される。RAM152には、前回の本ルーチンの実行時の踏込方向目標車両減速度Gfw *である前回踏込方向目標車両減速度Gfwold *が記憶されており、具体的には、S311において、Gfw *がGfwold *より大きい場合に、踏込方向の操作であると判定される。Gfw *>Gfwold *の条件を満たす場合は、S312において、操作方向フラグDFが“fw”とされ、また、Gfw *>Gfwold *の条件を満たさない場合は、S313において、操作方向フラグDFが“bw”とされる。なお、本変形態様では、踏込方向目標車両減速度Gfw *に基づいて操作方向を判定したが、踏戻方向目標車両減速度Gbw *に基づいて判定を行うことも可能である。
【0092】
S31の踏込判定サブルーチンの実行後、S14において、操作方向フラグDFが判定され、“fw”の場合は、S32おいて、先に決定されている踏込方向目標車両減速度Gfw *が、目標車両減速度G*として採用され、“bw”の場合は、S33において、先に決定されている踏戻方向目標車両減速度Gbw *が、目標車両減速度G*として採用される。S32の後には、S19からのステップが実行され、S33の後には、S22からのステップが実行される。S19以後のステップについては、上記実施形態の場合と同様である。
【0093】
この変形態様の制御を行う制動システムにおいては、図19において示す操作方向判定部は、S15,S16,S31を実行する部分を含んで構成され、また、操作方向依拠目標制御値決定部176は、S15〜S18,S14,S32,S33を実行する分を含んで構成されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である車両用制動システムの全体構成を示す図である。
【図2】車両用制動システムの操作装置に設けられたストロークシミュレータの断面図である
【図3】車両用制動システムの制動装置を構成するところの、各車輪に設けられた車輪ブレーキ装置の一部断面図である。
【図4】車両用制動システムに設けられた制御装置において実行される目標車両減速度決定サブルーチンのフローチャートである。
【図5】ストローク対応目標車両減速度GST *を求めるためのST−GST *マップを模式的に示すグラフである。
【図6】マスタ圧対応目標車両減速度GPm *を求めるためのPm−GPm *マップを模式的に示すグラフである。
【図7】目標車両減速度G*を算出するための重み付け係数αを求めるための重み付け係数マップを模式的に示すグラフである。
【図8】踏込操作における目標車両減速度と踏戻操作における目標車両減速度が同じ値とされて制御されると仮定した場合において、低制動制御域の実際の車両減速度GとペダルストロークSTとの関係を模式的に示すグラフである。
【図9】踏込操作における目標車両減速度と踏戻操作における目標車両減速度が同じ値とされて制御されると仮定した場合において、高制動制御域の実際の車両減速度GとペダルストロークSTとの関係を模式的に示すグラフである。
【図10】ブレーキペダルの操作方向に依拠して目標車両減速度G*を異ならせた様子を模式的に示したグラフである。
【図11】車両用制動システムのブレーキ制御プログラムのうち通常ブレーキ時の制御ルーチンのフローチャートである。
【図12】通常ブレーキ時制御ルーチンにおいて実行される操作方向判定サブルーチンのフローチャートである。
【図13】通常ブレーキ時制御ルーチンにおいて実行される踏込切替処理サブルーチンのフローチャートである。
【図14】通常ブレーキ時制御ルーチンにおいて実行される踏込方向補正サブルーチンのフローチャートである。
【図15】通常ブレーキ時制御ルーチンにおいて実行される踏戻切替処理サブルーチンのフローチャートである。
【図16】通常ブレーキ時制御ルーチンにおいて実行される踏戻方向補正サブルーチンのフローチャートである。
【図17】操作方向が踏込方向へ切替えられた場合において、補正処理を行った結果での目標車両減速度G*の変化を模式的に示すグラフである。
【図18】操作方向が踏戻方向へ切替えられた場合において、補正処理を行った結果での目標車両減速度G*の変化を模式的に示すグラフである。
【図19】車両用制動システムが備える制御装置の制御機能に関する模式的な機能ブロック図である。
【図20】変形態様の制御において実行される通常ブレーキ時の制御ルーチンのフローチャートである。
【図21】変形態様の通常ブレーキ時制御ルーチンにおいて実行される操作方向判定サブルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
10:制動装置 12:操作装置 14:制御装置 20:ブレーキペダル(操作部材) 22:マスタシリンダ(シリンダ装置) 26:ストロークシミュレータ 40:車輪 50:ハウジング 52:ピストン 54:マスタ圧センサ 56:ストロークセンサ 60:シリンダハウジング 62:ピストン 80:車輪ブレーキ装置 82:ポンプ装置 84:電磁弁装置 90:マウンティングブラケット(摩擦摺接部材保持装置)94:ブレーキパッド(摩擦摺接部材) 96:ホイールシリンダ装置(摩擦摺接部材押付装置) 98:キャリパ 100:ディスクロータ(回転体) 108:シリンダ 110:ピストン 146:シリンダ液圧センサ 160:コンピュータ 162:ブレーキ電子制御ユニット(ブレーキECU) 170:操作状態量取得部 172:目標制御値決定データ保有部 174:操作方向判定部 176:操作方向依拠目標制御値決定部 178:目標制御値補正部 180:目標制御値維持補正部 182:制御値差異漸減補正部 184:目標制御値依拠制御部
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用制動システムに関し、詳しくは、電子制御式制動システムにおける制動装置の制御の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、電子制御式の車両用制動システムでは、主に操作部材の操作力とは別の駆動力によって制動装置が駆動され、操作部材の操作に応じた制動力を発生させるように制御される。操作部材の操作力のみによって車輪に直接制動力を付与するものではないため、操作部材の操作感の良し悪しは、重要な特性の1つである。代表的な液圧ブレーキシステムは、例えば、操作部材であるブレーキペダルの操作状態を検出し、その検出した状態に基づいて、ブレーキパッドを押付けるホイールシリンダの液圧をコントロールするような構造とされている。ブレーキペダルの操作には、制動力を増大させるための踏込操作と制動力を減少させるための踏戻操作とがあるが、それら両者は、制動力との関係において同じ操作感を伴うものであることが望ましい。ところが、ブレーキシステムを構成する各種装置が有する機械的な抵抗等の原因によって、例えば、ブレーキペダルの戻し操作を行うときに、操作者の意図ほどには制動力が減少しなかったり、あるいは逆に、操作者の意図にもまして制動力が減少しすぎるといった現象が発生する。そのような現象は、ブレーキシステムの構成態様に応じて生じるヒステリシス的な現象であり、ブレーキシステムの操作フィーリングに大きな影響を与える。
【0003】
これまでに、例えば下記特許文献に記載されているように、ブレーキ操作と制動力との関係において意図的にヒステリシスを与えることによって、ブレーキシステムの操作感を向上させるといった技術が存在する。ところが、操作フィーリングは微妙なものであり、ヒステリシスを発生させることによって操作感が向上するとは限らず、むしろ実際に発生するヒステリシスを解消することによって操作感が向上する場合も多い。
【特許文献1】
特開2001−239925号公報
【特許文献2】
特開2001−206208号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
本発明は、適切な制御が行われることで操作フィーリングが良好な車両用制動システムを得ることを課題とする。また、上記実情に鑑み、下位の課題として、操作状態と制動力との関係において、構成装置の構造に起因して生じるヒステリシスであって、操作感に悪影響を与えるところのヒステリシスを緩和させる制御を実行することによって、車両用制動システムの操作フィーリングを向上させることを課題とする。そして、本発明によって、それらの課題を解決すべく、下記各態様の車両用制動システムが得られる。なお、各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能である。
【0005】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項〜(7)項がそれぞれ請求項2〜請求項7に相当する。また、(10)項が請求項8に、(12)項ないし(14)項を合わせたものが請求項9に、(15)項,(16)項がそれぞれ請求項10,請求項11に、(17)項と(18)項とを合わせたものが請求項12に、それぞれ相当する。
【0006】
(1)車両を制動する制動装置と、
前記車両の運転者によって、前記制動装置の制動力が増大する操作方向である制動力増大方向と、制動力が減少する操作方向である制動力減少方向とに操作される操作部材を有する操作装置と
前記制動装置を制御するための目標制御値を、前記操作部材の操作状態量に基づいて決定し、その決定された目標制御値に基づいて前記制動装置を制御する制御装置と
を備えた車両用制動システムであって、
前記制御装置が、少なくとも一部の制御域において、前記操作部材が制動力増大方向に操作されるときの前記目標制御値である増大方向目標制御値と、制動力減少方向に操作されるときの前記目標制御値である減少方向目標制御値とを、互いに異なる値に決定する操作方向依拠目標制御値決定部を有することを特徴とする車両用制動システム。
【0007】
本発明の制動システムは、平たく言えば、操作部材の操作方向によって、制動装置を制御するための目標制御値を、異なる値に決定して制御を行う制動システムである。操作状態と制動力との関係において、操作部材の操作方向をも加味した制御を行うことができるため、本発明によれば、操作フィーリングが良好な制動システムを実現することが可能である。また、本発明によれば、システムの構造に起因する現象であって、同じ操作状態であっても操作方向によって制動力が異なるといったヒステリシス的な現象を、容易に緩和することが可能である。
【0008】
本発明のシステムが備える制動装置は、特に限定されるものではないが、例えば、一般的な車両に用いられている摩擦制動装置を備えて構成されるものであってよい。本発明は、具体的には、ディスクブレーキ,ドラムブレーキといった種々の態様のブレーキ装置に対して適用が可能である。
【0009】
操作装置は操作部材を備えるものであり、その操作部材には、操作者が足で操作する操作ペダルや、操作者が手で操作する操作桿といった種々のものが含まれる。一般の車両は、ブレーキペダルを有しており、このブレーキペダルが操作部材に相当する。操作部材は、1つの軌道に沿って操作されることが多く、その場合における操作方向は、その軌道に沿った一方向の操作方向が制動力増大方向に相当し、その一方向と逆の方向の操作方向が制動力減少方向に相当する。例えば、一般的なブレーキペダルの場合であれば、ペダルを踏み込む方向である踏込方向が制動力増大方向であり、ペダルを戻す方向である踏戻方向が制動力減少方向である。
【0010】
制御装置は、操作部材の操作状態に応じて制動装置を制御するものであり、例えば、コンピュータ等を主体として電子制御を行い得るものであってよい。制御の基礎となる量である操作部材の操作状態量は、例えば、操作部材の操作量,操作力,操作速度等が含まれ、それらの直接的な量だけでなく、それらの各々の間接的なパラメータとしての関連量であってもよい。操作部材がブレーキペダルである場合は、例えば、ペダルストローク,ペダル踏力,ペダルが操作される速度等に基づく制御を行うことができ、またペダル踏力に関連する量として、例えば、ブレーキペダルに連係するマスタシリンダの液圧等に基づく制御を行うことができる。なお、制御の基礎となる操作状態量は1つに限られず、2つ以上のものに基づく制御を行うことも可能である。例えば、操作力と操作量との両者,操作量と操作速度との両者に基づいて目標制御値を決定するといった態様であってもよい。また、操作部材の操作状態量の他に、車両減速度,車両速度といった他の状態量をも基礎にして目標制御値を決定する態様であってもよい。目標制御値は、特に限定されるものではなく、制動装置が発生する制動力を制御可能な種々のパラメータを採用することが可能である。例えば、得ようとする車両減速度の値を目標制御値とすることもでき、また、一般的な液圧式ディスクブレーキ装置の場合、ブレーキパッドの押付力の値であるとか、そのブレーキ装置が備えるホイールシリンダ液圧の値等を目標制御値とすることも可能である。また、一旦、1つの仮想的な目標制御値を決定し、その仮想的な目標制御値に基づいて他の種類の目標制御値を定め、その目標制御値に基づいて実際の制御を行うものであってもよい。具体的には、目標車両減速度を決定した上で、その目標車両減速度に基づいて各車輪についての目標ホイールシリンダ液圧を決定し、その目標液圧に基づいて各車輪を制御するような態様である。
【0011】
目標制御値の決定は、例えば、操作部材の操作状態量と目標制御値とがある関係式によって関係付けられている場合は、その関係式に従って行うものであってもよい。また、操作状態量と目標制御値とを関係付ける対応データ(いわゆる、マップと呼ばれるようなもの)が規定されている場合であれば、その対応データに基づいて決定するものであってもよい。操作方向依拠目標制御値決定部は、制動力増大方向の目標制御値と制動力減少方向の目標値とを互いに異ならせるものであり、その態様としては、例えば、上記関係式,対応データ等の操作状態量と目標制御値とを関係付けるもの(「操作状態量−目標制御値ファンクション」と呼ぶことができる。以下、単に「ファンクション」と呼ぶ場合がある。)を、操作方向に応じて使い分けて目標制御値を決定する態様を採用することができる。また、目標制御値を操作方向に依拠して相違させる場合、制御域の全域にわたって相違させる態様であってもよく、また、制御の目的,システムの特性等に応じて、一部の制御域のみにおいて異ならせる態様であってもよい。なお、ここでいう制御域には、例えば、制動力をパラメータとする制御域、操作部材の操作状態量をパラメータとする制御域、車速をパラメータとする制御域等、種々のものが含まれる。
【0012】
目標制御値に基づく制動装置の制御は、その具体的な態様が特に限定されるものではない。通常行われている制御に従えばよく、例えば、一般的な液圧ブレーキ装置の場合であれば、ホイールシリンダ液圧に基づくフィードバック制御,フィードフォワード制御等を行うといった態様等を採用することができる。
【0013】
(2)前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記減少方向目標制御値を前記増大方向目標制御値より低い値に決定する減少方向低値決定を行うものである(1)項に記載の車両用制動システム。
【0014】
本項に記載の態様は、ある操作状態にあるときに、制動力減少方向の操作において、制動力増大方向の操作に比べて、制動力が高くなる傾向にあるような場合に好適な態様である。つまり、そのようなヒステリシスが生じるような制動システムに好適な態様である。具体的には、例えば、制動力増大方向の操作から制動力減少方向の操作へ操作方向が切替えられる場合に、制動力が意図したほどには低下しないような現象が生じる場合等に有効な態様である。例えば、制動装置の構造上の要因(制動装置の円滑な動作を阻害する抵抗等)等により、制動力が予定した程に緩まらないといった現象が起こり得る。本態様によれば、システムの構造に起因するそのような現象を緩和して、操作フィーリングを向上させることができる。
【0015】
(3)前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記制動装置の制動力の低い制御域である低制動制御域において、前記減少方向低値決定を行うものである(2)項に記載の車両用制動システム。
【0016】
後に詳しく説明するように、例えば、制動装置が、液圧式ブレーキ装置のような場合に特にそうであるが、例えば、制動装置の円滑な操作を阻害する抵抗がある場合には、制動力が低い状態において、制動力減少方向の操作において制動力が意図する程に減少しないといった傾向が強く現れる。本項に記載の態様によれば、例えば、そのような特性を有する制動システムにおいて、低制動力制御域における操作フィーリングを効果的に向上させることができる。
【0017】
(4)前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記減少方向目標制御値を前記増大方向目標制御値より高い値に決定する減少方向高値決定を行うものである(1)項に記載の車両用制動システム。
【0018】
本項に記載の態様は、前述した態様とは逆に、ある操作状態にあるときに、制動力減少方向の操作において、制動力増大方向の操作に比べて、制動力が低くなる傾向にあるような場合に好適な態様である。つまり、そのようなヒステリシスが生じるような制動システムに好適な態様である。具体的には、例えば、制動力増大方向の操作から制動力減少方向の操作へ操作方向が切替えられる場合に、制動力が意図した程度を超えて減少する現象が生じる場合等に有効な態様である。例えば、操作装置の構造上の要因(操作装置の動作を阻害する抵抗等)等によって、操作部材の操作状態量が適正な値とならないといった現象が起こり得る。本態様によれば、システムの構造に起因するそのような現象を緩和して、操作フィーリングを向上させることができる。
【0019】
(5)前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記制動装置の制動力の高い制御域である高制動制御域において、前記減少方向高値決定を行うものである(4)項に記載の車両用制動システム。
【0020】
後に詳しく説明するように、操作部材の操作量が多くなるにつれて操作力を大きくするような操作装置とするのが一般的であり、そのような操作装置において操作状態量として操作部材の操作力を採用する制御を行う場合、制動力増大方向から制動力減少方向に切替えたときに、操作装置の構造上の特性から操作部材の操作力が急に小さくなる現象が生じ得る。かかる場合、目標制御値が低くなりすぎて制動力が小さくなりすぎることがある。このような現象による制動力の変化は、制動力が高い状態においてより顕著に出現する傾向にある。本項に記載の態様によれば、例えば、そのような特性を有する制動システムにおいて、高制動力制御域における操作フィーリングを効果的に向上させることができる。
【0021】
(6)前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記制動装置の制動力の低い制御域である低制動制御域において、前記減少方向目標制御値を前記増大方向目標制御値より低い値に決定する減少方向低値決定を行い、かつ、前記制動装置の制動力の高い制御域である高制動制御域において、前記減少方向目標制御値を前記増大方向目標制御値より高い値に決定する減少方向高値決定を行うものである(1)項に記載の車両用制動システム。
【0022】
本項に記載の態様は、前述したように、低制動制御域と高制動制御域とにおいて互いに逆の現象が生じる制動システムにおいて、その制御域のいずれににおいて操作フィーリングを向上させ得る態様である。後に説明するように、多くの液圧式ブレーキシステムの場合、液圧式ブレーキシステム固有の現象として、上記現象が生じるため、本項に記載の態様は、多くの一般的な態様の制動システムに広く適用可能な態様である。なお、本項の態様とは異なる態様であるが、本発明は、制御の目的,制動システムの特性等に応じて、低制動制御域において減少方向高値決定を行い、かつ、高制動制御域において減少方向低値決定を行う態様で実施することもできる。
【0023】
(7)前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記操作部材の操作方向の切替えである操作方向切替えが行われた際、その操作方向切替えの時点において、前記増大方向目標制御値と前記減少方向目標制御値との間の差異である制御値差異が存在する場合に、その制御値差異に起因する前記目標制御値の急変を緩和すべく補正を行う目標制御値補正部を有する(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の車両用制動システム。
【0024】
操作部材の操作方向に依拠して目標制御値を異ならせる場合、操作方向の切り替わりの時点で、目標制御値の変化にギャップが存在することで、制動力が急変することが予想される。本項に記載の態様は、目標制御値を補正することにより、かかる制動力の急変を抑え、操作フィーリングをより良好なものとすることができる。
【0025】
(8)前記目標制御値補正部が、前記操作方向切替えの後において、前記制御値差異が存在しなくなるまで、前記操作方向切替えの直前の前記目標制御値を維持する目標制御値維持補正部を有する(7)項に記載の車両用制動システム。
【0026】
本項に記載の態様は、操作方向の切り替わり時における制動力の急変を抑制するための一態様である。本項に記載の態様には、具体的には例えば、切替え直後において、切替え後の操作方向についての所定のファンクションに基づいて決定された目標制御値を採用するのではなく、そのファンクションに基づいて決定された目標制御値が切り替わり直前の目標制御値と同じ値になるまで、その直前の目標制御値を採用して制動装置の制御を行う態様が含まれる。
【0027】
(9)前記目標制御値補正部が、前記操作方向切替の後における設定された前記操作部材の操作範囲において、前記前記操作方向切替えの時点での前記制御値差異を一定の割合で漸減させる値に基づいて補正を行う制御値差異漸減補正部を有する(7)項または(8)項に記載の車両用制動システム。
【0028】
本項に記載の態様は、操作方向の切り替わり時における制動力の急変を抑制するための一態様である。本項に記載の態様には、具体的には例えば、切替え後において、切替え後の操作方向についての所定のファンクションに基づいて決定された目標制御値をそのまま採用するのではなく、その目標制御値に、制御値差異を操作部材の操作状態の変化等に応じた所定の割合で減じた値を補正値として加える補正を行い、目標制御値の変化に大きなギャップが存在しない操作状態までその補正を継続するような態様が含まれる。
【0029】
(10)前記制御装置が、前記目標制御値として目標車両減速度を決定し、その目標車両減速度に基づいて前記制動装置を制御するものである(1)項ないし(9)項のいずれかに記載の車両用制動システム。
【0030】
先に説明したように、制動装置を制御する制御値はどのようなパラメータであってもよいが、本項に記載の態様のように、車両減速度とすることができる。車両減速度は、操作者が望む制動状態を的確に表すパラメータとなることから、操作状態量に基づく制動装置の制御を実情に即したものとすることができる。本項に記載の態様には、車両減速度に基づく制御を行う態様の他、一旦決定した目標車両減速度を別のパラメータの目標制御値(例えば液圧式ブレーキ装置の場合の目標ホイールシリンダ液圧)に変換し、その変換した目標制御値に基づいて制御を行うような態様も含まれる。
【0031】
(11)前記制御装置が、前記操作状態量として、少なくとも前記操作部材の操作量に基づいて前記目標制御値を決定するものである(1)項ないし(10)項のいずれかに記載の車両用制動システム。
【0032】
先に述べたように、操作状態量は、特に限定されるものではないが、本項に記載の態様のように、操作部材の操作量を採用することができる。操作量は、いわゆる操作部材の操作ストロークを含む概念である。操作装置がブレーキペダルである場合は、ペダルストローク、つまり、ペダルの踏込量が操作量に相当するものとなる。操作量は、操作感として容易に体感できるパラメータであり、それにに基づく制動力の制御を行えば、操作者の意図に沿った制動力が得られる制動システムが実現する。
【0033】
(12)前記制御装置が、前記操作状態量として、少なくとも前記操作部材の操作力関連量に基づいて前記目標制御値を決定するものである(1)項ないし(11)項のいずれかに記載の車両用制動システム。
【0034】
操作量と同様に、操作部材の操作力も、操作感として容易に体感できるパラメータであり、本項に記載の態様によれば、操作者の意図に沿った制動力が得られる制動システムが実現する。操作力関連量は、操作力(操作部材がブレーキペダルである場合は、ペダル踏力)そのものであってもよく、また、操作力を間接的にあるいは近似的に表すパラメータであればよい。
【0035】
(13)前記操作装置が、液体を収容したシリンダと、前記操作部材に連係させられて前記液体を加圧するピストンとを有するシリンダ装置を備え、前記制御装置が、少なくとも、前記操作力関連量としての前記液体の圧力に基づいて前記目標制御置を決定するものである(12)項に記載の車両用制動システム。
【0036】
本項に記載の態様は、操作部材の操作力関連量に基づく制御に関する具体的な一態様である。液圧式のブレーキシステムの場合、例えば、ブレーキペダルによって操作されるいわゆるマスタシリンダ(通常制御状態では、マスタシリンダとホイールシリンダとが連通しない状態のシステムもあり、その場合はマスタシリンダとしての機能を発揮しないことがある)を有しており、そのマスタシリンダの液圧とペダル踏力とが一定の相関関係にあるため、その液圧を操作力関連量として採用することもできるのである。
【0037】
(14)前記操作装置が、前記シリンダ装置と連係して前記操作部材の前記操作力に応じた操作量を生じさせるストロークシミュレータを備えた(13)項に記載の車両用制動システム。
【0038】
ブレーキペダルを操作する操作装置では、ペダル踏力に応じたペダルストロークを確保するために、ストロークシミュレータを採用することが一般的である。液圧式のブレーキシステムでは、ストロークシミュレータは、いわゆるウェット式ストロークシミュレータと呼ばれるものが用いられることがある。そのシミュレータには、例えば、シリンダと、そのシリンダ内を2つの空間に区画しつつそれらの空間体積を相対的に変化させて移動するピストンを備え、一方の空間にマスタシリンダからの作動液が流入されるとともに、他方の空間にピストンを上記一方の空間の体積が減少する方向に付勢する付勢部材が設けられた構造のものが存在する。そのようなストロークシミュレータは、ペダルストロークに応じた操作反力を生じるようにされている。ところが、ペダルを踏み込んだ状態から戻す場合に、上記ピストンの上記シリンダに対する摺動抵抗や、マスタシリンダとストロークシミュレータとを連通する配管を作動液が通過する際の抵抗等が起因して、ペダルの戻し量に応じた以上にマスタシリンダ液圧が低下する。マスタシリンダ液圧に基づく制動力の制御を行う場合、その現象により、戻し操作への切替えが行われた際、意図した以上に得られる制動力が低下することになる。つまり、ある種のヒステリシスが存在するのである。上記操作方向切替え時における制動力の低下傾向は、ペダルが大きく踏み込まれる程、すなわち制動力が高い操作状態である程強くなり、操作フィーリングを悪化させる一因となる。本項に記載の態様では、かかるストロークシミュレータの構造に起因する操作感の悪化現象を、操作方向に依拠して目標制御値を変更することにより、効果的に緩和することができる。
【0039】
(15)前記制動装置が摩擦制動装置を備えた(1)項ないし(14)項のいずれかに記載の車両用制動システム。
【0040】
(16)前記摩擦制動装置が液圧式摩擦制動装置である(15)項に記載の車両用制動システム。
【0041】
(17)前記摩擦制動装置が、車輪と一体的に回転する回転体と、その回転体と摺接することにより摩擦力を発生させる摩擦摺接部材と、その摩擦摺接部材を前記回転体に対して接近・離間可能に保持する摩擦摺接部材保持装置と、前記摩擦摺接部材を前記回転体に押付ける摩擦摺接部材押付装置とを有する(15)項または(16)項に記載の車両用制動システム。
【0042】
(18)前記摩擦制動装置が液圧式摩擦制動装置であり、前記摩擦摺接部材押付装置が、ピストンと作動液体を収容するシリンダとを有して前記作動液体の圧力により前記摩擦摺接部材を前記回転体に押付ける押付シリンダ装置を有する(17)項に記載の車両用制動システム。
【0043】
本発明は、上記一連の項に示すように、ドラムブレーキ,ディスクブレーキといった摩擦力を利用した制動システムに広く適用可能である。摩擦制動装置は、摩擦摺接部材であるブレーキパッドを、ブレーキドラム,ブレーキディスクといった車輪とともに回転する回転体に押付ける機構を有しており、その機構における各構成要素のあるいは構成要素間に生じる摺動抵抗等に起因して、操作者の意図程には制動力が減少しないといった現象が生じる。ブレーキペダルの操作に関連して詳しく言えば、ペダルの踏込操作後に踏戻操作を行った際、ブレーキパッドとそれを保持する保持部材(例えばマウンティングブラケット等)との間の摺動抵抗であるとか、ブレーキパッド押付装置(液圧ブレーキ装置であれば、例えば、ホイールシリンダ等)内部の摺動抵抗とかによって、ブレーキパッドを回転体に押付ける力が充分に抜けきらないとった減少である。この現象は、一種のヒステリシスであり、制動力が小さい状態つまり低制動力制御域において、いわゆるブレーキの引き摺り現象として操作者に体感され、操作フィーリングに与える影響が大きい。本発明は、上記構成の制動装置を備える制動システムにおいて、その構成に起因する操作フィーリングの悪化を、操作部材の操作方向に依拠して目標制御値を変更することにより、効果的に抑制することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態およびその変形態様を、図を参照しつつ説明する。なお、本発明は、下記の実施形態等に限定されるものではなく、下記実施形態等の他、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【0045】
<車両用制動システムの構成>
図1に、本発明の実施形態である4輪自動車に用いられている車両用制動システムの全体構成を示す。制動システムは、よく知られた構造の液圧式ブレーキシステムであり、大きくは、車両に制動力を付与する制動装置10と、操作者が当該システムを操作するための操作装置12と、操作装置12の操作の状態に応じた制動装置10の制御を行う制御装置14とを備えて構成されている。
【0046】
操作装置12は、操作部材であるブレーキペダル20と、そのブレーキペダル20と連係するマスタシリンダ22と、マスタシリンダ22に接続されたリザーバ24と、ブレーキペダル20に反力を付与するととともに踏力に応じたペダルストロークを発生させるためのストロークシミュレータ26とを含んで構成される。マスタシリンダ22には、2つの液通路30,32が接続されており、それぞれの液通路30,32は、常開の電磁開閉弁34L,34R(以下、単に「電磁開閉弁34」と呼ぶ場合がある)を介して左前輪40FLおよび右前輪40FRに繋がっている。
【0047】
マスタシリンダ22は、シリンダとしてのハウジング50とピストン52とを備えたシリンダ装置であり、ピストン52はブレーキペダル20に連係させられており、ブレーキペダル20の踏込操作により内在する作動液が加圧される構造とされている。マスタシリンダ22に収容された作動液の液圧であるマスタシリンダ液圧Pm(以下、単に「マスタ圧Pm」と呼ぶことがある)は、マスタ圧センサ54によって検出される。このマスタ圧Pmは、操作部材であるブレーキペダル20の踏力、つまり操作力の大きさを示す操作力関連量である。また、ブレーキペダル20の踏込量つまり操作量であるペダルストロークSTは、ストロークセンサ56によって検出されようになっている。なお、ブレーキペダル20が操作状態にあるか否かは、ブレーキランプのスイッチを兼ねる操作ON/OFFセンサ58によって検出される。
【0048】
ストロークシミュレータ26は、液通路30に設けられている。ストロークシミュレータ26は、いわゆるウェット式のストロークシミュレータであり、図2に示すように、シリンダハウジング60と、シリンダハウジング60の内部を2つの空間に区画するとともにそれらの空間の容積を相対変化させるように移動するピストン62とを含むシリンダ装置とされている。一方の空間は液室64とされるとともに、ポート66が液通路30に接続され、また、他方の空間には、ピストン62を液室64に向かって付勢する付勢部材としてのスプリング68が配設されている。ブレーキペダル20が踏み込まれた際に、作動液の一部が液室64に流入するとともに、スプリング68の付勢力に抗ってピストン62が移動させられる。また、ブレーキペダル20が踏み戻された場合には、スプリング68の付勢力によりピストン62が移動させられ、液室64に流入させられていた作動液が排出される。ストロークシミュレータ26は、このようにして、踏力に応じたペダルストロークをブレーキペダル20の操作において生じさせるのである。
【0049】
制動装置10は、各車輪40FL,40FR,40RL,40RR(以下単に「車輪40」と略す場合がある)に対して設けられた車輪ブレーキ装置80FL,80FR,80RL,80RR(以下単に「車輪ブレーキ装置80」と略す場合がある)と、駆動源としてのポンプ装置82と、ポンプ装置82からの作動液を車輪ブレーキ装置80に適切な圧力で供給するための電磁弁装置84とを含んで構成されている。
【0050】
車輪ブレーキ装置80は、図3に示すように、摩擦制動装置の一種であるディスクブレーキ装置である。車輪ブレーキ装置80は、よく知られた構造のものであるため簡単に説明すれば、マウンティングブラケット90と、パッド材91とそれをバックアップするバックアップ材92とを有する1対のブレーキパッド94と、ホイールシリンダ96を有するキャリパ98とを含んで構成されている。1対のブレーキパッド94は、摩擦摺接部材として機能するものであり、車輪と一体的に回転する回転体であるデイスクロータ100の側面を挟んで対向している。マウンティングブラケット90は、車輪を回転可能に保持する部材に固定的に設けられ、摩擦摺接部材保持部材として機能し、ブレーキパッド94をディスクロータ100に対して接近・離間可能に保持している。また、キャリパ98は、2つの顎部102,103を有し、それらの顎部102,103がディスクロータ100およびブレーキパッド94を挟むように位置している。マウンティングブラケット90は、2つのロッド状のガイド104を有し、それらガイド104をキャリパ98の2つのスライド部106のそれぞれに挿通させることで、キャリパ98を摺動可能に保持している。キャリパ98は、2つの顎部102,103の一方に、押付シリンダ装置(摩擦摺接部材押付装置の一種である)として機能するホイールシリンダ装置96(以下、単に「ホイールシリンダ96」と略す場合がある)を備えている。一方の顎部102の一部分はシリンダ108とされ、その内部にピストンを110が摺動可能に設けられているのである。シリンダ108には、作動液が流入するポート112を有しており、加圧された作動液がこのポート112から流入することによって、ピストン110が前進し、2つのブレーキパッド94がディスクロータ100を挟み付けるようにしてそれの表面に押付けられ、制動力が付与されるのである。
【0051】
ポンプ装置82は、リザーバ24側から作動液を汲み出して吐出するポンプ120と、そのポンプ120を駆動する電動モータ122と、ポンプ120の吐出側に設けられたアキュムレータ124とを含んで構成されている。ポンプ装置82は、液通路128によって、電磁弁装置84に接続されている。なお、ポンプ装置82によって供給される作動液の液圧であるポンプ圧Ppは、ポンプ圧センサ126によって検出されるようにされている。また、ポンプ装置82には、リリーフ弁130が設けられており、ポンプ120の吐出側の圧力が高くなりすぎる場合に、低圧側であるリザーバ24に作動液を逃がすようにされている。
【0052】
電磁弁装置84は、各車輪40に対応する制御弁として、各ホイールシリンダ96のシリンダ液圧を制御する増圧制御弁140FL,140FR,140RL,140RRおよび減圧制御弁142FL,142FR,142RL,142RR(以下単に「増圧制御弁140」,「減圧制御弁142」と略す場合がある)を有している。各増圧制御弁140と減圧制御弁142は直列に接続された制御弁対を構成し、それら制御弁対は各車輪に対応して並列に設けられている。各増圧制御弁140の入液ポートは、液通路128に接続され、各減圧制御弁142の出液ポートは、リザーバ24に通じる液通路144に接続されている。互いに接続された各増圧制御弁140の出液ポートおよび各減圧制御弁142の入液ポートが、液通路を通じて各車輪40のホイールシリンダ96に接続されている。詳しい説明は省略するが、増圧制御弁140および減圧制御弁142は、常開のリニア弁であり、入液側と出液側とに励磁電流の大きさに応じた差圧を生じさせる構造とされており、これらへの供給電力を制御することで、各ホイールシリンダの液圧であるシリンダ液圧Pwcが制御され、各車輪ブレーキ装置80による制動力が適切なものとされるのである。なお、各シリンダ液圧Pwcは、シリンダ液圧センサ146FL,146FR,146RL,146RR(以下単に「シリンダ液圧センサ146」と略す場合がある)によって検出される。
【0053】
制御装置14は、CPU150,RAM152,ROM154,入出力インターフェース156,それらを繋ぐバス158等によって構成されるコンピュータ160を主体とするブレーキ電子制御ユニット162(以下単に「ブレーキECU」162と略す場合がある)を有している。ブレーキECU162は、他に、電動モータ122を駆動する駆動回路164と、各増圧制御弁140および各減圧制御弁142を制御する制御回路166とを有しており、これらは、コンピュータ160の入出力インターフェース156に接続されている。また、入出力インターフェース156には、マスタ圧センサ54,ストロークセンサ56,操作ON/OFFセンサ58、ポンプ圧センサ126,シリンダ液圧センサ146等の各種センサが接続されている。
【0054】
制動装置10の制御は、制御装置14に備わるコンピュータ160が、ROM154に格納されている所定のブレーキ制御プログラムを実行することによって行われる。詳しい説明は後に行うが、通常ブレーキ時においては、電磁開閉弁34を閉じた状態において、ポンプ装置82によるポンプ圧Ppを各ホイールシリンダ96に要求される液圧より高くするとともに、電磁弁装置84を制御して、ブレーキペダル20の操作状態に応じた制動力を得るように、各ホイールシリンダ96のシリンダ液圧Pwcが制御される。また、上記ブレーキ制御プログラムは、アンチロック(ABS)制御,トラクションコントロール(TRC)制御,車両姿勢制御(VSC)制御等も可能とされている。なお、電源供給の遮断等の場合においては、電磁開閉弁34が開いた状態とされ、ブレーキペダル20の踏力によって発生するマスタ圧Pmがそのまま前輪40FR,40FLの車輪ブレーキ装置80に供給され、それによって制動力が得られるようにされている。
【0055】
<目標制御値とヒステリシス>
上記制動システムは、通常ブレーキ時において、ブレーキペダル20の操作状態に応じた値に、各ホイールシリンダ96のシリンダ液圧Pwcが制御される。つまり、目標シリンダ液圧Pwc*が決定され、実際のシリンダ液圧Pwcがその目標シリンダ液圧Pwc*となるように制御されるのである。本実施形態では、目標シリンダ液圧Pwc*の決定に先立って、ブレーキペダル20の操作状態に応じた目標車両減速度G*が決定され、それに基づいて、目標シリンダ液圧Pwc*が決定される。つまり、第1の目標制御値である目標車両減速度G*が決定され、それに基づいて、第2の目標制御値である目標シリンダ液圧Pwc *が決定されるのである。
【0056】
目標車両減速度G*の決定は、図4に示すところの、上記ブレーキ制御プログラムの目標車両減速度決定サブルーチンが実行されることによって行われる。目標車両減速度決定サブルーチンでは、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様とする)において、ブレーキペダル20の現時点でのペダルストロークSTが特定される。後に説明するが、ペダルストロークSTは、ストロークセンサ56による検出値として既に取得されてRAM152に記憶されている。ペダルストロークSTは、操作部材の操作状態量の1種であり、操作量として位置付けられるものである。なお、ペダルストロークSTは、踏み込まれていない状態を0とし、踏込量が多くなるにつれてその値が大きくなるものとされている。続く、S2において、特定されたペダルストロークSTに対応するストローク対応目標車両減速度GST *が、ROM156に格納されているST−GS T *マップから読み出される。本実施形態では、ST−GST *マップは、図5に示すように、ペダルストロークSTが大きくなるにつれて目標車両減速度GST *の増加勾配が大きくなるようにされている。
【0057】
次いで、S3において、現時点でのマスタシリンダ22の液圧であるマスタ圧Pmが特定される。マスタ圧Pmは、ペダルストロークSTと同様、マスタ圧センサ54による検出値として既に取得されてRAM152に記憶されている。マスタ圧Pmも操作部材の操作状態量の1種であり、操作力関連量として位置付けられるものである。なお、マスタ圧Pmは大気圧との相対圧であり、ブレーキペダル20が踏み込まれていない状態を0とし、踏込量が多くなるにつれてその値が大きくなるものとされている。続くS4において、特定されたマスタ圧Pmに対応するマスタ圧対応目標車両減速度GPm *が、ROM156に格納されているPm−GPm *マップから読み出される。本実施形態では、Pm−GPm *マップは、図6に示すように、マスタ圧Pmが大きくなるにつれて目標車両減速度GPm *が概ね直線的に増加するものとされている。
【0058】
本実施形態では、目標車両減速度G*は、GST *とGPm *との重み付け和として決定される。S5では、その重み付けのための係数である重み付け係数αが、ROM156に格納されている重み付け係数マップから読み取られる。重み付け係数αは、図7に示すように、マスタ圧対応車両目標減速度GPm *と関係付けられており、重み付け係数マップから、S4において読み出されたGPm *に対応する重み付け係数αの値が読み取られる。本実施形態では、αは0以上,1以下の値とされ、GPm *が大きくなるにつれて、その値が大きくなるようにされている。そして、S6において、関係式
G*=α・GPm *+(1−α)・GST *
に基づいて、目標車両減速度G*が求められる。
【0059】
ブレーキペダル20の操作は、制動力増大方向の操作である踏込操作と、制動力減少方向の操作である踏戻操作とに分けられ、本実施形態では、それぞれの操作方向における目標制御値を異ならせるため、上記目標車両減速度G*の決定において、それぞれの操作方向ごとに互いに異なるマップが用いられる。つまり、上記ST−GST *マップ,Pm−GPm *マップ,重み付け係数マップのそれぞれがについて、踏込操作に対するものと踏戻操作に対するものとの2つがROM154に格納されており、操作方向に応じて選択して使い分けられるのである。
【0060】
ここで仮に踏込操作における目標車両減速度G*と踏戻操作における目標車両減速度G*が同じ値とされて制御されると仮定した場合の問題を考える。その場合における低制動力制御域の実際の車両減速度Gと、ペダルストロークSTとの関係を、図8に示す。この図は、ある踏込状態までブレーキペダル20の踏込操作を行ってそこから踏戻操作を行った場合のグラフであり、低制動力制御域においては、図に示すようなヒステリシスが発生する。このヒステリシスは、主に、先に述べた車輪ブレーキ装置80の構造、詳しくは摺動抵抗に起因するものであると考えられる。図3を参照すれば理解できるように、車輪ブレーキ装置80において、例えば、キャリパ98とマウンティングブラケット90との間、ブレーキパッド94とマウンティングブラケット90との間、キャリパ98のシリンダ108とピストン110との間等には、互いに摺動することによる摺動抵抗が生じる。したがって、ブレーキペダル20の踏戻操作を行った場合でも、それらの摺動抵抗により、ブレーキパッド94のディスクロータ100に対する押付け力が素直に緩まらず、いわゆる引き摺り現象を生じ、そのために同じ操作状態において踏戻操作方向のほうが制動力が高くなるものと推定される。
【0061】
図9には、高制動力制御域における実際の車両減速度GとペダルストロークSTとの関係を示す。この図も、ある踏込状態までブレーキペダル20の踏込操作を行ってそこから踏戻操作を行った場合のグラフであり、高制動力制御域において、図に示すようなヒステリシスが発生する。このヒステリシスは、主に、ストロークシミュレータ26の構造に起因するものであると考えられる。図2に示すように、ストロークシミュレータ26は、シリンダハウジング60内をピストン62が摺動して移動する構造となっており、これら両者の間に摺動抵抗が発生する。また、ストロークシミュレータ26とマスタシリンダ22とは、液通路によって接続されており、シリンダハウジング60の内径に比較してその液通路の径が小さくされているため、作動液の戻りに対しての通液抵抗も生じる。これらの抵抗が原因するため、踏戻操作において検出されるマスタ圧Pmの値は、踏込操作における検出値より小さくなってしまう。その結果、目標車両減速度G*が小さくなり、踏戻操作方向の制動力が小さくなってしまうのである。
【0062】
以上のようなヒステリシスは、液圧式ブレーキ装置に特有の現象であり、その存在は、操作者による操作フィーリングを悪化させる一因となる。そこで本実施形態では、それらヒステリシスを緩和するため、ブレーキペダル20にの操作方向に依拠して目標車両減速度G*を異なる値に決定するようにされている。詳しく言えば、同じ操作状態においても、制動力増大方向である踏込方向における増大方向目標制御値と、制動力減少方向である踏戻方向における減少方向目標制御値とを、互いに異なる値に決定しているのである。具体的に言えば、図10に模式的に示すように、G*が決定される。図におけるfwは、踏込方向における目標車両減速度線であり、bwは、踏戻方向における目標車両減速度線である。図から解るように、低制動制御域においては、踏戻操作のほうがG*が小さくなるようにされており、減少方向低値決定が行われる。また、高制動制御域においては、踏戻操作のほうがG*が大きくなるようにるようにされており、減少方向高値決定が行われる。マップについての例示は省略するが、適正なマップを設定すれば、操作方向に依拠して図に示すような互いに異なる操作状態量と目標制御値との関係が実現される。なお、図10は、横軸にペダルストロークSTを採用しているが、この図は、本実施形態における目標制御値の態様を図式化によって理解を容易にするために、便宜的にかかげたものである。上記決定プロセスから理解できるように、実際上は、ペダルストロークSTのみによって目標車両減速度G*が一元的に定まるものではない。
【0063】
<車両用制動システムの制御>
目標車両減速度の決定を上述のように行うことを前提として、本実施形態の制御について説明する。説明を単純化するため、通常ブレーキ時の制御に関する部分のみを説明する。図11に、前述のブレーキ制御プログラムから抜粋した通常ブレーキ時制御ルーチンのフローチャートを示す。以下、このフローチャートに従って説明する。なお、この通常ブレーキ時制御ルーチンは、車両のイグニッションスイッチがON状態にある間、数msecという短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0064】
まず、S10において、ブレーキペダル20が操作されている状態にあるか否か判断される。具体的には、操作ON/OFFセンサ58による検出値でもって判断される。操作OFF状態である場合は、S11において、操作方向フラグDFが“fw”(踏込方向であることを示す)にセットされるとともに、操作方向切替時目標車両減速度ギヤップΔG0(以下、単に「切替時ギャップΔG0」と呼ぶことがある)、および、操作方向切替時ストロークST0(以下、単に「切替時ストロークST0」と呼ぶことがある)の値が0にリセットされる。ΔG0およびST0については、後に詳しく説明する。S10において操作ON状態と判断された場合は、S12において、マスタ圧センサ54の検出値であるマスタ圧Pm、および、ストロークセンサ56の検出値であるペダルストロークSTが取得される。
【0065】
続いて、図12にフローチャートを示すところのS13の操作方向判定サブルーチンが実行される。S13においては、操作方向の判定を行うための操作状態量が制動力に応じて変更される。操作方向は、制動力が低い場合には、ペダルストロークSTの変化状態によって判定され、制動力が高い場合には、マスタ圧Pmの変化状態によって判定される。具体的には、S131において、マスタ圧Pmが変更のための閾値である変更マスタ圧Pm0(例えば、0.15MPaといった値)より高いと判定された場合は、S133以下のステップを実行するようにされ、また、S132において、マスタ圧Pmが変更マスタ圧Pm0より低いと判定された場合は、S135以下のステップが実行される。
【0066】
S133およびS134においては、ブレーキペダル20の操作方向が、マスタ圧Pmの変化状態によって判定される。RAM152には、前回の本ルーチンの実行時のマスタ圧である前回マスタ圧Pmoldが記憶されており、PmoldとPmの比較によって判断される。また、前々回以前の所定回数分のマスタ圧も記憶されており、所定時間内の経時的な変化によっても判断される。具体的には、S133においては、Pm>Pmoldの状態が30msec継続した場合に、現在の操作方向が踏込方向であると判定され、S134においては、Pm<Pmoldの状態が30msec継続した場合に、現在の操作方向が踏戻方向であると判定される。
【0067】
S135およびS136においては、ブレーキペダル20の操作方向が、ペダルストロークSTの変化状態によって判定される。RAM152には、前回の本ルーチンの実行時のペダルストロークである前回ペダルストロークSToldが記憶されており、SToldとSTの比較によって判断される。また、前々回以前の所定回数分のペダルストロークも記憶されており、所定時間内の経時的な変化によっても判断される。具体的には、S135においては、ST>SToldの状態が30msec継続した場合に、現在の操作方向が踏込方向であると判定され、S136においては、ST<SToldの状態が30msec継続した場合に、現在の操作方向が踏戻方向であると判定される。
【0068】
踏込方向であると判定された場合は、S137において、操作方向フラグDFが“fw”とされ、また、踏戻方向であると判断された場合は、S138において、操作方向フラグDFが“bw”(踏戻方向を示す)とされ、本操作方向判定サブルーチンの実行が終了する。なお、S131〜S136のいずれの判定もYESとならない場合は、操作方向フラグDFが前回の値を維持した状態で、本サブルーチンが終了する。
【0069】
S12のサブルーチンが終了した後、続くS14において、操作方向フラグDFが参照されて現在の操作方向が確認され、その確認の結果、踏込操作である場合には、S15において、前述のST−GST *マップ,Pm−GPm *マップ,重み付け係数マップの3つのマップとして、踏込操作におけるマップが選択される。そしてS16において、先に説明した目標車両減速度決定サブルーチンに従い、選択されたマップを用いて、増大方向目標制御値としての目標車両減速度G*が決定される。S14で踏戻操作と確認された場合には、S17において、踏戻操作のマップが選択され、S18において目標車両減速度決定サブルーチンに従い、選択されたマップを用いて、減少方向目標制御値としての目標車両減速度G*が決定される。
【0070】
本実施形態の制動システムでは、同じ操作状態量であっても、操作方向に依拠して目標車両減速度G*が互いに異なる値に決定されるため、操作方向の切替え時において、目標車両減速度G*がステップ的に急変することがある。つまり、増大方向目標制御値と前記減少方向目標制御値との間の差異である制御値差異、いわゆるギャップが発生する可能性があるのである。そこで、本実施形態のシステムでは、そのギャップを排除して上記急変を緩和するために、決定された目標車両減速度G*に対して補正を行っている。S19〜S21が踏込方向における補正の処理を行うステップであり、S22〜S24が踏戻方向における補正の処理を行うステップである。
【0071】
踏込方向の補正について説明すれば、まず、S19において、今回の制御サイクルにおいて、操作方向が踏戻方向から踏込方向に切り替わったか否かが判断される。RAM152には、前回の操作方向フラグDFoldの値も記憶されており、DFとDFoldとの比較により判断される。今回のサイクルにおいて操作方向が踏込方向に切り替わったと判断された場合は、図13にフローチャートを示すS20の踏込切替処理サブルーチンが実行される。このサブルーチンでは、まず、S201において、ブレーキペダル20の現在のペダルストロークSTを切替時ストロークST0と認定する。次に、S202において、切替時ギャップΔG0が求められる。RAM152には、前回の制御サイクルにおける目標車両減速度である前回減速度G* oldが記憶されており、今回決定されたG*からG* oldを減じることによって、ΔG0が求められる。次いで、S203において、ΔG0の正負が判断される。本実施形態では、図10から解るように、低制動制御域においては、踏戻操作におけるG*のほうが踏込操作におけるG*より小さな値となるため、ΔG0が正となる可能性が高い。逆に、高制動制御域においては、踏込操作におけるG*のほうが踏戻操作におけるG*より小さな値となるため、ΔG0が負となる可能性が高い。本実施形態においては、ΔG0の正負によって補正の方法を相違させるようにされており、また、ΔG0の値に基づいて補正値を決定するようにされている。そのための便宜として、ΔG0<0の場合に、S204においてΔG0を0と擬制する処理が行われる。
【0072】
上記踏込切替処理サブルーチンが実行された後、あるいは、操作方向の切替えが行われれなった場合に、図14にフローチャートを示すところの、S21の踏込方向補正サブルーチンが実行される。本サブルーチンでは、まず、S211において、切替時ギャップΔG0が0であるか否かの判定が行われ、S212おいて、現在のペダルストロークSTが、ST0から所定ストロークST2隔たった範囲であるところの補正操作範囲にあるか否かが判断される。ST2は、ペダルストロークをパラメータとする補正操作範囲規定量(例えば15mmといった値を採用することができる)である。ΔG0が0の場合若しくは0と擬制されている場合、または、STが補正操作範囲にない場合は、S213において、後に詳しく説明する漸減補正値ΔGtmpが0に決定され、続くS214において、ΔG0が0とされる。
【0073】
S211およびS212の判定により、ΔG0が0でなくかつSTが補正操作範囲にあると判定された場合は、S215において、上述の漸減補正値ΔGtmpが、
ΔGtmp=ΔG0×(ST0+ST2−ST)/ST2
という式に従って決定される。この式による漸減補正値ΔGtmpは、その値が、踏込操作が進むにつれて漸減する値となり、補正操作範囲において、操作状態に応じて切替時ギャップΔG0を漸減させる補正を行うための補正値とされているのである。
【0074】
漸減補正値ΔGtmpが決定された後、S216において、既に決定されている目標車両減速度G*が補正される。具体的には、(G*−ΔGtmp)と、前回目標車両減速度であるG* oldとを比較して、大きな方の値を目標車両減速度G*として再決定する。これら一連の処理を終了して、踏込方向補正サブルーチンの実行が終了する。
【0075】
次に、踏戻方向の補正について説明すれば、まず、S22において、今回の制御サイクルにおいて、操作方向が踏込方向から踏戻方向に切り替わったか否かが、DFとDFoldとの比較により判断される。今回のサイクルにおいて操作方向が踏戻方向に切り替わったと判断された場合は、図15にフローチャートを示すS23の踏戻切替処理サブルーチンが実行される。このサブルーチンでは、S20の踏込切替処理サブルーチンと同様に、まず、S231において切替時ストロークST0が認定され、次に、S232において、切替時ギャップΔG0が求められる。次のS233において、ペダルストロークSTが所定の値であるST10より小さいか否かが判定される。後に詳しく説明するが、低制動制御域における補正は、切り替わり時から目標車両減速度G*が実質的に0になる操作状態までの間で補正を行うため、その補正操作範囲の終点として補正終点ストロークST1が設定されている。詳しく言えば、踏込方向のマップによって決定されるG*が実質的に0になるSTを、ST1(例えば、4mmといった値)としている。ST10が示すペダルストロークは、以後のステップの計算式において0で除することを禁止すべく、ST1より若干量大きな値(例えば、4.1mmといった値)とされているのである。次いで、S234において、ΔG0の正負が判断される。踏戻方向への切替えの場合も、踏込方向の切替えの場合において説明したのと同様に、ΔG0の正負によって補正の方法を相違させており、S234の判断は、そのための判断である。S233においてST<ST10と判断された場合、または、S234においてΔG0>0と判断された場合には、S235において、便宜的にΔG0を0と擬制する処理が行われる。
【0076】
上記踏戻切替処理サブルーチンが実行された後、あるいは、操作方向の切替えが行われれなった場合に、図16にフローチャートを示すところの、S24の踏戻方向補正サブルーチンが実行される。本サブルーチンでは、まず、S241において、切替時ギャップΔG0が0であるか否かの判定が行われ、S212おいて、現在のペダルストロークSTが、前述の補正操作範囲の終点である補正終点ストロークST1より大きいか否かが判定される。ΔG0が0の場合若しくは0と擬制されている場合、または、STが補正操作範囲でないと判断された場合は、踏込方向の補正の場合と同様、S243において、今回のサイクルにおける漸減補正値ΔGtmpが0に決定され、続くS244において、ΔG0が0とされる。
【0077】
S241およびS242の判定により、ΔG0が0でなくかつSTが補正操作範囲にあると判定された場合は、S245において、漸減補正値ΔGtmpが、
ΔGtmp=ΔG0×(ST−ST1)/(ST0−ST1)
という式に従って決定される。この式による漸減補正値ΔGtmpは、踏込方向の補正の場合と同様、踏戻操作が進むにて漸減する値となり、補正操作範囲において、操作状態に応じて、切替時ギャップΔG0を漸減させるための補正値とされているのである。
【0078】
漸減補正値ΔGtmpが決定された後、S246において、既に決定されている目標車両減速度G*が補正される。具体的には、踏込方向の補正の場合とは逆に、(G*−ΔGtmp)と、前回目標車両減速度であるG* oldとを比較して、小さな方の値を目標車両減速度G*として再決定する。これら一連の処理を終了して、踏戻方向補正サブルーチンの実行が終了する。
【0079】
以上、補正に関する処理を説明したが、理解をより容易にするために、具体例を掲げて説明する。図17に、操作方向が踏込方向に切替えられた場合において、補正を行った結果による実際の目標車両減速度G*の変化を模式的に示す。なお、図17(a)は、低制動制御域における変化を、図17(b)は、高制動制御域における変化を、それぞれ示している。
【0080】
図17(a)に示す低制動制御域の場合について説明すれば、補正が行われない場合には、ST0において操作方向が踏込方向に切り替わったときに、太鎖線のように目標車両減速度G*が変化してしまう。上記補正処理を行う場合、まず、切り替わり時点における制御サイクルにおいて、S20の踏込切替処理サブルーチンが実行され、切替時ギャップΔG0は、0以上であるため、そのままの値として認定される。続くS21の踏込方向補正サブルーチンにおいて、S215で漸減補正値ΔGtmpが演算され、S216でG*が(G*−ΔGtmp)の値に補正される。以後の何回かの制御サイクルにおいて、S215,S216が繰り返され、STが(ST0+ST2)となるまで、ΔGtmpが漸減させられつつ補正が行われる。そして、何回目かの制御サイクルにおいて、ST=ST0+ST2となった後には補正が行われなくなるのである。つまり、そのような補正の結果、図に太実線で示すように、所定の操作範囲において、切替時ギャップΔG0がブレーキペダル20の操作状態に応じて漸減させられる状態で、目標車両減速度G*が補正されるのである。
【0081】
図17(b)に示す高制動制御域の場合について説明すれば、補正が行われない場合には、ST0において操作方向が踏込方向に切り替わったときに、太鎖線のように目標車両減速度G*が変化してしまう。上記補正処理を行う場合、まず、切り替わり時点における制御サイクルにおいて、S20の踏込切替処理サブルーチンが実行されるが、切替時ギャップΔG0は、0より小さいため、0と擬制される。続くS21の踏込方向補正サブルーチンにおいて、S215の漸減補正値ΔGtmpの演算はスキップされ、S216においては、G*は、前回値であるG* oldの値に補正される。以後の何回かの制御サイクルにおいて、G*はG* oldの値に維持され、そして、何回目かの制御サイクルにおいて決定されたG*がG* oldと略同じ値となったときに、補正が終了する。つまりそのような補正の結果、図に太実線で示すように、あるの操作範囲において切替え直前の値を維持するように目標車両減速度G*が補正されるのである。
【0082】
図18に、操作方向が踏戻方向に切替えられた場合において、補正を行った結果による実際の目標車両減速度G*の変化を模式的に示す。なお、図18(a)は、低制動制御域における変化を、図18(b)は、高制動制御域における変化を、それぞれ示している。
【0083】
図18(a)に示す低制動制御域の場合について説明すれば、補正が行われない場合には、ST0において操作方向が踏戻方向に切り替わったときに、太鎖線のように目標車両減速度G*が変化してしまう。上記補正処理を行う場合、まず、切り替わり時点における制御サイクルにおいて、S23の踏戻切替処理サブルーチンが実行され、切替時ギャップΔG0は、0以下であるため、そのままの値として認定される。続くS24の踏戻方向補正サブルーチンにおいて、S245で漸減補正値ΔGtmpが演算され、S246で、G*は、(G*−ΔGtmp)の値に補正される。以後の何回かの制御サイクルにおいて、S215,S216が繰り返され、STがST1となるまで、ΔGtmpが漸減させられつつ補正が行われる。そして、何回目かの制御サイクルにおいて、STがST1より小さな値となったときに補正が行われなくなるのである。つまり、そのような補正の結果、図に太実線で示すように、所定の操作範囲において、切替時ギャップΔG0がブレーキペダル20の操作状態に応じて漸減させられる状態で、目標車両減速度G*が補正されるのである。
【0084】
図18(b)に示す高制動制御域の場合について説明すれば、補正が行われない場合には、ST0において操作方向が踏戻方向に切り替わったときに、太鎖線のように目標車両減速度G*が変化してしまう。上記補正処理を行う場合、まず、切り替わり時点における制御サイクルにおいて、S23の踏戻切替処理サブルーチンが実行されるが、切替時ギャップΔG0は、0より大きいため、0と擬制される。続くS24の踏戻方向補正サブルーチンにおいて、S245の漸減補正値ΔGtmpの演算はスキップされ、S246においては、G*は、前回値であるG* oldの値に補正される。以後の何回かの制御サイクルにおいて、G*はG* oldの値に維持され、そして、何回目かの制御サイクルにおいて決定されたG*がG* oldと略同じ値となったときに、補正が終了する。つまりそのような補正の結果、図に太実線で示すように、あるの操作範囲において切替え直前の値を維持するように目標車両減速度G*が補正されるのである。
【0085】
以上説明した操作方向変更時の補正処理を行った後、本制御ルーチンでは、S25において、各ホイールシリンダ96の目標シリンダ液圧Pwc*が、先に決定されたあるいは決定されて補正された目標車両減速度G*に基づいて決定される。そして、S26において、目標シリンダ液圧Pwc*に基づくホイールシリンダ96の液圧制御がなされる。具体的に言えば、各ホイールシリンダ96のシリンダ液圧Pwcは、シリンダ液圧センサ146により検知されており、Pwc*とPwcとの偏差に基づいて車輪ブレーキ装置80が制御される。S25およびS26は、既に一般的な制御処理であるため、ここでの説明は省略する。
【0086】
以上、本実施形態の制動システムの制御について説明したが、先に示したように制御は制御装置14によって行われる。この制御装置14は、先に説明したように、ハード的にはブレーキ電子制御ユニット162を主体とするものである。この制御装置14を、便宜的に機能部分に分けてブロック図として示せば、図19のように示すことができる。以下、制御装置14の各機能部について簡単に説明する。
【0087】
制御装置14は、操作状態量であるマスタ圧Pm,ペダルストロークSTを取得する操作状態量取得部170を有しおり、操作状態量取得部170は、コンピュータ160の、マスタ圧センサ54,ストロークセンサ56,操作ON/OFFセンサ58からの検出信号を受ける入出力インターフェース156の一部分、前述のS12を実行する部分等を含んで構成されている。また、制御装置14は、目標制御値決定データ保有部172を有しており、前述したマップがコンピュータ160のROM166に格納されており、そのマップを格納する部分が、目標制御値決定データ保有部172を構成するものとされている。また、制御装置14は、ブレーキペダル20の操作方向を判定する部分として、操作方向判定部174を有している。この操作方向判定部174は、コンピュータ160の前記S12の操作方向判定サブルーチンを実行する部分を含んで構成されている。
【0088】
また、制御装置14は、操作状態量取得部170が取得した操作状態量と、目標制御値決定データ保有部172に保有されているデータと、操作方向判定部174によって判定された操作部材の操作方向に基づいて、目標制御値を決定する操作方向依拠目標制御値決定部176を有している。この操作方向依拠目標制御値決定部176は、コンピュータ160の前記S14〜S18を実行する部分を含んで構成されている。さらに、制御装置14は、操作方向依拠目標制御値決定部176によって決定された目標制御値を補正する目標制御値補正部178を有している。目標制御値補正部178は、コンピュータ160の前記S19〜S24を実行する部分を含んで構成されている。目標制御値補正部178は、それぞれが2つの互いに異なる方式による補正を行うところの、目標制御値維持補正部180と制御値差異漸減補正部182とを有している。目標制御値維持補正部180は、図17(b)および図18(b)に関して説明した処理を行う部分であり、また、制御値差異漸減補正部182は、図17(a)および図18(a)に関して説明した処理を行う部分である。さらにまた、制御装置14は、操作方向依拠目標制御値決定部176によって決定された目標制御値、あるいは、目標制御値補正部178によって補正された目標制御値に基づいて、制動装置10を制御する目標制御値依拠制御部184を有しており、この目標制御値依拠制御部184は、コンピュータ160の前記S26を実行する部分、駆動回路164,制御回路166等を含んで構成されている。
【0089】
<制御に関する変形態様>
上記実施形態の制動システムは、制御に関して、以下の変形態様で実施することもできる。その変形態様は、概して言えば、操作方向の判定に関して上述のものとは別の手法によって行うものである。図20に変形態様の制御に関する通常ブレーキ時制御ルーチンのフローチャートを示す。このフローチャートは、図11に示すものの一部を変更するものであり、同じ処理を行うステップについては、先のステップ番号と同じ番号を使用するものする。以下に、そのフローチャートに基づいて、変更された箇所を中心に簡単に説明し、同じ処理とされる箇所についての説明は省略する。
【0090】
変形態様の通常ブレーキ時制御ルーチンにおいては、S12においてマスタ圧Pm,ペダルストロークSTが取得された後、S15〜S18において、踏込方向の目標車両減速度Gfw *と、踏戻方向の目標車両減速度Gbw *との両者が決定される。上記実施形態のS15〜S18の処理と同じである。
【0091】
両方の目標車両減速度Gfw *,Gbw *が決定された後、S31の操作方向判定サブルーチンが実行される。図21に、変形態様における操作方向判定サブルーチンのフローチャートを示す。S31のサブルーチンでは、まず、S311において、踏込方向の目標車両減速度Gfw *に基づいて、ブレーキペダル20の操作方向が判定される。RAM152には、前回の本ルーチンの実行時の踏込方向目標車両減速度Gfw *である前回踏込方向目標車両減速度Gfwold *が記憶されており、具体的には、S311において、Gfw *がGfwold *より大きい場合に、踏込方向の操作であると判定される。Gfw *>Gfwold *の条件を満たす場合は、S312において、操作方向フラグDFが“fw”とされ、また、Gfw *>Gfwold *の条件を満たさない場合は、S313において、操作方向フラグDFが“bw”とされる。なお、本変形態様では、踏込方向目標車両減速度Gfw *に基づいて操作方向を判定したが、踏戻方向目標車両減速度Gbw *に基づいて判定を行うことも可能である。
【0092】
S31の踏込判定サブルーチンの実行後、S14において、操作方向フラグDFが判定され、“fw”の場合は、S32おいて、先に決定されている踏込方向目標車両減速度Gfw *が、目標車両減速度G*として採用され、“bw”の場合は、S33において、先に決定されている踏戻方向目標車両減速度Gbw *が、目標車両減速度G*として採用される。S32の後には、S19からのステップが実行され、S33の後には、S22からのステップが実行される。S19以後のステップについては、上記実施形態の場合と同様である。
【0093】
この変形態様の制御を行う制動システムにおいては、図19において示す操作方向判定部は、S15,S16,S31を実行する部分を含んで構成され、また、操作方向依拠目標制御値決定部176は、S15〜S18,S14,S32,S33を実行する分を含んで構成されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である車両用制動システムの全体構成を示す図である。
【図2】車両用制動システムの操作装置に設けられたストロークシミュレータの断面図である
【図3】車両用制動システムの制動装置を構成するところの、各車輪に設けられた車輪ブレーキ装置の一部断面図である。
【図4】車両用制動システムに設けられた制御装置において実行される目標車両減速度決定サブルーチンのフローチャートである。
【図5】ストローク対応目標車両減速度GST *を求めるためのST−GST *マップを模式的に示すグラフである。
【図6】マスタ圧対応目標車両減速度GPm *を求めるためのPm−GPm *マップを模式的に示すグラフである。
【図7】目標車両減速度G*を算出するための重み付け係数αを求めるための重み付け係数マップを模式的に示すグラフである。
【図8】踏込操作における目標車両減速度と踏戻操作における目標車両減速度が同じ値とされて制御されると仮定した場合において、低制動制御域の実際の車両減速度GとペダルストロークSTとの関係を模式的に示すグラフである。
【図9】踏込操作における目標車両減速度と踏戻操作における目標車両減速度が同じ値とされて制御されると仮定した場合において、高制動制御域の実際の車両減速度GとペダルストロークSTとの関係を模式的に示すグラフである。
【図10】ブレーキペダルの操作方向に依拠して目標車両減速度G*を異ならせた様子を模式的に示したグラフである。
【図11】車両用制動システムのブレーキ制御プログラムのうち通常ブレーキ時の制御ルーチンのフローチャートである。
【図12】通常ブレーキ時制御ルーチンにおいて実行される操作方向判定サブルーチンのフローチャートである。
【図13】通常ブレーキ時制御ルーチンにおいて実行される踏込切替処理サブルーチンのフローチャートである。
【図14】通常ブレーキ時制御ルーチンにおいて実行される踏込方向補正サブルーチンのフローチャートである。
【図15】通常ブレーキ時制御ルーチンにおいて実行される踏戻切替処理サブルーチンのフローチャートである。
【図16】通常ブレーキ時制御ルーチンにおいて実行される踏戻方向補正サブルーチンのフローチャートである。
【図17】操作方向が踏込方向へ切替えられた場合において、補正処理を行った結果での目標車両減速度G*の変化を模式的に示すグラフである。
【図18】操作方向が踏戻方向へ切替えられた場合において、補正処理を行った結果での目標車両減速度G*の変化を模式的に示すグラフである。
【図19】車両用制動システムが備える制御装置の制御機能に関する模式的な機能ブロック図である。
【図20】変形態様の制御において実行される通常ブレーキ時の制御ルーチンのフローチャートである。
【図21】変形態様の通常ブレーキ時制御ルーチンにおいて実行される操作方向判定サブルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
10:制動装置 12:操作装置 14:制御装置 20:ブレーキペダル(操作部材) 22:マスタシリンダ(シリンダ装置) 26:ストロークシミュレータ 40:車輪 50:ハウジング 52:ピストン 54:マスタ圧センサ 56:ストロークセンサ 60:シリンダハウジング 62:ピストン 80:車輪ブレーキ装置 82:ポンプ装置 84:電磁弁装置 90:マウンティングブラケット(摩擦摺接部材保持装置)94:ブレーキパッド(摩擦摺接部材) 96:ホイールシリンダ装置(摩擦摺接部材押付装置) 98:キャリパ 100:ディスクロータ(回転体) 108:シリンダ 110:ピストン 146:シリンダ液圧センサ 160:コンピュータ 162:ブレーキ電子制御ユニット(ブレーキECU) 170:操作状態量取得部 172:目標制御値決定データ保有部 174:操作方向判定部 176:操作方向依拠目標制御値決定部 178:目標制御値補正部 180:目標制御値維持補正部 182:制御値差異漸減補正部 184:目標制御値依拠制御部
Claims (12)
- 車両を制動する制動装置と、
前記車両の運転者によって、前記制動装置の制動力が増大する操作方向である制動力増大方向と、制動力が減少する操作方向である制動力減少方向とに操作される操作部材を有する操作装置と、
前記制動装置を制御するための目標制御値を、前記操作部材の操作状態量に基づいて決定し、その決定された目標制御値に基づいて前記制動装置を制御する制御装置と
を備えた車両用制動システムであって、
前記制御装置が、少なくとも一部の制御域において、前記操作部材が制動力増大方向に操作されるときの前記目標制御値である増大方向目標制御値と、制動力減少方向に操作されるときの前記目標制御値である減少方向目標制御値とを、互いに異なる値に決定する操作方向依拠目標制御値決定部を有することを特徴とする車両用制動システム。 - 前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記減少方向目標制御値を前記増大方向目標制御値より低い値に決定する減少方向低値決定を行うものである請求項1に記載の車両用制動システム。
- 前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記制動装置の制動力の低い制御域である低制動制御域において、前記減少方向低値決定を行うものである請求項2に記載の車両用制動システム。
- 前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記減少方向目標制御値を前記増大方向目標制御値より高い値に決定する減少方向高値決定を行うものである請求項1に記載の車両用制動システム。
- 前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記制動装置の制動力の高い制御域である高制動制御域において、前記減少方向高値決定を行うものである請求項4に記載の車両用制動システム。
- 前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記制動装置の制動力の低い制御域である低制動制御域において、前記減少方向目標制御値を前記増大方向目標制御値より低い値に決定する減少方向低値決定を行い、かつ、前記制動装置の制動力の高い制御域である高制動制御域において、前記減少方向目標制御値を前記増大方向目標制御値より高い値に決定する減少方向高値決定を行うものである請求項1に記載の車両用制動システム。
- 前記操作方向依拠目標制御値決定部が、前記操作部材の操作方向の切替えである操作方向切替えが行われた際、その操作方向切替えの時点において、前記増大方向目標制御値と前記減少方向目標制御値との間の差異である制御値差異が存在する場合に、その制御値差異に起因する前記目標制御値の急変を緩和すべく補正を行う目標制御値補正部を有する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用制動システム。
- 前記制御装置が、前記目標制御値として目標車両減速度を決定し、その目標車両減速度に基づいて前記制動装置を制御するものである請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の車両用制動システム。
- 前記制御装置が、液体を収容したシリンダと、前記操作部材に連係させられて前記液体を加圧するピストンとを有するシリンダ装置と、前記シリンダ装置と連係して前記操作部材の前記操作力に応じた操作量を生じさせるストロークシミュレータとを備え、前記操作状態量として、少なくとも前記液体の圧力に基づいて、前記目標制御置を決定するものである請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の車両用制動システム。
- 前記制動装置が摩擦制動装置を備えた請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の車両用制動システム。
- 前記摩擦制動装置が液圧式摩擦制動装置である請求項10に記載の車両用制動システム。
- 前記摩擦制動装置が、車輪と一体的に回転する回転体と、その回転体と摺接することにより摩擦力を発生させる摩擦摺接部材と、その摩擦摺接部材を前記回転体に対して接近・離間可能に保持する摩擦摺接部材保持装置と、ピストンと作動液体を収容するシリンダとを有して前記作動液体の圧力により前記摩擦摺接部材を前記回転体に押付ける押付シリンダ装置を有する請求項11に記載の車両用制動システム。
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