JP2004322337A - インクジェット記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】他のインク受容性能を低下させることなく、経時ニジミの発生を抑制し、耐オゾン性に優れるインクジェット記録媒体を提供する。
【解決手段】支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録媒体であって、前記色材受容層が、無機微粒子と、水溶性樹脂と、架橋剤と、イオウ原子を含有するシランカップリング剤とを含むインクジェット記録媒体である。該シランカップリング剤としては、メルカプト基を含むことが好ましい。あるいは、下記一般式(1)、(2)で表される化合物であることが好ましい。
(X)3−Si−(Y)−(S)n−(Y)−Si−(X)3 …一般式(1)
(X)3−Si−(Y1)−(S−(Y2))m−S−(Y1)−Si−(X)3 …一般式(2)
[X:アルコキシ基、Y、Y1、Y2:置換基を有していてもよいアルキレン基、n:1〜9、m:0〜10。Y1、Y2は同じであっても異なっていてもよい。]
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録媒体であって、前記色材受容層が、無機微粒子と、水溶性樹脂と、架橋剤と、イオウ原子を含有するシランカップリング剤とを含むインクジェット記録媒体である。該シランカップリング剤としては、メルカプト基を含むことが好ましい。あるいは、下記一般式(1)、(2)で表される化合物であることが好ましい。
(X)3−Si−(Y)−(S)n−(Y)−Si−(X)3 …一般式(1)
(X)3−Si−(Y1)−(S−(Y2))m−S−(Y1)−Si−(X)3 …一般式(2)
[X:アルコキシ基、Y、Y1、Y2:置換基を有していてもよいアルキレン基、n:1〜9、m:0〜10。Y1、Y2は同じであっても異なっていてもよい。]
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インク(色材として染料または顔料を用いたもの)、油性インク等の液状インクや、常温では固体であり、溶融液状化させて印画に供する固体状インク等を用いたインクジェット記録に適した被記録材に関し、詳しくは、インク受容性能に優れたインクジェット記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報システムに適した記録方法および装置も開発され、各々実用化されている。
上記記録方法の中で、インクジェット記録方法は、多種の記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価であること、コンパクトであること、静粛性に優れること等の点から、オフィスは勿論、いわゆるホームユースにおいても広く用いられてきている。
【0003】
また、近年のインクジェットプリンタの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になっており、このようなハード(装置)の発展に伴って、インクジェット記録用シート(インクジェット記録媒体)も各種開発されてきている。
上記インクジェット記録用シートに要求される特性としては、一般的に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐光性、耐水性が良好なこと、(8)記録シートの白色度が高いこと、(9)記録シートの保存性が良好なこと(長期保存で黄変着色を起こさないこと)、(10)変形しにくく、寸法安定性が良好であること(カールが十分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること等が挙げられる。更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途としては、上記特性に加えて、光沢性、表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も要求される。
【0004】
上記各特性の向上を目的として、近年では色材受容層に多孔質構造を有するインクジェット記録用シートが開発され実用化されている。該インクジェット記録用シートは多孔質構造を有することで、インク吸収性(速乾性)に優れ、高い光沢を有する。
【0005】
微細な無機顔料粒子および水溶性樹脂を含有し、高い空隙率を持つ色材受容層が支持体上に設けられたインクジェット記録用シートが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
これらのインクジェット記録用シート、特に、上記無機顔料微粒子としてシリカを用いた多孔質構造からなる色材受容層を設けたインクジェット記録用シートは、その構成によりインク吸収性に優れ、高解像度の画像を形成しうる高いインク受容性能を有しかつ高光沢を示す。しかし、印画後、高温高湿環境下に長時間保存されると、色材受容層中で該溶媒が染料と共に拡散して、経時による画像のニジミ(いわゆる「経時ニジミ」)を生ずるといった問題がある。
【0006】
また、空気中の微量ガス、特にオゾンは、経時による記録画像の褪色の原因となる。多孔質構造の色材受容層を有する記録材料は多くの空隙を有することから空気中のオゾンガスによって記録画像が褪色しやすい。このため、上記多孔質構造の色材受容層を有する記録材料にとって空気中のオゾンに対する耐性(耐オゾン性)は非常に重要である。
【0007】
かかるオゾンによる褪色を防止するために、アルミナ水和物を含む多孔質層に、MgイオンおよびSCNイオンを含有するインクジェット記録媒体が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。該インクジェット記録媒体は、MgイオンとSCNイオンとを多孔質層に含有させることで、耐光性や耐オゾン性を向上させている。しかし、上記インクジェット記録用シートでは、耐光性や耐オゾン性は向上するものの、経時ニジミの発生を同時に防ぐことはできない。
【0008】
また、ジオカルバミン酸塩、チウラム塩、チオシアン酸エステル類、チオシアン酸塩、およびヒンダードアミン化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物を含有する多孔質インク受理層を有する記録用シートが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。上記ヒンダードアミン化合物の具体例としては、ピペリジンの2位および6位における炭素上の全ての水素が、メチル基で置換された構造を有するものが挙げられており、この記録シートは、上記化合物を1種以上含有することで、空気中の微量ガスによる記録画像の褪色を防止している。しかし、上記記録シートでは経時ニジミの発生を充分に抑制することができない。
【0009】
経時ニジミの発生を抑制し、耐オゾン性を向上させることを目的として、チオエーテル系化合物を含有したインクジェット記録用シート等が開示されている(例えば、特許文献5〜9参照。)。しかし、いずれもチオエーテル系化合物の例示化合物が水不溶性であるため、塗布液に混入することが難しく、乳化物等として添加せざるを得ない。このように、チオエーテル系化合物を乳化物として添加すると、粒径が大きいことからインクジェット記録用シートの光沢性が低下してしまう。また、チオエーテル系化合物を添加したのみでは、低温環境下、例えば、5℃以下の環境下で1週間程度経過するとチオエーテル系化合物が記録シート表面に析出するといった問題もある。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−119423号公報
【特許文献2】
特開平10−217601号公報
【特許文献3】
特開平2000−177235号公報
【特許文献4】
特開平7−314882号公報
【特許文献5】
特開昭64−36479号公報
【特許文献6】
特開平1−97678号公報
【特許文献7】
特開平1−115677号公報
【特許文献8】
特開2000−26178号公報
【特許文献9】
特開2002−36717号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、色材受容層が、ひび割れ等の発生がなく強固である一方、良好なインク吸収性を有し高解像度な画像が形成できると共に、その形成画像が耐光性、耐水性、耐経時ニジミ、光沢性に優れるといったインク受容性能を備えながら、彩色が鮮やかで高濃度のインクジェット記録画像をそのままの状態で長期間より安定に保存可能な画像保存性能を備え、さらに、析出物の発生を防止したインクジェット記録用シートは、未だ提供されていないのが現状である。
【0012】
本発明は、上記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、他のインク受容性能を低下させることなく、経時ニジミの発生を抑制し、耐オゾン性に優れるインクジェット記録媒体を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
【0014】
<1> 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録媒体であって、前記色材受容層が、無機微粒子と、水溶性樹脂と、架橋剤と、イオウ原子を含有するシランカップリング剤とを含むことを特徴とするインクジェット記録媒体である。
<2> 前記シランカップリング剤が、メルカプト基を含むことを特徴とする前記<1>に記載のインクジェット記録媒体である。
<3> 前記シランカップリング剤が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記<1>に記載のインクジェット記録媒体である。
(X)3−Si−(Y)−(S)n−(Y)−Si−(X)3 …一般式(1)
[一般式(1)中、Xはアルコキシ基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、nは1〜9の整数を表す。]
<4> 前記シランカップリング剤が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする前記<1>に記載のインクジェット記録媒体である。
(X)3−Si−(Y1)−(S−(Y2))m−S−(Y1)−Si−(X)3 …一般式(2)
[一般式(2)中、Xはアルコキシ基を表し、Y1、Y2は置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、mは0〜10の整数を表す。Y1、Y2は同じであっても異なっていてもよい。]
<5> 前記色材受容層が、さらに、金属塩を含むことを特徴とする前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクジェット記録媒体である。
<6> 前記色材受容層が、無機微粒子、水溶性樹脂、及び前記シランカップリング剤を含む塗布液を支持体上に塗布し、該塗布と同時に、又は該塗布した層が減率乾燥速度を示すようになる前に、該塗布層にpHが8以上の溶液を付与し硬化させることにより得られることを特徴とする前記<1>から<5>のいずれかに記載のインクジェット記録媒体である。
【0015】
【発明の実施の形態】
《インクジェット記録媒体》
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録媒体であって、前記色材受容層が、無機微粒子と、水溶性樹脂と、架橋剤と、イオウ原子を含有するシランカップリング剤とを含むことを特徴としている。
【0016】
本発明のインクジェット記録媒体は、イオウ原子を含有するシランカップリング剤を色材受容層に含むことで、耐オゾン性を向上させることができるとともに、経時ニジミの発生を抑制することができる。また、色材受容層に、気相法シリカ、ポリビニルアルコール、ホウ素化合物および媒染剤を併用することで、光沢度、インク吸収性、耐経時ニジミ、耐光性、印画濃度(最高濃度)等を向上させることができる。
【0017】
〈色材受容層〉
本発明のインクジェット記録媒体の色材受容層は、上述のように、無機微粒子と、水溶性樹脂と、架橋剤と、イオウ原子を含有するシランカップリング剤と、該化合物を架橋させうる架橋剤と、を少なくとも有し、さらに、各種添加剤などを含んでいてもよい。
【0018】
(イオウ原子を含有するシランカップリング剤)
色材受容層には、イオウ原子を含有するシランカップリング剤(以下、単に「シランカップリング剤」という場合がある。)を含有する。前述の通り、該シランカップリング剤を含有することにより、耐オゾン性を向上させることができるとともに経時ニジミの発生を抑制することができる。
【0019】
前記シランカップリング剤は、メルカプト基を含むシランカップリング剤であることが好ましい。このようなシランカップリング剤としては、例えば、以下のA1〜A3で表されるシランカップリング剤が挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】
また、前記シランカップリング剤としては、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるシランカップリング剤であることが好ましい。
【0022】
(X)3−Si−(Y)−(S)n−(Y)−Si−(X)3 …一般式(1)
[一般式(1)中、Xはアルコキシ基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、nは1〜9の整数を表す。]
【0023】
(X)3−Si−(Y1)−(S−(Y2))m−S−(Y1)−Si−(X)3 …一般式(2)
[一般式(2)中、Xはアルコキシ基を表し、Y1、Y2は置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、mは0〜10の整数を表す。Y1、Y2は同じであっても異なっていてもよい。]
【0024】
前記一般式(1)、(2)中、Xが表すアルコキシル基は、上記アルコキシル基としては炭素数1〜4のアルコキシル基が好ましく、炭素数1〜2のアルコキシル基が特に好ましい。該アルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0025】
前記一般式(1)、(2)中、Y、Y1、Y2が表すアルキレン基の炭素数としては、1〜10が好ましく、1〜5がさらに好ましい。
【0026】
前記Y、Y1、Y2が置換基を有する場合、該置換基としては、アルキル基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基またはヨード基等のハロゲン;ヒドロキシ基;メトキシ基またはエトキシ基等のアルコキシル基;カルボキシ基およびその塩;アシル基;アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、アセトアミド基、カルバモイル基、オキサモイル基またはシアノ基等の窒素を含む基;チオシアナト基、チオホルミル基、チオアセチル基、メチルチオ基、メチルスルホニル基またはメチルスルフィニル基等の硫黄を含む基;チオカルバモイル基;スルファモイル基;スルホアミノ基等が挙げられる。上記置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボン酸塩、アミノ基が好ましい。
【0027】
一般式(1)中、nは前述の通り1〜9の整数であるが、好ましく3〜5であり、より好ましくは4である。また、一般式(2)中、mは前述の通り1〜10の整数であるが、好ましくは1〜9であり、より好ましくは1〜4である。
【0028】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例(B1〜B9)を示す。なお、以下のB1〜B9のBの右側の数字は、nの数に対応している。すなわち、例えば、B2の場合n=2であり、B5の場合n=5である。
【0029】
【化2】
【0030】
また、上記一般式(2)で表される化合物の具体例(C1〜C3)を示す。
【0031】
【化3】
【0032】
本発明において、前記シランカップリング剤の含有量としては、色材受容層の全固形分質量に対して、0.2〜20質量%が好ましく、0.4〜10質量%がより好ましい。該シランカップリング剤の含有量を0.2〜20質量%とすることにより、耐オゾン性が良好で、また経時ニジミの少ない色材受容層が得られる。シランカップリング剤が上記範囲よりも少ないと耐オゾン性向上の効果が不十分となることがあり、また、上記範囲を超えると塗布液調製時の増粘が生じやすくなることがある。
【0033】
(無機微粒子)
本発明のインクジェット記録媒体では、その色材受容層が多孔質構造を形成する為に無機微粒子を用いる。無機微粒子を含有することにより多孔質構造が得られ、これによりインクの吸収性能が向上する。特に、該無機微粒子の色材受容層における固形分含有量が50質量%以上、より好ましくは60質量%を超えていると、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、十分なインク吸収性を備えたインクジェット記録媒体が得られるので好ましい。ここで、無機微粒子の色材受容層における固形分含有量とは、色材受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
【0034】
上記無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも良好な多孔質構造を形成する観点より、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子又は擬ベーマイトが好ましい。微粒子は1次粒子のまま用いても、又は2次粒子を形成した状態で使用してもよい。これら微粒子の平均一次粒径は2μm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
更に、平均一次粒径が20nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が30nm以下のコロイダルシリカ、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、又は平均細孔半径が2〜15nmの擬ベーマイトがより好ましく、特にシリカ微粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが好ましい。
【0035】
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。本発明に用いるシリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
【0036】
上記気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0037】
上記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散をおこなえば色材受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。色材受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0038】
上記気相法シリカの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。上記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0039】
また、シリカ微粒子は、前述の他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0040】
本発明に係る無機微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物又は複合物も好ましい。この内、アルミナ水和物は、インクをよく吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al2O3・nH2O)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
【0041】
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜30nmが好ましく、2〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0ml/gが好ましく、0.5〜1.5ml/gがより好ましい。ここで、上記細孔半径及び細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)により測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では気相法アルミナ微粒子が比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
【0042】
上述の無機微粒子をインクジェット記録媒体に用いる場合は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
【0043】
(水溶性樹脂)
本発明のインクジェット記録媒体では、その色材受容層が多孔質構造を形成する為に前述の無機微粒子と共に水溶性樹脂を用いる。
【0044】
上記水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕、水溶性ウレタン樹脂、水分散性ウレタン樹脂等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0045】
以上の中でも、特にポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。該ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号等に記載されたもの等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11−165461号公報の段落番号[0011]〜[0014]に記載の化合物なども挙げられる。
これら水溶性樹脂はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0046】
本発明において、水溶性樹脂の含有量としては、色材受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
【0047】
本発明において、色材受容層を主として構成する、前述の無機微粒子と水溶性樹脂とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。
尚、透明性を保持する観点からは、無機微粒子、特にシリカ微粒子に組み合わされる水溶性樹脂の種類が重要となる。前記気相法シリカを用いる場合には、該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
【0048】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造の色材受容層を形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質の色材受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0049】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、前記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂と上記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0050】
《無機微粒子と水溶性樹脂との含有比》
無機微粒子(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x/y)〕は、色材受容層の膜構造及び膜強度にも大きな影響を与える。即ち、質量含有比〔PB比〕が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。
【0051】
本発明において、色材受容層は、上記質量含有比〔PB比(x/y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5〜10が好ましい。
【0052】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、インクジェット記録用シート(インクジェット記録媒体)に応力が加わることがあるので、色材受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。またシート状に裁断加工する場合、色材受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、色材受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。これらの場合を考慮すると、前記質量比(x/y)としては5以下がより好ましく、一方インクジェットプリンターで、高速インク吸収性を確保する観点からは、2以上であることがより好ましい。
【0053】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子と水溶性樹脂とを、質量比(x/y)2〜5で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0054】
(架橋剤)
上記の水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールを架橋する架橋剤としては、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二硼酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2O)、五硼酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0055】
上記水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
【0056】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
上記の架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0057】
上記ホウ素化合物を付与する際、その溶液はホウ素化合物を水および/または有機溶剤に溶解して調製される。
上記ホウ素化合物溶液中のホウ素化合物の濃度としては、ホウ素化合物溶液の質量に対して、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜7質量%が特に好ましい。
ホウ素化合物溶液を構成する溶媒としては、一般に水が使用され、該水と混和性を有するの有機溶媒を含む水系混合溶媒であってもよい。
上記有機溶剤としては、ホウ素化合物が溶解するものであれば任意に使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;トルエン等の芳香族溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル、およびジクロロメタン等のハロゲン化炭素系溶剤等を挙げることができる。
【0058】
(媒染剤)
本発明においては、形成画像の耐水性、耐経時ニジミの更なる向上を図るために、色材受容層に媒染剤が含有される。
上記媒染剤としてはカチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)が好ましく、該媒染剤を色材受容層中に存在させることにより、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用し色材を安定化し、耐水性や経時ニジミを向上させることができる。
【0059】
しかし、これを直接色材受容層を形成するための塗布液に添加すると、アニオン電荷を有する気相法シリカとの間で凝集を生ずる懸念があるが、独立の別の溶液として調製し塗布する方法を利用すれば、無機顔料微粒子の凝集を懸念する必要はない。よって、本発明においては、上記気相法シリカ(無機微粒子)とは別の溶液(例えば、架橋剤溶液)に含有して用いることが好ましい。
【0060】
上記カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、または第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
上記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染モノマー」という。)との共重合体または縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー、または水分散性のラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0061】
上記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、
【0062】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート、
【0063】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、またはそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0064】
具体的には、例えば、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、
【0065】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0066】
また、アリルアミン、ジアリルアミンやその誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)が挙げられる。尚、これらのアリルアミンおよびジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、およびこれを塩にしたものも利用できる。
【0067】
上記非媒染モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
上記非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0068】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
上記非媒染モノマーも、一種単独で、または二種以上組合せて使用できる。
【0069】
更に、ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン等も好ましいものとして挙げることができる。
【0070】
上記ポリマー媒染剤の分子量としては、重量平均分子量で1000〜100000が好ましく、重量平均分子量で3000〜60000がさらに好ましい。上記分子量が1000〜100000の範囲にあると、耐水性が不十分となることがなく、また、粘度が高くなりすぎてハンドリング適性が低下するのを防止できる。
本発明における媒染剤としては、耐水性、インク吸収速度、光沢度、耐オゾン性の点から重量平均分子量が100000以下のポリアリルアミンおよびその誘導体が特に好ましい。
【0071】
(金属塩)
本発明においては、色材受容層に金属塩を含むことが好ましい。金属塩を含有させることにより、経時ニジミの防止、耐水性の向上を図ることができる。金属塩としては、多価の水溶性金属塩や疎水性金属塩化合物が挙げられる。
具体例としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩又は錯体が挙げられる。
【0072】
金属塩としてさらに具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリん酸n水和物、硝酸ガリウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等があげられる。
【0073】
本発明において、金属塩としては、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩または錯体)が好ましい。
本発明で色材受容層に含まれる上記金属塩の含有量は、0.01g/m2〜5g/m2が好ましく、0.1g/m2〜3g/m2がより好ましい。
【0074】
(他の成分)
色材受容層は、必要に応じて下記成分を含んでいてもよい。
色材の劣化を抑制する目的で、各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤を含んでいてもよい。
上記紫外線吸収剤としては、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾリルフェノール誘導体等が挙げられる。例えば、α−シアノ−フェニル桂皮酸ブチル、o−ベンゾトリアゾールフェノール、o−ベンゾトリアゾール−p−クロロフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−ブチルフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−オクチルフェノール等が挙げられる。ヒンダートフェノール化合物も紫外線吸収剤として使用でき、具体的には少なくとも2位または6位のうち1ヵ所以上が分岐アルキル基で置換されたフェノール誘導体が好ましい。
【0075】
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等も使用できる。例えば、特開昭47−10537号公報、同58−111942号公報、同58−212844号公報、同59−19945号公報、同59−46646号公報、同59−109055号公報、同63−53544号公報、特公昭36−10466号公報、同42−26187号公報、同48−30492号公報、同48−31255号公報、同48−41572号公報、同48−54965号公報、同50−10726号公報、米国特許第2,719,086号明細書、同3,707,375号明細書、同3,754,919号明細書、同4,220,711号明細書等に記載されている。
【0076】
蛍光増白剤も紫外線吸収剤として使用でき、例えば、クマリン系蛍光増白剤等が挙げられる。具体的には、特公昭45−4699号公報、同54−5324号公報等に記載されている。
【0077】
上記酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同309402号公報、同310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同62−262047号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同66−88381号公報、同63−113536号公報、
【0078】
同63−163351号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、特開平2−262654号公報、同2−71262号公報、同3−121449号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−61166号公報、同5−119449号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−43295号公報、同48−33212号公報、米国特許第4814262号、同第4980275号公報等に記載のものが挙げられる。
【0079】
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4,−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
【0080】
上記褪色性防止剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。この上記褪色性防止剤は、水溶性化、分散、エマルション化してもよく、マイクロカプセル中に含ませることもできる。
上記褪色性防止剤の添加量としては、色材受容層塗布液の0.01〜10質量%が好ましい。
【0081】
また、無機顔料微粒子の分散性を高める目的で、各種無機塩類、pH調整剤として酸やアルカリ等を含んでいてもよい。
更に、表面の摩擦帯電や剥離帯電を抑制する目的で、電子導電性を持つ金属酸化物微粒子を、表面の摩擦特性を低減する目的で各種のマット剤を含んでいてもよい。更に、塗膜に柔軟性を与える目的でエマルジョン、ラテックス樹脂を含んでもよい。
【0082】
(インクジェット記録用シート(インクジェット記録媒体)の作製)
色材受容層は、無機微粒子と分散剤とからなる水分散物に、少なくとも水溶性樹脂、及び前記シランカップリング剤を含有する溶液を添加し再分散して得られる塗布液(色材受容層用塗布液)を支持体上に塗布し、該塗布と同時に、又は塗布した層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に、該塗布層にpHが8以上の溶液(架橋剤溶液)を付与した後、該溶液を付与した塗布層を架橋硬化させる方法(WOW法;Wet On Wet法)により形成されることが好ましい。当該方法において上記水分散物のpHは4.5以下であり酸性を示す。
【0083】
上記分散剤としては、カチオン性のポリマーを用いることが好ましい。カチオン性ポリマーとしては、上述の媒染剤の例として挙げた、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基を有する単量体の単独重合体や、該単量体と他のモノマーとの共重合体または縮重合体として得られるものを好適に使用することができる。また、これらの分散剤は、水溶性ポリマーの形態で使用するのが好ましい。
【0084】
上記分散剤の分子量は、重量平均分子量で1000〜200000が好ましく、3000〜60000がさらに好ましい。該分子量が1000より小さいと分散性に劣る場合があり、200000を超えると水分散物の粘度が高くなる場合がある。上記分散剤の気相法シリカに対する添加量は、1%〜30%が好ましく、3%〜20%がさらに好ましい。該添加量が、1%未満では分散性に劣る場合があり、30%を超えるとインクジェット記録媒体に印画した際、色濃度が低下することがあるため好ましくない。
【0085】
また、上記無機微粒子(気相法シリカ)と分散剤とからなる水分散剤の調製は、気相法シリカ水分散液をあらかじめ調製し、該水分散液を分散剤水溶液に添加してもよいし、分散剤水溶液を気相法シリカ水分散液に添加してよいし、同時に混合してもよい。また、気相法シリカ水分散液ではなく、粉体の気相法シリカを用いて上記のように分散剤水溶液に添加してもよい。
上記の気相法シリカと分散剤とを混合した後、該混合液を分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径50〜300nmの水分散液を得ることができる。該水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体攪拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的におこなうという点から、コロイドミル分散機、媒体攪拌型分散機、または高圧分散機が好ましい。
【0086】
また、本発明のインクジェット記録媒体の色材受容層は、色材受容層用塗布液と、架橋剤溶液とを、架橋剤と反応しない材料からなるバリアー液(但し、架橋剤を含む溶液若しくはバリアー液の少なくとも一方に媒染剤を含有させる。)を挟んだ状態で支持体上に同時塗布し、硬化させることによって得ることもできる。
【0087】
上記色材受容層塗布液には、必要に応じて、更に界面活性剤、pH調整剤、帯電防止剤等を添加することもできる。
色材受容層塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコータ、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法によりおこなうことができる。
【0088】
色材受容層用塗布液を塗布した後、該塗布層に架橋剤溶液が付与されるが、該架橋剤溶液は、塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に付与してもよい。即ち、色材受容層用塗布液の塗布後、この塗布層が恒率乾燥速度を示す間に架橋剤と媒染剤とを導入することで好適に製造される。
【0089】
ここで、「塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前」とは、通常、色材受容層塗布液の塗布直後から数分間を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤の含有量が時間に比例して減少する現象である恒率乾燥速度を示す。該恒率乾燥速度を示す時間については、化学工学便覧(p.707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0090】
上述の通り、色材受容層塗布液の塗布後、その塗布層が減率乾燥速度を示すようになるまで乾燥されるが、該乾燥は一般に50〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが上記範囲が適当である。
【0091】
上記塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に付与する方法としては、(1)架橋剤溶液を塗布層上に更に塗布する方法、(2)スプレー等の方法によって噴霧する方法、(3)架橋剤溶液中に、該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0092】
上記方法(1)において、架橋剤溶液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコータ、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコーター、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコータ、カーテンフローコータ、バーコータ等のように、既に形成されている塗布層にコータが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0093】
色材受容層上に付与する、架橋剤(例えば、ホウ素化合物)と媒染剤とを少なくとも含有する架橋剤溶液の塗布量としては、ホウ素化合物換算で0.01〜10g/m2が一般的であり、0.05〜5g/m2が好ましい。
【0094】
該架橋剤溶液の付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥および硬化が行われる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。
例えば、上記架橋剤溶液中に含有するホウ素化合物として硼砂や硼酸を使用する場合には、60〜100℃での加熱を5〜20分間行うことが好ましい。
【0095】
また、上記架橋剤溶液は、色材受容層塗布液を塗布すると同時に付与してもよい。
この場合、色材受容層塗布液および架橋剤溶液を、該色材受容層塗布液が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることにより色材受容層を形成することができる。
【0096】
上記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコータ、カーテンフローコータを用いた塗布方法によりおこなうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することによりおこなわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行われる。
例えば、架橋剤溶液に含有するホウ素化合物として硼砂や硼酸を使用する場合は、60〜100℃で5〜20分間加熱することが好ましい。
【0097】
上記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコータによりおこなった場合、同時に吐出される二種の塗布液は、エクストルージョンダイコータの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、支持体に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコータの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、上記のように同時塗布する際は、色材受容層塗布液および架橋剤溶液の塗布と共に、更にホウ素化合物と反応しない材料からなるバリアー層液(中間層液)を上記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
【0098】
上記バリアー液は、架橋剤と反応せず液膜を形成できるものであれば、特に制限なく選択することができる。例えば、架橋剤と反応しない水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。上記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。
尚、バリアー液には、上記媒染剤を含有させることもできる。
【0099】
また、各工程における溶媒として水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0100】
支持体上に色材受容層を形成した後、該色材受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性および塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定しておこなう必要がある。
【0101】
カレンダー処理をおこなう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
【0102】
上記色材受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。
この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、色材受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0103】
また、色材受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
上記空隙率および細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0104】
また、色材受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、色材受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
【0105】
(支持体)
上記支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。色材受容層の透明性を生かす上では、透明支持体または高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。また、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスクを支持体として用い、レーベル面側に色材受容層を付与することができる。
【0106】
上記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、ポリエチレンテレフタレートは特に好ましい。
上記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜200μmが好ましい。
【0107】
高光沢性の不透明支持体としては、色材受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙および板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
【0108】
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、上記各種紙支持体、上記透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体が挙げられる。
白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。さらに銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
【0109】
上記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0110】
また、上記支持体には、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0111】
次に、上記レジンコート紙に用いられる原紙について詳述する。
上記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
但し、LBSPおよび/またはLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0112】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0113】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0114】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0115】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0116】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、上記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0117】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0118】
特に、色材受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広くおこなわれているように、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度および色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上に色材受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、水性ウレタン、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
【0119】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0120】
以上のように、無機微粒子、水溶性樹脂、架橋剤、及び前記シランカップリング剤を色材受容層に有することで、他のインク受容性能を低下させることなく、経時ニジミの発生および析出物の発生を抑制し、耐オゾン性を向上させることができる。
【0121】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」および「%」は、全て「質量部」および「質量%」を表す。
【0122】
−支持体の作製−
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/m2の原紙を抄造した。
【0123】
上記原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(Whitex BB,住友化学工業(株)製)を0.04%添加し、これを絶乾質量換算で0.5g/m2となるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、さらにキャレンダー処理を施して密度1.05に調整された基紙を得た。
【0124】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理をおこなった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層にさらにコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)と二酸化ケイ素(スノーテックスO、日産化学工業(株)製)とを1:2の比(質量比)で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
【0125】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、および蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有する、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み29μmとなるように溶融押し出しし、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。
【0126】
[実施例1]
−色材受容層用塗布液の調製−
下記組成中の(a)気相法シリカ微粒子、(b)分散剤、及び(c)イオン交換水を混合し、高速回転式コロイドミル(クレアミックス、エム・テクニック(株)製)を用いて、回転数10000rpmで20分間分散させた後、下記(d)架橋剤、(e)ポリビニルアルコール、(f)ジエチレングリコールモノブチルエーテル、(g)前記化合物A1(シランカップリング剤)、(h)水溶性金属化合物、及び(i)と(j)の界面活性剤を加え、更に上記と同一の条件で分散を行い、目的とする色材受容層用塗布液を調製した。
【0127】
〔色材受容層用塗布液の組成〕
(a)気相法シリカ微粒子(無機顔料微粒子) 100.0kg
((株)トクヤマ製の「レオロシールQS−30」平均一次粒子径7nm)
(b)分散剤 15.0kg
(三洋化成工業(株)製の「ケミスタット7005」、40%)
(c)イオン交換水 575.3kg
(d)架橋剤
硼酸(5.3%水溶液) 77.4kg
(e)水溶性樹脂(PVA) 317.2kg
((株)クラレ製、PVA124、7%水溶液)
(f)ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.6kg
(g)化合物A1(25%メタノール溶液) 12.5kg
(信越化学工業(株)製、KBM803)
(h)水溶性金属塩(ZrO2として25%水溶液) 12.4kg
(第一稀元素化学工業(株)ジルコゾールZA−30、酢酸ジルコニル)
(i)界面活性剤(ポリオキシエチレンオレイルエーテル) 9.3kg
(花王(株)製の「エマルゲン109P」、10%溶液)
(j)界面活性剤(フッ素系界面活性剤) 6.0kg
(大日本インキ化学工業(株)製の「メガファックF−1405」、10%水溶液)
【0128】
−インクジェット記録用シート(インクジェット記録媒体)の作製−
前記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行った後、上記で得られた色材受容層用塗布液を、支持体のオモテ面にエクストルージョンダイコーターを用いて170ml/m2の塗布量で塗布し(塗布工程)、熱風乾燥機にて40℃(風速5m/sec)で塗布層の固形分濃度が18%になるまで乾燥させた。塗布層は、この期間恒率乾燥速度を示した。その直後、下記組成からなる塩基性塗布液(pH:9.3)に浸漬して、上記塗布層上にその20g/m2を付着させ、更に温度を80℃で10分間乾燥させた。これにより、乾燥膜厚35μmの色材受容層が得られた。
【0129】
〔塩基性塗布液の組成〕
▲1▼硼酸(100%) 6.5kg
▲2▼イオン交換水 723.5kg
▲3▼塩基性媒染剤 150.0kg
(日東紡績(株)製の「PAA−03」、20%水溶液)
▲4▼表面pH調節剤(塩化アンモニウム、100%) 1.0kg
▲5▼表面pH調節剤(p−トルエンスルホン酸、100%) 18.0kg
▲6▼界面活性剤 100.0kg
(花王(株)製の「エマルゲン109P、2%水溶液」)
▲7▼界面活性剤 2.0kg
(大日本インキ化学工業(株)製の「メガファックF−1405」、100%)
【0130】
[実施例2]
実施例1の色材受容層用塗布液の調製において、(h)水溶性金属塩を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット記録用シートを作製した。
【0131】
[実施例3]
実施例1の色材受容層用塗布液の調製において、(g)化合物A1を、前記化合物B4(信越化学工業(株)製、KBE846)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のインクジェット記録用シートを作製した。
【0132】
[実施例4]
実施例1の色材受容層用塗布液の調製において、(g)化合物A1を、前記化合物C2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のインクジェット記録用シートを作製した。
【0133】
[比較例1]
実施例1の色材受容層用塗布液の調製において、(g)化合物A1、及び▲8▼水溶性金属塩を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット記録用シートを作製した。
【0134】
[比較例2]
実施例1の色材受容層用塗布液の調製において、(g)化合物A1の代わりに、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット記録用シートを作製した。
【0135】
<性能評価>
上記より得られた実施例1〜4のインクジェット記録用シート、及び比較例1〜3のインクジェット記録用シートのそれぞれについて、以下の評価をおこなった。評価結果は、下記表1に示す。
【0136】
(耐オゾン性)
インクジェットプリンター(PM−900C、セイコーエプソン(株)製)によって、インクジェット記録用シートにシアンのベタ画像を印画し、オゾン濃度3ppmの環境下で2時間保管した。保管前と保管後とのシアン濃度を測定し、該シアン濃度の残存率を算出した。
【0137】
(経時ニジミ)
各インクジェット記録用シート上に、前記インクジェットプリンター(PM−900C)を用いてマゼンタインクとブラックインクとを隣り合わせにした格子状の線状パターン(線幅0.28mm)を印画した。印画後3時間放置した後、40℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に3日間保管し、ブラック部分の線幅を測定して下記基準に従い評価した。
〔基準〕
AA: 経時ニジミの発生はほとんど認められず、良好であった。
(線幅:0.28〜0.30mm)
BB: 若干の経時ニジミが認められたが、実用上問題ないレベルであった。
(線幅:0.31〜0.35mm)
CC: 経時ニジミが顕著に認められ、実用上問題となるレベルであった。
(線幅:0.35mm以上)
【0138】
(印画濃度)
前記インクジェットプリンター(PM−900C)によって、インクジェット記録用シートにK(黒)のベタ画像を印画し、3時間放置後、該印画面の反射濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0139】
(光沢度)
印画前のインクジェット記録用シートの色材受容層表面における60°光沢度を、デジタル変角光沢度計(UGV−50DP,スガ試験機(株)製)にて測定した。
【0140】
(耐水性)
前記インクジェットプリンター(PM−900C)によって、Y(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)、B(青)、G(緑)およびR(赤)のベタ画像を印字し、3時間放置した後、水中に1時間浸漬し、インクの水中への流出程度を目視により下記基準に従って評価した。
〔基準〕
AA: 染料の流出は全く認められなかった。
BB: 全体的に染料の流出が認められ、徐々に画像の色濃度が低下した。
CC: 水中へ染料がほぼ完全に流れ出てしまった。
【0141】
【表1】
【0142】
上記表1の結果から、実施例1〜4のインクジェット記録用シートは、印画濃度、光沢度、耐水性を低下させることなく、経時ニジミの発生が抑えられ、かつ耐オゾン性にも優れていたことが分かる。これに対し、比較例1〜2のインクジェット記録用シートは、印画濃度、光沢度、耐水性においては満足できる結果が得られたが、経時ニジミ及び耐オゾン性においては劣っていた。
【0143】
【発明の効果】
本発明によれば、他のインク受容性能を低下させることなく、経時ニジミの発生を抑制し、耐オゾン性に優れるインクジェット記録媒体を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インク(色材として染料または顔料を用いたもの)、油性インク等の液状インクや、常温では固体であり、溶融液状化させて印画に供する固体状インク等を用いたインクジェット記録に適した被記録材に関し、詳しくは、インク受容性能に優れたインクジェット記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報システムに適した記録方法および装置も開発され、各々実用化されている。
上記記録方法の中で、インクジェット記録方法は、多種の記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価であること、コンパクトであること、静粛性に優れること等の点から、オフィスは勿論、いわゆるホームユースにおいても広く用いられてきている。
【0003】
また、近年のインクジェットプリンタの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になっており、このようなハード(装置)の発展に伴って、インクジェット記録用シート(インクジェット記録媒体)も各種開発されてきている。
上記インクジェット記録用シートに要求される特性としては、一般的に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐光性、耐水性が良好なこと、(8)記録シートの白色度が高いこと、(9)記録シートの保存性が良好なこと(長期保存で黄変着色を起こさないこと)、(10)変形しにくく、寸法安定性が良好であること(カールが十分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること等が挙げられる。更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途としては、上記特性に加えて、光沢性、表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も要求される。
【0004】
上記各特性の向上を目的として、近年では色材受容層に多孔質構造を有するインクジェット記録用シートが開発され実用化されている。該インクジェット記録用シートは多孔質構造を有することで、インク吸収性(速乾性)に優れ、高い光沢を有する。
【0005】
微細な無機顔料粒子および水溶性樹脂を含有し、高い空隙率を持つ色材受容層が支持体上に設けられたインクジェット記録用シートが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
これらのインクジェット記録用シート、特に、上記無機顔料微粒子としてシリカを用いた多孔質構造からなる色材受容層を設けたインクジェット記録用シートは、その構成によりインク吸収性に優れ、高解像度の画像を形成しうる高いインク受容性能を有しかつ高光沢を示す。しかし、印画後、高温高湿環境下に長時間保存されると、色材受容層中で該溶媒が染料と共に拡散して、経時による画像のニジミ(いわゆる「経時ニジミ」)を生ずるといった問題がある。
【0006】
また、空気中の微量ガス、特にオゾンは、経時による記録画像の褪色の原因となる。多孔質構造の色材受容層を有する記録材料は多くの空隙を有することから空気中のオゾンガスによって記録画像が褪色しやすい。このため、上記多孔質構造の色材受容層を有する記録材料にとって空気中のオゾンに対する耐性(耐オゾン性)は非常に重要である。
【0007】
かかるオゾンによる褪色を防止するために、アルミナ水和物を含む多孔質層に、MgイオンおよびSCNイオンを含有するインクジェット記録媒体が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。該インクジェット記録媒体は、MgイオンとSCNイオンとを多孔質層に含有させることで、耐光性や耐オゾン性を向上させている。しかし、上記インクジェット記録用シートでは、耐光性や耐オゾン性は向上するものの、経時ニジミの発生を同時に防ぐことはできない。
【0008】
また、ジオカルバミン酸塩、チウラム塩、チオシアン酸エステル類、チオシアン酸塩、およびヒンダードアミン化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物を含有する多孔質インク受理層を有する記録用シートが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。上記ヒンダードアミン化合物の具体例としては、ピペリジンの2位および6位における炭素上の全ての水素が、メチル基で置換された構造を有するものが挙げられており、この記録シートは、上記化合物を1種以上含有することで、空気中の微量ガスによる記録画像の褪色を防止している。しかし、上記記録シートでは経時ニジミの発生を充分に抑制することができない。
【0009】
経時ニジミの発生を抑制し、耐オゾン性を向上させることを目的として、チオエーテル系化合物を含有したインクジェット記録用シート等が開示されている(例えば、特許文献5〜9参照。)。しかし、いずれもチオエーテル系化合物の例示化合物が水不溶性であるため、塗布液に混入することが難しく、乳化物等として添加せざるを得ない。このように、チオエーテル系化合物を乳化物として添加すると、粒径が大きいことからインクジェット記録用シートの光沢性が低下してしまう。また、チオエーテル系化合物を添加したのみでは、低温環境下、例えば、5℃以下の環境下で1週間程度経過するとチオエーテル系化合物が記録シート表面に析出するといった問題もある。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−119423号公報
【特許文献2】
特開平10−217601号公報
【特許文献3】
特開平2000−177235号公報
【特許文献4】
特開平7−314882号公報
【特許文献5】
特開昭64−36479号公報
【特許文献6】
特開平1−97678号公報
【特許文献7】
特開平1−115677号公報
【特許文献8】
特開2000−26178号公報
【特許文献9】
特開2002−36717号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、色材受容層が、ひび割れ等の発生がなく強固である一方、良好なインク吸収性を有し高解像度な画像が形成できると共に、その形成画像が耐光性、耐水性、耐経時ニジミ、光沢性に優れるといったインク受容性能を備えながら、彩色が鮮やかで高濃度のインクジェット記録画像をそのままの状態で長期間より安定に保存可能な画像保存性能を備え、さらに、析出物の発生を防止したインクジェット記録用シートは、未だ提供されていないのが現状である。
【0012】
本発明は、上記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、他のインク受容性能を低下させることなく、経時ニジミの発生を抑制し、耐オゾン性に優れるインクジェット記録媒体を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
【0014】
<1> 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録媒体であって、前記色材受容層が、無機微粒子と、水溶性樹脂と、架橋剤と、イオウ原子を含有するシランカップリング剤とを含むことを特徴とするインクジェット記録媒体である。
<2> 前記シランカップリング剤が、メルカプト基を含むことを特徴とする前記<1>に記載のインクジェット記録媒体である。
<3> 前記シランカップリング剤が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記<1>に記載のインクジェット記録媒体である。
(X)3−Si−(Y)−(S)n−(Y)−Si−(X)3 …一般式(1)
[一般式(1)中、Xはアルコキシ基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、nは1〜9の整数を表す。]
<4> 前記シランカップリング剤が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする前記<1>に記載のインクジェット記録媒体である。
(X)3−Si−(Y1)−(S−(Y2))m−S−(Y1)−Si−(X)3 …一般式(2)
[一般式(2)中、Xはアルコキシ基を表し、Y1、Y2は置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、mは0〜10の整数を表す。Y1、Y2は同じであっても異なっていてもよい。]
<5> 前記色材受容層が、さらに、金属塩を含むことを特徴とする前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクジェット記録媒体である。
<6> 前記色材受容層が、無機微粒子、水溶性樹脂、及び前記シランカップリング剤を含む塗布液を支持体上に塗布し、該塗布と同時に、又は該塗布した層が減率乾燥速度を示すようになる前に、該塗布層にpHが8以上の溶液を付与し硬化させることにより得られることを特徴とする前記<1>から<5>のいずれかに記載のインクジェット記録媒体である。
【0015】
【発明の実施の形態】
《インクジェット記録媒体》
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録媒体であって、前記色材受容層が、無機微粒子と、水溶性樹脂と、架橋剤と、イオウ原子を含有するシランカップリング剤とを含むことを特徴としている。
【0016】
本発明のインクジェット記録媒体は、イオウ原子を含有するシランカップリング剤を色材受容層に含むことで、耐オゾン性を向上させることができるとともに、経時ニジミの発生を抑制することができる。また、色材受容層に、気相法シリカ、ポリビニルアルコール、ホウ素化合物および媒染剤を併用することで、光沢度、インク吸収性、耐経時ニジミ、耐光性、印画濃度(最高濃度)等を向上させることができる。
【0017】
〈色材受容層〉
本発明のインクジェット記録媒体の色材受容層は、上述のように、無機微粒子と、水溶性樹脂と、架橋剤と、イオウ原子を含有するシランカップリング剤と、該化合物を架橋させうる架橋剤と、を少なくとも有し、さらに、各種添加剤などを含んでいてもよい。
【0018】
(イオウ原子を含有するシランカップリング剤)
色材受容層には、イオウ原子を含有するシランカップリング剤(以下、単に「シランカップリング剤」という場合がある。)を含有する。前述の通り、該シランカップリング剤を含有することにより、耐オゾン性を向上させることができるとともに経時ニジミの発生を抑制することができる。
【0019】
前記シランカップリング剤は、メルカプト基を含むシランカップリング剤であることが好ましい。このようなシランカップリング剤としては、例えば、以下のA1〜A3で表されるシランカップリング剤が挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】
また、前記シランカップリング剤としては、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるシランカップリング剤であることが好ましい。
【0022】
(X)3−Si−(Y)−(S)n−(Y)−Si−(X)3 …一般式(1)
[一般式(1)中、Xはアルコキシ基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、nは1〜9の整数を表す。]
【0023】
(X)3−Si−(Y1)−(S−(Y2))m−S−(Y1)−Si−(X)3 …一般式(2)
[一般式(2)中、Xはアルコキシ基を表し、Y1、Y2は置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、mは0〜10の整数を表す。Y1、Y2は同じであっても異なっていてもよい。]
【0024】
前記一般式(1)、(2)中、Xが表すアルコキシル基は、上記アルコキシル基としては炭素数1〜4のアルコキシル基が好ましく、炭素数1〜2のアルコキシル基が特に好ましい。該アルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0025】
前記一般式(1)、(2)中、Y、Y1、Y2が表すアルキレン基の炭素数としては、1〜10が好ましく、1〜5がさらに好ましい。
【0026】
前記Y、Y1、Y2が置換基を有する場合、該置換基としては、アルキル基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基またはヨード基等のハロゲン;ヒドロキシ基;メトキシ基またはエトキシ基等のアルコキシル基;カルボキシ基およびその塩;アシル基;アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、アセトアミド基、カルバモイル基、オキサモイル基またはシアノ基等の窒素を含む基;チオシアナト基、チオホルミル基、チオアセチル基、メチルチオ基、メチルスルホニル基またはメチルスルフィニル基等の硫黄を含む基;チオカルバモイル基;スルファモイル基;スルホアミノ基等が挙げられる。上記置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボン酸塩、アミノ基が好ましい。
【0027】
一般式(1)中、nは前述の通り1〜9の整数であるが、好ましく3〜5であり、より好ましくは4である。また、一般式(2)中、mは前述の通り1〜10の整数であるが、好ましくは1〜9であり、より好ましくは1〜4である。
【0028】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例(B1〜B9)を示す。なお、以下のB1〜B9のBの右側の数字は、nの数に対応している。すなわち、例えば、B2の場合n=2であり、B5の場合n=5である。
【0029】
【化2】
【0030】
また、上記一般式(2)で表される化合物の具体例(C1〜C3)を示す。
【0031】
【化3】
【0032】
本発明において、前記シランカップリング剤の含有量としては、色材受容層の全固形分質量に対して、0.2〜20質量%が好ましく、0.4〜10質量%がより好ましい。該シランカップリング剤の含有量を0.2〜20質量%とすることにより、耐オゾン性が良好で、また経時ニジミの少ない色材受容層が得られる。シランカップリング剤が上記範囲よりも少ないと耐オゾン性向上の効果が不十分となることがあり、また、上記範囲を超えると塗布液調製時の増粘が生じやすくなることがある。
【0033】
(無機微粒子)
本発明のインクジェット記録媒体では、その色材受容層が多孔質構造を形成する為に無機微粒子を用いる。無機微粒子を含有することにより多孔質構造が得られ、これによりインクの吸収性能が向上する。特に、該無機微粒子の色材受容層における固形分含有量が50質量%以上、より好ましくは60質量%を超えていると、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、十分なインク吸収性を備えたインクジェット記録媒体が得られるので好ましい。ここで、無機微粒子の色材受容層における固形分含有量とは、色材受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
【0034】
上記無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも良好な多孔質構造を形成する観点より、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子又は擬ベーマイトが好ましい。微粒子は1次粒子のまま用いても、又は2次粒子を形成した状態で使用してもよい。これら微粒子の平均一次粒径は2μm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
更に、平均一次粒径が20nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が30nm以下のコロイダルシリカ、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、又は平均細孔半径が2〜15nmの擬ベーマイトがより好ましく、特にシリカ微粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが好ましい。
【0035】
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。本発明に用いるシリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
【0036】
上記気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0037】
上記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散をおこなえば色材受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。色材受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0038】
上記気相法シリカの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。上記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0039】
また、シリカ微粒子は、前述の他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0040】
本発明に係る無機微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物又は複合物も好ましい。この内、アルミナ水和物は、インクをよく吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al2O3・nH2O)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
【0041】
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜30nmが好ましく、2〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0ml/gが好ましく、0.5〜1.5ml/gがより好ましい。ここで、上記細孔半径及び細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)により測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では気相法アルミナ微粒子が比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
【0042】
上述の無機微粒子をインクジェット記録媒体に用いる場合は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
【0043】
(水溶性樹脂)
本発明のインクジェット記録媒体では、その色材受容層が多孔質構造を形成する為に前述の無機微粒子と共に水溶性樹脂を用いる。
【0044】
上記水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕、水溶性ウレタン樹脂、水分散性ウレタン樹脂等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0045】
以上の中でも、特にポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。該ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号等に記載されたもの等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11−165461号公報の段落番号[0011]〜[0014]に記載の化合物なども挙げられる。
これら水溶性樹脂はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0046】
本発明において、水溶性樹脂の含有量としては、色材受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
【0047】
本発明において、色材受容層を主として構成する、前述の無機微粒子と水溶性樹脂とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。
尚、透明性を保持する観点からは、無機微粒子、特にシリカ微粒子に組み合わされる水溶性樹脂の種類が重要となる。前記気相法シリカを用いる場合には、該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
【0048】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造の色材受容層を形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質の色材受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0049】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、前記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂と上記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0050】
《無機微粒子と水溶性樹脂との含有比》
無機微粒子(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x/y)〕は、色材受容層の膜構造及び膜強度にも大きな影響を与える。即ち、質量含有比〔PB比〕が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。
【0051】
本発明において、色材受容層は、上記質量含有比〔PB比(x/y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5〜10が好ましい。
【0052】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、インクジェット記録用シート(インクジェット記録媒体)に応力が加わることがあるので、色材受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。またシート状に裁断加工する場合、色材受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、色材受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。これらの場合を考慮すると、前記質量比(x/y)としては5以下がより好ましく、一方インクジェットプリンターで、高速インク吸収性を確保する観点からは、2以上であることがより好ましい。
【0053】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子と水溶性樹脂とを、質量比(x/y)2〜5で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0054】
(架橋剤)
上記の水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールを架橋する架橋剤としては、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二硼酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2O)、五硼酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0055】
上記水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
【0056】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
上記の架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0057】
上記ホウ素化合物を付与する際、その溶液はホウ素化合物を水および/または有機溶剤に溶解して調製される。
上記ホウ素化合物溶液中のホウ素化合物の濃度としては、ホウ素化合物溶液の質量に対して、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜7質量%が特に好ましい。
ホウ素化合物溶液を構成する溶媒としては、一般に水が使用され、該水と混和性を有するの有機溶媒を含む水系混合溶媒であってもよい。
上記有機溶剤としては、ホウ素化合物が溶解するものであれば任意に使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;トルエン等の芳香族溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル、およびジクロロメタン等のハロゲン化炭素系溶剤等を挙げることができる。
【0058】
(媒染剤)
本発明においては、形成画像の耐水性、耐経時ニジミの更なる向上を図るために、色材受容層に媒染剤が含有される。
上記媒染剤としてはカチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)が好ましく、該媒染剤を色材受容層中に存在させることにより、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用し色材を安定化し、耐水性や経時ニジミを向上させることができる。
【0059】
しかし、これを直接色材受容層を形成するための塗布液に添加すると、アニオン電荷を有する気相法シリカとの間で凝集を生ずる懸念があるが、独立の別の溶液として調製し塗布する方法を利用すれば、無機顔料微粒子の凝集を懸念する必要はない。よって、本発明においては、上記気相法シリカ(無機微粒子)とは別の溶液(例えば、架橋剤溶液)に含有して用いることが好ましい。
【0060】
上記カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、または第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
上記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染モノマー」という。)との共重合体または縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー、または水分散性のラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0061】
上記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、
【0062】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート、
【0063】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、またはそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0064】
具体的には、例えば、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、
【0065】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0066】
また、アリルアミン、ジアリルアミンやその誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)が挙げられる。尚、これらのアリルアミンおよびジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、およびこれを塩にしたものも利用できる。
【0067】
上記非媒染モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
上記非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0068】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
上記非媒染モノマーも、一種単独で、または二種以上組合せて使用できる。
【0069】
更に、ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン等も好ましいものとして挙げることができる。
【0070】
上記ポリマー媒染剤の分子量としては、重量平均分子量で1000〜100000が好ましく、重量平均分子量で3000〜60000がさらに好ましい。上記分子量が1000〜100000の範囲にあると、耐水性が不十分となることがなく、また、粘度が高くなりすぎてハンドリング適性が低下するのを防止できる。
本発明における媒染剤としては、耐水性、インク吸収速度、光沢度、耐オゾン性の点から重量平均分子量が100000以下のポリアリルアミンおよびその誘導体が特に好ましい。
【0071】
(金属塩)
本発明においては、色材受容層に金属塩を含むことが好ましい。金属塩を含有させることにより、経時ニジミの防止、耐水性の向上を図ることができる。金属塩としては、多価の水溶性金属塩や疎水性金属塩化合物が挙げられる。
具体例としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩又は錯体が挙げられる。
【0072】
金属塩としてさらに具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリん酸n水和物、硝酸ガリウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等があげられる。
【0073】
本発明において、金属塩としては、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩または錯体)が好ましい。
本発明で色材受容層に含まれる上記金属塩の含有量は、0.01g/m2〜5g/m2が好ましく、0.1g/m2〜3g/m2がより好ましい。
【0074】
(他の成分)
色材受容層は、必要に応じて下記成分を含んでいてもよい。
色材の劣化を抑制する目的で、各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤を含んでいてもよい。
上記紫外線吸収剤としては、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾリルフェノール誘導体等が挙げられる。例えば、α−シアノ−フェニル桂皮酸ブチル、o−ベンゾトリアゾールフェノール、o−ベンゾトリアゾール−p−クロロフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−ブチルフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−オクチルフェノール等が挙げられる。ヒンダートフェノール化合物も紫外線吸収剤として使用でき、具体的には少なくとも2位または6位のうち1ヵ所以上が分岐アルキル基で置換されたフェノール誘導体が好ましい。
【0075】
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等も使用できる。例えば、特開昭47−10537号公報、同58−111942号公報、同58−212844号公報、同59−19945号公報、同59−46646号公報、同59−109055号公報、同63−53544号公報、特公昭36−10466号公報、同42−26187号公報、同48−30492号公報、同48−31255号公報、同48−41572号公報、同48−54965号公報、同50−10726号公報、米国特許第2,719,086号明細書、同3,707,375号明細書、同3,754,919号明細書、同4,220,711号明細書等に記載されている。
【0076】
蛍光増白剤も紫外線吸収剤として使用でき、例えば、クマリン系蛍光増白剤等が挙げられる。具体的には、特公昭45−4699号公報、同54−5324号公報等に記載されている。
【0077】
上記酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同309402号公報、同310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同62−262047号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同66−88381号公報、同63−113536号公報、
【0078】
同63−163351号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、特開平2−262654号公報、同2−71262号公報、同3−121449号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−61166号公報、同5−119449号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−43295号公報、同48−33212号公報、米国特許第4814262号、同第4980275号公報等に記載のものが挙げられる。
【0079】
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4,−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
【0080】
上記褪色性防止剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。この上記褪色性防止剤は、水溶性化、分散、エマルション化してもよく、マイクロカプセル中に含ませることもできる。
上記褪色性防止剤の添加量としては、色材受容層塗布液の0.01〜10質量%が好ましい。
【0081】
また、無機顔料微粒子の分散性を高める目的で、各種無機塩類、pH調整剤として酸やアルカリ等を含んでいてもよい。
更に、表面の摩擦帯電や剥離帯電を抑制する目的で、電子導電性を持つ金属酸化物微粒子を、表面の摩擦特性を低減する目的で各種のマット剤を含んでいてもよい。更に、塗膜に柔軟性を与える目的でエマルジョン、ラテックス樹脂を含んでもよい。
【0082】
(インクジェット記録用シート(インクジェット記録媒体)の作製)
色材受容層は、無機微粒子と分散剤とからなる水分散物に、少なくとも水溶性樹脂、及び前記シランカップリング剤を含有する溶液を添加し再分散して得られる塗布液(色材受容層用塗布液)を支持体上に塗布し、該塗布と同時に、又は塗布した層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に、該塗布層にpHが8以上の溶液(架橋剤溶液)を付与した後、該溶液を付与した塗布層を架橋硬化させる方法(WOW法;Wet On Wet法)により形成されることが好ましい。当該方法において上記水分散物のpHは4.5以下であり酸性を示す。
【0083】
上記分散剤としては、カチオン性のポリマーを用いることが好ましい。カチオン性ポリマーとしては、上述の媒染剤の例として挙げた、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基を有する単量体の単独重合体や、該単量体と他のモノマーとの共重合体または縮重合体として得られるものを好適に使用することができる。また、これらの分散剤は、水溶性ポリマーの形態で使用するのが好ましい。
【0084】
上記分散剤の分子量は、重量平均分子量で1000〜200000が好ましく、3000〜60000がさらに好ましい。該分子量が1000より小さいと分散性に劣る場合があり、200000を超えると水分散物の粘度が高くなる場合がある。上記分散剤の気相法シリカに対する添加量は、1%〜30%が好ましく、3%〜20%がさらに好ましい。該添加量が、1%未満では分散性に劣る場合があり、30%を超えるとインクジェット記録媒体に印画した際、色濃度が低下することがあるため好ましくない。
【0085】
また、上記無機微粒子(気相法シリカ)と分散剤とからなる水分散剤の調製は、気相法シリカ水分散液をあらかじめ調製し、該水分散液を分散剤水溶液に添加してもよいし、分散剤水溶液を気相法シリカ水分散液に添加してよいし、同時に混合してもよい。また、気相法シリカ水分散液ではなく、粉体の気相法シリカを用いて上記のように分散剤水溶液に添加してもよい。
上記の気相法シリカと分散剤とを混合した後、該混合液を分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径50〜300nmの水分散液を得ることができる。該水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体攪拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的におこなうという点から、コロイドミル分散機、媒体攪拌型分散機、または高圧分散機が好ましい。
【0086】
また、本発明のインクジェット記録媒体の色材受容層は、色材受容層用塗布液と、架橋剤溶液とを、架橋剤と反応しない材料からなるバリアー液(但し、架橋剤を含む溶液若しくはバリアー液の少なくとも一方に媒染剤を含有させる。)を挟んだ状態で支持体上に同時塗布し、硬化させることによって得ることもできる。
【0087】
上記色材受容層塗布液には、必要に応じて、更に界面活性剤、pH調整剤、帯電防止剤等を添加することもできる。
色材受容層塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコータ、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法によりおこなうことができる。
【0088】
色材受容層用塗布液を塗布した後、該塗布層に架橋剤溶液が付与されるが、該架橋剤溶液は、塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に付与してもよい。即ち、色材受容層用塗布液の塗布後、この塗布層が恒率乾燥速度を示す間に架橋剤と媒染剤とを導入することで好適に製造される。
【0089】
ここで、「塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前」とは、通常、色材受容層塗布液の塗布直後から数分間を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤の含有量が時間に比例して減少する現象である恒率乾燥速度を示す。該恒率乾燥速度を示す時間については、化学工学便覧(p.707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0090】
上述の通り、色材受容層塗布液の塗布後、その塗布層が減率乾燥速度を示すようになるまで乾燥されるが、該乾燥は一般に50〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが上記範囲が適当である。
【0091】
上記塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に付与する方法としては、(1)架橋剤溶液を塗布層上に更に塗布する方法、(2)スプレー等の方法によって噴霧する方法、(3)架橋剤溶液中に、該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0092】
上記方法(1)において、架橋剤溶液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコータ、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコーター、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコータ、カーテンフローコータ、バーコータ等のように、既に形成されている塗布層にコータが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0093】
色材受容層上に付与する、架橋剤(例えば、ホウ素化合物)と媒染剤とを少なくとも含有する架橋剤溶液の塗布量としては、ホウ素化合物換算で0.01〜10g/m2が一般的であり、0.05〜5g/m2が好ましい。
【0094】
該架橋剤溶液の付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥および硬化が行われる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。
例えば、上記架橋剤溶液中に含有するホウ素化合物として硼砂や硼酸を使用する場合には、60〜100℃での加熱を5〜20分間行うことが好ましい。
【0095】
また、上記架橋剤溶液は、色材受容層塗布液を塗布すると同時に付与してもよい。
この場合、色材受容層塗布液および架橋剤溶液を、該色材受容層塗布液が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることにより色材受容層を形成することができる。
【0096】
上記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコータ、カーテンフローコータを用いた塗布方法によりおこなうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することによりおこなわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行われる。
例えば、架橋剤溶液に含有するホウ素化合物として硼砂や硼酸を使用する場合は、60〜100℃で5〜20分間加熱することが好ましい。
【0097】
上記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコータによりおこなった場合、同時に吐出される二種の塗布液は、エクストルージョンダイコータの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、支持体に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコータの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、上記のように同時塗布する際は、色材受容層塗布液および架橋剤溶液の塗布と共に、更にホウ素化合物と反応しない材料からなるバリアー層液(中間層液)を上記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
【0098】
上記バリアー液は、架橋剤と反応せず液膜を形成できるものであれば、特に制限なく選択することができる。例えば、架橋剤と反応しない水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。上記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。
尚、バリアー液には、上記媒染剤を含有させることもできる。
【0099】
また、各工程における溶媒として水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0100】
支持体上に色材受容層を形成した後、該色材受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性および塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定しておこなう必要がある。
【0101】
カレンダー処理をおこなう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
【0102】
上記色材受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。
この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、色材受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0103】
また、色材受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
上記空隙率および細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0104】
また、色材受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、色材受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
【0105】
(支持体)
上記支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。色材受容層の透明性を生かす上では、透明支持体または高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。また、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスクを支持体として用い、レーベル面側に色材受容層を付与することができる。
【0106】
上記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、ポリエチレンテレフタレートは特に好ましい。
上記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜200μmが好ましい。
【0107】
高光沢性の不透明支持体としては、色材受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙および板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
【0108】
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、上記各種紙支持体、上記透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体が挙げられる。
白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。さらに銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
【0109】
上記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0110】
また、上記支持体には、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0111】
次に、上記レジンコート紙に用いられる原紙について詳述する。
上記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
但し、LBSPおよび/またはLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0112】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0113】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0114】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0115】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0116】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、上記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0117】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0118】
特に、色材受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広くおこなわれているように、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度および色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上に色材受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、水性ウレタン、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
【0119】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0120】
以上のように、無機微粒子、水溶性樹脂、架橋剤、及び前記シランカップリング剤を色材受容層に有することで、他のインク受容性能を低下させることなく、経時ニジミの発生および析出物の発生を抑制し、耐オゾン性を向上させることができる。
【0121】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」および「%」は、全て「質量部」および「質量%」を表す。
【0122】
−支持体の作製−
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/m2の原紙を抄造した。
【0123】
上記原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(Whitex BB,住友化学工業(株)製)を0.04%添加し、これを絶乾質量換算で0.5g/m2となるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、さらにキャレンダー処理を施して密度1.05に調整された基紙を得た。
【0124】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理をおこなった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層にさらにコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)と二酸化ケイ素(スノーテックスO、日産化学工業(株)製)とを1:2の比(質量比)で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
【0125】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、および蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有する、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み29μmとなるように溶融押し出しし、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。
【0126】
[実施例1]
−色材受容層用塗布液の調製−
下記組成中の(a)気相法シリカ微粒子、(b)分散剤、及び(c)イオン交換水を混合し、高速回転式コロイドミル(クレアミックス、エム・テクニック(株)製)を用いて、回転数10000rpmで20分間分散させた後、下記(d)架橋剤、(e)ポリビニルアルコール、(f)ジエチレングリコールモノブチルエーテル、(g)前記化合物A1(シランカップリング剤)、(h)水溶性金属化合物、及び(i)と(j)の界面活性剤を加え、更に上記と同一の条件で分散を行い、目的とする色材受容層用塗布液を調製した。
【0127】
〔色材受容層用塗布液の組成〕
(a)気相法シリカ微粒子(無機顔料微粒子) 100.0kg
((株)トクヤマ製の「レオロシールQS−30」平均一次粒子径7nm)
(b)分散剤 15.0kg
(三洋化成工業(株)製の「ケミスタット7005」、40%)
(c)イオン交換水 575.3kg
(d)架橋剤
硼酸(5.3%水溶液) 77.4kg
(e)水溶性樹脂(PVA) 317.2kg
((株)クラレ製、PVA124、7%水溶液)
(f)ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.6kg
(g)化合物A1(25%メタノール溶液) 12.5kg
(信越化学工業(株)製、KBM803)
(h)水溶性金属塩(ZrO2として25%水溶液) 12.4kg
(第一稀元素化学工業(株)ジルコゾールZA−30、酢酸ジルコニル)
(i)界面活性剤(ポリオキシエチレンオレイルエーテル) 9.3kg
(花王(株)製の「エマルゲン109P」、10%溶液)
(j)界面活性剤(フッ素系界面活性剤) 6.0kg
(大日本インキ化学工業(株)製の「メガファックF−1405」、10%水溶液)
【0128】
−インクジェット記録用シート(インクジェット記録媒体)の作製−
前記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行った後、上記で得られた色材受容層用塗布液を、支持体のオモテ面にエクストルージョンダイコーターを用いて170ml/m2の塗布量で塗布し(塗布工程)、熱風乾燥機にて40℃(風速5m/sec)で塗布層の固形分濃度が18%になるまで乾燥させた。塗布層は、この期間恒率乾燥速度を示した。その直後、下記組成からなる塩基性塗布液(pH:9.3)に浸漬して、上記塗布層上にその20g/m2を付着させ、更に温度を80℃で10分間乾燥させた。これにより、乾燥膜厚35μmの色材受容層が得られた。
【0129】
〔塩基性塗布液の組成〕
▲1▼硼酸(100%) 6.5kg
▲2▼イオン交換水 723.5kg
▲3▼塩基性媒染剤 150.0kg
(日東紡績(株)製の「PAA−03」、20%水溶液)
▲4▼表面pH調節剤(塩化アンモニウム、100%) 1.0kg
▲5▼表面pH調節剤(p−トルエンスルホン酸、100%) 18.0kg
▲6▼界面活性剤 100.0kg
(花王(株)製の「エマルゲン109P、2%水溶液」)
▲7▼界面活性剤 2.0kg
(大日本インキ化学工業(株)製の「メガファックF−1405」、100%)
【0130】
[実施例2]
実施例1の色材受容層用塗布液の調製において、(h)水溶性金属塩を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット記録用シートを作製した。
【0131】
[実施例3]
実施例1の色材受容層用塗布液の調製において、(g)化合物A1を、前記化合物B4(信越化学工業(株)製、KBE846)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のインクジェット記録用シートを作製した。
【0132】
[実施例4]
実施例1の色材受容層用塗布液の調製において、(g)化合物A1を、前記化合物C2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のインクジェット記録用シートを作製した。
【0133】
[比較例1]
実施例1の色材受容層用塗布液の調製において、(g)化合物A1、及び▲8▼水溶性金属塩を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット記録用シートを作製した。
【0134】
[比較例2]
実施例1の色材受容層用塗布液の調製において、(g)化合物A1の代わりに、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット記録用シートを作製した。
【0135】
<性能評価>
上記より得られた実施例1〜4のインクジェット記録用シート、及び比較例1〜3のインクジェット記録用シートのそれぞれについて、以下の評価をおこなった。評価結果は、下記表1に示す。
【0136】
(耐オゾン性)
インクジェットプリンター(PM−900C、セイコーエプソン(株)製)によって、インクジェット記録用シートにシアンのベタ画像を印画し、オゾン濃度3ppmの環境下で2時間保管した。保管前と保管後とのシアン濃度を測定し、該シアン濃度の残存率を算出した。
【0137】
(経時ニジミ)
各インクジェット記録用シート上に、前記インクジェットプリンター(PM−900C)を用いてマゼンタインクとブラックインクとを隣り合わせにした格子状の線状パターン(線幅0.28mm)を印画した。印画後3時間放置した後、40℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に3日間保管し、ブラック部分の線幅を測定して下記基準に従い評価した。
〔基準〕
AA: 経時ニジミの発生はほとんど認められず、良好であった。
(線幅:0.28〜0.30mm)
BB: 若干の経時ニジミが認められたが、実用上問題ないレベルであった。
(線幅:0.31〜0.35mm)
CC: 経時ニジミが顕著に認められ、実用上問題となるレベルであった。
(線幅:0.35mm以上)
【0138】
(印画濃度)
前記インクジェットプリンター(PM−900C)によって、インクジェット記録用シートにK(黒)のベタ画像を印画し、3時間放置後、該印画面の反射濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0139】
(光沢度)
印画前のインクジェット記録用シートの色材受容層表面における60°光沢度を、デジタル変角光沢度計(UGV−50DP,スガ試験機(株)製)にて測定した。
【0140】
(耐水性)
前記インクジェットプリンター(PM−900C)によって、Y(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)、B(青)、G(緑)およびR(赤)のベタ画像を印字し、3時間放置した後、水中に1時間浸漬し、インクの水中への流出程度を目視により下記基準に従って評価した。
〔基準〕
AA: 染料の流出は全く認められなかった。
BB: 全体的に染料の流出が認められ、徐々に画像の色濃度が低下した。
CC: 水中へ染料がほぼ完全に流れ出てしまった。
【0141】
【表1】
【0142】
上記表1の結果から、実施例1〜4のインクジェット記録用シートは、印画濃度、光沢度、耐水性を低下させることなく、経時ニジミの発生が抑えられ、かつ耐オゾン性にも優れていたことが分かる。これに対し、比較例1〜2のインクジェット記録用シートは、印画濃度、光沢度、耐水性においては満足できる結果が得られたが、経時ニジミ及び耐オゾン性においては劣っていた。
【0143】
【発明の効果】
本発明によれば、他のインク受容性能を低下させることなく、経時ニジミの発生を抑制し、耐オゾン性に優れるインクジェット記録媒体を提供することができる。
Claims (6)
- 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録媒体であって、
前記色材受容層が、無機微粒子と、水溶性樹脂と、架橋剤と、イオウ原子を含有するシランカップリング剤とを含むことを特徴とするインクジェット記録媒体。 - 前記シランカップリング剤が、メルカプト基を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
- 前記シランカップリング剤が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
(X)3−Si−(Y)−(S)n−(Y)−Si−(X)3 …一般式(1)
[一般式(1)中、Xはアルコキシ基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、nは1〜9の整数を表す。] - 前記シランカップリング剤が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
(X)3−Si−(Y1)−(S−(Y2))m−S−(Y1)−Si−(X)3 …一般式(2)
[一般式(2)中、Xはアルコキシ基を表し、Y1、Y2は置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、mは0〜10の整数を表す。Y1、Y2は同じであっても異なっていてもよい。] - 前記色材受容層が、さらに、金属塩を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
- 前記色材受容層が、無機微粒子、水溶性樹脂、及び前記シランカップリング剤を含む塗布液を支持体上に塗布し、該塗布と同時に、又は該塗布した層が減率乾燥速度を示すようになる前に、該塗布層にpHが8以上の溶液を付与し硬化させることにより得られることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
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