JP2004321871A - 導電性粉末のカプセル化粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】導電性粉末の表面を樹脂被覆してなり、電子写真法により絶縁性無機質基体上に良好な回路パターンを形成することができるカプセル化粒子、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】導電性粉末と中和により自己水分散性となりうる非水溶性樹脂と有機溶剤とを含有する混合物を、中和剤の存在下に撹拌しつつ水性媒体と転相乳化を行い、かつ前記転相乳化中の攪拌時の混合物の最大粘度が2Pa・s以上となるようにする。導電性粉末と被覆樹脂の濡れが良好となるため、導電性粉末表面に特に表面処理をしなくても、粉末と樹脂との間に空隙が生じる事がない。また表面処理により導電性粉末が凝集する危険性もない。
【選択図】 なし
【解決手段】導電性粉末と中和により自己水分散性となりうる非水溶性樹脂と有機溶剤とを含有する混合物を、中和剤の存在下に撹拌しつつ水性媒体と転相乳化を行い、かつ前記転相乳化中の攪拌時の混合物の最大粘度が2Pa・s以上となるようにする。導電性粉末と被覆樹脂の濡れが良好となるため、導電性粉末表面に特に表面処理をしなくても、粉末と樹脂との間に空隙が生じる事がない。また表面処理により導電性粉末が凝集する危険性もない。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、広く導電性回路パターンを印刷するのに好適に用いられる、銅、銀、金、白金、タングステンなどの金属、合金などの微粉末が、絶縁性合成樹脂にカプセル化された、カプセル化粒子およびその製造方法に関するものであり、特にその用途として、絶縁性無機質基体上に、静電印刷方式で導電性回路パターンを形成する際に用いられる静電荷像現像用カプセル化粒子、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種電子装置を構成するセラミック基板上の電気回路や電極などの導電性回路パターンは、銅や銀などの導電性粉末を含有するペーストを使用し、スクリーン印刷や平版印刷などによって目的とするパターンを形成し、次いでこれを焼成することにより製造されている。しかしながら、この方法では印刷版の製作が不可欠であり、製作のための費用や時間がかさむため少数品の生産や短納期を要求される製品の製造には適していない。そこで導電性粉末を絶縁性合成樹脂で被覆したカプセル化粒子を粉体トナーとして用いて電子写真法によるオンデマンド印刷を行うことが提唱されており(例えば特許文献1参照)、カプセル化粒子の製造方法が各種提示されている。すなわち導電性金属粒子の周囲に熱溶融性樹脂の超微粒子を付着させたのち機械的衝撃で該樹脂を溶融させて導電性金属粒子の周囲に樹脂の外壁を作る方法(例えば特許文献2参照)や、銅粒子と荷電制御剤と熱溶融性樹脂を含有する混合物を熱溶融混練したのち粗粉砕する方法(例えば特許文献3)があるが、粉体トナーとしての良好な帯電特性を発揮するには至っていない。
これに対して導電材料を中和により自己水分散性となりうる非水溶性樹脂でカプセル化する方法によって製造されたカプセル化粒子は、良好な電気絶縁性や摩擦帯電性を示し、導電性回路パターンを印刷する粉体トナーとしてより実用化の可能性が高い。(例えば特許文献4参照)
【0003】
導電性回路パターン作製用のトナーが実現されるには以下のような特性を高いレベルで実現する必要がある。
すなわち、▲1▼高精度の回路パターンを静電印刷法で絶縁性無機質基体上に再現するために、現像剤の帯電レベルが高く、電荷がリークしないこと。
▲2▼静電印刷された回路パターンの焼成により、金属粒子の密度の高い低抵抗の導電性回路パターンを確保できること。
▲3▼静電印刷による回路パターン形成時に、現像剤の飛散やカブリがなく、回路パターンの焼結時に不要な電気的短絡路を形成しないこと。である。
【0004】
しかしながら現在までのところ上記のような回路パターン作製のための特性を、高いレベルで実現した実用性の高い粉体トナーは開発されていない。導電性粉末と樹脂との密着性や、導電性樹脂の凝集の問題などは、実用化に向けてさらなる向上が必要とされる点である。導電材料の粒子を助剤、分散剤等で表面処理し被覆樹脂と導電性粉末粒子表面の濡れを促進し均一な樹脂被覆を形成する方法等も提案されているが、表面処理後の導電性粉末が凝集し易い等の問題があり、実用化のための特性向上にむけてより一層の改良が求められている。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−078191号公報
【特許文献2】
特開平4−237062号公報
【特許文献3】
特開平11−265089号公報
【特許文献4】
特開2001−106928号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、電子写真法の技術を使用して導電体パターンを形成することが可能で、かつ、良好な帯電性を発現することにより上記▲1▼から▲3▼に記載した特性を満足する、導電性粉末を絶縁性合成樹脂で被覆したカプセル化粒子およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者は上記課題につき鋭意検討した結果、次のようなことを見出し本発明を完成した。
すなわち個々のカプセル化粒子に均一な帯電性を付与して、上記▲1▼から▲3▼の特性を満足させるには、樹脂による被覆むらから発生する導電性粉末の露出部分が無いこと、さらに導電性粉末が凝集したまま樹脂で被覆された粒子が無いこと、さらには、導電性粉末と被覆樹脂との界面に、該界面の濡れ不良から発生する空隙等が無いことが必要である。
転相乳化の工程は、ゲル化を防止し、均一な転相乳化を行うために攪拌時の混合物の粘度をあまり上昇させずに1.5Pa・s以下程度の最大粘度となるよう混合物の粘度を調整して行うのが通常である。発明者らは転相乳化の工程を、通常は転相乳化に好ましくないと思われていた高粘度領域において試みることによって、実は導電性粉末の非水溶性樹脂による被覆状況を従来より改善することができ、さらに粗大なカプセル化粒子の混入を従来より減少させられることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は上記目的を達成するため、導電性粉末と中和により自己水分散性となりうる非水溶性樹脂と有機溶剤とを含有する混合物を、中和剤の存在下に攪拌しつつ水性媒体と混合し転相乳化することにより、前記導電性粉末を前記非水溶性樹脂で被覆したカプセル化粒子の水分散液を得る工程を有するカプセル化粒子の製造方法であって、前記工程における転相乳化時の攪拌中の混合物の粘度の最大値が2Pa・s以上であることを特徴とするカプセル化粒子の製造方法を提供する。
【0009】
このような製造方法を用いると、攪拌時に混合物に働く高い剪断応力によって、導電性粉末の表面と被覆樹脂との濡れが著しく改善されるため、助剤や分散剤で導電性粉末粒子表面の表面処理を行わなくても、樹脂による被覆むらからの導電性粉末の露出部分が無いか極めて少ないカプセル化粒子が得られる。このようにして得られたカプセル化粒子は、さらに攪拌時に導電性粉末粒子表面がより大きなずり応力を受けている。このため、凝集粒子の解砕が進行しやすく凝集粒子のまま樹脂で被覆されて形成された粒子が無いか極めて少ない。さらにこのようにして得られたカプセル化粒子には、導電性粉末粒子表面と被覆樹脂との濡れ性が向上するため、導電性粉末と被覆樹脂との界面に濡れ不良から発生する空隙等が発生しない。
【0010】
さらに前記工程の転相乳化時において、前記混合物の撹拌中の粘度の最大値が、水性媒体を混合する前の混合物の粘度の4倍以上であると、確実に転相乳化の工程において導電性粉末表面に強いシェアをかけることが出来るため好ましい。前記混合前の混合物の粘度の6倍以上がさらに好ましく、8倍以上が最も好ましい。なお水性媒体を混合する前の混合物の粘度とは、該混合物がすでに非ニュートン流体のときは、該混合物を水性媒体混合後の撹拌速度と同一速度で撹拌したときの粘度をいうものとする。
【0011】
さらに本発明は前記カプセル化粒子と疎水性シリカ粒子を含有することを特徴とする非磁性一成分現像用の静電荷像現像剤を提供する。
さらに本発明は前記カプセル化粒子と疎水性シリカ粒子とキャリアとを含有することを特徴とする二成分現像用の静電荷像現像剤を提供する。
さらに本発明は前記一成分現像用及び二成分現像用の静電荷像現像剤を用い、静電印刷法により絶縁性無機質基体上に回路パターンを印刷し、該回路パターンを燒結して導電性回路パターンを得ることを特徴とする導電性回路パターンの製造方法を提供する。
【発明の実施の形態】
【0012】
本発明のカプセル化粒子の製造方法に使用する導電性粉末には、体積平均粒径1〜50μmの金属微粉末が好ましく、2〜10μmの体積平均粒径を持つものが精細な回路パターンを形成でき、しかも帯電の制御が比較的行いやすいためさらに好ましい。
また、中和により自己水分散性をとなりうる非水溶性樹脂としては酸性基含有のスチレン(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好適であり、さらに酸性基としてはカルボキシル基が好適である。
【0013】
本発明のカプセル化粒子の製造方法においては、導電性粉末の表面処理用に用いられ、該表面処理によって、導電性粉末と、中和により自己水分散性となりうる非水溶性樹脂、との濡れを促進する機能を果たす助剤または分散剤を実質的に使用せずに転相乳化することが好ましい。
このような助剤、または分散剤による表面処理を用いないことによって、カプセル化粒子を製造する工程を簡略にすることができる。このような助剤、分散剤を用いると、表面処理の方法によっては後の転相乳化時の攪拌のみでは微粒子化できない凝集粒子が発生する可能性がある。さらに表面処理に用いた助剤、分散剤等は、導電性粉末を被覆する非水溶性樹脂とは反対の帯電特性を有することが多いため、導電性粉末のカプセル化粒子を静電印刷用のトナーとして用いると、逆帯電粒子の増加する原因となる可能性がある。
本発明の方法を用いるとこれら従来の表面処理を用いる必要がないため、そのマイナス効果を懸念することなく、しかも表面処理を行った場合と同等以上の、導電性材料と非水溶性樹脂との濡れ性を実現することができる。
【0014】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
なお本明細書中の記載において「転相乳化時」とは、導電性粉末、非水溶性樹脂、有機溶剤を含有する混合物を撹拌しつつ、水性媒体を添加開始してから転相乳化操作の終了までの過程全体を含むものとし、特に例えばWater in Oil がOil in Water に転相完了した時点を示すときは「転相乳化完了時」としてこれを区別するものとする。
【0015】
本発明で使用する導電性粉末としては、導電性を有する非水溶性物質であればよく、特に限定はされないが、銅、銀、アルミニウム、金、白金、ニッケル、鉄などの金属粉末、スズ・鉛、銀・スズ・鉛などの合金粉末、酸化スズ、酸化アンチモンなどの酸化物の粉末、などが挙げられる。これらの中でも、抵抗率が1×10−4Ωcm以下のものが特に好適である。また、導電性粉の体積平均粒径としては1μm〜50μmの範囲にある微粒子が導電性回路パターンの精細性確保などの点で好ましく、1〜10μmの範囲がさらに好適である。粒径は、マイクロトラック・ウルトラフアインパーチクルアナライザーやコールターマルチサイザーなどを使用して測定することができる。
【0016】
本発明で使用する導電性粉末被覆用の非水溶性樹脂は、中和することにより自己水分散性となりうる非水溶性の樹脂であって、電気絶縁性を有し摩擦帯電性を有する樹脂であれば良く、その他の点について特に限定されるものではない。以下本発明において使用する非水溶性樹脂に対しては、被覆樹脂あるいは絶縁樹脂との名称を併用する。
【0017】
本発明において、中和により自己水分散性となる非水溶性樹脂とは、一般に、中和により電解質となりうる官能基を有する樹脂、あるいは酸基または塩基性基を有し、中和によってそれぞれアニオン性またはカチオン性を有することになる樹脂であり、該官能基の一部または全部が中和されると、乳化剤または分散安定剤を用いることなく安定した水分散体を形成できる樹脂をいう。中和により電解質となりうる官能基としては、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、1級、2級、3級アミノ基などが挙げられる。これら官能基を有する非水溶性樹脂としては、トナー用に公知慣用に用いられる樹脂を好適に使用することができ、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。本発明においては、官能基としてカルボキシル基を有するスチレン(メタ)アクリル樹脂およびポリエステル樹脂が、特に造粒性や導電性粉末の均一な被覆性などの点で好ましく、なかでも官能基としてカルボキシル基を有するスチレン(メタ)アクリル樹脂がさらに好ましい。
【0018】
中和により自己水分散性となりうる、上記カルボキシル基を有するスチレン(メタ)アクリル樹脂としては、スチレン系単量体を必須成分として、カルボキシル基を有したラジカル重合性単量体と、これら以外のカルボキシル基を有しないラジカル重合性単量体を、ラジカル重合開始剤の存在下でラジカル共重合させたものが使用できる。重合反応は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など、通常一般の方法でよい。
【0019】
カルボキシル基を有するラジカル重合性単量体としては、例えばアクリル酸メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチルなどが挙げられる。
【0020】
カルボキシル基を有しないラジカル重合性単量体としては、
(1)スチレン系単量体:スチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレンもしくはクロルスチレンなど、
【0021】
(2)アクリル酸エステル類:アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシルアクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシルもしくはアクリル酸ドデシル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、アルファクロルアクリル酸メチルなど、
【0022】
(3)メタクリル酸エステル:メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−クロルエチル、メタクリル酸フェニル、アルファクロルメタクリル酸メチルなど、
【0023】
(4)その他アクリル酸、メタクリル酸誘導体:アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなど、
【0024】
(5)ビニルエーテル:ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなど、
【0025】
(6)ビニルケトン:ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなど、
【0026】
(7)N−ビニル化合物:N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどを挙げることができる。
【0027】
上記単量体を溶液重合させる場合の溶媒としては、汎用の有機溶媒を使用できる。具体的には、トルエン、キシレンもしくはベンゼンなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノールもしくはブタノールなどのアルコール類;セロソルブもしくはカルビトールなどのエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類;またはブチルセロソルブアセテートなどのエーテルエステル類等、いわゆる不活性溶剤である。
【0028】
また、ラジカル重合開始剤としては、公知慣用の各種の有機過酸化物系、およびアゾ系の開始剤が使用できる。具体的には、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物が挙げられる。
【0029】
前記被覆樹脂は、そのままでも使用できるが、必要に応じて被覆樹脂の一部を架橋してもよい。樹脂の架橋は、カプセル化粒子を形成した後、被覆樹脂の架橋性官能基と架橋剤との加熱反応により、粒子内架橋反応によって行うことが好ましい。
【0030】
カプセル化粒子を造粒した後の粒子内架橋は、被覆樹脂の架橋性官能基と架橋剤との加熱反応によって行うことができる。被覆樹脂の架橋性官能基がカルボキシル基である場合には、架橋剤としては、例えば、アミノプラスト樹脂、1分子中にグリシジル基を平均2個以上有する化合物、1分子中に1,3−ジオキソラン−2−オン−4イル基を平均2個以上有する化合物、1分子中にカルボジイミド基を平均2個以上有する化合物、1分子中にオキサゾリン基を平均2個以上有する化合物、金属キレート化合物等が挙げられる。また、被覆樹脂の架橋性官能基が水酸基である場合には、架橋剤としては、例えば、アミノプラスト樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート樹脂等が挙げられる。
【0031】
架橋反応は、水性媒体の沸点以下の温度であって、かつ、粒子の融着を避けるために、粒子のガラス転移温度よりもあまり高くない温度で行うのが好ましい。反応温度の範囲は、40〜100℃が好ましく、60〜100℃が特に好ましい架橋反応に要する時間は、架橋反応がほぼ完結するのに要する時間であればよく、例えば70℃では2〜6時間程度である。
【0032】
架橋剤としてグリシジルアミン化合物およびその他のグリシジル基を有する化合物を使用する場合、2−メチルイミダゾールなどの公知の触媒を使用したり、グリシジル基の一部にジブチルアミンなどの第二級モノアミン等を付加して、グリシジル基を有する化合物に自己触媒能を付与する方法なども採用できる。
【0033】
被覆樹脂は、DSC(示差走査熱量計)で測定したガラス転移温度が50℃以上の範囲にあるものが好ましく、60℃以上の範囲がさらに好ましい。ガラス転移温度が50℃よりも低い場合には得られる粉体トナーの熱安定性が悪くなる傾向がみられる。
【0034】
被覆樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量(ポリスチレン換算ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した値)は10,000〜300,000の範囲にあるものが好ましく、20,000〜150,000の範囲にあるものがより好ましい。重量平均分子量が10,000よりも小さい場合、転相後に水相に溶ける樹脂が多くなり、導電体被覆樹脂粒子の収率が減少する傾向にあり、また、架橋反応が十分に進行しない傾向にある。重量平均分子量が300,000よりも大きい場合には、転相乳化し難くなる傾向がみられる。
【0035】
本発明では、被覆樹脂として、トナー用に用いられている公知慣用の、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂も使用することができる。このようなポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多塩基酸またはその低級アルコールエステルまたは酸無水物とを、必要に応じて触媒の存在下に重縮合あるいは重付加させて製造できる。
【0036】
多塩基酸類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸および酸無水物類、無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸および酸無水物類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多塩基酸を1種または2種以上用いることができる。
【0037】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類、グリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールの1種または2種以上用いることができる。
【0038】
十分な耐熱性を得るためには、ポリエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上である。
【0039】
ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基の量は、多塩基酸と多価アルコールの配合比と反応率により、ポリエステルの末端のカルボキシル基量を制御することによって調整することができる。あるいは多塩基酸成分として無水トリメリット酸を使用することによってポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を有するものが得られる。ポリエステル系樹脂が有するカルボキシル基の量は、酸価で1〜30が好適である。
【0040】
導電性粉末と被覆樹脂との比率は特に限定されないが、一般的にできるだけ樹脂分が低い方が印刷後に焼成して電気回路、電極等を形成する場合に好都合である。一方樹脂分が低くなりすぎると被覆が不十分となる。このようなことから、本発明のカプセル化粒子においては導電性粉末部分に対する被覆樹脂の比率は1〜50質量%が好ましく、特に好ましくは5〜20質量%である。
【0041】
必要であれば、樹脂溶液またはそれと混合する水性媒体、あるいはその双方に本発明の効果を損なわない限りにおいて、乳化剤や分散安定剤を使用してもよい。
【0042】
この場合の分散安定剤としては、水溶性高分子化合物が好ましく、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。また乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル等のノニオン系、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系、或いはカチオン系の各種界面活性剤が挙げられる。もちろん、二種以上の乳化剤を併用してもよいし、二種以上の分散安定剤を併用してもよいし、乳化剤と分散安定剤とを併用してもよいが、分散安定剤を主体にして乳化剤を併用するのが一般的である。
【0043】
被覆樹脂の溶解および導電性粉末の分散のために用いる有機溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、などが挙げられ、これらの二種以上を混合して用いてもよい。また、有機溶剤は、結着樹脂を溶解するものであり、かつ、水との親和性のある極性溶剤が好ましい。一つの目安として水に対する溶解度が5〜30重量%のものが好ましく、また、毒性が比較的低く、かつ後工程で脱溶剤し易い低沸点のものが好ましい。そのような溶剤の例としては、メチルエチルケトンがあげられる。
【0044】
前記の導電性粉末と、中和により自己水分散性を有する非水溶性樹脂と、有機溶剤の混合物を水性媒体中に分散して、カプセル化粒子を形成することができる。中和による非水溶性樹脂への自己水分散性の付与は、該混合物の水性媒体中への分散と同時もしくは、これに先んじて行うことができる。
【0045】
中和により自己水分散性を有する、非水溶性樹脂の官能基を中和する方法としては、
(a−1)予め酸もしくは塩基で中和された官能基を有する樹脂を用いて、さらに導電性粉末および有機溶剤を配合して混合物を調製する方法、あるいは
(a−2)官能基を有する樹脂、導電性粉末および有機溶剤を含有する混合物を調製した後、酸もしくは塩基で該混合物を中和する方法、
(a−3)水性媒体中に中和剤を混合しておき、水性媒体への分散と同時に中和する方法、が挙げられる。
【0046】
一方、樹脂の官能基を酸もしくは塩基で中和して混合物とした後、水性媒体中に分散する方法としては、
(b−1)該混合物を水性媒体中に加えて分散する方法、あるいは
(b−2)該混合物中に水性媒体を添加する方法、が挙げられる。
上記(a−2)と(b−2)との組み合わせによれば、非水溶性樹脂のカプセル被膜が均一となり易いため好ましい。(b−2)の方法においては水性媒体の添加にしたがって、Water in Oilの不連続相からOil in Waterの不連続相へと転相が起こり、乳化もしくは分散が転相現象を伴って進行して、水性媒体中にカプセル化粒子が生じる。
【0047】
酸性基を有する非水溶性樹脂を、中和により自己水分散性を有する樹脂として用いる場合、酸性基(カルボキシル基)を中和するために用いる中和剤用の塩基としては、特に制限はなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのごとき無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンのごとき有機塩基が用いられる。
【0048】
一方、塩基性基を有する非水溶性樹脂を、中和により自己水分散性を有する樹脂として用いる場合には、塩基性基を中和するために用いる中和剤用の酸としては例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、シュウ酸、蟻酸、酢酸、琥珀酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が用いられる。
【0049】
酸性基や塩基性記の中和率はこれを調整することにより、金属微粒子の粒径を制御することができる。すなわち中和率が低いと粒径は大きくなり、中和率が高いと粒径は小さくなる。これは、中和率によって、水性媒体中に安定的に生成するカプセル化粒子の粒子径が決まるためである。従って、この粒子径と、被覆されるべき金属微粒子の粒径との関係から、絶縁性樹脂の被覆膜厚が決定され、さらに、前記関係を用いて逆に被覆膜厚をコントロールすることができる。このようなコントロールは、また、後述する転相促進剤の量によっても可能であって、転相促進剤の量を増やすと粒径が増加し、減らすと粒径が減少する。
【0050】
本発明のカプセル化粒子を製造するには、樹脂と有機溶剤、導電性粉末と中和剤を混合し、攪拌後、さらに通常は定速で攪拌を行いつつ徐々に水を加えて転相乳化を行う。水の添加当初は有機溶剤中に添加した水が水滴状態で攪拌されるが、水の添加量の増加とともにその量が増加し、やがてWater in Oilの不連続相から、Oil in Waterの不連続相への転相が起こり、水中に樹脂の油滴が一部は油滴中に導電性粉末を伴いつつ、攪拌される状態となる。
上記の転相過程を通じて、混合物の粘度と攪拌抵抗は水の添加開始とともに徐々に上昇し、転相の完了する直前に最大となって後、一気に減少する。
【0051】
このように転相の完了する前後に混合物の粘度が上昇し、攪拌抵抗を増加させるため、混合物中の導電性粉末材料と非水溶性樹脂が高いずり応力を受けつつ攪拌されることになる。このためちょうど混合物全体を分散に先立ち高いシェアで混練するのと同等の効果が得られると考えられ、導電性粉末材料と非水溶性樹脂との濡れ性が向上したため、転相乳化後に被覆樹脂に被覆された、導電性粉末と樹脂との間に空隙のないカプセル化粒子が得られたものと考えられる。
あるいは、水性媒体の添加に伴って生成し、増加していく水滴が、撹拌時に撹拌羽根から受ける高いシェアによって、樹脂と水溶性有機溶剤のすみずみまで拡がり、あるときは凝集状態にある導電性粉末の構成粒子間にまで入り込んでいくため最終的に微分散した顔料粒子が得られると思われる。
【0052】
本発明の製造方法は、上記の工程において混合物の粘度の最大値が2Pa・s以上とするが、3Pa・s以上であるとさらに好ましく、4Pa・s以上であることが最も好ましい。さらに水性媒体の添加、攪拌時における混合物の粘度の時々刻々の変化は直接的に攪拌抵抗の変化となるため、定速で攪拌するときの攪拌機の負荷電流によって規定することもできる。このような観点に立てば、負荷電流の最大値は、水性媒体添加前の負荷電流の4倍以上であることが必要であり、6倍以上がさらに好ましく8倍以上であることが最も好ましい。
【0053】
なお本発明の製造方法では、導電性粉末を均一に被覆するために、転相促進剤の存在下でカプセル化を行うこともできる。ここで転相促進剤とは、Water in Oilの分散状態から、Oil in Waterの分散状態への転相促進機能を有するものである。転相促進剤の添加によって、金属微粒子と自己水分散性樹脂とを水性媒体中へより容易に分散することが可能となる。
【0054】
本発明での転相促進剤としては、例えばアルコール溶剤と金属塩化物が使用できる。
【0055】
アルコール溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどが使用できる。勿論、その他のものであっても使用できる。中でも好ましいものは、水に溶解し沸点が低い、イソプロパノール、n−プロパノールが好ましい。アルコール溶剤の使用量は、樹脂固形分100重量部当たり、10〜50重量部程度である。
【0056】
金属塩化合物としては、公知慣用のものが使用できるが、2価以上の金属塩で水に溶解するものが好ましい。例えば、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化第一銅、塩化第二銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、などが挙げられる。金属塩化合物の使用量は、樹脂固形分100重量部当たり、0.01〜3重量部程度である。
【0057】
導電性粉末と非水溶性の自己水分散性樹脂と有機溶剤との混合物は、導電性粉末の粒径が3μm以上であれば、自己水分散性樹脂の有機溶剤溶液に導電性粉末を混合し、撹拌翼により混合することで分散することが可能である。一方、導電性粉末の粒径が1μm以下の場合には凝集性が強くなるので、さらにこれを湿式で混練して分散体を得るようにすることが好ましい。
【0058】
本発明においては、特開平9−114135号公報で開示されているような撹拌装置、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等を使用して、撹拌しながら水を滴下する方法が好ましく、該撹拌翼の周速が0.2〜10m/s、より好ましくは0.5〜6m/sで撹拌しながら水を滴下する方法が好ましい。
その際、導電性粉末と非水溶性の自己水分散性樹脂と有機溶剤との混合物に、水性媒体を添加しつつ攪拌して転相乳化を行うとき、使用する攪拌翼の周速での粘度の最大値が2Pa・s以上になるように転相乳化の条件を設定することにより、樹脂による被覆むらからの導電性粉末の露出部分が無く、さらに導電性粉末が凝集したまま樹脂で被覆された粒子が無く、さらには、導電性粉末と被覆樹脂との界面に濡れ不良から発生する空隙等が無いカプセル化粒子が得られる。粘度の最大値は3Pa・s以上がさらに好ましく、4Pa・s以上にすると最も好ましい。
【0059】
転相乳化時の混合物の撹拌中の粘度を上記のような最適状態にするためには、導電性粉末材料と非水溶性樹脂と有機溶剤を含有する水性媒体添加前の混合物の配合が重要であるが、導電性粉末材料の材質、粒径に応じてその配合を適宜調整することが好ましい。
例えば体積平均粒子径6μmの銅粉を用いる場合、該混合物中の非水溶性樹脂に対して、有機溶剤、中和剤、転相促進剤等液体成分が2倍以下であることが好ましい。導電性粉末材料の粒径がより小さくなると、転相乳化を行うときの攪拌時における粘度が上昇する傾向があるため、有機溶剤等の液体成分の配合量はさらに増加させることができる。
【0060】
また、導電性粉末と非水溶性の自己水分散性樹脂と有機溶剤との混合物を水性媒体を添加しつつ、転相を伴って水性媒体中に分散させるにときに、ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)、あるいはスラッシャー(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザー(みづほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社)、スタテイックミキサー(ノリタケカンパニー)などの高シェアー乳化分散機機や連続式乳化分散機等も使用できる。
【0061】
以上の製造方法により得られる導電性粉末を非水溶性樹脂で被覆したカプセル化粒子の分散液は、蒸留等の手段により先ず有機溶媒を除去してから、該粒子を液媒体と分離し、乾燥することにより、カプセル化粒子の粉末を得る。
【0062】
カプセル化粒子中の導電性粉末を被覆する絶縁用の非水溶性樹脂として、酸性基含有の非水溶性樹脂を塩基性の中和剤で中和して得られる自己水分散性樹脂を用いる場合においては、カプセル化粒子の形成後、有機溶剤を除去した後、例えば塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、蓚酸などの酸性の中和剤で、該粒子表面の、塩基性化合物で中和された官能基を、もとの官能基に戻す逆中和処理を行い、官能基をもつ被膜樹脂の水分散性をより低下させてから、水を除去して乾燥することが好ましい。
前記非水溶性樹脂として塩基性基含有の非水溶性樹脂を酸性の中和剤で中和して得られる自己水分散性樹脂を用いるときは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのような無機塩基や、ジメチルアミン、トリメチルアミン、イソプロピルアミンのような有機塩基で同様の逆中和処理を行うことが好ましい。
【0063】
カプセル化粒子を液体から分離する方法としては、比重差を利用した自然沈降法、あるいは遠心力を利用した各種遠心分離機、あるいは、フィルタープレス等の、減圧あるいは加圧による濾布濾過等により行われる。
【0064】
乾燥は、公知慣用の方法がいずれも採用できる。例えばカプセル化粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下又は減圧下で乾燥してもよいし、凍結乾燥を行っても良い。連続瞬間気流式乾燥機やスプレードライヤー等を用いて、乾燥を行ってもよい。以上のような乾燥装置としては、ナウターミキサー(ホソカワミクロン社製)、リボコーン(大河原製作所製)、フラッシュジェットドライヤー等が挙げられる。
【0065】
形成されたカプセル化粒子の粒度分布を整えるため、粗大粒子や微小粒子を除去するための分級が必要な場合には、乾燥終了後に、一般的な気流式分級機を用いて公知慣用の方法で分級を行うことができる。また、カプセル化粒子が水性媒体中に分散している段階で、粒径による沈降性の違いを利用して、カプセル化粒子の水スラリーを遠心分離機を用いて分級する方法、あるいは液体サイクロン等を用いて分級する方法等、で行うこともできる。粗大粒子の除去については、カプセル化粒子の水スラリーを、フィルターや湿式振動篩いなどで濾過することにより、行うことができる。
【0066】
このようにして得られた、本発明によるカプセル化粒子は、樹脂による被覆むらに起因する導電性粉末の露出部分、さらに導電性粉末が凝集して解砕されないまま樹脂で被覆された粒子、さらには、導電性粉末と被覆樹脂との界面に濡れ不良から発生する空隙等が無いため、個々のカプセル化粒子に均一な樹脂被覆を形成することができ、その結果、個々の粒子に均一な帯電性を付与することができる。
【0067】
本発明のカプセル化粒子を用いて、絶縁性無機質基体上に電子回路用の導電性回路パターンを形成するには、前記カプセル化粒子を構成成分として用いて静電荷像現像剤を作製し、絶縁性無機質基体上に静電印刷法により回路パターンを印刷する。しかるのち、前記回路パターンを焼結して金属の導電性回路パターンを作製する。
【0068】
前記静電荷像現像剤を作製するには、本発明のカプセル化粒子に疎水性シリカ粒子等を必要に応じて外添して、非磁性一成分現像用の静電荷像現像剤とすることができる。また疎水性シリカ粒子等の外添ののち、さらにキャリアを加えて二成分現像用の静電荷像現像剤とすることができる。
【0069】
前述のように本発明の導電性粉末を絶縁性樹脂で被覆したカプセル化粒子には、静電荷像現像剤の主構成成分として、必要に応じてその他の添加剤を内包あるいは外添してもよい。例えば、静電印刷法による乾式現像剤に公知慣用に用いられるような帯電制御剤や離型剤(ワックス等)を本発明粒子に含有させてもよいし、ガラスフリットや疎水性シリカ、酸化チタン等の無機微粒子、あるいは有機微粒子、などを本発明のカプセル化粒子に公知慣用の方法で添加してもよい。
【0070】
帯電制御剤としては公知の材料が全て使用可能であり、カプセル化粒子中の金属微粒子を被覆する絶縁性樹脂と混合、あるいは該樹脂に分散して内包される。帯電制御剤としては、例えばニグロシン系染料、四級アンモニウム塩、Cr含金染料、Zn含金染料、Fe含金染料、Zr含金染料、モリブデン酸キレート染料、フッ素変成4級アンモニウム塩等が帯電極性に応じて適宜選択して用いられる。
【0071】
ワックスとしては公知の材料が全て使用可能であり、カプセル化粒子中の導電性粉末を被覆する絶縁性樹脂と混合、あるいは該樹脂に分散して内包される。ワックスとしては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、等が挙げられ、非磁性1成分現像剤として使用されたとき、現像装置内の規制部材(ブレード)や現像剤担持体(現像ローラ)等に対するカプセル化粒子の固着の問題を低減させる効果がある。
【0072】
ガラスフリットは、カプセル化粒子中の導電性粉末を被覆する絶縁性樹脂に内包、もしくはカプセル化粒子に外添され、絶縁性無機質基体上に印刷された導電性回路パターンを焼結する際に、該基体上にカプセル化粒子中の導電性粉末を焼き付ける役割を果たすものであり、焼結時に溶解あるいは半溶解状態となり、室温に冷却されると完全に固化し、導電性粉末を該基体上に固定する効果がある。
【0073】
疎水性シリカ、酸化チタン等の無機微粒子、あるいは有機微粒子などは、カプセル化粒子に外添され、静電印刷法による乾式現像剤として用いる場合に、流動性や帯電性等の物理的特性を改良する効果がある。
【0074】
このような外添剤としては、各種シリコーンオイルで処理された疎水性シリカ等、乾式現像剤に公知慣用に用いられるものが好適に使用できる。
【0075】
外添方法は、公知慣用の機種を用いて処理される。例えば、ヘンシェルミキサー、あるいはスーパーヘンシェルミキサー、ハイブリダイザー等が挙げられる。
【0076】
前記のカプセル化粒子を用いて二成分現像装置用の静電荷像現像剤を構成するには、該カプセル化粒子にキャリアを混合させる必要がある。キャリアとしては、二成分現像方式で使用する公知慣用のものが使用できる。例えば、コア材としての鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物等の粒子に、各種樹脂被覆を設けた、アクリル樹脂被覆キャリア、シリコーン樹脂被覆キャリア、フッ素樹脂被覆キャリア、フッ素/アクリル樹脂被覆キャリア等の各種樹脂被覆キャリアが好適に用いられる。キャリアの平均粒径としては、特に限定はないが、20〜200ミクロン程度のもの、さらに好ましくは40〜110μmの範囲が好適に使用される。
【0077】
本発明の製造方法で製造したカプセル化粒子を粉体トナーとし、電子写真用の現像剤を構成して、電子写真法によるオンデマンドで絶縁性無機質基体上に印刷し、次いで焼成することにより、高精度の回路パターンを作製することができる。すなわち、前記カプセル化粒子より製造された現像剤は、帯電レベルが高く、電荷がリークせず、かつ静電印刷された回路パターンを焼成した際、金属粒子の密度の高い低抵抗の導電性回路パターンを確保でき、さらに、静電印刷による回路パターン形成時に、現像剤の飛散やカブリがないため、回路の焼結時に不要な電気的短絡路を形成しない。
【0078】
【実施例】
以下、樹脂合成例および実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、「部」は「重量部」を表わし、「水」は「脱イオン水」の意である。
【0079】
(被覆用樹脂の合成例1)
メチルエチルケトン114部、イソプロピルアルコール12部及び水24部を反応容器に入れ、80℃に加熱した後、以下に示した割合の混合物を、窒素気流中で、一括して仕込み、反応を開始する。
アクリル酸 54.0部
スチレン 364.8部
アクリル酸ブチル 181.2部
「パーブチルO」 0.6部
【0080】
反応開始3時間経過後から1時間おきに、反応樹脂溶液の約10部をサンプリングし、同量のメチルエチルケトンで希釈し、ガードナー粘度計で粘度を測定する。粘度がM−Nとなる時点で、メチルエチルケトン567部及びイソプロピルアルコール63部から成る混合溶媒を添加する。この時のモノマー残存率をガスクロマトグラフィーを用いて定量して重合率を計算すると51%である。反応溶液の温度を80℃に加熱した後、以下に示した割合の混合物を1時間かけて滴下する。
アクリル酸 54.0部
スチレン 456.6部
アクリル酸ブチル 89.4部
「パーブチルO」 18.0部
【0081】
滴下終了後、3時間ごとに3回「パーブチルO」(日本油脂製触媒)2部を添加し、さらに4時間反応を継続させる。反応終了後、この樹脂溶液を加熱脱気し、固形化処理を行なう。この固形化樹脂は2山の分子量分布をもち、その重量平均分子量は110,000である。また、この2山をその境目で区切ると、重量平均分子量が35,000と360,000の2つの部分に分割でき、その比が78対22である。この固形化樹脂の酸価は70、ガラス転移温度は60℃である。以下、R−1と略記する。
【0082】
(被覆用樹脂の合成例2)
メチルエチルケトン450部を反応容器に入れ、80℃に加熱した後、以下に示した割合の混合物を、窒素気流中で、2時間にわたり滴下し、反応を行った。
アクリル酸 9.0部
スチレン 282.0部
アクリル酸ブチル 9.0部
「パーブチルO」 15.0部
ついで、滴下終了してから、3時間毎に3回パーブチルOの3部を添加し、さらに4時間反応を継続した。その後、脱溶剤を行い、固形樹脂を得た。この樹脂のガラス転移温度は60℃、重量平均分子量は5100、酸価は19であった。以下、R−2と略記する。
【0083】
以下に転相乳化を行う際の混合物の粘度を測定する方法について述べる。
(粘度の測定方法)
転相乳化を実施する際に用いるのと同じ攪拌装置セット(フラスコ、攪拌翼、スリーワンモーター等)に、転相乳化までの仕込量(導電性粉末、樹脂、溶剤、水)と同量のJIS−Z−8809に定める粘度計校正用標準液を仕込む。その際、仕込む標準液の種類はJS1000,2000,14000,52000の4種類であり、各々液温を30℃に調整した後、転相乳化を実施する時と同じ回転数で標準液を攪拌し、その時のトルク値を測定する。各標準液の粘度は30℃の時、それぞれ、0.43Pa・s、0.82Pa・s、4.8Pa.s、18Pa・sに対応し、粘度とトルク値の関係をグラフ化する。実際に、転相乳化を実施する時の撹拌中の粘度を測定するには、導電性粉末、樹脂、溶剤を含有する混合物を撹拌しつつ水性媒体添加する転相乳化操作を行いつつ、撹拌装置のトルク値を測定する。そして、その最大値を求めて、前記したグラフから対応する粘度値を読みとり、転相乳化時における攪拌中の混合物の粘度の最大値とする。
【0084】
本発明における導電性粉末のカプセル化粒子を製造する際、導電性粉末の種類、導電性粉末の表面処理の状態、粒子径等によって、目的とする粘度の最大値を得るための最適配合が異なる。導電性粉末の種類、表面処理の状態が同じ場合、一般に粒子径が小さい程、同じ配合では高い粘度の値が得られる。
【0085】
(実施例1)R−1樹脂135部とR−2樹脂15部をメチルエチルケトン207部に溶解した樹脂溶液、体積平均粒径6.0μmの銅粉末150部、1規定水酸化ナトリウム水溶液35.8部、転相促進剤としてイソプロピルアルコール54.9部を反応容器に仕込み、10分撹拌した後、水を100部を加えさらに20分撹拌を行い、温度を30℃に調整する。その後、周速3.15m/secで撹拌しながら水30部を滴下することによって転相乳化させ、さらに水の300部で希釈し、銅粒子をカプセル化したカプセル化粒子の分散液を得た。この時の粘度の最大値は3.1Pa・sであった。次いで、減圧蒸留により有機溶媒を除去してから、1N塩酸で液媒体のPHを3とした。次いで、遠心分離機で銅未含有のカプセル化粒子を除去した後、カプセル化粒子を液媒体から分離するとともに水洗した。得られたウェットケーキは、真空混合乾燥機にて乾燥することによりカプセル化粒子の粉末を得た。この粒子の体積平均粒径は7.0μmで、被覆樹脂量は6.2重量%であった。ここで、カプセル化粒子の水スラリーを光学顕微鏡(600倍)を使い、カプセル化の状態を透過光で観察すると、個々の銅粒子はそれぞれ樹脂で完全にカプセル化されていた。
【0086】
(実施例2)R1樹脂の150部をメチルエチルケトン225部に溶解した溶液に、平均粒径3.5μmの銀粉末300部、「TETRAD−X」(三菱瓦斯化学工業製のN,N,N’,N’ーテトラグリシジルメタキシレンジアミン;グリシジル基平均官能基数4、グリシジル基当量100g/eq)7.5部、1規定水酸化ナトリウム水溶液31.5部、転相促進剤としてイソプロピルアルコールの52.5部を反応容器に仕込み、周速3.15m/secで撹拌しながら水430部を滴下することによって転相乳化させ、さらに水300部で希釈し、銀粒子をカプセル化したカプセル化粒子の分散液を得た。この時の粘度の最大値は2.9Pa・sであった。次いで、減圧蒸留により有機溶媒を除去してから、撹拌しながら70℃にて4時間架橋反応を行った。次いで実施例1と同様にしてカプセル化粒子の粉末を得た。この粒子の体積平均粒径は4.0μmで、被覆樹脂量は7.2重量%であった。ここで、カプセル化粒子の水スラリーを光学顕微鏡(600倍)を使い、カプセル化の状態を透過光で観察すると、個々の銅粒子はそれぞれ樹脂で完全にカプセル化されていた。
【0087】
実施例3〜5について、表1のカプセル化条件を用いて実施例1または2と同様にカプセル化粒子を作製し、体積平均粒径、被覆樹脂量を測定し、カプセル化状態を観察した。
粒子の体積平均粒径はコールターマルチサイザーによる測定で実施し、被覆樹脂量は、堀場製作所製 炭素分析装置EMIA−110で測定した。カプセル化状態は、光学顕微鏡(600倍)を使い、水分散の状態で透過光で観察した結果、金属微粒子の露出がなく透明な樹脂層で覆われているものを◎、樹脂層と導電性粉末の界面に若干空隙を含んだ状態のものを○、金属微粒子の露出は見られないが、樹脂層と導電性粉末の界面に空隙が相当数存在する状態のものを△、露出が認められるものを×、とした。
【0088】
(比較例1)実施例1における樹脂を溶解するメチルエチルケトンを279部に、添加する1規定水酸化ナトリウム水溶液を28.4部に変更した以外は同様の処理を実施し、カプセル化粒子の粉末を得た。
【0089】
(比較例2)実施例2における樹脂を溶解するメチルエチルケトンを319部に、添加する1規定水酸化ナトリウム水溶液を26.7部に変更した以外は同様の処理を実施し、カプセル化粒子の粉末を得た。
【0090】
【表1】
(表1)カプセル化条件とカプセル化粒子のカプセル化状況
【0091】
表1の結果が示すように、実施例1〜5では良好なカプセル化粒子が形成されているのに対し、比較例1、2で形成されたカプセル化粒子は、樹脂層と導電性粉末の界面に空隙が相当数存在し、また1部で導電性部分の露出が確認された。
【0092】
(導電性粉末含有カプセル化粒子の摩擦帯電量の測定)実施例1〜5、比較例1〜2で得られたカプセル化粒子100部に対し、クラリアント社製シリコーンオイルコートの疎水性シリカ(H−1018)の0.5部をヘンシェルミキサーで外添した。得られた外添済みカプセル化粒子の20部と、コア材がマンガンフェライトで、コート材がシリコン樹脂コートされた、粒径60ミクロンのキャリア80部とをボールミルを用いて混合した。混合時間30分、の時点で、ホソカワミクロン(株)社製のE−SPARTアナライザー MODEL EST−IIにより帯電量と逆帯電カプセル化粒子の個数%を測定した。測定条件は以下の通りである。
(E−SPARTアナライザーの測定条件)
・ブロー圧:0.02MPa
・カウント粒子数:3000個
・電極間電位差:100V
【0093】
(現像剤の画像評価)上記で得られた外添済み樹脂粒子とキャリアからなる現像剤をリコー社製二成分複写機(MF−530)に充填して、回路パターンの印刷を行い、その印刷画像の評価、OPC上のカブリの評価を行った。印刷画像の評価は、エッジの再現性、細線再現性を評価した。エッジの再現性は、印刷後焼成したときの導体界面の平滑性を示すもので、エッジの乱れた印刷画像では導体を形成したときの高周波領域の抵抗値が高くなるため好ましくない。エッジがきれいに再現されているものを○、やや乱れのあるものを△、著しく乱れているものを×で示した。
【0094】
(細線再現性)細線再現性は、導電パターンの解像度を示すもので、細線再現性の劣るものは導通しなくなる可能性があるため好ましくない。細線がきれいに再現されているものを○、やや乱れがあるものを△、著しく乱れがあるものを×とした。
【0095】
(OPC上のカブリの評価)OPC上のカブリが多いと導電パターンを形成したときに短絡する可能性がある。カブリが少なく、短絡の可能性がないものを○、カブリがややおおいものを△、カブリが多く、短絡の可能性があるものを×とした。表2に評価結果を示した。
【0096】
【表2】
表2.実施例、比較例の試料を使用した現像剤の評価結果
【0097】
表2より、実施例1から5の本発明のカプセル化粒子を使用した現像剤は、いずれも印刷画像の再現性は良好であり、問題ないことが判る。一方、比較例1、2のカプセル化粒子を使用した現像剤は、帯電量が低く、逆帯電のトナーも相当数存在するため、エッジ再現性、細線再現性、OPCカブリとも悪い結果となった。
【0098】
【発明の効果】
本発明の導電性粉末を樹脂で被覆したカプセル化粒子は樹脂による被覆むらからの導電性粉末の露出部分が無く、さらに導電性粉末が凝集したまま樹脂で被覆された粒子が無く、さらには、導電性粉末と被覆樹脂との界面に濡れ不良から発生する空隙等が無い。その結果、電子写真法の技術を使用して導電体パターンを形成することが可能で、かつ、良好な帯電性を発現することができる。従って現像剤とした時に、電荷がリークしないので高精度の回路パターンを静電印刷法で絶縁性無機質基体上に再現できる。また、静電印刷された回路パターンの焼成により、導電性粉末の密度の高い低抵抗の導電性回路パターンを確保でき、さらに、静電印刷による回路パターン形成時に、現像剤の飛散やカブリがなく、回路パターンの焼結時に不要な電気的短絡路を形成しない。
【発明の属する技術分野】
本発明は、広く導電性回路パターンを印刷するのに好適に用いられる、銅、銀、金、白金、タングステンなどの金属、合金などの微粉末が、絶縁性合成樹脂にカプセル化された、カプセル化粒子およびその製造方法に関するものであり、特にその用途として、絶縁性無機質基体上に、静電印刷方式で導電性回路パターンを形成する際に用いられる静電荷像現像用カプセル化粒子、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種電子装置を構成するセラミック基板上の電気回路や電極などの導電性回路パターンは、銅や銀などの導電性粉末を含有するペーストを使用し、スクリーン印刷や平版印刷などによって目的とするパターンを形成し、次いでこれを焼成することにより製造されている。しかしながら、この方法では印刷版の製作が不可欠であり、製作のための費用や時間がかさむため少数品の生産や短納期を要求される製品の製造には適していない。そこで導電性粉末を絶縁性合成樹脂で被覆したカプセル化粒子を粉体トナーとして用いて電子写真法によるオンデマンド印刷を行うことが提唱されており(例えば特許文献1参照)、カプセル化粒子の製造方法が各種提示されている。すなわち導電性金属粒子の周囲に熱溶融性樹脂の超微粒子を付着させたのち機械的衝撃で該樹脂を溶融させて導電性金属粒子の周囲に樹脂の外壁を作る方法(例えば特許文献2参照)や、銅粒子と荷電制御剤と熱溶融性樹脂を含有する混合物を熱溶融混練したのち粗粉砕する方法(例えば特許文献3)があるが、粉体トナーとしての良好な帯電特性を発揮するには至っていない。
これに対して導電材料を中和により自己水分散性となりうる非水溶性樹脂でカプセル化する方法によって製造されたカプセル化粒子は、良好な電気絶縁性や摩擦帯電性を示し、導電性回路パターンを印刷する粉体トナーとしてより実用化の可能性が高い。(例えば特許文献4参照)
【0003】
導電性回路パターン作製用のトナーが実現されるには以下のような特性を高いレベルで実現する必要がある。
すなわち、▲1▼高精度の回路パターンを静電印刷法で絶縁性無機質基体上に再現するために、現像剤の帯電レベルが高く、電荷がリークしないこと。
▲2▼静電印刷された回路パターンの焼成により、金属粒子の密度の高い低抵抗の導電性回路パターンを確保できること。
▲3▼静電印刷による回路パターン形成時に、現像剤の飛散やカブリがなく、回路パターンの焼結時に不要な電気的短絡路を形成しないこと。である。
【0004】
しかしながら現在までのところ上記のような回路パターン作製のための特性を、高いレベルで実現した実用性の高い粉体トナーは開発されていない。導電性粉末と樹脂との密着性や、導電性樹脂の凝集の問題などは、実用化に向けてさらなる向上が必要とされる点である。導電材料の粒子を助剤、分散剤等で表面処理し被覆樹脂と導電性粉末粒子表面の濡れを促進し均一な樹脂被覆を形成する方法等も提案されているが、表面処理後の導電性粉末が凝集し易い等の問題があり、実用化のための特性向上にむけてより一層の改良が求められている。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−078191号公報
【特許文献2】
特開平4−237062号公報
【特許文献3】
特開平11−265089号公報
【特許文献4】
特開2001−106928号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、電子写真法の技術を使用して導電体パターンを形成することが可能で、かつ、良好な帯電性を発現することにより上記▲1▼から▲3▼に記載した特性を満足する、導電性粉末を絶縁性合成樹脂で被覆したカプセル化粒子およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者は上記課題につき鋭意検討した結果、次のようなことを見出し本発明を完成した。
すなわち個々のカプセル化粒子に均一な帯電性を付与して、上記▲1▼から▲3▼の特性を満足させるには、樹脂による被覆むらから発生する導電性粉末の露出部分が無いこと、さらに導電性粉末が凝集したまま樹脂で被覆された粒子が無いこと、さらには、導電性粉末と被覆樹脂との界面に、該界面の濡れ不良から発生する空隙等が無いことが必要である。
転相乳化の工程は、ゲル化を防止し、均一な転相乳化を行うために攪拌時の混合物の粘度をあまり上昇させずに1.5Pa・s以下程度の最大粘度となるよう混合物の粘度を調整して行うのが通常である。発明者らは転相乳化の工程を、通常は転相乳化に好ましくないと思われていた高粘度領域において試みることによって、実は導電性粉末の非水溶性樹脂による被覆状況を従来より改善することができ、さらに粗大なカプセル化粒子の混入を従来より減少させられることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は上記目的を達成するため、導電性粉末と中和により自己水分散性となりうる非水溶性樹脂と有機溶剤とを含有する混合物を、中和剤の存在下に攪拌しつつ水性媒体と混合し転相乳化することにより、前記導電性粉末を前記非水溶性樹脂で被覆したカプセル化粒子の水分散液を得る工程を有するカプセル化粒子の製造方法であって、前記工程における転相乳化時の攪拌中の混合物の粘度の最大値が2Pa・s以上であることを特徴とするカプセル化粒子の製造方法を提供する。
【0009】
このような製造方法を用いると、攪拌時に混合物に働く高い剪断応力によって、導電性粉末の表面と被覆樹脂との濡れが著しく改善されるため、助剤や分散剤で導電性粉末粒子表面の表面処理を行わなくても、樹脂による被覆むらからの導電性粉末の露出部分が無いか極めて少ないカプセル化粒子が得られる。このようにして得られたカプセル化粒子は、さらに攪拌時に導電性粉末粒子表面がより大きなずり応力を受けている。このため、凝集粒子の解砕が進行しやすく凝集粒子のまま樹脂で被覆されて形成された粒子が無いか極めて少ない。さらにこのようにして得られたカプセル化粒子には、導電性粉末粒子表面と被覆樹脂との濡れ性が向上するため、導電性粉末と被覆樹脂との界面に濡れ不良から発生する空隙等が発生しない。
【0010】
さらに前記工程の転相乳化時において、前記混合物の撹拌中の粘度の最大値が、水性媒体を混合する前の混合物の粘度の4倍以上であると、確実に転相乳化の工程において導電性粉末表面に強いシェアをかけることが出来るため好ましい。前記混合前の混合物の粘度の6倍以上がさらに好ましく、8倍以上が最も好ましい。なお水性媒体を混合する前の混合物の粘度とは、該混合物がすでに非ニュートン流体のときは、該混合物を水性媒体混合後の撹拌速度と同一速度で撹拌したときの粘度をいうものとする。
【0011】
さらに本発明は前記カプセル化粒子と疎水性シリカ粒子を含有することを特徴とする非磁性一成分現像用の静電荷像現像剤を提供する。
さらに本発明は前記カプセル化粒子と疎水性シリカ粒子とキャリアとを含有することを特徴とする二成分現像用の静電荷像現像剤を提供する。
さらに本発明は前記一成分現像用及び二成分現像用の静電荷像現像剤を用い、静電印刷法により絶縁性無機質基体上に回路パターンを印刷し、該回路パターンを燒結して導電性回路パターンを得ることを特徴とする導電性回路パターンの製造方法を提供する。
【発明の実施の形態】
【0012】
本発明のカプセル化粒子の製造方法に使用する導電性粉末には、体積平均粒径1〜50μmの金属微粉末が好ましく、2〜10μmの体積平均粒径を持つものが精細な回路パターンを形成でき、しかも帯電の制御が比較的行いやすいためさらに好ましい。
また、中和により自己水分散性をとなりうる非水溶性樹脂としては酸性基含有のスチレン(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好適であり、さらに酸性基としてはカルボキシル基が好適である。
【0013】
本発明のカプセル化粒子の製造方法においては、導電性粉末の表面処理用に用いられ、該表面処理によって、導電性粉末と、中和により自己水分散性となりうる非水溶性樹脂、との濡れを促進する機能を果たす助剤または分散剤を実質的に使用せずに転相乳化することが好ましい。
このような助剤、または分散剤による表面処理を用いないことによって、カプセル化粒子を製造する工程を簡略にすることができる。このような助剤、分散剤を用いると、表面処理の方法によっては後の転相乳化時の攪拌のみでは微粒子化できない凝集粒子が発生する可能性がある。さらに表面処理に用いた助剤、分散剤等は、導電性粉末を被覆する非水溶性樹脂とは反対の帯電特性を有することが多いため、導電性粉末のカプセル化粒子を静電印刷用のトナーとして用いると、逆帯電粒子の増加する原因となる可能性がある。
本発明の方法を用いるとこれら従来の表面処理を用いる必要がないため、そのマイナス効果を懸念することなく、しかも表面処理を行った場合と同等以上の、導電性材料と非水溶性樹脂との濡れ性を実現することができる。
【0014】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
なお本明細書中の記載において「転相乳化時」とは、導電性粉末、非水溶性樹脂、有機溶剤を含有する混合物を撹拌しつつ、水性媒体を添加開始してから転相乳化操作の終了までの過程全体を含むものとし、特に例えばWater in Oil がOil in Water に転相完了した時点を示すときは「転相乳化完了時」としてこれを区別するものとする。
【0015】
本発明で使用する導電性粉末としては、導電性を有する非水溶性物質であればよく、特に限定はされないが、銅、銀、アルミニウム、金、白金、ニッケル、鉄などの金属粉末、スズ・鉛、銀・スズ・鉛などの合金粉末、酸化スズ、酸化アンチモンなどの酸化物の粉末、などが挙げられる。これらの中でも、抵抗率が1×10−4Ωcm以下のものが特に好適である。また、導電性粉の体積平均粒径としては1μm〜50μmの範囲にある微粒子が導電性回路パターンの精細性確保などの点で好ましく、1〜10μmの範囲がさらに好適である。粒径は、マイクロトラック・ウルトラフアインパーチクルアナライザーやコールターマルチサイザーなどを使用して測定することができる。
【0016】
本発明で使用する導電性粉末被覆用の非水溶性樹脂は、中和することにより自己水分散性となりうる非水溶性の樹脂であって、電気絶縁性を有し摩擦帯電性を有する樹脂であれば良く、その他の点について特に限定されるものではない。以下本発明において使用する非水溶性樹脂に対しては、被覆樹脂あるいは絶縁樹脂との名称を併用する。
【0017】
本発明において、中和により自己水分散性となる非水溶性樹脂とは、一般に、中和により電解質となりうる官能基を有する樹脂、あるいは酸基または塩基性基を有し、中和によってそれぞれアニオン性またはカチオン性を有することになる樹脂であり、該官能基の一部または全部が中和されると、乳化剤または分散安定剤を用いることなく安定した水分散体を形成できる樹脂をいう。中和により電解質となりうる官能基としては、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、1級、2級、3級アミノ基などが挙げられる。これら官能基を有する非水溶性樹脂としては、トナー用に公知慣用に用いられる樹脂を好適に使用することができ、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。本発明においては、官能基としてカルボキシル基を有するスチレン(メタ)アクリル樹脂およびポリエステル樹脂が、特に造粒性や導電性粉末の均一な被覆性などの点で好ましく、なかでも官能基としてカルボキシル基を有するスチレン(メタ)アクリル樹脂がさらに好ましい。
【0018】
中和により自己水分散性となりうる、上記カルボキシル基を有するスチレン(メタ)アクリル樹脂としては、スチレン系単量体を必須成分として、カルボキシル基を有したラジカル重合性単量体と、これら以外のカルボキシル基を有しないラジカル重合性単量体を、ラジカル重合開始剤の存在下でラジカル共重合させたものが使用できる。重合反応は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など、通常一般の方法でよい。
【0019】
カルボキシル基を有するラジカル重合性単量体としては、例えばアクリル酸メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチルなどが挙げられる。
【0020】
カルボキシル基を有しないラジカル重合性単量体としては、
(1)スチレン系単量体:スチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレンもしくはクロルスチレンなど、
【0021】
(2)アクリル酸エステル類:アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシルアクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシルもしくはアクリル酸ドデシル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、アルファクロルアクリル酸メチルなど、
【0022】
(3)メタクリル酸エステル:メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−クロルエチル、メタクリル酸フェニル、アルファクロルメタクリル酸メチルなど、
【0023】
(4)その他アクリル酸、メタクリル酸誘導体:アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなど、
【0024】
(5)ビニルエーテル:ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなど、
【0025】
(6)ビニルケトン:ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなど、
【0026】
(7)N−ビニル化合物:N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどを挙げることができる。
【0027】
上記単量体を溶液重合させる場合の溶媒としては、汎用の有機溶媒を使用できる。具体的には、トルエン、キシレンもしくはベンゼンなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノールもしくはブタノールなどのアルコール類;セロソルブもしくはカルビトールなどのエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類;またはブチルセロソルブアセテートなどのエーテルエステル類等、いわゆる不活性溶剤である。
【0028】
また、ラジカル重合開始剤としては、公知慣用の各種の有機過酸化物系、およびアゾ系の開始剤が使用できる。具体的には、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物が挙げられる。
【0029】
前記被覆樹脂は、そのままでも使用できるが、必要に応じて被覆樹脂の一部を架橋してもよい。樹脂の架橋は、カプセル化粒子を形成した後、被覆樹脂の架橋性官能基と架橋剤との加熱反応により、粒子内架橋反応によって行うことが好ましい。
【0030】
カプセル化粒子を造粒した後の粒子内架橋は、被覆樹脂の架橋性官能基と架橋剤との加熱反応によって行うことができる。被覆樹脂の架橋性官能基がカルボキシル基である場合には、架橋剤としては、例えば、アミノプラスト樹脂、1分子中にグリシジル基を平均2個以上有する化合物、1分子中に1,3−ジオキソラン−2−オン−4イル基を平均2個以上有する化合物、1分子中にカルボジイミド基を平均2個以上有する化合物、1分子中にオキサゾリン基を平均2個以上有する化合物、金属キレート化合物等が挙げられる。また、被覆樹脂の架橋性官能基が水酸基である場合には、架橋剤としては、例えば、アミノプラスト樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート樹脂等が挙げられる。
【0031】
架橋反応は、水性媒体の沸点以下の温度であって、かつ、粒子の融着を避けるために、粒子のガラス転移温度よりもあまり高くない温度で行うのが好ましい。反応温度の範囲は、40〜100℃が好ましく、60〜100℃が特に好ましい架橋反応に要する時間は、架橋反応がほぼ完結するのに要する時間であればよく、例えば70℃では2〜6時間程度である。
【0032】
架橋剤としてグリシジルアミン化合物およびその他のグリシジル基を有する化合物を使用する場合、2−メチルイミダゾールなどの公知の触媒を使用したり、グリシジル基の一部にジブチルアミンなどの第二級モノアミン等を付加して、グリシジル基を有する化合物に自己触媒能を付与する方法なども採用できる。
【0033】
被覆樹脂は、DSC(示差走査熱量計)で測定したガラス転移温度が50℃以上の範囲にあるものが好ましく、60℃以上の範囲がさらに好ましい。ガラス転移温度が50℃よりも低い場合には得られる粉体トナーの熱安定性が悪くなる傾向がみられる。
【0034】
被覆樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量(ポリスチレン換算ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した値)は10,000〜300,000の範囲にあるものが好ましく、20,000〜150,000の範囲にあるものがより好ましい。重量平均分子量が10,000よりも小さい場合、転相後に水相に溶ける樹脂が多くなり、導電体被覆樹脂粒子の収率が減少する傾向にあり、また、架橋反応が十分に進行しない傾向にある。重量平均分子量が300,000よりも大きい場合には、転相乳化し難くなる傾向がみられる。
【0035】
本発明では、被覆樹脂として、トナー用に用いられている公知慣用の、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂も使用することができる。このようなポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多塩基酸またはその低級アルコールエステルまたは酸無水物とを、必要に応じて触媒の存在下に重縮合あるいは重付加させて製造できる。
【0036】
多塩基酸類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸および酸無水物類、無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸および酸無水物類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多塩基酸を1種または2種以上用いることができる。
【0037】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類、グリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールの1種または2種以上用いることができる。
【0038】
十分な耐熱性を得るためには、ポリエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上である。
【0039】
ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基の量は、多塩基酸と多価アルコールの配合比と反応率により、ポリエステルの末端のカルボキシル基量を制御することによって調整することができる。あるいは多塩基酸成分として無水トリメリット酸を使用することによってポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を有するものが得られる。ポリエステル系樹脂が有するカルボキシル基の量は、酸価で1〜30が好適である。
【0040】
導電性粉末と被覆樹脂との比率は特に限定されないが、一般的にできるだけ樹脂分が低い方が印刷後に焼成して電気回路、電極等を形成する場合に好都合である。一方樹脂分が低くなりすぎると被覆が不十分となる。このようなことから、本発明のカプセル化粒子においては導電性粉末部分に対する被覆樹脂の比率は1〜50質量%が好ましく、特に好ましくは5〜20質量%である。
【0041】
必要であれば、樹脂溶液またはそれと混合する水性媒体、あるいはその双方に本発明の効果を損なわない限りにおいて、乳化剤や分散安定剤を使用してもよい。
【0042】
この場合の分散安定剤としては、水溶性高分子化合物が好ましく、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。また乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル等のノニオン系、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系、或いはカチオン系の各種界面活性剤が挙げられる。もちろん、二種以上の乳化剤を併用してもよいし、二種以上の分散安定剤を併用してもよいし、乳化剤と分散安定剤とを併用してもよいが、分散安定剤を主体にして乳化剤を併用するのが一般的である。
【0043】
被覆樹脂の溶解および導電性粉末の分散のために用いる有機溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、などが挙げられ、これらの二種以上を混合して用いてもよい。また、有機溶剤は、結着樹脂を溶解するものであり、かつ、水との親和性のある極性溶剤が好ましい。一つの目安として水に対する溶解度が5〜30重量%のものが好ましく、また、毒性が比較的低く、かつ後工程で脱溶剤し易い低沸点のものが好ましい。そのような溶剤の例としては、メチルエチルケトンがあげられる。
【0044】
前記の導電性粉末と、中和により自己水分散性を有する非水溶性樹脂と、有機溶剤の混合物を水性媒体中に分散して、カプセル化粒子を形成することができる。中和による非水溶性樹脂への自己水分散性の付与は、該混合物の水性媒体中への分散と同時もしくは、これに先んじて行うことができる。
【0045】
中和により自己水分散性を有する、非水溶性樹脂の官能基を中和する方法としては、
(a−1)予め酸もしくは塩基で中和された官能基を有する樹脂を用いて、さらに導電性粉末および有機溶剤を配合して混合物を調製する方法、あるいは
(a−2)官能基を有する樹脂、導電性粉末および有機溶剤を含有する混合物を調製した後、酸もしくは塩基で該混合物を中和する方法、
(a−3)水性媒体中に中和剤を混合しておき、水性媒体への分散と同時に中和する方法、が挙げられる。
【0046】
一方、樹脂の官能基を酸もしくは塩基で中和して混合物とした後、水性媒体中に分散する方法としては、
(b−1)該混合物を水性媒体中に加えて分散する方法、あるいは
(b−2)該混合物中に水性媒体を添加する方法、が挙げられる。
上記(a−2)と(b−2)との組み合わせによれば、非水溶性樹脂のカプセル被膜が均一となり易いため好ましい。(b−2)の方法においては水性媒体の添加にしたがって、Water in Oilの不連続相からOil in Waterの不連続相へと転相が起こり、乳化もしくは分散が転相現象を伴って進行して、水性媒体中にカプセル化粒子が生じる。
【0047】
酸性基を有する非水溶性樹脂を、中和により自己水分散性を有する樹脂として用いる場合、酸性基(カルボキシル基)を中和するために用いる中和剤用の塩基としては、特に制限はなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのごとき無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンのごとき有機塩基が用いられる。
【0048】
一方、塩基性基を有する非水溶性樹脂を、中和により自己水分散性を有する樹脂として用いる場合には、塩基性基を中和するために用いる中和剤用の酸としては例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、シュウ酸、蟻酸、酢酸、琥珀酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が用いられる。
【0049】
酸性基や塩基性記の中和率はこれを調整することにより、金属微粒子の粒径を制御することができる。すなわち中和率が低いと粒径は大きくなり、中和率が高いと粒径は小さくなる。これは、中和率によって、水性媒体中に安定的に生成するカプセル化粒子の粒子径が決まるためである。従って、この粒子径と、被覆されるべき金属微粒子の粒径との関係から、絶縁性樹脂の被覆膜厚が決定され、さらに、前記関係を用いて逆に被覆膜厚をコントロールすることができる。このようなコントロールは、また、後述する転相促進剤の量によっても可能であって、転相促進剤の量を増やすと粒径が増加し、減らすと粒径が減少する。
【0050】
本発明のカプセル化粒子を製造するには、樹脂と有機溶剤、導電性粉末と中和剤を混合し、攪拌後、さらに通常は定速で攪拌を行いつつ徐々に水を加えて転相乳化を行う。水の添加当初は有機溶剤中に添加した水が水滴状態で攪拌されるが、水の添加量の増加とともにその量が増加し、やがてWater in Oilの不連続相から、Oil in Waterの不連続相への転相が起こり、水中に樹脂の油滴が一部は油滴中に導電性粉末を伴いつつ、攪拌される状態となる。
上記の転相過程を通じて、混合物の粘度と攪拌抵抗は水の添加開始とともに徐々に上昇し、転相の完了する直前に最大となって後、一気に減少する。
【0051】
このように転相の完了する前後に混合物の粘度が上昇し、攪拌抵抗を増加させるため、混合物中の導電性粉末材料と非水溶性樹脂が高いずり応力を受けつつ攪拌されることになる。このためちょうど混合物全体を分散に先立ち高いシェアで混練するのと同等の効果が得られると考えられ、導電性粉末材料と非水溶性樹脂との濡れ性が向上したため、転相乳化後に被覆樹脂に被覆された、導電性粉末と樹脂との間に空隙のないカプセル化粒子が得られたものと考えられる。
あるいは、水性媒体の添加に伴って生成し、増加していく水滴が、撹拌時に撹拌羽根から受ける高いシェアによって、樹脂と水溶性有機溶剤のすみずみまで拡がり、あるときは凝集状態にある導電性粉末の構成粒子間にまで入り込んでいくため最終的に微分散した顔料粒子が得られると思われる。
【0052】
本発明の製造方法は、上記の工程において混合物の粘度の最大値が2Pa・s以上とするが、3Pa・s以上であるとさらに好ましく、4Pa・s以上であることが最も好ましい。さらに水性媒体の添加、攪拌時における混合物の粘度の時々刻々の変化は直接的に攪拌抵抗の変化となるため、定速で攪拌するときの攪拌機の負荷電流によって規定することもできる。このような観点に立てば、負荷電流の最大値は、水性媒体添加前の負荷電流の4倍以上であることが必要であり、6倍以上がさらに好ましく8倍以上であることが最も好ましい。
【0053】
なお本発明の製造方法では、導電性粉末を均一に被覆するために、転相促進剤の存在下でカプセル化を行うこともできる。ここで転相促進剤とは、Water in Oilの分散状態から、Oil in Waterの分散状態への転相促進機能を有するものである。転相促進剤の添加によって、金属微粒子と自己水分散性樹脂とを水性媒体中へより容易に分散することが可能となる。
【0054】
本発明での転相促進剤としては、例えばアルコール溶剤と金属塩化物が使用できる。
【0055】
アルコール溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどが使用できる。勿論、その他のものであっても使用できる。中でも好ましいものは、水に溶解し沸点が低い、イソプロパノール、n−プロパノールが好ましい。アルコール溶剤の使用量は、樹脂固形分100重量部当たり、10〜50重量部程度である。
【0056】
金属塩化合物としては、公知慣用のものが使用できるが、2価以上の金属塩で水に溶解するものが好ましい。例えば、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化第一銅、塩化第二銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、などが挙げられる。金属塩化合物の使用量は、樹脂固形分100重量部当たり、0.01〜3重量部程度である。
【0057】
導電性粉末と非水溶性の自己水分散性樹脂と有機溶剤との混合物は、導電性粉末の粒径が3μm以上であれば、自己水分散性樹脂の有機溶剤溶液に導電性粉末を混合し、撹拌翼により混合することで分散することが可能である。一方、導電性粉末の粒径が1μm以下の場合には凝集性が強くなるので、さらにこれを湿式で混練して分散体を得るようにすることが好ましい。
【0058】
本発明においては、特開平9−114135号公報で開示されているような撹拌装置、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等を使用して、撹拌しながら水を滴下する方法が好ましく、該撹拌翼の周速が0.2〜10m/s、より好ましくは0.5〜6m/sで撹拌しながら水を滴下する方法が好ましい。
その際、導電性粉末と非水溶性の自己水分散性樹脂と有機溶剤との混合物に、水性媒体を添加しつつ攪拌して転相乳化を行うとき、使用する攪拌翼の周速での粘度の最大値が2Pa・s以上になるように転相乳化の条件を設定することにより、樹脂による被覆むらからの導電性粉末の露出部分が無く、さらに導電性粉末が凝集したまま樹脂で被覆された粒子が無く、さらには、導電性粉末と被覆樹脂との界面に濡れ不良から発生する空隙等が無いカプセル化粒子が得られる。粘度の最大値は3Pa・s以上がさらに好ましく、4Pa・s以上にすると最も好ましい。
【0059】
転相乳化時の混合物の撹拌中の粘度を上記のような最適状態にするためには、導電性粉末材料と非水溶性樹脂と有機溶剤を含有する水性媒体添加前の混合物の配合が重要であるが、導電性粉末材料の材質、粒径に応じてその配合を適宜調整することが好ましい。
例えば体積平均粒子径6μmの銅粉を用いる場合、該混合物中の非水溶性樹脂に対して、有機溶剤、中和剤、転相促進剤等液体成分が2倍以下であることが好ましい。導電性粉末材料の粒径がより小さくなると、転相乳化を行うときの攪拌時における粘度が上昇する傾向があるため、有機溶剤等の液体成分の配合量はさらに増加させることができる。
【0060】
また、導電性粉末と非水溶性の自己水分散性樹脂と有機溶剤との混合物を水性媒体を添加しつつ、転相を伴って水性媒体中に分散させるにときに、ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)、あるいはスラッシャー(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザー(みづほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社)、スタテイックミキサー(ノリタケカンパニー)などの高シェアー乳化分散機機や連続式乳化分散機等も使用できる。
【0061】
以上の製造方法により得られる導電性粉末を非水溶性樹脂で被覆したカプセル化粒子の分散液は、蒸留等の手段により先ず有機溶媒を除去してから、該粒子を液媒体と分離し、乾燥することにより、カプセル化粒子の粉末を得る。
【0062】
カプセル化粒子中の導電性粉末を被覆する絶縁用の非水溶性樹脂として、酸性基含有の非水溶性樹脂を塩基性の中和剤で中和して得られる自己水分散性樹脂を用いる場合においては、カプセル化粒子の形成後、有機溶剤を除去した後、例えば塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、蓚酸などの酸性の中和剤で、該粒子表面の、塩基性化合物で中和された官能基を、もとの官能基に戻す逆中和処理を行い、官能基をもつ被膜樹脂の水分散性をより低下させてから、水を除去して乾燥することが好ましい。
前記非水溶性樹脂として塩基性基含有の非水溶性樹脂を酸性の中和剤で中和して得られる自己水分散性樹脂を用いるときは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのような無機塩基や、ジメチルアミン、トリメチルアミン、イソプロピルアミンのような有機塩基で同様の逆中和処理を行うことが好ましい。
【0063】
カプセル化粒子を液体から分離する方法としては、比重差を利用した自然沈降法、あるいは遠心力を利用した各種遠心分離機、あるいは、フィルタープレス等の、減圧あるいは加圧による濾布濾過等により行われる。
【0064】
乾燥は、公知慣用の方法がいずれも採用できる。例えばカプセル化粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下又は減圧下で乾燥してもよいし、凍結乾燥を行っても良い。連続瞬間気流式乾燥機やスプレードライヤー等を用いて、乾燥を行ってもよい。以上のような乾燥装置としては、ナウターミキサー(ホソカワミクロン社製)、リボコーン(大河原製作所製)、フラッシュジェットドライヤー等が挙げられる。
【0065】
形成されたカプセル化粒子の粒度分布を整えるため、粗大粒子や微小粒子を除去するための分級が必要な場合には、乾燥終了後に、一般的な気流式分級機を用いて公知慣用の方法で分級を行うことができる。また、カプセル化粒子が水性媒体中に分散している段階で、粒径による沈降性の違いを利用して、カプセル化粒子の水スラリーを遠心分離機を用いて分級する方法、あるいは液体サイクロン等を用いて分級する方法等、で行うこともできる。粗大粒子の除去については、カプセル化粒子の水スラリーを、フィルターや湿式振動篩いなどで濾過することにより、行うことができる。
【0066】
このようにして得られた、本発明によるカプセル化粒子は、樹脂による被覆むらに起因する導電性粉末の露出部分、さらに導電性粉末が凝集して解砕されないまま樹脂で被覆された粒子、さらには、導電性粉末と被覆樹脂との界面に濡れ不良から発生する空隙等が無いため、個々のカプセル化粒子に均一な樹脂被覆を形成することができ、その結果、個々の粒子に均一な帯電性を付与することができる。
【0067】
本発明のカプセル化粒子を用いて、絶縁性無機質基体上に電子回路用の導電性回路パターンを形成するには、前記カプセル化粒子を構成成分として用いて静電荷像現像剤を作製し、絶縁性無機質基体上に静電印刷法により回路パターンを印刷する。しかるのち、前記回路パターンを焼結して金属の導電性回路パターンを作製する。
【0068】
前記静電荷像現像剤を作製するには、本発明のカプセル化粒子に疎水性シリカ粒子等を必要に応じて外添して、非磁性一成分現像用の静電荷像現像剤とすることができる。また疎水性シリカ粒子等の外添ののち、さらにキャリアを加えて二成分現像用の静電荷像現像剤とすることができる。
【0069】
前述のように本発明の導電性粉末を絶縁性樹脂で被覆したカプセル化粒子には、静電荷像現像剤の主構成成分として、必要に応じてその他の添加剤を内包あるいは外添してもよい。例えば、静電印刷法による乾式現像剤に公知慣用に用いられるような帯電制御剤や離型剤(ワックス等)を本発明粒子に含有させてもよいし、ガラスフリットや疎水性シリカ、酸化チタン等の無機微粒子、あるいは有機微粒子、などを本発明のカプセル化粒子に公知慣用の方法で添加してもよい。
【0070】
帯電制御剤としては公知の材料が全て使用可能であり、カプセル化粒子中の金属微粒子を被覆する絶縁性樹脂と混合、あるいは該樹脂に分散して内包される。帯電制御剤としては、例えばニグロシン系染料、四級アンモニウム塩、Cr含金染料、Zn含金染料、Fe含金染料、Zr含金染料、モリブデン酸キレート染料、フッ素変成4級アンモニウム塩等が帯電極性に応じて適宜選択して用いられる。
【0071】
ワックスとしては公知の材料が全て使用可能であり、カプセル化粒子中の導電性粉末を被覆する絶縁性樹脂と混合、あるいは該樹脂に分散して内包される。ワックスとしては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、等が挙げられ、非磁性1成分現像剤として使用されたとき、現像装置内の規制部材(ブレード)や現像剤担持体(現像ローラ)等に対するカプセル化粒子の固着の問題を低減させる効果がある。
【0072】
ガラスフリットは、カプセル化粒子中の導電性粉末を被覆する絶縁性樹脂に内包、もしくはカプセル化粒子に外添され、絶縁性無機質基体上に印刷された導電性回路パターンを焼結する際に、該基体上にカプセル化粒子中の導電性粉末を焼き付ける役割を果たすものであり、焼結時に溶解あるいは半溶解状態となり、室温に冷却されると完全に固化し、導電性粉末を該基体上に固定する効果がある。
【0073】
疎水性シリカ、酸化チタン等の無機微粒子、あるいは有機微粒子などは、カプセル化粒子に外添され、静電印刷法による乾式現像剤として用いる場合に、流動性や帯電性等の物理的特性を改良する効果がある。
【0074】
このような外添剤としては、各種シリコーンオイルで処理された疎水性シリカ等、乾式現像剤に公知慣用に用いられるものが好適に使用できる。
【0075】
外添方法は、公知慣用の機種を用いて処理される。例えば、ヘンシェルミキサー、あるいはスーパーヘンシェルミキサー、ハイブリダイザー等が挙げられる。
【0076】
前記のカプセル化粒子を用いて二成分現像装置用の静電荷像現像剤を構成するには、該カプセル化粒子にキャリアを混合させる必要がある。キャリアとしては、二成分現像方式で使用する公知慣用のものが使用できる。例えば、コア材としての鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物等の粒子に、各種樹脂被覆を設けた、アクリル樹脂被覆キャリア、シリコーン樹脂被覆キャリア、フッ素樹脂被覆キャリア、フッ素/アクリル樹脂被覆キャリア等の各種樹脂被覆キャリアが好適に用いられる。キャリアの平均粒径としては、特に限定はないが、20〜200ミクロン程度のもの、さらに好ましくは40〜110μmの範囲が好適に使用される。
【0077】
本発明の製造方法で製造したカプセル化粒子を粉体トナーとし、電子写真用の現像剤を構成して、電子写真法によるオンデマンドで絶縁性無機質基体上に印刷し、次いで焼成することにより、高精度の回路パターンを作製することができる。すなわち、前記カプセル化粒子より製造された現像剤は、帯電レベルが高く、電荷がリークせず、かつ静電印刷された回路パターンを焼成した際、金属粒子の密度の高い低抵抗の導電性回路パターンを確保でき、さらに、静電印刷による回路パターン形成時に、現像剤の飛散やカブリがないため、回路の焼結時に不要な電気的短絡路を形成しない。
【0078】
【実施例】
以下、樹脂合成例および実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、「部」は「重量部」を表わし、「水」は「脱イオン水」の意である。
【0079】
(被覆用樹脂の合成例1)
メチルエチルケトン114部、イソプロピルアルコール12部及び水24部を反応容器に入れ、80℃に加熱した後、以下に示した割合の混合物を、窒素気流中で、一括して仕込み、反応を開始する。
アクリル酸 54.0部
スチレン 364.8部
アクリル酸ブチル 181.2部
「パーブチルO」 0.6部
【0080】
反応開始3時間経過後から1時間おきに、反応樹脂溶液の約10部をサンプリングし、同量のメチルエチルケトンで希釈し、ガードナー粘度計で粘度を測定する。粘度がM−Nとなる時点で、メチルエチルケトン567部及びイソプロピルアルコール63部から成る混合溶媒を添加する。この時のモノマー残存率をガスクロマトグラフィーを用いて定量して重合率を計算すると51%である。反応溶液の温度を80℃に加熱した後、以下に示した割合の混合物を1時間かけて滴下する。
アクリル酸 54.0部
スチレン 456.6部
アクリル酸ブチル 89.4部
「パーブチルO」 18.0部
【0081】
滴下終了後、3時間ごとに3回「パーブチルO」(日本油脂製触媒)2部を添加し、さらに4時間反応を継続させる。反応終了後、この樹脂溶液を加熱脱気し、固形化処理を行なう。この固形化樹脂は2山の分子量分布をもち、その重量平均分子量は110,000である。また、この2山をその境目で区切ると、重量平均分子量が35,000と360,000の2つの部分に分割でき、その比が78対22である。この固形化樹脂の酸価は70、ガラス転移温度は60℃である。以下、R−1と略記する。
【0082】
(被覆用樹脂の合成例2)
メチルエチルケトン450部を反応容器に入れ、80℃に加熱した後、以下に示した割合の混合物を、窒素気流中で、2時間にわたり滴下し、反応を行った。
アクリル酸 9.0部
スチレン 282.0部
アクリル酸ブチル 9.0部
「パーブチルO」 15.0部
ついで、滴下終了してから、3時間毎に3回パーブチルOの3部を添加し、さらに4時間反応を継続した。その後、脱溶剤を行い、固形樹脂を得た。この樹脂のガラス転移温度は60℃、重量平均分子量は5100、酸価は19であった。以下、R−2と略記する。
【0083】
以下に転相乳化を行う際の混合物の粘度を測定する方法について述べる。
(粘度の測定方法)
転相乳化を実施する際に用いるのと同じ攪拌装置セット(フラスコ、攪拌翼、スリーワンモーター等)に、転相乳化までの仕込量(導電性粉末、樹脂、溶剤、水)と同量のJIS−Z−8809に定める粘度計校正用標準液を仕込む。その際、仕込む標準液の種類はJS1000,2000,14000,52000の4種類であり、各々液温を30℃に調整した後、転相乳化を実施する時と同じ回転数で標準液を攪拌し、その時のトルク値を測定する。各標準液の粘度は30℃の時、それぞれ、0.43Pa・s、0.82Pa・s、4.8Pa.s、18Pa・sに対応し、粘度とトルク値の関係をグラフ化する。実際に、転相乳化を実施する時の撹拌中の粘度を測定するには、導電性粉末、樹脂、溶剤を含有する混合物を撹拌しつつ水性媒体添加する転相乳化操作を行いつつ、撹拌装置のトルク値を測定する。そして、その最大値を求めて、前記したグラフから対応する粘度値を読みとり、転相乳化時における攪拌中の混合物の粘度の最大値とする。
【0084】
本発明における導電性粉末のカプセル化粒子を製造する際、導電性粉末の種類、導電性粉末の表面処理の状態、粒子径等によって、目的とする粘度の最大値を得るための最適配合が異なる。導電性粉末の種類、表面処理の状態が同じ場合、一般に粒子径が小さい程、同じ配合では高い粘度の値が得られる。
【0085】
(実施例1)R−1樹脂135部とR−2樹脂15部をメチルエチルケトン207部に溶解した樹脂溶液、体積平均粒径6.0μmの銅粉末150部、1規定水酸化ナトリウム水溶液35.8部、転相促進剤としてイソプロピルアルコール54.9部を反応容器に仕込み、10分撹拌した後、水を100部を加えさらに20分撹拌を行い、温度を30℃に調整する。その後、周速3.15m/secで撹拌しながら水30部を滴下することによって転相乳化させ、さらに水の300部で希釈し、銅粒子をカプセル化したカプセル化粒子の分散液を得た。この時の粘度の最大値は3.1Pa・sであった。次いで、減圧蒸留により有機溶媒を除去してから、1N塩酸で液媒体のPHを3とした。次いで、遠心分離機で銅未含有のカプセル化粒子を除去した後、カプセル化粒子を液媒体から分離するとともに水洗した。得られたウェットケーキは、真空混合乾燥機にて乾燥することによりカプセル化粒子の粉末を得た。この粒子の体積平均粒径は7.0μmで、被覆樹脂量は6.2重量%であった。ここで、カプセル化粒子の水スラリーを光学顕微鏡(600倍)を使い、カプセル化の状態を透過光で観察すると、個々の銅粒子はそれぞれ樹脂で完全にカプセル化されていた。
【0086】
(実施例2)R1樹脂の150部をメチルエチルケトン225部に溶解した溶液に、平均粒径3.5μmの銀粉末300部、「TETRAD−X」(三菱瓦斯化学工業製のN,N,N’,N’ーテトラグリシジルメタキシレンジアミン;グリシジル基平均官能基数4、グリシジル基当量100g/eq)7.5部、1規定水酸化ナトリウム水溶液31.5部、転相促進剤としてイソプロピルアルコールの52.5部を反応容器に仕込み、周速3.15m/secで撹拌しながら水430部を滴下することによって転相乳化させ、さらに水300部で希釈し、銀粒子をカプセル化したカプセル化粒子の分散液を得た。この時の粘度の最大値は2.9Pa・sであった。次いで、減圧蒸留により有機溶媒を除去してから、撹拌しながら70℃にて4時間架橋反応を行った。次いで実施例1と同様にしてカプセル化粒子の粉末を得た。この粒子の体積平均粒径は4.0μmで、被覆樹脂量は7.2重量%であった。ここで、カプセル化粒子の水スラリーを光学顕微鏡(600倍)を使い、カプセル化の状態を透過光で観察すると、個々の銅粒子はそれぞれ樹脂で完全にカプセル化されていた。
【0087】
実施例3〜5について、表1のカプセル化条件を用いて実施例1または2と同様にカプセル化粒子を作製し、体積平均粒径、被覆樹脂量を測定し、カプセル化状態を観察した。
粒子の体積平均粒径はコールターマルチサイザーによる測定で実施し、被覆樹脂量は、堀場製作所製 炭素分析装置EMIA−110で測定した。カプセル化状態は、光学顕微鏡(600倍)を使い、水分散の状態で透過光で観察した結果、金属微粒子の露出がなく透明な樹脂層で覆われているものを◎、樹脂層と導電性粉末の界面に若干空隙を含んだ状態のものを○、金属微粒子の露出は見られないが、樹脂層と導電性粉末の界面に空隙が相当数存在する状態のものを△、露出が認められるものを×、とした。
【0088】
(比較例1)実施例1における樹脂を溶解するメチルエチルケトンを279部に、添加する1規定水酸化ナトリウム水溶液を28.4部に変更した以外は同様の処理を実施し、カプセル化粒子の粉末を得た。
【0089】
(比較例2)実施例2における樹脂を溶解するメチルエチルケトンを319部に、添加する1規定水酸化ナトリウム水溶液を26.7部に変更した以外は同様の処理を実施し、カプセル化粒子の粉末を得た。
【0090】
【表1】
(表1)カプセル化条件とカプセル化粒子のカプセル化状況
【0091】
表1の結果が示すように、実施例1〜5では良好なカプセル化粒子が形成されているのに対し、比較例1、2で形成されたカプセル化粒子は、樹脂層と導電性粉末の界面に空隙が相当数存在し、また1部で導電性部分の露出が確認された。
【0092】
(導電性粉末含有カプセル化粒子の摩擦帯電量の測定)実施例1〜5、比較例1〜2で得られたカプセル化粒子100部に対し、クラリアント社製シリコーンオイルコートの疎水性シリカ(H−1018)の0.5部をヘンシェルミキサーで外添した。得られた外添済みカプセル化粒子の20部と、コア材がマンガンフェライトで、コート材がシリコン樹脂コートされた、粒径60ミクロンのキャリア80部とをボールミルを用いて混合した。混合時間30分、の時点で、ホソカワミクロン(株)社製のE−SPARTアナライザー MODEL EST−IIにより帯電量と逆帯電カプセル化粒子の個数%を測定した。測定条件は以下の通りである。
(E−SPARTアナライザーの測定条件)
・ブロー圧:0.02MPa
・カウント粒子数:3000個
・電極間電位差:100V
【0093】
(現像剤の画像評価)上記で得られた外添済み樹脂粒子とキャリアからなる現像剤をリコー社製二成分複写機(MF−530)に充填して、回路パターンの印刷を行い、その印刷画像の評価、OPC上のカブリの評価を行った。印刷画像の評価は、エッジの再現性、細線再現性を評価した。エッジの再現性は、印刷後焼成したときの導体界面の平滑性を示すもので、エッジの乱れた印刷画像では導体を形成したときの高周波領域の抵抗値が高くなるため好ましくない。エッジがきれいに再現されているものを○、やや乱れのあるものを△、著しく乱れているものを×で示した。
【0094】
(細線再現性)細線再現性は、導電パターンの解像度を示すもので、細線再現性の劣るものは導通しなくなる可能性があるため好ましくない。細線がきれいに再現されているものを○、やや乱れがあるものを△、著しく乱れがあるものを×とした。
【0095】
(OPC上のカブリの評価)OPC上のカブリが多いと導電パターンを形成したときに短絡する可能性がある。カブリが少なく、短絡の可能性がないものを○、カブリがややおおいものを△、カブリが多く、短絡の可能性があるものを×とした。表2に評価結果を示した。
【0096】
【表2】
表2.実施例、比較例の試料を使用した現像剤の評価結果
【0097】
表2より、実施例1から5の本発明のカプセル化粒子を使用した現像剤は、いずれも印刷画像の再現性は良好であり、問題ないことが判る。一方、比較例1、2のカプセル化粒子を使用した現像剤は、帯電量が低く、逆帯電のトナーも相当数存在するため、エッジ再現性、細線再現性、OPCカブリとも悪い結果となった。
【0098】
【発明の効果】
本発明の導電性粉末を樹脂で被覆したカプセル化粒子は樹脂による被覆むらからの導電性粉末の露出部分が無く、さらに導電性粉末が凝集したまま樹脂で被覆された粒子が無く、さらには、導電性粉末と被覆樹脂との界面に濡れ不良から発生する空隙等が無い。その結果、電子写真法の技術を使用して導電体パターンを形成することが可能で、かつ、良好な帯電性を発現することができる。従って現像剤とした時に、電荷がリークしないので高精度の回路パターンを静電印刷法で絶縁性無機質基体上に再現できる。また、静電印刷された回路パターンの焼成により、導電性粉末の密度の高い低抵抗の導電性回路パターンを確保でき、さらに、静電印刷による回路パターン形成時に、現像剤の飛散やカブリがなく、回路パターンの焼結時に不要な電気的短絡路を形成しない。
Claims (11)
- 導電性粉末と中和により自己水分散性となりうる非水溶性樹脂と有機溶剤とを含有する混合物を、中和剤の存在下に攪拌しつつ水性媒体と混合し転相乳化することにより、前記導電性粉を前記非水溶性樹脂で被覆したカプセル化粒子の水分散液を得る工程を有するカプセル化粒子の製造方法であって、前記工程における転相乳化時の攪拌中の混合物の粘度の最大値が2Pa・s以上であることを特徴とするカプセル化粒子の製造方法。
- 前記工程における転相乳化時の攪拌中の前記混合物の粘度がの最大値が、水性媒体を混合する前の混合物の粘度の4倍以上である請求項1記載のカプセル化粒子の製造方法。
- 導電性粉末が、体積平均粒径1〜50μmの金属微粉末である請求項1または2に記載のカプセル化粒子の製造方法。
- 中和により自己水分散性をとなりうる非水溶性樹脂が、酸性基含有のスチレン(メタ)アクリル樹脂である請求項1から3のいずれかに記載のカプセル化粒子の製造方法。
- 中和により自己水分散性をとなりうる非水溶性樹脂が、酸性基含有のポリエステル樹脂である請求項1から3のいずれかに記載のカプセル化粒子の製造方法。
- 酸性基がカルボキシル基である請求項4または5記載のカプセル化粒子の製造方法。
- 前記導電性粉末が中和により自己水分散性となりうる非水溶性樹脂との濡れ促進のための表面処理を行っていないものである請求項1から6のいずれかに記載のカプセル化粒子の製造方法。
- 請求項1〜7に記載のカプセル化粒子の製造方法を用いて製造されたことを特徴とするカプセル化粒子。
- 請求項8に記載のカプセル化粒子と疎水性シリカ粒子とを含有することを特徴とする非磁性一成分現像用の静電荷像現像剤。
- 請求項8に記載のカップセル化粒子と疎水性シリカとキャリアとを含有することを特徴とする二成分現像用の静電荷像現像剤。
- 請求項9または請求項10に記載の現像剤を用い、静電印刷法により絶縁性無機質基体上に回路パターンを印刷し、該回路パターンを燒結して導電性回路パターンを得ることを特徴とする導電性回路パターンの製造方法。
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-
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- 2003-04-22 JP JP2003116903A patent/JP2004321871A/ja active Pending
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