JP2004316820A - ベンチレーテッドディスクロータ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ベンチレーテッドディスクロータの熱倒れを抑制する。
【解決手段】例えば鋳込み時に、車輪連結部材8が連設されている車輪連結部材2とは反対側の自由端側ディスク3を冷却水によって急冷することにより、当該自由端側ディスク3の金属組織を微細化すると共に当該自由端側ディスク3の圧縮残留応力を大きくし、熱容量の大きい車輪連結部材側ディスク2に対し、相対的に熱容量の小さい自由端側ディスク3の熱膨張を小さくし、双方の熱膨張差を小さくしてロータ本体1の熱倒れを抑制する。同様の効果は、例えば砂型4の車輪連結部材側ディスク2側にフローオフを設けたり、砂型4の自由端側ディスク3部分に凝固を促進する接種材7を配置したりすることでも得られる。
【選択図】 図1
【解決手段】例えば鋳込み時に、車輪連結部材8が連設されている車輪連結部材2とは反対側の自由端側ディスク3を冷却水によって急冷することにより、当該自由端側ディスク3の金属組織を微細化すると共に当該自由端側ディスク3の圧縮残留応力を大きくし、熱容量の大きい車輪連結部材側ディスク2に対し、相対的に熱容量の小さい自由端側ディスク3の熱膨張を小さくし、双方の熱膨張差を小さくしてロータ本体1の熱倒れを抑制する。同様の効果は、例えば砂型4の車輪連結部材側ディスク2側にフローオフを設けたり、砂型4の自由端側ディスク3部分に凝固を促進する接種材7を配置したりすることでも得られる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のディスクブレーキに使用されるベンチレーテッドディスクロータに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両のディスクブレーキに使用されるベンチレーテッドディスクロータは、ブレーキパッドに挟着されて摺動する二つの摺動面間に隙間を形成し、冷却効率を高めるようにしたものである。このようなベンチレーテッドディスクロータにおいて、例えばその形状を工夫することにより、制動時に発生する熱でロータ本体が傾く、所謂熱倒れを改善するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−46081公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のベンチレーテッドディスクロータでは、熱倒れの改善のために複雑な形状変更が必要となり、製造上のデメリットとなっている。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、複雑な形状変更を必要とせず、熱倒れを改善することができるベンチレーテッドディスクロータ及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のベンチレーテッドディスクロータ及びその製造方法は、車輪連結部材側と反対側の自由端側ディスクの圧縮残留応力を、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きくしたことを特徴とするものである。なお、前記車輪連結部材側ディスクとは、車輪側部材、或いは車軸に連結される部材が連設されている側のディスク、自由端側ディスクとは、自由端側ディスクとは、前記冷却効果を高めるための隙間を挟んで前記車輪連結部材側ディスクに対向している側のディスクを示す。
【0006】
【発明の効果】
本発明のベンチレーテッドディスクロータ及びその製造方法によれば、自由端側ディスクの圧縮残留応力を、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きくしたことにより、熱容量の大きな車輪連結部材側ディスクに対し、熱容量が小さく、より高温になる自由端側ディスクの熱膨張を小さくし、これにより双方の熱膨張差を小さくすることができるので、複雑な形状変更を必要とせず、熱倒れを改善することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るベンチレーテッドディスクロータの鋳造状態を示す説明図である。同図中、符号1はベンチレーテッドロータ本体、8は車輪側部材或いは車軸に連結される車輪連結部材、2は隙間を挟んで車輪連結部材側に連設する車輪連結部材側ディスク、3は、同じく隙間を挟んで前記車輪連結部材側ディスク2に対向する自由端側ディスクである。ちなみに、前記隙間は、周知のように、完全な隙間である必要はない。つまり、自由端側のブレーキパッド摺動面と、車輪連結部材側のブレーキパッド摺動面との間に放熱のための通路を形成すればよいのであって、その放熱通路を形式的に隙間と称する。また、前記車輪連結部材8は、一般にハットと呼ばれ、帽体形状をしており、この帽体形状の内側に車軸側部材、つまりハブナックルなどが取付けられ、帽体形状の外側に車輪側部材、つまりタイヤホイールが取付けられる。つまり、この実施形態の場合、前記帽体形状の車輪連結部材8が車輪連結部材側ディスク2側に突出しているので、前記自由端側ディスク3が車幅方向内側に位置し、車輪連結部材側ディスク2が車幅方向外側に位置する。
【0008】
前記ロータ本体1は、例えば黒鉛の含有量が、全組織中3.0%〜3.6%のFC100〜FC250相当のねずみ鋳鉄からなり、鋳鉄素材を溶かした溶湯を、予め成型した砂型(鋳型)4に流し込み、鋳込み後、所定の形状に加工する。そして、本実施形態では、前記溶湯が凝固し始めるときに、前記砂型4の一面、具体的には前記自由端側ディスク3側の面に冷却水を吹き付けて急冷する。冷却条件は、例えば毎秒30cm3 の冷却水を、前記砂型4の自由端側ディスク3側の面に満遍なく噴霧した。また、砂型4の車輪連結部材側ディスク2側の面は自然冷却、所謂放冷した。
【0009】
図2aには車輪連結部材側ディスク2、図2bには自由端側ディスク3の圧縮残留応力分布を示す。同図より、前記冷却水によって急冷された自由端側ディスク3の圧縮残留応力の方が、車輪連結部材側ディスク2の圧縮残留応力より大きいことが分かる。また、図3aには車輪連結部材側ディスク2、図3bには自由端側ディスクの金属組織の状態を示す。同図より、前記冷却水によって急冷された自由端側ディスク3の金属組織の方が、車輪連結部材側ディスクの金属組織より微細化されていることが分かる。
【0010】
このベンチレーテッドディスクロータをダイナモ試験機に取付け、所定の速度から停止状態まで減速する制動を所定回数繰り返した後、冷却中のロータ外周から5mmの位置での熱倒れ量を測定した。測定結果を図4に示す。なお、図中の比較例は、前記自由端側ディスク3側の冷却水による急冷を行っていないものである。同図から明らかなように、自由端側ディスク3を急冷した本実施形態(図では実施例)のベンチレーテッドディスクロータは、自由端側ディスクを急冷していない比較例のベンチレーテッドディスクロータに比して、熱倒れ量が小さい。これは、自由端側ディスク3の金属組織の微細化に伴って、当該自由端側ディスク3の圧縮残留応力が車輪連結部材側ディスク2の圧縮残留応力より大きいことに依存している。
【0011】
ベンチレーテッドディスクロータの熱倒れとは、例えば制動時の熱によって図5に示すようにロータ本体1が傾く現象で、車輪連結部材8が連設されている車輪連結部材側ディスク2の方が熱容量が大きく、相対的に熱容量の小さい自由端側ディスク3がより高温となるため、自由端側ディスク3の熱膨張が車輪連結部材側ディスク2の熱膨張より大きくなり、両者の熱膨張差によって熱倒れが発生する。そこで、本実施形態では、前記自由端側ディスク3の圧縮残留応力を大きくすることにより、当該自由端側ディスク3の膨張を抑制し、もって熱倒れを抑制することができる。圧縮残留応力は、引張応力に対する変形を抑制したり、熱膨張を抑制したりする作用があり、このうちの熱膨張抑制作用を利用して熱倒れを防止する。勿論、この実施形態では、ロータ本体1の複雑な形状変更を必要としない。
【0012】
図6は、本発明のベンチレーテッドディスクロータの他の実施形態を示す。この実施形態のベンチレーテッドディスクロータは、前記図1の実施形態のベンチレーテッドディスクロータと同じ形態であり、前記帽体形状の車輪連結部材8が車輪連結部材側ディスク2側に突出しているので、前記自由端側ディスク3が車幅方向内側に位置し、車輪連結部材側ディスク2が車幅方向外側に位置する。この実施形態では、前記砂型4のうち、ロータ本体1の車輪連結部材側ディスク2部分にフローオフ5が設けられている。図中の符号6は、夫々、湯道を示す。フローオフは、周知のように、揚りとも呼ばれ、溶湯が固った後に切削などにて取り除く部分である。本実施形態では、このフローオフにより車輪連結部材側ディスク2の冷却速度が遅くなる分、金属組織が均一化すると共に粗くなり、圧縮残留応力を小さくする作用がある。そのため、自由端側ディスク3の圧縮残留応力が車輪連結部材側ディスク2の圧縮残留応力より相対的に大きくなり、前記と同様に熱倒れを抑制する効果がある。
【0013】
図7は、本発明のベンチレーテッドディスクロータの更に他の実施形態を示す。この実施形態のベンチレーテッドディスクロータは、前記図1の実施形態のベンチレーテッドディスクロータと逆の形態であり、前記帽体形状の車輪連結部材8が自由端側ディスク3側に突出しているので、前車輪連結部材側ディスク2が車幅方向内側に位置し、自由端側ディスク3が車幅方向外側に位置する。この実施形態では、前記砂型4のうち、前記自由端側ディスク3が鋳込まれる部分に接種材7を配置してから注湯する。例えば砂型4の自由端側ディスク3と触れる部分の壁面に接種材7を噴霧するか、若しくは砂型4を作るための型の自由端側ディスク3の面に相当する部分に接種材7を噴霧しておき、砂型4を作ったときに砂型4の内壁に付着するようにしてもよい。接種材とは、一般に、鋳造製品の金属組織の改善や、脆化或いは引けといった鋳造不良の発生を抑制するものであり、例えばCa系、Si計、希土類からなる粉体からなり、黒鉛化促進効果がある。ここで、溶湯が、車輪連結部材側ディスク2及び自由端側ディスク3側に注湯されると、前記接種材7の黒鉛化促進効果によって自由端側ディスク3が早く凝固する。このとき、黒鉛組織の大きさを変える、具体的には自由端側ディスク3の金属組織を微細化することにより、当該自由端側ディスク3の圧縮残留応力が車輪連結部材側ディスク2の圧縮残留応力より相対的に大きくなり、前記と同様に、熱倒れを抑制する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のベンチレーテッドディスクロータの一実施形態を示す鋳造説明図である。
【図2】図1のベンチレーテッドディスクロータの圧縮残留応力の説明図である。
【図3】図1のベンチレーテッドディスクロータの金属組織の説明図である。
【図4】図1のベンチレーテッドディスクロータの熱倒れの説明図である。
【図5】ベンチレーテッドディスクロータの熱倒れの説明図である。
【図6】本発明のベンチレーテッドディスクロータの他の実施形態を示す鋳造説明図である。
【図7】本発明のベンチレーテッドディスクロータの更に他の実施形態を示す鋳造説明図である。
【符号の説明】
1はロータ本体
2は車輪連結部材側ディスク
3は自由端側ディスク
4は砂型
5はフローオフ
6は湯道
7は接種材
8は車輪連結部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のディスクブレーキに使用されるベンチレーテッドディスクロータに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両のディスクブレーキに使用されるベンチレーテッドディスクロータは、ブレーキパッドに挟着されて摺動する二つの摺動面間に隙間を形成し、冷却効率を高めるようにしたものである。このようなベンチレーテッドディスクロータにおいて、例えばその形状を工夫することにより、制動時に発生する熱でロータ本体が傾く、所謂熱倒れを改善するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−46081公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のベンチレーテッドディスクロータでは、熱倒れの改善のために複雑な形状変更が必要となり、製造上のデメリットとなっている。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、複雑な形状変更を必要とせず、熱倒れを改善することができるベンチレーテッドディスクロータ及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のベンチレーテッドディスクロータ及びその製造方法は、車輪連結部材側と反対側の自由端側ディスクの圧縮残留応力を、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きくしたことを特徴とするものである。なお、前記車輪連結部材側ディスクとは、車輪側部材、或いは車軸に連結される部材が連設されている側のディスク、自由端側ディスクとは、自由端側ディスクとは、前記冷却効果を高めるための隙間を挟んで前記車輪連結部材側ディスクに対向している側のディスクを示す。
【0006】
【発明の効果】
本発明のベンチレーテッドディスクロータ及びその製造方法によれば、自由端側ディスクの圧縮残留応力を、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きくしたことにより、熱容量の大きな車輪連結部材側ディスクに対し、熱容量が小さく、より高温になる自由端側ディスクの熱膨張を小さくし、これにより双方の熱膨張差を小さくすることができるので、複雑な形状変更を必要とせず、熱倒れを改善することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るベンチレーテッドディスクロータの鋳造状態を示す説明図である。同図中、符号1はベンチレーテッドロータ本体、8は車輪側部材或いは車軸に連結される車輪連結部材、2は隙間を挟んで車輪連結部材側に連設する車輪連結部材側ディスク、3は、同じく隙間を挟んで前記車輪連結部材側ディスク2に対向する自由端側ディスクである。ちなみに、前記隙間は、周知のように、完全な隙間である必要はない。つまり、自由端側のブレーキパッド摺動面と、車輪連結部材側のブレーキパッド摺動面との間に放熱のための通路を形成すればよいのであって、その放熱通路を形式的に隙間と称する。また、前記車輪連結部材8は、一般にハットと呼ばれ、帽体形状をしており、この帽体形状の内側に車軸側部材、つまりハブナックルなどが取付けられ、帽体形状の外側に車輪側部材、つまりタイヤホイールが取付けられる。つまり、この実施形態の場合、前記帽体形状の車輪連結部材8が車輪連結部材側ディスク2側に突出しているので、前記自由端側ディスク3が車幅方向内側に位置し、車輪連結部材側ディスク2が車幅方向外側に位置する。
【0008】
前記ロータ本体1は、例えば黒鉛の含有量が、全組織中3.0%〜3.6%のFC100〜FC250相当のねずみ鋳鉄からなり、鋳鉄素材を溶かした溶湯を、予め成型した砂型(鋳型)4に流し込み、鋳込み後、所定の形状に加工する。そして、本実施形態では、前記溶湯が凝固し始めるときに、前記砂型4の一面、具体的には前記自由端側ディスク3側の面に冷却水を吹き付けて急冷する。冷却条件は、例えば毎秒30cm3 の冷却水を、前記砂型4の自由端側ディスク3側の面に満遍なく噴霧した。また、砂型4の車輪連結部材側ディスク2側の面は自然冷却、所謂放冷した。
【0009】
図2aには車輪連結部材側ディスク2、図2bには自由端側ディスク3の圧縮残留応力分布を示す。同図より、前記冷却水によって急冷された自由端側ディスク3の圧縮残留応力の方が、車輪連結部材側ディスク2の圧縮残留応力より大きいことが分かる。また、図3aには車輪連結部材側ディスク2、図3bには自由端側ディスクの金属組織の状態を示す。同図より、前記冷却水によって急冷された自由端側ディスク3の金属組織の方が、車輪連結部材側ディスクの金属組織より微細化されていることが分かる。
【0010】
このベンチレーテッドディスクロータをダイナモ試験機に取付け、所定の速度から停止状態まで減速する制動を所定回数繰り返した後、冷却中のロータ外周から5mmの位置での熱倒れ量を測定した。測定結果を図4に示す。なお、図中の比較例は、前記自由端側ディスク3側の冷却水による急冷を行っていないものである。同図から明らかなように、自由端側ディスク3を急冷した本実施形態(図では実施例)のベンチレーテッドディスクロータは、自由端側ディスクを急冷していない比較例のベンチレーテッドディスクロータに比して、熱倒れ量が小さい。これは、自由端側ディスク3の金属組織の微細化に伴って、当該自由端側ディスク3の圧縮残留応力が車輪連結部材側ディスク2の圧縮残留応力より大きいことに依存している。
【0011】
ベンチレーテッドディスクロータの熱倒れとは、例えば制動時の熱によって図5に示すようにロータ本体1が傾く現象で、車輪連結部材8が連設されている車輪連結部材側ディスク2の方が熱容量が大きく、相対的に熱容量の小さい自由端側ディスク3がより高温となるため、自由端側ディスク3の熱膨張が車輪連結部材側ディスク2の熱膨張より大きくなり、両者の熱膨張差によって熱倒れが発生する。そこで、本実施形態では、前記自由端側ディスク3の圧縮残留応力を大きくすることにより、当該自由端側ディスク3の膨張を抑制し、もって熱倒れを抑制することができる。圧縮残留応力は、引張応力に対する変形を抑制したり、熱膨張を抑制したりする作用があり、このうちの熱膨張抑制作用を利用して熱倒れを防止する。勿論、この実施形態では、ロータ本体1の複雑な形状変更を必要としない。
【0012】
図6は、本発明のベンチレーテッドディスクロータの他の実施形態を示す。この実施形態のベンチレーテッドディスクロータは、前記図1の実施形態のベンチレーテッドディスクロータと同じ形態であり、前記帽体形状の車輪連結部材8が車輪連結部材側ディスク2側に突出しているので、前記自由端側ディスク3が車幅方向内側に位置し、車輪連結部材側ディスク2が車幅方向外側に位置する。この実施形態では、前記砂型4のうち、ロータ本体1の車輪連結部材側ディスク2部分にフローオフ5が設けられている。図中の符号6は、夫々、湯道を示す。フローオフは、周知のように、揚りとも呼ばれ、溶湯が固った後に切削などにて取り除く部分である。本実施形態では、このフローオフにより車輪連結部材側ディスク2の冷却速度が遅くなる分、金属組織が均一化すると共に粗くなり、圧縮残留応力を小さくする作用がある。そのため、自由端側ディスク3の圧縮残留応力が車輪連結部材側ディスク2の圧縮残留応力より相対的に大きくなり、前記と同様に熱倒れを抑制する効果がある。
【0013】
図7は、本発明のベンチレーテッドディスクロータの更に他の実施形態を示す。この実施形態のベンチレーテッドディスクロータは、前記図1の実施形態のベンチレーテッドディスクロータと逆の形態であり、前記帽体形状の車輪連結部材8が自由端側ディスク3側に突出しているので、前車輪連結部材側ディスク2が車幅方向内側に位置し、自由端側ディスク3が車幅方向外側に位置する。この実施形態では、前記砂型4のうち、前記自由端側ディスク3が鋳込まれる部分に接種材7を配置してから注湯する。例えば砂型4の自由端側ディスク3と触れる部分の壁面に接種材7を噴霧するか、若しくは砂型4を作るための型の自由端側ディスク3の面に相当する部分に接種材7を噴霧しておき、砂型4を作ったときに砂型4の内壁に付着するようにしてもよい。接種材とは、一般に、鋳造製品の金属組織の改善や、脆化或いは引けといった鋳造不良の発生を抑制するものであり、例えばCa系、Si計、希土類からなる粉体からなり、黒鉛化促進効果がある。ここで、溶湯が、車輪連結部材側ディスク2及び自由端側ディスク3側に注湯されると、前記接種材7の黒鉛化促進効果によって自由端側ディスク3が早く凝固する。このとき、黒鉛組織の大きさを変える、具体的には自由端側ディスク3の金属組織を微細化することにより、当該自由端側ディスク3の圧縮残留応力が車輪連結部材側ディスク2の圧縮残留応力より相対的に大きくなり、前記と同様に、熱倒れを抑制する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のベンチレーテッドディスクロータの一実施形態を示す鋳造説明図である。
【図2】図1のベンチレーテッドディスクロータの圧縮残留応力の説明図である。
【図3】図1のベンチレーテッドディスクロータの金属組織の説明図である。
【図4】図1のベンチレーテッドディスクロータの熱倒れの説明図である。
【図5】ベンチレーテッドディスクロータの熱倒れの説明図である。
【図6】本発明のベンチレーテッドディスクロータの他の実施形態を示す鋳造説明図である。
【図7】本発明のベンチレーテッドディスクロータの更に他の実施形態を示す鋳造説明図である。
【符号の説明】
1はロータ本体
2は車輪連結部材側ディスク
3は自由端側ディスク
4は砂型
5はフローオフ
6は湯道
7は接種材
8は車輪連結部材
Claims (9)
- 車輪連結部材と反対側の自由端側ディスクの圧縮残留応力が、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きいことを特徴とするベンチレーテッドディスクロータ。
- 前記自由端側ディスクのブレーキパッド摺動表面のみに、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きい圧縮残留応力を発生させることを特徴とする請求項1に記載のベンチレーテッドディスクロータ。
- 前記自由端側ディスクの断面全域に、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きい圧縮残留応力を発生させることを特徴とする請求項1に記載のベンチレーテッドディスクロータ。
- 前記自由端側ディスクのみを急冷して、当該自由端側ディスクの圧縮残留応力を、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きくしたことを特徴とする請求項1に記載のベンチレーテッドディスクロータ。
- 鋳造時、車輪連結部材側ディスクの金属凝固が自由端側ディスクの金属凝固より遅くなるようにして、当該自由端側ディスクの圧縮残留応力を、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きくしたことを特徴とする請求項1に記載のベンチレーテッドディスクロータ。
- 鋳造時、自由端側ディスクの鋳型内に接種材を配置し、当該自由端側ディスクの金属組織の微細化を促進させて、当該自由端側ディスクの圧縮残留応力を、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きくしたことを特徴とする請求項1に記載のベンチレーテッドディスクロータ。
- 車輪連結部材と反対側の自由端側ディスクのみを急冷して、当該自由端側ディスクの圧縮残留応力を、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きくしたことを特徴とするベンチレーテッドディスクロータの製造方法。
- 鋳造時、車輪連結部材側ディスクの金属凝固が車輪連結部材と反対側の自由端側ディスクの金属凝固より遅くなるようにして、当該自由端側ディスクの圧縮残留応力を、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きくしたことを特徴とするベンチレーテッドディスクロータの製造方法。
- 鋳造時、車輪連結部材と反対側の自由端側ディスクの鋳型内に接種材を配置し、当該自由端側ディスクの金属組織の微細化を促進させて、当該自由端側ディスクの圧縮残留応力を、車輪連結部材側ディスクの圧縮残留応力より大きくしたことを特徴とするベンチレーテッドディスクロータの製造方法。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014034056A (ja) * | 2012-08-10 | 2014-02-24 | Nissan Motor Co Ltd | 構造部材の製造方法 |
JP2016017559A (ja) * | 2014-07-08 | 2016-02-01 | クアーズテック株式会社 | 繊維強化複合材料を用いた制動材 |
CN108087466A (zh) * | 2017-12-27 | 2018-05-29 | 将乐县和轩刹车片厂 | 一种具有降温功能的刹车片 |
-
2003
- 2003-04-17 JP JP2003113277A patent/JP2004316820A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014034056A (ja) * | 2012-08-10 | 2014-02-24 | Nissan Motor Co Ltd | 構造部材の製造方法 |
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