JP4091808B2 - 車両用ホイール向け鋳造用金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用ホイールの鋳造に用いられる鋳造用金型に関する。詳しくは、金型の熱変形を考慮して型割面が設けられ、溶湯が入って金型が高温になり変形しても不要なバリの発生量を少なくすることが出来、歩留まりを向上することが可能な車両用ホイール向けの鋳造用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋳造は、製品形状のキャビティを有する金型に溶湯を充填し、溶湯を冷却・固化させて製品を得る成形手段であり、複雑形状の製品を一工程で製造することが可能であるため、車両用部品をはじめ、様々な工業製品の製造手段として広範に利用されている。
【0003】
特に近年においては、例えば、特開平5−269563号公報に開示されているように、複数の湯口を有する金型を利用した鋳造が行われている。このような金型は、溶湯を複数の湯口から金型内に注湯するため、溶湯が金型内を流れる距離が短くなる。従って、溶湯充填にかかるサイクルタイムが短縮されるとともに、充填中の溶湯の温度低下が少ないため、金型内での湯流れがよくなり、鋳造欠陥が少なく、薄肉製品にも対応可能であるという利点を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような利点を備える複数の湯口を有する金型においても、センターゲート方式、サイドゲート方式の金型と同様に、無用なバリの発生、及び、湯漏れという解決すべき課題があった。溶湯が金型内を流れる距離が短くなると、充填中の溶湯の温度低下が少ないことから、金型を経由して放散される熱量が多くなり、型割面に隙間が生じ易く、その隙間に溶湯が流れて生じるバリの量が多くなったり、隙間が金型外部にまで通じて湯漏れを起こし易くなることがあった。
【0005】
製品にならないバリの発生は、後段にバリ取り工程が必要となり、バリ取りのみならず、バリの再利用あるいは廃棄のための移送作業等、作業量を増加させ、製造工程時間を長くする。又、バリの発生量が多いほどに、即ち、歩留まりが低下するほどに、車両用ホイールを得るのに要する溶湯の量は多くなる結果、その溶湯を得るための、原料、原料を溶解及び保持するための熱量、溶湯を清浄化するに要する種々の処理の作業量及び電気等のユーティリティ量、等を増加させ、それに比して、製造工程時間も長くなり、製造コストの上昇を招く。
【0006】
このような課題に対して、充填中の溶湯の温度を下げて、金型を経由して放散される熱量を減らし、金型の熱変形を抑えるといった対応は好ましくない。溶湯の流動性が低下し、湯廻り不良等の鋳造欠陥が生じるとともに、冷却効果が充分に得られないために組織の微細化が図られず機械的強度の低下を招き、特に、薄肉部たるリムにおいてその傾向が顕著になるからである。又、充填時間が長くかかりサイクルタイムが延び、かえって鋳造工程全体のスループット低下を招いてしまうからである。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、高温で流動性のよい溶湯を充填しても、熱変形によって型割面等において隙間が発生し難く、バリの発生を抑えられ、鋳造歩留まりが高く、湯廻り不良等の鋳造欠陥が少なく、機械的強度に優れ、且つ、サイクルタイムの短縮が図られ、スループットの向上とともに製造コストが低減された車両用ホイールを得られる鋳造用金型を提供することにある。
【0008】
金型構造について鋭意検討が行われた結果、複数の型からなる車両用ホイール向けの鋳造用金型において、分割される横型の型割面を、熱変形を考慮して構成することによって、従来の課題を解決出来ることが見出され、本発明が完成された。より詳細には、以下に示す手段である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、次に示す三つの車両用ホイール向け鋳造用金型が提供される。
【0010】
第1の金型は、円筒状のリムと、リムを円筒の片端で接続するスポークと、を構成主部とする車両用ホイールの鋳造に用いられる金型であって、少なくとも一の湯口を備える下型と、下型とともにスポークを成形するキャビティ(Cs)を形成する上型と、上型とともにリムを成形するキャビティ(Cl)を形成する横型と、を有する車両用ホイール向け鋳造用金型である。第1の金型においては、2分割される横型に特徴がある。その横型の特徴は、キャビティ(Cl)の外周側に位置し、キャビティ(Cl)の中心軸を通り、且つ、キャビティ(Cl)の円筒高さ方向に平行な面上に形成された2つの型割面(B1)があり、型割面(B1)とキャビティ(Cl)との接辺に沿って、深さ方向に狭まるテーパー状の凹部が形成されていることである。
【0011】
かかる構造を採用したのは、型割面(B1)とキャビティ(Cl)との接辺に沿って、予めバリ発生量に概ね等しい空間を形成しておくことにより、型割面(B1)に隙間が発生しても、キャビティ(Cl)で成形されるリムに薄平なバリが付かないようにするためである。
【0012】
リムを成形するキャビティ(Cl)は、内周側に上型を配置し、外周側に2分割された横型を配置して形成される。そして、溶湯が、キャビティ(Cs)の方向から、その方向とは反対側のキャビティ(Cl)の端部に向けて流れていき充填される。そして、キャビティ(Cl)を形成する横型は、溶湯の持つ熱により、型割面(B1)の外側が開くように歪み、型が捻れる。このため、従来、キャビティ(Cl)においては、型割面(B1)に僅かな隙間が生じていた。そして、成形し取り出したリムには、薄平なバリが付いてしまい削らなければならず、歩留まり低下とともに鋳造成形にかかる作業量を増加させていた。
【0013】
本発明に係る第1の金型によれば、この薄平で不要なバリの発生を抑制出来る。型割面を、キャビティ(Cl)の円筒高さ方向に形成し、キャビティ(Cl)との接辺に沿って、深さ方向に狭まるテーパー状の凹部が形成されている型割面(B1)にすることにより、その凹部が、熱変形により型割面を形成する型が捻れることを抑制する。そして、この凹部には溶湯が充填され、冷却されて成形されたリムには凸部が形成される。
【0014】
この凸部は、バリのように薄平なものではなく、滑らかで美観を損なうものではなく、且つ、機械的強度の低下をもたらすものではないので、成形後に除去したり加工したりする必要がない。即ち、好ましくは付与される本発明の第2の特徴は、バリに相当する余分な溶湯量を概ね削減可能とするものではないが、鋳造成形後のバリ取り工程が不要である点に効果が認められる。
【0015】
第2の金型は、円筒状のリムと、リムを円筒の片端で接続するスポークと、を構成主部とする車両用ホイールの鋳造に用いられる金型であって、少なくとも一の湯口を備える下型と、下型とともにスポークを成形するキャビティ(Cs)を形成する上型と、上型とともにリムを成形するキャビティ(Cl)を形成する横型と、を有する車両用ホイール向け鋳造用金型である。第2の金型においては、2分割される横型に特徴がある。その横型の特徴は、キャビティ(Cl)の外周側に位置し、キャビティ(Cl)の中心軸を通り、且つ、キャビティ(Cl)の円筒高さ方向に平行な面上に形成された2つの型割面(B1)があり、2つの型割面(B1)を結ぶ直径D1が、直径D1と直交する直径D2より、僅かに小さくなる偏芯形状を呈することである。尚、本明細書において、(横型の)直径とは、横型の一の水平断面(図2参照)に現れる円の中心を通り円周に端部を有する線分をいう。
【0016】
かかる構造を採用したのは、予め2つの型割面(B1)を結ぶ直径D1を、直径D1と直交する直径D2より小さくしておくことにより、高温時に直径D1と直径D2とが概ね等しい長さになり、円筒形状のキャビティ(Cl)が歪むのを防止出来るからである。従来は、溶湯を注入して金型が高温になった際に、金型が熱変形してしまい、2つの型割面(B1)を結ぶ直径D1を伸ばす方向に2つの型割面(B1)が開き、円筒形状のリムが僅かに歪むことがあったが、本発明によれば、金型が熱変形したときに、キャビティ(Cl)が最適な車両用ホイール設計形状になるように構成し、リムの偏肉成形が防止され、歪みの全くないリムを得ることが出来る。
【0017】
第3の金型は、円筒状のリムと、リムを円筒の片端で接続するスポークと、を構成主部とする車両用ホイールの鋳造に用いられる金型であって、少なくとも一の湯口を備える下型と、下型とともにスポークを成形するキャビティ(Cs)を形成する上型と、上型とともにリムを成形するキャビティ(Cl)を形成する横型と、を有する車両用ホイール向け鋳造用金型である。第3の金型においては、上型と横型との型割面(A1)に特徴がある。その型割面(A1)の特徴は、キャビティ(Cl)の上端部において、円筒状のリムを成形するキャビティ(Cl)の円筒高さ方向に対し概ね垂直な平面部を有することである。尚、第3の金型においても、横型は、キャビティ(Cl)の外周側に位置するとともに2分割され、キャビティ(Cl)の中心軸を通り、且つ、キャビティ(Cl)の円筒高さ方向に平行な面上に形成された2つの型割面(B1)を有する。
【0018】
第3の金型は、その主材料がアルミニウム合金AC4Cである場合には、平面部が、リムを成形するキャビティ(Cl)との接辺を始点とし金型外部に向けて、5mm以上の長さで形成されることが好ましい。
【0019】
かかる構造を採用したのは、型割面(A1)に発生する隙間量を抑え、キャビティ(Cl)で成形されるリムにバリが付き難くするためである。
【0020】
2分割された横型は、溶湯の持つ熱により2つの型割面(B1)を開く方向、即ち概ね水平方向に膨張する。このため、従来、キャビティ(Cl)の上端部に形成された上型と横型との型割面(A1)では、その型割面(A1)の面方向と、上記横型の膨張方向とが、一致していないことが多く、殆どの型割面に隙間が生じていた。そして、成形し取り出した薄肉部には、不要なバリが多く付いてしまい、歩留まり(材料利用率ともいう)低下の主因となっていた。
【0021】
本発明に係る第3の金型によれば、この不要なバリの発生を抑制出来る。上型と横型との型割面を、キャビティ(Cl)の円筒高さ方向に対して、概ね垂直な平面部が形成されている型割面(A1)にすることにより、少なくともキャビティ(Cl)の上端部においては、型割面(A1)の面方向が横型の膨張方向と一致して、横型が膨張しても、型割面に隙間が生じ難くなるからである。横型の膨張量を、その平面部で吸収するわけであるから、平面部は、薄肉部を成形するキャビティ(Cl)との接辺を始点とし金型外部に向けて、少なくとも金型の熱変形量で規定される長さ以上の長さで形成されることが望ましい。この本発明に係る第3の金型の特徴により、バリに相当する余分な溶湯量を削減可能とし、且つ、鋳造成形後のバリ取り工程を不要とする点に効果がある。
【0022】
本発明に係る第1〜第3の金型は、上記のような特徴を備えた複数の湯口からなる金型であることが好ましい。溶湯が金型内を流れる距離が短く、溶湯を高温に保ったまま充填することが出来、溶湯の流動性が良好であるため、湯廻り不良等の鋳造欠陥が生じ難く、溶湯充填後の冷却効果が充分に得られることから組織の微細化が図られ、得られるホイールの機械的強度が高くなるからであり、薄肉であって優れたホイールを鋳造することが可能だからである。複数の湯口からなる金型である場合には、リムの厚さが、概ね5.5〜8.0mmと極薄い車両用ホイール向けの鋳造用金型として好適である。
【0023】
又、本発明に係る第1〜第3の金型は、低圧鋳造方法に好適に用いられる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両用ホイール向け鋳造用金型について、図面を参照しながら、より詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の車両用ホイール向け鋳造用金型は、スポーク(厚肉部)とリム(薄肉部)とを有する車両用ホイールの鋳造に用いられる金型に関するものである。スポーク(厚肉部)とリム(薄肉部)とは、相対的に明らかな厚さの差を有し、その車両用ホイールを成形するキャビティに注湯される溶湯の充填速度は、スポーク(厚肉部)を成形するキャビティ部分とリム(薄肉部)を成形するキャビティ部分とで、明らかな差を持って異なる。
【0025】
図1は、本発明に係る車両用ホイール向け鋳造用金型の一実施形態を示す断面図である。図1に示す車両用ホイール向け鋳造用金型11は、図8に斜視図が示される車両用ホイール41を成形する金型である。又、図9は、図8に示す車両用ホイールのAA’断面を示した図であり、図1に示す車両用ホイール向け鋳造用金型11における成形空間たるキャビティ4と同方向からみた断面図である。車両用ホイール41は、薄肉部たる筒状のリムと、そのリムを接続する厚肉部たるスポーク44とから構成され、リムは、スポーク44側のアウターリム43と、その反対側端部のインナーリム42からなる。
【0026】
図1に示す車両用ホイール向け鋳造用金型11は、低圧鋳造方法に用いられるものであり、溶湯が図示しない保持炉から金型へ押し上げられる流路であるストーク5に接続されている。車両用ホイール向け鋳造用金型11は、成形空間であるキャビティ4を形成する上型1と横型2及び下型3とからなり、厚肉であるスポーク44と薄肉であるリムとからなる車両用ホイールの鋳造に用いられる。キャビティ4は、厚肉であるスポーク44を成形するキャビティ(Cs)12と、薄肉であるリムを成形するキャビティ(Cl)13とからなる。図3は、キャビティ(Cs)12の上端部の拡大断面図である。
【0027】
車両用ホイール向け鋳造用金型11は、キャビティ4に溶湯を供給する湯口18と、ストーク5から湯口18までの溶湯流路である湯道17と、湯口18からキャビティ4の間の堰19からなる、少なくとも2つの湯口系を備えている。一方の湯口系は、キャビティ4のうちスポークを成形するキャビティ(Cs)12に通じ、他方の湯口系は、リムを成形するキャビティ(Cl)13に通じている。
【0028】
キャビティ(Cs)12を形成する面は上型1と下型3とからなる。又、キャビティ(Cl)13を形成する面は上型1と横型2とからなる。2つの湯口系のうち、一方の湯口系において、湯道17は下型3内に形成され、堰19は下型3と横型2とから形成される。他方の湯口系においては、湯道17及び堰19は下型3内に形成されている。
【0029】
そして、キャビティ(Cl)13の、湯口系がある方向とは反対側の端部に、上型1と横型2との型割面(A1)80を有している。車両用ホイール向け鋳造用金型11においては、この型割面(A1)80が、円筒状のキャビティ(Cl)13の円筒高さ方向に対し、概ね垂直な平面部81を有することが肝要である。
【0030】
図1中において、湯口系は何れもキャビティ(Cl)13からみて下型3側に形成され、溶湯はキャビティ(Cl)13中を上昇し、キャビティ(Cs)12側からキャビティ(Cl)13の上端部に向かって流れる。型割面(A1)80の平面部81は、円筒状のキャビティ(Cl)13の円筒高さ方向に対し、概ね垂直をなしている。
【0031】
車両用ホイール向け鋳造用金型11は、横型2が更に2つの型から構成され、その2つの型による型割面が形成されている。図2は、図1におけるBB’断面を示す図である。図2に示されるように、車両用ホイール向け鋳造用金型11は、キャビティ(Cl)13の中心軸を通り、且つ、キャビティ(Cl)13の円筒高さ方向と平行な面に、換言すれば、キャビティ(Cl)13の外周側であって概ね180°対向した位置に、横型2を構成する2つの型が対面する型割面(B1)83を、2つ有している。そして、その型割面(B1)83とキャビティ(Cl)13との接辺(断面図である図2中にLで示され奥行き方向に形成される辺)に沿って、深さ方向に狭まるテーパー状の凹部82が形成されている。
【0032】
キャビティ(Cl)13においては、湯口系のある方向からキャビティ(Cl)13の上端部に向けて溶湯が流れていき、溶湯の持つ熱により、金型(キャビティ(Cl)13では横型2及び上型1)が高温になり、熱変形することがある。
【0033】
金型の熱変形を図10により説明する。図10は横型の熱変形の様子を模式的に示す断面図である。横型2と概ね同形状の横型102は、図示されるように常温時には型割面183は閉じられ(2つの型が密着し)、溶湯が注入され高温になると型割面183を開き、2つの型割面183を結ぶ直径が伸びるように熱変形する。このため、型割面183に(図中では大きく開いているが実際には)僅かな隙間が生じる。
【0034】
本発明に係る車両用ホイール向け鋳造用金型11においては、溶湯が充填され、溶湯の持つ熱により金型が高温になることに伴う上記と同様の熱変形の多くは横型2側に生じる。上型1は分割されておらずリムを成形する円筒状のキャビティ(Cl)13の円筒内部に位置するため、横型のようには熱変形し難い。そのため、キャビティ(Cl)13の上端部に位置する上型1と横型2との型割面(A1)80では、その上型1と横型2の間でズレが生じ易い。
【0035】
車両用ホイールを鋳造するために用いられる従来の金型では、図4に部分拡大断面図が示されるように、キャビティ(Cl)13の上端部に形成された上型1と横型2との割面90の面方向(キャビティ(Cl)13側から金型外部側に向けた方向)が、横型2の膨張方向と一致していないため、型割面90には隙間が生じていた。そして、図5に示されるように、成形し取り出した車両用ホイール41の薄肉部たるインナーリム42には、不要なバリ9が付いてしまっていた。
【0036】
本発明の車両用ホイール向け鋳造用金型11においては、このようなことがない。型割面(A1)80を構成する横型2の膨張方向と、型割面(A1)80の面方向(キャビティ(Cl)13側から金型外部側に向けた方向)とが、少なくとも平面部81においては一致しているため、型割面(A1)80には隙間が生じ難い。従って、溶湯を冷却して成形して得られる図9に示す車両用ホイール41の薄肉部たるインナーリム42には、不要なバリが殆ど付かず、キャビティ4に充填する溶湯量も少なくて済み、歩留まりが向上する。
【0037】
型割面(A1)80を構成し熱変形する横型2の膨張量を、平面部81で吸収するわけであるから、平面部81は、キャビティ(Cl)13との接辺(拡大断面図である図3中にKで示され奥行き方向に形成される辺)を始点とし金型外部に向けて、少なくとも金型の熱変形量で規定される長さ以上の長さWで形成されることが望ましい。例えば、金型の主材料がアルミニウム合金AC4Cである場合には、平面部81のキャビティ(Cl)13との接辺を始点とし金型外部に向けて必要な長さWは、5mm以上である。
【0038】
又、車両用ホイール向け鋳造用金型11では、予め、型割面(B1)83とキャビティ(Cl)13との接辺に沿って、深さ方向に狭まるテーパー状の凹部82を形成しておくことにより、この凹部82が、熱変形による横型2を構成する2つの型の開きを抑制し、型割面(B1)83に隙間が発生し難くしている。
【0039】
そして、この凹部82には溶湯が充填され、冷却されて成形され得られる図9に示す車両用ホイール41の薄肉部たるインナーリム42には、図7に示すような従来の鋳造用金型で成形されたときに発生する薄平なバリ9ではなく、図6に示すように、滑らかな凸部6が形成される。この凸部6は、成形後に除去したり加工したりする必要がなく、機械的強度にも影響がないため、鋳造成形後に除去する必要がない。
【0040】
更に、車両用ホイール向け鋳造用金型11においては、図2に示すように、概ね180°対向して備わる2つの型割面(B1)83を結ぶ直径D1が、直径D1と直交する直径D2より僅かに小さくなる偏芯形状を呈している。
【0041】
車両用ホイール向け鋳造用金型11では、溶湯から横型2に伝わる熱は金型外部に放散されるが、その一部は横型2の分割面である型割面(B1)83からも放散される。従って、横型2においては、2つの型割面(B1)83辺りと、そこから離れた部分では、温度差が生じ、その結果、熱変形量にも違いが出る。通常、型割面(B1)83辺りは温度が最も低く、熱変形量も少ない。従って、上記したように、溶湯の充填に伴い高温になることにより、横型2は型割面(B1)83を開き、2つの型割面(B1)83を結ぶ直径が伸びるように熱変形し、型割面(B1)83に実際には僅かな隙間が生じる。
【0042】
そこで、上記したように、横型2を、2つの型割面(B1)83を結ぶ直径D1(即ち、熱変形量少ない部分を結ぶ直径)が、直径D1と直交する直径D2(即ち、熱変形量多い部分を結ぶ直径)より僅かに小さくなる偏芯形状になるように構成すれば、横型2が熱変形したときに、キャビティ4が最適な車両用ホイール設計形状になり、成形された車両用ホイールが偏肉成形されなくなる。
【0043】
車両用ホイール向け鋳造用金型11は、湯口系が、複数系統設けられている鋳造用金型である。従って、溶湯充填に際し、通常のセンターゲート方式の金型より溶湯の移動距離が短くなり、充填がより容易になって、湯廻り不良が生じ難くなり、高い機械的強度を付与しつつインナーリムのような薄肉部を容易に成形出来る。従来、実現出来なかった薄肉部の厚さを概ね5.5〜8.0mmにすることも可能である。
【0044】
又、溶湯充填に要する時間が短くて済み、鋳造全工程に要する時間が短縮され、スループット向上が図られる。尚、湯口系を、スポークを成形するキャビティ(Cs)12に通じる系の他に、リムを成形する円筒状のキャビティ(Cl)13の円周に等間隔で通じるように複数系統設けることが、更に、好ましい。このように構成すれば、溶湯充填に際し、溶湯の移動距離が、より短くなり、尚更に、湯廻り不良が生じ難くなり、又、溶湯充填に要する時間が、より短くて済むからである。
【0045】
よって、車両用ホイール向け鋳造用金型11を用いて作製される車両用ホイール41は、より軽量で、意匠的にも優れたものとなり得て、且つ、より安価に作製することが可能である。従って、競合品に比べ、より高い競争力を備えることが出来る。
【0046】
尚、本発明の車両用ホイール向け鋳造用金型を構成する材料は、公知の材料を用いればよく、本発明は使用する材料を限定するものではない。一般に、より熱伝導性の高い、即ち、熱伝導率の大きな材料を用いる。例えば、銅やベリリウム銅、あるいは、アルミニウム合金が挙げられる。
【0047】
本発明の車両用ホイール向け鋳造用金型は、種々の鋳造法に適用可能であるが、低圧鋳造方法に好適に用いることが出来る。低圧鋳造方法とは、一般に、金型と、金型の下に備わり溶湯が入れられた保持炉を用いて、保持炉内に例えば窒素ガスの注入等で概ね0.1〜0.5kg/cm2の極低い圧力を付加するか、若しくは、金型側から真空で吸引して、溶湯の温度を一定温度に保ったまま、ストークを介して金型内へ押し上げ、金型で凝固させて成形し、鋳物を得るという工程からなる製造方法である。溶湯の金型への充填が終われば、ストークのなかに残った溶湯は保持炉に戻る。
【0048】
この低圧鋳造方法は、所謂スクイズ鋳造法、ダイカスト法に比べ、スクイズ鋳造法より溶湯充填速度が速いためスループットが大きく、ダイカスト法のように圧入しないため、より高品質であり、両者に比べて金型を含む設備費が安価であるという利点を有する。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の車両用ホイール向け鋳造用金型によれば、高温で流動性のよい溶湯を充填したときに熱変形によって型割面に隙間が発生し難く、バリの発生を抑えられ、鋳造歩留まりを高くすることが出来るとともに、サイクルタイムの短縮が図られ、スループットが向上して製造コストが低減されたホイールを得ることが可能である。
【0050】
本発明により得られる、例えばアルミニウム合金製の、より軽い車両用ホイールを、より安価で供給すれば、自動車等の燃費向上が図られ、地球規模の課題である排出二酸化炭素の削減に寄与し地球温暖化防止等の環境対策に貢献することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る車両用ホイール向け鋳造用金型の一実施形態を示す断面図である。
【図2】 本発明に係る車両用ホイール向け鋳造用金型の一実施形態を示す断面図であり、図1におけるBB’断面を示す図である。
【図3】 本発明に係る車両用ホイール向け鋳造用金型の一実施形態を示す部分拡大断面図である。
【図4】 従来の鋳造用金型の一例を示す部分拡大断面図である。
【図5】 従来の鋳造用金型で鋳造された車両用ホイールの一例を示す部分断面図である。
【図6】 本発明に係る金型で鋳造された車両用ホイールの一例を示す部分断面図である。
【図7】 従来の鋳造用金型で鋳造された車両用ホイールの他の一例を示す部分断面図である。
【図8】 本発明に係る金型で鋳造される車両用ホイールの一例を示す斜視図である。
【図9】 図8に示す車両用ホイールのAA’断面を示す図である。
【図10】 横型の熱変形の様子を説明する模式図である。
【符号の説明】
1…上型、2,102…横型、3…下型、4…キャビティ、5…ストーク、6…凸部、9…バリ、11…車両用ホイール向け鋳造用金型、12…キャビティ(Cs)、13…キャビティ(Cl)、17…湯道、18…湯口、19…堰、41…車両用ホイール、42…インナーリム、43…アウターリム、44…スポーク、80…型割面(A1)、81…平面部、82…凹部、83,183…型割面(B1)、90…型割面(従来の鋳造用金型)。
Claims (2)
- 円筒状のリムと、前記リムを円筒の片端で接続するスポークと、を構成主部とする車両用ホイールの鋳造に用いられる金型であって、
金型の主材料がアルミニウム合金AC4Cであり、
少なくとも一の湯口を備える下型と、前記下型とともに前記スポークを成形するキャビティ(Cs)を形成する上型と、前記上型とともに前記リムを成形するキャビティ(Cl)を形成する横型と、を有し、
前記横型は、前記キャビティ(Cl)の外周側に位置するとともに2分割され、前記キャビティ(Cl)の中心軸を通り、且つ、前記キャビティ(Cl)の円筒高さ方向の面上に形成された2つの型割面(B1)を有してなり、
前記型割面(B1)と前記キャビティ(Cl)との接辺に沿って、深さ方向に狭まるテーパー状の凹部が形成されるとともに、
前記2つの型割面(B1)を結ぶ直径D1が前記直径D1と直交する直径D2より僅かに小さくなる偏芯形状を呈し、且つ、
前記上型と横型との型割面(A1)が、前記キャビティ(Cl)の上端部において、円筒状のリムを成形するキャビティ(Cl)の円筒高さ方向に対し垂直であり前記キャビティ(Cl)との接辺を始点とし金型外部に向けて5mm以上の長さで形成される平面部と、前記円筒高さ方向に対し垂直ではない傾斜部と、を有することを特徴とする車両用ホイール向け鋳造用金型。 - 低圧鋳造方法に用いられる請求項1に記載の車両用ホイール向け鋳造用金型。
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