JP2004270581A - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】触媒から流出する排ガス中の特定成分の量を考慮することで、同触媒下流の排気通路に配置された酸素濃度センサの出力に基づく空燃比のフィードバック制御を一層適切に実行し得る内燃機関の排気浄化装置を提供すること。
【解決手段】この排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に介装された触媒の下流の空燃比センサ出力voxsを目標値voxsrefから減じた値である偏差Dvoxsに重み係数を乗じた値Dvoxswを求め、この値Dvoxswを比例・積分・微分処理して空燃比制御に使用するフィードバック制御量を求める。この重み係数は、触媒モデルを利用して算出される前記触媒から流出するエミッションの絶対量を精度良く表す値である酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値が所定の微小値以下であるとき(即ち、同エミッションの絶対量が微量であって前記第1触媒下流空燃比センサが不定状態にある可能性があるとき)、「1」以下の微小値に設定される。
【選択図】 図9
【解決手段】この排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に介装された触媒の下流の空燃比センサ出力voxsを目標値voxsrefから減じた値である偏差Dvoxsに重み係数を乗じた値Dvoxswを求め、この値Dvoxswを比例・積分・微分処理して空燃比制御に使用するフィードバック制御量を求める。この重み係数は、触媒モデルを利用して算出される前記触媒から流出するエミッションの絶対量を精度良く表す値である酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値が所定の微小値以下であるとき(即ち、同エミッションの絶対量が微量であって前記第1触媒下流空燃比センサが不定状態にある可能性があるとき)、「1」以下の微小値に設定される。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒の下流の排気通路に配設された酸素濃度センサの出力に基づいて触媒に流入するガスの空燃比を制御する内燃機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、内燃機関の排ガスを浄化するための三元触媒(本明細書においては、単に「触媒」と云うこともある。)が同機関の排気通路に配設されている。この三元触媒は、同三元触媒に流入するガスの空燃比が理論空燃比であるときに、HC,COを酸化するとともにNOxを還元し、これらの有害成分を高い効率で浄化する。また、三元触媒は、酸素を吸蔵・放出する機能(酸素吸蔵機能、酸素吸蔵・放出機能、O2ストレージ機能)を有し、この酸素吸蔵・放出機能により、空燃比が理論空燃比からある程度まで偏移したとしても、HC,CO、及びNOxを浄化することができる。
【0003】
即ち、機関に供給される混合気の空燃比がリーンとなって三元触媒に流入するガスにNOxが多量に含まれると、三元触媒はNOxから酸素分子を奪って同酸素分子を吸蔵するとともに同NOxを還元し、これによりNOxを浄化する。また、機関に供給される混合気の空燃比がリッチになって三元触媒に流入するガスにHC,COが多量に含まれると、三元触媒はこれらに吸蔵している酸素分子を与えて(放出して)酸化し、これによりHC,COを浄化する。換言すれば、三元触媒に流入するガスの空燃比がリッチである場合には同三元触媒が吸蔵している酸素量(以下、「酸素吸蔵量」と称呼する。)が減少するとともに三元触媒に流入するガスの空燃比がリーンである場合には同三元触媒の酸素吸蔵量が増加する。
【0004】
従って、触媒が連続的に流入するリッチ空燃比の排ガス中にある多量のHC,COを効率的に浄化するためには、同触媒が酸素を多量に貯蔵していなければならず、逆に連続的に流入するリーン空燃比の排ガス中にある多量のNOxを効率的に浄化するためには、同触媒が酸素を十分に貯蔵し得る状態になければならないことになる。以上のことから、HC,COやNOxを効率よく浄化するため触媒の酸素吸蔵量が所定の量(例えば、同触媒に吸蔵され得る酸素の最大量(以下、「最大酸素吸蔵量」と称呼する。)の半分の量)になるように機関に供給される混合気の空燃比(従って、触媒に流入するガスの空燃比)が制御されることが好ましい。また、触媒の酸素吸蔵量が前記所定の量に維持され得るように制御するためには、触媒から流出する排ガスの空燃比(の平均値)が理論空燃比近傍になるように制御することが好適であると考えられる。
【0005】
このため、特許文献1に記載の内燃機関の排気浄化装置(空燃比制御装置)は、内燃機関の排気通路に触媒を配設するとともに、同触媒の下流の排気通路に排ガスの空燃比を検出する空燃比センサを配設し、同空燃比センサの出力が理論空燃比に相当する目標値になるように(従って、同空燃比センサの出力と同目標値との偏差が「0」になるように)同空燃比センサの出力に基づいて機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御するようになっている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−197837号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、触媒の下流に配設される空燃比センサとしては、安価であること、理論空燃比近傍において出力が急変することから排ガスの空燃比を理論空燃比近傍に制御するのに好適であること等の理由から、酸素濃淡電池の起電力に基づいて排ガスの空燃比に応じた出力を発生する濃淡電池式の酸素濃度センサが使用される。
【0008】
即ち、かかる濃淡電池式の酸素濃度センサは、排ガス中の各ガス成分が完全に燃焼して化学平衡状態にあるとき、例えば、図33に示すような出力特性(以下、「静特性」と云うこともある。)を有する。図33に示したように、この酸素濃度センサは、理論空燃比において急変する電圧voxsを出力するようになっていて、排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンのときは略0.1(V)、同排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチのときは略0.9(V)、及び同排ガスの空燃比が理論空燃比のときは略0.5(V)の電圧(理論空燃比に相当する目標値voxsref)を出力するようになっている。
【0009】
しかしながら、かかる濃淡電池式の酸素濃度センサは、一旦、明白なリーンを示す値(例えば、0.1(V))に出力が変化すると、その後の所定期間に渡り、或る程度の量のHC,COを含むリッチ空燃比の排ガスが触媒から流出してこない限りにおいて同出力がリーンを示す値に維持され、一旦、明白なリッチを示す値(例えば、0.9(V))に出力が変化すると、その後の所定期間に渡り、或る程度の量のNOxを含むリーン空燃比の排ガスが同触媒から流出してこない限りにおいて同出力がリッチを示す値に維持されるという特性(動特性)を有する。換言すれば、濃淡電池式の酸素濃度センサにおいては、触媒からHC,CO、及びNOx等の浄化すべき有害成分(以下、「エミッション」と称呼する。)が殆ど流出してこないときであっても前記所定期間に渡りリーン又はリッチを示す値に出力が維持される状態(以下、「不定状態」と称呼する。)となる場合がある。従って、濃淡電池式の酸素濃度センサの出力と理論空燃比に相当する目標値との偏差が「0」になるように同センサの出力に基づいて機関に供給される混合気の空燃比を制御すると、同センサが一旦不定状態になった後、同空燃比が収束しにくく、その結果、制御の安定性が低くなるという問題がある。
【0010】
以下、この点について図34を参照しながらより具体的に説明する。図34は、触媒下流に配置された前述の図33に示す静特性を有する濃淡電池式の酸素濃度センサの出力voxsを目標値voxsref(0.5(V))から減じた値である偏差Dvoxsが「0」になるように、同偏差Dvoxsが正の値のとき(voxsがリーンを示す値(0.1(V))のとき)機関に供給される混合気の空燃比abyfsをリッチ側に補正し同偏差Dvoxsが負の値のとき(voxsがリッチを示す値(0.9(V))のとき)同混合気の空燃比abyfsをリーン側に補正するフィードバック制御を実行した場合における各種値の変化の一例を示したタイムチャートである。この例では、(a)に示すように、時刻t0において、酸素濃度センサ出力voxsがリーンを示す値となっていて(即ち、(b)に示すように偏差Dvoxsが正の値になっていて)、その結果、(c)に示すように機関に供給される混合気の空燃比abyfsがリッチ側に補正されているものと仮定する。また、説明の便宜上、この例では、前記偏差Dvoxsに対する比例処理(P処理)のみにより前記空燃比を補正するためのフィードバック制御量を算出しているものとする。
【0011】
前述のごとく、時刻t0において空燃比abyfsがリッチ側に補正されていて触媒に流入する排ガス中にはHC,COが多量に含まれているから、(d)に示すように、時刻t0以降、触媒の酸素吸蔵量OSAは減少していく。一方、時刻t0では、酸素吸蔵量OSAは充分に残存していて触媒は流入してくる排ガス中のHC,COを十分に浄化する能力を有するから、(e)に示すように、触媒から流出する排ガス中の一酸化炭素CO濃度は略「0」になっている。また、触媒に流入する排ガスはNOxを殆ど含んでいないから、(f)に示すように、触媒から流出する排ガス中の一酸化窒素NO濃度も略「0」になっている。
【0012】
時刻t1になると、酸素吸蔵量OSAが「0」近傍に到達することで触媒はHC,COを十分に浄化できなくなる。従って、(e)に示すように、触媒から流出する排ガス中の一酸化炭素CO濃度が増加を開始し、これに応じて酸素濃度センサ出力voxsはリーンを示す値からリッチを示す値へと変化を開始するとともに時刻t2になるとリッチを示す値に到達する。この結果、時刻t1からt2の間において偏差Dvoxsが正の値から負の値へと転じた時点以降、空燃比abyfsはリッチ側からリーン側に補正されるようになる。
【0013】
これに応じて、触媒に流入する排ガスはNOxを多く含むようになる一方でHC,COを殆ど含まなくなり、酸素吸蔵量OSAが減少から増加に転じるとともに、CO濃度は増加から減少に転じて時刻t2以降再び略「0」に戻る。一方、この時点近傍では酸素吸蔵量OSAは略「0」となっていて触媒は流入してくる排ガス中のNOxを十分に浄化する能力を有するから、触媒から流出する排ガス中の一酸化窒素NO濃度も略「0」に維持されたままである。
【0014】
従って、時刻t2以降、増加を続ける酸素吸蔵量OSAが最大酸素吸蔵量Cmaxの半分となる時刻t3を経て最大酸素吸蔵量Cmax近傍に到達する時刻t4になるまでの間、触媒からNOxが多量に流出してこないから、酸素濃度センサ出力voxsはリッチを示す値を維持し続ける。換言すれば、触媒からHC,CO、及びNOx等のエミッションが殆ど流出してこないにも拘わらずvoxsはリーンを示す値に維持され、酸素濃度センサは前記不定状態になる((a)に示す一点鎖線で囲まれた部分を参照。)。
【0015】
このように酸素濃度センサが不定状態にある時刻t2〜t4までの間、触媒からエミッションが殆ど流出してこないから混合気の空燃比を大きく補正する(フィードバック制御する)必要がないにも拘わらず、偏差Voxsが負の値に維持されることで混合気の空燃比abyfsがリーン側に不必要に大きく補正された状態が維持され続ける。
【0016】
この結果、時刻t4になると、酸素吸蔵量OSAがCmax近傍に到達することで触媒はNOxを十分に浄化できなくなる。従って、触媒から流出する排ガス中の一酸化窒素NO濃度が増加を開始し、これに応じて酸素濃度センサ出力voxsはリッチを示す値からリーンを示す値へと変化を開始するとともに時刻t5になるとリーンを示す値に到達する。この結果、時刻t4からt5の間において偏差Dvoxsが負の値から正の値へと転じた時点以降、空燃比abyfsはリーン側からリッチ側に補正されるようになる。
【0017】
これに応じて、触媒に流入する排ガスはHC,COを多く含むようになる一方でNOxを殆ど含まなくなり、酸素吸蔵量OSAが増加から減少に転じるとともに、NO濃度は増加から減少に転じて時刻t5以降再び略「0」に戻る。一方、この時点近傍では酸素吸蔵量OSAはCmax近傍となっていて触媒は流入してくる排ガス中のHC,COを十分に浄化する能力を有するから、触媒から流出する排ガス中の一酸化炭素CO濃度も略「0」に維持されたままである。
【0018】
従って、時刻t5以降、減少を続ける酸素吸蔵量OSAがCmaxの半分となる時刻t6を経てCmax近傍に到達する時刻t7になるまでの間、触媒からHC,COが多量に流出してこないから、酸素濃度センサ出力voxsはリーンを示す値を維持し続ける。換言すれば、触媒からHC,CO、及びNOx等のエミッションが殆ど流出してこないにも拘わらずvoxsはリーンを示す値に維持され、酸素濃度センサは再び不定状態になる。
【0019】
よって、この時刻t5〜t7までの間も、触媒からエミッションが殆ど流出してこないにも拘わらず、偏差Voxsが正の値に維持されることで混合気の空燃比abyfsがリッチ側に不必要に大きく補正された状態が維持され続ける。この結果、時刻t7以降、前述の時刻t1以降と同様な変化が再び発生しすることで、時刻t8以降、酸素濃度センサは再度不定状態となって、混合気の空燃比abyfsは再び、不必要にリーン側に大きく補正されるようになる。
【0020】
以上、説明したように、濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行うと、同酸素濃度センサが一旦不定状態になった後、機関に供給される混合気の空燃比が収束しにくくなり、その結果、触媒の酸素吸蔵量が所定の量(例えば、最大酸素吸蔵量の半分の量)に収束しにくくなって制御の安定性が低くなるという問題(以下、「第1の問題」と称呼する。)が発生する。この第1の問題は、酸素濃度センサが不定状態にあって触媒からエミッションが殆ど流出してこない場合であっても、触媒からエミッションが多量に流出している場合であっても、同酸素濃度センサの出力が同一の値(リッチ又はリーンを示す値)となり得、この結果、どちらの場合においても機関に供給される混合気の空燃比を補正するためのフィードバック制御量が同様に計算されてしまうことに基づいて発生するものである。従って、かかる第1の問題は、触媒から流出する排ガス中のエミッションの量(特定成分の量)を推定できれば、同推定された特定成分の量が微量である場合とそうでない場合とで濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて計算されるフィードバック制御量を異ならせることで解決され得る。
【0021】
また、前述した濃淡電池式の酸素濃度センサ(排ガスの酸素濃度に依存する所謂限界電流を測定することで同排ガスの空燃比に応じた出力を発生する限界電流式の酸素濃度センサ等の酸素濃度センサも同様である。)の出力特性(静特性)は、排ガス中の各ガス成分の濃度の割合に応じて変化することが各種実験等を通じて判明している。即ち、例えば、前述したように排ガス中の各ガス成分が完全に燃焼して化学平衡状態にあるときに図33に示す静特性を有する濃淡電池式の酸素濃度センサにおいて、同センサ(の検出部)を通過する排ガスの各ガス成分の濃度の割合が同排ガスが化学平衡状態にあるときの各ガス成分の濃度の割合と異なる場合、同センサは図33に示す静特性とは異なる静特性を有するようになり、排ガスの空燃比が理論空燃比となっているときでも、図33における理論空燃比に相当する値voxsrefとは異なる値を出力するようになる。
【0022】
従って、例えば、この濃淡電池式の酸素濃度センサの出力voxsそのものが図33における理論空燃比に相当する値voxsrefとなるように空燃比制御を行うように構成すると、同排ガス中の各ガス成分の濃度の割合によっては触媒下流の排ガスの空燃比が理論空燃比近傍に維持され得なくなる場合があるという問題(以下、「第2の問題」と称呼する。)が発生する。しかしながら、この第2の問題も、酸素濃度センサ出力に影響を与える触媒から流出する排ガス中の各特定成分の量(濃度)を推定できれば、同推定された各特定成分の濃度に基づいて同センサ出力を補正することで解決され得る。
【0023】
以上、説明したように、上記第1の問題、及び上記第2の問題は共に、触媒から流出する排ガス中の特定成分の量を推定できれば解決され得る。そこで、発明者は、触媒から流出する排ガス中の特定成分の量(濃度)を推定する手法を開発するとともに、酸素濃度センサの出力に基づく空燃比のフィードバック制御においてこの推定値を考慮することにより、一層適切に同フィードバック制御を実行し得ることを見い出した。
【0024】
【発明の概要】
本発明の目的は、触媒下流の排気通路に配置された酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比のフィードバック制御を行う内燃機関の排気浄化装置において、触媒から流出する排ガス中の特定成分の量を考慮することで一層適切にフィードバック制御を実行し得るものを提供することにある。
【0025】
かかる目的を達成するための(上記第1の問題を解決するための)本発明の第1の特徴は、内燃機関の排気通路に配設された触媒と、前記触媒よりも下流の前記排気通路に配設されるとともに同配設部位における同排気通路内の排ガスの空燃比に応じた値を出力する濃淡電池式の酸素濃度センサと、前記酸素濃度センサの出力と同出力の所定の目標値との相違の程度を示す値に基づいてフィードバック制御量を算出するフィードバック制御量算出手段と、前記酸素濃度センサの出力が前記所定の目標値となるように前記フィードバック制御量に基づいて前記触媒に流入するガスの空燃比を制御する空燃比制御手段と、を備えた内燃機関の排気浄化装置が、前記触媒から流出する排ガス中の同触媒にて浄化すべき特定成分の量に関する値を取得する特定成分量取得手段を備え、前記フィードバック制御量算出手段は、前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量以下であることを示す値であるとき、前記酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との相違の程度を示す値の代わりに同値が示す相違の程度より小さい所定の相違の程度を示す値に基づいて前記フィードバック制御量を算出するように構成されたことにある。
【0026】
この場合、更に、前記フィードバック制御量算出手段は、前記相違の程度を示す値としての前記酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との偏差に基づいて前記フィードバック制御量を算出するとともに、前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が前記所定の微小量以下であることを示す値であるとき、前記偏差の代わりに同偏差の絶対値より小さい絶対値となる所定の値に基づいて前記フィードバック制御量を算出するように構成されることが好適である。
【0027】
ここにおいて、前記触媒にて浄化すべき特定成分とは、例えば、一酸化炭素CO、炭化水素HC、窒素酸化物NOx等であり、触媒から流出する排ガス中の同触媒にて浄化すべき前記特定成分の量に関する値は、例えば、同特定成分(CO等)の濃度、又は同特定成分の絶対量等、並びに、酸素O2(の過不足量)の濃度、又は同酸素O2(の過不足量)の絶対量等であって、これらに限定されない。
【0028】
また、前記特定成分の量に関する値を取得する特定成分量取得手段は、触媒内の反応を考慮して構築された触媒モデルにより、同触媒に流入するガスの状態に基づいて同触媒の酸素吸蔵量を推定するとともに少なくとも同推定された酸素吸蔵量に基づいて前記特定成分の量に関する値を取得するように構成されることが好適である(後述する本発明の第2の特徴に係る排気浄化装置についても同様。)。
【0029】
また、前記触媒に流入するガスの空燃比を制御する空燃比制御手段は、例えば、機関に供給される混合気の空燃比を制御する手段であってもよく、或いは、同機関に供給される混合気の空燃比の制御を行うとともに、同触媒の上流の排気通路に備えられたノズル等から空気や燃料を供給することで同触媒に流入するガスの空燃比を制御する手段であってもよい(後述する本発明の第2の特徴に係る排気浄化装置についても同様。)。なお、機関に供給される混合気の空燃比を制御すれば、触媒に流入するガスの空燃比を制御することができる。
【0030】
これによれば、触媒からエミッションが或る程度流出していて特定成分量取得手段により取得される特定成分(エミッション)の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量を超えることを示す値となる場合、酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との相違の程度を示す値(例えば、前記偏差)そのものに応じて触媒に流入するガスの空燃比を制御(補正)するためのフィードバック制御量が適切な値に計算され得る。
【0031】
一方、触媒からエミッションが殆ど流出せずに前記特定成分(エミッション)の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量以下であることを示す値となる場合、前記相違の程度を示す値(例えば、前記偏差)の代わりに同値が示す相違の程度より小さい所定の相違の程度を示す値(例えば、前記偏差の絶対値より小さい絶対値となる所定の値)に基づいてフィードバック制御量が算出される。従って、例えば、濃淡電池式の酸素濃度センサが前述した不定状態にある場合のように仮に前記偏差の絶対値が大きい値となっていても、フィードバック制御量(の絶対値)が小さく計算され得ることで触媒に流入するガスの空燃比が不必要に大きく補正されなくなる。
【0032】
この結果、濃淡電池式の酸素濃度センサが一旦不定状態になった後においても、フィードバック制御される触媒に供給されるガスの空燃比が振動的になりにくくなることで触媒の酸素吸蔵量が所定の量(例えば、最大酸素吸蔵量の半分の量)に収束しやすくなるから、濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における前述した第1の問題が解決され得る。
【0033】
前記内燃機関の排気浄化装置においては、前記フィードバック制御量算出手段は、前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が前記所定の微小量を超えることを示す値であるとき、同特定成分の量に関する値に応じて前記酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との相違の程度を示す値に重み付けした値を求めるとともに、同相違の程度を示す値の代わりに同重み付けされた値に基づいて前記フィードバック制御量を算出するように構成されることが好適である。
【0034】
触媒からエミッションが或る程度流出していて前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量を超えることを示す値となる場合(即ち、濃淡電池式の酸素濃度センサが前記不定状態になく、同センサの出力と前記所定の目標値との相違の程度を示す値(例えば、前記偏差)そのものに応じてフィードバック制御量が計算される場合)、同フィードバック制御量(の絶対値)は、同触媒から流出する排ガス中の特定成分の(絶対)量の増加に応じて線形的に増加するように設定されることが好適であると考えられる。また、触媒から流出する排ガス中の特定成分の(絶対)量は同排ガスの空燃比の理論空燃比からの偏移量の増加に応じて増加する。
【0035】
しかしながら、先に説明した図33に示すように、濃淡電池式の酸素濃度センサの出力は、理論空燃比近傍で急変するとともに空燃比が理論空燃比近傍から外れると同空燃比の理論空燃比からの偏移量に拘わらず略一定の値となるから、同センサの出力と同出力の目標値との相違の程度を示す値(前記偏差)に基づいて計算されるフィードバック制御量(の絶対値)は前記特定成分の(絶対)量の増加に応じて線形的に増加する値とはなり得ない。
【0036】
これに対し、上記のように、前記特定成分の量に関する値に応じて(特定成分の(絶対)量の増加に応じて)前記酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との相違の程度を示す値(例えば、前記偏差)に重み付けした値に基づいてフィードバック制御量を算出するように構成すれば、フィードバック制御量(の絶対値)が触媒から流出する排ガス中の特定成分の(絶対)量の増加に応じて線形的に増加する値に近づくように設定され得るから、触媒に流入するガスの空燃比が同特定成分の(絶対)量に応じて適切に制御(補正)され得る。
【0037】
また、上記第2の問題を解決するための本発明の第2の特徴に係る排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に配設された触媒よりも下流の前記排気通路に配設されるとともに同配設部位における同排気通路内の排ガスの空燃比に応じた値を出力する酸素濃度センサ(例えば、濃淡電池式の酸素濃度センサ、及び限界電流式の酸素濃度センサ等)と、前記酸素濃度センサの出力に影響を与える前記触媒から流出する排ガス中の特定成分の量に関する値を取得する特定成分量取得手段と、前記特定成分の量に関する値に基づいて前記酸素濃度センサの出力を補正した値を算出する補正手段と、前記補正された値が所定の目標値となるように同補正された値に基づいて前記触媒に流入するガスの空燃比を制御する空燃比制御手段とを備える。
【0038】
ここにおいて、前記酸素濃度センサの出力に影響を与える特定成分とは、例えば、酸素O2、窒素酸化物NOx、一酸化炭素CO、炭化水素HC、水素H2等であり、前記特定成分の量に関する値は、例えば、同特定成分(酸素O2等)の濃度、又は同特定成分の絶対量等であって、これらに限定されない。
【0039】
先に説明したように、酸素濃度センサの空燃比に対する出力特性は、同センサを通過する排ガス中の各ガス成分の濃度の割合に応じて変化し、排ガスの実際の空燃比が前記所定の目標値に相当する空燃比(例えば、理論空燃比)となるときの同センサの出力は同排ガス中の各ガス成分の濃度の割合に応じて同所定の目標値から偏移する。この点に鑑み、上記のように、酸素濃度センサの出力に影響を与える触媒から流出する排ガス中の前記特定成分の量に関する値(濃度、各特定成分の濃度の割合)に基づいて同酸素濃度センサの出力を補正した値が所定の目標値となるように同補正された値に基づいて同触媒に流入するガスの空燃比を制御するように構成すれば、同排ガス中の各ガス成分の濃度の割合に拘わらず、排ガスの実際の空燃比が同所定の目標値に相当する空燃比となるときにおける同補正された値が同所定の目標値と等しくなるように(或いは、センサ出力よりも同所定の目標値に近い値になるように)計算され得るから、触媒下流の排ガスの空燃比が同所定の目標値に相当する空燃比(例えば、理論空燃比)近傍に維持され得る。従って、濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における前述した第2の問題が解決され得る。
【0040】
この場合、前記特定成分量取得手段は、前記触媒から流出する排ガス中の少なくとも一つの酸化剤の量に関する値と少なくとも一つの還元剤の量に関する値を前記ガス中の特定成分の量に関する値として取得するように構成され、前記補正手段は、前記少なくとも一つの酸化剤の量に関する値に基づいて前記触媒から流出する排ガス中の酸化剤が前記酸素濃度センサの出力に影響を与える程度を示す酸化剤側影響度指標値と求めるとともに前記少なくとも一つの還元剤の量に関する値に基づいて同排ガス中の還元剤が同酸素濃度センサの出力に影響を与える程度を示す還元剤側影響度指標値と求め、同酸化剤側影響度指標値と同還元剤側影響度指標値との比較により同酸素濃度センサの出力が補正されるべき程度を示す補正指標値を求め、同補正指標値に基づいて同酸素濃度センサの出力を補正した値を算出するように構成されることが好適である。
【0041】
酸素濃度センサの出力においては、同センサを通過する排ガス中の酸化剤の量(濃度)の増加に応じて同出力が変化する方向と同排ガス中の還元剤の量(濃度)の増加に応じて同出力が変化する方向とが互いに逆になる傾向がある。換言すれば、触媒から流出する排ガス中の酸化剤が酸素濃度センサの出力に影響を与える程度と同排ガス中の還元剤が同酸素濃度センサの出力に影響を与える程度とを比較することで同センサの出力を補正する程度(例えば、大きさと方向)を求めることができる。
【0042】
従って、上記のように、前記少なくとも一つの酸化剤の量に関する値に基づいて求められるとともに前記触媒から流出する排ガス中の酸化剤が前記酸素濃度センサの出力に影響を与える程度を示す酸化剤側影響度指標値と前記少なくとも一つの還元剤の量に関する値に基づいて求められるとともに同排ガス中の還元剤が同酸素濃度センサの出力に影響を与える程度を示す還元剤側影響度指標値との比較により補正指標値を求め、同補正指標値に基づいて同酸素濃度センサの出力を補正した値を算出するように構成すれば、簡易な計算により、且つ正確に、排ガスの実際の空燃比が前記所定の目標値に相当する空燃比であるときの同補正した値が同排ガス中の各ガス成分の濃度の割合に拘わらず同所定の目標値と等しくなるように(に近づくように)計算され得る。
【0043】
【発明の実施の形態】
<第1実施形態>
以下、本発明による排気浄化装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る排気浄化装置(空燃比制御装置)を火花点火式多気筒(4気筒)内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。なお、図1においては、一つの気筒の断面が示されているが、他の気筒も同様の構成を備えている。また、この第1実施形態の排気浄化装置は、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第1の問題」を解決するためのものである。
【0044】
この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース、及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
【0045】
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23、及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
【0046】
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともに同インテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38、及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)39を備えている。
【0047】
吸気系統40は、吸気ポート31に連通し同吸気ポート31とともに吸気通路を形成するインテークマニホールドを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42、吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁43、及び、スロットル弁駆動手段を構成するDCモータからなるスロットル弁アクチュエータ43aを備えている。
【0048】
排気系統50は、排気ポート34に連通したエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51に接続されたエキゾーストパイプ(排気管)52、エキゾーストパイプ52に配設(介装)された上流側の第1触媒(上流側三元触媒、又はスタート・コンバータとも云う。)53、及び第1触媒53の下流のエキゾーストパイプ52に配設(介装)された第2触媒(下流側三元触媒、又は、車両のフロア下方に配設されるため、アンダ・フロア・コンバータとも云う。)54を備えている。ここで、排気ポート34、エキゾーストマニホールド51、及びエキゾーストパイプ52は、排気通路を構成している。
【0049】
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ62、カムポジションセンサ63、クランクポジションセンサ64、水温センサ65、第1触媒53の上流の排気通路に配設された空燃比センサ66(以下、「最上流空燃比センサ66」と称呼する。)、第1触媒53の下流であって第2触媒54の上流の排気通路に配設された空燃比センサ67(以下、「第1触媒下流空燃比センサ67」と称呼する。)、及びアクセル開度センサ68を備えている。
【0050】
熱線式エアフローメータ61は、吸気管41内を流れる吸入空気の質量流量AFM(=Ga)に応じた電圧を出力するようになっている。スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁43の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(即ち、クランク軸24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号(G2信号)を発生するようになっている。クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、エンジン回転速度NEを表す。水温センサ65は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
【0051】
最上流空燃比センサ66は、限界電流式の酸素濃度センサであって、図2に示したように、空燃比A/Fに応じた電圧vabyfsを出力するようになっている。図2から明らかなように、最上流空燃比センサ66によれば、広範囲にわたる空燃比A/Fを精度良く検出することができる。第1触媒下流空燃比センサ67は、前述の図33にその出力特性を示したものと同一の濃淡電池式の酸素濃度センサであって、排ガス中の各ガス成分が完全に燃焼して化学平衡状態にある場合、同排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンのとき略0.1(V)、同排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチのとき略0.9(V)、及び同排ガスの空燃比が理論空燃比のときは所定の目標値voxsrefである0.5(V)の電圧voxsを出力するようになっている。アクセル開度センサ68は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を検出し、同アクセルペダル81の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
【0052】
更に、このシステムは電気制御装置70を備えている。電気制御装置70は、互いにバスで接続されたCPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、及び定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、並びにADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース75は、前記センサ61〜68と接続され、CPU71にセンサ61〜68からの信号を供給するとともに、同CPU71の指示に応じて可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、インジェクタ39、及びスロットル弁アクチュエータ43aに駆動信号を送出するようになっている。
【0053】
(空燃比フィードバック制御の概要)
次に、上記のように構成された内燃機関の排気浄化装置(以下、「本第1実施形態の排気浄化装置」と云うこともある。)が行う空燃比フィードバック制御の概要について説明する。
【0054】
第1触媒53(第2触媒54も同様である。)は、図3に外観を示したように、断面が楕円形(断面積がdA一定)の柱状のモノリス触媒コンバータと称呼される三元触媒であり、軸に直交する平面で同第1触媒53を切断した拡大断面図である図4に示したように、セラミックの一種であるコージェライトからなる担体53aにより、その内部が軸方向に延在する軸線方向空間に細分されている。各軸線方向空間は、軸線に垂直な平面で切断すると略正方形状を有していて、セルとも称呼される。担体53aは、アルミナのコート層53bによりコーティングされていて、同コート層53bは白金(Pt)等の貴金属からなる活性成分(触媒成分)及びセリア(CeO2)等の成分を担持している。
【0055】
かかる第1触媒53は、白金等の貴金属を担持しているから、同第1触媒53に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比のときに未燃成分(HC,CO)を酸化し、同時に窒素酸化物(NOx)を還元する触媒機能を有する。また、第1触媒53は、上記セリア等の成分を担持することにより、同第1触媒53に流入する排ガス中の酸素分子を吸蔵(貯蔵,吸着)及び放出する上述の酸素吸蔵機能を有していて、この酸素吸蔵機能により、空燃比が理論空燃比からある程度まで偏移したとしても、HC,CO、及びNOxを浄化することができる。
【0056】
即ち、機関10に供給される混合気の空燃比がリーンとなって第1触媒53に流入するガスにNOxが多量に含まれると、第1触媒53はNOxから酸素分子を奪って同酸素分子を吸蔵するとともに同NOxを還元し、これによりNOxを浄化する。また、機関10に供給される混合気の空燃比がリッチになって第1触媒53に流入するガスにHC,COが多量に含まれると、第1触媒53はこれらに吸蔵している酸素分子を与えて(放出して)酸化し、これによりHC,COを浄化する。
【0057】
従って、第1触媒53の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量近傍に到達していると、第1触媒53に流入するガスの空燃比がリーンとなったときに酸素を吸蔵することができないので、排ガス中のNOxを十分に浄化できなくなる。一方、第1触媒53の酸素吸蔵量が「0」近傍になっていると、第1触媒53に流入するガスの空燃比がリッチとなったときに酸素を放出することができないので、排ガス中のHCやCOを十分に浄化できなくなる。このため、第1触媒53に流入するガスの空燃比が過渡的に相当のリーン空燃比又はリッチ空燃比となった場合であっても、同ガス中の有害成分を効率よく浄化できるように、第1触媒53の酸素吸蔵量が所定の量(例えば、最大酸素吸蔵量の半分の量)になるように機関10に供給される混合気の空燃比(従って、第1触媒53に流入するガスの空燃比)が制御されることが好ましい。
【0058】
また、第1触媒53の酸素吸蔵量が前記所定の量に維持され得るように制御するためには、第1触媒53から流出する排ガスの空燃比(の平均値)が理論空燃比近傍になるように制御することが好適であると考えられる。そこで、本第1実施形態の排気浄化装置は、上述した従来の装置と同様、濃淡電池式の酸素濃度センサである第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsが理論空燃比に相当する目標値voxsrefとなるように、同目標値voxsrefから同出力voxsを減じた偏差Dvoxs(センサ出力と目標値との相違の程度を示す値)に基づいてフィードバック制御量(サブフィードバック制御量)vafsfbを求め、同サブフィードバック制御量vafsfbに基づいて機関10に供給される混合気の空燃比(従って、第1触媒53に流入するガスの空燃比)をフィードバック制御する。
【0059】
しかしながら、先に説明したように、前記偏差Dvoxsそのものに基づいてサブフィードバック制御量vafsfbを求めると、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第1の問題」が発生する。従って、本第1実施形態の排気浄化装置は、後に詳述する触媒モデルを第1触媒53に適用することで第1触媒53から流出する排ガス中の酸素濃度CgoutSC,O2<r>を求め、後述するように、この酸素濃度CgoutSC,O2<r>の値に基づいて前記偏差Dvoxsを補正した(重み付けした)値Dvoxswに基づいてサブフィードバック制御量vafsfbを求める。
【0060】
ここで、第1触媒53から流出する排ガス中の酸素濃度CgoutSC,O2<r>について簡単に説明する。後述する触媒モデルにおいては、図5に示したように、円筒形の触媒を同円筒形の軸線に直交する平面にて同触媒の上流から等間隔で仮想的に分割して複数の概念上のブロックを形成する。そして、触媒モデルは、各ブロック毎に所定の計算を行い、同各ブロックから流出する特定成分(例えば、酸素、一酸化炭素、炭化水素等、窒素酸化物等)の濃度Cgoutを求める。各ブロックは、触媒の最上流(排ガスが流入する側)から順に、1番目のブロック、2番目のブロック、…n番目のブロックと定められている。
【0061】
また、本実施形態の触媒モデルは、第1触媒53をr個(rは2以上の整数)のブロックにそれぞれ分割して各種演算を行う。本明細書においては、特定成分をXとするとともに、着目しているブロックを第1触媒53のk番目のブロック(ブロックk)とすると、第1触媒53のブロックkから流出する排ガス中の特定成分X(Xは、酸素の場合O2、一酸化炭素の場合CO、水素の場合H2、炭化水素の場合HC、窒素酸化物の場合NO)の濃度はCgoutSC,X<k>と表記する。
【0062】
以上から明らかなように、上記酸素濃度CgoutSC,O2<r>は、第1触媒53の最下流に位置するブロックr(従って、第1触媒53)から流出する排ガス中の酸素濃度CgoutSC,O2<i>である。ここで、酸素濃度CgoutSC,O2<r>は、「触媒から流出する排ガス中の同触媒で浄化すべき特定成分の量に関する値」ということになる。また、酸素濃度CgoutSC,O2<r>は、正の値であるときは酸素が過剰であってブロックr(従って、第1触媒53)からNOxが流出している状態であることを意味し、負の値であるときは酸素が不足して同ブロックrから未燃CO,HCが流出している状態であることを意味していている。従って、酸素濃度CgoutSC,O2<r>は、ブロックr(従って、第1触媒53)から流出する排ガス中の酸素の過不足量に関する値とも云える。
【0063】
(触媒モデル)
次に、前記酸素濃度CgoutSC,O2<r>を求めるために使用される触媒モデルの具体的構成・内容について説明する。この触媒モデルは、第1触媒53に適用されるものである。
【0064】
先ず、触媒モデルにおいては、前述したように、第1触媒53を排ガスの入口(流入側、最上流側)Frから出口(流出側、最下流側)Rrに向う軸線に直交する面により複数の領域であるブロックに分割する(図5を参照)。即ち、第1触媒53を排ガスの流れ方向に沿って複数のブロックに仮想的に分割する。分割された各ブロックの軸線方向の長さはL(微小の長さでありdxとも書く。)である。なお、第1触媒53の軸方向に直交する平面で切断した断面の面積をdAとする。
【0065】
次に、任意のブロック(以下、「特定領域」と称呼する。)に注目し、同特定領域を通過する特定の化学種(特定成分)の物質の収支を考える。化学種は、排ガス中に含まれる成分であり、例えば、酸素O2、水素H2、一酸化炭素CO、炭化水素HC、及び窒素酸化物NOxである。なお、化学種は、触媒に流入する排ガスの空燃比がリッチのときに同排ガス中に含まれる成分を総合したもの(リッチ成分)、或いは、触媒に流入する排ガスの空燃比がリーンのときに同排ガス中に含まれる成分を総合したもの(リーン成分)とすることもできる。触媒モデルにおいては、下記表1のように、種々の値が定義される。
【0066】
【表1】
【0067】
いま、時刻t〜t+Δtの所与の期間における特定領域での化学種の収支を考えると、図6に示したように、特定領域の排ガス相(単に、「ガス相」とも称呼する。)における化学種の変化量ΔMは、下記の(1)式に示したとおり、同特定領域に流入した同化学種の量Minから、同特定領域から流出した同化学種の量Moutと同特定領域のコート層に奪われた同化学種の量Mcoatとを減算した量と等しい。このように、触媒モデルは各特定領域における特定成分の物質収支に基づいて構築される。
【0068】
【数1】
【0069】
以下、(1)式の各項について個別に検討する。先ず、(1)式の左辺にある化学種の変化量ΔMは、下記(2)式により求めることができる。(2)式は、上記所与の期間における化学種の濃度変化量(化学種の濃度Cgの時間変化量を所与の期間に渡り積分した量)に微小体積σ・dA・dxを乗じた値を着目しているブロック(特定領域)の全体に渡って軸方向に積分したものである。
【0070】
【数2】
【0071】
(1)式の右辺第1項のMinは、単位時間あたりに特定領域に流入する排ガスの体積に相当する値である「特定領域に流入する排ガスの流速vginと同特定領域の断面積dAの積vgin・dA(実際には、断面積dAで開口率σの触媒内に流速vginの排ガスが流れ込むので、触媒内部での排ガスの流速はvgin/σとなり、この実際の流速vgin/σと触媒の実質的な断面積σ・dAの積)」に同流入する排ガス中の化学種の濃度Cginを乗じた値Cgin・vgin・dAを所与の期間に渡り積分した値である。また、(1)式の右辺第2項のMoutは、特定領域から流出する排ガスの流速vgoutと同特定領域の断面積dAの積vgout・dA(実際には、排ガスの流速vgout/σと実質的な断面積σ・dAの積)に同流出する排ガス中の前記化学種の濃度Cgoutを乗じた値Cgout・vgout・dAを所与の期間に渡り積分した値である。即ち、上記(1)式の右辺第1項及び第2項は下記(3)式のように記述することができる。
【0072】
【数3】
【0073】
ところで、特定領域に流入する排ガスの流速vginと同特定領域から流出する排ガスの流速vgoutとの間に大きな差異はないので、vg=vgin=vgoutとおくと、(3)式は、下記(4)式のように変形される。
【0074】
【数4】
【0075】
次に、(1)式の右辺第3項のコート層に伝達される(移動する)化学種の量Mcoatについて検討する。幾何学的表面積Sgeoは触媒の単位体積あたりの化学種の反応に寄与する表面積であるから、特定領域において化学種の反応に寄与する表面積はSgeo・dA・dxであり、同特定領域の単位長あたりに同反応に寄与する面積はSgeo・dAとなる。また、コート層に伝達される化学種の量は、フィックの法則から、排ガス相の化学種の濃度Cgとコート層の化学種の濃度Cwとの差に比例すると考えることができる。これらから、下記の(5)式が得られる。なお、hDは比例定数であるが、上記の表1に示したように、物質伝達率と称呼される値である。
【0076】
【数5】
【0077】
従って、上記(1),(2),(4)式、及び(5)式から、以下の(6)式が得られる。
【0078】
【数6】
【0079】
この(6)式に準定常(quasi state)近似を適用すると、(6)式の左辺は「0」(∂Cg/∂t=0)であると考えることができるから(即ち、濃度Cgは瞬間的に定常値に至ると考えられるから)、下記の(7)式が得られる。
【0080】
【数7】
【0081】
ここで、見かけの拡散速度(実質的な拡散速度)RDを(8)式のようにおけば、(7)式は(9)式に書き直される。
【0082】
【数8】
【0083】
【数9】
【0084】
次に、特定領域のコート層における化学種の収支(特定成分の物質収支)を上記と同様に考えると、下記(10)式に示したように、コート層内における化学種の時間的変化量(単位時間あたりの変化量)ΔMcは、単位時間あたりに排ガス相からコート層へ伝達される同化学種の量Mdから、同単位時間あたりにコート層にて反応により消費される同化学種の量Mrを減じた量である。
【0085】
【数10】
【0086】
(10)式の左辺(コート層内における化学種の時間的変化量)ΔMcは、下記(11)式に示したように、化学種の濃度変化(∂Cw/∂t)に体積((1−σ)・dA・dx)を乗じることにより求められ、右辺第1項(単位時間あたりに排ガス相からコート層へ伝達される化学種の量Md)は(5)式で説明した理由と同じ理由により、即ち、フィックの法則から考えると、下記(12)式のように記述することができる。
【0087】
【数11】
【0088】
【数12】
【0089】
また、(10)式の右辺第2項(単位時間あたりにコート層にて反応により消費される化学種の量Mr)は、コート層での化学種の消費速度Rを用いた下記(13)式により求められる。
【0090】
【数13】
【0091】
従って、(10)〜(13)式から、下記の(14)式が得られる。
【0092】
【数14】
【0093】
この(14)式に準定常(quasi state)近似を適用すると(∂Cw/∂t=0)、下記の(15)式が得られる。
【0094】
【数15】
【0095】
ここで、(15)式に(8)式を適用すれば、下記の(16)式が得られる。
【0096】
【数16】
【0097】
以上を要約すると、(9)式及び(16)式が触媒モデルの基本式である。(9)式は、ある化学種の「特定領域への流入量」と「排ガス相からコート層への拡散量+特定領域からの流出量」とが釣り合っていることを示し、(16)式は、同化学種の「排ガス相からコート層への拡散量」と「コート層での消費量」とが釣り合っていることを示している。
【0098】
次に、かかる触媒モデルを使用して特定領域から流出する特定の化学種iの濃度Cgoutを実際に算出するための方法について説明する。先ず、(9)式を離散化すると、下記(17)式が得られる。なお、以下においては上記dxをLとして表す。
【0099】
【数17】
【0100】
ここで、図7に概念的に示したように、特定領域Iから流出する化学種の濃度Cgoutは同特定領域Iの化学種の濃度Cg(I)の影響を強く受けると考えられるので、下記の(18)式のように置くことができる。かかる考え方は「風上法」と称呼される。換言すると、風上法とは、「特定領域Iに隣接する上流側の領域(I−1)における濃度Cg(I−1)の化学種が、特定領域Iに流入する。」という考え方であり、下記(19)式のように記述することもできる。
【0101】
【数18】
【0102】
【数19】
【0103】
ところで、反応速度論に基けば、ある化学種のコート層での消費速度Rは、その化学種のコート層の平均濃度Cwの関数fcw(例えば、Cwのn乗に比例する関数)となるので、この関数fcwを最も簡便となるようにCwに比例すると設定すれば、消費速度Rは(20)式にて示したように置くことができる。なお、以下において、(20)式中のR*を便宜上「消費速度定数」と称呼する。
【0104】
【数20】
【0105】
この(20)式を上記(16)式(R=RD・(Cg−Cw)…(16))に適用すると下記(21)式が得られ、同(21)式を変形することにより下記(22)式が得られる。
【0106】
【数21】
【0107】
【数22】
【0108】
また、上述した風上法によれば、Cg=Cgoutであるから、(22)式は下記(23)式に書き換えられる。
【0109】
【数23】
【0110】
そして、Cg=Cgoutなる関係を上記(17)式に適用してCgを消去するとともに、同(17)式と上記(23)式とからCwを消去すると、下記(24)式が得られる。
【0111】
【数24】
【0112】
そこで、値SPを下記(25)式のようにおけば、(24)式は(26)式のように書き直すことができる。値SPは、見かけの拡散速度RDと消費速度定数R*のうちの小さい方の値に強い影響を受ける値であるから、Cgoutの変化が物質の伝達(RD)又は化学的反応(R*)の何れにより律速されているかを示す値となっており、従って、「反応律速因子」と呼ぶこともできる。
【0113】
【数25】
【0114】
【数26】
【0115】
以上のことから、消費速度定数R*と見かけの拡散速度RDとを決定できれば、特定領域に流入する化学種濃度Cginを与えることにより、(25)式と(26)式とに基づいて同特定領域から流出する化学種の濃度Cgoutを求めることができる。また、これにより、次の特定領域に流入する化学種濃度Cginが定まるので、同次の特定領域の化学種の濃度Cgoutを算出することが可能となる。以上が、化学種の濃度Cgoutを算出する触媒モデルの基本的考え方である。
【0116】
次に、上記消費速度定数R*と見かけの拡散速度RDを決定するとともに、特定領域から流出する化学種濃度Cgoutを求める際のより具体的な方法の一例について説明する。この例(触媒モデル)では、触媒での酸化・還元反応である三元反応は瞬時に且つ完全に終了するものと仮定し、その結果としての酸素の過不足に基く酸素の吸蔵・放出反応に着目することとする。なお、この仮定(触媒モデル)は、現実的であり且つ精度の良いものである。
【0117】
この場合、着目する化学種iは、例えば、酸素O2や窒素酸化物の一つである一酸化窒素NOのように酸素を生成する(酸素をもたらす)化学種(ストレージ・エージェント)、及び、一酸化炭素COや炭化水素HCのように酸素を消費する化学種(リダクション・エージェント)から選ばれた化学種である。
【0118】
また、以下において、ストレージ・エージェントの化学種i(この場合、化学種iはO2又はNO等)のCgoutをCgout,stor,i、同化学種iのCwをCw,stor,i、同化学種iのCginをCgin,stor,i、同化学種iの見かけの拡散速度RDをRD,i、同化学種iの消費速度をRstor,i、同化学種iの消費速度定数をR*stor,i、及び同化学種iの反応律速因子をSPstor,iと表す。
【0119】
同様に、リダクション・エージェントの化学種i(この場合、化学種iはH2、CO、HC等)のCgoutをCgout,reduc,i、同化学種iのCwをCw,reduc,i、同化学種iのCginをCgin,reduc,i、同化学種iの見かけの拡散速度RDをRD,i、同化学種iの消費速度をRreduc,i、同化学種iの消費速度定数をR*reduc,i、及び同化学種iの反応律速因子SPreduc,iと表す。このように各値を表すと、上記(20),(23),(25),(26)式から以下の(27)〜(34)式が得られる。
【0120】
【数27】
【0121】
【数28】
【0122】
【数29】
【0123】
【数30】
【0124】
【数31】
【0125】
【数32】
【0126】
【数33】
【0127】
【数34】
【0128】
これらの式に基づいて、Cgout,sotr,i(具体的には、特定領域から流出する酸素の濃度Cgout,O2、特定領域から流出する一酸化窒素の濃度Cgout,NO)及びCgout,reduc,i(具体的には、特定領域から流出する水素の濃度Cgout,H2、特定領域から流出する一酸化炭素の濃度Cgout,CO、特定領域から流出する炭化水素の濃度Cgout,HC)を求めるため、先ず、消費速度定数R*stor,i及び消費速度定数R*reduc,iを求める。
【0129】
ところで、反応速度論によれば、特定領域のコート層で酸素が吸蔵される速度(酸素の吸蔵速度)であるストレージ・エージェントの消費速度Rstor,iは、同コート層のストレージ・エージェント(O2、NOx等)の濃度Cw,stor,i(例えば、Cw,O2、Cw,NO)の関数f1(Cw,stor,i)の値に比例するとともに、特定領域のコート層の最大酸素吸蔵密度と実際の酸素吸蔵密度との差(Ostmax−Ost)の関数f2(Ostmax−Ost)の値とに比例すると考えられる。この最大酸素吸蔵密度と酸素吸蔵密度との差(Ostmax−Ost)は、着目している特定領域における酸素吸蔵余裕量を表す。
【0130】
そこで、簡単のために関数f1(x)=f2(x)=xとすると、下記の(35)式が得られる。下記(35)式のkstor,iは酸素吸蔵速度係数(吸蔵側反応速度係数,ストレージ・エージェントの消費速度係数)であって、よく知られたアレニウスの式で表される温度に依存して変化する係数であり、別途検出又は推定される触媒温度Tempと所定の関数(酸素吸蔵速度係数kstor,iと触媒温度Tempとの間の関係を規定したマップでも良い。)とに基づいて求めることができる。なお、酸素吸蔵速度係数kstor,iは、触媒劣化程度に応じても変化するので、同触媒劣化程度に応じて求めてもよい。
【0131】
【数35】
【0132】
従って、(27)式と(35)式とから、消費速度定数R*stor,iは下記(36)式により求めることができる。
【0133】
【数36】
【0134】
また、酸素の吸蔵(吸着)と放出のみに着目しているこの触媒モデルにおいては、還元剤であるリダクション・エージェントはコート層に吸蔵されている酸素の放出のみに使用されるから、同リダクション・エージェントの消費速度Rreduc,iはコート層に吸蔵されている酸素が放出される速度(酸素の放出速度)Rrel,iと等しい。
【0135】
そこで、酸素の放出速度Rrel,iについて検討すると、同放出速度Rrel,iは、酸素の吸蔵速度Rstor,iと同様に反応速度論に基き、同コート層において酸素を消費する化学種(例えば、CO,HC)の濃度Cw,reduc,i(例えば、Cw,CO、Cw,HC)の関数g1(Cw,reduc,i)の値に比例するとともに、酸素吸蔵密度Ostの関数g2(Ost)の値とに比例すると考えられる。
【0136】
そこで、簡単のために関数g1(x)=g2(x)=xとすると、下記の(37)式が得られる。下記(37)式のkrel,iは酸素放出速度係数(吸脱側反応速度係数)であって、酸素吸蔵速度係数kstor,iと同様にアレニウスの式で表される温度に依存して変化する係数であり、別途検出又は推定される触媒温度Tempに基づいて所定の関数(酸素放出速度係数krel,iと触媒温度Tempとの間の関係を規定したマップでも良い。)に基づいて求めることができる。なお、酸素放出速度係数krel,iは、触媒劣化程度に応じても変化するので、同触媒劣化程度に応じて求めてもよい。
【0137】
【数37】
【0138】
この結果、上述したようにリダクション・エージェントの消費速度Rredcu,iはコート層の酸素の放出速度Rrel,iと等しいから、消費速度定数R*reduc,iは(31)式と(37)式とを比較することにより得られる下記(38)式に基づいて求めることができる。
【0139】
【数38】
【0140】
以上のことから、酸素吸蔵密度Ostが求められれば(酸素吸蔵密度Ostの求め方については、後述する。)、(36)式から消費速度定数R*stor,i(例えば、R*O2)を求めることができる。一方、見かけの拡散速度RD,i(例えば、RD,O2)は(8)式のようにSgeo・hD,iであるから、温度と流量の関数(触媒の温度と同触媒を通過する排ガスの流量の関数)として実験的に求めておくことができる。この結果、(29)式からSPstor,i(例えば、SPstor,O2)が決定されるので、境界条件としてCgin,stor,i(例えば、Cgin,O2)が与えられるとき、(30)式からCgout,stor,i(例えば、Cout,O2)が求められる。そして、新たなCw,stor,i(例えば、Cw,O2)が(28)式により求められる。
【0141】
同様に、酸素吸蔵密度Ostが求められれば、(38)式から消費速度定数R*reduc,i(例えば、R*reduc,CO)を求めることができる。一方、見かけの拡散速度RD,i(例えば、RD,CO)は(8)式のようにSgeo・hD,iであるから、温度と流量の関数(触媒の温度と同触媒を通過する排ガスの流量の関数)として実験的に求めておくことができる。この結果、(33)式からSPreduc,i(例えば、SPreduc,CO)が決定されるので、境界条件としてCgin,reduc,i(例えば、Cgin,CO)が与えられるとき、(34)式からCgout,reduc,i(例えば、Cgout,CO)が求められる。そして、新たなCw,reduc,i(例えば、Cw,CO)が(32)式により求められる。
【0142】
次に、Cgout,stor,i、Cgout,reduc,iを求めるために必要となる酸素吸蔵密度Ostの求め方について説明する。
【0143】
先ず、コート層での化学種としての酸素の収支について着目すると、同収支はコート層での酸素の吸蔵分と酸素の放出分の差であるから、下記(39)式により記述される。(39)式でdA・Lは特定領域の体積dVである。
【0144】
【数39】
【0145】
この(39)式を変形すると、下記(40)式が得られる。
【0146】
【数40】
【0147】
この(40)式を、(35)式と(37)式とを用いながら離散化すると、下記の(41)式が得られる。
【0148】
【数41】
【0149】
この(41)式を変形すると、下記(42)式〜(44)式が得られ、これらから酸素吸蔵密度Ostを求めること(更新して行くこと)ができる。
【0150】
【数42】
【0151】
【数43】
【0152】
【数44】
【0153】
このように、式(42)〜(44)式から酸素吸蔵密度Ostが求められるので、上述したようにCgout,stor,i、Cgout,reduc,iを求めることができる。以上のようにして、各ブロックから流出する排ガス中の酸素濃度を求める手段がガス空燃比関連値取得手段に相当する。また、酸素吸蔵密度Ostが求められるから、下記(45)式に基づいて特定領域の酸素吸蔵量OSAを求めることができる。
【数45】
【0154】
従って、触媒に流入する化学種濃度Cgin,iが境界条件として与えられたとき、触媒上流のブロック(特定領域)から、順次、(30)式又は(34)式を用いて各ブロックから流出する化学種濃度Cgout,iを求めることができるとともに(45)式を用いて各ブロックの酸素吸蔵量OSAを求めることができる。また、各ブロックの酸素吸蔵量OSAを触媒全体について積算すれば、同触媒全体の酸素吸蔵量についても精度良く推定することができる。また、以上が、本第1実施形態の排気浄化装置が使用する触媒モデルである。このように触媒モデルを利用して第1触媒53から流出する特定成分の量に関する値である排ガス中の酸素濃度CgoutSC,O2<r>を求める手段が特定成分量取得手段に相当する。
【0155】
(サブフィードバック制御量の計算)
先に説明したように、本第1実施形態の排気浄化装置は、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを目標値voxsrefから減じた値である偏差Dvoxsに基づいて、機関10に供給される混合気の空燃比(従って、第1触媒53に流入するガスの空燃比)をフィードバック制御するためのサブフィードバック制御量vafsfbを求める。
【0156】
一方、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第1の問題」を解消するため、即ち、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態にあるときに第1触媒53に流入する排ガスの空燃比が不必要に大きく補正されなくするため、第1触媒53からエミッションが殆ど流出していないとき(従って、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態にある可能性があるとき)、前記偏差Dvoxsの絶対値が大きい値となっていてもサブフィードバック制御量vafsfb(の絶対値)が小さく計算される必要がある。
【0157】
また、第1触媒53からエミッションが或る程度流出している場合(即ち、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態にない場合)、サブフィードバック制御量vafsfb(の絶対値)は、第1触媒53から流出するエミッションの(絶対)量の増加に応じて線形的に増加するように設定されることが好適であると考えられる。この第1触媒53から流出するエミッションの(絶対)量は同第1触媒53から流出する排ガスの空燃比の理論空燃比からの偏移量の増加に応じて増加する。しかしながら、先に説明した図33に示すグラフから容易に理解できるように、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを同出力の目標値voxsrefから減じた値である前記偏差Dvoxsに基づいて計算されるフィードバック制御量(の絶対値)は前記エミッションの(絶対)量の増加に応じて線形的に増加する値とはなり得ない。従って、第1触媒53からエミッションが或る程度流出している場合、前記サブフィードバック制御量vafsfbは、前記偏差Dvoxsの値そのものではなく、同偏差Dvoxsの値に前記エミッションの(絶対)量の増加に応じて重み付けした値に基づいて計算されることが好適である。
【0158】
他方、上述の触媒モデルを使用して計算される第1触媒53から流出する排ガス中の前記酸素濃度CgoutSC,O2<r>は、正の値であるときは酸素が過剰であって第1触媒53から同酸素濃度CgoutSC,O2<r>の増加に応じて増加する量のNOxが流出している状態であることを意味し、負の値であるときは酸素が不足して第1触媒53から同酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて増加する量の未燃CO,HCが流出している状態であることを意味する。換言すれば、前記酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値は、第1触媒53から流出するエミッションの(絶対)量を精度良く表す値となり得る。
【0159】
そこで、本第1実施形態の排気浄化装置は、前記酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値と、同酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値と重み係数Kwcgとの関係を規定する図8に示したテーブルと、に基づいて同重み係数Kwcgを算出するとともに、前記偏差Dvoxsに同重み係数Kwcgを乗じた値Dvoxswを求め、この値Dvoxswを比例・積分・微分処理(PID処理)することでサブフィードバック制御量vafsfbを求める。なお、図8における値Crefは前記「所定の微小量」に対応する値である。
【0160】
図8に示したように、重み係数Kwcgは、酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値が値Cref以下であるとき、重み係数Kwcgが「1」以下の値に設定されるから、値Dvoxsw(の絶対値)は前記偏差Dvoxs(の絶対値)よりも小さい値となる。換言すれば、前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量以下であることを示す値であるとき、前記偏差Dvoxsの代わりに同偏差Dvoxsの絶対値より小さい絶対値となる所定の値Dvoxswに基づいてサブフィードバック制御量vafsfbが算出される。従って、このとき、サブフィードバック制御量vafsfb(の絶対値)も小さく計算されるから、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態にあるときに第1触媒53に流入する排ガスの空燃比が不必要に大きく補正されなくなり、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第1の問題」が解消される。
【0161】
また、図8に示したように、重み係数Kwcgは、酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値が値Crefより大きい値であるとき、重み係数Kwcgが「1」以上であって、且つ、酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて増加する値に設定されるから、値Dvoxsw(の絶対値)は前記偏差Dvoxs(の絶対値)に酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて重み付けした値となる。換言すれば、前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量を超えることを示す値であるとき、前記偏差Dvoxsの代わりに同酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値に応じて同偏差Dvoxsに重み付けした値Dvoxswに基づいてサブフィードバック制御量vafsfbが算出される。従って、このとき、フィードバック制御量vafsfb(の絶対値)が酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて線形的に増加する値に近づくように設定され得る。以上のようにしてサブフィードバック制御量vafsfbを求める手段がフィードバック制御量算出手段に相当する。
【0162】
そして、本第1実施形態の排気浄化装置は、このようにして求めたサブフィードバック制御量vafsfbが正の値であるとき、同サブフィードバック制御量vafsfb分だけ最上流空燃比センサ66の出力vabyfsを補正し、これにより、機関に供給される混合気の空燃比が、同最上流空燃比センサ66の検出空燃比よりも見かけ上リーン側であるように設定し、その補正した見かけ上の空燃比が目標空燃比(ここでは、理論空燃比)となるように同混合気の空燃比をフィードバック制御する(従って、リッチ側に補正する。)。
【0163】
同様に、サブフィードバック制御量vafsfbが負の値であるとき、同サブフィードバック制御量vafsfb分だけ最上流空燃比センサ66の出力vabyfsを補正し、これにより、機関に供給される混合気の空燃比が、同最上流空燃比センサ66の検出空燃比よりも見かけ上リッチ側であるように設定し、その補正した見かけ上の空燃比が目標空燃比(ここでは、理論空燃比)となるように同混合気の空燃比をフィードバック制御する(従って、リーン側に補正する。)。以上により、サブフィードバック制御量vafsfbが「0」になるように(従って、前記偏差Dvoxs(及び、前記値Dvoxsw)が「0」になるように)第1触媒53に流入する排ガスの空燃比がフィードバック制御されることで、第1触媒53下流の排ガスの空燃比が前記目標値voxsrefに相当する目標空燃比(理論空燃比)と一致せしめられる。このようにして第1触媒53に流入するガスの空燃比を制御する手段が空燃比制御手段に相当する。
【0164】
図9は、図34に示した前述した従来の排気浄化装置を適用した場合の各値の変化を表すタイムチャートをそのまま破線で示すとともに、同一の条件にて本第1実施形態の排気浄化装置を適用した場合の同各値の変化を実線で示すことで、従来の排気浄化装置を適用した場合と本第1実施形態の排気浄化装置を適用した場合とを比較しながら示したタイムチャートである。図34における従来の排気浄化装置と同様、説明の便宜上、図9において、本第1実施形態の排気浄化装置は前記偏差DVoxsを重み付けした値DVoxswに対する比例処理(P処理)のみによりサブフィードバック制御量vafsfbを算出しているものとする。
【0165】
先に説明したように、従来の装置を適用した場合、時刻t2以降、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態になると、(b)に示すように、偏差Dvoxsが絶対値が大きい負の値に維持されることで機関に供給される混合気の空燃比abyfsがリーン側に不必要に大きく補正され続ける。この結果、その後の同混合気の空燃比が振動的になっていた。
【0166】
これに対し、本第1実施形態の排気浄化装置を適用した場合、時刻t2以降、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態になると、(e)及び(f)に示すように、第1触媒53からエミッションが殆ど流出してこないことから酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値が前記Crefよりも小さい略「0」になって(従って、一酸化炭素濃度CgoutSC,CO<r>、一酸化窒素濃度CgoutSC,NO<r>も略「0」になって)、図8に示した前記重み係数Kwcgが「1」よりも非常に小さい値に設定される。従って、偏差Dvoxsに重み係数Kwcgを乗じた値である値Dvoxswは、(b)に示すように、絶対値が非常に小さい負の値に維持される。
【0167】
この結果、サブフィードバック制御量vafsfbは絶対値が小さい負の値となって、(c)に示すように、機関に供給される混合気の空燃比abyfsはリーン側に小さく補正され続けるようになる。従って、(d)に示すように、第1触媒53の酸素吸蔵量OSASC(r)は、時刻t2以降、「0」近傍から緩やかに増加するから、時刻t4になっても最大酸素吸蔵量CmaxSCall近傍に到達することはない。この結果、第1触媒53から多量のNOx(及び、多量のCO,HC)が流出してこないから、(a)に示すように、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsは、時刻t4以降、暫らくの間リッチを示す値に維持された後(即ち、第1触媒下流空燃比センサ67が暫らくの間、不定状態に維持された後)、第1触媒下流空燃比センサ67が同不定状態から徐々に開放されることで同出力voxsが目標値voxsrefに徐々に近づくようになる。
【0168】
そして、時刻t8になると、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsは目標値voxsrefに収束するとともに、第1触媒53の酸素吸蔵量OSASC(r)が目標酸素吸蔵量である最大酸素吸蔵量CmaxSCallの半分の量に収束する。このようにして、濃淡電池式の酸素濃度センサである第1触媒下流空燃比センサ67が一旦、不定状態になっても、フィードバック制御量vafsfb(の絶対値)が小さく計算されることから第1触媒53に流入するガスの空燃比が不必要に大きく補正されることが回避されて、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第1の問題」が解決される。
【0169】
(実際の作動)
次に、上記排気浄化装置の第1実施形態の実際の作動について、CPU71が実行するルーチンを示したフローチャートを参照しながら説明する。なお、本排気浄化装置の触媒モデルは、酸素及び一酸化窒素をストレージエージェントとして考慮し、一酸化炭素、炭化水素、及び水素をリダクションエージェントとして考慮している。これに対し、酸素のみでストレージエージェントを代表させてもよいし、一酸化炭素のみでリダクションエージェントを代表させてもよい。
【0170】
CPU71は、各気筒のクランク角が各吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°CA)となる毎に、図10に示したルーチンを繰り返し実行するようになっている。従って、任意の気筒のクランク角度が前記所定クランク角度になると、CPU71はステップ1000から処理を開始してステップ1005に進み、エアフローメータ61により計測された吸入空気流量Gaと、エンジン回転速度NEと、に基いて、機関に供給される混合気の空燃比を目標空燃比abyfr(本例では理論空燃比)とするための基本燃料噴射量Fbaseをマップから求める。
【0171】
次いで、CPU71はステップ1010に進み、基本燃料噴射量Fbaseに係数Kを乗じた値に後述する空燃比フィードバック補正量(メインフィードバック制御量)DFiを加えた値を最終燃料噴射量Fiとして設定する。この係数Kの値は、通常は「1.00」であり、後述するように、第1触媒53最大酸素吸蔵量CmaxSCallを求めるために強制的に空燃比を変更するとき、「1.00」以外の所定値に設定される。
【0172】
ついで、CPU71はステップ1015に進み、最終燃料噴射量Fiの燃料を噴射するための指示をインジェクタ39に対して行う。その後、CPU71はステップ1020に進み、その時点の燃料噴射量合計量mfrに最終燃料噴射量Fiを加えた値を新たな燃料噴射量積算値mfrに設定する。この燃料噴射量積算値mfrは、後述する酸素吸蔵量を算出する際に用いられる。その後、CPU71はステップ1095に進み、本ルーチンを一旦終了する。以上により、フィードバック補正された最終燃料噴射量Fiの燃料が吸気行程を迎える気筒に対して噴射される。
【0173】
次に、上記メインフィードバック制御量DFiの算出について説明すると、CPU71は図11にフローチャートにより示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1100から処理を開始し、ステップ1105に進んで空燃比フィードバック制御条件(メインフィードバック条件)が成立しているか否かを判定する。この空燃比フィードバック制御条件は、例えば、機関の冷却水温THWが第1所定温度以上であり、機関の一回転当りの吸入空気量(負荷、筒内吸入空気量Mc)が所定値以下であり、最上流空燃比センサ66が正常(活性状態であることを含む。)であり、且つ、後述する最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値が「0」のときに成立する。なお、最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANは、その値が「1」のとき第1触媒53の最大酸素吸蔵量CmaxSCallの算出のために強制的に空燃比を変更する空燃比制御(アクティブ制御)を実行していることを示し、その値が「0」のとき同最大酸素吸蔵量CmaxSCallの算出のための空燃比制御を実行していないことを示す。
【0174】
いま、空燃比フィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続けると、CPU71はステップ1105にて「Yes」と判定してステップ1110に進み、現時点の最上流空燃比センサ66の出力vabyfsと後述するサブフィードバック制御量vafsfbとの和(vabyfs+vafsfb)を図2に示したマップに基づいて変換することにより、現時点における第1触媒53のメインフィードバック制御用空燃比abyfsを求める。このメインフィードバック制御用空燃比abyfsが、最上流空燃比センサ66の出力をサブフィードバック制御量vafsfbにより補正した第1触媒53の上流における上記「見かけ上の空燃比」である。
【0175】
次に、CPU71はステップ1115に進み、現時点からNストローク(N回の吸気行程)前に吸気行程を迎えた気筒の吸入空気量である筒内吸入空気量Mc(k−N)を前記求めたメインフィードバック制御用空燃比abyfsで除することにより、現時点からNストローク前の筒内燃料供給量Fc(k−N)を求める。値Nは、内燃機関の排気量、燃焼室25から最上流空燃比センサ66までの距離等により異なる値である。
【0176】
このように、現時点からNストローク前の筒内燃料供給量Fc(k−N)を求めるために、現時点からNストローク前の筒内吸入空気量Mc(k−N)をメインフィードバック制御用空燃比abyfsで除するのは、燃焼室25内で燃焼された混合気が最上流空燃比センサ66に到達するまでには、Nストロークに相当する時間を要しているからである。なお、筒内吸入空気量Mcは、各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73内に記憶されるようになっている。
【0177】
次いで、CPU71はステップ1120に進み、現時点からNストローク前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を現時点からNストローク前の時点における目標空燃比abyfr(k−N)(この例では、理論空燃比)で除することにより、現時点からNストローク前の目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)を求める。そして、CPU71はステップ1125に進んで目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)から筒内燃料供給量Fc(k−N)を減じた値を筒内燃料供給量偏差DFcとして設定する。つまり、筒内燃料供給量偏差DFcは、Nストローク前の時点で筒内に供給された燃料の過不足分を表す量となる。次に、CPU71はステップ1130に進み、下記数46に基づいてメインフィードバック制御量DFiを求める。
【0178】
【数46】
DFi=(Gp・DFc+Gi・SDFc)・KFB
【0179】
上記数46において、Gpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Giは予め設定された積分ゲイン(積分定数)である。なお、数46の係数KFBはエンジン回転速度NE、及び筒内吸入空気量Mc等により可変とすることが好適であるが、ここでは「1」としている。また、値SDFcは筒内燃料供給量偏差DFcの積分値であり、次のステップ1135にて更新される。即ち、CPU71は、ステップ1135にてその時点における筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcに上記ステップ1125にて求めた筒内燃料供給量偏差DFcを加えて、新たな筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcを求め、ステップ1195にて本ルーチンを一旦終了する。
【0180】
以上により、メインフィードバック制御量DFiが比例積分制御により求められ、このメインフィードバック制御量DFiが前述した図10のステップ1010により燃料噴射量に反映されるので、Nストローク前の燃料供給量の過不足が補償され、内燃機関に供給される混合気の空燃比の平均値が目標空燃比abyfrと略一致せしめられるようにフィードバック制御される。
【0181】
一方、ステップ1105の判定時において、空燃比フィードバック制御条件が不成立であると、CPU71は同ステップ1105にて「No」と判定してステップ1140に進み、メインフィードバック制御量DFiの値を「0」に設定し、その後ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、空燃比フィードバック制御条件が不成立であるとき(最大酸素吸蔵量取得制御実行中を含む)は、メインフィードバック制御量DFiを「0」として空燃比(基本燃料噴射量Fbase)の補正を行わない。
【0182】
次に、上記サブフィードバック制御量vafsfbに基づく空燃比フィードバック制御(サブフィードバック制御)について説明する。このサブフィードバック制御により、サブフィードバック制御量vafsfbが算出される。
【0183】
CPU71は、サブフィードバック制御量vafsfbを求めるための図12に示したルーチンを所定時間の経過毎に実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1200から処理を開始し、ステップ1205に進んでサブフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。サブフィードバック制御条件は、例えば、前述したステップ1105での空燃比フィードバック制御条件に加え、機関の冷却水温THWが前記第1所定温度よりも高い第2所定温度以上のとき、及び第1触媒下流空燃比センサ67が正常である(活性状態であることを含む。)ときに成立する。
【0184】
いま、サブフィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続けると、CPU71はステップ1205にて「Yes」と判定してステップ1210に進み、目標値voxsrefから第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを減じた値である偏差Dvoxsを求める。
【0185】
次いで、CPU71はステップ1215に進み、後述するルーチンにより別途求められている最新の酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値と、前述した図8に示したテーブルと同一のテーブルであるステップ1215内に示したテーブルとに基づいて重み係数Kwcgを決定する。続いて、CPU71はステップ1220に進み、前記偏差Dvoxsに前記重み係数Kwcgを乗じることで前記偏差に重み付けした値Dvoxswを求める。
【0186】
次に、CPU71はステップ1225に進んで、下記数47に基づいて値Dvoxswの微分値である偏差微分値DDvoxswを求める。
【0187】
【数47】
DDvoxsw=(Dvoxsw−Dvoxsw1)/Δt
【0188】
上記数47において、ΔtはCPU71の演算周期であり、Dvoxsw1は前記偏差に重み付けした値Dvoxswの前回値であって前回の本ルーチン実行時における後述するステップ1240にて更新されている最新の値である。次いで、CPU71はステップ1230に進んで、下記数48に基づいてサブフィードバック制御量vafsfbを求める。
【0189】
【数48】
vafsfb=Kp・Dvoxsw+Ki・SDvoxsw+Kd・DDvoxsw
【0190】
上記数48において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)、Kdは予め設定された微分ゲイン(微分定数)である。また、SDvoxswはの値Dvoxswの積分値である偏差積分値であり、次のステップ1235にて更新される。即ち、CPU71は、ステップ1235にてその時点における偏差積分値SDvoxswに上記ステップ1220にて求めた値Dvoxswを加えて、新たな偏差積分値SDvoxswを求める。そして、CPU71はステップ1240にて、前記ステップ1220にて求めた値Dvoxswの今回値を前回値Dvoxsw1に格納した後、ステップ1295にて本ルーチンを一旦終了する。以上のようにして、サブフィードバック制御量vafsfbが求められる。
【0191】
一方、サブフィードバック制御条件が不成立であるとき、CPU71はステップ1205にて「No」と判定してステップ1245に進み、同ステップ1245にてサブフィードバック制御量vafsfbを「0」に設定する。これにより、サブフィードバック制御量vafsfbに基づくサブフィードバック制御が停止される。
【0192】
次に、最大酸素吸蔵量算出のために強制的に空燃比を変更する最大酸素吸蔵量取得制御について説明する。CPU71は図13〜図15のフローチャートにより示された各ルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。
【0193】
従って、所定のタイミングになると、CPU71は図13のステップ1300から処理を開始し、ステップ1305に進んで最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値が「0」であるか否かを判定する。いま、最大酸素吸蔵量算出のための最大酸素吸蔵量取得制御を行っておらず、且つ、最大酸素吸蔵量取得制御開始条件が成立していないとして説明を続けると、最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値は「0」となっている。従って、CPU71はステップ1305にて「Yes」と判定してステップ1310に進み、先に説明した図10のステップ1010にて使用される係数Kの値を1.00に設定する。
【0194】
次いで、CPU71はステップ1315にて最大酸素吸蔵量取得制御の開始条件が成立しているか否かを判定する。この最大酸素吸蔵量取得制御の開始条件は、冷却水温THWが所定温度以上であり、図示しない車速センサにより得られた車速が所定の高車速以上であり、スロットル弁開度TAの単位時間あたりの変化量が所定量以下である等の機関が定常運転されている条件が成立し、第1触媒下流空燃比センサ出力voxsが理論空燃比よりもリッチな空燃比に相当する出力を発生し、且つ、前回の最大酸素吸蔵量取得制御実行時点から所定時間が経過している場合等に成立する。現段階では、上述したように、最大酸素吸蔵量取得制御の開始条件は成立していないから、CPU71はステップ1315にて「No」と判定してステップ1395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0195】
次に、現時点では最大酸素吸蔵量取得制御を行っていないが、最大酸素吸蔵量取得制御の開始条件が成立したものとして説明を続けると、この場合、CPU71はステップ1305にて「Yes」と判定してステップ1310に進み、同ステップ1310にて係数Kの値を1.00に設定する。次いで、CPU71は、開始条件が成立しているので、ステップ1315にて「Yes」と判定してステップ1320に進み、同ステップ1320にて最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値を「1」に設定する。
【0196】
そして、CPU71はステップ1325に進み、第1モードに移行するためにModeの値を「1」に設定するとともに、続くステップ1330にて係数Kの値を0.98に設定し、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、前述の空燃比フィードバック制御条件が成立しなくなるから、CPU71は図11のステップ1105にて「No」と判定してステップ1140に進むようになり、空燃比フィードバック補正量DFiの値は「0」に設定される。この結果、図10のステップ1010の実行により、基本燃料噴射量Fbaseが0.98倍された値が最終燃料噴射量Fiとして算出され、この最終燃料噴射量Fiの燃料が噴射されるので、機関に供給される混合気の空燃比(従って、第1触媒53に流入するガスの空燃比)は理論空燃比よりもリーンな所定のリーン空燃比に制御される。
【0197】
以降、CPU71は図13のルーチンの処理をステップ1300から繰り返し実行するが、最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値が「1」となっていることから、ステップ1305にて「No」と判定して直ちにステップ1395に進み、本ルーチンを一旦終了するようになる。
【0198】
一方、CPU71は図14に示した第1モード制御ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングとなると、CPU71はステップ1400から処理を開始してステップ1405に進み、同ステップ1405にてModeの値が「1」であるか否かを判定する。このとき、Modeの値が「1」でなければ、CPU71は直ちにステップ1495に進んで本ルーチンを一旦終了する。以下、先の図13のステップ1325の処理によりModeの値が「1」に変更された直後であるとして説明を続けると、この場合、CPU71はステップ1405にて「Yes」と判定してステップ1410に進み、第1触媒下流空燃比センサ出力voxsが理論空燃比よりもリーンな空燃比に相当する出力(酸素が過剰に存在する場合の出力)となったか否かを判定する。
【0199】
現時点では、機関に供給される混合気の空燃比を所定のリーン空燃比に変更した直後であるから、第1触媒下流空燃比センサ出力voxsが理論空燃比よりもリーンな空燃比に相当する出力とはなっていないので、CPU71はステップ1410にて「No」と判定し、ステップ1495にて本ルーチンを一旦終了する。
【0200】
以降、CPU71は図14のステップ1400〜1410を繰り返し実行する。また、空燃比は所定のリーン空燃比に維持されているから、時間経過に伴って第1触媒53の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量に到達する。従って、これに応じて第1触媒下流空燃比センサ出力voxsが理論空燃比よりもリーンな空燃比に相当する出力に変化する。これにより、CPU71はステップ1410に進んだとき、同ステップ1410にて「Yes」と判定してステップ1415に進み、同ステップ1415にてModeの値を「2」に設定するとともに、続くステップ1420にて係数Kの値を1.02に設定し、その後ステップ1495にて本ルーチンを一旦終了する。この結果、機関に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりリッチな所定のリッチ空燃比に制御される。
【0201】
また、CPU71は図15にフローチャートにより示した第2モード制御ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、CPU71は、所定のタイミングになると、ステップ1500から処理を開始し、ステップ1505にてModeの値が「2」であるか否かを判定し、Modeの値が「2」でなければステップ1505からステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了するように作動している。
【0202】
一方、先のステップ1415の処理によりModeの値が「2」に変更されると、CPU71はステップ1505に進んだとき「Yes」と判定してステップ1510に進み、同ステップ1510にて第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsが理論空燃比よりリーンな空燃比を示す値から同理論空燃比よりリッチな空燃比を示す値に変化したか否かを判定する。この時点では、空燃比が前記所定のリッチ空燃比に変更された直後であるから、CPU71はステップ1510にて「No」と判定し、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0203】
これ以降、機関に供給される混合気の空燃比は前記所定のリッチ空燃比に維持されるから、第1触媒53に貯蔵されている酸素が消費されて行き、所定の時間が経過すると同第1触媒53の酸素吸蔵量が「0」に至る。この結果、第1触媒53から未燃HC,COが流出し始めるので、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsが理論空燃比よりリーンな空燃比を示す値から同理論空燃比よりリッチな空燃比を示す値に変化する。これにより、CPU71は、ステップ1510に進んだとき同ステップ1510にて「Yes」と判定してステップ1515に進み、同ステップ1515にてModeの値を「0」に再設定し、続くステップ1520にて最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値を「0」に設定し、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0204】
この状態となると、CPU71は図13のルーチンを実行する際、ステップ1305にて「Yes」と判定してステップ1310に進むので、係数Kの値が1.00に戻される。また、空燃比フィードバック制御条件が成立していれば、CPU71は図11のルーチンのステップ1105及び図12のステップ1205にて「Yes」と判定するから、空燃比フィードバック制御(メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御)が再開される。
【0205】
以上、説明したように、最大酸素吸蔵量取得制御の開始条件が成立すると、機関に供給される混合気の空燃比が所定のリーン空燃比、所定のリッチ空燃比の順に1回づつ強制的に制御される。
【0206】
次に、最大酸素吸蔵量取得のための酸素吸蔵量の算出における作動について説明する。CPU71は図16のフローチャートにより示されたルーチンを所定時間(演算周期tsample)の経過毎に実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1600から処理を開始し、ステップ1605に進んで下記数49により酸素吸蔵量変化量ΔO2を求める。
【0207】
【数49】
ΔO2=0.23・mfr・(stoich − abyfsave)
【0208】
上記数49において、値「0.23」は大気中に含まれる酸素の重量割合である。mfrは所定時間tsample内の燃料噴射量Fiの合計量であり、stoichは理論空燃比(例えば、14.7)である。abyfsaveは所定時間tsampleにおいて最上流空燃比センサ66により検出された空燃比A/Fの平均値である。この数49に示したように、所定時間tsample内の噴射量の合計量mfrに、検出された空燃比A/Fの平均値の理論空燃比からの偏移(stoich − abyfsave)を乗じることで、同所定時間tsampleにおける空気の消費量(不足量)が求められる。この空気の消費量に酸素の重量割合を乗じることで同所定時間tsampleにおける酸素の消費量(酸素吸蔵量変化量ΔO2)が求められる。
【0209】
次いで、CPU71はステップ1610に進んでModeの値が「2」であるか否か(第2モードであるか否か)を判定し、Modeの値が「2」であれば同ステップ1610にて「Yes」と判定してステップ1615に進み、その時点の酸素吸蔵量OSA1に上記酸素吸蔵量変化量ΔO2を加えた値を新たな酸素吸蔵量OSA1として設定し、その後ステップ1620に進む。
【0210】
このような処置(ステップ1600〜1615)は、Modeの値が「2」である限り繰り返し実行される。この結果、第1触媒53の上流の空燃比が所定のリッチ空燃比とされる第2モード(Mode=2)において、第1触媒53の酸素吸蔵量OSA1が算出されて行く。第2モードにおいては、第1触媒53に貯蔵されている酸素が消費されて行くからである。なお、ステップ1610での判定において「No」と判定される場合、CPU71は同ステップ1610からステップ1620に直接進む。そして、CPU71は、ステップ1620に進むと、燃料噴射量Fiの合計量mfrを「0」に設定し、その後ステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0211】
次に、第1触媒53最大酸素吸蔵量CmaxSCall、及び第1触媒53の各ブロックの最大酸素吸蔵量CmaxSC<n>を算出する際の作動について説明する。CPU71は図17のフローチャートにより示されたルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。
【0212】
従って、所定のタイミングになると、CPU71は図17のステップ1700から処理を開始し、ステップ1705に進んで最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値が「1」から「0」に変化したか否かをモニタする。このとき、最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値が変化していなければ、CPU71はステップ1705からステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0213】
一方、前述した第2モードが終了した直後であるとすると、図15のステップ1520にて最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値が「1」から「0」に変更されるから、CPU71はステップ1705にて「Yes」と判定してステップ1710に進み、その時点の酸素吸蔵量OSA1を、第1触媒53全体の最大酸素吸蔵量CmaxSCallとして格納する。
【0214】
次いでCPU71はステップ1715に進み、カウンタ値nの値を「0」に設定した後、ステップ1720に進んで第1触媒53のブロック毎の最大酸素吸蔵量を算出する処理を開始する。まず、CPU71はステップ1720においてカウンタ値nの値を「1」だけ増大して「1」に設定した後、ステップ1725に進んで上記ステップ1710にて取得した第1触媒53全体の最大酸素吸蔵量CmaxSCallの値と、カウンタ値nの値と、ステップ1725内に記載した式とに基いて第1触媒53のブロックnにおける最大酸素吸蔵量CmaxSC<n>を算出する。この時点ではカウンタ値nの値は「1」であるから、第1触媒53のブロック1における最大酸素吸蔵量CmaxSC(1)が算出される。
【0215】
ここで、ステップ1725内に記載した式について図18を用いて簡単に説明する。図18は、第1触媒53のブロック毎の最大酸素吸蔵量CmaxSC<n> (n=1,・・・,r)を求める考え方を示した最大酸素吸蔵量分布マップであり、斜線で示された部分の面積は第1触媒53全体の最大酸素吸蔵量CmaxSCallの値に対応している。
【0216】
このように、第1触媒53のブロック毎の各最大酸素吸蔵量CmaxSC<n>は、同各最大酸素吸蔵量CmaxSC<n>の総和が第1触媒53全体の最大酸素吸蔵量CmaxSCallの値となるように設定されるとともに、上流側のブロック1から下流側のブロックrに推移するに従い、所定の勾配をもって線形的に増加するように設定される。これは、第1触媒53の上流側部分の方が下流側部分に比して、内部に流入する排ガス中の鉛や硫黄等により被毒し易いので、同上流側部分の最大酸素吸蔵量が同下流側部分のものに比して低下し易くなるからである。
【0217】
かかる図18に示した最大酸素吸蔵量分布マップに基いて第1触媒53のブロック毎の各最大酸素吸蔵量CmaxSC<n>を求める式がステップ1725内に記載の式である。前記ステップ1725内に記載の式において、値A1は正の定数であって、上記所定の勾配に相当する値である。なお、第1触媒53のブロック毎の各最大酸素吸蔵量は、上流側のブロックから下流側のブロックに推移するに従い増加するように設定されていればよく、例えば、非線形的に増加するように設定されていてもよい。
【0218】
再び、図17を参照すると、CPU71はステップ1725からステップ1730に進んでカウンタ値nの値が第1触媒53のブロック数rと等しいか否かを判定する。現時点ではカウンタ値nの値は「1」であるから、CPU71はステップ1730にて「No」と判定し、再びステップ1720に戻ってカウンタ値nの値を「1」だけ増大した後ステップ1725及びステップ1730の処理を実行する。即ち、ステップ1720及びステップ1725の処理は、カウンタ値nの値が第1触媒53のブロック数rと等しくなるまで繰り返し実行される。これにより、第1触媒53の最上流のブロック1から最下流のブロックrまでの各ブロックnの最大酸素吸蔵量CmaxSC<n>の値が順次算出されていく。
【0219】
前述のステップ1720の処理が繰り返されることによりカウンタ値nの値が第1触媒53のブロック数rと等しくなると、CPU71はステップ1730にて「Yes」と判定してステップ1735に進み、酸素吸蔵量OSA1の値を「0」に設定した後、ステップ1795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0220】
次に、触媒モデルにより第1触媒53の各特定成分のCgoutSCを算出するためのルーチンについて説明する。このルーチンは図19〜図24の一連のフローチャートにより示されていて、CPU71はこれらのルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行することで第1触媒53の各ブロックj(j=1,・・・,r)から流出する酸素濃度CgoutSC,O2<j>、一酸化窒素濃度CgoutSC,NO<j>、一酸化炭素濃度CgoutSC,CO<j>、炭化水素濃度CgoutSC,HC<j>、及び水素濃度CgoutSC,H2<j>を逐次算出する。
【0221】
従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1900から処理を開始し、ステップ1905に進んで第1触媒53用の酸素吸蔵速度係数kstorSC,O2(k)<j>及びkstorSC,NO(k)<j>と、酸素放出速度係数krelSC,CO(k)<j>,krelSC,HC(k)<j>,及びkrelSC,H2(k)<j>とを、第1触媒53の温度TempSCと同第1触媒53の劣化程度を表す劣化指標値REKKASCと図25に示したようなマップ(ルックアップテーブル)とから決定する。なお、例えば、kstorSC,O2(k)<j>のように、SCが付与されている値は第1触媒用の値であることを意味し、<j>が付与されている値はブロックj(j番目のブロック)に対する値であることを意味する(以下、同じ。)。
【0222】
上記触媒温度TempSCは、機関10の運転状態(例えば、吸入空気流量Gaとエンジン回転速度NE)に応じて推定される。上記第1触媒53の劣化指標値REKKASCは、前述の第1触媒53の最大酸素吸蔵量CmaxSCallに応じてそれぞれ求められる。例えば、劣化指標値REKKASCは最大酸素吸蔵量CmaxSCallが減少するほど増大する値として求められる。
【0223】
次に、CPU71はステップ1910に進んで変数jの値を「0」に設定する。この変数jは、以下において何番目のブロックについての演算を行うのかを決定する変数である。次いで、CPU71は、ステップ1915にて変数jの値を「1」だけ増大するとともに、ステップ1920にて変数jの値がr+1と等しくなったか否か、即ち、第1触媒53の総べてのブロックについて各特定成分の算出が終了したか否かを判定する。
【0224】
現段階での変数jの値は「1」であるから、CPU71はステップ1920にて「No」と判定してステップ1925に進み、前回の本ルーチンの演算時において後述するステップ1960にて算出された第1触媒53のj番目のブロック(ブロックj)のコート層の酸素濃度CwSC,O2(k+1)<j>を今回のコート層の酸素濃度CwSC,O2(k)<j>に設定し、続くステップ1930にて前回の本ルーチンの演算時において後述する図24のステップ2415にて算出された酸素吸蔵密度OstSC(k+1)<j>を今回の酸素吸蔵密度Ostの値OstSC(k)<j>に設定する。なお、今回の演算が機関10の始動後初めてである場合、上記各値には適当な初期値が与えられる。
【0225】
次いで、CPU71は、ステップ1935にて同ステップ1935内に記載した式(上記(36)式を参照。)に従って酸素の消費速度定数R*storSC,O2(k)<j>を求める。ステップ1935にて用いる最大酸素吸蔵密度OstSCmax<j>は、一定値としてもよいが、前記劣化指標値REKKASC(又は、最大酸素吸蔵量CmaxSCall)に応じて決定されることが望ましい(以下、同じ。)。その後、CPU71はステップ1940にて見かけの拡散速度RDSC,O2(k)<j>を触媒温度TempSCとマップMapRDSCO2とから決定する。
【0226】
続いて、CPU71はステップ1945にて酸素の反応律速因子SPstorSC,O2<j>を同ステップ1945内に記載した式(上記(29)式を参照。)により求め、ステップ1950にて第1触媒53のブロックjよりも前の(即ち、上流の)ブロックj−1から流出する酸素濃度CgoutSC,O2(k)<j−1>を同ブロックjに流入する酸素濃度CginSC,O2(k)<j>として取り込む。
【0227】
この段階でjの値は「1」であるから、ブロックjは第1触媒53の最も上流のブロックであって、それより前の(上流の)ブロックj−1は存在しない。従って、ステップ1950における前のブロックのCgoutSC,O2(k)<j−1>は、同第1触媒53に流入する排ガスの酸素濃度CginSC,O2である。この第1触媒53に流入する排ガスの酸素濃度CginSC,O2(=Cgin,O2)は、同第1触媒53に流入する排ガスの空燃比と同排ガスの流量とに基づく関数fO2により求められる。下記の(50)式の右辺は、この関数fO2の具体例である。(50)式で用いられる排ガスの空燃比AFは、エアフローメータ61が計測する単位時間あたりの吸入空気質量Gaを最終燃料噴射量Fiとエンジン回転速度NEとに基づいて求められる単位時間あたりの供給燃料質量Gfで除することにより求められる。なお、この排ガスの空燃比AFは、最上流空燃比センサ66の出力vabyfsと図2に示したマップとから求めても良い。
【0228】
【数50】
【0229】
上記(50)式の導出過程を簡単に述べると、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比AFはGa/Gfであり、Gfに対して理論空燃比を得るために必要な空気質量をGastoichとすると、理論空燃比AFstoichはGastoich/Gfとなる。一方、供給燃料質量がGfであるときに空燃比がAFとなったとき、理論空燃比AFstoichを得るために必要な空気質量に対する過剰な空気質量はGa−Gastoichであるから、酸素の質量をMassO2とおくと、下記(51)式が得られ、この(51)式から上記(50)式が得られる。
【0230】
【数51】
【0231】
次に、CPU71はステップ1955に進み、同ステップ1955に記述した式(上記(30)式を参照。)に従ってCgoutSC,O2(k+1)<j>を求める。vgの値はエアフローメータ61が検出した吸入空気流量AFM(=Ga)とする。このように、ステップ1955では、対象としているブロックjから流出する酸素濃度CgoutSC,O2を新たに算出する。次いで、CPU71はステップ1960に進み、同ステップ1960に記述した式(上記(28)式を参照。)に従ってCwSC,O2(k+1)<j>を求める。即ち、CPU71は、ステップ1960にて対象としている第1触媒53のブロックjのコート層の酸素濃度CwSC,O2を新たに算出し、ステップ1965を経由して図20に示したステップ2000に進む。このように、図19により示したルーチンは、第1触媒53のブロックj(特定領域j)における排ガス相の酸素濃度推定手段、及びコート層の酸素濃度推定手段を構成している。
【0232】
図20に示したルーチンは、一酸化窒素NOについての演算を行うルーチンであり、酸素O2についての演算を行うための先に説明した図19のルーチンと同様なルーチンである。簡単に説明すると、CPU71はステップ2000からステップ2005に進んで、前回の本ルーチンの演算時において後述するステップ2035にて算出された第1触媒53のj番目のブロック(ブロックj)のコート層の一酸化窒素濃度CwSC,NO(k+1)<j>を今回のコート層の一酸化窒素濃度CwSC,NO(k)<j>に設定する。なお、今回の演算が機関10の始動後初めてである場合、上記CwSC,NO(k)<j>には適当な初期値が与えられる。
【0233】
次いで、CPU71は、ステップ2010にて同ステップ2010内に記載した式(上記(36)式を参照。)に従って消費速度定数R*storSC,NO(k)<j>を求める。ここで、酸素吸蔵密度OstSC(k)<j>,及び最大酸素吸蔵密度OstSCmax<j>は、前述のステップ1935にて使用した値をそれぞれ用いる。その後、CPU71はステップ2015にて見かけの拡散速度RDSC,NO(k)<j>を触媒温度TempSCとマップMapRDSCNOとから決定する。
【0234】
続いて、CPU71はステップ2020にて一酸化窒素の反応律速因子SPstorSC,NO<j>を同ステップ2020内に記載した式(上記(29)式を参照。)により求め、ステップ2025にて第1触媒53のブロックjよりも前の(即ち、上流の)ブロックj−1から流出する一酸化窒素濃度CgoutSC,NO(k)<j−1>を同ブロックjに流入する一酸化窒素濃度CginSC,NO(k)<j>として取り込む。
【0235】
この段階でjの値は「1」であるから、対象としているブロックjは第1触媒53の最も上流のブロックであって、それより上流のブロックj−1は存在しない。従って、ステップ2025における前のブロックのCgoutSC,NO(k)<j−1>は、同第1触媒53に流入する排ガスの一酸化窒素濃度CginSC,NOである。この場合、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比A/F(「Ga/Gf」として計算により求められる。)と一酸化窒素濃度CginSC,NOとの関係は図26のグラフに示したようであるから、この関係を予め実験により求めてマップとして記憶しておき、計算により求められる実際の排ガスの空燃比A/Fと同マップとから一酸化窒素濃度CginSC,NOを求める。
【0236】
次に、CPU71はステップ2030に進み、同ステップ2030に記述した式(上記(30)式を参照。)に従ってCgoutSC,NO(k+1)<j>を求める。即ち、対象としているブロックjから流出する一酸化窒素濃度CgoutSC,NOを新たに算出する。次いで、CPU71はステップ2035に進み、同ステップ2035に記述した式(上記(28)式を参照。)に従ってCwSC,NO(k+1)<j>を求める。即ち、CPU71は、ステップ2035にて対象としている第1触媒53のブロックjのコート層の一酸化窒素濃度CwSC,NOを新たに算出し、ステップ2095を経由して図21に示したステップ2100に進む。このように、図20により示したルーチンは、第1触媒53のブロックj(特定領域j)における排ガス相の一酸化窒素濃度推定手段、及びコート層の一酸化窒素濃度推定手段を構成している。
【0237】
図21に示したルーチンは、一酸化炭素COについての演算を行うルーチンである。CPU71はステップ2100からステップ2105に進んで、前回の本ルーチンの演算時において後述するステップ2135にて算出されたコート層の一酸化炭素濃度CwSC,CO(k+1)<j>を今回のコート層の一酸化炭素濃度CwSC,CO<j>(k)に設定する。なお、今回の演算が機関10の始動後初めてである場合、上記CwSC,CO<j>(k)には適当な初期値が与えられる。
【0238】
次に、CPU71は、ステップ2110にて同ステップ2110内に記載した式(上記(38)式を参照。)に従って消費速度定数R*reducSC,CO(k)<j>を求め、その後、ステップ2115にて見かけの拡散速度RDSC,CO(k)<j>を触媒温度TempSCとマップMapRDSCCOとから決定する。
【0239】
続いて、CPU71はステップ2120にて一酸化炭素の反応律速因子SPreducSC,CO<j>を同ステップ2120内に記載した式(上記(33)式を参照。)により求め、ステップ2125にて、第1触媒53のブロックjよりも前の(即ち、上流の)ブロックj−1から流出する一酸化炭素濃度CgoutSC,CO(k)<j−1>を、ブロックjに流入する一酸化炭素濃度CginSC,CO(k)<j>として取り込む。
【0240】
この段階でjの値は「1」であるから、対象としているブロックjは第1触媒53の最も上流のブロックであって、それより上流のブロックj−1は存在しない。従って、ステップ2125における前のブロックのCgoutSC,CO(k)<j−1>は、同第1触媒53に流入する排ガスの一酸化炭素濃度CginSC,COである。この場合、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比A/F(「Ga/Gf」として計算により求められる。)と一酸化炭素濃度CginSC,COとの関係は図27のグラフに示したようであるから、この関係を予め実験により求めてマップとして記憶しておき、計算により求められる実際の排ガスの空燃比A/Fと同マップとから一酸化炭素濃度CginSC,COを求める。
【0241】
次に、CPU71はステップ2130に進み、同ステップ2130に記述した式(上記(34)式を参照。)に従ってCgoutSC,CO(k+1)<j>を求める。即ち、第1触媒53のブロックjから流出する一酸化炭素濃度CgoutSC,COを新たに算出する。次いで、CPU71はステップ2135に進み、同ステップ2135に記述した式(上記(32)式を参照。)に従ってCwSC,CO(k+1)<j>を求める。即ち、CPU71は、ステップ2135にて対象としている第1触媒53のブロックjのコート層の一酸化炭素濃度CwSC,COを新たに算出し、ステップ2195を経由して図22に示したステップ2200に進む。このように、図21により示したルーチンは、第1触媒53のブロックjにおける排ガス相の一酸化炭素濃度推定手段、及びコート層の一酸化炭素濃度推定手段を構成している。
【0242】
図22に示したルーチンは、炭化水素HCについての演算を行うルーチンであり、一酸化炭素COについての演算を行うための先に説明した図21のルーチンと同様なルーチンである。簡単に説明すると、CPU71はステップ2200からステップ2205に進んで、前回の本ルーチンの演算時において後述するステップ2235にて算出されたコート層の炭化水素濃度CwSC,HC(k+1)<j>を今回のコート層の炭化水素濃度Cw,HCの値であるCwSC,HC(k)<j>に設定する。なお、今回の演算が機関10の始動後初めてである場合、上記各値には適当な初期値が与えられる。
【0243】
次に、CPU71は、ステップ2210にて同ステップ2210内に記載した式(上記(38)式を参照。)に従って消費速度定数R*reducSC,HC(k)<j>を求め、その後、ステップ2215にて見かけの拡散速度RDSC,HC(k)<j>を触媒温度TempSCとマップMapRDSCHCとから決定する。
【0244】
続いて、CPU71はステップ2220にて炭化水素の反応律速因子SPreducSC,HC<j>を同ステップ2220内に記載した式(上記(33)式を参照。)により求め、ステップ2225にて、第1触媒53のブロックjよりも前の(即ち、上流の)ブロックj−1から流出する炭化水素濃度CgoutSC,HC(k)<j−1>をブロックjに流入する炭化水素濃度CginSC,HC(k)<j>として取り込む。
【0245】
この段階でjの値は「1」であるから、ブロックjは第1触媒53の最も上流のブロックであって、それより上流のブロックj−1は存在しない。従って、ステップ2225におけるCgout,HC(k)<j−1>は、同第1触媒53に流入する排ガスの炭化水素濃度Cgin,HCである。この場合、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比A/F(「Ga/Gf」として計算により求められる。)と炭化水素濃度Cgin,HCとの関係は図28のグラフに示したようであるから、この関係を予め実験により求めてマップとして記憶しておき、計算により求められる実際の排ガスの空燃比A/Fと同マップとから炭化水素濃度Cgin,HCを求める。
【0246】
次に、CPU71はステップ2230に進み、同ステップ2230に記述した式(上記(34)式を参照。)に従ってCgoutSC,HC(k+1)<j>を求める。即ち、第1触媒53のブロックjから流出する炭化水素濃度CgoutSC,HCを新たに算出する。次いで、CPU71はステップ2235に進み、同ステップ2235に記述した式(上記(32)式を参照。)に従ってCwSC,HC(k+1)<j>を求める。即ち、CPU71は、ステップ2235にて第1触媒53のブロックjのコート層の炭化水素濃度Cw,HCを新たに算出し、ステップ2295を経由して図23に示したステップ2300に進む。このように、図22により示したルーチンは、第1触媒53のブロックj(特定領域j)における排ガス相の炭化水素濃度推定手段、及びコート層の炭化水素濃度推定手段を構成している。
【0247】
図23に示したルーチンは、水素H2についての演算を行うルーチンであり、一酸化炭素COについての演算を行うための先に説明した図21のルーチンと同様なルーチンである。簡単に説明すると、CPU71はステップ2300からステップ2305に進んで、前回の本ルーチンの演算時において後述するステップ2335にて算出されたコート層の水素濃度CwSC,H2(k+1)<j>を今回のコート層の水素濃度Cw,H2の値であるCwSC,H2(k)<j>に設定する。なお、今回の演算が機関10の始動後初めてである場合、上記各値には適当な初期値が与えられる。
【0248】
次に、CPU71は、ステップ2310にて同ステップ2310内に記載した式(上記(38)式を参照。)に従って消費速度定数R*reducSC,H2(k)<j>を求め、その後、ステップ2315にて見かけの拡散速度RDSC,H2(k)<j>を触媒温度TempSCとマップMapRDSCH2とから決定する。
【0249】
続いて、CPU71はステップ2320にて水素の反応律速因子SPreducSC,H2<j>を同ステップ2320内に記載した式(上記(33)式を参照。)により求め、ステップ2325にて、第1触媒53のブロックjよりも前の(即ち、上流の)ブロックj−1から流出する水素濃度CgoutSC,H2(k)<j−1>をブロックjに流入する水素濃度CginSC,H2(k)<j>として取り込む。
【0250】
この段階でjの値は「1」であるから、ブロックjは第1触媒53の最も上流のブロックであって、それより上流のブロックj−1は存在しない。従って、ステップ2225におけるCgout,H2(k)<j−1>は、同第1触媒53に流入する排ガスの水素濃度Cgin,H2である。この場合、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比A/F(「Ga/Gf」として計算により求められる。)と水素濃度Cgin,H2との関係は図29のグラフに示したようであるから、この関係を予め実験により求めてマップとして記憶しておき、計算により求められる実際の排ガスの空燃比A/Fと同マップとから水素濃度Cgin,HCを求める。
【0251】
次に、CPU71はステップ2330に進み、同ステップ2330に記述した式(上記(34)式を参照。)に従ってCgoutSC,H2(k+1)<j>を求める。即ち、第1触媒53のブロックjから流出する水素濃度CgoutSC,H2を新たに算出する。次いで、CPU71はステップ2335に進み、同ステップ2335に記述した式(上記(32)式を参照。)に従ってCwSC,H2(k+1)<j>を求める。即ち、CPU71は、ステップ2335にて第1触媒53のブロックjのコート層の水素濃度Cw,HCを新たに算出し、ステップ2395を経由して図24に示したステップ2400に進む。このように、図23により示したルーチンは、第1触媒53のブロックj(特定領域j)における排ガス相の水素濃度推定手段、及びコート層の水素濃度推定手段を構成している。
【0252】
図24に示したルーチンは、酸素吸蔵密度Ostについての演算を行うルーチンである。CPU71は、ステップ2400からステップ2405に進むと、上記(43)式に基づく同ステップ2405内に記述した式により係数P<j>を求めるとともに、続くステップ2410にて上記(44)式に基づく同ステップ2410に記述した式により係数Q<j>を求める。次いで、CPU71はステップ2415にて上記(42)式に基づく同ステップ2415に記述した式により酸素吸蔵密度OstSC(k+1)<j>を求め、次のステップ2420にて上記(45)式に基づく同ステップ2420に記述した式によりこのブロックjの酸素吸蔵量OstSC(k+1)<j>・dA・Lをブロック1〜ブロックj−1までの酸素吸蔵量OSASC(j−1)に加えることにより、ブロック1〜ブロックjまでの酸素吸蔵量OSASC(j)を求め、ステップ2495を経由して図19のステップ1915に戻る。なお、酸素吸蔵量OSASC(0)の値は「0」に設定してある。このように、図24に示したルーチンは、第1触媒53のブロックjの酸素吸蔵密度算出手段、及び第1触媒53のブロック1〜ブロックjまでの酸素吸蔵量算出手段を構成している。
【0253】
図19のステップ1915に戻ったCPU71は、変数jの値を「1」だけ増大するから、上述と同様にして第1触媒53内の次に下流にあるブロックの各種値が順次演算されて行く。そして、ブロックrの各種値が演算されていく段階で、ステップ1955にて第1触媒53から流出する排ガス中の酸素濃度CgoutSC,O2<r>が算出される。この値が前述の図12のステップ1215にて使用される。
【0254】
ブロックrまでの各種値が演算されると、変数jの値はステップ1915にてr+1と等しくされるので、CPU71はステップ1920にて「Yes」と判定し、ステップ1995に進んで、第1触媒53の各特定成分のCgoutSCを算出するための図19〜図24に示した一連のルーチンを一旦終了する。
【0255】
以上、説明したように、第1実施形態の排気浄化装置は、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを目標値voxsrefから減じた値である偏差Dvoxsに重み係数Kwcgを乗じた値Dvoxswを求め、この値Dvoxswを比例・積分・微分処理(PID処理)することでサブフィードバック制御量vafsfbを求める。この重み係数Kwcgは、触媒モデルを利用して算出される第1触媒53から流出するエミッションの絶対量を精度良く表す値である酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値が値Cref以下であるとき(即ち、同エミッションの絶対量が微量であるとき)、「1」以下の値に設定されるから、値Dvoxsw(の絶対値)は前記偏差Dvoxs(の絶対値)よりも小さい値となってサブフィードバック制御量vafsfb(の絶対値)も小さく計算される。従って、第1触媒53から流出するエミッションの絶対量が微量であるとき、即ち、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態にある可能性があるとき、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比が不必要に大きく補正されなくなり、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第1の問題」が解消された。
【0256】
また、重み係数Kwcgは、酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値が値Crefより大きい値であるとき、重み係数Kwcgが「1」以上であって、且つ、酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて増加する値に設定されるから、値Dvoxsw(の絶対値)は前記偏差Dvoxs(の絶対値)に酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて重み付けした値となって、サブフィードバック制御量vafsfb(の絶対値)が酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて線形的に増加する値に近づくように設定され得る。従って、第1触媒53から或る程度の量以上のエミッションが流出しているとき、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比が酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値に相当する同エミッションの絶対量に応じて適切に制御(補正)された。
【0257】
本発明は上記第1実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記第1実施形態においては、第1触媒53から流出するガス中の特定成分の量に関する値として酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値)を選択し、同酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値)に基づいて重み係数Kwcgを決定しているが、第1触媒53から流出するガス中のその他の化学種(酸化剤、還元剤)の濃度に基づいて重み係数Kwcgを決定してもよい。この場合、例えば、一酸化窒素濃度CgoutSC,NO<r>、一酸化炭素濃度CgoutSC,CO<r>、炭素水素濃度CgoutSC,HC<r>、及び水素濃度CgoutSC,H2<r>のうちの最大値に基づいて重み係数Kwcgを決定するように構成することが好適である。
【0258】
また、上記第1実施形態においては、図8に示すように、前記特定成分の量に関する値(酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値))が値Cref以下のとき、同酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値)の減少に応じて減少するように重み係数Kwcgを決定しているが、同特定成分の量に関する値(酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値))が値Cref以下のとき、同重み係数Kwcgを、同酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値)に拘わらず所定の微小値(一定値)に決定するように構成してもよい。また、特定成分の量に関する値(酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値))が値Cref以下のとき、値Dvoxswそのものを、偏差Dvoxsに重み係数Kwcgを乗じた値ではなく所定の微小値(一定値)に決定するように構成してもよい。
【0259】
<第2実施形態>
次に、本発明による排気浄化装置の第2実施形態について説明すると、この排気浄化装置は、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第2の問題」を解決するためのものであって、サブフィードバック制御量vafsfbを求める手法においてのみ、上記第1実施形態の排気浄化装置と異なっている。従って、以下、かかる相違点についてのみ説明する。
【0260】
(サブフィードバック制御量の計算)
本第2実施形態の排気浄化装置も、前述の第1実施形態と同様、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsとその目標値voxsrefとに基づいて、機関10に供給される混合気の空燃比(従って、第1触媒53に流入するガスの空燃比)をフィードバック制御するためのサブフィードバック制御量vafsfbを求める。
【0261】
ところで、先に述べたように、濃淡電池式の酸素濃度センサである触媒下流空燃比センサ67(限界電流式の酸素濃度センサである最上流空燃比センサ66も同様である。)の出力voxsに基づいて空燃比フィードバック制御を行うと、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第2の問題」が発生する。即ち、第1触媒下流空燃比センサ67(の検出部)を通過する排ガスの各ガス成分の濃度の割合が同排ガスが化学平衡状態にあるときの各ガス成分の濃度の割合と異なる場合、同第1触媒下流空燃比センサ67は図33に示す静特性とは異なる静特性を有するようになり、同排ガスの空燃比が理論空燃比となっているときでも、図33における理論空燃比に相当する値voxsrefとは異なる値を出力するようになる。
【0262】
ここで、この第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsは、同第1触媒下流空燃比センサ67を通過する(従って、第1触媒53から流出する)排ガス中の各々の還元剤の濃度(例えば、CgoutSC,H2<r>,CgoutSC,CO<r>,CgoutSC,HC<r>)の増加に応じて大きくなる一方で、同排ガス中の各々の酸化剤(例えば、CgoutSC,O2<r>,CgoutSC,NO<r>)の濃度の増加に応じて小さくなる傾向がある。また、前記排ガス中の成分の濃度の変化量に対する第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsの変化量は同成分毎に異なる。
【0263】
以上のことから、先ず、下記数52により前記排ガス中の酸化剤が第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを小さくする方向に同出力voxsに影響を与える程度を示す酸化剤側影響度指標値OXI、及び、下記数53により同排ガス中の還元剤が第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを大きくする方向に同出力voxsに影響を与える程度を示す還元剤側影響度指標値DEOXIをそれぞれ求めることができる。
【0264】
【数52】
OXI=Ko2・CgoutSC,O2<r> + Kno・CgoutSC,NO<r>
【0265】
【数53】
DEOXI=Kh2・CgoutSC,H2<r> + Kco・CgoutSC,CO<r> + Khc・CgoutSC,HC<r>
【0266】
上記数52において、Ko2は酸素の反応係数、Knoは一酸化窒素の反応係数であって、Ko2 > Kno > 0 なる関係がある。これは、第1触媒下流空燃比センサ67の検出部近傍に存在する酸素が同センサ67の出力voxsに影響を与えるまでに必要な化学反応の段数が同センサ67の検出部近傍に存在する一酸化窒素が同出力voxsに影響を与えるまでに必要な化学反応の段数よりも少ないことから、酸素の方が一酸化窒素よりも同出力voxsに影響を与え易くなることに主に基づく。
【0267】
上記数53において、Kh2は水素の反応係数、Kcoは一酸化炭素の反応係数、Khcは炭化水素の反応係数であって、Kh2 > Kco > Khc > 0 なる関係がある。これは、分子量が小さいものほど前記センサ67の検出部(反応部)の表面に到達しやすいことから、炭化水素、一酸化炭素、水素の順に、前記出力voxsに影響を与え易くなることに主に基づく。
【0268】
このように、酸化剤側影響度指標値OXIは、第1触媒53から流出する排ガス中に含まれる各酸化剤の濃度(酸化剤の量に関する値)に同各酸化剤に対応する反応係数を乗じた値の和として求められ、還元剤側影響度指標値DEOXIは、同排ガス中に含まれる各還元剤の濃度(還元剤の量に関する値)に同各還元剤に対応する反応係数を乗じた値の和として求められる。
【0269】
そして、前記還元剤側影響度指標値DEOXIから前記酸化剤側影響度指標値OXIを減じた値(両者の比較により得られる値)に基づく下記数54により、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを補正する程度(例えば、大きさと方向)を示す補正指標値OXSbseを求めることができる。下記数54において、関数fcorは、例えば、所定の比例定数(一定値)である。なお、補正指標値OXSbseが「0」になるときが第1触媒下流空燃比センサ67(の検出部)を通過する排ガスが化学平衡状態にあるときに対応している。
【0270】
【数54】
OXSbse=fcor(DEOXI−OXI)
【0271】
ここで、第1触媒53から理論空燃比の排ガスが流出するときの第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsと、上記数54に基づいて得られる補正指標値OXSbseとの関係は図30に示すようになる。図30に示すように、第1触媒53から理論空燃比の排ガスが流出するときの前記出力voxsは、補正指標値OXSbseが正の値のとき0.5(V)(=目標値voxsref)より大きくなり、同補正指標値OXSbseが負の値のとき0.5(V)(=目標値voxsref)よりも小さくなるとともに、補正指標値OXSbseが「0」のとき0.5(V)(=目標値voxsref)に一致する。即ち、補正指標値OXSbseが正の値のとき前記出力voxsを小さめに補正するとともに、補正指標値OXSbseが負の値のとき前記出力voxsを大きめに補正することが好適である。
【0272】
そこで、本第2実施形態の排気浄化装置は、補正指標値OXSbseを利用して前記出力voxsを補正するための補正係数Kcorを求めるため、図30に示す関係を同補正係数Kcorへと規格化することで、図31に示す補正係数Kcorと補正指標値OXSbseとの関係を表すテーブルを求め、同テーブルと同補正指標値OXSbseとに基づいて補正係数Kcorを求める。
【0273】
そして、本第2実施形態の排気浄化装置は、第1触媒下流空燃比センサ67の実際の出力voxsに前記求めた補正係数Kcorを乗じることで同出力を補正した値voxs’を求めるとともに、同補正された値voxs’を前記目標値voxsrefから減じた値である偏差Dvoxsを比例・積分・微分処理(PID処理)することでサブフィードバック制御量vafsfbを求める。このようにして、第1触媒下流空燃比センサ67の実際の出力voxsに前記求めた補正係数Kcorを乗じることで同出力を補正した値voxs’を求める手段が補正手段に相当する。
【0274】
(実際の作動)
次に、上記第2実施形態の排気浄化装置の実際の作動について、CPU71が実行するルーチンを示したフローチャートを参照しながら説明する。本排気浄化装置のCPU71は、図12に代わる図32にフローチャートにより示したルーチンを実行する点を除き、第1実施形態の排気浄化装置のCPU71と同一のルーチンを実行する。以下、上記第2実施形態の排気浄化装置に特有のルーチンである図32のルーチンについてのみ説明する。
【0275】
第2実施形態のCPU71は、サブフィードバック制御量vafsfbを求めるための図32に示したルーチンを所定時間の経過毎に実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ3200から処理を開始し、ステップ3205に進んで、図12のステップ1205と同一のサブフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。
【0276】
いま、サブフィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続けると、CPU71はステップ3205にて「Yes」と判定してステップ3210に進み、図19のステップ1955、図20のステップ2030にてそれぞれ計算されている第1触媒53から流出する排ガス中の酸素濃度CgoutSC,O2<r>、一酸化窒素濃度CgoutSC,NO<r>の各々の最新値と、上記数52とに基づいて酸化剤側影響度指標値OXIを求める。
【0277】
次に、CPU71はステップ3215に進み、図21のステップ2130、図22のステップ2230、図23のステップ2330にてそれぞれ計算されている第1触媒53から流出する排ガス中の一酸化炭素濃度CgoutSC,CO<r>、炭化水素濃度CgoutSC,HC<r>、水素濃度CgoutSC,H2<r>の各々の最新値と、上記数53とに基づいて還元剤側影響度指標値OXIを求める。
【0278】
次いで、CPU71はステップ3220に進み、上記数54に従って補正指標値OXSbseを求め、続くステップ3225にて、前記補正指標値OXSbseと、図31に示すテーブルと同一のテーブルとに基づいて補正係数Kcorを決定する。続いて、CPU71はステップ3230に進んで、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsに前記補正係数Kcorを乗じることで前記出力を補正した値voxs’を求める。
【0279】
次に、CPU71はステップ3235に進み、目標値voxsrefから前記出力を補正した値voxs’を減じることで偏差Dvoxsを求め、続くステップ3240にて、上記数47と同様のステップ3240内に記載の式に基づいて偏差Dvoxsの微分値である偏差微分値DDvoxsを求める。ここにおいて、Dvoxs1は前記偏差Dvoxsの前回値であって前回の本ルーチン実行時における後述するステップ3255にて更新されている最新の値である。次いで、CPU71はステップ3245に進んで、下記数55に基づいてサブフィードバック制御量vafsfbを求める。
【0280】
【数55】
vafsfb=Kp・Dvoxs+Ki・SDvoxs+Kd・DDvoxs
【0281】
上記数55において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)、Kdは予め設定された微分ゲイン(微分定数)である。また、SDvoxsはの偏差Dvoxsの積分値である偏差積分値であり、次のステップ3250にて更新される。即ち、CPU71は、ステップ3250にてその時点における偏差積分値SDvoxsに上記ステップ3235にて求めた偏差Dvoxsを加えて、新たな偏差積分値SDvoxsを求める。そして、CPU71はステップ3255にて、前記ステップ3235にて求めた偏差Dvoxsの今回値を前回値Dvoxs1に格納した後、ステップ3295にて本ルーチンを一旦終了する。以上のようにして、サブフィードバック制御量vafsfbが求められる。
【0282】
一方、サブフィードバック制御条件が不成立であるとき、CPU71はステップ3205にて「No」と判定してステップ3260に進み、同ステップ3260にてサブフィードバック制御量vafsfbを「0」に設定する。これにより、サブフィードバック制御量vafsfbに基づくサブフィードバック制御が停止される。
【0283】
以上、説明したように、第2実施形態に係る排気浄化装置は、第1触媒53から流出する排ガス中に含まれる各酸化剤の濃度(CgoutSC,O2<r>,CgoutSC,NO<r>)に同各酸化剤に対応する反応係数(Ko2,Kno)を乗じた値の和として酸化剤側影響度指標値OXIを求めるとともに、同排ガス中に含まれる各還元剤の濃度(CgoutSC,H2<r>,CgoutCO,NO<r>, CgoutCO,HC<r>)に同各還元剤に対応する反応係数(Kh2,Kco,Khc)を乗じた値の和として還元剤側影響度指標値DEOXIを求め、還元剤側影響度指標値DEOXIから酸化剤側影響度指標値OXIを減じた値に基づいて第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsが補正されるべき程度を示す補正指標値OXSbseを求める。そして、第2実施形態に係る排気浄化装置は、補正指標値OXSbse(実際には、補正係数Kcor)に基づいて前記出力voxsを補正した値voxs’が目標値voxsrefになるように機関に供給される混合気の空燃比(従って、第1触媒53に流入するガスの空燃比)をフィードバック制御する。
【0284】
従って、簡易な計算により、且つ正確に、第1触媒53から流出する排ガスの実際の空燃比が目標値voxsrefに相当する空燃比(理論空燃比)であるときの前記補正した値voxs’が同排ガス中の各ガス成分の濃度の割合に拘わらず同目標値voxsrefと等しくなるように(に近づくように)計算され得るから、第1触媒53下流の排ガスの空燃比が同目標値voxsrefに相当する空燃比(理論空燃比)近傍に維持され得る。従って、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における前述した第2の問題」が解決された。
【0285】
本発明は上記第2実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記第2実施形態においては、還元剤側影響度指標値DEOXIから酸化剤側影響度指標値OXIを減じた値(両者の差)に基づいて第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsが補正されるべき程度を示す補正指標値OXSbseを算出しているが、還元剤側影響度指標値DEOXIを酸化剤側影響度指標値OXIで除した値(両者の比)に基づいて補正指標値OXSbseを算出するように構成してもよい。
【0286】
また、上記第2実施形態においては、第1触媒53から流出する排ガス中に含まれる各成分の(絶対)濃度(CgoutSC,O2<r>等)に同各成分に対応する反応係数(Ko2等)を乗じた値の和として酸化剤側影響度指標値OXI及び還元剤側影響度指標値DEOXIを求めているが、或る所定条件下(排気ガス温度、排気ガス流量等がそれそれ所定の値にあるとき)において第1触媒下流空燃比センサ67(の検出部)を通過する排ガスが化学平衡状態にあるときの同排ガス中に含まれる各成分の濃度と同各成分の前記(絶対)濃度との各偏差に同各成分に対応する反応係数(Ko2等)を乗じた値の和として酸化剤側影響度指標値OXI及び還元剤側影響度指標値DEOXIを求めるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排気浄化装置を搭載した内燃機関の概略図である。
【図2】図1に示した最上流空燃比センサの出力と空燃比との関係を示したグラフである。
【図3】図1に示した第1触媒の外観図である。
【図4】図3に示した第1触媒の部分断面図である。
【図5】触媒モデルを説明するための触媒の模式図である。
【図6】触媒モデルを説明するための模式図である。
【図7】触媒モデルで使用する風上法を説明するための模式図である。
【図8】図1に示したCPUが参照する第1触媒から流出する排ガス中の酸素濃度(の絶対値)と重み係数との関係を規定したテーブルである。
【図9】図1に示した第1触媒下流空燃比センサが不定状態になったとき以降における各物理量の変化を、図1に示した排気浄化装置を適用した場合と従来の排気浄化装置を適用した場合とで比較しながら示したタイムチャートである。
【図10】図1に示したCPUが実行する燃料噴射量計算のためのルーチンを示したフローチャートである。
【図11】図1に示したCPUが実行するメインフィードバック制御量を計算するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図12】図1に示したCPUが実行するサブフィードバック制御量を計算するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図13】図1に示したCPUが実行する最大酸素吸蔵量取得制御を開始するか否かを決定するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図14】図1に示したCPUが実行する第1モードのルーチンを示したフローチャートである。
【図15】図1に示したCPUが実行する第2モードのルーチンを示したフローチャートである。
【図16】図1に示したCPUが実行する酸素吸蔵量を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図17】図1に示したCPUが実行する最大酸素吸蔵量を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図18】第1触媒全体の最大酸素吸蔵量から同第1触媒のブロック毎の最大酸素吸蔵量を求めるためのマップである。
【図19】触媒モデルにしたがって第1触媒内部における酸素濃度を求めるためのルーチンを示したフローチャートである。
【図20】触媒モデルにしたがって第1触媒内部における一酸化窒素濃度を求めるためのルーチンを示したフローチャートである。
【図21】触媒モデルにしたがって第1触媒内部における一酸化炭素濃度を求めるためのルーチンを示したフローチャートである。
【図22】触媒モデルにしたがって第1触媒内部における炭化水素濃度を求めるためのルーチンを示したフローチャートである。
【図23】触媒モデルにしたがって第1触媒内部における水素濃度を求めるためのルーチンを示したフローチャートである。
【図24】触媒モデルにしたがって第1触媒の酸素吸蔵密度と酸素吸蔵量を求めるためのルーチンを示したフローチャートである。
【図25】触媒劣化度と触媒温度とから触媒モデルにて使用する各係数(各乗数)を求めるためのマップである。
【図26】触媒に流入する一酸化窒素濃度を決定するために使用される排ガスの空燃比と同一酸化窒素濃度との関係を規定したマップである。
【図27】触媒に流入する一酸化炭素濃度を決定するために使用される排ガスの空燃比と同一酸化炭素濃度との関係を規定したマップである。
【図28】触媒に流入する炭化水素濃度を決定するために使用される排ガスの空燃比と同炭化水素濃度との関係を規定したマップである。
【図29】触媒に流入する水素濃度を決定するために使用される排ガスの空燃比と同水素濃度との関係を規定したマップである。
【図30】第1触媒から理論空燃比の排ガスが流出するときの第1触媒下流空燃比センサの出力と、補正指標値との関係を示したグラフである。
【図31】第2実施形態に係る排気浄化装置のCPUが参照する補正指標値と補正係数との関係を規定するテーブルである。
【図32】第2実施形態に係る排気浄化装置のCPUが実行するサブフィードバック制御量を計算するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図33】従来の排気浄化装置に適用されるとともに図1に示した排気浄化装置にも適用される第1触媒下流空燃比センサ出力と空燃比との関係を示したグラフである。
【図34】従来の排気浄化装置に適用される図1に示した第1触媒下流空燃比センサが不定状態になったとき以降における各物理量の変化を示したタイムチャートである。
【符号の説明】
10…内燃機関、53…第1触媒、66…最上流空燃比センサ、67…第1触媒下流空燃比センサ、70…電気制御装置、71…CPU
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒の下流の排気通路に配設された酸素濃度センサの出力に基づいて触媒に流入するガスの空燃比を制御する内燃機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、内燃機関の排ガスを浄化するための三元触媒(本明細書においては、単に「触媒」と云うこともある。)が同機関の排気通路に配設されている。この三元触媒は、同三元触媒に流入するガスの空燃比が理論空燃比であるときに、HC,COを酸化するとともにNOxを還元し、これらの有害成分を高い効率で浄化する。また、三元触媒は、酸素を吸蔵・放出する機能(酸素吸蔵機能、酸素吸蔵・放出機能、O2ストレージ機能)を有し、この酸素吸蔵・放出機能により、空燃比が理論空燃比からある程度まで偏移したとしても、HC,CO、及びNOxを浄化することができる。
【0003】
即ち、機関に供給される混合気の空燃比がリーンとなって三元触媒に流入するガスにNOxが多量に含まれると、三元触媒はNOxから酸素分子を奪って同酸素分子を吸蔵するとともに同NOxを還元し、これによりNOxを浄化する。また、機関に供給される混合気の空燃比がリッチになって三元触媒に流入するガスにHC,COが多量に含まれると、三元触媒はこれらに吸蔵している酸素分子を与えて(放出して)酸化し、これによりHC,COを浄化する。換言すれば、三元触媒に流入するガスの空燃比がリッチである場合には同三元触媒が吸蔵している酸素量(以下、「酸素吸蔵量」と称呼する。)が減少するとともに三元触媒に流入するガスの空燃比がリーンである場合には同三元触媒の酸素吸蔵量が増加する。
【0004】
従って、触媒が連続的に流入するリッチ空燃比の排ガス中にある多量のHC,COを効率的に浄化するためには、同触媒が酸素を多量に貯蔵していなければならず、逆に連続的に流入するリーン空燃比の排ガス中にある多量のNOxを効率的に浄化するためには、同触媒が酸素を十分に貯蔵し得る状態になければならないことになる。以上のことから、HC,COやNOxを効率よく浄化するため触媒の酸素吸蔵量が所定の量(例えば、同触媒に吸蔵され得る酸素の最大量(以下、「最大酸素吸蔵量」と称呼する。)の半分の量)になるように機関に供給される混合気の空燃比(従って、触媒に流入するガスの空燃比)が制御されることが好ましい。また、触媒の酸素吸蔵量が前記所定の量に維持され得るように制御するためには、触媒から流出する排ガスの空燃比(の平均値)が理論空燃比近傍になるように制御することが好適であると考えられる。
【0005】
このため、特許文献1に記載の内燃機関の排気浄化装置(空燃比制御装置)は、内燃機関の排気通路に触媒を配設するとともに、同触媒の下流の排気通路に排ガスの空燃比を検出する空燃比センサを配設し、同空燃比センサの出力が理論空燃比に相当する目標値になるように(従って、同空燃比センサの出力と同目標値との偏差が「0」になるように)同空燃比センサの出力に基づいて機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御するようになっている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−197837号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、触媒の下流に配設される空燃比センサとしては、安価であること、理論空燃比近傍において出力が急変することから排ガスの空燃比を理論空燃比近傍に制御するのに好適であること等の理由から、酸素濃淡電池の起電力に基づいて排ガスの空燃比に応じた出力を発生する濃淡電池式の酸素濃度センサが使用される。
【0008】
即ち、かかる濃淡電池式の酸素濃度センサは、排ガス中の各ガス成分が完全に燃焼して化学平衡状態にあるとき、例えば、図33に示すような出力特性(以下、「静特性」と云うこともある。)を有する。図33に示したように、この酸素濃度センサは、理論空燃比において急変する電圧voxsを出力するようになっていて、排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンのときは略0.1(V)、同排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチのときは略0.9(V)、及び同排ガスの空燃比が理論空燃比のときは略0.5(V)の電圧(理論空燃比に相当する目標値voxsref)を出力するようになっている。
【0009】
しかしながら、かかる濃淡電池式の酸素濃度センサは、一旦、明白なリーンを示す値(例えば、0.1(V))に出力が変化すると、その後の所定期間に渡り、或る程度の量のHC,COを含むリッチ空燃比の排ガスが触媒から流出してこない限りにおいて同出力がリーンを示す値に維持され、一旦、明白なリッチを示す値(例えば、0.9(V))に出力が変化すると、その後の所定期間に渡り、或る程度の量のNOxを含むリーン空燃比の排ガスが同触媒から流出してこない限りにおいて同出力がリッチを示す値に維持されるという特性(動特性)を有する。換言すれば、濃淡電池式の酸素濃度センサにおいては、触媒からHC,CO、及びNOx等の浄化すべき有害成分(以下、「エミッション」と称呼する。)が殆ど流出してこないときであっても前記所定期間に渡りリーン又はリッチを示す値に出力が維持される状態(以下、「不定状態」と称呼する。)となる場合がある。従って、濃淡電池式の酸素濃度センサの出力と理論空燃比に相当する目標値との偏差が「0」になるように同センサの出力に基づいて機関に供給される混合気の空燃比を制御すると、同センサが一旦不定状態になった後、同空燃比が収束しにくく、その結果、制御の安定性が低くなるという問題がある。
【0010】
以下、この点について図34を参照しながらより具体的に説明する。図34は、触媒下流に配置された前述の図33に示す静特性を有する濃淡電池式の酸素濃度センサの出力voxsを目標値voxsref(0.5(V))から減じた値である偏差Dvoxsが「0」になるように、同偏差Dvoxsが正の値のとき(voxsがリーンを示す値(0.1(V))のとき)機関に供給される混合気の空燃比abyfsをリッチ側に補正し同偏差Dvoxsが負の値のとき(voxsがリッチを示す値(0.9(V))のとき)同混合気の空燃比abyfsをリーン側に補正するフィードバック制御を実行した場合における各種値の変化の一例を示したタイムチャートである。この例では、(a)に示すように、時刻t0において、酸素濃度センサ出力voxsがリーンを示す値となっていて(即ち、(b)に示すように偏差Dvoxsが正の値になっていて)、その結果、(c)に示すように機関に供給される混合気の空燃比abyfsがリッチ側に補正されているものと仮定する。また、説明の便宜上、この例では、前記偏差Dvoxsに対する比例処理(P処理)のみにより前記空燃比を補正するためのフィードバック制御量を算出しているものとする。
【0011】
前述のごとく、時刻t0において空燃比abyfsがリッチ側に補正されていて触媒に流入する排ガス中にはHC,COが多量に含まれているから、(d)に示すように、時刻t0以降、触媒の酸素吸蔵量OSAは減少していく。一方、時刻t0では、酸素吸蔵量OSAは充分に残存していて触媒は流入してくる排ガス中のHC,COを十分に浄化する能力を有するから、(e)に示すように、触媒から流出する排ガス中の一酸化炭素CO濃度は略「0」になっている。また、触媒に流入する排ガスはNOxを殆ど含んでいないから、(f)に示すように、触媒から流出する排ガス中の一酸化窒素NO濃度も略「0」になっている。
【0012】
時刻t1になると、酸素吸蔵量OSAが「0」近傍に到達することで触媒はHC,COを十分に浄化できなくなる。従って、(e)に示すように、触媒から流出する排ガス中の一酸化炭素CO濃度が増加を開始し、これに応じて酸素濃度センサ出力voxsはリーンを示す値からリッチを示す値へと変化を開始するとともに時刻t2になるとリッチを示す値に到達する。この結果、時刻t1からt2の間において偏差Dvoxsが正の値から負の値へと転じた時点以降、空燃比abyfsはリッチ側からリーン側に補正されるようになる。
【0013】
これに応じて、触媒に流入する排ガスはNOxを多く含むようになる一方でHC,COを殆ど含まなくなり、酸素吸蔵量OSAが減少から増加に転じるとともに、CO濃度は増加から減少に転じて時刻t2以降再び略「0」に戻る。一方、この時点近傍では酸素吸蔵量OSAは略「0」となっていて触媒は流入してくる排ガス中のNOxを十分に浄化する能力を有するから、触媒から流出する排ガス中の一酸化窒素NO濃度も略「0」に維持されたままである。
【0014】
従って、時刻t2以降、増加を続ける酸素吸蔵量OSAが最大酸素吸蔵量Cmaxの半分となる時刻t3を経て最大酸素吸蔵量Cmax近傍に到達する時刻t4になるまでの間、触媒からNOxが多量に流出してこないから、酸素濃度センサ出力voxsはリッチを示す値を維持し続ける。換言すれば、触媒からHC,CO、及びNOx等のエミッションが殆ど流出してこないにも拘わらずvoxsはリーンを示す値に維持され、酸素濃度センサは前記不定状態になる((a)に示す一点鎖線で囲まれた部分を参照。)。
【0015】
このように酸素濃度センサが不定状態にある時刻t2〜t4までの間、触媒からエミッションが殆ど流出してこないから混合気の空燃比を大きく補正する(フィードバック制御する)必要がないにも拘わらず、偏差Voxsが負の値に維持されることで混合気の空燃比abyfsがリーン側に不必要に大きく補正された状態が維持され続ける。
【0016】
この結果、時刻t4になると、酸素吸蔵量OSAがCmax近傍に到達することで触媒はNOxを十分に浄化できなくなる。従って、触媒から流出する排ガス中の一酸化窒素NO濃度が増加を開始し、これに応じて酸素濃度センサ出力voxsはリッチを示す値からリーンを示す値へと変化を開始するとともに時刻t5になるとリーンを示す値に到達する。この結果、時刻t4からt5の間において偏差Dvoxsが負の値から正の値へと転じた時点以降、空燃比abyfsはリーン側からリッチ側に補正されるようになる。
【0017】
これに応じて、触媒に流入する排ガスはHC,COを多く含むようになる一方でNOxを殆ど含まなくなり、酸素吸蔵量OSAが増加から減少に転じるとともに、NO濃度は増加から減少に転じて時刻t5以降再び略「0」に戻る。一方、この時点近傍では酸素吸蔵量OSAはCmax近傍となっていて触媒は流入してくる排ガス中のHC,COを十分に浄化する能力を有するから、触媒から流出する排ガス中の一酸化炭素CO濃度も略「0」に維持されたままである。
【0018】
従って、時刻t5以降、減少を続ける酸素吸蔵量OSAがCmaxの半分となる時刻t6を経てCmax近傍に到達する時刻t7になるまでの間、触媒からHC,COが多量に流出してこないから、酸素濃度センサ出力voxsはリーンを示す値を維持し続ける。換言すれば、触媒からHC,CO、及びNOx等のエミッションが殆ど流出してこないにも拘わらずvoxsはリーンを示す値に維持され、酸素濃度センサは再び不定状態になる。
【0019】
よって、この時刻t5〜t7までの間も、触媒からエミッションが殆ど流出してこないにも拘わらず、偏差Voxsが正の値に維持されることで混合気の空燃比abyfsがリッチ側に不必要に大きく補正された状態が維持され続ける。この結果、時刻t7以降、前述の時刻t1以降と同様な変化が再び発生しすることで、時刻t8以降、酸素濃度センサは再度不定状態となって、混合気の空燃比abyfsは再び、不必要にリーン側に大きく補正されるようになる。
【0020】
以上、説明したように、濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行うと、同酸素濃度センサが一旦不定状態になった後、機関に供給される混合気の空燃比が収束しにくくなり、その結果、触媒の酸素吸蔵量が所定の量(例えば、最大酸素吸蔵量の半分の量)に収束しにくくなって制御の安定性が低くなるという問題(以下、「第1の問題」と称呼する。)が発生する。この第1の問題は、酸素濃度センサが不定状態にあって触媒からエミッションが殆ど流出してこない場合であっても、触媒からエミッションが多量に流出している場合であっても、同酸素濃度センサの出力が同一の値(リッチ又はリーンを示す値)となり得、この結果、どちらの場合においても機関に供給される混合気の空燃比を補正するためのフィードバック制御量が同様に計算されてしまうことに基づいて発生するものである。従って、かかる第1の問題は、触媒から流出する排ガス中のエミッションの量(特定成分の量)を推定できれば、同推定された特定成分の量が微量である場合とそうでない場合とで濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて計算されるフィードバック制御量を異ならせることで解決され得る。
【0021】
また、前述した濃淡電池式の酸素濃度センサ(排ガスの酸素濃度に依存する所謂限界電流を測定することで同排ガスの空燃比に応じた出力を発生する限界電流式の酸素濃度センサ等の酸素濃度センサも同様である。)の出力特性(静特性)は、排ガス中の各ガス成分の濃度の割合に応じて変化することが各種実験等を通じて判明している。即ち、例えば、前述したように排ガス中の各ガス成分が完全に燃焼して化学平衡状態にあるときに図33に示す静特性を有する濃淡電池式の酸素濃度センサにおいて、同センサ(の検出部)を通過する排ガスの各ガス成分の濃度の割合が同排ガスが化学平衡状態にあるときの各ガス成分の濃度の割合と異なる場合、同センサは図33に示す静特性とは異なる静特性を有するようになり、排ガスの空燃比が理論空燃比となっているときでも、図33における理論空燃比に相当する値voxsrefとは異なる値を出力するようになる。
【0022】
従って、例えば、この濃淡電池式の酸素濃度センサの出力voxsそのものが図33における理論空燃比に相当する値voxsrefとなるように空燃比制御を行うように構成すると、同排ガス中の各ガス成分の濃度の割合によっては触媒下流の排ガスの空燃比が理論空燃比近傍に維持され得なくなる場合があるという問題(以下、「第2の問題」と称呼する。)が発生する。しかしながら、この第2の問題も、酸素濃度センサ出力に影響を与える触媒から流出する排ガス中の各特定成分の量(濃度)を推定できれば、同推定された各特定成分の濃度に基づいて同センサ出力を補正することで解決され得る。
【0023】
以上、説明したように、上記第1の問題、及び上記第2の問題は共に、触媒から流出する排ガス中の特定成分の量を推定できれば解決され得る。そこで、発明者は、触媒から流出する排ガス中の特定成分の量(濃度)を推定する手法を開発するとともに、酸素濃度センサの出力に基づく空燃比のフィードバック制御においてこの推定値を考慮することにより、一層適切に同フィードバック制御を実行し得ることを見い出した。
【0024】
【発明の概要】
本発明の目的は、触媒下流の排気通路に配置された酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比のフィードバック制御を行う内燃機関の排気浄化装置において、触媒から流出する排ガス中の特定成分の量を考慮することで一層適切にフィードバック制御を実行し得るものを提供することにある。
【0025】
かかる目的を達成するための(上記第1の問題を解決するための)本発明の第1の特徴は、内燃機関の排気通路に配設された触媒と、前記触媒よりも下流の前記排気通路に配設されるとともに同配設部位における同排気通路内の排ガスの空燃比に応じた値を出力する濃淡電池式の酸素濃度センサと、前記酸素濃度センサの出力と同出力の所定の目標値との相違の程度を示す値に基づいてフィードバック制御量を算出するフィードバック制御量算出手段と、前記酸素濃度センサの出力が前記所定の目標値となるように前記フィードバック制御量に基づいて前記触媒に流入するガスの空燃比を制御する空燃比制御手段と、を備えた内燃機関の排気浄化装置が、前記触媒から流出する排ガス中の同触媒にて浄化すべき特定成分の量に関する値を取得する特定成分量取得手段を備え、前記フィードバック制御量算出手段は、前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量以下であることを示す値であるとき、前記酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との相違の程度を示す値の代わりに同値が示す相違の程度より小さい所定の相違の程度を示す値に基づいて前記フィードバック制御量を算出するように構成されたことにある。
【0026】
この場合、更に、前記フィードバック制御量算出手段は、前記相違の程度を示す値としての前記酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との偏差に基づいて前記フィードバック制御量を算出するとともに、前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が前記所定の微小量以下であることを示す値であるとき、前記偏差の代わりに同偏差の絶対値より小さい絶対値となる所定の値に基づいて前記フィードバック制御量を算出するように構成されることが好適である。
【0027】
ここにおいて、前記触媒にて浄化すべき特定成分とは、例えば、一酸化炭素CO、炭化水素HC、窒素酸化物NOx等であり、触媒から流出する排ガス中の同触媒にて浄化すべき前記特定成分の量に関する値は、例えば、同特定成分(CO等)の濃度、又は同特定成分の絶対量等、並びに、酸素O2(の過不足量)の濃度、又は同酸素O2(の過不足量)の絶対量等であって、これらに限定されない。
【0028】
また、前記特定成分の量に関する値を取得する特定成分量取得手段は、触媒内の反応を考慮して構築された触媒モデルにより、同触媒に流入するガスの状態に基づいて同触媒の酸素吸蔵量を推定するとともに少なくとも同推定された酸素吸蔵量に基づいて前記特定成分の量に関する値を取得するように構成されることが好適である(後述する本発明の第2の特徴に係る排気浄化装置についても同様。)。
【0029】
また、前記触媒に流入するガスの空燃比を制御する空燃比制御手段は、例えば、機関に供給される混合気の空燃比を制御する手段であってもよく、或いは、同機関に供給される混合気の空燃比の制御を行うとともに、同触媒の上流の排気通路に備えられたノズル等から空気や燃料を供給することで同触媒に流入するガスの空燃比を制御する手段であってもよい(後述する本発明の第2の特徴に係る排気浄化装置についても同様。)。なお、機関に供給される混合気の空燃比を制御すれば、触媒に流入するガスの空燃比を制御することができる。
【0030】
これによれば、触媒からエミッションが或る程度流出していて特定成分量取得手段により取得される特定成分(エミッション)の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量を超えることを示す値となる場合、酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との相違の程度を示す値(例えば、前記偏差)そのものに応じて触媒に流入するガスの空燃比を制御(補正)するためのフィードバック制御量が適切な値に計算され得る。
【0031】
一方、触媒からエミッションが殆ど流出せずに前記特定成分(エミッション)の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量以下であることを示す値となる場合、前記相違の程度を示す値(例えば、前記偏差)の代わりに同値が示す相違の程度より小さい所定の相違の程度を示す値(例えば、前記偏差の絶対値より小さい絶対値となる所定の値)に基づいてフィードバック制御量が算出される。従って、例えば、濃淡電池式の酸素濃度センサが前述した不定状態にある場合のように仮に前記偏差の絶対値が大きい値となっていても、フィードバック制御量(の絶対値)が小さく計算され得ることで触媒に流入するガスの空燃比が不必要に大きく補正されなくなる。
【0032】
この結果、濃淡電池式の酸素濃度センサが一旦不定状態になった後においても、フィードバック制御される触媒に供給されるガスの空燃比が振動的になりにくくなることで触媒の酸素吸蔵量が所定の量(例えば、最大酸素吸蔵量の半分の量)に収束しやすくなるから、濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における前述した第1の問題が解決され得る。
【0033】
前記内燃機関の排気浄化装置においては、前記フィードバック制御量算出手段は、前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が前記所定の微小量を超えることを示す値であるとき、同特定成分の量に関する値に応じて前記酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との相違の程度を示す値に重み付けした値を求めるとともに、同相違の程度を示す値の代わりに同重み付けされた値に基づいて前記フィードバック制御量を算出するように構成されることが好適である。
【0034】
触媒からエミッションが或る程度流出していて前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量を超えることを示す値となる場合(即ち、濃淡電池式の酸素濃度センサが前記不定状態になく、同センサの出力と前記所定の目標値との相違の程度を示す値(例えば、前記偏差)そのものに応じてフィードバック制御量が計算される場合)、同フィードバック制御量(の絶対値)は、同触媒から流出する排ガス中の特定成分の(絶対)量の増加に応じて線形的に増加するように設定されることが好適であると考えられる。また、触媒から流出する排ガス中の特定成分の(絶対)量は同排ガスの空燃比の理論空燃比からの偏移量の増加に応じて増加する。
【0035】
しかしながら、先に説明した図33に示すように、濃淡電池式の酸素濃度センサの出力は、理論空燃比近傍で急変するとともに空燃比が理論空燃比近傍から外れると同空燃比の理論空燃比からの偏移量に拘わらず略一定の値となるから、同センサの出力と同出力の目標値との相違の程度を示す値(前記偏差)に基づいて計算されるフィードバック制御量(の絶対値)は前記特定成分の(絶対)量の増加に応じて線形的に増加する値とはなり得ない。
【0036】
これに対し、上記のように、前記特定成分の量に関する値に応じて(特定成分の(絶対)量の増加に応じて)前記酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との相違の程度を示す値(例えば、前記偏差)に重み付けした値に基づいてフィードバック制御量を算出するように構成すれば、フィードバック制御量(の絶対値)が触媒から流出する排ガス中の特定成分の(絶対)量の増加に応じて線形的に増加する値に近づくように設定され得るから、触媒に流入するガスの空燃比が同特定成分の(絶対)量に応じて適切に制御(補正)され得る。
【0037】
また、上記第2の問題を解決するための本発明の第2の特徴に係る排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に配設された触媒よりも下流の前記排気通路に配設されるとともに同配設部位における同排気通路内の排ガスの空燃比に応じた値を出力する酸素濃度センサ(例えば、濃淡電池式の酸素濃度センサ、及び限界電流式の酸素濃度センサ等)と、前記酸素濃度センサの出力に影響を与える前記触媒から流出する排ガス中の特定成分の量に関する値を取得する特定成分量取得手段と、前記特定成分の量に関する値に基づいて前記酸素濃度センサの出力を補正した値を算出する補正手段と、前記補正された値が所定の目標値となるように同補正された値に基づいて前記触媒に流入するガスの空燃比を制御する空燃比制御手段とを備える。
【0038】
ここにおいて、前記酸素濃度センサの出力に影響を与える特定成分とは、例えば、酸素O2、窒素酸化物NOx、一酸化炭素CO、炭化水素HC、水素H2等であり、前記特定成分の量に関する値は、例えば、同特定成分(酸素O2等)の濃度、又は同特定成分の絶対量等であって、これらに限定されない。
【0039】
先に説明したように、酸素濃度センサの空燃比に対する出力特性は、同センサを通過する排ガス中の各ガス成分の濃度の割合に応じて変化し、排ガスの実際の空燃比が前記所定の目標値に相当する空燃比(例えば、理論空燃比)となるときの同センサの出力は同排ガス中の各ガス成分の濃度の割合に応じて同所定の目標値から偏移する。この点に鑑み、上記のように、酸素濃度センサの出力に影響を与える触媒から流出する排ガス中の前記特定成分の量に関する値(濃度、各特定成分の濃度の割合)に基づいて同酸素濃度センサの出力を補正した値が所定の目標値となるように同補正された値に基づいて同触媒に流入するガスの空燃比を制御するように構成すれば、同排ガス中の各ガス成分の濃度の割合に拘わらず、排ガスの実際の空燃比が同所定の目標値に相当する空燃比となるときにおける同補正された値が同所定の目標値と等しくなるように(或いは、センサ出力よりも同所定の目標値に近い値になるように)計算され得るから、触媒下流の排ガスの空燃比が同所定の目標値に相当する空燃比(例えば、理論空燃比)近傍に維持され得る。従って、濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における前述した第2の問題が解決され得る。
【0040】
この場合、前記特定成分量取得手段は、前記触媒から流出する排ガス中の少なくとも一つの酸化剤の量に関する値と少なくとも一つの還元剤の量に関する値を前記ガス中の特定成分の量に関する値として取得するように構成され、前記補正手段は、前記少なくとも一つの酸化剤の量に関する値に基づいて前記触媒から流出する排ガス中の酸化剤が前記酸素濃度センサの出力に影響を与える程度を示す酸化剤側影響度指標値と求めるとともに前記少なくとも一つの還元剤の量に関する値に基づいて同排ガス中の還元剤が同酸素濃度センサの出力に影響を与える程度を示す還元剤側影響度指標値と求め、同酸化剤側影響度指標値と同還元剤側影響度指標値との比較により同酸素濃度センサの出力が補正されるべき程度を示す補正指標値を求め、同補正指標値に基づいて同酸素濃度センサの出力を補正した値を算出するように構成されることが好適である。
【0041】
酸素濃度センサの出力においては、同センサを通過する排ガス中の酸化剤の量(濃度)の増加に応じて同出力が変化する方向と同排ガス中の還元剤の量(濃度)の増加に応じて同出力が変化する方向とが互いに逆になる傾向がある。換言すれば、触媒から流出する排ガス中の酸化剤が酸素濃度センサの出力に影響を与える程度と同排ガス中の還元剤が同酸素濃度センサの出力に影響を与える程度とを比較することで同センサの出力を補正する程度(例えば、大きさと方向)を求めることができる。
【0042】
従って、上記のように、前記少なくとも一つの酸化剤の量に関する値に基づいて求められるとともに前記触媒から流出する排ガス中の酸化剤が前記酸素濃度センサの出力に影響を与える程度を示す酸化剤側影響度指標値と前記少なくとも一つの還元剤の量に関する値に基づいて求められるとともに同排ガス中の還元剤が同酸素濃度センサの出力に影響を与える程度を示す還元剤側影響度指標値との比較により補正指標値を求め、同補正指標値に基づいて同酸素濃度センサの出力を補正した値を算出するように構成すれば、簡易な計算により、且つ正確に、排ガスの実際の空燃比が前記所定の目標値に相当する空燃比であるときの同補正した値が同排ガス中の各ガス成分の濃度の割合に拘わらず同所定の目標値と等しくなるように(に近づくように)計算され得る。
【0043】
【発明の実施の形態】
<第1実施形態>
以下、本発明による排気浄化装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る排気浄化装置(空燃比制御装置)を火花点火式多気筒(4気筒)内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。なお、図1においては、一つの気筒の断面が示されているが、他の気筒も同様の構成を備えている。また、この第1実施形態の排気浄化装置は、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第1の問題」を解決するためのものである。
【0044】
この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース、及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
【0045】
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23、及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
【0046】
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともに同インテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38、及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)39を備えている。
【0047】
吸気系統40は、吸気ポート31に連通し同吸気ポート31とともに吸気通路を形成するインテークマニホールドを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42、吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁43、及び、スロットル弁駆動手段を構成するDCモータからなるスロットル弁アクチュエータ43aを備えている。
【0048】
排気系統50は、排気ポート34に連通したエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51に接続されたエキゾーストパイプ(排気管)52、エキゾーストパイプ52に配設(介装)された上流側の第1触媒(上流側三元触媒、又はスタート・コンバータとも云う。)53、及び第1触媒53の下流のエキゾーストパイプ52に配設(介装)された第2触媒(下流側三元触媒、又は、車両のフロア下方に配設されるため、アンダ・フロア・コンバータとも云う。)54を備えている。ここで、排気ポート34、エキゾーストマニホールド51、及びエキゾーストパイプ52は、排気通路を構成している。
【0049】
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ62、カムポジションセンサ63、クランクポジションセンサ64、水温センサ65、第1触媒53の上流の排気通路に配設された空燃比センサ66(以下、「最上流空燃比センサ66」と称呼する。)、第1触媒53の下流であって第2触媒54の上流の排気通路に配設された空燃比センサ67(以下、「第1触媒下流空燃比センサ67」と称呼する。)、及びアクセル開度センサ68を備えている。
【0050】
熱線式エアフローメータ61は、吸気管41内を流れる吸入空気の質量流量AFM(=Ga)に応じた電圧を出力するようになっている。スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁43の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(即ち、クランク軸24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号(G2信号)を発生するようになっている。クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、エンジン回転速度NEを表す。水温センサ65は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
【0051】
最上流空燃比センサ66は、限界電流式の酸素濃度センサであって、図2に示したように、空燃比A/Fに応じた電圧vabyfsを出力するようになっている。図2から明らかなように、最上流空燃比センサ66によれば、広範囲にわたる空燃比A/Fを精度良く検出することができる。第1触媒下流空燃比センサ67は、前述の図33にその出力特性を示したものと同一の濃淡電池式の酸素濃度センサであって、排ガス中の各ガス成分が完全に燃焼して化学平衡状態にある場合、同排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンのとき略0.1(V)、同排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチのとき略0.9(V)、及び同排ガスの空燃比が理論空燃比のときは所定の目標値voxsrefである0.5(V)の電圧voxsを出力するようになっている。アクセル開度センサ68は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を検出し、同アクセルペダル81の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
【0052】
更に、このシステムは電気制御装置70を備えている。電気制御装置70は、互いにバスで接続されたCPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、及び定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、並びにADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース75は、前記センサ61〜68と接続され、CPU71にセンサ61〜68からの信号を供給するとともに、同CPU71の指示に応じて可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、インジェクタ39、及びスロットル弁アクチュエータ43aに駆動信号を送出するようになっている。
【0053】
(空燃比フィードバック制御の概要)
次に、上記のように構成された内燃機関の排気浄化装置(以下、「本第1実施形態の排気浄化装置」と云うこともある。)が行う空燃比フィードバック制御の概要について説明する。
【0054】
第1触媒53(第2触媒54も同様である。)は、図3に外観を示したように、断面が楕円形(断面積がdA一定)の柱状のモノリス触媒コンバータと称呼される三元触媒であり、軸に直交する平面で同第1触媒53を切断した拡大断面図である図4に示したように、セラミックの一種であるコージェライトからなる担体53aにより、その内部が軸方向に延在する軸線方向空間に細分されている。各軸線方向空間は、軸線に垂直な平面で切断すると略正方形状を有していて、セルとも称呼される。担体53aは、アルミナのコート層53bによりコーティングされていて、同コート層53bは白金(Pt)等の貴金属からなる活性成分(触媒成分)及びセリア(CeO2)等の成分を担持している。
【0055】
かかる第1触媒53は、白金等の貴金属を担持しているから、同第1触媒53に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比のときに未燃成分(HC,CO)を酸化し、同時に窒素酸化物(NOx)を還元する触媒機能を有する。また、第1触媒53は、上記セリア等の成分を担持することにより、同第1触媒53に流入する排ガス中の酸素分子を吸蔵(貯蔵,吸着)及び放出する上述の酸素吸蔵機能を有していて、この酸素吸蔵機能により、空燃比が理論空燃比からある程度まで偏移したとしても、HC,CO、及びNOxを浄化することができる。
【0056】
即ち、機関10に供給される混合気の空燃比がリーンとなって第1触媒53に流入するガスにNOxが多量に含まれると、第1触媒53はNOxから酸素分子を奪って同酸素分子を吸蔵するとともに同NOxを還元し、これによりNOxを浄化する。また、機関10に供給される混合気の空燃比がリッチになって第1触媒53に流入するガスにHC,COが多量に含まれると、第1触媒53はこれらに吸蔵している酸素分子を与えて(放出して)酸化し、これによりHC,COを浄化する。
【0057】
従って、第1触媒53の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量近傍に到達していると、第1触媒53に流入するガスの空燃比がリーンとなったときに酸素を吸蔵することができないので、排ガス中のNOxを十分に浄化できなくなる。一方、第1触媒53の酸素吸蔵量が「0」近傍になっていると、第1触媒53に流入するガスの空燃比がリッチとなったときに酸素を放出することができないので、排ガス中のHCやCOを十分に浄化できなくなる。このため、第1触媒53に流入するガスの空燃比が過渡的に相当のリーン空燃比又はリッチ空燃比となった場合であっても、同ガス中の有害成分を効率よく浄化できるように、第1触媒53の酸素吸蔵量が所定の量(例えば、最大酸素吸蔵量の半分の量)になるように機関10に供給される混合気の空燃比(従って、第1触媒53に流入するガスの空燃比)が制御されることが好ましい。
【0058】
また、第1触媒53の酸素吸蔵量が前記所定の量に維持され得るように制御するためには、第1触媒53から流出する排ガスの空燃比(の平均値)が理論空燃比近傍になるように制御することが好適であると考えられる。そこで、本第1実施形態の排気浄化装置は、上述した従来の装置と同様、濃淡電池式の酸素濃度センサである第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsが理論空燃比に相当する目標値voxsrefとなるように、同目標値voxsrefから同出力voxsを減じた偏差Dvoxs(センサ出力と目標値との相違の程度を示す値)に基づいてフィードバック制御量(サブフィードバック制御量)vafsfbを求め、同サブフィードバック制御量vafsfbに基づいて機関10に供給される混合気の空燃比(従って、第1触媒53に流入するガスの空燃比)をフィードバック制御する。
【0059】
しかしながら、先に説明したように、前記偏差Dvoxsそのものに基づいてサブフィードバック制御量vafsfbを求めると、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第1の問題」が発生する。従って、本第1実施形態の排気浄化装置は、後に詳述する触媒モデルを第1触媒53に適用することで第1触媒53から流出する排ガス中の酸素濃度CgoutSC,O2<r>を求め、後述するように、この酸素濃度CgoutSC,O2<r>の値に基づいて前記偏差Dvoxsを補正した(重み付けした)値Dvoxswに基づいてサブフィードバック制御量vafsfbを求める。
【0060】
ここで、第1触媒53から流出する排ガス中の酸素濃度CgoutSC,O2<r>について簡単に説明する。後述する触媒モデルにおいては、図5に示したように、円筒形の触媒を同円筒形の軸線に直交する平面にて同触媒の上流から等間隔で仮想的に分割して複数の概念上のブロックを形成する。そして、触媒モデルは、各ブロック毎に所定の計算を行い、同各ブロックから流出する特定成分(例えば、酸素、一酸化炭素、炭化水素等、窒素酸化物等)の濃度Cgoutを求める。各ブロックは、触媒の最上流(排ガスが流入する側)から順に、1番目のブロック、2番目のブロック、…n番目のブロックと定められている。
【0061】
また、本実施形態の触媒モデルは、第1触媒53をr個(rは2以上の整数)のブロックにそれぞれ分割して各種演算を行う。本明細書においては、特定成分をXとするとともに、着目しているブロックを第1触媒53のk番目のブロック(ブロックk)とすると、第1触媒53のブロックkから流出する排ガス中の特定成分X(Xは、酸素の場合O2、一酸化炭素の場合CO、水素の場合H2、炭化水素の場合HC、窒素酸化物の場合NO)の濃度はCgoutSC,X<k>と表記する。
【0062】
以上から明らかなように、上記酸素濃度CgoutSC,O2<r>は、第1触媒53の最下流に位置するブロックr(従って、第1触媒53)から流出する排ガス中の酸素濃度CgoutSC,O2<i>である。ここで、酸素濃度CgoutSC,O2<r>は、「触媒から流出する排ガス中の同触媒で浄化すべき特定成分の量に関する値」ということになる。また、酸素濃度CgoutSC,O2<r>は、正の値であるときは酸素が過剰であってブロックr(従って、第1触媒53)からNOxが流出している状態であることを意味し、負の値であるときは酸素が不足して同ブロックrから未燃CO,HCが流出している状態であることを意味していている。従って、酸素濃度CgoutSC,O2<r>は、ブロックr(従って、第1触媒53)から流出する排ガス中の酸素の過不足量に関する値とも云える。
【0063】
(触媒モデル)
次に、前記酸素濃度CgoutSC,O2<r>を求めるために使用される触媒モデルの具体的構成・内容について説明する。この触媒モデルは、第1触媒53に適用されるものである。
【0064】
先ず、触媒モデルにおいては、前述したように、第1触媒53を排ガスの入口(流入側、最上流側)Frから出口(流出側、最下流側)Rrに向う軸線に直交する面により複数の領域であるブロックに分割する(図5を参照)。即ち、第1触媒53を排ガスの流れ方向に沿って複数のブロックに仮想的に分割する。分割された各ブロックの軸線方向の長さはL(微小の長さでありdxとも書く。)である。なお、第1触媒53の軸方向に直交する平面で切断した断面の面積をdAとする。
【0065】
次に、任意のブロック(以下、「特定領域」と称呼する。)に注目し、同特定領域を通過する特定の化学種(特定成分)の物質の収支を考える。化学種は、排ガス中に含まれる成分であり、例えば、酸素O2、水素H2、一酸化炭素CO、炭化水素HC、及び窒素酸化物NOxである。なお、化学種は、触媒に流入する排ガスの空燃比がリッチのときに同排ガス中に含まれる成分を総合したもの(リッチ成分)、或いは、触媒に流入する排ガスの空燃比がリーンのときに同排ガス中に含まれる成分を総合したもの(リーン成分)とすることもできる。触媒モデルにおいては、下記表1のように、種々の値が定義される。
【0066】
【表1】
【0067】
いま、時刻t〜t+Δtの所与の期間における特定領域での化学種の収支を考えると、図6に示したように、特定領域の排ガス相(単に、「ガス相」とも称呼する。)における化学種の変化量ΔMは、下記の(1)式に示したとおり、同特定領域に流入した同化学種の量Minから、同特定領域から流出した同化学種の量Moutと同特定領域のコート層に奪われた同化学種の量Mcoatとを減算した量と等しい。このように、触媒モデルは各特定領域における特定成分の物質収支に基づいて構築される。
【0068】
【数1】
【0069】
以下、(1)式の各項について個別に検討する。先ず、(1)式の左辺にある化学種の変化量ΔMは、下記(2)式により求めることができる。(2)式は、上記所与の期間における化学種の濃度変化量(化学種の濃度Cgの時間変化量を所与の期間に渡り積分した量)に微小体積σ・dA・dxを乗じた値を着目しているブロック(特定領域)の全体に渡って軸方向に積分したものである。
【0070】
【数2】
【0071】
(1)式の右辺第1項のMinは、単位時間あたりに特定領域に流入する排ガスの体積に相当する値である「特定領域に流入する排ガスの流速vginと同特定領域の断面積dAの積vgin・dA(実際には、断面積dAで開口率σの触媒内に流速vginの排ガスが流れ込むので、触媒内部での排ガスの流速はvgin/σとなり、この実際の流速vgin/σと触媒の実質的な断面積σ・dAの積)」に同流入する排ガス中の化学種の濃度Cginを乗じた値Cgin・vgin・dAを所与の期間に渡り積分した値である。また、(1)式の右辺第2項のMoutは、特定領域から流出する排ガスの流速vgoutと同特定領域の断面積dAの積vgout・dA(実際には、排ガスの流速vgout/σと実質的な断面積σ・dAの積)に同流出する排ガス中の前記化学種の濃度Cgoutを乗じた値Cgout・vgout・dAを所与の期間に渡り積分した値である。即ち、上記(1)式の右辺第1項及び第2項は下記(3)式のように記述することができる。
【0072】
【数3】
【0073】
ところで、特定領域に流入する排ガスの流速vginと同特定領域から流出する排ガスの流速vgoutとの間に大きな差異はないので、vg=vgin=vgoutとおくと、(3)式は、下記(4)式のように変形される。
【0074】
【数4】
【0075】
次に、(1)式の右辺第3項のコート層に伝達される(移動する)化学種の量Mcoatについて検討する。幾何学的表面積Sgeoは触媒の単位体積あたりの化学種の反応に寄与する表面積であるから、特定領域において化学種の反応に寄与する表面積はSgeo・dA・dxであり、同特定領域の単位長あたりに同反応に寄与する面積はSgeo・dAとなる。また、コート層に伝達される化学種の量は、フィックの法則から、排ガス相の化学種の濃度Cgとコート層の化学種の濃度Cwとの差に比例すると考えることができる。これらから、下記の(5)式が得られる。なお、hDは比例定数であるが、上記の表1に示したように、物質伝達率と称呼される値である。
【0076】
【数5】
【0077】
従って、上記(1),(2),(4)式、及び(5)式から、以下の(6)式が得られる。
【0078】
【数6】
【0079】
この(6)式に準定常(quasi state)近似を適用すると、(6)式の左辺は「0」(∂Cg/∂t=0)であると考えることができるから(即ち、濃度Cgは瞬間的に定常値に至ると考えられるから)、下記の(7)式が得られる。
【0080】
【数7】
【0081】
ここで、見かけの拡散速度(実質的な拡散速度)RDを(8)式のようにおけば、(7)式は(9)式に書き直される。
【0082】
【数8】
【0083】
【数9】
【0084】
次に、特定領域のコート層における化学種の収支(特定成分の物質収支)を上記と同様に考えると、下記(10)式に示したように、コート層内における化学種の時間的変化量(単位時間あたりの変化量)ΔMcは、単位時間あたりに排ガス相からコート層へ伝達される同化学種の量Mdから、同単位時間あたりにコート層にて反応により消費される同化学種の量Mrを減じた量である。
【0085】
【数10】
【0086】
(10)式の左辺(コート層内における化学種の時間的変化量)ΔMcは、下記(11)式に示したように、化学種の濃度変化(∂Cw/∂t)に体積((1−σ)・dA・dx)を乗じることにより求められ、右辺第1項(単位時間あたりに排ガス相からコート層へ伝達される化学種の量Md)は(5)式で説明した理由と同じ理由により、即ち、フィックの法則から考えると、下記(12)式のように記述することができる。
【0087】
【数11】
【0088】
【数12】
【0089】
また、(10)式の右辺第2項(単位時間あたりにコート層にて反応により消費される化学種の量Mr)は、コート層での化学種の消費速度Rを用いた下記(13)式により求められる。
【0090】
【数13】
【0091】
従って、(10)〜(13)式から、下記の(14)式が得られる。
【0092】
【数14】
【0093】
この(14)式に準定常(quasi state)近似を適用すると(∂Cw/∂t=0)、下記の(15)式が得られる。
【0094】
【数15】
【0095】
ここで、(15)式に(8)式を適用すれば、下記の(16)式が得られる。
【0096】
【数16】
【0097】
以上を要約すると、(9)式及び(16)式が触媒モデルの基本式である。(9)式は、ある化学種の「特定領域への流入量」と「排ガス相からコート層への拡散量+特定領域からの流出量」とが釣り合っていることを示し、(16)式は、同化学種の「排ガス相からコート層への拡散量」と「コート層での消費量」とが釣り合っていることを示している。
【0098】
次に、かかる触媒モデルを使用して特定領域から流出する特定の化学種iの濃度Cgoutを実際に算出するための方法について説明する。先ず、(9)式を離散化すると、下記(17)式が得られる。なお、以下においては上記dxをLとして表す。
【0099】
【数17】
【0100】
ここで、図7に概念的に示したように、特定領域Iから流出する化学種の濃度Cgoutは同特定領域Iの化学種の濃度Cg(I)の影響を強く受けると考えられるので、下記の(18)式のように置くことができる。かかる考え方は「風上法」と称呼される。換言すると、風上法とは、「特定領域Iに隣接する上流側の領域(I−1)における濃度Cg(I−1)の化学種が、特定領域Iに流入する。」という考え方であり、下記(19)式のように記述することもできる。
【0101】
【数18】
【0102】
【数19】
【0103】
ところで、反応速度論に基けば、ある化学種のコート層での消費速度Rは、その化学種のコート層の平均濃度Cwの関数fcw(例えば、Cwのn乗に比例する関数)となるので、この関数fcwを最も簡便となるようにCwに比例すると設定すれば、消費速度Rは(20)式にて示したように置くことができる。なお、以下において、(20)式中のR*を便宜上「消費速度定数」と称呼する。
【0104】
【数20】
【0105】
この(20)式を上記(16)式(R=RD・(Cg−Cw)…(16))に適用すると下記(21)式が得られ、同(21)式を変形することにより下記(22)式が得られる。
【0106】
【数21】
【0107】
【数22】
【0108】
また、上述した風上法によれば、Cg=Cgoutであるから、(22)式は下記(23)式に書き換えられる。
【0109】
【数23】
【0110】
そして、Cg=Cgoutなる関係を上記(17)式に適用してCgを消去するとともに、同(17)式と上記(23)式とからCwを消去すると、下記(24)式が得られる。
【0111】
【数24】
【0112】
そこで、値SPを下記(25)式のようにおけば、(24)式は(26)式のように書き直すことができる。値SPは、見かけの拡散速度RDと消費速度定数R*のうちの小さい方の値に強い影響を受ける値であるから、Cgoutの変化が物質の伝達(RD)又は化学的反応(R*)の何れにより律速されているかを示す値となっており、従って、「反応律速因子」と呼ぶこともできる。
【0113】
【数25】
【0114】
【数26】
【0115】
以上のことから、消費速度定数R*と見かけの拡散速度RDとを決定できれば、特定領域に流入する化学種濃度Cginを与えることにより、(25)式と(26)式とに基づいて同特定領域から流出する化学種の濃度Cgoutを求めることができる。また、これにより、次の特定領域に流入する化学種濃度Cginが定まるので、同次の特定領域の化学種の濃度Cgoutを算出することが可能となる。以上が、化学種の濃度Cgoutを算出する触媒モデルの基本的考え方である。
【0116】
次に、上記消費速度定数R*と見かけの拡散速度RDを決定するとともに、特定領域から流出する化学種濃度Cgoutを求める際のより具体的な方法の一例について説明する。この例(触媒モデル)では、触媒での酸化・還元反応である三元反応は瞬時に且つ完全に終了するものと仮定し、その結果としての酸素の過不足に基く酸素の吸蔵・放出反応に着目することとする。なお、この仮定(触媒モデル)は、現実的であり且つ精度の良いものである。
【0117】
この場合、着目する化学種iは、例えば、酸素O2や窒素酸化物の一つである一酸化窒素NOのように酸素を生成する(酸素をもたらす)化学種(ストレージ・エージェント)、及び、一酸化炭素COや炭化水素HCのように酸素を消費する化学種(リダクション・エージェント)から選ばれた化学種である。
【0118】
また、以下において、ストレージ・エージェントの化学種i(この場合、化学種iはO2又はNO等)のCgoutをCgout,stor,i、同化学種iのCwをCw,stor,i、同化学種iのCginをCgin,stor,i、同化学種iの見かけの拡散速度RDをRD,i、同化学種iの消費速度をRstor,i、同化学種iの消費速度定数をR*stor,i、及び同化学種iの反応律速因子をSPstor,iと表す。
【0119】
同様に、リダクション・エージェントの化学種i(この場合、化学種iはH2、CO、HC等)のCgoutをCgout,reduc,i、同化学種iのCwをCw,reduc,i、同化学種iのCginをCgin,reduc,i、同化学種iの見かけの拡散速度RDをRD,i、同化学種iの消費速度をRreduc,i、同化学種iの消費速度定数をR*reduc,i、及び同化学種iの反応律速因子SPreduc,iと表す。このように各値を表すと、上記(20),(23),(25),(26)式から以下の(27)〜(34)式が得られる。
【0120】
【数27】
【0121】
【数28】
【0122】
【数29】
【0123】
【数30】
【0124】
【数31】
【0125】
【数32】
【0126】
【数33】
【0127】
【数34】
【0128】
これらの式に基づいて、Cgout,sotr,i(具体的には、特定領域から流出する酸素の濃度Cgout,O2、特定領域から流出する一酸化窒素の濃度Cgout,NO)及びCgout,reduc,i(具体的には、特定領域から流出する水素の濃度Cgout,H2、特定領域から流出する一酸化炭素の濃度Cgout,CO、特定領域から流出する炭化水素の濃度Cgout,HC)を求めるため、先ず、消費速度定数R*stor,i及び消費速度定数R*reduc,iを求める。
【0129】
ところで、反応速度論によれば、特定領域のコート層で酸素が吸蔵される速度(酸素の吸蔵速度)であるストレージ・エージェントの消費速度Rstor,iは、同コート層のストレージ・エージェント(O2、NOx等)の濃度Cw,stor,i(例えば、Cw,O2、Cw,NO)の関数f1(Cw,stor,i)の値に比例するとともに、特定領域のコート層の最大酸素吸蔵密度と実際の酸素吸蔵密度との差(Ostmax−Ost)の関数f2(Ostmax−Ost)の値とに比例すると考えられる。この最大酸素吸蔵密度と酸素吸蔵密度との差(Ostmax−Ost)は、着目している特定領域における酸素吸蔵余裕量を表す。
【0130】
そこで、簡単のために関数f1(x)=f2(x)=xとすると、下記の(35)式が得られる。下記(35)式のkstor,iは酸素吸蔵速度係数(吸蔵側反応速度係数,ストレージ・エージェントの消費速度係数)であって、よく知られたアレニウスの式で表される温度に依存して変化する係数であり、別途検出又は推定される触媒温度Tempと所定の関数(酸素吸蔵速度係数kstor,iと触媒温度Tempとの間の関係を規定したマップでも良い。)とに基づいて求めることができる。なお、酸素吸蔵速度係数kstor,iは、触媒劣化程度に応じても変化するので、同触媒劣化程度に応じて求めてもよい。
【0131】
【数35】
【0132】
従って、(27)式と(35)式とから、消費速度定数R*stor,iは下記(36)式により求めることができる。
【0133】
【数36】
【0134】
また、酸素の吸蔵(吸着)と放出のみに着目しているこの触媒モデルにおいては、還元剤であるリダクション・エージェントはコート層に吸蔵されている酸素の放出のみに使用されるから、同リダクション・エージェントの消費速度Rreduc,iはコート層に吸蔵されている酸素が放出される速度(酸素の放出速度)Rrel,iと等しい。
【0135】
そこで、酸素の放出速度Rrel,iについて検討すると、同放出速度Rrel,iは、酸素の吸蔵速度Rstor,iと同様に反応速度論に基き、同コート層において酸素を消費する化学種(例えば、CO,HC)の濃度Cw,reduc,i(例えば、Cw,CO、Cw,HC)の関数g1(Cw,reduc,i)の値に比例するとともに、酸素吸蔵密度Ostの関数g2(Ost)の値とに比例すると考えられる。
【0136】
そこで、簡単のために関数g1(x)=g2(x)=xとすると、下記の(37)式が得られる。下記(37)式のkrel,iは酸素放出速度係数(吸脱側反応速度係数)であって、酸素吸蔵速度係数kstor,iと同様にアレニウスの式で表される温度に依存して変化する係数であり、別途検出又は推定される触媒温度Tempに基づいて所定の関数(酸素放出速度係数krel,iと触媒温度Tempとの間の関係を規定したマップでも良い。)に基づいて求めることができる。なお、酸素放出速度係数krel,iは、触媒劣化程度に応じても変化するので、同触媒劣化程度に応じて求めてもよい。
【0137】
【数37】
【0138】
この結果、上述したようにリダクション・エージェントの消費速度Rredcu,iはコート層の酸素の放出速度Rrel,iと等しいから、消費速度定数R*reduc,iは(31)式と(37)式とを比較することにより得られる下記(38)式に基づいて求めることができる。
【0139】
【数38】
【0140】
以上のことから、酸素吸蔵密度Ostが求められれば(酸素吸蔵密度Ostの求め方については、後述する。)、(36)式から消費速度定数R*stor,i(例えば、R*O2)を求めることができる。一方、見かけの拡散速度RD,i(例えば、RD,O2)は(8)式のようにSgeo・hD,iであるから、温度と流量の関数(触媒の温度と同触媒を通過する排ガスの流量の関数)として実験的に求めておくことができる。この結果、(29)式からSPstor,i(例えば、SPstor,O2)が決定されるので、境界条件としてCgin,stor,i(例えば、Cgin,O2)が与えられるとき、(30)式からCgout,stor,i(例えば、Cout,O2)が求められる。そして、新たなCw,stor,i(例えば、Cw,O2)が(28)式により求められる。
【0141】
同様に、酸素吸蔵密度Ostが求められれば、(38)式から消費速度定数R*reduc,i(例えば、R*reduc,CO)を求めることができる。一方、見かけの拡散速度RD,i(例えば、RD,CO)は(8)式のようにSgeo・hD,iであるから、温度と流量の関数(触媒の温度と同触媒を通過する排ガスの流量の関数)として実験的に求めておくことができる。この結果、(33)式からSPreduc,i(例えば、SPreduc,CO)が決定されるので、境界条件としてCgin,reduc,i(例えば、Cgin,CO)が与えられるとき、(34)式からCgout,reduc,i(例えば、Cgout,CO)が求められる。そして、新たなCw,reduc,i(例えば、Cw,CO)が(32)式により求められる。
【0142】
次に、Cgout,stor,i、Cgout,reduc,iを求めるために必要となる酸素吸蔵密度Ostの求め方について説明する。
【0143】
先ず、コート層での化学種としての酸素の収支について着目すると、同収支はコート層での酸素の吸蔵分と酸素の放出分の差であるから、下記(39)式により記述される。(39)式でdA・Lは特定領域の体積dVである。
【0144】
【数39】
【0145】
この(39)式を変形すると、下記(40)式が得られる。
【0146】
【数40】
【0147】
この(40)式を、(35)式と(37)式とを用いながら離散化すると、下記の(41)式が得られる。
【0148】
【数41】
【0149】
この(41)式を変形すると、下記(42)式〜(44)式が得られ、これらから酸素吸蔵密度Ostを求めること(更新して行くこと)ができる。
【0150】
【数42】
【0151】
【数43】
【0152】
【数44】
【0153】
このように、式(42)〜(44)式から酸素吸蔵密度Ostが求められるので、上述したようにCgout,stor,i、Cgout,reduc,iを求めることができる。以上のようにして、各ブロックから流出する排ガス中の酸素濃度を求める手段がガス空燃比関連値取得手段に相当する。また、酸素吸蔵密度Ostが求められるから、下記(45)式に基づいて特定領域の酸素吸蔵量OSAを求めることができる。
【数45】
【0154】
従って、触媒に流入する化学種濃度Cgin,iが境界条件として与えられたとき、触媒上流のブロック(特定領域)から、順次、(30)式又は(34)式を用いて各ブロックから流出する化学種濃度Cgout,iを求めることができるとともに(45)式を用いて各ブロックの酸素吸蔵量OSAを求めることができる。また、各ブロックの酸素吸蔵量OSAを触媒全体について積算すれば、同触媒全体の酸素吸蔵量についても精度良く推定することができる。また、以上が、本第1実施形態の排気浄化装置が使用する触媒モデルである。このように触媒モデルを利用して第1触媒53から流出する特定成分の量に関する値である排ガス中の酸素濃度CgoutSC,O2<r>を求める手段が特定成分量取得手段に相当する。
【0155】
(サブフィードバック制御量の計算)
先に説明したように、本第1実施形態の排気浄化装置は、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを目標値voxsrefから減じた値である偏差Dvoxsに基づいて、機関10に供給される混合気の空燃比(従って、第1触媒53に流入するガスの空燃比)をフィードバック制御するためのサブフィードバック制御量vafsfbを求める。
【0156】
一方、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第1の問題」を解消するため、即ち、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態にあるときに第1触媒53に流入する排ガスの空燃比が不必要に大きく補正されなくするため、第1触媒53からエミッションが殆ど流出していないとき(従って、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態にある可能性があるとき)、前記偏差Dvoxsの絶対値が大きい値となっていてもサブフィードバック制御量vafsfb(の絶対値)が小さく計算される必要がある。
【0157】
また、第1触媒53からエミッションが或る程度流出している場合(即ち、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態にない場合)、サブフィードバック制御量vafsfb(の絶対値)は、第1触媒53から流出するエミッションの(絶対)量の増加に応じて線形的に増加するように設定されることが好適であると考えられる。この第1触媒53から流出するエミッションの(絶対)量は同第1触媒53から流出する排ガスの空燃比の理論空燃比からの偏移量の増加に応じて増加する。しかしながら、先に説明した図33に示すグラフから容易に理解できるように、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを同出力の目標値voxsrefから減じた値である前記偏差Dvoxsに基づいて計算されるフィードバック制御量(の絶対値)は前記エミッションの(絶対)量の増加に応じて線形的に増加する値とはなり得ない。従って、第1触媒53からエミッションが或る程度流出している場合、前記サブフィードバック制御量vafsfbは、前記偏差Dvoxsの値そのものではなく、同偏差Dvoxsの値に前記エミッションの(絶対)量の増加に応じて重み付けした値に基づいて計算されることが好適である。
【0158】
他方、上述の触媒モデルを使用して計算される第1触媒53から流出する排ガス中の前記酸素濃度CgoutSC,O2<r>は、正の値であるときは酸素が過剰であって第1触媒53から同酸素濃度CgoutSC,O2<r>の増加に応じて増加する量のNOxが流出している状態であることを意味し、負の値であるときは酸素が不足して第1触媒53から同酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて増加する量の未燃CO,HCが流出している状態であることを意味する。換言すれば、前記酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値は、第1触媒53から流出するエミッションの(絶対)量を精度良く表す値となり得る。
【0159】
そこで、本第1実施形態の排気浄化装置は、前記酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値と、同酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値と重み係数Kwcgとの関係を規定する図8に示したテーブルと、に基づいて同重み係数Kwcgを算出するとともに、前記偏差Dvoxsに同重み係数Kwcgを乗じた値Dvoxswを求め、この値Dvoxswを比例・積分・微分処理(PID処理)することでサブフィードバック制御量vafsfbを求める。なお、図8における値Crefは前記「所定の微小量」に対応する値である。
【0160】
図8に示したように、重み係数Kwcgは、酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値が値Cref以下であるとき、重み係数Kwcgが「1」以下の値に設定されるから、値Dvoxsw(の絶対値)は前記偏差Dvoxs(の絶対値)よりも小さい値となる。換言すれば、前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量以下であることを示す値であるとき、前記偏差Dvoxsの代わりに同偏差Dvoxsの絶対値より小さい絶対値となる所定の値Dvoxswに基づいてサブフィードバック制御量vafsfbが算出される。従って、このとき、サブフィードバック制御量vafsfb(の絶対値)も小さく計算されるから、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態にあるときに第1触媒53に流入する排ガスの空燃比が不必要に大きく補正されなくなり、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第1の問題」が解消される。
【0161】
また、図8に示したように、重み係数Kwcgは、酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値が値Crefより大きい値であるとき、重み係数Kwcgが「1」以上であって、且つ、酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて増加する値に設定されるから、値Dvoxsw(の絶対値)は前記偏差Dvoxs(の絶対値)に酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて重み付けした値となる。換言すれば、前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量を超えることを示す値であるとき、前記偏差Dvoxsの代わりに同酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値に応じて同偏差Dvoxsに重み付けした値Dvoxswに基づいてサブフィードバック制御量vafsfbが算出される。従って、このとき、フィードバック制御量vafsfb(の絶対値)が酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて線形的に増加する値に近づくように設定され得る。以上のようにしてサブフィードバック制御量vafsfbを求める手段がフィードバック制御量算出手段に相当する。
【0162】
そして、本第1実施形態の排気浄化装置は、このようにして求めたサブフィードバック制御量vafsfbが正の値であるとき、同サブフィードバック制御量vafsfb分だけ最上流空燃比センサ66の出力vabyfsを補正し、これにより、機関に供給される混合気の空燃比が、同最上流空燃比センサ66の検出空燃比よりも見かけ上リーン側であるように設定し、その補正した見かけ上の空燃比が目標空燃比(ここでは、理論空燃比)となるように同混合気の空燃比をフィードバック制御する(従って、リッチ側に補正する。)。
【0163】
同様に、サブフィードバック制御量vafsfbが負の値であるとき、同サブフィードバック制御量vafsfb分だけ最上流空燃比センサ66の出力vabyfsを補正し、これにより、機関に供給される混合気の空燃比が、同最上流空燃比センサ66の検出空燃比よりも見かけ上リッチ側であるように設定し、その補正した見かけ上の空燃比が目標空燃比(ここでは、理論空燃比)となるように同混合気の空燃比をフィードバック制御する(従って、リーン側に補正する。)。以上により、サブフィードバック制御量vafsfbが「0」になるように(従って、前記偏差Dvoxs(及び、前記値Dvoxsw)が「0」になるように)第1触媒53に流入する排ガスの空燃比がフィードバック制御されることで、第1触媒53下流の排ガスの空燃比が前記目標値voxsrefに相当する目標空燃比(理論空燃比)と一致せしめられる。このようにして第1触媒53に流入するガスの空燃比を制御する手段が空燃比制御手段に相当する。
【0164】
図9は、図34に示した前述した従来の排気浄化装置を適用した場合の各値の変化を表すタイムチャートをそのまま破線で示すとともに、同一の条件にて本第1実施形態の排気浄化装置を適用した場合の同各値の変化を実線で示すことで、従来の排気浄化装置を適用した場合と本第1実施形態の排気浄化装置を適用した場合とを比較しながら示したタイムチャートである。図34における従来の排気浄化装置と同様、説明の便宜上、図9において、本第1実施形態の排気浄化装置は前記偏差DVoxsを重み付けした値DVoxswに対する比例処理(P処理)のみによりサブフィードバック制御量vafsfbを算出しているものとする。
【0165】
先に説明したように、従来の装置を適用した場合、時刻t2以降、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態になると、(b)に示すように、偏差Dvoxsが絶対値が大きい負の値に維持されることで機関に供給される混合気の空燃比abyfsがリーン側に不必要に大きく補正され続ける。この結果、その後の同混合気の空燃比が振動的になっていた。
【0166】
これに対し、本第1実施形態の排気浄化装置を適用した場合、時刻t2以降、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態になると、(e)及び(f)に示すように、第1触媒53からエミッションが殆ど流出してこないことから酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値が前記Crefよりも小さい略「0」になって(従って、一酸化炭素濃度CgoutSC,CO<r>、一酸化窒素濃度CgoutSC,NO<r>も略「0」になって)、図8に示した前記重み係数Kwcgが「1」よりも非常に小さい値に設定される。従って、偏差Dvoxsに重み係数Kwcgを乗じた値である値Dvoxswは、(b)に示すように、絶対値が非常に小さい負の値に維持される。
【0167】
この結果、サブフィードバック制御量vafsfbは絶対値が小さい負の値となって、(c)に示すように、機関に供給される混合気の空燃比abyfsはリーン側に小さく補正され続けるようになる。従って、(d)に示すように、第1触媒53の酸素吸蔵量OSASC(r)は、時刻t2以降、「0」近傍から緩やかに増加するから、時刻t4になっても最大酸素吸蔵量CmaxSCall近傍に到達することはない。この結果、第1触媒53から多量のNOx(及び、多量のCO,HC)が流出してこないから、(a)に示すように、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsは、時刻t4以降、暫らくの間リッチを示す値に維持された後(即ち、第1触媒下流空燃比センサ67が暫らくの間、不定状態に維持された後)、第1触媒下流空燃比センサ67が同不定状態から徐々に開放されることで同出力voxsが目標値voxsrefに徐々に近づくようになる。
【0168】
そして、時刻t8になると、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsは目標値voxsrefに収束するとともに、第1触媒53の酸素吸蔵量OSASC(r)が目標酸素吸蔵量である最大酸素吸蔵量CmaxSCallの半分の量に収束する。このようにして、濃淡電池式の酸素濃度センサである第1触媒下流空燃比センサ67が一旦、不定状態になっても、フィードバック制御量vafsfb(の絶対値)が小さく計算されることから第1触媒53に流入するガスの空燃比が不必要に大きく補正されることが回避されて、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第1の問題」が解決される。
【0169】
(実際の作動)
次に、上記排気浄化装置の第1実施形態の実際の作動について、CPU71が実行するルーチンを示したフローチャートを参照しながら説明する。なお、本排気浄化装置の触媒モデルは、酸素及び一酸化窒素をストレージエージェントとして考慮し、一酸化炭素、炭化水素、及び水素をリダクションエージェントとして考慮している。これに対し、酸素のみでストレージエージェントを代表させてもよいし、一酸化炭素のみでリダクションエージェントを代表させてもよい。
【0170】
CPU71は、各気筒のクランク角が各吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°CA)となる毎に、図10に示したルーチンを繰り返し実行するようになっている。従って、任意の気筒のクランク角度が前記所定クランク角度になると、CPU71はステップ1000から処理を開始してステップ1005に進み、エアフローメータ61により計測された吸入空気流量Gaと、エンジン回転速度NEと、に基いて、機関に供給される混合気の空燃比を目標空燃比abyfr(本例では理論空燃比)とするための基本燃料噴射量Fbaseをマップから求める。
【0171】
次いで、CPU71はステップ1010に進み、基本燃料噴射量Fbaseに係数Kを乗じた値に後述する空燃比フィードバック補正量(メインフィードバック制御量)DFiを加えた値を最終燃料噴射量Fiとして設定する。この係数Kの値は、通常は「1.00」であり、後述するように、第1触媒53最大酸素吸蔵量CmaxSCallを求めるために強制的に空燃比を変更するとき、「1.00」以外の所定値に設定される。
【0172】
ついで、CPU71はステップ1015に進み、最終燃料噴射量Fiの燃料を噴射するための指示をインジェクタ39に対して行う。その後、CPU71はステップ1020に進み、その時点の燃料噴射量合計量mfrに最終燃料噴射量Fiを加えた値を新たな燃料噴射量積算値mfrに設定する。この燃料噴射量積算値mfrは、後述する酸素吸蔵量を算出する際に用いられる。その後、CPU71はステップ1095に進み、本ルーチンを一旦終了する。以上により、フィードバック補正された最終燃料噴射量Fiの燃料が吸気行程を迎える気筒に対して噴射される。
【0173】
次に、上記メインフィードバック制御量DFiの算出について説明すると、CPU71は図11にフローチャートにより示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1100から処理を開始し、ステップ1105に進んで空燃比フィードバック制御条件(メインフィードバック条件)が成立しているか否かを判定する。この空燃比フィードバック制御条件は、例えば、機関の冷却水温THWが第1所定温度以上であり、機関の一回転当りの吸入空気量(負荷、筒内吸入空気量Mc)が所定値以下であり、最上流空燃比センサ66が正常(活性状態であることを含む。)であり、且つ、後述する最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値が「0」のときに成立する。なお、最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANは、その値が「1」のとき第1触媒53の最大酸素吸蔵量CmaxSCallの算出のために強制的に空燃比を変更する空燃比制御(アクティブ制御)を実行していることを示し、その値が「0」のとき同最大酸素吸蔵量CmaxSCallの算出のための空燃比制御を実行していないことを示す。
【0174】
いま、空燃比フィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続けると、CPU71はステップ1105にて「Yes」と判定してステップ1110に進み、現時点の最上流空燃比センサ66の出力vabyfsと後述するサブフィードバック制御量vafsfbとの和(vabyfs+vafsfb)を図2に示したマップに基づいて変換することにより、現時点における第1触媒53のメインフィードバック制御用空燃比abyfsを求める。このメインフィードバック制御用空燃比abyfsが、最上流空燃比センサ66の出力をサブフィードバック制御量vafsfbにより補正した第1触媒53の上流における上記「見かけ上の空燃比」である。
【0175】
次に、CPU71はステップ1115に進み、現時点からNストローク(N回の吸気行程)前に吸気行程を迎えた気筒の吸入空気量である筒内吸入空気量Mc(k−N)を前記求めたメインフィードバック制御用空燃比abyfsで除することにより、現時点からNストローク前の筒内燃料供給量Fc(k−N)を求める。値Nは、内燃機関の排気量、燃焼室25から最上流空燃比センサ66までの距離等により異なる値である。
【0176】
このように、現時点からNストローク前の筒内燃料供給量Fc(k−N)を求めるために、現時点からNストローク前の筒内吸入空気量Mc(k−N)をメインフィードバック制御用空燃比abyfsで除するのは、燃焼室25内で燃焼された混合気が最上流空燃比センサ66に到達するまでには、Nストロークに相当する時間を要しているからである。なお、筒内吸入空気量Mcは、各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73内に記憶されるようになっている。
【0177】
次いで、CPU71はステップ1120に進み、現時点からNストローク前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を現時点からNストローク前の時点における目標空燃比abyfr(k−N)(この例では、理論空燃比)で除することにより、現時点からNストローク前の目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)を求める。そして、CPU71はステップ1125に進んで目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)から筒内燃料供給量Fc(k−N)を減じた値を筒内燃料供給量偏差DFcとして設定する。つまり、筒内燃料供給量偏差DFcは、Nストローク前の時点で筒内に供給された燃料の過不足分を表す量となる。次に、CPU71はステップ1130に進み、下記数46に基づいてメインフィードバック制御量DFiを求める。
【0178】
【数46】
DFi=(Gp・DFc+Gi・SDFc)・KFB
【0179】
上記数46において、Gpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Giは予め設定された積分ゲイン(積分定数)である。なお、数46の係数KFBはエンジン回転速度NE、及び筒内吸入空気量Mc等により可変とすることが好適であるが、ここでは「1」としている。また、値SDFcは筒内燃料供給量偏差DFcの積分値であり、次のステップ1135にて更新される。即ち、CPU71は、ステップ1135にてその時点における筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcに上記ステップ1125にて求めた筒内燃料供給量偏差DFcを加えて、新たな筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcを求め、ステップ1195にて本ルーチンを一旦終了する。
【0180】
以上により、メインフィードバック制御量DFiが比例積分制御により求められ、このメインフィードバック制御量DFiが前述した図10のステップ1010により燃料噴射量に反映されるので、Nストローク前の燃料供給量の過不足が補償され、内燃機関に供給される混合気の空燃比の平均値が目標空燃比abyfrと略一致せしめられるようにフィードバック制御される。
【0181】
一方、ステップ1105の判定時において、空燃比フィードバック制御条件が不成立であると、CPU71は同ステップ1105にて「No」と判定してステップ1140に進み、メインフィードバック制御量DFiの値を「0」に設定し、その後ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、空燃比フィードバック制御条件が不成立であるとき(最大酸素吸蔵量取得制御実行中を含む)は、メインフィードバック制御量DFiを「0」として空燃比(基本燃料噴射量Fbase)の補正を行わない。
【0182】
次に、上記サブフィードバック制御量vafsfbに基づく空燃比フィードバック制御(サブフィードバック制御)について説明する。このサブフィードバック制御により、サブフィードバック制御量vafsfbが算出される。
【0183】
CPU71は、サブフィードバック制御量vafsfbを求めるための図12に示したルーチンを所定時間の経過毎に実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1200から処理を開始し、ステップ1205に進んでサブフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。サブフィードバック制御条件は、例えば、前述したステップ1105での空燃比フィードバック制御条件に加え、機関の冷却水温THWが前記第1所定温度よりも高い第2所定温度以上のとき、及び第1触媒下流空燃比センサ67が正常である(活性状態であることを含む。)ときに成立する。
【0184】
いま、サブフィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続けると、CPU71はステップ1205にて「Yes」と判定してステップ1210に進み、目標値voxsrefから第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを減じた値である偏差Dvoxsを求める。
【0185】
次いで、CPU71はステップ1215に進み、後述するルーチンにより別途求められている最新の酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値と、前述した図8に示したテーブルと同一のテーブルであるステップ1215内に示したテーブルとに基づいて重み係数Kwcgを決定する。続いて、CPU71はステップ1220に進み、前記偏差Dvoxsに前記重み係数Kwcgを乗じることで前記偏差に重み付けした値Dvoxswを求める。
【0186】
次に、CPU71はステップ1225に進んで、下記数47に基づいて値Dvoxswの微分値である偏差微分値DDvoxswを求める。
【0187】
【数47】
DDvoxsw=(Dvoxsw−Dvoxsw1)/Δt
【0188】
上記数47において、ΔtはCPU71の演算周期であり、Dvoxsw1は前記偏差に重み付けした値Dvoxswの前回値であって前回の本ルーチン実行時における後述するステップ1240にて更新されている最新の値である。次いで、CPU71はステップ1230に進んで、下記数48に基づいてサブフィードバック制御量vafsfbを求める。
【0189】
【数48】
vafsfb=Kp・Dvoxsw+Ki・SDvoxsw+Kd・DDvoxsw
【0190】
上記数48において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)、Kdは予め設定された微分ゲイン(微分定数)である。また、SDvoxswはの値Dvoxswの積分値である偏差積分値であり、次のステップ1235にて更新される。即ち、CPU71は、ステップ1235にてその時点における偏差積分値SDvoxswに上記ステップ1220にて求めた値Dvoxswを加えて、新たな偏差積分値SDvoxswを求める。そして、CPU71はステップ1240にて、前記ステップ1220にて求めた値Dvoxswの今回値を前回値Dvoxsw1に格納した後、ステップ1295にて本ルーチンを一旦終了する。以上のようにして、サブフィードバック制御量vafsfbが求められる。
【0191】
一方、サブフィードバック制御条件が不成立であるとき、CPU71はステップ1205にて「No」と判定してステップ1245に進み、同ステップ1245にてサブフィードバック制御量vafsfbを「0」に設定する。これにより、サブフィードバック制御量vafsfbに基づくサブフィードバック制御が停止される。
【0192】
次に、最大酸素吸蔵量算出のために強制的に空燃比を変更する最大酸素吸蔵量取得制御について説明する。CPU71は図13〜図15のフローチャートにより示された各ルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。
【0193】
従って、所定のタイミングになると、CPU71は図13のステップ1300から処理を開始し、ステップ1305に進んで最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値が「0」であるか否かを判定する。いま、最大酸素吸蔵量算出のための最大酸素吸蔵量取得制御を行っておらず、且つ、最大酸素吸蔵量取得制御開始条件が成立していないとして説明を続けると、最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値は「0」となっている。従って、CPU71はステップ1305にて「Yes」と判定してステップ1310に進み、先に説明した図10のステップ1010にて使用される係数Kの値を1.00に設定する。
【0194】
次いで、CPU71はステップ1315にて最大酸素吸蔵量取得制御の開始条件が成立しているか否かを判定する。この最大酸素吸蔵量取得制御の開始条件は、冷却水温THWが所定温度以上であり、図示しない車速センサにより得られた車速が所定の高車速以上であり、スロットル弁開度TAの単位時間あたりの変化量が所定量以下である等の機関が定常運転されている条件が成立し、第1触媒下流空燃比センサ出力voxsが理論空燃比よりもリッチな空燃比に相当する出力を発生し、且つ、前回の最大酸素吸蔵量取得制御実行時点から所定時間が経過している場合等に成立する。現段階では、上述したように、最大酸素吸蔵量取得制御の開始条件は成立していないから、CPU71はステップ1315にて「No」と判定してステップ1395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0195】
次に、現時点では最大酸素吸蔵量取得制御を行っていないが、最大酸素吸蔵量取得制御の開始条件が成立したものとして説明を続けると、この場合、CPU71はステップ1305にて「Yes」と判定してステップ1310に進み、同ステップ1310にて係数Kの値を1.00に設定する。次いで、CPU71は、開始条件が成立しているので、ステップ1315にて「Yes」と判定してステップ1320に進み、同ステップ1320にて最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値を「1」に設定する。
【0196】
そして、CPU71はステップ1325に進み、第1モードに移行するためにModeの値を「1」に設定するとともに、続くステップ1330にて係数Kの値を0.98に設定し、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、前述の空燃比フィードバック制御条件が成立しなくなるから、CPU71は図11のステップ1105にて「No」と判定してステップ1140に進むようになり、空燃比フィードバック補正量DFiの値は「0」に設定される。この結果、図10のステップ1010の実行により、基本燃料噴射量Fbaseが0.98倍された値が最終燃料噴射量Fiとして算出され、この最終燃料噴射量Fiの燃料が噴射されるので、機関に供給される混合気の空燃比(従って、第1触媒53に流入するガスの空燃比)は理論空燃比よりもリーンな所定のリーン空燃比に制御される。
【0197】
以降、CPU71は図13のルーチンの処理をステップ1300から繰り返し実行するが、最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値が「1」となっていることから、ステップ1305にて「No」と判定して直ちにステップ1395に進み、本ルーチンを一旦終了するようになる。
【0198】
一方、CPU71は図14に示した第1モード制御ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングとなると、CPU71はステップ1400から処理を開始してステップ1405に進み、同ステップ1405にてModeの値が「1」であるか否かを判定する。このとき、Modeの値が「1」でなければ、CPU71は直ちにステップ1495に進んで本ルーチンを一旦終了する。以下、先の図13のステップ1325の処理によりModeの値が「1」に変更された直後であるとして説明を続けると、この場合、CPU71はステップ1405にて「Yes」と判定してステップ1410に進み、第1触媒下流空燃比センサ出力voxsが理論空燃比よりもリーンな空燃比に相当する出力(酸素が過剰に存在する場合の出力)となったか否かを判定する。
【0199】
現時点では、機関に供給される混合気の空燃比を所定のリーン空燃比に変更した直後であるから、第1触媒下流空燃比センサ出力voxsが理論空燃比よりもリーンな空燃比に相当する出力とはなっていないので、CPU71はステップ1410にて「No」と判定し、ステップ1495にて本ルーチンを一旦終了する。
【0200】
以降、CPU71は図14のステップ1400〜1410を繰り返し実行する。また、空燃比は所定のリーン空燃比に維持されているから、時間経過に伴って第1触媒53の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量に到達する。従って、これに応じて第1触媒下流空燃比センサ出力voxsが理論空燃比よりもリーンな空燃比に相当する出力に変化する。これにより、CPU71はステップ1410に進んだとき、同ステップ1410にて「Yes」と判定してステップ1415に進み、同ステップ1415にてModeの値を「2」に設定するとともに、続くステップ1420にて係数Kの値を1.02に設定し、その後ステップ1495にて本ルーチンを一旦終了する。この結果、機関に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりリッチな所定のリッチ空燃比に制御される。
【0201】
また、CPU71は図15にフローチャートにより示した第2モード制御ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、CPU71は、所定のタイミングになると、ステップ1500から処理を開始し、ステップ1505にてModeの値が「2」であるか否かを判定し、Modeの値が「2」でなければステップ1505からステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了するように作動している。
【0202】
一方、先のステップ1415の処理によりModeの値が「2」に変更されると、CPU71はステップ1505に進んだとき「Yes」と判定してステップ1510に進み、同ステップ1510にて第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsが理論空燃比よりリーンな空燃比を示す値から同理論空燃比よりリッチな空燃比を示す値に変化したか否かを判定する。この時点では、空燃比が前記所定のリッチ空燃比に変更された直後であるから、CPU71はステップ1510にて「No」と判定し、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0203】
これ以降、機関に供給される混合気の空燃比は前記所定のリッチ空燃比に維持されるから、第1触媒53に貯蔵されている酸素が消費されて行き、所定の時間が経過すると同第1触媒53の酸素吸蔵量が「0」に至る。この結果、第1触媒53から未燃HC,COが流出し始めるので、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsが理論空燃比よりリーンな空燃比を示す値から同理論空燃比よりリッチな空燃比を示す値に変化する。これにより、CPU71は、ステップ1510に進んだとき同ステップ1510にて「Yes」と判定してステップ1515に進み、同ステップ1515にてModeの値を「0」に再設定し、続くステップ1520にて最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値を「0」に設定し、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0204】
この状態となると、CPU71は図13のルーチンを実行する際、ステップ1305にて「Yes」と判定してステップ1310に進むので、係数Kの値が1.00に戻される。また、空燃比フィードバック制御条件が成立していれば、CPU71は図11のルーチンのステップ1105及び図12のステップ1205にて「Yes」と判定するから、空燃比フィードバック制御(メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御)が再開される。
【0205】
以上、説明したように、最大酸素吸蔵量取得制御の開始条件が成立すると、機関に供給される混合気の空燃比が所定のリーン空燃比、所定のリッチ空燃比の順に1回づつ強制的に制御される。
【0206】
次に、最大酸素吸蔵量取得のための酸素吸蔵量の算出における作動について説明する。CPU71は図16のフローチャートにより示されたルーチンを所定時間(演算周期tsample)の経過毎に実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1600から処理を開始し、ステップ1605に進んで下記数49により酸素吸蔵量変化量ΔO2を求める。
【0207】
【数49】
ΔO2=0.23・mfr・(stoich − abyfsave)
【0208】
上記数49において、値「0.23」は大気中に含まれる酸素の重量割合である。mfrは所定時間tsample内の燃料噴射量Fiの合計量であり、stoichは理論空燃比(例えば、14.7)である。abyfsaveは所定時間tsampleにおいて最上流空燃比センサ66により検出された空燃比A/Fの平均値である。この数49に示したように、所定時間tsample内の噴射量の合計量mfrに、検出された空燃比A/Fの平均値の理論空燃比からの偏移(stoich − abyfsave)を乗じることで、同所定時間tsampleにおける空気の消費量(不足量)が求められる。この空気の消費量に酸素の重量割合を乗じることで同所定時間tsampleにおける酸素の消費量(酸素吸蔵量変化量ΔO2)が求められる。
【0209】
次いで、CPU71はステップ1610に進んでModeの値が「2」であるか否か(第2モードであるか否か)を判定し、Modeの値が「2」であれば同ステップ1610にて「Yes」と判定してステップ1615に進み、その時点の酸素吸蔵量OSA1に上記酸素吸蔵量変化量ΔO2を加えた値を新たな酸素吸蔵量OSA1として設定し、その後ステップ1620に進む。
【0210】
このような処置(ステップ1600〜1615)は、Modeの値が「2」である限り繰り返し実行される。この結果、第1触媒53の上流の空燃比が所定のリッチ空燃比とされる第2モード(Mode=2)において、第1触媒53の酸素吸蔵量OSA1が算出されて行く。第2モードにおいては、第1触媒53に貯蔵されている酸素が消費されて行くからである。なお、ステップ1610での判定において「No」と判定される場合、CPU71は同ステップ1610からステップ1620に直接進む。そして、CPU71は、ステップ1620に進むと、燃料噴射量Fiの合計量mfrを「0」に設定し、その後ステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0211】
次に、第1触媒53最大酸素吸蔵量CmaxSCall、及び第1触媒53の各ブロックの最大酸素吸蔵量CmaxSC<n>を算出する際の作動について説明する。CPU71は図17のフローチャートにより示されたルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。
【0212】
従って、所定のタイミングになると、CPU71は図17のステップ1700から処理を開始し、ステップ1705に進んで最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値が「1」から「0」に変化したか否かをモニタする。このとき、最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値が変化していなければ、CPU71はステップ1705からステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0213】
一方、前述した第2モードが終了した直後であるとすると、図15のステップ1520にて最大酸素吸蔵量取得制御実行中フラグXHANの値が「1」から「0」に変更されるから、CPU71はステップ1705にて「Yes」と判定してステップ1710に進み、その時点の酸素吸蔵量OSA1を、第1触媒53全体の最大酸素吸蔵量CmaxSCallとして格納する。
【0214】
次いでCPU71はステップ1715に進み、カウンタ値nの値を「0」に設定した後、ステップ1720に進んで第1触媒53のブロック毎の最大酸素吸蔵量を算出する処理を開始する。まず、CPU71はステップ1720においてカウンタ値nの値を「1」だけ増大して「1」に設定した後、ステップ1725に進んで上記ステップ1710にて取得した第1触媒53全体の最大酸素吸蔵量CmaxSCallの値と、カウンタ値nの値と、ステップ1725内に記載した式とに基いて第1触媒53のブロックnにおける最大酸素吸蔵量CmaxSC<n>を算出する。この時点ではカウンタ値nの値は「1」であるから、第1触媒53のブロック1における最大酸素吸蔵量CmaxSC(1)が算出される。
【0215】
ここで、ステップ1725内に記載した式について図18を用いて簡単に説明する。図18は、第1触媒53のブロック毎の最大酸素吸蔵量CmaxSC<n> (n=1,・・・,r)を求める考え方を示した最大酸素吸蔵量分布マップであり、斜線で示された部分の面積は第1触媒53全体の最大酸素吸蔵量CmaxSCallの値に対応している。
【0216】
このように、第1触媒53のブロック毎の各最大酸素吸蔵量CmaxSC<n>は、同各最大酸素吸蔵量CmaxSC<n>の総和が第1触媒53全体の最大酸素吸蔵量CmaxSCallの値となるように設定されるとともに、上流側のブロック1から下流側のブロックrに推移するに従い、所定の勾配をもって線形的に増加するように設定される。これは、第1触媒53の上流側部分の方が下流側部分に比して、内部に流入する排ガス中の鉛や硫黄等により被毒し易いので、同上流側部分の最大酸素吸蔵量が同下流側部分のものに比して低下し易くなるからである。
【0217】
かかる図18に示した最大酸素吸蔵量分布マップに基いて第1触媒53のブロック毎の各最大酸素吸蔵量CmaxSC<n>を求める式がステップ1725内に記載の式である。前記ステップ1725内に記載の式において、値A1は正の定数であって、上記所定の勾配に相当する値である。なお、第1触媒53のブロック毎の各最大酸素吸蔵量は、上流側のブロックから下流側のブロックに推移するに従い増加するように設定されていればよく、例えば、非線形的に増加するように設定されていてもよい。
【0218】
再び、図17を参照すると、CPU71はステップ1725からステップ1730に進んでカウンタ値nの値が第1触媒53のブロック数rと等しいか否かを判定する。現時点ではカウンタ値nの値は「1」であるから、CPU71はステップ1730にて「No」と判定し、再びステップ1720に戻ってカウンタ値nの値を「1」だけ増大した後ステップ1725及びステップ1730の処理を実行する。即ち、ステップ1720及びステップ1725の処理は、カウンタ値nの値が第1触媒53のブロック数rと等しくなるまで繰り返し実行される。これにより、第1触媒53の最上流のブロック1から最下流のブロックrまでの各ブロックnの最大酸素吸蔵量CmaxSC<n>の値が順次算出されていく。
【0219】
前述のステップ1720の処理が繰り返されることによりカウンタ値nの値が第1触媒53のブロック数rと等しくなると、CPU71はステップ1730にて「Yes」と判定してステップ1735に進み、酸素吸蔵量OSA1の値を「0」に設定した後、ステップ1795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0220】
次に、触媒モデルにより第1触媒53の各特定成分のCgoutSCを算出するためのルーチンについて説明する。このルーチンは図19〜図24の一連のフローチャートにより示されていて、CPU71はこれらのルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行することで第1触媒53の各ブロックj(j=1,・・・,r)から流出する酸素濃度CgoutSC,O2<j>、一酸化窒素濃度CgoutSC,NO<j>、一酸化炭素濃度CgoutSC,CO<j>、炭化水素濃度CgoutSC,HC<j>、及び水素濃度CgoutSC,H2<j>を逐次算出する。
【0221】
従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1900から処理を開始し、ステップ1905に進んで第1触媒53用の酸素吸蔵速度係数kstorSC,O2(k)<j>及びkstorSC,NO(k)<j>と、酸素放出速度係数krelSC,CO(k)<j>,krelSC,HC(k)<j>,及びkrelSC,H2(k)<j>とを、第1触媒53の温度TempSCと同第1触媒53の劣化程度を表す劣化指標値REKKASCと図25に示したようなマップ(ルックアップテーブル)とから決定する。なお、例えば、kstorSC,O2(k)<j>のように、SCが付与されている値は第1触媒用の値であることを意味し、<j>が付与されている値はブロックj(j番目のブロック)に対する値であることを意味する(以下、同じ。)。
【0222】
上記触媒温度TempSCは、機関10の運転状態(例えば、吸入空気流量Gaとエンジン回転速度NE)に応じて推定される。上記第1触媒53の劣化指標値REKKASCは、前述の第1触媒53の最大酸素吸蔵量CmaxSCallに応じてそれぞれ求められる。例えば、劣化指標値REKKASCは最大酸素吸蔵量CmaxSCallが減少するほど増大する値として求められる。
【0223】
次に、CPU71はステップ1910に進んで変数jの値を「0」に設定する。この変数jは、以下において何番目のブロックについての演算を行うのかを決定する変数である。次いで、CPU71は、ステップ1915にて変数jの値を「1」だけ増大するとともに、ステップ1920にて変数jの値がr+1と等しくなったか否か、即ち、第1触媒53の総べてのブロックについて各特定成分の算出が終了したか否かを判定する。
【0224】
現段階での変数jの値は「1」であるから、CPU71はステップ1920にて「No」と判定してステップ1925に進み、前回の本ルーチンの演算時において後述するステップ1960にて算出された第1触媒53のj番目のブロック(ブロックj)のコート層の酸素濃度CwSC,O2(k+1)<j>を今回のコート層の酸素濃度CwSC,O2(k)<j>に設定し、続くステップ1930にて前回の本ルーチンの演算時において後述する図24のステップ2415にて算出された酸素吸蔵密度OstSC(k+1)<j>を今回の酸素吸蔵密度Ostの値OstSC(k)<j>に設定する。なお、今回の演算が機関10の始動後初めてである場合、上記各値には適当な初期値が与えられる。
【0225】
次いで、CPU71は、ステップ1935にて同ステップ1935内に記載した式(上記(36)式を参照。)に従って酸素の消費速度定数R*storSC,O2(k)<j>を求める。ステップ1935にて用いる最大酸素吸蔵密度OstSCmax<j>は、一定値としてもよいが、前記劣化指標値REKKASC(又は、最大酸素吸蔵量CmaxSCall)に応じて決定されることが望ましい(以下、同じ。)。その後、CPU71はステップ1940にて見かけの拡散速度RDSC,O2(k)<j>を触媒温度TempSCとマップMapRDSCO2とから決定する。
【0226】
続いて、CPU71はステップ1945にて酸素の反応律速因子SPstorSC,O2<j>を同ステップ1945内に記載した式(上記(29)式を参照。)により求め、ステップ1950にて第1触媒53のブロックjよりも前の(即ち、上流の)ブロックj−1から流出する酸素濃度CgoutSC,O2(k)<j−1>を同ブロックjに流入する酸素濃度CginSC,O2(k)<j>として取り込む。
【0227】
この段階でjの値は「1」であるから、ブロックjは第1触媒53の最も上流のブロックであって、それより前の(上流の)ブロックj−1は存在しない。従って、ステップ1950における前のブロックのCgoutSC,O2(k)<j−1>は、同第1触媒53に流入する排ガスの酸素濃度CginSC,O2である。この第1触媒53に流入する排ガスの酸素濃度CginSC,O2(=Cgin,O2)は、同第1触媒53に流入する排ガスの空燃比と同排ガスの流量とに基づく関数fO2により求められる。下記の(50)式の右辺は、この関数fO2の具体例である。(50)式で用いられる排ガスの空燃比AFは、エアフローメータ61が計測する単位時間あたりの吸入空気質量Gaを最終燃料噴射量Fiとエンジン回転速度NEとに基づいて求められる単位時間あたりの供給燃料質量Gfで除することにより求められる。なお、この排ガスの空燃比AFは、最上流空燃比センサ66の出力vabyfsと図2に示したマップとから求めても良い。
【0228】
【数50】
【0229】
上記(50)式の導出過程を簡単に述べると、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比AFはGa/Gfであり、Gfに対して理論空燃比を得るために必要な空気質量をGastoichとすると、理論空燃比AFstoichはGastoich/Gfとなる。一方、供給燃料質量がGfであるときに空燃比がAFとなったとき、理論空燃比AFstoichを得るために必要な空気質量に対する過剰な空気質量はGa−Gastoichであるから、酸素の質量をMassO2とおくと、下記(51)式が得られ、この(51)式から上記(50)式が得られる。
【0230】
【数51】
【0231】
次に、CPU71はステップ1955に進み、同ステップ1955に記述した式(上記(30)式を参照。)に従ってCgoutSC,O2(k+1)<j>を求める。vgの値はエアフローメータ61が検出した吸入空気流量AFM(=Ga)とする。このように、ステップ1955では、対象としているブロックjから流出する酸素濃度CgoutSC,O2を新たに算出する。次いで、CPU71はステップ1960に進み、同ステップ1960に記述した式(上記(28)式を参照。)に従ってCwSC,O2(k+1)<j>を求める。即ち、CPU71は、ステップ1960にて対象としている第1触媒53のブロックjのコート層の酸素濃度CwSC,O2を新たに算出し、ステップ1965を経由して図20に示したステップ2000に進む。このように、図19により示したルーチンは、第1触媒53のブロックj(特定領域j)における排ガス相の酸素濃度推定手段、及びコート層の酸素濃度推定手段を構成している。
【0232】
図20に示したルーチンは、一酸化窒素NOについての演算を行うルーチンであり、酸素O2についての演算を行うための先に説明した図19のルーチンと同様なルーチンである。簡単に説明すると、CPU71はステップ2000からステップ2005に進んで、前回の本ルーチンの演算時において後述するステップ2035にて算出された第1触媒53のj番目のブロック(ブロックj)のコート層の一酸化窒素濃度CwSC,NO(k+1)<j>を今回のコート層の一酸化窒素濃度CwSC,NO(k)<j>に設定する。なお、今回の演算が機関10の始動後初めてである場合、上記CwSC,NO(k)<j>には適当な初期値が与えられる。
【0233】
次いで、CPU71は、ステップ2010にて同ステップ2010内に記載した式(上記(36)式を参照。)に従って消費速度定数R*storSC,NO(k)<j>を求める。ここで、酸素吸蔵密度OstSC(k)<j>,及び最大酸素吸蔵密度OstSCmax<j>は、前述のステップ1935にて使用した値をそれぞれ用いる。その後、CPU71はステップ2015にて見かけの拡散速度RDSC,NO(k)<j>を触媒温度TempSCとマップMapRDSCNOとから決定する。
【0234】
続いて、CPU71はステップ2020にて一酸化窒素の反応律速因子SPstorSC,NO<j>を同ステップ2020内に記載した式(上記(29)式を参照。)により求め、ステップ2025にて第1触媒53のブロックjよりも前の(即ち、上流の)ブロックj−1から流出する一酸化窒素濃度CgoutSC,NO(k)<j−1>を同ブロックjに流入する一酸化窒素濃度CginSC,NO(k)<j>として取り込む。
【0235】
この段階でjの値は「1」であるから、対象としているブロックjは第1触媒53の最も上流のブロックであって、それより上流のブロックj−1は存在しない。従って、ステップ2025における前のブロックのCgoutSC,NO(k)<j−1>は、同第1触媒53に流入する排ガスの一酸化窒素濃度CginSC,NOである。この場合、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比A/F(「Ga/Gf」として計算により求められる。)と一酸化窒素濃度CginSC,NOとの関係は図26のグラフに示したようであるから、この関係を予め実験により求めてマップとして記憶しておき、計算により求められる実際の排ガスの空燃比A/Fと同マップとから一酸化窒素濃度CginSC,NOを求める。
【0236】
次に、CPU71はステップ2030に進み、同ステップ2030に記述した式(上記(30)式を参照。)に従ってCgoutSC,NO(k+1)<j>を求める。即ち、対象としているブロックjから流出する一酸化窒素濃度CgoutSC,NOを新たに算出する。次いで、CPU71はステップ2035に進み、同ステップ2035に記述した式(上記(28)式を参照。)に従ってCwSC,NO(k+1)<j>を求める。即ち、CPU71は、ステップ2035にて対象としている第1触媒53のブロックjのコート層の一酸化窒素濃度CwSC,NOを新たに算出し、ステップ2095を経由して図21に示したステップ2100に進む。このように、図20により示したルーチンは、第1触媒53のブロックj(特定領域j)における排ガス相の一酸化窒素濃度推定手段、及びコート層の一酸化窒素濃度推定手段を構成している。
【0237】
図21に示したルーチンは、一酸化炭素COについての演算を行うルーチンである。CPU71はステップ2100からステップ2105に進んで、前回の本ルーチンの演算時において後述するステップ2135にて算出されたコート層の一酸化炭素濃度CwSC,CO(k+1)<j>を今回のコート層の一酸化炭素濃度CwSC,CO<j>(k)に設定する。なお、今回の演算が機関10の始動後初めてである場合、上記CwSC,CO<j>(k)には適当な初期値が与えられる。
【0238】
次に、CPU71は、ステップ2110にて同ステップ2110内に記載した式(上記(38)式を参照。)に従って消費速度定数R*reducSC,CO(k)<j>を求め、その後、ステップ2115にて見かけの拡散速度RDSC,CO(k)<j>を触媒温度TempSCとマップMapRDSCCOとから決定する。
【0239】
続いて、CPU71はステップ2120にて一酸化炭素の反応律速因子SPreducSC,CO<j>を同ステップ2120内に記載した式(上記(33)式を参照。)により求め、ステップ2125にて、第1触媒53のブロックjよりも前の(即ち、上流の)ブロックj−1から流出する一酸化炭素濃度CgoutSC,CO(k)<j−1>を、ブロックjに流入する一酸化炭素濃度CginSC,CO(k)<j>として取り込む。
【0240】
この段階でjの値は「1」であるから、対象としているブロックjは第1触媒53の最も上流のブロックであって、それより上流のブロックj−1は存在しない。従って、ステップ2125における前のブロックのCgoutSC,CO(k)<j−1>は、同第1触媒53に流入する排ガスの一酸化炭素濃度CginSC,COである。この場合、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比A/F(「Ga/Gf」として計算により求められる。)と一酸化炭素濃度CginSC,COとの関係は図27のグラフに示したようであるから、この関係を予め実験により求めてマップとして記憶しておき、計算により求められる実際の排ガスの空燃比A/Fと同マップとから一酸化炭素濃度CginSC,COを求める。
【0241】
次に、CPU71はステップ2130に進み、同ステップ2130に記述した式(上記(34)式を参照。)に従ってCgoutSC,CO(k+1)<j>を求める。即ち、第1触媒53のブロックjから流出する一酸化炭素濃度CgoutSC,COを新たに算出する。次いで、CPU71はステップ2135に進み、同ステップ2135に記述した式(上記(32)式を参照。)に従ってCwSC,CO(k+1)<j>を求める。即ち、CPU71は、ステップ2135にて対象としている第1触媒53のブロックjのコート層の一酸化炭素濃度CwSC,COを新たに算出し、ステップ2195を経由して図22に示したステップ2200に進む。このように、図21により示したルーチンは、第1触媒53のブロックjにおける排ガス相の一酸化炭素濃度推定手段、及びコート層の一酸化炭素濃度推定手段を構成している。
【0242】
図22に示したルーチンは、炭化水素HCについての演算を行うルーチンであり、一酸化炭素COについての演算を行うための先に説明した図21のルーチンと同様なルーチンである。簡単に説明すると、CPU71はステップ2200からステップ2205に進んで、前回の本ルーチンの演算時において後述するステップ2235にて算出されたコート層の炭化水素濃度CwSC,HC(k+1)<j>を今回のコート層の炭化水素濃度Cw,HCの値であるCwSC,HC(k)<j>に設定する。なお、今回の演算が機関10の始動後初めてである場合、上記各値には適当な初期値が与えられる。
【0243】
次に、CPU71は、ステップ2210にて同ステップ2210内に記載した式(上記(38)式を参照。)に従って消費速度定数R*reducSC,HC(k)<j>を求め、その後、ステップ2215にて見かけの拡散速度RDSC,HC(k)<j>を触媒温度TempSCとマップMapRDSCHCとから決定する。
【0244】
続いて、CPU71はステップ2220にて炭化水素の反応律速因子SPreducSC,HC<j>を同ステップ2220内に記載した式(上記(33)式を参照。)により求め、ステップ2225にて、第1触媒53のブロックjよりも前の(即ち、上流の)ブロックj−1から流出する炭化水素濃度CgoutSC,HC(k)<j−1>をブロックjに流入する炭化水素濃度CginSC,HC(k)<j>として取り込む。
【0245】
この段階でjの値は「1」であるから、ブロックjは第1触媒53の最も上流のブロックであって、それより上流のブロックj−1は存在しない。従って、ステップ2225におけるCgout,HC(k)<j−1>は、同第1触媒53に流入する排ガスの炭化水素濃度Cgin,HCである。この場合、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比A/F(「Ga/Gf」として計算により求められる。)と炭化水素濃度Cgin,HCとの関係は図28のグラフに示したようであるから、この関係を予め実験により求めてマップとして記憶しておき、計算により求められる実際の排ガスの空燃比A/Fと同マップとから炭化水素濃度Cgin,HCを求める。
【0246】
次に、CPU71はステップ2230に進み、同ステップ2230に記述した式(上記(34)式を参照。)に従ってCgoutSC,HC(k+1)<j>を求める。即ち、第1触媒53のブロックjから流出する炭化水素濃度CgoutSC,HCを新たに算出する。次いで、CPU71はステップ2235に進み、同ステップ2235に記述した式(上記(32)式を参照。)に従ってCwSC,HC(k+1)<j>を求める。即ち、CPU71は、ステップ2235にて第1触媒53のブロックjのコート層の炭化水素濃度Cw,HCを新たに算出し、ステップ2295を経由して図23に示したステップ2300に進む。このように、図22により示したルーチンは、第1触媒53のブロックj(特定領域j)における排ガス相の炭化水素濃度推定手段、及びコート層の炭化水素濃度推定手段を構成している。
【0247】
図23に示したルーチンは、水素H2についての演算を行うルーチンであり、一酸化炭素COについての演算を行うための先に説明した図21のルーチンと同様なルーチンである。簡単に説明すると、CPU71はステップ2300からステップ2305に進んで、前回の本ルーチンの演算時において後述するステップ2335にて算出されたコート層の水素濃度CwSC,H2(k+1)<j>を今回のコート層の水素濃度Cw,H2の値であるCwSC,H2(k)<j>に設定する。なお、今回の演算が機関10の始動後初めてである場合、上記各値には適当な初期値が与えられる。
【0248】
次に、CPU71は、ステップ2310にて同ステップ2310内に記載した式(上記(38)式を参照。)に従って消費速度定数R*reducSC,H2(k)<j>を求め、その後、ステップ2315にて見かけの拡散速度RDSC,H2(k)<j>を触媒温度TempSCとマップMapRDSCH2とから決定する。
【0249】
続いて、CPU71はステップ2320にて水素の反応律速因子SPreducSC,H2<j>を同ステップ2320内に記載した式(上記(33)式を参照。)により求め、ステップ2325にて、第1触媒53のブロックjよりも前の(即ち、上流の)ブロックj−1から流出する水素濃度CgoutSC,H2(k)<j−1>をブロックjに流入する水素濃度CginSC,H2(k)<j>として取り込む。
【0250】
この段階でjの値は「1」であるから、ブロックjは第1触媒53の最も上流のブロックであって、それより上流のブロックj−1は存在しない。従って、ステップ2225におけるCgout,H2(k)<j−1>は、同第1触媒53に流入する排ガスの水素濃度Cgin,H2である。この場合、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比A/F(「Ga/Gf」として計算により求められる。)と水素濃度Cgin,H2との関係は図29のグラフに示したようであるから、この関係を予め実験により求めてマップとして記憶しておき、計算により求められる実際の排ガスの空燃比A/Fと同マップとから水素濃度Cgin,HCを求める。
【0251】
次に、CPU71はステップ2330に進み、同ステップ2330に記述した式(上記(34)式を参照。)に従ってCgoutSC,H2(k+1)<j>を求める。即ち、第1触媒53のブロックjから流出する水素濃度CgoutSC,H2を新たに算出する。次いで、CPU71はステップ2335に進み、同ステップ2335に記述した式(上記(32)式を参照。)に従ってCwSC,H2(k+1)<j>を求める。即ち、CPU71は、ステップ2335にて第1触媒53のブロックjのコート層の水素濃度Cw,HCを新たに算出し、ステップ2395を経由して図24に示したステップ2400に進む。このように、図23により示したルーチンは、第1触媒53のブロックj(特定領域j)における排ガス相の水素濃度推定手段、及びコート層の水素濃度推定手段を構成している。
【0252】
図24に示したルーチンは、酸素吸蔵密度Ostについての演算を行うルーチンである。CPU71は、ステップ2400からステップ2405に進むと、上記(43)式に基づく同ステップ2405内に記述した式により係数P<j>を求めるとともに、続くステップ2410にて上記(44)式に基づく同ステップ2410に記述した式により係数Q<j>を求める。次いで、CPU71はステップ2415にて上記(42)式に基づく同ステップ2415に記述した式により酸素吸蔵密度OstSC(k+1)<j>を求め、次のステップ2420にて上記(45)式に基づく同ステップ2420に記述した式によりこのブロックjの酸素吸蔵量OstSC(k+1)<j>・dA・Lをブロック1〜ブロックj−1までの酸素吸蔵量OSASC(j−1)に加えることにより、ブロック1〜ブロックjまでの酸素吸蔵量OSASC(j)を求め、ステップ2495を経由して図19のステップ1915に戻る。なお、酸素吸蔵量OSASC(0)の値は「0」に設定してある。このように、図24に示したルーチンは、第1触媒53のブロックjの酸素吸蔵密度算出手段、及び第1触媒53のブロック1〜ブロックjまでの酸素吸蔵量算出手段を構成している。
【0253】
図19のステップ1915に戻ったCPU71は、変数jの値を「1」だけ増大するから、上述と同様にして第1触媒53内の次に下流にあるブロックの各種値が順次演算されて行く。そして、ブロックrの各種値が演算されていく段階で、ステップ1955にて第1触媒53から流出する排ガス中の酸素濃度CgoutSC,O2<r>が算出される。この値が前述の図12のステップ1215にて使用される。
【0254】
ブロックrまでの各種値が演算されると、変数jの値はステップ1915にてr+1と等しくされるので、CPU71はステップ1920にて「Yes」と判定し、ステップ1995に進んで、第1触媒53の各特定成分のCgoutSCを算出するための図19〜図24に示した一連のルーチンを一旦終了する。
【0255】
以上、説明したように、第1実施形態の排気浄化装置は、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを目標値voxsrefから減じた値である偏差Dvoxsに重み係数Kwcgを乗じた値Dvoxswを求め、この値Dvoxswを比例・積分・微分処理(PID処理)することでサブフィードバック制御量vafsfbを求める。この重み係数Kwcgは、触媒モデルを利用して算出される第1触媒53から流出するエミッションの絶対量を精度良く表す値である酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値が値Cref以下であるとき(即ち、同エミッションの絶対量が微量であるとき)、「1」以下の値に設定されるから、値Dvoxsw(の絶対値)は前記偏差Dvoxs(の絶対値)よりも小さい値となってサブフィードバック制御量vafsfb(の絶対値)も小さく計算される。従って、第1触媒53から流出するエミッションの絶対量が微量であるとき、即ち、第1触媒下流空燃比センサ67が前記不定状態にある可能性があるとき、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比が不必要に大きく補正されなくなり、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第1の問題」が解消された。
【0256】
また、重み係数Kwcgは、酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値が値Crefより大きい値であるとき、重み係数Kwcgが「1」以上であって、且つ、酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて増加する値に設定されるから、値Dvoxsw(の絶対値)は前記偏差Dvoxs(の絶対値)に酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて重み付けした値となって、サブフィードバック制御量vafsfb(の絶対値)が酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値の増加に応じて線形的に増加する値に近づくように設定され得る。従って、第1触媒53から或る程度の量以上のエミッションが流出しているとき、第1触媒53に流入する排ガスの空燃比が酸素濃度CgoutSC,O2<r>の絶対値に相当する同エミッションの絶対量に応じて適切に制御(補正)された。
【0257】
本発明は上記第1実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記第1実施形態においては、第1触媒53から流出するガス中の特定成分の量に関する値として酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値)を選択し、同酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値)に基づいて重み係数Kwcgを決定しているが、第1触媒53から流出するガス中のその他の化学種(酸化剤、還元剤)の濃度に基づいて重み係数Kwcgを決定してもよい。この場合、例えば、一酸化窒素濃度CgoutSC,NO<r>、一酸化炭素濃度CgoutSC,CO<r>、炭素水素濃度CgoutSC,HC<r>、及び水素濃度CgoutSC,H2<r>のうちの最大値に基づいて重み係数Kwcgを決定するように構成することが好適である。
【0258】
また、上記第1実施形態においては、図8に示すように、前記特定成分の量に関する値(酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値))が値Cref以下のとき、同酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値)の減少に応じて減少するように重み係数Kwcgを決定しているが、同特定成分の量に関する値(酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値))が値Cref以下のとき、同重み係数Kwcgを、同酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値)に拘わらず所定の微小値(一定値)に決定するように構成してもよい。また、特定成分の量に関する値(酸素濃度CgoutSC,O2<r>(の絶対値))が値Cref以下のとき、値Dvoxswそのものを、偏差Dvoxsに重み係数Kwcgを乗じた値ではなく所定の微小値(一定値)に決定するように構成してもよい。
【0259】
<第2実施形態>
次に、本発明による排気浄化装置の第2実施形態について説明すると、この排気浄化装置は、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第2の問題」を解決するためのものであって、サブフィードバック制御量vafsfbを求める手法においてのみ、上記第1実施形態の排気浄化装置と異なっている。従って、以下、かかる相違点についてのみ説明する。
【0260】
(サブフィードバック制御量の計算)
本第2実施形態の排気浄化装置も、前述の第1実施形態と同様、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsとその目標値voxsrefとに基づいて、機関10に供給される混合気の空燃比(従って、第1触媒53に流入するガスの空燃比)をフィードバック制御するためのサブフィードバック制御量vafsfbを求める。
【0261】
ところで、先に述べたように、濃淡電池式の酸素濃度センサである触媒下流空燃比センサ67(限界電流式の酸素濃度センサである最上流空燃比センサ66も同様である。)の出力voxsに基づいて空燃比フィードバック制御を行うと、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における第2の問題」が発生する。即ち、第1触媒下流空燃比センサ67(の検出部)を通過する排ガスの各ガス成分の濃度の割合が同排ガスが化学平衡状態にあるときの各ガス成分の濃度の割合と異なる場合、同第1触媒下流空燃比センサ67は図33に示す静特性とは異なる静特性を有するようになり、同排ガスの空燃比が理論空燃比となっているときでも、図33における理論空燃比に相当する値voxsrefとは異なる値を出力するようになる。
【0262】
ここで、この第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsは、同第1触媒下流空燃比センサ67を通過する(従って、第1触媒53から流出する)排ガス中の各々の還元剤の濃度(例えば、CgoutSC,H2<r>,CgoutSC,CO<r>,CgoutSC,HC<r>)の増加に応じて大きくなる一方で、同排ガス中の各々の酸化剤(例えば、CgoutSC,O2<r>,CgoutSC,NO<r>)の濃度の増加に応じて小さくなる傾向がある。また、前記排ガス中の成分の濃度の変化量に対する第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsの変化量は同成分毎に異なる。
【0263】
以上のことから、先ず、下記数52により前記排ガス中の酸化剤が第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを小さくする方向に同出力voxsに影響を与える程度を示す酸化剤側影響度指標値OXI、及び、下記数53により同排ガス中の還元剤が第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを大きくする方向に同出力voxsに影響を与える程度を示す還元剤側影響度指標値DEOXIをそれぞれ求めることができる。
【0264】
【数52】
OXI=Ko2・CgoutSC,O2<r> + Kno・CgoutSC,NO<r>
【0265】
【数53】
DEOXI=Kh2・CgoutSC,H2<r> + Kco・CgoutSC,CO<r> + Khc・CgoutSC,HC<r>
【0266】
上記数52において、Ko2は酸素の反応係数、Knoは一酸化窒素の反応係数であって、Ko2 > Kno > 0 なる関係がある。これは、第1触媒下流空燃比センサ67の検出部近傍に存在する酸素が同センサ67の出力voxsに影響を与えるまでに必要な化学反応の段数が同センサ67の検出部近傍に存在する一酸化窒素が同出力voxsに影響を与えるまでに必要な化学反応の段数よりも少ないことから、酸素の方が一酸化窒素よりも同出力voxsに影響を与え易くなることに主に基づく。
【0267】
上記数53において、Kh2は水素の反応係数、Kcoは一酸化炭素の反応係数、Khcは炭化水素の反応係数であって、Kh2 > Kco > Khc > 0 なる関係がある。これは、分子量が小さいものほど前記センサ67の検出部(反応部)の表面に到達しやすいことから、炭化水素、一酸化炭素、水素の順に、前記出力voxsに影響を与え易くなることに主に基づく。
【0268】
このように、酸化剤側影響度指標値OXIは、第1触媒53から流出する排ガス中に含まれる各酸化剤の濃度(酸化剤の量に関する値)に同各酸化剤に対応する反応係数を乗じた値の和として求められ、還元剤側影響度指標値DEOXIは、同排ガス中に含まれる各還元剤の濃度(還元剤の量に関する値)に同各還元剤に対応する反応係数を乗じた値の和として求められる。
【0269】
そして、前記還元剤側影響度指標値DEOXIから前記酸化剤側影響度指標値OXIを減じた値(両者の比較により得られる値)に基づく下記数54により、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsを補正する程度(例えば、大きさと方向)を示す補正指標値OXSbseを求めることができる。下記数54において、関数fcorは、例えば、所定の比例定数(一定値)である。なお、補正指標値OXSbseが「0」になるときが第1触媒下流空燃比センサ67(の検出部)を通過する排ガスが化学平衡状態にあるときに対応している。
【0270】
【数54】
OXSbse=fcor(DEOXI−OXI)
【0271】
ここで、第1触媒53から理論空燃比の排ガスが流出するときの第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsと、上記数54に基づいて得られる補正指標値OXSbseとの関係は図30に示すようになる。図30に示すように、第1触媒53から理論空燃比の排ガスが流出するときの前記出力voxsは、補正指標値OXSbseが正の値のとき0.5(V)(=目標値voxsref)より大きくなり、同補正指標値OXSbseが負の値のとき0.5(V)(=目標値voxsref)よりも小さくなるとともに、補正指標値OXSbseが「0」のとき0.5(V)(=目標値voxsref)に一致する。即ち、補正指標値OXSbseが正の値のとき前記出力voxsを小さめに補正するとともに、補正指標値OXSbseが負の値のとき前記出力voxsを大きめに補正することが好適である。
【0272】
そこで、本第2実施形態の排気浄化装置は、補正指標値OXSbseを利用して前記出力voxsを補正するための補正係数Kcorを求めるため、図30に示す関係を同補正係数Kcorへと規格化することで、図31に示す補正係数Kcorと補正指標値OXSbseとの関係を表すテーブルを求め、同テーブルと同補正指標値OXSbseとに基づいて補正係数Kcorを求める。
【0273】
そして、本第2実施形態の排気浄化装置は、第1触媒下流空燃比センサ67の実際の出力voxsに前記求めた補正係数Kcorを乗じることで同出力を補正した値voxs’を求めるとともに、同補正された値voxs’を前記目標値voxsrefから減じた値である偏差Dvoxsを比例・積分・微分処理(PID処理)することでサブフィードバック制御量vafsfbを求める。このようにして、第1触媒下流空燃比センサ67の実際の出力voxsに前記求めた補正係数Kcorを乗じることで同出力を補正した値voxs’を求める手段が補正手段に相当する。
【0274】
(実際の作動)
次に、上記第2実施形態の排気浄化装置の実際の作動について、CPU71が実行するルーチンを示したフローチャートを参照しながら説明する。本排気浄化装置のCPU71は、図12に代わる図32にフローチャートにより示したルーチンを実行する点を除き、第1実施形態の排気浄化装置のCPU71と同一のルーチンを実行する。以下、上記第2実施形態の排気浄化装置に特有のルーチンである図32のルーチンについてのみ説明する。
【0275】
第2実施形態のCPU71は、サブフィードバック制御量vafsfbを求めるための図32に示したルーチンを所定時間の経過毎に実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ3200から処理を開始し、ステップ3205に進んで、図12のステップ1205と同一のサブフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。
【0276】
いま、サブフィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続けると、CPU71はステップ3205にて「Yes」と判定してステップ3210に進み、図19のステップ1955、図20のステップ2030にてそれぞれ計算されている第1触媒53から流出する排ガス中の酸素濃度CgoutSC,O2<r>、一酸化窒素濃度CgoutSC,NO<r>の各々の最新値と、上記数52とに基づいて酸化剤側影響度指標値OXIを求める。
【0277】
次に、CPU71はステップ3215に進み、図21のステップ2130、図22のステップ2230、図23のステップ2330にてそれぞれ計算されている第1触媒53から流出する排ガス中の一酸化炭素濃度CgoutSC,CO<r>、炭化水素濃度CgoutSC,HC<r>、水素濃度CgoutSC,H2<r>の各々の最新値と、上記数53とに基づいて還元剤側影響度指標値OXIを求める。
【0278】
次いで、CPU71はステップ3220に進み、上記数54に従って補正指標値OXSbseを求め、続くステップ3225にて、前記補正指標値OXSbseと、図31に示すテーブルと同一のテーブルとに基づいて補正係数Kcorを決定する。続いて、CPU71はステップ3230に進んで、第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsに前記補正係数Kcorを乗じることで前記出力を補正した値voxs’を求める。
【0279】
次に、CPU71はステップ3235に進み、目標値voxsrefから前記出力を補正した値voxs’を減じることで偏差Dvoxsを求め、続くステップ3240にて、上記数47と同様のステップ3240内に記載の式に基づいて偏差Dvoxsの微分値である偏差微分値DDvoxsを求める。ここにおいて、Dvoxs1は前記偏差Dvoxsの前回値であって前回の本ルーチン実行時における後述するステップ3255にて更新されている最新の値である。次いで、CPU71はステップ3245に進んで、下記数55に基づいてサブフィードバック制御量vafsfbを求める。
【0280】
【数55】
vafsfb=Kp・Dvoxs+Ki・SDvoxs+Kd・DDvoxs
【0281】
上記数55において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)、Kdは予め設定された微分ゲイン(微分定数)である。また、SDvoxsはの偏差Dvoxsの積分値である偏差積分値であり、次のステップ3250にて更新される。即ち、CPU71は、ステップ3250にてその時点における偏差積分値SDvoxsに上記ステップ3235にて求めた偏差Dvoxsを加えて、新たな偏差積分値SDvoxsを求める。そして、CPU71はステップ3255にて、前記ステップ3235にて求めた偏差Dvoxsの今回値を前回値Dvoxs1に格納した後、ステップ3295にて本ルーチンを一旦終了する。以上のようにして、サブフィードバック制御量vafsfbが求められる。
【0282】
一方、サブフィードバック制御条件が不成立であるとき、CPU71はステップ3205にて「No」と判定してステップ3260に進み、同ステップ3260にてサブフィードバック制御量vafsfbを「0」に設定する。これにより、サブフィードバック制御量vafsfbに基づくサブフィードバック制御が停止される。
【0283】
以上、説明したように、第2実施形態に係る排気浄化装置は、第1触媒53から流出する排ガス中に含まれる各酸化剤の濃度(CgoutSC,O2<r>,CgoutSC,NO<r>)に同各酸化剤に対応する反応係数(Ko2,Kno)を乗じた値の和として酸化剤側影響度指標値OXIを求めるとともに、同排ガス中に含まれる各還元剤の濃度(CgoutSC,H2<r>,CgoutCO,NO<r>, CgoutCO,HC<r>)に同各還元剤に対応する反応係数(Kh2,Kco,Khc)を乗じた値の和として還元剤側影響度指標値DEOXIを求め、還元剤側影響度指標値DEOXIから酸化剤側影響度指標値OXIを減じた値に基づいて第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsが補正されるべき程度を示す補正指標値OXSbseを求める。そして、第2実施形態に係る排気浄化装置は、補正指標値OXSbse(実際には、補正係数Kcor)に基づいて前記出力voxsを補正した値voxs’が目標値voxsrefになるように機関に供給される混合気の空燃比(従って、第1触媒53に流入するガスの空燃比)をフィードバック制御する。
【0284】
従って、簡易な計算により、且つ正確に、第1触媒53から流出する排ガスの実際の空燃比が目標値voxsrefに相当する空燃比(理論空燃比)であるときの前記補正した値voxs’が同排ガス中の各ガス成分の濃度の割合に拘わらず同目標値voxsrefと等しくなるように(に近づくように)計算され得るから、第1触媒53下流の排ガスの空燃比が同目標値voxsrefに相当する空燃比(理論空燃比)近傍に維持され得る。従って、前述した「濃淡電池式の酸素濃度センサの出力に基づいて空燃比制御を行う場合における前述した第2の問題」が解決された。
【0285】
本発明は上記第2実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記第2実施形態においては、還元剤側影響度指標値DEOXIから酸化剤側影響度指標値OXIを減じた値(両者の差)に基づいて第1触媒下流空燃比センサ67の出力voxsが補正されるべき程度を示す補正指標値OXSbseを算出しているが、還元剤側影響度指標値DEOXIを酸化剤側影響度指標値OXIで除した値(両者の比)に基づいて補正指標値OXSbseを算出するように構成してもよい。
【0286】
また、上記第2実施形態においては、第1触媒53から流出する排ガス中に含まれる各成分の(絶対)濃度(CgoutSC,O2<r>等)に同各成分に対応する反応係数(Ko2等)を乗じた値の和として酸化剤側影響度指標値OXI及び還元剤側影響度指標値DEOXIを求めているが、或る所定条件下(排気ガス温度、排気ガス流量等がそれそれ所定の値にあるとき)において第1触媒下流空燃比センサ67(の検出部)を通過する排ガスが化学平衡状態にあるときの同排ガス中に含まれる各成分の濃度と同各成分の前記(絶対)濃度との各偏差に同各成分に対応する反応係数(Ko2等)を乗じた値の和として酸化剤側影響度指標値OXI及び還元剤側影響度指標値DEOXIを求めるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排気浄化装置を搭載した内燃機関の概略図である。
【図2】図1に示した最上流空燃比センサの出力と空燃比との関係を示したグラフである。
【図3】図1に示した第1触媒の外観図である。
【図4】図3に示した第1触媒の部分断面図である。
【図5】触媒モデルを説明するための触媒の模式図である。
【図6】触媒モデルを説明するための模式図である。
【図7】触媒モデルで使用する風上法を説明するための模式図である。
【図8】図1に示したCPUが参照する第1触媒から流出する排ガス中の酸素濃度(の絶対値)と重み係数との関係を規定したテーブルである。
【図9】図1に示した第1触媒下流空燃比センサが不定状態になったとき以降における各物理量の変化を、図1に示した排気浄化装置を適用した場合と従来の排気浄化装置を適用した場合とで比較しながら示したタイムチャートである。
【図10】図1に示したCPUが実行する燃料噴射量計算のためのルーチンを示したフローチャートである。
【図11】図1に示したCPUが実行するメインフィードバック制御量を計算するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図12】図1に示したCPUが実行するサブフィードバック制御量を計算するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図13】図1に示したCPUが実行する最大酸素吸蔵量取得制御を開始するか否かを決定するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図14】図1に示したCPUが実行する第1モードのルーチンを示したフローチャートである。
【図15】図1に示したCPUが実行する第2モードのルーチンを示したフローチャートである。
【図16】図1に示したCPUが実行する酸素吸蔵量を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図17】図1に示したCPUが実行する最大酸素吸蔵量を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図18】第1触媒全体の最大酸素吸蔵量から同第1触媒のブロック毎の最大酸素吸蔵量を求めるためのマップである。
【図19】触媒モデルにしたがって第1触媒内部における酸素濃度を求めるためのルーチンを示したフローチャートである。
【図20】触媒モデルにしたがって第1触媒内部における一酸化窒素濃度を求めるためのルーチンを示したフローチャートである。
【図21】触媒モデルにしたがって第1触媒内部における一酸化炭素濃度を求めるためのルーチンを示したフローチャートである。
【図22】触媒モデルにしたがって第1触媒内部における炭化水素濃度を求めるためのルーチンを示したフローチャートである。
【図23】触媒モデルにしたがって第1触媒内部における水素濃度を求めるためのルーチンを示したフローチャートである。
【図24】触媒モデルにしたがって第1触媒の酸素吸蔵密度と酸素吸蔵量を求めるためのルーチンを示したフローチャートである。
【図25】触媒劣化度と触媒温度とから触媒モデルにて使用する各係数(各乗数)を求めるためのマップである。
【図26】触媒に流入する一酸化窒素濃度を決定するために使用される排ガスの空燃比と同一酸化窒素濃度との関係を規定したマップである。
【図27】触媒に流入する一酸化炭素濃度を決定するために使用される排ガスの空燃比と同一酸化炭素濃度との関係を規定したマップである。
【図28】触媒に流入する炭化水素濃度を決定するために使用される排ガスの空燃比と同炭化水素濃度との関係を規定したマップである。
【図29】触媒に流入する水素濃度を決定するために使用される排ガスの空燃比と同水素濃度との関係を規定したマップである。
【図30】第1触媒から理論空燃比の排ガスが流出するときの第1触媒下流空燃比センサの出力と、補正指標値との関係を示したグラフである。
【図31】第2実施形態に係る排気浄化装置のCPUが参照する補正指標値と補正係数との関係を規定するテーブルである。
【図32】第2実施形態に係る排気浄化装置のCPUが実行するサブフィードバック制御量を計算するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図33】従来の排気浄化装置に適用されるとともに図1に示した排気浄化装置にも適用される第1触媒下流空燃比センサ出力と空燃比との関係を示したグラフである。
【図34】従来の排気浄化装置に適用される図1に示した第1触媒下流空燃比センサが不定状態になったとき以降における各物理量の変化を示したタイムチャートである。
【符号の説明】
10…内燃機関、53…第1触媒、66…最上流空燃比センサ、67…第1触媒下流空燃比センサ、70…電気制御装置、71…CPU
Claims (5)
- 内燃機関の排気通路に配設された触媒と、
前記触媒よりも下流の前記排気通路に配設されるとともに同配設部位における同排気通路内の排ガスの空燃比に応じた値を出力する濃淡電池式の酸素濃度センサと、
前記酸素濃度センサの出力と同出力の所定の目標値との相違の程度を示す値に基づいてフィードバック制御量を算出するフィードバック制御量算出手段と、
前記酸素濃度センサの出力が前記所定の目標値となるように前記フィードバック制御量に基づいて前記触媒に流入するガスの空燃比を制御する空燃比制御手段と、を備えた内燃機関の排気浄化装置であって、
前記触媒から流出する排ガス中の同触媒にて浄化すべき特定成分の量に関する値を取得する特定成分量取得手段を備え、
前記フィードバック制御量算出手段は、前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が所定の微小量以下であることを示す値であるとき、前記酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との相違の程度を示す値の代わりに同値が示す相違の程度より小さい所定の相違の程度を示す値に基づいて前記フィードバック制御量を算出するように構成された内燃機関の排気浄化装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記フィードバック制御量算出手段は、
前記相違の程度を示す値としての前記酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との偏差に基づいて前記フィードバック制御量を算出するとともに、
前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が前記所定の微小量以下であることを示す値であるとき、前記偏差の代わりに同偏差の絶対値より小さい絶対値となる所定の値に基づいて前記フィードバック制御量を算出するように構成された内燃機関の排気浄化装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記フィードバック制御量算出手段は、
前記特定成分の量に関する値が同特定成分の量が前記所定の微小量を超えることを示す値であるとき、同特定成分の量に関する値に応じて前記酸素濃度センサの出力と前記所定の目標値との相違の程度を示す値に重み付けした値を求めるとともに、同相違の程度を示す値の代わりに同重み付けされた値に基づいて前記フィードバック制御量を算出するように構成された内燃機関の排気浄化装置。 - 内燃機関の排気通路に配設された触媒と、
前記触媒よりも下流の前記排気通路に配設されるとともに同配設部位における同排気通路内の排ガスの空燃比に応じた値を出力する酸素濃度センサと、
前記酸素濃度センサの出力に影響を与える前記触媒から流出する排ガス中の特定成分の量に関する値を取得する特定成分量取得手段と、
前記特定成分の量に関する値に基づいて前記酸素濃度センサの出力を補正した値を算出する補正手段と、
前記補正された値が所定の目標値となるように同補正された値に基づいて前記触媒に流入するガスの空燃比を制御する空燃比制御手段と、
を備えた内燃機関の排気浄化装置。 - 請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記特定成分量取得手段は、前記触媒から流出する排ガス中の少なくとも一つの酸化剤の量に関する値と少なくとも一つの還元剤の量に関する値を前記ガス中の特定成分の量に関する値として取得するように構成され、
前記補正手段は、前記少なくとも一つの酸化剤の量に関する値に基づいて前記触媒から流出する排ガス中の酸化剤が前記酸素濃度センサの出力に影響を与える程度を示す酸化剤側影響度指標値と求めるとともに前記少なくとも一つの還元剤の量に関する値に基づいて同排ガス中の還元剤が同酸素濃度センサの出力に影響を与える程度を示す還元剤側影響度指標値と求め、同酸化剤側影響度指標値と同還元剤側影響度指標値との比較により同酸素濃度センサの出力が補正されるべき程度を示す補正指標値を求め、同補正指標値に基づいて同酸素濃度センサの出力を補正した値を算出するように構成された内燃機関の排気浄化装置。
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JP2003063631A JP2004270581A (ja) | 2003-03-10 | 2003-03-10 | 内燃機関の排気浄化装置 |
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Cited By (1)
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CN112780427A (zh) * | 2021-01-20 | 2021-05-11 | 潍柴动力股份有限公司 | 一种发动机系统的控制方法及装置 |
-
2003
- 2003-03-10 JP JP2003063631A patent/JP2004270581A/ja active Pending
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