JP2004265988A - 熱電体およびその製造方法 - Google Patents
熱電体およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004265988A JP2004265988A JP2003052834A JP2003052834A JP2004265988A JP 2004265988 A JP2004265988 A JP 2004265988A JP 2003052834 A JP2003052834 A JP 2003052834A JP 2003052834 A JP2003052834 A JP 2003052834A JP 2004265988 A JP2004265988 A JP 2004265988A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- thermoelectric
- porous
- thermoelectric conversion
- conversion material
- porous material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Silicon Compounds (AREA)
Abstract
【課題】新しい構造のナノ多孔質体を用いることにより、性能指数を向上させることができる新しい構造の熱電体を提供し、さらにその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の熱電体は、網目状骨格を有する多孔材料2の表面に熱電変換材料1が形成されてなる多孔質体からなる。この熱電体は、多孔材料2を熱電変換材料1の蒸気中に暴露したり、多孔材料2に熱電変換材料1の融液を浸透させたり、多孔材料2に熱電変換材料1をメッキしたり、多孔材料2に熱電変換材料1の前駆体を浸透させた後にこの前駆体を加熱することによって得ることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の熱電体は、網目状骨格を有する多孔材料2の表面に熱電変換材料1が形成されてなる多孔質体からなる。この熱電体は、多孔材料2を熱電変換材料1の蒸気中に暴露したり、多孔材料2に熱電変換材料1の融液を浸透させたり、多孔材料2に熱電変換材料1をメッキしたり、多孔材料2に熱電変換材料1の前駆体を浸透させた後にこの前駆体を加熱することによって得ることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱と電気とのエネルギー変換を行う熱電体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体を熱し、両端に温度差を与えると温度差に比例した電圧が発生する現象をゼーベック効果といい、これを利用し熱を電気に変換する材料を熱電変換材料という。熱電変換材料の性能は、性能指数をZとすると、材料の電気抵抗率ρ、熱伝導率κおよび単位温度差あたりの熱起電力で表されるゼーベック係数Sを用いて数1で表される。
(数1)
Z=S2/ρκ
この式より、変換性能の高い熱電変換材料とは、熱起電力が大きく、抵抗率が低く、熱伝導率が低い材料であることがわかる。これらS、ρ、κはすべてキャリア濃度の依存する関数であり、ρを低くするためにキャリア濃度を大きくするとSは小さくなる。κを低くするために数十マイクロメータレベルの結晶粒界を多く持った焼結体では、ρが大きくなり性能指数の向上が望めない。これらの理由により最適なキャリア濃度は計算によると1019cm−3となる。これは比較的ドープ量の多い半導体のキャリア濃度であり、縮退半導体にあたる。
【0003】
しかし熱は伝導電子のみによって伝搬されるのではなく、フォノン(格子振動)によっても運搬され、熱伝導率κは伝導電子による熱伝導率κel、フォノンによる熱伝導率κphとすると数2で表される。
(数2)
κ=κel+κph
このときキャリア濃度に依存する量はκelであり、κphは元素や構造によって決まる量である。よって、最適なキャリア濃度を持ちκphの小さい材料としてBi2Te3やPbTeなどの平均原子量の重い化合物半導体が取り扱われていた。
【0004】
しかし、このような熱電変換材料の物質設計では、電気伝導と熱伝導をそれぞれ分離して制御することができないため、実用化できるような大幅な性能指数Zの向上は非常に困難であり、近年の物質設計は低次元キャリア型や酸化物系などになっている。低次元キャリア型とは、通常三次元にあるキャリアを人工格子や量子井戸により、およそ数nm幅の二次元平面や一次元線上に閉じこめることである。それにより、キャリアの状態密度のエネルギー依存性を変化させ、ゼーベック係数を増加させて、性能指数の向上を図る構造である。これまでにも、エッチングによる多孔質構造を用いる方法(例えば、特許文献1参照)や、ナノ微粒子を用いる方法(例えば、特許文献2参照)等があるが、性能指数の向上を図る構造を安定に得るためには高精度のプロセス制御が必要となる。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−317547号公報
【特許文献2】
特開2002−76452号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように低次元化を目指して取り組まれてきた従来の構成においては、未だ熱電変換の性能が十分ではなく、またプロセス的にも煩雑で安定に製造することが難しいものであった。本発明の目的は、新しい構造のナノ多孔質体を用いることにより、性能指数を向上させることができる新しい構造の熱電体を提供し、さらにその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の熱電体は、以下に記す特徴を有する。
【0008】
熱電変換材料の形状が網目状骨格を有する多孔質体からなる。特に網目状骨格を有する多孔材料の表面に熱電変換材料が形成されてなる多孔質体であり、前記多孔材料が熱絶縁であり、前記多孔材料の孔部分がナノメートルサイズであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の熱電体において、網目構造骨格の多孔質体の孔部分に熱電変換材料とは異なる材料が充填されてなることを特徴とする場合にも好ましい効果が得られる。
【0010】
本発明の熱電体においては、前記熱電変換材料の厚みが電子とフォノンの平均自由行程と略等しいこと、あるいは前記平均自由行程以下であることを特徴とするときに特に好ましい効果が得られる。
【0011】
また、上記目的を解決するために本発明の熱電体の製造方法は、前記多孔材料を前記熱電変換材料の蒸気中に暴露する工程を有することを特徴とする。または、前記多孔材料に前記熱電変換材料の融液を浸透させる工程を有することを特徴とする。または、前記多孔材料に前記熱電変換材料をメッキする工程を有することを特徴とする。または、前記多孔材料に前記熱電変換材料の前駆体を浸透させる工程と、前記熱電変換材料の前駆体を加熱することによって前記熱電変換材料を形成する工程を有することを特徴とする。
【0012】
さらに、前記熱電体の製造方法における工程の後に、前記多孔材料を除去する工程を有することも好ましい効果が得られる。または、前記熱電体の製造方法における工程の後に、前記多孔質体の孔部分に前記熱電変換材料とは異なる材料を形成する工程を有することを特徴とする場合にも好ましい効果が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る実施の形態について説明する。
【0014】
図1は本発明に係る熱電体の例である。図1に示す熱電体は網目状構造を有する多孔材料2の表面に熱電変換材料1が形成され、その結果熱電変換材料1の形状が網目状骨格を有する多孔質体となっている。多孔材料2の孔部分は直径が数十〜数百ナノメートルのナノメートルサイズであり、さらに連続孔でもよい。ナノメートルサイズの孔部分を有する多孔材料2の表面に形成されている熱電変換材料1の厚みは、少なくともナノメートルサイズである。
【0015】
なお、本発明の熱電体の構成である網目状構造は、多孔体の骨格部分が3次元に連続してつながり孔を形成しているものである。このような構造によって、単にキャリアに対しては移動方向の低次元化が行われただけでなく、それがネットワーク状に高密度に絡まった構成をとる。この複雑な迷路構成により、単なる低次元化の効果だけでは予想されない熱電性能の向上が安定に得られるという発見に基づき、本発明はなされたものである。
【0016】
本発明の構成によると、低次元化された部分を高密度に安定して得ることができ、温度差方向と平行方向の次元とは異なる次元を有する移動方向を有するキャリアも有効に利用することができるため高効率であるという特徴が得られ、熱伝導に対してはフォノンが非常に大きな散乱を受けるという特徴が得られるため、数1のゼーベック係数Sを増加させ、熱伝導率κを低減させることができる。それによって、大きな性能指数Zを実現することが可能になるものである。
【0017】
また、図1では多孔材料2の表面に熱電変換材料1が1層形成されている構造を示しているが、本発明においては熱電変換材料1が上記の特徴を得ることができれば熱電変換材料1が多層に構成されるなど複合形成されていても良い。
【0018】
以下にさらに詳細に説明する。
【0019】
電子やフォノンの平均自由行程は数十〜数百ナノメートルであり、熱電変換材料1の厚みを電子やフォノンの平均自由行程と略等しい、またはそれ以下にすることにより、熱電変換材料1中のキャリアの自由度を制限できる。
【0020】
キャリアはその自由度を二次元や一次元に制限されると、状態密度のエネルギー依存性が、次元をdとするとEd/2−1と表すことができ、次元が下がるに従い先鋭化する。この低次元にすることによる状態密度の増加はゼーベック係数を増加させる。増加したゼーベック係数は数1より、性能指数を増加させることになる。
【0021】
一方、フォノンの熱伝導率κphは、単位体積あたりのフォノンの比熱をCとし、フォノンの平均速度をv、フォノンの平均自由行程をlとすると数3で表される。
(数3)
κph=Cvl/3
数3に示すようにフォノンの熱伝導率はフォノンの平均自由行程lに依存する。ナノワイヤーのような熱電変換材料1の厚み、幅、形状を制御し、数十〜数百ナノメートルの厚みを有する極細線では、厚みがフォノンの平均自由行程よりも大きいなら、熱伝導率にバルク材料との違いはなく同程度であるが、平均自由行程よりも小さいときは、表面散乱により熱伝導率は制限される。そのため、フォノンの熱伝導率を制御することができ、非常に低い熱伝導率を得ることができる。その結果として、数1より性能指数を向上させることができる。
【0022】
本発明で用いられる熱電変換材料1としては、ビスマス、ビスマステルル系化合物、ビスマスアンチモン系化合物、鉛テルル系化合物、コバルトアンチモン系化合物、イリジウムアンチモン系化合物、コバルト砒素系化合物、シリコンゲルマニウム系化合物、銅セレン系化合物、ガドリウムセレン系化合物、炭化ホウ素系化合物、コバルト系層状酸化物、亜鉛系層状酸化物、鉛系層状酸化物、テルル系ペロブスカイト酸化物、希土類硫化物、TAGS系化合物(GeTe−AgSbTe2)、ホイスラー型TiNiSn, FeNbSb, TiCoSb系物質等が適用することができる。
【0023】
さらに性能指数を向上させるには、熱電変換材料1以外の多孔材料2の熱伝導率が低いことが好ましく、熱絶縁体であることがより好ましい効果が得られる。
【0024】
本発明で用いられる多孔材料2としては、熱絶縁体であり、本発明の熱電体の製造方法で用いることができればその材質にはこだわらない。電子の伝導を制限するために金属材料でないほうが好ましいが、無機化合物である金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物などや、高分子材料などの有機化合物を適用することができる。例えば、無機化合物としては酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、などの金属酸化物、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化チタンなどの金属炭化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素などの金属窒化物などを適用できるが、これらに限られるものではない。有機化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタアクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンスルフィド、ポリアミド、ポリイミド、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、炭素材料などの高分子材料などを適用できるが、これらに限られるものではない。
【0025】
これらのうち、金属酸化物は熱絶縁性に優れ、多孔質構造を支持する機械的強度、製造プロセスでの耐熱性などの観点から好ましく用いることができる。
【0026】
特に、熱絶縁性の高い多孔材料2として、多孔質シリカを好ましく用いることができる。多孔質シリカは、連続気孔または独立気孔を有する酸化ケイ素であり、シリカ粉体の成型、シリカ粉体焼成、化学発泡、物理発泡、ゾルゲル法などの多くの方法で作製することができる。本発明の多孔材料2においては、多孔質シリカとして、ナノメートルサイズの気孔を多く有するものを用いることが特に好ましい効果が得られる。このような好ましい構造を有する多孔質シリカとして、ゾルゲル法によって作製するシリカ乾燥ゲルを特に候補として用いることができる。
【0027】
ここで、乾燥ゲルとは、ゾルゲル反応によって形成される多孔質体であり、ゲル原料液の反応によって固体化した固体骨格部が溶媒を含んで構成された湿潤ゲルを経て、その湿潤ゲルを乾燥して溶媒除去することで形成されるものである。この乾燥ゲルは、100nm以下のサイズの粒子で構成される固体骨格部によって平均細孔直径が100nm以下の範囲である連続気孔が形成されている多孔材料2である。また、固体成分を少なくすることで、非常に低密度な多孔材料2を得ることができる。このような構成上の特徴を有するシリカ乾燥ゲルは、孔サイズが空気の平均自由工程と同等以下であることによって、孔内での気体分子同士の衝突が減って気体運動による熱伝達を大きく低減することができるために、より高い効果が得られるものである。
【0028】
低密度な多孔材料2を基材とした多孔質体である熱電体は機械的強度を低下させる場合もある。そのような場合には、熱電変換材料1の特性を損なわない性質の材料によって多孔質体の孔部分を充填させることによって機械的強度を増すことができる。この充填させる材料としては、熱絶縁性であるものが好ましい。また、電気的にも絶縁性である方が好ましい。このような構成によって、機械的強度があり、熱電体を素子として使用する際の取り扱い性にも優れ、かつ非常に特性の優良な熱電体とすることができる。具体的な材料としては、前述の多孔材料2で用いられる材料を適用することができる。
【0029】
以下に熱電体の製造方法について説明する。
【0030】
本発明で用いる乾燥ゲルからなる多孔質シリカを得る方法は、大きく湿潤ゲルを得る工程とそれを乾燥する工程からなる。
【0031】
まず、湿潤ゲルを得る方法としては、シリカの原料を溶媒中でのゾルゲル反応によって合成および湿潤ゲル化するものである。このとき、必要に応じて触媒を用いる。この形成過程では、溶媒中で原料が反応しながらシリカの微粒子(ゾル)を形成し、その微粒子が集まって網目状骨格を形成し湿潤ゲルが得られる。具体的には、所定の密度の多孔質シリカを得るように固体成分である原料および溶媒の組成を決定する。その組成に調製した溶液に、必要に応じて、触媒や粘度調整剤などを加えて攪拌し、注型、塗布などによって所望の使用形態にする。この状態で一定時間経過することによって、溶液はゲル化してシリカの湿潤ゲルが得られる。製造時の温度条件としては通常の作業温度である室温近傍で行うが、必要に応じて溶媒の沸点以下の温度で実施することもある。
【0032】
シリカの原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシランなどのアルコキシシラン化合物、これらのオリゴマー化合物、またケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどの水ガラス化合物など、またコロイダルシリカなどを単独または混合して用いることができる。溶媒としては原料が溶解してシリカ形成すれば良く、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなどの一般的な有機溶媒を単独または混合して用いることができる。触媒としては、水や、塩酸、硫酸、酢酸などの酸や、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基を用いることができる。粘度調整剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、シリコーン油などを用いることができるが、湿潤ゲルを所定の使用形態にできるのであればこれらに限られるものではない。
【0033】
次に、湿潤ゲルから乾燥ゲルを得る乾燥工程について述べる。
【0034】
乾燥処理には、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥の通常乾燥法や、超臨界乾燥法、凍結乾燥法などを用いることができる。一般に、乾燥ゲルを低密度にするために湿潤ゲル中の固体成分量を少なくするとゲル強度が低下する。また、通常、ただ単に乾燥するだけの乾燥法では、溶媒蒸発時のストレスによってゲルが収縮してしまう。乾燥ゲルからなる多孔質シリカを得るためには、乾燥方法として超臨界乾燥や凍結乾燥を好ましく用いることによって、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができる。また、乾燥ゲルからなる多孔質シリカを得るためには、湿潤ゲルにおいてゲルの固体成分の表面を撥水処理等によって、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができる。
【0035】
まず、乾燥ゲルを超臨界乾燥によって作製する方法について説明する。超臨界乾燥に用いる溶媒は、湿潤ゲルの溶媒を用いることができる。また必要に応じて、超臨界乾燥において扱いやすい溶媒に置換しておくのが好ましい。置換する溶媒としては、直接その溶媒を超臨界流体にするメタノール、エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール類、二酸化炭素、水が挙げられる。または、これらの超臨界流体で溶出しやすいアセトン、酢酸イソアミル、ヘキサンなどの一般的な取扱いしやすい有機溶剤に置換しておいてもよい。
【0036】
超臨界乾燥条件としては、オートクレーブなどの圧力容器中で行い、例えばメタノールではその臨界条件である臨界圧力8.09MPa、臨界温度239.4℃以上にし、温度一定の状態で圧力を徐々に開放して乾燥を行う。また、二酸化炭素の場合には、臨界圧力7.38MPa、臨界温度31.1℃以上にして、同じように温度一定の状態で超臨界状態から圧力を開放して気体状態にして乾燥を行う。また、水の場合には、臨界圧力22.04MPa、臨界温度374.2℃以上にして乾燥を行う。乾燥に必要な時間としては、超臨界流体によって湿潤ゲル中の溶媒が1回以上入れ替わる時間以上を経過すればよい。
【0037】
湿潤ゲルを撥水処理してから乾燥する方法は、撥水処理のための表面処理剤を湿潤ゲルの状態で溶媒中でその固体成分の表面に化学反応させる。
【0038】
これによって湿潤ゲルの網目構造の細孔内に発生する表面張力を低減し、乾燥時の応力を低減することができ、通常乾燥にて収縮を抑制した乾燥ゲルを得ることができる。表面処理剤としては、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、エチルトリクロルシランなどのハロゲン系シラン処理剤、トリメチルメトシシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどのアルコキシ系シラン処理剤、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマーなどのシリコーン系シラン処理剤、ヘキサメチルジシラザンなどのアミン系シラン処理剤、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクタノール、デカノールなどのアルコール系処理剤などを用いることができる。湿潤ゲルを収縮させること無く、通常乾燥方法から乾燥ゲルを得ることができればこれらの表面処理剤に限られるものではない。
【0039】
なお、本方法を用いて得られる乾燥ゲルの材質としては、シリカ以外にも他の無機材料、有機高分子材料などを用いることができる。例えば、無機酸化物の乾燥ゲルの固体骨格部は、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタンなどゾルゲル反応で得られる一般的なセラミックスを成分として適用することができる。また、有機高分子の乾燥ゲルの固体骨格部としては、一般的な熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂により構成することができる。例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、フェノール硬化樹脂、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチルなど、さらに有機高分子を前駆体として形成した炭素材料などを適用することができる。
【0040】
次に、本発明の熱電体の製造方法について説明する。
【0041】
多孔材料2の表面に熱電変換材料1を形成する方法は、以下の方法である。
【0042】
まず、第1の方法は、熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料が融解または昇華または気化する温度またはそれ以上の温度まで熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料を熱し、熱することで熱電変換材料1または母材料を蒸発させ、多孔材料2をその蒸気中に暴露する方法で、多孔材料2の表面に熱電変換材料1を形成するものである。
【0043】
熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料を熱する方法の一例として、容器に熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料を入れ、その容器をヒータによって熱する方法、またはその容器に直接電流を流すことによって熱する方法、または熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料を直接ヒータによって熱する方法、または熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料に直接電流を流し熱する方法であって、容器およびヒータとして用いる材料はアルミナ、イットリア、白金、ステンレス、モリブデンなどであり、熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料の融点より高い温度の融点を有する材料であればこれらに限られるものではない。また、これらは真空中またはアルゴン、酸素、窒素、などのガス中にて行われ、雰囲気ガスとの反応によって熱電変換材料1の母材料の蒸気が熱電変換材料1の蒸気となる。
【0044】
多孔材料2の表面に形成される熱電変換材料1の厚みは、熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料を熱する温度、真空度、雰囲気ガス圧、基材となる多孔材料2の温度、多孔材料2に蒸気をあてる時間などによって制御することができる。
【0045】
また、第2の方法は、別の多孔材料2の表面に熱電変換材料1を形成する方法として、多孔材料2を熱電変換材料1の融液に浸す、あるいは熱電変換材料1をメッキすることにより多孔質体である熱電体を作製する方法である。メッキには湿式メッキ、乾式メッキ、化学気相メッキ、溶解メッキがある。湿式メッキには電気メッキ法と無電解メッキ法がある。
【0046】
電気メッキ法とは、目的の材料の解けた溶液に、陽極と陰極の電極を挿入し、直流電流を流すことで、電極上に目的の材料を堆積させる方法である。無電解メッキ法は溶液中の金属イオンを還元剤の働きによって堆積させる方法であり、電流を流す必要がない。乾式メッキとは、真空蒸着や、スパッタ法、MBE法、レーザーアブレーション法、溶射など、原子または分子状の材料を基板上に堆積させる方法である。
【0047】
化学気相メッキとはCVD法のように気体原料から化学反応を経て、基板上に固体材料を堆積させる方法である。溶解メッキとは溶けた目的とする材料中に被堆積物を入れ、引き上げることで被堆積物上に目的とする材料を堆積させる方法である。これらの方法に用いられる電極または基板は、基材となる多孔材料2であり、また金属板に多孔材料2を固定し電極もしくは基板としてもよい。特に多孔材料2がカーボンで構成された場合、あるいは多孔材料2の表面がカーボンで被覆されている場合には、電解メッキおよび無電解メッキを効率的に実施することができる。
【0048】
多孔材料2の表面をカーボン化するには、液相中または気相中で、網目状骨格を有するの多孔材料2の表面にカーボン前駆体を形成した後に、炭化を行う方法を用いることができる。カーボン前駆体の高分子を骨格に形成して被覆する方法としては、ポリアクリロニトリルやポリフルフリルアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリフェノール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンなどの焼成によって炭化しやすい高分子を溶解した溶液を無機酸化物の湿潤ゲルに含浸して骨格に高分子を被覆する、あるいは前記高分子の原料分子を溶解した溶液を無機酸化物の湿潤ゲルに含浸してその網目構造骨格中で高分子を重合して被覆する方法等を用いることができる。あるいはこれら材料を直接に気相で形成することもできる。
【0049】
被覆後に前記前駆体を例えば300℃〜1000℃の温度域で加熱すると、カーボン化した被膜が多孔材料2の表面に形成される。カーボン被覆を形成後、網目状骨格の無機酸化物を除去すれば、より表面積の大きいカーボン多孔材料2を得ることができ、熱電変換材料1のメッキ工程で用いる網目状骨格の多孔材料2として適したものとなる。
【0050】
上述の第1の方法、第2の方法ともに、熱電変換材料1を気相状態または液状態とすることによって、原材料を原子または分子の大きさにすることで、多孔材料2の中に浸透しやすくすることが特徴である。特に、乾燥ゲルにおいても、平均細孔直径が数十から数百ナノメートルの範囲である孔の中を通ることができ、多孔材料2の表面にナノメートルサイズの厚みを有する熱電変換材料1を作製することが可能になる。
【0051】
また、第3の方法は、熱電変換材料1の前駆体を用いて目的とする熱電変換材料1を作製する方法であり、ナノメートルサイズの粒径を有する1種または複数種の前駆体を混合した粉体または溶液を多孔材料2に浸透させ、多孔材料2の表面を覆い、目的の熱電変換材料1に応じて雰囲気を変化させて加熱することにより、表面張力や粘性の大きい熱電変換材料1でも、多孔質体である熱電体を作製することができる。このとき、熱電変換材料1の前駆体とは別に混合溶液のpH値を調整するために、塩酸、硫酸、酢酸、蓚酸、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの酸やアルカリ溶液を混合させてもよい。また、加熱雰囲気は真空中もしくは、アルゴン、酸素、窒素、などのガス中で行われる。
【0052】
さらに性能を向上させるには、多孔材料2表面に熱電変換材料1を形成した後に、多孔材料2を除去し網目構造骨格を有する熱電変換材料1のみの多孔質体である熱電体にすることが好ましい。多孔材料2を除去する方法としては、蒸発、昇華、溶出などの処理を行うことができる。熱電変換材料1への影響が少ない温和な条件が好ましいため、無機化合物が多孔材料2である場合には溶出除去が好ましいし、有機化合物である場合には溶出除去の他に熱分解や燃焼による除去も好ましく用いることができる。溶出する方法としては、無機化合物からなる多孔材料2を溶解する溶液に浸漬して行うが、酸または塩基の溶液を好ましく用いることができる。一般にゾルゲル法によって形成される無機酸化物のゲルは結晶性が低く、非晶質である場合が多い。そのため、強い酸や塩基に対しての溶解性が高い。また、微粒子が凝集している網目構造骨格のゲルがほぐれてしまう解こう性も高い。この工程には、無機酸化物に適した酸または塩基が選択されれば良い。例えば、シリカの乾燥ゲルに対しては、ふっ化水素酸、水酸化アルカリ、炭酸アルカリなどを用いることができる。処理液は、水溶液、アルコール溶液などにして用いる。また、有機化合物からなる多孔材料2を除去する場合には、溶解させる場合には有機化合物を溶解する溶液を選択すれば良いし、熱分解または燃焼させる場合には有機化合物の熱分解または燃焼する温度以上に保持しておくことで多孔材料2を除去することが可能である。
【0053】
強度を保つためにはその後に熱電変換材料1とは異なる材料を多孔質体の孔部分に充填する工程を行うことがより好ましい。熱電変換材料1とは異なる材料を孔部分に充填する方法としては、主に電気メッキ法と無電解メッキ法の湿式メッキ法や、真空蒸着や、スパッタ法、MBE法、レーザーアブレーション法、溶射などの乾式メッキ法が用いられるが、他にも多孔質体の表面に変電変換材料を形成させる方法と同様の方法を用いることができる。
【0054】
また、本発明の熱電体は骨格が三次元的網目状構造であるので、エッチング等により得られる一次元的な多孔材料2の孔部分に熱電変換材料1を充填させることによって得られる熱電体に比べ、単位体積あたりの熱電変換材料1の比率が大きいため、効率のよい熱電体となる。
【0055】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明する。
【0056】
(実施例1)
図2は本発明の熱電体を作製する蒸着機の例を示している。真空状態にすることができる容器3内に、熱電変換材料1としてBi2Te3をアルミナからなる坩堝4に入れ、坩堝4をヒータによって熱することで発生するBi2Te3の蒸気が当たる位置に平均細孔直径が100nm以下の多孔質シリカからなる多孔材料2を設置し、Bi2Te3の多孔質体を作製した。ヒータの温度は800度であり、真空中にて行った。得られた多孔質体は、多孔材料2表面に厚さが40〜80nmであるBi2Te3の熱電体Aであり、熱起電力および抵抗率を測定した。
【0057】
また、同じように作製した熱電体Aの孔部分をスパッタ法またはレーザーアブレーション法を用いてSiO2を充填させた熱電体Bも作製し、同様の測定を行った。また、多孔質シリカからなる多孔材料2の表面に、レーザーアブレーション法を用いて厚さが40〜80nmであるBi2Te3の熱電体Cを作製し、熱起電力および抵抗率を測定した。結果を表1に示す。比較のためバルク状態である従来のBi2Te3の熱起電力および抵抗率も示す。
【0058】
【表1】
多孔質の方が従来のものに比べ、熱電体A、BおよびCともに、熱起電力で3倍程度増大するが、抵抗率は逆に増大した。性能指数により比較を行うには数1より熱伝導率の比較も必要となる。厚みが40〜80nmである多孔質体である熱電体A,BおよびCの熱伝導率は、従来のバルク状態の熱電体の熱伝導率の同程度以下であったので、数1より計算される性能指数は多孔質体の方が従来のものよりも熱電体Aでは4倍程度以上、熱電体Bでは3倍程度以上、熱電体Cでは4.5倍程度以上増大することが確認された。
【0059】
(実施例2)
電気メッキ法を用いて、平均細孔直径が100nm以下の多孔質シリカ上にカーボンを被覆した多孔材料2の表面に、Bi2Te3からなる熱電変換材料1を形成したBi2Te3の多孔質体を作製した。カーボン被覆多孔質シリカの作製のため、まず無機酸化物としてシリカを用いた湿潤ゲルを合成した。次にカーボン前駆体として、水を溶媒として用いてレゾルシノールとホルムアルデヒドと炭酸ナトリウムをモル比で1対2対0.01になるように調製した原料水溶液に、先のシリカ湿潤ゲルを浸漬してゲルの骨格内に含浸した。室温および約80℃でそれぞれ2日間放置してポリフェノール系高分子を、湿潤ゲルの骨格に被覆した。乾燥した後、窒素雰囲気中500℃で5時間熱処理し、カーボン前駆体の複合乾燥ゲルを炭化してカーボン複合多孔体を得た。この多孔材料2に対して電気メッキを施した。メッキ溶液は希釈したHNO3溶液中に10mMのBi2O3と10mMのTeO2を入れた溶液である。ポテンショスタットを用い、各電極は作用極としてPt平板、対極としてPt線、参照電極は飽和カロメル電極である。基材となる多孔材料2を作用極であるPt平板上に接着し、−200mVの電位差を与え、多孔材料2の孔部分に熱電変換材料1を充填して熱電体を得た。多孔材料2への熱電変換材料1の充填後、得られた熱電体をPt平板から取り外し、熱起電力および抵抗率を測定した。熱起電力は−40μV/Kであり、抵抗率は10μΩmである。実施例1と同様に性能指数が増大した。
【0060】
(実施例3)
平均細孔直径が100nm以下の多孔質シリカからなる多孔材料2を、AgSbTe2からなる熱電変換材料1の融液に一部を浸し、徐々に全体に浸透させた。多孔体の表面に均一に薄く被覆させるため、AgSbTe2の原料を装填した白金るつぼを不活性ガスのアルゴン雰囲気中で580℃に加熱し、融液の表面に多孔質シリカの一端を接触させて3時間放置し、多孔材料2全体にAgSbTe2を回り込ませ、ゆっくり室温に降温した。出来上がった材料は融液の接触部が密に熱電材料が詰まっているので切り離し、残りの部分を熱電材料として性能を評価した。300Kで熱起電力は250μV/K、抵抗率は80μΩmと従来のバルク状態の熱電体と同程度の特性であったが、熱伝導率が0.5W/mKと従来の半分の値となり、性能指数が2倍に向上した。
【0061】
(実施例4)
熱電変換材料1であるCoSb3をSbCl2とCoCl2を用いて、平均細孔直径が100nm以下の多孔質シリカからなる多孔材料2の表面に、CoSb3からなる熱電変換材料1を形成したCoSb3の多孔質体を作製した。このとき、SbCl2とCoCl2がCoSb3の前駆体となる。溶液はSbCl2とCoCl2のモル比が3:1である塩酸、蓚酸、アンモニアの混合溶液である。混合溶液のpHが3程度になるように各量を調整した。多孔材料2を溶液中に浸すことにより、多孔材料2の孔部分に混合溶液中の固体物質が充填される。十分充填された後に、混合溶液中から多孔材料2を取り出し、300〜450度の温度で熱処理を窒素および水素雰囲気中で行い、熱電体Dを得た。得られた熱電体Dの熱電変換材料1の厚さは50〜80nmであった。得られた熱電体Dと同様の手順で作製した熱電体Dの孔部分にレーザーアブレーション法によりSiO2を充填させた熱電体Eの熱起電力および抵抗率を測定した。表2に示す。また、比較としてバルク状態のCoSb3の熱起電力および抵抗率を表2に示す。
【0062】
【表2】
従来のCoSb3に比べ、熱電体D,Eの抵抗率は同程度またはやや増大しているが、熱起電力の増大する割合の方が大きく、数1より計算される性能指数は従来のものに比べ、多孔質体となった方が増大することがわかった。
【0063】
(実施例5)
Si0.8Ge0.2の多孔質体をCVD法を用いて作製した。使用ガスはSi2H6とGeH4の混合ガスであり、基材なる多孔材料2は平均細孔直径が100nm以下の多孔質シリカであり550℃に加熱し、表面に熱電変換材料1であるSi0.8Ge0.2を形成しSi0.8Ge0.2の熱電体Fを作製した。熱電変換材料1の膜厚は50〜80nmである。作製した多孔質体の基材となったシリカ部を純水で希釈したふっ化水素酸の溶液を用いて除去した。ふっ化水素酸は、シリカはエッチングするが、SiGeとの選択比が高いためSiGeはほとんどエッチングされない。よって、シリカのみを除去することができる。
【0064】
Si0.8Ge0.2の多孔質体からなる熱電体Fと、Si0.8Ge0.2の多孔質体のシリカ部を除去した熱電体Gの熱起電力および抵抗率を測定した。比較として薄膜状態のSi0.8Ge0.2の熱起電力および抵抗率を表3に示す。
【0065】
【表3】
従来のSi0.8Ge0.2に比べ、熱電体F,Gの抵抗率は同程度またはやや増大しているが、熱起電力の増大する割合の方が大きく、数1より計算される性能指数は従来のものに比べ、多孔質体となった方が増大することがわかった。また、多孔質シリカを除去することによっても、性能指数が増大することがわかった。
【0066】
(実施例6)
多孔質材料が多孔質アルミナからなる平均細孔直径が100nm以下の多孔材料2表面に、実施例1に示した方法と同様の方法を用いて、Bi2Te3の多孔質体からなる熱電体Gを作製した。得られた熱電体Gは、多孔材料2表面に厚さが40〜80nmであり、熱起電力および抵抗率を測定した。熱起電力は−30μV/Kであり、抵抗率は12μΩmであった。従来のものに比べ性能指数が増大することがわかった。
【0067】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、熱電体を多孔質化することにより、熱電変換材料1のキャリアの次元を制御することができ、性能が向上した熱電体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱電体を示す模式図
【図2】本発明の熱電体を作製する装置の一例を示す図
【符号の説明】
1 熱電変換材料1
2 多孔材料
3 容器
4 坩堝
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱と電気とのエネルギー変換を行う熱電体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体を熱し、両端に温度差を与えると温度差に比例した電圧が発生する現象をゼーベック効果といい、これを利用し熱を電気に変換する材料を熱電変換材料という。熱電変換材料の性能は、性能指数をZとすると、材料の電気抵抗率ρ、熱伝導率κおよび単位温度差あたりの熱起電力で表されるゼーベック係数Sを用いて数1で表される。
(数1)
Z=S2/ρκ
この式より、変換性能の高い熱電変換材料とは、熱起電力が大きく、抵抗率が低く、熱伝導率が低い材料であることがわかる。これらS、ρ、κはすべてキャリア濃度の依存する関数であり、ρを低くするためにキャリア濃度を大きくするとSは小さくなる。κを低くするために数十マイクロメータレベルの結晶粒界を多く持った焼結体では、ρが大きくなり性能指数の向上が望めない。これらの理由により最適なキャリア濃度は計算によると1019cm−3となる。これは比較的ドープ量の多い半導体のキャリア濃度であり、縮退半導体にあたる。
【0003】
しかし熱は伝導電子のみによって伝搬されるのではなく、フォノン(格子振動)によっても運搬され、熱伝導率κは伝導電子による熱伝導率κel、フォノンによる熱伝導率κphとすると数2で表される。
(数2)
κ=κel+κph
このときキャリア濃度に依存する量はκelであり、κphは元素や構造によって決まる量である。よって、最適なキャリア濃度を持ちκphの小さい材料としてBi2Te3やPbTeなどの平均原子量の重い化合物半導体が取り扱われていた。
【0004】
しかし、このような熱電変換材料の物質設計では、電気伝導と熱伝導をそれぞれ分離して制御することができないため、実用化できるような大幅な性能指数Zの向上は非常に困難であり、近年の物質設計は低次元キャリア型や酸化物系などになっている。低次元キャリア型とは、通常三次元にあるキャリアを人工格子や量子井戸により、およそ数nm幅の二次元平面や一次元線上に閉じこめることである。それにより、キャリアの状態密度のエネルギー依存性を変化させ、ゼーベック係数を増加させて、性能指数の向上を図る構造である。これまでにも、エッチングによる多孔質構造を用いる方法(例えば、特許文献1参照)や、ナノ微粒子を用いる方法(例えば、特許文献2参照)等があるが、性能指数の向上を図る構造を安定に得るためには高精度のプロセス制御が必要となる。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−317547号公報
【特許文献2】
特開2002−76452号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように低次元化を目指して取り組まれてきた従来の構成においては、未だ熱電変換の性能が十分ではなく、またプロセス的にも煩雑で安定に製造することが難しいものであった。本発明の目的は、新しい構造のナノ多孔質体を用いることにより、性能指数を向上させることができる新しい構造の熱電体を提供し、さらにその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の熱電体は、以下に記す特徴を有する。
【0008】
熱電変換材料の形状が網目状骨格を有する多孔質体からなる。特に網目状骨格を有する多孔材料の表面に熱電変換材料が形成されてなる多孔質体であり、前記多孔材料が熱絶縁であり、前記多孔材料の孔部分がナノメートルサイズであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の熱電体において、網目構造骨格の多孔質体の孔部分に熱電変換材料とは異なる材料が充填されてなることを特徴とする場合にも好ましい効果が得られる。
【0010】
本発明の熱電体においては、前記熱電変換材料の厚みが電子とフォノンの平均自由行程と略等しいこと、あるいは前記平均自由行程以下であることを特徴とするときに特に好ましい効果が得られる。
【0011】
また、上記目的を解決するために本発明の熱電体の製造方法は、前記多孔材料を前記熱電変換材料の蒸気中に暴露する工程を有することを特徴とする。または、前記多孔材料に前記熱電変換材料の融液を浸透させる工程を有することを特徴とする。または、前記多孔材料に前記熱電変換材料をメッキする工程を有することを特徴とする。または、前記多孔材料に前記熱電変換材料の前駆体を浸透させる工程と、前記熱電変換材料の前駆体を加熱することによって前記熱電変換材料を形成する工程を有することを特徴とする。
【0012】
さらに、前記熱電体の製造方法における工程の後に、前記多孔材料を除去する工程を有することも好ましい効果が得られる。または、前記熱電体の製造方法における工程の後に、前記多孔質体の孔部分に前記熱電変換材料とは異なる材料を形成する工程を有することを特徴とする場合にも好ましい効果が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る実施の形態について説明する。
【0014】
図1は本発明に係る熱電体の例である。図1に示す熱電体は網目状構造を有する多孔材料2の表面に熱電変換材料1が形成され、その結果熱電変換材料1の形状が網目状骨格を有する多孔質体となっている。多孔材料2の孔部分は直径が数十〜数百ナノメートルのナノメートルサイズであり、さらに連続孔でもよい。ナノメートルサイズの孔部分を有する多孔材料2の表面に形成されている熱電変換材料1の厚みは、少なくともナノメートルサイズである。
【0015】
なお、本発明の熱電体の構成である網目状構造は、多孔体の骨格部分が3次元に連続してつながり孔を形成しているものである。このような構造によって、単にキャリアに対しては移動方向の低次元化が行われただけでなく、それがネットワーク状に高密度に絡まった構成をとる。この複雑な迷路構成により、単なる低次元化の効果だけでは予想されない熱電性能の向上が安定に得られるという発見に基づき、本発明はなされたものである。
【0016】
本発明の構成によると、低次元化された部分を高密度に安定して得ることができ、温度差方向と平行方向の次元とは異なる次元を有する移動方向を有するキャリアも有効に利用することができるため高効率であるという特徴が得られ、熱伝導に対してはフォノンが非常に大きな散乱を受けるという特徴が得られるため、数1のゼーベック係数Sを増加させ、熱伝導率κを低減させることができる。それによって、大きな性能指数Zを実現することが可能になるものである。
【0017】
また、図1では多孔材料2の表面に熱電変換材料1が1層形成されている構造を示しているが、本発明においては熱電変換材料1が上記の特徴を得ることができれば熱電変換材料1が多層に構成されるなど複合形成されていても良い。
【0018】
以下にさらに詳細に説明する。
【0019】
電子やフォノンの平均自由行程は数十〜数百ナノメートルであり、熱電変換材料1の厚みを電子やフォノンの平均自由行程と略等しい、またはそれ以下にすることにより、熱電変換材料1中のキャリアの自由度を制限できる。
【0020】
キャリアはその自由度を二次元や一次元に制限されると、状態密度のエネルギー依存性が、次元をdとするとEd/2−1と表すことができ、次元が下がるに従い先鋭化する。この低次元にすることによる状態密度の増加はゼーベック係数を増加させる。増加したゼーベック係数は数1より、性能指数を増加させることになる。
【0021】
一方、フォノンの熱伝導率κphは、単位体積あたりのフォノンの比熱をCとし、フォノンの平均速度をv、フォノンの平均自由行程をlとすると数3で表される。
(数3)
κph=Cvl/3
数3に示すようにフォノンの熱伝導率はフォノンの平均自由行程lに依存する。ナノワイヤーのような熱電変換材料1の厚み、幅、形状を制御し、数十〜数百ナノメートルの厚みを有する極細線では、厚みがフォノンの平均自由行程よりも大きいなら、熱伝導率にバルク材料との違いはなく同程度であるが、平均自由行程よりも小さいときは、表面散乱により熱伝導率は制限される。そのため、フォノンの熱伝導率を制御することができ、非常に低い熱伝導率を得ることができる。その結果として、数1より性能指数を向上させることができる。
【0022】
本発明で用いられる熱電変換材料1としては、ビスマス、ビスマステルル系化合物、ビスマスアンチモン系化合物、鉛テルル系化合物、コバルトアンチモン系化合物、イリジウムアンチモン系化合物、コバルト砒素系化合物、シリコンゲルマニウム系化合物、銅セレン系化合物、ガドリウムセレン系化合物、炭化ホウ素系化合物、コバルト系層状酸化物、亜鉛系層状酸化物、鉛系層状酸化物、テルル系ペロブスカイト酸化物、希土類硫化物、TAGS系化合物(GeTe−AgSbTe2)、ホイスラー型TiNiSn, FeNbSb, TiCoSb系物質等が適用することができる。
【0023】
さらに性能指数を向上させるには、熱電変換材料1以外の多孔材料2の熱伝導率が低いことが好ましく、熱絶縁体であることがより好ましい効果が得られる。
【0024】
本発明で用いられる多孔材料2としては、熱絶縁体であり、本発明の熱電体の製造方法で用いることができればその材質にはこだわらない。電子の伝導を制限するために金属材料でないほうが好ましいが、無機化合物である金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物などや、高分子材料などの有機化合物を適用することができる。例えば、無機化合物としては酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、などの金属酸化物、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化チタンなどの金属炭化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素などの金属窒化物などを適用できるが、これらに限られるものではない。有機化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタアクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンスルフィド、ポリアミド、ポリイミド、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、炭素材料などの高分子材料などを適用できるが、これらに限られるものではない。
【0025】
これらのうち、金属酸化物は熱絶縁性に優れ、多孔質構造を支持する機械的強度、製造プロセスでの耐熱性などの観点から好ましく用いることができる。
【0026】
特に、熱絶縁性の高い多孔材料2として、多孔質シリカを好ましく用いることができる。多孔質シリカは、連続気孔または独立気孔を有する酸化ケイ素であり、シリカ粉体の成型、シリカ粉体焼成、化学発泡、物理発泡、ゾルゲル法などの多くの方法で作製することができる。本発明の多孔材料2においては、多孔質シリカとして、ナノメートルサイズの気孔を多く有するものを用いることが特に好ましい効果が得られる。このような好ましい構造を有する多孔質シリカとして、ゾルゲル法によって作製するシリカ乾燥ゲルを特に候補として用いることができる。
【0027】
ここで、乾燥ゲルとは、ゾルゲル反応によって形成される多孔質体であり、ゲル原料液の反応によって固体化した固体骨格部が溶媒を含んで構成された湿潤ゲルを経て、その湿潤ゲルを乾燥して溶媒除去することで形成されるものである。この乾燥ゲルは、100nm以下のサイズの粒子で構成される固体骨格部によって平均細孔直径が100nm以下の範囲である連続気孔が形成されている多孔材料2である。また、固体成分を少なくすることで、非常に低密度な多孔材料2を得ることができる。このような構成上の特徴を有するシリカ乾燥ゲルは、孔サイズが空気の平均自由工程と同等以下であることによって、孔内での気体分子同士の衝突が減って気体運動による熱伝達を大きく低減することができるために、より高い効果が得られるものである。
【0028】
低密度な多孔材料2を基材とした多孔質体である熱電体は機械的強度を低下させる場合もある。そのような場合には、熱電変換材料1の特性を損なわない性質の材料によって多孔質体の孔部分を充填させることによって機械的強度を増すことができる。この充填させる材料としては、熱絶縁性であるものが好ましい。また、電気的にも絶縁性である方が好ましい。このような構成によって、機械的強度があり、熱電体を素子として使用する際の取り扱い性にも優れ、かつ非常に特性の優良な熱電体とすることができる。具体的な材料としては、前述の多孔材料2で用いられる材料を適用することができる。
【0029】
以下に熱電体の製造方法について説明する。
【0030】
本発明で用いる乾燥ゲルからなる多孔質シリカを得る方法は、大きく湿潤ゲルを得る工程とそれを乾燥する工程からなる。
【0031】
まず、湿潤ゲルを得る方法としては、シリカの原料を溶媒中でのゾルゲル反応によって合成および湿潤ゲル化するものである。このとき、必要に応じて触媒を用いる。この形成過程では、溶媒中で原料が反応しながらシリカの微粒子(ゾル)を形成し、その微粒子が集まって網目状骨格を形成し湿潤ゲルが得られる。具体的には、所定の密度の多孔質シリカを得るように固体成分である原料および溶媒の組成を決定する。その組成に調製した溶液に、必要に応じて、触媒や粘度調整剤などを加えて攪拌し、注型、塗布などによって所望の使用形態にする。この状態で一定時間経過することによって、溶液はゲル化してシリカの湿潤ゲルが得られる。製造時の温度条件としては通常の作業温度である室温近傍で行うが、必要に応じて溶媒の沸点以下の温度で実施することもある。
【0032】
シリカの原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシランなどのアルコキシシラン化合物、これらのオリゴマー化合物、またケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどの水ガラス化合物など、またコロイダルシリカなどを単独または混合して用いることができる。溶媒としては原料が溶解してシリカ形成すれば良く、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなどの一般的な有機溶媒を単独または混合して用いることができる。触媒としては、水や、塩酸、硫酸、酢酸などの酸や、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基を用いることができる。粘度調整剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、シリコーン油などを用いることができるが、湿潤ゲルを所定の使用形態にできるのであればこれらに限られるものではない。
【0033】
次に、湿潤ゲルから乾燥ゲルを得る乾燥工程について述べる。
【0034】
乾燥処理には、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥の通常乾燥法や、超臨界乾燥法、凍結乾燥法などを用いることができる。一般に、乾燥ゲルを低密度にするために湿潤ゲル中の固体成分量を少なくするとゲル強度が低下する。また、通常、ただ単に乾燥するだけの乾燥法では、溶媒蒸発時のストレスによってゲルが収縮してしまう。乾燥ゲルからなる多孔質シリカを得るためには、乾燥方法として超臨界乾燥や凍結乾燥を好ましく用いることによって、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができる。また、乾燥ゲルからなる多孔質シリカを得るためには、湿潤ゲルにおいてゲルの固体成分の表面を撥水処理等によって、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができる。
【0035】
まず、乾燥ゲルを超臨界乾燥によって作製する方法について説明する。超臨界乾燥に用いる溶媒は、湿潤ゲルの溶媒を用いることができる。また必要に応じて、超臨界乾燥において扱いやすい溶媒に置換しておくのが好ましい。置換する溶媒としては、直接その溶媒を超臨界流体にするメタノール、エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール類、二酸化炭素、水が挙げられる。または、これらの超臨界流体で溶出しやすいアセトン、酢酸イソアミル、ヘキサンなどの一般的な取扱いしやすい有機溶剤に置換しておいてもよい。
【0036】
超臨界乾燥条件としては、オートクレーブなどの圧力容器中で行い、例えばメタノールではその臨界条件である臨界圧力8.09MPa、臨界温度239.4℃以上にし、温度一定の状態で圧力を徐々に開放して乾燥を行う。また、二酸化炭素の場合には、臨界圧力7.38MPa、臨界温度31.1℃以上にして、同じように温度一定の状態で超臨界状態から圧力を開放して気体状態にして乾燥を行う。また、水の場合には、臨界圧力22.04MPa、臨界温度374.2℃以上にして乾燥を行う。乾燥に必要な時間としては、超臨界流体によって湿潤ゲル中の溶媒が1回以上入れ替わる時間以上を経過すればよい。
【0037】
湿潤ゲルを撥水処理してから乾燥する方法は、撥水処理のための表面処理剤を湿潤ゲルの状態で溶媒中でその固体成分の表面に化学反応させる。
【0038】
これによって湿潤ゲルの網目構造の細孔内に発生する表面張力を低減し、乾燥時の応力を低減することができ、通常乾燥にて収縮を抑制した乾燥ゲルを得ることができる。表面処理剤としては、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、エチルトリクロルシランなどのハロゲン系シラン処理剤、トリメチルメトシシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどのアルコキシ系シラン処理剤、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマーなどのシリコーン系シラン処理剤、ヘキサメチルジシラザンなどのアミン系シラン処理剤、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクタノール、デカノールなどのアルコール系処理剤などを用いることができる。湿潤ゲルを収縮させること無く、通常乾燥方法から乾燥ゲルを得ることができればこれらの表面処理剤に限られるものではない。
【0039】
なお、本方法を用いて得られる乾燥ゲルの材質としては、シリカ以外にも他の無機材料、有機高分子材料などを用いることができる。例えば、無機酸化物の乾燥ゲルの固体骨格部は、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタンなどゾルゲル反応で得られる一般的なセラミックスを成分として適用することができる。また、有機高分子の乾燥ゲルの固体骨格部としては、一般的な熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂により構成することができる。例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、フェノール硬化樹脂、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチルなど、さらに有機高分子を前駆体として形成した炭素材料などを適用することができる。
【0040】
次に、本発明の熱電体の製造方法について説明する。
【0041】
多孔材料2の表面に熱電変換材料1を形成する方法は、以下の方法である。
【0042】
まず、第1の方法は、熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料が融解または昇華または気化する温度またはそれ以上の温度まで熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料を熱し、熱することで熱電変換材料1または母材料を蒸発させ、多孔材料2をその蒸気中に暴露する方法で、多孔材料2の表面に熱電変換材料1を形成するものである。
【0043】
熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料を熱する方法の一例として、容器に熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料を入れ、その容器をヒータによって熱する方法、またはその容器に直接電流を流すことによって熱する方法、または熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料を直接ヒータによって熱する方法、または熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料に直接電流を流し熱する方法であって、容器およびヒータとして用いる材料はアルミナ、イットリア、白金、ステンレス、モリブデンなどであり、熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料の融点より高い温度の融点を有する材料であればこれらに限られるものではない。また、これらは真空中またはアルゴン、酸素、窒素、などのガス中にて行われ、雰囲気ガスとの反応によって熱電変換材料1の母材料の蒸気が熱電変換材料1の蒸気となる。
【0044】
多孔材料2の表面に形成される熱電変換材料1の厚みは、熱電変換材料1または熱電変換材料1の母材料を熱する温度、真空度、雰囲気ガス圧、基材となる多孔材料2の温度、多孔材料2に蒸気をあてる時間などによって制御することができる。
【0045】
また、第2の方法は、別の多孔材料2の表面に熱電変換材料1を形成する方法として、多孔材料2を熱電変換材料1の融液に浸す、あるいは熱電変換材料1をメッキすることにより多孔質体である熱電体を作製する方法である。メッキには湿式メッキ、乾式メッキ、化学気相メッキ、溶解メッキがある。湿式メッキには電気メッキ法と無電解メッキ法がある。
【0046】
電気メッキ法とは、目的の材料の解けた溶液に、陽極と陰極の電極を挿入し、直流電流を流すことで、電極上に目的の材料を堆積させる方法である。無電解メッキ法は溶液中の金属イオンを還元剤の働きによって堆積させる方法であり、電流を流す必要がない。乾式メッキとは、真空蒸着や、スパッタ法、MBE法、レーザーアブレーション法、溶射など、原子または分子状の材料を基板上に堆積させる方法である。
【0047】
化学気相メッキとはCVD法のように気体原料から化学反応を経て、基板上に固体材料を堆積させる方法である。溶解メッキとは溶けた目的とする材料中に被堆積物を入れ、引き上げることで被堆積物上に目的とする材料を堆積させる方法である。これらの方法に用いられる電極または基板は、基材となる多孔材料2であり、また金属板に多孔材料2を固定し電極もしくは基板としてもよい。特に多孔材料2がカーボンで構成された場合、あるいは多孔材料2の表面がカーボンで被覆されている場合には、電解メッキおよび無電解メッキを効率的に実施することができる。
【0048】
多孔材料2の表面をカーボン化するには、液相中または気相中で、網目状骨格を有するの多孔材料2の表面にカーボン前駆体を形成した後に、炭化を行う方法を用いることができる。カーボン前駆体の高分子を骨格に形成して被覆する方法としては、ポリアクリロニトリルやポリフルフリルアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリフェノール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンなどの焼成によって炭化しやすい高分子を溶解した溶液を無機酸化物の湿潤ゲルに含浸して骨格に高分子を被覆する、あるいは前記高分子の原料分子を溶解した溶液を無機酸化物の湿潤ゲルに含浸してその網目構造骨格中で高分子を重合して被覆する方法等を用いることができる。あるいはこれら材料を直接に気相で形成することもできる。
【0049】
被覆後に前記前駆体を例えば300℃〜1000℃の温度域で加熱すると、カーボン化した被膜が多孔材料2の表面に形成される。カーボン被覆を形成後、網目状骨格の無機酸化物を除去すれば、より表面積の大きいカーボン多孔材料2を得ることができ、熱電変換材料1のメッキ工程で用いる網目状骨格の多孔材料2として適したものとなる。
【0050】
上述の第1の方法、第2の方法ともに、熱電変換材料1を気相状態または液状態とすることによって、原材料を原子または分子の大きさにすることで、多孔材料2の中に浸透しやすくすることが特徴である。特に、乾燥ゲルにおいても、平均細孔直径が数十から数百ナノメートルの範囲である孔の中を通ることができ、多孔材料2の表面にナノメートルサイズの厚みを有する熱電変換材料1を作製することが可能になる。
【0051】
また、第3の方法は、熱電変換材料1の前駆体を用いて目的とする熱電変換材料1を作製する方法であり、ナノメートルサイズの粒径を有する1種または複数種の前駆体を混合した粉体または溶液を多孔材料2に浸透させ、多孔材料2の表面を覆い、目的の熱電変換材料1に応じて雰囲気を変化させて加熱することにより、表面張力や粘性の大きい熱電変換材料1でも、多孔質体である熱電体を作製することができる。このとき、熱電変換材料1の前駆体とは別に混合溶液のpH値を調整するために、塩酸、硫酸、酢酸、蓚酸、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの酸やアルカリ溶液を混合させてもよい。また、加熱雰囲気は真空中もしくは、アルゴン、酸素、窒素、などのガス中で行われる。
【0052】
さらに性能を向上させるには、多孔材料2表面に熱電変換材料1を形成した後に、多孔材料2を除去し網目構造骨格を有する熱電変換材料1のみの多孔質体である熱電体にすることが好ましい。多孔材料2を除去する方法としては、蒸発、昇華、溶出などの処理を行うことができる。熱電変換材料1への影響が少ない温和な条件が好ましいため、無機化合物が多孔材料2である場合には溶出除去が好ましいし、有機化合物である場合には溶出除去の他に熱分解や燃焼による除去も好ましく用いることができる。溶出する方法としては、無機化合物からなる多孔材料2を溶解する溶液に浸漬して行うが、酸または塩基の溶液を好ましく用いることができる。一般にゾルゲル法によって形成される無機酸化物のゲルは結晶性が低く、非晶質である場合が多い。そのため、強い酸や塩基に対しての溶解性が高い。また、微粒子が凝集している網目構造骨格のゲルがほぐれてしまう解こう性も高い。この工程には、無機酸化物に適した酸または塩基が選択されれば良い。例えば、シリカの乾燥ゲルに対しては、ふっ化水素酸、水酸化アルカリ、炭酸アルカリなどを用いることができる。処理液は、水溶液、アルコール溶液などにして用いる。また、有機化合物からなる多孔材料2を除去する場合には、溶解させる場合には有機化合物を溶解する溶液を選択すれば良いし、熱分解または燃焼させる場合には有機化合物の熱分解または燃焼する温度以上に保持しておくことで多孔材料2を除去することが可能である。
【0053】
強度を保つためにはその後に熱電変換材料1とは異なる材料を多孔質体の孔部分に充填する工程を行うことがより好ましい。熱電変換材料1とは異なる材料を孔部分に充填する方法としては、主に電気メッキ法と無電解メッキ法の湿式メッキ法や、真空蒸着や、スパッタ法、MBE法、レーザーアブレーション法、溶射などの乾式メッキ法が用いられるが、他にも多孔質体の表面に変電変換材料を形成させる方法と同様の方法を用いることができる。
【0054】
また、本発明の熱電体は骨格が三次元的網目状構造であるので、エッチング等により得られる一次元的な多孔材料2の孔部分に熱電変換材料1を充填させることによって得られる熱電体に比べ、単位体積あたりの熱電変換材料1の比率が大きいため、効率のよい熱電体となる。
【0055】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明する。
【0056】
(実施例1)
図2は本発明の熱電体を作製する蒸着機の例を示している。真空状態にすることができる容器3内に、熱電変換材料1としてBi2Te3をアルミナからなる坩堝4に入れ、坩堝4をヒータによって熱することで発生するBi2Te3の蒸気が当たる位置に平均細孔直径が100nm以下の多孔質シリカからなる多孔材料2を設置し、Bi2Te3の多孔質体を作製した。ヒータの温度は800度であり、真空中にて行った。得られた多孔質体は、多孔材料2表面に厚さが40〜80nmであるBi2Te3の熱電体Aであり、熱起電力および抵抗率を測定した。
【0057】
また、同じように作製した熱電体Aの孔部分をスパッタ法またはレーザーアブレーション法を用いてSiO2を充填させた熱電体Bも作製し、同様の測定を行った。また、多孔質シリカからなる多孔材料2の表面に、レーザーアブレーション法を用いて厚さが40〜80nmであるBi2Te3の熱電体Cを作製し、熱起電力および抵抗率を測定した。結果を表1に示す。比較のためバルク状態である従来のBi2Te3の熱起電力および抵抗率も示す。
【0058】
【表1】
多孔質の方が従来のものに比べ、熱電体A、BおよびCともに、熱起電力で3倍程度増大するが、抵抗率は逆に増大した。性能指数により比較を行うには数1より熱伝導率の比較も必要となる。厚みが40〜80nmである多孔質体である熱電体A,BおよびCの熱伝導率は、従来のバルク状態の熱電体の熱伝導率の同程度以下であったので、数1より計算される性能指数は多孔質体の方が従来のものよりも熱電体Aでは4倍程度以上、熱電体Bでは3倍程度以上、熱電体Cでは4.5倍程度以上増大することが確認された。
【0059】
(実施例2)
電気メッキ法を用いて、平均細孔直径が100nm以下の多孔質シリカ上にカーボンを被覆した多孔材料2の表面に、Bi2Te3からなる熱電変換材料1を形成したBi2Te3の多孔質体を作製した。カーボン被覆多孔質シリカの作製のため、まず無機酸化物としてシリカを用いた湿潤ゲルを合成した。次にカーボン前駆体として、水を溶媒として用いてレゾルシノールとホルムアルデヒドと炭酸ナトリウムをモル比で1対2対0.01になるように調製した原料水溶液に、先のシリカ湿潤ゲルを浸漬してゲルの骨格内に含浸した。室温および約80℃でそれぞれ2日間放置してポリフェノール系高分子を、湿潤ゲルの骨格に被覆した。乾燥した後、窒素雰囲気中500℃で5時間熱処理し、カーボン前駆体の複合乾燥ゲルを炭化してカーボン複合多孔体を得た。この多孔材料2に対して電気メッキを施した。メッキ溶液は希釈したHNO3溶液中に10mMのBi2O3と10mMのTeO2を入れた溶液である。ポテンショスタットを用い、各電極は作用極としてPt平板、対極としてPt線、参照電極は飽和カロメル電極である。基材となる多孔材料2を作用極であるPt平板上に接着し、−200mVの電位差を与え、多孔材料2の孔部分に熱電変換材料1を充填して熱電体を得た。多孔材料2への熱電変換材料1の充填後、得られた熱電体をPt平板から取り外し、熱起電力および抵抗率を測定した。熱起電力は−40μV/Kであり、抵抗率は10μΩmである。実施例1と同様に性能指数が増大した。
【0060】
(実施例3)
平均細孔直径が100nm以下の多孔質シリカからなる多孔材料2を、AgSbTe2からなる熱電変換材料1の融液に一部を浸し、徐々に全体に浸透させた。多孔体の表面に均一に薄く被覆させるため、AgSbTe2の原料を装填した白金るつぼを不活性ガスのアルゴン雰囲気中で580℃に加熱し、融液の表面に多孔質シリカの一端を接触させて3時間放置し、多孔材料2全体にAgSbTe2を回り込ませ、ゆっくり室温に降温した。出来上がった材料は融液の接触部が密に熱電材料が詰まっているので切り離し、残りの部分を熱電材料として性能を評価した。300Kで熱起電力は250μV/K、抵抗率は80μΩmと従来のバルク状態の熱電体と同程度の特性であったが、熱伝導率が0.5W/mKと従来の半分の値となり、性能指数が2倍に向上した。
【0061】
(実施例4)
熱電変換材料1であるCoSb3をSbCl2とCoCl2を用いて、平均細孔直径が100nm以下の多孔質シリカからなる多孔材料2の表面に、CoSb3からなる熱電変換材料1を形成したCoSb3の多孔質体を作製した。このとき、SbCl2とCoCl2がCoSb3の前駆体となる。溶液はSbCl2とCoCl2のモル比が3:1である塩酸、蓚酸、アンモニアの混合溶液である。混合溶液のpHが3程度になるように各量を調整した。多孔材料2を溶液中に浸すことにより、多孔材料2の孔部分に混合溶液中の固体物質が充填される。十分充填された後に、混合溶液中から多孔材料2を取り出し、300〜450度の温度で熱処理を窒素および水素雰囲気中で行い、熱電体Dを得た。得られた熱電体Dの熱電変換材料1の厚さは50〜80nmであった。得られた熱電体Dと同様の手順で作製した熱電体Dの孔部分にレーザーアブレーション法によりSiO2を充填させた熱電体Eの熱起電力および抵抗率を測定した。表2に示す。また、比較としてバルク状態のCoSb3の熱起電力および抵抗率を表2に示す。
【0062】
【表2】
従来のCoSb3に比べ、熱電体D,Eの抵抗率は同程度またはやや増大しているが、熱起電力の増大する割合の方が大きく、数1より計算される性能指数は従来のものに比べ、多孔質体となった方が増大することがわかった。
【0063】
(実施例5)
Si0.8Ge0.2の多孔質体をCVD法を用いて作製した。使用ガスはSi2H6とGeH4の混合ガスであり、基材なる多孔材料2は平均細孔直径が100nm以下の多孔質シリカであり550℃に加熱し、表面に熱電変換材料1であるSi0.8Ge0.2を形成しSi0.8Ge0.2の熱電体Fを作製した。熱電変換材料1の膜厚は50〜80nmである。作製した多孔質体の基材となったシリカ部を純水で希釈したふっ化水素酸の溶液を用いて除去した。ふっ化水素酸は、シリカはエッチングするが、SiGeとの選択比が高いためSiGeはほとんどエッチングされない。よって、シリカのみを除去することができる。
【0064】
Si0.8Ge0.2の多孔質体からなる熱電体Fと、Si0.8Ge0.2の多孔質体のシリカ部を除去した熱電体Gの熱起電力および抵抗率を測定した。比較として薄膜状態のSi0.8Ge0.2の熱起電力および抵抗率を表3に示す。
【0065】
【表3】
従来のSi0.8Ge0.2に比べ、熱電体F,Gの抵抗率は同程度またはやや増大しているが、熱起電力の増大する割合の方が大きく、数1より計算される性能指数は従来のものに比べ、多孔質体となった方が増大することがわかった。また、多孔質シリカを除去することによっても、性能指数が増大することがわかった。
【0066】
(実施例6)
多孔質材料が多孔質アルミナからなる平均細孔直径が100nm以下の多孔材料2表面に、実施例1に示した方法と同様の方法を用いて、Bi2Te3の多孔質体からなる熱電体Gを作製した。得られた熱電体Gは、多孔材料2表面に厚さが40〜80nmであり、熱起電力および抵抗率を測定した。熱起電力は−30μV/Kであり、抵抗率は12μΩmであった。従来のものに比べ性能指数が増大することがわかった。
【0067】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、熱電体を多孔質化することにより、熱電変換材料1のキャリアの次元を制御することができ、性能が向上した熱電体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱電体を示す模式図
【図2】本発明の熱電体を作製する装置の一例を示す図
【符号の説明】
1 熱電変換材料1
2 多孔材料
3 容器
4 坩堝
Claims (12)
- 熱電変換材料の形状が網目状骨格を有する多孔質体であることを特徴とする熱電体。
- 網目状骨格を有する多孔材料の表面に熱電変換材料が形成されてなる多孔質体であることを特徴とする請求項1記載の熱電体。
- 前記多孔材料が熱絶縁であることを特徴とする請求項2に記載の熱電体。
- 多孔質体の孔部分がナノメートルサイズであることを特徴とする請求項1から3に記載の熱電体。
- 請求項1から4に記載の熱電体において、網目構造骨格の多孔質体の孔部分に熱電変換材料とは異なる材料が充填されてなることを特徴とする熱電体。
- 前記熱電変換材料の厚みが電子とフォノンの平均自由行程と略等しいこと、あるいは前記平均自由行程以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の熱電体。
- 請求項1から6に記載の熱電体の製造方法であって、前記多孔材料を前記熱電変換材料の蒸気中に暴露する工程を有することを特徴とする熱電体の製造方法。
- 請求項1から6に記載の熱電体の製造方法であって、前記多孔材料に前記熱電変換材料の融液を浸透させる工程を有することを特徴とする熱電体の製造方法。
- 請求項1から6に記載の熱電体の製造方法であって、前記多孔材料に前記熱電変換材料をメッキする工程を有することを特徴とする熱電体の製造方法。
- 請求項1から6に記載の熱電体の製造方法であって、前記多孔材料に前記熱電変換材料の前駆体を浸透させる工程と、前記熱電変換材料の前駆体を加熱することによって前記熱電変換材料を形成する工程を有することを特徴とする熱電体の製造方法。
- 請求項7から10に記載の熱電体の製造方法における工程の後に、前記多孔材料を除去する工程を有することを特徴とする熱電体の製造方法。
- 請求項7から11に記載の熱電体の製造方法における工程の後に、前記多孔質体の孔部分に前記熱電変換材料とは異なる材料を形成する工程を有することを特徴とする熱電体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003052834A JP2004265988A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 熱電体およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003052834A JP2004265988A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 熱電体およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004265988A true JP2004265988A (ja) | 2004-09-24 |
Family
ID=33117602
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003052834A Pending JP2004265988A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 熱電体およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004265988A (ja) |
Cited By (15)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7309830B2 (en) | 2005-05-03 | 2007-12-18 | Toyota Motor Engineering & Manufacturing North America, Inc. | Nanostructured bulk thermoelectric material |
JP2011129832A (ja) * | 2009-12-21 | 2011-06-30 | Denso Corp | 熱電変換素子及びその製造方法 |
JP2011521459A (ja) * | 2008-05-21 | 2011-07-21 | ナノ−ヌーベル ピーティーワイ リミテッド | 熱電素子 |
JP2012174813A (ja) * | 2011-02-18 | 2012-09-10 | Kyushu Univ | 熱電変換材料及びその製造方法 |
JP2013021089A (ja) * | 2011-07-11 | 2013-01-31 | Hitachi Ltd | 熱電変換素子 |
DE102012205087A1 (de) | 2012-03-29 | 2013-10-02 | Evonik Industries Ag | Pulvermetallurgische Herstellung eines thermoelektrischen Bauelements |
DE102012205098A1 (de) | 2012-03-29 | 2013-10-02 | Evonik Industries Ag | Thermoelektrische Bauelemente auf Basis trocken verpresster Pulvervorstufen |
DE102012018387A1 (de) | 2012-09-18 | 2014-03-20 | Evonik Degussa Gmbh | Textiler thermoelektrischer Generator |
DE102013219541A1 (de) | 2013-09-27 | 2015-04-02 | Evonik Industries Ag | Verbessertes Verfahren zur pulvermetallurgischen Herstellung thermoelektrischer Bauelemente |
DE102014203139A1 (de) | 2014-02-21 | 2015-08-27 | Evonik Degussa Gmbh | Verbesserungen betreffend Kontaktbrücken thermoelektrischer Bauelemente |
DE102006055120B4 (de) * | 2006-11-21 | 2015-10-01 | Evonik Degussa Gmbh | Thermoelektrische Elemente, Verfahren zu deren Herstellung und deren Verwendung |
DE102014219756A1 (de) | 2014-09-30 | 2016-03-31 | Evonik Degussa Gmbh | Plasma-Beschichten von thermoelektrischem Aktivmaterial mit Nickel und Zinn |
JP2017220469A (ja) * | 2016-06-02 | 2017-12-14 | 国立大学法人東京農工大学 | 熱電変換材料及び熱電変換材料の製造方法 |
JP2021073694A (ja) * | 2021-01-05 | 2021-05-13 | 日本精工株式会社 | 熱電変換素子 |
US11056633B2 (en) | 2016-01-21 | 2021-07-06 | Evonik Operations Gmbh | Rational method for the powder metallurgical production of thermoelectric components |
-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003052834A patent/JP2004265988A/ja active Pending
Cited By (22)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008523614A (ja) * | 2004-12-07 | 2008-07-03 | トヨタ テクニカル センター,ユー.エス.エー.,インコーポレイティド | ナノ構造のバルク熱電材料 |
JP2010278449A (ja) * | 2004-12-07 | 2010-12-09 | Toyota Technical Center Usa Inc | ナノ構造のバルク熱電材料 |
US7309830B2 (en) | 2005-05-03 | 2007-12-18 | Toyota Motor Engineering & Manufacturing North America, Inc. | Nanostructured bulk thermoelectric material |
DE102006055120B4 (de) * | 2006-11-21 | 2015-10-01 | Evonik Degussa Gmbh | Thermoelektrische Elemente, Verfahren zu deren Herstellung und deren Verwendung |
JP2011521459A (ja) * | 2008-05-21 | 2011-07-21 | ナノ−ヌーベル ピーティーワイ リミテッド | 熱電素子 |
JP2011129832A (ja) * | 2009-12-21 | 2011-06-30 | Denso Corp | 熱電変換素子及びその製造方法 |
JP2012174813A (ja) * | 2011-02-18 | 2012-09-10 | Kyushu Univ | 熱電変換材料及びその製造方法 |
JP2013021089A (ja) * | 2011-07-11 | 2013-01-31 | Hitachi Ltd | 熱電変換素子 |
WO2013144106A2 (de) | 2012-03-29 | 2013-10-03 | Evonik Industries Ag | Pulvermetallurgische herstellung eines thermoelektrischen bauelements |
DE102012205087A1 (de) | 2012-03-29 | 2013-10-02 | Evonik Industries Ag | Pulvermetallurgische Herstellung eines thermoelektrischen Bauelements |
DE102012205098A1 (de) | 2012-03-29 | 2013-10-02 | Evonik Industries Ag | Thermoelektrische Bauelemente auf Basis trocken verpresster Pulvervorstufen |
WO2013144107A2 (de) | 2012-03-29 | 2013-10-03 | Evonik Industries Ag | Thermoelektrische bauelemente auf basis trocken verpresster pulvervorstufen |
DE102012018387A1 (de) | 2012-09-18 | 2014-03-20 | Evonik Degussa Gmbh | Textiler thermoelektrischer Generator |
DE102013219541B4 (de) | 2013-09-27 | 2019-05-09 | Evonik Degussa Gmbh | Verbessertes Verfahren zur pulvermetallurgischen Herstellung thermoelektrischer Bauelemente |
US9553249B2 (en) | 2013-09-27 | 2017-01-24 | Evonik Degussa Gmbh | Method for producing thermoelectric components by powder metallurgy |
DE102013219541A1 (de) | 2013-09-27 | 2015-04-02 | Evonik Industries Ag | Verbessertes Verfahren zur pulvermetallurgischen Herstellung thermoelektrischer Bauelemente |
DE102014203139A1 (de) | 2014-02-21 | 2015-08-27 | Evonik Degussa Gmbh | Verbesserungen betreffend Kontaktbrücken thermoelektrischer Bauelemente |
DE102014219756A1 (de) | 2014-09-30 | 2016-03-31 | Evonik Degussa Gmbh | Plasma-Beschichten von thermoelektrischem Aktivmaterial mit Nickel und Zinn |
US11056633B2 (en) | 2016-01-21 | 2021-07-06 | Evonik Operations Gmbh | Rational method for the powder metallurgical production of thermoelectric components |
JP2017220469A (ja) * | 2016-06-02 | 2017-12-14 | 国立大学法人東京農工大学 | 熱電変換材料及び熱電変換材料の製造方法 |
JP2021073694A (ja) * | 2021-01-05 | 2021-05-13 | 日本精工株式会社 | 熱電変換素子 |
JP7092217B2 (ja) | 2021-01-05 | 2022-06-28 | 日本精工株式会社 | 熱電変換素子 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5139073B2 (ja) | ナノ構造のバルク熱電材料 | |
EP2210288B1 (en) | Nanostructured bulk thermoelectric material | |
JP2004265988A (ja) | 熱電体およびその製造方法 | |
Sander et al. | Structure of bismuth telluride nanowire arrays fabricated by electrodeposition into porous anodic alumina templates | |
CN101389792B (zh) | 纳米热电材料 | |
US20140116491A1 (en) | Bulk-size nanostructured materials and methods for making the same by sintering nanowires | |
JP5456964B2 (ja) | コア−シェルナノ粒子を用いる均一熱電ナノ複合材料 | |
Hu et al. | Advances in flexible thermoelectric materials and devices fabricated by magnetron sputtering | |
US20100108115A1 (en) | Bulk thermoelectric material and thermoelectric device comprising the same | |
US9997692B2 (en) | Thermoelectric materials | |
KR20120029864A (ko) | 그래핀-폴리머 층상 복합체 및 그의 제조방법 | |
KR20110016287A (ko) | 그래핀 산화물의 코팅방법 | |
KR20100019977A (ko) | 등방성 신장 열전 나노복합물, 그의 제조방법 및 이를 포함한 열전소자 | |
US20160049571A1 (en) | Low thermal conductivity thermoelectric materials and method for making the same | |
Dan et al. | Diodelike behavior in glass–metal nanocomposites | |
Zhang et al. | Wet chemical synthesis and thermoelectric properties of V-VI one-and two-dimensional nanostructures | |
Das et al. | Interfacial conduction in silica gels containing nanocrystalline copper oxide | |
CN103668069A (zh) | 一种二维硅烯薄膜及其制备方法 | |
KR102693759B1 (ko) | 금속산화물 나노입자가 담지된 탄소나노튜브를 포함하는 n형 열전소재 및 그 제조방법 | |
KR102696253B1 (ko) | 금속산화물 나노입자가 담지된 탄소나노튜브를 포함하는 열전소재 및 그 제조방법 | |
Jianghan et al. | Enhanced Thermoelectric Performance of Electrochemically Deposited Cellulose Nanofiber-Bismuth Telluride Nanocomposite | |
Huber et al. | Thermoelectric power of Bi and Bi-Te (0.14%) in porous vycor glass | |
Li et al. | One-Dimensional Bi-Based Nanostructures for Thermoelectrics | |
Liu et al. | Robust Flexible Pcu2se-Nag2se Thermoelectric Devices Via in Situ Conversion from Printed Cu Patterns | |
Huber et al. | Thermoelectric power of Bi and Bi (1-x) Te (x), x= 0.0014, in porous Vycor glass |