JP2004256679A - ウレタン系塗料およびウレタン系塗料用硬化剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗膜形成後の酸処理なしで汚染防止機能を発現し、しかも、汚染防止機能を長期間持続することができるウレタン系塗料、および、このウレタン系塗料用として好適な硬化剤組成物を提供すること。
【解決手段】ポリオール化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)とアルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)と酸性基を有する化合物(D)を含有するウレタン系塗料、および、ポリイソシアネート化合物(B)と酸性基を有する化合物(D)を含有することを特徴とするウレタン系塗料用硬化剤組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリオール化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)とアルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)と酸性基を有する化合物(D)を含有するウレタン系塗料、および、ポリイソシアネート化合物(B)と酸性基を有する化合物(D)を含有することを特徴とするウレタン系塗料用硬化剤組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低汚染性で、低汚染機能が長期間持続するウレタン系塗料、およびこの塗料に用いるウレタン系塗料用硬化性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窯業系素材、鉄鋼、建築物、土木構築物等の産業製品の保護、意匠性の付与、美観性の向上等のため塗装仕上げが行われている。特に、近年フッ素樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等の高耐久性塗料の出現により、前記産業製品の耐候性、耐食性の保護においては大きな進歩を遂げている。しかし、最近、都心や都市近郊では、自動車等からの排出ガスにより大気中に油性の汚染物質が浮遊している状況で、それら油性の汚染物質が、高耐久性塗料から形成された塗膜表面に付着し、すす状あるいはすじ状の雨垂れ汚染が発生するという問題がある。
【0003】
このような雨垂れ汚染の汚染防止方法としては、塗膜表面の濡れ性を向上させることで表面に付着した汚染物質を雨水等により洗い流すことができ、例えば、特定のアルコキシシランを配合することにより塗膜表面を親水性にして、油性の汚染物質を付着しにくくし、付着した場合でも降雨等の水滴とともに洗い流してしまうという技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、この方法では、塗料を素材に塗布し、塗膜を形成した後、塗膜表面を酸で処理することを必要としているため、塗膜形成直後から雨垂れ汚染防止機能が発現しない。更に、この塗膜はシラノール基が徐々に脱水縮合してシロキサン結合となってしまい、徐々に塗膜表面の親水性が失われてしまうため、長期の汚染防止機能が損なわれてしまう。
【0005】
【特許文献1】
特許第2869443号公報(第2−5頁)
【0006】
【発明が解決しようとしている課題】
本発明が解決しようとしている課題は、塗膜形成後の酸処理なしで汚染防止機能を発現し、しかも、汚染防止機能を長期間持続することができるウレタン系塗料、および、このウレタン系塗料用として好適な硬化剤組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、ポリオール化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)とアルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)とを含有する低汚染性のウレタン系塗料中に、酸性基を有する化合物(D)を含有させることで、塗膜形成後の酸処理の手間を必要とせず、塗膜形成直後から汚染防止機能を発現させることができると共に、シラノール基の脱水縮合を抑制するため長期間にわたり汚染防止機能が持続すること、および、酸性基を有する化合物(D)はポリイソシアネート化合物(B)を含有するウレタン系塗料用硬化剤中に含有させることが好ましいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリオール化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)とアルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)と酸性基を有する化合物(D)を含有することを特徴とするウレタン系塗料を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、ポリイソシアネート化合物(B)と酸性基を有する化合物(D)を含有することを特徴とするウレタン系塗料用硬化剤組成物も提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のウレタン系塗料で用いるポリオール化合物(A)としては、特に限定はなく、例えばアクリルポリオール、アルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール等が挙げられ、なかでも、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましく、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールが特に好ましい。これらのポリオールは、単独で用いても、2種以上併用しても構わない。
【0011】
前記アクリルポリオールとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸系モノマーと、これと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸系モノマーおよび/またはその他の不飽和モノマーを共重合させることによって得られる(メタ)アクリル系ポリオール樹脂類が挙げられる。
【0012】
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の水酸基をもつ(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールモノアクリレート等のアルキレングリコールモノアクリレート類;ポリエチレングリコールモノアクリレート等のポリアルキレングリコールモノアクリレート類;ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;アリルアルコール、メタリルアルコール等のアルコール類;これら水酸基含有(メタ)アクリル酸系モノマーとラクトン類、例えば、ε−カプロラクトンやγ−バレロラクトンなどとの付加物;グリセリンの(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパンの(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル類などを挙げることができる。
【0013】
また、前記水酸基含有(メタ)アクリル酸系モノマーと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸系モノマーおよびその他の不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド類;
【0014】
ビニルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン等のシラン系不飽和モノマー;
【0015】
パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、等のフッ素系不飽和モノマー;スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ジアリルフタレート等の不飽和モノマー等が挙げられる。
【0016】
さらに、前記その他の不飽和モノマーとしては、不飽和結合を有するものであれば、ポリブタジエン、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の樹脂を使用することもできる。
【0017】
前記アクリルポリオール類は、通常、溶剤系、水系、水分散型、非水分散型(NAD)等のいずれの形態であってもよい。
【0018】
前記アルキレンポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、2−ヒドロキシステアリルアルコール、12−ヒドロキシステアリルアルコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,2−トリメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−3−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−3−ベンジル−1,3−プロパンジオール、2,2―ジメチル−3−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,3,3−テトラメチル−1,4−ブタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2−ヒドロキシパルミチルアルコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(通称水添ビスフェノールA)等が挙げられる。
【0019】
前記ポリエステルポリオールとしては、ポリカルボン酸、これらポリカルボン酸のエステル又は酸無水物等と、低分子ポリオールや低分子アミノアルコールの反応で得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。また、前記低分子ポリオールを開始剤とし、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールも挙げられる。
【0020】
前記ポリカルボン酸、ポリカルボン酸のエステル又は酸無水物としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸、これらポリカルボン酸のエステル又は酸無水物等が挙げられる。
【0021】
また、前記低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、前記低分子アミノアルコールとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0022】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前記ポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオールと、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との反応で得られるもの等が挙げられる。
【0023】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルを開環重合させたポリ(オキシアルキレン)ポリオール;前記したポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールを開始剤として、前記環状エーテルを重合させたポリエステルエーテルポリオール等が挙げられる。
【0024】
前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基含有ポリブタジエン、水素添加の水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水素添加の水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等が挙げられる。前記動植物系ポリオールとしては、ヒマシ油系ポリオール、絹フィブロイン等が挙げられる。
【0025】
また、水酸基を2個以上有するものであれば、ダイマー酸系ポリオール、水素添加ダイマー酸系ポリオール、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ポリビニルアルコール等の樹脂類も、ポリオール化合物(A)として使用できる。
【0026】
これらポリオール化合物(A)としては、粘度または軟化温度が適当で作業性に優れ、耐溶剤性、機械的性質、耐衝撃性、伸びが良好で、硬度と弾性のバランスのよい均質なポリウレタン樹脂が得られることから、数平均分子量300〜100,000、酸価0〜200mgKOH/g、水酸基価10〜300mgKOH/gのポリオール化合物が好ましい。これらポリオール化合物(A)のなかでも、数平均分子量は、本発明の塗料中の他の成分との相溶性が良好で、耐候性、耐汚染性に優れる硬化塗膜が得られることから、2,000〜100,000であることが好ましく、3,000〜50,000であることがより好ましいし、水酸基価は、硬化性が良好で、耐水性、耐汚染性に優れる硬化塗膜が得られることから、10〜300mgKOH/gであることが好ましく、50〜200mgKOH/gであることがより好ましい。
【0027】
なお、ポリオール化合物(A)は、通常有機溶剤に溶解した溶液で用いる。この溶液の濃度は、通常10〜90重量%、好ましくは40〜70重量%である。
【0028】
本発明のウレタン系塗料およびウレタン系塗料用硬化剤組成物で用いるポリイソシアネート化合物(B)としては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;
【0029】
トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;これらポリイソシアネートを前記アルキレンポリオールやアルコールで変性したもの、これらポリイソシアネートと水との付加物、これらポリイソシアネート同士の環化重合物、具体的にはアダクト化物、ビウレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド化物、アロファネート化物等が挙げられる。また、これらのポリイソシアネートは単独又は二種以上の混合物で使用することができる。
【0030】
また、前記ポリイソシアネート化合物(B)としては、ポリイソシアネート化合物(B)であって、かつ酸性基を有する化合物(D)である化合物、即ち酸性基を有するポリイソシアネートを用いることもできる。この場合、本発明のウレタン系塗料やウレタン系塗料用硬化剤組成物に別途酸性基を有する化合物(D)を添加する必要はない。
【0031】
前記酸性基を有するポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物と12−ヒドロキシステアリン酸やひまし油脂肪酸等のカルボキシル基と水酸基を有する化合物をイソシアネート基が過剰な条件でウレタン化反応させて得られるもの、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物とクロロエチルアルコールをイソシアネート基が過剰な条件でウレタン化反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0032】
これらポリイソシアネート化合物(B)の中では、蒸気圧が高いため毒性が少なく、耐候性に優れる塗膜が得られる点で、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化物、アロファネート化物、ビウレット化物、ウレタン化物が好ましく、イソシアネート基に結合した脂肪族炭化水素の炭素原子数が4〜15の脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化物、アロファネート化物、ビウレット化物、ウレタン化物がより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化物、アロファネート化物、ビウレット化物、ウレタン化物が特に好ましい。また、耐久性に優れる塗膜が得られる点で、ヘキサメチレンジイソシアネートにイソホロンジイソシアネートや水素添加キシリレンジイソシアネート等の環構造を持つポリイソシアネートを共イソシアヌレート化したものや、共アロファネート化ものが好ましい。さらに、弱溶剤に可溶でアルコキシシランおよび/またはその縮合物との相溶性が良好である点で、炭素原子数4〜20のアルコールで変成したアロファネート化物やイソシアヌレート化物が好ましく、炭素数8〜20のアルコールで変性したアロファネート化物やイソシアヌレート化物が特に好ましい。前記炭素原子数4〜20のアルコールとしては、2−エチルヘキサノールや12−ヒドロキシステアリルアルコールが好ましい。
【0033】
本発明においては、平均イソシアネート基数、相溶性、反応性等を調整するためにポリイソシアネート化合物(B)の一部をモノイソシアネート化合物で置き換えてもよい。モノイソシアネート化合物としては、例えば、ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。これらは単独又は2種以上使用してもよい。置き換えに用いるモノイソシアネート化合物の使用量は、通常ポリイソシアネート化合物(B)の10重量%以下である。また、モノイソシアネートの使用時期は、特に制限はなく、粘度や変性の程度により適宜選択すればよい。
【0034】
なお、前記ポリイソシアネート化合物(B)としては、本発明のウレタン系塗料を1液化するためにアルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類などのブロック剤を用いたブロック化ポリイソシアネートの形態で使用することもできる。
【0035】
なお、ポリイソシアネート化合物(B)も、通常有機溶剤に溶解した溶液で用いる。この溶液の濃度は、通常10〜90重量%、好ましくは40〜70重量%である。
【0036】
前記ポリオール化合物(A)と前記ポリイソシネート化合物(B)の配合比率としては、架橋が十分で硬化性、耐久性、耐汚染性に優れる塗膜が得られることから、ポリオール(A)中の水酸基(OH)とポリイソシアネート(B)のイソシアネート基(NCO)との当量比(NCO/OH)が1/5〜2/1となる範囲が好ましく、なかでも1/2〜3/2となる範囲が特に好ましい。
【0037】
本発明のウレタン系塗料およびウレタン系塗料用硬化剤組成物には、塗膜に耐汚染性を付与するためにアルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)を配合する。アルコキシシランとしては、例えば、テトラアルコキシシランやトリアルコキシシランが挙げられ、その縮合物としては、例えば、テトラアルコキシシランやトリアルコキシシランに水を加えて縮合させた加水分解縮合物が挙げられ、その縮合度は通常100以下である。
【0038】
前記アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)としては、炭素原子数1〜20のアルコキシ基を有するアルコキシシランおよび/またはその縮合物が挙げられ、なかでも表面配向性の高い(アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)の塗膜表面濃度の高い)低汚染性の塗膜が形成できることから、炭素原子数4以上のアルコキシ基を有するものが好ましい。
【0039】
前記アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)の中では、親水性の高い低汚染性の塗膜が得られることから、縮合度が10〜100のアルコキシシランの縮合物が好ましい。更に、アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)の中では、ポリオール化合物(A)やポリイソシアネート化合物(B)との相溶性、塗膜物性に優れ、表面配向性の高い低汚染性に優れる塗膜を形成できることから、炭素原子数1〜3のアルコキシ基と炭素原子数4〜20のアルコキシ基が混在しているもの、例えば、分子内に炭素原子数1〜3のアルコキシ基と炭素原子数4〜20のアルコキシ基を有するものや、炭素原子数1〜3のアルコキシ基を有するものと炭素原子数4〜20のアルコキシ基を有するものの混合物が好ましく、分子内に炭素原子数1〜3のアルコキシ基と炭素原子数4〜20のアルコキシ基を有するものが特に好ましい。
【0040】
なお、アルコキシシランの縮合物の市販品としては、例えば、コルコート株式会社製のMSI51、同ESI28、同ESI40、同HAS−1、同HAS−10(いずれもテトラアルコキシシランの加水分解縮合物)、信越化学工業株式会社製のAFP−1(トリアルコキシシランの加水分解縮合物)、三菱化学株式会社製のMS−51、MS−56(いずれもテトラメトキシシランの加水分解縮合物)、MS−56S−B、MS−58B30(いずれもテトラメトキシシランの加水分解縮合物でメトキシ基の一部がブトキシ基に置換されているもの)等を挙げることができる。
【0041】
これらのアルコキシシランおよび/またはその縮合物は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上のものが併用されてもよい。
【0042】
本発明のウレタン系塗料において、前記アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)の使用量は、耐汚染性が良好で割れにくい塗膜が得られることから、前記ポリオール化合物(A)と前記ポリイソシアネート化合物(B)の合計100重量部(固形分換算)に対して10〜50重量部が好ましく、なかでも2〜10重量部が特に好ましい。また、本発明のウレタン系塗料用硬化剤組成物において、前記アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)の使用量は、耐汚染性が良好で割れにくい塗膜が得られることから、ポリイソシアネート化合物(B)100重量部(固形分換算)に対して10〜300重量部が好ましく、なかでも20〜50重量部が特に好ましい。
【0043】
本発明のウレタン系塗料およびウレタン系塗料用硬化剤組成物では、酸性基を有する化合物(D)を用いるが、ここでいう酸性基とは、ブレンステッドの酸の定義であるプロトンを与えることの出来る官能基、および、その官能基の水素または水酸基を炭化水素および/または炭素に置換した基を指す。例えば、ブレンステッドの定義にある代表的な酸である塩酸(HCl)を例にとった場合、CH3−Cl、−CH2−Cl、>CH−Cl、≡C−ClやC6H5−Cl中の塩素が酸性基である。他の代表的なブレンステッド酸であるフッ化水素酸(HF)の場合はF(フッ素)基、シアン化水素(HCN)の場合はCN(シアノ)基、硝酸(HNO3)の場合はNO2(ニトロ)基、硫酸(H2SO4)の場合はSO2(スルホニル)基であり、酢酸(CH3COOH)や安息香酸(C6H5COOH)、フェノール(C6H5OH)のように炭化水素に結合しているブレンステッド酸の場合は、COOH(カルボン酸)基、OH(水酸)基が酸性基である。
【0044】
前記酸性基を有する化合物(D)としては、酸性基を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、下記(1)〜(5)の化合物が挙げられる。
【0045】
(1)無機酸、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼酸、フッ化水素酸、炭酸等。
(2)酸性基を有する有機化合物であって、活性水素とイソシアネート基とを有する化合物、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)とカルボキシル基と水酸基を有する化合物(例えば、12―ヒドロキシステアリン酸やひまし油脂肪酸等)をウレタン化反応させて得られる酸性基を有するモノイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物と前記カルボキシル基と水酸基を有する化合物をイソシアネート基が過剰な条件でウレタン化反応させて得られる酸性基を有するポリイソシアネート等。
(3)酸性基を有する有機化合物であって、活性水素を有するが、イソシアネート基を有しない化合物、例えば、酢酸、安息香酸、アジピン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、フマル酸、イタコン酸、無水トリメリット酸等のカルボン酸、フッ化エチルアルコール、2−シアノエタノール、クロロエチルアルコール、パラトルエンスルホン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等。
(4)酸性基を有する有機化合物であって、活性水素を有せず、イソシアネート基を有する化合物、例えば、パラトルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)、クロロスルホニルイソシネート、4−クロロフェニルイソシネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)とクロロエチルアルコールをウレタン化反応させて得られる酸性基を有するモノイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物とクロロエチルアルコールをイソシアネート基が過剰な条件でウレタン化反応させて得られる酸性基を有するポリイソシアネート等。
(5)酸性基を有する有機化合物であって、活性水素とイソシアネート基とを有しない化合物、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水ピロメリット酸等のカルボン酸無水物、パラトルエンスルホン酸メチル、リン酸トリメチルエステル等のエステル化合物、クロロトルエン、クロロエチルビニルエーテル、塩化ビニル樹脂等のハロゲン化合物、シアノアクリレート、ジフェニルスルホン、パラトルエンスルホン酸メチル等。
【0046】
これら酸性基を有する化合物(D)のなかでも、前記(2)と(4)のイソシアネート基を有する有機化合物は、ポリオール化合物(A)と反応して塗膜中に組み込まれるため、雨水などにより塗膜外へ流出しにくくなり、塗膜の低汚染機能を長期間持続できる点で好ましく、また、前記(4)と(5)の活性水素を有しない有機化合物は、ポリイソシアネート化合物(B)を含有する硬化剤組成物に添加してもイソシアネート基と反応せず保存安定性が良好である点で好ましい。さらに、前記(4)の活性水素を有せず、イソシアネート基を有する有機化合物は、ポリイソシアネート化合物(B)を含有してなる硬化剤組成物に添加しても保存安定性が良好で、しかも、雨水などにより塗膜外へ流出しにくくなり、塗膜の低汚染機能を長期間持続できことからより好ましく、パラトルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)が最も好ましい。
【0047】
なお、前記(2)中のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物と前記カルボキシル基と水酸基を有する化合物をイソシアネート基が過剰な条件でウレタン化反応させて得られる酸性基を有するポリイソシアネートや、前記(4)中のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物とクロロエチルアルコールをイソシアネート基が過剰な条件でウレタン化反応させて得られる酸性基を有するポリイソシアネート等の酸性基を有するポリイソシアネートは、前記したように酸性基を有する化合物(D)であると同時にポリイソシアネート化合物(B)であるため、本発明のウレタン系塗料やウレタン系塗料用硬化剤組成物では、更にポリイソシアネート化合物(B)を添加する必要はない。
【0048】
本発明のウレタン系塗料において、前記酸性基を有する化合物(D)の使用量は、低汚染機能が長期間持続できる塗膜が得られることから、前記ポリオール化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)の合計100重量部(固形分換算)に対して1〜30重量部が好ましく、なかでも3〜20重量部が特に好ましい。また、本発明のウレタン系塗料用硬化剤組成物において、前記酸性基を有する化合物(D)の使用量は、低汚染機能が長期間持続できるな塗膜が得られることから、ポリイソシアネート化合物(B)100重量部(固形分換算)に対して1〜200重量部が好ましく、なかでも5〜100重量部が特に好ましい。
【0049】
本発明のウレタン系塗料は、通常ポリオール化合物(A)を主成分とする主剤とポリイソシアネート化合物(B)を主成分とする硬化剤組成物とからなる2液型塗料として用いるが、1液型塗料であってもよい。1液型塗料である場合、前記したようにポリイソシアネート化合物(B)はブロック化ポリイソシアネートの形態で使用する。2液型塗料の場合、前記アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)と酸性基を有する化合物(D)は硬化剤組成物中に添加しておくか、主剤と硬化剤組成物とを混合する際に添加することが好ましい。
【0050】
本発明のウレタン系塗料は、前記(A)〜(D)の4成分の他に、必要に応じて錫触媒等の硬化触媒、顔料、希釈剤、紫外線吸収剤、光安定剤、タレ防止剤、消泡剤、レベリング剤などの各種添加剤を添加することができる。2液型塗料の場合、これらの添加剤は、主剤中に添加しておくか、主剤と硬化剤組成物とを混合する際に添加することが好ましい。なお、ウレタン化触媒として錫触媒を用いる場合、その使用量は、前記ポリオール化合物(A)と前記ポリイソシアネート化合物(B)の合計100重量部(固形分換算)に対して0.001〜1重量部が好ましい。また、顔料の使用量は、前記ポリオール化合物(A)と前記ポリイソシアネート化合物(B)の合計100重量部(固形分換算)に対して10〜70重量部が好ましい。
【0051】
本発明のウレタン系塗料およびウレタン系塗料用硬化剤組成物としては、各種の不活性溶剤の一種又は二種以上で希釈することもできる。その具体例としては、トルエン、キシレン、スワゾール(コスモ石油株式会社製の芳香族系溶剤)、LAWS(シェル化学株式会社製の脂肪族系溶剤)、ソルベッソ(エクソン化学株式会社製の芳香族系溶剤)等の芳香族系溶剤及びその水素添加物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤などが挙げられる。
【0052】
本発明のウレタン系塗料および本発明のウレタン系塗料用硬化剤組成物を用いた塗料は、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成形板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用することができ、主に建築物、土木構築物等の躯体の保護に使用するものである。このとき、これらのウレタン系塗料は最終の仕上面として施されるものであることが好ましいが、基材に直接塗装することもできるし、何らかの表面処理(下地処理等)を施した上に塗装することも可能である。
【0053】
また、本発明のウレタン系塗料および本発明のウレタン系塗料用硬化剤組成物を用いた塗料は、各種添加剤類を加えて塗料化した後、各種溶剤で希釈してから、浸積、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装、ロールコーター、フローコーター等種々の方法により塗装することができる。このとき、塗装する際の塗料全体の溶剤成分のうち、全体の50重量%以上が脂肪族炭化水素である場合、改修工事にも好適に用いることができる。これは、溶解力の強い溶剤を使用した塗料を再塗装すると、リフティングと呼ばれる旧塗膜のちぢみ現象が発生するが、脂肪族炭化水素が50%重量以上含有されている場合は、このようなリフティング現象が発生しないためである。
【0054】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。なお、例中の「部」及び「%」は、重量基準である。
【0055】
合成例1〔酸性基を有するポリイソシアネートの合成〕
攪拌機,温度計、アリーン冷却管、乾燥窒素導入管を組んだ反応装置に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物(イソシアネート基含有率23.5%)536部を仕込み、攪拌しながら温度を70℃まで昇温し、発熱、発泡に注意して必要に応じ冷却しながら12−ヒドロキシステアリン酸30部を仕込み、イソシアネート基含有率が20.6%になるまで同温度で8時間ウレタン化反応を行い、ガードナー粘度Z3.2−Z4のカルボキシル基含有のポリイソシアネート(bd−1)を得た。
【0056】
合成例2(活性水素を有しないモノイソシアネートの合成)
攪拌機,温度計、アリーン冷却管、乾燥窒素導入管を組んだ反応装置に、イソホロンジイソシアネート(IPDI)222部を仕込み、攪拌しながら温度を70℃まで昇温し、発熱、発泡に注意して必要に応じ冷却しながらクロロエチルアルコール80.5部を仕込み、イソシアネート基含有率が13.9%になるまで同温度で8時間ウレタン化反応を行い、活性水素を有しないモノイソシアネート(d−1)を得た。
【0057】
実施例1〜3および比較例1
ポリイソシアネート化合物(B)および酸性基を有する化合物(D)として前記(bd−1)を、ポリイソシアネート化合物(B)として下記(b−1)を、アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)として下記(c−1)または(c−2)を、酸性基を有する化合物(D)として下記(d−1)または(d−2)を、それぞれ第1表に示す配合量で配合して、本発明と比較用のウレタン系塗料用硬化剤組成物を得た。
【0058】
(b−1):ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物を12−ヒドロキシステアリルアルコールで変性したもの(イソシネート基含有率22.5%)
(c−1):MS−56SB30〔三菱化学(株)製、炭素原子数1と4のアルコキシ基が混在したアルコキシシラン縮合物、縮合度18〕
(c−2):MS−58B30〔三菱化学(株)製、炭素原子数1と4のアルコキシ基が混在したアルコキシシラン縮合物、縮合度15〕
(bd−1):合成例1で得たカルボキシル基を有するポリイソシアネート
(d−1):合成例2で得た活性水素を有しないモノイソシアネート
(d−2):パラトルエンスルホニルイソシアネート
【0059】
次いで、主剤であるポリオール化合物(A)として下記(a−1)100部に対して、NCO/OH=1/1(モル比)になるように得られたウレタン系塗料用硬化剤組成物をそれぞれ配合し、更に溶剤としてスワゾール1000を20部混合して、本発明と比較用のウレタン系塗料を得た。
(a−1):メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸、スチレン、アルキド樹脂、その他の(メタ)アクリル酸系モノマーから得られる非水分散型アクリルポリオール、揮発分58%、酸価2.4、水酸基価25、数平均分子量12000、溶剤=LAWS/スワゾール1000=80/20(重量比)
【0060】
得られたウレタン系塗料を、それぞれアルミニウム板〔パルテック社製AM−713(A5052P)〕にアプリケータを用いて膜厚が50μmになるように塗工し、気温25℃、湿度60%RHで7日間養生させて暴露試験用サンプル板を得た。
【0061】
・屋外暴露試験
得られた暴露試験用サンプル板を、千葉県市原市で南面を向き、水平に対して45度の角度で塗膜が上面になるように設置して屋外曝露試験を行い、7日、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月経過した後、得られた暴露試験用サンプル板について、協和界面科学株式会社製CA−X型接触角測定装置にて水の接触角の測定を行った。結果を第1表に示す。なお、比較例1では、得られた暴露試験用サンプル板を2.5%硫酸水に20℃で24時間浸漬し、付着した硫酸水を水洗、乾燥した後、屋外暴露試験に用いた。
【0062】
実施例4〜6および比較例2
ポリイソシアネート化合物(B)として下記(b−2)を、アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)として前記(c−2)を、酸性基を有する化合物(D)として前記(d−3)を、それぞれ第2表に示す配合両で配合して、本発明と比較用のウレタン系塗料用硬化剤組成物を得た。
【0063】
(b−2):バーノックDN−980S〔(大日本インキ化学工業(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物をトリメチルペンタンジオールで変性したもの(イソシネート基含有率20.5%))
【0064】
次いで、主剤であるポリオール化合物(A)として下記(a−2)100部に対して、(b−2)がそれぞれ第2表に示す配合量(15〜18部)になる量のウレタン系塗料用硬化剤組成物と、ウレタン化触媒としてのジブチル錫ジラウレート10%溶液0.7部を配合して、本発明と比較用のウレタン系塗料を得た。(a−2):アクリディックA−801〔大日本インキ化学工業株式会社製の溶液型アクリルポリオール、揮発分50%、酸価0.5、水酸基価50、溶剤=トルエン/酢酸ブチル=80/20(重量比)〕
【0065】
得られたウレタン系塗料を、それぞれアルミニウム板〔パルテック社製AM−713(A5052P)〕にアプリケータを用いて膜厚が50μmになるように塗工し、80℃30分の条件で焼き付け硬化させて暴露試験用サンプル板を得、実施例1〜3と同様に屋外暴露試験を行った、結果を第2表に示す。なお、比較例2では、得られた暴露試験用サンプル板を2.5%硫酸水に20℃で24時間浸漬し、付着した硫酸水を水洗、乾燥した後、屋外暴露試験に用いた。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【発明の効果】
本発明のウレタン系塗料とウレタン系塗料用硬化剤組成物からなる塗膜は、塗膜形成後の酸処理なしで汚染防止機能を発現し、しかも、汚染防止機能を長期間持続することができ、低汚染性ウレタン系塗料として最適である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、低汚染性で、低汚染機能が長期間持続するウレタン系塗料、およびこの塗料に用いるウレタン系塗料用硬化性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窯業系素材、鉄鋼、建築物、土木構築物等の産業製品の保護、意匠性の付与、美観性の向上等のため塗装仕上げが行われている。特に、近年フッ素樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等の高耐久性塗料の出現により、前記産業製品の耐候性、耐食性の保護においては大きな進歩を遂げている。しかし、最近、都心や都市近郊では、自動車等からの排出ガスにより大気中に油性の汚染物質が浮遊している状況で、それら油性の汚染物質が、高耐久性塗料から形成された塗膜表面に付着し、すす状あるいはすじ状の雨垂れ汚染が発生するという問題がある。
【0003】
このような雨垂れ汚染の汚染防止方法としては、塗膜表面の濡れ性を向上させることで表面に付着した汚染物質を雨水等により洗い流すことができ、例えば、特定のアルコキシシランを配合することにより塗膜表面を親水性にして、油性の汚染物質を付着しにくくし、付着した場合でも降雨等の水滴とともに洗い流してしまうという技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、この方法では、塗料を素材に塗布し、塗膜を形成した後、塗膜表面を酸で処理することを必要としているため、塗膜形成直後から雨垂れ汚染防止機能が発現しない。更に、この塗膜はシラノール基が徐々に脱水縮合してシロキサン結合となってしまい、徐々に塗膜表面の親水性が失われてしまうため、長期の汚染防止機能が損なわれてしまう。
【0005】
【特許文献1】
特許第2869443号公報(第2−5頁)
【0006】
【発明が解決しようとしている課題】
本発明が解決しようとしている課題は、塗膜形成後の酸処理なしで汚染防止機能を発現し、しかも、汚染防止機能を長期間持続することができるウレタン系塗料、および、このウレタン系塗料用として好適な硬化剤組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、ポリオール化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)とアルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)とを含有する低汚染性のウレタン系塗料中に、酸性基を有する化合物(D)を含有させることで、塗膜形成後の酸処理の手間を必要とせず、塗膜形成直後から汚染防止機能を発現させることができると共に、シラノール基の脱水縮合を抑制するため長期間にわたり汚染防止機能が持続すること、および、酸性基を有する化合物(D)はポリイソシアネート化合物(B)を含有するウレタン系塗料用硬化剤中に含有させることが好ましいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリオール化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)とアルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)と酸性基を有する化合物(D)を含有することを特徴とするウレタン系塗料を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、ポリイソシアネート化合物(B)と酸性基を有する化合物(D)を含有することを特徴とするウレタン系塗料用硬化剤組成物も提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のウレタン系塗料で用いるポリオール化合物(A)としては、特に限定はなく、例えばアクリルポリオール、アルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール等が挙げられ、なかでも、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましく、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールが特に好ましい。これらのポリオールは、単独で用いても、2種以上併用しても構わない。
【0011】
前記アクリルポリオールとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸系モノマーと、これと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸系モノマーおよび/またはその他の不飽和モノマーを共重合させることによって得られる(メタ)アクリル系ポリオール樹脂類が挙げられる。
【0012】
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の水酸基をもつ(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールモノアクリレート等のアルキレングリコールモノアクリレート類;ポリエチレングリコールモノアクリレート等のポリアルキレングリコールモノアクリレート類;ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;アリルアルコール、メタリルアルコール等のアルコール類;これら水酸基含有(メタ)アクリル酸系モノマーとラクトン類、例えば、ε−カプロラクトンやγ−バレロラクトンなどとの付加物;グリセリンの(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパンの(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル類などを挙げることができる。
【0013】
また、前記水酸基含有(メタ)アクリル酸系モノマーと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸系モノマーおよびその他の不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド類;
【0014】
ビニルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン等のシラン系不飽和モノマー;
【0015】
パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、等のフッ素系不飽和モノマー;スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ジアリルフタレート等の不飽和モノマー等が挙げられる。
【0016】
さらに、前記その他の不飽和モノマーとしては、不飽和結合を有するものであれば、ポリブタジエン、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の樹脂を使用することもできる。
【0017】
前記アクリルポリオール類は、通常、溶剤系、水系、水分散型、非水分散型(NAD)等のいずれの形態であってもよい。
【0018】
前記アルキレンポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、2−ヒドロキシステアリルアルコール、12−ヒドロキシステアリルアルコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,2−トリメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−3−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−3−ベンジル−1,3−プロパンジオール、2,2―ジメチル−3−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,3,3−テトラメチル−1,4−ブタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2−ヒドロキシパルミチルアルコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(通称水添ビスフェノールA)等が挙げられる。
【0019】
前記ポリエステルポリオールとしては、ポリカルボン酸、これらポリカルボン酸のエステル又は酸無水物等と、低分子ポリオールや低分子アミノアルコールの反応で得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。また、前記低分子ポリオールを開始剤とし、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールも挙げられる。
【0020】
前記ポリカルボン酸、ポリカルボン酸のエステル又は酸無水物としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸、これらポリカルボン酸のエステル又は酸無水物等が挙げられる。
【0021】
また、前記低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、前記低分子アミノアルコールとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0022】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前記ポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオールと、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との反応で得られるもの等が挙げられる。
【0023】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルを開環重合させたポリ(オキシアルキレン)ポリオール;前記したポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールを開始剤として、前記環状エーテルを重合させたポリエステルエーテルポリオール等が挙げられる。
【0024】
前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基含有ポリブタジエン、水素添加の水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水素添加の水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等が挙げられる。前記動植物系ポリオールとしては、ヒマシ油系ポリオール、絹フィブロイン等が挙げられる。
【0025】
また、水酸基を2個以上有するものであれば、ダイマー酸系ポリオール、水素添加ダイマー酸系ポリオール、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ポリビニルアルコール等の樹脂類も、ポリオール化合物(A)として使用できる。
【0026】
これらポリオール化合物(A)としては、粘度または軟化温度が適当で作業性に優れ、耐溶剤性、機械的性質、耐衝撃性、伸びが良好で、硬度と弾性のバランスのよい均質なポリウレタン樹脂が得られることから、数平均分子量300〜100,000、酸価0〜200mgKOH/g、水酸基価10〜300mgKOH/gのポリオール化合物が好ましい。これらポリオール化合物(A)のなかでも、数平均分子量は、本発明の塗料中の他の成分との相溶性が良好で、耐候性、耐汚染性に優れる硬化塗膜が得られることから、2,000〜100,000であることが好ましく、3,000〜50,000であることがより好ましいし、水酸基価は、硬化性が良好で、耐水性、耐汚染性に優れる硬化塗膜が得られることから、10〜300mgKOH/gであることが好ましく、50〜200mgKOH/gであることがより好ましい。
【0027】
なお、ポリオール化合物(A)は、通常有機溶剤に溶解した溶液で用いる。この溶液の濃度は、通常10〜90重量%、好ましくは40〜70重量%である。
【0028】
本発明のウレタン系塗料およびウレタン系塗料用硬化剤組成物で用いるポリイソシアネート化合物(B)としては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;
【0029】
トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;これらポリイソシアネートを前記アルキレンポリオールやアルコールで変性したもの、これらポリイソシアネートと水との付加物、これらポリイソシアネート同士の環化重合物、具体的にはアダクト化物、ビウレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド化物、アロファネート化物等が挙げられる。また、これらのポリイソシアネートは単独又は二種以上の混合物で使用することができる。
【0030】
また、前記ポリイソシアネート化合物(B)としては、ポリイソシアネート化合物(B)であって、かつ酸性基を有する化合物(D)である化合物、即ち酸性基を有するポリイソシアネートを用いることもできる。この場合、本発明のウレタン系塗料やウレタン系塗料用硬化剤組成物に別途酸性基を有する化合物(D)を添加する必要はない。
【0031】
前記酸性基を有するポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物と12−ヒドロキシステアリン酸やひまし油脂肪酸等のカルボキシル基と水酸基を有する化合物をイソシアネート基が過剰な条件でウレタン化反応させて得られるもの、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物とクロロエチルアルコールをイソシアネート基が過剰な条件でウレタン化反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0032】
これらポリイソシアネート化合物(B)の中では、蒸気圧が高いため毒性が少なく、耐候性に優れる塗膜が得られる点で、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化物、アロファネート化物、ビウレット化物、ウレタン化物が好ましく、イソシアネート基に結合した脂肪族炭化水素の炭素原子数が4〜15の脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化物、アロファネート化物、ビウレット化物、ウレタン化物がより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化物、アロファネート化物、ビウレット化物、ウレタン化物が特に好ましい。また、耐久性に優れる塗膜が得られる点で、ヘキサメチレンジイソシアネートにイソホロンジイソシアネートや水素添加キシリレンジイソシアネート等の環構造を持つポリイソシアネートを共イソシアヌレート化したものや、共アロファネート化ものが好ましい。さらに、弱溶剤に可溶でアルコキシシランおよび/またはその縮合物との相溶性が良好である点で、炭素原子数4〜20のアルコールで変成したアロファネート化物やイソシアヌレート化物が好ましく、炭素数8〜20のアルコールで変性したアロファネート化物やイソシアヌレート化物が特に好ましい。前記炭素原子数4〜20のアルコールとしては、2−エチルヘキサノールや12−ヒドロキシステアリルアルコールが好ましい。
【0033】
本発明においては、平均イソシアネート基数、相溶性、反応性等を調整するためにポリイソシアネート化合物(B)の一部をモノイソシアネート化合物で置き換えてもよい。モノイソシアネート化合物としては、例えば、ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。これらは単独又は2種以上使用してもよい。置き換えに用いるモノイソシアネート化合物の使用量は、通常ポリイソシアネート化合物(B)の10重量%以下である。また、モノイソシアネートの使用時期は、特に制限はなく、粘度や変性の程度により適宜選択すればよい。
【0034】
なお、前記ポリイソシアネート化合物(B)としては、本発明のウレタン系塗料を1液化するためにアルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類などのブロック剤を用いたブロック化ポリイソシアネートの形態で使用することもできる。
【0035】
なお、ポリイソシアネート化合物(B)も、通常有機溶剤に溶解した溶液で用いる。この溶液の濃度は、通常10〜90重量%、好ましくは40〜70重量%である。
【0036】
前記ポリオール化合物(A)と前記ポリイソシネート化合物(B)の配合比率としては、架橋が十分で硬化性、耐久性、耐汚染性に優れる塗膜が得られることから、ポリオール(A)中の水酸基(OH)とポリイソシアネート(B)のイソシアネート基(NCO)との当量比(NCO/OH)が1/5〜2/1となる範囲が好ましく、なかでも1/2〜3/2となる範囲が特に好ましい。
【0037】
本発明のウレタン系塗料およびウレタン系塗料用硬化剤組成物には、塗膜に耐汚染性を付与するためにアルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)を配合する。アルコキシシランとしては、例えば、テトラアルコキシシランやトリアルコキシシランが挙げられ、その縮合物としては、例えば、テトラアルコキシシランやトリアルコキシシランに水を加えて縮合させた加水分解縮合物が挙げられ、その縮合度は通常100以下である。
【0038】
前記アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)としては、炭素原子数1〜20のアルコキシ基を有するアルコキシシランおよび/またはその縮合物が挙げられ、なかでも表面配向性の高い(アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)の塗膜表面濃度の高い)低汚染性の塗膜が形成できることから、炭素原子数4以上のアルコキシ基を有するものが好ましい。
【0039】
前記アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)の中では、親水性の高い低汚染性の塗膜が得られることから、縮合度が10〜100のアルコキシシランの縮合物が好ましい。更に、アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)の中では、ポリオール化合物(A)やポリイソシアネート化合物(B)との相溶性、塗膜物性に優れ、表面配向性の高い低汚染性に優れる塗膜を形成できることから、炭素原子数1〜3のアルコキシ基と炭素原子数4〜20のアルコキシ基が混在しているもの、例えば、分子内に炭素原子数1〜3のアルコキシ基と炭素原子数4〜20のアルコキシ基を有するものや、炭素原子数1〜3のアルコキシ基を有するものと炭素原子数4〜20のアルコキシ基を有するものの混合物が好ましく、分子内に炭素原子数1〜3のアルコキシ基と炭素原子数4〜20のアルコキシ基を有するものが特に好ましい。
【0040】
なお、アルコキシシランの縮合物の市販品としては、例えば、コルコート株式会社製のMSI51、同ESI28、同ESI40、同HAS−1、同HAS−10(いずれもテトラアルコキシシランの加水分解縮合物)、信越化学工業株式会社製のAFP−1(トリアルコキシシランの加水分解縮合物)、三菱化学株式会社製のMS−51、MS−56(いずれもテトラメトキシシランの加水分解縮合物)、MS−56S−B、MS−58B30(いずれもテトラメトキシシランの加水分解縮合物でメトキシ基の一部がブトキシ基に置換されているもの)等を挙げることができる。
【0041】
これらのアルコキシシランおよび/またはその縮合物は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上のものが併用されてもよい。
【0042】
本発明のウレタン系塗料において、前記アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)の使用量は、耐汚染性が良好で割れにくい塗膜が得られることから、前記ポリオール化合物(A)と前記ポリイソシアネート化合物(B)の合計100重量部(固形分換算)に対して10〜50重量部が好ましく、なかでも2〜10重量部が特に好ましい。また、本発明のウレタン系塗料用硬化剤組成物において、前記アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)の使用量は、耐汚染性が良好で割れにくい塗膜が得られることから、ポリイソシアネート化合物(B)100重量部(固形分換算)に対して10〜300重量部が好ましく、なかでも20〜50重量部が特に好ましい。
【0043】
本発明のウレタン系塗料およびウレタン系塗料用硬化剤組成物では、酸性基を有する化合物(D)を用いるが、ここでいう酸性基とは、ブレンステッドの酸の定義であるプロトンを与えることの出来る官能基、および、その官能基の水素または水酸基を炭化水素および/または炭素に置換した基を指す。例えば、ブレンステッドの定義にある代表的な酸である塩酸(HCl)を例にとった場合、CH3−Cl、−CH2−Cl、>CH−Cl、≡C−ClやC6H5−Cl中の塩素が酸性基である。他の代表的なブレンステッド酸であるフッ化水素酸(HF)の場合はF(フッ素)基、シアン化水素(HCN)の場合はCN(シアノ)基、硝酸(HNO3)の場合はNO2(ニトロ)基、硫酸(H2SO4)の場合はSO2(スルホニル)基であり、酢酸(CH3COOH)や安息香酸(C6H5COOH)、フェノール(C6H5OH)のように炭化水素に結合しているブレンステッド酸の場合は、COOH(カルボン酸)基、OH(水酸)基が酸性基である。
【0044】
前記酸性基を有する化合物(D)としては、酸性基を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、下記(1)〜(5)の化合物が挙げられる。
【0045】
(1)無機酸、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼酸、フッ化水素酸、炭酸等。
(2)酸性基を有する有機化合物であって、活性水素とイソシアネート基とを有する化合物、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)とカルボキシル基と水酸基を有する化合物(例えば、12―ヒドロキシステアリン酸やひまし油脂肪酸等)をウレタン化反応させて得られる酸性基を有するモノイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物と前記カルボキシル基と水酸基を有する化合物をイソシアネート基が過剰な条件でウレタン化反応させて得られる酸性基を有するポリイソシアネート等。
(3)酸性基を有する有機化合物であって、活性水素を有するが、イソシアネート基を有しない化合物、例えば、酢酸、安息香酸、アジピン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、フマル酸、イタコン酸、無水トリメリット酸等のカルボン酸、フッ化エチルアルコール、2−シアノエタノール、クロロエチルアルコール、パラトルエンスルホン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等。
(4)酸性基を有する有機化合物であって、活性水素を有せず、イソシアネート基を有する化合物、例えば、パラトルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)、クロロスルホニルイソシネート、4−クロロフェニルイソシネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)とクロロエチルアルコールをウレタン化反応させて得られる酸性基を有するモノイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物とクロロエチルアルコールをイソシアネート基が過剰な条件でウレタン化反応させて得られる酸性基を有するポリイソシアネート等。
(5)酸性基を有する有機化合物であって、活性水素とイソシアネート基とを有しない化合物、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水ピロメリット酸等のカルボン酸無水物、パラトルエンスルホン酸メチル、リン酸トリメチルエステル等のエステル化合物、クロロトルエン、クロロエチルビニルエーテル、塩化ビニル樹脂等のハロゲン化合物、シアノアクリレート、ジフェニルスルホン、パラトルエンスルホン酸メチル等。
【0046】
これら酸性基を有する化合物(D)のなかでも、前記(2)と(4)のイソシアネート基を有する有機化合物は、ポリオール化合物(A)と反応して塗膜中に組み込まれるため、雨水などにより塗膜外へ流出しにくくなり、塗膜の低汚染機能を長期間持続できる点で好ましく、また、前記(4)と(5)の活性水素を有しない有機化合物は、ポリイソシアネート化合物(B)を含有する硬化剤組成物に添加してもイソシアネート基と反応せず保存安定性が良好である点で好ましい。さらに、前記(4)の活性水素を有せず、イソシアネート基を有する有機化合物は、ポリイソシアネート化合物(B)を含有してなる硬化剤組成物に添加しても保存安定性が良好で、しかも、雨水などにより塗膜外へ流出しにくくなり、塗膜の低汚染機能を長期間持続できことからより好ましく、パラトルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)が最も好ましい。
【0047】
なお、前記(2)中のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物と前記カルボキシル基と水酸基を有する化合物をイソシアネート基が過剰な条件でウレタン化反応させて得られる酸性基を有するポリイソシアネートや、前記(4)中のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物とクロロエチルアルコールをイソシアネート基が過剰な条件でウレタン化反応させて得られる酸性基を有するポリイソシアネート等の酸性基を有するポリイソシアネートは、前記したように酸性基を有する化合物(D)であると同時にポリイソシアネート化合物(B)であるため、本発明のウレタン系塗料やウレタン系塗料用硬化剤組成物では、更にポリイソシアネート化合物(B)を添加する必要はない。
【0048】
本発明のウレタン系塗料において、前記酸性基を有する化合物(D)の使用量は、低汚染機能が長期間持続できる塗膜が得られることから、前記ポリオール化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)の合計100重量部(固形分換算)に対して1〜30重量部が好ましく、なかでも3〜20重量部が特に好ましい。また、本発明のウレタン系塗料用硬化剤組成物において、前記酸性基を有する化合物(D)の使用量は、低汚染機能が長期間持続できるな塗膜が得られることから、ポリイソシアネート化合物(B)100重量部(固形分換算)に対して1〜200重量部が好ましく、なかでも5〜100重量部が特に好ましい。
【0049】
本発明のウレタン系塗料は、通常ポリオール化合物(A)を主成分とする主剤とポリイソシアネート化合物(B)を主成分とする硬化剤組成物とからなる2液型塗料として用いるが、1液型塗料であってもよい。1液型塗料である場合、前記したようにポリイソシアネート化合物(B)はブロック化ポリイソシアネートの形態で使用する。2液型塗料の場合、前記アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)と酸性基を有する化合物(D)は硬化剤組成物中に添加しておくか、主剤と硬化剤組成物とを混合する際に添加することが好ましい。
【0050】
本発明のウレタン系塗料は、前記(A)〜(D)の4成分の他に、必要に応じて錫触媒等の硬化触媒、顔料、希釈剤、紫外線吸収剤、光安定剤、タレ防止剤、消泡剤、レベリング剤などの各種添加剤を添加することができる。2液型塗料の場合、これらの添加剤は、主剤中に添加しておくか、主剤と硬化剤組成物とを混合する際に添加することが好ましい。なお、ウレタン化触媒として錫触媒を用いる場合、その使用量は、前記ポリオール化合物(A)と前記ポリイソシアネート化合物(B)の合計100重量部(固形分換算)に対して0.001〜1重量部が好ましい。また、顔料の使用量は、前記ポリオール化合物(A)と前記ポリイソシアネート化合物(B)の合計100重量部(固形分換算)に対して10〜70重量部が好ましい。
【0051】
本発明のウレタン系塗料およびウレタン系塗料用硬化剤組成物としては、各種の不活性溶剤の一種又は二種以上で希釈することもできる。その具体例としては、トルエン、キシレン、スワゾール(コスモ石油株式会社製の芳香族系溶剤)、LAWS(シェル化学株式会社製の脂肪族系溶剤)、ソルベッソ(エクソン化学株式会社製の芳香族系溶剤)等の芳香族系溶剤及びその水素添加物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤などが挙げられる。
【0052】
本発明のウレタン系塗料および本発明のウレタン系塗料用硬化剤組成物を用いた塗料は、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成形板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用することができ、主に建築物、土木構築物等の躯体の保護に使用するものである。このとき、これらのウレタン系塗料は最終の仕上面として施されるものであることが好ましいが、基材に直接塗装することもできるし、何らかの表面処理(下地処理等)を施した上に塗装することも可能である。
【0053】
また、本発明のウレタン系塗料および本発明のウレタン系塗料用硬化剤組成物を用いた塗料は、各種添加剤類を加えて塗料化した後、各種溶剤で希釈してから、浸積、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装、ロールコーター、フローコーター等種々の方法により塗装することができる。このとき、塗装する際の塗料全体の溶剤成分のうち、全体の50重量%以上が脂肪族炭化水素である場合、改修工事にも好適に用いることができる。これは、溶解力の強い溶剤を使用した塗料を再塗装すると、リフティングと呼ばれる旧塗膜のちぢみ現象が発生するが、脂肪族炭化水素が50%重量以上含有されている場合は、このようなリフティング現象が発生しないためである。
【0054】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。なお、例中の「部」及び「%」は、重量基準である。
【0055】
合成例1〔酸性基を有するポリイソシアネートの合成〕
攪拌機,温度計、アリーン冷却管、乾燥窒素導入管を組んだ反応装置に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物(イソシアネート基含有率23.5%)536部を仕込み、攪拌しながら温度を70℃まで昇温し、発熱、発泡に注意して必要に応じ冷却しながら12−ヒドロキシステアリン酸30部を仕込み、イソシアネート基含有率が20.6%になるまで同温度で8時間ウレタン化反応を行い、ガードナー粘度Z3.2−Z4のカルボキシル基含有のポリイソシアネート(bd−1)を得た。
【0056】
合成例2(活性水素を有しないモノイソシアネートの合成)
攪拌機,温度計、アリーン冷却管、乾燥窒素導入管を組んだ反応装置に、イソホロンジイソシアネート(IPDI)222部を仕込み、攪拌しながら温度を70℃まで昇温し、発熱、発泡に注意して必要に応じ冷却しながらクロロエチルアルコール80.5部を仕込み、イソシアネート基含有率が13.9%になるまで同温度で8時間ウレタン化反応を行い、活性水素を有しないモノイソシアネート(d−1)を得た。
【0057】
実施例1〜3および比較例1
ポリイソシアネート化合物(B)および酸性基を有する化合物(D)として前記(bd−1)を、ポリイソシアネート化合物(B)として下記(b−1)を、アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)として下記(c−1)または(c−2)を、酸性基を有する化合物(D)として下記(d−1)または(d−2)を、それぞれ第1表に示す配合量で配合して、本発明と比較用のウレタン系塗料用硬化剤組成物を得た。
【0058】
(b−1):ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物を12−ヒドロキシステアリルアルコールで変性したもの(イソシネート基含有率22.5%)
(c−1):MS−56SB30〔三菱化学(株)製、炭素原子数1と4のアルコキシ基が混在したアルコキシシラン縮合物、縮合度18〕
(c−2):MS−58B30〔三菱化学(株)製、炭素原子数1と4のアルコキシ基が混在したアルコキシシラン縮合物、縮合度15〕
(bd−1):合成例1で得たカルボキシル基を有するポリイソシアネート
(d−1):合成例2で得た活性水素を有しないモノイソシアネート
(d−2):パラトルエンスルホニルイソシアネート
【0059】
次いで、主剤であるポリオール化合物(A)として下記(a−1)100部に対して、NCO/OH=1/1(モル比)になるように得られたウレタン系塗料用硬化剤組成物をそれぞれ配合し、更に溶剤としてスワゾール1000を20部混合して、本発明と比較用のウレタン系塗料を得た。
(a−1):メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸、スチレン、アルキド樹脂、その他の(メタ)アクリル酸系モノマーから得られる非水分散型アクリルポリオール、揮発分58%、酸価2.4、水酸基価25、数平均分子量12000、溶剤=LAWS/スワゾール1000=80/20(重量比)
【0060】
得られたウレタン系塗料を、それぞれアルミニウム板〔パルテック社製AM−713(A5052P)〕にアプリケータを用いて膜厚が50μmになるように塗工し、気温25℃、湿度60%RHで7日間養生させて暴露試験用サンプル板を得た。
【0061】
・屋外暴露試験
得られた暴露試験用サンプル板を、千葉県市原市で南面を向き、水平に対して45度の角度で塗膜が上面になるように設置して屋外曝露試験を行い、7日、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月経過した後、得られた暴露試験用サンプル板について、協和界面科学株式会社製CA−X型接触角測定装置にて水の接触角の測定を行った。結果を第1表に示す。なお、比較例1では、得られた暴露試験用サンプル板を2.5%硫酸水に20℃で24時間浸漬し、付着した硫酸水を水洗、乾燥した後、屋外暴露試験に用いた。
【0062】
実施例4〜6および比較例2
ポリイソシアネート化合物(B)として下記(b−2)を、アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)として前記(c−2)を、酸性基を有する化合物(D)として前記(d−3)を、それぞれ第2表に示す配合両で配合して、本発明と比較用のウレタン系塗料用硬化剤組成物を得た。
【0063】
(b−2):バーノックDN−980S〔(大日本インキ化学工業(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート化物をトリメチルペンタンジオールで変性したもの(イソシネート基含有率20.5%))
【0064】
次いで、主剤であるポリオール化合物(A)として下記(a−2)100部に対して、(b−2)がそれぞれ第2表に示す配合量(15〜18部)になる量のウレタン系塗料用硬化剤組成物と、ウレタン化触媒としてのジブチル錫ジラウレート10%溶液0.7部を配合して、本発明と比較用のウレタン系塗料を得た。(a−2):アクリディックA−801〔大日本インキ化学工業株式会社製の溶液型アクリルポリオール、揮発分50%、酸価0.5、水酸基価50、溶剤=トルエン/酢酸ブチル=80/20(重量比)〕
【0065】
得られたウレタン系塗料を、それぞれアルミニウム板〔パルテック社製AM−713(A5052P)〕にアプリケータを用いて膜厚が50μmになるように塗工し、80℃30分の条件で焼き付け硬化させて暴露試験用サンプル板を得、実施例1〜3と同様に屋外暴露試験を行った、結果を第2表に示す。なお、比較例2では、得られた暴露試験用サンプル板を2.5%硫酸水に20℃で24時間浸漬し、付着した硫酸水を水洗、乾燥した後、屋外暴露試験に用いた。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【発明の効果】
本発明のウレタン系塗料とウレタン系塗料用硬化剤組成物からなる塗膜は、塗膜形成後の酸処理なしで汚染防止機能を発現し、しかも、汚染防止機能を長期間持続することができ、低汚染性ウレタン系塗料として最適である。
Claims (16)
- ポリオール化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)とアルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)と酸性基を有する化合物(D)を含有することを特徴とするウレタン系塗料。
- 酸性基を有する化合物(D)が活性水素を有しない有機化合物である請求項1に記載のウレタン系塗料。
- 酸性基を有する化合物(D)がイソシアネート基を有し、活性水素を有しない有機化合物である請求項1に記載のウレタン系塗料。
- 酸性基を有する化合物(D)がパラトルエンスルホニルイソシアネートである請求項1に記載のウレタン系塗料。
- 酸性基を有する化合物(D)の含有量がポリイソシアネート化合物(B)100重量部に対して1〜200重量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載のウレタン系塗料。
- ポリイソシアネート化合物(B)が脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化物、アロファネート化物、ビウレット化物およびウレタン化物からなる群から選ばれる1種以上のポリイソシアネート化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載のウレタン系塗料。
- ポリオール化合物(A)がアクリルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールである請求項6に記載のウレタン系塗料。
- アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)が炭素原子数1〜3のアルコキシ基と炭素原子数4〜20のアルコキシ基が混在しているものである請求項7に記載のウレタン系塗料。
- ポリイソシアネート化合物(B)と酸性基を有する化合物(D)を含有することを特徴とするウレタン系塗料用硬化剤組成物。
- 酸性基を有する化合物(D)が活性水素を有しない有機化合物である請求項9に記載のウレタン系塗料用硬化剤組成物。
- 酸性基を有する化合物(D)がイソシアネート基を有し、活性水素を有しない有機化合物である請求項9に記載のウレタン系塗料用硬化剤組成物。
- 酸性基を有する化合物(D)がパラトルエンスルホニルイソシアネートである請求項9に記載のウレタン系塗料用硬化剤組成物。
- 酸性基を有する化合物(D)の含有量がポリイソシアネート化合物(B)100重量部に対して1〜200重量部である請求項9〜12のいずれか1項に記載のウレタン系塗料用硬化剤組成物。
- ポリイソシアネート化合物(B)が脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化物、アロファネート化物、ビウレット化物およびウレタン化物からなる群から選ばれる1種以上のポリイソシアネート化合物である請求項9〜12のいずれか1項に記載のウレタン系塗料用硬化剤組成物。
- さらに、アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)を含有する請求項14に記載のウレタン系塗料用硬化剤組成物。
- アルコキシシランおよび/またはその縮合物(C)が炭素原子数1〜3のアルコキシ基と炭素原子数4〜20のアルコキシ基が混在しているものである請求項15に記載のウレタン系塗料組成物。
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