JP2004251304A - 真空断熱材の製造方法並びに真空断熱材、および、真空断熱材を用いた断熱箱体および保温保冷機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】真空断熱材の製造において、芯材成形時のバインダーの付着量が少ないと剛性が不足することがある。また、芯材のバインダーとしてフェノール樹脂等の有機バインダーを用いると、環境や人体への影響が懸念されると共に、種々の揮発性成分が発生するため真空断熱材の断熱性能が悪化するという問題がある。
【解決手段】真空断熱材1の芯材2を成形するためのバインダーをガラス繊維の繊維化直後に付着させることにより剛性がある芯材2が得られる。また、バインダーとして炭水化物系の天然物を用いることにより、環境や人体への影響が少ない製造方法が提供できると共に、優れた断熱性能の真空断熱材を提供できる。
【選択図】 図1
【解決手段】真空断熱材1の芯材2を成形するためのバインダーをガラス繊維の繊維化直後に付着させることにより剛性がある芯材2が得られる。また、バインダーとして炭水化物系の天然物を用いることにより、環境や人体への影響が少ない製造方法が提供できると共に、優れた断熱性能の真空断熱材を提供できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、断熱を必要とする冷凍冷蔵庫、保温保冷容器、自動販売機、電気湯沸かし器、車両、および住宅等の断熱材として使用可能な真空断熱材、およびその真空断熱材を使用した機器、およびその真空断熱材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが必要不可欠となっており、その対策として民生部門の電化製品についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。特に、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機等の保温保冷機器では熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が必要となっている。
【0003】
断熱材は、グラスウールなどの繊維材やウレタンフォームなどの発泡体を使用するのが一般的である。しかし、これら断熱材の断熱性を向上するには断熱材の厚さを増す必要があるが、断熱材を使用する空間に制限がある場合には、断熱材の厚さを増大することはできない。
【0004】
そこで、高性能な断熱材として真空断熱材が提案されている。これは、スペーサの機能を持つ芯材を、ガスバリア性を有する外被材内に挿入し内部を減圧封止してなる断熱材である。
【0005】
真空断熱材の一例としては、プラスチックフィルムと金属箔を積層したラミネートフィルム製の外被材内にガラス繊維をボード状に成形した芯材を挿入し、内部を真空排気したものがある。
【0006】
この芯材の成形にあたり、ガラス繊維の個々を結着するためにバインダーをあらかじめ付着させる必要があり、所定の厚さに積層したガラス繊維のマットにバインダー水溶液を噴霧する。
【0007】
また、このバインダーの種類としては、フェノール系やシリコーン系バインダー等を用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開昭63−187084号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のように、所定の厚さを有するガラス繊維のマットにバインダー水溶液を噴霧する方法ではマットの内部までバインダーが行き渡り難く、成形した芯材内部のガラス繊維の結着が不十分となり、芯材の剛性が不足する問題があった。
【0010】
また、芯材のバインダーとしてフェノール系バインダーを用いた場合は、フェノールとホルマリンを使用することから、環境や人体への影響を抑制するため芯材製造時の環境対策が必要不可欠であった。
【0011】
更に、その芯材を真空断熱材として使用すると、フェノール樹脂バインダーに含まれるホルマリン、およびその他添加剤成分である尿素水やアンモニア水等の物質から種々の揮発成分が発生するため、真空断熱材の断熱性能が初期および経時的に悪化するという問題があった。
【0012】
また、シリコーン系バインダーではバインダー成分をバインダーとして機能させるのに必要な焼成温度が高く、芯材を得るための製造エネルギーが多量に必要となることから環境負荷が大きくなるという問題があった。
【0013】
また、バインダー成分のマイグレーションにより、バインダーが芯材の表面層に偏積し、芯材内部のガラス繊維の結着が不十分となり、芯材の剛性が不足するという問題があった。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、繊維化装置による形成直後のガラス繊維にバインダーを付着させるステップと、このバインダーが付着したガラス繊維を積層してマットを形成するステップと、前記マットを100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形するステップと、前記芯材を外被材で覆い、内部を減圧して封止するステップとからなる真空断熱材の製造方法である。
【0015】
よって、繊維化装置による形成直後のガラス繊維に、バインダーを直接付着させるため、バインダーは個々の繊維の表面にほぼ均一に拡散して付着する。よって、このバインダーが付着したガラス繊維を加熱圧縮成形した場合、少量のバインダー量でも優れた剛性を持った真空断熱材用の芯材を成形する製造方法が提供できる。
【0016】
また、繊維化装置による形成直後のガラス繊維は高温であるため、バインダーを希釈拡散させるための溶媒は、塗布後、その殆どが蒸発するため、その後の加熱圧縮成形時の加熱エネルギーや成形時間が削減可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明おいて、バインダーが天然物である真空断熱材の製造方法である。
【0018】
よって、ガラス繊維にバインダーを付着させる際にバインダーが飛散した場合にも、環境や人体への影響は極めて小さく、安全性が高い製造方法となる。
【0019】
更に、シリコーン系バインダーに比べ低温での焼成が可能であり、製造工程における省エネルギー化が実現でき、より環境負荷を小さくできる。
【0020】
また、炭水化物系の天然物バインダーを用いた芯材からの発生ガスの大部分は水分と二酸化炭素である。よって、バインダーからの発生ガスは、汎用的なガス吸着剤で吸着除去が可能となり、初期断熱性能、経時断熱性能共に優れた真空断熱材を得ることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明おいて、天然物がデンプンである真空断熱材の製造方法である。
【0022】
ジャガイモ、トウモロコシ、コメ、および小麦等の食用植物から抽出するデンプンをバインダーとして用いるため、芯材作製中にバインダーが飛散しても安全であり、バインダー漏洩時の環境への影響も極めて少ない製造方法が提供できる。
【0023】
また、希釈溶媒として、水が利用できるため、製造時の環境負荷をより低減できる。
【0024】
また、デンプンを構成する元素は基本的に炭素、水素、酸素であり、真空断熱材成形後の芯材からの発生ガスは、その大部分が水分と二酸化炭素である。よって、バインダーからの発生ガスは、汎用的なガス吸着剤で吸着除去可能であり、初期断熱性能、経時断熱性能共に優れた真空断熱材を得ることができる。
【0025】
本発明の請求項4は、請求項3に記載の発明において、デンプンがデキストリンである真空断熱材の製造方法である。
【0026】
デンプンを分解して作製したデキストリンを用いているため、低温の水にも溶けやすく、あるいはのり化しやすい。よって、バインダー水溶液の作製が容易となる。また、デキストリンからなるバインダー水溶液は比較的、低粘度であるため、例えばのり状のデンプンをガラス繊維に付着させる際、均一にスプレー塗布させやすく効率的な製造方法が提供できる。
【0027】
本発明の請求項5は、請求項1から請求項4に記載の発明において、バインダーが付着したガラス繊維を積層したマットを100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形するステップの前ステップとして、マットに水分を付着させるステップを含む真空断熱材の製造方法である。
【0028】
一般に、デンプン等の天然物をバインダーとして利用する場合は、それ自身が一定量以上の水分を含有する場合にバインダーとしての機能を有する。しかし、上記構成では、加熱成形前に水分を付着させるステップを有するため、ガラス繊維に付着した天然物バインダーの含有水分量が低下し、天然物バインダーがバインダーとしての機能を発現しなくなった場合にも、天然物バインダーはバインダーの機能を発現することができる。
【0029】
よって、バインダーが付着したガラス繊維を長期間保存した後にも、ガラス繊維を100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形することが可能となる。
【0030】
本発明の請求項6は、請求項1から請求項5に記載の発明において、天然物バインダーの付着量が0.1wt%以上10wt%以下である真空断熱材の製造方法である。
【0031】
付着量が0.1wt%より少ないとボード剛性が不足する。また、付着量が10wt%を超えると、天然物バインダーからの発生ガスである水と二酸化炭素が急激に増加し、真空断熱材としての断熱性能が極端に悪くなる。また、固体熱伝導率も大きくなり、初期熱伝導率が悪化する。
【0032】
したがって、付着量は0.1wt%以上10wt%以下であることが望ましい。
【0033】
本発明の請求項7は、請求項1から請求項6のいずれか一項記載の真空断熱材の製造方法からなる真空断熱材である。
【0034】
そのため、成形性、および初期断熱性能と経時断熱性能共に優れた真空断熱材を提供できる。
【0035】
本発明の請求項8は、外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間に真空断熱材を配置し、前記真空断熱材が請求項7に記載のものである真空断熱材を用いた断熱箱体であり、断熱性能に優れた断熱箱体を提供できる。
【0036】
本発明の請求項9は、外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間に真空断熱材を配置し、前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填し、前記真空断熱材が請求項7に記載のものである真空断熱材を用いた保温保冷機器であり、断熱性能に優れた保温保冷機器を提供できる。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明は、繊維化装置による形成直後のガラス繊維にバインダーを付着させるステップと、このバインダーが付着したガラス繊維を積層してマットを形成するステップと、前記マットを100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形するステップと、前記芯材を外被材で覆い、内部を減圧して封止するステップとからなる真空断熱材の製造方法、および前記製造方法からなる真空断熱材、更には、前記真空断熱材を使用した機器に関するものである。
【0038】
まず、真空断熱材の製造方法について説明する。
【0039】
ガラス繊維の繊維化方法には、一般に遠心法と火焔延伸法とがある。遠心法は綿菓子を作るのと同じ原理で、スピナーより溶融ガラスを遠心力で振り飛ばし、更に高速の気流を当てて繊維化するもので、火焔延伸法はガラスの固形細線に高速の火焔を当てて繊維化するものであるが、本発明は、いずれの方法を用いた繊維化装置においても適用できる。
【0040】
繊維化装置により形成したガラス繊維へのバインダーの付着方法は、特に指定するものではないが、一つに、バインダー又はその希釈液を噴霧して付着させる方法がある。
【0041】
具体的には、繊維化装置にて形成した直後の高温高速のガラス繊維に、バインダー水溶液を高圧でスプレー噴霧するもので、バインダーの溶媒である水分の大部分は、一瞬のうちに蒸発し、繊維表面にバインダーが付着する。
【0042】
その後、バインダーの付着したガラス繊維を積層してマットを形成し、前記マットを加熱圧縮により固形化させてボード状に成形した芯材を得る。 この時、成形した芯材の密度は100kg/m3〜400kg/m3とすることが望ましく、また厚み方向で密度が異なっていてもよい。密度が100kg/m3より小さいと成形体としての形状を保持しにくくなり、400kg/m3より大きくなると固体熱伝導率が大きくなり真空断熱材の断熱性能が悪化する。
【0043】
前記方法により成形した芯材は、外被材で覆い、内部を減圧封止して真空断熱材を成形する。この方法としては、まず袋状の外被材を作製し、その後、外被材内に芯材を挿入し内部を減圧し封止する、あるいは、減圧槽中に芯材とロール状あるいはシート状のラミネートフィルムからなる外被材を配設し、ロール状あるいはシート状の外被材を芯材に沿わした状態にしてから外被材を熱融着することにより真空断熱材を作製する、あるいは、芯材を挿入した外被材内を直接減圧して外被材開口部を封止することにより真空断熱材を製造する、あるいは金属板で成形した容器にボード状の芯材を挿入し、真空ポンプと前記金属容器とを管で結んで容器内を減圧し、その後、管を封止切ることにより真空断熱材とする等の方法により作製できる。
【0044】
また、芯材は外被材挿入前に水分の乾燥を行ってもよく、また外被材挿入時に吸着剤を一緒に挿入してもよい。
【0045】
次に、真空断熱材の構成材料について説明する。
【0046】
ガラス繊維の繊維径は特に指定するものではないが、好ましくは0.1μm〜10μmがよい。
【0047】
バインダーとは、有機バインダー、無機バインダー等、公知のバインダーが利用できる。しかし、天然物をバインダーとすることが、より望ましく、デンプン系、セルロース系、複合多糖類、およびこれらの混合物が使用できる。また、天然物バインダーに、他の有機バインダーや無機バインダーを混合して使用することもできる。 しかし、天然物バインダーのうち、デンプンを適用するのがより望ましく、デンプンについて更に詳細に説明する。
【0048】
デンプンとは、未加工のデンプン、あるいは加工デンプンとしては、分解や酵素変性によるデキストリン、酸変性デンプン、酸化デンプン、アルファー化デンプン、デンプンエステルであるアセチルデンプン、デンプンエーテルであるメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、陽性デンプンであるアミノアルキルデンプン、また架橋デンプン等のデンプン誘導体等であり、特に指定するものではない。
【0049】
また、デキストリンとは、白色デキストリン、黄色デキストリン、ブリティッシュガム等であり、これらを混合して使用することも可能である。
【0050】
また、これらに老化防止剤、防かび剤等を混合することも可能である。
【0051】
また、デンプンをバインダーとしたとき、ガラス繊維マットの加熱焼成は、280℃以下であることが好ましい。デンプンの分解温度は280℃前後であり、この温度を越えて焼成するとデンプンが、炭化すると共に、種々の分解ガスを経時的に発生しやすくなる。よって、真空断熱材としたときに芯材からの分解ガスの発生により、経時的な断熱性能を悪化させる要因となる。
【0052】
デンプンをバインダーに使用しているかどうかの判断は、簡易的には、芯材作製後、あるいは真空断熱材作製後に外被材から芯材を取り出し、その芯材をヨウ素デンプン反応により確認することが可能であるが、特に指定するものではなく、公知の方法を使用できる。
【0053】
バインダーの付着量は、0.1wt%以上10wt%以下が望ましいが、少なくとも芯材の任意の一部を切り取ったとき、その部分のバインダー付着量が0.1wt%以上10wt%以下存在しておれば問題ない。
【0054】
また、芯材内部でバインダー濃度が異なっていてもよく、その場合、好ましくは内層よりも表層のバインダー濃度が高い方がよいが、特に指定するものではない。
【0055】
また、外被材は、少なくともガスバリア層および熱融着層を有するものである。 ガスバリア層としては、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属箔を用いることができる。あるいは、金属、無機酸化物、及び炭素等を蒸着したプラスチックフィルム等を用いることができるが、気体透過を抑制する目的で用いるものであれば、特に指定するものではない。 また、前記金属等の蒸着基材となるプラスチックフィルムは特に指定するものではないが、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリイミドなどがより好ましい。 前記プラスチックフィルム上への金属材料としての蒸着素材は、アルミニウム、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、銀、あるいはそれらの混合物等特に指定するものではない。 また、前記プラスチックフィルム上への無機酸化物材料としての蒸着素材は、シリカ、アルミナ等、特に指定するものではない。 また、熱溶着層としては、低密度ポリエチレンフィルム、鎖状低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、無延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、あるいはそれらの混合体等を用いることができるが、特に指定するものではない。
【0056】
また、必要に応じてガスバリア層の外面に表面保護層を設けることも可能である。 表面保護層としては、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムの延伸加工品などが利用でき、更に外側にナイロンフィルムなどを設けると可とう性が向上し、耐折り曲げ性などが向上する。
【0057】
以上のようなフィルムをラミネートして用いることが望ましい。
【0058】
外被材として適用するラミネートフィルムからなる袋形状は、四方シール袋、三方シール袋、ガゼット袋、ピロー袋、センターテープシール袋等、特に限定するものでない。
【0059】
また、外被材として鉄板、ステンレス板、亜鉛板等の金属板を用いた金属容器を使用してもよい。
【0060】
また、真空断熱体の信頼性を向上させる場合は、ガス吸着剤や水分吸着剤等のゲッター物質を使用することも可能である。
【0061】
また、本発明は、外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間に本発明の真空断熱材を配置してなる断熱箱体、および、その上に前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填してなる保温保冷機器である。
【0062】
例えば冷蔵庫に適用した場合、冷蔵庫の外箱と内箱により形成される空間の外箱側又は内箱側に真空断熱材を貼付しその他の空間に樹脂発泡体を充填する、あるいは真空断熱体と発泡樹脂体とを一体発泡した断熱体を冷蔵庫の外箱と内箱の間の空間に配設する、あるいはドア部に同様に使用する、あるいは仕切板に使用する等、特に指定するものではないが、機械室と内箱との間、あるいは冷凍室の周囲に前記真空断熱材を用いることは、特に断熱効率に優れて効果が大きく、低電力量で冷蔵庫を運転できる。
【0063】
また、樹脂発泡体とは、例えば硬質ウレタンフォーム、フェノールフォームやスチレンフォームなどを使用できるが、特に指定するものではない。
【0064】
また、例えば硬質ウレタンフォームを発泡する際に用いる発泡剤としては、特に指定するものではないが、オゾン層保護、地球温暖化防止の観点から、シクロペンタン、イソペンタン、n−ペンタン、イソブタン、n−ブタン、水(炭酸ガス発泡)、アゾ化合物、アルゴン等が望ましく、特に断熱性能や生産性の観点からシクロペンタンが望ましい。
【0065】
また、冷凍機器に使用する冷媒は、フロン134a、イソブタン、n−ブタン、プロパン、アンモニア、二酸化炭素、水等、特に指定するものではない。
【0066】
また、冷蔵庫は、動作温度帯である−30℃から常温で断熱を必要とする機器の代表として示したものであり、例えば保冷車や電子冷却を利用した冷蔵庫等にも使用できる。また、自動販売機、ガス機器あるいはクーラーボックス等、より高温までの範囲で温冷熱を利用した冷温機器にも使用できる。
【0067】
更には、パソコン、ジャーポット、炊飯器等にも使用することが可能である。
【0068】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0069】
図1は本発明の実施の形態1から3における真空断熱材の製造フローチャートの一例を示している。また、図2は図1の製造フローチャートに基づいて成形した真空断熱材の断面図を示している。
【0070】
(実施の形態1)
真空断熱材1の製造方法について、図1の真空断熱材の製造フローチャートにしたがって説明する。
【0071】
はじめに、遠心法による繊維化装置にて形成した直後のガラス短繊維に、バインダー水溶液を高圧でスプレー噴霧した。この時、ガラス短繊維の平均繊維径は3.5μmであった。また、バインダー水溶液は、水100重量部に対し、エーテル架橋アルファー化デンプン3重量部を加熱溶解して作製した。エーテル架橋アルファー化デンプンは、ガラス短繊維100重量部に対し、2重量部が付着するようにスプレー噴霧を調整した(ステップ1)。
【0072】
その後、バインダーの付着したガラス短繊維を積層してマットを形成した(ステップ2)。
【0073】
このマットを200℃にて加熱圧縮成形し、厚さが15mm、密度が200kg/m3の芯材を成形した(ステップ3)。
【0074】
この芯材を110℃の乾燥炉で15分間乾燥した後、水分吸着剤である酸化カルシウムと共に外被材内に挿入し、内部を10Paまで減圧して封止し、真空断熱材を作製した(ステップ4)。
【0075】
このように、バインダーとしてデンプンを適用した製造方法であるため、バインダー噴霧時、ガラス繊維の加熱圧縮成形時、および芯材の減圧封止時等のいずれにおいても、作業環境は優れたものであった。
【0076】
また、図2において、真空断熱材1は、芯材2と、外被材3と、吸着剤4で構成している。
【0077】
外被材2は、2枚のラミネートフィルムを袋状に成形して適用している。前記2枚のラミネートフィルムのうち、1枚は熱融着層として厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと称す)と、ガスバリア層として厚み15μmのエチレンポリビニルアルコール共重合体フィルム(以下EVOHと称す)に膜厚500Åのアルミを蒸着したフィルムと厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETと称す)に500Åのアルミを蒸着したフィルムをアルミ蒸着面同士貼り合わせたフィルムとからなり、熱融着層のLLDPEとガスバリア層のEVOHをドライラミネートしている。また、他の1枚は、熱融着層は厚み50μmのLLDPE、その上にガスバリア層として厚み6μmのアルミ箔、更に保護層として厚み12μmのナイロン、最外層として厚み12μmのナイロンにより構成している。
【0078】
以上のように作製した真空断熱材1の熱伝導率は、平均温度24℃にて0.0028W/mKであった。
【0079】
また、経時的な断熱性能を確認するため加速試験による断熱材の劣化を評価したが、10年間使用相当条件での熱伝導率は平均温度24℃にて0.009W/mKであった。
【0080】
(実施の形態2)
実施の形態1に対して、バインダーをデキストリンの1種であるブリティッシュガムに変更した。その他の形態は実施の形態1と同様である。
【0081】
バインダー水溶液は、水100重量部に対し、ブリティッシュガム3重量部を20℃の水に溶解して作製した。この時、バインダーをブリティッシュガムとしたため、加熱することなくバインダー水溶液を作製できた。
【0082】
以上のように作製した真空断熱材の熱伝導率は、平均温度24℃にて0.0028W/mKであった。
【0083】
また、経時的な断熱性能を確認するため加速試験による断熱材の劣化を評価したが、10年間使用相当条件での熱伝導率は平均温度24℃にて0.009W/mKであった。
(実施の形態3)
実施の形態1に対して、バインダーを付着させたガラス短繊維を2週間保存後に使用した。この時、芯材に付着しているエーテル架橋アルファー化デンプンの水分はほぼ完全に乾燥していたため、加熱圧縮成形前にガラス短繊維を高温高圧のスチームで約1分間さらし、芯材を作製した。その他の形態は実施の形態1と同様である。
【0084】
その結果、エーテル架橋アルファー化デンプンは適度な水分を含有してバインダー機能を発現し、剛性のある良好な芯材が作製できた。
【0085】
以上のように作製した真空断熱材の熱伝導率は、平均温度24℃にて0.0028W/mKであった。
【0086】
また、経時的な断熱性能を確認するため加速試験による断熱材の劣化を評価したが、10年間使用相当条件での熱伝導率は平均温度24℃にて0.009W/mKであった。
【0087】
(実施の形態4)
図3は本発明の実施の形態4における冷蔵庫の側断面図である。
【0088】
冷蔵庫5は、断熱箱体6にドア7を取り付けて、冷凍サイクルを備えている。断熱箱体6の内部は、仕切板8にて上下に区切られており、上部が冷蔵室9、下部が冷凍室10となっている。仕切板8にはダンパ11が取り付けられて、冷蔵庫内の温度を調節する。
【0089】
断熱箱体6は、鉄板をプレス成形した外箱12とABS樹脂を真空成形した内箱13とがフランジを介して構成され、外箱12の内側面にあらかじめ真空断熱材1を配設し、真空断熱材1以外の空間部に、硬質ウレタンフォーム14を発泡充填したものである。真空断熱材1は実施の形態1に示したものと同様の構成であり、硬質ウレタンフォーム14は発泡剤としてシクロペンタンを使用している。
【0090】
ドア7及び仕切板8においても同様に、内部に真空断熱材1が配設され、真空断熱材1以外の空間部は硬質ウレタンフォーム14にて発泡充填されている。
【0091】
冷蔵庫内には蒸発器15が配置され、圧縮機16と、凝縮器17と、キャピラリチューブ18とを順次環状に接続し、冷凍サイクルを形成する。冷凍サイクル内には冷媒としてイソブタンを封入している。
【0092】
蒸発器15は冷蔵室12および冷凍室13の2カ所に設け、それらを直列、あるいは並列につないで冷凍サイクルを形成しても良い。
【0093】
このように構成した冷蔵庫の消費電力量を測定したところ、真空断熱材を適用しない冷蔵庫よりも、消費電力量は25%低下しており、真空断熱材による断熱効果を確認した。
【0094】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、繊維化装置により形成したガラス繊維にバインダーを付着させるステップと、このバインダーが付着したガラス繊維を積層してマットを形成するステップと、前記マットを100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形するステップと、前記芯材を外被材で覆い、内部を減圧して封止するステップとからなる真空断熱材の製造方法である。
【0095】
よって、繊維化装置による形成直後のガラス繊維に、バインダーを直接付着させるため、バインダーは個々の繊維の表面に均一に拡散して付着する。よって、このバインダーが付着したガラス繊維を加熱圧縮成形した場合、少量のバインダー量でも優れた剛性を持った、真空断熱材用の芯材を成形する製造方法が提供できる。
【0096】
また、繊維化装置による形成直後のガラス繊維は高温であるため、バインダーを希釈拡散させるための溶媒は、塗布後、その殆どが蒸発するため、その後の加熱圧縮成形時の加熱エネルギーや成形時間が削減可能となる。
【0097】
また、上記構成において、バインダーが天然物である真空断熱材の製造方法である。
【0098】
よって、ガラス繊維にバインダーを付着させる際にバインダーが飛散したとしても、環境や人体への影響は極めて小さく、安全性が高い製造方法が提供できる。
【0099】
また、上記構成において、天然物がデンプンである真空断熱材の製造方法である。
【0100】
ジャガイモ、トウモロコシ、コメ、および小麦等の食用植物から抽出するデンプンをバインダーとして用いているため、芯材作製中にバインダーが飛散しても安全であり、バインダー漏洩時の環境への影響も少ない製造方法が提供できる。
【0101】
また、デンプンを構成する元素は基本的に炭素、水素、酸素であり、真空断熱材成形後の芯材からの発生ガスは、その大部分は水分と二酸化炭素である。よって、バインダーからの発生ガスは、汎用的なガス吸着剤で吸着除去可能であり、初期断熱性能、経時断熱性能共に優れた真空断熱材を得ることができる。
【0102】
また、上記構成において、デンプンがデキストリンである真空断熱材の製造方法である。
【0103】
デンプンを分解して作製したデキストリンを用いているため、低温の水にも溶けやすく、あるいはのり化しやすい。よって、バインダー水溶液の作製が容易となる。また、デキストリンからなるバインダー水溶液は比較的、低粘度であるため、例えばのり状のデンプンをガラス繊維に付着させる際、均一にスプレー塗布させやすく、効率的な製造方法となる。
【0104】
また、バインダーが付着したガラス繊維を積層したマットを100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形するステップの前に、ガラス繊維マットに水分を付着させるステップを含む真空断熱材の製造方法である。
【0105】
よって、ガラス繊維についた天然物バインダーの含有水分量が低下し、天然物バインダーがバインダーとしての機能を発現しない場合にも、天然物バインダーはバインダーの機能を発現することができ、バインダーが付着したガラス繊維を長期間保存した後にも、ガラス繊維を100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状に成形する製造方法を提供できる。
【0106】
また、天然物バインダーの付着量が0.1wt%以上10wt%以下である真空断熱材の製造方法である。
【0107】
これにより、充分な剛性を持ち、優れた断熱性能を有する真空断熱材を提供することができる。
【0108】
また、上記構成のいずれかからなる真空断熱材の製造方法からなる真空断熱材は、成形性、および初期断熱性能と経時断熱性能共に優れた真空断熱材を提供できる。
【0109】
更に、本発明による真空断熱材を用いることにより、断熱性能に優れた断熱箱体および保温保冷機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1から3における真空断熱材の製造フローチャート
【図2】図1の製造フローチャートに基づいて成形した真空断熱材の断面図
【図3】本発明の実施の形態4における冷蔵庫の側断面図
【符号の説明】
1 真空断熱材
2 芯材
3 外被材
5 冷蔵庫
6 断熱箱体
12 外箱
13 内箱
14 硬質ウレタンフォーム
【発明の属する分野】
本発明は、断熱を必要とする冷凍冷蔵庫、保温保冷容器、自動販売機、電気湯沸かし器、車両、および住宅等の断熱材として使用可能な真空断熱材、およびその真空断熱材を使用した機器、およびその真空断熱材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが必要不可欠となっており、その対策として民生部門の電化製品についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。特に、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機等の保温保冷機器では熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が必要となっている。
【0003】
断熱材は、グラスウールなどの繊維材やウレタンフォームなどの発泡体を使用するのが一般的である。しかし、これら断熱材の断熱性を向上するには断熱材の厚さを増す必要があるが、断熱材を使用する空間に制限がある場合には、断熱材の厚さを増大することはできない。
【0004】
そこで、高性能な断熱材として真空断熱材が提案されている。これは、スペーサの機能を持つ芯材を、ガスバリア性を有する外被材内に挿入し内部を減圧封止してなる断熱材である。
【0005】
真空断熱材の一例としては、プラスチックフィルムと金属箔を積層したラミネートフィルム製の外被材内にガラス繊維をボード状に成形した芯材を挿入し、内部を真空排気したものがある。
【0006】
この芯材の成形にあたり、ガラス繊維の個々を結着するためにバインダーをあらかじめ付着させる必要があり、所定の厚さに積層したガラス繊維のマットにバインダー水溶液を噴霧する。
【0007】
また、このバインダーの種類としては、フェノール系やシリコーン系バインダー等を用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開昭63−187084号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のように、所定の厚さを有するガラス繊維のマットにバインダー水溶液を噴霧する方法ではマットの内部までバインダーが行き渡り難く、成形した芯材内部のガラス繊維の結着が不十分となり、芯材の剛性が不足する問題があった。
【0010】
また、芯材のバインダーとしてフェノール系バインダーを用いた場合は、フェノールとホルマリンを使用することから、環境や人体への影響を抑制するため芯材製造時の環境対策が必要不可欠であった。
【0011】
更に、その芯材を真空断熱材として使用すると、フェノール樹脂バインダーに含まれるホルマリン、およびその他添加剤成分である尿素水やアンモニア水等の物質から種々の揮発成分が発生するため、真空断熱材の断熱性能が初期および経時的に悪化するという問題があった。
【0012】
また、シリコーン系バインダーではバインダー成分をバインダーとして機能させるのに必要な焼成温度が高く、芯材を得るための製造エネルギーが多量に必要となることから環境負荷が大きくなるという問題があった。
【0013】
また、バインダー成分のマイグレーションにより、バインダーが芯材の表面層に偏積し、芯材内部のガラス繊維の結着が不十分となり、芯材の剛性が不足するという問題があった。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、繊維化装置による形成直後のガラス繊維にバインダーを付着させるステップと、このバインダーが付着したガラス繊維を積層してマットを形成するステップと、前記マットを100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形するステップと、前記芯材を外被材で覆い、内部を減圧して封止するステップとからなる真空断熱材の製造方法である。
【0015】
よって、繊維化装置による形成直後のガラス繊維に、バインダーを直接付着させるため、バインダーは個々の繊維の表面にほぼ均一に拡散して付着する。よって、このバインダーが付着したガラス繊維を加熱圧縮成形した場合、少量のバインダー量でも優れた剛性を持った真空断熱材用の芯材を成形する製造方法が提供できる。
【0016】
また、繊維化装置による形成直後のガラス繊維は高温であるため、バインダーを希釈拡散させるための溶媒は、塗布後、その殆どが蒸発するため、その後の加熱圧縮成形時の加熱エネルギーや成形時間が削減可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明おいて、バインダーが天然物である真空断熱材の製造方法である。
【0018】
よって、ガラス繊維にバインダーを付着させる際にバインダーが飛散した場合にも、環境や人体への影響は極めて小さく、安全性が高い製造方法となる。
【0019】
更に、シリコーン系バインダーに比べ低温での焼成が可能であり、製造工程における省エネルギー化が実現でき、より環境負荷を小さくできる。
【0020】
また、炭水化物系の天然物バインダーを用いた芯材からの発生ガスの大部分は水分と二酸化炭素である。よって、バインダーからの発生ガスは、汎用的なガス吸着剤で吸着除去が可能となり、初期断熱性能、経時断熱性能共に優れた真空断熱材を得ることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明おいて、天然物がデンプンである真空断熱材の製造方法である。
【0022】
ジャガイモ、トウモロコシ、コメ、および小麦等の食用植物から抽出するデンプンをバインダーとして用いるため、芯材作製中にバインダーが飛散しても安全であり、バインダー漏洩時の環境への影響も極めて少ない製造方法が提供できる。
【0023】
また、希釈溶媒として、水が利用できるため、製造時の環境負荷をより低減できる。
【0024】
また、デンプンを構成する元素は基本的に炭素、水素、酸素であり、真空断熱材成形後の芯材からの発生ガスは、その大部分が水分と二酸化炭素である。よって、バインダーからの発生ガスは、汎用的なガス吸着剤で吸着除去可能であり、初期断熱性能、経時断熱性能共に優れた真空断熱材を得ることができる。
【0025】
本発明の請求項4は、請求項3に記載の発明において、デンプンがデキストリンである真空断熱材の製造方法である。
【0026】
デンプンを分解して作製したデキストリンを用いているため、低温の水にも溶けやすく、あるいはのり化しやすい。よって、バインダー水溶液の作製が容易となる。また、デキストリンからなるバインダー水溶液は比較的、低粘度であるため、例えばのり状のデンプンをガラス繊維に付着させる際、均一にスプレー塗布させやすく効率的な製造方法が提供できる。
【0027】
本発明の請求項5は、請求項1から請求項4に記載の発明において、バインダーが付着したガラス繊維を積層したマットを100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形するステップの前ステップとして、マットに水分を付着させるステップを含む真空断熱材の製造方法である。
【0028】
一般に、デンプン等の天然物をバインダーとして利用する場合は、それ自身が一定量以上の水分を含有する場合にバインダーとしての機能を有する。しかし、上記構成では、加熱成形前に水分を付着させるステップを有するため、ガラス繊維に付着した天然物バインダーの含有水分量が低下し、天然物バインダーがバインダーとしての機能を発現しなくなった場合にも、天然物バインダーはバインダーの機能を発現することができる。
【0029】
よって、バインダーが付着したガラス繊維を長期間保存した後にも、ガラス繊維を100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形することが可能となる。
【0030】
本発明の請求項6は、請求項1から請求項5に記載の発明において、天然物バインダーの付着量が0.1wt%以上10wt%以下である真空断熱材の製造方法である。
【0031】
付着量が0.1wt%より少ないとボード剛性が不足する。また、付着量が10wt%を超えると、天然物バインダーからの発生ガスである水と二酸化炭素が急激に増加し、真空断熱材としての断熱性能が極端に悪くなる。また、固体熱伝導率も大きくなり、初期熱伝導率が悪化する。
【0032】
したがって、付着量は0.1wt%以上10wt%以下であることが望ましい。
【0033】
本発明の請求項7は、請求項1から請求項6のいずれか一項記載の真空断熱材の製造方法からなる真空断熱材である。
【0034】
そのため、成形性、および初期断熱性能と経時断熱性能共に優れた真空断熱材を提供できる。
【0035】
本発明の請求項8は、外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間に真空断熱材を配置し、前記真空断熱材が請求項7に記載のものである真空断熱材を用いた断熱箱体であり、断熱性能に優れた断熱箱体を提供できる。
【0036】
本発明の請求項9は、外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間に真空断熱材を配置し、前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填し、前記真空断熱材が請求項7に記載のものである真空断熱材を用いた保温保冷機器であり、断熱性能に優れた保温保冷機器を提供できる。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明は、繊維化装置による形成直後のガラス繊維にバインダーを付着させるステップと、このバインダーが付着したガラス繊維を積層してマットを形成するステップと、前記マットを100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形するステップと、前記芯材を外被材で覆い、内部を減圧して封止するステップとからなる真空断熱材の製造方法、および前記製造方法からなる真空断熱材、更には、前記真空断熱材を使用した機器に関するものである。
【0038】
まず、真空断熱材の製造方法について説明する。
【0039】
ガラス繊維の繊維化方法には、一般に遠心法と火焔延伸法とがある。遠心法は綿菓子を作るのと同じ原理で、スピナーより溶融ガラスを遠心力で振り飛ばし、更に高速の気流を当てて繊維化するもので、火焔延伸法はガラスの固形細線に高速の火焔を当てて繊維化するものであるが、本発明は、いずれの方法を用いた繊維化装置においても適用できる。
【0040】
繊維化装置により形成したガラス繊維へのバインダーの付着方法は、特に指定するものではないが、一つに、バインダー又はその希釈液を噴霧して付着させる方法がある。
【0041】
具体的には、繊維化装置にて形成した直後の高温高速のガラス繊維に、バインダー水溶液を高圧でスプレー噴霧するもので、バインダーの溶媒である水分の大部分は、一瞬のうちに蒸発し、繊維表面にバインダーが付着する。
【0042】
その後、バインダーの付着したガラス繊維を積層してマットを形成し、前記マットを加熱圧縮により固形化させてボード状に成形した芯材を得る。 この時、成形した芯材の密度は100kg/m3〜400kg/m3とすることが望ましく、また厚み方向で密度が異なっていてもよい。密度が100kg/m3より小さいと成形体としての形状を保持しにくくなり、400kg/m3より大きくなると固体熱伝導率が大きくなり真空断熱材の断熱性能が悪化する。
【0043】
前記方法により成形した芯材は、外被材で覆い、内部を減圧封止して真空断熱材を成形する。この方法としては、まず袋状の外被材を作製し、その後、外被材内に芯材を挿入し内部を減圧し封止する、あるいは、減圧槽中に芯材とロール状あるいはシート状のラミネートフィルムからなる外被材を配設し、ロール状あるいはシート状の外被材を芯材に沿わした状態にしてから外被材を熱融着することにより真空断熱材を作製する、あるいは、芯材を挿入した外被材内を直接減圧して外被材開口部を封止することにより真空断熱材を製造する、あるいは金属板で成形した容器にボード状の芯材を挿入し、真空ポンプと前記金属容器とを管で結んで容器内を減圧し、その後、管を封止切ることにより真空断熱材とする等の方法により作製できる。
【0044】
また、芯材は外被材挿入前に水分の乾燥を行ってもよく、また外被材挿入時に吸着剤を一緒に挿入してもよい。
【0045】
次に、真空断熱材の構成材料について説明する。
【0046】
ガラス繊維の繊維径は特に指定するものではないが、好ましくは0.1μm〜10μmがよい。
【0047】
バインダーとは、有機バインダー、無機バインダー等、公知のバインダーが利用できる。しかし、天然物をバインダーとすることが、より望ましく、デンプン系、セルロース系、複合多糖類、およびこれらの混合物が使用できる。また、天然物バインダーに、他の有機バインダーや無機バインダーを混合して使用することもできる。 しかし、天然物バインダーのうち、デンプンを適用するのがより望ましく、デンプンについて更に詳細に説明する。
【0048】
デンプンとは、未加工のデンプン、あるいは加工デンプンとしては、分解や酵素変性によるデキストリン、酸変性デンプン、酸化デンプン、アルファー化デンプン、デンプンエステルであるアセチルデンプン、デンプンエーテルであるメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、陽性デンプンであるアミノアルキルデンプン、また架橋デンプン等のデンプン誘導体等であり、特に指定するものではない。
【0049】
また、デキストリンとは、白色デキストリン、黄色デキストリン、ブリティッシュガム等であり、これらを混合して使用することも可能である。
【0050】
また、これらに老化防止剤、防かび剤等を混合することも可能である。
【0051】
また、デンプンをバインダーとしたとき、ガラス繊維マットの加熱焼成は、280℃以下であることが好ましい。デンプンの分解温度は280℃前後であり、この温度を越えて焼成するとデンプンが、炭化すると共に、種々の分解ガスを経時的に発生しやすくなる。よって、真空断熱材としたときに芯材からの分解ガスの発生により、経時的な断熱性能を悪化させる要因となる。
【0052】
デンプンをバインダーに使用しているかどうかの判断は、簡易的には、芯材作製後、あるいは真空断熱材作製後に外被材から芯材を取り出し、その芯材をヨウ素デンプン反応により確認することが可能であるが、特に指定するものではなく、公知の方法を使用できる。
【0053】
バインダーの付着量は、0.1wt%以上10wt%以下が望ましいが、少なくとも芯材の任意の一部を切り取ったとき、その部分のバインダー付着量が0.1wt%以上10wt%以下存在しておれば問題ない。
【0054】
また、芯材内部でバインダー濃度が異なっていてもよく、その場合、好ましくは内層よりも表層のバインダー濃度が高い方がよいが、特に指定するものではない。
【0055】
また、外被材は、少なくともガスバリア層および熱融着層を有するものである。 ガスバリア層としては、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属箔を用いることができる。あるいは、金属、無機酸化物、及び炭素等を蒸着したプラスチックフィルム等を用いることができるが、気体透過を抑制する目的で用いるものであれば、特に指定するものではない。 また、前記金属等の蒸着基材となるプラスチックフィルムは特に指定するものではないが、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリイミドなどがより好ましい。 前記プラスチックフィルム上への金属材料としての蒸着素材は、アルミニウム、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、銀、あるいはそれらの混合物等特に指定するものではない。 また、前記プラスチックフィルム上への無機酸化物材料としての蒸着素材は、シリカ、アルミナ等、特に指定するものではない。 また、熱溶着層としては、低密度ポリエチレンフィルム、鎖状低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、無延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、あるいはそれらの混合体等を用いることができるが、特に指定するものではない。
【0056】
また、必要に応じてガスバリア層の外面に表面保護層を設けることも可能である。 表面保護層としては、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムの延伸加工品などが利用でき、更に外側にナイロンフィルムなどを設けると可とう性が向上し、耐折り曲げ性などが向上する。
【0057】
以上のようなフィルムをラミネートして用いることが望ましい。
【0058】
外被材として適用するラミネートフィルムからなる袋形状は、四方シール袋、三方シール袋、ガゼット袋、ピロー袋、センターテープシール袋等、特に限定するものでない。
【0059】
また、外被材として鉄板、ステンレス板、亜鉛板等の金属板を用いた金属容器を使用してもよい。
【0060】
また、真空断熱体の信頼性を向上させる場合は、ガス吸着剤や水分吸着剤等のゲッター物質を使用することも可能である。
【0061】
また、本発明は、外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間に本発明の真空断熱材を配置してなる断熱箱体、および、その上に前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填してなる保温保冷機器である。
【0062】
例えば冷蔵庫に適用した場合、冷蔵庫の外箱と内箱により形成される空間の外箱側又は内箱側に真空断熱材を貼付しその他の空間に樹脂発泡体を充填する、あるいは真空断熱体と発泡樹脂体とを一体発泡した断熱体を冷蔵庫の外箱と内箱の間の空間に配設する、あるいはドア部に同様に使用する、あるいは仕切板に使用する等、特に指定するものではないが、機械室と内箱との間、あるいは冷凍室の周囲に前記真空断熱材を用いることは、特に断熱効率に優れて効果が大きく、低電力量で冷蔵庫を運転できる。
【0063】
また、樹脂発泡体とは、例えば硬質ウレタンフォーム、フェノールフォームやスチレンフォームなどを使用できるが、特に指定するものではない。
【0064】
また、例えば硬質ウレタンフォームを発泡する際に用いる発泡剤としては、特に指定するものではないが、オゾン層保護、地球温暖化防止の観点から、シクロペンタン、イソペンタン、n−ペンタン、イソブタン、n−ブタン、水(炭酸ガス発泡)、アゾ化合物、アルゴン等が望ましく、特に断熱性能や生産性の観点からシクロペンタンが望ましい。
【0065】
また、冷凍機器に使用する冷媒は、フロン134a、イソブタン、n−ブタン、プロパン、アンモニア、二酸化炭素、水等、特に指定するものではない。
【0066】
また、冷蔵庫は、動作温度帯である−30℃から常温で断熱を必要とする機器の代表として示したものであり、例えば保冷車や電子冷却を利用した冷蔵庫等にも使用できる。また、自動販売機、ガス機器あるいはクーラーボックス等、より高温までの範囲で温冷熱を利用した冷温機器にも使用できる。
【0067】
更には、パソコン、ジャーポット、炊飯器等にも使用することが可能である。
【0068】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0069】
図1は本発明の実施の形態1から3における真空断熱材の製造フローチャートの一例を示している。また、図2は図1の製造フローチャートに基づいて成形した真空断熱材の断面図を示している。
【0070】
(実施の形態1)
真空断熱材1の製造方法について、図1の真空断熱材の製造フローチャートにしたがって説明する。
【0071】
はじめに、遠心法による繊維化装置にて形成した直後のガラス短繊維に、バインダー水溶液を高圧でスプレー噴霧した。この時、ガラス短繊維の平均繊維径は3.5μmであった。また、バインダー水溶液は、水100重量部に対し、エーテル架橋アルファー化デンプン3重量部を加熱溶解して作製した。エーテル架橋アルファー化デンプンは、ガラス短繊維100重量部に対し、2重量部が付着するようにスプレー噴霧を調整した(ステップ1)。
【0072】
その後、バインダーの付着したガラス短繊維を積層してマットを形成した(ステップ2)。
【0073】
このマットを200℃にて加熱圧縮成形し、厚さが15mm、密度が200kg/m3の芯材を成形した(ステップ3)。
【0074】
この芯材を110℃の乾燥炉で15分間乾燥した後、水分吸着剤である酸化カルシウムと共に外被材内に挿入し、内部を10Paまで減圧して封止し、真空断熱材を作製した(ステップ4)。
【0075】
このように、バインダーとしてデンプンを適用した製造方法であるため、バインダー噴霧時、ガラス繊維の加熱圧縮成形時、および芯材の減圧封止時等のいずれにおいても、作業環境は優れたものであった。
【0076】
また、図2において、真空断熱材1は、芯材2と、外被材3と、吸着剤4で構成している。
【0077】
外被材2は、2枚のラミネートフィルムを袋状に成形して適用している。前記2枚のラミネートフィルムのうち、1枚は熱融着層として厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと称す)と、ガスバリア層として厚み15μmのエチレンポリビニルアルコール共重合体フィルム(以下EVOHと称す)に膜厚500Åのアルミを蒸着したフィルムと厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETと称す)に500Åのアルミを蒸着したフィルムをアルミ蒸着面同士貼り合わせたフィルムとからなり、熱融着層のLLDPEとガスバリア層のEVOHをドライラミネートしている。また、他の1枚は、熱融着層は厚み50μmのLLDPE、その上にガスバリア層として厚み6μmのアルミ箔、更に保護層として厚み12μmのナイロン、最外層として厚み12μmのナイロンにより構成している。
【0078】
以上のように作製した真空断熱材1の熱伝導率は、平均温度24℃にて0.0028W/mKであった。
【0079】
また、経時的な断熱性能を確認するため加速試験による断熱材の劣化を評価したが、10年間使用相当条件での熱伝導率は平均温度24℃にて0.009W/mKであった。
【0080】
(実施の形態2)
実施の形態1に対して、バインダーをデキストリンの1種であるブリティッシュガムに変更した。その他の形態は実施の形態1と同様である。
【0081】
バインダー水溶液は、水100重量部に対し、ブリティッシュガム3重量部を20℃の水に溶解して作製した。この時、バインダーをブリティッシュガムとしたため、加熱することなくバインダー水溶液を作製できた。
【0082】
以上のように作製した真空断熱材の熱伝導率は、平均温度24℃にて0.0028W/mKであった。
【0083】
また、経時的な断熱性能を確認するため加速試験による断熱材の劣化を評価したが、10年間使用相当条件での熱伝導率は平均温度24℃にて0.009W/mKであった。
(実施の形態3)
実施の形態1に対して、バインダーを付着させたガラス短繊維を2週間保存後に使用した。この時、芯材に付着しているエーテル架橋アルファー化デンプンの水分はほぼ完全に乾燥していたため、加熱圧縮成形前にガラス短繊維を高温高圧のスチームで約1分間さらし、芯材を作製した。その他の形態は実施の形態1と同様である。
【0084】
その結果、エーテル架橋アルファー化デンプンは適度な水分を含有してバインダー機能を発現し、剛性のある良好な芯材が作製できた。
【0085】
以上のように作製した真空断熱材の熱伝導率は、平均温度24℃にて0.0028W/mKであった。
【0086】
また、経時的な断熱性能を確認するため加速試験による断熱材の劣化を評価したが、10年間使用相当条件での熱伝導率は平均温度24℃にて0.009W/mKであった。
【0087】
(実施の形態4)
図3は本発明の実施の形態4における冷蔵庫の側断面図である。
【0088】
冷蔵庫5は、断熱箱体6にドア7を取り付けて、冷凍サイクルを備えている。断熱箱体6の内部は、仕切板8にて上下に区切られており、上部が冷蔵室9、下部が冷凍室10となっている。仕切板8にはダンパ11が取り付けられて、冷蔵庫内の温度を調節する。
【0089】
断熱箱体6は、鉄板をプレス成形した外箱12とABS樹脂を真空成形した内箱13とがフランジを介して構成され、外箱12の内側面にあらかじめ真空断熱材1を配設し、真空断熱材1以外の空間部に、硬質ウレタンフォーム14を発泡充填したものである。真空断熱材1は実施の形態1に示したものと同様の構成であり、硬質ウレタンフォーム14は発泡剤としてシクロペンタンを使用している。
【0090】
ドア7及び仕切板8においても同様に、内部に真空断熱材1が配設され、真空断熱材1以外の空間部は硬質ウレタンフォーム14にて発泡充填されている。
【0091】
冷蔵庫内には蒸発器15が配置され、圧縮機16と、凝縮器17と、キャピラリチューブ18とを順次環状に接続し、冷凍サイクルを形成する。冷凍サイクル内には冷媒としてイソブタンを封入している。
【0092】
蒸発器15は冷蔵室12および冷凍室13の2カ所に設け、それらを直列、あるいは並列につないで冷凍サイクルを形成しても良い。
【0093】
このように構成した冷蔵庫の消費電力量を測定したところ、真空断熱材を適用しない冷蔵庫よりも、消費電力量は25%低下しており、真空断熱材による断熱効果を確認した。
【0094】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、繊維化装置により形成したガラス繊維にバインダーを付着させるステップと、このバインダーが付着したガラス繊維を積層してマットを形成するステップと、前記マットを100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形するステップと、前記芯材を外被材で覆い、内部を減圧して封止するステップとからなる真空断熱材の製造方法である。
【0095】
よって、繊維化装置による形成直後のガラス繊維に、バインダーを直接付着させるため、バインダーは個々の繊維の表面に均一に拡散して付着する。よって、このバインダーが付着したガラス繊維を加熱圧縮成形した場合、少量のバインダー量でも優れた剛性を持った、真空断熱材用の芯材を成形する製造方法が提供できる。
【0096】
また、繊維化装置による形成直後のガラス繊維は高温であるため、バインダーを希釈拡散させるための溶媒は、塗布後、その殆どが蒸発するため、その後の加熱圧縮成形時の加熱エネルギーや成形時間が削減可能となる。
【0097】
また、上記構成において、バインダーが天然物である真空断熱材の製造方法である。
【0098】
よって、ガラス繊維にバインダーを付着させる際にバインダーが飛散したとしても、環境や人体への影響は極めて小さく、安全性が高い製造方法が提供できる。
【0099】
また、上記構成において、天然物がデンプンである真空断熱材の製造方法である。
【0100】
ジャガイモ、トウモロコシ、コメ、および小麦等の食用植物から抽出するデンプンをバインダーとして用いているため、芯材作製中にバインダーが飛散しても安全であり、バインダー漏洩時の環境への影響も少ない製造方法が提供できる。
【0101】
また、デンプンを構成する元素は基本的に炭素、水素、酸素であり、真空断熱材成形後の芯材からの発生ガスは、その大部分は水分と二酸化炭素である。よって、バインダーからの発生ガスは、汎用的なガス吸着剤で吸着除去可能であり、初期断熱性能、経時断熱性能共に優れた真空断熱材を得ることができる。
【0102】
また、上記構成において、デンプンがデキストリンである真空断熱材の製造方法である。
【0103】
デンプンを分解して作製したデキストリンを用いているため、低温の水にも溶けやすく、あるいはのり化しやすい。よって、バインダー水溶液の作製が容易となる。また、デキストリンからなるバインダー水溶液は比較的、低粘度であるため、例えばのり状のデンプンをガラス繊維に付着させる際、均一にスプレー塗布させやすく、効率的な製造方法となる。
【0104】
また、バインダーが付着したガラス繊維を積層したマットを100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形するステップの前に、ガラス繊維マットに水分を付着させるステップを含む真空断熱材の製造方法である。
【0105】
よって、ガラス繊維についた天然物バインダーの含有水分量が低下し、天然物バインダーがバインダーとしての機能を発現しない場合にも、天然物バインダーはバインダーの機能を発現することができ、バインダーが付着したガラス繊維を長期間保存した後にも、ガラス繊維を100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状に成形する製造方法を提供できる。
【0106】
また、天然物バインダーの付着量が0.1wt%以上10wt%以下である真空断熱材の製造方法である。
【0107】
これにより、充分な剛性を持ち、優れた断熱性能を有する真空断熱材を提供することができる。
【0108】
また、上記構成のいずれかからなる真空断熱材の製造方法からなる真空断熱材は、成形性、および初期断熱性能と経時断熱性能共に優れた真空断熱材を提供できる。
【0109】
更に、本発明による真空断熱材を用いることにより、断熱性能に優れた断熱箱体および保温保冷機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1から3における真空断熱材の製造フローチャート
【図2】図1の製造フローチャートに基づいて成形した真空断熱材の断面図
【図3】本発明の実施の形態4における冷蔵庫の側断面図
【符号の説明】
1 真空断熱材
2 芯材
3 外被材
5 冷蔵庫
6 断熱箱体
12 外箱
13 内箱
14 硬質ウレタンフォーム
Claims (9)
- 繊維化装置による形成直後のガラス繊維にバインダーを付着させるステップと、このバインダーが付着したガラス繊維を積層してマットを形成するステップと、前記マットを100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形するステップと、前記芯材を外被材で覆い、内部を減圧して封止するステップとからなる真空断熱材の製造方法。
- バインダーが天然物である請求項1記載の真空断熱材の製造方法。
- 天然物がデンプンである請求項2記載の真空断熱材の製造方法。
- デンプンがデキストリンである請求項3記載の真空断熱材の製造方法。
- マットを100℃以上の温度で加熱圧縮してボード状の芯材に成形するステップの前ステップとして、前記マットに水分を付着させるステップを含む請求項1から請求項4のいずれか一項記載の真空断熱材の製造方法。
- バインダーの付着量が0.1wt%以上10wt%以下である請求項1から請求項5のいずれか一項記載の真空断熱材の製造方法。
- 請求項1から請求項6のいずれか一項記載の真空断熱材の製造方法からなる真空断熱材。
- 外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間に真空断熱材を配置してなり、前記真空断熱材が請求項7記載のものである真空断熱材を用いた断熱箱体。
- 外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間に真空断熱材を配置し、前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填してなり、前記真空断熱材が請求項7記載のものである真空断熱材を用いた保温保冷機器。
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