JP2004220879A - 自動車前照灯用メタルハライドランプおよび自動車用前照灯装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】上半球光束と下半球光束とを最適化して、ロービーム時の照射中心部の着色、ハイビームとロービームの色違い、照射パターンの不鮮明を防止した自動車前照灯用メタルハライドランプおよびこれを用いた自動車用前照灯装置を提供する。
【解決手段】自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLは、内径1.5mm以上の放電空間1cが形成された耐火性で透光性の気密容器1aTおよび電極間距離が5mm以下の一対の電極1bを備えた放電容器ITと、発光金属およびランプ電圧形成用金属のハロゲン化物、ならびに室温で5気圧以上のキセノンを含み、気密容器1a内に封入されて水銀を本質的に含まない放電媒体とを具備し、安定点灯時における管壁負荷が50W/cm2以上、安定点灯時のランプ電力が60W以下で、かつ、水平点灯状態における放電容器ITの上半球光束Aと下半球光束Bとが数式1(A≧B≧0.6A)を満足する。
【選択図】図1
【解決手段】自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLは、内径1.5mm以上の放電空間1cが形成された耐火性で透光性の気密容器1aTおよび電極間距離が5mm以下の一対の電極1bを備えた放電容器ITと、発光金属およびランプ電圧形成用金属のハロゲン化物、ならびに室温で5気圧以上のキセノンを含み、気密容器1a内に封入されて水銀を本質的に含まない放電媒体とを具備し、安定点灯時における管壁負荷が50W/cm2以上、安定点灯時のランプ電力が60W以下で、かつ、水平点灯状態における放電容器ITの上半球光束Aと下半球光束Bとが数式1(A≧B≧0.6A)を満足する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車前照灯用メタルハライドランプおよびこれを用いた自動車用前照灯装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
相対向する一対の電極を備えた発光管内に希ガス、発光金属のハロゲン化物および水銀を封入したメタルハライドランプは、比較的高効率で、高演色性であるため広く使用されている。自動車の前照灯用においても、メタルハライドランプの使用が普及してきている。自動車の前照灯用を含めて、現在実用されているメタルハライドランプは、水銀を必須としている。なお、自動車前照灯用のメタルハライドランプの仕様においては、約2〜15mgの水銀の封入が不可欠とされている(以下、便宜上「水銀入りランプ」という。)(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、環境問題が深刻化してきている現在、照明分野においても、環境負荷が大きい水銀をランプから減少させ、さらに廃絶することは非常に重要なことと考えられている。
【0004】
この課題に対して、メタルハライドランプにおいても、水銀を用いないための提案が既にいくつかなされている(例えば特許文献2参照。)。特許文献2においては、水銀に代えてZnI2などの蒸気圧の高いランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物を発光物質のハロゲン化物、例えばScI3−NaIに加えて封入することにより、水銀入りのメタルハライドランプと同等の電気特性と発光特性を有する自動車前照灯用メタルハライドランプ(以下、便宜上「水銀フリーランプ」という。)が得られている。
【0005】
また、一般に自動車前照灯用のメタルハライドランプは、水平点灯される。自動車前照灯は、メタルハライドランプの上半球光束と下半球光束とをそれぞれ光学的に有効に利用して所定の配光特性を満足させるようにその反射鏡およびまたは前面レンズが設計されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平2−7347号公報
【特許文献2】
特開平11−238488号公報
【発明が解決しようとする課題】
水銀フリーランプは、水銀入りランプに比べて特に以下の点で相違している。すなわち、
1.水銀フリーランプでは、水銀入りランプにおける金属ハロゲン化物(以下、便宜上「第1のハロゲン化物」とい。)に加えてさらに融点の低い(したがって、蒸気圧が高い)金属ハロゲン化物(以下、便宜上「第2のハロゲン化物」とい。)を封入する。第2のハロゲン化物は、ランプ電圧を上昇させてシステム効率を向上させ、バラストを小形化、低コスト化する作用がある。また、水銀に代わり色度を補正する作用がある。さらに、第1のハロゲン化物と第2のハロゲン化物との混合ハロゲン化物全体の融点が低下するため、始動後に混合ハロゲン化物が融解するまでの時間が大幅に短かくなる。
【0007】
一方、前照灯用の水銀フリーランプでは、始動時に安定時の2〜3倍の電力が4〜8秒程度投入され、光束の立上りを早くしている。水銀入りランプではハロゲン化物が蒸発して発光し始めるまでに10秒程度以上要するため、ランプ電力が低下し始めた頃にハロゲン化物が蒸発する。これに対して、水銀フリーランプでは、ハロゲン化物の融点が上記のように低いために、大電力が投入されている4〜8秒の期間にハロゲン化物が融解し蒸発して発光し始めるので、ハロゲン化物が急激に融解し、ハロゲン化物の膜の面積が広がる傾向がある。このため、水銀フリーランプの方が安定時においてもハロゲン化物の膜の面積が広くなる傾向がある。
【0008】
2.水銀フリーランプでは、始動時の最大投入電力が安定時のランプ電力の2〜3倍程度に制御されるため、ハロゲン化物がより一層急激に融解し、ハロゲン化物の膜の面積が広くなる傾向がある。これに対して、水銀入りランプでは、始動時の最大投入電力が安定時のランプ電力の2倍以下である。
【0009】
3.水銀フリーランプでは、アークが細くなる傾向があるので、これを前照灯に用いた場合、照射面において、ハロゲン化物付着部からの光とそれ以外の部分からの光との境界線が、水銀入りランプより目立ちやすくなる場合があり、好ましくない。
【0010】
4.水銀フリーランプでは、キセノンの封入圧を水銀入りランプより高くしているので、これに伴ってアークの浮力が増大し、放電容器の上部中央の内面への伝熱量がより一層増える傾向がある。このため、放電空間の中央部分が全体的に相対的に高温になる。点灯中の余剰のハロゲン化物は、液体状で放電空間の中央下部を中心に付着するので、この部分が全体的により高温になり、その結果、余剰ハロゲン化物は電極方向に広がりやすくなり、ハロゲン化物の付着面積がより一層広がる傾向がある。
【0011】
以上の諸点から、水銀フリーランプでは、始動時および安定時においてハロゲン化物の膜の面積が広くなる傾向がある。
【0012】
一般に、メタルハライドランプを自動車前照灯に用いる場合、いわゆるハイビームとロービームのどちらにも、メタルハライドランプが使用される可能性がある。
【0013】
ところが、上半球光束と下半球光束とが等しいハロゲン電球とは異なり、メタルハライドランプでは点灯中に放電媒体中の余剰のハロゲン化物が放電容器の下側に溜まり、膜を形成するので、下半球光束が上半球光束より減少し、しかもハロゲン化物特有の色に着色される傾向がある。水銀フリーランプにおいては、この傾向が上述した理由により極めて顕著になる。
【0014】
本発明者は、水銀フリーランプの場合、上半球光束と下半球光束との比率が適切でないと、以下に示す問題のあることを発見した。すなわち、同じ全光束を有する水銀フリーランプであっても、下半球光束が相対的に低いランプと高いランプを比較すると、上半球光束を主に使うロービームでは、前者の方が明るいが、下半球光束および上半球光束をともに使うハイビームでは同等になる。しかしながら、光色は、前者の場合、下方向放射がハロゲン化物の膜による着色比率が大きく、後者と比較してロービーム時では照射中心部(なお、この部位は、斜め下および斜め上方向の放射光が主に寄与する。)においては、ハロゲン化物の膜による着色を生じるという問題がある。
【0015】
また、ハイビーム時においても、照射面全体にハロゲン化物の膜による着色が見られ、ロービーム時における光色とのギャップが生じるという問題がある。
【0016】
さらに、前者の場合、ハロゲン化物の膜により照射パターンが不鮮明になる弊害もある。
【0017】
上記の問題は、自動車前照灯用メタルハライドランプがロービーム時専用、ハイビーム時専用または両者兼用であると否にかかわらず存在することになる。自動車前照灯用の水銀フリーランプにおいては、上記のような問題を改善するために、上半球光束と下半球光束との比率が最適化されている必要がある。
【0018】
しかしながら、従来技術においては、自動車前照灯用のメタルハライドランプの上半球光束と下半球光束との最適化の必要性およびその解について開示していない。
【0019】
本発明は、上半球光束と下半球光束とを最適化して、ロービーム時の照射中心部の着色、ハイビームとロービームの色違いおよび照射パターンの不鮮明といった不具合を防止した自動車前照灯用メタルハライドランプおよびこれを用いた自動車用前照灯装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を達成するための手段】
請求項1の発明の自動車前照灯用メタルハライドランプは、内部に内径1.5mm以上の放電空間が形成された耐火性で透光性の気密容器および気密容器内の放電空間の両端に離間対向して封装されて電極間距離が5mm以下の一対の電極を備えた放電容器と;発光金属およびランプ電圧形成用金属のハロゲン化物、ならびに室温で5気圧以上のキセノンを含み、気密容器内に封入されて水銀を本質的に含まない放電媒体と;を具備し、安定点灯時における管壁負荷が50W/cm2以上、安定点灯時のランプ電力が60W以下で、かつ、水平点灯状態における放電容器の上半球光束Aと下半球光束Bとが数式1を満足することを特徴としている。
【0021】
【数1】
A≧B≧0.6×A
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0022】
<放電容器について> 放電容器は、気密容器および一対の電極を備えて構成されている。
【0023】
(気密容器について) 気密容器は、耐火性で透光性である。「耐火性」とは、放電ランプの通常の作動温度に十分耐える意味である。したがって、気密容器は、耐火性を備える材料であり、かつ、放電によって発生した所望波長域の可視光を外部に導出することができれば、どのようなもので作られていてもよい。例えば、石英ガラスや透光性アルミナ、YAGなどのセラミックスまたはこれらの単結晶などを用いて形成することができる。なお、必要に応じて、気密容器の内面に耐ハロゲン性または耐ハロゲン化物性の透明性被膜を形成するか、気密容器の内面を改質することが許容される。
【0024】
また、気密容器は、その内部に適当な形状をなした放電空間、例えば細長い放電空間が形成されている。なお、細長い放電空間としては、例えば放電空間を円柱状にすることができる。これにより、アークが水平点灯においては上方へ湾曲しようとするために、放電容器の上側の内面に接近するので、放電容器の上部の温度上昇が早くなる。
【0025】
さらに、放電空間を包囲する部分の肉厚を比較的大きくすることができる。すなわち、電極間距離のほぼ中央部の肉厚をその両側の肉厚より大きくすることができる。これにより、放電容器の伝熱が良好になって放電容器の放電空間の下部およぶ側部内面に付着している放電媒体の温度上昇が早まるために、光束立ち上がりが早くなる。
【0026】
(一対の電極について) 一対の電極は、気密容器の両端内部に離間対向して封装され、その電極間距離が5mm以下に設定されているものとする。
【0027】
なお、電極は、交流および直流のいずれで作動するように構成してもよい。交流で作動する場合、一対の電極は同一構造とする。また、自動車前照灯用のメタルハライドランプの場合、電極の先端部近傍を軸部より径大にすることができる。すなわち、ランプの点滅回数が非常に多くなるとともに、また始動時には定常時より大きな電流を流すので、これに対応して電極全体を径大にすると、電極軸に接触している気密容器の構成材料が点滅のたびに熱応力を受けてクラックを生じやすい。そこで、電極の先端部近傍に径大部を形成することで、電極を点滅に対応させることができるが、軸部は径大になっていないから、クラックを生じにくい。直流で作動する場合、一般に陽極は温度上昇が激しいから、先端部近傍に径大部を形成すれば、放熱面積を大きくすることができるとともに、頻繁な点滅に対応することができる。これに対して、陰極は必ずしも径大部を形成する必要がない。
【0028】
<放電媒体について> 本発明において、放電媒体は、金属ハロゲン化物およびキセノンを含み、水銀を本質的に含まない。
【0029】
(金属ハロゲン化物について) 金属ハロゲン化物は、発光金属およびランプ電圧形成用金属のハロゲン化物を含んでいる。
【0030】
発光金属のハロゲン化物は、特段限定されないが、好適にはナトリウムNaおよびスカンジウムScを主成分とするハロゲン化物であり、所望によりインジウムInや希土類金属などのハロゲン化物を添加することができる。なお、インジウムは、発光物質およびランプ電圧形成のいずれにも寄与する。そして、インジウムInや希土類金属の発光は、メタルハライドランプの発光の色度の調整用として好適である。
【0031】
ランプ電圧形成用金属のハロゲン化物は、蒸気圧が比較的高くてランプ電圧を形成するのに効果的に寄与する金属、例えば亜鉛Zn、マグネシウムMg、コバルトCo、クロムCr、マンガンMn、アンチモンSb、レニウムRe、ガリウムGa、スズSn、鉄Fe、アルミニウムAl、チタンTi、ジルコニウムZrおよびハフニウムHfのグループから選択された一種または複数種のハロゲン化物を用いることができる。これらの金属ハロゲン化物を選択的に適量封入することにより、ランプ電圧を所要範囲に高めることができる。それにより、メタルハライドランプの電気特性を所望に設定できるので、比較的少ないランプ電流で所要のランプ電力を投入することが可能になる。なお、最適には亜鉛Znのハロゲン化物である。亜鉛Znは、蒸気圧が比較的高いとともに、化学的に安全であり、しかも、安価に、かつ、工業的規模で容易に入手することができる物質である。また、亜鉛Znの発光は、メタルハライドランプの発光の色度調整用としても寄与させることができる。
【0032】
次に、ハロゲン化物を構成するハロゲンについて説明する。すなわち、反応性については、ハロゲンの中でヨウ素が最も適当であり、少なくとも上記主発光金属は、主としてヨウ化物として封入される。しかし、要すれば、ヨウ化物および臭化物のように異なるハロゲンの化合物を併用することもできる。
【0033】
(キセノンについて) キセノンは、室温で5気圧以上の圧力で封入するものとする。また、キセノンは、始動ガスおよび緩衝ガスとして作用するとともに、上記の圧力で封入することにより、点灯直後において発光金属のハロゲン化物の蒸気圧が高くなっていないときに、発光物質としても作用する。なお、所望により、アルゴンまたはクリプトンなどを添加することができる。なお、キセノンを5気圧以上封入すると、上記に加えて始動直後に主発光を担当するように作用させることができる。キセノンの封入圧力は、好適には8〜15気圧である。これにより、メタルハライドランプのランプ電圧が高くなり、同一ランプ電流に対してランプ入力を大きくして、光束立ち上がり特性を向上させることができる。光束立ち上がり特性が良好であることは、どのような使用目的であっても好都合である。
【0034】
(水銀について) 本発明において、「本質的に水銀を含まない」とは、水銀を全く封入していないだけでなく、気密容器の内容積1cc当たり2mg未満、好ましくは1mg以下の水銀が存在していることを許容するという意味である。しかし、水銀を全く封入しないことは環境上望ましいことである。従来のように水銀蒸気によって放電ランプの電気特性を維持する場合には、短アーク形においては気密容器の内容積1cc当たり20〜40mg、さらに場合によっては50mg以上封入していたことからすれば、本発明は水銀量が実質的に頗る少ないといえる。
【0035】
<管壁負荷について> 本発明において、管壁負荷は、メタルハライドランプの安定点灯時に50W/cm2以上でなければならない。なお、本発明において、「管壁負荷」とは、気密容器の内部に形成された放電空間の単位内表面積(1cm2)当たりのランプ電力をいう。放電媒体の蒸気圧を高くして、全光束を大きくするために、管壁負荷は、上記の条件を満足しなければならない。
【0036】
<ランプ電力について> ランプ電力は、安定点灯時において60W以下である。これはメタルハライドランプが小形であることを意味する。
【0037】
<上半球光束と下半球光束の関係について> 上半球光束Aと下半球光束Bとは、これらの比率を最適条件に維持するために、数式1を満足する必要がある。すなわち、下半球光束Bは、上半球光束Aの60%であるとともに上半球光束A以下でなければならない。なお、上半球光束Aおよび下半球光束Bは、完成されたメタルハライドランプで測定するものとする。
【0038】
まず、上半球光束Aと下半球光束Bとを測定する方法について説明する。測定は、メタルハライドランプの配光特性をすることにより行うことができる。すなわち、メタルハライドランプの発光中心から1m以上離間した位置においてランプからの放射による照度を計測し、そのデータを元に計算される。測定は、最低でもランプの軸を回転軸とした方向360°の照度分布と、ランプ軸に対する水平方向法線を回転軸とした方向360°の分布を計測し、それ以外の方向はアーク形状を円筒または線に近似した計算により推測する。そうして、全方向を積分して全光束を求めることができる。また、上半球および下半球のみを積分することで、それぞれの光束を計測することができる。
【0039】
次に、数式1を満足するための主な具体的構成について説明する。
【0040】
1.気密容器の内径を大きくし、かつ、肉厚を小さくする。これにより、放電空間の下面の温度が低下し、放電媒体の付着位置が下面に集中し、その結果、下半球光束が増大する。
【0041】
2.放電媒体の封入量を低減する。これにより、放電媒体の付着面積が減少し、その結果、下半球光束が増大する。
【0042】
3.気密容器の肉厚を増大する。これにより、放電空間下部の温度が低下して放電媒体の付着位置が下面に集中し、その結果、下半球光束が増大する。
【0043】
<本発明のその他の構成について> 以下に示す構成を選択的に付加することにより、高圧放電ランプの性能が向上したり、機能が増加したりする。
【0044】
1. 外管について 外管は、石英ガラスまたはハイシリケートガラスなどからなり、その内部に放電容器の少なくとも主要部をその収納する手段である。そして、外管、発光管から外部へ放射される紫外線を遮断し、機械的に保護し、かつ、発光管の気密容器を手で触れることで人の指紋や脂肪が付いて失透の原因とならないようにしたり、あるいは気密容器を保温したりたりする。また、外管の内部は、その目的に応じて外気に対して気密に封止してもよいし、外気と同程度または減圧された空気または不活性ガスが封入されていてもよい。さらに、要すれば、外気に連通していてもよい。さらに、外管の外面または内面に遮光膜を配設することもできる。
【0045】
また、外管を形成する際に、外管の両端を気密容器の両端から管軸方向に延在する封止部にガラス溶着させることによって、気密容器で外管を支持するように構成することができる。
【0046】
2.口金について 口金は、高圧放電ランプを点灯回路に接続したり、加えて機械的に支持したりするのに機能する。
【0047】
3.イグナイタについて イグナイタは、高電圧パルス電圧を発生し、これを高圧放電ランプに印加して、その始動を促進する手段であり、口金の内部に収納するなどにより、高圧放電ランプと一体化することができる。
【0048】
4.始動補助導体について 始動補助導体は、電極近傍における電界強度を高くして、高圧放電ランプの始動を支援する手段であり、その一端を他方の電極と同電位個所に接続し、他端を一方の電極近傍における気密容器の外面に配設する。
【0049】
<本発明の作用について> 本発明においては、以上の説明から構成を具備していることにより、上半球光束と下半球光束とが最適化されて、ロービーム時の照射中心部の着色、ハイビームとロービームの色違いおよび照射パターンの不鮮明といった不具合を防止することができる。
【0050】
請求項2の発明の自動車用前照灯装置は、自動車用前照灯装置本体と;放電容器の軸が自動車用前照灯装置本体の光軸に沿って自動車用前照灯装置本体内に配設された請求項1記載のメタルハライドランプと;メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力を安定時のランプ電力の2〜4倍とした点灯回路と;を具備していることを特徴としている。
【0051】
本発明の自動車用前照灯装置は、請求項1のメタルハライドランプを光源として備えているので、光束立ち上がりが早くて安全であるとともに、メタルハライドランプが環境負荷の大きな水銀を封入していないので、環境対策上すこぶる好ましい。なお、「自動車用前照灯装置本体」とは、自動車用前照灯装置からメタルハライドランプおよび点灯回路を除いた残余の全ての部分を意味する。
【0052】
点灯回路は、メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力を安定時のランプ電力の2〜4倍、好適には2.5〜4倍とすることにより、光束立ち上がりを自動車前照灯用として必要な範囲内に入るように早くすることができる。なお、希ガスとしてのキセノンの封入圧を3〜15気圧の範囲でX(気圧)とし、メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力をAA(W)としたとき、AAが下式を満足するように構成することにより、点灯直後4秒までの光束立ち上がりを早めて自動車用前照灯に必要な前照灯前面の代表点での光度8000cdを得ることができる。
【0053】
AA>−2.5X+102.5
上記のようにキセノン封入圧と最高入力電力とが直線的な関係になるのは、蒸気圧の低い放電媒体のみであるから、始動後4秒後の時点ではキセノンの発光が圧倒的になっているからである。キセノンの発光量は、キセノンの封入圧とその時の電力とで決まるので、キセノン圧が低ければ、入力電力を多くすればよい。反対に、キセノン圧が高ければ、入力電力を少なくすればよい。なお、本発明において、メタルハライドランプの点灯は、交流点灯および直流点灯のいずれであってもよい。
また、点灯回路は、所要により無負荷出力電圧を200V以下に構成することができる。本発明に用いるメタルハライドランプは、一般に水銀封入のメタルハライドランプに比較して、ランプ電圧が低いので、点灯回路の無負荷出力電圧を200V以下にすることができる。これにより、点灯回路の小形化が可能になる。なおて、水銀を封入したメタルハライドランプにおいては、400V程度の無負荷出力電圧を必要としている。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0055】
図1ないし図3は、本発明の自動車前照灯用メタルハライドランプにおける第1の実施の形態を示し、図1はランプ全体の正面図、図2は放電容器の拡大要部正面図、図3は実施例1を示す概念的拡大横断面図である。各図において、ITは放電容器すなわち発光管、2は封着金属箔、3A、3Bは一対の外部リード線、OTは外管、Tは絶縁チューブ、Bは口金である。
【0056】
放電容器ITは、気密容器1aおよび一対の電極1b、1bからなる。気密容器1aは、中空の紡錘形状に成形されてなり、その両端に一対の細長い封止部1a1を一体に備えているとともに、内部に細長いほぼ円柱状の放電空間1cが形成されている。電極1bは、その基端が封止部1a1に埋設されることによって所定の位置に支持されている。また、電極1bの基部は、封止部1a1内において、封着金属箔2の一端に溶接されている。なお、図1において、下方の封止部1a1を形成した後、封止管1a2が切断されないで封止部1a1の下部から一体に延長していて、口金B内へ延在している。
【0057】
封着金属箔2は、気密容器1aの封止部1a1内に気密に埋設されている。
【0058】
一対の外部リード線3A、3Bは、その先端が気密容器1aの両端の封止部1a1内において封着金属箔2の他端に溶接され、基端側が外部へ導出されている。図1において放電容器ITから上方へ導出された外部リード線3Aは、中間部が後述する外管OTに沿って折り返されて後述する口金B内に導入されて図示しない口金端子の一方に接続している。図1において放電容器ITから下方へ導出された外部リード線3Bは、管軸に沿って延在して口金B内に導入されて口金端子の他方に接続している。
【0059】
気密容器1a内には、放電媒体として金属ハロゲン化物および希ガスが封入されている。金属ハロゲン化物は、ナトリウムNa、スカンジウムSc、インジウムInおよび亜鉛Znのグループのハロゲン化物から選択された少なくとも2種以上を含んでいる。希ガスは適当な圧力で封入されている。
【0060】
外管OTは、紫外線カット性能を備えており、内部に放電容器ITを収納していて、両端の縮径部4が放電容器ITの封止部1a1にガラス溶着している。しかし、内部は気密ではなく、外気に連通している。
【0061】
絶縁チューブTは、外部リード線3Aを被覆している。
【0062】
口金Bは、自動車前照灯用として規格化されているもので、放電容器ITおよび外管OTを中心軸に沿って植立して支持していて、自動車前照灯の背面に着脱可能に装着されるように構成されている。
【実施例1】
放電容器IT
気密容器1a:石英ガラス製、球体長7mm、最大外径6mm、
最大内径3.5mm、最大径部における肉厚1.25mm
電極1b :タングステン製で、電極間距離4.2mm
放電媒体
金属ハロゲン化物:ScI3−NaI−ZnI2=0.9mg
キセノンXe:10気圧
外管OT :外径9mm、内径7mm、内部雰囲気;大気圧(大気)
点灯直後投入電力:85W
点灯直後投入電流:2.8A
安定時ランプ電圧:42V
安定時ランプ電力:35W
安定時の下半球光束B比:0.75A(なお、Aは上半球光束)
実施例1を図3に概念的に示している。
【実施例2】
気密容器1a:石英ガラス製、球体長7mm、最大外径6mm、
最大内径2.4mm、最大径部における肉厚1.65mm
金属ハロゲン化物:ScI3−NaI−ZnI2=0.1mg
安定時の下半球光束B比:0.83A(なお、Aは上半球光束)
【実施例3】
気密容器1a:石英ガラス製、球体長7mm、最大外径7.5mm、
最大内径2.4mm、最大径部における肉厚2.4mm
安定時の下半球光束B比:0.65A(なお、Aは上半球光束)
なお、実施例2および3において、実施例1と同一部分については記載を省略している。
【0063】
また、本発明によらない比較例は、下記のとおりである。
【0064】
気密容器1a:石英ガラス製、球体長7mm、最大外径6mm、
最大内径2.4mm、最大径部における肉厚1.65mm
金属ハロゲン化物:ScI3−NaI−ZnI2=0.9mg
安定時の下半球光束B比:0.55A(なお、Aは上半球光束)
比較例を図4に概念的に示している。
【0065】
図5および図6は、本発明の自動車用前照灯装置における一実施の形態を示し、図5は装置全体の背面斜視図、図6は点灯回路の回路図である。各図において、自動車用前照灯装置HLは、自動車用前照灯装置本体21、自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLおよび2つの点灯回路OLにより構成されている。
【0066】
自動車用前照灯装置本体21は、前面透過パネル21a、リフレクタ21b、21c、ランプソケット21dおよび取付部21eなどから構成されている。前面レンズ21aは、自動車の外面と合わせた形状をなし、所要の光学的手段たとえばプリズムを備えている。リフレクタ21b、21cは、各メタルハライドランプHPDLごとに配設されていて、それぞれに要求される配光特性を得るように構成されている。ランプソケット21dは、点灯回路OCの出力端に接続し、メタルハライドランプHPDLの口金21dに装着される。取付部21eは、自動車用前照灯装置本体21を自動車の所定の位置に取り付けるための手段である。
【0067】
メタルハライドランプHPDLは、図1に示す構造を備えている。ランプソケット21dは、口金に装着されて接続する。そうして、2灯の自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLが自動車用前照灯装置本体21に装着されて、4灯式の自動車用前照灯装置が構成される。各自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLの発光部は、自動車用前照灯装置本体21のリフレクタ21b、21cの焦点にほぼ位置する。
【0068】
2つの点灯回路OLは、それぞれ後述する回路構成を備えていて、金属製容器22内に収納されているとともに、自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLを付勢して点灯させる。
【0069】
点灯回路OLは、図6に示すように、直流電源11、チョッパ12、制御手段13、ランプ電流検出手段14、ランプ電圧検出手段15、イグナイタ16、自動車前照灯用メタルハライドランプHPDL、フルブリッジインバータ17により構成されていて、自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLを交流点灯する。
【0070】
直流電源11は、後述するチョッパ12に対して直流電源を供給する手段であって、バッテリーまたは整流化直流電源が用いられる。自動車の場合には、一般的にバッテリーが用いられる。しかし、交流を整流する整流化直流電源であってもよい。必要に応じて電解コンデンサ11aを並列接続して平滑化を行う。
【0071】
チョッパ12は、直流電圧を所要値の直流電圧に変換するDC−DC変換回路であって、後述するフルブリッジインバータ17を介して自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLを所要に制御する。直流電源電圧が低い場合には、昇圧チョッパを用い、反対に高い場合には降圧チョッパを用いる。
【0072】
制御手段13は、チョッパ12を制御する。たとえば、点灯直後にはメタルハライドランプHPDLに定格ランプ電流の3倍以上のランプ電流をチョッパ22からフルブリッジインバータ17を経由して流し、その後時間の経過とともに徐々にランプ電流を絞っていき、やがて定格ランプ電流にするように制御する。また、制御手段13は、ランプ電流とランプ電圧と相当するそれぞれの検出信号が後述するように帰還入力されることにより、定電力制御信号を発生して、チョッパ22を定電力制御する。さらに、制御手段13は、時間的な制御パターンが予め組み込まれたマイコンが内蔵されていて、点灯直後には定格ランプ電流の3倍以上のランプ電流を自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLに流し、時間の経過とともにランプ電流を絞るようにチョッパ12を制御するように構成されている。
【0073】
ランプ電流検出手段14は、フルブリッジインバータ17を介してランプと直列に挿入されていて、ランプ電流に相当する電流を検出して制御手段13に制御入力する。
【0074】
ランプ電圧検出手段15は、同様にフルブリッジインバータ17を介してメタルハライドランプHPDLと並列的に接続されていて、ランプ電圧に相当する電圧を検出して制御手段23に制御入力する。
【0075】
イグナイタ16は、フルブリッジインバータ17と自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLとの間に介在していて、始動時に約20kV程度の始動パルス電圧を自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLに供給できるように構成されている。
【0076】
フルブリッジインバータ17は、4つのMOSFETQ1、Q2、Q3およびQ4からなるブリッジ回路、ブリッジ回路17aのMOSFETQ1およびQ3と、Q2およびQ4とを交互にスイッチングさせるゲートドライブ回路28bおよび極性反転回路INVから構成されていて、チョッパ12からの直流電圧を上記スイッチングにより矩形波の低周波交流電圧に変換して、自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLに印加して、自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLを低周波交流点灯させる。
【0077】
そうして、点灯回路OCを用いて自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLを矩形波の低周波交流で点灯すると、点灯直後から所要の光束を発生する。これにより、自動車用前照灯として必要な電源投入後1秒後に定格に対して光束25%、4秒後に光束80%の点灯を実現することができる。
【0078】
【発明の効果】
請求項1によれば、内部に内径1.5mm以上の耐火性で透光性の気密容器および電極間距離が5mm以下の一対の電極を備えた放電容器と、発光金属およびランプ電圧形成用金属のハロゲン化物、ならびに室温で5気圧以上のキセノンを含み、水銀を本質的に含まない放電媒体とを具備し、安定点灯時における管壁負荷が50W/cm2以上、安定点灯時のランプ電力が60W以下で、かつ、水平点灯状態における放電容器の上半球光束Aと下半球光束Bとが数式1を満足することにより、上半球光束と下半球光束とを最適化して、ロービーム時の照射中心部の着色、ハイビームとロービームの色違いおよび照射パターンの不鮮明といった不具合を防止した自動車前照灯用メタルハライドランプを提供することができる。
【0079】
【数1】
A≧B≧0.6×A
請求項2の発明によれば、自動車用前照灯装置本体と、自動車用前照灯装置本体に配設された請求項1または2記載の自動車前照灯用メタルハライドランプと、自動車前照灯用メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力を安定時のランプ電力の2〜4倍とした点灯回路とを具備していることにより、請求項1の効果を有する自動車用前照灯装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車前照灯用メタルハライドランプにおける第1の実施の形態の正面図
【図2】同じく放電容器の拡大要部正面図
【図3】同じく実施例1を示す概念的拡大横断面図
【図4】本発明によらない比較例を示す概念的拡大横断面図
【図5】本発明の自動車用前照灯装置における一実施の形態を示す斜視図
【図6】同じく点灯回路の回路図
【符号の説明】
1a…気密容器、1a1…封止部、1a2…封止管、1b…電極、1c…放電空間、2…封着金属箔、3A…外部リード線、3B…外部リード線、4…縮径部、B…口金、HPDL…自動車前照灯用メタルハライドランプ、IT…放電容器、OT…外管、T…絶縁チューブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車前照灯用メタルハライドランプおよびこれを用いた自動車用前照灯装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
相対向する一対の電極を備えた発光管内に希ガス、発光金属のハロゲン化物および水銀を封入したメタルハライドランプは、比較的高効率で、高演色性であるため広く使用されている。自動車の前照灯用においても、メタルハライドランプの使用が普及してきている。自動車の前照灯用を含めて、現在実用されているメタルハライドランプは、水銀を必須としている。なお、自動車前照灯用のメタルハライドランプの仕様においては、約2〜15mgの水銀の封入が不可欠とされている(以下、便宜上「水銀入りランプ」という。)(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、環境問題が深刻化してきている現在、照明分野においても、環境負荷が大きい水銀をランプから減少させ、さらに廃絶することは非常に重要なことと考えられている。
【0004】
この課題に対して、メタルハライドランプにおいても、水銀を用いないための提案が既にいくつかなされている(例えば特許文献2参照。)。特許文献2においては、水銀に代えてZnI2などの蒸気圧の高いランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物を発光物質のハロゲン化物、例えばScI3−NaIに加えて封入することにより、水銀入りのメタルハライドランプと同等の電気特性と発光特性を有する自動車前照灯用メタルハライドランプ(以下、便宜上「水銀フリーランプ」という。)が得られている。
【0005】
また、一般に自動車前照灯用のメタルハライドランプは、水平点灯される。自動車前照灯は、メタルハライドランプの上半球光束と下半球光束とをそれぞれ光学的に有効に利用して所定の配光特性を満足させるようにその反射鏡およびまたは前面レンズが設計されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平2−7347号公報
【特許文献2】
特開平11−238488号公報
【発明が解決しようとする課題】
水銀フリーランプは、水銀入りランプに比べて特に以下の点で相違している。すなわち、
1.水銀フリーランプでは、水銀入りランプにおける金属ハロゲン化物(以下、便宜上「第1のハロゲン化物」とい。)に加えてさらに融点の低い(したがって、蒸気圧が高い)金属ハロゲン化物(以下、便宜上「第2のハロゲン化物」とい。)を封入する。第2のハロゲン化物は、ランプ電圧を上昇させてシステム効率を向上させ、バラストを小形化、低コスト化する作用がある。また、水銀に代わり色度を補正する作用がある。さらに、第1のハロゲン化物と第2のハロゲン化物との混合ハロゲン化物全体の融点が低下するため、始動後に混合ハロゲン化物が融解するまでの時間が大幅に短かくなる。
【0007】
一方、前照灯用の水銀フリーランプでは、始動時に安定時の2〜3倍の電力が4〜8秒程度投入され、光束の立上りを早くしている。水銀入りランプではハロゲン化物が蒸発して発光し始めるまでに10秒程度以上要するため、ランプ電力が低下し始めた頃にハロゲン化物が蒸発する。これに対して、水銀フリーランプでは、ハロゲン化物の融点が上記のように低いために、大電力が投入されている4〜8秒の期間にハロゲン化物が融解し蒸発して発光し始めるので、ハロゲン化物が急激に融解し、ハロゲン化物の膜の面積が広がる傾向がある。このため、水銀フリーランプの方が安定時においてもハロゲン化物の膜の面積が広くなる傾向がある。
【0008】
2.水銀フリーランプでは、始動時の最大投入電力が安定時のランプ電力の2〜3倍程度に制御されるため、ハロゲン化物がより一層急激に融解し、ハロゲン化物の膜の面積が広くなる傾向がある。これに対して、水銀入りランプでは、始動時の最大投入電力が安定時のランプ電力の2倍以下である。
【0009】
3.水銀フリーランプでは、アークが細くなる傾向があるので、これを前照灯に用いた場合、照射面において、ハロゲン化物付着部からの光とそれ以外の部分からの光との境界線が、水銀入りランプより目立ちやすくなる場合があり、好ましくない。
【0010】
4.水銀フリーランプでは、キセノンの封入圧を水銀入りランプより高くしているので、これに伴ってアークの浮力が増大し、放電容器の上部中央の内面への伝熱量がより一層増える傾向がある。このため、放電空間の中央部分が全体的に相対的に高温になる。点灯中の余剰のハロゲン化物は、液体状で放電空間の中央下部を中心に付着するので、この部分が全体的により高温になり、その結果、余剰ハロゲン化物は電極方向に広がりやすくなり、ハロゲン化物の付着面積がより一層広がる傾向がある。
【0011】
以上の諸点から、水銀フリーランプでは、始動時および安定時においてハロゲン化物の膜の面積が広くなる傾向がある。
【0012】
一般に、メタルハライドランプを自動車前照灯に用いる場合、いわゆるハイビームとロービームのどちらにも、メタルハライドランプが使用される可能性がある。
【0013】
ところが、上半球光束と下半球光束とが等しいハロゲン電球とは異なり、メタルハライドランプでは点灯中に放電媒体中の余剰のハロゲン化物が放電容器の下側に溜まり、膜を形成するので、下半球光束が上半球光束より減少し、しかもハロゲン化物特有の色に着色される傾向がある。水銀フリーランプにおいては、この傾向が上述した理由により極めて顕著になる。
【0014】
本発明者は、水銀フリーランプの場合、上半球光束と下半球光束との比率が適切でないと、以下に示す問題のあることを発見した。すなわち、同じ全光束を有する水銀フリーランプであっても、下半球光束が相対的に低いランプと高いランプを比較すると、上半球光束を主に使うロービームでは、前者の方が明るいが、下半球光束および上半球光束をともに使うハイビームでは同等になる。しかしながら、光色は、前者の場合、下方向放射がハロゲン化物の膜による着色比率が大きく、後者と比較してロービーム時では照射中心部(なお、この部位は、斜め下および斜め上方向の放射光が主に寄与する。)においては、ハロゲン化物の膜による着色を生じるという問題がある。
【0015】
また、ハイビーム時においても、照射面全体にハロゲン化物の膜による着色が見られ、ロービーム時における光色とのギャップが生じるという問題がある。
【0016】
さらに、前者の場合、ハロゲン化物の膜により照射パターンが不鮮明になる弊害もある。
【0017】
上記の問題は、自動車前照灯用メタルハライドランプがロービーム時専用、ハイビーム時専用または両者兼用であると否にかかわらず存在することになる。自動車前照灯用の水銀フリーランプにおいては、上記のような問題を改善するために、上半球光束と下半球光束との比率が最適化されている必要がある。
【0018】
しかしながら、従来技術においては、自動車前照灯用のメタルハライドランプの上半球光束と下半球光束との最適化の必要性およびその解について開示していない。
【0019】
本発明は、上半球光束と下半球光束とを最適化して、ロービーム時の照射中心部の着色、ハイビームとロービームの色違いおよび照射パターンの不鮮明といった不具合を防止した自動車前照灯用メタルハライドランプおよびこれを用いた自動車用前照灯装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を達成するための手段】
請求項1の発明の自動車前照灯用メタルハライドランプは、内部に内径1.5mm以上の放電空間が形成された耐火性で透光性の気密容器および気密容器内の放電空間の両端に離間対向して封装されて電極間距離が5mm以下の一対の電極を備えた放電容器と;発光金属およびランプ電圧形成用金属のハロゲン化物、ならびに室温で5気圧以上のキセノンを含み、気密容器内に封入されて水銀を本質的に含まない放電媒体と;を具備し、安定点灯時における管壁負荷が50W/cm2以上、安定点灯時のランプ電力が60W以下で、かつ、水平点灯状態における放電容器の上半球光束Aと下半球光束Bとが数式1を満足することを特徴としている。
【0021】
【数1】
A≧B≧0.6×A
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0022】
<放電容器について> 放電容器は、気密容器および一対の電極を備えて構成されている。
【0023】
(気密容器について) 気密容器は、耐火性で透光性である。「耐火性」とは、放電ランプの通常の作動温度に十分耐える意味である。したがって、気密容器は、耐火性を備える材料であり、かつ、放電によって発生した所望波長域の可視光を外部に導出することができれば、どのようなもので作られていてもよい。例えば、石英ガラスや透光性アルミナ、YAGなどのセラミックスまたはこれらの単結晶などを用いて形成することができる。なお、必要に応じて、気密容器の内面に耐ハロゲン性または耐ハロゲン化物性の透明性被膜を形成するか、気密容器の内面を改質することが許容される。
【0024】
また、気密容器は、その内部に適当な形状をなした放電空間、例えば細長い放電空間が形成されている。なお、細長い放電空間としては、例えば放電空間を円柱状にすることができる。これにより、アークが水平点灯においては上方へ湾曲しようとするために、放電容器の上側の内面に接近するので、放電容器の上部の温度上昇が早くなる。
【0025】
さらに、放電空間を包囲する部分の肉厚を比較的大きくすることができる。すなわち、電極間距離のほぼ中央部の肉厚をその両側の肉厚より大きくすることができる。これにより、放電容器の伝熱が良好になって放電容器の放電空間の下部およぶ側部内面に付着している放電媒体の温度上昇が早まるために、光束立ち上がりが早くなる。
【0026】
(一対の電極について) 一対の電極は、気密容器の両端内部に離間対向して封装され、その電極間距離が5mm以下に設定されているものとする。
【0027】
なお、電極は、交流および直流のいずれで作動するように構成してもよい。交流で作動する場合、一対の電極は同一構造とする。また、自動車前照灯用のメタルハライドランプの場合、電極の先端部近傍を軸部より径大にすることができる。すなわち、ランプの点滅回数が非常に多くなるとともに、また始動時には定常時より大きな電流を流すので、これに対応して電極全体を径大にすると、電極軸に接触している気密容器の構成材料が点滅のたびに熱応力を受けてクラックを生じやすい。そこで、電極の先端部近傍に径大部を形成することで、電極を点滅に対応させることができるが、軸部は径大になっていないから、クラックを生じにくい。直流で作動する場合、一般に陽極は温度上昇が激しいから、先端部近傍に径大部を形成すれば、放熱面積を大きくすることができるとともに、頻繁な点滅に対応することができる。これに対して、陰極は必ずしも径大部を形成する必要がない。
【0028】
<放電媒体について> 本発明において、放電媒体は、金属ハロゲン化物およびキセノンを含み、水銀を本質的に含まない。
【0029】
(金属ハロゲン化物について) 金属ハロゲン化物は、発光金属およびランプ電圧形成用金属のハロゲン化物を含んでいる。
【0030】
発光金属のハロゲン化物は、特段限定されないが、好適にはナトリウムNaおよびスカンジウムScを主成分とするハロゲン化物であり、所望によりインジウムInや希土類金属などのハロゲン化物を添加することができる。なお、インジウムは、発光物質およびランプ電圧形成のいずれにも寄与する。そして、インジウムInや希土類金属の発光は、メタルハライドランプの発光の色度の調整用として好適である。
【0031】
ランプ電圧形成用金属のハロゲン化物は、蒸気圧が比較的高くてランプ電圧を形成するのに効果的に寄与する金属、例えば亜鉛Zn、マグネシウムMg、コバルトCo、クロムCr、マンガンMn、アンチモンSb、レニウムRe、ガリウムGa、スズSn、鉄Fe、アルミニウムAl、チタンTi、ジルコニウムZrおよびハフニウムHfのグループから選択された一種または複数種のハロゲン化物を用いることができる。これらの金属ハロゲン化物を選択的に適量封入することにより、ランプ電圧を所要範囲に高めることができる。それにより、メタルハライドランプの電気特性を所望に設定できるので、比較的少ないランプ電流で所要のランプ電力を投入することが可能になる。なお、最適には亜鉛Znのハロゲン化物である。亜鉛Znは、蒸気圧が比較的高いとともに、化学的に安全であり、しかも、安価に、かつ、工業的規模で容易に入手することができる物質である。また、亜鉛Znの発光は、メタルハライドランプの発光の色度調整用としても寄与させることができる。
【0032】
次に、ハロゲン化物を構成するハロゲンについて説明する。すなわち、反応性については、ハロゲンの中でヨウ素が最も適当であり、少なくとも上記主発光金属は、主としてヨウ化物として封入される。しかし、要すれば、ヨウ化物および臭化物のように異なるハロゲンの化合物を併用することもできる。
【0033】
(キセノンについて) キセノンは、室温で5気圧以上の圧力で封入するものとする。また、キセノンは、始動ガスおよび緩衝ガスとして作用するとともに、上記の圧力で封入することにより、点灯直後において発光金属のハロゲン化物の蒸気圧が高くなっていないときに、発光物質としても作用する。なお、所望により、アルゴンまたはクリプトンなどを添加することができる。なお、キセノンを5気圧以上封入すると、上記に加えて始動直後に主発光を担当するように作用させることができる。キセノンの封入圧力は、好適には8〜15気圧である。これにより、メタルハライドランプのランプ電圧が高くなり、同一ランプ電流に対してランプ入力を大きくして、光束立ち上がり特性を向上させることができる。光束立ち上がり特性が良好であることは、どのような使用目的であっても好都合である。
【0034】
(水銀について) 本発明において、「本質的に水銀を含まない」とは、水銀を全く封入していないだけでなく、気密容器の内容積1cc当たり2mg未満、好ましくは1mg以下の水銀が存在していることを許容するという意味である。しかし、水銀を全く封入しないことは環境上望ましいことである。従来のように水銀蒸気によって放電ランプの電気特性を維持する場合には、短アーク形においては気密容器の内容積1cc当たり20〜40mg、さらに場合によっては50mg以上封入していたことからすれば、本発明は水銀量が実質的に頗る少ないといえる。
【0035】
<管壁負荷について> 本発明において、管壁負荷は、メタルハライドランプの安定点灯時に50W/cm2以上でなければならない。なお、本発明において、「管壁負荷」とは、気密容器の内部に形成された放電空間の単位内表面積(1cm2)当たりのランプ電力をいう。放電媒体の蒸気圧を高くして、全光束を大きくするために、管壁負荷は、上記の条件を満足しなければならない。
【0036】
<ランプ電力について> ランプ電力は、安定点灯時において60W以下である。これはメタルハライドランプが小形であることを意味する。
【0037】
<上半球光束と下半球光束の関係について> 上半球光束Aと下半球光束Bとは、これらの比率を最適条件に維持するために、数式1を満足する必要がある。すなわち、下半球光束Bは、上半球光束Aの60%であるとともに上半球光束A以下でなければならない。なお、上半球光束Aおよび下半球光束Bは、完成されたメタルハライドランプで測定するものとする。
【0038】
まず、上半球光束Aと下半球光束Bとを測定する方法について説明する。測定は、メタルハライドランプの配光特性をすることにより行うことができる。すなわち、メタルハライドランプの発光中心から1m以上離間した位置においてランプからの放射による照度を計測し、そのデータを元に計算される。測定は、最低でもランプの軸を回転軸とした方向360°の照度分布と、ランプ軸に対する水平方向法線を回転軸とした方向360°の分布を計測し、それ以外の方向はアーク形状を円筒または線に近似した計算により推測する。そうして、全方向を積分して全光束を求めることができる。また、上半球および下半球のみを積分することで、それぞれの光束を計測することができる。
【0039】
次に、数式1を満足するための主な具体的構成について説明する。
【0040】
1.気密容器の内径を大きくし、かつ、肉厚を小さくする。これにより、放電空間の下面の温度が低下し、放電媒体の付着位置が下面に集中し、その結果、下半球光束が増大する。
【0041】
2.放電媒体の封入量を低減する。これにより、放電媒体の付着面積が減少し、その結果、下半球光束が増大する。
【0042】
3.気密容器の肉厚を増大する。これにより、放電空間下部の温度が低下して放電媒体の付着位置が下面に集中し、その結果、下半球光束が増大する。
【0043】
<本発明のその他の構成について> 以下に示す構成を選択的に付加することにより、高圧放電ランプの性能が向上したり、機能が増加したりする。
【0044】
1. 外管について 外管は、石英ガラスまたはハイシリケートガラスなどからなり、その内部に放電容器の少なくとも主要部をその収納する手段である。そして、外管、発光管から外部へ放射される紫外線を遮断し、機械的に保護し、かつ、発光管の気密容器を手で触れることで人の指紋や脂肪が付いて失透の原因とならないようにしたり、あるいは気密容器を保温したりたりする。また、外管の内部は、その目的に応じて外気に対して気密に封止してもよいし、外気と同程度または減圧された空気または不活性ガスが封入されていてもよい。さらに、要すれば、外気に連通していてもよい。さらに、外管の外面または内面に遮光膜を配設することもできる。
【0045】
また、外管を形成する際に、外管の両端を気密容器の両端から管軸方向に延在する封止部にガラス溶着させることによって、気密容器で外管を支持するように構成することができる。
【0046】
2.口金について 口金は、高圧放電ランプを点灯回路に接続したり、加えて機械的に支持したりするのに機能する。
【0047】
3.イグナイタについて イグナイタは、高電圧パルス電圧を発生し、これを高圧放電ランプに印加して、その始動を促進する手段であり、口金の内部に収納するなどにより、高圧放電ランプと一体化することができる。
【0048】
4.始動補助導体について 始動補助導体は、電極近傍における電界強度を高くして、高圧放電ランプの始動を支援する手段であり、その一端を他方の電極と同電位個所に接続し、他端を一方の電極近傍における気密容器の外面に配設する。
【0049】
<本発明の作用について> 本発明においては、以上の説明から構成を具備していることにより、上半球光束と下半球光束とが最適化されて、ロービーム時の照射中心部の着色、ハイビームとロービームの色違いおよび照射パターンの不鮮明といった不具合を防止することができる。
【0050】
請求項2の発明の自動車用前照灯装置は、自動車用前照灯装置本体と;放電容器の軸が自動車用前照灯装置本体の光軸に沿って自動車用前照灯装置本体内に配設された請求項1記載のメタルハライドランプと;メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力を安定時のランプ電力の2〜4倍とした点灯回路と;を具備していることを特徴としている。
【0051】
本発明の自動車用前照灯装置は、請求項1のメタルハライドランプを光源として備えているので、光束立ち上がりが早くて安全であるとともに、メタルハライドランプが環境負荷の大きな水銀を封入していないので、環境対策上すこぶる好ましい。なお、「自動車用前照灯装置本体」とは、自動車用前照灯装置からメタルハライドランプおよび点灯回路を除いた残余の全ての部分を意味する。
【0052】
点灯回路は、メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力を安定時のランプ電力の2〜4倍、好適には2.5〜4倍とすることにより、光束立ち上がりを自動車前照灯用として必要な範囲内に入るように早くすることができる。なお、希ガスとしてのキセノンの封入圧を3〜15気圧の範囲でX(気圧)とし、メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力をAA(W)としたとき、AAが下式を満足するように構成することにより、点灯直後4秒までの光束立ち上がりを早めて自動車用前照灯に必要な前照灯前面の代表点での光度8000cdを得ることができる。
【0053】
AA>−2.5X+102.5
上記のようにキセノン封入圧と最高入力電力とが直線的な関係になるのは、蒸気圧の低い放電媒体のみであるから、始動後4秒後の時点ではキセノンの発光が圧倒的になっているからである。キセノンの発光量は、キセノンの封入圧とその時の電力とで決まるので、キセノン圧が低ければ、入力電力を多くすればよい。反対に、キセノン圧が高ければ、入力電力を少なくすればよい。なお、本発明において、メタルハライドランプの点灯は、交流点灯および直流点灯のいずれであってもよい。
また、点灯回路は、所要により無負荷出力電圧を200V以下に構成することができる。本発明に用いるメタルハライドランプは、一般に水銀封入のメタルハライドランプに比較して、ランプ電圧が低いので、点灯回路の無負荷出力電圧を200V以下にすることができる。これにより、点灯回路の小形化が可能になる。なおて、水銀を封入したメタルハライドランプにおいては、400V程度の無負荷出力電圧を必要としている。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0055】
図1ないし図3は、本発明の自動車前照灯用メタルハライドランプにおける第1の実施の形態を示し、図1はランプ全体の正面図、図2は放電容器の拡大要部正面図、図3は実施例1を示す概念的拡大横断面図である。各図において、ITは放電容器すなわち発光管、2は封着金属箔、3A、3Bは一対の外部リード線、OTは外管、Tは絶縁チューブ、Bは口金である。
【0056】
放電容器ITは、気密容器1aおよび一対の電極1b、1bからなる。気密容器1aは、中空の紡錘形状に成形されてなり、その両端に一対の細長い封止部1a1を一体に備えているとともに、内部に細長いほぼ円柱状の放電空間1cが形成されている。電極1bは、その基端が封止部1a1に埋設されることによって所定の位置に支持されている。また、電極1bの基部は、封止部1a1内において、封着金属箔2の一端に溶接されている。なお、図1において、下方の封止部1a1を形成した後、封止管1a2が切断されないで封止部1a1の下部から一体に延長していて、口金B内へ延在している。
【0057】
封着金属箔2は、気密容器1aの封止部1a1内に気密に埋設されている。
【0058】
一対の外部リード線3A、3Bは、その先端が気密容器1aの両端の封止部1a1内において封着金属箔2の他端に溶接され、基端側が外部へ導出されている。図1において放電容器ITから上方へ導出された外部リード線3Aは、中間部が後述する外管OTに沿って折り返されて後述する口金B内に導入されて図示しない口金端子の一方に接続している。図1において放電容器ITから下方へ導出された外部リード線3Bは、管軸に沿って延在して口金B内に導入されて口金端子の他方に接続している。
【0059】
気密容器1a内には、放電媒体として金属ハロゲン化物および希ガスが封入されている。金属ハロゲン化物は、ナトリウムNa、スカンジウムSc、インジウムInおよび亜鉛Znのグループのハロゲン化物から選択された少なくとも2種以上を含んでいる。希ガスは適当な圧力で封入されている。
【0060】
外管OTは、紫外線カット性能を備えており、内部に放電容器ITを収納していて、両端の縮径部4が放電容器ITの封止部1a1にガラス溶着している。しかし、内部は気密ではなく、外気に連通している。
【0061】
絶縁チューブTは、外部リード線3Aを被覆している。
【0062】
口金Bは、自動車前照灯用として規格化されているもので、放電容器ITおよび外管OTを中心軸に沿って植立して支持していて、自動車前照灯の背面に着脱可能に装着されるように構成されている。
【実施例1】
放電容器IT
気密容器1a:石英ガラス製、球体長7mm、最大外径6mm、
最大内径3.5mm、最大径部における肉厚1.25mm
電極1b :タングステン製で、電極間距離4.2mm
放電媒体
金属ハロゲン化物:ScI3−NaI−ZnI2=0.9mg
キセノンXe:10気圧
外管OT :外径9mm、内径7mm、内部雰囲気;大気圧(大気)
点灯直後投入電力:85W
点灯直後投入電流:2.8A
安定時ランプ電圧:42V
安定時ランプ電力:35W
安定時の下半球光束B比:0.75A(なお、Aは上半球光束)
実施例1を図3に概念的に示している。
【実施例2】
気密容器1a:石英ガラス製、球体長7mm、最大外径6mm、
最大内径2.4mm、最大径部における肉厚1.65mm
金属ハロゲン化物:ScI3−NaI−ZnI2=0.1mg
安定時の下半球光束B比:0.83A(なお、Aは上半球光束)
【実施例3】
気密容器1a:石英ガラス製、球体長7mm、最大外径7.5mm、
最大内径2.4mm、最大径部における肉厚2.4mm
安定時の下半球光束B比:0.65A(なお、Aは上半球光束)
なお、実施例2および3において、実施例1と同一部分については記載を省略している。
【0063】
また、本発明によらない比較例は、下記のとおりである。
【0064】
気密容器1a:石英ガラス製、球体長7mm、最大外径6mm、
最大内径2.4mm、最大径部における肉厚1.65mm
金属ハロゲン化物:ScI3−NaI−ZnI2=0.9mg
安定時の下半球光束B比:0.55A(なお、Aは上半球光束)
比較例を図4に概念的に示している。
【0065】
図5および図6は、本発明の自動車用前照灯装置における一実施の形態を示し、図5は装置全体の背面斜視図、図6は点灯回路の回路図である。各図において、自動車用前照灯装置HLは、自動車用前照灯装置本体21、自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLおよび2つの点灯回路OLにより構成されている。
【0066】
自動車用前照灯装置本体21は、前面透過パネル21a、リフレクタ21b、21c、ランプソケット21dおよび取付部21eなどから構成されている。前面レンズ21aは、自動車の外面と合わせた形状をなし、所要の光学的手段たとえばプリズムを備えている。リフレクタ21b、21cは、各メタルハライドランプHPDLごとに配設されていて、それぞれに要求される配光特性を得るように構成されている。ランプソケット21dは、点灯回路OCの出力端に接続し、メタルハライドランプHPDLの口金21dに装着される。取付部21eは、自動車用前照灯装置本体21を自動車の所定の位置に取り付けるための手段である。
【0067】
メタルハライドランプHPDLは、図1に示す構造を備えている。ランプソケット21dは、口金に装着されて接続する。そうして、2灯の自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLが自動車用前照灯装置本体21に装着されて、4灯式の自動車用前照灯装置が構成される。各自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLの発光部は、自動車用前照灯装置本体21のリフレクタ21b、21cの焦点にほぼ位置する。
【0068】
2つの点灯回路OLは、それぞれ後述する回路構成を備えていて、金属製容器22内に収納されているとともに、自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLを付勢して点灯させる。
【0069】
点灯回路OLは、図6に示すように、直流電源11、チョッパ12、制御手段13、ランプ電流検出手段14、ランプ電圧検出手段15、イグナイタ16、自動車前照灯用メタルハライドランプHPDL、フルブリッジインバータ17により構成されていて、自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLを交流点灯する。
【0070】
直流電源11は、後述するチョッパ12に対して直流電源を供給する手段であって、バッテリーまたは整流化直流電源が用いられる。自動車の場合には、一般的にバッテリーが用いられる。しかし、交流を整流する整流化直流電源であってもよい。必要に応じて電解コンデンサ11aを並列接続して平滑化を行う。
【0071】
チョッパ12は、直流電圧を所要値の直流電圧に変換するDC−DC変換回路であって、後述するフルブリッジインバータ17を介して自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLを所要に制御する。直流電源電圧が低い場合には、昇圧チョッパを用い、反対に高い場合には降圧チョッパを用いる。
【0072】
制御手段13は、チョッパ12を制御する。たとえば、点灯直後にはメタルハライドランプHPDLに定格ランプ電流の3倍以上のランプ電流をチョッパ22からフルブリッジインバータ17を経由して流し、その後時間の経過とともに徐々にランプ電流を絞っていき、やがて定格ランプ電流にするように制御する。また、制御手段13は、ランプ電流とランプ電圧と相当するそれぞれの検出信号が後述するように帰還入力されることにより、定電力制御信号を発生して、チョッパ22を定電力制御する。さらに、制御手段13は、時間的な制御パターンが予め組み込まれたマイコンが内蔵されていて、点灯直後には定格ランプ電流の3倍以上のランプ電流を自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLに流し、時間の経過とともにランプ電流を絞るようにチョッパ12を制御するように構成されている。
【0073】
ランプ電流検出手段14は、フルブリッジインバータ17を介してランプと直列に挿入されていて、ランプ電流に相当する電流を検出して制御手段13に制御入力する。
【0074】
ランプ電圧検出手段15は、同様にフルブリッジインバータ17を介してメタルハライドランプHPDLと並列的に接続されていて、ランプ電圧に相当する電圧を検出して制御手段23に制御入力する。
【0075】
イグナイタ16は、フルブリッジインバータ17と自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLとの間に介在していて、始動時に約20kV程度の始動パルス電圧を自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLに供給できるように構成されている。
【0076】
フルブリッジインバータ17は、4つのMOSFETQ1、Q2、Q3およびQ4からなるブリッジ回路、ブリッジ回路17aのMOSFETQ1およびQ3と、Q2およびQ4とを交互にスイッチングさせるゲートドライブ回路28bおよび極性反転回路INVから構成されていて、チョッパ12からの直流電圧を上記スイッチングにより矩形波の低周波交流電圧に変換して、自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLに印加して、自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLを低周波交流点灯させる。
【0077】
そうして、点灯回路OCを用いて自動車前照灯用メタルハライドランプHPDLを矩形波の低周波交流で点灯すると、点灯直後から所要の光束を発生する。これにより、自動車用前照灯として必要な電源投入後1秒後に定格に対して光束25%、4秒後に光束80%の点灯を実現することができる。
【0078】
【発明の効果】
請求項1によれば、内部に内径1.5mm以上の耐火性で透光性の気密容器および電極間距離が5mm以下の一対の電極を備えた放電容器と、発光金属およびランプ電圧形成用金属のハロゲン化物、ならびに室温で5気圧以上のキセノンを含み、水銀を本質的に含まない放電媒体とを具備し、安定点灯時における管壁負荷が50W/cm2以上、安定点灯時のランプ電力が60W以下で、かつ、水平点灯状態における放電容器の上半球光束Aと下半球光束Bとが数式1を満足することにより、上半球光束と下半球光束とを最適化して、ロービーム時の照射中心部の着色、ハイビームとロービームの色違いおよび照射パターンの不鮮明といった不具合を防止した自動車前照灯用メタルハライドランプを提供することができる。
【0079】
【数1】
A≧B≧0.6×A
請求項2の発明によれば、自動車用前照灯装置本体と、自動車用前照灯装置本体に配設された請求項1または2記載の自動車前照灯用メタルハライドランプと、自動車前照灯用メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力を安定時のランプ電力の2〜4倍とした点灯回路とを具備していることにより、請求項1の効果を有する自動車用前照灯装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車前照灯用メタルハライドランプにおける第1の実施の形態の正面図
【図2】同じく放電容器の拡大要部正面図
【図3】同じく実施例1を示す概念的拡大横断面図
【図4】本発明によらない比較例を示す概念的拡大横断面図
【図5】本発明の自動車用前照灯装置における一実施の形態を示す斜視図
【図6】同じく点灯回路の回路図
【符号の説明】
1a…気密容器、1a1…封止部、1a2…封止管、1b…電極、1c…放電空間、2…封着金属箔、3A…外部リード線、3B…外部リード線、4…縮径部、B…口金、HPDL…自動車前照灯用メタルハライドランプ、IT…放電容器、OT…外管、T…絶縁チューブ
Claims (2)
- 内部に内径1.5mm以上の放電空間が形成された耐火性で透光性の気密容器および気密容器内の放電空間の両端に離間対向して封装されて電極間距離が5mm以下の一対の電極を備えた放電容器と;
発光金属およびランプ電圧形成用金属のハロゲン化物、ならびに室温で5気圧以上のキセノンを含み、気密容器内に封入されて水銀を本質的に含まない放電媒体と;
を具備し、安定点灯時における管壁負荷が50W/cm2以上、安定点灯時のランプ電力が60W以下で、かつ、水平点灯状態における放電容器の上半球光束Aと下半球光束Bとが数式1を満足することを特徴とする自動車前照灯用メタルハライドランプ。
【数1】
A≧B≧0.6×A - 自動車用前照灯装置本体と;
放電容器の軸が自動車用前照灯装置本体の光軸に沿って自動車用前照灯装置本体内に配設された請求項1記載の自動車前照灯用メタルハライドランプと;
自動車前照灯用メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力を安定時のランプ電力の2〜4倍とした点灯回路と;
を具備していることを特徴とする自動車用前照灯装置。
Priority Applications (1)
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JP2003005672A JP2004220879A (ja) | 2003-01-14 | 2003-01-14 | 自動車前照灯用メタルハライドランプおよび自動車用前照灯装置 |
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JP2003005672A Abandoned JP2004220879A (ja) | 2003-01-14 | 2003-01-14 | 自動車前照灯用メタルハライドランプおよび自動車用前照灯装置 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007012236A1 (fr) * | 2005-07-29 | 2007-02-01 | Guang Dong Bright Star Light & Electricity Co., Ltd. | Lampe à halogénure métallique remplie de xe avec tubes électriques doubles intégrés pour véhicule |
JP2007172959A (ja) * | 2005-12-21 | 2007-07-05 | Harison Toshiba Lighting Corp | メタルハライドランプ |
WO2007095790A1 (fr) * | 2006-02-24 | 2007-08-30 | Zandeng Shi | Lampe aux halogénures métalliques pour feux de route et feux de croisement de véhicules |
WO2007104193A1 (fr) * | 2006-03-10 | 2007-09-20 | Qingshi Yang | Lampe à halogénure de métal xénon à faisceaux haut et bas pour véhicule |
-
2003
- 2003-01-14 JP JP2003005672A patent/JP2004220879A/ja not_active Abandoned
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WO2007095790A1 (fr) * | 2006-02-24 | 2007-08-30 | Zandeng Shi | Lampe aux halogénures métalliques pour feux de route et feux de croisement de véhicules |
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