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JP2004217903A - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 Download PDF

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JP2004217903A JP2003419210A JP2003419210A JP2004217903A JP 2004217903 A JP2004217903 A JP 2004217903A JP 2003419210 A JP2003419210 A JP 2003419210A JP 2003419210 A JP2003419210 A JP 2003419210A JP 2004217903 A JP2004217903 A JP 2004217903A
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Yasuyuki Iimuro
靖之 飯室
Masaki Mitsunaga
正樹 光永
Katsuhiko Hironaka
克彦 弘中
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Teijin Chemicals Ltd
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Abstract

【課題】 分子量低下が少なく、高い剛性を持ち、また耐加水分解性を大幅に改善した新規な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部あたり、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなり、更に塩素原子及び臭素原子の含有量の合計が300ppm以下である有機化層状珪酸塩(B成分)0.1〜50重量部を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂および微量な含有成分が少ない有機化層状珪酸塩からなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。殊に本発明は、分子量低下が少なく、高い剛性を持ち、また耐加水分解性を大幅に改善した新規な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
近年、無機充填剤として粘土鉱物、特に層状珪酸塩を用い、その層間イオンを各種の有機オニウムイオンにイオン交換させ樹脂中への分散を容易にすることにより、成形品の表面外観や比重を良好に保ったまま、機械特性を改良する試みが、特にポリアミド系樹脂やポリオレフィン系樹脂において多くなされており、それらにおいては実用例も見ることができる。
しかしながら、これら層状珪酸塩などを微分散させた芳香族ポリカーボネート樹脂の樹脂組成物は、いずれも十分な熱安定性を有するものではなく実用性に乏しいのが現状であった。すなわち、無機充填材などを含まない樹脂単体と同等の良好な表面外観を有し、強化充填材で強化した樹脂と同等の剛性を有し、かつ実用上十分な熱安定性を示す非晶性熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物は得られていないのが現状であった。
一般に、熱可塑性樹脂の剛性(曲げ弾性率)を改良する手段として、ガラス繊維等の繊維状補強材や無機充填剤を混合することが行われてきたが、かかる従来法によるものは、製品の比重が大きくなったり、製品の表面外観が損なわれるという欠点がある。
一方で、比較的少量の充填剤で高い曲げ弾性率を達成する技術の1つとして、無機充填剤として層状珪酸塩、より好ましくはかかる層状珪酸塩の層間イオンを各種の有機オニウムイオンでイオン交換してなる層状珪酸塩、を熱可塑性樹脂中へ微分散させた樹脂組成物が提案されており、芳香族ポリカーボネート樹脂と層状珪酸塩の層間イオンを各種の有機オニウムイオンでイオン交換した層状珪酸塩とを組み合わせた樹脂組成物も知られている(特許文献1〜特許文献6参照)。
そして、このような層状珪酸塩の層間イオンをイオン交換するための有機オニウムイオンとしては、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオンで代表される炭素原子数12以上のアルキル基を有する有機オニウムイオンやポリエチレングリコール鎖を有するアンモニウムイオン等が提案されている(特許文献2および特許文献3参照)。さらに、熱可塑性樹脂全般に対しては、有機オニウムイオンとして炭素原子数15〜30の第4級アンモニウムイオンが好ましいとする提案や(特許文献7参照)、第4級アンモニウムイオン(またはホスホニウムイオン)であってその有機基の1つは炭素原子数8以上であり、他の3つの有機基は炭素原子数1〜4である有機オニウムイオンが好ましいとの提案もなされている(特許文献8参照)。
一方、非特許文献1〜3には、溶融混練によりポリカーボネート樹脂/相溶化剤/有機フルオロマイカ系の樹脂組成物が検討されており、その一例として示された組成物は比較的分子量の低下や耐熱性の低下が少なく、曲げ弾性率に優れていることを開示している。しかし、有機化層状珪酸塩を含有するポリカーボネート樹脂組成物において、その耐加水分解性の向上が重要な技術的課題であること、並びにその解決方法について十分な知見がないのが現状である。すなわち、これらの文献には、本発明の層状珪酸塩中の微量な含有成分についての記載も示唆もない上に、更にこの微量な含有成分を少なくすることで、組成物の剛性向上や耐加水分解向上すること等については、全く記載も示唆もない。また該組成物は、分子量低下の抑制が完全ではなく、耐加水分解性にも劣る面があり、ペレット化時の溶融温度を低くしたり、成形品の保管条件を高温多湿にならない様注意が必要であった。
特開平3−215558号公報 特開平7−207134号公報 特開平7−228762号公報 特開平7−331092号公報 特開平9−143359号公報 特開平10−60160号公報 特開2002−88255号公報 WO99/32403(特表2001−526313号公報) 第51回高分子学会年次大会,第51巻(No.3),669頁,2002年 成型加工’02,15頁,2002年 第51回高分子学会討論会,第51巻(No.11),2645頁,2002年
本発明の目的は、上記問題点を鑑みた上で、芳香族ポリカーボネート樹脂および有機化層状珪酸塩からなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、分子量低下を抑制し、高い剛性を持ち、また耐加水分解性を大幅に改善した新規な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意検討した結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に有機化層状珪酸塩を分散させたものであって、その層状珪酸塩が微量な含有成分を特定範囲で有することが、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明者らはかかる発見より更に鋭意検討を行い、本発明を完成するに至った。
本発明は、(1)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部あたり、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなり、更に塩素原子及び臭素原子の含有量の合計が300ppm以下である有機化層状珪酸塩(B成分)0.1〜50重量部を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物にかかるものである。
本発明の好適な態様の1つは、(2)前記B成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩を有機オニウムイオンの塩素化物または臭素化物で、該陽イオン交換容量の40%以上の割合でイオン交換することにより得られた、塩素原子及び臭素原子の含有量の合計が300ppm以下である有機化層状珪酸塩(B’成分)である前記構成(1)の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(3)さらに、(C)前記A成分との親和性を有し、かつ親水性分を有する有機化合物(C成分)を、前記A成分100重量部当り0.1〜50重量部含有する前記構成(1)〜(2)の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(4)前記C成分は、スチレン−無水マレイン酸共重合体である前記構成(3)の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明の別の態様は、(5)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部と、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩を有機オニウムイオンの塩素化物または臭素化物で、該陽イオン交換容量の40%以上の割合でイオン交換することにより得られた、塩素原子及び臭素原子の含有量の合計が300ppm以下である有機化層状珪酸塩(B’成分)0.1〜50重量部とを溶融混練することを特徴とする成形加工時の分子量低下が抑制された有機化層状珪酸塩を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、(6)前記A成分およびB’成分と共に、更に前記A成分100重量部当り0.1〜50重量部の(C)前記A成分との親和性を有し、かつ親水性分を有する有機化合物(C成分)を溶融混練することを特徴とする前記構成(5)の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、(7)A成分100重量部当たり、0.1〜50重量部の前記B’成分と、0.1〜50重量部のC成分とを予め溶融混練した後、該溶融混練物と100重量部のA成分とを溶融混練することを特徴とする前記構成(6)の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、(8)前記B’成分とC成分との割合が、C成分100重量部当たり、B’成分が1〜300重量部(好ましくは30〜150重量部、より好ましくは50〜120重量部)である前記構成(7)の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、(9)前記B’成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩を有機オニウムイオンの塩素化物または臭素化物で、該陽イオン交換容量の40%以上の割合でイオン交換し、該イオン交換後の層状珪酸塩を塩素原子及び臭素原子の含有量の合計が300ppm以下となるまで水洗することにより得られた有機化層状珪酸塩である前記構成(5)〜(8)の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法である。
本発明の別の態様は、(10)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部あたり、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩を有機オニウムイオンの塩素化物または臭素化物で、該陽イオン交換容量の40%以上の割合でイオン交換することにより得られた有機化層状珪酸塩0.1〜50重量部を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の成形加工時の分子量低下を抑制する方法であって、該有機化層状珪酸塩としてかかるイオン交換後にその塩素原子及び臭素原子の含有量の合計が300ppm以下となるまで水洗してなる有機化層状珪酸塩を使用することを特徴とする分子量低下を抑制する方法である。
以下本発明の詳細を説明する。
<A成分について>
本発明のA成分となる代表的な芳香族ポリカーボネート樹脂は、2価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法および環状カーボネート化合物の開環重合法等を挙げることができる。
前記2価フェノールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称“ビスフェノールA”)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらのなかでも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特にビスフェノールA(以下“BPA”と略称することがある)が汎用されている。
本発明では、汎用の芳香族ポリカーボネート樹脂であるビスフェノールA系のポリカーボネート樹脂以外にも、さらに良好な耐加水分解性を得る目的で、他の2価フェノール類を使用した特殊な芳香族ポリカーボネート樹脂をA成分として使用することが可能である。
例えば、2価フェノール成分の一部または全部として、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis−TMC”と略称することがある)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いた芳香族ポリカーボネート樹脂(単独重合体または共重合体)は、ポリマー自体が良好な耐加水分解性を有するので、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の2価フェノールは芳香族ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)〜(3)の共重合ポリカーボネート樹脂であるのが特に好適である。
(1)該芳香族ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート樹脂。
(2)該芳香族ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート樹脂。
(3)該芳香族ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBis−TMCが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート樹脂。
これらの特殊な芳香族ポリカーボネート樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂と混合して使用することもできる。
これらの特殊な芳香族ポリカーボネート樹脂の製法および特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報および特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
なお、上述した各種の芳香族ポリカーボネート樹脂のなかでも、共重合組成等を調整して、吸水率およびTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される、例えばミラー等の分野では特に好適である。
(i)吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%であり、かつTgが120〜180℃である芳香族ポリカーボネート樹脂、あるいは
(ii)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%である芳香族ポリカーボネート樹脂。
ここで、芳香族ポリカーボネート樹脂の吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62−1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
一方、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは2価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
このような2価フェノールとカーボネート前駆体とから界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、2価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。また、芳香族ポリカーボネート樹脂は3官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であってもよい。ここで使用される3官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。
分岐ポリカーボネート樹脂を生ずる多官能性化合物を含む場合、その割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%である。また、特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート樹脂全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。なお、かかる分岐構造の割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
また、A成分となる芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族もしくは脂肪族(脂環族を含む)の2官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート、2官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂並びにかかる2官能性カルボン酸および2官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネートであってもよい。また、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上をブレンドした混合物でも差し支えない。
ここで用いる脂肪族の2官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の2官能性のカルボン酸としては、例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸およびシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。2官能性アルコールとしては、脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が例示される。
さらに、本発明では、ポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
本発明の樹脂組成物においてA成分となる芳香族ポリカーボネート樹脂は、上述した2価フェノールの異なるポリカーボネート樹脂、分岐成分を含有するポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体等の各種芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合したものであってもよい。さらに、製造法の異なるポリカーボネート樹脂、末端停止剤の異なるポリカーボネート樹脂等を2種以上混合したものも使用することもできる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の重合反応において、界面重縮合法による反応は、通常、2価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために、例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、第4級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
また、かかる重合反応においては、通常、末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類のとしては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等の単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに、単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。かかる末端停止剤は単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。
溶融エステル交換法による反応は、通常、2価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に2価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、殆どの場合120〜350℃の範囲である。反応後期には反応系を1.33×10〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は1〜4時間程度である。
前記カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素原子数1〜4のアルキル基等のエステルが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、2価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物等の触媒を用いることができる。さらに、アルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類等のエステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の2価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
溶融エステル交換法による反応では、生成ポリカーボネート樹脂のフェノール性末端基を減少する目的で、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また、重合後のポリカーボネート樹脂に対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用するのが適当である。好ましい失活剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート等のアンモニウム塩が挙げられる。
A成分となる芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は限定されない。しかしながら、粘度平均分子量は、10,000未満であると強度等が低下し、50,000を超えると成形加工特性が低下するようになるので、10,000〜50,000の範囲が好ましく、12,000〜30,000の範囲がより好ましく、14,000〜28,000の範囲がさらに好ましい。この場合、成形性等が維持される範囲内で、粘度平均分子量が前記範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合することも可能である。例えば、粘度平均分子量が50,000を超える高分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂成分を配合することも可能である。
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
尚、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における粘度平均分子量を測定する場合は次の要領で行う。すなわち、該組成物を、その20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、かかる可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上式により算出される20℃における比粘度を、オストワルド粘度計を用いて求めることにより測定する。
<B成分について>
本発明のB成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなり、更に塩素及び臭素元素含有量合計が0.1重量%以下である有機化層状珪酸塩である。尚、ここで40%の割合とは、例えば層状珪酸塩の陽イオン交換容量が110ミリ当量/100gの場合には、その40%となる44ミリ当量/100g分が有機オニウムイオンでイオン交換されていることを指す。また、“有機化層状珪酸塩”とは、“陽イオン交換容量を有し、かつ有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなる層状珪酸塩”を総称する。本発明のB成分においては、実質的に100%の割合(ほぼ完全に)で有機オニウムイオンが層間にイオン交換された有機化層状珪酸塩が好ましい。
本発明の有機化層状珪酸塩における有機オニウムイオン化合物は、通常、ハロゲンイオン、ヒドロキシドイオンおよびアセテートイオン等のアニオン類との塩として取り扱われる。かかる有機オニウムイオンの塩化合物を層状珪酸塩に反応させることによって得られる。ここで有機オニウムイオンとしては、例えばアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、複素芳香環由来のオニウムイオン等が挙げられ、オニウムイオンとしては1級、2級、3級、4級のいずれも使用できるが、4級オニウムイオンが好ましい。
該オニウムイオン化合物には各種の有機基が結合したものが使用できる。有機基としてはアルキル基が代表的であるが、芳香族基をもったものでもよく、またエーテル基、エステル基、二重結合部分、三重結合部分、グリシジル基、カルボン酸基、酸無水物基、水酸基、アミノ基、アミド基、オキサゾリン環など各種官能基を含有したものでもよい。
有機オニウムイオンの具体例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等の同一のアルキル基を有する4級アンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、およびトリメチルイコサニルアンモニウム等のトリメチルアルキルアンモニウム、トリメチルオクタデセニルアンモニウム等のトリメチルアルケニルアンモニウム、トリメチルオクタデカジエニルアンモニウム等のトリメチルアルカジエニルアンモニウム、トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム、およびトリエチルオクタデシルアンモニウム等のトリエチルアルキルアンモニウム、トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルテトラデシルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム、およびトリブチルオクタデシルアンモニウム等のトリブチルアルキルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、およびジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム等のジメチルジアルキルアンモニウム、ジメチルジオクタデセニルアンモニウム等のジメチルジアルケニルアンモニウム、ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウム等のジメチルジアルカジエニルアンモニウム、ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、およびジエチルジオクタデシルアンモニウム等のジエチルジアルキルアンモニウム、ジブチルジオクチルアンモニウム、ジブチルジデシルアンモニウム、ジブチルジドデシルアンモニウム、ジブチルジテトラデシルアンモニウム、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム、およびジブチルジオクタデシルアンモニウム等のジブチルジアルキルアンモニウム、メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のメチルベンジルジアルキルアンモニウム、ジベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のジベンジルジアルキルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、およびトリテトラデシルメチルアンモニウム等のトリアルキルメチルアンモニウム、トリオクチルエチルアンモニウム、およびトリドデシルエチルアンモニウム等のトリアルキルエチルアンモニウム、トリオクチルブチルアンモニウム、およびトリデシルブチルアンモニウム等のトリアルキルブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等の芳香環を有する4級アンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等の芳香族アミン由来の4級アンモニウム、メチルジエチル[PEG]アンモニウム、およびメチルジエチル[PPG]等のトリアルキル[PAG]アンモニウム、メチルジメチルビス[PEG]アンモニウム等のジアルキルビス[PAG]アンモニウム、エチルトリス[PEG]アンモニウム等のアルキルトリス[PAG]アンモニウム、並びに上記アンモニウムイオンの窒素原子がリン原子に置き換わったホスホニウムイオンが挙げられる。なお、これらの有機オニウムイオンは、単独の使用および2種以上の組合せの使用のいずれも選択できる。尚、上記“PEG”の表記はポリエチレングリコールを、“PPG”の表記はポリプロピレングリコールを“PAG”の表記はポリアルキレングリコールを示す。ポリアルキレングリコールの分子量としては100〜1,500のものが使用できる。
これら有機オニウムイオン化合物の分子量は、100〜600であることがより好ましい。より好ましくは150〜500である。分子量が600より多いときには、場合により芳香族ポリカーボネート樹脂の熱劣化を促進したり、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性を損なってしまう傾向が現れる。尚、かかる有機オニウムイオンの分子量は、ハロゲンイオン等のカウンターイオン分を含まない有機オニウムイオン単体の分子量を指す。
有機オニウムイオンの好ましい態様としては、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、エチルトリオクチルアンモニウム、ブチルトリオクチルアンモニウム、トリフェニルメチルアンモニウム、トリメチルオクチルホスホニウム、トリメチルデシルホスホニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルヘキサデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム、メチルトリオクチルホスホニウム、エチルトリオクチルホスホニウム、ブチルトリオクチルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム等の有機オニウムイオン及び1分子中に炭素原子数6〜16のアルキル基(好ましくは炭素原子数7〜14であり、より好ましくは炭素原子数8〜11)と炭素原子数1〜4のアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜3であり、より好ましくはメチル基またはエチル基であり、さらに好ましくはメチル基)を有する有機オニウムイオンが好ましい。
本発明において、B成分の更に好適な態様は、下記一般式(I)で示される有機オニウムイオンでイオン交換された層状珪酸塩である。
Figure 2004217903
上記一般式(I)は次の条件を満足する。すなわち、Mは窒素原子またはリン原子であり、RおよびRはそれぞれ炭素原子数6〜16のアルキル基である。Rは炭素原子数1〜16のアルキル基であり、かつRは炭素原子数1〜4のアルキル基である。なお、RとRとは互いに同一の基であっても相異なる基であってもよく、また、RとRとは互いに同一の基であっても相異なる基であってもよい。
上記一般式(I)で示される有機オニウムイオンのより好適な態様は、(i)前記Rが炭素原子数1〜4のアルキル基の場合である。より好しくは(ii)RおよびRがそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基であって、かつRおよびRがそれぞれ炭素原子数7〜14のアルキル基の場合である。さらに好ましくは、(iii)RおよびRがそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基で、かつRおよびRは炭素原子数8〜11のアルキル基の場合である。なお、これらのうちでも、RおよびRが炭素原子数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基またはエチル基、さらに好ましくはメチル基の4級アンモニウムイオンが特に好適である。
これら(i)〜(iii)のより好適な態様(さらに好ましい態様を含む)によれば、樹脂組成物の耐加水分解性が特に優れたものとなり、本発明の熱可塑性樹脂組成物に良好な長期実用特性を与える。
なお、上記式(I)においてR〜Rはいずれも直鎖状および分岐状のいずれも選択できる。
かかる好適な4級アンモニウムイオンの例としては、ジメチルジオクチルアンモニウムおよびジメチルジデシルアンモニウム等が例示される。
B成分の層状珪酸塩は、SiO連鎖からなるSiO四面体シート構造とAl、Mg、Li等を含む八面体シート構造との組み合わせからなる層からなり、その層間に交換性陽イオンの配位した珪酸塩(シリケート)または粘土鉱物(クレー)である。これらの珪酸塩(シリケート)または粘土鉱物(クレー)は、スメクタイト系鉱物、バーミキュライト、ハロイサイトおよび膨潤性雲母等に代表される。具体的には、スメクタイト系鉱物としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、フッ素ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スチブンサイト等が挙げられ、膨潤性雲母としては、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母等が挙げられる。これら層状珪酸塩は天然品および合成品のいずれも使用可能である。合成品は、例えば、水熱合成、溶融合成、固体反応によって製造される。
層状珪酸塩のなかでも、陽イオン交換容量等の点から、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性を持ったフッ素雲母が好適に用いられ、ベントナイトを精製して得られるモンモリロナイトや合成フッ素雲母が、純度等の点からより好適である。なかでも、良好な機械特性が得られる合成フッ素雲母が特に好ましい。
前記B成分である層状珪酸塩の陽イオン交換容量(陽イオン交換能ともいう)は、50〜200ミリ当量/100gであることが必要とされ、好ましくは80〜150ミリ当量/100g、さらに好ましくは100〜150ミリ当量/100gである。陽イオン交換容量は、土壌標準分析法として国内の公定法となっているショーレンベルガー改良法によってCEC値として測定される。
かかる方法の概要は次のとおりである。長さ12cm、内径1.3cmの土壌浸出装置の浸透管に層状珪酸塩試料を約8cmの厚さになるように充填し、pH7の1N酢酸アンモニウム水溶液100mlを用い、4〜20時間かけて浸透させ、陽イオンを交換浸出する。次にpH7の80%メタノール100mlで洗浄し、過剰の酢酸アンモニウムを除去する。次いで10%塩化カリウム水溶液100mlで洗浄し、試料に吸着されたアンモニウムイオン(NH )を交換浸出させる。最後に水蒸気蒸留法またはConway微量拡散法により、浸出液中のNH を定量し、CECを算出する。土壌浸出装置は、ガラス製セットとして市販されているものが使用できる。尚、該改良法の基礎となるショーレンベルガー法については、Soil Sci., 59, 13〜24(1945)において参照される。
層状珪酸塩の陽イオン交換容量は、A成分である芳香族ポリカーボネート樹脂への良好な分散性を得るために、50ミリ当量/100g以上必要であるが、200ミリ当量/100gより大きくなると芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱劣化が大きくなり、それに伴って本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱劣化への影響が大きくなってくる。この層状珪酸塩は、そのpHの値が9〜11.5であることが好ましい。pHの値が11.5より大きくなると、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性が低下する傾向が現れてくる。
層状珪酸塩への有機オニウムイオンのイオン交換は、極性溶媒中に分散させた層状珪酸塩に、有機オニウムイオン化合物(有機オニウムイオンの塩化合物)を添加し、析出してくるイオン交換化合物を収集することによって作成することができる。通常、このイオン交換反応は、有機オニウムイオン化合物を、層状珪酸塩のイオン交換容量の1当量に対し1.0〜1.5当量の割合で加えて、ほぼ全量の層間の金属イオンを有機オニウムイオンで交換させるのが一般的である。しかし、このイオン交換容量に対する交換割合を一定の範囲に制御することも、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱劣化を抑制する上で有効である。ここで有機オニウムイオンでイオン交換される割合は、層状珪酸塩のイオン交換容量に対して40%以上であることが好ましい。かかるイオン交換容量の割合は好ましくは40〜95%であり、特に好ましくは40〜80%である。ここで、有機オニウムイオンの交換割合は、交換後の化合物について、熱重量測定装置等を用いて、有機オニウムイオンの熱分解による重量減少を求めることにより算出することができる。
本発明で用いられるB成分の、A成分との組成割合は、A成分100重量部あたり0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部である。この組成割合が0.1重量部より小さいときには芳香族ポリカーボネート樹脂の機械特性の改良効果が見られず、また50重量部より大きくなると、組成物の熱安定性が低下し実用的な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は得られにくい。
本発明の有機化層状珪酸塩は、塩素原子及び臭素原子の含有量の合計が300ppm以下であり、好ましくは250ppm以下、より好ましくは220ppm以下である。塩素原子及び臭素原子含有量が300ppmを超えると樹脂組成物における剛性や耐加水分解性が悪化するようになる。殊に塩素原子含有量は少ないことが好ましい。一方、後述するように有機化層状珪酸塩における有機オニウムイオン源として塩素イオンや臭素イオンを含有しない塩化合物を使用することも本発明においては可能である。かかる場合には塩素原子や臭素原子の含有量を実質的に0とすることも可能である。しかしながら、実用上塩素イオンや臭素イオン、殊に塩素イオンをカウンターイオンとする有機オニウム塩化合物を利用することが取り扱いやコストの点で有利であることから、B成分中にある程度の塩素原子や臭素原子、殊に塩素原子を含有した樹脂組成物は実用上好ましい態様である。したがって、B成分における塩素原子及び臭素原子の含有量の合計の下限、並びに塩素原子の含有量の下限は好ましくは10ppm以上、好ましくは50ppm以上、より好ましくは100ppm以上である。
上記有機化層状珪酸塩中の塩素原子及び臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィーで測定される。
具体的な測定方法として以下の方法が例示される。すなわち、有機化層状珪酸塩約2gを精秤後、300mlビーカーに入れ、蒸留水200mlを加える。それを攪拌子を用いたスターラーにて、1000rpmで1時間攪拌する。攪拌後、抽出した懸濁液を蒸留水を用いて10倍希釈し、フィルター(ADVANTEC社製:「Dismic−13cp」孔径0.20μm及び日本ダイオネクス社製:「Dillex−IC」孔径0.22μm)を用いて濾過した後に、イオンクロマトグラフ装置(ダイオネクス社製:「DX−100」)にて塩素量を定量する。
本発明のB成分を製造するためには、(i)カウンターイオンとして塩素イオンや臭素イオンを含まない有機オニウムイオン化合物の使用、(ii)塩素イオンや臭素イオンを含有する不純物の少ない有機オニウムイオン化合物の使用、(iii)塩素イオンや臭素イオンをカウンターイオンとして含む有機オニウムイオン化合物(即ち、有機オニウム塩化合物)を使用してイオン交換した後の有機化層状珪酸塩の十分な水洗洗浄、並びにこれらの組合せなどの方法が好適に例示される。中でも作業効率や生産性の点から前記(iii)の方法、すなわち生成した有機化層状珪酸塩を所定の塩素原子および臭素原子含有量となるまで十分に水洗することが重要である。有機化層状珪酸塩中に塩素原子および臭素原子が混入する主要原因がかかる有機オニウムイオン化合物の使用によることから、その除去も不純物量の少ない水を使用した水洗処理によって本発明の所定量まで低減することが可能である。
即ち、本発明のB成分として好適な態様は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩を有機オニウムイオンの塩素化物または臭素化物で、該陽イオン交換容量の40%以上の割合でイオン交換することにより得られた、塩素原子及び臭素原子の含有量の合計が300ppm以下である有機化層状珪酸塩(B’成分)であり、更に好適な態様は、前記B’成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩を有機オニウムイオンの塩素化物または臭素化物で、該陽イオン交換容量の40%以上の割合でイオン交換し、該イオン交換後の層状珪酸塩を塩素原子及び臭素原子の含有量の合計が300ppm以下となるまで水洗することにより得られた有機化層状珪酸塩である。
更に樹脂組成物全量中の塩素や臭素を低減するためには、A成分のポリカーボネート樹脂として殊に塩素不純物の十分に低減されたポリカーボネート樹脂を使用すること、並びに本発明の組成物に塩素や臭素を含有する化合物を配合しないことが重要である。殊にイオン性の高い無機化合物はその配合量に注意して全組成物中の所定量を低減することが好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂中の塩素原子含有不純物の低減については、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂をアセトン処理したり、また芳香族ポリカーボネート樹脂粉末をペレット化する際、ベント付き押出機の途中に水を強制的に注入し脱塩素化合物を行う方法、および芳香族ポリカーボネート樹脂溶液を非溶剤沈殿する方法や、さらに乾燥処理を強化する等、従来公知の種々の方法により調整することが可能である。また塩素系の有機溶剤を必要としない製造方法(例えば溶融重合法など)により製造された芳香族ポリカーボネート樹脂の使用も可能である。一方で臭素元素は通常製造工程で使用されることなく、またその混入もないことから通常の芳香族ポリカーボネート樹脂は実質的に含有しないか、極小割合の触媒として含有するにすぎない。したがってA成分の芳香族ポリカーボネート樹脂の塩素原子および臭素原子の合計の含有量(殊に塩素原子の含有量)は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。かかる含有量は塩素系の有機溶剤を使用するホスゲン法の芳香族ポリカーボネート樹脂においても1ppm以下とすることが可能である。溶融重合法のポリカーボネート樹脂においても触媒量として同レベルの含有量を達成することが可能である。本発明では末端封止が良好に行うことができ、熱安定性においてより良好なホスゲン法の芳香族ポリカーボネート樹脂において、その塩素原子および臭素原子含有量を低減したものがより好適である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、更に芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)との親和性を有し、かつ親水性成分を有する化合物(C成分)を含有することが好ましい。
<C成分について>
C成分の構成は、芳香族ポリカーボネート樹脂および層状珪酸塩、殊に有機化層状珪酸塩の双方に対する良好な親和性を生み出す。芳香族ポリカーボネート樹脂および層状珪酸塩、殊に有機化層状珪酸塩双方に対する親和性は2種の成分の相溶性を向上させ、層状珪酸塩は芳香族ポリカーボネート樹脂中での微細かつ安定して分散するようになる。
有機化層状珪酸塩の分散に関するかかるC成分の働きは、異種ポリマー同士を相溶化させるために使用されるポリマーアロイ用相溶化剤(コンパティビライザー)と同様である。したがってC成分は低分子化合物よりも単量体が重合してなる重合体であることが好ましい。また重合体は混練加工時の熱安定性にも優れる。重合体の平均繰り返し単位数は2以上であることが必要であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。一方、重合体の平均分子量の上限においては数平均分子量で2,000,000以下であることが好ましい。かかる上限を超えない場合には良好な成形加工性が得られる。
本発明のC成分の基本的構造としては、例えば(i)芳香族ポリカーボネート樹脂に親和性を有する成分(α)と親水性成分(β)を分子内に別々に有するもの、および(ii)分子全体で芳香族ポリカーボネート樹脂に親和性を有し(α)、その一部に親水性成分(β)を有するもの等が挙げられる。
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂に親和性を有する成分(以下、上記に従いαと称する場合がある)について説明する。上記の如くC成分は、ポリマーアロイにおける相溶化剤との同様の働きをすることから、αには相溶化剤と同様の重合体に対する親和性が求められる。したがってαは大きく非反応型と反応型とに分類できる。
非反応型では、以下の要因を有する場合に親和性が良好となる。即ち、芳香族ポリカーボネート樹脂とαとの間に、(i)化学構造の類似性、(ii)溶解度パラメータの近似性(溶解度パラメータの差が1(cal/cm1/2以内、即ち約2.05(MPa)1/2以内が目安とされる)、(iii)分子間相互作用(水素結合、イオン間相互作用など)、およびランダム重合体特有の擬引力的相互作用などの要因を有することが必要である。これらの要因は相溶化剤とポリマーアロイのベースになる重合体との親和性を判断する指標として知られている。
また反応型では、相溶化剤において芳香族ポリカーボネート樹脂と反応性を有する官能基として知られた各種を挙げることができる。例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリン基、エステル基、エステル結合、カーボネート基、およびカーボネート結合などを例示することができる。
これらの中でもαは非反応型であることが好ましく、殊に溶解度パラメータ((MPa)1/2)が近似すること(芳香族ポリカーボネート樹脂およびαの溶解度パラメータの差が、絶対値で2以下)は、良好な親和性を発揮するので好ましい。
例えば芳香族ポリカーボネート樹脂に対してかかる溶解度パラメータδαを満足する重合体成分の具体例は、芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートなどに代表される)、および脂肪族ポリエステル(ポリカプロラクトンに代表される)などのポリエステル系重合体が挙げられる。またかかる具体例としては、スチレンポリマー、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびアクリロニトリルポリマー(ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、およびスチレン−アクリロニトリル共重合体などに代表される)などのビニル系重合体を挙げることができる。
次に本発明におけるC成分の親水性成分(以下、上記に従いβと称する場合がある)について説明する。かかる親水性成分は、親水基(水との相互作用の強い有機性の原子団)を有する官能基および親水性重合体成分(重合体セグメント)より選択される。親水基の官能基は、例えば化学大辞典(共立出版,1989年)によれば、下記の基が例示(下記1)〜3))され、下記1)とスルフィン基等の強親水性の基および下記2)とカルボン酸無水物基、オキサゾリン基、ホルミル基およびピロリドン基等が使用される。
1)強親水性の基:−SOH、−SOM、−OSOH、−OSOH、−COOM、−NRX(R:アルキル基、X:ハロゲン原子、M:アルカリ金属、−NH) 等、
2)やや小さい親水性を有する基:−COOH、−NH、−CN、−OH、−NHCONH 等、
3)親水性が無いか又は小さい基:−CHOCH、−OCH、−COOCH、−CS 等
C成分の親水性重合体成分として、例えばポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸金属塩(キレート型を含む)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、およびポリヒドロキシエチルメタクリレートなどが例示される。これらの中でもポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、およびポリヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく例示される。ポリアルキレンオキシドとしては、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドが好ましい。
親水基を有する単量体および親水性重合体成分のいずれにおいても、βは酸性の官能基(以下単に“酸性基”と称する場合がある)を有することが好ましい。酸性基は芳香族ポリカーボネート樹脂の溶融加工時の熱劣化を抑制する。
酸性基としてはカルボキシル酸、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、およびスルフィン酸基以外に、ホスホン酸基およびホスフィン酸基などが例示され、カルボキシル酸およびカルボン酸無水物基が好ましい。
本発明のC成分におけるβの割合は、βが親水基を有する単量体の場合、官能基1つ当たりの分子量である官能基当量として60〜10,000であり、70〜8,000が好ましく、80〜6,000がより好ましく、100〜3,000が更に好ましい。またβが親水性重合体セグメントの場合、C成分100重量%中βが5〜95重量%の範囲にあることが適当であり、10〜90重量%が好ましい。とりわけ、30〜70重量%がより好ましく、30〜50重量%が更に好ましい。
本発明のC成分の好ましい態様として、“芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性を有しかつ酸性の官能基を有する重合体”、“芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性を有しかつポリアルキレンオキシドセグメントを有する重合体”、“芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性を有しかつオキサゾリン基を有する重合体”、または“芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性を有しかつ水酸基を有する重合体”が例示され、“芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性を有しかつ酸性の官能基を有する重合体”および、“芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性を有しかつポリアルキレンオキシドセグメントを有する重合体”が好ましい。これらのC成分として好ましい態様の重合体においては、その分子量は重量平均分子量において1万〜100万の範囲が好ましく、5万〜50万の範囲がより好ましい。かかる重量平均分子量は標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出されるものである。
上記の中でも芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性を有しかつ酸性の官能基を有する重合体が好ましく、更に好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性を有しかつカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基とを有する重合体である。また、芳香族ポリカーボネート樹脂の耐熱性保持効果の観点から、重合体は芳香環成分を主鎖に有するもの、およびスチレン成分を主鎖に有するものが好ましい。上記の点からカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン含有重合体(C1成分)が本発明のC成分として特に好適である。ここでスチレン含有重合体とはスチレン等の芳香族ビニル化合物を重合した繰返し単位を重合体成分として含有する重合体を指す。
本発明のC成分として特に好適なカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン含有重合体(C1成分)について詳述する。かかるカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基の割合としては、0.1〜12ミリ当量/gが好ましく、0.5〜5ミリ当量/gがより好ましい。ここでC1成分における1当量とは、カルボキシル基が1モル存在することをいい、かかる値は水酸化カリウムなどの逆滴定により算出することが可能である。
カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基(以下、単に“カルボキシル基類”と称する)を有する化合物又は単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸及びその誘導体、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等の無水マレイン酸の誘導体、並びにグルタルイミド構造やアクリル酸と多価の金属イオンで形成されたキレート構造等が挙げられる。これらの中でも金属イオンや窒素原子を含まない官能基を有する単量体が好適であり、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基を有する単量体がより好適である。これらの中でも特に好ましくは無水マレイン酸である。
また、スチレン系単量体化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ビニルナフタレン等を用いることができるが、特にスチレンが好ましい。
さらに、これらの化合物と共重合可能な他の化合物、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等を共重合成分として使用しても差し支えない。
上記カルボキシル基類を有するスチレン含有重合体のうち、本発明において好適であるのは、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有する単量体を共重合してなるスチレン含有共重合体である。そして殊に好適な態様はスチレン−無水マレイン酸共重合体である。
上記カルボキシル基類を有する単量体を共重合してなるスチレン含有共重合体の組成については、カルボキシル基類を有する単量体からの成分を1〜30重量%(特に5〜25重量%)、スチレン系単量体化合物成分99〜70重量%(特に95〜75重量%)を含み、共重合可能な他の化合物成分を0〜29重量%を含むものを用いるのが好ましく、カルボキシル基類を有する単量体を1〜30重量%(特に5〜25重量%)、スチレン系単量体化合物99〜70重量%(特に95〜75重量%)含む共重合体が特に好ましい。
また、本発明のC成分の好ましい態様であるC1成分の分子量(重量平均分子量)は1万〜100万の範囲にあることが好ましく、5万〜50万の範囲がより好ましい。尚、ここで示す重量平均分子量は、標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出されたものである。
本発明のC成分として好適なポリアルキレンオキシドセグメントを有する重合体、殊に好ましいポリエーテルエステル共重合体(C2成分)について説明する。
ポリエーテルエステル共重合体は、ジカルボン酸、アルキレングリコール、およびポリ(アルキレンオキシド)グリコール、並びにこれらの誘導体から重縮合を行うことで製造される重合体である。殊に好適な例としては、下記式(II)で示されるポリアルキレンオキシド単位を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールあるいはその誘導体(C2-I成分)、テトラメチレングリコールを65モル%以上含有するアルキレングリコールあるいはその誘導体(C2-II成分)、およびテレフタル酸を60モル%以上含有するジカルボン酸あるいはその誘導体(C2-III成分)から製造される共重合体である。
Figure 2004217903
(ここで、Xは一価の有機基を表し、nおよびmはいずれも0を含む整数であり、かつ10≦(n+m)≦120である。mが2以上の場合Xは互いに同一および異なる態様のいずれも選択できる。)
上記式(II)においてXは−CH、−CHCl、−CHBr、−CHI、および−CHOCHから選択される少なくとも1種の置換基が好ましい。
C2-I成分の共重合割合は、全グリコール成分の30〜80重量%であり、より好適には40〜70重量%である。
C2成分のポリエーテルエステル共重合体のC2-II成分においては、テトラメチレングリコール以外のジオールを共重合することができる。かかるジオールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが例示される。C2-II成分中テトラメチレングリコールは65モル%以上であり、75モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましい。
ポリエーテルエステル共重合体のジカルボン酸あるいはその誘導体(C2-III成分においては、テレフタル酸以外のジカルボン酸(カルボキシル基が2を超えるものを含む)を共重合することができる。かかるジカルボン酸としては、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が例示される。イソフタル酸を共重合したポリエーテルエステル共重合体はC成分として特に好適である。C2-III成分中テレフタル酸は60モル%以上であり、70モル%以上が好ましく、75〜95モル%がより好ましい。
他の好適なC成分としては、親水基としてオキサゾリン基を含有するスチレン含有共重合体が挙げられる。かかる共重合体を形成するスチレン系単量体化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ビニルナフタレン等を用いることができる。さらに、これらの化合物と共重合可能な他の化合物、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等、を共重合成分として使用しても差し支えない。中でも、特に好適なものとして、スチレン(2−イソプロペニル−2−オキサゾリン)−スチレン−アクリロニトリル共重合体が例示される。
本発明のC成分の組成割合は、A成分100重量部あたり0.5〜50重量部が好ましく、0.5〜20重量部がより好ましい。0.5重量部より少ない場合には層状珪酸塩の分散効果が十分でなく、また芳香族ポリカーボネート樹脂の熱劣化を抑制する効果も不十分となる場合がある。また50重量部を超えると耐衝撃性および耐熱性などが低下する場合がある。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の効果を発揮する範囲で、B成分以外の強化充填材を更に配合することができる。強化充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、ワラストナイト、カオリンクレー、マイカ、タルクおよび各種ウイスカー類(チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカーなど)といった一般に知られている各種フィラーを併用することができる。形状は繊維状、フレーク状、球状、中空状を自由に選択できる。ガラス繊維、炭素繊維およびガラスフレークなどは芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の強度や耐衝撃性の向上のためには好適である。一方本発明の樹脂組成物が有する極めて良好な表面外観(表面平滑性)をより有効に活用する場合には、強化充填材の大きさは微小であることが好ましい。具体的には繊維状充填材の場合にはその繊維径が、また板状充填材や粒状充填材の場合にはその大きさが、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。下限は0.05μm程度が適切である。かかる微小な強化充填材としてはタルク、ワラストナイト、カオリンクレー、および各種ウイスカー類が例示される。強化充填材の配合量は、全芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量%あたり50重量%以下が適切であり、0.5〜50重量%の範囲が好ましく、1〜35重量%の範囲がより好ましい。かかる配合量が50重量%を超えると、成形加工性が悪化し、本発明の効果が得られないため好ましくない。
さらに本発明の目的を損なわない範囲で、C成分として使用することがある化合物以外の他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体から主としてなる樹脂)、MS樹脂(メチルメタクリレート−スチレン共重合体から主としてなる樹脂)およびABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体から主としてなる樹脂などの各種スチレン含有(共)重合体樹脂、アクリル樹脂、並びにポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂等の結晶性熱可塑性樹脂)、難燃剤(例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、シリコーン系難燃剤等)、難燃助剤(例えば、アンチモン酸ナトリウム、三酸化アンチモン等)、滴下防止剤(フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン等)、核剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム、エチレン−アクリル酸ナトリウム等)、酸化防止剤(例えば、ヒンダ−ドフェノ−ル系化合物、イオウ系酸化防止剤等)、衝撃改良剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、滑剤、着色剤(染料、無機顔料等)、および蛍光増白剤等を配合してもよい。これら各種の添加剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する際の周知の配合量で利用することができる。
本発明の樹脂組成物は、更に高級脂肪酸と多価アルコールとの部分エステルおよび/またはフルエステル(D成分)を含有することにより、その耐加水分解性をさらに向上させることができる。かかる耐加水分解性の向上の原因は明らかではないものの、加水分解の原因となるイオン性の化合物を捕捉し、中和する作用があるものと推定される。
ここで高級脂肪酸とは、炭素原子数10〜32の脂肪族カルボン酸を指し、その具体例としては、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、ヘキサコサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、並びに、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、セトレイン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。これらのなかでも脂肪族カルボン酸としては炭素原子数10〜22のものが好ましく、炭素原子数14〜20であるものがより好ましい。特に炭素原子数14〜20の飽和脂肪族カルボン酸、特にステアリン酸およびパルミチン酸が好ましい。ステアリン酸等の脂肪族カルボン酸は、通常、炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物であることが多い。前記D成分においても、かかる天然油脂類から製造され他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなるステアリン酸やパルミチン酸から得られたエステル化合物が好ましく使用される。
一方、多価アルコールとしては、炭素原子数3〜32のものがより好ましい。かかる多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン(例えばデカグリセリン等)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコール等が挙げられる。
D成分の高級脂肪酸エステルは、より好適には部分エステルである。またD成分における酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましく、水酸基価は20〜500(より好ましくは50〜400)の範囲がより好ましい。更にヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
これらの中で、特にD成分としてより好ましいものは、ステアリン酸を主成分とする高級脂肪酸とグリセリンとの部分エステルであり、この部分エステルは、例えば理研ビタミン(株)より「リケマールS−100A」という商品名で市販されており、市場から容易に入手することができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、リン系熱安定剤を含むことが好ましい。かかるリン系熱安定剤としてはトリメチルホスフェート等のリン酸エステル、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリト−ルジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ルジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル、並びにテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等の亜ホスホン酸エステルなど、芳香族ポリカーボネート樹脂のリン系熱安定剤として広く知られた化合物が好適に例示される。かかるリン系熱安定剤は全組成物100重量%中0.001〜1重量%を含むことが好ましく、0.01〜0.5重量%を含むことがより好ましく、0.01〜0.2重量%を含むことが更に好ましい。かかるリン系熱安定剤の配合によりさらに熱安定性が向上し良好な成形加工特性を得ることができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分、並びに任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式二軸押出機に代表される多軸押出機が好ましい。かかる多軸押出機を用いることにより強力なせん断力で有機化層状珪酸塩は基体樹脂中に微分散させられる。一方その分散は層間を縮小させる作用が存在する下で行われることにより、層間のイオンの外部への露出は抑制される。結果して良好な分散と熱安定性とのより高度な両立が達成される。
更に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の溶融混練機による溶融混練において次の態様がより好適である。すなわち、B成分の有機化層状珪酸塩と、A成分の芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物(C成分)、殊に好適にはカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体(C1成分)とを予め溶融混練しておく。その後該溶融混練物とA成分の芳香族ポリカーボネート樹脂とを多軸押出機により溶融混練する。かかる溶融混練方法は芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性を向上させるため好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂においてはその分子量低下が特に抑制されるため好ましい溶融混練方法である。これはB成分とC成分とが予め溶融混練されることによりB成分に対してC成分が十分に相互作用し、所定の効果が効率的に得られているためと考えられる。したがって本発明によれば上記B成分とC成分とを予め溶融混練した後に、該溶融混練物とA成分とを多軸押出機を用いて溶融混練してなる、本発明の樹脂組成物および該樹脂組成物の製造方法が提供される。
より具体的には、例えば、(i)B成分とC成分をベント式二軸押出機にて溶融混練しペレット化したものを、再度A成分と溶融混練する方法や、(ii)B成分とC成分をベント式二軸押出機の主供給口より投入し、A成分の一部または全部を二軸押出機の途中段階に設けられた供給口から、B成分とC成分が既に溶融混練された状態の中へ投入する方法などが挙げられる。これらB成分とC成分を予め溶融混練する方法においては、その溶融混練時に、A成分の一部を含んでいても構わない。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は通常上記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、良好な剛性を有し、更に良好な熱安定性を有する。したがって上記の如く得られた樹脂成形品は、実用上問題のない幅広い成形加工条件の下で製造され、かつ良好な剛性および良好な表面外観を有する。より具体的には本発明によれば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物より形成された樹脂成形品であって、その表面のJIS B0601に準拠して測定された算術平均粗さRaの値が、0.1μm以下、かつASTM D790に準拠して測定された曲げ弾性率の値が、2,500MPa以上であることを特徴とする樹脂成形品が提供され、かかる樹脂成形品はその工業的価値が更に高い。従来、樹脂成形品の曲げ弾性率を向上させるためには、繊維上強化材や無機充填材を配合するのが一般的であったが、その場合にはその表面粗さは顕著に低下し、上記のバランスをとることができるものが得られていなかったためである。
樹脂成形品の算術表面粗さRaの値は、より好ましくは0.08μm以下であり、更に好ましくは0.05μm以下である。かかる下限は成形を行う金型によるところが大きいが約0.001μm程度が適切である。また、曲げ弾性率の値は、より好ましくは2,800MPa以上であり、更に好ましくは3,000MPa以上である。一方、その上限は8,000MPaが適切であり、7,000MPaが好ましく、6,000MPaがより好ましい。
本発明の樹脂成形品には、表面改質を施すことにより、平滑性に優れた表面改質成形品を得ることができる。ここでいう表面改質とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、塗装、コーティング、印刷などの樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂に用いられる方法が適用できる。これら表面改質では、改質される樹脂成形品の表面平滑性が、改質後の表面性に大きな影響を与えるが、本発明の樹脂成形品を使用すると、表面平滑性に優れた成形品を得ることができる。一般にこれらの表面改質は、表面修飾や機能付与だけでなく、樹脂成形品の表面平滑性を高める目的で施されることもあり、表面平滑性が悪いと改質の厚さを大きくとる必要があるが、本発明の樹脂成形品では、薄い厚みにて効率よく改質することができる。すなわち、50μm以下であることが本発明の効果が発揮され好ましい。更にかかる厚みは20μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましく、2μm以下が更に好ましい。下限値としては0.001μm以上が適切である。更に、金属層または金属酸化物層を有しない樹脂成形品単体におけるJIS B0601に準拠して測定される算術平均粗さRaの値に対して、かかるRaの500倍以内の厚みで表面改質を行うと、本発明の樹脂成形品の特長が生かされ、かかるRaの200倍以内の値の厚みであればより好ましく、100倍以内は更に好ましく、50倍以内は特に好ましい。本発明において好ましい表面改質方法は、蒸着、メッキなどの改質厚みの小さい手法である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上記の特性を生かし樹脂材料として従来使用できなかった部品に用途展開が可能である。殊に従来ガラス成形品または金属の精密切削品でなければ達成できなかった極めて高い表面平滑性と剛性が要求される用途に使用可能である。かかる用途としては例えば光学精密機器内に配されたミラー、レーザー式複写・印刷装置などに配されたポリゴンミラー、およびハードディスクなどが例示される。
更に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、および雑貨などの各種用途にも有用である。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は成形加工性にも優れていることから、各種薄肉成形品にも好適であり、薄肉射出成形品の具体例としては、電池ハウジングなどの各種ハウジング成形品、鏡筒、メモリーカード、スピーカーコーン、ディスクカートリッジ、面発光体、マイクロマシン用機構部品、銘板、パソコンのハウジング、CDやDVDドライブのトレーやシャシー、複写機のトレーやシャシー、液晶装置の直下型バックライト用光拡散板(特に大型液晶表示装置(15インチ以上の大型液晶テレビ)用直下型バックライト用光拡散板)およびICカードなどが例示される。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、分子量低下が少なく、高い剛性を持ち、また耐加水分解性を大幅に改善した新規な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物である。更に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は射出成形および押出成形の双方に適した溶融粘度特性を有しており成形加工性に優れる。したがって本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上述の具体的な用途の他、電気電子部品分野、OA機器部品分野、自動車部品分野、農業資材分野、漁業資材分野、搬送容器分野、包装容器分野、および雑貨分野等の幅広い分野において有用であり、特に電気電子部品分野、OA機器部品分野、自動車部品分野に有用であり、その奏する工業的効果は格別である。
本発明者らが現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明を詳述する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の各種特性の測定は、以下の方法によった。原料は以下の原料を用いた。
(1)層状珪酸塩の含有量
試験片を射出成形機(FANUC(株)製:AUTOSHOT Tシリーズ モデル150D)によりシリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒で成形し、成形した試験片を切削してるつぼに入れて秤量し、600℃まで昇温し、そのまま6時間保持した後で放冷し、るつぼに残った灰化残渣を秤量することで層状珪酸塩量を測定した。
(2)層状珪酸塩中の塩素含有量
有機化層状珪酸塩約2gを精秤後、300mlビーカーに入れ、蒸留水200mlを加えた。それを攪拌子を用いたスターラーにて、1000rpmで1時間攪拌した。攪拌後、抽出した懸濁液を蒸留水を用いて10倍希釈し、フィルター(ADVANTEC社製:「Dismic−13cp」孔径0.20μm及び日本ダイオネクス社製:「Dillex−IC」孔径0.22μm)を用いて濾過した後に、イオンクロマトグラフ装置(ダイオネクス社製:「DX−100」)にて塩素量を定量した。尚、臭素について検出されなかった。
(3)芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における粘度平均分子量
試験片を上記(1)と同条件で成形し、試験片の粘度平均分子量を本文中記載の方法にて測定した。
(4)曲げ弾性率
前記(1)と同条件で成形した同形状の試験片(寸法:長さ127mm×幅12.7mm×厚み6.4mm)を、温度23℃および相対湿度50%RHの雰囲気下においてASTM−D790に準拠の方法により曲げ弾性率(MPa)を測定した。この数値が大きいほど成形した樹脂組成物の剛性が優れていることを意味する。
(5)耐加水分解性
前記(1)と同条件で成形した同形状の試験片(寸法:長さ127mm×幅12.7mm×厚み6.4mm)を温度65℃、相対湿度85%の雰囲気下で500時間放置して処理したものと未処理のものの粘度平均分子量を測定した。その差をΔMとした。この数値(ΔM)が小さいほど成形した樹脂組成物の耐加水分解性が良好であることを示す。
原料としては、以下のものを用いた。
(A成分:芳香族ポリカーボネート樹脂)
A−1:粘度平均分子量 23,900、塩素含有量40ppmのホスゲン法により製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製パンライトl−1250WP、尚、臭素の含有は認められなかった)
(B成分およびB成分以外)
B−1:合成雲母(DMA−80E:トピー工業(株)製)をオニウムイオンのクロライド(ジデシルジメチルアンモニウムクロライド)でほぼ完全にイオン交換し、濾別した。乾燥後の塩素元素含有量は948ppmであった。
B−2:合成雲母(DMA−80E:トピー工業(株)製)をオニウムイオンのクロライド(ジデシルジメチルアンモニウムクロライド)でほぼ完全にイオン交換したもの約100部を精秤して、これを10000部のイオン交換水でリンス洗浄後再び濾別した。乾燥後の塩素含有量は、613ppmであった。
B−3:合成雲母(DMA−80E:トピー工業(株)製)をオニウムイオンのクロライド(ジデシルジメチルアンモニウムクロライド)でほぼ完全にイオン交換したもの約100部を精秤して、これを10000部のイオン交換水中でスターラーを用いての攪拌洗浄後再び濾別した。乾燥後の塩素含有量は、208ppmであった。
(C成分)
C−1:スチレン−無水マレイン酸共重合体(ノヴァケミカルジャパン(株)製:「DYLARK 332−80」、無水マレイン酸量約15重量%)
[実施例1、2、および比較例1、2]
B成分、C成分を表1記載の配合割合でドライブレンドした後、径58mmφ、混練ゾーン2箇所のスクリューを装備したベント付き二軸押出機(東芝機械(株)製:TEM−58SS)を用い、シリンダー温度200℃にて溶融混練し、押出し、ストランドカットしてペレットを得た。このペレットとA成分とを表1記載の配合割合で、更にA成分100重量部当たり、トリメチルホスフェート(大八化学工業(株)製:TMP)0.1重量部および脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製:リケマールS−100A)0.05重量部を加えてドライブレンドした後、径30mmφ、L/D=33.2、混練ゾーン2箇所のスクリューを装備したベント付き二軸押出機((株)神戸製鋼所製:KTX30)を用い、シリンダー温度280℃にて溶融混練し、押出し、ストランドカットしてペレットを得た。
得られたペレットを100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥した。乾燥後、試験片を射出成形機(FANUC(株)製:AUTOSHOT Tシリーズ モデル150D)によりシリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒で成形した。これらについての測定結果を表1に示す。
Figure 2004217903
上記表から明らかなように、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、B成分中の特定成分の含有量が少ないほど、良好な加水分解性、良好な剛性および良好な熱安定性を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物となることは明確である。

Claims (4)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部あたり、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなり、更に塩素原子及び臭素原子の含有量の合計が300ppm以下である有機化層状珪酸塩(B成分)0.1〜50重量部を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 前記B成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩を有機オニウムイオンの塩素化物または臭素化物で、該陽イオン交換容量の40%以上の割合でイオン交換することにより得られた、塩素原子及び臭素原子の含有量の合計が300ppm以下である有機化層状珪酸塩(B’成分)である請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. さらに、(C)前記A成分との親和性を有し、かつ親水性分を有する有機化合物(C成分)を、前記A成分100重量部当り0.1〜50重量部含有する請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記C成分は、スチレン−無水マレイン酸共重合体である請求項3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
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