JP2004209759A - インクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被記録媒体のカールを十分に抑制し、高精細な画像特性を得ることができるインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】着色材と水を含む水性記録インクと少なくとも水を含む無色の水性液体組成物とを被記録媒体上に付与するインクジェット記録方法であって、記録インク、液体組成物の双方が少なくとも下記1)および2)から選択される1つ以上の化合物を含有し、且つ、該水性記録インクと該液体組成物とによって被記録媒体へ打ち込まれる前記1)および2)より選択される化合物の総量(該化合物総量)と、該水性記録インクと該液体組成物とによって被記録媒体へ打ち込まれる総水分量の比が、総水分量/該化合物総量=2.0以上3.2以下であることを特徴とするインクジェット記録方法
【選択図】 なし
【解決手段】着色材と水を含む水性記録インクと少なくとも水を含む無色の水性液体組成物とを被記録媒体上に付与するインクジェット記録方法であって、記録インク、液体組成物の双方が少なくとも下記1)および2)から選択される1つ以上の化合物を含有し、且つ、該水性記録インクと該液体組成物とによって被記録媒体へ打ち込まれる前記1)および2)より選択される化合物の総量(該化合物総量)と、該水性記録インクと該液体組成物とによって被記録媒体へ打ち込まれる総水分量の比が、総水分量/該化合物総量=2.0以上3.2以下であることを特徴とするインクジェット記録方法
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクを吐出させて画像の記録を行うインクジェット記録方法に用いられるインク及び、それを用いた記録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット方式は、種々の作動原理よりインクの微小液滴を飛翔させて被記録媒体(紙など)に付着させ、画像や文字などの記録を行う記録方式であり、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が高い、現像および定着が不要などの特徴があり、様々な用途において急速に普及している。インクジェット記録方法で記録する際の被記録媒体としては普通紙、コート紙、光沢紙、OHPシート、バックプリントフィルムなど様々なものが市販されているが、一般のオフィスでのビジネス用途では低価格の普通紙を用いることが多い。この際の要求特性としては前述した特性を満足しながら、紙が多くのインクを付与された際に生じるカール(紙が反る、丸まる)現象を緩和、抑制することが挙げられる。ここでは記録中のカールはもとより、記録後、水分が乾燥、蒸発して起こる記録後カールの緩和、抑制が重要になってくる。
【0003】
インクジェットで記録した記録物の使用については多様であり、カールした紙は積み重ねたり、ファイリングした際に丸まったり、平坦性を保てないために様々な不具合を生じる。また、OHPの発表用原稿のためし印刷を価格の安い普通紙を用いて行うこともあり、その際に図や写真、更には背景などを青などの2次色で記録すると紙が反ることにより取扱いに困ることが多い。
【0004】
ここでカールが起きる現象は水分の付与が大きく起因している。すなわち、記録面積が広い場合、更には記録の際のインク付与量が大きい際に著しくカールが起きることが分かっている。
【0005】
このカールを緩和、抑制する方法として従来幾つかの方法が提案されている。例えば、特開平4−332775号公報(特許文献1)において、分子構造中に水酸基を4個以上有し、水または水性有機溶媒に溶解な固体物質を含むインクジェット用インクが提案されている。また、特開平6−157955号公報(特許文献2)には糖類などのカール低減剤を含有するインクが提案されている。また、特開平6−240189号公報(特許文献3)、特開平9−165539号公報(特許文献4)には糖類、糖アルコール類を含有したインクが提案されている。また、特開平9−176538号公報(特許文献5)にはカール低減剤として特定のアミド化合物を含有したインクが提案されている。また、特開平10−130550号公報(特許文献6)には特定の多価アルコールとグリセリンを組み合わせて含有したインクが提案されている。また、特開2000−198267号公報(特許文献7)には溶媒、高分子バインダ、媒染剤、水溶性カール低減化合物、水溶性糊抜き化合物、耐光性化合物、消泡剤などを含むインクが提案されている。
【0006】
また、特開平9−207424号公報(特許文献8)には反応液とインクを別々に記録し、それぞれにカールを低減する化合物を含有するインクが提案され、ある種のポリオールを反応液の多価金属の量よりも多く入れている。
【0007】
また、インクジェット記録においては更に高速化が進んでおり、高速印刷する際の吐出安定性や信頼性が重要になり、そのために、インク自身の安定性、浸透性、粘度などの諸物性を得た上でカールを緩和・抑制することが重要になっている。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−332775号公報
【特許文献2】
特開平6−157955号公報
【特許文献3】
特開平6−240189号公報
【特許文献4】
特開平9−165539号公報
【特許文献5】
特開平9−176538号公報
【特許文献6】
特開平10−130550号公報
【特許文献7】
特開2000−198267号公報
【特許文献8】
特開平9−207424号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らの検討によると上記従来技術に記載の方法ではカールをある程度抑制することはできるが、改善の余地があった。また、特にカールの抑制を十分に行うためにカール抑制物質を多量に入れると、吐出性が悪化してしまう場合も多々あった。従って、本発明の目的は、上記した従来技術の問題を解決し、カールを十分に抑制し、特に普通紙の印刷物を扱い易くするものである。また、本発明はインク付与量の多い印字パターンを必要とする場合、更には長期的にカールを抑制することを目的とする。更には、高精細な画像特性、特に、ブリード抑制、定着性、画像濃度の点について良好な特性を得るものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、着色材と水を含む水性記録インクと少なくとも水を含む無色の水性液体組成物とを被記録媒体上に付与するインクジェット記録方法であって、記録インク、液体組成物の双方が少なくとも下記1)および2)から選択される1つ以上の化合物を含有し、且つ、該水性記録インクと該液体組成物とによって被記録媒体へ打ち込まれる下記1)および2)より選択される化合物の総量(該化合物総量)と、該水性記録インクと該液体組成物とによって被記録媒体へ打ち込まれる総水分量の比が、総水分量/該化合物総量=2.0以上3.2以下であることを特徴とするインクジェット記録方法に関する。
1) 化学構造が炭素数が4以上であって、OH基を3つ以上もつ化合物、
2) 化学構造が炭素数が7以上であって、OH基を2つもつ化合物
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、好適な実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明者等は、着色剤を含む水性記録インクと、該記録インクと共に被記録媒体上に付与する色材を含まない水性液体組成物の双方を用いて画像形成を行う際に、特定の化合物をインク中に含有させる記録方法であり、水分との関係について十分に鑑みた結果に基づき、良好な画像特性、安定な印字特性、記録物の取扱い性を考慮した印字ができるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0013】
本発明は下記の1)および2)に示す化合物より選択される1つ以上の化合物(カール低減剤)を添加したインクを用いる。
1) 化学構造が炭素数が4以上であって、OH基を3つ以上もつ化合物
2) 化学構造が炭素数が7以上であって、OH基を2つもつ化合物
これらの物質を記録インクと共に被記録媒体上に付与する色材を含まない水性液体組成物にも含有し、この液体組成物と前記インクとを用いて画像形成を行う。
【0014】
(カール低減剤)
1)、2)の化合物の具体例としては、炭素数が4以上であって、OH基を3つ以上もつ化合物として、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、1,2,6ヘキサントリオール、ジグリセリン、ジグリセリンのEO付加物、糖類、糖アルコール類、オリゴ糖類、環状オリゴ糖類等がある。糖類としては具体的に、D−型およびL−型のフルクトース、タガトース、ソルポース、リボース、キシロース、アラビノース、リキソース、グルコース、マンノース、アロース、アルトロース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、グロース、マルトース、セロビオース、トレハロース、ゲンチオビオース、イソマルトース、ラクトース、ラクトース、スクロース、ショ糖、ラフィノース、ゲンチアノース、スタキオース、キシラン等が挙げられる。
【0015】
糖アルコールとしては、単糖、多糖アルコール類が挙げられ、具体的には、
テトリトール、D−エリトール、L−エリトール、D−アラビニトール、キシリトール、アドニトール、リビトール、D−ソルビトール、アリトール、D−マンニトール、D−イジトール、D−タリトール、ズルシトール、ヘプチトール、マルチトール等が挙げられる。
【0016】
炭素数が7以上であって、OH基を2つもつジオール類としては1,7ヘプタンジオール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、等が挙げられる。
【0017】
これらの化合物がインク及び、水性液体組成物に含有されインクジェット記録方法によってカールの少ない印字物が得られ、更に、印字物を保存後も長期的にカールを抑制できる理由は以下と考えられる。
【0018】
被記録媒体である紙に水分が付与される場合、紙のセルロース繊維間に形成されている水素結合が一度切断される。すなわち、水分の付与により、セルロースの膨潤が生じるとともに化学的な現象が生じている。この時、紙は必ず膨潤しているため、水分を付与した面の反対側に反りカールする、すなわちマイナスカールを起こす。ところが、一度、吸収したセルロース中の水分は次第に蒸発し、セルロースの収縮が始まるとともに、一旦切れた水素結合の再結合が起こる。その際に切れた位置で再結合せず、別の位置で再結合するために紙は水分を付与した面の方向に次第に反りカールする。すなわちプラスカールを起こす。このプラスカールが普通紙などにインクジェット記録をした場合に問題になっている。
【0019】
ここで普通紙とは一般に市販されているコピー用紙、コピー用再生紙、インクジェット用普通紙、カラーインクジェット用普通紙、インクジェット・電子写真共用紙、和紙等が挙げられる。より具体的には紙表面に特別の白色顔料がコートされていないか、コートされていても塗工量が少なく下地の紙(基紙)のパルプ繊維が部分的にでも露出しているものも含む。
【0020】
本発明者はこの水分の付与→膨潤→マイナスカールの現象と蒸発→収縮→プラスカールの現象を十分に解析し、特に紙に付与される水分量とインクに添加する化合物によっていかにしてプラスカールを抑制するかを鋭意検討の結果、上述した特定のカール低減化合物を複数用い、更に、被記録媒体上での上記化合物と水分量の打ち込み量の比を制御することにより、カール低減化合物が効果的に、繊維のセルロース間に入り込み、水素結合の再結合の際に、紙が収縮しやすい結合を引き起こしくいようにしていることを見出した。すなわち、上記複数の化合物を用いて、被記録媒体に打ち込まれる化合物総量と総水分量を本発明のようにコントロールすることにより、水分の蒸発時に紙の伸縮がマイナスカールの方向に作用が働き、これらの化合物を単独で含有する場合よりカール低減効果に優れるものであった。更に、上記したカール低減効果のある化合物を単独で含むインクを用いて優れたカール低減効果を達成しようとするとインクの粘度上昇等による、信頼性が低下するという問題が生じる場合があったが、記録インクと水性媒体とを用いることで、各々のカール低減化合物の含有量を低下させることができるため信頼性が向上し、記録安定性が得られる。特に高速印字における安定性が高くなることを見出した。
【0021】
これは、印字後、数時間や1日程度の短期間に効果を得るものではなく、1週間以上の長期的に効果が得られるところに大きな特徴がある。ここでの、上記化合物と水分の付与量は比の関係により既定でき、被記録媒体上に画像を形成する際に打ち込まれる該化合物総量と、双方によって打ち込まれる総水分量の比は十分なカール低減効果と長期的なカール低減効果を達成するために総水分量/該化合物総量=2.0以上3.2以下であることが好ましい。ここで、上記化合物と水分を付与する際に、着色剤を含む水性記録インクと、該記録インクと共に被記録媒体上に付与する色材を含まない水性液体組成物の双方を用いて画像形成を行うインクジェット記録方法が有効であり、上記化合物と水分の比を効果的にコントロールできる。
【0022】
また、本記録方法においてはフルべた印字して、1200dpi×1200dpi換算で200%の印字密度(デューティ)のような付与する水分量が多い場合でもカールの抑制効果が十分発揮される。また、記録インク及び、色材を含まない水性液体組成物にそれぞれ含まれる水分量としてはそれぞれが100質量%に対して、10〜90%が好適であり、本発明の効果を発揮するためには30〜80%が更に好適である。
【0023】
次に、この時の記録インク及び、色材を含まない水性液体組成物について詳細に述べる。
【0024】
まず、本発明で使用されるインクについて述べる。
【0025】
(着色剤:染料、顔料)
記録するインクの着色材は水性染料、水分散性顔料、またはそれらの組み合わせによって用いられる。色材としてはブラック、シアン、イエロー、マゼンタの他、従来公知のオレンジ、グリーン、ブルーの染料、顔料も問題なく使用できる。
【0026】
水溶性染料については可溶化基としてアニオン性基を有するものを用いる。
【0027】
本発明で使用されるインクには、さらにこれに水、水溶性有機溶媒、及びその他の成分、例えば粘度調整剤、pH調整剤、防かび剤、中性またはアニオン性の界面活性剤、酸化防止剤等が必要に応じて含まれる。
【0028】
(染料)
本発明において、処理液を付与する、色を記録するインクの色はブラック、シアン、マゼンタ、イエローの他、従来公知のオレンジ、グリーン、ブルーが使用可能であり、色材としてはアニオン性の水溶性染料が挙げられる。
【0029】
本発明で使用されるアニオン性基を有する水溶性染料としては、カラーインデックス(COLOUR INDEX)に記載されている水溶性の酸性染料、直接染料、反応性染料であれば特に限定はない。また、カラーインデックスに記載のない染料であっても、アニオン性基、例えばスルホン基を有するものであれば特に制限はない。これらの染料はインク中に1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲で用いる。
【0030】
具体的な染料としては、
C.I.ダイレクトイエロー 8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、98、100、110
C.I.ダイレクトレッド 2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、230
C.I.ダイレクトブルー 1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226
C.I.アシッドイエロー 1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99
C.I.アシッドレッド 6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、94、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289
C.I.アシッドブルー 1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161
C.I.ダイレクトブラック 17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168
C.I.アシッドブラック 2、48、51、52、110、115、156
C.I.リアクティブブラック 1、8、12、13
C.I.フードブラック 1、2
等が挙げられる。勿論以上に限定されるものではない。
【0031】
また、前記以外に本発明に用いる色を記録するインクの色材として可溶化基として、カルボキシル基を持つ染料が挙げられる。ここでは、pHに対して溶解度の依存性を示す染料が挙げられる。これらの染料はインク中に1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲で用いる。
【0032】
(顔料)
次に、本発明において使用される顔料としては、具体的には、黒色のインクに使用されるものとしてカーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックであって、一次粒子径が15〜40nm、BET法による比表面積が50〜300m2/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9等の特性を有するものが好ましく用いられる。この様な特性を有する市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上三菱化成製)、RAVEN 1255(以上コロンビア製)、REGAL 400R、REGAL 330R、REGAL 660R、MOGUL L(以上キャボット製)、Color Black FW1、COLOR Black FW 18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(以上デグッサ製)等があり、いずれも好ましく使用することが出来る。
【0033】
又、イエローインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow74、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 128等が挙げられ、
マゼンタインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red l22等が挙げられ、
シアンインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue15:3、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられるが、これらに限られるものではなく、また、オレンジ、グリーン、ブルーの色調をもつ顔料も使用可能である。又、以上の他、本発明の為に新たに製造された顔料も勿論、使用することが可能である。
【0034】
本発明で使用されるインクの色材として顔料が用いられている場合には、顔料の量は、インク全質量に対して、質量比で1〜20質量%、好ましくは2〜12質量%の範囲で用いる。
【0035】
又、顔料を使用する場合に、顔料をインク中に含有させる分散剤としては、水溶性樹脂であればどの様なものでも使用することが出来るが、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましく、更には、3,000〜15,000の範囲のものが好ましく使用される。この様な分散剤として、具体的には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。或いは、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂も好ましく使用することが出来る。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶であり、アルカリ可溶型樹脂である。尚、これらの顔料分散剤として用いられる水溶性樹脂は、インク全質量に対して0.1〜5質量%の範囲で含有させるのが好ましい。
【0036】
特に、上記した様な顔料が含有されているインクの場合には、インク全体が中性又はアルカリ性に調整されていることが好ましい。この様なものとすれば、顔料分散剤として使用される水溶性樹脂の溶解性を向上させ、長期保存性に一層優れたインクとすることが出来るので好ましい。但し、この場合、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、好ましくは、7〜10のpH範囲とするのが望ましい。
【0037】
この際に使用されるpH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等が挙げられる。上記した様な顔料及び分散剤である水溶性樹脂は、水性液媒体中に分散又は溶解される。
【0038】
上記した様な顔料が含有されたインクの作成方法としては、始めに、分散剤としての水溶性樹脂及び水が少なくとも含有された水性媒体に顔料を添加し、撹拌した後、後述の分散手段を用いて分散を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の分散液を得る。次に、この分散液にサイズ剤、及び、上記で挙げた様な適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌して本発明で使用するインクとする。
【0039】
尚、分散剤として前記した様なアルカリ可溶型樹脂を使用する場合には、樹脂を溶解させる為に塩基を添加することが必要であるが、この際の塩基類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機アミン、或いは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が好ましく使用される。
【0040】
又、顔料が含有されているインクの作成方法においては、顔料を含む水性媒体を撹拌し分散処理する前に、プレミキシングを30分間以上行うのが効果的である。即ち、この様なプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することが出来る為、好ましい。
【0041】
上記した顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル及びサンドミル等が挙げられる。その中でも、高速型のサンドミルが好ましく使用され、この様なものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0042】
又、顔料が含有されているインクをインクジェット記録方法に使用する場合には、耐目詰り性等の要請から、最適な粒度分布を有する顔料が用いられるが、所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、処理時間を長くすること、吐出速度を遅くすること、粉砕後フィルターや遠心分離機等で分級すること及びこれらの手法の組合せ等の手法が挙げられる。
【0043】
(アニオン性添加剤)
本発明において、顔料を含有するインクを使用する場合には、インク中に上記で説明した各種成分の他に、アニオン性の界面活性剤或いはアニオン性の高分子物質等、アニオン性化合物を添加するのが好ましい。特に、分散剤としてアニオン性化合物が用いられていない場合には、この様なアニオン性物質を添加することが必須である。この際の添加量としては、0.05〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%とする。
【0044】
又、両性界面活性剤をその等電点以下のpHに調整して含有させるのも好ましい態様である。この際に使用されるアニオン性界面活性剤の例としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル型、スルホン酸塩型、燐酸エステル型等、一般に使用されているものをいずれも好ましく使用することが出来る。又、アニオン性高分子の例としては、アルカリ可溶型の樹脂、具体的には、ポリアクリル酸ソーダ、或いは高分子の一部にアクリル酸を共重合したもの等を挙げることが出来るが、勿論、これらに限定されない。
【0045】
(インクの液媒体)
本発明で使用されるインクにおいて好適な水性液媒体は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
【0046】
本発明においては着色材と特定のカール低減剤、すなわち、
1)化学構造が炭素数が4以上であって、OH基を3つ以上もつ化合物、および2)化学構造が炭素数が7以上であって、OH基を2つもつ化合物
から選ばれる少なくとも1化合物を必須とし、それ以外に水と混合して使用できる水溶性有機溶剤を適宜配合して用いてもよい。
【0047】
水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0048】
上記した様な水溶性有機溶剤のインク中における含有量は、一般的にはインク全質量の0.5〜20質量%の範囲とし、好ましくは1〜10質量%の範囲とする。又、使用される水の含有量としては、インク全質量の10〜90質量%、好ましくは30〜80質量%の範囲とする。
【0049】
又、本発明で使用されるインクは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとする為に、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を適宜に添加することが出来る。
【0050】
また、上述した水溶性染料と水分散性顔料を微妙な調色の目的や色濃度の調整などのために組み合わせることも可能である。このとき、水性染料と水分散性顔料は目的に応じて10:1〜1:10の範囲で配合可能である。
【0051】
本発明における記録インクの物性として好適な範囲は25℃付近で、pHは3〜12、好ましくは7〜10、表面張力は10〜60mN/m(10〜60dyn/cm)、好ましくは10〜40mN/m(10〜40dyn/cm)であり、粘度は1〜30mPa・s、好ましくは1〜5mPa・sである。
【0052】
(液体組成物)
次に、本発明に使用する色材を含まない水性液体組成物について説明をする。液体組成物は本発明における化合物(カール低減剤)を必須成分とするが、必要により下記の2つの成分の何れかを更に含有する。
【0053】
記録インクと反応性を有する化合物
水溶性ポリマー
勿論1)の物質が2)の特性を兼ね備えても良い。
【0054】
以下1)に使用する化合物について説明する。
1)に使用される化合物は
a)カチオン性有機化合物
b)多価金属塩
のいずれかである。
【0055】
a)について説明する。
本発明に使用するカチオン性有機化合物としては、例えば、少なくともカチオン性基をもつ高分子化合物、オリゴマー類や界面活性剤等の低分子カチオン性化合物が挙げられる。
【0056】
カチオン性の高分子物質としては、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミンスルホン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、キトサン酢酸塩等を挙げることができるが、勿論これらに限定されるわけではないし、また、塩酸塩型、酢酸塩型の化合物に限定されるわけでもない。また、上記に挙げたものの他、下記に挙げるようなノニオン性高分子物質の一部をカチオン化した化合物を用いることもできる。具体的には、ビニルピロリドンとアミノアルキルアルキレート4級塩との共重合体、アクリルアマイドとアミノメチルアクリルアマイド4級塩との共重合体等を挙げることができる。勿論これらの化合物に限定されないことは言うまでもない。更に、上記に列挙したような高分子物質及びカチオン性の高分子物質は、水溶性のものであれば申し分ないが、ラテックスやエマルジョンの様な分散体であってもかまわない。
【0057】
次に、本発明において用いることのできる低分子カチオン性化合物の具体例を以下に列挙する。しかし、本発明においては、必ずしも下記に例示した低分子カチオン性化合物に限定されないことは言うまでもない。
【0058】
低分子カチオン性化合物としては、先ず、1級或いは2級或いは3級アミン塩型の低分子カチオン性化合物を用いることができる。具体的には、ラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等を挙げられる。また、第4級アンモニウム塩型の低分子カチオン性化合物を用いることができる。具体的には、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム等を挙げられる。また、ピリジニウム塩型の低分子カチオン性化合物を用いることができる。具体的には、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド等を挙げられる。イミダゾリン型の低分子カチオン性化合物を用いることができるが、具体的には、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン等が挙げられる。また、高級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物等の低分子カチオン性化合物を用いることができるが、具体的には、ジヒドロキシエチルステアリルアミン等が挙げられる。
【0059】
更に、本発明では、低分子カチオン性化合物として、あるpH領域においてカチオン性を有する両性界面活性剤を使用することもできる。このようなものとしては、アミノ酸型両性界面活性剤、R−NH−CH2−CH2−COOH型の化合物、ベタイン型の化合物等が挙げられるが、より具体的には、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等のカルボン酸塩型両性界面活性剤の他、硫酸エステル型、スルホン酸型、燐酸エステル型等の両性界面活性剤等を使用することができる。勿論、これらの両性界面活性剤を使用する場合には、それらの等電点以下のpHになるようにプリント性向上液のpHを調整するか、記録媒体上で記録インクと混合した場合に、混合液がそれらの等電点以下のpHになるように調整するか、何れかの方法をとる必要がある。
【0060】
b)について説明する。
【0061】
b)については、下記のような多価金属塩類を挙げることができる。代表的な好ましい材料としては、次に列挙するような2価および3価の金属陽イオンを含有する塩溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。即ち、2価の金属陽イオンとしては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、及びBa2+等、3価の金属陽イオンとしては、Al3+、Y3+、Fe3+等を挙げることができる。また、これらの陽イオンと結合する好ましい陰イオンとしては、硝酸イオンや酢酸イオン等が挙げられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。
【0062】
次に2)水溶性ポリマーについて説明する。
【0063】
液体組成物は、アニオン性、カチオン性もしくはノニオン性の水溶性ポリマー(水溶性樹脂)の何れかを含有してもよい。カチオン性樹脂を用いた場合には前記1)の特性も兼ね備えるのでより好ましい。
【0064】
具体例を挙げれば、ノニオン性水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質、グアーガム、キサンタンガム、デンプン等が挙げられる。
【0065】
カチオン性水溶性樹脂としてはポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアミンスルホン、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミン、キトサン等の塩酸塩、硫酸塩及び酢酸塩等、また別の具体例としては、ノニオン性高分子物質の一部をカチオン化した化合物でもよい。具体的には、ビニルピロリドンとアミノアルキルアルキレート4級塩との共重合体、アクリルアマイドとアミノメチルアクリルアマイド4級塩との共重合体、カチオン化デンプン等を挙げることができる。
【0066】
アニオン性水溶性樹脂の具体例を挙げれば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アルギン酸、ポリアクリル酸或いはこれらの塩、および誘導体、等を挙げることができるが、もちろんこれらの化合物に限定されないことは言うまでもない。
【0067】
さらに本発明における液体組成物は上述した化合物の他に、本発明におけるカール低減剤に該当しない水溶性有機化合物、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤等を適宜含有してもよい。
【0068】
本発明で述べる液体組成物は、色材を含まず、無色または記録インクと共に付与し形成される画像の色調に変化を与えない範囲の色調を有するものである。この液体組成物の物性として好適な範囲は25℃付近で、pHは3〜12、好ましくは4〜8、表面張力は10〜60mN/m(10〜60dyn/cm)、好ましくは10〜40mN/m(10〜40dyn/cm)であり、粘度は1〜30mPa・s、好ましくは1〜5mPa・sである。
【0069】
(記録装置、記録方法について)
本発明のインクは、熱エネルギーの作用により液滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録方式にとりわけ好適に用いられるが、他のインクジェット記録方法や一般の筆記用具としても使用できることはいうまでもない。
【0070】
本発明のインクを用いて記録を行うのに好適な記録装置としては、記録ヘッドの室内のインクに記録信号に対応した熱エネルギーを与え、該エネルギーにより液滴を発生させる装置が挙げられる。
【0071】
図1は、本発明に係る吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の液体吐出ヘッドとしての液体吐出ヘッドおよびこのヘッドを用いる液体吐出装置としてのインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。図1においては、インクジェットプリンタは、ケーシング 1008 内に長手方向に沿って設けられる記録媒体としての用紙 1028 を図1に示す矢印Pで示す方向に間欠的に搬送する搬送装置 1030 と、搬送装置 1030 による用紙 1028 の搬送方向Pに略直交する方向Sに略平行に往復運動せしめられる記録部 1010 と、記録部 1010 を往復運動させる駆動手段としての移動駆動部 1006 とを含んで構成されている。
【0072】
搬送装置 1030 は、互いに略平行に対向配置される一対のローラユニット 1022a および 1022b と、一対のローラユニット 1024a および 1024b と、これらの各ローラユニットを駆動させる駆動部 1020 とを備えている。これにより、駆動部 1020 が作動状態とされるとき、用紙 1028 が図1に示す矢印P方向にそれぞれのローラユニット 1022a および 1022b と、ローラユニット 1024a および 1024b により狭持されて間欠送りで搬送されることとなる。
【0073】
移動駆動部 1006 は、所定の間隔をもって対向配置される回転軸に配されるプーリ 1026a および 1026b に巻きかけられるベルト 1016 と、ローラユニット 1022a および 1022b に略平行に配置され記録部 1010 のキャリッジ部材 1010aに連結されるベルト 1016 を順方向および逆方向に駆動させるモータ 1018 とを含んで構成されている。
【0074】
モータ 1018 が作動状態とされてベルト 1016 が図7の矢印R方向に回転したとき、記録部 1010 のキャリッジ部材 1010a は図7の矢印S方向に所定の移動量だけ移動される。また、モータ 1018 が作動状態とされてベルト 1016 が図1の矢印R方向とは逆方向に回転したとき、記録部 1010 のキャリッジ部材 1010aは図1の矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動されることとなる。さらに、移動駆動部 1006 の一端部には、キャリッジ部材 1010a のホームポ ジションとなる位置に、記録部 1010 の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026 が記録部 1010 のインク吐出口配列に対向して設けられている。
【0075】
記録部 1010 は、インクジェットカートリッジ(以下、単にカートリッジと記述する場合がある)1012Y、1012M、1012Cおよび 1012Bが各色、例えばイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックごとにそれぞれ、キャリッジ部材 1010aに対して着脱自在に備えられる。
【0076】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。尚、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0077】
[実施例1]
実施例1に使用する記録インク1および液体組成物1、および比較例1に使用する比較インク1を下記の要領で作製した。
【0078】
(記録インク1の作製)
下記成分を混合し、更にポアサイズが0.2ミクロンのメンブレンフィルターにて加圧濾過し、記録インク1を得た。
C.I.ダイレクトブルー199 3部
トリメチロールプロパン 25部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1.0部
イオン交換水 71部。
【0079】
(液体組成物1の作製)
下記成分を混合し、更にポアサイズが0.2ミクロンのメンブレンフィルターにて加圧濾過し、液体組成物1を得た。
D−ソルビトール 25部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1.0部
イオン交換水 74部。
【0080】
(比較インク1の作製)
記録インク1と同様の方法により下記成分からなる比較インク1を得た。
C.I.ダイレクトブルー199 3部
グリセリン 25部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1.0部
イオン交換水 71部。
【0081】
下記表1に示した記録インクと液体組成物の組み合わせで、実施例1および比較例1の記録を行った。
【0082】
【表1】
ここで使用したインクジェト記録装置としては、図1に示したのと同様の記録装置を用いた。
【0083】
用いた記録ヘッドは、1200dpiの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数10kHzとした。1200dpiのヘッドを使用したときの1ドット当たりの吐出量はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックインク及び液体組成物共に4.5pLのヘッドを使用した。尚、これらの記録条件は、実施例及び比較例を通じて同一である。
【0084】
実施例1および比較例1においてはこの記録ヘッドのうち2ヘッドを用いて液体組成物と記録インクからなるA4フルベタ(20.3×27.1cm)のカラー(シアン)画像を形成した。この際、液体組成物を先打ちして先ず記録紙上に付着させ、その次に記録インクを同パス内で付着させた。評価に用いた記録紙はA4サイズのPPC用紙(キヤノン製)である。また、印字は印字領域を1回の走査で行なう1パス印字を行い、実施例1及び比較例1を通じて、液体組成物の記録媒体への付着領域は、インクの画像形成領域と同一領域であり、印字のデューティは液体組成物、インクのどちらも100%である。
【0085】
[実施例1の評価]
上記条件で印字した印字物のカール量を以下のようにして評価した。
【0086】
印字物を常温/常湿下で1週間放置した後、カール量を測定した。印字物の紙が凹状にカールした場合を+(プラスカール)、凸状にカールした場合を−(マイナスカール)とし、カールした紙の先端から紙の接地面までの距離を定規で測定した。
【0087】
カール判定基準は以下の通りである。
A…20mm未満:全く問題ないレベル
B…20mm以上35mm未満:実用上問題ないレベル
C…35mm以上:実用上問題あり
評価結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
上の表の結果の通り、本発明における記録インク、液体組成物の双方によって打ち込まれるカール低減剤総量と、双方によって打ち込まれる総水分量の比が総水分量/該化合物総量=3.2以下である実施例1はほとんどカールしないのに対し、該比が3.2以上である比較例1はカールが激しかった。
【0089】
[実施例2]
次に実施例2に使用する記録インク2および液体組成物2を実施例1と同じ要領で作製した。
【0090】
(記録インク2の作製)
記録インク1と同様の方法により下記成分からなる記録インク2を得た。
C.I.ダイレクトブルー199 3部
トリメチロールプロパン 12.5部
D−ソルビトール 10部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1.0部
イオン交換水 73.5部。
【0091】
(液体組成物2の作製)
液体組成物1と同様の方法により下記成分からなる液体組成物2を得た。
D−ソルビトール 15部
PEG300 10部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1.0部
イオン交換水 74部
[実施例2の評価]
記録インク2および液体組成物2を用いて、実施例1と同じ要領で印字を行い、得られた印字物のカール量の評価を行なった。評価結果を表3に示す。
【0092】
【表3】
[実施例3〜5]
次に実施例3〜5に使用する記録インクセット3、4、液体組成物3、4、5、および比較例2に使用する比較インクセット2を作製した。尚ここで言う記録インクセットとはイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色からなる記録インクのセットである。
【0093】
(記録インクセット3の作製)
(イエロー記録インク3)
実施例1における記録インク1と同様の方法により、下記成分からなるイエロー記録インク3を得た。
C.I.アシッドイエロー23 2.5部
1,2,6−ヘキサントリオール 5部
マルチトール 10部
PEG200 8部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.5部
イオン交換水 74部。
【0094】
(マゼンタ記録インク3)
実施例1における記録インク1と同様の方法により、下記成分からなるマゼンタ記録インク3を得た。
Projet Fast Magenta2(Zeneca社製) 3部
1,2,6−ヘキサントリオール 5部
マルチトール 10部
PEG300 8部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.5部
イオン交換水 73.5部。
【0095】
(シアン記録インク3)
実施例1における記録インク1と同様の方法により、下記成分からなるシアン記録インク3を得た。
C.I.ダイレクトブルー199 3部
1,2,6−ヘキサントリオール 5部
マルチトール 10部
PEG200 8部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.5部
イオン交換水 73.5部。
【0096】
(ブラック記録インク3)
実施例1における記録インク1と同様の方法により、下記成分からなるブラック記録インク3を得た。
C.I.ダイレクトブラック195 4部
1,2,6−ヘキサントリオール 5部
マルチトール 10部
PEG400 8部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.5部
イオン交換水 72.5部。
【0097】
以上によりイエロー記録インク3、マゼンタ記録インク3、シアン記録インク3およびブラック記録インク3の4色からなる記録インクセット3を得た。
【0098】
(記録インクセット4の作製)
(イエロー記録インク4の作製)
スチレン−アクリル酸共重合体(Joncryl 678、ジョンソンポリマー社製)とこれを中和するのに必要な所定量の水酸化カリウム、及び水を混合して、約60℃に保温した状態でこれらを撹拌混合し、10%のスチレン−アクリル酸共重合体水溶液を作製した。
【0099】
次に下記成分を混合して30分間撹拌後、下記の条件で分散処理を行った。
10%スチレン−アクリル酸共重合体水溶液 30部
ピグメントイエロー74 10部
イオン交換水 60部
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ、1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積比)
・粉砕時間:3時間
更に遠心分離処理(12,000rpm.、20分間)を行い、粗大粒子を除去して分散液とした。
【0100】
上記の顔料分散液を使用し、下記の組成比を有する成分を混合し、顔料を含有するインクを作製し、これをイエロー記録インク4とした。
上記顔料分散液 30.0部
トリメチロールプロパン 10.0部
D−ソルビトール 7.0部
PEG300 5.0部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1.0部
イオン交換水 47.0部
このインクのカール低減剤量は22部、水分量は73.1部である。
【0101】
(マゼンタ記録インク4の作製)
イエロー記録インク4の調製の際に使用したピグメントイエロー74(10部)を、ピグメントレッド122に代えたこと以外はイエロー記録インク4の調製と同様にして、顔料含有マゼンタ記録インク4を調製した。
【0102】
(シアン記録インク4の作製)
イエロー記録インク4の調製の際に使用したピグメントイエロー74(10部)を、ピグメントブルー15:3に代えたこと以外はイエロー記録インク4の調製と同様にして、顔料含有シアン記録インク4を調製した。
【0103】
(ブラック記録インク4の作製)
イエロー記録インク4の調製の際に使用したピグメントイエロー74(10部)を、カーボンブラック(MCF88、三菱化成製)に代えたこと以外はイエロー記録インク4の調製と同様にして、顔料含有ブラック記録インク4を調製した。
【0104】
以上によりイエロー記録インク4、マゼンタ記録インク4、シアン記録インク4およびブラック記録インク4の4色からなる記録インクセット4を得た。
【0105】
(比較インクセット2の作製)
(比較イエロー記録インク2の作製)
実施例1における記録インク1と同様の方法により、下記成分からなる比較イエロー記録インク2を得た。
C.I.アシッドイエロー23 2.5部
グリセリン 7.5部
ジエチレングリコール 7.5部
トリメチロールプロパン 5部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.5部
イオン交換水 74部。
【0106】
(比較マゼンタ記録インク2の作製)
比較イエロー記録インク2におけるC.I.アシッドイエロー23(2.5部)をProjet Fast Magenta2(Zeneca社製)(3部)に変えたこと以外は全く同じ要領で比較マゼンタ記録インク2を得た。
【0107】
(比較シアン記録インク2の作製)
比較イエロー記録インク2におけるC.I.アシッドイエロー23(2.5部)をC.I.ダイレクトブルー199(3部)に変えたこと以外は全く同じ要領で比較シアン記録インク2を得た。
【0108】
(比較ブラック記録インク2の作製)
比較イエロー記録インク2におけるC.I.アシッドイエロー23(2.5部)をC.I.ダイレクトブラック195(4部)に変えたこと以外は全く同じ要領で比較ブラック記録インク2を得た。
【0109】
以上により比較イエロー記録インク2、比較マゼンタ記録インク2、比較シアン記録インク2および比較ブラック記録インク2の4色からなる比較記録インクセット2を得た。
【0110】
液体組成物3、4、5
(液体組成物3の作製)
下記成分を混合溶解し、更に、ポアサイズが1μmのメンブレンフィルターにて加圧ろ過し、液体組成物3を得た。
・硝酸カルシウム 7部
・トリメチロールプロパン 18部
・PEG400 10部
・グルコース 2部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1部
・イオン交換水 62部
この液体組成物のカール低減剤量は30部、水分量は62部である。
【0111】
(液体組成物4の作製)
下記成分を混合溶解し、更に、ポアサイズが1μmのメンブレンフィルターにて加圧ろ過し、液体組成物4を得た。
塩化ベンザルコニウム
(商品名:G−50、三洋化成製) 5部
1,2,6−ヘキサントリオール 10部
ジグリセリンEO付加物
(商品名:SCE450、阪本薬品工業社製) 7部
ガラクトース 12.5部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.4部
イオン交換水 65.1部
この液体組成物のカール低減剤量は29.5部、水分量は65.1部である。
【0112】
(液体組成物5の作製)
下記成分を混合溶解し、更に、ポアサイズが1μmのメンブレンフィルターにて加圧ろ過し、液体組成物5を得た。
ポリビニルアルコール(Mw:6000) 3部
還元澱粉糖化物
(商品名:PO40、東和化成工業社製) 6部
マルチトール 12.5部
トリメチロールプロパン 10部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.4部
イソプロピルアルコール 3部
イオン交換水 65.1部
この液体組成物のカール低減剤量は28.5部、水分量は65.1部である。
【0113】
下記表4に示す記録インクと液体組成物、および液体組成物の記録インクに対する印字のデューティの組み合わせで、実施例3〜7および比較例2、3の記録を行った。
【0114】
【表4】
実施例3〜比較例3で使用したインクジェト記録装置、記録ヘッドは実施例1で使用したものと同じものを用いた。記録ヘッドの5つを用いて、4色からなる記録インクセットと液体組成物を用いて画像形成を行なった。
【0115】
また反応系の液体組成物を用いた実施例についてはカール量の評価の他に、下記のような画像特性の評価を行なった。反応系の液体組成物を用いない実施例7はカール量の評価のみ行なった。カール量の評価方法は実施例1で示したものと同じ要領で行なった。評価に用いた記録紙もA4サイズのPPC用紙(キヤノン製)である。
【0116】
[画像特性評価項目]
(BKカラー間のブリード性)
イエローとブラックのベタ画像を隣接して印字した後、色間境界部のブリードを目視で評価した。印字は印字領域を1回の走査で行なう1パス印字であり、この際、液体組成物を先打ちして先ず記録紙上に付着させ、その次に記録インクを同パス内で付着させた。評価基準は、以下の通りである。
AA ブリーディングを現認できない。
A ブリーディングはほとんど目立たない。
B ブリーディングはしているが、実質上問題のないレベルである。
C 色の境界紙がハッキリしないほどブリーディングしている。
【0117】
(定着性)
液体組成物と、ブラック記録インクとを用いて、ブラックのベタ画像を形成し、下記の方法で評価した。ベタ画像を形成した後、一定の時間経過した段階でベタ画像の上に別の白紙をその自重で重ねて、該白紙の裏側に、記録した画像の転写がなくなり、地汚れが発生しなくなるまでの時間を測定し、その時間を定着性の尺度とした。測定時間は、記録終了時点を時間ゼロとして表した。この時間を用いての評価基準は、以下の通りである。
【0118】
A:定着性が10秒未満であり優れている。
【0119】
B:定着性が10秒以上〜20秒未満であり、実用上問題ない。
【0120】
C:定着性が20秒以上であり、実用上問題が生じる。
【0121】
(画像濃度)
ベタ画像を液体組成物とブラックの記録インクとで形成し、得られた画像を12時間放置した後、その反射濃度を反射濃度計マクベスRD915(マクベス社製)にて測定し、その値で評価した。評価基準は以下の通りである。
AA:反射濃度が1.50以上あり、非常に優れている。
A:反射濃度が1.35以上〜1.50未満であり、優れている。
B:反射濃度が1.25以上〜1.35未満であるが実用上問題ない。
C:反射濃度が1.25未満であり、好ましくない。
以下表5及び表6に評価結果を示す。
【0122】
【表5】
【0123】
【表6】
【0124】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、普通紙へのインクジェット記録方法に関して、特に長期間においてもカールの発生がなく、しかも高速印字においても優れた画像濃度、ブリード性、高速定着性を得ることができるインクジェット記録方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1008 ケーシング
1010 記録部
1010a キャリッジ部材
1012 カートリッジ
1012Y,M,C,B インクジェットカートリッジ
1016 ベルト
1018 モータ
1020 駆動部
1022a,1022b ローラユニット
1024a,1024b ローラユニット
1026 回復ユニット
1026a,1026b プーリ
1028 用紙
1030 搬送装置
インク用)
【発明の属する技術分野】
本発明はインクを吐出させて画像の記録を行うインクジェット記録方法に用いられるインク及び、それを用いた記録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット方式は、種々の作動原理よりインクの微小液滴を飛翔させて被記録媒体(紙など)に付着させ、画像や文字などの記録を行う記録方式であり、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が高い、現像および定着が不要などの特徴があり、様々な用途において急速に普及している。インクジェット記録方法で記録する際の被記録媒体としては普通紙、コート紙、光沢紙、OHPシート、バックプリントフィルムなど様々なものが市販されているが、一般のオフィスでのビジネス用途では低価格の普通紙を用いることが多い。この際の要求特性としては前述した特性を満足しながら、紙が多くのインクを付与された際に生じるカール(紙が反る、丸まる)現象を緩和、抑制することが挙げられる。ここでは記録中のカールはもとより、記録後、水分が乾燥、蒸発して起こる記録後カールの緩和、抑制が重要になってくる。
【0003】
インクジェットで記録した記録物の使用については多様であり、カールした紙は積み重ねたり、ファイリングした際に丸まったり、平坦性を保てないために様々な不具合を生じる。また、OHPの発表用原稿のためし印刷を価格の安い普通紙を用いて行うこともあり、その際に図や写真、更には背景などを青などの2次色で記録すると紙が反ることにより取扱いに困ることが多い。
【0004】
ここでカールが起きる現象は水分の付与が大きく起因している。すなわち、記録面積が広い場合、更には記録の際のインク付与量が大きい際に著しくカールが起きることが分かっている。
【0005】
このカールを緩和、抑制する方法として従来幾つかの方法が提案されている。例えば、特開平4−332775号公報(特許文献1)において、分子構造中に水酸基を4個以上有し、水または水性有機溶媒に溶解な固体物質を含むインクジェット用インクが提案されている。また、特開平6−157955号公報(特許文献2)には糖類などのカール低減剤を含有するインクが提案されている。また、特開平6−240189号公報(特許文献3)、特開平9−165539号公報(特許文献4)には糖類、糖アルコール類を含有したインクが提案されている。また、特開平9−176538号公報(特許文献5)にはカール低減剤として特定のアミド化合物を含有したインクが提案されている。また、特開平10−130550号公報(特許文献6)には特定の多価アルコールとグリセリンを組み合わせて含有したインクが提案されている。また、特開2000−198267号公報(特許文献7)には溶媒、高分子バインダ、媒染剤、水溶性カール低減化合物、水溶性糊抜き化合物、耐光性化合物、消泡剤などを含むインクが提案されている。
【0006】
また、特開平9−207424号公報(特許文献8)には反応液とインクを別々に記録し、それぞれにカールを低減する化合物を含有するインクが提案され、ある種のポリオールを反応液の多価金属の量よりも多く入れている。
【0007】
また、インクジェット記録においては更に高速化が進んでおり、高速印刷する際の吐出安定性や信頼性が重要になり、そのために、インク自身の安定性、浸透性、粘度などの諸物性を得た上でカールを緩和・抑制することが重要になっている。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−332775号公報
【特許文献2】
特開平6−157955号公報
【特許文献3】
特開平6−240189号公報
【特許文献4】
特開平9−165539号公報
【特許文献5】
特開平9−176538号公報
【特許文献6】
特開平10−130550号公報
【特許文献7】
特開2000−198267号公報
【特許文献8】
特開平9−207424号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らの検討によると上記従来技術に記載の方法ではカールをある程度抑制することはできるが、改善の余地があった。また、特にカールの抑制を十分に行うためにカール抑制物質を多量に入れると、吐出性が悪化してしまう場合も多々あった。従って、本発明の目的は、上記した従来技術の問題を解決し、カールを十分に抑制し、特に普通紙の印刷物を扱い易くするものである。また、本発明はインク付与量の多い印字パターンを必要とする場合、更には長期的にカールを抑制することを目的とする。更には、高精細な画像特性、特に、ブリード抑制、定着性、画像濃度の点について良好な特性を得るものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、着色材と水を含む水性記録インクと少なくとも水を含む無色の水性液体組成物とを被記録媒体上に付与するインクジェット記録方法であって、記録インク、液体組成物の双方が少なくとも下記1)および2)から選択される1つ以上の化合物を含有し、且つ、該水性記録インクと該液体組成物とによって被記録媒体へ打ち込まれる下記1)および2)より選択される化合物の総量(該化合物総量)と、該水性記録インクと該液体組成物とによって被記録媒体へ打ち込まれる総水分量の比が、総水分量/該化合物総量=2.0以上3.2以下であることを特徴とするインクジェット記録方法に関する。
1) 化学構造が炭素数が4以上であって、OH基を3つ以上もつ化合物、
2) 化学構造が炭素数が7以上であって、OH基を2つもつ化合物
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、好適な実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明者等は、着色剤を含む水性記録インクと、該記録インクと共に被記録媒体上に付与する色材を含まない水性液体組成物の双方を用いて画像形成を行う際に、特定の化合物をインク中に含有させる記録方法であり、水分との関係について十分に鑑みた結果に基づき、良好な画像特性、安定な印字特性、記録物の取扱い性を考慮した印字ができるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0013】
本発明は下記の1)および2)に示す化合物より選択される1つ以上の化合物(カール低減剤)を添加したインクを用いる。
1) 化学構造が炭素数が4以上であって、OH基を3つ以上もつ化合物
2) 化学構造が炭素数が7以上であって、OH基を2つもつ化合物
これらの物質を記録インクと共に被記録媒体上に付与する色材を含まない水性液体組成物にも含有し、この液体組成物と前記インクとを用いて画像形成を行う。
【0014】
(カール低減剤)
1)、2)の化合物の具体例としては、炭素数が4以上であって、OH基を3つ以上もつ化合物として、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、1,2,6ヘキサントリオール、ジグリセリン、ジグリセリンのEO付加物、糖類、糖アルコール類、オリゴ糖類、環状オリゴ糖類等がある。糖類としては具体的に、D−型およびL−型のフルクトース、タガトース、ソルポース、リボース、キシロース、アラビノース、リキソース、グルコース、マンノース、アロース、アルトロース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、グロース、マルトース、セロビオース、トレハロース、ゲンチオビオース、イソマルトース、ラクトース、ラクトース、スクロース、ショ糖、ラフィノース、ゲンチアノース、スタキオース、キシラン等が挙げられる。
【0015】
糖アルコールとしては、単糖、多糖アルコール類が挙げられ、具体的には、
テトリトール、D−エリトール、L−エリトール、D−アラビニトール、キシリトール、アドニトール、リビトール、D−ソルビトール、アリトール、D−マンニトール、D−イジトール、D−タリトール、ズルシトール、ヘプチトール、マルチトール等が挙げられる。
【0016】
炭素数が7以上であって、OH基を2つもつジオール類としては1,7ヘプタンジオール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、等が挙げられる。
【0017】
これらの化合物がインク及び、水性液体組成物に含有されインクジェット記録方法によってカールの少ない印字物が得られ、更に、印字物を保存後も長期的にカールを抑制できる理由は以下と考えられる。
【0018】
被記録媒体である紙に水分が付与される場合、紙のセルロース繊維間に形成されている水素結合が一度切断される。すなわち、水分の付与により、セルロースの膨潤が生じるとともに化学的な現象が生じている。この時、紙は必ず膨潤しているため、水分を付与した面の反対側に反りカールする、すなわちマイナスカールを起こす。ところが、一度、吸収したセルロース中の水分は次第に蒸発し、セルロースの収縮が始まるとともに、一旦切れた水素結合の再結合が起こる。その際に切れた位置で再結合せず、別の位置で再結合するために紙は水分を付与した面の方向に次第に反りカールする。すなわちプラスカールを起こす。このプラスカールが普通紙などにインクジェット記録をした場合に問題になっている。
【0019】
ここで普通紙とは一般に市販されているコピー用紙、コピー用再生紙、インクジェット用普通紙、カラーインクジェット用普通紙、インクジェット・電子写真共用紙、和紙等が挙げられる。より具体的には紙表面に特別の白色顔料がコートされていないか、コートされていても塗工量が少なく下地の紙(基紙)のパルプ繊維が部分的にでも露出しているものも含む。
【0020】
本発明者はこの水分の付与→膨潤→マイナスカールの現象と蒸発→収縮→プラスカールの現象を十分に解析し、特に紙に付与される水分量とインクに添加する化合物によっていかにしてプラスカールを抑制するかを鋭意検討の結果、上述した特定のカール低減化合物を複数用い、更に、被記録媒体上での上記化合物と水分量の打ち込み量の比を制御することにより、カール低減化合物が効果的に、繊維のセルロース間に入り込み、水素結合の再結合の際に、紙が収縮しやすい結合を引き起こしくいようにしていることを見出した。すなわち、上記複数の化合物を用いて、被記録媒体に打ち込まれる化合物総量と総水分量を本発明のようにコントロールすることにより、水分の蒸発時に紙の伸縮がマイナスカールの方向に作用が働き、これらの化合物を単独で含有する場合よりカール低減効果に優れるものであった。更に、上記したカール低減効果のある化合物を単独で含むインクを用いて優れたカール低減効果を達成しようとするとインクの粘度上昇等による、信頼性が低下するという問題が生じる場合があったが、記録インクと水性媒体とを用いることで、各々のカール低減化合物の含有量を低下させることができるため信頼性が向上し、記録安定性が得られる。特に高速印字における安定性が高くなることを見出した。
【0021】
これは、印字後、数時間や1日程度の短期間に効果を得るものではなく、1週間以上の長期的に効果が得られるところに大きな特徴がある。ここでの、上記化合物と水分の付与量は比の関係により既定でき、被記録媒体上に画像を形成する際に打ち込まれる該化合物総量と、双方によって打ち込まれる総水分量の比は十分なカール低減効果と長期的なカール低減効果を達成するために総水分量/該化合物総量=2.0以上3.2以下であることが好ましい。ここで、上記化合物と水分を付与する際に、着色剤を含む水性記録インクと、該記録インクと共に被記録媒体上に付与する色材を含まない水性液体組成物の双方を用いて画像形成を行うインクジェット記録方法が有効であり、上記化合物と水分の比を効果的にコントロールできる。
【0022】
また、本記録方法においてはフルべた印字して、1200dpi×1200dpi換算で200%の印字密度(デューティ)のような付与する水分量が多い場合でもカールの抑制効果が十分発揮される。また、記録インク及び、色材を含まない水性液体組成物にそれぞれ含まれる水分量としてはそれぞれが100質量%に対して、10〜90%が好適であり、本発明の効果を発揮するためには30〜80%が更に好適である。
【0023】
次に、この時の記録インク及び、色材を含まない水性液体組成物について詳細に述べる。
【0024】
まず、本発明で使用されるインクについて述べる。
【0025】
(着色剤:染料、顔料)
記録するインクの着色材は水性染料、水分散性顔料、またはそれらの組み合わせによって用いられる。色材としてはブラック、シアン、イエロー、マゼンタの他、従来公知のオレンジ、グリーン、ブルーの染料、顔料も問題なく使用できる。
【0026】
水溶性染料については可溶化基としてアニオン性基を有するものを用いる。
【0027】
本発明で使用されるインクには、さらにこれに水、水溶性有機溶媒、及びその他の成分、例えば粘度調整剤、pH調整剤、防かび剤、中性またはアニオン性の界面活性剤、酸化防止剤等が必要に応じて含まれる。
【0028】
(染料)
本発明において、処理液を付与する、色を記録するインクの色はブラック、シアン、マゼンタ、イエローの他、従来公知のオレンジ、グリーン、ブルーが使用可能であり、色材としてはアニオン性の水溶性染料が挙げられる。
【0029】
本発明で使用されるアニオン性基を有する水溶性染料としては、カラーインデックス(COLOUR INDEX)に記載されている水溶性の酸性染料、直接染料、反応性染料であれば特に限定はない。また、カラーインデックスに記載のない染料であっても、アニオン性基、例えばスルホン基を有するものであれば特に制限はない。これらの染料はインク中に1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲で用いる。
【0030】
具体的な染料としては、
C.I.ダイレクトイエロー 8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、98、100、110
C.I.ダイレクトレッド 2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、230
C.I.ダイレクトブルー 1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226
C.I.アシッドイエロー 1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99
C.I.アシッドレッド 6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、94、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289
C.I.アシッドブルー 1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161
C.I.ダイレクトブラック 17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168
C.I.アシッドブラック 2、48、51、52、110、115、156
C.I.リアクティブブラック 1、8、12、13
C.I.フードブラック 1、2
等が挙げられる。勿論以上に限定されるものではない。
【0031】
また、前記以外に本発明に用いる色を記録するインクの色材として可溶化基として、カルボキシル基を持つ染料が挙げられる。ここでは、pHに対して溶解度の依存性を示す染料が挙げられる。これらの染料はインク中に1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲で用いる。
【0032】
(顔料)
次に、本発明において使用される顔料としては、具体的には、黒色のインクに使用されるものとしてカーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックであって、一次粒子径が15〜40nm、BET法による比表面積が50〜300m2/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9等の特性を有するものが好ましく用いられる。この様な特性を有する市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上三菱化成製)、RAVEN 1255(以上コロンビア製)、REGAL 400R、REGAL 330R、REGAL 660R、MOGUL L(以上キャボット製)、Color Black FW1、COLOR Black FW 18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(以上デグッサ製)等があり、いずれも好ましく使用することが出来る。
【0033】
又、イエローインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow74、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 128等が挙げられ、
マゼンタインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red l22等が挙げられ、
シアンインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue15:3、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられるが、これらに限られるものではなく、また、オレンジ、グリーン、ブルーの色調をもつ顔料も使用可能である。又、以上の他、本発明の為に新たに製造された顔料も勿論、使用することが可能である。
【0034】
本発明で使用されるインクの色材として顔料が用いられている場合には、顔料の量は、インク全質量に対して、質量比で1〜20質量%、好ましくは2〜12質量%の範囲で用いる。
【0035】
又、顔料を使用する場合に、顔料をインク中に含有させる分散剤としては、水溶性樹脂であればどの様なものでも使用することが出来るが、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましく、更には、3,000〜15,000の範囲のものが好ましく使用される。この様な分散剤として、具体的には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。或いは、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂も好ましく使用することが出来る。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶であり、アルカリ可溶型樹脂である。尚、これらの顔料分散剤として用いられる水溶性樹脂は、インク全質量に対して0.1〜5質量%の範囲で含有させるのが好ましい。
【0036】
特に、上記した様な顔料が含有されているインクの場合には、インク全体が中性又はアルカリ性に調整されていることが好ましい。この様なものとすれば、顔料分散剤として使用される水溶性樹脂の溶解性を向上させ、長期保存性に一層優れたインクとすることが出来るので好ましい。但し、この場合、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、好ましくは、7〜10のpH範囲とするのが望ましい。
【0037】
この際に使用されるpH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等が挙げられる。上記した様な顔料及び分散剤である水溶性樹脂は、水性液媒体中に分散又は溶解される。
【0038】
上記した様な顔料が含有されたインクの作成方法としては、始めに、分散剤としての水溶性樹脂及び水が少なくとも含有された水性媒体に顔料を添加し、撹拌した後、後述の分散手段を用いて分散を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の分散液を得る。次に、この分散液にサイズ剤、及び、上記で挙げた様な適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌して本発明で使用するインクとする。
【0039】
尚、分散剤として前記した様なアルカリ可溶型樹脂を使用する場合には、樹脂を溶解させる為に塩基を添加することが必要であるが、この際の塩基類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機アミン、或いは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が好ましく使用される。
【0040】
又、顔料が含有されているインクの作成方法においては、顔料を含む水性媒体を撹拌し分散処理する前に、プレミキシングを30分間以上行うのが効果的である。即ち、この様なプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することが出来る為、好ましい。
【0041】
上記した顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル及びサンドミル等が挙げられる。その中でも、高速型のサンドミルが好ましく使用され、この様なものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0042】
又、顔料が含有されているインクをインクジェット記録方法に使用する場合には、耐目詰り性等の要請から、最適な粒度分布を有する顔料が用いられるが、所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、処理時間を長くすること、吐出速度を遅くすること、粉砕後フィルターや遠心分離機等で分級すること及びこれらの手法の組合せ等の手法が挙げられる。
【0043】
(アニオン性添加剤)
本発明において、顔料を含有するインクを使用する場合には、インク中に上記で説明した各種成分の他に、アニオン性の界面活性剤或いはアニオン性の高分子物質等、アニオン性化合物を添加するのが好ましい。特に、分散剤としてアニオン性化合物が用いられていない場合には、この様なアニオン性物質を添加することが必須である。この際の添加量としては、0.05〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%とする。
【0044】
又、両性界面活性剤をその等電点以下のpHに調整して含有させるのも好ましい態様である。この際に使用されるアニオン性界面活性剤の例としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル型、スルホン酸塩型、燐酸エステル型等、一般に使用されているものをいずれも好ましく使用することが出来る。又、アニオン性高分子の例としては、アルカリ可溶型の樹脂、具体的には、ポリアクリル酸ソーダ、或いは高分子の一部にアクリル酸を共重合したもの等を挙げることが出来るが、勿論、これらに限定されない。
【0045】
(インクの液媒体)
本発明で使用されるインクにおいて好適な水性液媒体は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
【0046】
本発明においては着色材と特定のカール低減剤、すなわち、
1)化学構造が炭素数が4以上であって、OH基を3つ以上もつ化合物、および2)化学構造が炭素数が7以上であって、OH基を2つもつ化合物
から選ばれる少なくとも1化合物を必須とし、それ以外に水と混合して使用できる水溶性有機溶剤を適宜配合して用いてもよい。
【0047】
水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0048】
上記した様な水溶性有機溶剤のインク中における含有量は、一般的にはインク全質量の0.5〜20質量%の範囲とし、好ましくは1〜10質量%の範囲とする。又、使用される水の含有量としては、インク全質量の10〜90質量%、好ましくは30〜80質量%の範囲とする。
【0049】
又、本発明で使用されるインクは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとする為に、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を適宜に添加することが出来る。
【0050】
また、上述した水溶性染料と水分散性顔料を微妙な調色の目的や色濃度の調整などのために組み合わせることも可能である。このとき、水性染料と水分散性顔料は目的に応じて10:1〜1:10の範囲で配合可能である。
【0051】
本発明における記録インクの物性として好適な範囲は25℃付近で、pHは3〜12、好ましくは7〜10、表面張力は10〜60mN/m(10〜60dyn/cm)、好ましくは10〜40mN/m(10〜40dyn/cm)であり、粘度は1〜30mPa・s、好ましくは1〜5mPa・sである。
【0052】
(液体組成物)
次に、本発明に使用する色材を含まない水性液体組成物について説明をする。液体組成物は本発明における化合物(カール低減剤)を必須成分とするが、必要により下記の2つの成分の何れかを更に含有する。
【0053】
記録インクと反応性を有する化合物
水溶性ポリマー
勿論1)の物質が2)の特性を兼ね備えても良い。
【0054】
以下1)に使用する化合物について説明する。
1)に使用される化合物は
a)カチオン性有機化合物
b)多価金属塩
のいずれかである。
【0055】
a)について説明する。
本発明に使用するカチオン性有機化合物としては、例えば、少なくともカチオン性基をもつ高分子化合物、オリゴマー類や界面活性剤等の低分子カチオン性化合物が挙げられる。
【0056】
カチオン性の高分子物質としては、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミンスルホン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、キトサン酢酸塩等を挙げることができるが、勿論これらに限定されるわけではないし、また、塩酸塩型、酢酸塩型の化合物に限定されるわけでもない。また、上記に挙げたものの他、下記に挙げるようなノニオン性高分子物質の一部をカチオン化した化合物を用いることもできる。具体的には、ビニルピロリドンとアミノアルキルアルキレート4級塩との共重合体、アクリルアマイドとアミノメチルアクリルアマイド4級塩との共重合体等を挙げることができる。勿論これらの化合物に限定されないことは言うまでもない。更に、上記に列挙したような高分子物質及びカチオン性の高分子物質は、水溶性のものであれば申し分ないが、ラテックスやエマルジョンの様な分散体であってもかまわない。
【0057】
次に、本発明において用いることのできる低分子カチオン性化合物の具体例を以下に列挙する。しかし、本発明においては、必ずしも下記に例示した低分子カチオン性化合物に限定されないことは言うまでもない。
【0058】
低分子カチオン性化合物としては、先ず、1級或いは2級或いは3級アミン塩型の低分子カチオン性化合物を用いることができる。具体的には、ラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等を挙げられる。また、第4級アンモニウム塩型の低分子カチオン性化合物を用いることができる。具体的には、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム等を挙げられる。また、ピリジニウム塩型の低分子カチオン性化合物を用いることができる。具体的には、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド等を挙げられる。イミダゾリン型の低分子カチオン性化合物を用いることができるが、具体的には、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン等が挙げられる。また、高級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物等の低分子カチオン性化合物を用いることができるが、具体的には、ジヒドロキシエチルステアリルアミン等が挙げられる。
【0059】
更に、本発明では、低分子カチオン性化合物として、あるpH領域においてカチオン性を有する両性界面活性剤を使用することもできる。このようなものとしては、アミノ酸型両性界面活性剤、R−NH−CH2−CH2−COOH型の化合物、ベタイン型の化合物等が挙げられるが、より具体的には、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等のカルボン酸塩型両性界面活性剤の他、硫酸エステル型、スルホン酸型、燐酸エステル型等の両性界面活性剤等を使用することができる。勿論、これらの両性界面活性剤を使用する場合には、それらの等電点以下のpHになるようにプリント性向上液のpHを調整するか、記録媒体上で記録インクと混合した場合に、混合液がそれらの等電点以下のpHになるように調整するか、何れかの方法をとる必要がある。
【0060】
b)について説明する。
【0061】
b)については、下記のような多価金属塩類を挙げることができる。代表的な好ましい材料としては、次に列挙するような2価および3価の金属陽イオンを含有する塩溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。即ち、2価の金属陽イオンとしては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、及びBa2+等、3価の金属陽イオンとしては、Al3+、Y3+、Fe3+等を挙げることができる。また、これらの陽イオンと結合する好ましい陰イオンとしては、硝酸イオンや酢酸イオン等が挙げられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。
【0062】
次に2)水溶性ポリマーについて説明する。
【0063】
液体組成物は、アニオン性、カチオン性もしくはノニオン性の水溶性ポリマー(水溶性樹脂)の何れかを含有してもよい。カチオン性樹脂を用いた場合には前記1)の特性も兼ね備えるのでより好ましい。
【0064】
具体例を挙げれば、ノニオン性水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質、グアーガム、キサンタンガム、デンプン等が挙げられる。
【0065】
カチオン性水溶性樹脂としてはポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアミンスルホン、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミン、キトサン等の塩酸塩、硫酸塩及び酢酸塩等、また別の具体例としては、ノニオン性高分子物質の一部をカチオン化した化合物でもよい。具体的には、ビニルピロリドンとアミノアルキルアルキレート4級塩との共重合体、アクリルアマイドとアミノメチルアクリルアマイド4級塩との共重合体、カチオン化デンプン等を挙げることができる。
【0066】
アニオン性水溶性樹脂の具体例を挙げれば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アルギン酸、ポリアクリル酸或いはこれらの塩、および誘導体、等を挙げることができるが、もちろんこれらの化合物に限定されないことは言うまでもない。
【0067】
さらに本発明における液体組成物は上述した化合物の他に、本発明におけるカール低減剤に該当しない水溶性有機化合物、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤等を適宜含有してもよい。
【0068】
本発明で述べる液体組成物は、色材を含まず、無色または記録インクと共に付与し形成される画像の色調に変化を与えない範囲の色調を有するものである。この液体組成物の物性として好適な範囲は25℃付近で、pHは3〜12、好ましくは4〜8、表面張力は10〜60mN/m(10〜60dyn/cm)、好ましくは10〜40mN/m(10〜40dyn/cm)であり、粘度は1〜30mPa・s、好ましくは1〜5mPa・sである。
【0069】
(記録装置、記録方法について)
本発明のインクは、熱エネルギーの作用により液滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録方式にとりわけ好適に用いられるが、他のインクジェット記録方法や一般の筆記用具としても使用できることはいうまでもない。
【0070】
本発明のインクを用いて記録を行うのに好適な記録装置としては、記録ヘッドの室内のインクに記録信号に対応した熱エネルギーを与え、該エネルギーにより液滴を発生させる装置が挙げられる。
【0071】
図1は、本発明に係る吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の液体吐出ヘッドとしての液体吐出ヘッドおよびこのヘッドを用いる液体吐出装置としてのインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。図1においては、インクジェットプリンタは、ケーシング 1008 内に長手方向に沿って設けられる記録媒体としての用紙 1028 を図1に示す矢印Pで示す方向に間欠的に搬送する搬送装置 1030 と、搬送装置 1030 による用紙 1028 の搬送方向Pに略直交する方向Sに略平行に往復運動せしめられる記録部 1010 と、記録部 1010 を往復運動させる駆動手段としての移動駆動部 1006 とを含んで構成されている。
【0072】
搬送装置 1030 は、互いに略平行に対向配置される一対のローラユニット 1022a および 1022b と、一対のローラユニット 1024a および 1024b と、これらの各ローラユニットを駆動させる駆動部 1020 とを備えている。これにより、駆動部 1020 が作動状態とされるとき、用紙 1028 が図1に示す矢印P方向にそれぞれのローラユニット 1022a および 1022b と、ローラユニット 1024a および 1024b により狭持されて間欠送りで搬送されることとなる。
【0073】
移動駆動部 1006 は、所定の間隔をもって対向配置される回転軸に配されるプーリ 1026a および 1026b に巻きかけられるベルト 1016 と、ローラユニット 1022a および 1022b に略平行に配置され記録部 1010 のキャリッジ部材 1010aに連結されるベルト 1016 を順方向および逆方向に駆動させるモータ 1018 とを含んで構成されている。
【0074】
モータ 1018 が作動状態とされてベルト 1016 が図7の矢印R方向に回転したとき、記録部 1010 のキャリッジ部材 1010a は図7の矢印S方向に所定の移動量だけ移動される。また、モータ 1018 が作動状態とされてベルト 1016 が図1の矢印R方向とは逆方向に回転したとき、記録部 1010 のキャリッジ部材 1010aは図1の矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動されることとなる。さらに、移動駆動部 1006 の一端部には、キャリッジ部材 1010a のホームポ ジションとなる位置に、記録部 1010 の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026 が記録部 1010 のインク吐出口配列に対向して設けられている。
【0075】
記録部 1010 は、インクジェットカートリッジ(以下、単にカートリッジと記述する場合がある)1012Y、1012M、1012Cおよび 1012Bが各色、例えばイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックごとにそれぞれ、キャリッジ部材 1010aに対して着脱自在に備えられる。
【0076】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。尚、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0077】
[実施例1]
実施例1に使用する記録インク1および液体組成物1、および比較例1に使用する比較インク1を下記の要領で作製した。
【0078】
(記録インク1の作製)
下記成分を混合し、更にポアサイズが0.2ミクロンのメンブレンフィルターにて加圧濾過し、記録インク1を得た。
C.I.ダイレクトブルー199 3部
トリメチロールプロパン 25部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1.0部
イオン交換水 71部。
【0079】
(液体組成物1の作製)
下記成分を混合し、更にポアサイズが0.2ミクロンのメンブレンフィルターにて加圧濾過し、液体組成物1を得た。
D−ソルビトール 25部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1.0部
イオン交換水 74部。
【0080】
(比較インク1の作製)
記録インク1と同様の方法により下記成分からなる比較インク1を得た。
C.I.ダイレクトブルー199 3部
グリセリン 25部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1.0部
イオン交換水 71部。
【0081】
下記表1に示した記録インクと液体組成物の組み合わせで、実施例1および比較例1の記録を行った。
【0082】
【表1】
ここで使用したインクジェト記録装置としては、図1に示したのと同様の記録装置を用いた。
【0083】
用いた記録ヘッドは、1200dpiの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数10kHzとした。1200dpiのヘッドを使用したときの1ドット当たりの吐出量はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックインク及び液体組成物共に4.5pLのヘッドを使用した。尚、これらの記録条件は、実施例及び比較例を通じて同一である。
【0084】
実施例1および比較例1においてはこの記録ヘッドのうち2ヘッドを用いて液体組成物と記録インクからなるA4フルベタ(20.3×27.1cm)のカラー(シアン)画像を形成した。この際、液体組成物を先打ちして先ず記録紙上に付着させ、その次に記録インクを同パス内で付着させた。評価に用いた記録紙はA4サイズのPPC用紙(キヤノン製)である。また、印字は印字領域を1回の走査で行なう1パス印字を行い、実施例1及び比較例1を通じて、液体組成物の記録媒体への付着領域は、インクの画像形成領域と同一領域であり、印字のデューティは液体組成物、インクのどちらも100%である。
【0085】
[実施例1の評価]
上記条件で印字した印字物のカール量を以下のようにして評価した。
【0086】
印字物を常温/常湿下で1週間放置した後、カール量を測定した。印字物の紙が凹状にカールした場合を+(プラスカール)、凸状にカールした場合を−(マイナスカール)とし、カールした紙の先端から紙の接地面までの距離を定規で測定した。
【0087】
カール判定基準は以下の通りである。
A…20mm未満:全く問題ないレベル
B…20mm以上35mm未満:実用上問題ないレベル
C…35mm以上:実用上問題あり
評価結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
上の表の結果の通り、本発明における記録インク、液体組成物の双方によって打ち込まれるカール低減剤総量と、双方によって打ち込まれる総水分量の比が総水分量/該化合物総量=3.2以下である実施例1はほとんどカールしないのに対し、該比が3.2以上である比較例1はカールが激しかった。
【0089】
[実施例2]
次に実施例2に使用する記録インク2および液体組成物2を実施例1と同じ要領で作製した。
【0090】
(記録インク2の作製)
記録インク1と同様の方法により下記成分からなる記録インク2を得た。
C.I.ダイレクトブルー199 3部
トリメチロールプロパン 12.5部
D−ソルビトール 10部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1.0部
イオン交換水 73.5部。
【0091】
(液体組成物2の作製)
液体組成物1と同様の方法により下記成分からなる液体組成物2を得た。
D−ソルビトール 15部
PEG300 10部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1.0部
イオン交換水 74部
[実施例2の評価]
記録インク2および液体組成物2を用いて、実施例1と同じ要領で印字を行い、得られた印字物のカール量の評価を行なった。評価結果を表3に示す。
【0092】
【表3】
[実施例3〜5]
次に実施例3〜5に使用する記録インクセット3、4、液体組成物3、4、5、および比較例2に使用する比較インクセット2を作製した。尚ここで言う記録インクセットとはイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色からなる記録インクのセットである。
【0093】
(記録インクセット3の作製)
(イエロー記録インク3)
実施例1における記録インク1と同様の方法により、下記成分からなるイエロー記録インク3を得た。
C.I.アシッドイエロー23 2.5部
1,2,6−ヘキサントリオール 5部
マルチトール 10部
PEG200 8部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.5部
イオン交換水 74部。
【0094】
(マゼンタ記録インク3)
実施例1における記録インク1と同様の方法により、下記成分からなるマゼンタ記録インク3を得た。
Projet Fast Magenta2(Zeneca社製) 3部
1,2,6−ヘキサントリオール 5部
マルチトール 10部
PEG300 8部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.5部
イオン交換水 73.5部。
【0095】
(シアン記録インク3)
実施例1における記録インク1と同様の方法により、下記成分からなるシアン記録インク3を得た。
C.I.ダイレクトブルー199 3部
1,2,6−ヘキサントリオール 5部
マルチトール 10部
PEG200 8部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.5部
イオン交換水 73.5部。
【0096】
(ブラック記録インク3)
実施例1における記録インク1と同様の方法により、下記成分からなるブラック記録インク3を得た。
C.I.ダイレクトブラック195 4部
1,2,6−ヘキサントリオール 5部
マルチトール 10部
PEG400 8部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.5部
イオン交換水 72.5部。
【0097】
以上によりイエロー記録インク3、マゼンタ記録インク3、シアン記録インク3およびブラック記録インク3の4色からなる記録インクセット3を得た。
【0098】
(記録インクセット4の作製)
(イエロー記録インク4の作製)
スチレン−アクリル酸共重合体(Joncryl 678、ジョンソンポリマー社製)とこれを中和するのに必要な所定量の水酸化カリウム、及び水を混合して、約60℃に保温した状態でこれらを撹拌混合し、10%のスチレン−アクリル酸共重合体水溶液を作製した。
【0099】
次に下記成分を混合して30分間撹拌後、下記の条件で分散処理を行った。
10%スチレン−アクリル酸共重合体水溶液 30部
ピグメントイエロー74 10部
イオン交換水 60部
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ、1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積比)
・粉砕時間:3時間
更に遠心分離処理(12,000rpm.、20分間)を行い、粗大粒子を除去して分散液とした。
【0100】
上記の顔料分散液を使用し、下記の組成比を有する成分を混合し、顔料を含有するインクを作製し、これをイエロー記録インク4とした。
上記顔料分散液 30.0部
トリメチロールプロパン 10.0部
D−ソルビトール 7.0部
PEG300 5.0部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1.0部
イオン交換水 47.0部
このインクのカール低減剤量は22部、水分量は73.1部である。
【0101】
(マゼンタ記録インク4の作製)
イエロー記録インク4の調製の際に使用したピグメントイエロー74(10部)を、ピグメントレッド122に代えたこと以外はイエロー記録インク4の調製と同様にして、顔料含有マゼンタ記録インク4を調製した。
【0102】
(シアン記録インク4の作製)
イエロー記録インク4の調製の際に使用したピグメントイエロー74(10部)を、ピグメントブルー15:3に代えたこと以外はイエロー記録インク4の調製と同様にして、顔料含有シアン記録インク4を調製した。
【0103】
(ブラック記録インク4の作製)
イエロー記録インク4の調製の際に使用したピグメントイエロー74(10部)を、カーボンブラック(MCF88、三菱化成製)に代えたこと以外はイエロー記録インク4の調製と同様にして、顔料含有ブラック記録インク4を調製した。
【0104】
以上によりイエロー記録インク4、マゼンタ記録インク4、シアン記録インク4およびブラック記録インク4の4色からなる記録インクセット4を得た。
【0105】
(比較インクセット2の作製)
(比較イエロー記録インク2の作製)
実施例1における記録インク1と同様の方法により、下記成分からなる比較イエロー記録インク2を得た。
C.I.アシッドイエロー23 2.5部
グリセリン 7.5部
ジエチレングリコール 7.5部
トリメチロールプロパン 5部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.5部
イオン交換水 74部。
【0106】
(比較マゼンタ記録インク2の作製)
比較イエロー記録インク2におけるC.I.アシッドイエロー23(2.5部)をProjet Fast Magenta2(Zeneca社製)(3部)に変えたこと以外は全く同じ要領で比較マゼンタ記録インク2を得た。
【0107】
(比較シアン記録インク2の作製)
比較イエロー記録インク2におけるC.I.アシッドイエロー23(2.5部)をC.I.ダイレクトブルー199(3部)に変えたこと以外は全く同じ要領で比較シアン記録インク2を得た。
【0108】
(比較ブラック記録インク2の作製)
比較イエロー記録インク2におけるC.I.アシッドイエロー23(2.5部)をC.I.ダイレクトブラック195(4部)に変えたこと以外は全く同じ要領で比較ブラック記録インク2を得た。
【0109】
以上により比較イエロー記録インク2、比較マゼンタ記録インク2、比較シアン記録インク2および比較ブラック記録インク2の4色からなる比較記録インクセット2を得た。
【0110】
液体組成物3、4、5
(液体組成物3の作製)
下記成分を混合溶解し、更に、ポアサイズが1μmのメンブレンフィルターにて加圧ろ過し、液体組成物3を得た。
・硝酸カルシウム 7部
・トリメチロールプロパン 18部
・PEG400 10部
・グルコース 2部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1部
・イオン交換水 62部
この液体組成物のカール低減剤量は30部、水分量は62部である。
【0111】
(液体組成物4の作製)
下記成分を混合溶解し、更に、ポアサイズが1μmのメンブレンフィルターにて加圧ろ過し、液体組成物4を得た。
塩化ベンザルコニウム
(商品名:G−50、三洋化成製) 5部
1,2,6−ヘキサントリオール 10部
ジグリセリンEO付加物
(商品名:SCE450、阪本薬品工業社製) 7部
ガラクトース 12.5部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.4部
イオン交換水 65.1部
この液体組成物のカール低減剤量は29.5部、水分量は65.1部である。
【0112】
(液体組成物5の作製)
下記成分を混合溶解し、更に、ポアサイズが1μmのメンブレンフィルターにて加圧ろ過し、液体組成物5を得た。
ポリビニルアルコール(Mw:6000) 3部
還元澱粉糖化物
(商品名:PO40、東和化成工業社製) 6部
マルチトール 12.5部
トリメチロールプロパン 10部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.4部
イソプロピルアルコール 3部
イオン交換水 65.1部
この液体組成物のカール低減剤量は28.5部、水分量は65.1部である。
【0113】
下記表4に示す記録インクと液体組成物、および液体組成物の記録インクに対する印字のデューティの組み合わせで、実施例3〜7および比較例2、3の記録を行った。
【0114】
【表4】
実施例3〜比較例3で使用したインクジェト記録装置、記録ヘッドは実施例1で使用したものと同じものを用いた。記録ヘッドの5つを用いて、4色からなる記録インクセットと液体組成物を用いて画像形成を行なった。
【0115】
また反応系の液体組成物を用いた実施例についてはカール量の評価の他に、下記のような画像特性の評価を行なった。反応系の液体組成物を用いない実施例7はカール量の評価のみ行なった。カール量の評価方法は実施例1で示したものと同じ要領で行なった。評価に用いた記録紙もA4サイズのPPC用紙(キヤノン製)である。
【0116】
[画像特性評価項目]
(BKカラー間のブリード性)
イエローとブラックのベタ画像を隣接して印字した後、色間境界部のブリードを目視で評価した。印字は印字領域を1回の走査で行なう1パス印字であり、この際、液体組成物を先打ちして先ず記録紙上に付着させ、その次に記録インクを同パス内で付着させた。評価基準は、以下の通りである。
AA ブリーディングを現認できない。
A ブリーディングはほとんど目立たない。
B ブリーディングはしているが、実質上問題のないレベルである。
C 色の境界紙がハッキリしないほどブリーディングしている。
【0117】
(定着性)
液体組成物と、ブラック記録インクとを用いて、ブラックのベタ画像を形成し、下記の方法で評価した。ベタ画像を形成した後、一定の時間経過した段階でベタ画像の上に別の白紙をその自重で重ねて、該白紙の裏側に、記録した画像の転写がなくなり、地汚れが発生しなくなるまでの時間を測定し、その時間を定着性の尺度とした。測定時間は、記録終了時点を時間ゼロとして表した。この時間を用いての評価基準は、以下の通りである。
【0118】
A:定着性が10秒未満であり優れている。
【0119】
B:定着性が10秒以上〜20秒未満であり、実用上問題ない。
【0120】
C:定着性が20秒以上であり、実用上問題が生じる。
【0121】
(画像濃度)
ベタ画像を液体組成物とブラックの記録インクとで形成し、得られた画像を12時間放置した後、その反射濃度を反射濃度計マクベスRD915(マクベス社製)にて測定し、その値で評価した。評価基準は以下の通りである。
AA:反射濃度が1.50以上あり、非常に優れている。
A:反射濃度が1.35以上〜1.50未満であり、優れている。
B:反射濃度が1.25以上〜1.35未満であるが実用上問題ない。
C:反射濃度が1.25未満であり、好ましくない。
以下表5及び表6に評価結果を示す。
【0122】
【表5】
【0123】
【表6】
【0124】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、普通紙へのインクジェット記録方法に関して、特に長期間においてもカールの発生がなく、しかも高速印字においても優れた画像濃度、ブリード性、高速定着性を得ることができるインクジェット記録方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1008 ケーシング
1010 記録部
1010a キャリッジ部材
1012 カートリッジ
1012Y,M,C,B インクジェットカートリッジ
1016 ベルト
1018 モータ
1020 駆動部
1022a,1022b ローラユニット
1024a,1024b ローラユニット
1026 回復ユニット
1026a,1026b プーリ
1028 用紙
1030 搬送装置
インク用)
Claims (1)
- 着色材と水を含む水性記録インクと少なくとも水を含む無色の水性液体組成物とを被記録媒体上に付与するインクジェット記録方法であって、記録インク、液体組成物の双方が少なくとも下記1)および2)から選択される1つ以上の化合物を含有し、且つ、該水性記録インクと該液体組成物とによって被記録媒体へ打ち込まれる下記1)および2)より選択される化合物の総量(該化合物総量)と、該水性記録インクと該液体組成物とによって被記録媒体へ打ち込まれる総水分量の比が、総水分量/該化合物総量=2.0以上3.2以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。
1) 化学構造が炭素数が4以上であって、OH基を3つ以上もつ化合物、
2) 化学構造が炭素数が7以上であって、OH基を2つもつ化合物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002380716A JP2004209759A (ja) | 2002-12-27 | 2002-12-27 | インクジェット記録方法 |
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---|---|---|---|
JP2002380716A JP2004209759A (ja) | 2002-12-27 | 2002-12-27 | インクジェット記録方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
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