JP2004204114A - インクジェット用インク組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機EL素子の正孔注入層や発光層を形成する際に、従来のインクジェット法においては、ノズルが詰まりやすい欠点、および塗液の濡れ性が不十分であることに基づく欠点を解消することを課題とする。
【解決手段】インクジェット用インクの溶媒、分散媒として、(A)表面張力が15mN/m〜40mN/mのアルコール類、(B)沸点が150℃〜300℃のアルコール類、および(C)水を、(C);100部に対し、(A);10部〜100部、(B);10部〜100部の割合で配合したものを用いて課題を解決することができた。
【解決手段】インクジェット用インクの溶媒、分散媒として、(A)表面張力が15mN/m〜40mN/mのアルコール類、(B)沸点が150℃〜300℃のアルコール類、および(C)水を、(C);100部に対し、(A);10部〜100部、(B);10部〜100部の割合で配合したものを用いて課題を解決することができた。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL素子を構成する上で重要な、正孔注入層もしくは発光層等を、インクジェット法で形成するのに適したインク組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、低電圧駆動、自己発光型であることに加え、動画の表示に必要な高い応答速度を備えており、携帯型のみならず、大型のディスプレイ用としても、用途が広まりつつある。
【0003】
一般的な有機EL素子は、ガラス基板上に、ITOの透明電極(第1電極)、正孔注入層、発光層、および金属電極(第2電極)、さらには保護層が順に積層された積層構造を有しており、任意のパターンの表示を行なわせるために、両電極をパターン化するのに加え、発光層のパターン化、もしくは正孔注入層および発光層の両方の層のパターン化を行なっている。
【0004】
正孔注入層および発光層のパターン化の方法としては、それらの層を基板上の透明電極上に一面に形成した上に、フォトレジスト層を重ねて形成し、パターン状露光および現像を行なってレジストパターンを形成し、そのレジストパターンを利用してエッチングするフォトリソグラフィー法がある。(例えば、特許文献1参照。)。
また、基板上に画素を隔てるための隔壁を設け、隔壁間に正孔注入層および発光層をいずれもインクジェット方式で塗布することにより形成するインクジェット法もある。(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−170673号公報(請求項7、実施例1)
【特許文献2】
特開2000−323276号公報(請求項1および2、図4)
【0006】
フォトリソグラフィー法によると、正孔注入層もしくは発光層のパターン化を精度よく行なえるものの、フォトレジスト層の形成からエッチングに至る種々の工程を要し、フォトレジスト層の形成や取扱いの際に、下層の正孔注入層もしくは発光層に溶剤、熱、もしくは紫外線等の悪影響が及ぶ懸念がある。
【0007】
他方、インクジェット法によると、正孔注入層もしくは発光層のパターン化が短時間で行なえ、製造効率が優れているが、正孔注入層もしくは発光層を形成するための塗液として、従来、フォトリソグラフィー法で使用していた、スピンコーティング用の水溶液タイプもしくは水分散液タイプの塗液を流用すると、インクジェットのノズルが詰まりやすく、連続的に正孔注入層もしくは発光層のパターン化を行なうには支障がある上、適用された面における塗液の塗れ性が不十分なため、決められた区域に塗液が均一に広がらなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明においては、従来のインクジェット法における、インクジェットのノズルが詰まりやすい欠点および塗液の濡れ性が不十分であることに基づく欠点を解消することを課題とする。
【0009】
【課題を解決する手段】
発明者等の検討により、従来の正孔注入層形成用もしくは発光層形成用に用いられていたスピンコーティング用の水溶液タイプもしくは水分散液タイプの塗液における溶媒もしくは分散媒の水の一部を、表面張力の低いアルコール類と、高沸点のアルコール類とによって置き換えることにより、上記の課題が解消することが判明し、本発明に到達することができた。
【0010】
第1の発明は、発光材料もしくは正孔注入材料からなる機能材料が、溶媒もしくは分散媒中に溶解もしくは分散されており、前記溶媒もしくは分散媒は、(A)表面張力が15mN/m〜40mN/mであるアルコール類、(B)沸点が150℃〜300℃であるアルコール類、および(C)水からなり、前記(A)、(B)、および(C)の質量基準の配合割合が、(C)が100部である場合に、(A)が10部〜100部、および(B)が10〜100部であることを特徴とするインクジェット用インク組成物に関するものである。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、インクジェット用インク組成物における前記機能材料は、前記機能材料、並びに前記溶媒および前記分散媒の質量和中、0.1%〜20%を占めることを特徴とするインクジェット用インク組成物に関するものである。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記(A)のアルコール類が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、もしくはn−ブタノールであり、前記(B)のアルコール類が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、もしくはジプロピレングリコールであることを特徴とするインクジェット用インク組成物に関するものである。
【0013】
第4の発明は、第1〜第3いずれかの発明において、前記正孔材料が、ポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホネートの混合物であることを特徴とするインクジェット用インク組成物に関するものである。
【0014】
本発明のインクジェット用インク組成物は、基本的に、発光材料、もしくは正孔注入材料からなる機能材料と、溶媒もしくは分散媒とからなっており、後者の溶媒もしくは分散媒は、(A)低表面張力のアルコール類、(B)高沸点のアルコール類、および(C)水とからなるものである。
【0015】
発光材料としては、例えば、色素系、金属錯体系、もしくは高分子系の有機蛍光体を用いることができる。
【0016】
色素系のものとしては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、もしくはピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0017】
金属錯体系のものとしては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、もしくはキノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。
【0018】
高分子系のものとしては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、もしくはポリビニルカルバゾール誘導体、または前記の色素系のもの、もしくは金属錯体系のものを高分子化したもの等を挙げることができる。
【0019】
上記した発光材料には、発光効率の向上、もしくは発光波長を変化させる目的でドーピングを行うことができる。このドーピング材料としては例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィレン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等を挙げることができる。
【0020】
正孔注入材料としては、ポリアニリン誘導体、アルキル置換ポリチオフェン、アリル置換ポリチオフェン、もしくはその他の置換基が導入されたポリチオフェン誘導体、トリフェニルアミン等のアリルアミン、無機酸化物のゾルゲル膜、トリフルオロメタン等の有機物の重合膜、ルイス酸を含む有機化合物膜等を挙げることができる。ポリチオフェン誘導体としてはポリ(3、4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(略称;PEDOT/PSS、バイエル社製、商品名;Baytron P、水分散液として市販。)等も使用できる。
【0021】
上記のポリチオフェン誘導体のうち、略称がPEDOT/PSSである化合物は、正孔注入材料としての機能が優れており、400nm〜800nmの可視光の波長範囲で透明で、熱的な耐久性があり、水等の極性溶媒に対する分散性が優れている点で特に好ましい。ただ、市販のPEDOT/PSSは、1.3%程度の配合割合の水分散液であり、粘度が70mN/mと高く、スピンコーティングには適するものの、インクジェット法で適用する際には、ノズルの詰まりや適用面における濡れ性の点では好ましくない。本発明においては、溶媒もしくは分散媒として、低表面張力のアルコール類、および高沸点のアルコール類を水と併用して用い、しかも、正孔注入材料の配合割合をも規定することにより、優れた正孔注入層を与えることが可能になインクジェット用インク組成物とすることができる。
【0022】
低表面張力のアルコール類としては、表面張力が15mN/m〜40mN/mの範囲であるものが好ましく、表面張力が上限を超えるアルコール類を使用すると、得られるインクジェット用インク組成物を用いた吐出が安定に行なえない。具体的には、メタノール(表面張力;22.5、以降の( )内の数値も同様。単位;mN/m。)、エタノール(22)、プロピルアルコール(21)、ブチルアルコール(25)、エチレングリコール(48.4)、もしくはジプロピレングリコール(32)等を挙げることができる。
【0023】
また、高沸点のアルコール類としては、エチレングリコール(沸点;197.6℃、以降の( ))内の数値も同様。単位;℃)、ジプロピレングリコール(231.8)、もしくはジエチレングリコール(244.8)等を挙げることができる。
【0024】
本発明のインクジェット用インク組成物中には、上記のような(A)低表面張力のアルコール類、および(B)高沸点のアルコール類を、いずれも(C)の水と同量以下の配合量で配合することが好ましく、(A)、(B)、および(C)の質量基準の配合割合としては、(C)が100部である場合に、(A)が10部〜100部、および(B)が10〜100部であることが好ましい。
【0025】
(A)の配合量が下限未満であると、得られるインクジェット用インク組成物の表面張力が低下せず、吐出の安定性が得られない上に、対象物への濡れも十分でなく、また、(A)の配合量が上限を超えると、機能材料の溶解性もしくは分散性が低下する。また。(B)の配合量が下限未満であると、得られるインクジェット用インク組成物の乾燥性が過度となって、吐出の際にノズル中で詰まりやすくなるので好ましくなく、上限を超えると、乾燥性が低下して、対象物への適用後の流動により形状が崩れたり、乾燥に要するエネルギーが過大となる。
【0026】
また、本発明のインクジェット用インク組成物における、機能材料の配合割合も重要であり、機能材料が、機能材料、並びに溶媒および分散媒の質量和中に占める割合が、0.1%〜20%であることが好ましい。この配合割合よりも、機能材料の配合割合が低いと、このインクジェット用インク組成物を適用したときに、単位面積当たりに必要な量の機能材料を適用しにくくなり、また、この配合割合よりも、機能材料の配合割合が高いと、得られるインクジェット用インク組成物の粘度が高くなり、適用された面における塗液の塗れ性が不十分になるので、いずれも好ましくない。
【0027】
本発明のインクジェット用インク組成物は、有機EL素子の製造の際に、ガラス等の基板上に設けられた電極(第1電極)上に、正孔注入層または/および発光層を形成するためにインクジェット法により適用される。正孔注入層または/および発光層をパターン化する際に、予め、画素を隔てるための隔壁をフォトレジスト等を用いて形成しておいてもよい。有機EL素子を製造するには、正孔注入層、発光層等を形成した後に、さらに電極(第2電極)、保護層等を順に積層する。
【0028】
有機EL素子を製造する際に、上記の各層を構成するために使用する素材、各工程の加工条件、加工に使用する資材等は、正孔注入層または/および発光層を形成するために用いられる本発明のインクジェット用インク組成物を除くと、次の通りである。
【0029】
基板は、板状、もしくはフィルム状の素材で構成され、具体的な素材としては、ガラス(シート状の薄膜ガラスを含む。)もしくは石英等の無機材料、または、樹脂板、もしくは樹脂フィルム等を挙げることができる。なお、「基板」は剛性に高い板状物に限らず、フィルム状の物も含む意味で使うので、「基材」と言ってもよい。
【0030】
基板が樹脂板、もしくは樹脂フィルムで構成される場合、それらの樹脂としては、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、もしくは非晶質ポリオレフィン等が挙げられるが、この他でも条件を満たす高分子材料であれば使用可能であり、また上記した樹脂の出発原料であるモノマーを2種類以上用いて共重合させて得られる共重合体であっても良い。
【0031】
有機EL素子の表示が観察者に見えるためには、観察側となる基板を透明性を有するものとすることが好ましく、有機EL素子の両側に基板を配置する場合には、一方もしくは両方を、透明性を有するものとすることが好ましい。また、基板には必要に応じ、水蒸気、もしくは酸素等のガスを遮断するガスバリアー性を付与する意味で、バリア性層が積層されていてもよく、バリア性層として、酸化ケイ素、もしくは酸化アルミニウム、または窒化ケイ素等の薄膜を積層することが好ましい。
【0032】
基板には、通常、電極(形成する順から第1電極と呼ばれ、通常は、陽極である。)が設けられる。代表的には、陽極としては、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、金、もしくはポリアニリン等を素材として構成されたものが例示され、透明であることが多い。なお、対極である陰極(第2電極、先の説明における第2電極層に相当する。)は、発光層を形成した後に発光層上に積層さるが、陰極としては、マグネシウム合金(MgAg他)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMg他)、もしくは金属カルシウムを素材として構成されたものが例示される。陽極または/および陰極は、これらの素材を用いて、蒸着もしくはスパッタリング等の気相法等により一面に層を形成することにより、もしくは一面に形成された層を、感光性レジストを用いて、パターンエッチングすることにより、所定の形状の電極パターンとすることにより、積層することができる。
【0033】
発光層は、上記の有機蛍光体の層単独でも構成し得るが、正孔注入層を陽極側に伴なうことが多い。
【0034】
発光層は、円形や四角形、もしくはストライプ等の多数の微細区域が密に配列した形状のものとされていることが好ましい。正孔注入層も、その導電性が高い場合、素子のダイオード特性を保ち、クロストークを防ぐために、発光層と同様な形状とされていることが好ましい。発光層の形成はインクジェット法によって行ない、正孔注入層が微細区域が密に配列した形成のものである場合、正孔注入層の形成も、やはりインクジェット法によって行なう。
【0035】
なお、有機EL素子としては、陽極側側から、正孔注入層および発光層とが積層されたタイプ以外に、種々の層からなる積層構造を有するものであり得る。
【0036】
例えば、発光層が、正孔輸送材料からなる正孔輸送層を陽極側に伴ない、および/または、電子輸送材料からなる電子輸送層を陰極側に伴なった積層構造であり得る。
【0037】
発光層が、正孔輸送層の性質を兼ね備えている場合、発光層兼正孔輸送層の陰極側に電子輸送層が積層された積層構造であり得る。あるいは、発光層が電子輸送層の性質を兼ね備えて居る場合には、電子輸送層兼発光層の陽極側に正孔輸送層が積層された積層構造であり得る。
【0038】
また、正孔輸送材料と有機蛍光体の両方を少なくとも混合して形成された正孔輸送材料/有機蛍光体の混合層と電子輸送層との積層構造であってもよく、もしくは、正孔輸送層と、有機蛍光体と電子輸送材料との両方を少なくとも混合して形成された有機蛍光体/電子輸送材料の混合層との積層構造であり得る。さらに、正孔輸送材料、有機蛍光体、および電子輸送材料の三者が少なくとも混合された混合層からなっていてもよい。
【0039】
電子輸送材料としては、アントラキノジメタン、フルオレニリデンメタン、テトラシアノエチレン、フルオレノン、ジフェノキノンオキサジアゾール、アントロン、チオピランジオキシド、ジフェノキノン、ベンゾキノン、マロノニトリル、ニジトロベンゼン、ニトロアントラキノン、無水マレイン酸、もしくはペリレンテトラカルボン酸、または、これらの誘導体を用いることができる。
【0040】
正孔輸送性材料としては、正孔注入層を構成する素材として前記したものに加え、ポリフィリン、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、ピラゾリン、テトラヒドロイミダゾール、ヒドラゾン、スチルベン、もしくはブタジエン、または、これらの誘導体を用いることができる。
【0041】
発光層が設けられた上には、基板側の電極(第1電極)に対する電極(第2電極、通常は陰極である。)を設ける。陰極を構成する素材、および形成方法については、先に述べた通りである。
【0042】
第2電極を設けた上には、通常、封止層(保護層とも言う。)が適用される。封止層は、無機質の薄膜、もしくは有機質(樹脂である。)の塗膜のいずれによっても形成でき、それらで、第2電極が設けられた上を被覆する。また、これらの封止層を形成するのに加え、基板の素材として挙げたガラス、もしくは石英等の無機材料、または、樹脂板、もしくは樹脂フィルムで、最表面を被覆してもよい。
【0043】
【実施例】
機能材料としてPEDOT/PSS(バイエル社製)を用いて、インクジェット用インク組成物を調製し、ピエゾ駆動型128ノズルインクジェットヘッドを用いて、ノズルの詰まり、および吐出の方向性の観察を行った。
【0044】
ただし、溶剤の配合の(1)は、水/エタノール =1/1(質量基準の配合比である。以降の(2)、(3)においても同様。)、(2)は水/エチレングリコール=1/1、(3)は水/エタノール/ジプロピレングリコール=1/1/1である。
【0045】
【表1】
【0046】
ノズルの詰まりは、ヘッドの64個のノズルより吐出し、一度停止させ1分静置したのち、再び吐出させたときの吐出しなかったノズルの数をもって判断し、2ヵ所以内を◎、3〜5ヵ所を○、6ヵ所以上を×とした。吐出の方向性は、ガラス基板上に吐出したときに、目標の吐出位置と実際の吐出位置との距離、および基板とノズルの距離(約500μm程度)を測定し、ノズルと目標とする吐出位置を結ぶ線を基準とし、ノズルと実際の吐出位置を結ぶ線と基準線でつくられる角度を算出した。算出された角度が2°以下を◎、2°を超えて5°以下を○、5°を超えて10°以下を△、10°を超えるものを×とした。
【0047】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、低表面張力のアルコール類、高沸点のアルコール類、および水を好ましい配合比で用いたので、インクジェットのノズルが詰まったり、塗液の濡れ性が不十分である等の欠点が解消されたインクジェット用インク組成物を提供することができる。
【0048】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、機能材料の配合比を好ましい範囲に限定したので、機能材料の塗布量を確保して、かつ、適用面における塗れ性の確保が可能なインクジェット用インク組成物を提供することができる。
【0049】
請求項3の発明によれば、アルコール類を具体的に限定したことにより、請求項1または請求項2いずれか記載の発明の効果がより確実に発揮されるインクジェット用インク組成物を提供することができる。
【0050】
請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3いずれかの発明の効果に加え、特定の正孔注入材料が配合されたことにより、正孔注入機能が優れ、透明で、熱的な耐久性がある正孔注入層を形成可能であるインクジェット用インク組成物を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL素子を構成する上で重要な、正孔注入層もしくは発光層等を、インクジェット法で形成するのに適したインク組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、低電圧駆動、自己発光型であることに加え、動画の表示に必要な高い応答速度を備えており、携帯型のみならず、大型のディスプレイ用としても、用途が広まりつつある。
【0003】
一般的な有機EL素子は、ガラス基板上に、ITOの透明電極(第1電極)、正孔注入層、発光層、および金属電極(第2電極)、さらには保護層が順に積層された積層構造を有しており、任意のパターンの表示を行なわせるために、両電極をパターン化するのに加え、発光層のパターン化、もしくは正孔注入層および発光層の両方の層のパターン化を行なっている。
【0004】
正孔注入層および発光層のパターン化の方法としては、それらの層を基板上の透明電極上に一面に形成した上に、フォトレジスト層を重ねて形成し、パターン状露光および現像を行なってレジストパターンを形成し、そのレジストパターンを利用してエッチングするフォトリソグラフィー法がある。(例えば、特許文献1参照。)。
また、基板上に画素を隔てるための隔壁を設け、隔壁間に正孔注入層および発光層をいずれもインクジェット方式で塗布することにより形成するインクジェット法もある。(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−170673号公報(請求項7、実施例1)
【特許文献2】
特開2000−323276号公報(請求項1および2、図4)
【0006】
フォトリソグラフィー法によると、正孔注入層もしくは発光層のパターン化を精度よく行なえるものの、フォトレジスト層の形成からエッチングに至る種々の工程を要し、フォトレジスト層の形成や取扱いの際に、下層の正孔注入層もしくは発光層に溶剤、熱、もしくは紫外線等の悪影響が及ぶ懸念がある。
【0007】
他方、インクジェット法によると、正孔注入層もしくは発光層のパターン化が短時間で行なえ、製造効率が優れているが、正孔注入層もしくは発光層を形成するための塗液として、従来、フォトリソグラフィー法で使用していた、スピンコーティング用の水溶液タイプもしくは水分散液タイプの塗液を流用すると、インクジェットのノズルが詰まりやすく、連続的に正孔注入層もしくは発光層のパターン化を行なうには支障がある上、適用された面における塗液の塗れ性が不十分なため、決められた区域に塗液が均一に広がらなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明においては、従来のインクジェット法における、インクジェットのノズルが詰まりやすい欠点および塗液の濡れ性が不十分であることに基づく欠点を解消することを課題とする。
【0009】
【課題を解決する手段】
発明者等の検討により、従来の正孔注入層形成用もしくは発光層形成用に用いられていたスピンコーティング用の水溶液タイプもしくは水分散液タイプの塗液における溶媒もしくは分散媒の水の一部を、表面張力の低いアルコール類と、高沸点のアルコール類とによって置き換えることにより、上記の課題が解消することが判明し、本発明に到達することができた。
【0010】
第1の発明は、発光材料もしくは正孔注入材料からなる機能材料が、溶媒もしくは分散媒中に溶解もしくは分散されており、前記溶媒もしくは分散媒は、(A)表面張力が15mN/m〜40mN/mであるアルコール類、(B)沸点が150℃〜300℃であるアルコール類、および(C)水からなり、前記(A)、(B)、および(C)の質量基準の配合割合が、(C)が100部である場合に、(A)が10部〜100部、および(B)が10〜100部であることを特徴とするインクジェット用インク組成物に関するものである。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、インクジェット用インク組成物における前記機能材料は、前記機能材料、並びに前記溶媒および前記分散媒の質量和中、0.1%〜20%を占めることを特徴とするインクジェット用インク組成物に関するものである。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記(A)のアルコール類が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、もしくはn−ブタノールであり、前記(B)のアルコール類が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、もしくはジプロピレングリコールであることを特徴とするインクジェット用インク組成物に関するものである。
【0013】
第4の発明は、第1〜第3いずれかの発明において、前記正孔材料が、ポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホネートの混合物であることを特徴とするインクジェット用インク組成物に関するものである。
【0014】
本発明のインクジェット用インク組成物は、基本的に、発光材料、もしくは正孔注入材料からなる機能材料と、溶媒もしくは分散媒とからなっており、後者の溶媒もしくは分散媒は、(A)低表面張力のアルコール類、(B)高沸点のアルコール類、および(C)水とからなるものである。
【0015】
発光材料としては、例えば、色素系、金属錯体系、もしくは高分子系の有機蛍光体を用いることができる。
【0016】
色素系のものとしては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、もしくはピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0017】
金属錯体系のものとしては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、もしくはキノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。
【0018】
高分子系のものとしては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、もしくはポリビニルカルバゾール誘導体、または前記の色素系のもの、もしくは金属錯体系のものを高分子化したもの等を挙げることができる。
【0019】
上記した発光材料には、発光効率の向上、もしくは発光波長を変化させる目的でドーピングを行うことができる。このドーピング材料としては例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィレン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等を挙げることができる。
【0020】
正孔注入材料としては、ポリアニリン誘導体、アルキル置換ポリチオフェン、アリル置換ポリチオフェン、もしくはその他の置換基が導入されたポリチオフェン誘導体、トリフェニルアミン等のアリルアミン、無機酸化物のゾルゲル膜、トリフルオロメタン等の有機物の重合膜、ルイス酸を含む有機化合物膜等を挙げることができる。ポリチオフェン誘導体としてはポリ(3、4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(略称;PEDOT/PSS、バイエル社製、商品名;Baytron P、水分散液として市販。)等も使用できる。
【0021】
上記のポリチオフェン誘導体のうち、略称がPEDOT/PSSである化合物は、正孔注入材料としての機能が優れており、400nm〜800nmの可視光の波長範囲で透明で、熱的な耐久性があり、水等の極性溶媒に対する分散性が優れている点で特に好ましい。ただ、市販のPEDOT/PSSは、1.3%程度の配合割合の水分散液であり、粘度が70mN/mと高く、スピンコーティングには適するものの、インクジェット法で適用する際には、ノズルの詰まりや適用面における濡れ性の点では好ましくない。本発明においては、溶媒もしくは分散媒として、低表面張力のアルコール類、および高沸点のアルコール類を水と併用して用い、しかも、正孔注入材料の配合割合をも規定することにより、優れた正孔注入層を与えることが可能になインクジェット用インク組成物とすることができる。
【0022】
低表面張力のアルコール類としては、表面張力が15mN/m〜40mN/mの範囲であるものが好ましく、表面張力が上限を超えるアルコール類を使用すると、得られるインクジェット用インク組成物を用いた吐出が安定に行なえない。具体的には、メタノール(表面張力;22.5、以降の( )内の数値も同様。単位;mN/m。)、エタノール(22)、プロピルアルコール(21)、ブチルアルコール(25)、エチレングリコール(48.4)、もしくはジプロピレングリコール(32)等を挙げることができる。
【0023】
また、高沸点のアルコール類としては、エチレングリコール(沸点;197.6℃、以降の( ))内の数値も同様。単位;℃)、ジプロピレングリコール(231.8)、もしくはジエチレングリコール(244.8)等を挙げることができる。
【0024】
本発明のインクジェット用インク組成物中には、上記のような(A)低表面張力のアルコール類、および(B)高沸点のアルコール類を、いずれも(C)の水と同量以下の配合量で配合することが好ましく、(A)、(B)、および(C)の質量基準の配合割合としては、(C)が100部である場合に、(A)が10部〜100部、および(B)が10〜100部であることが好ましい。
【0025】
(A)の配合量が下限未満であると、得られるインクジェット用インク組成物の表面張力が低下せず、吐出の安定性が得られない上に、対象物への濡れも十分でなく、また、(A)の配合量が上限を超えると、機能材料の溶解性もしくは分散性が低下する。また。(B)の配合量が下限未満であると、得られるインクジェット用インク組成物の乾燥性が過度となって、吐出の際にノズル中で詰まりやすくなるので好ましくなく、上限を超えると、乾燥性が低下して、対象物への適用後の流動により形状が崩れたり、乾燥に要するエネルギーが過大となる。
【0026】
また、本発明のインクジェット用インク組成物における、機能材料の配合割合も重要であり、機能材料が、機能材料、並びに溶媒および分散媒の質量和中に占める割合が、0.1%〜20%であることが好ましい。この配合割合よりも、機能材料の配合割合が低いと、このインクジェット用インク組成物を適用したときに、単位面積当たりに必要な量の機能材料を適用しにくくなり、また、この配合割合よりも、機能材料の配合割合が高いと、得られるインクジェット用インク組成物の粘度が高くなり、適用された面における塗液の塗れ性が不十分になるので、いずれも好ましくない。
【0027】
本発明のインクジェット用インク組成物は、有機EL素子の製造の際に、ガラス等の基板上に設けられた電極(第1電極)上に、正孔注入層または/および発光層を形成するためにインクジェット法により適用される。正孔注入層または/および発光層をパターン化する際に、予め、画素を隔てるための隔壁をフォトレジスト等を用いて形成しておいてもよい。有機EL素子を製造するには、正孔注入層、発光層等を形成した後に、さらに電極(第2電極)、保護層等を順に積層する。
【0028】
有機EL素子を製造する際に、上記の各層を構成するために使用する素材、各工程の加工条件、加工に使用する資材等は、正孔注入層または/および発光層を形成するために用いられる本発明のインクジェット用インク組成物を除くと、次の通りである。
【0029】
基板は、板状、もしくはフィルム状の素材で構成され、具体的な素材としては、ガラス(シート状の薄膜ガラスを含む。)もしくは石英等の無機材料、または、樹脂板、もしくは樹脂フィルム等を挙げることができる。なお、「基板」は剛性に高い板状物に限らず、フィルム状の物も含む意味で使うので、「基材」と言ってもよい。
【0030】
基板が樹脂板、もしくは樹脂フィルムで構成される場合、それらの樹脂としては、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、もしくは非晶質ポリオレフィン等が挙げられるが、この他でも条件を満たす高分子材料であれば使用可能であり、また上記した樹脂の出発原料であるモノマーを2種類以上用いて共重合させて得られる共重合体であっても良い。
【0031】
有機EL素子の表示が観察者に見えるためには、観察側となる基板を透明性を有するものとすることが好ましく、有機EL素子の両側に基板を配置する場合には、一方もしくは両方を、透明性を有するものとすることが好ましい。また、基板には必要に応じ、水蒸気、もしくは酸素等のガスを遮断するガスバリアー性を付与する意味で、バリア性層が積層されていてもよく、バリア性層として、酸化ケイ素、もしくは酸化アルミニウム、または窒化ケイ素等の薄膜を積層することが好ましい。
【0032】
基板には、通常、電極(形成する順から第1電極と呼ばれ、通常は、陽極である。)が設けられる。代表的には、陽極としては、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、金、もしくはポリアニリン等を素材として構成されたものが例示され、透明であることが多い。なお、対極である陰極(第2電極、先の説明における第2電極層に相当する。)は、発光層を形成した後に発光層上に積層さるが、陰極としては、マグネシウム合金(MgAg他)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMg他)、もしくは金属カルシウムを素材として構成されたものが例示される。陽極または/および陰極は、これらの素材を用いて、蒸着もしくはスパッタリング等の気相法等により一面に層を形成することにより、もしくは一面に形成された層を、感光性レジストを用いて、パターンエッチングすることにより、所定の形状の電極パターンとすることにより、積層することができる。
【0033】
発光層は、上記の有機蛍光体の層単独でも構成し得るが、正孔注入層を陽極側に伴なうことが多い。
【0034】
発光層は、円形や四角形、もしくはストライプ等の多数の微細区域が密に配列した形状のものとされていることが好ましい。正孔注入層も、その導電性が高い場合、素子のダイオード特性を保ち、クロストークを防ぐために、発光層と同様な形状とされていることが好ましい。発光層の形成はインクジェット法によって行ない、正孔注入層が微細区域が密に配列した形成のものである場合、正孔注入層の形成も、やはりインクジェット法によって行なう。
【0035】
なお、有機EL素子としては、陽極側側から、正孔注入層および発光層とが積層されたタイプ以外に、種々の層からなる積層構造を有するものであり得る。
【0036】
例えば、発光層が、正孔輸送材料からなる正孔輸送層を陽極側に伴ない、および/または、電子輸送材料からなる電子輸送層を陰極側に伴なった積層構造であり得る。
【0037】
発光層が、正孔輸送層の性質を兼ね備えている場合、発光層兼正孔輸送層の陰極側に電子輸送層が積層された積層構造であり得る。あるいは、発光層が電子輸送層の性質を兼ね備えて居る場合には、電子輸送層兼発光層の陽極側に正孔輸送層が積層された積層構造であり得る。
【0038】
また、正孔輸送材料と有機蛍光体の両方を少なくとも混合して形成された正孔輸送材料/有機蛍光体の混合層と電子輸送層との積層構造であってもよく、もしくは、正孔輸送層と、有機蛍光体と電子輸送材料との両方を少なくとも混合して形成された有機蛍光体/電子輸送材料の混合層との積層構造であり得る。さらに、正孔輸送材料、有機蛍光体、および電子輸送材料の三者が少なくとも混合された混合層からなっていてもよい。
【0039】
電子輸送材料としては、アントラキノジメタン、フルオレニリデンメタン、テトラシアノエチレン、フルオレノン、ジフェノキノンオキサジアゾール、アントロン、チオピランジオキシド、ジフェノキノン、ベンゾキノン、マロノニトリル、ニジトロベンゼン、ニトロアントラキノン、無水マレイン酸、もしくはペリレンテトラカルボン酸、または、これらの誘導体を用いることができる。
【0040】
正孔輸送性材料としては、正孔注入層を構成する素材として前記したものに加え、ポリフィリン、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、ピラゾリン、テトラヒドロイミダゾール、ヒドラゾン、スチルベン、もしくはブタジエン、または、これらの誘導体を用いることができる。
【0041】
発光層が設けられた上には、基板側の電極(第1電極)に対する電極(第2電極、通常は陰極である。)を設ける。陰極を構成する素材、および形成方法については、先に述べた通りである。
【0042】
第2電極を設けた上には、通常、封止層(保護層とも言う。)が適用される。封止層は、無機質の薄膜、もしくは有機質(樹脂である。)の塗膜のいずれによっても形成でき、それらで、第2電極が設けられた上を被覆する。また、これらの封止層を形成するのに加え、基板の素材として挙げたガラス、もしくは石英等の無機材料、または、樹脂板、もしくは樹脂フィルムで、最表面を被覆してもよい。
【0043】
【実施例】
機能材料としてPEDOT/PSS(バイエル社製)を用いて、インクジェット用インク組成物を調製し、ピエゾ駆動型128ノズルインクジェットヘッドを用いて、ノズルの詰まり、および吐出の方向性の観察を行った。
【0044】
ただし、溶剤の配合の(1)は、水/エタノール =1/1(質量基準の配合比である。以降の(2)、(3)においても同様。)、(2)は水/エチレングリコール=1/1、(3)は水/エタノール/ジプロピレングリコール=1/1/1である。
【0045】
【表1】
【0046】
ノズルの詰まりは、ヘッドの64個のノズルより吐出し、一度停止させ1分静置したのち、再び吐出させたときの吐出しなかったノズルの数をもって判断し、2ヵ所以内を◎、3〜5ヵ所を○、6ヵ所以上を×とした。吐出の方向性は、ガラス基板上に吐出したときに、目標の吐出位置と実際の吐出位置との距離、および基板とノズルの距離(約500μm程度)を測定し、ノズルと目標とする吐出位置を結ぶ線を基準とし、ノズルと実際の吐出位置を結ぶ線と基準線でつくられる角度を算出した。算出された角度が2°以下を◎、2°を超えて5°以下を○、5°を超えて10°以下を△、10°を超えるものを×とした。
【0047】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、低表面張力のアルコール類、高沸点のアルコール類、および水を好ましい配合比で用いたので、インクジェットのノズルが詰まったり、塗液の濡れ性が不十分である等の欠点が解消されたインクジェット用インク組成物を提供することができる。
【0048】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、機能材料の配合比を好ましい範囲に限定したので、機能材料の塗布量を確保して、かつ、適用面における塗れ性の確保が可能なインクジェット用インク組成物を提供することができる。
【0049】
請求項3の発明によれば、アルコール類を具体的に限定したことにより、請求項1または請求項2いずれか記載の発明の効果がより確実に発揮されるインクジェット用インク組成物を提供することができる。
【0050】
請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3いずれかの発明の効果に加え、特定の正孔注入材料が配合されたことにより、正孔注入機能が優れ、透明で、熱的な耐久性がある正孔注入層を形成可能であるインクジェット用インク組成物を提供することができる。
Claims (4)
- 発光材料もしくは正孔注入材料からなる機能材料が、溶媒もしくは分散媒中に溶解もしくは分散されており、前記溶媒もしくは分散媒は、(A)表面張力が15mN/m〜40mN/mであるアルコール類、(B)沸点が150℃〜300℃であるアルコール類、および(C)水からなり、前記(A)、(B)、および(C)の質量基準の配合割合が、(C)が100部である場合に、(A)が10部〜100部、および(B)が10〜100部であることを特徴とするインクジェット用インク組成物。
- インクジェット用インク組成物における前記機能材料は、前記機能材料、並びに前記溶媒および前記分散媒の質量和中、0.1%〜20%を占めることを特徴とする請求項1記載のインクジェット用インク組成物。
- 前記(A)のアルコール類が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、もしくはn−ブタノールであり、前記(B)のアルコール類が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、もしくはジプロピレングリコールであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のインクジェット用インク組成物。
- 前記正孔材料が、ポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホネートの混合物であることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれか記載のインクジェット用インク組成物。
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