JP2004189001A - エアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネル - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性と剛性とを有し、エアバッグカバー部を一体に有するインストルメントパネルを提供すること。そのパネルにおいて、非常時にエアバッグカバー部が容易に破断してエアバッグの膨張展開を容易にすると共に、周囲へ破片の飛散を防止でき、またそのパネル部とエアバッグカバー部とが同一樹脂材料で一体に成形でき、かつ外観が良好であること。
【解決手段】樹脂組成物から形成されたインストルーメントパネル本体部にエアバッグカバー部が一体に設けられており、その樹脂組成物は、プロピレン・エチレンブロック共重合体40〜70重量%、エラストマー25〜45重量%および無機充填剤5〜15重量%とから構成されており、またエアバッグカバー部には、エアバッグ膨張展開時に開口部となる予定箇所の裏面側周囲に、エアバッグが膨張した時に破断する溝部およびヒンジとして残る溝部とが互いに深さを異にして形成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】樹脂組成物から形成されたインストルーメントパネル本体部にエアバッグカバー部が一体に設けられており、その樹脂組成物は、プロピレン・エチレンブロック共重合体40〜70重量%、エラストマー25〜45重量%および無機充填剤5〜15重量%とから構成されており、またエアバッグカバー部には、エアバッグ膨張展開時に開口部となる予定箇所の裏面側周囲に、エアバッグが膨張した時に破断する溝部およびヒンジとして残る溝部とが互いに深さを異にして形成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のインストルメントパネルとそれに形成された助手席前方のエアバッグ装置用開口部を覆うエアバッグカバーとが、同一樹脂材料によって一体に形成されたエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルに関し、より詳細にはエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルの材質と構造とに関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
自動車のエアバッグ装置は、その中に装備されているエアバッグが、衝突時の衝撃等を感知してその中に注入されてきたガスによって膨張し、運転席や助手席の前方に展開し、搭乗者の体が前方の窓ガラスや内装材等に激突するのを防止することによって、搭乗者の安全保護を図る装置である。
【0003】
助手席用のエアバッグ装置は、通常はインストルメントパネル内に収納されている。そしてインストルメントパネルには膨張するエアバッグを通過させるための開口部が形成されており、その開口部はエアバッグカバーで覆われるようになっている。エアバッグカバーは、インストルメントパネルと一体に形成することができる。しかしながら、エアバッグカバーは衝撃によって膨張するエアバッグの圧力で容易にインストルメントパネルから破断し、エアバッグをカバーの外部へと膨張展開できると共に、その際搭乗者を傷つけるかもしれない破片を周囲に飛散させないことが求められている。また、そのカバーには、インストルメントパネルの一部として、夏季の高温で変形しないような耐熱性および自立性も同時に求められている。
【0004】
一方、インストルメントパネルは、自動車内装材の中心をなす大型成形品であることから、フローマークのない見栄えのよい外観を呈するように、その成形材料には高い流動性が要求されている。その上、リサイクル使用が容易な材料であることも重要な素材選択の要素である。しかし、インストルメントパネルとエアバッグカバーとを同一樹脂材料で一体に形成することはこれ迄困難とされ、従来は異なる材料による2色成形によって一体に成形されてきた。
【0005】
そのようなエアバッグカバーとして、構造面および材質面から種々の検討が進められている。例えば、特開平4−314648号や特開平10−279745号公報では、成形材料としてオレフィン系熱可塑性エラストマーの使用が提案されているが、その軟らかい物性から前述した諸要求を満たすことは困難であった。
【0006】
熱可塑性エラストマーの剛性不足を補う一手段として、特開平1−202550号、特開平2−220946号、特開平6−156175号、特開平10−264759号、特開平11−207768号、特開平11−208407号、および特開2000−72937号公報では、熱可塑性エラストマー層にポリオレフィン層を裏打ちした積層体の使用を提案している。しかしながら、その積層体の製造およびそれからエアバッグカバーを製造するに際して、特別な工程を付加することからコストアップになると共に、その積層体はそのまま単純に溶融再利用ができないのでリサイクル使用の方法も複雑化してくる。
【0007】
一方、熱可塑性エラストマーよりも高い剛性を有するポリプロピレン樹脂組成物をインストルメントパネルの成形材料として使用することが、特開平10−265628号および特開平11−80493号公報に提案されている。ところがそれら公報に記載されている樹脂組成物は、流動性に乏しいばかりでなく、剛性が未だ小さくて自立性に不足し、また耐熱性も十分とは言い難く、一層の樹脂改良が求められている。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−265628号公報
【特許文献2】
特開平11−80493号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、耐熱性と剛性とを有し、エアバッグの膨張展開時にはエアバッグカバー部が容易に破断してエアバッグの膨張を容易にすると共に、周囲へ破片の飛散が起こらないようにし、かつインストルメントパネルとエアバッグカバーとを同一樹脂材料で一体に形成することによって外観良好でかつ成形およびリサイクル使用が容易なエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルの提供を目的にする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、樹脂組成物から形成されたインストルメントパネルにエアバッグカバー部が一体に設けられており、
(1)その樹脂組成物は、メルトフローレート(MFR)が30〜100(g/10分)のプロピレン・エチレンブロック共重合体40〜70重量%、エラストマー25〜45重量%および無機充填剤5〜15重量%とから構成され、かつそのMFRは10〜50(g/10分)であって、
(2)前記のプロピレン・エチレンブロック共重合体は、アイソタクチックペンタッド分率が0.97以上のn−デカン不溶部(23℃)と、エチレン含量が20〜50重量%かつ極限粘度[η]が2〜9(dl/g)のn−デカン可溶部(23℃)とを含み、
(3)さらにエアバッグカバー部には、エアバッグ膨張展開時に開口部となる予定箇所の裏面側周囲に、エアバッグが膨張した時に破断する溝部およびヒンジとして残る溝部とが互いに深さを異にして形成されている
エアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルに関する。
【0011】
前記のプロピレン・エチレンブロック共重合体は、70〜95重量%のn−デカン不溶部(23℃)および5〜30重量%のn−デカン可溶部(23℃)とを含んでいることが望ましい。また、前記のエラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーであることが望ましく、特にスチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。そして、このような樹脂組成物は、ASTM D−790に準拠して測定したその曲げ弾性率が700〜1200MPaであることが望ましい。
【0012】
さらに、前記の破断する溝部は、それを形成する成形品の肉厚が0.2〜0.6mmであり、またヒンジとして残る溝部は、それを形成する成形品の肉厚が0.6〜4.0mmであることが望ましい。そして、インストルメントパネルは、その本体部裏面にダクト形成用の樹脂製インナパネルが振動溶着されていることが望ましい。
【0013】
【発明の具体的説明】
次に、エアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルを形成する樹脂組成物およびインストルメントパネルの構造について、詳細に説明する。
【0014】
樹 脂 組 成 物
本発明に係わるエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルは、プロピレン・エチレンブロック共重合体40〜70重量%、好ましくは50〜60重量%、エラストマー25〜45重量%、好ましくは30〜40重量%、無機充填材5〜15重量%、好ましくは7〜13重量%とから構成された樹脂組成物から少なくとも形成されている。ここで3成分の合計量が100重量%になる。このような構成の樹脂組成物は、高い耐熱性と剛性とを有しているので、その成形品が夏季の高温環境下に置かれても、変形したりあるいは自立性を損なうことはほとんどない。
【0015】
前記した少なくとも3成分からなるこの樹脂組成物は、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が、10〜50(g/10分)、好ましくは20〜40(g/10分)である。MFR値がこの範囲にあると、その樹脂組成物は溶融流動性が高いことから射出成形性が良好で、また成形品表面にフローマーク等が発生しにくく、見栄えが良好な外観を呈する。
【0016】
またこの樹脂組成物は、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が、好ましくは700〜1200MPa、より好ましくは800〜1100MPaであることが望ましい。曲げ弾性率が前記の範囲にあると、エアバッグの膨張展開時に、エアバッグカバー部の破壊や飛散等が起こりにくく、他方インストルメントパネルとして必要な剛性を保持しているので、あえて補強材を用いなくても十分な自立性を示す。その際、インストルメントパネル本体部裏面にダクト形成用の樹脂製インナパネルを振動溶着法で溶着した構造にすると、より一層製品に剛性を持たせることができる。
【0017】
さらに、ASTM D−256に準拠し、−30℃、ノッチ付きで測定したアイゾット衝撃強度が、好ましくは300(J/m)以上、より好ましくは350(J/m)以上であることが望ましい。衝撃強度が前記の範囲にあると、自動車内装材に要求される低温耐衝撃性を満足すると共に、エアバッグの膨張展開時にエアバッグカバー部の破壊や飛散等が起こりにくい。
【0018】
<ブロック共重合体>
プロピレン・エチレンブロック共重合体は、n−デカン溶媒を用いて23℃で分別すると、共重合体中に含まれるモノマー単位の含量や分子構造等によって、n−デカンに可溶な成分と不溶な成分とに分離される。本発明で使用可能なブロック共重合体は、不溶部が好ましくは70〜95重量%、より好ましくは75〜90重量%と、可溶部が好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%との割合で含まれる重合体であって、高い耐熱性と剛性とを保持している。
【0019】
ここで前記の分別は、次に記す方法で行うことができる。すなわち、プロピレン・エチレンブロック共重合体の試料5gを135℃のデカン500mlに添加し、十分に撹拌して可溶性成分を完全に溶解させる。その後、23℃に降温して24時間静置し、遠心分離法によって可溶部と不溶部とに分ける。可溶部は、1000mlのアセトン中へ移してポリマーを析出させ、デカンテーション法で析出物を集め、さらにろ過、洗浄、乾燥を行ってから重量を測定し、可溶部量として求めることができる。可溶部以外の量を不溶部量とする。
【0020】
n−デカン不溶部は、主にプロピレンホモポリマーから構成されているが、10モル%、好ましくは5モル%以下のエチレンをコモノマー単位として含有する共重合体が少量含まれていてもよい。このn−デカン不溶部は、13C−NMRで測定されるアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が0.97以上、好ましくは0.975以上である。そのような高いアイソタクチックペンタッド分率を有する不溶部は、高立体規則性の重合体であって、それを含むプロピレン・エチレンブロック共重合体は結晶性が高いことから、高い機械的強度を保持している。
【0021】
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は、ポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の存在割合を表す指標である。具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中に占める、プロピレンモノマー単位で5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の吸収ピークの割合を測定して求める。
【0022】
さらにこの不溶部は、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が、好ましくは40〜300(g/10分)、より好ましくは80〜200(g/10分)の範囲にあることが望ましい。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定し、分子量分布の指標として使われているMw/Mnの値が、好ましくは4〜20、より好ましくは5〜8の範囲にあることが望ましい。MFRおよびMw/Mnの値が前記の範囲にあると、溶融流動性が良好なブロック共重合体を与える。
【0023】
他方、n−デカン可溶部は、主としてプロピレン・エチレンランダム共重合体から構成されており、その他にブロック共重合体を製造する際に生じる各種の重合体や副生成物が少量含まれていてもよい。この可溶部には、赤外線吸収スペクトル分析によって測定されるエチレン単位を、20〜50重量%、好ましくは25〜35重量%含有していることが望ましい。エチレン単位の含量が前記の範囲にあるプロピレン・エチレンブロック共重合体は、高い曲げ弾性率と耐衝撃性とを示し、自動車内装材として好適である。
【0024】
また、この可溶部は、デカリン溶媒を用いて135℃で測定した時の極限粘度[η]が、2〜9(dl/g)、好ましくは4〜8(dl/g)、さらに好ましくは5〜7(dl/g)である。極限粘度が前記の範囲にあると、そのような可溶部を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体は、高い機械的強度を有し、自動車内装材として好適である。
【0025】
前記したn−デカン不溶部と可溶部とを含むプロピレン・エチレンブロック共重合体は、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が、30〜100(g/10分)、好ましくは50〜90(g/10分)、より好ましくは70〜90(g/10分)である。
【0026】
このような性状を有するプロピレン・エチレンブロック共重合体は、溶融流動性が良好で、それを含む樹脂組成物からは、柔軟性と剛性とのバランスがとれかつ高い耐衝撃性を有するエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルを製造することができる。
【0027】
前記してきたプロピレン・エチレンブロック共重合体は、基本的にはプロピレン単独重合体部分、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分、必要に応じてエチレン重合体部分とから構成されており、また他の重合性モノマーが重合体単位として含まれていてもよい。そのようなブロック共重合体は、オレフィンの立体規則性重合触媒の存在下に、プロピレンとエチレンとを、必要に応じて他のα−オレフィンを存在させて重合することによって製造することができる。
【0028】
例えば、第1段階としてプロピレンの単独重合を行い、第2段階としてプロピレンとエチレンとの共重合を行い、必要に応じて第3段階としてエチレンの単独重合を行うプロセスを採用することによって製造することができる。この製造プロセスは、連続的に行うこともできるし、バッチ式あるいは半連続的に行うこともできる。また、別途製造したプロピレンの単独重合体とプロピレン・エチレンランダム共重合体とをブレンドするプロセスで製造することもできる。重合方法は、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法、バルク重合法など、いずれの方法を用いてもよい。
【0029】
重合触媒としては、チーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒等を使用することができ、その一例として(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(B)有機アルミニウム化合物、および(C)電子供与体とからなる触媒系を挙げることができる。固体触媒成分は、マグネシウム化合物、ハロゲン化チタン化合物および電子供与体を接触させることによって得ることができる。
【0030】
このブロック共重合体中には、分岐状オレフィン重合体が0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下の割合で含有されていてもよい。分岐状オレフィン重合体は、成形時にプロピレン・エチレンブロック共重合体の核剤として作用するので、前記のアイソタクチックペンタッド分率を高め、成形性を向上させることができる。その重合体としては、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等の分岐状オレフィン単独重合体または共重合体が使用でき、それらの中でも3−メチル−1−ブテン重合体が好ましい。
【0031】
<エラストマー>
本発明に使用可能なエラストマーとしては、エラストマーとしての性状を有する重合体であれば特に制限されない。中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0032】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、炭素原子数が2〜20、好ましくは2〜10のα−オレフィンを構成単位として含む、低結晶性ないし非結晶性のα−オレフィン共重合体であって、特にエチレンまたはプロピレンを主な構成単位として含む共重合体が好ましい。そのような共重合体の例として、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、エチレン・1−ブテン共重合体(EBR)、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体(EOR)、エチレン・1−デセン共重合体等のエチレン系共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のプロピレン系共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、エチレン・プロピレン・シクロオクタジエン共重合体、エチレン・ブタジエン共重合体等のエチレン・ジエン共重合体を挙げることができる。
【0033】
これらの中でも、特にEPR、EBR、EOR、およびそれらの混合物が好ましく使用できる。EPR、EBR、EORのようなエチレン・α−オレフィン共重合体の場合、エチレン単位の含有量が好ましくは30〜90重量%、より好ましくは60〜80重量%であり、α−オレフィン単位の含有量が好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜40重量%である。また、ASTM D−1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgの条件下で測定したそのメルトフローレート(MFR)値が、好ましくは0.1〜120(g/10分)、より好ましくは0.5〜60(g/10分)である共重合体が望ましい。
【0034】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレンを構成単位として10モル%以上含む重合体のエラストマーであって、例えばスチレン・ブタジエンランダム共重合体(SBR)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、SBSの水素添加物であるスチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、SISの水素添加物であるスチレン・エチレン/プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、およびスチレン・イソプレンブロック共重合体を挙げることができる。なお、前記の水素添加物は、完全水素化物であってもよいし、不完全水素化物であってもよい。
【0035】
そのようなスチレン系熱可塑性エラストマーは、クレイトン(Kratonn、シェル化学(株)製品)、キャリフレックスTR(シェル化学(株)製品)、ソルプレン(フィリップスペトリウム社製品)、ユーロプレンSOLT(アニッチ社製品)、タフプレン(旭化成(株)製品)、ソルプレン−T(日本エラストマー社製品)、JSRTR(日本合成ゴム(株)製品)、電化STR(電気化学(株)製品)、クインタック(日本ゼオン(株)製品)、クレイトンG(シェル化学(株)製品)、タフテック(旭化成(株)製品)等の商品名で市販されており、容易に入手することができる。
【0036】
これらのエラストマーの中でもスチレン系ブロック共重合体が好ましく、特にスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)を水素添加して製造され、ポリスチレンブロック単位とエチレン/ブチレン共重合体ゴムブロック単位とから構成されているSEBSが好ましい。このSEBSは、ハードセグメントであるポリスチレンブロック単位が、ソフトセグメントであるエチレン/ブチレン共重合体ゴムブロック単位との間で物理架橋を形成し、熱可塑性エラストマーとしての性状を示す。そのようなSEBSとしては、赤外線吸収スペクトルまたはNMRによって測定されるスチレン単位を14〜40モル%含有している重合体が好ましい。また、ASTM D−1238に準拠し、190℃で測定されるメルトフローレート(MFR)値が、好ましくは0.01〜100(g/10分)、より好ましくは0.1〜50(g/10分)であることが望ましい。
【0037】
<無機充填材>
無機充填材(C)としては、タルク、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、けい酸塩類、炭酸塩類、ガラス繊維等の通常プラスチック用配合材として利用されている無機物を使用することができる。それらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、タルクまたは炭酸カルシウムが好ましく、特にタルクが好ましく、その平均粒径が好ましくは1〜5μm、より好ましくは1〜3μmのものが望ましい。
【0038】
前記したプロピレン・エチレンブロック共重合体、エラストマーおよび無機充填材は、その所定量を、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダーあるいはタンブラーブレンダー等を用いて均一に混合し、次いで押出機を用いて通常ペレット状に加工し、樹脂組成物として使用する。
【0039】
なお、各成分の混合に際して、本発明の目的を損なわない範囲内で酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、老化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、核剤、滑剤、難燃剤、顔料、染料、有機充填剤等を任意に配合してもよい。
【0040】
エアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネル
エアバッグカバーとインストルメントパネルは、前記の樹脂組成物を用いて射出成形することによって両者を一体に製造することができる。すなわち、本発明のインストルメントパネルは、インストルメントパネル本体部とエアバッグカバー部とから構成されており、両部が一体になっていることで製品に違和感がなく、見栄えの良い外観を呈する。また前記の樹脂組成物を用いてインストルメントパネル単独として使用することも可能である。そしてエアバッグカバー部を一体に有するインストルメントパネルにあっては、車の組み立て時に、あるいは部品組み立て時に、インストルメントパネルの裏面側からエアバッグ収納容器をエアバッグカバー部に対応する位置に取り付ける。
【0041】
平常時にはエアバッグがエアバッグカバー部の裏面側に収納されているので、エアバッグカバー部の表面側はインストルメントパネル本体部と変らない同じ外観を呈しているが、非常時にはエアバッグカバー部が開口して、エアバッグが裏面側から膨張展開した状態になる。そのために、エアバッグカバー部にはエアバッグ膨張展開時に開口部となる予定箇所周囲の、エアバッグが収納されている裏面側に溝が形成されており、非常時にその溝部の一部が破断して開口部を形成する。本発明では、その溝部には、エアバッグ膨張展開時に破断する溝部とヒンジとして残る溝部とが設けられており、非常時にはその破断する溝部が切り離されてエアバッグカバー部が外部方向へと飛び出し、ヒンジとして残る溝部でエアバッグカバー部がインストルメントパネル本体部に接続しているので、ちょうど扉が開いたような構造になる。
【0042】
なお、ヒンジ部の根本にインストルメントパネル本体部から延びるリブを設け、そのリブをエアバッグ収納容器と共にエアバッグ収納容器取り付け用ブラケットに取り付けることによって、エアバッグが膨張展開した時に扉が飛散せずに踏ん張る構造とすることもできる。
【0043】
成形品の平均的な肉厚は通常1〜5mmであることから、破断する溝部の肉厚は前記の平均的な肉厚の50%以下、好ましくは0.2〜0.6mmに調整され、またヒンジとして残る溝部の肉厚は、好ましくは0.6〜4.0mm、より好ましくは0.8〜1.5mmになるように溝部の肉厚、すなわち溝部の深さの調整がなされている。
【0044】
その溝部は、連続的な線状に形成されていてもよいし、断続的な線状に形成されていてもよいし、またはミシン目状の不連続貫通孔状であってもよい。或いは大半が連続的な線状であって、残りの部分が断続的な線状であってもよい。このような溝は、前記の形状になるように予め突条を設けた射出成形金型を用いて射出成形してもよいし、あるいは射出成形後、インストルメントパネルのエアバッグカバー部の周囲に溝をレーザー加工等によって刻設してもよい。
【0045】
次に図面を参照して、本発明に係わるエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルの構造についてより詳細に説明する。
【0046】
図1は、エアバッグ装置の一実施例を示す概略断面図である。まず、インストルメントパネルは、インストルメントパネル本体部10とエアバッグカバー部2とから構成されている。そして、エアバッグ装置1は、インストルメントパネル本体部10と一体に形成されたエアバッグカバー部2、エアバッグ3、エアバッグ収納容器4およびエアバッグ収納容器取り付け用ブラケット5とから構成されている。
【0047】
ブラケット5は、インストルメントパネル本体部10の裏面に振動溶着等の手段で固定されるダクト形成用の樹脂製インナパネル11と一体に形成される。図1において、インストルメントパネル本体部10とインナパネル11とで囲まれた領域12は空調用エアの通路になるダクト部であって、またインストルメントパネル本体部10とインナパネル11とが接する部分13では両者が振動溶着等の手段で接着固定されている。またエアバッグ収納容器4は、エアバッグカバー部2の周囲に形成された後述する溝部7および8の内のヒンジとして残る溝部8付近で、インストルメントパネル本体部10と一体に形成されたリブ9と共に、ブラケット5にビス止めやボルト止め等の手段で固定されている。エアバッグ収納容器4内に収納されているエアバッグ3は、収納容器4内のインフレータ6からガスを供給して膨張展開するようになっている。
【0048】
インストルメントパネル本体部10と一体に形成されているエアバッグカバー部2は、非常時にエアバッグが膨張展開する開口予定箇所になっており、その周囲に沿って裏面側に溝部7および8が形成されている。一方は、エアバッグ膨張展開時に破断する溝部7であり、他方は、ヒンジとして残る溝部8であって、両溝部によって開口部を一周する形状になっている。
【0049】
図2は、裏面側からみた溝部の形状の一例を示した概略平面図である。破断する溝部7は3辺に亘って形成されており、ヒンジとして残る溝部8は1辺に形成されているので、エアバッグ膨張展開時にはちょうど矩形の扉が開くような構造になる。
【0050】
【実施例】
次に本発明を実施例を通して説明するが、本発明はそれら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0051】
(実施例1)
高活性チタン系触媒を用いてプロピレン・エチレンブロック共重合体を製造した。このブロック共重合体は、次の性状を有していた。
【0052】
次に記す3成分を所定量ヘンシェルミキサーを用いて混合し、その後直径65mmの押出機に供給し、ペレット状の樹脂組成物を得た。
ブロック共重合体:50重量部
スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)
(エラストマーAと呼ぶ)
:シェルジャパン社製品、MFR(190℃);4(g/10分)
:40重量部
タルク:平均粒径;2μm
:10重量部
【0053】
このペレットから射出成形によって試験片を作成し、次に記す試験方法によって物性を測定し、その結果を表1に記した。
【0054】
(1)引張特性試験: ASTM D−638−84に準拠し、試験片はASTM D−638−84No.1を用い、ダンベルチャック間距離を114mm、温度23℃、引張速度10(mm/分)の条件で引張強度(MPa)の測定を行った。
【0055】
(2)曲げ特性試験: ASTM D−790に準拠し、試験片のサイズは厚さ6.4mm、幅12.7mm、長さ127mmで、スパン間距離100mm、曲げ速度2(mm/分)の条件で曲げ弾性率の測定を行った。
【0056】
(3)アイゾット衝撃試験: ASTM D−256に準拠し、試験片のサイズは厚さ6.4mm、幅12.7mm、長さ64mmでノッチを付け、温度−30℃の条件でアイゾット衝撃強度の測定を行った。
【0057】
(4)耐衝撃速度試験: −30℃の雰囲気で射出成形板(縦50mm、横60mm、厚さ3mm)に対して、先端ミサイル径1/2インチ、受け径3インチ、ミサイル速度1〜10(m/秒)の条件でミサイルを振り、破面が延性破壊を起す最大速度を耐衝撃速度として記した。
【0058】
(5)高速引張試験: 試験片としてASTM D−638−84No.1を用い、−25℃の雰囲気で、引張速度5(m/秒)の条件で引張試験を行ない、高速引張伸び(%)を求めた。
【0059】
(6)ヒートサグ試験: 試験片(縦125mm、横12.5mm、厚さ2mm)を温度100℃に15分間保持し、100℃におけるたるみ量(mm)を測定し、次の基準で良否を判断した。
○:たるみ量3mm以下
△:たるみ量3〜4mm
×:たるみ量4mm以上
【0060】
次いで射出成形機を用い、材料温度210℃、射出圧力70MPaの条件で、前記した樹脂組成物からエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルを射出成形によって製造した。その後、ダクト形成用の樹脂製インナパネルを振動溶着法で固定し、このインナパネルに一体に形成されたブラケットにエアバッグ収納容器を取り付けた。
なお、成形品の平均肉厚は、3.0mmで、溝部の深さは次の通りであった。
破断する溝部:0.5mm
ヒンジとして残る溝部:1.0mm
【0061】
得られたインストルメントパネルについて、エアバッグの膨張展開テストを行ない、次の評価を行った。
A:展開後、破断部にシャープエッジがあるか否かを目視で調べた。
○;エッジなし
×;エッジあり
B:エアバッグカバーが飛ばされずにヒンジ機能が働いたか否かを目視
で調べた。
○;付け根部が全面的に飛ばない。
×;付け根部が一部でも飛ぶ。
【0062】
(実施例2)(比較例1〜2)
実施例1におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体とスチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)との配合量を表1に記載した配合割合へと変更した以外は実施例1と同様に行った。測定結果を表1に併せて示した。
【0063】
(実施例3)
実施例1で用いたスチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)の代わりにエチレン・1−ブテンランダム共重合体(エラストマーBと呼ぶ)を用いる以外は実施例1と同様に行った。測定結果を表1に併せて示した。
【0064】
【表1】
【0065】
【発明の効果】
本発明に係わるエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルは、高い耐熱性と剛性とを有する樹脂組成物を用いていることから、車内が高温になった場合においても、インストルメントパネル本体部、エアバッグカバー部、およびエアバッグカバー部に設けられた溝部が、ほとんど変形することがなく、正常な形を保っている。
【0066】
また、エアバッグカバー部には、裏面側に開口予定箇所の周囲に適切な溝が形成されているので、衝撃を受けた時にエアバッグ設置の目的である確実な膨張展開がスムーズに行われ、その際破片の飛散がほとんど起こらないことから、搭乗者の安全を守ることができる。また、ヒンジ部の根本にリブを設けることによって、エアバッグが膨張展開した時に開いたエアバッグカバー部が飛散せずに踏ん張る構造とすることができる。
【0067】
このエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルは、インストルメントパネルとして必要な要求特性を満しており、同一樹脂組成物でインストルメントパネルとエアバッグカバーとを一体成形することができるために製造効率が高く、見栄えのよい良好な外観を呈する。また、このエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルは単層成形が可能であることから、コスト的にも有利であって、その上容易にリサイクル使用ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エアバッグ装置の一実施例を示す概略断面図である。
【図2】エアバッグカバー部の裏面側の溝部の形状の一例を示した概略平面図である。
【符号の説明】
1 エアバッグ装置
2 エアバッグカバー
3 エアバッグ
4 エアバッグ収納容器
5 ブラケット
6 インフレータ
7 破断する溝部
8 ヒンジとして残る溝部
9 リブ
10 インストルメントパネル本体部
11 ダクト形成用インナパネル
12 ダクト部
13 振動溶着部
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のインストルメントパネルとそれに形成された助手席前方のエアバッグ装置用開口部を覆うエアバッグカバーとが、同一樹脂材料によって一体に形成されたエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルに関し、より詳細にはエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルの材質と構造とに関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
自動車のエアバッグ装置は、その中に装備されているエアバッグが、衝突時の衝撃等を感知してその中に注入されてきたガスによって膨張し、運転席や助手席の前方に展開し、搭乗者の体が前方の窓ガラスや内装材等に激突するのを防止することによって、搭乗者の安全保護を図る装置である。
【0003】
助手席用のエアバッグ装置は、通常はインストルメントパネル内に収納されている。そしてインストルメントパネルには膨張するエアバッグを通過させるための開口部が形成されており、その開口部はエアバッグカバーで覆われるようになっている。エアバッグカバーは、インストルメントパネルと一体に形成することができる。しかしながら、エアバッグカバーは衝撃によって膨張するエアバッグの圧力で容易にインストルメントパネルから破断し、エアバッグをカバーの外部へと膨張展開できると共に、その際搭乗者を傷つけるかもしれない破片を周囲に飛散させないことが求められている。また、そのカバーには、インストルメントパネルの一部として、夏季の高温で変形しないような耐熱性および自立性も同時に求められている。
【0004】
一方、インストルメントパネルは、自動車内装材の中心をなす大型成形品であることから、フローマークのない見栄えのよい外観を呈するように、その成形材料には高い流動性が要求されている。その上、リサイクル使用が容易な材料であることも重要な素材選択の要素である。しかし、インストルメントパネルとエアバッグカバーとを同一樹脂材料で一体に形成することはこれ迄困難とされ、従来は異なる材料による2色成形によって一体に成形されてきた。
【0005】
そのようなエアバッグカバーとして、構造面および材質面から種々の検討が進められている。例えば、特開平4−314648号や特開平10−279745号公報では、成形材料としてオレフィン系熱可塑性エラストマーの使用が提案されているが、その軟らかい物性から前述した諸要求を満たすことは困難であった。
【0006】
熱可塑性エラストマーの剛性不足を補う一手段として、特開平1−202550号、特開平2−220946号、特開平6−156175号、特開平10−264759号、特開平11−207768号、特開平11−208407号、および特開2000−72937号公報では、熱可塑性エラストマー層にポリオレフィン層を裏打ちした積層体の使用を提案している。しかしながら、その積層体の製造およびそれからエアバッグカバーを製造するに際して、特別な工程を付加することからコストアップになると共に、その積層体はそのまま単純に溶融再利用ができないのでリサイクル使用の方法も複雑化してくる。
【0007】
一方、熱可塑性エラストマーよりも高い剛性を有するポリプロピレン樹脂組成物をインストルメントパネルの成形材料として使用することが、特開平10−265628号および特開平11−80493号公報に提案されている。ところがそれら公報に記載されている樹脂組成物は、流動性に乏しいばかりでなく、剛性が未だ小さくて自立性に不足し、また耐熱性も十分とは言い難く、一層の樹脂改良が求められている。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−265628号公報
【特許文献2】
特開平11−80493号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、耐熱性と剛性とを有し、エアバッグの膨張展開時にはエアバッグカバー部が容易に破断してエアバッグの膨張を容易にすると共に、周囲へ破片の飛散が起こらないようにし、かつインストルメントパネルとエアバッグカバーとを同一樹脂材料で一体に形成することによって外観良好でかつ成形およびリサイクル使用が容易なエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルの提供を目的にする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、樹脂組成物から形成されたインストルメントパネルにエアバッグカバー部が一体に設けられており、
(1)その樹脂組成物は、メルトフローレート(MFR)が30〜100(g/10分)のプロピレン・エチレンブロック共重合体40〜70重量%、エラストマー25〜45重量%および無機充填剤5〜15重量%とから構成され、かつそのMFRは10〜50(g/10分)であって、
(2)前記のプロピレン・エチレンブロック共重合体は、アイソタクチックペンタッド分率が0.97以上のn−デカン不溶部(23℃)と、エチレン含量が20〜50重量%かつ極限粘度[η]が2〜9(dl/g)のn−デカン可溶部(23℃)とを含み、
(3)さらにエアバッグカバー部には、エアバッグ膨張展開時に開口部となる予定箇所の裏面側周囲に、エアバッグが膨張した時に破断する溝部およびヒンジとして残る溝部とが互いに深さを異にして形成されている
エアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルに関する。
【0011】
前記のプロピレン・エチレンブロック共重合体は、70〜95重量%のn−デカン不溶部(23℃)および5〜30重量%のn−デカン可溶部(23℃)とを含んでいることが望ましい。また、前記のエラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーであることが望ましく、特にスチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。そして、このような樹脂組成物は、ASTM D−790に準拠して測定したその曲げ弾性率が700〜1200MPaであることが望ましい。
【0012】
さらに、前記の破断する溝部は、それを形成する成形品の肉厚が0.2〜0.6mmであり、またヒンジとして残る溝部は、それを形成する成形品の肉厚が0.6〜4.0mmであることが望ましい。そして、インストルメントパネルは、その本体部裏面にダクト形成用の樹脂製インナパネルが振動溶着されていることが望ましい。
【0013】
【発明の具体的説明】
次に、エアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルを形成する樹脂組成物およびインストルメントパネルの構造について、詳細に説明する。
【0014】
樹 脂 組 成 物
本発明に係わるエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルは、プロピレン・エチレンブロック共重合体40〜70重量%、好ましくは50〜60重量%、エラストマー25〜45重量%、好ましくは30〜40重量%、無機充填材5〜15重量%、好ましくは7〜13重量%とから構成された樹脂組成物から少なくとも形成されている。ここで3成分の合計量が100重量%になる。このような構成の樹脂組成物は、高い耐熱性と剛性とを有しているので、その成形品が夏季の高温環境下に置かれても、変形したりあるいは自立性を損なうことはほとんどない。
【0015】
前記した少なくとも3成分からなるこの樹脂組成物は、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が、10〜50(g/10分)、好ましくは20〜40(g/10分)である。MFR値がこの範囲にあると、その樹脂組成物は溶融流動性が高いことから射出成形性が良好で、また成形品表面にフローマーク等が発生しにくく、見栄えが良好な外観を呈する。
【0016】
またこの樹脂組成物は、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が、好ましくは700〜1200MPa、より好ましくは800〜1100MPaであることが望ましい。曲げ弾性率が前記の範囲にあると、エアバッグの膨張展開時に、エアバッグカバー部の破壊や飛散等が起こりにくく、他方インストルメントパネルとして必要な剛性を保持しているので、あえて補強材を用いなくても十分な自立性を示す。その際、インストルメントパネル本体部裏面にダクト形成用の樹脂製インナパネルを振動溶着法で溶着した構造にすると、より一層製品に剛性を持たせることができる。
【0017】
さらに、ASTM D−256に準拠し、−30℃、ノッチ付きで測定したアイゾット衝撃強度が、好ましくは300(J/m)以上、より好ましくは350(J/m)以上であることが望ましい。衝撃強度が前記の範囲にあると、自動車内装材に要求される低温耐衝撃性を満足すると共に、エアバッグの膨張展開時にエアバッグカバー部の破壊や飛散等が起こりにくい。
【0018】
<ブロック共重合体>
プロピレン・エチレンブロック共重合体は、n−デカン溶媒を用いて23℃で分別すると、共重合体中に含まれるモノマー単位の含量や分子構造等によって、n−デカンに可溶な成分と不溶な成分とに分離される。本発明で使用可能なブロック共重合体は、不溶部が好ましくは70〜95重量%、より好ましくは75〜90重量%と、可溶部が好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%との割合で含まれる重合体であって、高い耐熱性と剛性とを保持している。
【0019】
ここで前記の分別は、次に記す方法で行うことができる。すなわち、プロピレン・エチレンブロック共重合体の試料5gを135℃のデカン500mlに添加し、十分に撹拌して可溶性成分を完全に溶解させる。その後、23℃に降温して24時間静置し、遠心分離法によって可溶部と不溶部とに分ける。可溶部は、1000mlのアセトン中へ移してポリマーを析出させ、デカンテーション法で析出物を集め、さらにろ過、洗浄、乾燥を行ってから重量を測定し、可溶部量として求めることができる。可溶部以外の量を不溶部量とする。
【0020】
n−デカン不溶部は、主にプロピレンホモポリマーから構成されているが、10モル%、好ましくは5モル%以下のエチレンをコモノマー単位として含有する共重合体が少量含まれていてもよい。このn−デカン不溶部は、13C−NMRで測定されるアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が0.97以上、好ましくは0.975以上である。そのような高いアイソタクチックペンタッド分率を有する不溶部は、高立体規則性の重合体であって、それを含むプロピレン・エチレンブロック共重合体は結晶性が高いことから、高い機械的強度を保持している。
【0021】
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は、ポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の存在割合を表す指標である。具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中に占める、プロピレンモノマー単位で5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の吸収ピークの割合を測定して求める。
【0022】
さらにこの不溶部は、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が、好ましくは40〜300(g/10分)、より好ましくは80〜200(g/10分)の範囲にあることが望ましい。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定し、分子量分布の指標として使われているMw/Mnの値が、好ましくは4〜20、より好ましくは5〜8の範囲にあることが望ましい。MFRおよびMw/Mnの値が前記の範囲にあると、溶融流動性が良好なブロック共重合体を与える。
【0023】
他方、n−デカン可溶部は、主としてプロピレン・エチレンランダム共重合体から構成されており、その他にブロック共重合体を製造する際に生じる各種の重合体や副生成物が少量含まれていてもよい。この可溶部には、赤外線吸収スペクトル分析によって測定されるエチレン単位を、20〜50重量%、好ましくは25〜35重量%含有していることが望ましい。エチレン単位の含量が前記の範囲にあるプロピレン・エチレンブロック共重合体は、高い曲げ弾性率と耐衝撃性とを示し、自動車内装材として好適である。
【0024】
また、この可溶部は、デカリン溶媒を用いて135℃で測定した時の極限粘度[η]が、2〜9(dl/g)、好ましくは4〜8(dl/g)、さらに好ましくは5〜7(dl/g)である。極限粘度が前記の範囲にあると、そのような可溶部を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体は、高い機械的強度を有し、自動車内装材として好適である。
【0025】
前記したn−デカン不溶部と可溶部とを含むプロピレン・エチレンブロック共重合体は、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が、30〜100(g/10分)、好ましくは50〜90(g/10分)、より好ましくは70〜90(g/10分)である。
【0026】
このような性状を有するプロピレン・エチレンブロック共重合体は、溶融流動性が良好で、それを含む樹脂組成物からは、柔軟性と剛性とのバランスがとれかつ高い耐衝撃性を有するエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルを製造することができる。
【0027】
前記してきたプロピレン・エチレンブロック共重合体は、基本的にはプロピレン単独重合体部分、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分、必要に応じてエチレン重合体部分とから構成されており、また他の重合性モノマーが重合体単位として含まれていてもよい。そのようなブロック共重合体は、オレフィンの立体規則性重合触媒の存在下に、プロピレンとエチレンとを、必要に応じて他のα−オレフィンを存在させて重合することによって製造することができる。
【0028】
例えば、第1段階としてプロピレンの単独重合を行い、第2段階としてプロピレンとエチレンとの共重合を行い、必要に応じて第3段階としてエチレンの単独重合を行うプロセスを採用することによって製造することができる。この製造プロセスは、連続的に行うこともできるし、バッチ式あるいは半連続的に行うこともできる。また、別途製造したプロピレンの単独重合体とプロピレン・エチレンランダム共重合体とをブレンドするプロセスで製造することもできる。重合方法は、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法、バルク重合法など、いずれの方法を用いてもよい。
【0029】
重合触媒としては、チーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒等を使用することができ、その一例として(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(B)有機アルミニウム化合物、および(C)電子供与体とからなる触媒系を挙げることができる。固体触媒成分は、マグネシウム化合物、ハロゲン化チタン化合物および電子供与体を接触させることによって得ることができる。
【0030】
このブロック共重合体中には、分岐状オレフィン重合体が0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下の割合で含有されていてもよい。分岐状オレフィン重合体は、成形時にプロピレン・エチレンブロック共重合体の核剤として作用するので、前記のアイソタクチックペンタッド分率を高め、成形性を向上させることができる。その重合体としては、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等の分岐状オレフィン単独重合体または共重合体が使用でき、それらの中でも3−メチル−1−ブテン重合体が好ましい。
【0031】
<エラストマー>
本発明に使用可能なエラストマーとしては、エラストマーとしての性状を有する重合体であれば特に制限されない。中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0032】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、炭素原子数が2〜20、好ましくは2〜10のα−オレフィンを構成単位として含む、低結晶性ないし非結晶性のα−オレフィン共重合体であって、特にエチレンまたはプロピレンを主な構成単位として含む共重合体が好ましい。そのような共重合体の例として、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、エチレン・1−ブテン共重合体(EBR)、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体(EOR)、エチレン・1−デセン共重合体等のエチレン系共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のプロピレン系共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、エチレン・プロピレン・シクロオクタジエン共重合体、エチレン・ブタジエン共重合体等のエチレン・ジエン共重合体を挙げることができる。
【0033】
これらの中でも、特にEPR、EBR、EOR、およびそれらの混合物が好ましく使用できる。EPR、EBR、EORのようなエチレン・α−オレフィン共重合体の場合、エチレン単位の含有量が好ましくは30〜90重量%、より好ましくは60〜80重量%であり、α−オレフィン単位の含有量が好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜40重量%である。また、ASTM D−1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgの条件下で測定したそのメルトフローレート(MFR)値が、好ましくは0.1〜120(g/10分)、より好ましくは0.5〜60(g/10分)である共重合体が望ましい。
【0034】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレンを構成単位として10モル%以上含む重合体のエラストマーであって、例えばスチレン・ブタジエンランダム共重合体(SBR)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、SBSの水素添加物であるスチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、SISの水素添加物であるスチレン・エチレン/プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、およびスチレン・イソプレンブロック共重合体を挙げることができる。なお、前記の水素添加物は、完全水素化物であってもよいし、不完全水素化物であってもよい。
【0035】
そのようなスチレン系熱可塑性エラストマーは、クレイトン(Kratonn、シェル化学(株)製品)、キャリフレックスTR(シェル化学(株)製品)、ソルプレン(フィリップスペトリウム社製品)、ユーロプレンSOLT(アニッチ社製品)、タフプレン(旭化成(株)製品)、ソルプレン−T(日本エラストマー社製品)、JSRTR(日本合成ゴム(株)製品)、電化STR(電気化学(株)製品)、クインタック(日本ゼオン(株)製品)、クレイトンG(シェル化学(株)製品)、タフテック(旭化成(株)製品)等の商品名で市販されており、容易に入手することができる。
【0036】
これらのエラストマーの中でもスチレン系ブロック共重合体が好ましく、特にスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)を水素添加して製造され、ポリスチレンブロック単位とエチレン/ブチレン共重合体ゴムブロック単位とから構成されているSEBSが好ましい。このSEBSは、ハードセグメントであるポリスチレンブロック単位が、ソフトセグメントであるエチレン/ブチレン共重合体ゴムブロック単位との間で物理架橋を形成し、熱可塑性エラストマーとしての性状を示す。そのようなSEBSとしては、赤外線吸収スペクトルまたはNMRによって測定されるスチレン単位を14〜40モル%含有している重合体が好ましい。また、ASTM D−1238に準拠し、190℃で測定されるメルトフローレート(MFR)値が、好ましくは0.01〜100(g/10分)、より好ましくは0.1〜50(g/10分)であることが望ましい。
【0037】
<無機充填材>
無機充填材(C)としては、タルク、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、けい酸塩類、炭酸塩類、ガラス繊維等の通常プラスチック用配合材として利用されている無機物を使用することができる。それらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、タルクまたは炭酸カルシウムが好ましく、特にタルクが好ましく、その平均粒径が好ましくは1〜5μm、より好ましくは1〜3μmのものが望ましい。
【0038】
前記したプロピレン・エチレンブロック共重合体、エラストマーおよび無機充填材は、その所定量を、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダーあるいはタンブラーブレンダー等を用いて均一に混合し、次いで押出機を用いて通常ペレット状に加工し、樹脂組成物として使用する。
【0039】
なお、各成分の混合に際して、本発明の目的を損なわない範囲内で酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、老化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、核剤、滑剤、難燃剤、顔料、染料、有機充填剤等を任意に配合してもよい。
【0040】
エアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネル
エアバッグカバーとインストルメントパネルは、前記の樹脂組成物を用いて射出成形することによって両者を一体に製造することができる。すなわち、本発明のインストルメントパネルは、インストルメントパネル本体部とエアバッグカバー部とから構成されており、両部が一体になっていることで製品に違和感がなく、見栄えの良い外観を呈する。また前記の樹脂組成物を用いてインストルメントパネル単独として使用することも可能である。そしてエアバッグカバー部を一体に有するインストルメントパネルにあっては、車の組み立て時に、あるいは部品組み立て時に、インストルメントパネルの裏面側からエアバッグ収納容器をエアバッグカバー部に対応する位置に取り付ける。
【0041】
平常時にはエアバッグがエアバッグカバー部の裏面側に収納されているので、エアバッグカバー部の表面側はインストルメントパネル本体部と変らない同じ外観を呈しているが、非常時にはエアバッグカバー部が開口して、エアバッグが裏面側から膨張展開した状態になる。そのために、エアバッグカバー部にはエアバッグ膨張展開時に開口部となる予定箇所周囲の、エアバッグが収納されている裏面側に溝が形成されており、非常時にその溝部の一部が破断して開口部を形成する。本発明では、その溝部には、エアバッグ膨張展開時に破断する溝部とヒンジとして残る溝部とが設けられており、非常時にはその破断する溝部が切り離されてエアバッグカバー部が外部方向へと飛び出し、ヒンジとして残る溝部でエアバッグカバー部がインストルメントパネル本体部に接続しているので、ちょうど扉が開いたような構造になる。
【0042】
なお、ヒンジ部の根本にインストルメントパネル本体部から延びるリブを設け、そのリブをエアバッグ収納容器と共にエアバッグ収納容器取り付け用ブラケットに取り付けることによって、エアバッグが膨張展開した時に扉が飛散せずに踏ん張る構造とすることもできる。
【0043】
成形品の平均的な肉厚は通常1〜5mmであることから、破断する溝部の肉厚は前記の平均的な肉厚の50%以下、好ましくは0.2〜0.6mmに調整され、またヒンジとして残る溝部の肉厚は、好ましくは0.6〜4.0mm、より好ましくは0.8〜1.5mmになるように溝部の肉厚、すなわち溝部の深さの調整がなされている。
【0044】
その溝部は、連続的な線状に形成されていてもよいし、断続的な線状に形成されていてもよいし、またはミシン目状の不連続貫通孔状であってもよい。或いは大半が連続的な線状であって、残りの部分が断続的な線状であってもよい。このような溝は、前記の形状になるように予め突条を設けた射出成形金型を用いて射出成形してもよいし、あるいは射出成形後、インストルメントパネルのエアバッグカバー部の周囲に溝をレーザー加工等によって刻設してもよい。
【0045】
次に図面を参照して、本発明に係わるエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルの構造についてより詳細に説明する。
【0046】
図1は、エアバッグ装置の一実施例を示す概略断面図である。まず、インストルメントパネルは、インストルメントパネル本体部10とエアバッグカバー部2とから構成されている。そして、エアバッグ装置1は、インストルメントパネル本体部10と一体に形成されたエアバッグカバー部2、エアバッグ3、エアバッグ収納容器4およびエアバッグ収納容器取り付け用ブラケット5とから構成されている。
【0047】
ブラケット5は、インストルメントパネル本体部10の裏面に振動溶着等の手段で固定されるダクト形成用の樹脂製インナパネル11と一体に形成される。図1において、インストルメントパネル本体部10とインナパネル11とで囲まれた領域12は空調用エアの通路になるダクト部であって、またインストルメントパネル本体部10とインナパネル11とが接する部分13では両者が振動溶着等の手段で接着固定されている。またエアバッグ収納容器4は、エアバッグカバー部2の周囲に形成された後述する溝部7および8の内のヒンジとして残る溝部8付近で、インストルメントパネル本体部10と一体に形成されたリブ9と共に、ブラケット5にビス止めやボルト止め等の手段で固定されている。エアバッグ収納容器4内に収納されているエアバッグ3は、収納容器4内のインフレータ6からガスを供給して膨張展開するようになっている。
【0048】
インストルメントパネル本体部10と一体に形成されているエアバッグカバー部2は、非常時にエアバッグが膨張展開する開口予定箇所になっており、その周囲に沿って裏面側に溝部7および8が形成されている。一方は、エアバッグ膨張展開時に破断する溝部7であり、他方は、ヒンジとして残る溝部8であって、両溝部によって開口部を一周する形状になっている。
【0049】
図2は、裏面側からみた溝部の形状の一例を示した概略平面図である。破断する溝部7は3辺に亘って形成されており、ヒンジとして残る溝部8は1辺に形成されているので、エアバッグ膨張展開時にはちょうど矩形の扉が開くような構造になる。
【0050】
【実施例】
次に本発明を実施例を通して説明するが、本発明はそれら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0051】
(実施例1)
高活性チタン系触媒を用いてプロピレン・エチレンブロック共重合体を製造した。このブロック共重合体は、次の性状を有していた。
【0052】
次に記す3成分を所定量ヘンシェルミキサーを用いて混合し、その後直径65mmの押出機に供給し、ペレット状の樹脂組成物を得た。
ブロック共重合体:50重量部
スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)
(エラストマーAと呼ぶ)
:シェルジャパン社製品、MFR(190℃);4(g/10分)
:40重量部
タルク:平均粒径;2μm
:10重量部
【0053】
このペレットから射出成形によって試験片を作成し、次に記す試験方法によって物性を測定し、その結果を表1に記した。
【0054】
(1)引張特性試験: ASTM D−638−84に準拠し、試験片はASTM D−638−84No.1を用い、ダンベルチャック間距離を114mm、温度23℃、引張速度10(mm/分)の条件で引張強度(MPa)の測定を行った。
【0055】
(2)曲げ特性試験: ASTM D−790に準拠し、試験片のサイズは厚さ6.4mm、幅12.7mm、長さ127mmで、スパン間距離100mm、曲げ速度2(mm/分)の条件で曲げ弾性率の測定を行った。
【0056】
(3)アイゾット衝撃試験: ASTM D−256に準拠し、試験片のサイズは厚さ6.4mm、幅12.7mm、長さ64mmでノッチを付け、温度−30℃の条件でアイゾット衝撃強度の測定を行った。
【0057】
(4)耐衝撃速度試験: −30℃の雰囲気で射出成形板(縦50mm、横60mm、厚さ3mm)に対して、先端ミサイル径1/2インチ、受け径3インチ、ミサイル速度1〜10(m/秒)の条件でミサイルを振り、破面が延性破壊を起す最大速度を耐衝撃速度として記した。
【0058】
(5)高速引張試験: 試験片としてASTM D−638−84No.1を用い、−25℃の雰囲気で、引張速度5(m/秒)の条件で引張試験を行ない、高速引張伸び(%)を求めた。
【0059】
(6)ヒートサグ試験: 試験片(縦125mm、横12.5mm、厚さ2mm)を温度100℃に15分間保持し、100℃におけるたるみ量(mm)を測定し、次の基準で良否を判断した。
○:たるみ量3mm以下
△:たるみ量3〜4mm
×:たるみ量4mm以上
【0060】
次いで射出成形機を用い、材料温度210℃、射出圧力70MPaの条件で、前記した樹脂組成物からエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルを射出成形によって製造した。その後、ダクト形成用の樹脂製インナパネルを振動溶着法で固定し、このインナパネルに一体に形成されたブラケットにエアバッグ収納容器を取り付けた。
なお、成形品の平均肉厚は、3.0mmで、溝部の深さは次の通りであった。
破断する溝部:0.5mm
ヒンジとして残る溝部:1.0mm
【0061】
得られたインストルメントパネルについて、エアバッグの膨張展開テストを行ない、次の評価を行った。
A:展開後、破断部にシャープエッジがあるか否かを目視で調べた。
○;エッジなし
×;エッジあり
B:エアバッグカバーが飛ばされずにヒンジ機能が働いたか否かを目視
で調べた。
○;付け根部が全面的に飛ばない。
×;付け根部が一部でも飛ぶ。
【0062】
(実施例2)(比較例1〜2)
実施例1におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体とスチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)との配合量を表1に記載した配合割合へと変更した以外は実施例1と同様に行った。測定結果を表1に併せて示した。
【0063】
(実施例3)
実施例1で用いたスチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)の代わりにエチレン・1−ブテンランダム共重合体(エラストマーBと呼ぶ)を用いる以外は実施例1と同様に行った。測定結果を表1に併せて示した。
【0064】
【表1】
【0065】
【発明の効果】
本発明に係わるエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルは、高い耐熱性と剛性とを有する樹脂組成物を用いていることから、車内が高温になった場合においても、インストルメントパネル本体部、エアバッグカバー部、およびエアバッグカバー部に設けられた溝部が、ほとんど変形することがなく、正常な形を保っている。
【0066】
また、エアバッグカバー部には、裏面側に開口予定箇所の周囲に適切な溝が形成されているので、衝撃を受けた時にエアバッグ設置の目的である確実な膨張展開がスムーズに行われ、その際破片の飛散がほとんど起こらないことから、搭乗者の安全を守ることができる。また、ヒンジ部の根本にリブを設けることによって、エアバッグが膨張展開した時に開いたエアバッグカバー部が飛散せずに踏ん張る構造とすることができる。
【0067】
このエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルは、インストルメントパネルとして必要な要求特性を満しており、同一樹脂組成物でインストルメントパネルとエアバッグカバーとを一体成形することができるために製造効率が高く、見栄えのよい良好な外観を呈する。また、このエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネルは単層成形が可能であることから、コスト的にも有利であって、その上容易にリサイクル使用ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エアバッグ装置の一実施例を示す概略断面図である。
【図2】エアバッグカバー部の裏面側の溝部の形状の一例を示した概略平面図である。
【符号の説明】
1 エアバッグ装置
2 エアバッグカバー
3 エアバッグ
4 エアバッグ収納容器
5 ブラケット
6 インフレータ
7 破断する溝部
8 ヒンジとして残る溝部
9 リブ
10 インストルメントパネル本体部
11 ダクト形成用インナパネル
12 ダクト部
13 振動溶着部
Claims (8)
- 樹脂組成物から形成されたインストルメントパネルにエアバッグカバー部が一体に設けられており、
(1)その樹脂組成物は、メルトフローレート(MFR)が30〜100(g/10分)のプロピレン・エチレンブロック共重合体40〜70重量%、エラストマー25〜45重量%および無機充填材5〜15重量%とから構成され、かつそのMFRは10〜50(g/10分)であって、
(2)前記のプロピレン・エチレンブロック共重合体は、アイソタクチックペンタッド分率が0.97以上のn−デカン不溶部(23℃)と、エチレン含量が20〜50重量%かつ極限粘度[η]が2〜9(dl/g)のn−デカン可溶部(23℃)とを含み、
(3)さらにエアバッグカバー部には、エアバッグ膨張展開時に開口部となる予定箇所の裏面側周囲に、エアバッグが膨張した時に破断する溝部およびヒンジとして残る溝部とが互いにその深さを異にして形成されている
ことを特徴とするエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネル。 - 前記のプロピレン・エチレンブロック共重合体は、70〜95重量%のn−デカン不溶部(23℃)および5〜30重量%のn−デカン可溶部(23℃)とを含んでいることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネル。
- 前記のエラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネル。
- 前記のスチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体であることを特徴とする請求項3に記載のエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネル。
- 前記のオレフィン系熱可塑性エラストマーが、エチレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項3に記載のエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネル。
- 前記の樹脂組成物は、ASTM D−790に準拠して測定したその曲げ弾性率が700〜1200MPaであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネル。
- 前記の破断する溝部は、それを形成する成形品の肉厚が0.2〜0.6mmであり、またヒンジとして残る溝部は、それを形成する成形品の肉厚が0.6〜4.0mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネル。
- 本体部裏面にダクト形成用の樹脂製インナパネルが振動溶着されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエアバッグカバーを一体に有するインストルメントパネル。
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JP2008001290A (ja) * | 2006-06-23 | 2008-01-10 | Suiryo Plastics Co Ltd | 自動車内装用パネル及び自動車内装用パネルの加工方法 |
JP2013504654A (ja) * | 2009-09-14 | 2013-02-07 | 住友化学株式会社 | 高性能の熱可塑性エラストマー組成物 |
JP2014077128A (ja) * | 2012-09-19 | 2014-05-01 | Mitsubishi Chemicals Corp | エアバッグ収納カバー |
-
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