JP2004183675A - ディーゼルエンジンの変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】変速制御に基づいてディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制する。
【解決手段】大気圧Atpから黒煙発生の容易性を判定し(S104)、大気圧Atp<Latpの場合には黒煙発生の容易性が高いと判断して(S104で「YES」)、変速線図をダウンシフトし易い変速線図に変更している(S108)。低エンジン回転数側が黒煙の発生し易い領域であるので変速制御をダウンシフトし易い変速制御に変更することでエンジン回転数を上昇させている。このことで黒煙が発生しにくい高エンジン回転数側へ移行させることができ、低大気圧時に燃料噴射量が増加することがあってもディーゼルエンジンの黒煙発生を効果的に抑制することができる。
【選択図】 図2
【解決手段】大気圧Atpから黒煙発生の容易性を判定し(S104)、大気圧Atp<Latpの場合には黒煙発生の容易性が高いと判断して(S104で「YES」)、変速線図をダウンシフトし易い変速線図に変更している(S108)。低エンジン回転数側が黒煙の発生し易い領域であるので変速制御をダウンシフトし易い変速制御に変更することでエンジン回転数を上昇させている。このことで黒煙が発生しにくい高エンジン回転数側へ移行させることができ、低大気圧時に燃料噴射量が増加することがあってもディーゼルエンジンの黒煙発生を効果的に抑制することができる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はディーゼルエンジンの変速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンの黒煙対策のために、例えば補助ブレーキを作動させて変速時間を短縮する変速制御装置において、補助ブレーキの作動タイミングを適正化して、補助ブレーキの耐久性を向上させると共に黒煙排出を低減させる技術が提案されている(例えば特許文献1)。又、無負荷状態のディーゼルエンジンを急加速させた時に噴射量の上昇を抑制して黒煙排出を低減させる技術が提案されている(例えば特許文献2)。
【0003】
尚、ディーゼルエンジンに対する変速制御として、例えば車両の高度位置に基づいて平地と高地とで変速特性を変更して、高地での走行性を高める技術が提案されている(例えば特許文献3)。又、登坂路でのロックアップによる車両の走行抵抗を利用してエンジン回転数の上昇しすぎを抑制して駆動力の低下を防止する技術が知られている(例えば特許文献4)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−328975号公報(第4−5頁、第2図)
【特許文献2】
特開平8−319858号公報(第3頁、第2図)
【特許文献3】
特開昭64−55467号公報(第5頁、第4図)
【特許文献4】
特開2002−39365号公報(第4頁、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし高地や高負荷などによりディーゼルエンジンが黒煙を生じやすくなるがこのようなディーゼルエンジンの運転状態に伴う黒煙対策のために変速制御を用いた技術については提案されておらず、黒煙抑制のために如何にして変速制御を実行するかについては不明である。
【0006】
本発明は、変速制御に基づいてディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置は、ディーゼルエンジンに設けられて自動変速機能を有する変速機における変速制御装置であって、ディーゼルエンジンの黒煙発生の容易性を判定する黒煙発生容易性判定手段と、前記黒煙発生容易性判定手段にて判定された黒煙発生の容易性に応じて前記変速機に対する変速制御を変更して、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制する黒煙抑制変速制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
黒煙抑制変速制御手段は、黒煙発生容易性判定手段にて判定された黒煙発生の容易性に応じて変速機に対する変速制御を変更することで、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制している。変速機に対する変速制御を変更することにより、ディーゼルエンジンの運転状態、例えばエンジン回転速度が変化する。このことにより黒煙を抑制する方向にエンジン運転状態を変更させることができる。
【0009】
このようにして変速制御に基づいてディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
請求項2に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1において、前記黒煙抑制変速制御手段はエンジン回転速度を上昇させるように変速制御を変更することで、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することを特徴とする。
【0010】
特にディーゼルエンジンの黒煙は低回転速度側が発生し易い領域であるので、黒煙抑制変速制御手段は変速制御の変更によりエンジン回転速度を上昇させ、このことで黒煙が発生しにくい高回転速度側へ移行させて、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1において、前記黒煙抑制変速制御手段は変速制御をダウンシフトし易い変速制御に変更することで、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することを特徴とする。
【0012】
特にディーゼルエンジンの黒煙は低回転速度側が発生し易い領域である。したがって黒煙抑制変速制御手段は変速制御をダウンシフトし易い変速制御に変更することで回転速度を上昇させ、このことで黒煙が発生しにくい高回転速度側へ移行させることができ、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することができる。
【0013】
請求項4に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1において、前記黒煙抑制変速制御手段は変速制御をアップシフトし難い変速制御に変更することで、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することを特徴とする。
【0014】
このように黒煙抑制変速制御手段は変速制御をアップシフトし難い変速制御に変更することで回転速度の低下を抑制し、このことで黒煙が発生しにくい高回転速度側に留まらせることができ、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することができる。
【0015】
請求項5に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記変速機は自動変速機能と手動変速機能との両機能を有することを特徴とする。
【0016】
尚、変速機は自動変速機能を有するものばかりでなく、自動変速機能と手動変速機能との両機能を有するものでも良い。このような変速機において、自動変速機能と手動変速機能とのいずれが機能していても、前記各請求項のごとく変速制御を変更することにより、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することができる。
【0017】
請求項6に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、前記変速機に対する変速制御を黒煙抑制用の変速制御に切り換えることにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることを特徴とする。
【0018】
黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定されると、黒煙抑制変速制御手段は、変速制御を黒煙抑制用の変速制御に切り換えている。このことによりディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させている。
【0019】
例えば、高地で大気圧が低下した場合や、積載重量が大きい場合には、燃料噴射量と酸素濃度との関係から黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境となる。したがってこのような場合には、例えばエンジン回転速度を高くすれば黒煙は発生し難くなる。したがって、例えばエンジン回転速度が高まるような黒煙抑制用の変速制御に切り換えることにより黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることができる。
【0020】
このようにして変速制御に基づいてディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
請求項7に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6において、前記黒煙の発生し易いエンジン運転領域は、エンジン回転速度で表される領域であることを特徴とする。
【0021】
より具体的には、黒煙の発生し易いエンジン運転領域はエンジン回転速度にて表すことができる。したがって黒煙の発生し易いエンジン回転速度領域では変速制御を黒煙抑制用の変速制御に切り換えることによりエンジン回転速度を変更して黒煙の発生し易いエンジン回転速度領域から離すことにより、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることができる。
【0022】
尚、ここでエンジン回転速度と言っているのは、単位時間当たりのエンジン回転回数(いわゆるエンジン回転数)のみに限らない。すなわち、変速比にて換算した変速機の出力軸回転数や、車両に用いられている場合には変速比に換算した車速をも含む概念であり、エンジンの回転する速度を表すことができる物理量を全て含む概念である。他の請求項においても同じである。
【0023】
請求項8に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6又は7において、前記黒煙発生容易性判定手段は、大気圧を検出して該大気圧が基準値よりも低い場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することを特徴とする。
【0024】
大気圧が低い場合には、ディーゼルエンジンに吸入される空気中の酸素濃度が低下することから、このような吸入空気中に大量に燃料噴射がなされれば黒煙の発生を招きやすくなる。したがって、大気圧が基準値よりも低い場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することができる。
【0025】
請求項9に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6又は7において、前記黒煙発生容易性判定手段は、高度を検出して該高度が基準値よりも高い場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することを特徴とする。
【0026】
直接、大気圧を検出しなくても他の手法、例えばナビゲータによる位置からその位置での高度が判明すれば、その高度に応じて大気圧の低下程度が判明する。したがって、高度を検出して高度が基準値よりも高い場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することができる。
【0027】
請求項10に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6又は7において、前記黒煙発生容易性判定手段は、ディーゼルエンジンに対する負荷を検出して該負荷が基準値よりも大きい場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することを特徴とする。
【0028】
ディーゼルエンジンに対する負荷が大きい場合には、燃料噴射量が増加し、例え平地の大気圧状態でも相対的に酸素濃度が不足して黒煙の発生を招きやすくなる。したがってディーゼルエンジンに対する負荷を検出して負荷が基準値よりも大きい場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することができる。
【0029】
請求項11に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項10において、前記黒煙発生容易性判定手段は、車両重量と牽引重量との一方又は両方を前記負荷として検出することを特徴とする。
【0030】
より具体的にはディーゼルエンジンに対する負荷としては車両重量と牽引重量との一方又は両方を挙げることができる。したがって車両重量と牽引重量との一方又は両方による負荷が基準値よりも大きい場合には、燃料噴射量が増加して黒煙の発生を招き易いので、黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することができる。
【0031】
請求項12に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項10において、前記黒煙発生容易性判定手段は、車両の登降坂状態を前記負荷として検出することを特徴とする。
【0032】
より具体的にはディーゼルエンジンに対する負荷としては車両の登降坂状態を挙げることができる。したがって車両の登降坂による負荷が基準値よりも大きい場合には、燃料噴射量が増加して黒煙の発生を招き易いので、黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することができる。
【0033】
請求項13に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6〜12のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、前記変速機を自動変速する場合に用いる変速線データを、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させる黒煙抑制用変速線データに切り換えることを特徴とする。
【0034】
自動変速する場合に用いる変速線データを、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させる黒煙抑制用変速線データに切り換えることにより、自動変速制御を黒煙抑制用の自動変速制御に切り換えることができる。したがって自動変速時に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、ディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制する変速制御を実行することができる。
【0035】
請求項14に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項13において、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて判定された黒煙発生の容易性の程度に応じて、前記黒煙抑制用変速線データを変更することを特徴とする。
【0036】
このように黒煙抑制用変速線データに切り換えるのみでなく、黒煙抑制用変速線データの内容を黒煙発生の容易性の程度に応じて変更するようにしても良い。このことにより、自動変速時においてより効果的にディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
【0037】
請求項15に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項13又は14において、前記黒煙抑制用変速線データは、通常の変速線データに比較して、ダウンシフト線の一部又は全部が高速側に移動されていることを特徴とする。
【0038】
より具体的には、黒煙抑制用変速線データとしては、通常の変速線データに比較して、ダウンシフト線の一部又は全部が高速側に移動されているものを挙げることができる。ここで高速側とは変速機出力側における高速側に相当する。ディーゼルエンジンが車両走行用エンジンであれば車速の高速側が相当する。他の請求項においても同じである。
【0039】
このことにより減速時にダウンシフトが早期に生じることでダウンシフトが生じ易くなり、自動変速制御においてはエンジン回転が高回転側に移行する傾向が強くなる。このことにより黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させて、黒煙を抑制することができる。
【0040】
請求項16に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項13〜15のいずれかにおいて、前記黒煙抑制用変速線データは、通常の変速線データに比較して、アップシフト線の一部又は全部が高速側に移動されていることを特徴とする。
【0041】
より具体的には、黒煙抑制用変速線データとしては、通常の変速線データに比較して、アップシフト線の一部又は全部が高速側に移動されているものを挙げることができる。このことにより加速時にアップシフトが遅延して生じることでアップシフトが生じ難くなり、自動変速制御においてはアップシフトの変速時においてもエンジン回転を高回転側に維持する傾向が強くなる。このことにより黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させて、黒煙を抑制することができる。
【0042】
又、同時にダウンシフト線についてその一部又は全部が高速側に移動されている場合には、アップシフト線の一部又は全部が高速側に移動されることにより、ダウンシフト線とアップシフト線との間が近づきすぎることがなく、変速制御上のハンチングも抑制できる。
【0043】
請求項17に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項13〜16のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合において、更に自動変速時に前記黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高いと判断される時に、変速線データを前記黒煙抑制用変速線データに切り換えることを特徴とする。
【0044】
黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合にても、黒煙抑制変速制御手段は更に自動変速時に黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高いか否かを判断し、高い場合には変速線データを前記黒煙抑制用変速線データに切り換えるようにしても良い。
【0045】
このように更に黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高いか否かを判断を加えることにより、より精密に黒煙発生の容易性を判断することで、不必要に黒煙抑制用の変速制御に切り換えることがない。
【0046】
請求項18に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6〜12のいずれかにおいて、自動変速状態において、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更にディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する時に、自動的にダウンシフトすることを特徴とする。
【0047】
自動変速状態において、変速線データを切り換えるのではなく、黒煙抑制変速制御手段が、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在するか否かを判断し、存在する時には自動的にダウンシフトするようにしても良い。
【0048】
このことによりエンジン回転速度が上昇するので黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍からディーゼルエンジンの運転状態を離すことができ、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させて、黒煙を抑制することができる。
【0049】
請求項19に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6〜12のいずれかにおいて、手動変速状態において、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更にディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する時に、自動的にダウンシフトすることを特徴とする。
【0050】
手動変速状態においても、黒煙抑制変速制御手段は、黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更にディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在するか否かを判断する。そして、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する時には、自動的にダウンシフトするようにしても良い。
【0051】
このことにより手動変速時においてもエンジン回転速度を上昇させることにより黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍からディーゼルエンジンの運転状態を離すことができ、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させて、黒煙を抑制することができる。
【0052】
請求項20に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6〜12のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に現在の変速状態からアップシフトした場合でのディーゼルエンジンの回転速度を推定し、該推定回転速度が黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する場合には、該当するアップシフト線を高速側に移動することを特徴とする。
【0053】
変速中に、手動変速時にはアクセルペダルが戻されたり、自動変速時には燃料噴射量が減量されたりした場合にはエンジン回転速度が一旦低下する。もしこのエンジン回転速度低下により黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍にエンジン回転速度が入った場合には黒煙抑制の必要が出て来るが、エンジン回転速度低下幅が小さいために黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に入らない場合には黒煙抑制をする必要はない。
【0054】
したがって現在の変速状態からアップシフトした場合におけるディーゼルエンジンの回転速度を推定し、この推定回転速度が黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する場合には、該当するアップシフト線を高速側に移動している。
【0055】
このことにより、不必要にアップシフト線を変更させることがない。そしてアップシフト線変更を実行した場合には、変速中のエンジン回転速度低下幅を小さくでき、黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍からディーゼルエンジンの運転状態を離すことができ、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させて、黒煙を抑制することができる。
【0056】
請求項21に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6〜12のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、エンジン運転状態に応じて実行されているダウンシフト促進制御又はアップシフト抑制制御からの復帰条件を変更することにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることを特徴とする。
【0057】
変速制御において、例えば登坂時に通常通りにアップシフトがなされるのを防止したり、ダウンシフトを促進したりして走行トルクを高めて加速性を良好にするダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御が行われていることがある。又、降坂時においてもエンジンブレーキによる制動性を良好にするためにダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御が行われていることがある。又、アクセルペダルの急速な踏み込みや踏み戻し時に、加速性やエンジンブレーキの制動性を良好にするためにダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御が行われていることがある。
【0058】
このようなダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御が行われている状態からダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御を実行しない通常の変速制御状態に復帰した場合には、アップシフトが行われ易くなる。そしてこのことによりエンジン回転速度が低下してディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となるおそれがある。
【0059】
このため黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合には、黒煙抑制変速制御手段はダウンシフト促進制御又はアップシフト抑制制御からの復帰条件を変更することにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させている。このことにより黒煙を抑制することができる。
【0060】
請求項22に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項21において、前記復帰条件の変更は、復帰遅延時間を長くすることを特徴とする。
より具体的には、復帰条件の変更としては復帰遅延時間を長くすることにより行われる。このように復帰遅延時間以外の復帰条件が満足されても、通常の変速制御への復帰自体が遅れることにより、この遅延時間に黒煙発生の容易性が低減することで、黒煙を抑制することができるようになる。
【0061】
請求項23に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、現在の変速状態からシフト変化させるとディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍となるか否かを推定し、該エンジン運転領域又は該領域近傍となると推定される場合には前記シフト変化を禁止又は遅延させることにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることを特徴とする。
【0062】
このように黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、黒煙抑制変速制御手段は更に現在の変速状態からシフト変化させるとディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍となるか否かを推定する。そして黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍になると推定されるとシフト変化を禁止又は遅延させている。このことにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させられる。
【0063】
このようにして変速制御に基づいてディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
請求項24に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1〜23のいずれかにおいて、前記変速機は、自動クラッチを介してディーゼルエンジンから回転トルクを入力することを特徴とする。
【0064】
特に自動クラッチを用いている場合には、変速中における自動クラッチの解放により変速機側からの回転トルクが完全に遮断されるので、燃料噴射量低下時にはエンジン回転速度が低下し易い。このため変速時にディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍になり易い。このため前記各請求項のごとく構成することにより、自動クラッチを用いている場合にも、より効果的にディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
【0065】
請求項25に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項17において、前記変速機は自動クラッチを介してディーゼルエンジンから回転トルクを入力するとともに、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に変速中における前記自動クラッチの解放に伴うエンジン回転速度の低下量を推定あるいは測定し、該低下量を加味して自動変速時に前記黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高いと判断される時に、変速線データを前記黒煙抑制用変速線データに切り換えることを特徴とする。
【0066】
このように変速線データを黒煙抑制用変速線データに切り換える場合においても、特に自動クラッチを用いている場合には、変速中に完全に自動クラッチが解放されることにより変速機側からの回転力がディーゼルエンジン側に伝達されなくなり、エンジン回転数の低下が急激になることがある。このため変速中における前記自動クラッチの解放に伴うエンジン回転速度の低下量を推定あるいは測定して、この低下量を加味して自動変速時に前記黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高くなるか否かを判定する。例えば変速に伴うエンジン回転数の極小値を前記低下量を加味して推定演算する。この結果、黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高いと判断される時には変速線データを黒煙抑制用変速線データに切り換える。
【0067】
このことにより自動クラッチを用いている場合にも、より効果的にディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
請求項26に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項18又は19において、前記変速機は自動クラッチを介してディーゼルエンジンから回転トルクを入力するとともに、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に変速中における前記自動クラッチの解放に伴うエンジン回転速度の低下量を推定あるいは測定し、該低下量を加味してディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在すると判断される時には、自動的にダウンシフトすることを特徴とする。
【0068】
このように自動的にダウンシフトする場合においても、同様に自動クラッチを用いている場合にはエンジン回転数の低下が急激になることがある。このため変速中における前記自動クラッチの解放に伴うエンジン回転速度の低下量を推定あるいは測定して、この低下量を加味してディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在するか否かを判定する。例えば現在のエンジン回転数から前記低下量を減算したエンジン回転数にて判断する。この結果、黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在すると判断される時には自動的にダウンシフトする。
【0069】
このことにより自動クラッチを用いている場合にも、より効果的にディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
【0070】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、上述した発明が適用されたディーゼルエンジン、変速機及び変速制御装置の概略構成を表すブロック図である。ディーゼルエンジン(以下、「エンジン」と略す)2はコモンレール式ディーゼルエンジンであり、車両走行駆動用として車両に搭載されている。又、変速機4はツインクラッチ式6段変速機である。尚、図1においては変速機4内部はスケルトン表示にて模式的に示している。
【0071】
エンジン2の出力は変速機4の入力軸6に入力される。この入力軸6にはトーショナルダンパTDを介して第1クラッチC1及び第2クラッチC2の各入力側が接続されている。第1クラッチC1の出力側には第1クラッチ出力軸A1が、第2クラッチC2の出力側には前記第1クラッチ出力軸A1の外側に同軸で配置されている第2クラッチ出力軸A2が接続されている。更にカウンタ軸A3が、これらのクラッチ出力軸A1,A2に平行に配置され、出力軸A4が、クラッチ出力軸A1,A2の延長上に同軸に配置されている。
【0072】
このような変速機4は、クラッチ出力軸A1,A2とカウンタ軸A3との間に配置された各ドライブギヤI1〜I6,IR、各ドリブンギヤO1〜O6,OR及び後進アイドラギヤMRの間の駆動力伝達を、各スリーブS1〜S4の係合制御にて行っている。このことによりクラッチ出力軸A1,A2からカウンタ軸A3側へ所望の変速比で駆動力を伝達している。
【0073】
上記クラッチC1,C2は、それぞれレリーズシリンダとマスタシリンダとを用いた油圧駆動機構PC1,PC2により、変速段の切換時、車両発進時、車両停止時等において係合駆動あるいは解放駆動される。
【0074】
変速制御は、手動変速制御時にはシフト操作装置8に設けられたシフトレバー8aの操作に基づく指示により、自動変速制御時には変速線図に基づく指示により、変速制御用電子制御ユニット(ECU)10が、油圧駆動機構PC1,PC2及び油圧アクチュエータ11を駆動制御することにより実行される。尚、本実施の形態では、シフトレバー8aには「R」、「N」、「A」、「M」、「+」、「−」の6ポジションが存在し、「+」及び「−」は「M」の両側に隣接したポジションにある。
【0075】
変速制御用ECU10は、運転者がシフトレバー8aを「R」にすると変速機4を後進に設定し、「N」にするとニュートラルに設定する。シフトレバー8aを「A」にすると、自動変速モードが実行されて、変速線図による自動変速制御を実行し、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて適切な変速段となるように変速機4を駆動する。シフトレバー8aを「M」にすると、手動変速モードが開始されて、運転者がシフトレバー8aをアップシフト位置「+」に移動させる毎にシフトが順次第1速から第6速へシフトアップするように変速機4が駆動制御される。又、ダウンシフト位置「−」に移動させる毎にシフトは順次第6速から第1速へシフトダウンするように変速機4が駆動制御される。クラッチC1,C2は、自動変速制御時と同様にシフトレバー8aによる手動変速制御時においても運転者が操作しなくても変速制御用ECU10により自動的に解放と係合とを実行する。
【0076】
又、変速制御用ECU10は、登降坂時にはダウンシフト促進制御又はアップシフト抑制制御を実行している。このことにより登坂時には走行トルクを高めて加速性を良好に維持し、降坂時にはエンジンブレーキによる制動性を良好に維持している。更に変速制御用ECU10は、アクセルペダルの急速な踏み込みや踏み戻しをアクセル開度ACCPの時間変化量ΔACCPから検出し、ΔACCPの絶対値が大きい場合には、加速性やエンジンブレーキの制動性を良好にするためにダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御を行っている。
【0077】
変速制御用ECU10は、双方向性バスを介して相互に接続されたRAM、ROM、CPU、入力ポート、出力ポート及び各種駆動回路を備えることで、デジタルコンピュータを中心として構成されている。変速制御用ECU10へは、シフト操作装置8のシフト位置SHFT信号、及び各スリーブS1〜S4の位置を検出するスリーブ位置センサ12のスリーブ位置SLVP信号が入力されている。更に変速制御用ECU10へ、各クラッチC1,C2のストローク量を検出するクラッチストロークセンサ14,16のストロークPCL1,PCL2信号、及び各クラッチ出力軸A1,A2の回転数NA1,NA2を検出するクラッチ出力軸回転数センサ18,20から回転数NA1,NA2信号が入力されている。更に変速制御用ECU10へ、出力軸A4の回転数を検出する車速センサ22から車速SPD信号、エンジン回転数センサ24からエンジン回転数(エンジン回転速度)NE信号が入力されている。そして変速制御用ECU10へ、アクセル開度センサ26からアクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度ACCP信号、大気圧センサ28からの大気圧Atp信号が入力されている。これ以外に変速制御用ECU10へは制御上必要な信号が入力されているとともに、エンジン制御用ECU30との間では、相互にデータ通信を実行して制御に必要なデータを相互に伝達している。
【0078】
エンジン制御用ECU30は、双方向性バスを介して相互に接続されたRAM、ROM、CPU、入力ポート、出力ポート及び各種駆動回路を備えることで、デジタルコンピュータを中心として構成されている。そしてエンジン制御用ECU30は、前記エンジン回転数NEやアクセル開度ACCP等のデータに基づいて燃料噴射量制御、排気再循環制御等を実行している。特に燃料噴射量制御においてはエンジン回転数NEとアクセル開度ACCPとに基づいてガバナパターンからガバナ噴射量を求め、このガバナ噴射量に基づいて燃料噴射量を調節している。更に、変速時においてクラッチC1,C2を自動的に解放・係合する時には、燃料噴射量を調節してエンジン回転の吹き上がり等を防止して円滑に変速機4の噛合ギヤの切り換えがなされるようにしている。
【0079】
又、変速制御用ECU10及びエンジン制御用ECU30は、ダッシュボードに配置されたディスプレイ32に対して制御上必要な情報を表示して乗員に告知する。例えば、変速制御用ECU10は手動変速時及び自動変速時において現在の変速段や運転者に対する警告をディスプレイ32に表示している。
【0080】
次に変速制御用ECU10にて実行される自動変速制御処理(図2)について説明する。本処理はシフトレバー8aが「A」ポジションにある時に、時間周期で繰り返し実行される。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0081】
本処理が開始されると、まず車速SPD、アクセル開度ACCP及び大気圧Atpのデータが変速制御用ECU10のRAM内に設けられた作業領域に読み込まれる(S102)。次にディーゼルエンジン運転環境の一つである大気圧Atpが基準圧力Latp未満か否かが判定される(S104)。ここで基準圧力Latpは、大気圧の低下に起因してディーゼルエンジン2からの黒煙発生が容易となる状態を判定するための基準値を表している。すなわちディーゼルエンジン運転環境における黒煙発生の容易性を判定する値である。例えば、基準圧力Latp=98.6kPaに設定されている。
【0082】
ここで車両が平地を走行している場合であって、Atp(例えば、101kPa)≧Latpであれば(S104で「NO」)、次に図3に示す平地で用いられる変速線図を用いて、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて目標変速段を設定する(S106)。
【0083】
そして設定された目標変速段となるように前記スリーブS1〜S4及び前記クラッチC1,C2の駆動がなされる(S110)。尚、目標変速段が前回の制御周期から変更されていなければ変速段の切り替えはないので前記スリーブS1〜S4及び前記クラッチC1,C2の状態は維持される。
【0084】
このようにして一旦本処理を終了する。したがって平地では図3に示す変速線図による通常の変速制御がなされる。
一方、Atp<Latpであった場合には(S104で「YES」)、高地で用いられる変速線図を用いて、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて目標変速段を設定する(S108)。ここで高地で用いられる変速線図は図3に破線で示すダウンシフト線の内で低アクセル開度側の一部を高速側(エンジン回転数から見ても高回転側に相当)に移動させたものである。すなわち図4の(A)にて一部を示すシフト線の内で破線で示すダウンシフト線の内、低アクセル開度側の一部(ACCP軸に垂直部分)を、図4の(B)に示すごとく高速側に移動させている。ここでは第2速−第3速間でのシフト線を示している。
【0085】
ここで大気圧が低下して酸素濃度が低くなった場合には低エンジン回転数側ではアクセルペダルの加速操作などにより燃料噴射量が大きくなると黒煙が発生する可能性が高まる。特に本実施の形態のディーゼルエンジン2では、低大気圧下にエンジン回転数NEが1200rpm以下にて、燃料噴射量が大きくなると黒煙を生じる。
【0086】
図4の(A),(B)に示すごとく一旦車速SPDが矢印P1のごとく低下し、「▲」の位置から運転者が再加速のためにアクセルペダルを踏み込んだ場合を考える。図4の(A)に示すごとく平地の場合には、低アクセル開度側の第3速から第2速へのダウンシフト線は通常位置であるので、「▲」位置までの車速SPDの低下では第3速から第2速へのダウンシフトは発生しない。したがって「▲」位置では、エンジン回転数NEは1200rpm近傍となっている。この状態で矢印P2のごとくアクセル開度ACCPが増加して燃料噴射量が増加されても平地であるので黒煙が発生することがない。
【0087】
高地の場合には、図4の(B)に示すごとく、低アクセル開度側の第3速から第2速へのダウンシフト線は高速側に移動しているので、図4の(A)と同じ「▲」位置までの車速SPDの低下でも第3速から第2速へのダウンシフトが生じている。したがって「▲」位置では、エンジン回転数は2000rpm近傍となっている。このため低大気圧下にエンジン回転数が1200rpm以下となることが防止される。この状態で矢印P2のごとくアクセル開度ACCPが増加して燃料噴射量が増加されてもエンジン回転数が1200rpmよりも十分に高い状態であるので高地であっても黒煙は発生することはない。
【0088】
上述した構成において、自動変速制御処理(図2)が黒煙発生容易性判定手段及び黒煙抑制変速制御手段に、図4の(B)が黒煙抑制用変速線データに相当する。
【0089】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).自動変速制御処理(図2)では大気圧Atpから黒煙発生の容易性を判定し(S104)、大気圧Atp<Latpの場合には黒煙発生の容易性が高いと判断して(S104で「YES」)、変速線図をダウンシフトし易い変速線図に変更している(S108)。
【0090】
ディーゼルエンジン2の低エンジン回転数側が黒煙の発生し易い領域である。したがって上述したごとく変速制御をダウンシフトし易い変速制御に変更することで、エンジン回転数NEを上昇させている。このことで黒煙が発生しにくい高エンジン回転数側へ移行させることができ、低大気圧時に燃料噴射量が増加することがあってもディーゼルエンジン2の黒煙発生を効果的に抑制することができる。
【0091】
(ロ).高地においてはエンジン回転数は高回転側に維持されるので、以後の高地での加速時の動力性能が維持できるという効果が生じる。
[実施の形態2]
本実施の形態では前記自動変速制御処理(図2)のステップS108にて用いられる変速線図が、図5に示すごとくダウンシフト線のみでなくアップシフト線についても高速側に移動されている。他の構成は前記実施の形態1と同じである。尚、アップシフト線の高速側への移動幅dSはダウンシフト線の移動幅と同じでも良く、ダウンシフト線の移動幅以下でも以上でも良い。
【0092】
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(イ).高地でもアップシフト線がダウンシフト線から離れるので、変速制御のハンチング抑制をより効果的にすることができる。
【0093】
(ロ).図6に破線で示すごとく、自動変速制御では車速増速時に第1速→第2速→第3速→…とアップシフトした場合に、変速時におけるクラッチC1,C2の解放と燃料噴射量減量がなされ、エンジン回転数NEは低下し、その後、クラッチC1,C2のいずれかの係合と燃料噴射量増量復帰が実行される。この変速により図6にハッチングで示すごとくエンジン回転数NEの低下位置が一旦1200rpm以下となると黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍となる。この時に車両が高地にある場合には、黒煙が発生するおそれがある。
【0094】
本実施の形態では、高地ではアップシフト線を高速側に移動してアップシフトし難くしているので、図6に実線にて示すごとく、アップシフト直後のエンジン回転数NEの最低位置が上昇する。このため黒煙を発生し難い領域(>1200rpm)に止めることができ、黒煙抑制効果を生じる。
【0095】
(ハ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[実施の形態3]
本実施の形態では、図7の(B)に示すごとく前記自動変速制御処理(図2)のステップS108にて用いられる高地用の変速線図が、ダウンシフト線については、図7の(A)に示す平地用のダウンシフト線と同じ位置であるが、アップシフト線が高速側に移動されている。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0096】
以上説明した本実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態2の(ロ)、(ハ)の効果を生じる。特に高地ではダウンシフト線とアップシフト線が通常時より離れるので変速制御におけるハンチング上の問題は生じない。
【0097】
[実施の形態4]
本実施の形態では、シフトレバー8aが「M」,「+」,「−」ポジションにある時に手動変速制御処理が図8のごとく実行される。本処理では手動変速制御時に黒煙発生のおそれがある場合には自動ダウンシフトする処理を実行するものである。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0098】
手動変速制御処理(図8)について説明する。本処理は時間周期で繰り返し実行される。本処理が開始されると、まずエンジン回転数NE、大気圧Atp、シフトレバー8a位置データ及び現在設定されている指示変速段が変速制御用ECU10のRAM内に設けられた作業領域に読み込まれる(S202)。次にシフトレバー8aの位置データから指示変速段が設定される(S204)。手動変速制御時にシフトレバー8aの位置データから指示変速段が設定される処理は前記実施の形態1に述べたごとくである。
【0099】
次に大気圧Atpが基準圧力Latp未満か否かが判定される(S206)。この基準圧力Latpは前記自動変速制御処理(図2)のステップS104にて説明したごとくである。
【0100】
ここでAtp≧Latpであれば(S206で「NO」)、黒煙抑制ダウンシフトフラグXanに「OFF」を設定する(S220)。そして指示変速段を目標変速段に設定して(S212)、目標変速段となるように前記ステップS110(図2)と同じ処理がなされる(S222)。こうして一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示通りの変速段を実現する。
【0101】
又、Atp<Latpであれば(S206で「YES」)、次にエンジン回転数NEが低エンジン回転数基準値Lne未満か否かが判定される(S208)。この低エンジン回転数基準値Lneは、この値よりエンジン回転数NEが低下すると、黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍になることを判定するための基準値である。低エンジン回転数基準値Lneは黒煙の発生し易いエンジン運転領域(≦1200rpm)を判定する1200rpmに対して余裕代を持った値(1200rpm+余裕代)として設定されているので、実際には黒煙の発生し易いエンジン運転領域近傍になることを判定するための基準値となっている。
【0102】
ここでNE≧Lneであると(S208で「NO」)、次に黒煙抑制ダウンシフトフラグXan=「OFF」か否かが判定される(S210)。黒煙抑制ダウンシフトフラグXanの初期設定は「OFF」であるが、ここで初期設定通りであれば(S210で「YES」)、指示変速段を目標変速段に設定して(S212)、前記ステップS222を実行して一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示通りの変速段を実現する。
【0103】
一方、Atp<Latpの状態で(S206で「YES」)、更にNE<Lneとなった場合には(S208で「YES」)、黒煙抑制ダウンシフトフラグXanに「ON」を設定する(S214)。そして今回の制御周期のステップS204にて設定されている指示変速段よりも1つダウンシフトした変速段を目標変速段に設定する(S216)。例えば、第3速が指示変速段である場合には、目標変速段には第2速が設定される。尚、指示変速段が第1速の場合には、これより下の変速段は無いので、目標変速段は第1速に設定される。
【0104】
次にこのような自動ダウンシフト状態にあることをディスプレイ32の表示にて報知する(S217)。そしてステップS222を実行して一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示よりも1つダウンシフトされた状態となる。
【0105】
次の制御周期でも、Atp<Latpで(S206で「YES」)、かつNE<Lneである場合には(S208で「YES」)、前述したごとく変速機4は運転者の指示よりも1つダウンシフトされた状態に維持される(S214,S216,S217,S222)。
【0106】
その後、前記ダウンシフト(S216)によりエンジン回転数NEが上昇して、NE≧Lneとなると(S208で「NO」)、次にXan=「OFF」か否かが判定される(S210)。ここでは前回の制御周期までステップS214が実行されており、Xan=「ON」であることから(S210で「NO」)、次に変速機4を指示変速段通りに戻したとした場合に、NEx≧Lne+αとなるか否かが判定される(S218)。ここで推定回転数NExは、現在の目標変速段が指示変速段に変速された場合に現在のエンジン回転数NEが到達されると予測されるエンジン回転数を表している。この推定回転数NExは、目標変速段と指示変速段との変速比の関係及び車速SPDに基づいて算出される。余裕代αは、直ちに変速機4を指示変速段通りとした場合に安定してNE≧Lneと判定されるようにするためのヒステリシス用の値である。
【0107】
ここでNEx<Lne+αである場合には(S218で「NO」)、ステップS216,S217,S222を実行して、本処理を一旦終了する。したがって変速機4を運転者の指示よりも1つダウンシフトされた状態とする変速制御が維持される。
【0108】
その後、NEx≧Lne+αとなった場合には(S218で「YES」)、黒煙抑制ダウンシフトフラグXanに「OFF」を設定して(S220)、指示変速段を目標変速段に設定する(S212)。そしてステップS222を実行して一旦本処理を終了する。したがって変速機4を運転者の指示通りの変速段とする手動変速制御に戻る。
【0109】
次の制御周期では、ステップS206で「YES」、ステップS208で「NO」と判定されても、Xan=「OFF」であるので(S210で「YES」)、指示変速段を目標変速段に設定する(S212)。そしてステップS222を実行して一旦本処理を終了する。したがって以後も変速機4を運転者の指示通りの変速段とする手動変速制御を継続する。
【0110】
そして再度、ステップS206で「YES」かつステップS208で「YES」と判定されると、前述した処理を繰り返す。
図9のタイミングチャートに本実施の形態による処理の一例を示す。車速SPDが低下している場合に、運転者によるシフトレバー8aを「−」ポジションに移動させることによるダウンシフト操作が時刻t42,t44にて実行されたものとする。しかし運転者のダウンシフト操作に従ったのでは、破線及びハッチングで示すごとくエンジン回転数NEが低エンジン回転数基準値Lneより下になってからのダウンシフトとなる。このためエンジン回転数NEが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍となる。この状態が高地で発生してかつこの時にアクセルペダルの踏み込みにより燃料噴射量の増加があると黒煙発生のおそれがある。
【0111】
本実施の形態では実線のごとく、高地ではNE<Lneとなった時刻t41,t43にて手動変速時であっても自動的にダウンシフトするので、NE<Lneとならず、燃料噴射量の増加があっても黒煙発生のおそれがなくなる。
【0112】
以上説明した本実施の形態4によれば、以下の効果が得られる。
(イ).手動変速状態において、高地にてエンジン回転数NE<低エンジン回転数基準値Lneとなる場合には、自動的にダウンシフトしている。このことにより手動変速時においてもエンジン回転数NEを上昇させることができ、黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍からディーゼルエンジン2の運転状態を離すことができ、黒煙発生を抑制することができる。
【0113】
(ロ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[実施の形態5]
本実施の形態では、前記手動変速制御処理(図8)の代わりに、図10に示す手動変速制御処理が実行される。他の構成は前記実施の形態4と同じである。本処理は黒煙発生のおそれがある時に指示変速段を自動ダウンシフトする処理である。
【0114】
手動変速制御処理(図10)について説明する。本処理は時間周期で繰り返し実行される。本処理が開始されると、ステップS302,S304にて前記ステップS202,S204(図8)と同じ処理が実行されて指示変速段が設定される。
【0115】
次に大気圧Atpが基準圧力Latp未満か否かが判定される(S306)。この基準圧力Latpは前記自動変速制御処理(図2)のステップS104にて説明したごとくである。
【0116】
ここでAtp≧Latpであれば(S306で「NO」)、指示変速段を目標変速段に設定する(S318)。そしてステップS320にて前記ステップS110(図2)と同じ処理により目標変速段が実現され、一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示通りの変速段を実現する。
【0117】
又、Atp<Latpであれば(S306で「YES」)、次にエンジン回転数NEが低エンジン回転数基準値Lne未満か否かが判定される(S308)。この低エンジン回転数基準値Lneは前記S208(図8)にて説明したごとくの値である。
【0118】
ここでNE≧Lneであると(S308で「NO」)、前記ステップS318,S320が実行され、一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示通りの変速段を実現する。
【0119】
一方、Atp<Latp(S306で「YES」)でかつNE<Lne(S308で「YES」)である場合には、次に今回のシフトレバー8aの操作がダウンシフト操作で無いか否かが判定される(S310)。今回のシフトレバー8aの操作がダウンシフト操作である場合には(S310で「NO」)、エンジン回転数NEが上昇する方向であり、黒煙を抑制する方向の運転状態変化であることから、前記ステップS318,S320が実行され、一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示通りの変速段を実現する。
【0120】
このようにステップS310にて「NO」と判定された場合に、次の制御周期ではシフト操作がなされないためにステップS310にて「YES」と判定されたとする。この場合には、次に指示変速段変更後に待機時間経過したか否かが判定される(S312)。この待機時間は、新たな変速比に対応したエンジン回転数NEに到達するまで待つために設定してある。
【0121】
待機時間を経過するまでは(S312で「NO」)、前記ステップS318,S320が実行され、一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示通りの変速段を実現する。そしてこの待機時間中にNE≧LneとなればステップS308で「NO」と判定されるようになり、前記ステップS318,S320が実行されるので、変速機4は運転者の指示通りの変速段を継続する。
【0122】
しかしAtp<Latp(S306で「YES」)でかつNE<Lne(S308で「YES」)で、更に今回ダウンシフト操作が無く(S310で「YES」)、指示変速段の変更後に待機時間が経過している場合には(S312で「YES」)、指示変速段が自動的に1つダウンシフトされる(S314)。例えば、直前までの指示変速段が第4速に設定されていた場合には、ステップS314の処理により第3速に指示変速段が自動的に変更される。尚、直前までの指示変速段が第1速に設定されていた場合にはステップS314ではダウンシフトはなされず第1速が維持される。
【0123】
そして次に自動ダウンシフトが発生したことを音声にて出力したりディスプレイ32に表示したりすることで運転者に報知する(S316)。このことにより手動変速制御時に自動的にダウンシフトが生じていることを運転者に認識させる。尚、前述したごとくステップS314で第1速が維持された場合には、ステップS316にても報知は実行しない。
【0124】
そして前記ステップS318,S320が実行される。このため変速機4は自動的にダウンシフトした変速段となる。そして次の制御周期では、ステップS306,S308,S310にてそれぞれ「YES」と判定されても、自動的にダウンシフトされてから待機時間が経過するまでは(S312で「NO」)、前記ステップS314,S316は実行されることなく、前記ステップS318,S320が実行される。そしてこの待機時間中にNE≧Lneとなれば(S308で「NO」)と判定されるようになり、待機時間経過に関わらず、前記ステップS314,S316は実行されることなく、前記ステップS318,S320が実行される。
【0125】
この状態で再度Atp<Latp(S306で「YES」)で、NE<Lne(S308で「YES」)で、ダウンシフト操作が無く(S310で「YES」)、前回の指示変速段の変更後に待機時間が経過した(S312で「YES」)状態となれば、前述したステップS314,S316の処理が繰り返される。
【0126】
このことによりエンジン回転数NEが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍になることを自動ダウンシフトにより防止している。
図11,12に本実施の形態による処理の一例を示す。図11では手動変速制御状態にて車速SPDが低下している場合に運転者によるシフトレバー8aの操作をしていない状況を示している。このような手動変速制御時においても高地においてエンジン回転数NEが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に低下しようとすると、自動的にダウンシフトが実行されて(t51,t52)、エンジン回転数NEは上昇される。したがってアクセルペダルの踏み込みにより燃料噴射量が増加する状況が発生しても、黒煙発生を抑制できる。
【0127】
図12では図11と同様に自動的にダウンシフトが実行されて(t61,t64)いるが、途中で運転者がシフトレバー8aによりアップシフト操作した状況を示している。アップシフト操作(t62)により直ちにエンジン回転数NEは急速に低下して一時的にNE<Lneとなるが待機時間後(t63)に自動的にダウンシフトが生じる。このためエンジン回転数NEが直ちに低エンジン回転数基準値Lne以上に回復する。このような場合、NE<Lneとなる期間は極めて短くなり、この期間に燃料噴射量が増加する確率は小さいので、黒煙発生を抑制できる。
【0128】
以上説明した本実施の形態5によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態4の(イ)、(ロ)と同じ効果を生じる。
[実施の形態6]
本実施の形態では、前記自動変速制御処理(図2)の代わりに、図13に示す自動変速制御処理が実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。自動変速制御処理(図13)について説明する。本処理は大気圧でなくエンジン負荷による黒煙発生の容易性判定を実行するものであり、時間周期で繰り返し実行される。
【0129】
本処理が開始されると、まず車速SPD及びアクセル開度ACCPのデータが変速制御用ECUのRAM内に設けられた作業領域に読み込まれる(S402)。次に別途算出されているエンジン負荷Mが同じく作業領域に読み込まれる(S404)。このエンジン負荷Mはディーゼルエンジン2の運転環境の一つであり、車両重量(車両自体の重量、車両積載量などが含まれ、質量で表しても良い)、牽引重量(牽引車両の重量などが含まれ、質量で表しても良い)、車両の登降坂状態(登降坂の勾配などが含まれる)などを含めた概念である。したがってエンジン負荷Mが大きいと加速のために通常よりも大量の燃料噴射が行われるので、エンジン回転数NEが低い場合には黒煙発生のおそれが生じる。
【0130】
このエンジン負荷Mは、例えば車両の加速度に対するエンジン出力トルク(燃料噴射量)との関係によりマップあるいは関数計算から求められる。このエンジン負荷M算出処理は、車両走行中に繰り返し算出されている。
【0131】
次にエンジン負荷Mが基準負荷Lm以上か否かが判定される(S406)。ここで基準負荷Lmは、ディーゼルエンジン2からの黒煙発生が容易となる状態を判定するための基準値を表している。すなわちディーゼルエンジン運転環境における黒煙発生の容易性を判定する値である。例えば、平地で積載量が無い場合でのエンジン負荷Mの3〜5%増に設定されている。
【0132】
ここでM<Lmであれば(S406で「NO」)、次に前記図3に示した平地で用いられる変速線図と同じ通常負荷用の変速線図を用いて、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて目標変速段を設定する(S408)。そして前記ステップS110(図2)と同様のステップS412を実行して一旦本処理を終了する。したがって低エンジン負荷時では図3に示す変速線図により通常の変速制御がなされる。
【0133】
一方、M≧Lmであった場合には(S406で「YES」)、高エンジン負荷用変速線図を用いて、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて目標変速段を設定する(S410)。ここで高エンジン負荷時に用いられる変速線図は、前記図4の(B)にて説明したごとく、ダウンシフト線の内で低アクセル開度側の一部を高速側に移動させたものである。このように目標変速段が設定されると、ステップS412が実行されて一旦本処理を終了する。
【0134】
エンジン負荷Mが増加することで燃料噴射量のレベルが上昇すると、燃料噴射量に比較して酸素濃度が相対的に低くなる。この場合には低エンジン回転数側で加速のために燃料噴射量が更に増大すると黒煙が発生する可能性が高まる。
【0135】
したがって本実施の形態では、低エンジン負荷時では図4の(A)に示したごとく、「▲」位置までの車速SPDの低下では第3速から第2速へのダウンシフトは発生せず、「▲」位置では、エンジン回転数NEは1200rpm近傍となっている。しかしこの状態で矢印P2のごとくアクセル開度ACCPが増加して燃料噴射量が増加されても低エンジン負荷時であるので黒煙が発生するおそれはない。
【0136】
しかし高エンジン負荷時では図4の(B)に示したごとく、低アクセル開度側の第3速から第2速へのダウンシフト線は高速側に移動しているので、「▲」位置までの車速SPDの低下でも第3速から第2速へのダウンシフトが生じている。したがって「▲」位置では、エンジン回転数は2000rpm近傍となっている。このため高エンジン負荷時にエンジン回転数が1200rpm以下となることが防止される。この状態で矢印P2のごとくアクセル開度ACCPが増加して燃料噴射量が増加されてもエンジン回転数が1200rpmよりも十分に高い状態であるので高エンジン負荷時であっても黒煙の発生は抑制される。
【0137】
以上説明した本実施の形態6によれば、以下の効果が得られる。
(イ).自動変速制御処理(図13)ではエンジン負荷Mの状態から黒煙発生の容易性を判定し(S404,S406)、エンジン負荷M≧Lmの場合には黒煙発生の容易性が高いと判断して(S406で「YES」)、変速線図をダウンシフトし易い変速線図に変更している(S410)。
【0138】
ディーゼルエンジン2の黒煙は低エンジン回転数側が発生し易い領域である。したがって上述したごとく変速制御をダウンシフトし易い変速制御に変更することで、エンジン回転数を上昇させている。このことで高エンジン負荷時に燃料噴射量が増加してもディーゼルエンジン2の黒煙発生を効果的に抑制することができる。
【0139】
[実施の形態7]
本実施の形態では、前記自動変速制御処理(図2)の代わりに図14に示す自動変速制御処理が実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0140】
自動変速制御処理(図14)について説明する。本処理は大気圧の低下の程度に応じて、すなわち黒煙発生の容易性の程度に応じて、車速SPDと変速線図との対応を変更するものであり、時間周期で繰り返し実行される。
【0141】
本処理が開始されると、まず前記ステップS102,S104と同じ処理(S502,S504)が行われる。ここでAtp≧Latpであれば(S504で「NO」)、次に前記ステップS106と同じく前記図3に示した平地用変速線図を用いて車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて目標変速段を設定し(S506)、前記ステップS110と同じ処理(S514)を実行して一旦本処理を終了する。したがって平地では前記図3に示す変速線図により通常の変速制御がなされる。
【0142】
一方、Atp<Latpであった場合には(S504で「YES」)、基準圧力Latpと大気圧Atpとの差に基づいて、関数あるいはマップfspdから高地車速補正係数Kspdが算出される(S508)。この高地車速補正係数Kspdは、実際の車速SPDを、大気圧が低いほど自動変速制御上は低く補正する係数であり、1>Kspd>0の範囲で「Latp−Atp」の値が大きくなるほど小さい値に設定される。
【0143】
そして実際の車速SPDの代わりに「SPD×Kspd」を用いて、高地補正車速値「SPD×Kspd」とアクセル開度ACCPとに基づいて、前記図3に示す変速線図により目標変速段を設定する(S512)。そして、この設定された目標変速段となるように前記ステップS514の処理がなされて一旦本処理を終了する。
【0144】
したがって平地では実際のSPDよりも低く補正された車速に基づいて前記図3に示す変速線図により高地での変速制御がなされる。このため図15に示すごとく、平地では▲印にて示すごとく実際の車速SPDに従って変速されるが、高地では●印にて示すごとくの高地補正車速値「SPD×Kspd」にしたがって変速される。このためΔSPD分低い車速に基づくようになるため、それだけダウンシフトが早期に実行され、又、アップシフトが遅延され、黒煙の発生し易いエンジン回転数域から高回転側に離れた運転領域にて運転者による加速を実行させることができる。
【0145】
以上説明した本実施の形態7によれば、以下の効果が得られる。
(イ).高地では、自動変速制御処理(図14)は変速制御に用いる車速SPDを低速側に補正しているので、平地と同じ変速線図を用いても、高地ではダウンシフトし易くすることができる。このことで黒煙が発生しにくい高エンジン回転数側へ移行させることができ、低大気圧時に燃料噴射量が増加してもディーゼルエンジンの黒煙発生を効果的に抑制することができる。
【0146】
(ロ).大気圧Atpが低くなれば、変速線図にて判断する車速「SPD×Kspd」は、実際の車速SPDよりも一層低い値となるように補正している。このため、大気圧Atpが低くなるほど、より高めにエンジン回転数を維持することができ、黒煙発生を的確に抑制できる。
【0147】
(ハ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[実施の形態8]
本実施の形態では、前記自動変速制御処理(図2)の代わりに図16に示す自動変速制御処理が実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0148】
自動変速制御処理(図16)について説明する。本処理は、自動変速制御によるアップシフトがある場合にエンジン回転数が黒煙の発生し易い領域近傍となると推定される場合にはアップシフトを禁止するものであり、時間周期で繰り返し実行される。
【0149】
本処理が開始されると、まずエンジン回転数NE、車速SPD、アクセル開度ACCP、大気圧Atp及び現在設定されている目標変速段が変速制御用ECUのRAM内に設けられた作業領域に読み込まれる(S602)。そして前記図3に示した平地で用いられる変速線図を用いて、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいてマップ変速段を設定する(S604)。
【0150】
次に大気圧Atpが基準圧力Latp未満か否かが判定される(S606)。この基準圧力Latpは前記自動変速制御処理(図2)のステップS104にて説明したごとくである。ここでAtp≧Latpであれば(S606で「NO」)、マップ変速段を目標変速段に設定する(S618)。そして前記ステップS110(図2)と同じ処理が行われて一旦本処理を終了する。したがって平地での自動変速制御が実行される。
【0151】
又、Atp<Latpであれば(S606で「YES」)、次に直前のステップS604にて設定されたマップ変速段がアップシフト要求か否かが、現在の目標変速段との比較により判定される(S608)。例えば、目標変速段=第2速である場合に、マップ変速段=第3速であればアップシフト要求であると判断でき、マップ変速段=第1速あるいは第2速であればアップシフト要求ではないと判断できる。
【0152】
ここでアップシフト要求でなければ(S608で「NO」)、ステップS618,S616を実行し一旦本処理を終了する。したがって平地での自動変速制御が高地においても実行される。
【0153】
一方、Atp<Latpであって(S606で「YES」)、更にアップシフト要求である(S608で「YES」)場合には、アップシフト後推定回転数NEyを推定計算する(S610)。アップシフト後推定回転数NEyは、アップシフト直後に変速比の変化に対応してエンジン回転数NEが低下するが、この低下におけるエンジン回転数NEの極小値を表すものである。例えば、現在のエンジン回転数NE、車速SPD、変速中に予測される燃料噴射量変化、エンジンフリクション、車両重量等のエンジン負荷等に基づいてマップから算出される。
【0154】
そしてアップシフト後推定回転数NEyが低エンジン回転数基準値Lneよりも小さいか否かが判定される(S612)。低エンジン回転数基準値Lneは前記実施の形態4のステップS208(図8)にて述べたごとくである。ここでNEy≧Lneであれば(S612で「NO」)、ステップS618,S616を実行し一旦本処理を終了する。したがって平地での自動変速制御が高地においても実行される。
【0155】
一方、NEy<Lneであれば(S612で「YES」)、アップシフト要求があっても目標変速段は変更せず前回の目標変速段を今回も維持する(S614)。そしてステップS616を実行し一旦本処理を終了する。すなわち、例えば前記図3に示した変速線図上では、第2速から第3速にアップシフトしたとしても、実際の変速段は第2速のままに維持されることになる。
【0156】
以後の制御周期でも、ステップS610にて推定されるアップシフト後推定回転数NEyの値が、NEy<Lneであれば(S612で「YES」)、アップシフト要求がされているにも関わらず、目標変速段を維持する処理(S614)が継続する。
【0157】
そしてエンジン回転数NEの上昇などに伴い、アップシフト後推定回転数NEyの値が上昇して、NEy≧Lneと判定されると(S612で「NO」)、マップ変速段を目標変速段に設定し(S618)、ステップS616を実行し一旦本処理を終了する。すなわち、前記図3の変速線図通りの自動変速制御に戻る。尚、高地から平地に車両が移動した場合(S606で「NO」)、あるいはアップシフト要求が無くなった場合(S608で「NO」)にもステップS618の実行により前記図3の変速線図通りの自動変速制御に戻る。
【0158】
図17のタイミングチャートに本実施の形態による処理の一例を示す。自動変速制御において、車速SPD増加時に前記図3の変速線図に従って第1速から第2速へマップ変速段が変化した時に(t71)、NEy<Lneと判定されると、マップ変速段は実現されず、変速機は第1速のままで引き続きエンジン回転数NEの上昇を継続する。
【0159】
そしてNEy≧Lneと判定されると(t72)、ここでマップ変速段である第2速が目標変速段に設定されて実現される。この変速直後に生じるエンジン回転数NEの低下においてもNEの極小値(t73)は低エンジン回転数基準値Lneを下回ることはない。
【0160】
同様にして第2速から第3速にマップ変速段が変化した時も(t74)、NEy<Lneであるので第3速への変速は行われず、NEy≧Lneと判定された時に(t75)、第3速に変速される。この時もNEの極小値(t76)は低エンジン回転数基準値Lneを下回ることはない。
【0161】
このように高地において、アップシフト後に推定されるエンジン回転数(NEy)が黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍(NEy<Lne)に存在する時にはアップシフトが禁止されるので、エンジン回転数NEを黒煙を発生し難い領域(>1200rpm)に止めることができる。
【0162】
以上説明した本実施の形態8によれば、以下の効果が得られる。
(イ).このように自動変速制御において、黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に現在の変速状態からアップシフトさせるとディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍になると推定されるとアップシフト変化を禁止している。このことによりディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減できるので、黒煙を抑制することができる。
【0163】
[実施の形態9]
本実施の形態では、前記自動変速制御処理(図2)の代わりに図18に示す自動変速制御処理が実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0164】
自動変速制御処理(図18)について説明する。本処理は高地でのアップシフト時に遅延時間を設けることにより黒煙発生を抑制するものであり、時間周期で繰り返し実行される。ここでステップS702〜S708,S710,S712,S714,S716,S718は前記図16の各ステップS602〜S618と同じである。
【0165】
まずステップS702,S704によりマップ変速段を設定する。そして次にAtp<Latpか否かが判定される(S706)。ここでAtp≧Latpであれば(S706で「NO」)、遅延フラグXdelに「OFF」を設定し(S717)、マップ変速段を目標変速段に設定する(S718)。そして目標変速段となるようにスリーブやクラッチの駆動がなされる(S716)。こうして一旦本処理を終了する。したがって平地での自動変速制御が実行される。
【0166】
Atp<Latpであれば(S706で「YES」)、次にアップシフト要求か否かが判定される(S708)。ここでアップシフト要求でなければ(S708で「NO」)、ステップS717,S718,S716を実行し一旦本処理を終了する。したがって平地での自動変速制御が高地においても実行される。
【0167】
一方、Atp<Latpであって(S706で「YES」)、更にアップシフト要求である(S708で「YES」)場合には、Xdel=「OFF」か否かが判定される(S709)。最初はXdel=「OFF」であるので(S709で「YES」)、次にアップシフト後推定回転数NEyを推定計算する(S710)。そしてNEy<Lneか否かが判定される(S712)。ここでNEy≧Lneであれば(S712で「NO」)、ステップS717,S718,S716を実行し一旦本処理を終了する。したがって平地での自動変速制御が高地においても実行される。
【0168】
一方、NEy<Lneであれば(S712で「YES」)、Xdelに「ON」を設定する(S713)。そして目標変速段は変更せず前回の目標変速段を今回も維持し(S714)、ステップS716を実行し一旦本処理を終了する。したがって、前記図3の変速線図上ではアップシフトされていても、実際の変速段は維持される。
【0169】
次の制御周期では、ステップS706,S708にて「YES」と判定された後に、Xdel=「ON」であることから(S709で「NO」)、次にアップシフト要求からの経過時間が基準遅延時間Tdel以上となったか否かが判定される(S719)。初期においては、経過時間<Tdelであることから(S719で「NO」)、ステップS714,S716を実行して一旦本処理を終了する。以後、経過時間<Tdelである限り(S719で「NO」)、ステップS714,S716が実行されて、目標変速段は維持される。
【0170】
そして経過時間≧Tdelとなると(S719で「YES」)、次にTdelに「OFF」が設定され(S717)、マップ変速段を目標変速段に設定し(S718)、ステップS716にて目標変速段を実現する。このことにより前記基準遅延時間Tdelの間、禁止されていたアップシフトが実行されることになる。
【0171】
次の制御周期では、マップ変速段が変化していなければ、アップシフト要求はないので(S708で「NO」)、ステップS717,S718,S716の実行が継続し、前記図3の変速線図通りの自動変速制御に戻ることになる。
【0172】
図19に本実施の形態による処理の一例を示す。自動変速制御において、車速SPD増加時に前記図3の変速線図に従って第1速から第2速へマップ変速段が変化した時に(t81)、NEy<Lneと判定されると、マップ変速段は実現されず、変速機は第1速のままで引き続きエンジン回転数NEの上昇を継続する。
【0173】
そしてアップシフト要求から基準遅延時間Tdelが経過すると(t82)、ここでマップ変速段である第2速が目標変速段に設定されて実現される。この変速直後に生じるエンジン回転数NEの低下においてもNEの極小値(t83)は基準遅延時間Tdelを設けた分、高くなる。このため黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍から離すことができる。本実施の形態では低エンジン回転数基準値Lneから離すことができる。
【0174】
同様にして、第2速から第3速にマップ変速段が変化した時も(t84)、NEy<Lneであるので第3速への変速は行われず、基準遅延時間Tdel後に(t85)、第3速に変速される。この時もNEの極小値(t86)は低エンジン回転数基準値Lneを下回ることはない。
【0175】
このように、高地において、アップシフト後に推定されるエンジン回転数NEが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍(NEy<Lne)に存在する時にはアップシフトが遅延されるので、エンジン回転数NEを黒煙を発生し難い領域(>1200rpm)に止めることができる。
【0176】
以上説明した本実施の形態9によれば、以下の効果が得られる。
(イ).このように黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に現在の変速状態からアップシフトさせるとディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍になると推定されるとアップシフト変化を遅延させている。このことによりディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減して、黒煙を抑制することができる。
【0177】
[実施の形態10]
本実施の形態では、前記自動変速制御処理(図2)の代わりに図20に示す自動変速制御処理が実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0178】
自動変速制御処理(図20)について説明する。本処理は、高地での自動変速制御中にエンジン回転数NEが黒煙の発生し易い領域又は該領域近傍になるとダウンシフトしてエンジン回転数NEの上昇を図るものであり、時間周期で繰り返し実行されるものである。
【0179】
自動変速制御処理(図20)が開始されると、まずデータの読込(S802)と平地の変速線図からマップ変速段設定(S804)が実行され、そして次に大気圧Atp<基準圧力Latpか否かが判定される(S806)。これらステップS802〜S806の処理は前記実施の形態9のステップS702〜S706(図18)と同じである。
【0180】
ここでAtp≧Latpであれば(S806で「NO」)、ダウンシフト実行フラグXdwnに「OFF」を設定し(S808)、マップ変速段を目標変速段に設定する(S810)。そして前記ステップS716(図18)と同じく目標変速段が実現される(S820)。こうして一旦本処理が終了する。したがって平地での自動変速制御が実行される。
【0181】
一方、Atp<Latpであった場合には(S806で「YES」)、次に現在の目標変速段への変速後に待機時間が経過しているか否かが判定される(S812)。この待機時間は、新たな変速比に対応したエンジン回転数NEに到達するまで待機するために設定してある。ここで待機時間が経過していなければ(S812で「NO」)、Xdwn=「ON」か否かが判定される(S822)。初期設定ではXdwn=「OFF」であるが、この時、初期設定通りXdwn=「OFF」であるとすると(S822で「NO」)、ステップS810,S820が実行されて、一旦本処理を終了する。したがって高地においても平地での自動変速制御が継続される。
【0182】
待機時間が経過すれば(S812で「YES」)、次にNE<Lneか否かが判定される(S814)。低エンジン回転数基準値Lneは前記実施の形態4のステップS208(図8)にて述べたごとくである。ここでNE≧Lneであれば(S814で「NO」)、Xdwn=「ON」か否かが判定される(S822)。初期設定通りXdwn=「OFF」であれば(S822で「NO」)、ステップS810,S820が実行されて一旦本処理を終了する。したがって高地においても平地での自動変速制御が継続される。
【0183】
一方、NE<Lneであれば(S814で「YES」)、ダウンシフト実行フラグXdwnに「ON」が設定される(S816)。そして今回、ステップS804にて設定されているマップ変速段よりも1つダウンシフトした変速段が目標変速段に設定される(S818)。ただしマップ変速段が第1速である場合には、目標変速段も第1速に設定される。そしてステップS820を実行して、本処理を一旦終了する。このため平地での自動変速制御時よりも1段下の変速段にて自動変速制御がなされることになる。
【0184】
次の制御周期では、ステップS806にて「YES」と判定された後、初期においては目標変速段の変更から待機時間が経過していないので(S812で「NO」)、次にXdwn=「ON」か否かが判定される(S822)。直前の制御周期にてXdwn=「ON」とされているので(S822で「YES」)、次にマップ変速段と目標変速段とが不一致か否かが判定される(S824)。
【0185】
ここでマップ変速段≠目標変速段であるので(S824で「YES」)、マップ変速段推定回転数NEzを推定計算する(S826)。このマップ変速段推定回転数NEzはマップ変速段通りに目標変速段を戻した場合に到達するエンジン回転数NEを推定した値である。例えば、目標変速段とマップ変速段との変速比の関係及び車速SPDから算出される。
【0186】
そしてNEz≧Lne+αか否かが判定される(S828)。余裕代αは、直ちに目標変速段をマップ変速段通りにした場合に、安定してNE≧Lneと判定されるようにするためのヒステリシス値である。
【0187】
ここでNEz<Lne+αであれば(S828で「NO」)、前記ステップS818,S820を実行して、一旦本処理を終了する。このことによりマップ変速段よりも1段下の変速段での変速制御が継続されることになる。以後、待機時間が経過せず(S812で「NO」)、マップ変速段≠目標変速段(S824で「YES」)、NEz<Lne+αである限り(S828で「NO」)、前記ステップS818,S820を実行するので、マップ変速段よりも1段下の変速段での自動変速制御が継続される。
【0188】
そして待機時間が経過すると(S812で「YES」)、NE<Lneか否かが判定される(S814)。ここではマップ変速段を1つダウンシフトした目標変速段が継続していることに起因して、エンジン回転数NEが上昇してNE≧Lneとなっているとすると(S814で「NO」)、Xdwn=「ON」か否かが判定される(S822)。ここでXdwn=「ON」であるので(S822で「YES」)、マップ変速段≠目標変速段であるか否かが判定される(S824)。マップ変速段≠目標変速段であるので(S824で「YES」)、更にマップ変速段推定回転数NEzが推定され(S826)、この結果、NEz<Lne+αであれば(S828で「NO」)、前記ステップS818,S820が実行され、マップ変速段よりも1段下の変速段での自動変速制御が継続される。以後、マップ変速段≠目標変速段で(S824で「YES」)、NEz<Lne+αである限り(S828で「NO」)マップ変速段よりも1段下の変速段での自動変速制御が継続されることになる。
【0189】
その後、ステップS804にてダウンシフトが生じてマップ変速段が1つ下に設定された場合を考える。この場合にはステップS806,S812にて「YES」、ステップS814にて「NO」、ステップS822にて「YES」と判定された後、マップ変速段=目標変速段(S824で「NO」)と判定される。このため、Xdwn=OFFに設定され(S808)、マップ変速段を目標変速段に設定して(S810)、ステップS820を実行して一旦本処理を終了する。
【0190】
そして次の制御周期では、ステップS806,S812で「YES」、ステップS814,S822で「NO」となり、以後、平地の変速線図に対応した自動変速制御が実行される状態に戻る。
【0191】
又、ステップS804にてダウンシフトが生じていない場合においても、ステップS826にて推定されたマップ変速段推定回転数NEzがNEz≧Lne+αとなると(S828で「YES」)、ステップS808,S810,S820が実行される。このことによりXdwn=OFFとなって、以後、平地の変速線図に対応した自動変速制御が実行される状態に戻る。
【0192】
図21のタイミングチャートに本実施の形態による処理の一例を示す。高地にて(S806で「YES」)、NE<Lneとなった場合には(S814)、目標変速段はマップ変速段よりも1つ下の変速段にダウンシフトされる(S818、t91)。この状態がマップ変速段がダウンシフトされるまで継続する(t91〜t92)。このことにより破線のハッチングにて示すごとくにエンジン回転数NEが低下することがなく黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性は低減している。
【0193】
尚、一旦、目標変速段がマップ変速段よりも1つ下の変速段にダウンシフトされた(S818、t93)後に、車速SPDが増加してマップ変速段がダウンシフトされなかった場合には、NEz≧Lne+αとなることで(S828で「YES」、t94)、目標変速段がマップ変速段に一致するようになる。
【0194】
以上説明した本実施の形態10によれば、以下の効果が得られる。
(イ).このように自動変速状態において変速線データを切り換えるのではなく、エンジン回転数NEが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する場合には自動的にダウンシフトすることにより、エンジン回転数NEを上昇させている。このことにより黒煙を抑制することができる。
【0195】
(ロ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[実施の形態11]
本実施の形態では、図22に示すダウンシフト促進・アップシフト抑制処理復帰遅延時間設定処理が実行される。尚、自動変速制御処理については、前記図2の処理は行われず、車速SPD及びアクセル開度ACCPに基づいて前記図3の変速線図により目標変速段が設定されているものとする。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0196】
ダウンシフト促進・アップシフト抑制処理復帰遅延時間設定処理(図22)について説明する。本処理は、自動変速制御時に、ディーゼルエンジンの出力制御のために運転状態に応じて実行されているダウンシフト促進処理やアップシフト抑制処理からの復帰時に、高地ではこの復帰を遅延させることにより黒煙の抑制を図るものであり、時間周期で繰り返し実行されるものである。
【0197】
ここでダウンシフト促進処理及びアップシフト抑制処理とは、例えば登坂時に、通常通りにアップシフトがなされるのを防止したりダウンシフトを促進したりして走行トルクを高めて加速性を良好にするために行われるダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御に相当する。又、降坂時においては、エンジンブレーキによる制動性を良好にするために行われるダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御に相当する。又、アクセルペダルの急速な踏み込みや踏み戻し時においては、加速性やエンジンブレーキの制動性を良好にするために行われるダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御に相当する。これらのダウンシフト促進処理・アップシフト抑制処理は変速制御用ECUにより別途実行されている。
【0198】
ダウンシフト促進・アップシフト抑制処理復帰遅延時間設定処理(図22)が開始されると、まず大気圧Atpが読み込まれる(S902)。次にダウンシフト促進処理あるいはアップシフト抑制処理が実行されているか否かが判定される(S904)。上述したダウンシフト促進処理・アップシフト抑制処理がいずれも実行されていなければ(S904で「NO」)、このまま一旦本処理を終了する。
【0199】
ダウンシフト促進処理・アップシフト抑制処理のいずれかが実行されていれば(S904で「YES」)、次に大気圧Atpが基準圧力Latp未満か否かが判定される(S906)。この基準圧力Latpは前記ステップS104(図2)にて述べたごとくである。Atp≧Latpであれば(S906で「NO」)、復帰遅延時間Trに標準遅延時間Rt(例えば、2秒)を設定して(S908)、一旦本処理を終了する。したがってダウンシフト促進処理・アップシフト抑制処理側では、復帰条件が成立すると標準遅延時間Rt後に通常の自動変速制御に復帰することになる。
【0200】
一方、Atp<Latpであれば(S906で「YES」)、復帰遅延時間Trに高地用遅延時間Lt(>Rt、例えば、5秒)を設定して(S910)、一旦本処理を終了する。したがってダウンシフト促進処理・アップシフト抑制処理側では、復帰条件が成立すると高地用遅延時間Lt後に通常の自動変速制御に復帰することになる。
【0201】
本実施の形態による制御の一例を図23,24,25のタイミングチャートに示す。図23は加速時であり、アップシフト抑制制御時に時刻a1にて通常の自動変速制御への復帰条件が成立したものとする。この時、平地であれば標準遅延時間Rt後(a2)に通常の自動変速が実行されて、一点鎖線で示すごとく第2速から第3速にシフトアップされる。しかし高地であれば実線にて示すごとく高地用遅延時間Lt後(a3)に通常の自動変速が実行されて第2速から第3速にシフトアップされる。したがって高地ではシフトアップのタイミングでは、平地時に比較してエンジン回転数NEが高いので黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性は低減している。
【0202】
図24は加速時であり、アップシフト抑制制御時に時刻a11にて通常の自動変速制御への復帰条件が成立したものとする。この時、平地であれば一点鎖線で示すごとく標準遅延時間Rt後(a12)に通常の自動変速にて第2速から第3速にシフトアップされる。しかし高地であれば実線にて示すごとく高地用遅延時間Lt後(a14)に通常の自動変速制御に戻る。ここで、この高地用遅延時間Lt後のタイミングa14の前に、既にアップシフト抑制制御により通常のアップシフトよりも遅れているが第2速から第3速にシフトアップされている(a13)ものとする。したがって、この場合は、高地用遅延時間Lt後(a14)においては既に第3速になっているのでアップシフトは実行されない。しかし、図24に示したごとく、高地側では実線のごとくエンジン回転数NEの極小値NEHが平地時の場合の極小値NELに比較して高くなっているので黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性は低減している。尚、時刻a12の前にアップシフト抑制制御時のアップシフトが生じている場合には、エンジン回転数NEの極小値NEL,NEHは同じである。しかし、高地用遅延時間Lt>標準遅延時間Rtであることにより図24に示したごとくNEH>NELとなる状況が発生するので、この場合も高地用遅延時間Ltの設定により黒煙抑制傾向となる。
【0203】
図25は減速時であり、ダウンシフト促進制御時に時刻b1にて通常の変速制御への復帰条件が成立したものとする。この時、平地であれば標準遅延時間Rt後(b2)に通常の変速が実行される。このため一点鎖線にて示すごとくマップ変速段に応じて第3速から第2速に切り替わる(b5)ことになる。しかし高地であれば実線にて示すごとく高地用遅延時間Lt後(b4)に通常の変速が実行される。ここで、この高地用遅延時間Lt後のタイミングb4の前に、既にダウンシフト促進制御による第3速から第2速にシフトダウンされているものとする。このため高地用遅延時間Lt後(b4)においては既に第2速になっているのでダウンシフトは実行されない。したがって高地側では通常の変速制御に復帰した時には、エンジン回転数NEが平地時に比較して高いので黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性は低減している。尚、標準遅延時間Rt後(b2)のタイミングと高地用遅延時間Lt後(b4)のタイミングとの間にダウンシフト促進制御時でのダウンシフトがなされなかった場合には実際のエンジン回転数NEのレベルについては差はないが全体的には高地用遅延時間Lt後におけるエンジン回転数NEは高くなる傾向となる。したがって黒煙抑制傾向となる。
【0204】
以上説明した本実施の形態11によれば、以下の効果が得られる。
(イ).このようにダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御を実行するシステムである場合には、高地では通常の変速制御への復帰タイミングを遅延させることにより黒煙を抑制することができる。
【0205】
[その他の実施の形態]
(a).平地にてエンジンストール防止のために車速に基づいて強制的にダウンシフトすることでエンジン回転数の低下を抑制する変速制御を行っている場合がある。このようなエンジンストール防止用ダウンシフト制御を実行している場合には、前記実施の形態4,5においては、手動変速制御処理(図8,10)を用いずに、このようなエンジンストール防止用ダウンシフト制御を利用しても良い。すなわちエンジンストール防止用ダウンシフト制御におけるダウンシフト判定車速を、高地の場合には、前記低エンジン回転数基準値Lneを変速比にて換算して求めた車速に、変更することでダウンシフトさせるようにしても良い。
【0206】
(b).大気圧によりディーゼルエンジン運転環境における黒煙発生の容易性を判定している実施の形態においては、大気圧を推定するものとして、ナビゲータによる位置データに基づいて地図データから高度を求め、この高度によりディーゼルエンジン運転環境における黒煙発生の容易性を判定しても良い。
【0207】
(c).前記実施の形態6においては、車両加速度と燃料噴射量との関係からエンジン負荷Mを求めていたが、これ以外に積載重量センサや車両勾配センサなどを備えている場合には、これらのセンサの出力に基づいてエンジン負荷Mを算出しても良い。
【0208】
(d).大気圧の低下を判定している実施の形態においては大気圧の低下判定の代わりにディーゼルエンジン負荷の増加判定を用いても良い。又、大気圧低下をディーゼルエンジン負荷の増加に換算することにより、大気圧の低下要因を含めたディーゼルエンジン負荷の増加を判定して黒煙抑制を実行して良い。
【0209】
又、負荷の増加判定をしている実施の形態においてはディーゼルエンジン負荷の増加判定の代わりに大気圧の低下判定をしても良い。又、ディーゼルエンジン負荷の増加を大気圧の低下に換算することにより、ディーゼルエンジン負荷の増加要因を含めた大気圧の低下を判定して黒煙抑制を実行して良い。
【0210】
(e).前記実施の形態1〜3,7において、Atp<Latpの条件に加えて、エンジン回転数NEが低エンジン回転数基準値Lne未満に低下したことを条件として、両条件が満足された場合に高地用の変速制御処理を実行するようにしても良い。前記実施の形態6においてもM≧Lmの条件に加えて、NEがLne未満に低下したことを条件として両条件が満足された場合に高エンジン負荷用の変速制御処理を実行するようにしても良い。
【0211】
尚、アップシフト線の移動に対しては、NE<Lneの条件の代わりに、現状でアップシフトした場合でのエンジン回転数を推定し、この推定エンジン回転数(推定回転速度に相当)がLneより小さい場合に、アップシフト線を高速側に移動させるようにしても良い。このアップシフト線の高速側への移動はアップシフト線に到達した時に限って、実際にアップシフトする前での判定に基づいて行っても良い。
【0212】
更に、自動クラッチとして機能しているクラッチC1,C2を用いているので、特に減速時での変速中にクラッチC1,C2が共に解放されることにより変速機4側からの回転力がディーゼルエンジン側に伝達されなくなる。このため、トルクコンバータを用いているオートマチックトランスミッションに比較してエンジン回転数NEの低下が急激になることがある。このことを考慮して変速中におけるクラッチC1,C2の解放に伴うエンジン回転数NEの低下量dNEを推定あるいは測定する。そして、この低下量dNEをエンジン回転数NEから減算した値Cne(=NE−dNE)を算出して、この値Cneが低エンジン回転数基準値Lne未満か否かの判定を、NE<Lneの条件の代わりに実行しても良い。すなわち前記実施の形態1〜3,7においてはAtp<Latpの条件とCne<Lneの条件とが共に満足された場合に高地用の変速線図による自動変速制御処理を実行するようにしても良い。前記実施の形態6においてはM≧Lmの条件とCne<Lneの条件とが共に満足された場合に高エンジン負荷用の変速線図による自動変速制御処理を実行するようにしても良い。
【0213】
尚、自動的にダウンシフトする実施の形態4,5,10においても、NE<Lne(S208,S308,S814)の代わりにCne<Lneの判定を実行しても良い。このことにより自動クラッチに対応して、より効果的に黒煙を抑制することができる。
【0214】
(f).前記各実施の形態では、ツインクラッチ式6段変速機を用いたが、トルクコンバータとプラネタリーギヤとを組み合わせたオートマチックトランスミッション、あるいはベルト・プーリ式やトロイダル式等の無段変速機を用いても良い。無段変速する場合には、高地や高負荷時にはエンジン回転数NEが低エンジン回転数基準値Lneより小さくならないように制御することにより、加速時における黒煙の発生を防止することができる。
【0215】
(g).前記実施の形態7では、高地車速補正係数Kspdにより車速SPDを補正(SPD×Kspd)して用いていたが、車速SPDの補正は行わずに、大気圧が低くなるほど高速側にシフト線を移動する補正を変速線図側のデータに対して行っても良い。この変速線図を用いて車速SPDとACCPとにより変速段を求めることにより前記実施の形態7と同様な効果を生じさせることができる。
【0216】
(h).高地や高エンジン負荷時にアップシフト線を高速側に移動させる場合、特にアクセル開度ACCPが小さい側で黒煙が生じ易くなるディーゼルエンジンの場合には図5,7に示したごとくアクセル開度ACCPが低い側のアップシフト線を高速側に移動させる。アクセル開度ACCPが大きい側で黒煙が生じやすくなるディーゼルエンジンの場合には図26に示すごとく、アクセル開度ACCPが高い側のアップシフト線を高速側に移動させる。ここで図26の(A)が平地もしくは低エンジン負荷時のアップシフト線とダウンシフト線とを示し、図26の(B)が高地もしくは高エンジン負荷時のアップシフト線とダウンシフト線とを示している。尚、図26の(B)においてはダウンシフト線は移動させていないが、アップシフト線と同様に高速側に移動させても良い。
【0217】
尚、アクセル開度ACCPが小さい側でも大きい側でも黒煙の生じ易さに差がないディーゼルエンジンの場合には、高地や高エンジン負荷時にはアップシフト線は全体を高速側に移動させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1のディーゼルエンジン、変速機及び変速制御装置の概略構成ブロック図。
【図2】同じく変速制御用ECUが実行する自動変速制御処理のフローチャート。
【図3】同じく自動変速制御処理にて用いられる平地用変速線図。
【図4】同じく平地用変速線図と高地用変速線図との差の説明図。
【図5】実施の形態2の高地用変速線図。
【図6】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図7】実施の形態3の平地用変速線図と高地用変速線図との差の説明図。
【図8】実施の形態4の手動変速制御処理のフローチャート。
【図9】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図10】実施の形態5の手動変速制御処理のフローチャート。
【図11】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図12】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図13】実施の形態6の自動変速制御処理のフローチャート。
【図14】実施の形態7の自動変速制御処理のフローチャート。
【図15】同じく制御の一例を示すグラフ。
【図16】実施の形態8の自動変速制御処理のフローチャート。
【図17】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図18】実施の形態9の自動変速制御処理のフローチャート。
【図19】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図20】実施の形態10の自動変速制御処理のフローチャート。
【図21】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図22】実施の形態11のダウンシフト促進・アップシフト抑制処理復帰遅延時間設定処理のフローチャート。
【図23】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図24】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図25】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図26】アップシフト線移動の他の例を示すグラフ。
【符号の説明】
2…ディーゼルエンジン、4…変速機、6…入力軸、8…シフト操作装置、8a…シフトレバー、10…変速制御用ECU、11…油圧アクチュエータ、12…スリーブ位置センサ、14,16…クラッチストロークセンサ、18,20…クラッチ出力軸回転数センサ、22…車速センサ、24…エンジン回転数センサ、26…アクセル開度センサ、28…大気圧センサ、30…エンジン制御用ECU、32…ディスプレイ、A4…出力軸、C1,C2…クラッチ。
【発明の属する技術分野】
本発明はディーゼルエンジンの変速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンの黒煙対策のために、例えば補助ブレーキを作動させて変速時間を短縮する変速制御装置において、補助ブレーキの作動タイミングを適正化して、補助ブレーキの耐久性を向上させると共に黒煙排出を低減させる技術が提案されている(例えば特許文献1)。又、無負荷状態のディーゼルエンジンを急加速させた時に噴射量の上昇を抑制して黒煙排出を低減させる技術が提案されている(例えば特許文献2)。
【0003】
尚、ディーゼルエンジンに対する変速制御として、例えば車両の高度位置に基づいて平地と高地とで変速特性を変更して、高地での走行性を高める技術が提案されている(例えば特許文献3)。又、登坂路でのロックアップによる車両の走行抵抗を利用してエンジン回転数の上昇しすぎを抑制して駆動力の低下を防止する技術が知られている(例えば特許文献4)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−328975号公報(第4−5頁、第2図)
【特許文献2】
特開平8−319858号公報(第3頁、第2図)
【特許文献3】
特開昭64−55467号公報(第5頁、第4図)
【特許文献4】
特開2002−39365号公報(第4頁、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし高地や高負荷などによりディーゼルエンジンが黒煙を生じやすくなるがこのようなディーゼルエンジンの運転状態に伴う黒煙対策のために変速制御を用いた技術については提案されておらず、黒煙抑制のために如何にして変速制御を実行するかについては不明である。
【0006】
本発明は、変速制御に基づいてディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置は、ディーゼルエンジンに設けられて自動変速機能を有する変速機における変速制御装置であって、ディーゼルエンジンの黒煙発生の容易性を判定する黒煙発生容易性判定手段と、前記黒煙発生容易性判定手段にて判定された黒煙発生の容易性に応じて前記変速機に対する変速制御を変更して、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制する黒煙抑制変速制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
黒煙抑制変速制御手段は、黒煙発生容易性判定手段にて判定された黒煙発生の容易性に応じて変速機に対する変速制御を変更することで、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制している。変速機に対する変速制御を変更することにより、ディーゼルエンジンの運転状態、例えばエンジン回転速度が変化する。このことにより黒煙を抑制する方向にエンジン運転状態を変更させることができる。
【0009】
このようにして変速制御に基づいてディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
請求項2に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1において、前記黒煙抑制変速制御手段はエンジン回転速度を上昇させるように変速制御を変更することで、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することを特徴とする。
【0010】
特にディーゼルエンジンの黒煙は低回転速度側が発生し易い領域であるので、黒煙抑制変速制御手段は変速制御の変更によりエンジン回転速度を上昇させ、このことで黒煙が発生しにくい高回転速度側へ移行させて、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1において、前記黒煙抑制変速制御手段は変速制御をダウンシフトし易い変速制御に変更することで、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することを特徴とする。
【0012】
特にディーゼルエンジンの黒煙は低回転速度側が発生し易い領域である。したがって黒煙抑制変速制御手段は変速制御をダウンシフトし易い変速制御に変更することで回転速度を上昇させ、このことで黒煙が発生しにくい高回転速度側へ移行させることができ、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することができる。
【0013】
請求項4に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1において、前記黒煙抑制変速制御手段は変速制御をアップシフトし難い変速制御に変更することで、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することを特徴とする。
【0014】
このように黒煙抑制変速制御手段は変速制御をアップシフトし難い変速制御に変更することで回転速度の低下を抑制し、このことで黒煙が発生しにくい高回転速度側に留まらせることができ、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することができる。
【0015】
請求項5に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記変速機は自動変速機能と手動変速機能との両機能を有することを特徴とする。
【0016】
尚、変速機は自動変速機能を有するものばかりでなく、自動変速機能と手動変速機能との両機能を有するものでも良い。このような変速機において、自動変速機能と手動変速機能とのいずれが機能していても、前記各請求項のごとく変速制御を変更することにより、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することができる。
【0017】
請求項6に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、前記変速機に対する変速制御を黒煙抑制用の変速制御に切り換えることにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることを特徴とする。
【0018】
黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定されると、黒煙抑制変速制御手段は、変速制御を黒煙抑制用の変速制御に切り換えている。このことによりディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させている。
【0019】
例えば、高地で大気圧が低下した場合や、積載重量が大きい場合には、燃料噴射量と酸素濃度との関係から黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境となる。したがってこのような場合には、例えばエンジン回転速度を高くすれば黒煙は発生し難くなる。したがって、例えばエンジン回転速度が高まるような黒煙抑制用の変速制御に切り換えることにより黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることができる。
【0020】
このようにして変速制御に基づいてディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
請求項7に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6において、前記黒煙の発生し易いエンジン運転領域は、エンジン回転速度で表される領域であることを特徴とする。
【0021】
より具体的には、黒煙の発生し易いエンジン運転領域はエンジン回転速度にて表すことができる。したがって黒煙の発生し易いエンジン回転速度領域では変速制御を黒煙抑制用の変速制御に切り換えることによりエンジン回転速度を変更して黒煙の発生し易いエンジン回転速度領域から離すことにより、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることができる。
【0022】
尚、ここでエンジン回転速度と言っているのは、単位時間当たりのエンジン回転回数(いわゆるエンジン回転数)のみに限らない。すなわち、変速比にて換算した変速機の出力軸回転数や、車両に用いられている場合には変速比に換算した車速をも含む概念であり、エンジンの回転する速度を表すことができる物理量を全て含む概念である。他の請求項においても同じである。
【0023】
請求項8に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6又は7において、前記黒煙発生容易性判定手段は、大気圧を検出して該大気圧が基準値よりも低い場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することを特徴とする。
【0024】
大気圧が低い場合には、ディーゼルエンジンに吸入される空気中の酸素濃度が低下することから、このような吸入空気中に大量に燃料噴射がなされれば黒煙の発生を招きやすくなる。したがって、大気圧が基準値よりも低い場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することができる。
【0025】
請求項9に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6又は7において、前記黒煙発生容易性判定手段は、高度を検出して該高度が基準値よりも高い場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することを特徴とする。
【0026】
直接、大気圧を検出しなくても他の手法、例えばナビゲータによる位置からその位置での高度が判明すれば、その高度に応じて大気圧の低下程度が判明する。したがって、高度を検出して高度が基準値よりも高い場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することができる。
【0027】
請求項10に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6又は7において、前記黒煙発生容易性判定手段は、ディーゼルエンジンに対する負荷を検出して該負荷が基準値よりも大きい場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することを特徴とする。
【0028】
ディーゼルエンジンに対する負荷が大きい場合には、燃料噴射量が増加し、例え平地の大気圧状態でも相対的に酸素濃度が不足して黒煙の発生を招きやすくなる。したがってディーゼルエンジンに対する負荷を検出して負荷が基準値よりも大きい場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することができる。
【0029】
請求項11に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項10において、前記黒煙発生容易性判定手段は、車両重量と牽引重量との一方又は両方を前記負荷として検出することを特徴とする。
【0030】
より具体的にはディーゼルエンジンに対する負荷としては車両重量と牽引重量との一方又は両方を挙げることができる。したがって車両重量と牽引重量との一方又は両方による負荷が基準値よりも大きい場合には、燃料噴射量が増加して黒煙の発生を招き易いので、黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することができる。
【0031】
請求項12に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項10において、前記黒煙発生容易性判定手段は、車両の登降坂状態を前記負荷として検出することを特徴とする。
【0032】
より具体的にはディーゼルエンジンに対する負荷としては車両の登降坂状態を挙げることができる。したがって車両の登降坂による負荷が基準値よりも大きい場合には、燃料噴射量が増加して黒煙の発生を招き易いので、黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することができる。
【0033】
請求項13に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6〜12のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、前記変速機を自動変速する場合に用いる変速線データを、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させる黒煙抑制用変速線データに切り換えることを特徴とする。
【0034】
自動変速する場合に用いる変速線データを、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させる黒煙抑制用変速線データに切り換えることにより、自動変速制御を黒煙抑制用の自動変速制御に切り換えることができる。したがって自動変速時に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、ディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制する変速制御を実行することができる。
【0035】
請求項14に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項13において、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて判定された黒煙発生の容易性の程度に応じて、前記黒煙抑制用変速線データを変更することを特徴とする。
【0036】
このように黒煙抑制用変速線データに切り換えるのみでなく、黒煙抑制用変速線データの内容を黒煙発生の容易性の程度に応じて変更するようにしても良い。このことにより、自動変速時においてより効果的にディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
【0037】
請求項15に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項13又は14において、前記黒煙抑制用変速線データは、通常の変速線データに比較して、ダウンシフト線の一部又は全部が高速側に移動されていることを特徴とする。
【0038】
より具体的には、黒煙抑制用変速線データとしては、通常の変速線データに比較して、ダウンシフト線の一部又は全部が高速側に移動されているものを挙げることができる。ここで高速側とは変速機出力側における高速側に相当する。ディーゼルエンジンが車両走行用エンジンであれば車速の高速側が相当する。他の請求項においても同じである。
【0039】
このことにより減速時にダウンシフトが早期に生じることでダウンシフトが生じ易くなり、自動変速制御においてはエンジン回転が高回転側に移行する傾向が強くなる。このことにより黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させて、黒煙を抑制することができる。
【0040】
請求項16に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項13〜15のいずれかにおいて、前記黒煙抑制用変速線データは、通常の変速線データに比較して、アップシフト線の一部又は全部が高速側に移動されていることを特徴とする。
【0041】
より具体的には、黒煙抑制用変速線データとしては、通常の変速線データに比較して、アップシフト線の一部又は全部が高速側に移動されているものを挙げることができる。このことにより加速時にアップシフトが遅延して生じることでアップシフトが生じ難くなり、自動変速制御においてはアップシフトの変速時においてもエンジン回転を高回転側に維持する傾向が強くなる。このことにより黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させて、黒煙を抑制することができる。
【0042】
又、同時にダウンシフト線についてその一部又は全部が高速側に移動されている場合には、アップシフト線の一部又は全部が高速側に移動されることにより、ダウンシフト線とアップシフト線との間が近づきすぎることがなく、変速制御上のハンチングも抑制できる。
【0043】
請求項17に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項13〜16のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合において、更に自動変速時に前記黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高いと判断される時に、変速線データを前記黒煙抑制用変速線データに切り換えることを特徴とする。
【0044】
黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合にても、黒煙抑制変速制御手段は更に自動変速時に黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高いか否かを判断し、高い場合には変速線データを前記黒煙抑制用変速線データに切り換えるようにしても良い。
【0045】
このように更に黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高いか否かを判断を加えることにより、より精密に黒煙発生の容易性を判断することで、不必要に黒煙抑制用の変速制御に切り換えることがない。
【0046】
請求項18に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6〜12のいずれかにおいて、自動変速状態において、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更にディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する時に、自動的にダウンシフトすることを特徴とする。
【0047】
自動変速状態において、変速線データを切り換えるのではなく、黒煙抑制変速制御手段が、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在するか否かを判断し、存在する時には自動的にダウンシフトするようにしても良い。
【0048】
このことによりエンジン回転速度が上昇するので黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍からディーゼルエンジンの運転状態を離すことができ、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させて、黒煙を抑制することができる。
【0049】
請求項19に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6〜12のいずれかにおいて、手動変速状態において、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更にディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する時に、自動的にダウンシフトすることを特徴とする。
【0050】
手動変速状態においても、黒煙抑制変速制御手段は、黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更にディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在するか否かを判断する。そして、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する時には、自動的にダウンシフトするようにしても良い。
【0051】
このことにより手動変速時においてもエンジン回転速度を上昇させることにより黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍からディーゼルエンジンの運転状態を離すことができ、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させて、黒煙を抑制することができる。
【0052】
請求項20に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6〜12のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に現在の変速状態からアップシフトした場合でのディーゼルエンジンの回転速度を推定し、該推定回転速度が黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する場合には、該当するアップシフト線を高速側に移動することを特徴とする。
【0053】
変速中に、手動変速時にはアクセルペダルが戻されたり、自動変速時には燃料噴射量が減量されたりした場合にはエンジン回転速度が一旦低下する。もしこのエンジン回転速度低下により黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍にエンジン回転速度が入った場合には黒煙抑制の必要が出て来るが、エンジン回転速度低下幅が小さいために黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に入らない場合には黒煙抑制をする必要はない。
【0054】
したがって現在の変速状態からアップシフトした場合におけるディーゼルエンジンの回転速度を推定し、この推定回転速度が黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する場合には、該当するアップシフト線を高速側に移動している。
【0055】
このことにより、不必要にアップシフト線を変更させることがない。そしてアップシフト線変更を実行した場合には、変速中のエンジン回転速度低下幅を小さくでき、黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍からディーゼルエンジンの運転状態を離すことができ、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させて、黒煙を抑制することができる。
【0056】
請求項21に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項6〜12のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、エンジン運転状態に応じて実行されているダウンシフト促進制御又はアップシフト抑制制御からの復帰条件を変更することにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることを特徴とする。
【0057】
変速制御において、例えば登坂時に通常通りにアップシフトがなされるのを防止したり、ダウンシフトを促進したりして走行トルクを高めて加速性を良好にするダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御が行われていることがある。又、降坂時においてもエンジンブレーキによる制動性を良好にするためにダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御が行われていることがある。又、アクセルペダルの急速な踏み込みや踏み戻し時に、加速性やエンジンブレーキの制動性を良好にするためにダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御が行われていることがある。
【0058】
このようなダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御が行われている状態からダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御を実行しない通常の変速制御状態に復帰した場合には、アップシフトが行われ易くなる。そしてこのことによりエンジン回転速度が低下してディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となるおそれがある。
【0059】
このため黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合には、黒煙抑制変速制御手段はダウンシフト促進制御又はアップシフト抑制制御からの復帰条件を変更することにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させている。このことにより黒煙を抑制することができる。
【0060】
請求項22に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項21において、前記復帰条件の変更は、復帰遅延時間を長くすることを特徴とする。
より具体的には、復帰条件の変更としては復帰遅延時間を長くすることにより行われる。このように復帰遅延時間以外の復帰条件が満足されても、通常の変速制御への復帰自体が遅れることにより、この遅延時間に黒煙発生の容易性が低減することで、黒煙を抑制することができるようになる。
【0061】
請求項23に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、現在の変速状態からシフト変化させるとディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍となるか否かを推定し、該エンジン運転領域又は該領域近傍となると推定される場合には前記シフト変化を禁止又は遅延させることにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることを特徴とする。
【0062】
このように黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、黒煙抑制変速制御手段は更に現在の変速状態からシフト変化させるとディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍となるか否かを推定する。そして黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍になると推定されるとシフト変化を禁止又は遅延させている。このことにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させられる。
【0063】
このようにして変速制御に基づいてディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
請求項24に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項1〜23のいずれかにおいて、前記変速機は、自動クラッチを介してディーゼルエンジンから回転トルクを入力することを特徴とする。
【0064】
特に自動クラッチを用いている場合には、変速中における自動クラッチの解放により変速機側からの回転トルクが完全に遮断されるので、燃料噴射量低下時にはエンジン回転速度が低下し易い。このため変速時にディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍になり易い。このため前記各請求項のごとく構成することにより、自動クラッチを用いている場合にも、より効果的にディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
【0065】
請求項25に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項17において、前記変速機は自動クラッチを介してディーゼルエンジンから回転トルクを入力するとともに、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に変速中における前記自動クラッチの解放に伴うエンジン回転速度の低下量を推定あるいは測定し、該低下量を加味して自動変速時に前記黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高いと判断される時に、変速線データを前記黒煙抑制用変速線データに切り換えることを特徴とする。
【0066】
このように変速線データを黒煙抑制用変速線データに切り換える場合においても、特に自動クラッチを用いている場合には、変速中に完全に自動クラッチが解放されることにより変速機側からの回転力がディーゼルエンジン側に伝達されなくなり、エンジン回転数の低下が急激になることがある。このため変速中における前記自動クラッチの解放に伴うエンジン回転速度の低下量を推定あるいは測定して、この低下量を加味して自動変速時に前記黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高くなるか否かを判定する。例えば変速に伴うエンジン回転数の極小値を前記低下量を加味して推定演算する。この結果、黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高いと判断される時には変速線データを黒煙抑制用変速線データに切り換える。
【0067】
このことにより自動クラッチを用いている場合にも、より効果的にディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
請求項26に記載のディーゼルエンジンの変速制御装置では、請求項18又は19において、前記変速機は自動クラッチを介してディーゼルエンジンから回転トルクを入力するとともに、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に変速中における前記自動クラッチの解放に伴うエンジン回転速度の低下量を推定あるいは測定し、該低下量を加味してディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在すると判断される時には、自動的にダウンシフトすることを特徴とする。
【0068】
このように自動的にダウンシフトする場合においても、同様に自動クラッチを用いている場合にはエンジン回転数の低下が急激になることがある。このため変速中における前記自動クラッチの解放に伴うエンジン回転速度の低下量を推定あるいは測定して、この低下量を加味してディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在するか否かを判定する。例えば現在のエンジン回転数から前記低下量を減算したエンジン回転数にて判断する。この結果、黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在すると判断される時には自動的にダウンシフトする。
【0069】
このことにより自動クラッチを用いている場合にも、より効果的にディーゼルエンジンにおける黒煙を抑制することができる。
【0070】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、上述した発明が適用されたディーゼルエンジン、変速機及び変速制御装置の概略構成を表すブロック図である。ディーゼルエンジン(以下、「エンジン」と略す)2はコモンレール式ディーゼルエンジンであり、車両走行駆動用として車両に搭載されている。又、変速機4はツインクラッチ式6段変速機である。尚、図1においては変速機4内部はスケルトン表示にて模式的に示している。
【0071】
エンジン2の出力は変速機4の入力軸6に入力される。この入力軸6にはトーショナルダンパTDを介して第1クラッチC1及び第2クラッチC2の各入力側が接続されている。第1クラッチC1の出力側には第1クラッチ出力軸A1が、第2クラッチC2の出力側には前記第1クラッチ出力軸A1の外側に同軸で配置されている第2クラッチ出力軸A2が接続されている。更にカウンタ軸A3が、これらのクラッチ出力軸A1,A2に平行に配置され、出力軸A4が、クラッチ出力軸A1,A2の延長上に同軸に配置されている。
【0072】
このような変速機4は、クラッチ出力軸A1,A2とカウンタ軸A3との間に配置された各ドライブギヤI1〜I6,IR、各ドリブンギヤO1〜O6,OR及び後進アイドラギヤMRの間の駆動力伝達を、各スリーブS1〜S4の係合制御にて行っている。このことによりクラッチ出力軸A1,A2からカウンタ軸A3側へ所望の変速比で駆動力を伝達している。
【0073】
上記クラッチC1,C2は、それぞれレリーズシリンダとマスタシリンダとを用いた油圧駆動機構PC1,PC2により、変速段の切換時、車両発進時、車両停止時等において係合駆動あるいは解放駆動される。
【0074】
変速制御は、手動変速制御時にはシフト操作装置8に設けられたシフトレバー8aの操作に基づく指示により、自動変速制御時には変速線図に基づく指示により、変速制御用電子制御ユニット(ECU)10が、油圧駆動機構PC1,PC2及び油圧アクチュエータ11を駆動制御することにより実行される。尚、本実施の形態では、シフトレバー8aには「R」、「N」、「A」、「M」、「+」、「−」の6ポジションが存在し、「+」及び「−」は「M」の両側に隣接したポジションにある。
【0075】
変速制御用ECU10は、運転者がシフトレバー8aを「R」にすると変速機4を後進に設定し、「N」にするとニュートラルに設定する。シフトレバー8aを「A」にすると、自動変速モードが実行されて、変速線図による自動変速制御を実行し、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて適切な変速段となるように変速機4を駆動する。シフトレバー8aを「M」にすると、手動変速モードが開始されて、運転者がシフトレバー8aをアップシフト位置「+」に移動させる毎にシフトが順次第1速から第6速へシフトアップするように変速機4が駆動制御される。又、ダウンシフト位置「−」に移動させる毎にシフトは順次第6速から第1速へシフトダウンするように変速機4が駆動制御される。クラッチC1,C2は、自動変速制御時と同様にシフトレバー8aによる手動変速制御時においても運転者が操作しなくても変速制御用ECU10により自動的に解放と係合とを実行する。
【0076】
又、変速制御用ECU10は、登降坂時にはダウンシフト促進制御又はアップシフト抑制制御を実行している。このことにより登坂時には走行トルクを高めて加速性を良好に維持し、降坂時にはエンジンブレーキによる制動性を良好に維持している。更に変速制御用ECU10は、アクセルペダルの急速な踏み込みや踏み戻しをアクセル開度ACCPの時間変化量ΔACCPから検出し、ΔACCPの絶対値が大きい場合には、加速性やエンジンブレーキの制動性を良好にするためにダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御を行っている。
【0077】
変速制御用ECU10は、双方向性バスを介して相互に接続されたRAM、ROM、CPU、入力ポート、出力ポート及び各種駆動回路を備えることで、デジタルコンピュータを中心として構成されている。変速制御用ECU10へは、シフト操作装置8のシフト位置SHFT信号、及び各スリーブS1〜S4の位置を検出するスリーブ位置センサ12のスリーブ位置SLVP信号が入力されている。更に変速制御用ECU10へ、各クラッチC1,C2のストローク量を検出するクラッチストロークセンサ14,16のストロークPCL1,PCL2信号、及び各クラッチ出力軸A1,A2の回転数NA1,NA2を検出するクラッチ出力軸回転数センサ18,20から回転数NA1,NA2信号が入力されている。更に変速制御用ECU10へ、出力軸A4の回転数を検出する車速センサ22から車速SPD信号、エンジン回転数センサ24からエンジン回転数(エンジン回転速度)NE信号が入力されている。そして変速制御用ECU10へ、アクセル開度センサ26からアクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度ACCP信号、大気圧センサ28からの大気圧Atp信号が入力されている。これ以外に変速制御用ECU10へは制御上必要な信号が入力されているとともに、エンジン制御用ECU30との間では、相互にデータ通信を実行して制御に必要なデータを相互に伝達している。
【0078】
エンジン制御用ECU30は、双方向性バスを介して相互に接続されたRAM、ROM、CPU、入力ポート、出力ポート及び各種駆動回路を備えることで、デジタルコンピュータを中心として構成されている。そしてエンジン制御用ECU30は、前記エンジン回転数NEやアクセル開度ACCP等のデータに基づいて燃料噴射量制御、排気再循環制御等を実行している。特に燃料噴射量制御においてはエンジン回転数NEとアクセル開度ACCPとに基づいてガバナパターンからガバナ噴射量を求め、このガバナ噴射量に基づいて燃料噴射量を調節している。更に、変速時においてクラッチC1,C2を自動的に解放・係合する時には、燃料噴射量を調節してエンジン回転の吹き上がり等を防止して円滑に変速機4の噛合ギヤの切り換えがなされるようにしている。
【0079】
又、変速制御用ECU10及びエンジン制御用ECU30は、ダッシュボードに配置されたディスプレイ32に対して制御上必要な情報を表示して乗員に告知する。例えば、変速制御用ECU10は手動変速時及び自動変速時において現在の変速段や運転者に対する警告をディスプレイ32に表示している。
【0080】
次に変速制御用ECU10にて実行される自動変速制御処理(図2)について説明する。本処理はシフトレバー8aが「A」ポジションにある時に、時間周期で繰り返し実行される。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0081】
本処理が開始されると、まず車速SPD、アクセル開度ACCP及び大気圧Atpのデータが変速制御用ECU10のRAM内に設けられた作業領域に読み込まれる(S102)。次にディーゼルエンジン運転環境の一つである大気圧Atpが基準圧力Latp未満か否かが判定される(S104)。ここで基準圧力Latpは、大気圧の低下に起因してディーゼルエンジン2からの黒煙発生が容易となる状態を判定するための基準値を表している。すなわちディーゼルエンジン運転環境における黒煙発生の容易性を判定する値である。例えば、基準圧力Latp=98.6kPaに設定されている。
【0082】
ここで車両が平地を走行している場合であって、Atp(例えば、101kPa)≧Latpであれば(S104で「NO」)、次に図3に示す平地で用いられる変速線図を用いて、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて目標変速段を設定する(S106)。
【0083】
そして設定された目標変速段となるように前記スリーブS1〜S4及び前記クラッチC1,C2の駆動がなされる(S110)。尚、目標変速段が前回の制御周期から変更されていなければ変速段の切り替えはないので前記スリーブS1〜S4及び前記クラッチC1,C2の状態は維持される。
【0084】
このようにして一旦本処理を終了する。したがって平地では図3に示す変速線図による通常の変速制御がなされる。
一方、Atp<Latpであった場合には(S104で「YES」)、高地で用いられる変速線図を用いて、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて目標変速段を設定する(S108)。ここで高地で用いられる変速線図は図3に破線で示すダウンシフト線の内で低アクセル開度側の一部を高速側(エンジン回転数から見ても高回転側に相当)に移動させたものである。すなわち図4の(A)にて一部を示すシフト線の内で破線で示すダウンシフト線の内、低アクセル開度側の一部(ACCP軸に垂直部分)を、図4の(B)に示すごとく高速側に移動させている。ここでは第2速−第3速間でのシフト線を示している。
【0085】
ここで大気圧が低下して酸素濃度が低くなった場合には低エンジン回転数側ではアクセルペダルの加速操作などにより燃料噴射量が大きくなると黒煙が発生する可能性が高まる。特に本実施の形態のディーゼルエンジン2では、低大気圧下にエンジン回転数NEが1200rpm以下にて、燃料噴射量が大きくなると黒煙を生じる。
【0086】
図4の(A),(B)に示すごとく一旦車速SPDが矢印P1のごとく低下し、「▲」の位置から運転者が再加速のためにアクセルペダルを踏み込んだ場合を考える。図4の(A)に示すごとく平地の場合には、低アクセル開度側の第3速から第2速へのダウンシフト線は通常位置であるので、「▲」位置までの車速SPDの低下では第3速から第2速へのダウンシフトは発生しない。したがって「▲」位置では、エンジン回転数NEは1200rpm近傍となっている。この状態で矢印P2のごとくアクセル開度ACCPが増加して燃料噴射量が増加されても平地であるので黒煙が発生することがない。
【0087】
高地の場合には、図4の(B)に示すごとく、低アクセル開度側の第3速から第2速へのダウンシフト線は高速側に移動しているので、図4の(A)と同じ「▲」位置までの車速SPDの低下でも第3速から第2速へのダウンシフトが生じている。したがって「▲」位置では、エンジン回転数は2000rpm近傍となっている。このため低大気圧下にエンジン回転数が1200rpm以下となることが防止される。この状態で矢印P2のごとくアクセル開度ACCPが増加して燃料噴射量が増加されてもエンジン回転数が1200rpmよりも十分に高い状態であるので高地であっても黒煙は発生することはない。
【0088】
上述した構成において、自動変速制御処理(図2)が黒煙発生容易性判定手段及び黒煙抑制変速制御手段に、図4の(B)が黒煙抑制用変速線データに相当する。
【0089】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).自動変速制御処理(図2)では大気圧Atpから黒煙発生の容易性を判定し(S104)、大気圧Atp<Latpの場合には黒煙発生の容易性が高いと判断して(S104で「YES」)、変速線図をダウンシフトし易い変速線図に変更している(S108)。
【0090】
ディーゼルエンジン2の低エンジン回転数側が黒煙の発生し易い領域である。したがって上述したごとく変速制御をダウンシフトし易い変速制御に変更することで、エンジン回転数NEを上昇させている。このことで黒煙が発生しにくい高エンジン回転数側へ移行させることができ、低大気圧時に燃料噴射量が増加することがあってもディーゼルエンジン2の黒煙発生を効果的に抑制することができる。
【0091】
(ロ).高地においてはエンジン回転数は高回転側に維持されるので、以後の高地での加速時の動力性能が維持できるという効果が生じる。
[実施の形態2]
本実施の形態では前記自動変速制御処理(図2)のステップS108にて用いられる変速線図が、図5に示すごとくダウンシフト線のみでなくアップシフト線についても高速側に移動されている。他の構成は前記実施の形態1と同じである。尚、アップシフト線の高速側への移動幅dSはダウンシフト線の移動幅と同じでも良く、ダウンシフト線の移動幅以下でも以上でも良い。
【0092】
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(イ).高地でもアップシフト線がダウンシフト線から離れるので、変速制御のハンチング抑制をより効果的にすることができる。
【0093】
(ロ).図6に破線で示すごとく、自動変速制御では車速増速時に第1速→第2速→第3速→…とアップシフトした場合に、変速時におけるクラッチC1,C2の解放と燃料噴射量減量がなされ、エンジン回転数NEは低下し、その後、クラッチC1,C2のいずれかの係合と燃料噴射量増量復帰が実行される。この変速により図6にハッチングで示すごとくエンジン回転数NEの低下位置が一旦1200rpm以下となると黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍となる。この時に車両が高地にある場合には、黒煙が発生するおそれがある。
【0094】
本実施の形態では、高地ではアップシフト線を高速側に移動してアップシフトし難くしているので、図6に実線にて示すごとく、アップシフト直後のエンジン回転数NEの最低位置が上昇する。このため黒煙を発生し難い領域(>1200rpm)に止めることができ、黒煙抑制効果を生じる。
【0095】
(ハ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[実施の形態3]
本実施の形態では、図7の(B)に示すごとく前記自動変速制御処理(図2)のステップS108にて用いられる高地用の変速線図が、ダウンシフト線については、図7の(A)に示す平地用のダウンシフト線と同じ位置であるが、アップシフト線が高速側に移動されている。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0096】
以上説明した本実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態2の(ロ)、(ハ)の効果を生じる。特に高地ではダウンシフト線とアップシフト線が通常時より離れるので変速制御におけるハンチング上の問題は生じない。
【0097】
[実施の形態4]
本実施の形態では、シフトレバー8aが「M」,「+」,「−」ポジションにある時に手動変速制御処理が図8のごとく実行される。本処理では手動変速制御時に黒煙発生のおそれがある場合には自動ダウンシフトする処理を実行するものである。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0098】
手動変速制御処理(図8)について説明する。本処理は時間周期で繰り返し実行される。本処理が開始されると、まずエンジン回転数NE、大気圧Atp、シフトレバー8a位置データ及び現在設定されている指示変速段が変速制御用ECU10のRAM内に設けられた作業領域に読み込まれる(S202)。次にシフトレバー8aの位置データから指示変速段が設定される(S204)。手動変速制御時にシフトレバー8aの位置データから指示変速段が設定される処理は前記実施の形態1に述べたごとくである。
【0099】
次に大気圧Atpが基準圧力Latp未満か否かが判定される(S206)。この基準圧力Latpは前記自動変速制御処理(図2)のステップS104にて説明したごとくである。
【0100】
ここでAtp≧Latpであれば(S206で「NO」)、黒煙抑制ダウンシフトフラグXanに「OFF」を設定する(S220)。そして指示変速段を目標変速段に設定して(S212)、目標変速段となるように前記ステップS110(図2)と同じ処理がなされる(S222)。こうして一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示通りの変速段を実現する。
【0101】
又、Atp<Latpであれば(S206で「YES」)、次にエンジン回転数NEが低エンジン回転数基準値Lne未満か否かが判定される(S208)。この低エンジン回転数基準値Lneは、この値よりエンジン回転数NEが低下すると、黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍になることを判定するための基準値である。低エンジン回転数基準値Lneは黒煙の発生し易いエンジン運転領域(≦1200rpm)を判定する1200rpmに対して余裕代を持った値(1200rpm+余裕代)として設定されているので、実際には黒煙の発生し易いエンジン運転領域近傍になることを判定するための基準値となっている。
【0102】
ここでNE≧Lneであると(S208で「NO」)、次に黒煙抑制ダウンシフトフラグXan=「OFF」か否かが判定される(S210)。黒煙抑制ダウンシフトフラグXanの初期設定は「OFF」であるが、ここで初期設定通りであれば(S210で「YES」)、指示変速段を目標変速段に設定して(S212)、前記ステップS222を実行して一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示通りの変速段を実現する。
【0103】
一方、Atp<Latpの状態で(S206で「YES」)、更にNE<Lneとなった場合には(S208で「YES」)、黒煙抑制ダウンシフトフラグXanに「ON」を設定する(S214)。そして今回の制御周期のステップS204にて設定されている指示変速段よりも1つダウンシフトした変速段を目標変速段に設定する(S216)。例えば、第3速が指示変速段である場合には、目標変速段には第2速が設定される。尚、指示変速段が第1速の場合には、これより下の変速段は無いので、目標変速段は第1速に設定される。
【0104】
次にこのような自動ダウンシフト状態にあることをディスプレイ32の表示にて報知する(S217)。そしてステップS222を実行して一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示よりも1つダウンシフトされた状態となる。
【0105】
次の制御周期でも、Atp<Latpで(S206で「YES」)、かつNE<Lneである場合には(S208で「YES」)、前述したごとく変速機4は運転者の指示よりも1つダウンシフトされた状態に維持される(S214,S216,S217,S222)。
【0106】
その後、前記ダウンシフト(S216)によりエンジン回転数NEが上昇して、NE≧Lneとなると(S208で「NO」)、次にXan=「OFF」か否かが判定される(S210)。ここでは前回の制御周期までステップS214が実行されており、Xan=「ON」であることから(S210で「NO」)、次に変速機4を指示変速段通りに戻したとした場合に、NEx≧Lne+αとなるか否かが判定される(S218)。ここで推定回転数NExは、現在の目標変速段が指示変速段に変速された場合に現在のエンジン回転数NEが到達されると予測されるエンジン回転数を表している。この推定回転数NExは、目標変速段と指示変速段との変速比の関係及び車速SPDに基づいて算出される。余裕代αは、直ちに変速機4を指示変速段通りとした場合に安定してNE≧Lneと判定されるようにするためのヒステリシス用の値である。
【0107】
ここでNEx<Lne+αである場合には(S218で「NO」)、ステップS216,S217,S222を実行して、本処理を一旦終了する。したがって変速機4を運転者の指示よりも1つダウンシフトされた状態とする変速制御が維持される。
【0108】
その後、NEx≧Lne+αとなった場合には(S218で「YES」)、黒煙抑制ダウンシフトフラグXanに「OFF」を設定して(S220)、指示変速段を目標変速段に設定する(S212)。そしてステップS222を実行して一旦本処理を終了する。したがって変速機4を運転者の指示通りの変速段とする手動変速制御に戻る。
【0109】
次の制御周期では、ステップS206で「YES」、ステップS208で「NO」と判定されても、Xan=「OFF」であるので(S210で「YES」)、指示変速段を目標変速段に設定する(S212)。そしてステップS222を実行して一旦本処理を終了する。したがって以後も変速機4を運転者の指示通りの変速段とする手動変速制御を継続する。
【0110】
そして再度、ステップS206で「YES」かつステップS208で「YES」と判定されると、前述した処理を繰り返す。
図9のタイミングチャートに本実施の形態による処理の一例を示す。車速SPDが低下している場合に、運転者によるシフトレバー8aを「−」ポジションに移動させることによるダウンシフト操作が時刻t42,t44にて実行されたものとする。しかし運転者のダウンシフト操作に従ったのでは、破線及びハッチングで示すごとくエンジン回転数NEが低エンジン回転数基準値Lneより下になってからのダウンシフトとなる。このためエンジン回転数NEが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍となる。この状態が高地で発生してかつこの時にアクセルペダルの踏み込みにより燃料噴射量の増加があると黒煙発生のおそれがある。
【0111】
本実施の形態では実線のごとく、高地ではNE<Lneとなった時刻t41,t43にて手動変速時であっても自動的にダウンシフトするので、NE<Lneとならず、燃料噴射量の増加があっても黒煙発生のおそれがなくなる。
【0112】
以上説明した本実施の形態4によれば、以下の効果が得られる。
(イ).手動変速状態において、高地にてエンジン回転数NE<低エンジン回転数基準値Lneとなる場合には、自動的にダウンシフトしている。このことにより手動変速時においてもエンジン回転数NEを上昇させることができ、黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍からディーゼルエンジン2の運転状態を離すことができ、黒煙発生を抑制することができる。
【0113】
(ロ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[実施の形態5]
本実施の形態では、前記手動変速制御処理(図8)の代わりに、図10に示す手動変速制御処理が実行される。他の構成は前記実施の形態4と同じである。本処理は黒煙発生のおそれがある時に指示変速段を自動ダウンシフトする処理である。
【0114】
手動変速制御処理(図10)について説明する。本処理は時間周期で繰り返し実行される。本処理が開始されると、ステップS302,S304にて前記ステップS202,S204(図8)と同じ処理が実行されて指示変速段が設定される。
【0115】
次に大気圧Atpが基準圧力Latp未満か否かが判定される(S306)。この基準圧力Latpは前記自動変速制御処理(図2)のステップS104にて説明したごとくである。
【0116】
ここでAtp≧Latpであれば(S306で「NO」)、指示変速段を目標変速段に設定する(S318)。そしてステップS320にて前記ステップS110(図2)と同じ処理により目標変速段が実現され、一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示通りの変速段を実現する。
【0117】
又、Atp<Latpであれば(S306で「YES」)、次にエンジン回転数NEが低エンジン回転数基準値Lne未満か否かが判定される(S308)。この低エンジン回転数基準値Lneは前記S208(図8)にて説明したごとくの値である。
【0118】
ここでNE≧Lneであると(S308で「NO」)、前記ステップS318,S320が実行され、一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示通りの変速段を実現する。
【0119】
一方、Atp<Latp(S306で「YES」)でかつNE<Lne(S308で「YES」)である場合には、次に今回のシフトレバー8aの操作がダウンシフト操作で無いか否かが判定される(S310)。今回のシフトレバー8aの操作がダウンシフト操作である場合には(S310で「NO」)、エンジン回転数NEが上昇する方向であり、黒煙を抑制する方向の運転状態変化であることから、前記ステップS318,S320が実行され、一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示通りの変速段を実現する。
【0120】
このようにステップS310にて「NO」と判定された場合に、次の制御周期ではシフト操作がなされないためにステップS310にて「YES」と判定されたとする。この場合には、次に指示変速段変更後に待機時間経過したか否かが判定される(S312)。この待機時間は、新たな変速比に対応したエンジン回転数NEに到達するまで待つために設定してある。
【0121】
待機時間を経過するまでは(S312で「NO」)、前記ステップS318,S320が実行され、一旦本処理を終了する。したがって変速機4は運転者の指示通りの変速段を実現する。そしてこの待機時間中にNE≧LneとなればステップS308で「NO」と判定されるようになり、前記ステップS318,S320が実行されるので、変速機4は運転者の指示通りの変速段を継続する。
【0122】
しかしAtp<Latp(S306で「YES」)でかつNE<Lne(S308で「YES」)で、更に今回ダウンシフト操作が無く(S310で「YES」)、指示変速段の変更後に待機時間が経過している場合には(S312で「YES」)、指示変速段が自動的に1つダウンシフトされる(S314)。例えば、直前までの指示変速段が第4速に設定されていた場合には、ステップS314の処理により第3速に指示変速段が自動的に変更される。尚、直前までの指示変速段が第1速に設定されていた場合にはステップS314ではダウンシフトはなされず第1速が維持される。
【0123】
そして次に自動ダウンシフトが発生したことを音声にて出力したりディスプレイ32に表示したりすることで運転者に報知する(S316)。このことにより手動変速制御時に自動的にダウンシフトが生じていることを運転者に認識させる。尚、前述したごとくステップS314で第1速が維持された場合には、ステップS316にても報知は実行しない。
【0124】
そして前記ステップS318,S320が実行される。このため変速機4は自動的にダウンシフトした変速段となる。そして次の制御周期では、ステップS306,S308,S310にてそれぞれ「YES」と判定されても、自動的にダウンシフトされてから待機時間が経過するまでは(S312で「NO」)、前記ステップS314,S316は実行されることなく、前記ステップS318,S320が実行される。そしてこの待機時間中にNE≧Lneとなれば(S308で「NO」)と判定されるようになり、待機時間経過に関わらず、前記ステップS314,S316は実行されることなく、前記ステップS318,S320が実行される。
【0125】
この状態で再度Atp<Latp(S306で「YES」)で、NE<Lne(S308で「YES」)で、ダウンシフト操作が無く(S310で「YES」)、前回の指示変速段の変更後に待機時間が経過した(S312で「YES」)状態となれば、前述したステップS314,S316の処理が繰り返される。
【0126】
このことによりエンジン回転数NEが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍になることを自動ダウンシフトにより防止している。
図11,12に本実施の形態による処理の一例を示す。図11では手動変速制御状態にて車速SPDが低下している場合に運転者によるシフトレバー8aの操作をしていない状況を示している。このような手動変速制御時においても高地においてエンジン回転数NEが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に低下しようとすると、自動的にダウンシフトが実行されて(t51,t52)、エンジン回転数NEは上昇される。したがってアクセルペダルの踏み込みにより燃料噴射量が増加する状況が発生しても、黒煙発生を抑制できる。
【0127】
図12では図11と同様に自動的にダウンシフトが実行されて(t61,t64)いるが、途中で運転者がシフトレバー8aによりアップシフト操作した状況を示している。アップシフト操作(t62)により直ちにエンジン回転数NEは急速に低下して一時的にNE<Lneとなるが待機時間後(t63)に自動的にダウンシフトが生じる。このためエンジン回転数NEが直ちに低エンジン回転数基準値Lne以上に回復する。このような場合、NE<Lneとなる期間は極めて短くなり、この期間に燃料噴射量が増加する確率は小さいので、黒煙発生を抑制できる。
【0128】
以上説明した本実施の形態5によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態4の(イ)、(ロ)と同じ効果を生じる。
[実施の形態6]
本実施の形態では、前記自動変速制御処理(図2)の代わりに、図13に示す自動変速制御処理が実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。自動変速制御処理(図13)について説明する。本処理は大気圧でなくエンジン負荷による黒煙発生の容易性判定を実行するものであり、時間周期で繰り返し実行される。
【0129】
本処理が開始されると、まず車速SPD及びアクセル開度ACCPのデータが変速制御用ECUのRAM内に設けられた作業領域に読み込まれる(S402)。次に別途算出されているエンジン負荷Mが同じく作業領域に読み込まれる(S404)。このエンジン負荷Mはディーゼルエンジン2の運転環境の一つであり、車両重量(車両自体の重量、車両積載量などが含まれ、質量で表しても良い)、牽引重量(牽引車両の重量などが含まれ、質量で表しても良い)、車両の登降坂状態(登降坂の勾配などが含まれる)などを含めた概念である。したがってエンジン負荷Mが大きいと加速のために通常よりも大量の燃料噴射が行われるので、エンジン回転数NEが低い場合には黒煙発生のおそれが生じる。
【0130】
このエンジン負荷Mは、例えば車両の加速度に対するエンジン出力トルク(燃料噴射量)との関係によりマップあるいは関数計算から求められる。このエンジン負荷M算出処理は、車両走行中に繰り返し算出されている。
【0131】
次にエンジン負荷Mが基準負荷Lm以上か否かが判定される(S406)。ここで基準負荷Lmは、ディーゼルエンジン2からの黒煙発生が容易となる状態を判定するための基準値を表している。すなわちディーゼルエンジン運転環境における黒煙発生の容易性を判定する値である。例えば、平地で積載量が無い場合でのエンジン負荷Mの3〜5%増に設定されている。
【0132】
ここでM<Lmであれば(S406で「NO」)、次に前記図3に示した平地で用いられる変速線図と同じ通常負荷用の変速線図を用いて、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて目標変速段を設定する(S408)。そして前記ステップS110(図2)と同様のステップS412を実行して一旦本処理を終了する。したがって低エンジン負荷時では図3に示す変速線図により通常の変速制御がなされる。
【0133】
一方、M≧Lmであった場合には(S406で「YES」)、高エンジン負荷用変速線図を用いて、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて目標変速段を設定する(S410)。ここで高エンジン負荷時に用いられる変速線図は、前記図4の(B)にて説明したごとく、ダウンシフト線の内で低アクセル開度側の一部を高速側に移動させたものである。このように目標変速段が設定されると、ステップS412が実行されて一旦本処理を終了する。
【0134】
エンジン負荷Mが増加することで燃料噴射量のレベルが上昇すると、燃料噴射量に比較して酸素濃度が相対的に低くなる。この場合には低エンジン回転数側で加速のために燃料噴射量が更に増大すると黒煙が発生する可能性が高まる。
【0135】
したがって本実施の形態では、低エンジン負荷時では図4の(A)に示したごとく、「▲」位置までの車速SPDの低下では第3速から第2速へのダウンシフトは発生せず、「▲」位置では、エンジン回転数NEは1200rpm近傍となっている。しかしこの状態で矢印P2のごとくアクセル開度ACCPが増加して燃料噴射量が増加されても低エンジン負荷時であるので黒煙が発生するおそれはない。
【0136】
しかし高エンジン負荷時では図4の(B)に示したごとく、低アクセル開度側の第3速から第2速へのダウンシフト線は高速側に移動しているので、「▲」位置までの車速SPDの低下でも第3速から第2速へのダウンシフトが生じている。したがって「▲」位置では、エンジン回転数は2000rpm近傍となっている。このため高エンジン負荷時にエンジン回転数が1200rpm以下となることが防止される。この状態で矢印P2のごとくアクセル開度ACCPが増加して燃料噴射量が増加されてもエンジン回転数が1200rpmよりも十分に高い状態であるので高エンジン負荷時であっても黒煙の発生は抑制される。
【0137】
以上説明した本実施の形態6によれば、以下の効果が得られる。
(イ).自動変速制御処理(図13)ではエンジン負荷Mの状態から黒煙発生の容易性を判定し(S404,S406)、エンジン負荷M≧Lmの場合には黒煙発生の容易性が高いと判断して(S406で「YES」)、変速線図をダウンシフトし易い変速線図に変更している(S410)。
【0138】
ディーゼルエンジン2の黒煙は低エンジン回転数側が発生し易い領域である。したがって上述したごとく変速制御をダウンシフトし易い変速制御に変更することで、エンジン回転数を上昇させている。このことで高エンジン負荷時に燃料噴射量が増加してもディーゼルエンジン2の黒煙発生を効果的に抑制することができる。
【0139】
[実施の形態7]
本実施の形態では、前記自動変速制御処理(図2)の代わりに図14に示す自動変速制御処理が実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0140】
自動変速制御処理(図14)について説明する。本処理は大気圧の低下の程度に応じて、すなわち黒煙発生の容易性の程度に応じて、車速SPDと変速線図との対応を変更するものであり、時間周期で繰り返し実行される。
【0141】
本処理が開始されると、まず前記ステップS102,S104と同じ処理(S502,S504)が行われる。ここでAtp≧Latpであれば(S504で「NO」)、次に前記ステップS106と同じく前記図3に示した平地用変速線図を用いて車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて目標変速段を設定し(S506)、前記ステップS110と同じ処理(S514)を実行して一旦本処理を終了する。したがって平地では前記図3に示す変速線図により通常の変速制御がなされる。
【0142】
一方、Atp<Latpであった場合には(S504で「YES」)、基準圧力Latpと大気圧Atpとの差に基づいて、関数あるいはマップfspdから高地車速補正係数Kspdが算出される(S508)。この高地車速補正係数Kspdは、実際の車速SPDを、大気圧が低いほど自動変速制御上は低く補正する係数であり、1>Kspd>0の範囲で「Latp−Atp」の値が大きくなるほど小さい値に設定される。
【0143】
そして実際の車速SPDの代わりに「SPD×Kspd」を用いて、高地補正車速値「SPD×Kspd」とアクセル開度ACCPとに基づいて、前記図3に示す変速線図により目標変速段を設定する(S512)。そして、この設定された目標変速段となるように前記ステップS514の処理がなされて一旦本処理を終了する。
【0144】
したがって平地では実際のSPDよりも低く補正された車速に基づいて前記図3に示す変速線図により高地での変速制御がなされる。このため図15に示すごとく、平地では▲印にて示すごとく実際の車速SPDに従って変速されるが、高地では●印にて示すごとくの高地補正車速値「SPD×Kspd」にしたがって変速される。このためΔSPD分低い車速に基づくようになるため、それだけダウンシフトが早期に実行され、又、アップシフトが遅延され、黒煙の発生し易いエンジン回転数域から高回転側に離れた運転領域にて運転者による加速を実行させることができる。
【0145】
以上説明した本実施の形態7によれば、以下の効果が得られる。
(イ).高地では、自動変速制御処理(図14)は変速制御に用いる車速SPDを低速側に補正しているので、平地と同じ変速線図を用いても、高地ではダウンシフトし易くすることができる。このことで黒煙が発生しにくい高エンジン回転数側へ移行させることができ、低大気圧時に燃料噴射量が増加してもディーゼルエンジンの黒煙発生を効果的に抑制することができる。
【0146】
(ロ).大気圧Atpが低くなれば、変速線図にて判断する車速「SPD×Kspd」は、実際の車速SPDよりも一層低い値となるように補正している。このため、大気圧Atpが低くなるほど、より高めにエンジン回転数を維持することができ、黒煙発生を的確に抑制できる。
【0147】
(ハ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[実施の形態8]
本実施の形態では、前記自動変速制御処理(図2)の代わりに図16に示す自動変速制御処理が実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0148】
自動変速制御処理(図16)について説明する。本処理は、自動変速制御によるアップシフトがある場合にエンジン回転数が黒煙の発生し易い領域近傍となると推定される場合にはアップシフトを禁止するものであり、時間周期で繰り返し実行される。
【0149】
本処理が開始されると、まずエンジン回転数NE、車速SPD、アクセル開度ACCP、大気圧Atp及び現在設定されている目標変速段が変速制御用ECUのRAM内に設けられた作業領域に読み込まれる(S602)。そして前記図3に示した平地で用いられる変速線図を用いて、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいてマップ変速段を設定する(S604)。
【0150】
次に大気圧Atpが基準圧力Latp未満か否かが判定される(S606)。この基準圧力Latpは前記自動変速制御処理(図2)のステップS104にて説明したごとくである。ここでAtp≧Latpであれば(S606で「NO」)、マップ変速段を目標変速段に設定する(S618)。そして前記ステップS110(図2)と同じ処理が行われて一旦本処理を終了する。したがって平地での自動変速制御が実行される。
【0151】
又、Atp<Latpであれば(S606で「YES」)、次に直前のステップS604にて設定されたマップ変速段がアップシフト要求か否かが、現在の目標変速段との比較により判定される(S608)。例えば、目標変速段=第2速である場合に、マップ変速段=第3速であればアップシフト要求であると判断でき、マップ変速段=第1速あるいは第2速であればアップシフト要求ではないと判断できる。
【0152】
ここでアップシフト要求でなければ(S608で「NO」)、ステップS618,S616を実行し一旦本処理を終了する。したがって平地での自動変速制御が高地においても実行される。
【0153】
一方、Atp<Latpであって(S606で「YES」)、更にアップシフト要求である(S608で「YES」)場合には、アップシフト後推定回転数NEyを推定計算する(S610)。アップシフト後推定回転数NEyは、アップシフト直後に変速比の変化に対応してエンジン回転数NEが低下するが、この低下におけるエンジン回転数NEの極小値を表すものである。例えば、現在のエンジン回転数NE、車速SPD、変速中に予測される燃料噴射量変化、エンジンフリクション、車両重量等のエンジン負荷等に基づいてマップから算出される。
【0154】
そしてアップシフト後推定回転数NEyが低エンジン回転数基準値Lneよりも小さいか否かが判定される(S612)。低エンジン回転数基準値Lneは前記実施の形態4のステップS208(図8)にて述べたごとくである。ここでNEy≧Lneであれば(S612で「NO」)、ステップS618,S616を実行し一旦本処理を終了する。したがって平地での自動変速制御が高地においても実行される。
【0155】
一方、NEy<Lneであれば(S612で「YES」)、アップシフト要求があっても目標変速段は変更せず前回の目標変速段を今回も維持する(S614)。そしてステップS616を実行し一旦本処理を終了する。すなわち、例えば前記図3に示した変速線図上では、第2速から第3速にアップシフトしたとしても、実際の変速段は第2速のままに維持されることになる。
【0156】
以後の制御周期でも、ステップS610にて推定されるアップシフト後推定回転数NEyの値が、NEy<Lneであれば(S612で「YES」)、アップシフト要求がされているにも関わらず、目標変速段を維持する処理(S614)が継続する。
【0157】
そしてエンジン回転数NEの上昇などに伴い、アップシフト後推定回転数NEyの値が上昇して、NEy≧Lneと判定されると(S612で「NO」)、マップ変速段を目標変速段に設定し(S618)、ステップS616を実行し一旦本処理を終了する。すなわち、前記図3の変速線図通りの自動変速制御に戻る。尚、高地から平地に車両が移動した場合(S606で「NO」)、あるいはアップシフト要求が無くなった場合(S608で「NO」)にもステップS618の実行により前記図3の変速線図通りの自動変速制御に戻る。
【0158】
図17のタイミングチャートに本実施の形態による処理の一例を示す。自動変速制御において、車速SPD増加時に前記図3の変速線図に従って第1速から第2速へマップ変速段が変化した時に(t71)、NEy<Lneと判定されると、マップ変速段は実現されず、変速機は第1速のままで引き続きエンジン回転数NEの上昇を継続する。
【0159】
そしてNEy≧Lneと判定されると(t72)、ここでマップ変速段である第2速が目標変速段に設定されて実現される。この変速直後に生じるエンジン回転数NEの低下においてもNEの極小値(t73)は低エンジン回転数基準値Lneを下回ることはない。
【0160】
同様にして第2速から第3速にマップ変速段が変化した時も(t74)、NEy<Lneであるので第3速への変速は行われず、NEy≧Lneと判定された時に(t75)、第3速に変速される。この時もNEの極小値(t76)は低エンジン回転数基準値Lneを下回ることはない。
【0161】
このように高地において、アップシフト後に推定されるエンジン回転数(NEy)が黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍(NEy<Lne)に存在する時にはアップシフトが禁止されるので、エンジン回転数NEを黒煙を発生し難い領域(>1200rpm)に止めることができる。
【0162】
以上説明した本実施の形態8によれば、以下の効果が得られる。
(イ).このように自動変速制御において、黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に現在の変速状態からアップシフトさせるとディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍になると推定されるとアップシフト変化を禁止している。このことによりディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減できるので、黒煙を抑制することができる。
【0163】
[実施の形態9]
本実施の形態では、前記自動変速制御処理(図2)の代わりに図18に示す自動変速制御処理が実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0164】
自動変速制御処理(図18)について説明する。本処理は高地でのアップシフト時に遅延時間を設けることにより黒煙発生を抑制するものであり、時間周期で繰り返し実行される。ここでステップS702〜S708,S710,S712,S714,S716,S718は前記図16の各ステップS602〜S618と同じである。
【0165】
まずステップS702,S704によりマップ変速段を設定する。そして次にAtp<Latpか否かが判定される(S706)。ここでAtp≧Latpであれば(S706で「NO」)、遅延フラグXdelに「OFF」を設定し(S717)、マップ変速段を目標変速段に設定する(S718)。そして目標変速段となるようにスリーブやクラッチの駆動がなされる(S716)。こうして一旦本処理を終了する。したがって平地での自動変速制御が実行される。
【0166】
Atp<Latpであれば(S706で「YES」)、次にアップシフト要求か否かが判定される(S708)。ここでアップシフト要求でなければ(S708で「NO」)、ステップS717,S718,S716を実行し一旦本処理を終了する。したがって平地での自動変速制御が高地においても実行される。
【0167】
一方、Atp<Latpであって(S706で「YES」)、更にアップシフト要求である(S708で「YES」)場合には、Xdel=「OFF」か否かが判定される(S709)。最初はXdel=「OFF」であるので(S709で「YES」)、次にアップシフト後推定回転数NEyを推定計算する(S710)。そしてNEy<Lneか否かが判定される(S712)。ここでNEy≧Lneであれば(S712で「NO」)、ステップS717,S718,S716を実行し一旦本処理を終了する。したがって平地での自動変速制御が高地においても実行される。
【0168】
一方、NEy<Lneであれば(S712で「YES」)、Xdelに「ON」を設定する(S713)。そして目標変速段は変更せず前回の目標変速段を今回も維持し(S714)、ステップS716を実行し一旦本処理を終了する。したがって、前記図3の変速線図上ではアップシフトされていても、実際の変速段は維持される。
【0169】
次の制御周期では、ステップS706,S708にて「YES」と判定された後に、Xdel=「ON」であることから(S709で「NO」)、次にアップシフト要求からの経過時間が基準遅延時間Tdel以上となったか否かが判定される(S719)。初期においては、経過時間<Tdelであることから(S719で「NO」)、ステップS714,S716を実行して一旦本処理を終了する。以後、経過時間<Tdelである限り(S719で「NO」)、ステップS714,S716が実行されて、目標変速段は維持される。
【0170】
そして経過時間≧Tdelとなると(S719で「YES」)、次にTdelに「OFF」が設定され(S717)、マップ変速段を目標変速段に設定し(S718)、ステップS716にて目標変速段を実現する。このことにより前記基準遅延時間Tdelの間、禁止されていたアップシフトが実行されることになる。
【0171】
次の制御周期では、マップ変速段が変化していなければ、アップシフト要求はないので(S708で「NO」)、ステップS717,S718,S716の実行が継続し、前記図3の変速線図通りの自動変速制御に戻ることになる。
【0172】
図19に本実施の形態による処理の一例を示す。自動変速制御において、車速SPD増加時に前記図3の変速線図に従って第1速から第2速へマップ変速段が変化した時に(t81)、NEy<Lneと判定されると、マップ変速段は実現されず、変速機は第1速のままで引き続きエンジン回転数NEの上昇を継続する。
【0173】
そしてアップシフト要求から基準遅延時間Tdelが経過すると(t82)、ここでマップ変速段である第2速が目標変速段に設定されて実現される。この変速直後に生じるエンジン回転数NEの低下においてもNEの極小値(t83)は基準遅延時間Tdelを設けた分、高くなる。このため黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍から離すことができる。本実施の形態では低エンジン回転数基準値Lneから離すことができる。
【0174】
同様にして、第2速から第3速にマップ変速段が変化した時も(t84)、NEy<Lneであるので第3速への変速は行われず、基準遅延時間Tdel後に(t85)、第3速に変速される。この時もNEの極小値(t86)は低エンジン回転数基準値Lneを下回ることはない。
【0175】
このように、高地において、アップシフト後に推定されるエンジン回転数NEが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍(NEy<Lne)に存在する時にはアップシフトが遅延されるので、エンジン回転数NEを黒煙を発生し難い領域(>1200rpm)に止めることができる。
【0176】
以上説明した本実施の形態9によれば、以下の効果が得られる。
(イ).このように黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に現在の変速状態からアップシフトさせるとディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍になると推定されるとアップシフト変化を遅延させている。このことによりディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減して、黒煙を抑制することができる。
【0177】
[実施の形態10]
本実施の形態では、前記自動変速制御処理(図2)の代わりに図20に示す自動変速制御処理が実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0178】
自動変速制御処理(図20)について説明する。本処理は、高地での自動変速制御中にエンジン回転数NEが黒煙の発生し易い領域又は該領域近傍になるとダウンシフトしてエンジン回転数NEの上昇を図るものであり、時間周期で繰り返し実行されるものである。
【0179】
自動変速制御処理(図20)が開始されると、まずデータの読込(S802)と平地の変速線図からマップ変速段設定(S804)が実行され、そして次に大気圧Atp<基準圧力Latpか否かが判定される(S806)。これらステップS802〜S806の処理は前記実施の形態9のステップS702〜S706(図18)と同じである。
【0180】
ここでAtp≧Latpであれば(S806で「NO」)、ダウンシフト実行フラグXdwnに「OFF」を設定し(S808)、マップ変速段を目標変速段に設定する(S810)。そして前記ステップS716(図18)と同じく目標変速段が実現される(S820)。こうして一旦本処理が終了する。したがって平地での自動変速制御が実行される。
【0181】
一方、Atp<Latpであった場合には(S806で「YES」)、次に現在の目標変速段への変速後に待機時間が経過しているか否かが判定される(S812)。この待機時間は、新たな変速比に対応したエンジン回転数NEに到達するまで待機するために設定してある。ここで待機時間が経過していなければ(S812で「NO」)、Xdwn=「ON」か否かが判定される(S822)。初期設定ではXdwn=「OFF」であるが、この時、初期設定通りXdwn=「OFF」であるとすると(S822で「NO」)、ステップS810,S820が実行されて、一旦本処理を終了する。したがって高地においても平地での自動変速制御が継続される。
【0182】
待機時間が経過すれば(S812で「YES」)、次にNE<Lneか否かが判定される(S814)。低エンジン回転数基準値Lneは前記実施の形態4のステップS208(図8)にて述べたごとくである。ここでNE≧Lneであれば(S814で「NO」)、Xdwn=「ON」か否かが判定される(S822)。初期設定通りXdwn=「OFF」であれば(S822で「NO」)、ステップS810,S820が実行されて一旦本処理を終了する。したがって高地においても平地での自動変速制御が継続される。
【0183】
一方、NE<Lneであれば(S814で「YES」)、ダウンシフト実行フラグXdwnに「ON」が設定される(S816)。そして今回、ステップS804にて設定されているマップ変速段よりも1つダウンシフトした変速段が目標変速段に設定される(S818)。ただしマップ変速段が第1速である場合には、目標変速段も第1速に設定される。そしてステップS820を実行して、本処理を一旦終了する。このため平地での自動変速制御時よりも1段下の変速段にて自動変速制御がなされることになる。
【0184】
次の制御周期では、ステップS806にて「YES」と判定された後、初期においては目標変速段の変更から待機時間が経過していないので(S812で「NO」)、次にXdwn=「ON」か否かが判定される(S822)。直前の制御周期にてXdwn=「ON」とされているので(S822で「YES」)、次にマップ変速段と目標変速段とが不一致か否かが判定される(S824)。
【0185】
ここでマップ変速段≠目標変速段であるので(S824で「YES」)、マップ変速段推定回転数NEzを推定計算する(S826)。このマップ変速段推定回転数NEzはマップ変速段通りに目標変速段を戻した場合に到達するエンジン回転数NEを推定した値である。例えば、目標変速段とマップ変速段との変速比の関係及び車速SPDから算出される。
【0186】
そしてNEz≧Lne+αか否かが判定される(S828)。余裕代αは、直ちに目標変速段をマップ変速段通りにした場合に、安定してNE≧Lneと判定されるようにするためのヒステリシス値である。
【0187】
ここでNEz<Lne+αであれば(S828で「NO」)、前記ステップS818,S820を実行して、一旦本処理を終了する。このことによりマップ変速段よりも1段下の変速段での変速制御が継続されることになる。以後、待機時間が経過せず(S812で「NO」)、マップ変速段≠目標変速段(S824で「YES」)、NEz<Lne+αである限り(S828で「NO」)、前記ステップS818,S820を実行するので、マップ変速段よりも1段下の変速段での自動変速制御が継続される。
【0188】
そして待機時間が経過すると(S812で「YES」)、NE<Lneか否かが判定される(S814)。ここではマップ変速段を1つダウンシフトした目標変速段が継続していることに起因して、エンジン回転数NEが上昇してNE≧Lneとなっているとすると(S814で「NO」)、Xdwn=「ON」か否かが判定される(S822)。ここでXdwn=「ON」であるので(S822で「YES」)、マップ変速段≠目標変速段であるか否かが判定される(S824)。マップ変速段≠目標変速段であるので(S824で「YES」)、更にマップ変速段推定回転数NEzが推定され(S826)、この結果、NEz<Lne+αであれば(S828で「NO」)、前記ステップS818,S820が実行され、マップ変速段よりも1段下の変速段での自動変速制御が継続される。以後、マップ変速段≠目標変速段で(S824で「YES」)、NEz<Lne+αである限り(S828で「NO」)マップ変速段よりも1段下の変速段での自動変速制御が継続されることになる。
【0189】
その後、ステップS804にてダウンシフトが生じてマップ変速段が1つ下に設定された場合を考える。この場合にはステップS806,S812にて「YES」、ステップS814にて「NO」、ステップS822にて「YES」と判定された後、マップ変速段=目標変速段(S824で「NO」)と判定される。このため、Xdwn=OFFに設定され(S808)、マップ変速段を目標変速段に設定して(S810)、ステップS820を実行して一旦本処理を終了する。
【0190】
そして次の制御周期では、ステップS806,S812で「YES」、ステップS814,S822で「NO」となり、以後、平地の変速線図に対応した自動変速制御が実行される状態に戻る。
【0191】
又、ステップS804にてダウンシフトが生じていない場合においても、ステップS826にて推定されたマップ変速段推定回転数NEzがNEz≧Lne+αとなると(S828で「YES」)、ステップS808,S810,S820が実行される。このことによりXdwn=OFFとなって、以後、平地の変速線図に対応した自動変速制御が実行される状態に戻る。
【0192】
図21のタイミングチャートに本実施の形態による処理の一例を示す。高地にて(S806で「YES」)、NE<Lneとなった場合には(S814)、目標変速段はマップ変速段よりも1つ下の変速段にダウンシフトされる(S818、t91)。この状態がマップ変速段がダウンシフトされるまで継続する(t91〜t92)。このことにより破線のハッチングにて示すごとくにエンジン回転数NEが低下することがなく黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性は低減している。
【0193】
尚、一旦、目標変速段がマップ変速段よりも1つ下の変速段にダウンシフトされた(S818、t93)後に、車速SPDが増加してマップ変速段がダウンシフトされなかった場合には、NEz≧Lne+αとなることで(S828で「YES」、t94)、目標変速段がマップ変速段に一致するようになる。
【0194】
以上説明した本実施の形態10によれば、以下の効果が得られる。
(イ).このように自動変速状態において変速線データを切り換えるのではなく、エンジン回転数NEが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する場合には自動的にダウンシフトすることにより、エンジン回転数NEを上昇させている。このことにより黒煙を抑制することができる。
【0195】
(ロ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[実施の形態11]
本実施の形態では、図22に示すダウンシフト促進・アップシフト抑制処理復帰遅延時間設定処理が実行される。尚、自動変速制御処理については、前記図2の処理は行われず、車速SPD及びアクセル開度ACCPに基づいて前記図3の変速線図により目標変速段が設定されているものとする。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0196】
ダウンシフト促進・アップシフト抑制処理復帰遅延時間設定処理(図22)について説明する。本処理は、自動変速制御時に、ディーゼルエンジンの出力制御のために運転状態に応じて実行されているダウンシフト促進処理やアップシフト抑制処理からの復帰時に、高地ではこの復帰を遅延させることにより黒煙の抑制を図るものであり、時間周期で繰り返し実行されるものである。
【0197】
ここでダウンシフト促進処理及びアップシフト抑制処理とは、例えば登坂時に、通常通りにアップシフトがなされるのを防止したりダウンシフトを促進したりして走行トルクを高めて加速性を良好にするために行われるダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御に相当する。又、降坂時においては、エンジンブレーキによる制動性を良好にするために行われるダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御に相当する。又、アクセルペダルの急速な踏み込みや踏み戻し時においては、加速性やエンジンブレーキの制動性を良好にするために行われるダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御に相当する。これらのダウンシフト促進処理・アップシフト抑制処理は変速制御用ECUにより別途実行されている。
【0198】
ダウンシフト促進・アップシフト抑制処理復帰遅延時間設定処理(図22)が開始されると、まず大気圧Atpが読み込まれる(S902)。次にダウンシフト促進処理あるいはアップシフト抑制処理が実行されているか否かが判定される(S904)。上述したダウンシフト促進処理・アップシフト抑制処理がいずれも実行されていなければ(S904で「NO」)、このまま一旦本処理を終了する。
【0199】
ダウンシフト促進処理・アップシフト抑制処理のいずれかが実行されていれば(S904で「YES」)、次に大気圧Atpが基準圧力Latp未満か否かが判定される(S906)。この基準圧力Latpは前記ステップS104(図2)にて述べたごとくである。Atp≧Latpであれば(S906で「NO」)、復帰遅延時間Trに標準遅延時間Rt(例えば、2秒)を設定して(S908)、一旦本処理を終了する。したがってダウンシフト促進処理・アップシフト抑制処理側では、復帰条件が成立すると標準遅延時間Rt後に通常の自動変速制御に復帰することになる。
【0200】
一方、Atp<Latpであれば(S906で「YES」)、復帰遅延時間Trに高地用遅延時間Lt(>Rt、例えば、5秒)を設定して(S910)、一旦本処理を終了する。したがってダウンシフト促進処理・アップシフト抑制処理側では、復帰条件が成立すると高地用遅延時間Lt後に通常の自動変速制御に復帰することになる。
【0201】
本実施の形態による制御の一例を図23,24,25のタイミングチャートに示す。図23は加速時であり、アップシフト抑制制御時に時刻a1にて通常の自動変速制御への復帰条件が成立したものとする。この時、平地であれば標準遅延時間Rt後(a2)に通常の自動変速が実行されて、一点鎖線で示すごとく第2速から第3速にシフトアップされる。しかし高地であれば実線にて示すごとく高地用遅延時間Lt後(a3)に通常の自動変速が実行されて第2速から第3速にシフトアップされる。したがって高地ではシフトアップのタイミングでは、平地時に比較してエンジン回転数NEが高いので黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性は低減している。
【0202】
図24は加速時であり、アップシフト抑制制御時に時刻a11にて通常の自動変速制御への復帰条件が成立したものとする。この時、平地であれば一点鎖線で示すごとく標準遅延時間Rt後(a12)に通常の自動変速にて第2速から第3速にシフトアップされる。しかし高地であれば実線にて示すごとく高地用遅延時間Lt後(a14)に通常の自動変速制御に戻る。ここで、この高地用遅延時間Lt後のタイミングa14の前に、既にアップシフト抑制制御により通常のアップシフトよりも遅れているが第2速から第3速にシフトアップされている(a13)ものとする。したがって、この場合は、高地用遅延時間Lt後(a14)においては既に第3速になっているのでアップシフトは実行されない。しかし、図24に示したごとく、高地側では実線のごとくエンジン回転数NEの極小値NEHが平地時の場合の極小値NELに比較して高くなっているので黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性は低減している。尚、時刻a12の前にアップシフト抑制制御時のアップシフトが生じている場合には、エンジン回転数NEの極小値NEL,NEHは同じである。しかし、高地用遅延時間Lt>標準遅延時間Rtであることにより図24に示したごとくNEH>NELとなる状況が発生するので、この場合も高地用遅延時間Ltの設定により黒煙抑制傾向となる。
【0203】
図25は減速時であり、ダウンシフト促進制御時に時刻b1にて通常の変速制御への復帰条件が成立したものとする。この時、平地であれば標準遅延時間Rt後(b2)に通常の変速が実行される。このため一点鎖線にて示すごとくマップ変速段に応じて第3速から第2速に切り替わる(b5)ことになる。しかし高地であれば実線にて示すごとく高地用遅延時間Lt後(b4)に通常の変速が実行される。ここで、この高地用遅延時間Lt後のタイミングb4の前に、既にダウンシフト促進制御による第3速から第2速にシフトダウンされているものとする。このため高地用遅延時間Lt後(b4)においては既に第2速になっているのでダウンシフトは実行されない。したがって高地側では通常の変速制御に復帰した時には、エンジン回転数NEが平地時に比較して高いので黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性は低減している。尚、標準遅延時間Rt後(b2)のタイミングと高地用遅延時間Lt後(b4)のタイミングとの間にダウンシフト促進制御時でのダウンシフトがなされなかった場合には実際のエンジン回転数NEのレベルについては差はないが全体的には高地用遅延時間Lt後におけるエンジン回転数NEは高くなる傾向となる。したがって黒煙抑制傾向となる。
【0204】
以上説明した本実施の形態11によれば、以下の効果が得られる。
(イ).このようにダウンシフト促進制御やアップシフト抑制制御を実行するシステムである場合には、高地では通常の変速制御への復帰タイミングを遅延させることにより黒煙を抑制することができる。
【0205】
[その他の実施の形態]
(a).平地にてエンジンストール防止のために車速に基づいて強制的にダウンシフトすることでエンジン回転数の低下を抑制する変速制御を行っている場合がある。このようなエンジンストール防止用ダウンシフト制御を実行している場合には、前記実施の形態4,5においては、手動変速制御処理(図8,10)を用いずに、このようなエンジンストール防止用ダウンシフト制御を利用しても良い。すなわちエンジンストール防止用ダウンシフト制御におけるダウンシフト判定車速を、高地の場合には、前記低エンジン回転数基準値Lneを変速比にて換算して求めた車速に、変更することでダウンシフトさせるようにしても良い。
【0206】
(b).大気圧によりディーゼルエンジン運転環境における黒煙発生の容易性を判定している実施の形態においては、大気圧を推定するものとして、ナビゲータによる位置データに基づいて地図データから高度を求め、この高度によりディーゼルエンジン運転環境における黒煙発生の容易性を判定しても良い。
【0207】
(c).前記実施の形態6においては、車両加速度と燃料噴射量との関係からエンジン負荷Mを求めていたが、これ以外に積載重量センサや車両勾配センサなどを備えている場合には、これらのセンサの出力に基づいてエンジン負荷Mを算出しても良い。
【0208】
(d).大気圧の低下を判定している実施の形態においては大気圧の低下判定の代わりにディーゼルエンジン負荷の増加判定を用いても良い。又、大気圧低下をディーゼルエンジン負荷の増加に換算することにより、大気圧の低下要因を含めたディーゼルエンジン負荷の増加を判定して黒煙抑制を実行して良い。
【0209】
又、負荷の増加判定をしている実施の形態においてはディーゼルエンジン負荷の増加判定の代わりに大気圧の低下判定をしても良い。又、ディーゼルエンジン負荷の増加を大気圧の低下に換算することにより、ディーゼルエンジン負荷の増加要因を含めた大気圧の低下を判定して黒煙抑制を実行して良い。
【0210】
(e).前記実施の形態1〜3,7において、Atp<Latpの条件に加えて、エンジン回転数NEが低エンジン回転数基準値Lne未満に低下したことを条件として、両条件が満足された場合に高地用の変速制御処理を実行するようにしても良い。前記実施の形態6においてもM≧Lmの条件に加えて、NEがLne未満に低下したことを条件として両条件が満足された場合に高エンジン負荷用の変速制御処理を実行するようにしても良い。
【0211】
尚、アップシフト線の移動に対しては、NE<Lneの条件の代わりに、現状でアップシフトした場合でのエンジン回転数を推定し、この推定エンジン回転数(推定回転速度に相当)がLneより小さい場合に、アップシフト線を高速側に移動させるようにしても良い。このアップシフト線の高速側への移動はアップシフト線に到達した時に限って、実際にアップシフトする前での判定に基づいて行っても良い。
【0212】
更に、自動クラッチとして機能しているクラッチC1,C2を用いているので、特に減速時での変速中にクラッチC1,C2が共に解放されることにより変速機4側からの回転力がディーゼルエンジン側に伝達されなくなる。このため、トルクコンバータを用いているオートマチックトランスミッションに比較してエンジン回転数NEの低下が急激になることがある。このことを考慮して変速中におけるクラッチC1,C2の解放に伴うエンジン回転数NEの低下量dNEを推定あるいは測定する。そして、この低下量dNEをエンジン回転数NEから減算した値Cne(=NE−dNE)を算出して、この値Cneが低エンジン回転数基準値Lne未満か否かの判定を、NE<Lneの条件の代わりに実行しても良い。すなわち前記実施の形態1〜3,7においてはAtp<Latpの条件とCne<Lneの条件とが共に満足された場合に高地用の変速線図による自動変速制御処理を実行するようにしても良い。前記実施の形態6においてはM≧Lmの条件とCne<Lneの条件とが共に満足された場合に高エンジン負荷用の変速線図による自動変速制御処理を実行するようにしても良い。
【0213】
尚、自動的にダウンシフトする実施の形態4,5,10においても、NE<Lne(S208,S308,S814)の代わりにCne<Lneの判定を実行しても良い。このことにより自動クラッチに対応して、より効果的に黒煙を抑制することができる。
【0214】
(f).前記各実施の形態では、ツインクラッチ式6段変速機を用いたが、トルクコンバータとプラネタリーギヤとを組み合わせたオートマチックトランスミッション、あるいはベルト・プーリ式やトロイダル式等の無段変速機を用いても良い。無段変速する場合には、高地や高負荷時にはエンジン回転数NEが低エンジン回転数基準値Lneより小さくならないように制御することにより、加速時における黒煙の発生を防止することができる。
【0215】
(g).前記実施の形態7では、高地車速補正係数Kspdにより車速SPDを補正(SPD×Kspd)して用いていたが、車速SPDの補正は行わずに、大気圧が低くなるほど高速側にシフト線を移動する補正を変速線図側のデータに対して行っても良い。この変速線図を用いて車速SPDとACCPとにより変速段を求めることにより前記実施の形態7と同様な効果を生じさせることができる。
【0216】
(h).高地や高エンジン負荷時にアップシフト線を高速側に移動させる場合、特にアクセル開度ACCPが小さい側で黒煙が生じ易くなるディーゼルエンジンの場合には図5,7に示したごとくアクセル開度ACCPが低い側のアップシフト線を高速側に移動させる。アクセル開度ACCPが大きい側で黒煙が生じやすくなるディーゼルエンジンの場合には図26に示すごとく、アクセル開度ACCPが高い側のアップシフト線を高速側に移動させる。ここで図26の(A)が平地もしくは低エンジン負荷時のアップシフト線とダウンシフト線とを示し、図26の(B)が高地もしくは高エンジン負荷時のアップシフト線とダウンシフト線とを示している。尚、図26の(B)においてはダウンシフト線は移動させていないが、アップシフト線と同様に高速側に移動させても良い。
【0217】
尚、アクセル開度ACCPが小さい側でも大きい側でも黒煙の生じ易さに差がないディーゼルエンジンの場合には、高地や高エンジン負荷時にはアップシフト線は全体を高速側に移動させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1のディーゼルエンジン、変速機及び変速制御装置の概略構成ブロック図。
【図2】同じく変速制御用ECUが実行する自動変速制御処理のフローチャート。
【図3】同じく自動変速制御処理にて用いられる平地用変速線図。
【図4】同じく平地用変速線図と高地用変速線図との差の説明図。
【図5】実施の形態2の高地用変速線図。
【図6】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図7】実施の形態3の平地用変速線図と高地用変速線図との差の説明図。
【図8】実施の形態4の手動変速制御処理のフローチャート。
【図9】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図10】実施の形態5の手動変速制御処理のフローチャート。
【図11】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図12】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図13】実施の形態6の自動変速制御処理のフローチャート。
【図14】実施の形態7の自動変速制御処理のフローチャート。
【図15】同じく制御の一例を示すグラフ。
【図16】実施の形態8の自動変速制御処理のフローチャート。
【図17】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図18】実施の形態9の自動変速制御処理のフローチャート。
【図19】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図20】実施の形態10の自動変速制御処理のフローチャート。
【図21】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図22】実施の形態11のダウンシフト促進・アップシフト抑制処理復帰遅延時間設定処理のフローチャート。
【図23】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図24】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図25】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図26】アップシフト線移動の他の例を示すグラフ。
【符号の説明】
2…ディーゼルエンジン、4…変速機、6…入力軸、8…シフト操作装置、8a…シフトレバー、10…変速制御用ECU、11…油圧アクチュエータ、12…スリーブ位置センサ、14,16…クラッチストロークセンサ、18,20…クラッチ出力軸回転数センサ、22…車速センサ、24…エンジン回転数センサ、26…アクセル開度センサ、28…大気圧センサ、30…エンジン制御用ECU、32…ディスプレイ、A4…出力軸、C1,C2…クラッチ。
Claims (26)
- ディーゼルエンジンに設けられて自動変速機能を有する変速機における変速制御装置であって、
ディーゼルエンジン運転環境における黒煙発生の容易性を判定する黒煙発生容易性判定手段と、
前記黒煙発生容易性判定手段にて判定された黒煙発生の容易性に応じて前記変速機に対する変速制御を変更して、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制する黒煙抑制変速制御手段と、
を備えたことを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。 - 請求項1において、前記黒煙抑制変速制御手段はエンジン回転速度を上昇させるように変速制御を変更することで、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項1において、前記黒煙抑制変速制御手段は変速制御をダウンシフトし易い変速制御に変更することで、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項1において、前記黒煙抑制変速制御手段は変速制御をアップシフトし難い変速制御に変更することで、ディーゼルエンジンの黒煙発生を抑制することを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項1〜4のいずれかにおいて、前記変速機は自動変速機能と手動変速機能との両機能を有することを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、前記変速機に対する変速制御を黒煙抑制用の変速制御に切り換えることにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項6において、前記黒煙の発生し易いエンジン運転領域は、エンジン回転速度で表される領域であることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項6又は7において、前記黒煙発生容易性判定手段は、大気圧を検出して該大気圧が基準値よりも低い場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項6又は7において、前記黒煙発生容易性判定手段は、高度を検出して該高度が基準値よりも高い場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項6又は7において、前記黒煙発生容易性判定手段は、ディーゼルエンジンに対する負荷を検出して該負荷が基準値よりも大きい場合に黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定することを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項10において、前記黒煙発生容易性判定手段は、車両重量と牽引重量との一方又は両方を前記負荷として検出することを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項10において、前記黒煙発生容易性判定手段は、車両の登降坂状態を前記負荷として検出することを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項6〜12のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、前記変速機を自動変速する場合に用いる変速線データを、黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させる黒煙抑制用変速線データに切り換えることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項13において、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて判定された黒煙発生の容易性の程度に応じて、前記黒煙抑制用変速線データを変更することを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項13又は14において、前記黒煙抑制用変速線データは、通常の変速線データに比較して、ダウンシフト線の一部又は全部が高速側に移動されていることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項13〜15のいずれかにおいて、前記黒煙抑制用変速線データは、通常の変速線データに比較して、アップシフト線の一部又は全部が高速側に移動されていることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項13〜16のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合において、更に自動変速時に前記黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高いと判断される時に、変速線データを前記黒煙抑制用変速線データに切り換えることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項6〜12のいずれかにおいて、自動変速状態において、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更にディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する時に、自動的にダウンシフトすることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項6〜12のいずれかにおいて、手動変速状態において、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更にディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する時に、自動的にダウンシフトすることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項6〜12のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に現在の変速状態からアップシフトした場合でのディーゼルエンジンの回転速度を推定し、該推定回転速度が黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在する場合には、該当するアップシフト線を高速側に移動することを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項6〜12のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、エンジン運転状態に応じて実行されているダウンシフト促進制御又はアップシフト抑制制御からの復帰条件を変更することにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項21において、前記復帰条件の変更は、復帰遅延時間を長くすることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、現在の変速状態からシフト変化させるとディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍となるか否かを推定し、該エンジン運転領域又は該領域近傍となると推定される場合には前記シフト変化を禁止又は遅延させることにより、ディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域となる可能性を低減させることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項1〜23のいずれかにおいて、前記変速機は、自動クラッチを介してディーゼルエンジンから回転トルクを入力することを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
- 請求項17において、前記変速機は自動クラッチを介してディーゼルエンジンから回転トルクを入力するとともに、
前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に変速中における前記自動クラッチの解放に伴うエンジン回転速度の低下量を推定あるいは測定し、該低下量を加味して自動変速時に前記黒煙の発生し易いエンジン運転領域に到達する可能性が高いと判断される時に、変速線データを前記黒煙抑制用変速線データに切り換えることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。 - 請求項18又は19において、前記変速機は自動クラッチを介してディーゼルエンジンから回転トルクを入力するとともに、
前記黒煙抑制変速制御手段は、前記黒煙発生容易性判定手段にて黒煙発生の容易性が高いディーゼルエンジン運転環境であると判定された場合に、更に変速中における前記自動クラッチの解放に伴うエンジン回転速度の低下量を推定あるいは測定し、該低下量を加味してディーゼルエンジンが黒煙の発生し易いエンジン運転領域又は該領域近傍に存在すると判断される時には、自動的にダウンシフトすることを特徴とするディーゼルエンジンの変速制御装置。
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