【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性、耐クラック性に優れた圧延用ロールに関する。
【０００２】
【従来の技術】
圧延用ロールにおいて、圧延材と接触する外層は一般的に耐摩耗性、耐肌荒れ性、耐クラック性（耐事故性）が要求される。この要求に応えることを目論んだロール材として、Ｃｒ、Ｍｏ、Ｗ、Ｖなどの合金元素を各数％含有させたハイス系材料が用いられている。
【０００３】
このハイス系ロール材は、Ｖ系炭化物であるＭＣ（Ｍはメタルをさす）、Ｍｏ及びＷ系炭化物であるＭ６ＣやＭ２Ｃなどの高硬度炭化物を晶出もしくは析出させ、Ｆｅの基地と炭化物の総和としての硬さを高め、Ｍｏ、Ｗにより高温での基地硬さの低下を抑えた材料であり、特に熱間圧延用ロールの外層に適する。
【０００４】
ハイス系ロール材として、例えばＷＯ８８／０７５９４号ＷＩＰＯ国際公開公報には、外層に金属的に接合した鋼製の軸とからなる耐摩耗複合ロールであって、外層の表面硬さがショアー硬さ７０以上であり、外層が重量％でＣ：１．５〜３．５％、Ｓｉ：０．３〜３．０％、Ｍｎ：０．３〜１．５％、Ｃｒ：２〜７％、Ｍｏ：９％以下、Ｗ：２０％以下、Ｖ：３〜１５％及び残部実質的にＦｅからなり、さらにＮｉ：５％以下、Ｃｏ：５％以下、Ｎｂ：５％以下のうちいずれか１種以上を含有できることが記載されている。
【０００５】
また、特許第３１９５７７７号公報には、ロール外層の成分が重量％でＣ：１．５〜３．０％、Ｓｉ：０．２〜１．５％、Ｍｎ：０．２〜１．５％、Ｃｒ：３．０〜５．０％、Ｍｏ：５．０〜８．０％、Ｗ：５．０〜８．０％、Ｖ：３．０〜６．０％を含有すると共に残部が実質的にＦｅからなり、鋳造及び軟化焼鈍した外層を、一旦オーステナイト化した後、ベイナイト変態点とマルテンサイト変態点との間の温度領域で行うオーステンパリング処理とその後の焼戻し処理とを１ないし数回繰返して行うことで、組織中の炭化物の面積率をＭ７Ｃ３≦（Ｍ２Ｃ＋Ｍ６Ｃ＋ＭＣ）／１０、かつ（Ｍ２Ｃ＋Ｍ６Ｃ）／ＭＣ≧２とし、基地を８０％以上のベイナイトと２０％未満の焼戻しマルテンサイトからなる組織としたことを特徴とする圧延ロールの外層が記載されている。また、この公報中の図５の実施例では、圧縮強度が２９２〜３２０ｋｇｆ／ｍｍ２、ショア硬さＨｓが８０．０〜８２．０であるロール材が記載されている。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のハイス系ロール材の外層は、従来の鋳鉄系ロールと比較して、硬質炭化物が主体となった組織構成であり、この硬質炭化物が少なすぎると耐摩耗性に劣るため、硬質炭化物はある程度の量が必要である。ところが、炭化物の量を増やすと、ロール外層の靭性の低下を招き、絞り事故等により焼付きが発生すると、焼付き部に局部的強圧がかかるため、ロールに深いクラックが発生する問題があった。さらに、熱間圧延を行ったロール表層部には、熱疲労によってヒートクラックが発生し、さまざまな肌荒れを引き起こす問題があった。このため、圧延用ロールに優れた耐摩耗性、耐クラック性（耐ヒートクラック性も含む）の両者を具備させることは実際には難しく、圧延用ロールの用途に合わせて耐摩耗性あるいは耐クラック性のいずれかを偏重的に考慮して製造せざるを得なかった。
【０００７】
そこで、本発明は上記のハイス系ロール材における問題を解消し、耐摩耗性および耐クラック性に優れた圧延用ロールを提供することを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、生成される炭化物の中でも比較的硬さが低く耐摩耗性を劣化させる原因となるＭ７Ｃ３やＭ２３Ｃ６炭化物を極力抑える必要がある。また、特にＣとＶとＭｏとＷのバランスを最適な条件にすることにより、耐摩耗性に特に付与するＭＣ、Ｍ４Ｃ３、Ｍ２Ｃ、Ｍ６Ｃ炭化物を最適な範囲で生成させる必要がある。さらに、ロール材の耐クラック性を劣化させる原因となるＭ２Ｃ、Ｍ６Ｃ炭化物を最適な範囲に抑える必要があると考えた。また、圧縮強度は、絞り事故時、焼付き部の局部的強圧下や熱間圧延による熱疲労に耐え、クラックの発生を抑制する指標となり得ると考えた。これらの技術的思想により、圧延材と接触するロール材をより一層高硬度化するとともに、耐クラック性を向上できる知見を得て本発明を完成した。
【０００９】
すなわち、本発明の圧延用ロールは、圧延材と接触するロール外層の表面の硬さがショア硬さ８５以上であり、外層の圧縮強度が２４０ｋｇｆ／ｍｍ２以上であることを特徴とする。また、本発明の圧延用ロールは、本発明において外層が重量％で、Ｃ：１．０〜２．６％、Ｃｒ：４．０〜１０．０％、Ｍｏ：５．０〜１０．０％、Ｗ：５．０％未満、Ｖ：３．０〜８．０％を含有し、１２．０％≦２Ｍｏ＋Ｗ≦２０．０％、２Ｍｏ／Ｗ≧３．０、０．２％≦Ｃ−０．２４Ｖ≦０．７％を満足するＦｅ基合金であることを特徴とする。
【００１０】
【作用】
本発明の圧延用ロールは、圧延材と接触するロール外層の圧縮強度が２４０ｋｇｆ／ｍｍ２以上であるので、耐クラック性が格段に良好となり、絞り圧延事故においてもクラックの発生、進展を抑えることができる。それとともに、外層のショア硬さを８５以上とし、耐摩耗性を向上させることができる。したがって、特に熱間圧延用ロールとして有効に用いることができる。
【００１１】
本発明における各成分元素の含有範囲の限定理由について説明する。
【００１２】
Ｃは、耐摩耗性向上のための炭化物の形成と、基地への固溶による焼入れ・焼戻し時の基地硬さの向上に必要である。Ｃは、耐摩耗性を付与すべきＭＣ、Ｍ４Ｃ３、Ｍ２Ｃ、Ｍ６Ｃ、Ｍ７Ｃ３などの炭化物を生成する。Ｃが１．０％未満では炭化物の生成量が不足して耐摩耗性に劣る。Ｃが２．６％を超えると、耐摩耗性は良好であるが、圧縮強度が低下する。
【００１３】
Ｃｒは、焼入れ性を向上させ、硬さを高くする。Ｃｒが４．０％未満ではその効果が小さい。また、１０．０％を超えると、常温での残留オーステナイトが多くなるので、焼戻し回数が多くなり不経済となる。さらに、Ｃｒは比較的硬さの低いＭ７Ｃ３やＭ２３Ｃ６炭化物を形成し、多量の添加はこれらの炭化物が過剰となり耐摩耗性が劣化する。より好ましいＣｒ含有量は、４．５〜７．０％である。
【００１４】
Ｍｏは、焼入れ性の向上と高温硬さを得るために必要である。基地組織中に固溶して焼入れ性の向上をもたらす。また、Ｃと結合して硬質のＭ２Ｃ、Ｍ６Ｃ炭化物を生成する。Ｍｏが５．０％未満ではその効果が小さい。また、１０．０％を超えると、ＣとＶとＭｏのバランスにおいてＭ２Ｃ、Ｍ６Ｃ炭化物が多く晶出しすぎ、耐クラック性が低下する。
【００１５】
Ｗは、Ｍｏと同様に焼入れ性の向上と高温硬さを得るために必要である。基地の焼入れ性を上げ、Ｃと結合して硬質のＭ２Ｃ、Ｍ６Ｃ炭化物を生成する。Ｗの下限は０％である。また、５．０％を超えると、Ｍ６Ｃ炭化物が増加して耐クラック性及び耐肌荒れ性の点で好ましくない。Ｗは４．８％以下がより好ましい。
【００１６】
Ｖは、耐摩耗性の向上に最も寄与する硬質な炭化物であるＭＣ、Ｍ４Ｃ３を形成する。Ｖが３．０％未満では炭化物の生成が少なく耐摩耗性が劣化する。Ｖが８．０％を超えると、本発明のＣ含有量とのバランスにより、初晶としてオーステナイト、もしくはＭＣ、Ｍ４Ｃ３炭化物が晶出する。オーステナイトが初晶で晶出すれば硬さが不十分となる。また、ＭＣ、Ｍ４Ｃ３が初晶で晶出すれば凝固中に凝集し、圧延用ロールとして使用した場合、硬質炭化物であるＭＣ、Ｍ４Ｃ３の凝集偏析が被圧延材に転写されるので好ましくない。
【００１７】
１２．０％≦２Ｍｏ＋Ｗ≦２０．０％
Ｍｏ、Ｗは焼入れ性の向上、炭化物形成などでその効果が類似しており、重量比で見た場合、その原子量差からＭｏはＷのほぼ２倍の効果がある。本発明の最も特徴とするものの一つに、Ｍｏ、Ｗ含有量とショア硬さ、圧縮強度の相関がある。２Ｍｏ＋Ｗが１２．０％以上の場合、焼入れ性の向上が顕著になり、ショア硬さ８５以上を安定して確保できる。また、２Ｍｏ＋Ｗが２０．０％を超えると、Ｍ２Ｃ、Ｍ６Ｃの炭化物を多く晶出させすぎ耐クラック性が低下するので好ましくない。
【００１８】
２Ｍｏ／Ｗ≧３．０
ＭｏとＷは、炭化物形成と基地硬さの上昇に関してほぼ同様な効果があるが、Ｗに対してＭｏは基地の粘さを向上させる効果を有する。また、炭化物形成においてＷはＭ６Ｃ炭化物を晶出させる効果がＭｏに比べて大きい。Ｍｏ、Ｗが形成する炭化物としてＭ２Ｃ、Ｍ６Ｃがあるが、凝固時に晶出するＭ２Ｃに対してＭ６Ｃは粗大になりやすい。これらのことより、前述の１２．０％≦２Ｍｏ＋Ｗ≦２０．０％を満たすにあたり、Ｗを多く添加すると基地粘さが向上せず粗大Ｍ６Ｃを晶出するため、圧縮強度と耐クラック性を両立するためには、Ｍｏを多く添加したほうがよい。２Ｍｏ／Ｗ≧３．０とすることで、基地粘さを十分に向上させ、粗大Ｍ６Ｃの晶出を防止できることにより、圧縮強度を２４０ｋｇｆ／ｍｍ２以上にすることができる。
【００１９】
０．２％≦Ｃ−０．２４Ｖ≦０．７％
Ｖの含有量が多すぎるとＶＣ炭化物にＣをとられるため、基地組織のＣ含有量が不足して、焼入れ後の硬さが低くなる。Ｖの含有量が少なすぎるとＶＣ炭化物が不足し硬さが低くなる。そこで、Ｃ、Ｖのバランスを考慮した０．２％≦Ｃ−０．２４Ｖ≦０．７％の条件を満足すれば、ショア硬さ８５以上を安定して確保できる。
【００２０】
また、本発明のロール材の成分元素として、Ｓｉの含有量は０．１〜３．０％が好ましい。Ｓｉは、脱酸剤として作用し、またＭ６Ｃ炭化物中に固溶してＷ、Ｍｏなどの元素を置換して含有されるため、Ｗ、Ｍｏなどの高価な元素の節減を図るために有効である。Ｓｉが０．１％未満では脱酸効果が不足して鋳造欠陥を生じやすい。また、３．０％を超えると脆化が生じやすい。
【００２１】
Ｍｎの含有量は０．１〜３．０％が好ましい。Ｍｎは、Ｓｉと同様に脱酸作用がある。また、不純物であるＳをＭｎＳとして固定する作用がある。Ｍｎが０．１％未満では脱酸性に乏しい。また、３．０％を超えると残留オーステナイトが生じやすくなり、安定して十分な硬さを維持できない。
【００２２】
本発明の圧延用ロールは、遠心鋳造法、鋳掛け肉盛法などにより製造される。なかでも製造コスト的に有利な遠心鋳造法がより好ましい。また、本発明のロール材を外層とし、内層と金属接合させた複合ロールが好ましいが、本発明のロール材で形成される単体ロールにも当然ながら適用できる。
【００２３】
【発明の実施の形態】
本発明の圧延用ロール材の実施例について以下に説明する。
【００２４】
表１に示す圧延用ロール材の化学組成（重量％）にて、Ｎｏ．１〜４の本発明実施例の各供試材と、Ｎｏ．５〜１０の比較例の各供試材を、１５００〜１５５０℃まで加熱、溶解し、直径９０ｍｍ、高さ９０ｍｍの円柱状の鋳型に鋳込んだ。冷却後、インゴットを取りだし、１０００〜１２００℃で、焼入れを行い、５００〜６００℃で３回焼戻しを行った。
【００２５】
その後、インゴットの中央部から硬さ測定用の試験片を採取した。硬さは各供試材の表面の硬さをショア硬さ計により測定した。同時に、インゴットの中央部から圧縮強度測定用の試験片を採取した。
【００２６】
供試材Ｎｏ．１〜４は、本発明の請求項に掲げたＣ、Ｃｒ、Ｍｏ、Ｗ、Ｖの成分範囲内で調整し、さらに本発明の２Ｍｏ＋Ｗ、２Ｍｏ／ＷおよびＣ−０．２４Ｖの各条件を満足するものである。また、供試材Ｎｏ．５〜１１は、本発明の２Ｍｏ＋Ｗ、２Ｍｏ／ＷおよびＣ−０．２４Ｖのいずれかの条件から外れるものである。表１に、ショア硬さ及び圧縮強度の測定結果を併記する。また、図１に各供試材における供試材表面のショア硬さと圧縮強度の関係を示す。
【００２７】
【表１】
【００２８】
表１から、ショア硬さについては、本発明の実施例である供試材Ｎｏ．１〜４において、２Ｍｏ＋Ｗ、２Ｍｏ／ＷおよびＣ−０．２４Ｖのいずれの条件も満足しており、ショア硬さ８５以上を安定して得られることが確認できた。
【００２９】
同様に、表１から、圧縮強度については、本発明の実施例である供試材Ｎｏ．１〜４において、２Ｍｏ＋Ｗ、２Ｍｏ／ＷおよびＣ−０．２４Ｖのいずれの条件も満足しており、圧縮強度は２４０ｋｇｆ／ｍｍ２以上を安定して得られることが確認できた。
【００３０】
また、比較例の供試材Ｎｏ．５〜１１では、本発明の特徴である２Ｍｏ＋Ｗ、２Ｍｏ／ＷおよびＣ−０．２４Ｖのいずれかの条件を外れるため、ショア硬さ８５以上、圧縮強度が２４０ｋｇｆ／ｍｍ２以上を同時に満足し得なかった。
【００３１】
また、遠心鋳造機を用い、本発明実施例である供試材Ｎｏ．１の成分を胴部外層に有する胴径φ６００ｍｍ、胴長１８３０ｍｍの熱間圧延用の遠心鋳造製複合ロールを製造した。ロールは胴部表面の硬さがショア硬さ８６、胴部端部の圧縮強度２５４ｋｇｆ／ｍｍ２であった。さらに胴部端部の組織調査、及び超音波非破壊調査を行い、組織、欠陥の調査を行い、健全なロールであることを確認した。実際の圧延に供したところ従来の遠心鋳造複合ロールより、耐摩耗性に優れ、圧延操業に起因する耐事故性にも優れることがわかった。
【００３２】
【発明の効果】
本発明の圧延用ロールは、圧延材と接触するロール外層の表面の硬さがショア硬さ８５以上と高硬度であるとともに、外層の圧縮強度が２４０ｋｇｆ／ｍｍ２以上と高く、耐摩耗性および耐クラック性に優れ、安定した圧延を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】各供試材における供試材表面のショア硬さと圧縮強度の関係を示すグラフである。[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a roll for rolling that is excellent in wear resistance and crack resistance.
[0002]
[Prior art]
In a roll for rolling, an outer layer that comes into contact with a rolled material generally requires wear resistance, rough surface resistance, and crack resistance (accident resistance). As a roll material intended to meet this demand, a high-speed material containing alloy elements such as Cr, Mo, W, and V each containing several percent is used.
[0003]
This high-speed roll material crystallizes or precipitates high-hardness carbides such as V-based carbides (M denotes metal), Mo and W-based carbides such as M 6 C and M 2 C, and forms a base of Fe. It is a material in which the hardness as a total of carbides and carbides is increased, and a decrease in the base hardness at high temperatures is suppressed by Mo and W, and is particularly suitable for the outer layer of a hot rolling roll.
[0004]
As a high-speed roll material, for example, WO 88/07594 discloses a wear-resistant composite roll comprising a steel shaft metallically joined to an outer layer, and the outer layer has a surface hardness of 70 Shore hardness. As described above, the outer layer has a weight percentage of C: 1.5 to 3.5%, Si: 0.3 to 3.0%, Mn: 0.3 to 1.5%, Cr: 2 to 7%, Mo. : 9% or less, W: 20% or less, V: 3 to 15% and the balance substantially consisting of Fe, and further any one of Ni: 5% or less, Co: 5% or less, Nb: 5% or less It is described that the above can be contained.
[0005]
In Japanese Patent No. 3195777, the components of the roll outer layer are expressed in terms of% by weight: C: 1.5 to 3.0%, Si: 0.2 to 1.5%, Mn: 0.2 to 1.5%. , Cr: 3.0-5.0%, Mo: 5.0-8.0%, W: 5.0-8.0%, V: 3.0-6.0%, and the balance is The outer layer substantially made of Fe, which has been cast and soft-annealed, is once austenitized and then subjected to one or several austempering and tempering treatments performed in a temperature range between the bainite transformation point and the martensitic transformation point. By repeating the process twice, the area ratio of carbide in the structure is set to M 7 C 3 ≦ (M 2 C + M 6 C + MC) / 10 and (M 2 C + M 6 C) / MC ≧ 2, and the base is set to 80% or more. It is characterized by having a structure composed of bainite and less than 20% tempered martensite. The outer layer of the rolling rolls is described that. In the example of FIG. 5 in this publication, a roll material having a compressive strength of 292 to 320 kgf / mm 2 and a Shore hardness Hs of 80.0 to 82.0 is described.
[0006]
[Problems to be solved by the invention]
The outer layer of the conventional high-speed roll material has a structure in which hard carbide is mainly used as compared with the conventional cast iron roll, and if the amount of the hard carbide is too small, the wear resistance is inferior. Some amount is needed. However, when the amount of carbides is increased, the toughness of the outer layer of the roll is reduced, and when seizure occurs due to a drawing accident or the like, local strong pressure is applied to the seized portion, so that there was a problem that a deep crack was generated in the roll. . Furthermore, the surface layer of the roll that has been hot-rolled has a problem in that heat cracks are generated due to thermal fatigue, causing various surface roughness. For this reason, it is actually difficult to provide the rolling roll with both excellent wear resistance and crack resistance (including heat crack resistance). It had to be manufactured in consideration of any of the properties.
[0007]
Accordingly, an object of the present invention is to solve the above-mentioned problems in the high-speed roll material and to provide a roll for rolling having excellent wear resistance and crack resistance.
[0008]
[Means for Solving the Problems]
The present inventors have made intensive studies and as a result, it is necessary to minimize M 7 C 3 and M 23 C 6 carbides, which are relatively low in hardness and cause deterioration of wear resistance, among generated carbides. In particular, by setting the balance of C, V, Mo, and W to optimal conditions, MC, M 4 C 3 , M 2 C, and M 6 C carbides particularly imparting to abrasion resistance are generated in an optimal range. There is a need. Furthermore, they considered that it is necessary to suppress the M 2 C and M 6 C carbides that cause deterioration of the crack resistance of the roll material to an optimum range. In addition, it was considered that the compressive strength can be an index that suppresses the occurrence of cracks by withstanding the local fatigue of the seizure and the thermal fatigue due to hot rolling at the time of a drawing accident. Based on these technical ideas, the present invention has been completed by obtaining the knowledge that the hardness of the roll material in contact with the rolled material can be further increased and the crack resistance can be improved.
[0009]
That is, the roll for rolling according to the present invention is characterized in that the surface of the outer layer of the roll in contact with the rolled material has a Shore hardness of 85 or more, and the outer layer has a compressive strength of 240 kgf / mm 2 or more. In the rolling roll of the present invention, in the present invention, the outer layer is represented by weight%, C: 1.0 to 2.6%, Cr: 4.0 to 10.0%, Mo: 5.0 to 10.0. %, W: less than 5.0%, V: 3.0 to 8.0%, 12.0% ≦ 2Mo + W ≦ 20.0%, 2Mo / W ≧ 3.0, 0.2% ≦ C It is a Fe-based alloy satisfying −0.24 V ≦ 0.7%.
[0010]
[Action]
In the rolling roll of the present invention, the compressive strength of the outer layer of the roll in contact with the rolled material is 240 kgf / mm 2 or more, so that the crack resistance is remarkably improved, and the occurrence and progress of cracks are suppressed even in the event of drawing and rolling. Can be. At the same time, the outer layer has a Shore hardness of 85 or more, and the wear resistance can be improved. Therefore, it can be particularly effectively used as a roll for hot rolling.
[0011]
The reason for limiting the content range of each component element in the present invention will be described.
[0012]
C is necessary for the formation of carbides for improving wear resistance and for improving the hardness of the matrix during quenching and tempering by solid solution in the matrix. C forms carbides such as MC, M 4 C 3 , M 2 C, M 6 C, and M 7 C 3 to be provided with wear resistance. If C is less than 1.0%, the amount of carbide generated is insufficient, resulting in poor wear resistance. When C exceeds 2.6%, the abrasion resistance is good, but the compressive strength decreases.
[0013]
Cr improves the hardenability and increases the hardness. If the Cr content is less than 4.0%, the effect is small. On the other hand, if it exceeds 10.0%, the amount of retained austenite at room temperature increases, so that the number of tempering increases, which is uneconomical. Further, Cr forms M 7 C 3 and M 23 C 6 carbides having relatively low hardness, and when added in a large amount, these carbides become excessive and wear resistance deteriorates. A more preferable Cr content is 4.5 to 7.0%.
[0014]
Mo is necessary for improving hardenability and obtaining high-temperature hardness. It forms a solid solution in the base structure to improve hardenability. Further, it combines with C to form hard M 2 C and M 6 C carbides. If Mo is less than 5.0%, the effect is small. On the other hand, if it exceeds 10.0%, M 2 C and M 6 C carbides are excessively crystallized in the balance of C, V and Mo, and crack resistance is lowered.
[0015]
W is necessary for improving hardenability and obtaining high-temperature hardness, similarly to Mo. Improves the hardenability of the matrix and combines with C to form hard M 2 C, M 6 C carbides. The lower limit of W is 0%. On the other hand, if it exceeds 5.0%, M 6 C carbides increase, which is not preferable in terms of crack resistance and surface roughness resistance. W is more preferably 4.8% or less.
[0016]
V forms MC and M 4 C 3 which are hard carbides most contributing to the improvement of wear resistance. If V is less than 3.0%, the generation of carbides is small and the wear resistance is deteriorated. When V exceeds 8.0%, austenite or MC or M 4 C 3 carbide is crystallized as primary crystals due to the balance with the C content of the present invention. If austenite is crystallized as primary crystals, the hardness becomes insufficient. In addition, if MC and M 4 C 3 are crystallized as primary crystals, they coagulate during solidification, and when used as a rolling roll, the cohesion and segregation of MC and M 4 C 3 which are hard carbides are transferred to the material to be rolled. This is not preferred.
[0017]
12.0% ≦ 2Mo + W ≦ 20.0%
Mo and W have similar effects in improving hardenability, forming carbides, and the like, and when viewed in terms of weight ratio, Mo has approximately twice the effect of W due to its atomic weight difference. One of the most characteristic features of the present invention is the correlation between the Mo and W contents and the Shore hardness and compressive strength. When 2Mo + W is 12.0% or more, the improvement in hardenability becomes remarkable, and a Shore hardness of 85 or more can be stably secured. On the other hand, if 2Mo + W exceeds 20.0%, M 2 C and M 6 C carbides are excessively crystallized, and crack resistance deteriorates, which is not preferable.
[0018]
2Mo / W ≧ 3.0
Mo and W have almost the same effect on carbide formation and increase in the hardness of the matrix, but Mo has the effect of improving the viscosity of the matrix with respect to W. In the formation of carbides, W has a greater effect of crystallizing M 6 C carbides than Mo. There are M 2 C and M 6 C as carbides formed by Mo and W, but M 6 C tends to be coarser than M 2 C crystallized during solidification. From these facts, in satisfying the above-mentioned 12.0% ≦ 2Mo + W ≦ 20.0%, if a large amount of W is added, the base viscosity does not improve and coarse M 6 C is crystallized, so that the compressive strength and the crack resistance are improved. In order to achieve both, it is better to add a large amount of Mo. By setting 2Mo / W ≧ 3.0, the base viscosity can be sufficiently improved, and the crystallization of coarse M 6 C can be prevented, so that the compressive strength can be 240 kgf / mm 2 or more.
[0019]
0.2% ≦ C−0.24V ≦ 0.7%
If the content of V is too large, C is taken into the VC carbide, so that the C content of the base structure is insufficient and the hardness after quenching is low. If the content of V is too small, the amount of VC carbide is insufficient and the hardness becomes low. Therefore, if the condition of 0.2% ≦ C−0.24V ≦ 0.7% in consideration of the balance between C and V is satisfied, a Shore hardness of 85 or more can be stably secured.
[0020]
Further, the content of Si as a component element of the roll material of the present invention is preferably 0.1 to 3.0%. Si acts as a deoxidizing agent, and is dissolved in M 6 C carbide to be contained by replacing elements such as W and Mo. Therefore, in order to save expensive elements such as W and Mo, It is valid. If the content of Si is less than 0.1%, the deoxidizing effect is insufficient, and casting defects are likely to occur. If it exceeds 3.0%, embrittlement is likely to occur.
[0021]
The content of Mn is preferably from 0.1 to 3.0%. Mn has a deoxidizing effect similarly to Si. Further, it has an effect of fixing S as an impurity as MnS. If Mn is less than 0.1%, deacidification is poor. On the other hand, if the content exceeds 3.0%, retained austenite is likely to be generated, and sufficient hardness cannot be stably maintained.
[0022]
The rolling roll of the present invention is manufactured by a centrifugal casting method, a casting overlay method, or the like. Among them, a centrifugal casting method which is advantageous in terms of production cost is more preferable. In addition, a composite roll in which the roll material of the present invention is used as an outer layer and metal-bonded to the inner layer is preferable, but can be naturally applied to a single roll formed of the roll material of the present invention.
[0023]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Examples of the roll material for rolling according to the present invention will be described below.
[0024]
In the chemical composition (% by weight) of the roll material for rolling shown in Table 1, Nos. 1 to 4 according to the present invention, Each test material of 5 to 10 comparative examples was heated and melted to 1500 to 1550 ° C., and cast into a cylindrical mold having a diameter of 90 mm and a height of 90 mm. After cooling, the ingot was taken out, quenched at 1000 to 1200 ° C, and tempered at 500 to 600 ° C three times.
[0025]
Thereafter, a test piece for measuring hardness was collected from the center of the ingot. The hardness was determined by measuring the surface hardness of each test material with a Shore hardness tester. At the same time, a test piece for compressive strength measurement was taken from the center of the ingot.
[0026]
Test material No. 1 to 4 are adjusted within the component ranges of C, Cr, Mo, W and V listed in the claims of the present invention, and further satisfy the conditions of 2Mo + W, 2Mo / W and C-0.24V of the present invention. Is what you do. In addition, the test material No. 5 to 11 deviate from any of the conditions of 2Mo + W, 2Mo / W and C-0.24V of the present invention. Table 1 also shows the measurement results of Shore hardness and compressive strength. FIG. 1 shows the relationship between the Shore hardness of the test material surface and the compressive strength of each test material.
[0027]
[Table 1]
[0028]
From Table 1, the Shore hardness was determined for the test material No. which was an example of the present invention. In each of Nos. 1 to 4, 2Mo + W, 2Mo / W, and C-0.24V were all satisfied, and it was confirmed that a Shore hardness of 85 or more was stably obtained.
[0029]
Similarly, from Table 1, regarding the compressive strength, the test material No. which is an example of the present invention was used. In any one of Examples 1 to 4, the conditions of 2Mo + W, 2Mo / W, and C-0.24V were all satisfied, and it was confirmed that the compressive strength was 240 kgf / mm 2 or more.
[0030]
In addition, the test material No. of the comparative example. In 5-11, which is a feature of the present invention 2Mo + W, because out of the one of the conditions of 2Mo / W and C-0.24 V, Shore hardness 85 or more, resulting compressive strength satisfies 240 kgf / mm 2 or more at the same time Did not.
[0031]
Further, using a centrifugal casting machine, the test material No. A hot rolled centrifugally cast composite roll having a diameter of 600 mm and a length of 1830 mm having the component 1 in the outer layer of the body was produced. The roll had a body surface hardness of Shore hardness 86 and a body end compression strength of 254 kgf / mm 2 . In addition, the structure of the torso end and non-destructive ultrasonic inspection were performed, and the structure and defects were checked to confirm that the roll was sound. When subjected to actual rolling, it was found that the conventional centrifugally cast composite roll had better wear resistance and also had better accident resistance due to the rolling operation.
[0032]
【The invention's effect】
The roll for rolling of the present invention has a surface hardness of the outer layer of the roll in contact with the rolled material of as high as Shore hardness of 85 or more and a high compressive strength of the outer layer of at least 240 kgf / mm 2, and has abrasion resistance and It has excellent crack resistance and can perform stable rolling.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a graph showing the relationship between Shore hardness and compressive strength of the surface of a test material in each test material.
