JP2004167635A - スローアウェイチップのクランプ機構及びこれに用いられるスローアウェイチップ - Google Patents
スローアウェイチップのクランプ機構及びこれに用いられるスローアウェイチップ Download PDFInfo
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Abstract
【課題】安定したチップのクランプを行う。
【解決手段】クランプネジ40の頭部42に形成されたテーパ面43における拘束面33,33側が、チップ本体50の挿通孔55に形成されたテーパ面56における拘束面33,33側に面接触してこれを押圧する。チップ本体50における切刃54,54の先端と挿通孔55の軸心Rとを含む断面で見たときに、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43とチップ本体50の挿通孔55のテーパ面56との接触面を、切刃54,54の先端に切削力Pがかかったときにチップ本体50を浮き上がらせようとする力F1の支点Aと上記の接触面における拘束面33,33側の端点Eとを結ぶ直線AEに対して、略同一直線上に位置させる。
【選択図】 図1
【解決手段】クランプネジ40の頭部42に形成されたテーパ面43における拘束面33,33側が、チップ本体50の挿通孔55に形成されたテーパ面56における拘束面33,33側に面接触してこれを押圧する。チップ本体50における切刃54,54の先端と挿通孔55の軸心Rとを含む断面で見たときに、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43とチップ本体50の挿通孔55のテーパ面56との接触面を、切刃54,54の先端に切削力Pがかかったときにチップ本体50を浮き上がらせようとする力F1の支点Aと上記の接触面における拘束面33,33側の端点Eとを結ぶ直線AEに対して、略同一直線上に位置させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークの切削加工に用いるスローアウェイ式切削工具(以下、切削工具と称する)の工具本体に形成されたチップ取付座に対して、スローアウェイチップ(以下、チップと称する)を装着してクランプするためのクランプ機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
チップのクランプ機構の一例として、特許文献1に開示されているようなものが知られており、このようなチップのクランプ機構を図2に示す。
図2に示すように、切削工具の工具本体1に形成されたチップ取付座2には、略菱形平板状のチップ本体10を有するチップが、チップ本体10の下面12をチップ取付座2の底面3に当接させ、かつ、チップ本体10の2つの側面13,13をチップ取付座2の底面3から屹立する2つの拘束面4,4のそれぞれに当接させるようにして装着されており、チップ本体10の上面11と側面13…との交差稜線部に形成された切刃14…のうちの2つの切刃14,14が工具本体1から突出した状態となっている。
【0003】
そして、クランプネジ6が、チップ本体10の挿通孔15に挿通させられるようにして工具本体1に形成されたネジ穴5にねじ込まれていて、このクランプネジ6の頭部7に形成されたテーパ面8が、チップ本体10の挿通孔15に形成された凸曲面16と接触してこれを押圧していることにより、チップのチップ取付座2へのクランプがなされている。
なお、クランプネジ6の軸心Qは、このクランプネジ6の進退方向の前進側に向かうにしたがいチップ取付座2の拘束面4,4側に近づくように傾斜させられている。
【0004】
ここで、チップ本体10における切削に作用する切刃14,14の先端と挿通孔15の軸心Rとを含む断面で見たとき、図2(b)に示すように、クランプネジ6の頭部7のテーパ面8における拘束面4,4側(図中右側)が、チップ本体10の挿通孔15の凸曲面16における拘束面4,4側に、図中の点Eで接触しているとともに、この点Eにおけるテーパ面8と凸曲面16との接触によって生じるクランプネジ6の撓みにより、クランプネジ6の頭部7のテーパ面8における拘束面4,4と反対側(図中左側)が、チップ本体10の挿通孔15の凸曲面16における拘束面4,4と反対側に、図中の点Gで接触している。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−300110号公報(第1,2図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、切削に作用している切刃14,14の先端に切削力Pがかかったときには、図2(b)に示すように、クランプネジ6の頭部7のテーパ面8とチップ本体10の挿通孔15の凸曲面16との接触箇所である上記の点Eにおいて、チップ本体10の下面12に位置する支点Aを中心として、チップ本体10を浮き上がらせようとする力F1が作用することとなる。
しかしながら、クランプネジ6の頭部7のテーパ面8とチップ本体10の挿通孔15の凸曲面16とは、上記の点Eのみでの点接触、あるいは、上記の点Eを含むような線接触を行っているだけであり、しかも、点Eに発生する力F1を受けるクランプネジ6の頭部7のテーパ面8が、図2(b)に示すように、支点Aと点Eとを結ぶ直線AEに対して大きく傾斜しているため、点Eから直線AEに略直交する方向に向かってクランプネジ6に与えられる力F1を確実に受け止めることができず、チップの安定したクランプを行うことができなかった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、安定したチップのクランプを行うことができるチップのクランプ機構及びこれに用いられるチップを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のチップのクランプ機構は、チップ本体の上面と側面との交差稜線部に切刃が形成されたチップを、切削工具の工具本体に形成されたチップ取付座に、前記チップ本体の下面を前記チップ取付座の底面に当接させるとともに前記チップ本体の側面を前記チップ取付座の底面から屹立する拘束面に当接させて装着する際に、クランプネジを、前記チップ本体の厚み方向に貫通形成された挿通孔に挿通させるようにして前記工具本体に形成されたネジ穴にねじ込むことにより、前記チップをクランプする機構であって、前記クランプネジの頭部に形成されたテーパ面における前記拘束面側が、前記チップ本体の挿通孔に形成されたテーパ面における前記拘束面側と面接触してこれを押圧しており、前記チップ本体における前記切刃の先端と前記挿通孔の軸心とを含む断面で見たときに、前記クランプネジの頭部のテーパ面と前記チップ本体の挿通孔のテーパ面との接触面が、前記切刃の先端に切削力がかかったときに前記チップ本体を浮き上がらせようとする力の支点と前記接触面における前記拘束面側の端点とを結ぶ直線に対して、略同一直線上に位置している、あるいは、10゜以下の範囲の傾斜角で傾斜していることを特徴とするものであり、また、本発明のチップは、本発明のチップのクランプ機構に用いられていることを特徴とするものである。
このような本発明によれば、クランプネジの頭部のテーパ面における拘束面側とチップ本体の挿通孔のテーパ面における拘束面側とが面接触しているとともに、この接触面が、切刃の先端に切削力がかかったときにチップ本体の下面に位置する支点を中心としてチップ本体を浮き上がらせようとする力に対して逆らう方向に配置されることとなり、このチップ本体を浮き上がらせようとする力を確実に受け止め、安定したチップのクランプを行うことが可能となる。
【0009】
また、前記クランプネジの軸心が、このクランプネジの進退方向の前進側に向かうにしたがい前記拘束面側へ近づくように傾斜していることが好ましく、このような構成とすると、チップ本体に形成された挿通孔について、寸法精度の多少の誤差が生じていたとしても、この寸法精度の誤差に影響されることなく、クランプネジの頭部のテーパ面における拘束面側とチップ本体の挿通孔のテーパ面における拘束面側とを確実に面接触させることができて、安定したチップのクランプ状態を維持し続けることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を参照しながら説明する。
図1(a)は本発明の実施形態によるチップのクランプ機構を示す平面図、(b)は同クランプ機構を示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、例えば軸線回りに回転される切削工具の工具本体30の先端部には、後述するチップ50が装着されてクランプされるチップ取付座31が形成されており、このチップ取付座31は、例えば工具本体の回転方向前方側に向けられる底面32と、底面32から屹立する2つの拘束面33,33とを有している。
チップ取付座31における2つの拘束面33,33は、チップ取付座31の底面32に対向して見たときの平面視で、図1(a)に示すように、鋭角に交差させられていて、これら2つの拘束面33,33同士の交差部分には、ぬすみ部34が形成されている。
【0012】
工具本体30には、チップ取付座31の底面32に開口するようにして、後述するクランプネジ40の雄ねじ部41がねじ込まれるネジ穴35が形成されており、このネジ穴35の軸心Q1は、図1(b)に示すように、クランプネジ40の雄ねじ部41をねじ込むときのクランプネジ40の進退方向の前進側に向かうにしたがい拘束面33,33側(拘束面33,33同士の交差部分に形成されたぬすみ部34側)に近づくように傾斜している。
【0013】
このようなチップ取付座31に装着されてクランプされるチップは、略菱形平板状をなすチップ本体50を有しており、チップ本体50における一方の略菱形面である上面51(すくい面)と他方の略菱形面である下面52(着座面)とは互いに平行となっている。
なお、チップ本体50が略菱形平板状をなしているため、その4つのコーナー部は、対角配置される2つの鋭角コーナー部50A,50Aと、同じく対角配置される2つの鈍角コーナー部50B,50Bとから構成されている。
【0014】
また、チップ本体50の上面51と4つの側面53(逃げ面)との交差稜線部(上面51の外周側稜線部)には、それぞれ略直線状をなす切刃54が形成されていて、これら4つの切刃54…のうちの隣接するもの同士が略円弧状をなすコーナー刃によって滑らかに接続されている。
これら4つのコーナー刃は、チップ本体50の鋭角コーナー部50A,50A及び鈍角コーナー部50B,50Bにそれぞれ位置させられて、対角配置される2つの鋭角コーナー刃54A,54Aと、同じく対角配置される2つの鈍角コーナー刃54B,54Bとから構成されており、2つの鋭角コーナー部54A,54Aのそれぞれは、それを挟んで隣接する切刃54,54の先端をなしている。
【0015】
ここで、チップ本体50の上面51のなす略菱形面は、下面52のなす略菱形面よりも大きく形成されているため、これら上面51と下面52とを接続しているチップ本体50の側面53…は、それぞれ上面51から下面52側に向かうにしたがいチップ本体50の中心部側に傾斜させられることとなり、このチップが、各切刃54…に対してポジの逃げ角が与えられたポジティブタイプとなっている。
【0016】
そして、チップ本体50の略中心部には、その厚み方向(チップ本体50の上面51・下面52に略直交する方向)を貫通するような挿通孔55が、クランプネジ40を挿通可能な大きさで形成されている。
挿通孔55は、その軸心Rをチップ本体50の中心と一致させているとともに、チップ本体50の長手方向S、つまり、チップ本体50の鋭角コーナー部50A,50A(鋭角コーナー刃54A,54A)同士を結ぶ方向に沿って延びるような長穴状を呈している。
【0017】
なお、挿通孔55におけるチップ本体50の長手方向Sの両端側寄りの部分、つまり、挿通孔55における各鋭角コーナー部50A,50A側寄りの部分は、それぞれ、挿通孔55の軸心Rと平行で、この軸心Rから各鋭角コーナー部50A,50A側に所定距離だけ離間して位置する軸心R1,R1を中心として形成されている。
【0018】
また、挿通孔55の内周面には、上面51への開口部付近に、上面51側から下面52側に向かうにしたがい漸次縮径していくような長穴状のテーパ面56が形成されており、このテーパ面56における各鋭角コーナー部50A,50A側(チップ本体50の長手方向Sの両端側)は、チップ本体50の長手方向Sに沿った断面で見たとき、図1(b)に示すように、上面51(下面52)に対する傾斜角αが、例えば10゜≦α≦45゜の範囲に設定されている。
【0019】
一方、チップをクランプするために用いるクランプネジ40は、雄ねじ部41と雄ねじ部41よりも一段拡径した頭部42とから構成されており、頭部42における雄ねじ部41との接続部分には、雄ねじ部41側に向かうにしたがい漸次縮径するようなテーパ面43が形成されている。
【0020】
上記のようなチップは、チップ取付座31に対して、チップ本体50の下面52をチップ取付座31の底面32に当接させ、かつ、チップ本体50の4つの側面53…のうち、一方の鋭角コーナー部50Aを挟んで隣接する2つの側面53,53をチップ取付座31の2つの拘束面33,33にそれぞれ当接させるようにして装着されている。
この状態においては、チップ本体50における一方の鋭角コーナー部50Aが、チップ取付座31の2つの拘束面33,33同士の交差部分に形成されたぬすみ部34内に収容され、他方の鋭角コーナー部50Aに形成された鋭角コーナー刃54Aとこれを挟んで隣接する2つの切刃54,54とが、工具本体30から突出させられて、ワークの切削に供されるようになっている。
【0021】
そして、チップをクランプするためのクランプネジ40が、チップ取付座31に装着されたチップのチップ本体50に形成された長穴状の挿通孔55において、一方の鋭角コーナー部50A側寄り、つまり、拘束面33,33側(2つの拘束面33,33の交差部分に形成されたぬすみ部34側)寄りの部分に挿通させられているとともに、クランプネジ40の雄ねじ部41がチップ取付座31の底面32に形成されたネジ穴35にねじ込まれている。
また、クランプネジ40の雄ねじ部41がねじ込まれるネジ穴35の軸心Q1は、上述したような傾斜を有していることから、このネジ穴35の軸心Q1と一致するクランプネジ40の軸心Qも、同様に、クランプネジ40の進退方向の前進側に向かうにしたがいチップ取付座31における拘束面33,33側(ぬすみ部34側)に近づくように傾斜させられることになる。
【0022】
さらに、クランプネジ40の軸心Q及びネジ穴35の軸心Q1は、長穴状をなす挿通孔55における一方の鋭角コーナー部50A側寄り、つまり、長穴状をなす挿通孔55における拘束面33,33側(ぬすみ部34側)寄りの部分の軸心R1に対して、チップ本体50の上面51と略同一平面上に位置する点Hで交差させられており、クランプネジ40及びネジ穴35の軸心Q,Q1と、長穴状をなす挿通孔55における拘束面33,33側(ぬすみ部34側)寄りの部分の軸心R1とがなす傾斜角βは、例えば0゜<β≦30゜の範囲に設定されている。
【0023】
この軸心Qがチップ本体50の厚み方向に対して傾斜させられたクランプネジ40は、その頭部42のテーパ面43における一方の鋭角コーナー部50A側、つまり、拘束面33,33側(ぬすみ部34側)が、長穴状をなす挿通孔55のテーパ面56における一方の鋭角コーナー部50A側、つまり、拘束面33,33側(ぬすみ部34側)と面接触してこれを押圧している。
また、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43における他方の鋭角コーナー部50A側、つまり、拘束面33,33(ぬすみ部34)と反対側は、挿通孔55が長穴状をなしているために、挿通孔55との間に隙間が形成されて、テーパ面56には接触しないようになっている。
【0024】
ここで、チップ本体50の長手方向Sに沿った断面で見たとき、図1(b)に示すように、挿通孔55のテーパ面56における拘束面33,33側が、チップ本体50の上面51(下面52)に対して、傾斜角αで傾斜しているため、これに面接触するクランプネジ40の頭部42のテーパ面43の拘束面33,33側も、チップ本体50の上面51(下面52)に対して、傾斜角αで傾斜していることになる。
【0025】
このようなクランプネジ40によって、チップ取付座31に装着されたチップは、そのチップ本体50の下面52がチップ取付座31の底面32に押し付けられるとともに、チップ本体50の4つの側面53…のうちの2つの側面の2つの側面53,53がチップ取付座31の2つの拘束面33,33のそれぞれに押し付けられて、強固にクランプされているのである。
【0026】
ワークの切削加工の際には、工具本体30から突出した状態となっている切刃54,54及び鋭角コーナー刃54Aによってワークを切削していくのであるが、このとき、切削に作用している2つの切刃54,54の先端(鋭角コーナー刃54A)と挿通孔55の軸心Rとを含む断面で見る、つまり、チップ本体50の長手方向Sに沿った断面で見ると、図1(b)に示すように、切削に作用している切刃54,54の先端をなす鋭角コーナー刃54Aに対して、チップ取付座31の底面32側へ向かうような切削力Pが作用することとなる。
【0027】
この切削力Pが作用することにより、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43と挿通孔55のテーパ面56との接触面における拘束面33,33側の端点Eにおいて、チップ本体50の下面52に位置する支点Aを中心としてチップ本体50を浮き上がらせようとする力F1が、上記の支点Aと端点Eとを結ぶ直線AEに略直交する方向に向かって、クランプネジ40の頭部42に作用するのである。
【0028】
なお、本実施形態では、チップ本体50を浮き上がらせようとする力F1の支点Aが、チップ本体50の長手方向Sに沿った断面で見たときに、チップ本体50の下面52における拘束面33,33からもっとも離れた点となっているが、例えば、図1(b)中の破線で示されるように、チップ本体50の下面52が、チップ取付座31の底面32から突出しているような場合には、チップ本体50の下面52における拘束面33,33からもっとも離れた点よりも、底面32の突出量だけ拘束面33,33側に近づいた点A′となる。
つまり、支点Aは、チップ本体50の長手方向Sに沿った断面で見たときに、チップ本体50の下面52とチップ取付座31の底面32との接触面において、拘束面33,33からもっとも離れた点になるのである。
【0029】
そして、本実施形態では、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43における拘束面33,33側と挿通孔55のテーパ面56における拘束面33,33側との接触面が、上記の支点Aと端点Eとを結ぶ直線AEに対して、略同一直線上に位置している。
ここで、上記の接触面は、チップ本体50の上面51(下面52)に対して傾斜角αで傾斜しているため、この接触面と略同一直線上に位置する上記の直線AEも、チップ本体50の上面51(下面52)に対して、傾斜角αで傾斜するようになっている。
【0030】
以上説明したように、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43と挿通孔55のテーパ面56との接触面における拘束面33,33側の端点Eにおいて、ワークの切削の際に切刃54,54の先端にかかる切削力Pによって、支点Aを中心としてチップ本体50を浮き上がらせようとする力F1が、支点Aと端点Eとを結ぶ直線AEに略直交する方向に向かって、クランプネジ40に作用するのであるが、この力F1を受けるクランプネジ40は、その頭部42のテーパ面43における拘束面33,33側が、挿通孔55のテーパ面56における拘束面33,33側と面接触しているとともに、この接触面が、チップ本体50を浮き上がらせようとする力F1に対して略直交する方向に延在していることとなる。
【0031】
これにより、(チップ本体50の挿通孔55のテーパ面56における拘束面33,33側と面接触している)クランプネジ40の頭部42のテーパ面43における拘束面33,33側が、チップ本体50を浮き上がらせようとする力F1に対して、ちょうど逆らう方向に配置されるので、このチップ本体50を浮き上がらせようとする力F1を確実に受け止め、安定してチップのクランプを行うことができる。
【0032】
また、チップ取付座31の底面32に形成されたネジ穴35の軸心Q1と、このネジ穴35にねじ込まれる雄ねじ部41を有するクランプネジ40の軸心Qとが、クランプネジ40の進退方向の前進側に向かうにしたがい拘束面33,33側へ近づくように傾斜しているため、チップ本体50に形成される挿通孔55に、寸法精度の多少の誤差が生じていた場合であっても、この寸法精度の誤差に影響されることなく、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43における拘束面33,33側とチップ本体50の挿通孔55のテーパ面56における拘束面33,33側とを確実に面接触させることができ、安定したチップのクランプ状態を維持し続けることができる。
【0033】
さらに、チップ本体50に形成された挿通孔55が、チップ本体50の長手方向Sに沿って延びる長穴状となっているため、クランプネジ40の軸心Qを傾斜させつつネジ穴35にねじ込んでいるのにも関わらず、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43における拘束面33,33と反対側が、挿通孔55のテーパ面56に干渉することがないとともに、工具本体30から突出する2つの切刃54,54が摩耗したときには、チップ本体50をその長手方向Sで反転させるようにして、未使用の切刃54,54を新たに工具本体30から突出させることにより、2回のコーナーチェンジを行うことが可能となっている。
【0034】
なお、本実施形態では、図1(b)に示すように、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43における拘束面33,33側と、挿通孔55のテーパ面56における拘束面33,33側との接触面が、直線AEに対して、略同一直線上に位置するようにしたが、これに限定されることなく、上記の接触面が、直線AEに対して、10゜以下の範囲(好ましくは5゜以下の範囲)の傾斜角で傾斜している場合であったとしても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、本実施形態では、略菱形平板状のチップ本体50を有するチップを、チップ取付座31に装着してクランプするためのクランプ機構として説明しているが、これに限定されることなく、例えば、他の略多角形平板状のチップ本体を有するチップや、略円形平板状のチップ本体を有するチップを、チップ取付座に装着してクランプするためのクランプ機構であってもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、クランプネジの頭部のテーパ面における拘束面側とチップ本体の挿通孔のテーパ面における拘束面側とが面接触しているとともに、この接触面が、切刃の先端に切削力がかかったときにチップ本体の下面に位置する支点を中心としてチップ本体を浮き上がらせようとする力に対して逆らう方向に配置されているため、チップ本体を浮き上がらせようとする力を確実に受け止めて、安定したチップのクランプを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施形態によるチップのクランプ機構を示す平面図、(b)は同クランプ機構を示す断面図である。
【図2】(a)は従来のチップのクランプ機構を示す平面図、(b)は同クランプ機構を示す断面図である。
【符号の説明】
30 工具本体
31 チップ取付座
32 底面
33 拘束面
35 ネジ穴
40 クランプネジ
42 頭部
43 テーパ面
50 チップ本体
51 上面
52 下面
53 側面
54 切刃
55 挿通孔
56 テーパ面
A 支点
E 端点
F1 チップ本体を浮き上がらせようとする力
P 切削力
Q クランプネジの軸心
R 挿通孔の軸心
S チップ本体の長手方向
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークの切削加工に用いるスローアウェイ式切削工具(以下、切削工具と称する)の工具本体に形成されたチップ取付座に対して、スローアウェイチップ(以下、チップと称する)を装着してクランプするためのクランプ機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
チップのクランプ機構の一例として、特許文献1に開示されているようなものが知られており、このようなチップのクランプ機構を図2に示す。
図2に示すように、切削工具の工具本体1に形成されたチップ取付座2には、略菱形平板状のチップ本体10を有するチップが、チップ本体10の下面12をチップ取付座2の底面3に当接させ、かつ、チップ本体10の2つの側面13,13をチップ取付座2の底面3から屹立する2つの拘束面4,4のそれぞれに当接させるようにして装着されており、チップ本体10の上面11と側面13…との交差稜線部に形成された切刃14…のうちの2つの切刃14,14が工具本体1から突出した状態となっている。
【0003】
そして、クランプネジ6が、チップ本体10の挿通孔15に挿通させられるようにして工具本体1に形成されたネジ穴5にねじ込まれていて、このクランプネジ6の頭部7に形成されたテーパ面8が、チップ本体10の挿通孔15に形成された凸曲面16と接触してこれを押圧していることにより、チップのチップ取付座2へのクランプがなされている。
なお、クランプネジ6の軸心Qは、このクランプネジ6の進退方向の前進側に向かうにしたがいチップ取付座2の拘束面4,4側に近づくように傾斜させられている。
【0004】
ここで、チップ本体10における切削に作用する切刃14,14の先端と挿通孔15の軸心Rとを含む断面で見たとき、図2(b)に示すように、クランプネジ6の頭部7のテーパ面8における拘束面4,4側(図中右側)が、チップ本体10の挿通孔15の凸曲面16における拘束面4,4側に、図中の点Eで接触しているとともに、この点Eにおけるテーパ面8と凸曲面16との接触によって生じるクランプネジ6の撓みにより、クランプネジ6の頭部7のテーパ面8における拘束面4,4と反対側(図中左側)が、チップ本体10の挿通孔15の凸曲面16における拘束面4,4と反対側に、図中の点Gで接触している。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−300110号公報(第1,2図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、切削に作用している切刃14,14の先端に切削力Pがかかったときには、図2(b)に示すように、クランプネジ6の頭部7のテーパ面8とチップ本体10の挿通孔15の凸曲面16との接触箇所である上記の点Eにおいて、チップ本体10の下面12に位置する支点Aを中心として、チップ本体10を浮き上がらせようとする力F1が作用することとなる。
しかしながら、クランプネジ6の頭部7のテーパ面8とチップ本体10の挿通孔15の凸曲面16とは、上記の点Eのみでの点接触、あるいは、上記の点Eを含むような線接触を行っているだけであり、しかも、点Eに発生する力F1を受けるクランプネジ6の頭部7のテーパ面8が、図2(b)に示すように、支点Aと点Eとを結ぶ直線AEに対して大きく傾斜しているため、点Eから直線AEに略直交する方向に向かってクランプネジ6に与えられる力F1を確実に受け止めることができず、チップの安定したクランプを行うことができなかった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、安定したチップのクランプを行うことができるチップのクランプ機構及びこれに用いられるチップを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のチップのクランプ機構は、チップ本体の上面と側面との交差稜線部に切刃が形成されたチップを、切削工具の工具本体に形成されたチップ取付座に、前記チップ本体の下面を前記チップ取付座の底面に当接させるとともに前記チップ本体の側面を前記チップ取付座の底面から屹立する拘束面に当接させて装着する際に、クランプネジを、前記チップ本体の厚み方向に貫通形成された挿通孔に挿通させるようにして前記工具本体に形成されたネジ穴にねじ込むことにより、前記チップをクランプする機構であって、前記クランプネジの頭部に形成されたテーパ面における前記拘束面側が、前記チップ本体の挿通孔に形成されたテーパ面における前記拘束面側と面接触してこれを押圧しており、前記チップ本体における前記切刃の先端と前記挿通孔の軸心とを含む断面で見たときに、前記クランプネジの頭部のテーパ面と前記チップ本体の挿通孔のテーパ面との接触面が、前記切刃の先端に切削力がかかったときに前記チップ本体を浮き上がらせようとする力の支点と前記接触面における前記拘束面側の端点とを結ぶ直線に対して、略同一直線上に位置している、あるいは、10゜以下の範囲の傾斜角で傾斜していることを特徴とするものであり、また、本発明のチップは、本発明のチップのクランプ機構に用いられていることを特徴とするものである。
このような本発明によれば、クランプネジの頭部のテーパ面における拘束面側とチップ本体の挿通孔のテーパ面における拘束面側とが面接触しているとともに、この接触面が、切刃の先端に切削力がかかったときにチップ本体の下面に位置する支点を中心としてチップ本体を浮き上がらせようとする力に対して逆らう方向に配置されることとなり、このチップ本体を浮き上がらせようとする力を確実に受け止め、安定したチップのクランプを行うことが可能となる。
【0009】
また、前記クランプネジの軸心が、このクランプネジの進退方向の前進側に向かうにしたがい前記拘束面側へ近づくように傾斜していることが好ましく、このような構成とすると、チップ本体に形成された挿通孔について、寸法精度の多少の誤差が生じていたとしても、この寸法精度の誤差に影響されることなく、クランプネジの頭部のテーパ面における拘束面側とチップ本体の挿通孔のテーパ面における拘束面側とを確実に面接触させることができて、安定したチップのクランプ状態を維持し続けることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を参照しながら説明する。
図1(a)は本発明の実施形態によるチップのクランプ機構を示す平面図、(b)は同クランプ機構を示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、例えば軸線回りに回転される切削工具の工具本体30の先端部には、後述するチップ50が装着されてクランプされるチップ取付座31が形成されており、このチップ取付座31は、例えば工具本体の回転方向前方側に向けられる底面32と、底面32から屹立する2つの拘束面33,33とを有している。
チップ取付座31における2つの拘束面33,33は、チップ取付座31の底面32に対向して見たときの平面視で、図1(a)に示すように、鋭角に交差させられていて、これら2つの拘束面33,33同士の交差部分には、ぬすみ部34が形成されている。
【0012】
工具本体30には、チップ取付座31の底面32に開口するようにして、後述するクランプネジ40の雄ねじ部41がねじ込まれるネジ穴35が形成されており、このネジ穴35の軸心Q1は、図1(b)に示すように、クランプネジ40の雄ねじ部41をねじ込むときのクランプネジ40の進退方向の前進側に向かうにしたがい拘束面33,33側(拘束面33,33同士の交差部分に形成されたぬすみ部34側)に近づくように傾斜している。
【0013】
このようなチップ取付座31に装着されてクランプされるチップは、略菱形平板状をなすチップ本体50を有しており、チップ本体50における一方の略菱形面である上面51(すくい面)と他方の略菱形面である下面52(着座面)とは互いに平行となっている。
なお、チップ本体50が略菱形平板状をなしているため、その4つのコーナー部は、対角配置される2つの鋭角コーナー部50A,50Aと、同じく対角配置される2つの鈍角コーナー部50B,50Bとから構成されている。
【0014】
また、チップ本体50の上面51と4つの側面53(逃げ面)との交差稜線部(上面51の外周側稜線部)には、それぞれ略直線状をなす切刃54が形成されていて、これら4つの切刃54…のうちの隣接するもの同士が略円弧状をなすコーナー刃によって滑らかに接続されている。
これら4つのコーナー刃は、チップ本体50の鋭角コーナー部50A,50A及び鈍角コーナー部50B,50Bにそれぞれ位置させられて、対角配置される2つの鋭角コーナー刃54A,54Aと、同じく対角配置される2つの鈍角コーナー刃54B,54Bとから構成されており、2つの鋭角コーナー部54A,54Aのそれぞれは、それを挟んで隣接する切刃54,54の先端をなしている。
【0015】
ここで、チップ本体50の上面51のなす略菱形面は、下面52のなす略菱形面よりも大きく形成されているため、これら上面51と下面52とを接続しているチップ本体50の側面53…は、それぞれ上面51から下面52側に向かうにしたがいチップ本体50の中心部側に傾斜させられることとなり、このチップが、各切刃54…に対してポジの逃げ角が与えられたポジティブタイプとなっている。
【0016】
そして、チップ本体50の略中心部には、その厚み方向(チップ本体50の上面51・下面52に略直交する方向)を貫通するような挿通孔55が、クランプネジ40を挿通可能な大きさで形成されている。
挿通孔55は、その軸心Rをチップ本体50の中心と一致させているとともに、チップ本体50の長手方向S、つまり、チップ本体50の鋭角コーナー部50A,50A(鋭角コーナー刃54A,54A)同士を結ぶ方向に沿って延びるような長穴状を呈している。
【0017】
なお、挿通孔55におけるチップ本体50の長手方向Sの両端側寄りの部分、つまり、挿通孔55における各鋭角コーナー部50A,50A側寄りの部分は、それぞれ、挿通孔55の軸心Rと平行で、この軸心Rから各鋭角コーナー部50A,50A側に所定距離だけ離間して位置する軸心R1,R1を中心として形成されている。
【0018】
また、挿通孔55の内周面には、上面51への開口部付近に、上面51側から下面52側に向かうにしたがい漸次縮径していくような長穴状のテーパ面56が形成されており、このテーパ面56における各鋭角コーナー部50A,50A側(チップ本体50の長手方向Sの両端側)は、チップ本体50の長手方向Sに沿った断面で見たとき、図1(b)に示すように、上面51(下面52)に対する傾斜角αが、例えば10゜≦α≦45゜の範囲に設定されている。
【0019】
一方、チップをクランプするために用いるクランプネジ40は、雄ねじ部41と雄ねじ部41よりも一段拡径した頭部42とから構成されており、頭部42における雄ねじ部41との接続部分には、雄ねじ部41側に向かうにしたがい漸次縮径するようなテーパ面43が形成されている。
【0020】
上記のようなチップは、チップ取付座31に対して、チップ本体50の下面52をチップ取付座31の底面32に当接させ、かつ、チップ本体50の4つの側面53…のうち、一方の鋭角コーナー部50Aを挟んで隣接する2つの側面53,53をチップ取付座31の2つの拘束面33,33にそれぞれ当接させるようにして装着されている。
この状態においては、チップ本体50における一方の鋭角コーナー部50Aが、チップ取付座31の2つの拘束面33,33同士の交差部分に形成されたぬすみ部34内に収容され、他方の鋭角コーナー部50Aに形成された鋭角コーナー刃54Aとこれを挟んで隣接する2つの切刃54,54とが、工具本体30から突出させられて、ワークの切削に供されるようになっている。
【0021】
そして、チップをクランプするためのクランプネジ40が、チップ取付座31に装着されたチップのチップ本体50に形成された長穴状の挿通孔55において、一方の鋭角コーナー部50A側寄り、つまり、拘束面33,33側(2つの拘束面33,33の交差部分に形成されたぬすみ部34側)寄りの部分に挿通させられているとともに、クランプネジ40の雄ねじ部41がチップ取付座31の底面32に形成されたネジ穴35にねじ込まれている。
また、クランプネジ40の雄ねじ部41がねじ込まれるネジ穴35の軸心Q1は、上述したような傾斜を有していることから、このネジ穴35の軸心Q1と一致するクランプネジ40の軸心Qも、同様に、クランプネジ40の進退方向の前進側に向かうにしたがいチップ取付座31における拘束面33,33側(ぬすみ部34側)に近づくように傾斜させられることになる。
【0022】
さらに、クランプネジ40の軸心Q及びネジ穴35の軸心Q1は、長穴状をなす挿通孔55における一方の鋭角コーナー部50A側寄り、つまり、長穴状をなす挿通孔55における拘束面33,33側(ぬすみ部34側)寄りの部分の軸心R1に対して、チップ本体50の上面51と略同一平面上に位置する点Hで交差させられており、クランプネジ40及びネジ穴35の軸心Q,Q1と、長穴状をなす挿通孔55における拘束面33,33側(ぬすみ部34側)寄りの部分の軸心R1とがなす傾斜角βは、例えば0゜<β≦30゜の範囲に設定されている。
【0023】
この軸心Qがチップ本体50の厚み方向に対して傾斜させられたクランプネジ40は、その頭部42のテーパ面43における一方の鋭角コーナー部50A側、つまり、拘束面33,33側(ぬすみ部34側)が、長穴状をなす挿通孔55のテーパ面56における一方の鋭角コーナー部50A側、つまり、拘束面33,33側(ぬすみ部34側)と面接触してこれを押圧している。
また、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43における他方の鋭角コーナー部50A側、つまり、拘束面33,33(ぬすみ部34)と反対側は、挿通孔55が長穴状をなしているために、挿通孔55との間に隙間が形成されて、テーパ面56には接触しないようになっている。
【0024】
ここで、チップ本体50の長手方向Sに沿った断面で見たとき、図1(b)に示すように、挿通孔55のテーパ面56における拘束面33,33側が、チップ本体50の上面51(下面52)に対して、傾斜角αで傾斜しているため、これに面接触するクランプネジ40の頭部42のテーパ面43の拘束面33,33側も、チップ本体50の上面51(下面52)に対して、傾斜角αで傾斜していることになる。
【0025】
このようなクランプネジ40によって、チップ取付座31に装着されたチップは、そのチップ本体50の下面52がチップ取付座31の底面32に押し付けられるとともに、チップ本体50の4つの側面53…のうちの2つの側面の2つの側面53,53がチップ取付座31の2つの拘束面33,33のそれぞれに押し付けられて、強固にクランプされているのである。
【0026】
ワークの切削加工の際には、工具本体30から突出した状態となっている切刃54,54及び鋭角コーナー刃54Aによってワークを切削していくのであるが、このとき、切削に作用している2つの切刃54,54の先端(鋭角コーナー刃54A)と挿通孔55の軸心Rとを含む断面で見る、つまり、チップ本体50の長手方向Sに沿った断面で見ると、図1(b)に示すように、切削に作用している切刃54,54の先端をなす鋭角コーナー刃54Aに対して、チップ取付座31の底面32側へ向かうような切削力Pが作用することとなる。
【0027】
この切削力Pが作用することにより、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43と挿通孔55のテーパ面56との接触面における拘束面33,33側の端点Eにおいて、チップ本体50の下面52に位置する支点Aを中心としてチップ本体50を浮き上がらせようとする力F1が、上記の支点Aと端点Eとを結ぶ直線AEに略直交する方向に向かって、クランプネジ40の頭部42に作用するのである。
【0028】
なお、本実施形態では、チップ本体50を浮き上がらせようとする力F1の支点Aが、チップ本体50の長手方向Sに沿った断面で見たときに、チップ本体50の下面52における拘束面33,33からもっとも離れた点となっているが、例えば、図1(b)中の破線で示されるように、チップ本体50の下面52が、チップ取付座31の底面32から突出しているような場合には、チップ本体50の下面52における拘束面33,33からもっとも離れた点よりも、底面32の突出量だけ拘束面33,33側に近づいた点A′となる。
つまり、支点Aは、チップ本体50の長手方向Sに沿った断面で見たときに、チップ本体50の下面52とチップ取付座31の底面32との接触面において、拘束面33,33からもっとも離れた点になるのである。
【0029】
そして、本実施形態では、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43における拘束面33,33側と挿通孔55のテーパ面56における拘束面33,33側との接触面が、上記の支点Aと端点Eとを結ぶ直線AEに対して、略同一直線上に位置している。
ここで、上記の接触面は、チップ本体50の上面51(下面52)に対して傾斜角αで傾斜しているため、この接触面と略同一直線上に位置する上記の直線AEも、チップ本体50の上面51(下面52)に対して、傾斜角αで傾斜するようになっている。
【0030】
以上説明したように、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43と挿通孔55のテーパ面56との接触面における拘束面33,33側の端点Eにおいて、ワークの切削の際に切刃54,54の先端にかかる切削力Pによって、支点Aを中心としてチップ本体50を浮き上がらせようとする力F1が、支点Aと端点Eとを結ぶ直線AEに略直交する方向に向かって、クランプネジ40に作用するのであるが、この力F1を受けるクランプネジ40は、その頭部42のテーパ面43における拘束面33,33側が、挿通孔55のテーパ面56における拘束面33,33側と面接触しているとともに、この接触面が、チップ本体50を浮き上がらせようとする力F1に対して略直交する方向に延在していることとなる。
【0031】
これにより、(チップ本体50の挿通孔55のテーパ面56における拘束面33,33側と面接触している)クランプネジ40の頭部42のテーパ面43における拘束面33,33側が、チップ本体50を浮き上がらせようとする力F1に対して、ちょうど逆らう方向に配置されるので、このチップ本体50を浮き上がらせようとする力F1を確実に受け止め、安定してチップのクランプを行うことができる。
【0032】
また、チップ取付座31の底面32に形成されたネジ穴35の軸心Q1と、このネジ穴35にねじ込まれる雄ねじ部41を有するクランプネジ40の軸心Qとが、クランプネジ40の進退方向の前進側に向かうにしたがい拘束面33,33側へ近づくように傾斜しているため、チップ本体50に形成される挿通孔55に、寸法精度の多少の誤差が生じていた場合であっても、この寸法精度の誤差に影響されることなく、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43における拘束面33,33側とチップ本体50の挿通孔55のテーパ面56における拘束面33,33側とを確実に面接触させることができ、安定したチップのクランプ状態を維持し続けることができる。
【0033】
さらに、チップ本体50に形成された挿通孔55が、チップ本体50の長手方向Sに沿って延びる長穴状となっているため、クランプネジ40の軸心Qを傾斜させつつネジ穴35にねじ込んでいるのにも関わらず、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43における拘束面33,33と反対側が、挿通孔55のテーパ面56に干渉することがないとともに、工具本体30から突出する2つの切刃54,54が摩耗したときには、チップ本体50をその長手方向Sで反転させるようにして、未使用の切刃54,54を新たに工具本体30から突出させることにより、2回のコーナーチェンジを行うことが可能となっている。
【0034】
なお、本実施形態では、図1(b)に示すように、クランプネジ40の頭部42のテーパ面43における拘束面33,33側と、挿通孔55のテーパ面56における拘束面33,33側との接触面が、直線AEに対して、略同一直線上に位置するようにしたが、これに限定されることなく、上記の接触面が、直線AEに対して、10゜以下の範囲(好ましくは5゜以下の範囲)の傾斜角で傾斜している場合であったとしても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、本実施形態では、略菱形平板状のチップ本体50を有するチップを、チップ取付座31に装着してクランプするためのクランプ機構として説明しているが、これに限定されることなく、例えば、他の略多角形平板状のチップ本体を有するチップや、略円形平板状のチップ本体を有するチップを、チップ取付座に装着してクランプするためのクランプ機構であってもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、クランプネジの頭部のテーパ面における拘束面側とチップ本体の挿通孔のテーパ面における拘束面側とが面接触しているとともに、この接触面が、切刃の先端に切削力がかかったときにチップ本体の下面に位置する支点を中心としてチップ本体を浮き上がらせようとする力に対して逆らう方向に配置されているため、チップ本体を浮き上がらせようとする力を確実に受け止めて、安定したチップのクランプを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施形態によるチップのクランプ機構を示す平面図、(b)は同クランプ機構を示す断面図である。
【図2】(a)は従来のチップのクランプ機構を示す平面図、(b)は同クランプ機構を示す断面図である。
【符号の説明】
30 工具本体
31 チップ取付座
32 底面
33 拘束面
35 ネジ穴
40 クランプネジ
42 頭部
43 テーパ面
50 チップ本体
51 上面
52 下面
53 側面
54 切刃
55 挿通孔
56 テーパ面
A 支点
E 端点
F1 チップ本体を浮き上がらせようとする力
P 切削力
Q クランプネジの軸心
R 挿通孔の軸心
S チップ本体の長手方向
Claims (3)
- チップ本体の上面と側面との交差稜線部に切刃が形成されたスローアウェイチップを、スローアウェイ式切削工具の工具本体に形成されたチップ取付座に、前記チップ本体の下面を前記チップ取付座の底面に当接させるとともに前記チップ本体の側面を前記チップ取付座の底面から屹立する拘束面に当接させて装着する際に、クランプネジを、前記チップ本体の厚み方向に貫通形成された挿通孔に挿通させるようにして前記工具本体に形成されたネジ穴にねじ込むことにより、前記スローアウェイチップをクランプする機構であって、
前記クランプネジの頭部に形成されたテーパ面における前記拘束面側が、前記チップ本体の挿通孔に形成されたテーパ面における前記拘束面側と面接触してこれを押圧しており、
前記チップ本体における前記切刃の先端と前記挿通孔の軸心とを含む断面で見たときに、
前記クランプネジの頭部のテーパ面と前記チップ本体の挿通孔のテーパ面との接触面が、前記切刃の先端に切削力がかかったときに前記チップ本体を浮き上がらせようとする力の支点と前記接触面における前記拘束面側の端点とを結ぶ直線に対して、略同一直線上に位置している、あるいは、10゜以下の範囲の傾斜角で傾斜していることを特徴とするスローアウェイチップのクランプ機構。 - 請求項1に記載のスローアウェイチップのクランプ機構において、
前記クランプネジの軸心が、このクランプネジの進退方向の前進側に向かうにしたがい前記拘束面側へ近づくように傾斜していることを特徴とするスローアウェイチップのクランプ機構。 - 請求項1または請求項2に記載のスローアウェイチップのクランプ機構に用いられていることを特徴とするスローアウェイチップ。
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