JP2004165486A - 半導体レーザダイオード - Google Patents
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Abstract
【課題】コンタクト層での光吸収による内部損失によるレーザ動作電流の増大を抑え、且つ低抵抗の電気的接触を得ることにより、高出力でしかも動作電流が小さい半導体レーザダイオードを得る。
【解決手段】n型のGaAs基板101と、基板上に形成したn型のAlGaInPからなる第1クラッド層103と、該第1クラッド層上に形成した活性層104と、該活性層上に形成したp型AlGaInPからなる第2クラッド層105と、該第2クラッド層上に形成したp型コンタクト層106とを備えた端面発光型の半導体レーザダイオードにおいて、上記p型コンタクト層106がGaPから成る構造とする。
【選択図】 図1
【解決手段】n型のGaAs基板101と、基板上に形成したn型のAlGaInPからなる第1クラッド層103と、該第1クラッド層上に形成した活性層104と、該活性層上に形成したp型AlGaInPからなる第2クラッド層105と、該第2クラッド層上に形成したp型コンタクト層106とを備えた端面発光型の半導体レーザダイオードにおいて、上記p型コンタクト層106がGaPから成る構造とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光出力が大きい可視光半導体レーザダイオードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体レーザダイオード(LD)は光ディスク用光源、レーザプリンタ用光源として広く用いられている。特に書き込み可能なDVD−R、DVD−RW、DVD−RAM用光源として用いられているAlGaInP系のLDは、高出力で動作電流が小さく、しかも信頼性が高いことが求められている。
【0003】
従来、活性層を含む所定の半導体材料層が形成された半導体基板上に積層されたリッジ構造のクラッド層と、クラッド層上に積層されたリッジ構造のキャップ層と、クラッド層の両側に形成された電流ブロック層とで構成される半導体レーザダイオードがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図2に、AlGaInP系半導体材料を用いた従来の半導体レーザダイオード(LD)の一例を示す。図において、201はn型GaAs基板、202は基板201上に形成されたn型AlGaInPからなる第1クラッド層である。203はAlGaInPからなる活性層である。204は、p型AlGaInPからなる第2クラッド層である。すなわち、AlGaInP活性層203のエネルギーギャップが、AlGaInPクラッド層202及び204のエネルギーギャップより小さくなるよう混晶比が設定されており、ダブルヘテロ構造をなしている。206はコンタクト層である。205はGaAsからなる電流ブロック層である。電流ブロック層205は、レーザ発振に必要な電流密度を得るために、いわゆる、電流狭窄を行う目的で設けられる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−244066号公報(図3(i))
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
AlGaInP系LDを高出力化するための大きな課題は、第1に動作電流の低減、第2にレーザ端面での劣化(COD;Catastrophic Optical Damage)の抑制である。動作電流を低減する方法としては、(1)活性層を歪み量子井戸構造として活性層での利得を増やす方法、(2)p型クラッド層のキャリア濃度を高くしてp型クラッド層からの漏れ電流を低減する方法、(3)電流ブロック層をレーザ光に対し透明な材料で形成することにより内部損失を低減する方法、(4)レーザ上部のコンタクト層(キャップ層)をレーザ光に対し透明な材料で形成することにより内部損失を低減する方法、(5)p型クラッド層を厚くすることにより活性層とキャップ層の距離を大きくしコンタクト層での吸収の影響を低減する方法等がある。
【0007】
このうち(4)の方法として、コンタクト層としてAlGaAsを用いる例が報告されている(応用物理学会2001年秋期、14P−B−3)。コンタクト層はできる限り低抵抗でなければならないが、AlGaAsは従来広く用いられてきたGaAs層よりも活性化率が低いため、抵抗を小さくすることが難しいという問題があった。
【0008】
例えば、p型ドーパントとして一般的な亜鉛(Zn)を1×1019cm−3ドープしたZn−GaAsの正孔移動度は約80cm2/V・sであり、抵抗率は7.8×10−3Ω・cmであった。一方、Znを同量ドープしたZn−Al0.5Ga0.5Asの正孔移動度は約30cm2/V・sであり、抵抗率は前記Zn−GaAsの約2.7倍の2.1×10−2Ω・cmであった。
【0009】
このように、AlGaAs層はGaAs層よりもキャリア移動度が小さいため、同じ抵抗率を得るためのキャリア濃度は、GaAsよりもAlGaAsの方が大きくなる。したがってAlGaAsコンタクト層をGaAsコンタクト層と同程度に低抵抗化するためには、GaAsコンタクト層よりも高濃度のドーピングをしなければならず、このときに添加した元素のZnがp型クラッド層側へ拡散し、レーザ素子の特性を劣化させるという問題があった。例えば、活性化しなかったZnの拡散により、pn接合位置が発光層よりもn側にずれ、電流電圧特性に異常をもたらしたり、レーザのしきい値電流を増加させたりする。
【0010】
一方、AlGaAsは適切な成長条件下(例えば基板温度約600℃以下とし、なおかつ、V族原料モル供給量をIII族原料モル供給量の30倍以下)で、MOVPE法により結晶成長を行うことにより、結晶中に大量のCが入りp型の伝導性を示すことが知られているが、酸化し易いAlを含むために同時に結晶中に大量の酸素が混入し、低抵抗の膜を得るのは非常に難しいという問題がある。
【0011】
したがって、コンタクト層として低抵抗のAlGaAs層を得るためには、意図的にZn等を添加する必要があり、これが前述の拡散の原因となっていた。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、コンタクト層での光吸収による内部損失によるレーザ動作電流の増大を抑え、且つ低抵抗の電気的接触を得ることにより、高出力でしかも動作電流が小さい半導体レーザダイオードを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0014】
請求項1の発明に係る半導体レーザダイオードは、n型のGaAs基板と、基板上に形成したn型のAlGaInPからなる第1クラッド層と、該第1クラッド層上に形成した活性層と、該活性層上に形成したp型AlGaInPからなる第2クラッド層と、該第2クラッド層上に形成したp型コンタクト層を備えた端面発光型の半導体レーザダイオードにおいて、上記p型コンタクト層がGaPから成ることを特徴とするものである。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1記載の半導体レーザダイオードにおいて、上記p型コンタクト層のGaPの導電性を規定している主要な元素が炭素(C)であることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の半導体レーザダイオードにおいて、上記第2クラッド層及びp型コンタクト層がリッジ構造を有しており、該リッジ構造の左右に電流ブロック層を具備していることを特徴とする。
【0017】
<作用>
本発明は上記欠点を解消するために成されたものであり、出力が高く、しかも動作電流が小さい半導体レーザダイオードを得ることを目的としている。
【0018】
このため本発明では、n型のGaAs基板と、基板上に形成したn型のAlGaInPクラッド層と、n型AlGaInPクラッド層上に形成した活性層と、活性層上に形成したp型AlGaInPクラッド層と、p型AlGaInPクラッド層上に形成したp型のGaPコンタクト層を、形成することにより目的とする半導体レーザダイオードを達成した。
【0019】
また、上記において、GaP層の伝導性を規定する主要な元素をCとすることにより目的とする半導体レーザダイオードを達成した。
【0020】
GaPは間接遷移型の半導体でエネルギーバンドギャップは約2.28eVであり、DVD用可視光レーザダイオードの発振波長約650nmに対し透明な材料である。またCを1×1019cm−3ドープしたC−GaPの正孔移動度は約40cm2/V・sであり、同量のZnをドープしたZn−Al0.5Ga0.5Asの正孔移動度約30cm2/V・sよりも大きな移動度を持つことから、少なくともAlGaAsよりは低抵抗の膜を得やすい。さらにCはZn等と比較して拡散しにくい性質があることから1×1019cm−3を超える濃度のCをドープすることができ、さらにAlGaAsのようにAlを含まないため酸素の影響は少なく、結果的にGaAs層と同程度の低抵抗率を実現することができる。
【0021】
したがってコンタクト層としてGaAsの代わりにGaPを用いることにより、コンタクト層におけるレーザ光の光吸収による損失を無くして内部損失を低減させることができ、しかも抵抗率を低くできるので良好な電気的接触を得ることができ、結果として発光出力の大きいレーザダイオードを得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0023】
本発明の実施形態に係る半導体レーザダイオードLDを図1に示す。このLDは、n型GaAs基板101上に、n型GaAsバッファ層102、n型AlGaInP下部クラッド層(第1クラッド層)103を順次エピタキシャル成長し、その上にAlGaInPとGaInPの多層構造からなる歪量子井戸構造の活性層104、さらにp型AlGaInP上部クラッド層(第2クラッド層)105、p型GaPコンタクト層(キャップ層)106を順次成長した、ダブルヘテロ構造を有する。またp型AlGaInP上部クラッド層105及びp型GaPコンタクト層はリッジ構造となっており、該リッジ構造の左右にはn型AlInP電流ブロック層107が設けられている。そして、上記p型GaPコンタクト層106は、そのGaP層の導電性を規定する元素として、Cを高濃度にドープした構造となっている。
【0024】
本実施形態の半導体レーザダイオードでは、p型コンタクト層に、発振レーザ光に対し透明材料であるGaPを用い、これにCを高濃度にドープしているので、AlGaAsよりも低抵抗のp型コンタクト層を得ることができる。さらにGaPはAlを含まないため酸素の影響が少なく、結果的にGaAs層と同程度の低抵抗率を実現することができる。
【0025】
したがって、コンタクト層としてGaAsの代わりにGaPを用いることにより、p型コンタクト層での光吸収による内部損失によるレーザ動作電流の増大を抑え、且つ、低抵抗の電気的接触を可能として、高出力でしかも動作電流が小さい半導体レーザダイオードを得ることができる。
【0026】
[実施例]
MOVPE法により、n型GaAs基板101上に、n型GaAsバッファ層102と、n型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P下部クラッド層103と、(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5PとGa0.45In0.55Pの多層構造からなる歪量子井戸構造の活性層104と、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P上部クラッド層105と、n型Al0.5In0.5P電流ブロック層107と、p型GaPから成るコンタクト層(キャップ層)106を有する半導体レーザダイオードを作製した。Ga、Al、In原料としてはトリエチルガリウム又はトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムを使用した。P原料としてはフォスフィン(PH3)を使用した。As原料としてはアルシン(AsH3)を使用した。
【0027】
まず、成長炉内にGaAs基板101を配置し、基板温度700℃においてn型の導電性を有し、厚さ0.5μmのGaAsバッファ層102を形成した。さらにn型の導電性を有し厚さ1.0μmの(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P下部クラッド層103、(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5PとGa0.45In0.55Pの多層構造からなる歪量子井戸構造の活性層104、p型の導電性を有し、厚さ1.0μmの(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P上部クラッド層105を順次形成した。
【0028】
次に、基板温度を600℃に設定し、p型GaPコンタクト層106を形成した。p型GaPコンタクト層106のキャリア濃度は(5〜20)×1018cm−3、厚さは0.5μmとした。なお比較のため、p型GaPコンタクト層106の代わりにGaAsコンタクト層を有するレーザダイオード用ウェハも作製した。
【0029】
次に、コンタクト層106まで結晶成長したエピタキシャルウェハを成長炉内より取り出し、酸化シリコンによるパターン形成を行ったのち、リアクティブイオンエッチング(RIE)及びヘキサシアノ鉄(III)カリウムを含むエッチング液によりエッチングを行い、リッジを形成した。リッジ形成済みのエピタキシャルウェハ上に、n型の導電性を有するAlInP電流ブロック層107を形成し、埋め込み成長を行った。
【0030】
このようにして得られたレーザダイオードエピタキシャルウェハからレーザダイオードチップを作製した。チップの幅は400μmとし、共振器長を1000μmとした。レーザ端面は端面破壊を抑制するためにZn拡散処理を行った。このレーザチップに電流を加え閾電流値を測定したところ、GaPコンタクト層(キャップ層)を有するレーザダイオードの閾電流値は50mAであり、GaAsコンタクト層(キャップ層)を有するレーザダイオードの閾電流値の60mAよりも小さくなった。
【0031】
さらにキンクフリー出力を調べたところ、本実施例のGaPコンタクト層(キャップ層)を有するレーザダイオードのキンクフリー出力は120mWであり、比較例のGaAsキャップ層を有するレーザダイオードのキンクフリー出力である90mWよりも、キンクフリー出力を約30%増加させることができた。なお、1000時間通電時における信頼性測定結果については、両者に有意差は見られなかった。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、p型コンタクト層に、発振レーザ光に対し透明材料であるGaPを用いているので、コンタクト層におけるレーザ光の光吸収による損失を無くして内部損失を低減させることができる。またGaPを用いることで、p型コンタクト層に1×1019cm−3を超える濃度のCをドープすることを可能としているので、AlGaAsよりも低抵抗のp型コンタクト層を得ることができる。さらにGaPはAlを含まないため酸素の影響が少なく、結果的にGaAs層と同程度の低抵抗率を実現することができる。
【0033】
したがってコンタクト層としてGaAsの代わりにGaPを用いることにより、コンタクト層におけるレーザ光の光吸収による損失を無くして内部損失を低減させることができ、しかも抵抗率を低くできるので良好な電気的接触を得ることができ、結果として発光出力の大きいレーザダイオードを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体レーザダイオードの構造を示す図である。
【図2】従来の半導体レーザダイオードの構造を示す図である。
【符号の説明】
101 n型GaAs基板
102 n型GaAsバッファ層
103 n型AlGaInP下部クラッド層
104 活性層
105 p型AlGaInP上部クラッド層
106 p型GaPコンタクト層(キャップ層)
107 n型AlInP電流ブロック層
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光出力が大きい可視光半導体レーザダイオードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体レーザダイオード(LD)は光ディスク用光源、レーザプリンタ用光源として広く用いられている。特に書き込み可能なDVD−R、DVD−RW、DVD−RAM用光源として用いられているAlGaInP系のLDは、高出力で動作電流が小さく、しかも信頼性が高いことが求められている。
【0003】
従来、活性層を含む所定の半導体材料層が形成された半導体基板上に積層されたリッジ構造のクラッド層と、クラッド層上に積層されたリッジ構造のキャップ層と、クラッド層の両側に形成された電流ブロック層とで構成される半導体レーザダイオードがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図2に、AlGaInP系半導体材料を用いた従来の半導体レーザダイオード(LD)の一例を示す。図において、201はn型GaAs基板、202は基板201上に形成されたn型AlGaInPからなる第1クラッド層である。203はAlGaInPからなる活性層である。204は、p型AlGaInPからなる第2クラッド層である。すなわち、AlGaInP活性層203のエネルギーギャップが、AlGaInPクラッド層202及び204のエネルギーギャップより小さくなるよう混晶比が設定されており、ダブルヘテロ構造をなしている。206はコンタクト層である。205はGaAsからなる電流ブロック層である。電流ブロック層205は、レーザ発振に必要な電流密度を得るために、いわゆる、電流狭窄を行う目的で設けられる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−244066号公報(図3(i))
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
AlGaInP系LDを高出力化するための大きな課題は、第1に動作電流の低減、第2にレーザ端面での劣化(COD;Catastrophic Optical Damage)の抑制である。動作電流を低減する方法としては、(1)活性層を歪み量子井戸構造として活性層での利得を増やす方法、(2)p型クラッド層のキャリア濃度を高くしてp型クラッド層からの漏れ電流を低減する方法、(3)電流ブロック層をレーザ光に対し透明な材料で形成することにより内部損失を低減する方法、(4)レーザ上部のコンタクト層(キャップ層)をレーザ光に対し透明な材料で形成することにより内部損失を低減する方法、(5)p型クラッド層を厚くすることにより活性層とキャップ層の距離を大きくしコンタクト層での吸収の影響を低減する方法等がある。
【0007】
このうち(4)の方法として、コンタクト層としてAlGaAsを用いる例が報告されている(応用物理学会2001年秋期、14P−B−3)。コンタクト層はできる限り低抵抗でなければならないが、AlGaAsは従来広く用いられてきたGaAs層よりも活性化率が低いため、抵抗を小さくすることが難しいという問題があった。
【0008】
例えば、p型ドーパントとして一般的な亜鉛(Zn)を1×1019cm−3ドープしたZn−GaAsの正孔移動度は約80cm2/V・sであり、抵抗率は7.8×10−3Ω・cmであった。一方、Znを同量ドープしたZn−Al0.5Ga0.5Asの正孔移動度は約30cm2/V・sであり、抵抗率は前記Zn−GaAsの約2.7倍の2.1×10−2Ω・cmであった。
【0009】
このように、AlGaAs層はGaAs層よりもキャリア移動度が小さいため、同じ抵抗率を得るためのキャリア濃度は、GaAsよりもAlGaAsの方が大きくなる。したがってAlGaAsコンタクト層をGaAsコンタクト層と同程度に低抵抗化するためには、GaAsコンタクト層よりも高濃度のドーピングをしなければならず、このときに添加した元素のZnがp型クラッド層側へ拡散し、レーザ素子の特性を劣化させるという問題があった。例えば、活性化しなかったZnの拡散により、pn接合位置が発光層よりもn側にずれ、電流電圧特性に異常をもたらしたり、レーザのしきい値電流を増加させたりする。
【0010】
一方、AlGaAsは適切な成長条件下(例えば基板温度約600℃以下とし、なおかつ、V族原料モル供給量をIII族原料モル供給量の30倍以下)で、MOVPE法により結晶成長を行うことにより、結晶中に大量のCが入りp型の伝導性を示すことが知られているが、酸化し易いAlを含むために同時に結晶中に大量の酸素が混入し、低抵抗の膜を得るのは非常に難しいという問題がある。
【0011】
したがって、コンタクト層として低抵抗のAlGaAs層を得るためには、意図的にZn等を添加する必要があり、これが前述の拡散の原因となっていた。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、コンタクト層での光吸収による内部損失によるレーザ動作電流の増大を抑え、且つ低抵抗の電気的接触を得ることにより、高出力でしかも動作電流が小さい半導体レーザダイオードを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0014】
請求項1の発明に係る半導体レーザダイオードは、n型のGaAs基板と、基板上に形成したn型のAlGaInPからなる第1クラッド層と、該第1クラッド層上に形成した活性層と、該活性層上に形成したp型AlGaInPからなる第2クラッド層と、該第2クラッド層上に形成したp型コンタクト層を備えた端面発光型の半導体レーザダイオードにおいて、上記p型コンタクト層がGaPから成ることを特徴とするものである。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1記載の半導体レーザダイオードにおいて、上記p型コンタクト層のGaPの導電性を規定している主要な元素が炭素(C)であることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の半導体レーザダイオードにおいて、上記第2クラッド層及びp型コンタクト層がリッジ構造を有しており、該リッジ構造の左右に電流ブロック層を具備していることを特徴とする。
【0017】
<作用>
本発明は上記欠点を解消するために成されたものであり、出力が高く、しかも動作電流が小さい半導体レーザダイオードを得ることを目的としている。
【0018】
このため本発明では、n型のGaAs基板と、基板上に形成したn型のAlGaInPクラッド層と、n型AlGaInPクラッド層上に形成した活性層と、活性層上に形成したp型AlGaInPクラッド層と、p型AlGaInPクラッド層上に形成したp型のGaPコンタクト層を、形成することにより目的とする半導体レーザダイオードを達成した。
【0019】
また、上記において、GaP層の伝導性を規定する主要な元素をCとすることにより目的とする半導体レーザダイオードを達成した。
【0020】
GaPは間接遷移型の半導体でエネルギーバンドギャップは約2.28eVであり、DVD用可視光レーザダイオードの発振波長約650nmに対し透明な材料である。またCを1×1019cm−3ドープしたC−GaPの正孔移動度は約40cm2/V・sであり、同量のZnをドープしたZn−Al0.5Ga0.5Asの正孔移動度約30cm2/V・sよりも大きな移動度を持つことから、少なくともAlGaAsよりは低抵抗の膜を得やすい。さらにCはZn等と比較して拡散しにくい性質があることから1×1019cm−3を超える濃度のCをドープすることができ、さらにAlGaAsのようにAlを含まないため酸素の影響は少なく、結果的にGaAs層と同程度の低抵抗率を実現することができる。
【0021】
したがってコンタクト層としてGaAsの代わりにGaPを用いることにより、コンタクト層におけるレーザ光の光吸収による損失を無くして内部損失を低減させることができ、しかも抵抗率を低くできるので良好な電気的接触を得ることができ、結果として発光出力の大きいレーザダイオードを得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0023】
本発明の実施形態に係る半導体レーザダイオードLDを図1に示す。このLDは、n型GaAs基板101上に、n型GaAsバッファ層102、n型AlGaInP下部クラッド層(第1クラッド層)103を順次エピタキシャル成長し、その上にAlGaInPとGaInPの多層構造からなる歪量子井戸構造の活性層104、さらにp型AlGaInP上部クラッド層(第2クラッド層)105、p型GaPコンタクト層(キャップ層)106を順次成長した、ダブルヘテロ構造を有する。またp型AlGaInP上部クラッド層105及びp型GaPコンタクト層はリッジ構造となっており、該リッジ構造の左右にはn型AlInP電流ブロック層107が設けられている。そして、上記p型GaPコンタクト層106は、そのGaP層の導電性を規定する元素として、Cを高濃度にドープした構造となっている。
【0024】
本実施形態の半導体レーザダイオードでは、p型コンタクト層に、発振レーザ光に対し透明材料であるGaPを用い、これにCを高濃度にドープしているので、AlGaAsよりも低抵抗のp型コンタクト層を得ることができる。さらにGaPはAlを含まないため酸素の影響が少なく、結果的にGaAs層と同程度の低抵抗率を実現することができる。
【0025】
したがって、コンタクト層としてGaAsの代わりにGaPを用いることにより、p型コンタクト層での光吸収による内部損失によるレーザ動作電流の増大を抑え、且つ、低抵抗の電気的接触を可能として、高出力でしかも動作電流が小さい半導体レーザダイオードを得ることができる。
【0026】
[実施例]
MOVPE法により、n型GaAs基板101上に、n型GaAsバッファ層102と、n型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P下部クラッド層103と、(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5PとGa0.45In0.55Pの多層構造からなる歪量子井戸構造の活性層104と、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P上部クラッド層105と、n型Al0.5In0.5P電流ブロック層107と、p型GaPから成るコンタクト層(キャップ層)106を有する半導体レーザダイオードを作製した。Ga、Al、In原料としてはトリエチルガリウム又はトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムを使用した。P原料としてはフォスフィン(PH3)を使用した。As原料としてはアルシン(AsH3)を使用した。
【0027】
まず、成長炉内にGaAs基板101を配置し、基板温度700℃においてn型の導電性を有し、厚さ0.5μmのGaAsバッファ層102を形成した。さらにn型の導電性を有し厚さ1.0μmの(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P下部クラッド層103、(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5PとGa0.45In0.55Pの多層構造からなる歪量子井戸構造の活性層104、p型の導電性を有し、厚さ1.0μmの(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P上部クラッド層105を順次形成した。
【0028】
次に、基板温度を600℃に設定し、p型GaPコンタクト層106を形成した。p型GaPコンタクト層106のキャリア濃度は(5〜20)×1018cm−3、厚さは0.5μmとした。なお比較のため、p型GaPコンタクト層106の代わりにGaAsコンタクト層を有するレーザダイオード用ウェハも作製した。
【0029】
次に、コンタクト層106まで結晶成長したエピタキシャルウェハを成長炉内より取り出し、酸化シリコンによるパターン形成を行ったのち、リアクティブイオンエッチング(RIE)及びヘキサシアノ鉄(III)カリウムを含むエッチング液によりエッチングを行い、リッジを形成した。リッジ形成済みのエピタキシャルウェハ上に、n型の導電性を有するAlInP電流ブロック層107を形成し、埋め込み成長を行った。
【0030】
このようにして得られたレーザダイオードエピタキシャルウェハからレーザダイオードチップを作製した。チップの幅は400μmとし、共振器長を1000μmとした。レーザ端面は端面破壊を抑制するためにZn拡散処理を行った。このレーザチップに電流を加え閾電流値を測定したところ、GaPコンタクト層(キャップ層)を有するレーザダイオードの閾電流値は50mAであり、GaAsコンタクト層(キャップ層)を有するレーザダイオードの閾電流値の60mAよりも小さくなった。
【0031】
さらにキンクフリー出力を調べたところ、本実施例のGaPコンタクト層(キャップ層)を有するレーザダイオードのキンクフリー出力は120mWであり、比較例のGaAsキャップ層を有するレーザダイオードのキンクフリー出力である90mWよりも、キンクフリー出力を約30%増加させることができた。なお、1000時間通電時における信頼性測定結果については、両者に有意差は見られなかった。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、p型コンタクト層に、発振レーザ光に対し透明材料であるGaPを用いているので、コンタクト層におけるレーザ光の光吸収による損失を無くして内部損失を低減させることができる。またGaPを用いることで、p型コンタクト層に1×1019cm−3を超える濃度のCをドープすることを可能としているので、AlGaAsよりも低抵抗のp型コンタクト層を得ることができる。さらにGaPはAlを含まないため酸素の影響が少なく、結果的にGaAs層と同程度の低抵抗率を実現することができる。
【0033】
したがってコンタクト層としてGaAsの代わりにGaPを用いることにより、コンタクト層におけるレーザ光の光吸収による損失を無くして内部損失を低減させることができ、しかも抵抗率を低くできるので良好な電気的接触を得ることができ、結果として発光出力の大きいレーザダイオードを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体レーザダイオードの構造を示す図である。
【図2】従来の半導体レーザダイオードの構造を示す図である。
【符号の説明】
101 n型GaAs基板
102 n型GaAsバッファ層
103 n型AlGaInP下部クラッド層
104 活性層
105 p型AlGaInP上部クラッド層
106 p型GaPコンタクト層(キャップ層)
107 n型AlInP電流ブロック層
Claims (3)
- n型のGaAs基板と、基板上に形成したn型のAlGaInPからなる第1クラッド層と、該第1クラッド層上に形成した活性層と、該活性層上に形成したp型AlGaInPからなる第2クラッド層と、該第2クラッド層上に形成したp型コンタクト層を、備えた端面発光型の半導体レーザダイオードにおいて、
上記p型コンタクト層がGaPから成ることを特徴とする半導体レーザダイオード。 - 請求項1記載の半導体レーザダイオードにおいて、
上記p型コンタクト層のGaPの導電性を規定している主要な元素が炭素(C)であることを特徴とする半導体レーザダイオード。 - 請求項1又は2記載の半導体レーザダイオードにおいて、
上記第2クラッド層及びp型コンタクト層がリッジ構造を有しており、該リッジ構造の左右に電流ブロック層を具備していることを特徴とする半導体レーザダイオード。
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