JP2004150524A - 伝動ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】泥水被水時の走行におけるベルトスリップ率を低減し、耐摩耗量、そして耐屈曲性を有する伝動ベルトを提供する。
【解決手段】ベルト長手方向に沿って心線2を埋設した接着ゴム層3と、圧縮ゴム層4を含む弾性体層からなるVベルト21であり、接着ゴム層3と圧縮ゴム層4からなる弾性体層のうち少なくとも圧縮ゴム層4に有機過酸化物で架橋可能なエチレン−α−オレフィンエラストマー配合物を使用し、該エチレン−α−オレフィンエラストマー中のエチレン含量が60〜75質量%であり、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して短繊維の総添加量を10〜40質量部で、上記短繊維としてアラミド繊維を短繊維の総添加量の35〜100質量%含有させ、そしてカーボンブラックを25〜55質量部添加した構成からなっている。
【選択図】 図1
【解決手段】ベルト長手方向に沿って心線2を埋設した接着ゴム層3と、圧縮ゴム層4を含む弾性体層からなるVベルト21であり、接着ゴム層3と圧縮ゴム層4からなる弾性体層のうち少なくとも圧縮ゴム層4に有機過酸化物で架橋可能なエチレン−α−オレフィンエラストマー配合物を使用し、該エチレン−α−オレフィンエラストマー中のエチレン含量が60〜75質量%であり、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して短繊維の総添加量を10〜40質量部で、上記短繊維としてアラミド繊維を短繊維の総添加量の35〜100質量%含有させ、そしてカーボンブラックを25〜55質量部添加した構成からなっている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は伝動ベルトに係り、詳しくは特定のエチレン−α−オレフィンエラストマーを接着ゴム層と圧縮ゴム層からなる弾性体層のうち少なくとも圧縮ゴム層に用いることにより、泥水被水時の走行時におけるベルトスリップ率を低減し、伝達性能を向上させた伝動ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省エネルギー化、コンパクト化の社会的要請を背景に、自動車のエンジンルーム周辺の雰囲気温度は従来に比べて上昇し、これに伴い伝動ベルトの使用環境温度も高くなってきた。従来の伝動ベルトは主として天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴムが使用されてきたが、高温雰囲気下では、硬化した圧縮ゴム層で早期にクラックが生じるという問題が発生した。
【0003】
このようなベルトの早期破損現象に対し、従来からクロロプレンゴムの耐熱性の改善が検討され、ある程度の改良が行なわれてきたが、クロロプレンゴムを使用している限り限界があって現在のところ充分な効果を得るには至っていない。
このため、耐熱性に優れるクロロスルフォン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム等のように主鎖が高度に飽和され、又は完全に飽和されているゴムの使用が検討されている。このうち、一般にクロロスルフォン化ポリエチレンは動的疲労性、耐摩耗性、耐油性においてはクロロプレンゴムと同等であるが、耐水性においては加硫系、特に受酸剤の影響が大きいことが知られている。
通常、クロロスルフォン化ポリエチレンの受酸剤としてはMgO、PbO等の酸化物が使用されていた。
【0004】
しかし、PbO、Pb3 O4 等の鉛化合物の受酸剤を使用すれば、耐水性の良好なベルトが得られるが、公害、衛生上の問題から鉛化合物の使用は好ましくない。又、MgOを受酸剤として使用した場合には、架橋反応中に生成するMgCl2 により耐水性は著しく損なわれ、ベルトへの適応は不適当であった。一方、金属酸化物以外の受酸剤としてエポキシ系の受酸剤を使用すれば、耐水性の良好な組成物を得ることは可能であるが、臭気の問題等が生じて人体に不快感を与える問題があった。
【0005】
また、この伝動ベルトはクロロプレンゴムを用いたベルトに比べると高温雰囲気下でのベルト走行寿命が大きく向上し優れた耐熱性を有しているが、−30℃以下の低温雰囲気下でのベルト走行寿命が劣ることが明らかになった。この理由として、従来のクロロスルフォン化ポリエチレンゴムは、ポリエチレンをクロロスルフォン化したもので、塩素を含有しているため低温下では塩素の凝集エネルギ−が大きくなって低温領域でゴムの硬化が起こってゴム弾性を欠き、割れ易くなるためと推定される。
【0006】
このため、最近では、エチレン−α−オレフィンエラストマーにα−β−不飽和有機酸の金属塩、有機過酸化物あるいは硫黄を配合しして架橋した伝動ベルトが、例えば特開平4−339843号公報、特表平9−500930号公報、特開2000−26674号公報、そして特開2000−283243号公報等に開示されている。更に、特表2001−500910号公報には、エチレン−α−オレフィン−ビニルノルボルネンのエラストマーの配合物を用いた伝動ベルトも示されている。
【0007】
また、上記エチレン−プロピレン系ゴム(EPR)あるいはエチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)等のエチレン−アルファ−オレフィンエラストマーは、優れた耐熱性、耐寒性を有し、比較的に安価で環境に優しいポリマーとしても注目されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−339843号公報
【特許文献2】
特表平9−500930号公報
【特許文献3】
特開2000−26674号公報
【特許文献4】
特開2000−283243号公報
【特許文献5】
特表2001−500910号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴムはエチレン含量が高くなると、シーティングの加工性が低下して圧延時にシートに穴があきやすくなり、更に耐摩耗性等の性能向上を目的として短繊維を添加すると、更にシートに穴があいたり、破れたりしやすくなるという欠点があった。一方、圧延時のシーティング性を向上させるためにエチレン含有量を低くすると、耐摩耗性が低下するという問題点が発生した。
【0010】
更に、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴムを用いた伝動ベルトは摩擦係数が低く、スリップしやすいという問題があった。特に、この種の伝動ベルトを泥水注水しながら走行させた場合には、摩擦係数の減少が顕著に見られた。
【0011】
本発明はこのような問題に対処するものであり、泥水被水時の走行におけるベルトスリップ率を低減し、耐摩耗量、そして耐屈曲性を有する伝動ベルトを提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願の請求項1の発明では、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層を含む弾性体層からなる伝動ベルトにおいて、
接着ゴム層と圧縮ゴム層からなる弾性体層のうち少なくとも圧縮ゴム層に有機過酸化物で架橋可能なエチレン−α−オレフィンエラストマー配合物を使用し、該エチレン−α−オレフィンエラストマー中のエチレン含量が60〜75質量%であり、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して短繊維の総添加量を10〜40質量部で、該短繊維としてアラミド繊維を短繊維の総添加量の35〜100質量%含有させ、そしてカーボンブラックを25〜55質量部添加した伝動ベルトにあり、泥水被水時の走行におけるベルトスリップ率を低減を低減し、また摩耗量を少なくすることができる。
【0013】
本願の請求項2の発明では、圧縮ゴム層にエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して共架橋剤としてN,N’−m−フェニレンジマレイミドを0.2〜10質量部添加した伝動ベルトにあり、モジュラスの高い圧縮ゴム層を得ることができる。
【0014】
本願の請求項3の発明では、圧縮ゴム層にエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して硫黄を0.01〜1質量部添加した伝動ベルトにあり、ゴム層の伸びの低下を制御することができる。
【0015】
本願の請求項4の発明では、伝動ベルトがベルト長手方向にそって心線を埋設した接着ゴムと、ベルトの周方向に延びる複数のリブ部をもつ圧縮ゴム層からなるVリブドベルトである。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1に示すVリブドベルト1は、繊維材料を素材とする高強度で低伸度のコードよりなる心線2を接着ゴム層3中に埋設し、更にその下側に弾性体層である圧縮ゴム層4を具備している。この圧縮ゴム層4にはベルト長手方向にのびる断面略三角形の複数のリブ部7が配置され、またベルト背面にはゴム付帆布5が付着している。無論、ゴム付帆布5をベルト背面に設けず、ゴム層を露出させてもよい。
【0017】
他のベルトとしてカットエッジタイプのVベルト21がある。このベルト21は、図2に示すように心線23を埋設した接着ゴム層24と圧縮ゴム26とから構成され、更に上記接着ゴム層24及び圧縮ゴム層26の各表面層にゴム付帆布22を積層している。
【0018】
前記圧縮ゴム層と接着ゴム層のうち少なくとも圧縮ゴム層に使用されるエチレン−α−オレフィンエラストマーは、エチレンとα−オレフィン(プロピレン、ブテン、ヘキセン、あるいはオクテン)の共重合体、あるいは、エチレンと上記α−オレフィンと非共役ジエンの共重合体であり、具体的にはエチレン−プロピレンゴム(EPM)やエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)からなるゴムをいう。上記ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンが挙げられる。
【0019】
そして、上記エチレン−α−オレフィンエラストマーのエチレン含量は60〜75質量%である。エチレン含量が75質量%を越えると、結晶化度が急激に大きくなって低温特性が低下し、更に短繊維を加えた場合のシーティング等の加工性が悪くなり、シートに穴があきやすく、破れやすくなる。また一方、60質量%未満になると、α−オレフィンであるプロピレンの特性によってエラストマーの凝集がよくなって短繊維を多く添加しても、圧延時においてシートに穴があきにくく加工しやすくなるが、機械的強度が低下してベルトの耐摩耗性が悪くなる。
【0020】
エチレン−α−オレフィンエラストマー中のジエン含量は、0.1〜3.5質量%、好ましくは0.1〜3.0質量%であり、0.1質量%未満では、ベルト走行によりゴムが軟化して劣化し、発音しやすくなる。一方、3.5質量%を超えると、ジエン成分がポリマー主鎖であるエチレン−プロピレン鎖の屈曲の妨げに大きく関与し、ベルト屈曲走行時に圧縮ゴム層に亀裂が発生しやすくなる。
【0021】
また、本発明ではエチレン−α−オレフィンエラストマーとしてジエン含量の違うものをブレンドしてもよく、ブレンドするポリマーの数は問わないが、総ジエン含量は前記の範囲を満足する必要がある。また、ブレンドはジエン成分を含有するエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーとジエン成分を含有しないエチレン−プロピレンコポリマー等で行ってもよい。
【0022】
エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーでは、硫黄加硫させるための架橋サイトとして二重結合を有するジエン成分を分子内に導入しているが、ジエン含量が少ないと架橋密度が小さくなるため、市販品ではジエン含量が3.5質量%を超えるものが多い。パーオキサイド加硫させる場合でも、ジエン含量が少なくなると、架橋密度が低下し、粘着摩耗しやすくなる。
【0023】
パーオキサイドの共架橋剤としては、N,N’−m−フェニレンジマレイミドを添加することができる。N,N’−m−フェニレンジマレイミドの添加量はエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して0.2〜10質量部であり、0.2質量部未満の場合には、架橋密度が小さくなり耐摩耗性、耐粘着摩耗性の改善効果が小さく、一方10質量部を越えると加硫ゴムの伸びの低下が著しく、耐屈曲性に問題が生じる。
【0024】
更に、硫黄をエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して0.01〜1質量部添加することにより、加硫ゴムの伸びの低下を制御することができる。1質量部を越えると、物性が低下し、ベルト走行時の摩耗性が大きく、粘着摩耗性が発生する。
【0025】
上記有機過酸化物としては、通常、ゴム、樹脂の架橋に使用されているジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2・5−ジメチル−2・5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン−3,1・3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、1・1−ジ−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等があり、熱分解による1分間の半減期が150〜250℃のものが好ましい。その添加量はエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して約1〜8質量部であり、好ましくは1.5〜4質量部である。
【0026】
また、圧縮ゴム層には、ナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、綿、アラミドからなる短繊維を混入して圧縮ゴム層の耐側圧性を向上させるとともに、プーリと接する面になる圧縮ゴム層の表面をグラインダーによって研磨加工して該短繊維を露出させる。圧縮ゴム層の表面の摩擦係数は低下して、ベルト走行時の騒音を軽減する効果がある。これらの短繊維のうち、剛直で強度を有し、しかも耐磨耗性を有するアラミド繊維が最も効果がある。
このアラミド繊維は分子構造中に芳香環をもつアラミド、例えば商品名コーネックス、ノーネックス、ケブラー、テクノーラ、トワロン等である。
【0027】
上記短繊維が前述の効果を充分に発揮するためには、その短繊維の総添加量は10〜40質量部であり、長さは1〜20mmが好ましい。そのうち短繊維としてアラミド繊維を短繊維の総添加量の35〜100質量%含有させる必要がある。アラミド繊維の添加量が35質量%未満になると、アラミド繊維が圧縮ゴム層の表面から突出していることから、ベルト表面の磨耗が起こりにくく泥水被水時でのベルトのスリップ率が低下し、伝達性能を維持することができる。
短繊維の総添加量が10質量部未満になると、配合として十分な補強性が得られずベルトにしたときの耐摩耗性が十分でないという不具合が生じる。一方40質量部を超えると、ゴムへの混練が困難になり、繊維の分散も悪くなる。
【0028】
圧縮ゴム層には、カーボンブラックをエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して25〜55質量部添加する。該カーボンブラックとしては、例えばFEF、HAF、MAF、EPC、ISAFなどがあるが、この種に特定されるものではない。カーボンブラックの添加量が25質量部未満の場合には、カーボンブラックの量が不足して主ゴムのモジュラスが低下し、走行時にベルト表面が磨耗しやすくなって泥水被水時でのベルトの伝達性能が悪くなる。他方、55質量部を越えると、カーボンブラックの量が多くなって主ゴムのモジュラスが上昇し、短繊維とゴムとの相対的な剛性差が小さなって短繊維が早期に磨耗してベルト表面が平滑になり、この結果ベルトの伝達性能が悪くなる。
【0029】
更に、圧縮ゴム層には、必要に応じてシリカ、クレー、炭酸カルシウムなどの充填剤、軟化剤、加工助剤、老化防止剤、TAICなどの共架橋剤などの各種薬剤を添加してもよい。前記各成分を混合する方法としては特に制限はなく、例えばバンバリーミキサー、ニーダー等を用い、適宜公知の手段、方法によって混練することができる。
【0030】
また、エチレン−α−オレフィンエラストマーとともにニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロスルフォン化ポリエチレン、クロロプレン、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム、CSM、ACSM、SBRをブレンドすることもできる。
【0031】
接着ゴム層は、圧縮ゴム層と同じゴム組成物を使用することができるが、短繊維などを除いた配合でもよい。また、加硫系としては有機過酸化物ではなく硫黄を使用することもできる。
【0032】
心線にはポリエチレンテレフタレート繊維、エチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維、ポリアミド繊維からなるコードが使用され、ゴム組成物との接着性を改善する目的で接着処理が施される。このような接着処理としては繊維をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL液)に浸漬後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成するのが一般的である。しかし、これに限ることなくエポキシ又はイソシアネート化合物で前処理を行なった後に、RFL液で処理する方法等もある。
【0033】
本発明で使用するエチレン−2,6−ナフタレートは、通常ナフタレン−2,6−ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を触媒の存在下に適当な条件のもとにエチレングリコールと縮重合させることによって合成させる。このとき、エチレン−2,6−ナフタレートの重合完結前に適当な1種または2種以上の第3成分を添加すれば、共重合体ポリエステルが合成される。
【0034】
上記心線の接着処理は、まず(1)未処理コードをエポキシ化合物やイソシアネート化合物から選ばれた処理液を入れたタンクに含浸してプレディップした後、(2)160〜200℃に温度設定した乾燥炉に30〜600秒間通して乾燥し、(3)続いてRFL液からなる接着液を入れたタンクに浸漬し、(4)210〜260ーCに温度設定した延伸熱固定処理機に30〜600秒間通して−1〜3%延伸して延伸処理コードとする。
【0035】
RFL液はレゾルシンとホルマリンとの初期縮合体をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリル、NBR等である。
【0036】
上記カバー帆布は綿、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、アラミド繊維からなる糸を用いて、平織、綾織、朱子織等に製織した布である。無論、カバー帆布を使用しない場合もある。
【0037】
上記Vリブドベルトの製造方法の一例は以下の通りである。まず、円筒状の成形ドラムの周面に1〜複数枚のカバー帆布と接着ゴム層とを巻き付けた後、この上にコードからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮ゴム層を順次巻き付けて積層体を得た後、加硫してスリーブを得る。
【0038】
次に、スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架され所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の加硫スリーブに当接するように移動してスリーブの圧縮ゴム層表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研削する。
このようにして得られたスリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定に幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
実施例1〜4、比較例1〜3
本実施例で製造したVリブドベルトでは、ポリエステル繊維コードからなる心線を接着ゴム層内に埋設し、その上側にゴム付綿帆布を2プライ積層し、他方接着ゴム層の下側に設けた圧縮ゴム層に3個のリブをベルト長手方向に配したものである。
【0040】
ここで圧縮ゴム層を表1に示すゴム組成物から調製し、バンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延したものを用いた。圧縮ゴム層には短繊維が含まれベルト幅方向に配向している。接着ゴム層は表1に示すゴム組成物から短繊維を除去したゴム配合になる。
【0041】
【表1】
【0042】
ベルトの製造方法は従来の方法であり、まずフラットな円筒モールドに2プライのゴム付綿帆布を巻いた後、接着ゴム層を巻き付けて、心線をスピニングし、圧縮ゴム層を設置した後、圧縮ゴム層の上に加硫用ジャケットを挿入する。次いで、成形モールドを加硫缶内に入れ、加硫した後、筒状の加硫スリーブをモールドから取り出し、該スリーブの圧縮ゴム層をグラインダーによってリブに成形し、成形体から個々のベルトに切断する工程からなっている。
【0043】
このようにして得られたVリブドベルトは3PK1,000であり、このベルトの泥水注水時の走行試験を行った。泥水注水時の走行試験では、Vリブドベルトを駆動プーリ(直径120mm)と従動プーリ(直径120mm)に巻き付け、ベルト背面をテンションプーリ(直径70mm)に当接させてベルト張力を60kgfに調節し、上記駆動プーリを泥水(赤土と水の比が1:1)を入れた容器に漬けた。そして、該ベルトを駆動プーリ回転数3,600rpmで4時間回転させた。
【0044】
その後、該ベルトの注水走行試験を行って、2%スリップ率における従動側のトルクを求めた。その結果を表2に示す。この注水走行試験では、上記Vリブドベルトを駆動プーリ(直径80mm)と従動プーリ(直径110mm)に巻き付けてベルト初張力を5kgf/リブに調節し、雰囲気温度23℃、駆動プーリの回転数200rpmで走行させ、更に無水そして注水(注水量60cc/分)条件下で走行させ、2%スリップ率におけるトルクを測定した。
【0045】
更に、得られた各ゴム配合物を厚さ1mm厚に圧延し、2枚重ねて厚さ2mmにした後、165℃で30分プレスにより加硫し、加硫ゴムシートの物性を測定した。これらの結果も表2に併記する。
【0046】
【表2】
【0047】
表2の走行試験の結果から明らかなように、実施例1〜4は、カーボンブラック量を出来る限り少なくして短繊維の量を多くした配合、即ち主ゴムのモジュラスを下げてアラミド短繊維を多く配合することで、短繊維とゴムとの相対的な剛性差が大きくなりベルト表面の早期磨耗が阻止され、その結果短繊維が残存した状態で磨耗が進行するため、泥水被水時でもベルトの伝達性能は維持できる。
【0048】
一方、比較例1では、カーボンブラックの量が不足しており、走行時にベルト表面が磨耗して泥水被水時でのベルトの伝達性能は悪くなっている。比較例2では、逆にカーボンブラックの量が多いために、短繊維とゴムとの相対的な剛性差が小さくなり、短繊維も早期に磨耗してベルト表面が平滑になり、ベルトの伝達性能は悪くなっている。比較例3では、比較例1と2に比べて改善されているが、やはりアラミド短繊維が存在しないために、ベルト表面が平滑になり、ベルトの伝達性能は悪くなっている。
【0049】
【発明の効果】
以上のように本願の請求項の発明では、カーボンブラック量を出来る限り少なくして主ゴムのモジュラスを下げ、短繊維を多く配合することで、短繊維とゴムとの相対的な剛性差を大きくすることでベルト表面の早期磨耗を阻止し、その結果短繊維が残存した状態で磨耗が進行するため、泥水被水時でもベルトの伝達性能が良好になり、また摩耗量を少なくすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るVリブドベルトの縦断面図である。
【図2】本発明に係るVカットエッジタイプのVベルトの縦断面図である。
【符号の説明】
1 Vリブドベルト
2,23 心線
3,24 接着ゴム層
4,26 圧縮ゴム層
5,22 ゴム付帆布
7 リブ部
21 Vベルト
【発明の属する技術分野】
本発明は伝動ベルトに係り、詳しくは特定のエチレン−α−オレフィンエラストマーを接着ゴム層と圧縮ゴム層からなる弾性体層のうち少なくとも圧縮ゴム層に用いることにより、泥水被水時の走行時におけるベルトスリップ率を低減し、伝達性能を向上させた伝動ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省エネルギー化、コンパクト化の社会的要請を背景に、自動車のエンジンルーム周辺の雰囲気温度は従来に比べて上昇し、これに伴い伝動ベルトの使用環境温度も高くなってきた。従来の伝動ベルトは主として天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴムが使用されてきたが、高温雰囲気下では、硬化した圧縮ゴム層で早期にクラックが生じるという問題が発生した。
【0003】
このようなベルトの早期破損現象に対し、従来からクロロプレンゴムの耐熱性の改善が検討され、ある程度の改良が行なわれてきたが、クロロプレンゴムを使用している限り限界があって現在のところ充分な効果を得るには至っていない。
このため、耐熱性に優れるクロロスルフォン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム等のように主鎖が高度に飽和され、又は完全に飽和されているゴムの使用が検討されている。このうち、一般にクロロスルフォン化ポリエチレンは動的疲労性、耐摩耗性、耐油性においてはクロロプレンゴムと同等であるが、耐水性においては加硫系、特に受酸剤の影響が大きいことが知られている。
通常、クロロスルフォン化ポリエチレンの受酸剤としてはMgO、PbO等の酸化物が使用されていた。
【0004】
しかし、PbO、Pb3 O4 等の鉛化合物の受酸剤を使用すれば、耐水性の良好なベルトが得られるが、公害、衛生上の問題から鉛化合物の使用は好ましくない。又、MgOを受酸剤として使用した場合には、架橋反応中に生成するMgCl2 により耐水性は著しく損なわれ、ベルトへの適応は不適当であった。一方、金属酸化物以外の受酸剤としてエポキシ系の受酸剤を使用すれば、耐水性の良好な組成物を得ることは可能であるが、臭気の問題等が生じて人体に不快感を与える問題があった。
【0005】
また、この伝動ベルトはクロロプレンゴムを用いたベルトに比べると高温雰囲気下でのベルト走行寿命が大きく向上し優れた耐熱性を有しているが、−30℃以下の低温雰囲気下でのベルト走行寿命が劣ることが明らかになった。この理由として、従来のクロロスルフォン化ポリエチレンゴムは、ポリエチレンをクロロスルフォン化したもので、塩素を含有しているため低温下では塩素の凝集エネルギ−が大きくなって低温領域でゴムの硬化が起こってゴム弾性を欠き、割れ易くなるためと推定される。
【0006】
このため、最近では、エチレン−α−オレフィンエラストマーにα−β−不飽和有機酸の金属塩、有機過酸化物あるいは硫黄を配合しして架橋した伝動ベルトが、例えば特開平4−339843号公報、特表平9−500930号公報、特開2000−26674号公報、そして特開2000−283243号公報等に開示されている。更に、特表2001−500910号公報には、エチレン−α−オレフィン−ビニルノルボルネンのエラストマーの配合物を用いた伝動ベルトも示されている。
【0007】
また、上記エチレン−プロピレン系ゴム(EPR)あるいはエチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)等のエチレン−アルファ−オレフィンエラストマーは、優れた耐熱性、耐寒性を有し、比較的に安価で環境に優しいポリマーとしても注目されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−339843号公報
【特許文献2】
特表平9−500930号公報
【特許文献3】
特開2000−26674号公報
【特許文献4】
特開2000−283243号公報
【特許文献5】
特表2001−500910号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴムはエチレン含量が高くなると、シーティングの加工性が低下して圧延時にシートに穴があきやすくなり、更に耐摩耗性等の性能向上を目的として短繊維を添加すると、更にシートに穴があいたり、破れたりしやすくなるという欠点があった。一方、圧延時のシーティング性を向上させるためにエチレン含有量を低くすると、耐摩耗性が低下するという問題点が発生した。
【0010】
更に、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴムを用いた伝動ベルトは摩擦係数が低く、スリップしやすいという問題があった。特に、この種の伝動ベルトを泥水注水しながら走行させた場合には、摩擦係数の減少が顕著に見られた。
【0011】
本発明はこのような問題に対処するものであり、泥水被水時の走行におけるベルトスリップ率を低減し、耐摩耗量、そして耐屈曲性を有する伝動ベルトを提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願の請求項1の発明では、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層を含む弾性体層からなる伝動ベルトにおいて、
接着ゴム層と圧縮ゴム層からなる弾性体層のうち少なくとも圧縮ゴム層に有機過酸化物で架橋可能なエチレン−α−オレフィンエラストマー配合物を使用し、該エチレン−α−オレフィンエラストマー中のエチレン含量が60〜75質量%であり、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して短繊維の総添加量を10〜40質量部で、該短繊維としてアラミド繊維を短繊維の総添加量の35〜100質量%含有させ、そしてカーボンブラックを25〜55質量部添加した伝動ベルトにあり、泥水被水時の走行におけるベルトスリップ率を低減を低減し、また摩耗量を少なくすることができる。
【0013】
本願の請求項2の発明では、圧縮ゴム層にエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して共架橋剤としてN,N’−m−フェニレンジマレイミドを0.2〜10質量部添加した伝動ベルトにあり、モジュラスの高い圧縮ゴム層を得ることができる。
【0014】
本願の請求項3の発明では、圧縮ゴム層にエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して硫黄を0.01〜1質量部添加した伝動ベルトにあり、ゴム層の伸びの低下を制御することができる。
【0015】
本願の請求項4の発明では、伝動ベルトがベルト長手方向にそって心線を埋設した接着ゴムと、ベルトの周方向に延びる複数のリブ部をもつ圧縮ゴム層からなるVリブドベルトである。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1に示すVリブドベルト1は、繊維材料を素材とする高強度で低伸度のコードよりなる心線2を接着ゴム層3中に埋設し、更にその下側に弾性体層である圧縮ゴム層4を具備している。この圧縮ゴム層4にはベルト長手方向にのびる断面略三角形の複数のリブ部7が配置され、またベルト背面にはゴム付帆布5が付着している。無論、ゴム付帆布5をベルト背面に設けず、ゴム層を露出させてもよい。
【0017】
他のベルトとしてカットエッジタイプのVベルト21がある。このベルト21は、図2に示すように心線23を埋設した接着ゴム層24と圧縮ゴム26とから構成され、更に上記接着ゴム層24及び圧縮ゴム層26の各表面層にゴム付帆布22を積層している。
【0018】
前記圧縮ゴム層と接着ゴム層のうち少なくとも圧縮ゴム層に使用されるエチレン−α−オレフィンエラストマーは、エチレンとα−オレフィン(プロピレン、ブテン、ヘキセン、あるいはオクテン)の共重合体、あるいは、エチレンと上記α−オレフィンと非共役ジエンの共重合体であり、具体的にはエチレン−プロピレンゴム(EPM)やエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)からなるゴムをいう。上記ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンが挙げられる。
【0019】
そして、上記エチレン−α−オレフィンエラストマーのエチレン含量は60〜75質量%である。エチレン含量が75質量%を越えると、結晶化度が急激に大きくなって低温特性が低下し、更に短繊維を加えた場合のシーティング等の加工性が悪くなり、シートに穴があきやすく、破れやすくなる。また一方、60質量%未満になると、α−オレフィンであるプロピレンの特性によってエラストマーの凝集がよくなって短繊維を多く添加しても、圧延時においてシートに穴があきにくく加工しやすくなるが、機械的強度が低下してベルトの耐摩耗性が悪くなる。
【0020】
エチレン−α−オレフィンエラストマー中のジエン含量は、0.1〜3.5質量%、好ましくは0.1〜3.0質量%であり、0.1質量%未満では、ベルト走行によりゴムが軟化して劣化し、発音しやすくなる。一方、3.5質量%を超えると、ジエン成分がポリマー主鎖であるエチレン−プロピレン鎖の屈曲の妨げに大きく関与し、ベルト屈曲走行時に圧縮ゴム層に亀裂が発生しやすくなる。
【0021】
また、本発明ではエチレン−α−オレフィンエラストマーとしてジエン含量の違うものをブレンドしてもよく、ブレンドするポリマーの数は問わないが、総ジエン含量は前記の範囲を満足する必要がある。また、ブレンドはジエン成分を含有するエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーとジエン成分を含有しないエチレン−プロピレンコポリマー等で行ってもよい。
【0022】
エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーでは、硫黄加硫させるための架橋サイトとして二重結合を有するジエン成分を分子内に導入しているが、ジエン含量が少ないと架橋密度が小さくなるため、市販品ではジエン含量が3.5質量%を超えるものが多い。パーオキサイド加硫させる場合でも、ジエン含量が少なくなると、架橋密度が低下し、粘着摩耗しやすくなる。
【0023】
パーオキサイドの共架橋剤としては、N,N’−m−フェニレンジマレイミドを添加することができる。N,N’−m−フェニレンジマレイミドの添加量はエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して0.2〜10質量部であり、0.2質量部未満の場合には、架橋密度が小さくなり耐摩耗性、耐粘着摩耗性の改善効果が小さく、一方10質量部を越えると加硫ゴムの伸びの低下が著しく、耐屈曲性に問題が生じる。
【0024】
更に、硫黄をエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して0.01〜1質量部添加することにより、加硫ゴムの伸びの低下を制御することができる。1質量部を越えると、物性が低下し、ベルト走行時の摩耗性が大きく、粘着摩耗性が発生する。
【0025】
上記有機過酸化物としては、通常、ゴム、樹脂の架橋に使用されているジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2・5−ジメチル−2・5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン−3,1・3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、1・1−ジ−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等があり、熱分解による1分間の半減期が150〜250℃のものが好ましい。その添加量はエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して約1〜8質量部であり、好ましくは1.5〜4質量部である。
【0026】
また、圧縮ゴム層には、ナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、綿、アラミドからなる短繊維を混入して圧縮ゴム層の耐側圧性を向上させるとともに、プーリと接する面になる圧縮ゴム層の表面をグラインダーによって研磨加工して該短繊維を露出させる。圧縮ゴム層の表面の摩擦係数は低下して、ベルト走行時の騒音を軽減する効果がある。これらの短繊維のうち、剛直で強度を有し、しかも耐磨耗性を有するアラミド繊維が最も効果がある。
このアラミド繊維は分子構造中に芳香環をもつアラミド、例えば商品名コーネックス、ノーネックス、ケブラー、テクノーラ、トワロン等である。
【0027】
上記短繊維が前述の効果を充分に発揮するためには、その短繊維の総添加量は10〜40質量部であり、長さは1〜20mmが好ましい。そのうち短繊維としてアラミド繊維を短繊維の総添加量の35〜100質量%含有させる必要がある。アラミド繊維の添加量が35質量%未満になると、アラミド繊維が圧縮ゴム層の表面から突出していることから、ベルト表面の磨耗が起こりにくく泥水被水時でのベルトのスリップ率が低下し、伝達性能を維持することができる。
短繊維の総添加量が10質量部未満になると、配合として十分な補強性が得られずベルトにしたときの耐摩耗性が十分でないという不具合が生じる。一方40質量部を超えると、ゴムへの混練が困難になり、繊維の分散も悪くなる。
【0028】
圧縮ゴム層には、カーボンブラックをエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して25〜55質量部添加する。該カーボンブラックとしては、例えばFEF、HAF、MAF、EPC、ISAFなどがあるが、この種に特定されるものではない。カーボンブラックの添加量が25質量部未満の場合には、カーボンブラックの量が不足して主ゴムのモジュラスが低下し、走行時にベルト表面が磨耗しやすくなって泥水被水時でのベルトの伝達性能が悪くなる。他方、55質量部を越えると、カーボンブラックの量が多くなって主ゴムのモジュラスが上昇し、短繊維とゴムとの相対的な剛性差が小さなって短繊維が早期に磨耗してベルト表面が平滑になり、この結果ベルトの伝達性能が悪くなる。
【0029】
更に、圧縮ゴム層には、必要に応じてシリカ、クレー、炭酸カルシウムなどの充填剤、軟化剤、加工助剤、老化防止剤、TAICなどの共架橋剤などの各種薬剤を添加してもよい。前記各成分を混合する方法としては特に制限はなく、例えばバンバリーミキサー、ニーダー等を用い、適宜公知の手段、方法によって混練することができる。
【0030】
また、エチレン−α−オレフィンエラストマーとともにニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロスルフォン化ポリエチレン、クロロプレン、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム、CSM、ACSM、SBRをブレンドすることもできる。
【0031】
接着ゴム層は、圧縮ゴム層と同じゴム組成物を使用することができるが、短繊維などを除いた配合でもよい。また、加硫系としては有機過酸化物ではなく硫黄を使用することもできる。
【0032】
心線にはポリエチレンテレフタレート繊維、エチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維、ポリアミド繊維からなるコードが使用され、ゴム組成物との接着性を改善する目的で接着処理が施される。このような接着処理としては繊維をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL液)に浸漬後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成するのが一般的である。しかし、これに限ることなくエポキシ又はイソシアネート化合物で前処理を行なった後に、RFL液で処理する方法等もある。
【0033】
本発明で使用するエチレン−2,6−ナフタレートは、通常ナフタレン−2,6−ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を触媒の存在下に適当な条件のもとにエチレングリコールと縮重合させることによって合成させる。このとき、エチレン−2,6−ナフタレートの重合完結前に適当な1種または2種以上の第3成分を添加すれば、共重合体ポリエステルが合成される。
【0034】
上記心線の接着処理は、まず(1)未処理コードをエポキシ化合物やイソシアネート化合物から選ばれた処理液を入れたタンクに含浸してプレディップした後、(2)160〜200℃に温度設定した乾燥炉に30〜600秒間通して乾燥し、(3)続いてRFL液からなる接着液を入れたタンクに浸漬し、(4)210〜260ーCに温度設定した延伸熱固定処理機に30〜600秒間通して−1〜3%延伸して延伸処理コードとする。
【0035】
RFL液はレゾルシンとホルマリンとの初期縮合体をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリル、NBR等である。
【0036】
上記カバー帆布は綿、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、アラミド繊維からなる糸を用いて、平織、綾織、朱子織等に製織した布である。無論、カバー帆布を使用しない場合もある。
【0037】
上記Vリブドベルトの製造方法の一例は以下の通りである。まず、円筒状の成形ドラムの周面に1〜複数枚のカバー帆布と接着ゴム層とを巻き付けた後、この上にコードからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮ゴム層を順次巻き付けて積層体を得た後、加硫してスリーブを得る。
【0038】
次に、スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架され所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の加硫スリーブに当接するように移動してスリーブの圧縮ゴム層表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研削する。
このようにして得られたスリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定に幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
実施例1〜4、比較例1〜3
本実施例で製造したVリブドベルトでは、ポリエステル繊維コードからなる心線を接着ゴム層内に埋設し、その上側にゴム付綿帆布を2プライ積層し、他方接着ゴム層の下側に設けた圧縮ゴム層に3個のリブをベルト長手方向に配したものである。
【0040】
ここで圧縮ゴム層を表1に示すゴム組成物から調製し、バンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延したものを用いた。圧縮ゴム層には短繊維が含まれベルト幅方向に配向している。接着ゴム層は表1に示すゴム組成物から短繊維を除去したゴム配合になる。
【0041】
【表1】
【0042】
ベルトの製造方法は従来の方法であり、まずフラットな円筒モールドに2プライのゴム付綿帆布を巻いた後、接着ゴム層を巻き付けて、心線をスピニングし、圧縮ゴム層を設置した後、圧縮ゴム層の上に加硫用ジャケットを挿入する。次いで、成形モールドを加硫缶内に入れ、加硫した後、筒状の加硫スリーブをモールドから取り出し、該スリーブの圧縮ゴム層をグラインダーによってリブに成形し、成形体から個々のベルトに切断する工程からなっている。
【0043】
このようにして得られたVリブドベルトは3PK1,000であり、このベルトの泥水注水時の走行試験を行った。泥水注水時の走行試験では、Vリブドベルトを駆動プーリ(直径120mm)と従動プーリ(直径120mm)に巻き付け、ベルト背面をテンションプーリ(直径70mm)に当接させてベルト張力を60kgfに調節し、上記駆動プーリを泥水(赤土と水の比が1:1)を入れた容器に漬けた。そして、該ベルトを駆動プーリ回転数3,600rpmで4時間回転させた。
【0044】
その後、該ベルトの注水走行試験を行って、2%スリップ率における従動側のトルクを求めた。その結果を表2に示す。この注水走行試験では、上記Vリブドベルトを駆動プーリ(直径80mm)と従動プーリ(直径110mm)に巻き付けてベルト初張力を5kgf/リブに調節し、雰囲気温度23℃、駆動プーリの回転数200rpmで走行させ、更に無水そして注水(注水量60cc/分)条件下で走行させ、2%スリップ率におけるトルクを測定した。
【0045】
更に、得られた各ゴム配合物を厚さ1mm厚に圧延し、2枚重ねて厚さ2mmにした後、165℃で30分プレスにより加硫し、加硫ゴムシートの物性を測定した。これらの結果も表2に併記する。
【0046】
【表2】
【0047】
表2の走行試験の結果から明らかなように、実施例1〜4は、カーボンブラック量を出来る限り少なくして短繊維の量を多くした配合、即ち主ゴムのモジュラスを下げてアラミド短繊維を多く配合することで、短繊維とゴムとの相対的な剛性差が大きくなりベルト表面の早期磨耗が阻止され、その結果短繊維が残存した状態で磨耗が進行するため、泥水被水時でもベルトの伝達性能は維持できる。
【0048】
一方、比較例1では、カーボンブラックの量が不足しており、走行時にベルト表面が磨耗して泥水被水時でのベルトの伝達性能は悪くなっている。比較例2では、逆にカーボンブラックの量が多いために、短繊維とゴムとの相対的な剛性差が小さくなり、短繊維も早期に磨耗してベルト表面が平滑になり、ベルトの伝達性能は悪くなっている。比較例3では、比較例1と2に比べて改善されているが、やはりアラミド短繊維が存在しないために、ベルト表面が平滑になり、ベルトの伝達性能は悪くなっている。
【0049】
【発明の効果】
以上のように本願の請求項の発明では、カーボンブラック量を出来る限り少なくして主ゴムのモジュラスを下げ、短繊維を多く配合することで、短繊維とゴムとの相対的な剛性差を大きくすることでベルト表面の早期磨耗を阻止し、その結果短繊維が残存した状態で磨耗が進行するため、泥水被水時でもベルトの伝達性能が良好になり、また摩耗量を少なくすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るVリブドベルトの縦断面図である。
【図2】本発明に係るVカットエッジタイプのVベルトの縦断面図である。
【符号の説明】
1 Vリブドベルト
2,23 心線
3,24 接着ゴム層
4,26 圧縮ゴム層
5,22 ゴム付帆布
7 リブ部
21 Vベルト
Claims (4)
- ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層を含む弾性体層からなる伝動ベルトにおいて、
接着ゴム層と圧縮ゴム層からなる弾性体層のうち少なくとも圧縮ゴム層に有機過酸化物で架橋可能なエチレン−α−オレフィンエラストマー配合物を使用し、該エチレン−α−オレフィンエラストマー中のエチレン含量が60〜75質量%であり、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して短繊維の総添加量を10〜40質量部で、該短繊維としてアラミド繊維を短繊維の総添加量の35〜100質量%含有させ、そしてカーボンブラックを25〜55質量部添加したことを特徴とする伝動ベルト。 - 圧縮ゴム層にエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して共架橋剤としてN,N’−m−フェニレンジマレイミドを0.2〜10質量部添加した請求項1記載の伝動ベルト。
- 圧縮ゴム層にエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して硫黄を0.01〜1質量部添加した請求項1記載の伝動ベルト。
- 伝動ベルトがベルト長手方向にそって心線を埋設した接着ゴムと、ベルトの周方向に延びる複数のリブ部をもつ圧縮ゴム層からなるVリブドベルトである請求項1または2記載の伝動ベルト。
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