JP2004145033A - スクリーン印刷版下材露光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】精度の高い印刷を可能にする高性能のスクリーン印刷版下材露光装置を提供する。
【解決手段】レジストが塗られた紗S1と紗S1を張った枠体S2とからなるスクリーン印刷版下材SをマスクMを介して露光する装置である。紗S1が密着した状態でベース盤1がスクリーン印刷版下材Sを受け、マスクMを重ね合わせた状態で透光性のカバー4でベース盤1を気密に覆い、ベース盤1とカバー4との隙間の空間を排気系5により排気しながら、カバー4を通してレジストに光を照射する。ベース盤1は、枠体S2が溝10を有し、この溝10のスクリーン印刷版下材Sの中心に近い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材Sの厚さと実質的に同じであり、遠い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材Sの厚さとマスクMの厚さの和と実質的に同じである。
【選択図】 図4
【解決手段】レジストが塗られた紗S1と紗S1を張った枠体S2とからなるスクリーン印刷版下材SをマスクMを介して露光する装置である。紗S1が密着した状態でベース盤1がスクリーン印刷版下材Sを受け、マスクMを重ね合わせた状態で透光性のカバー4でベース盤1を気密に覆い、ベース盤1とカバー4との隙間の空間を排気系5により排気しながら、カバー4を通してレジストに光を照射する。ベース盤1は、枠体S2が溝10を有し、この溝10のスクリーン印刷版下材Sの中心に近い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材Sの厚さと実質的に同じであり、遠い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材Sの厚さとマスクMの厚さの和と実質的に同じである。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願の発明は、スクリーン印刷の技術に関するものであり、特に、スクリーン印刷に用いられる版下を製作する際に使用される露光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スクリーン印刷は、孔版印刷の一種であり、紗と呼ばれるスクリーンに設けた細かい孔を通してインクを供給することで印刷する手法である。スクリーン印刷は、対象物の材質を選ばないこと、曲面上の印刷も可能なこと、肉盛りと呼ばれる肉厚な印刷も可能なことなどから、デジタル印刷が盛んになってきた現在でも、広く用いられている。
スクリーン印刷における版下(スクリーン印刷版下)は、枠に張られた紗にレジストを塗布し、印刷するパターンでレジストを露光した後、現像することで製作される。尚、この種の技術分野に属する本件と同一出願人に係る公開公報として、特開平9−269598号がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
スクリーン印刷は、微細な印刷が可能なため、エレクトロニクス関連の製品や部品の製造にも利用されている。例えば、プリント基盤の配線パターンの印刷には、従来からスクリーン印刷が利用されている。また最近では、プラズマディスプレイパネル(PDP)の製造においても、ガラス面への電極パターンの形成等の際にスクリーン印刷の技術が利用されている。
このような分野では、印刷の精度をさらに高くすることが要求されている。例えば、プリント基盤製造の際のスクリーン印刷では、プリント基盤が組み込まれる電子製品の小型化や高機能化に伴い、印刷する線幅が非常に小さくなっており、寸法精度も非常に厳しくなってきている。例えば、携帯電話等に組み込まれるプリント基盤の場合、現状、線幅(ないしは配線の間隔)は100μm程度となっているが、将来的には50μm程度にすることが要請されている。
本願の発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、精度の高い印刷を可能にする高性能のスクリーン印刷版下材露光装置を提供する技術的意義がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、レジストが塗られた紗と紗を張った枠体とからなるスクリーン印刷版下材をマスクを介して露光するスクリーン印刷版下材露光装置であって、
紗が密着した状態でスクリーン印刷版下材を受けるベース盤と、
ベース盤に受けられたスクリーン印刷版下材にマスクが重ね合わされた状態でベース盤を気密に覆う透光性のカバーと、
カバーを通してレジストに光を照射する光源と、
カバーがベース盤を覆った際、ベース盤とカバーとの隙間の空間を排気することでマスク及び紗をベース盤に押圧する排気系とを備えており、
さらに、
ベース盤は、枠体が嵌り込む溝を有しており、
この溝のうち、スクリーン印刷版下材の中心に近い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材の厚さと実質的に同じであり、スクリーン印刷版下材の中心から遠い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材の厚さとマスクの厚さの和と実質的に同じであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記カバーは透光性の板から成るものであり、前記実質的に同じとは、前記排気系による排気の際、前記ベース盤に前記紗が密着し、かつ、前記カバーと前記ベース盤との間の気密性が確保される範囲内で、同じという意味であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1又は2の構成において、前記溝のうち、前記スクリーン印刷版下材の中心に近い側の側壁の高さは、前記スクリーン印刷版下材の厚さに比べて、前記紗の破損が無い範囲内で高いという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記カバーは柔軟性を有するものであって、前記溝のうち、前記スクリーン印刷版下材の中心から遠い側の側壁の高さと、前記スクリーン印刷版下材の厚さとマスクの厚さの和との差異は、柔軟性を有するカバーが前記マスクの端面又は前記枠体の側面を押圧しない範囲内の大きさとなっているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、レジストが塗られた紗と紗を張った枠体とからなるスクリーン印刷版下材をマスクを介して露光するスクリーン印刷版下材露光装置であって、
マスクを挟み込みながらスクリーン印刷版下材を受ける透光性のベース盤と、
マスクを挟み込みながらスクリーン印刷版下材を受けたベース盤を覆うカバーと、
ベース盤を通してしてレジストに光を照射する光源と、
カバーがベース盤を覆った際、ベース盤とカバーとの隙間の空間を排気することでマスク及び紗をベース盤に押圧する排気系とを備えており、
ベース盤は、枠体が嵌り込む溝を有しており、
この溝のうち、スクリーン印刷版下材の中心に近い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材の厚さからマスクの厚さを引いた大きさと実質的に同じであり、スクリーン印刷版下材の中心から遠い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材の厚さと実質的に同じであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、前記請求項1乃至5いずれかの構成において、前記ベース盤は、前記溝の寸法又は形状を変更できるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、前記請求項1乃至6いずれかの構成において、前記ベース盤は、前記紗と密着する部分にゴムライニングが施されているという構成を有する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態(以下、実施形態)について説明する。
図1〜図3は、第一の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す図である。このうち、図1は正面図、図2は側面図、図3は平面図である。
スクリーン印刷版下材は、スクリーン印刷版下の基になるものであり、レジストが塗られた紗と、紗を張った枠体とからなり、未露光の状態のものを指している。図1〜図3に示す装置は、スクリーン印刷版下材がセットされるベース盤1と、ベース盤1にセットされたスクリーン印刷版下材上のレジストに光を照射する光源2と、光源2からの光をスクリーン印刷版下材に導く光学系3と、ベース盤1にセットされたスクリーン印刷版下材を覆う透光性のカバー4とを備えている。
【0006】
光源2は、レジストの感光波長の光を豊富に放出するものであり、本実施形態では、ショートアーク型の水銀ランプが使用されている。光学系3は、図1に示すように、光源2の発光部を覆うように設けられた楕円集光鏡31と、光を均一にするインテグレータ32と、光を折り返す平面鏡33等から成っている。光学系3には、スクリーン印刷版下材に照射する光を平行光にするコリメータが必要に応じて備えられる。コリメータは、コリメーターレンズ又はコリメーターミラーである。場合によっては、フレネルレンズより成るコリメータが備えられることもある。
【0007】
図4は、図1〜図3に示す装置におけるベース盤1及びカバー4をより詳しく示した断面図である。また、図5は、図4に示すベース盤1を上から見た平面図である。ベース盤1は、全体としては方形の台状の部材である。図4に示すように、ベース盤1は、一番下に位置するメインベース11と、メインベース11の上に位置する精密ベース12と、精密ベース12を取り囲むようにメインベース11の上に設けられた周辺ベース13とから主に構成されている。メインベース11、精密ベース12、周辺ベース13とも、剛性の高いアルミニウムやステンレス等の金属で形成されている。
【0008】
メインベース11は、方形の板状である。精密ベース12も方形の板状であり、メインベース11の中央に置かれている。周辺ベース13は、方形の枠状であり、精密ベース12の輪郭と相似形である。精密ベース12と周辺ベース13との間に一定した幅の溝10が形成されるよう、周辺ベース13は精密ベース12と同心上に設けられている。
【0009】
ベース盤1は、露光されるスクリーン印刷版下材をセットする受け台としての目的で設けられているが、スクリーン印刷版下材を精度良く位置決めするための目的もある。従って、メインベース11、精密ベース12及び周辺ベース13は、寸法精度よく成形されている。特に、精密ベース12は、後述するように、スクリーン印刷版下材の紗が密着する部材であるため、平坦性等を含めて特に寸法精度が高くなっている。
【0010】
カバー4は、ベース盤1とほぼ同じ大きさの方形の板状部材である。カバー4は、方形な枠状のカバー枠41と、カバー枠41にはめ込まれた透光性のガラス板42とから主に構成されている。カバー4は、図4に示すように、ベース盤1の周辺ベース13の縁に蝶番により取り付けられている。また、カバー枠41の周辺ベース13への取付箇所とは反対側の縁には取っ手43が設けられている。取っ手43を持ってカバー4をベース盤1に押し付けたり、ベース盤1から離したりすることができるようになっている。尚、ガラス板42は、レジストの感光波長の光を良く透過する材料のものである。また、フレネルレンズより成るコリメータが使用される場合、カバー4の下面に備えられる場合がある。
【0011】
また、ベース盤1は、上記カバー4でベース盤1が覆われた際、ベース盤1とカバー4との間の隙間を排気して真空にする排気系5が設けられている。排気系5は、真空ポンプ51と、真空ポンプ51とベース盤1とをつなぐ排気ダクト52と、排気ダクト52上に設けられたバルブ53等から構成されている。
【0012】
図4に示すように、メインベース11には、排気孔110が設けられている。排気ダクト52はこの排気孔110に接続されている。また、メインベース11と周辺ベース13との間の隙間には、真空シール6が設けられている。真空シール6は、例えばOリングである。また、カバー4がベース盤1に押し付けられた際、カバー4とベース盤1との間が気密封止されるよう、周辺ベース13の上面にも真空シール6が設けられている。この真空シール6も同様にOリング等であり、カバー4の下面が気密に接触することで気密封止される。
【0013】
また、図2に示すように、この実施形態では二つのベース盤1が設けられている。そして、二つのベース盤1の中間に位置する回転軸の周りに二つのベース盤1を一体に回転させる回転機構7が設けられている。回転機構7は、二つのベース盤1を支持したテーブル71と、テーブル71を支える支柱72と、支柱72を回転させる回転駆動源73等から構成されている。回転機構7は、スクリーン印刷版下材をセットする場所と、露光を行う場所とが異なることから、ベース盤1をカバー4とともに180度ずつ回転させるものである。
【0014】
スクリーン印刷版下材をセットする際には、一方のベース盤1を、装置の正面手前側に位置させる(以下、この位置をセット位置と呼ぶ)。装置を操作するオペレータは、正面手前側に立ち、セット位置にあるベース盤1にスクリーン印刷版下材をセットする。そして、回転機構7がベース盤1を180度回転させる。この180度回転した位置が露光を行う位置(以下、露光位置)である。図1及び図4から解るように、露光位置では、ベース盤1はその中心軸が光軸上に位置するようになっている。露光位置では、光軸は垂直に延びてベース盤1と交差する。尚、ベース盤1は水平な姿勢である。従って、光軸は精密ベース12の表面に対して垂直に交差する。
【0015】
図1〜図5に示す本実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の動作について、以下に説明する。図6は、第一の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の動作について模式的に示した図である。
まず、上述したように、一方のベース盤1をセット位置に位置させ、未露光のスクリーン印刷版下材Sをベース盤1にセットする。この際、図4及び図6(1)に示すように、精密ベース12と周辺ベース13とから成る溝10に枠体S2をはめ込む。この状態では、紗S1は、精密ベース12の上面を覆った状態となる。尚、レジスト(不図示)は、図4及び図6(1)に示す状態において紗S1の上側の面に塗布されている。
【0016】
次に、図6(2)に示すように、スクリーン版下材Sの上にマスクMをセットする。本実施形態では、マスクMとしてガラスマスクが採用されている。ガラスマスクは、フィルムマスクに比べて剛性が高く、変形が実質的に無いため、精度の良いパターン転写ができる長所がある。ガラスマスは、カバー4と同様、レジストの感光波長の光を効率よく透過する材料で形成されている。尚、マスクMには、光を透過する部分と光を透過しない部分とが、印刷するパターンで形成されている。形成の仕方は、レジストのタイプ(ネガ型かポジ型か)による。
【0017】
マスクMのセットは、スクリーン版下材Sとの位置関係が所定のものになるよう精度良く行われる。例えば、マスクMとスクリーン版下材Sの枠体S2との双方に目印を設けておき、目印が一致させてマスクMを載せると、必要な位置関係が確保されるよう構成される。位置合わせには、フォトセンサ等を使用して光学的な方式を用いることもある。
【0018】
このようにして所定位置にマスクMをセットした後、図6(3)に示すように、カバー4を下げてベース盤1を覆うようにする。この際、カバー4を周辺ベース13に向けて押し付けて真空シール6の部分で気密封止された状態とする。この状態で、排気系5に設けられたバルブ53を開け、予め動作させておいた真空ポンプ51により、カバー4とベース盤1との間の空間を排気する。この結果、この空間の圧力が下がり、差圧によりカバー4はさらにベース盤1に押し付けられる。尚、枠体S2が嵌め込まれた溝10内も同様に排気され、減圧される。
【0019】
この状態で、オペレータは、取っ手43から手を離し、回転機構7を動作させる。回転機構7は、ベース盤1を180度回転させ、前述した露光位置に位置させる。排気系5による減圧状態を維持しながら、ベース盤1を露光位置に位置させた状態で、露光を行う。光学系3には、不図示のシャッタが設けられており、このシャッタを開くことで露光が行われる。光源2からの光は、マスクMを通してレジストに照射され、マスクMのパターンで露光が行われる。
【0020】
このようにして一方のベース盤1にセットされたスクリーン印刷版下材Sを露光している間、他方のベース盤1はセット位置に位置しているので、このベース盤1に対して別のスクリーン印刷版下材Sをセットしておく。
一方のベース盤1上のスクリーン印刷版下材Sに対する所定時間の露光の後、シャッタを閉じ、回転機構7が一方のベース盤1を180度回転させてセット位置に戻す。そして、排気系5が排気を停止し、カバー4とベース盤1との間の空間をベントして大気圧に戻す。その後、オペレータがカバー4を開け、露光済みのスクリーン印刷版下材Sを取り出す。この間、他方のベース盤1が露光位置に位置するので、同様に露光動作を行う。
【0021】
上記構成及び動作に係る本実施形態の装置によれば、エレクトロニクス関連の製品や部品等の製造用に適した精度の高い印刷が行える。以下、この点について説明する。
まず、本実施形態のような露光装置は、いわゆるコンタクト方式の露光装置である。この種の装置では、マスクのパターンに忠実で高精度のパターン転写を行うため、スクリーン印刷版下材の紗に対してなるべく均一に密着させることが好ましい。均一に密着しないと、密着性の悪いところで僅かにマスクの像がぼけたりすることがある。
【0022】
本実施形態の装置では、マスクMをカバー4で覆い、カバー4とベース盤1との間の空間を排気して減圧しているので、カバー4がマスクMを均一にベース盤1に向けて押し付けることになる。このため、マスクMが紗S1に均一に密着する。従って、精度の高い露光が行える。例えば、プリント基盤製造の際のスクリーン印刷の場合、本実施形態の装置によれば、線幅50μm以下の印刷に使用されるスクリーン印刷版下材の露光を好適に行うことができる。
【0023】
さらに、本実施形態の装置では、精密ベース12と周辺ベース13とで形成される溝(以下、溝と呼ぶ)10にスクリーン印刷版下材Sの枠体S2が嵌め込まれる結果、マスクMとベース盤1とが実質的に面一な平坦面を形成し、その面一な平坦面に対してカバー4が押圧力を作用させる。この点は、上記減圧によるマスクMの密着に関連して顕著な技術的意義を有する。以下、この点を説明する。
【0024】
図7は、図1〜図6に示す実施形態の技術的意義を説明するための参考例の構成を示した概略図である。この参考例では、ボックス内の下部に光源2を、上面に透光ガラス板400を設ける。透光ガラス板400の上にマスクMを置き、その上にスクリーン印刷版下材Sを置く。そして、その上から遮光性のカバー4で覆った後、光源2からの光で露光を行う。前述した実施形態と同様に、カバー4と透光性ガラス板400との間を減圧して排気し、カバー4によってマスクMとスクリーン印刷版下材Sを密着させる。尚、図7に示すように、カバー4は、凹凸のある面に密着する必要があるため、ゴムのような柔軟性に富んだ材料で形成される。
【0025】
図7に示す構成によっても、マスクMをスクリーン印刷版下材Sに密着させることができるのであるが、カバー4が凹凸面に対して押圧力を作用させることになるから、露光の精度が充分に向上しない問題がある。即ち、ゴムのような柔軟性に富むカバー4がスクリーン印刷版下材Sを覆って減圧を行うと、図7に示すように、枠体S2の側面に対してもカバー4が密着する状態となる。これは、カバー4の内外の差圧によって枠体S2の側面が押されることを意味する。つまり、スクリーン印刷版下材Sに対しては、紗S1に垂直な方向の押圧力のみならず、横方向(紗S1の面に沿った方向)の押圧力が加わってしまう。
【0026】
この横方向の押圧力により、スクリーン印刷版下材Sがわずかにずれてしまうことがある。例えば、減圧によってカバー4を密着させた際、カバー4の弾性により、カバー4の各点は相互に引っ張り合う応力を発生させる。この応力は、枠体S2の側面の上下方向にも発生する。カバー4は枠体S2に接触して摩擦力を発生させていることから、カバー4の応力分布のわずかな不均一さによって、スクリーン印刷版下材Sがわずかに変位したり歪んだりすることがある。このような変位や歪みが生ずると、紗S1上のレジストへの露光パターンも変位したり歪んだりすることになり、露光精度が低下することになる。このため、減圧による密着性向上という長所を相殺してしまったり、それを上回って露光精度を悪くしてまったりする恐れがある。
【0027】
一方、本実施形態の装置によれば、カバー4は、実質的に面一な平坦面に対して押圧力を作用させるので、このような問題は小さい。また、カバー4がガラス板42から成るので、不均一な伸縮によってスクリーン印刷版下材Sを変位させたりすることもない。このため、さらに高精度の露光が行えるようになっている。
【0028】
上述した実質的に面一な平坦面に対する押圧力の作用という点について、補足してさらに詳しく説明する。カバー4が実質的に面一な平坦面に対して押圧力を作用させながらマスクMを紗S1に密着させるには、二つの点が必要である。一つは、図4から解るように、溝10において、スクリーン印刷版下材Sの中心に近い側の側壁の高さ(以下、中心寄り壁高さ)が、スクリーン印刷版下材Sの厚さに実質的に等しいということである。もう一つは、溝10において、スクリーン印刷版下材Sの中心から遠い側の側壁の高さ(以下、外側寄り側壁高さ)が、スクリーン印刷版下材Sの厚さとマスクMの厚さの和に実質的に等しいということである。
【0029】
まず、前者の点について、図8を使用して説明する。図8は、枠体S2とベース盤1とが面一でない場合の問題点を示した図である。図8において、h1は、溝10の中心寄り側壁高さである。また、t1は、スクリーン印刷版下材Sの厚さ(以下、版下材厚さ)である。版下材厚さt1は、枠体S2の厚さと紗S1の厚さの和であるが、紗S1の厚さは無視して良い場合もある。
【0030】
図8(1)に示すように、中心寄り側壁高さh1が版下材厚さt1に比べて小さい場合、紗S1と精密ベース12との間に隙間ができることになる。本実施形態では、ガラス板42でカバー4が形成されているので、この場合には紗S1と精密ベース12との間に隙間ができてしまう。これでは、排気系5によって減圧しても、紗S1はマスクMに充分に密着しない。このため、高精度の露光ができない。フィルムマスクのような変形可能なマスクを使用し、かつ、図7に示す場合のように柔軟性のあるカバー4を使用すれば、紗S1をマスクMにある程度密着させることは可能である。しかしながら、マスクMの変形やずれにより露光精度が低下する恐れがあるし、柔軟性のあるカバー4により枠体S2の側面が押圧される問題も生ずる。従って、図8(1)に示すような状態は避けるべきである。
【0031】
一方、図8(2)に示すように、中心寄り側壁高さh1が版下材厚さt1よりも大きい場合、このような問題はなく、好適である。但し、枠体S2の重量や紗S1の強度によっては、紗S1の破損の恐れが生ずる。つまり、精密ベース12の縁の部分で紗S1に無理な引っ張り力が作用し、紗S1が破損する恐れがある。この問題は、精密ベース12の縁の部分を面取りしたり、枠体S2を軽くしたりすることである程度抑えられるが、基本的には紗S1の破損の問題は残る。
理想的なのは、中心寄り側壁高さh1が版下材厚さt1に一致することである。実際には、枠体S2や精密ベース12の加工精度等を考慮しなければならない。従って、h1>t1を満足し、h1−t1の大きさが紗S1の破損がない範囲内になるよう、これらの寸法公差が設定される。
【0032】
次に、後者の点について説明する。既に説明したように、前者は、精密ベース12と紗S1との密着を問題にしたが、後者は、ガラス板42とマスクMの密着に関する問題であり、マスクMと紗S1の密着度をいかに向上させるかということに関係してくる。この点について、図9を使用して説明する。図9は、外側寄り側壁高さがスクリーン印刷版下材Sの厚さとマスクMの厚さの和に等しくない場合について示した図である。
【0033】
図9において、t2は、版下材厚さt1とマスクMの厚さの和である。また、h2は外側寄り側壁高さである。図9(1)は、t2が外側寄り側壁高さh2より小さい場合である。この場合は、マスクMとガラス板42の間に隙間が生じることになる。また、図9(2)は、逆に、t2が外側寄り側壁高さh2より大きい場合である。この場合は、周辺ベース13とガラス板42との間に隙間が生ずる。
マスクMと紗S1との密着度を考えた場合、図9(1)よりは図9(2)の方が好ましい。但し、周辺ベース13とガラス板42との間の隙間が大きくなり、真空シール6による封止ができなくなってしまうことは避けなければならない。従って、t2=h2であるか、又は、真空シール6による封止が可能な範囲で、t2>h2とすることが好ましいということになる。
【0034】
上述した実施形態において、溝10の寸法形状は、スクリーン印刷版下材Sのサイズに応じて適宜変更される。そのためには、精密ベース12や周辺ベース13は、メインベース11に対して着脱自在となっていることが好ましい。例えば、紗S1が大きく、そのため枠体S2も大きいスクリーン印刷版下材Sを使用する場合、それに合わせて大きいサイズの精密ベース12や周辺ベース13をメインベース11に取り付ける。また、枠体S2の大きさが異なる場合も、それに適合した寸法の溝10となるよう、精密ベース12や周辺ベース13を適宜交換する。枠体S2の形状が異なる場合も、同様である。
【0035】
尚、溝10の寸法形状の変更は、上記のようにベース盤1の構成部材を交換する構成以外によっても達成可能である。例えば、ベース盤1の構成要素として、スライドすることで幅が可変である部材を採用し、この部材によって溝10の寸法形状を変更するようにすることが可能である。
【0036】
次に、第二の実施形態について説明する。図10〜図12は、第二の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す図である。このうち、図10は正面図、図11は側面図、図12は平面図である。
図10〜図12に示す装置は、ベース盤をセット位置と露光位置との間で移動させるための機構が第一の実施形態と異なっている。具体的に説明すると、第二の実施形態では、セット位置と露光位置の間でベース盤を直線移動させる直線移動機構8が設けられている。直線移動機構8としては、例えば搬送コロを多数ならべたコンベア式のものが採用できる。
【0037】
また、第二の実施形態では、装置内に二つのベース盤1A,1Bが設けられており、露光位置において一方のベース盤1Aを溜めるバッファ手段14が設けられている。図11に示すように、バッファ手段14は、露光位置において上下にベース盤1を並べて溜めるようにする。
バッファ手段14としては、上下に二つの搬送コロユニット141,142を並べた構成を採用することができる。即ち、下側の搬送コロユニット142については、露光位置において全体に上下動するようにする。上側の搬送コロユニット141については水平移動機構(不図示)を設けて露光位置に位置したり、露光位置から退避したりできるようにする。
【0038】
第二の実施形態の装置は、以下の如く動作する。
まず、オペレータが第一のベース盤1Aにスクリーン印刷版下材Sをセットし、水平移動機構によって露光位置に移動させる。この際、上側搬送コロユニット141は退避しており、この上側搬送コロユニット141の上に第二のベース盤1Bが乗っている。露光位置には、下側の搬送コロユニット142が位置しており、移動してきた第一のベース盤1Aを受ける。そして、第一のベース盤1A上のスクリーン印刷版下材Sに対して第一の実施形態と同様に露光を行う。その後、下側の搬送コロユニット142を少し下降させる。
【0039】
次に、上側搬送コロユニット141を第二のベース盤1Bとともに水平移動させて露光位置に位置させる。そして、直線移動機構8により第二のベース盤1Bをセット位置に持ってくる。オペレータは、第二のベース盤1Bに次のスクリーン印刷版下材Sをセットした後、第二のベース盤1Bを再び露光位置に移動させる。露光位置では、上側搬送コロユニット141が第二のベース盤1Bを受ける。そして、同様に露光を行った後、第二のベース盤1Bをセット位置に戻す。第二のベース盤1Bから露光済みのスクリーン印刷版下材Sを回収した後、第二のベース盤1Bを露光位置を経由して退避位置に戻す。次に、上下移動機構を動作させて第一のベース盤1Aを露光位置まで上昇させ、その後、セット位置まで移動させて露光済みのスクリーン印刷版下材Sを回収する。
【0040】
装置の技術的意義や効果については、第一の実施形態と同様である。尚、露光位置において第一のベース盤1A上のスクリーン印刷版下材Sを露光してから第一のベース盤1Aを少し下降させたが、露光せずにひとまず下降させ、第二のベース盤1B上のスクリーン印刷版下材Sの露光の後、第一のベース盤1Aを露光位置に上昇させて露光を行っても良い。
【0041】
また、露光後のレジストが現像されるが、露光から現像までの時間を一定に保つことが要請されることが多い。上記第二の実施形態において、第一のベース盤1A上のスクリーン印刷版下材Sと第二のベース盤1Bのスクリーン印刷版下材Sとで現像までの露光後に回収されるまでの時間が異なるようであれば、現像までに調整用の時間が適宜設けられることがある。
【0042】
上述した第一第二の実施形態において、柔軟性の無いカバー4として、透光性のガラス板42から成るものを使用したが、ガラス板42ではなく、樹脂製の板が採用されることがある。露光波長の光を充分に透過させるものであれば、ガラスには限られない。
尚、第一又は第二の実施形態においては、紗S1とベース盤1との密着度をより向上させるため、紗S1に接触するベース盤1の表面にゴムライニングを施す場合もある。この場合のゴムライニングの厚さは、0.5〜1.0mm程度とすることが好ましい。
【0043】
次に、第三の実施形態について説明する。図13は、第三の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す正面図である。
この実施形態の装置は、図7に示す参考例の装置と似ている。図13に示す装置では、ボックス91内の下部に光源2が設けられ、ボックス91の上面にベース盤1が嵌め込まれている。この実施形態のベース盤1は、全体が透光性の板状である。そして、ベース盤1を覆うカバー4は、遮光性となっている。
【0044】
ベース盤1には、前述した各実施形態と同様に溝10が形成されている。図13に示すように、本実施形態では、ベース盤1の上にまずマスクMをセットし、その上にスクリーン印刷版下材Sを重ね合わせる。この際、同様に、枠体S2を溝10に嵌め込むようにする。
この実施形態では、マスクMが紗S1とベース盤1との間に挟まれた状態となるので、溝10の中心寄り側壁高さh1は、版下材厚さ(ここでは枠体S2の厚さ)からマスクMの厚さを引いた大きさと実質的に同じとされる。また、外側寄り側壁高さh2は、版下材厚さと実質的に同じとされる。
【0045】
図13に示すようにマスクMとスクリーン印刷版下材Sをセットし、カバー4で覆った後、同様に排気系5を動作させてカバー4とベース盤1との隙間を減圧する。そして、光源2からの光をベース盤1及びマスクMを通して照射し、紗S1に塗布されたレジストを露光する。この実施形態においても、カバー4は、実質的に面一な平坦面に対して押圧力を作用させるので、精度の高い露光が行える。
【0046】
尚、本明細書において、「ベース盤」とは、スクリーン印刷版下材Sをセットする対象部材程度の意味であり、何かの基盤となる部材というような意味ではない。また、露光時にスクリーン印刷版下材Sが水平な姿勢となることは何ら必須条件ではない。スクリーン印刷版下材Sを垂直な姿勢にしたり、斜めの姿勢にしたりして露光することもありうる。例えば、垂直な光軸に沿って光を照射して露光するため、水平な姿勢でスクリーン印刷版下材Sをセットして減圧・押圧した後、ベース盤1ごと垂直に立て、その状態で露光を行うような構成が採用されることもある。尚、柔軟性のあるカバーの使用は、前述したような問題はあるが、本願発明は、柔軟性のあるカバーの使用を排除するものではない。柔軟性のあるカバーが、枠体の側面を押圧しないようになっていれば良い。
【0047】
【発明の効果】
以上説明した通り、本願の各請求項記載の発明によれば、実質的に面一の平坦面に対してカバーが押圧力を作用させることができるので、精度の高い露光が行える。
また、請求項2記載の発明によれば、板から成るカバーを使用することで、紗の面に沿った方向に力が作用するのを抑えることができる。このため、さらに精度の高い露光が行える。
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、マスクに対する紗の密着が確保され、かつ、紗の破損が無いので、信頼性の点でも優れた露光が行える。
また、請求項4記載の発明によれば、上記効果に加え、柔軟性のあるカバーを使用しつつも、精度の高い露光が行える。
また、請求項6記載の発明によれば、上記効果に加え、ベース盤は、枠体が嵌り込む溝の寸法又は形状を変更できるものであるので、寸法又は形状の異なる多種類のスクリーン印刷版下材の露光が行える。
また、請求項6記載の発明によれば、上記効果に加え、ゴムライニングが施されているため、紗とベース盤との密着度がさらに向上する。このため、さらに精度の高い露光が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す正面図である。
【図2】第一の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す側面図である。
【図3】第一の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す平面図である。
【図4】図1〜図3に示す装置におけるベース盤1及びカバー4をより詳しく示した断面図である。
【図5】図4に示すベース盤1を上から見た平面図である。
【図6】第一の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の動作について模式的に示した図である。
【図7】図1〜図6に示す実施形態の技術的意義を説明するための参考例の構成を示した概略図である。
【図8】枠体S2とベース盤1とが面一でない場合の問題点を示した図である。
【図9】溝10において、外側寄り側壁高さがスクリーン印刷版下材Sの厚さとマスクMの厚さの和に等しくない場合について示した図である。
【図10】第二の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す正面図である。
【図11】第二の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す側面図である。
【図12】第二の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す平面図である。
【図13】第三の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す正面図である。
【符号の説明】
1 ベース盤
1A 第一のベース盤
1B 第二のベース盤
11 メインベース
10 溝
110 排気孔
12 精密ベース
13 周辺ベース
14 バッファ手段
2 光源
3 光学系
4 カバー
42 ガラス板
5 排気系
6 真空シール
7 回転機構
8 直線移動機構
S スクリーン印刷版下材
S1 紗
S2 枠体
M マスク
【発明の属する技術分野】
本願の発明は、スクリーン印刷の技術に関するものであり、特に、スクリーン印刷に用いられる版下を製作する際に使用される露光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スクリーン印刷は、孔版印刷の一種であり、紗と呼ばれるスクリーンに設けた細かい孔を通してインクを供給することで印刷する手法である。スクリーン印刷は、対象物の材質を選ばないこと、曲面上の印刷も可能なこと、肉盛りと呼ばれる肉厚な印刷も可能なことなどから、デジタル印刷が盛んになってきた現在でも、広く用いられている。
スクリーン印刷における版下(スクリーン印刷版下)は、枠に張られた紗にレジストを塗布し、印刷するパターンでレジストを露光した後、現像することで製作される。尚、この種の技術分野に属する本件と同一出願人に係る公開公報として、特開平9−269598号がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
スクリーン印刷は、微細な印刷が可能なため、エレクトロニクス関連の製品や部品の製造にも利用されている。例えば、プリント基盤の配線パターンの印刷には、従来からスクリーン印刷が利用されている。また最近では、プラズマディスプレイパネル(PDP)の製造においても、ガラス面への電極パターンの形成等の際にスクリーン印刷の技術が利用されている。
このような分野では、印刷の精度をさらに高くすることが要求されている。例えば、プリント基盤製造の際のスクリーン印刷では、プリント基盤が組み込まれる電子製品の小型化や高機能化に伴い、印刷する線幅が非常に小さくなっており、寸法精度も非常に厳しくなってきている。例えば、携帯電話等に組み込まれるプリント基盤の場合、現状、線幅(ないしは配線の間隔)は100μm程度となっているが、将来的には50μm程度にすることが要請されている。
本願の発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、精度の高い印刷を可能にする高性能のスクリーン印刷版下材露光装置を提供する技術的意義がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、レジストが塗られた紗と紗を張った枠体とからなるスクリーン印刷版下材をマスクを介して露光するスクリーン印刷版下材露光装置であって、
紗が密着した状態でスクリーン印刷版下材を受けるベース盤と、
ベース盤に受けられたスクリーン印刷版下材にマスクが重ね合わされた状態でベース盤を気密に覆う透光性のカバーと、
カバーを通してレジストに光を照射する光源と、
カバーがベース盤を覆った際、ベース盤とカバーとの隙間の空間を排気することでマスク及び紗をベース盤に押圧する排気系とを備えており、
さらに、
ベース盤は、枠体が嵌り込む溝を有しており、
この溝のうち、スクリーン印刷版下材の中心に近い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材の厚さと実質的に同じであり、スクリーン印刷版下材の中心から遠い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材の厚さとマスクの厚さの和と実質的に同じであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記カバーは透光性の板から成るものであり、前記実質的に同じとは、前記排気系による排気の際、前記ベース盤に前記紗が密着し、かつ、前記カバーと前記ベース盤との間の気密性が確保される範囲内で、同じという意味であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1又は2の構成において、前記溝のうち、前記スクリーン印刷版下材の中心に近い側の側壁の高さは、前記スクリーン印刷版下材の厚さに比べて、前記紗の破損が無い範囲内で高いという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記カバーは柔軟性を有するものであって、前記溝のうち、前記スクリーン印刷版下材の中心から遠い側の側壁の高さと、前記スクリーン印刷版下材の厚さとマスクの厚さの和との差異は、柔軟性を有するカバーが前記マスクの端面又は前記枠体の側面を押圧しない範囲内の大きさとなっているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、レジストが塗られた紗と紗を張った枠体とからなるスクリーン印刷版下材をマスクを介して露光するスクリーン印刷版下材露光装置であって、
マスクを挟み込みながらスクリーン印刷版下材を受ける透光性のベース盤と、
マスクを挟み込みながらスクリーン印刷版下材を受けたベース盤を覆うカバーと、
ベース盤を通してしてレジストに光を照射する光源と、
カバーがベース盤を覆った際、ベース盤とカバーとの隙間の空間を排気することでマスク及び紗をベース盤に押圧する排気系とを備えており、
ベース盤は、枠体が嵌り込む溝を有しており、
この溝のうち、スクリーン印刷版下材の中心に近い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材の厚さからマスクの厚さを引いた大きさと実質的に同じであり、スクリーン印刷版下材の中心から遠い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材の厚さと実質的に同じであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、前記請求項1乃至5いずれかの構成において、前記ベース盤は、前記溝の寸法又は形状を変更できるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、前記請求項1乃至6いずれかの構成において、前記ベース盤は、前記紗と密着する部分にゴムライニングが施されているという構成を有する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態(以下、実施形態)について説明する。
図1〜図3は、第一の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す図である。このうち、図1は正面図、図2は側面図、図3は平面図である。
スクリーン印刷版下材は、スクリーン印刷版下の基になるものであり、レジストが塗られた紗と、紗を張った枠体とからなり、未露光の状態のものを指している。図1〜図3に示す装置は、スクリーン印刷版下材がセットされるベース盤1と、ベース盤1にセットされたスクリーン印刷版下材上のレジストに光を照射する光源2と、光源2からの光をスクリーン印刷版下材に導く光学系3と、ベース盤1にセットされたスクリーン印刷版下材を覆う透光性のカバー4とを備えている。
【0006】
光源2は、レジストの感光波長の光を豊富に放出するものであり、本実施形態では、ショートアーク型の水銀ランプが使用されている。光学系3は、図1に示すように、光源2の発光部を覆うように設けられた楕円集光鏡31と、光を均一にするインテグレータ32と、光を折り返す平面鏡33等から成っている。光学系3には、スクリーン印刷版下材に照射する光を平行光にするコリメータが必要に応じて備えられる。コリメータは、コリメーターレンズ又はコリメーターミラーである。場合によっては、フレネルレンズより成るコリメータが備えられることもある。
【0007】
図4は、図1〜図3に示す装置におけるベース盤1及びカバー4をより詳しく示した断面図である。また、図5は、図4に示すベース盤1を上から見た平面図である。ベース盤1は、全体としては方形の台状の部材である。図4に示すように、ベース盤1は、一番下に位置するメインベース11と、メインベース11の上に位置する精密ベース12と、精密ベース12を取り囲むようにメインベース11の上に設けられた周辺ベース13とから主に構成されている。メインベース11、精密ベース12、周辺ベース13とも、剛性の高いアルミニウムやステンレス等の金属で形成されている。
【0008】
メインベース11は、方形の板状である。精密ベース12も方形の板状であり、メインベース11の中央に置かれている。周辺ベース13は、方形の枠状であり、精密ベース12の輪郭と相似形である。精密ベース12と周辺ベース13との間に一定した幅の溝10が形成されるよう、周辺ベース13は精密ベース12と同心上に設けられている。
【0009】
ベース盤1は、露光されるスクリーン印刷版下材をセットする受け台としての目的で設けられているが、スクリーン印刷版下材を精度良く位置決めするための目的もある。従って、メインベース11、精密ベース12及び周辺ベース13は、寸法精度よく成形されている。特に、精密ベース12は、後述するように、スクリーン印刷版下材の紗が密着する部材であるため、平坦性等を含めて特に寸法精度が高くなっている。
【0010】
カバー4は、ベース盤1とほぼ同じ大きさの方形の板状部材である。カバー4は、方形な枠状のカバー枠41と、カバー枠41にはめ込まれた透光性のガラス板42とから主に構成されている。カバー4は、図4に示すように、ベース盤1の周辺ベース13の縁に蝶番により取り付けられている。また、カバー枠41の周辺ベース13への取付箇所とは反対側の縁には取っ手43が設けられている。取っ手43を持ってカバー4をベース盤1に押し付けたり、ベース盤1から離したりすることができるようになっている。尚、ガラス板42は、レジストの感光波長の光を良く透過する材料のものである。また、フレネルレンズより成るコリメータが使用される場合、カバー4の下面に備えられる場合がある。
【0011】
また、ベース盤1は、上記カバー4でベース盤1が覆われた際、ベース盤1とカバー4との間の隙間を排気して真空にする排気系5が設けられている。排気系5は、真空ポンプ51と、真空ポンプ51とベース盤1とをつなぐ排気ダクト52と、排気ダクト52上に設けられたバルブ53等から構成されている。
【0012】
図4に示すように、メインベース11には、排気孔110が設けられている。排気ダクト52はこの排気孔110に接続されている。また、メインベース11と周辺ベース13との間の隙間には、真空シール6が設けられている。真空シール6は、例えばOリングである。また、カバー4がベース盤1に押し付けられた際、カバー4とベース盤1との間が気密封止されるよう、周辺ベース13の上面にも真空シール6が設けられている。この真空シール6も同様にOリング等であり、カバー4の下面が気密に接触することで気密封止される。
【0013】
また、図2に示すように、この実施形態では二つのベース盤1が設けられている。そして、二つのベース盤1の中間に位置する回転軸の周りに二つのベース盤1を一体に回転させる回転機構7が設けられている。回転機構7は、二つのベース盤1を支持したテーブル71と、テーブル71を支える支柱72と、支柱72を回転させる回転駆動源73等から構成されている。回転機構7は、スクリーン印刷版下材をセットする場所と、露光を行う場所とが異なることから、ベース盤1をカバー4とともに180度ずつ回転させるものである。
【0014】
スクリーン印刷版下材をセットする際には、一方のベース盤1を、装置の正面手前側に位置させる(以下、この位置をセット位置と呼ぶ)。装置を操作するオペレータは、正面手前側に立ち、セット位置にあるベース盤1にスクリーン印刷版下材をセットする。そして、回転機構7がベース盤1を180度回転させる。この180度回転した位置が露光を行う位置(以下、露光位置)である。図1及び図4から解るように、露光位置では、ベース盤1はその中心軸が光軸上に位置するようになっている。露光位置では、光軸は垂直に延びてベース盤1と交差する。尚、ベース盤1は水平な姿勢である。従って、光軸は精密ベース12の表面に対して垂直に交差する。
【0015】
図1〜図5に示す本実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の動作について、以下に説明する。図6は、第一の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の動作について模式的に示した図である。
まず、上述したように、一方のベース盤1をセット位置に位置させ、未露光のスクリーン印刷版下材Sをベース盤1にセットする。この際、図4及び図6(1)に示すように、精密ベース12と周辺ベース13とから成る溝10に枠体S2をはめ込む。この状態では、紗S1は、精密ベース12の上面を覆った状態となる。尚、レジスト(不図示)は、図4及び図6(1)に示す状態において紗S1の上側の面に塗布されている。
【0016】
次に、図6(2)に示すように、スクリーン版下材Sの上にマスクMをセットする。本実施形態では、マスクMとしてガラスマスクが採用されている。ガラスマスクは、フィルムマスクに比べて剛性が高く、変形が実質的に無いため、精度の良いパターン転写ができる長所がある。ガラスマスは、カバー4と同様、レジストの感光波長の光を効率よく透過する材料で形成されている。尚、マスクMには、光を透過する部分と光を透過しない部分とが、印刷するパターンで形成されている。形成の仕方は、レジストのタイプ(ネガ型かポジ型か)による。
【0017】
マスクMのセットは、スクリーン版下材Sとの位置関係が所定のものになるよう精度良く行われる。例えば、マスクMとスクリーン版下材Sの枠体S2との双方に目印を設けておき、目印が一致させてマスクMを載せると、必要な位置関係が確保されるよう構成される。位置合わせには、フォトセンサ等を使用して光学的な方式を用いることもある。
【0018】
このようにして所定位置にマスクMをセットした後、図6(3)に示すように、カバー4を下げてベース盤1を覆うようにする。この際、カバー4を周辺ベース13に向けて押し付けて真空シール6の部分で気密封止された状態とする。この状態で、排気系5に設けられたバルブ53を開け、予め動作させておいた真空ポンプ51により、カバー4とベース盤1との間の空間を排気する。この結果、この空間の圧力が下がり、差圧によりカバー4はさらにベース盤1に押し付けられる。尚、枠体S2が嵌め込まれた溝10内も同様に排気され、減圧される。
【0019】
この状態で、オペレータは、取っ手43から手を離し、回転機構7を動作させる。回転機構7は、ベース盤1を180度回転させ、前述した露光位置に位置させる。排気系5による減圧状態を維持しながら、ベース盤1を露光位置に位置させた状態で、露光を行う。光学系3には、不図示のシャッタが設けられており、このシャッタを開くことで露光が行われる。光源2からの光は、マスクMを通してレジストに照射され、マスクMのパターンで露光が行われる。
【0020】
このようにして一方のベース盤1にセットされたスクリーン印刷版下材Sを露光している間、他方のベース盤1はセット位置に位置しているので、このベース盤1に対して別のスクリーン印刷版下材Sをセットしておく。
一方のベース盤1上のスクリーン印刷版下材Sに対する所定時間の露光の後、シャッタを閉じ、回転機構7が一方のベース盤1を180度回転させてセット位置に戻す。そして、排気系5が排気を停止し、カバー4とベース盤1との間の空間をベントして大気圧に戻す。その後、オペレータがカバー4を開け、露光済みのスクリーン印刷版下材Sを取り出す。この間、他方のベース盤1が露光位置に位置するので、同様に露光動作を行う。
【0021】
上記構成及び動作に係る本実施形態の装置によれば、エレクトロニクス関連の製品や部品等の製造用に適した精度の高い印刷が行える。以下、この点について説明する。
まず、本実施形態のような露光装置は、いわゆるコンタクト方式の露光装置である。この種の装置では、マスクのパターンに忠実で高精度のパターン転写を行うため、スクリーン印刷版下材の紗に対してなるべく均一に密着させることが好ましい。均一に密着しないと、密着性の悪いところで僅かにマスクの像がぼけたりすることがある。
【0022】
本実施形態の装置では、マスクMをカバー4で覆い、カバー4とベース盤1との間の空間を排気して減圧しているので、カバー4がマスクMを均一にベース盤1に向けて押し付けることになる。このため、マスクMが紗S1に均一に密着する。従って、精度の高い露光が行える。例えば、プリント基盤製造の際のスクリーン印刷の場合、本実施形態の装置によれば、線幅50μm以下の印刷に使用されるスクリーン印刷版下材の露光を好適に行うことができる。
【0023】
さらに、本実施形態の装置では、精密ベース12と周辺ベース13とで形成される溝(以下、溝と呼ぶ)10にスクリーン印刷版下材Sの枠体S2が嵌め込まれる結果、マスクMとベース盤1とが実質的に面一な平坦面を形成し、その面一な平坦面に対してカバー4が押圧力を作用させる。この点は、上記減圧によるマスクMの密着に関連して顕著な技術的意義を有する。以下、この点を説明する。
【0024】
図7は、図1〜図6に示す実施形態の技術的意義を説明するための参考例の構成を示した概略図である。この参考例では、ボックス内の下部に光源2を、上面に透光ガラス板400を設ける。透光ガラス板400の上にマスクMを置き、その上にスクリーン印刷版下材Sを置く。そして、その上から遮光性のカバー4で覆った後、光源2からの光で露光を行う。前述した実施形態と同様に、カバー4と透光性ガラス板400との間を減圧して排気し、カバー4によってマスクMとスクリーン印刷版下材Sを密着させる。尚、図7に示すように、カバー4は、凹凸のある面に密着する必要があるため、ゴムのような柔軟性に富んだ材料で形成される。
【0025】
図7に示す構成によっても、マスクMをスクリーン印刷版下材Sに密着させることができるのであるが、カバー4が凹凸面に対して押圧力を作用させることになるから、露光の精度が充分に向上しない問題がある。即ち、ゴムのような柔軟性に富むカバー4がスクリーン印刷版下材Sを覆って減圧を行うと、図7に示すように、枠体S2の側面に対してもカバー4が密着する状態となる。これは、カバー4の内外の差圧によって枠体S2の側面が押されることを意味する。つまり、スクリーン印刷版下材Sに対しては、紗S1に垂直な方向の押圧力のみならず、横方向(紗S1の面に沿った方向)の押圧力が加わってしまう。
【0026】
この横方向の押圧力により、スクリーン印刷版下材Sがわずかにずれてしまうことがある。例えば、減圧によってカバー4を密着させた際、カバー4の弾性により、カバー4の各点は相互に引っ張り合う応力を発生させる。この応力は、枠体S2の側面の上下方向にも発生する。カバー4は枠体S2に接触して摩擦力を発生させていることから、カバー4の応力分布のわずかな不均一さによって、スクリーン印刷版下材Sがわずかに変位したり歪んだりすることがある。このような変位や歪みが生ずると、紗S1上のレジストへの露光パターンも変位したり歪んだりすることになり、露光精度が低下することになる。このため、減圧による密着性向上という長所を相殺してしまったり、それを上回って露光精度を悪くしてまったりする恐れがある。
【0027】
一方、本実施形態の装置によれば、カバー4は、実質的に面一な平坦面に対して押圧力を作用させるので、このような問題は小さい。また、カバー4がガラス板42から成るので、不均一な伸縮によってスクリーン印刷版下材Sを変位させたりすることもない。このため、さらに高精度の露光が行えるようになっている。
【0028】
上述した実質的に面一な平坦面に対する押圧力の作用という点について、補足してさらに詳しく説明する。カバー4が実質的に面一な平坦面に対して押圧力を作用させながらマスクMを紗S1に密着させるには、二つの点が必要である。一つは、図4から解るように、溝10において、スクリーン印刷版下材Sの中心に近い側の側壁の高さ(以下、中心寄り壁高さ)が、スクリーン印刷版下材Sの厚さに実質的に等しいということである。もう一つは、溝10において、スクリーン印刷版下材Sの中心から遠い側の側壁の高さ(以下、外側寄り側壁高さ)が、スクリーン印刷版下材Sの厚さとマスクMの厚さの和に実質的に等しいということである。
【0029】
まず、前者の点について、図8を使用して説明する。図8は、枠体S2とベース盤1とが面一でない場合の問題点を示した図である。図8において、h1は、溝10の中心寄り側壁高さである。また、t1は、スクリーン印刷版下材Sの厚さ(以下、版下材厚さ)である。版下材厚さt1は、枠体S2の厚さと紗S1の厚さの和であるが、紗S1の厚さは無視して良い場合もある。
【0030】
図8(1)に示すように、中心寄り側壁高さh1が版下材厚さt1に比べて小さい場合、紗S1と精密ベース12との間に隙間ができることになる。本実施形態では、ガラス板42でカバー4が形成されているので、この場合には紗S1と精密ベース12との間に隙間ができてしまう。これでは、排気系5によって減圧しても、紗S1はマスクMに充分に密着しない。このため、高精度の露光ができない。フィルムマスクのような変形可能なマスクを使用し、かつ、図7に示す場合のように柔軟性のあるカバー4を使用すれば、紗S1をマスクMにある程度密着させることは可能である。しかしながら、マスクMの変形やずれにより露光精度が低下する恐れがあるし、柔軟性のあるカバー4により枠体S2の側面が押圧される問題も生ずる。従って、図8(1)に示すような状態は避けるべきである。
【0031】
一方、図8(2)に示すように、中心寄り側壁高さh1が版下材厚さt1よりも大きい場合、このような問題はなく、好適である。但し、枠体S2の重量や紗S1の強度によっては、紗S1の破損の恐れが生ずる。つまり、精密ベース12の縁の部分で紗S1に無理な引っ張り力が作用し、紗S1が破損する恐れがある。この問題は、精密ベース12の縁の部分を面取りしたり、枠体S2を軽くしたりすることである程度抑えられるが、基本的には紗S1の破損の問題は残る。
理想的なのは、中心寄り側壁高さh1が版下材厚さt1に一致することである。実際には、枠体S2や精密ベース12の加工精度等を考慮しなければならない。従って、h1>t1を満足し、h1−t1の大きさが紗S1の破損がない範囲内になるよう、これらの寸法公差が設定される。
【0032】
次に、後者の点について説明する。既に説明したように、前者は、精密ベース12と紗S1との密着を問題にしたが、後者は、ガラス板42とマスクMの密着に関する問題であり、マスクMと紗S1の密着度をいかに向上させるかということに関係してくる。この点について、図9を使用して説明する。図9は、外側寄り側壁高さがスクリーン印刷版下材Sの厚さとマスクMの厚さの和に等しくない場合について示した図である。
【0033】
図9において、t2は、版下材厚さt1とマスクMの厚さの和である。また、h2は外側寄り側壁高さである。図9(1)は、t2が外側寄り側壁高さh2より小さい場合である。この場合は、マスクMとガラス板42の間に隙間が生じることになる。また、図9(2)は、逆に、t2が外側寄り側壁高さh2より大きい場合である。この場合は、周辺ベース13とガラス板42との間に隙間が生ずる。
マスクMと紗S1との密着度を考えた場合、図9(1)よりは図9(2)の方が好ましい。但し、周辺ベース13とガラス板42との間の隙間が大きくなり、真空シール6による封止ができなくなってしまうことは避けなければならない。従って、t2=h2であるか、又は、真空シール6による封止が可能な範囲で、t2>h2とすることが好ましいということになる。
【0034】
上述した実施形態において、溝10の寸法形状は、スクリーン印刷版下材Sのサイズに応じて適宜変更される。そのためには、精密ベース12や周辺ベース13は、メインベース11に対して着脱自在となっていることが好ましい。例えば、紗S1が大きく、そのため枠体S2も大きいスクリーン印刷版下材Sを使用する場合、それに合わせて大きいサイズの精密ベース12や周辺ベース13をメインベース11に取り付ける。また、枠体S2の大きさが異なる場合も、それに適合した寸法の溝10となるよう、精密ベース12や周辺ベース13を適宜交換する。枠体S2の形状が異なる場合も、同様である。
【0035】
尚、溝10の寸法形状の変更は、上記のようにベース盤1の構成部材を交換する構成以外によっても達成可能である。例えば、ベース盤1の構成要素として、スライドすることで幅が可変である部材を採用し、この部材によって溝10の寸法形状を変更するようにすることが可能である。
【0036】
次に、第二の実施形態について説明する。図10〜図12は、第二の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す図である。このうち、図10は正面図、図11は側面図、図12は平面図である。
図10〜図12に示す装置は、ベース盤をセット位置と露光位置との間で移動させるための機構が第一の実施形態と異なっている。具体的に説明すると、第二の実施形態では、セット位置と露光位置の間でベース盤を直線移動させる直線移動機構8が設けられている。直線移動機構8としては、例えば搬送コロを多数ならべたコンベア式のものが採用できる。
【0037】
また、第二の実施形態では、装置内に二つのベース盤1A,1Bが設けられており、露光位置において一方のベース盤1Aを溜めるバッファ手段14が設けられている。図11に示すように、バッファ手段14は、露光位置において上下にベース盤1を並べて溜めるようにする。
バッファ手段14としては、上下に二つの搬送コロユニット141,142を並べた構成を採用することができる。即ち、下側の搬送コロユニット142については、露光位置において全体に上下動するようにする。上側の搬送コロユニット141については水平移動機構(不図示)を設けて露光位置に位置したり、露光位置から退避したりできるようにする。
【0038】
第二の実施形態の装置は、以下の如く動作する。
まず、オペレータが第一のベース盤1Aにスクリーン印刷版下材Sをセットし、水平移動機構によって露光位置に移動させる。この際、上側搬送コロユニット141は退避しており、この上側搬送コロユニット141の上に第二のベース盤1Bが乗っている。露光位置には、下側の搬送コロユニット142が位置しており、移動してきた第一のベース盤1Aを受ける。そして、第一のベース盤1A上のスクリーン印刷版下材Sに対して第一の実施形態と同様に露光を行う。その後、下側の搬送コロユニット142を少し下降させる。
【0039】
次に、上側搬送コロユニット141を第二のベース盤1Bとともに水平移動させて露光位置に位置させる。そして、直線移動機構8により第二のベース盤1Bをセット位置に持ってくる。オペレータは、第二のベース盤1Bに次のスクリーン印刷版下材Sをセットした後、第二のベース盤1Bを再び露光位置に移動させる。露光位置では、上側搬送コロユニット141が第二のベース盤1Bを受ける。そして、同様に露光を行った後、第二のベース盤1Bをセット位置に戻す。第二のベース盤1Bから露光済みのスクリーン印刷版下材Sを回収した後、第二のベース盤1Bを露光位置を経由して退避位置に戻す。次に、上下移動機構を動作させて第一のベース盤1Aを露光位置まで上昇させ、その後、セット位置まで移動させて露光済みのスクリーン印刷版下材Sを回収する。
【0040】
装置の技術的意義や効果については、第一の実施形態と同様である。尚、露光位置において第一のベース盤1A上のスクリーン印刷版下材Sを露光してから第一のベース盤1Aを少し下降させたが、露光せずにひとまず下降させ、第二のベース盤1B上のスクリーン印刷版下材Sの露光の後、第一のベース盤1Aを露光位置に上昇させて露光を行っても良い。
【0041】
また、露光後のレジストが現像されるが、露光から現像までの時間を一定に保つことが要請されることが多い。上記第二の実施形態において、第一のベース盤1A上のスクリーン印刷版下材Sと第二のベース盤1Bのスクリーン印刷版下材Sとで現像までの露光後に回収されるまでの時間が異なるようであれば、現像までに調整用の時間が適宜設けられることがある。
【0042】
上述した第一第二の実施形態において、柔軟性の無いカバー4として、透光性のガラス板42から成るものを使用したが、ガラス板42ではなく、樹脂製の板が採用されることがある。露光波長の光を充分に透過させるものであれば、ガラスには限られない。
尚、第一又は第二の実施形態においては、紗S1とベース盤1との密着度をより向上させるため、紗S1に接触するベース盤1の表面にゴムライニングを施す場合もある。この場合のゴムライニングの厚さは、0.5〜1.0mm程度とすることが好ましい。
【0043】
次に、第三の実施形態について説明する。図13は、第三の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す正面図である。
この実施形態の装置は、図7に示す参考例の装置と似ている。図13に示す装置では、ボックス91内の下部に光源2が設けられ、ボックス91の上面にベース盤1が嵌め込まれている。この実施形態のベース盤1は、全体が透光性の板状である。そして、ベース盤1を覆うカバー4は、遮光性となっている。
【0044】
ベース盤1には、前述した各実施形態と同様に溝10が形成されている。図13に示すように、本実施形態では、ベース盤1の上にまずマスクMをセットし、その上にスクリーン印刷版下材Sを重ね合わせる。この際、同様に、枠体S2を溝10に嵌め込むようにする。
この実施形態では、マスクMが紗S1とベース盤1との間に挟まれた状態となるので、溝10の中心寄り側壁高さh1は、版下材厚さ(ここでは枠体S2の厚さ)からマスクMの厚さを引いた大きさと実質的に同じとされる。また、外側寄り側壁高さh2は、版下材厚さと実質的に同じとされる。
【0045】
図13に示すようにマスクMとスクリーン印刷版下材Sをセットし、カバー4で覆った後、同様に排気系5を動作させてカバー4とベース盤1との隙間を減圧する。そして、光源2からの光をベース盤1及びマスクMを通して照射し、紗S1に塗布されたレジストを露光する。この実施形態においても、カバー4は、実質的に面一な平坦面に対して押圧力を作用させるので、精度の高い露光が行える。
【0046】
尚、本明細書において、「ベース盤」とは、スクリーン印刷版下材Sをセットする対象部材程度の意味であり、何かの基盤となる部材というような意味ではない。また、露光時にスクリーン印刷版下材Sが水平な姿勢となることは何ら必須条件ではない。スクリーン印刷版下材Sを垂直な姿勢にしたり、斜めの姿勢にしたりして露光することもありうる。例えば、垂直な光軸に沿って光を照射して露光するため、水平な姿勢でスクリーン印刷版下材Sをセットして減圧・押圧した後、ベース盤1ごと垂直に立て、その状態で露光を行うような構成が採用されることもある。尚、柔軟性のあるカバーの使用は、前述したような問題はあるが、本願発明は、柔軟性のあるカバーの使用を排除するものではない。柔軟性のあるカバーが、枠体の側面を押圧しないようになっていれば良い。
【0047】
【発明の効果】
以上説明した通り、本願の各請求項記載の発明によれば、実質的に面一の平坦面に対してカバーが押圧力を作用させることができるので、精度の高い露光が行える。
また、請求項2記載の発明によれば、板から成るカバーを使用することで、紗の面に沿った方向に力が作用するのを抑えることができる。このため、さらに精度の高い露光が行える。
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、マスクに対する紗の密着が確保され、かつ、紗の破損が無いので、信頼性の点でも優れた露光が行える。
また、請求項4記載の発明によれば、上記効果に加え、柔軟性のあるカバーを使用しつつも、精度の高い露光が行える。
また、請求項6記載の発明によれば、上記効果に加え、ベース盤は、枠体が嵌り込む溝の寸法又は形状を変更できるものであるので、寸法又は形状の異なる多種類のスクリーン印刷版下材の露光が行える。
また、請求項6記載の発明によれば、上記効果に加え、ゴムライニングが施されているため、紗とベース盤との密着度がさらに向上する。このため、さらに精度の高い露光が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す正面図である。
【図2】第一の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す側面図である。
【図3】第一の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す平面図である。
【図4】図1〜図3に示す装置におけるベース盤1及びカバー4をより詳しく示した断面図である。
【図5】図4に示すベース盤1を上から見た平面図である。
【図6】第一の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の動作について模式的に示した図である。
【図7】図1〜図6に示す実施形態の技術的意義を説明するための参考例の構成を示した概略図である。
【図8】枠体S2とベース盤1とが面一でない場合の問題点を示した図である。
【図9】溝10において、外側寄り側壁高さがスクリーン印刷版下材Sの厚さとマスクMの厚さの和に等しくない場合について示した図である。
【図10】第二の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す正面図である。
【図11】第二の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す側面図である。
【図12】第二の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す平面図である。
【図13】第三の実施形態のスクリーン印刷版下材露光装置の概略を示す正面図である。
【符号の説明】
1 ベース盤
1A 第一のベース盤
1B 第二のベース盤
11 メインベース
10 溝
110 排気孔
12 精密ベース
13 周辺ベース
14 バッファ手段
2 光源
3 光学系
4 カバー
42 ガラス板
5 排気系
6 真空シール
7 回転機構
8 直線移動機構
S スクリーン印刷版下材
S1 紗
S2 枠体
M マスク
Claims (7)
- レジストが塗られた紗と紗を張った枠体とからなるスクリーン印刷版下材をマスクを介して露光するスクリーン印刷版下材露光装置であって、
紗が密着した状態でスクリーン印刷版下材を受けるベース盤と、
ベース盤に受けられたスクリーン印刷版下材にマスクが重ね合わされた状態でベース盤を気密に覆う透光性のカバーと、
カバーを通してレジストに光を照射する光源と、
カバーがベース盤を覆った際、ベース盤とカバーとの隙間の空間を排気することでマスク及び紗をベース盤に押圧する排気系とを備えており、
さらに、
ベース盤は、枠体が嵌り込む溝を有しており、
この溝のうち、スクリーン印刷版下材の中心に近い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材の厚さと実質的に同じであり、スクリーン印刷版下材の中心から遠い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材の厚さとマスクの厚さの和と実質的に同じであることを特徴とするスクリーン印刷版下材露光装置。 - 前記カバーは透光性の板から成るものであり、前記実質的に同じとは、前記排気系による排気の際、前記ベース盤に前記紗が密着し、かつ、前記カバーと前記ベース盤との間の気密性が確保される範囲内で、同じという意味であることを特徴とする請求項1記載のスクリーン印刷版下材露光装置。
- 前記溝のうち、前記スクリーン印刷版下材の中心に近い側の側壁の高さは、前記スクリーン印刷版下材の厚さに比べて、前記紗の破損が無い範囲内で高いことを特徴とする請求項1又は2記載のスクリーン印刷版下材露光装置。
- 前記カバーは柔軟性を有するものであって、前記溝のうち、前記スクリーン印刷版下材の中心から遠い側の側壁の高さと、前記スクリーン印刷版下材の厚さとマスクの厚さの和との差異は、柔軟性を有するカバーが前記マスクの端面又は前記枠体の側面を押圧しない範囲内の大きさとなっていることを特徴とする請求項1記載のスクリーン印刷版下材露光装置。
- レジストが塗られた紗と紗を張った枠体とからなるスクリーン印刷版下材をマスクを介して露光するスクリーン印刷版下材露光装置であって、
マスクを挟み込みながらスクリーン印刷版下材を受ける透光性のベース盤と、
マスクを挟み込みながらスクリーン印刷版下材を受けたベース盤を覆うカバーと、
ベース盤を通してしてレジストに光を照射する光源と、
カバーがベース盤を覆った際、ベース盤とカバーとの隙間の空間を排気することでマスク及び紗をベース盤に押圧する排気系とを備えており、
ベース盤は、枠体が嵌り込む溝を有しており、
この溝のうち、スクリーン印刷版下材の中心に近い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材の厚さからマスクの厚さを引いた大きさと実質的に同じであり、スクリーン印刷版下材の中心から遠い側の側壁の高さは、スクリーン印刷版下材の厚さと実質的に同じであることを特徴とするスクリーン印刷版下材露光装置。 - 前記ベース盤は、前記溝の寸法又は形状を変更できるものであることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のスクリーン印刷版下材露光装置。
- 前記ベース盤は、前記紗と密着する部分にゴムライニングが施されていることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のスクリーン印刷版下材露光装置。
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JP2002310343A JP2004145033A (ja) | 2002-10-24 | 2002-10-24 | スクリーン印刷版下材露光装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2011235225A (ja) * | 2010-05-10 | 2011-11-24 | Panasonic Corp | インクジェット装置 |
WO2015186928A1 (ko) * | 2014-06-02 | 2015-12-10 | 김재우 | 액정 보호용 글래스의 패턴 인쇄 방법 및 이에 제조된 액정 보호용 글래스 |
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CN118363246A (zh) * | 2024-04-30 | 2024-07-19 | 济南新芯微电子有限公司 | 一种光刻版结构及其加工方法 |
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2002
- 2002-10-24 JP JP2002310343A patent/JP2004145033A/ja active Pending
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