JP2004100904A - 無段変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】実際の路面勾配変化に応じて基本変速特性を的確に補正し、運転者に違和感を与えることのない無段変速機の変速制御装置を提供する。
【解決手段】無段変速機の入力側回転体とエンジンとの間に、入力側回転体とエンジンとを直結状態と直結解除状態とに切り換えるロックアップクラッチを有し、勾配演算手段により演算される路面勾配に基づいて変速特性補正手段が基本変速特性を補正する変速制御装置であって、ロックアップクラッチの切り換え作動を判定するクラッチ作動判定手段と、勾配の演算を所定時間だけ中止することで基本変速特性の補正を中止するホールド制御手段とを変速機制御ユニットに設ける。ロックアップクラッチの係合条件が成立してから係合完了後に所定時間が経過するまで、ロックアップクラッチの開放完了後から所定時間が経過するまでの間は、ホールド制御手段はホールドフラグを設定して勾配の演算を中止する。
【選択図】 図4
【解決手段】無段変速機の入力側回転体とエンジンとの間に、入力側回転体とエンジンとを直結状態と直結解除状態とに切り換えるロックアップクラッチを有し、勾配演算手段により演算される路面勾配に基づいて変速特性補正手段が基本変速特性を補正する変速制御装置であって、ロックアップクラッチの切り換え作動を判定するクラッチ作動判定手段と、勾配の演算を所定時間だけ中止することで基本変速特性の補正を中止するホールド制御手段とを変速機制御ユニットに設ける。ロックアップクラッチの係合条件が成立してから係合完了後に所定時間が経過するまで、ロックアップクラッチの開放完了後から所定時間が経過するまでの間は、ホールド制御手段はホールドフラグを設定して勾配の演算を中止する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両に搭載される無段変速機の変速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の駆動系に適用される無段変速機(CVT)には、ベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機などがあり、いずれの場合においてもその変速比は走行状況に応じて自動的に制御されるようになっている。
【0003】
このような無段変速機の変速制御装置においては、変速比をスロットル開度、車速、あるいはエンジン回転数などの運転状態を示すパラメータに基づき、基本変速特性マップを参照することで目標プライマリプーリ回転数を設定している。この目標プライマリプーリ回転数に実プライマリプーリ回転数が収束するように追従制御することで、無段変速機の変速比はローからオーバードライブまで連続的に設定される。
【0004】
ここで、変速特性を決定する基本変速特性マップは、車両が標準重量で平坦路を最適に走行できるように、予め実験などから求めて設定されている場合が多い。従って、登坂路走行時に基本変速特性マップに基づく平坦路用の変速比を設定した場合には、トルク不足が生じて運転者に違和感を与えてしまう。また、降坂路走行時には、最適なエンジンブレーキ力を得ることができず同様に違和感を与えてしまう。
【0005】
そのため、平坦路走行時の走行抵抗に対する走行抵抗増加量を算出することにより、登坂路走行および降坂路走行を判断するとともに、走行抵抗増加量に応じて変速特性がダウンシフト側に補正される変速制御装置が開発されている(たとえば、特許文献1参照。)。このような変速制御装置においては、登降坂路走行時の走行抵抗増加量に基づいて運転者に違和感を与えることのない目標駆動力が設定され、登降坂路走行判断時の車速とダウンシフト側に補正される変速特性とにより達成駆動力が推定される。次いで、目標駆動力に対して達成駆動力が収束するように変速比補正量が設定され、所定の基本変速特性マップに格納される目標プライマリプーリ回転数は変速比補正量によってダウンシフト側に補正される。そして、補正された目標プライマリプーリ回転数を用いて、走行状況に応じた目標変速比が設定されることになる。
【0006】
また、走行抵抗増加量は駆動輪から発生する発生駆動力から空気抵抗や転がり抵抗などを減算することによって算出されるものであるため、走行中にブレーキ操作を行うと正確に走行抵抗増加量を算出することができず、正常な勾配判断を行えないおそれがある。そこで、ブレーキ操作時の走行抵抗増加量の更新を中止するとともに、前回の走行抵抗増加量を維持するようにしたホールド制御技術が開発されている(たとえば、特許文献1参照。)。これにより、ブレーキ操作の影響を受けることなく走行抵抗増加量の設定を行うことができ、勾配に応じた変速特性補正の信頼性を向上させることができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−182665号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ブレーキ操作だけに限らず、走行状況によってクランク軸と入力軸とを直結するロックアップクラッチも発生駆動力に変動を生じさせるため、走行抵抗増加量の算出に影響を与える要因となっている。ロックアップクラッチは、直結時の係合ショックを回避すべく半係合状態つまり半クラッチ状態を経て係合するため、各係合状態に応じて変速機を構成する各回転体に慣性力の変動を生じさせており、さらに、クラッチ係合状態に応じたエンジンの点火時期の切り換えによってもエンジントルク変動を発生させている。
【0009】
従って、ロックアップクラッチの作動を考慮することなく走行抵抗増加量の算出を行った場合には、算出された走行抵抗増加量が路面勾配を正確に反映していないおそれがあり、この走行抵抗増加量に基づいて補正される基本変速特性は、実際の路面勾配と乖離した路面勾配に対応してしまうおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、ロックアップクラッチの係合作動を考慮することにより、実際の路面勾配変化に応じて基本変速特性を的確に補正し、運転者に違和感を与えることのない無段変速機の変速制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の無段変速機の変速制御装置は、エンジンに駆動される入力側回転体の回転数を動力伝達要素を介して無段階に変化させて出力側回転体に伝達する無段変速機の変速制御装置であって、前記エンジンと前記入力側回転体との間に設けられ、前記エンジンと前記入力側回転体とを直結状態と直結解除状態とに切り換え作動するロックアップクラッチと、前記ロックアップクラッチの切り換え作動を判定するクラッチ作動判定手段と、走行路面の勾配を演算する勾配演算手段と、前記勾配に基づいて基本変速特性を補正する変速特性補正手段と、前記ロックアップクラッチの切り換え作動が判定されたときには、前記勾配の更新を所定時間だけ中止することにより基本変速特性の補正を中止するホールド制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の無段変速機の変速制御装置は、前記ホールド制御手段は前記ロックアップクラッチが直結状態に切り換え作動されたときに前記勾配の更新を所定時間だけ中止することにより基本変速特性の補正を中止することを特徴とする。
【0013】
本発明の無段変速機の変速制御装置は、前記ホールド制御手段は前記ロックアップクラッチが直結解除状態に切り換え作動されたときに前記勾配の更新を所定時間だけ中止することにより基本変速特性の補正を中止することを特徴とする。
【0014】
本発明の無段変速機の変速制御装置は、前記勾配は車両の走行抵抗に基づいた勾配抵抗値であることを特徴とする。
【0015】
本発明の無段変速機の変速制御装置は、前記勾配は車両の走行抵抗に基づいた勾配抵抗値を用いて演算される路面勾配値であることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、基本変速特性を走行路面の勾配に応じて補正する場合において、ロックアップクラッチの切り換え作動時には所定時間だけ勾配の更新を中止することにより、ロックアップクラッチの切り換え作動により発生する出力トルク変動の影響を受けることなく勾配の演算を行うことができ、出力トルク変動の影響を受けることによって実際の勾配から乖離する勾配に基づく基本変速特性の補正を回避することができる。これにより、運転者に違和感を与えることなく登坂路あるいは降坂路において適正な駆動力やエンジンブレーキを発生させることができ、車両の走行フィーリングを向上させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は無段変速機の一例としてのベルト式無段変速機の駆動系を示す概略図であり、この無段変速機はエンジン1のクランク軸2の回転がトルクコンバータ3と前後進切換装置4を介して伝達される駆動側のプライマリ軸5と、これと平行となった被駆動側のセカンダリ軸6とを有している。
【0018】
プライマリ軸5には入力側回転体としてのプライマリプーリ7が設けられており、このプライマリプーリ7はプライマリ軸5に一体となった固定プーリ7aと、これに対向してプライマリ軸5にボールスプラインなどにより軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ7bとを有し、プーリのコーン面間隔つまりプーリ溝幅が可変となっている。セカンダリ軸6には出力側回転体としてのセカンダリプーリ8が設けられており、このセカンダリプーリ8はセカンダリ軸6に一体となった固定プーリ8aと、これに対向してセカンダリ軸6に可動プーリ7bと同様にして軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ8bとを有し、プーリ溝幅が可変となっている。
【0019】
プライマリプーリ7とセカンダリプーリ8との間には動力伝達要素としての駆動ベルト9が掛け渡されており、両方のプーリ7,8の溝幅を変化させてそれぞれのプーリに対する駆動ベルト9の巻き付け径の比率を変化させることにより、プライマリ軸5の回転がセカンダリ軸6に無段階に変速されて伝達されることになる。駆動ベルト9のプライマリプーリ7に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ8に対する巻き付け径をRsとすると、変速比つまりプーリ比iはi=Rs/Rpとなる。
【0020】
セカンダリ軸6の回転は減速歯車およびディファレンシャル装置10を有する歯車列を介して駆動輪11a,11bに伝達されるようになっており、前輪駆動の場合には駆動輪11a,11bは前輪となる。
【0021】
プライマリプーリ7の溝幅を変化させるために、プライマリ軸5にはプランジャ12が固定され、このプランジャ12の外周面に摺動自在に接触するプライマリシリンダ13が可動プーリ7bに固定されており、プランジャ12とプライマリシリンダ13とにより駆動油室14が形成されている。一方、セカンダリプーリ8の溝幅を変化させるために、セカンダリ軸6にはプランジャ15が固定され、このプランジャ15の外周面に摺動自在に接触するセカンダリシリンダ16が可動プーリ8bに固定されており、プランジャ15とセカンダリシリンダ16とにより駆動油室17が形成されている。それぞれの溝幅は、プライマリ側の駆動油室14に導入されるプライマリ圧Ppと、セカンダリ側の駆動油室17に導入されるセカンダリ圧Psとを調整することにより設定される。
【0022】
トルクコンバータ3はクランク軸2に連結されたポンプ側シェル18と、トルクコンバータ出力軸19に連結されたタービンランナー20とを有し、トルクコンバータ出力軸19にはポンプ側シェル18に固定されたフロントカバー21に係合するロックアップクラッチ22が取り付けられている。ロックアップクラッチ22の一方側にはアプライ室22aが形成され、他方側にはリリース室22bが形成されている。
【0023】
アプライ室22aとリリース室22bには調圧された作動油が供給され、リリース室22bの作動油の圧力を低下させるとアプライ室22aに供給される油圧によってロックアップクラッチ22はフロントカバー21に係合して直結状態つまりロックアップ状態となる。一方、リリース室22bに供給される油圧を高めてリリース室22bからアプライ室22aを介して作動油をトルクコンバータ3内で循環させることによりロックアップクラッチ22が開放されて直結解除状態となりトルクコンバータ3は作動状態になる。そして、リリース室22bに供給する油圧を調圧することにより、ロックアップクラッチ22はフロントカバー21に対してスリップ状態つまり半クラッチ状態となる。
【0024】
図2は無段変速機の変速制御装置を示す概略図であり、駆動油室14,17にはエンジンあるいは電動モータにより駆動されるオイルポンプ23によってオイルパン内の作動油が供給されるようになっている。オイルポンプ23の吐出口に接続されるセカンダリ圧路24は、駆動油室17に連通されるとともにセカンダリ圧調整弁25のセカンダリ圧ポートに連通されている。このセカンダリ圧調整弁25によって駆動油室17に供給されるセカンダリ圧Psは、駆動ベルト9に必要な伝達容量に見合った圧力に調整される。
【0025】
セカンダリ圧路24はプライマリ圧調整弁26のセカンダリ圧ポートに連通油路27を介して接続されており、プライマリ圧調整弁26のプライマリ圧ポートはプライマリ圧路28を介してプライマリ側の駆動油室14に連通されている。このプライマリ圧調整弁26によってプライマリ圧Ppは、目標変速比、車速などに応じた値に調整され、プライマリプーリ7の溝幅が変化して変速比が制御される。セカンダリ圧調整弁25およびプライマリ圧調整弁26は、それぞれ比例ソレノイド弁であり、変速機制御ユニット30からそれぞれのソレノイドコイル25a,26aに供給される電流値を制御することによってセカンダリ圧Psとプライマリ圧Ppが調整される。一方、リリース室22bの圧力を調整してロックアップクラッチ22を係合状態、開放状態およびスリップ状態に設定するための比例ソレノイド弁29のソレノイドコイル29aに変速機制御ユニット30から制御信号が送られるようになっている。
【0026】
変速機制御ユニット30にはプライマリプーリ7の回転数を検出するプライマリプーリ回転数センサ31、セカンダリプーリ8の回転数を検出するセカンダリプーリ回転数センサ32からの検出信号が入力される。さらに、エンジン回転数センサ33、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ34、車両の走行速度を検出する車速センサ35、ブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキスイッチ36、運転者によるセレクトレバーの操作により選択されたレンジを検出するレンジ検出センサ37、その他の各種センサ38からの検出信号が変速機制御ユニット30に入力される。
【0027】
変速機制御ユニット30は、それぞれのセンサなどからの信号に基づいてソレノイドコイル25a,26a,29aに対する制御信号を演算するマイクロプロセッサCPUと、テーブル、マップおよび演算式などの制御用のデータと制御用のプログラムとを格納するROMと、一時的にデータを格納するRAMと、入出力ポートなどを備えている。
【0028】
この無段変速機の変速比は、エンジン回転数、スロットル開度および車速などの運転状態を示すパラメータに基づいて目標変速比isを算出し、実際のプーリ比iを目標変速比isに収束させるようにそれぞれの比例ソレノイド弁25,26に対して制御信号を送ることにより制御される。車両が登坂路や降坂路を走行する際には、車両の走行抵抗が変化することになるので、その走行抵抗増加量ΔRdを演算するとともに走行抵抗増加量ΔRdを勾配抵抗値Rに換算し、この勾配抵抗値Rを用いて実際の路面勾配値Tを演算している。勾配抵抗値Rには車両の加速度要素が含まれており、路面の平坦度や駆動系のガタなどによって実際の路面とは異なる微小な振動が勾配抵抗値Rには重畳されているので、勾配抵抗値Rに基づいて路面勾配値Tを演算する際には、勾配抵抗値Rを加重平均処理して平滑化を行って路面勾配値Tを演算している。なお、勾配抵抗値Rと路面勾配値Tとは共に走行路面の勾配を示す値である。
【0029】
以下、登降坂路走行時における変速機制御ユニット30の機能について説明する。まず、変速機制御ユニット30は路面勾配値Tを演算して、この路面勾配値Tに基づき登坂路走行時あるいは降坂路走行時に運転手が違和感を感じることなく走行可能となる目標駆動力Ftrgtを算出する。次いで、この目標駆動力Ftrgtと、現在の車速においてスロットル全開時またはスロットル全閉時に発生することが予測される達成駆動力F(t)とを比較する。この比較により求められた偏差が所定範囲内に収束されるように変速比補正量Δrを設定し、この変速比補正量Δrを用いて基本変速特性マップに格納されている目標プライマリプーリ回転数NPの基本変速特性全体をダウンシフト側に補正する。そして、補正された基本変速特性マップを参照して目標プライマリプーリ回転数NPを設定し、登坂路走行時あるいは降坂路走行時の最終的な目標変速比isを設定する。このように設定される目標変速比isにプーリ比iが近づくように、プライマリプーリ7の駆動油室14に供給されるプライマリ圧Ppが制御される。
【0030】
変速機制御ユニット30は前述の路面勾配値Tを演算するため、駆動輪11a,11bの発生駆動力Foと走行抵抗Rdとを算出し、発生駆動力Foと走行抵抗Rdとの差から走行抵抗増加量ΔRdを算出する。次いで、走行抵抗増加量ΔRdを勾配抵抗値Rに換算するとともに、この勾配抵抗値Rを加重平均処理して平滑化することによって走行路面の勾配を示す路面勾配値Tを演算する。加重平均する際の加重値としては、勾配抵抗値R、車速、スロットル開度およびエンジン回転数などが用いられる。ここで、発生駆動力Foは、エンジントルクTe、プーリ比i、セカンダリプーリ8から駆動輪11a,11bまでの減速比および駆動輪半径を用いて算出され、走行抵抗Rdは、空気抵抗、転がり抵抗および加速抵抗を用いて算出される。
【0031】
なお、ROMに格納されるエンジントルクマップを参照するパラメータとして、エンジン回転数センサ33からのエンジン回転数と、スロットル開度センサ34からのスロットル開度とが入力され、これらのエンジン回転数およびスロットル開度に基づいてエンジントルクマップを補間計算付きで参照することによりエンジントルクTeが設定される。そして、プーリ比iはプーリ回転数センサ31,32の出力信号に基づいて算出した実プライマリプーリ回転数と実セカンダリプーリ回転数との比から算出される。
【0032】
また、空気抵抗は空気抵抗係数と車速センサ35からの走行速度とに基づいて算出され、転がり抵抗は舗装路面走行を基準に定数として与えられる。そして、加速抵抗は走行速度から得られる車体加速抵抗と、駆動系慣性モーメント及び角加速度に基づいて算出した回転抵抗との合計で与えられる。
【0033】
続いて、変速機制御ユニット30は、登坂路走行および降坂路走行において余裕駆動力を平坦路走行と同様に得られるように路面勾配値Tに基づいて目標駆動力Ftrgtを設定する。つまり、登坂路走行にはスロットル全開によって走行抵抗増加量ΔRd分の余裕駆動力を得ることのできる目標駆動力Ftrgtが設定され、降坂路走行時にはスロットル全閉によって走行抵抗増加量ΔRd分だけ余裕を持ってエンジンブレーキ力を働かせることの可能な目標駆動力Ftrgtが設定される。
【0034】
さらに、変速機制御ユニット30は現在の走行速度において登坂路走行時にはスロットル全開とする一方、降坂路走行時にはスロットル全閉としたときに発生が推定される達成駆動力F(t)を算出し、この達成駆動力F(t)を目標駆動力Ftrgtに対して所定範囲内に収束させるように、平坦路走行に対応した基本変速特性を補正する変速比補正量Δrを設定する。そして、変速機制御ユニット30は、基本変速特性マップに格納されている目標プライマリプーリ回転数NPの基本変速特性全体を、設定された変速比補正量Δr分だけダウンシフト側にオフセット補正する。
【0035】
これにより、登坂路走行あるいは降坂路走行において、路面勾配値Tに応じて補正される基本変速特性マップを走行速度とスロットル開度とに基づいて補間計算付きで参照することができ、目標プライマリプーリ回転数NPを平坦路走行と同様に設定した場合であっても、登坂路走行時には走行抵抗増加量ΔRd分の余裕駆動力を得ることが可能となり、降坂路走行時にはエンジンブレーキを有効に働かせることが可能となる。このように、変速機制御ユニット30は勾配演算手段として機能するとともに変速特性補正手段として機能するものである。
【0036】
次に、変速機制御ユニット30により、登降坂の勾配に応じて基本変速特性を補正する際に実行されるホールド制御について説明する。図3は本発明の一実施の形態である変速制御装置によるホールド制御判定処理を示すフローチャートであり、変速機制御ユニット30に設けられるホールド制御手段によってホールド制御への移行を判定する手順を示している。なお、ホールド制御は、走行抵抗増加量ΔRdを正確に算出することができず、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tを正確に演算することができないおそれがあるときには、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの演算を中止して前回の値を維持する制御である。
【0037】
図3に示すように、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの算出に影響を与える車両の走行状況、つまりエンジン1に所定以上の負荷変動を与えることでエンジントルクTeを変動させ発生駆動力Foを変動させ得る状況を判定する。まず、ステップS1ではブレーキスイッチ36からの出力信号を読み込むことでブレーキ操作中か否かを判定しており、ステップS2では予め設定される所定値Aと車両加速度とを比較することで所定以上の加速を行っていないかを判定する。そして、ステップS3では予め設定される所定値Bと車両減速度とを比較することで所定以上の減速を行っていないかを判定している。
【0038】
また、ステップS4ではエンジントルクTeの急激な増減が発生していないかを判定しており、ステップS5およびS6ではエンジントルクTeの変動を引き起こす燃料カットの復帰および開始を判定している。同様に、ステップS7ではクランク軸2によって駆動されるエアコンコンプレッサの起動時および停止時を判定している。さらに、ステップS8においては、ロックアップクラッチ22の係合作動や係合解除作動についての判定を行っている。
【0039】
そして、ステップS1〜S8に示す走行状況のいずれかに該当するときには、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tを誤って演算するおそれがあるため、ステップS9へ進みホールドフラグが設定され、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの演算を中止し前回算出された勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tを維持するホールド制御に移行する一方、ステップS1〜S8のいずれの走行状況にも該当せず、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tを安定して演算することのできるときには、ステップS10へ進みホールドフラグは解除される。
【0040】
図4はホールド制御判定処理の手順を詳細に示すフローチャートである。また、図4はロックアップクラッチ22の作動判定を行うステップS8の手順を示すものであり、図3に示すステップS8においては、図4に示す手順に従ってホールド制御への移行が判定される。なお、図4にステップS12,S15,S17で示すホールドフラグの設定および解除は、図3にS9,S10で示すステップと同一のステップを示すものである。
【0041】
図4に示すように、ステップS11では、変速機制御ユニット30に設けられるクラッチ作動判定手段によってロックアップクラッチ22の係合条件が判定される。クラッチ作動判定手段は車速およびスロットル開度をパラメータとして用い、ROMに格納されるロックアップ線図を参照することによって係合条件を判定する。
【0042】
ステップS11においてロックアップクラッチ22の係合条件が成立したときには、ステップS12においてホールドフラグが設定されホールド制御に移行するとともに、続くステップS13ではロックアップクラッチ22の係合作動の完了が判定される。
【0043】
ロックアップクラッチ22の係合作動の判定は次のように行われる。変速機制御ユニット30から比例ソレノイド弁29に出力される制御信号は、変速機制御ユニット30に設けられるクラッチ作動判定手段に対しても出力されており、クラッチ作動判定手段は減圧されるリリース室22bの供給油圧を監視することによって、ロックアップクラッチ22の係合状態を判定する。この判定によってロックアップクラッチ22の係合作動が完了していないと判断されたときには、ホールド制御状態を維持しながらルーチンを抜ける一方、ロックアップクラッチ22の係合作動が完了したと判断されたときには、ステップS14に進み係合完了後の経過時間が判定される。
【0044】
ステップS14において、ロックアップクラッチ22の係合完了後に、予め設定された所定時間が経過したと判定されたときには、ステップS15に進みホールドフラグが解除されることによってホールド制御状態が解除されてルーチンを抜ける一方、所定時間が経過していないと判定されたときにはホールド制御状態を維持しながらルーチンを抜ける。
【0045】
一方、前述のステップS11において、ロックアップクラッチ22の係合条件が成立していないときには、続くステップS16においてロックアップクラッチ22の開放作動状態が判定される。ステップS16では、クラッチ作動判定手段によってロックアップクラッチ22の開放作動が完了したと判定された後に、所定時間が経過したと判定されたときには、ステップS17に進みホールドフラグが設定されることによってホールド制御に移行した後にルーチンを抜ける一方、所定時間が経過していないと判定されたときには、ステップS15に進みホールドフラグが解除されることによってホールド制御状態が解除されてルーチンを抜ける。
【0046】
図5は本発明の一実施の形態である無段変速機の変速制御装置による勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの演算処理を示すフローチャートである。前述のホールド制御判定処理を終了すると、ステップS18でホールド制御の移行状態が判定され、ホールドフラグが解除されているときには、ステップS19に進み勾配抵抗値Rが演算され、続くステップS20において勾配抵抗値Rに基づき路面勾配値Tが演算される。一方、ホールドフラグが設定されているときには、ステップS21に進み、新たな勾配抵抗値Rが演算されることなく前回演算された勾配抵抗値Rが維持される。同様に、続くステップS22では新たな路面勾配値Tが演算されることなく前回演算された路面勾配値Tが維持される。
【0047】
このように、ロックアップクラッチ22を係合状態つまり直結状態に切り換えるときには、ロックアップクラッチ22の係合条件が成立して係合作動が完了してから所定時間を経過するまでの間は、ホールド制御が実行されるために勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの演算は中止され、前回算出された勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tを維持することになる。また、ロックアップクラッチ22を開放状態つまり直結解除状態に切り換えるときには、ロックアップクラッチ22の開放作動が完了してから所定時間を経過するまでの間は、同様にホールド制御が実行されることになる。
【0048】
従って、ロックアップクラッチ22が作動することによって、発生駆動力Foに不要な変動を発生させるおそれがあり、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの演算が実際の路面勾配を反映していないおそれがあるとき、つまりロックアップクラッチ22が係合または開放過程における半クラッチ状態にあり、無段変速機を構成する各回転体に慣性力変動を発生し得るときには、ホールド制御が実行されることによって、実際の路面勾配から乖離した路面勾配に基づいた基本変速特性のダウンシフト補正を回避することができる。これにより、運転者に違和感を与えることなく登坂路においては路面勾配に応じた余裕駆動力を発生させることができ、降坂路においては路面勾配に応じたエンジンブレーキを発生させることができる。また、乖離した路面勾配に対応したダウンシフト補正によるエンジン過回転を防止することができるため、振動および騒音の悪化を防止することにより車両の運転フィーリングを向上することもできる。
【0049】
なお、図3に示すステップS1〜S7のいずれかに該当する場合であっても、ステップS9においてホールドフラグが設定されホールド制御が実行されるため、実際の路面勾配から乖離した路面勾配に基づいた基本変速特性のダウンシフト補正は回避され、適正なダウンシフト補正が行われることになる。
【0050】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、前記実施の形態においてはベルト式無段変速機の変速制御装置として説明しているが、これに限らず、トロイダル式無段変速機など他の変速機に適用することもできる。
【0051】
また、走行路の勾配を示すものとして走行抵抗に基づいた勾配抵抗値Rと、勾配抵抗値Rを加重平均処理して平滑化した路面勾配値Tとを示し、ホールド制御の実行によって、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの更新を共に中止しているが、ホールド制御の際に更新を中止する値は路面勾配値Tのみとしても良く、勾配抵抗値Rのみの更新を中止することにより、前回の勾配抵抗値Rに基づいて路面勾配値Tを演算するようにしても良い。
【0052】
さらに、基本変速特性のダウンシフト補正量である変速比補正量Δrを設定するため、路面勾配値Tを用いて目標駆動力Ftrgtを設定するようにしているが、勾配抵抗値Rを用いて目標駆動力Ftrgtを設定するようにしても良い。
【0053】
なお、基本変速特性の補正量として変速比補正量Δrが用いられているが、これに限らず、変速比補正量Δrとセカンダリプーリ回転数とから得られる目標プライマリプーリ回転数補正量を用いても良いことは言うまでもない。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、基本変速特性を走行路面の勾配に応じて補正する場合において、ロックアップクラッチの切り換え作動時には所定時間だけ勾配の更新を中止することにより、ロックアップクラッチの切り換え作動により発生する出力トルク変動の影響を受けることなく勾配の演算を行うことができ、出力トルク変動の影響を受けることによって実際の勾配から乖離する勾配に基づく基本変速特性の補正を回避することができる。これにより、運転者に違和感を与えることなく登坂路あるいは降坂路において適正な駆動力やエンジンブレーキを発生させることができ、車両の走行フィーリングを向上させることができる。
【0055】
また、走行路面の勾配として車両の走行抵抗に基づく勾配抵抗値を用いることにより容易に勾配を演算することができる。さらに、走行路面の勾配として勾配抵抗値に基づく路面勾配値を用いることにより正確に勾配を演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】無段変速機の駆動系を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態である無段変速機の変速制御装置を示す概略図である。
【図3】ホールド判定処理手順を示すフローチャートである。
【図4】ロックアップクラッチ切り換え作動時のホールド判定処理手順を示すフローチャートである。
【図5】路面抵抗値および路面勾配値の演算処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
7 プライマリプーリ(入力側回転体)
8 セカンダリプーリ(出力側回転体)
9 駆動ベルト(動力伝達要素)
22 ロックアップクラッチ
30 変速機制御ユニット(クラッチ作動判定手段,勾配演算手段,変速特性補正手段,ホールド制御手段)
R 勾配抵抗値(勾配)
T 路面勾配値(勾配)
【発明の属する技術分野】
本発明は車両に搭載される無段変速機の変速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の駆動系に適用される無段変速機(CVT)には、ベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機などがあり、いずれの場合においてもその変速比は走行状況に応じて自動的に制御されるようになっている。
【0003】
このような無段変速機の変速制御装置においては、変速比をスロットル開度、車速、あるいはエンジン回転数などの運転状態を示すパラメータに基づき、基本変速特性マップを参照することで目標プライマリプーリ回転数を設定している。この目標プライマリプーリ回転数に実プライマリプーリ回転数が収束するように追従制御することで、無段変速機の変速比はローからオーバードライブまで連続的に設定される。
【0004】
ここで、変速特性を決定する基本変速特性マップは、車両が標準重量で平坦路を最適に走行できるように、予め実験などから求めて設定されている場合が多い。従って、登坂路走行時に基本変速特性マップに基づく平坦路用の変速比を設定した場合には、トルク不足が生じて運転者に違和感を与えてしまう。また、降坂路走行時には、最適なエンジンブレーキ力を得ることができず同様に違和感を与えてしまう。
【0005】
そのため、平坦路走行時の走行抵抗に対する走行抵抗増加量を算出することにより、登坂路走行および降坂路走行を判断するとともに、走行抵抗増加量に応じて変速特性がダウンシフト側に補正される変速制御装置が開発されている(たとえば、特許文献1参照。)。このような変速制御装置においては、登降坂路走行時の走行抵抗増加量に基づいて運転者に違和感を与えることのない目標駆動力が設定され、登降坂路走行判断時の車速とダウンシフト側に補正される変速特性とにより達成駆動力が推定される。次いで、目標駆動力に対して達成駆動力が収束するように変速比補正量が設定され、所定の基本変速特性マップに格納される目標プライマリプーリ回転数は変速比補正量によってダウンシフト側に補正される。そして、補正された目標プライマリプーリ回転数を用いて、走行状況に応じた目標変速比が設定されることになる。
【0006】
また、走行抵抗増加量は駆動輪から発生する発生駆動力から空気抵抗や転がり抵抗などを減算することによって算出されるものであるため、走行中にブレーキ操作を行うと正確に走行抵抗増加量を算出することができず、正常な勾配判断を行えないおそれがある。そこで、ブレーキ操作時の走行抵抗増加量の更新を中止するとともに、前回の走行抵抗増加量を維持するようにしたホールド制御技術が開発されている(たとえば、特許文献1参照。)。これにより、ブレーキ操作の影響を受けることなく走行抵抗増加量の設定を行うことができ、勾配に応じた変速特性補正の信頼性を向上させることができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−182665号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ブレーキ操作だけに限らず、走行状況によってクランク軸と入力軸とを直結するロックアップクラッチも発生駆動力に変動を生じさせるため、走行抵抗増加量の算出に影響を与える要因となっている。ロックアップクラッチは、直結時の係合ショックを回避すべく半係合状態つまり半クラッチ状態を経て係合するため、各係合状態に応じて変速機を構成する各回転体に慣性力の変動を生じさせており、さらに、クラッチ係合状態に応じたエンジンの点火時期の切り換えによってもエンジントルク変動を発生させている。
【0009】
従って、ロックアップクラッチの作動を考慮することなく走行抵抗増加量の算出を行った場合には、算出された走行抵抗増加量が路面勾配を正確に反映していないおそれがあり、この走行抵抗増加量に基づいて補正される基本変速特性は、実際の路面勾配と乖離した路面勾配に対応してしまうおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、ロックアップクラッチの係合作動を考慮することにより、実際の路面勾配変化に応じて基本変速特性を的確に補正し、運転者に違和感を与えることのない無段変速機の変速制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の無段変速機の変速制御装置は、エンジンに駆動される入力側回転体の回転数を動力伝達要素を介して無段階に変化させて出力側回転体に伝達する無段変速機の変速制御装置であって、前記エンジンと前記入力側回転体との間に設けられ、前記エンジンと前記入力側回転体とを直結状態と直結解除状態とに切り換え作動するロックアップクラッチと、前記ロックアップクラッチの切り換え作動を判定するクラッチ作動判定手段と、走行路面の勾配を演算する勾配演算手段と、前記勾配に基づいて基本変速特性を補正する変速特性補正手段と、前記ロックアップクラッチの切り換え作動が判定されたときには、前記勾配の更新を所定時間だけ中止することにより基本変速特性の補正を中止するホールド制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の無段変速機の変速制御装置は、前記ホールド制御手段は前記ロックアップクラッチが直結状態に切り換え作動されたときに前記勾配の更新を所定時間だけ中止することにより基本変速特性の補正を中止することを特徴とする。
【0013】
本発明の無段変速機の変速制御装置は、前記ホールド制御手段は前記ロックアップクラッチが直結解除状態に切り換え作動されたときに前記勾配の更新を所定時間だけ中止することにより基本変速特性の補正を中止することを特徴とする。
【0014】
本発明の無段変速機の変速制御装置は、前記勾配は車両の走行抵抗に基づいた勾配抵抗値であることを特徴とする。
【0015】
本発明の無段変速機の変速制御装置は、前記勾配は車両の走行抵抗に基づいた勾配抵抗値を用いて演算される路面勾配値であることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、基本変速特性を走行路面の勾配に応じて補正する場合において、ロックアップクラッチの切り換え作動時には所定時間だけ勾配の更新を中止することにより、ロックアップクラッチの切り換え作動により発生する出力トルク変動の影響を受けることなく勾配の演算を行うことができ、出力トルク変動の影響を受けることによって実際の勾配から乖離する勾配に基づく基本変速特性の補正を回避することができる。これにより、運転者に違和感を与えることなく登坂路あるいは降坂路において適正な駆動力やエンジンブレーキを発生させることができ、車両の走行フィーリングを向上させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は無段変速機の一例としてのベルト式無段変速機の駆動系を示す概略図であり、この無段変速機はエンジン1のクランク軸2の回転がトルクコンバータ3と前後進切換装置4を介して伝達される駆動側のプライマリ軸5と、これと平行となった被駆動側のセカンダリ軸6とを有している。
【0018】
プライマリ軸5には入力側回転体としてのプライマリプーリ7が設けられており、このプライマリプーリ7はプライマリ軸5に一体となった固定プーリ7aと、これに対向してプライマリ軸5にボールスプラインなどにより軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ7bとを有し、プーリのコーン面間隔つまりプーリ溝幅が可変となっている。セカンダリ軸6には出力側回転体としてのセカンダリプーリ8が設けられており、このセカンダリプーリ8はセカンダリ軸6に一体となった固定プーリ8aと、これに対向してセカンダリ軸6に可動プーリ7bと同様にして軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ8bとを有し、プーリ溝幅が可変となっている。
【0019】
プライマリプーリ7とセカンダリプーリ8との間には動力伝達要素としての駆動ベルト9が掛け渡されており、両方のプーリ7,8の溝幅を変化させてそれぞれのプーリに対する駆動ベルト9の巻き付け径の比率を変化させることにより、プライマリ軸5の回転がセカンダリ軸6に無段階に変速されて伝達されることになる。駆動ベルト9のプライマリプーリ7に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ8に対する巻き付け径をRsとすると、変速比つまりプーリ比iはi=Rs/Rpとなる。
【0020】
セカンダリ軸6の回転は減速歯車およびディファレンシャル装置10を有する歯車列を介して駆動輪11a,11bに伝達されるようになっており、前輪駆動の場合には駆動輪11a,11bは前輪となる。
【0021】
プライマリプーリ7の溝幅を変化させるために、プライマリ軸5にはプランジャ12が固定され、このプランジャ12の外周面に摺動自在に接触するプライマリシリンダ13が可動プーリ7bに固定されており、プランジャ12とプライマリシリンダ13とにより駆動油室14が形成されている。一方、セカンダリプーリ8の溝幅を変化させるために、セカンダリ軸6にはプランジャ15が固定され、このプランジャ15の外周面に摺動自在に接触するセカンダリシリンダ16が可動プーリ8bに固定されており、プランジャ15とセカンダリシリンダ16とにより駆動油室17が形成されている。それぞれの溝幅は、プライマリ側の駆動油室14に導入されるプライマリ圧Ppと、セカンダリ側の駆動油室17に導入されるセカンダリ圧Psとを調整することにより設定される。
【0022】
トルクコンバータ3はクランク軸2に連結されたポンプ側シェル18と、トルクコンバータ出力軸19に連結されたタービンランナー20とを有し、トルクコンバータ出力軸19にはポンプ側シェル18に固定されたフロントカバー21に係合するロックアップクラッチ22が取り付けられている。ロックアップクラッチ22の一方側にはアプライ室22aが形成され、他方側にはリリース室22bが形成されている。
【0023】
アプライ室22aとリリース室22bには調圧された作動油が供給され、リリース室22bの作動油の圧力を低下させるとアプライ室22aに供給される油圧によってロックアップクラッチ22はフロントカバー21に係合して直結状態つまりロックアップ状態となる。一方、リリース室22bに供給される油圧を高めてリリース室22bからアプライ室22aを介して作動油をトルクコンバータ3内で循環させることによりロックアップクラッチ22が開放されて直結解除状態となりトルクコンバータ3は作動状態になる。そして、リリース室22bに供給する油圧を調圧することにより、ロックアップクラッチ22はフロントカバー21に対してスリップ状態つまり半クラッチ状態となる。
【0024】
図2は無段変速機の変速制御装置を示す概略図であり、駆動油室14,17にはエンジンあるいは電動モータにより駆動されるオイルポンプ23によってオイルパン内の作動油が供給されるようになっている。オイルポンプ23の吐出口に接続されるセカンダリ圧路24は、駆動油室17に連通されるとともにセカンダリ圧調整弁25のセカンダリ圧ポートに連通されている。このセカンダリ圧調整弁25によって駆動油室17に供給されるセカンダリ圧Psは、駆動ベルト9に必要な伝達容量に見合った圧力に調整される。
【0025】
セカンダリ圧路24はプライマリ圧調整弁26のセカンダリ圧ポートに連通油路27を介して接続されており、プライマリ圧調整弁26のプライマリ圧ポートはプライマリ圧路28を介してプライマリ側の駆動油室14に連通されている。このプライマリ圧調整弁26によってプライマリ圧Ppは、目標変速比、車速などに応じた値に調整され、プライマリプーリ7の溝幅が変化して変速比が制御される。セカンダリ圧調整弁25およびプライマリ圧調整弁26は、それぞれ比例ソレノイド弁であり、変速機制御ユニット30からそれぞれのソレノイドコイル25a,26aに供給される電流値を制御することによってセカンダリ圧Psとプライマリ圧Ppが調整される。一方、リリース室22bの圧力を調整してロックアップクラッチ22を係合状態、開放状態およびスリップ状態に設定するための比例ソレノイド弁29のソレノイドコイル29aに変速機制御ユニット30から制御信号が送られるようになっている。
【0026】
変速機制御ユニット30にはプライマリプーリ7の回転数を検出するプライマリプーリ回転数センサ31、セカンダリプーリ8の回転数を検出するセカンダリプーリ回転数センサ32からの検出信号が入力される。さらに、エンジン回転数センサ33、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ34、車両の走行速度を検出する車速センサ35、ブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキスイッチ36、運転者によるセレクトレバーの操作により選択されたレンジを検出するレンジ検出センサ37、その他の各種センサ38からの検出信号が変速機制御ユニット30に入力される。
【0027】
変速機制御ユニット30は、それぞれのセンサなどからの信号に基づいてソレノイドコイル25a,26a,29aに対する制御信号を演算するマイクロプロセッサCPUと、テーブル、マップおよび演算式などの制御用のデータと制御用のプログラムとを格納するROMと、一時的にデータを格納するRAMと、入出力ポートなどを備えている。
【0028】
この無段変速機の変速比は、エンジン回転数、スロットル開度および車速などの運転状態を示すパラメータに基づいて目標変速比isを算出し、実際のプーリ比iを目標変速比isに収束させるようにそれぞれの比例ソレノイド弁25,26に対して制御信号を送ることにより制御される。車両が登坂路や降坂路を走行する際には、車両の走行抵抗が変化することになるので、その走行抵抗増加量ΔRdを演算するとともに走行抵抗増加量ΔRdを勾配抵抗値Rに換算し、この勾配抵抗値Rを用いて実際の路面勾配値Tを演算している。勾配抵抗値Rには車両の加速度要素が含まれており、路面の平坦度や駆動系のガタなどによって実際の路面とは異なる微小な振動が勾配抵抗値Rには重畳されているので、勾配抵抗値Rに基づいて路面勾配値Tを演算する際には、勾配抵抗値Rを加重平均処理して平滑化を行って路面勾配値Tを演算している。なお、勾配抵抗値Rと路面勾配値Tとは共に走行路面の勾配を示す値である。
【0029】
以下、登降坂路走行時における変速機制御ユニット30の機能について説明する。まず、変速機制御ユニット30は路面勾配値Tを演算して、この路面勾配値Tに基づき登坂路走行時あるいは降坂路走行時に運転手が違和感を感じることなく走行可能となる目標駆動力Ftrgtを算出する。次いで、この目標駆動力Ftrgtと、現在の車速においてスロットル全開時またはスロットル全閉時に発生することが予測される達成駆動力F(t)とを比較する。この比較により求められた偏差が所定範囲内に収束されるように変速比補正量Δrを設定し、この変速比補正量Δrを用いて基本変速特性マップに格納されている目標プライマリプーリ回転数NPの基本変速特性全体をダウンシフト側に補正する。そして、補正された基本変速特性マップを参照して目標プライマリプーリ回転数NPを設定し、登坂路走行時あるいは降坂路走行時の最終的な目標変速比isを設定する。このように設定される目標変速比isにプーリ比iが近づくように、プライマリプーリ7の駆動油室14に供給されるプライマリ圧Ppが制御される。
【0030】
変速機制御ユニット30は前述の路面勾配値Tを演算するため、駆動輪11a,11bの発生駆動力Foと走行抵抗Rdとを算出し、発生駆動力Foと走行抵抗Rdとの差から走行抵抗増加量ΔRdを算出する。次いで、走行抵抗増加量ΔRdを勾配抵抗値Rに換算するとともに、この勾配抵抗値Rを加重平均処理して平滑化することによって走行路面の勾配を示す路面勾配値Tを演算する。加重平均する際の加重値としては、勾配抵抗値R、車速、スロットル開度およびエンジン回転数などが用いられる。ここで、発生駆動力Foは、エンジントルクTe、プーリ比i、セカンダリプーリ8から駆動輪11a,11bまでの減速比および駆動輪半径を用いて算出され、走行抵抗Rdは、空気抵抗、転がり抵抗および加速抵抗を用いて算出される。
【0031】
なお、ROMに格納されるエンジントルクマップを参照するパラメータとして、エンジン回転数センサ33からのエンジン回転数と、スロットル開度センサ34からのスロットル開度とが入力され、これらのエンジン回転数およびスロットル開度に基づいてエンジントルクマップを補間計算付きで参照することによりエンジントルクTeが設定される。そして、プーリ比iはプーリ回転数センサ31,32の出力信号に基づいて算出した実プライマリプーリ回転数と実セカンダリプーリ回転数との比から算出される。
【0032】
また、空気抵抗は空気抵抗係数と車速センサ35からの走行速度とに基づいて算出され、転がり抵抗は舗装路面走行を基準に定数として与えられる。そして、加速抵抗は走行速度から得られる車体加速抵抗と、駆動系慣性モーメント及び角加速度に基づいて算出した回転抵抗との合計で与えられる。
【0033】
続いて、変速機制御ユニット30は、登坂路走行および降坂路走行において余裕駆動力を平坦路走行と同様に得られるように路面勾配値Tに基づいて目標駆動力Ftrgtを設定する。つまり、登坂路走行にはスロットル全開によって走行抵抗増加量ΔRd分の余裕駆動力を得ることのできる目標駆動力Ftrgtが設定され、降坂路走行時にはスロットル全閉によって走行抵抗増加量ΔRd分だけ余裕を持ってエンジンブレーキ力を働かせることの可能な目標駆動力Ftrgtが設定される。
【0034】
さらに、変速機制御ユニット30は現在の走行速度において登坂路走行時にはスロットル全開とする一方、降坂路走行時にはスロットル全閉としたときに発生が推定される達成駆動力F(t)を算出し、この達成駆動力F(t)を目標駆動力Ftrgtに対して所定範囲内に収束させるように、平坦路走行に対応した基本変速特性を補正する変速比補正量Δrを設定する。そして、変速機制御ユニット30は、基本変速特性マップに格納されている目標プライマリプーリ回転数NPの基本変速特性全体を、設定された変速比補正量Δr分だけダウンシフト側にオフセット補正する。
【0035】
これにより、登坂路走行あるいは降坂路走行において、路面勾配値Tに応じて補正される基本変速特性マップを走行速度とスロットル開度とに基づいて補間計算付きで参照することができ、目標プライマリプーリ回転数NPを平坦路走行と同様に設定した場合であっても、登坂路走行時には走行抵抗増加量ΔRd分の余裕駆動力を得ることが可能となり、降坂路走行時にはエンジンブレーキを有効に働かせることが可能となる。このように、変速機制御ユニット30は勾配演算手段として機能するとともに変速特性補正手段として機能するものである。
【0036】
次に、変速機制御ユニット30により、登降坂の勾配に応じて基本変速特性を補正する際に実行されるホールド制御について説明する。図3は本発明の一実施の形態である変速制御装置によるホールド制御判定処理を示すフローチャートであり、変速機制御ユニット30に設けられるホールド制御手段によってホールド制御への移行を判定する手順を示している。なお、ホールド制御は、走行抵抗増加量ΔRdを正確に算出することができず、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tを正確に演算することができないおそれがあるときには、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの演算を中止して前回の値を維持する制御である。
【0037】
図3に示すように、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの算出に影響を与える車両の走行状況、つまりエンジン1に所定以上の負荷変動を与えることでエンジントルクTeを変動させ発生駆動力Foを変動させ得る状況を判定する。まず、ステップS1ではブレーキスイッチ36からの出力信号を読み込むことでブレーキ操作中か否かを判定しており、ステップS2では予め設定される所定値Aと車両加速度とを比較することで所定以上の加速を行っていないかを判定する。そして、ステップS3では予め設定される所定値Bと車両減速度とを比較することで所定以上の減速を行っていないかを判定している。
【0038】
また、ステップS4ではエンジントルクTeの急激な増減が発生していないかを判定しており、ステップS5およびS6ではエンジントルクTeの変動を引き起こす燃料カットの復帰および開始を判定している。同様に、ステップS7ではクランク軸2によって駆動されるエアコンコンプレッサの起動時および停止時を判定している。さらに、ステップS8においては、ロックアップクラッチ22の係合作動や係合解除作動についての判定を行っている。
【0039】
そして、ステップS1〜S8に示す走行状況のいずれかに該当するときには、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tを誤って演算するおそれがあるため、ステップS9へ進みホールドフラグが設定され、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの演算を中止し前回算出された勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tを維持するホールド制御に移行する一方、ステップS1〜S8のいずれの走行状況にも該当せず、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tを安定して演算することのできるときには、ステップS10へ進みホールドフラグは解除される。
【0040】
図4はホールド制御判定処理の手順を詳細に示すフローチャートである。また、図4はロックアップクラッチ22の作動判定を行うステップS8の手順を示すものであり、図3に示すステップS8においては、図4に示す手順に従ってホールド制御への移行が判定される。なお、図4にステップS12,S15,S17で示すホールドフラグの設定および解除は、図3にS9,S10で示すステップと同一のステップを示すものである。
【0041】
図4に示すように、ステップS11では、変速機制御ユニット30に設けられるクラッチ作動判定手段によってロックアップクラッチ22の係合条件が判定される。クラッチ作動判定手段は車速およびスロットル開度をパラメータとして用い、ROMに格納されるロックアップ線図を参照することによって係合条件を判定する。
【0042】
ステップS11においてロックアップクラッチ22の係合条件が成立したときには、ステップS12においてホールドフラグが設定されホールド制御に移行するとともに、続くステップS13ではロックアップクラッチ22の係合作動の完了が判定される。
【0043】
ロックアップクラッチ22の係合作動の判定は次のように行われる。変速機制御ユニット30から比例ソレノイド弁29に出力される制御信号は、変速機制御ユニット30に設けられるクラッチ作動判定手段に対しても出力されており、クラッチ作動判定手段は減圧されるリリース室22bの供給油圧を監視することによって、ロックアップクラッチ22の係合状態を判定する。この判定によってロックアップクラッチ22の係合作動が完了していないと判断されたときには、ホールド制御状態を維持しながらルーチンを抜ける一方、ロックアップクラッチ22の係合作動が完了したと判断されたときには、ステップS14に進み係合完了後の経過時間が判定される。
【0044】
ステップS14において、ロックアップクラッチ22の係合完了後に、予め設定された所定時間が経過したと判定されたときには、ステップS15に進みホールドフラグが解除されることによってホールド制御状態が解除されてルーチンを抜ける一方、所定時間が経過していないと判定されたときにはホールド制御状態を維持しながらルーチンを抜ける。
【0045】
一方、前述のステップS11において、ロックアップクラッチ22の係合条件が成立していないときには、続くステップS16においてロックアップクラッチ22の開放作動状態が判定される。ステップS16では、クラッチ作動判定手段によってロックアップクラッチ22の開放作動が完了したと判定された後に、所定時間が経過したと判定されたときには、ステップS17に進みホールドフラグが設定されることによってホールド制御に移行した後にルーチンを抜ける一方、所定時間が経過していないと判定されたときには、ステップS15に進みホールドフラグが解除されることによってホールド制御状態が解除されてルーチンを抜ける。
【0046】
図5は本発明の一実施の形態である無段変速機の変速制御装置による勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの演算処理を示すフローチャートである。前述のホールド制御判定処理を終了すると、ステップS18でホールド制御の移行状態が判定され、ホールドフラグが解除されているときには、ステップS19に進み勾配抵抗値Rが演算され、続くステップS20において勾配抵抗値Rに基づき路面勾配値Tが演算される。一方、ホールドフラグが設定されているときには、ステップS21に進み、新たな勾配抵抗値Rが演算されることなく前回演算された勾配抵抗値Rが維持される。同様に、続くステップS22では新たな路面勾配値Tが演算されることなく前回演算された路面勾配値Tが維持される。
【0047】
このように、ロックアップクラッチ22を係合状態つまり直結状態に切り換えるときには、ロックアップクラッチ22の係合条件が成立して係合作動が完了してから所定時間を経過するまでの間は、ホールド制御が実行されるために勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの演算は中止され、前回算出された勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tを維持することになる。また、ロックアップクラッチ22を開放状態つまり直結解除状態に切り換えるときには、ロックアップクラッチ22の開放作動が完了してから所定時間を経過するまでの間は、同様にホールド制御が実行されることになる。
【0048】
従って、ロックアップクラッチ22が作動することによって、発生駆動力Foに不要な変動を発生させるおそれがあり、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの演算が実際の路面勾配を反映していないおそれがあるとき、つまりロックアップクラッチ22が係合または開放過程における半クラッチ状態にあり、無段変速機を構成する各回転体に慣性力変動を発生し得るときには、ホールド制御が実行されることによって、実際の路面勾配から乖離した路面勾配に基づいた基本変速特性のダウンシフト補正を回避することができる。これにより、運転者に違和感を与えることなく登坂路においては路面勾配に応じた余裕駆動力を発生させることができ、降坂路においては路面勾配に応じたエンジンブレーキを発生させることができる。また、乖離した路面勾配に対応したダウンシフト補正によるエンジン過回転を防止することができるため、振動および騒音の悪化を防止することにより車両の運転フィーリングを向上することもできる。
【0049】
なお、図3に示すステップS1〜S7のいずれかに該当する場合であっても、ステップS9においてホールドフラグが設定されホールド制御が実行されるため、実際の路面勾配から乖離した路面勾配に基づいた基本変速特性のダウンシフト補正は回避され、適正なダウンシフト補正が行われることになる。
【0050】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、前記実施の形態においてはベルト式無段変速機の変速制御装置として説明しているが、これに限らず、トロイダル式無段変速機など他の変速機に適用することもできる。
【0051】
また、走行路の勾配を示すものとして走行抵抗に基づいた勾配抵抗値Rと、勾配抵抗値Rを加重平均処理して平滑化した路面勾配値Tとを示し、ホールド制御の実行によって、勾配抵抗値Rおよび路面勾配値Tの更新を共に中止しているが、ホールド制御の際に更新を中止する値は路面勾配値Tのみとしても良く、勾配抵抗値Rのみの更新を中止することにより、前回の勾配抵抗値Rに基づいて路面勾配値Tを演算するようにしても良い。
【0052】
さらに、基本変速特性のダウンシフト補正量である変速比補正量Δrを設定するため、路面勾配値Tを用いて目標駆動力Ftrgtを設定するようにしているが、勾配抵抗値Rを用いて目標駆動力Ftrgtを設定するようにしても良い。
【0053】
なお、基本変速特性の補正量として変速比補正量Δrが用いられているが、これに限らず、変速比補正量Δrとセカンダリプーリ回転数とから得られる目標プライマリプーリ回転数補正量を用いても良いことは言うまでもない。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、基本変速特性を走行路面の勾配に応じて補正する場合において、ロックアップクラッチの切り換え作動時には所定時間だけ勾配の更新を中止することにより、ロックアップクラッチの切り換え作動により発生する出力トルク変動の影響を受けることなく勾配の演算を行うことができ、出力トルク変動の影響を受けることによって実際の勾配から乖離する勾配に基づく基本変速特性の補正を回避することができる。これにより、運転者に違和感を与えることなく登坂路あるいは降坂路において適正な駆動力やエンジンブレーキを発生させることができ、車両の走行フィーリングを向上させることができる。
【0055】
また、走行路面の勾配として車両の走行抵抗に基づく勾配抵抗値を用いることにより容易に勾配を演算することができる。さらに、走行路面の勾配として勾配抵抗値に基づく路面勾配値を用いることにより正確に勾配を演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】無段変速機の駆動系を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態である無段変速機の変速制御装置を示す概略図である。
【図3】ホールド判定処理手順を示すフローチャートである。
【図4】ロックアップクラッチ切り換え作動時のホールド判定処理手順を示すフローチャートである。
【図5】路面抵抗値および路面勾配値の演算処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
7 プライマリプーリ(入力側回転体)
8 セカンダリプーリ(出力側回転体)
9 駆動ベルト(動力伝達要素)
22 ロックアップクラッチ
30 変速機制御ユニット(クラッチ作動判定手段,勾配演算手段,変速特性補正手段,ホールド制御手段)
R 勾配抵抗値(勾配)
T 路面勾配値(勾配)
Claims (5)
- エンジンに駆動される入力側回転体の回転数を動力伝達要素を介して無段階に変化させて出力側回転体に伝達する無段変速機の変速制御装置であって、
前記エンジンと前記入力側回転体との間に設けられ、前記エンジンと前記入力側回転体とを直結状態と直結解除状態とに切り換え作動するロックアップクラッチと、
前記ロックアップクラッチの切り換え作動を判定するクラッチ作動判定手段と、
走行路面の勾配を演算する勾配演算手段と、
前記勾配に基づいて基本変速特性を補正する変速特性補正手段と、
前記ロックアップクラッチの切り換え作動が判定されたときには、前記勾配の更新を所定時間だけ中止することにより基本変速特性の補正を中止するホールド制御手段とを有することを特徴とする無段変速機の変速制御装置。 - 請求項1記載の無段変速機の変速制御装置において、
前記ホールド制御手段は前記ロックアップクラッチが直結状態に切り換え作動されたときに前記勾配の更新を所定時間だけ中止することにより基本変速特性の補正を中止することを特徴とする無段変速機の変速制御装置。 - 請求項1記載の無段変速機の変速制御装置において、
前記ホールド制御手段は前記ロックアップクラッチが直結解除状態に切り換え作動されたときに前記勾配の更新を所定時間だけ中止することにより基本変速特性の補正を中止することを特徴とする無段変速機の変速制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の無段変速機の変速制御装置において、
前記勾配は車両の走行抵抗に基づいた勾配抵抗値であることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の無段変速機の変速制御装置において、
前記勾配は車両の走行抵抗に基づいた勾配抵抗値を用いて演算される路面勾配値であることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
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-
2002
- 2002-09-12 JP JP2002266614A patent/JP2004100904A/ja active Pending
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