JP2004099793A - β型銅フタロシアニン顔料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】印刷インキ、塗料、着色成型品等の着色物の着色力、鮮明性をより優れたものとできるβ型銅フタロシアニン顔料の製造方法を提供する。
【解決手段】平均一次粒子径が0.01〜1.00μm、且つβ型結晶が質量換算で85%以上の粗製銅フタロシアニンを顔料化処理することを特徴とするβ型銅フタロシアニン顔料の製造方法。粗製銅フタロシアニンが固相法によって得られる粗製銅フタロシアニンである、前記β型銅フタロシアニン顔料の製造方法。
【選択図】 なし。
【解決手段】平均一次粒子径が0.01〜1.00μm、且つβ型結晶が質量換算で85%以上の粗製銅フタロシアニンを顔料化処理することを特徴とするβ型銅フタロシアニン顔料の製造方法。粗製銅フタロシアニンが固相法によって得られる粗製銅フタロシアニンである、前記β型銅フタロシアニン顔料の製造方法。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、β型銅フタロシアニン顔料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のβ型銅フタロシアニン顔料の製造方法としては、平均一次粒子径が数十〜数百μmのβ型結晶粗大粒子から成る粗製銅フタロシアニンを合成し、該粗製銅フタロシアニンを食塩等の磨砕助剤と共に有機溶剤の存在下で、ニーダー等の混練設備を使い機械的磨砕を行うソルベントソルトミリング法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
また別法として、該粗製銅フタロシアニンをアトライター等により乾式磨砕し、得られた微細な粗製銅フタロシアニン(α型結晶とβ型結晶の混晶磨砕物)を有機溶剤中で加熱処理するソルベント法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、前記記載の製造方法により得られる顔料では、より高度の着色力や鮮明性を有する着色物が得られないという欠点があった。
【0003】
【非特許文献1】
色材協会、顔料技術研究会、日本顔料技術協会共著、「第41回顔料入門講座テキスト(1999)」(第207頁〜第208頁)。
【特許文献1】
特開平10−101955号公報(第2頁〜第5頁)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、印刷インキ、塗料、着色成型品等の着色物の着色力、鮮明性をより優れたものとできるβ型銅フタロシアニン顔料の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、顔料化処理に用いる原料として、平均一次粒子径が数十〜数百μmのβ型結晶粗大粒子から成る粗製銅フタロシアニンに代えて、平均一次粒子径が0.01〜1.00μm、且つβ型結晶が質量換算で85%以上の粗製銅フタロシアニンを用いることにより、印刷インキ、塗料、着色成型品等の着色物の着色力と鮮明性により優れたβ型銅フタロシアニン顔料を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、平均一次粒子径が0.01〜1.00μm、且つβ型結晶が質量換算で85%以上の粗製銅フタロシアニンを顔料化処理することを特徴とするβ型銅フタロシアニン顔料の製造方法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に使用する粗製銅フタロシアニンは、平均一次粒子径が0.01〜1.00μm、且つβ型結晶が質量換算で85%以上の粗製銅フタロシアニン(以下、微細な粗製銅フタロシアニンと称す。)である。ここで微細な粗製銅フタロシアニンは、前記した範囲内で出来るだけ小さい平均一次粒子径であり、且つ前記した範囲内で出来るだけβ型結晶含有割合が高いものであることが好ましい。
【0008】
本発明における平均一次粒子径とは、透過型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影し、二次元画像上の、凝集体を構成する粗製銅フタロシアニン一次粒子の50個につき、その長い方の径(長径)を各々求め、それを平均した値である。この際、試料である前記粗製銅フタロシアニンは、これを溶媒に超音波分散させてから顕微鏡で撮影する。
【0009】
またβ型結晶の含有割合は、X線回折測定装置等による測定等の公知慣用の方法により定めることができる。β型結晶の含有割合(%)は、例えば、原料の粗製銅フタロシアニン及び銅フタロシアニン顔料のα型及びβ型結晶形を表す、CuKα線、波長0.1541nmによる粉末X線回折図のピークの高さをLα及びLβとした場合、Lα/Lβと含有率の検量線から求めることができる。α型結晶又はβ型結晶の100%結晶は、各々公知慣用の製造方法にて調製できる。尚、粉末X線回折図におけるLαは特異ブラッグ角2θが6.8゜±0.2°の、Lβは9.2゜±0.2°のピークの高さをとった。
【0010】
尚、この微細な粗製銅フタロシアニンはどの様な方法で製造されたものであっても良い。
【0011】
本発明に使用する微細な粗製銅フタロシアニンは、例えば、無水フタル酸及び/又はその誘導体、銅及び/又はその化合物、尿素及び/又はその誘導体を、触媒の存在下、磨砕助剤中又はその不存在下、有機溶剤中又はその不存在下において、150〜300℃で常圧又は加圧下で加熱反応させることで得ることができる。ここで得られた反応物は無機及び有機不純物を除去するために、アルカリ水溶液及び/又は酸性水溶液中に分散し、濾過・洗浄することが好ましい。尚、上記反応において、圧力の条件に制約はないが、熱分解の抑制による尿素及び/又はその誘導体の節約、副反応の抑制による品質向上の点で加圧下による反応が好ましい。
【0012】
前記無水フタル酸及び/又はその誘導体としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、フタルイミド、フタル酸ナトリウム等の塩類、フタルアミド酸及びその塩またはそのエステル、フタロニトリル等が挙げられ、また、これらの混合物であってもよい。更に、無水フタル酸及び/又はその誘導体には、クロル基、アルキル基、ベンジル基、フェニル基等の置換基があってもよい。
【0013】
前記銅及び/又はその化合物としては、例えば、金属銅、第一銅または第二銅のハロゲン化物、酸化銅、硫酸銅、硫化銅、水酸化銅等が挙げられる。銅及び/又はその化合物の使用量は、無水フタル酸及び/又はその誘導体1モルに対して0.2〜0.4モルであり、好ましくは0.25〜0.35モルである。
【0014】
前記尿素及び/又はその誘導体としては、例えば、尿素、ビューレット、アンモニア等が挙げられる。尿素及び/又はその誘導体の使用量は、無水フタル酸及び/又はその誘導体1モルに対して2.5〜4.5モルであり、好ましくは3〜4モルである。
【0015】
前記触媒としては、例えば、モリブデン酸アンモニウム、酸化モリブデン、リンモリブデン酸等のモリブデン化合物、四塩化チタン、チタン酸エステル等のチタン化合物、塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物、ホウ酸、酸化アンチモン等が挙げられる。
【0016】
前記磨砕助剤としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム等のアルカリ金属塩、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム等のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、これらは2種以上を混合して存在させることもできる。
【0017】
前記有機溶剤としては、合成に際して無水フタル酸等の原料に対して不活性なものであればよく、種々の文献で公知の種々の化合物を特に制限なく使用することができる。例えば、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、テトラリン等の芳香族炭化水素;アルキルシクロヘキサン、デカリン、アルキルデカリン等の脂環式炭化水素;デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素;ニトロベンゼン、O−ニトロトルエン等の芳香族ニトロ化合物;トリクロロベンゼン、クロルナフタレン等の芳香族ハロゲン化炭化水素;ジフェニルエーテル等のエーテル類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、メチルスルホラン、ジメチルスルホラン、N−メチルスルホラン等の硫黄化合物、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等の複素環式化合物等が挙げられる。これらは2種以上の混合物であってもよい。
【0018】
前記反応器としては、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ボールミル、振動ミル、押出機、キルン、回転乾燥機、グラスライニング製反応釜等が挙げられる。
【0019】
本発明に使用する微細な粗製銅フタロシアニンとしては、中でも有機溶剤の不存在下で反応を行う固相法によって得られるものが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法における顔料化処理は、従来公知の粗製銅フタロシアニンの顔料化法と同じ方法である。ここで「顔料化」とは、粗製銅フタロシアニンを着色剤として使用可能な粒子径まで微細化することをいう。顔料化処理としては、具体的には以下の方法が挙げられる。
(1)ソルベントソルトミリング法
粗製銅フタロシアニンに食塩等の磨砕助剤と、β型への結晶転移を促進させる有機溶剤とを加えてニーダー等の磨砕装置で機械的に磨砕する方法。磨砕助剤としては、例えば、食塩、硫酸ナトリウム等の水溶性無機塩が用いられる。有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の水溶性で粘性の高い液体が用いられる。同法は質量換算で粗製銅フタロシアニン100部当たり、磨砕助剤100〜1000部、有機溶剤50〜500部を用い、温度80〜200℃で1〜10時間の範囲で行うことができる。磨砕装置としては、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ナウターミキサー、押し出し機の密閉系をなす装置が挙げられる。同法は、以下(2)、(3)の顔料化法に比べて最も着色力、鮮明性に優れたβ型銅フタロシアニン顔料が得られる。
(2)ソルベント法
粗製銅フタロシアニンをアトライター等で乾式磨砕した後に、有機溶剤等で加熱処理する方法。有機溶剤としては、例えば、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系有機溶剤が用いられる。これらの有機溶剤は、2種以上の混合物として用いることもでき、或いは、これらの有機溶剤は又はそれらの混合物と水との混合系を用いることもできる。同法は質量換算で粗製銅フタロシアニン100部当たり、有機溶剤1〜100部を用い、温度30〜200℃で0.5〜20時間の範囲で行うことができる。同法は、上記ソルベントソルトミリング法に比べて工程が簡略化されており、β型銅フタロシアニン顔料をより生産性高く製造する上で非常に有効な手段である。
(3)ビーズミル法
粗製銅フタロシアニンを含んだ水性分散体を磨砕助剤、有機溶剤の存在下又は不存在下でビーズミル等の分散装置にかけて機械的に磨砕する方法。分散装置としては、例えば、ボールミル、アトライター、ダイノーミル、ナノミル、ドライスミル等が挙げられる。同法は質量換算で粗製銅フタロシアニン100部当たり、水性媒体200〜2000部、磨砕助剤0〜200部を用い、温度20〜150℃で0.5〜24時間、或いはパス回数1〜10パスで行うことができる。
【0021】
本発明の製造方法において、顔料化処理としてソルベントソルトミリング法を採用すると、従来使用されている平均一次粒子径が数十〜数百μmのβ型結晶粗大粒子から成る粗製銅フタロシアニンを用いた場合と比べて、磨砕助剤の使用量が従来比で約1/2〜1/4と大幅に削減でき、磨砕時間も従来比で約1/2〜1/4と大幅に短縮でき、従来より高品質のβ型銅フタロシアニン顔料が生産性高く得られる。さらに、従来公知の条件で顔料化処理を行うと、従来では予想し得なかった着色力と鮮明性により優れたβ型銅フタロシアニン顔料が得られる。
【0022】
同様にソルベント法では、従来使用されている平均一次粒子径が数十〜数百μmのβ型結晶粗大粒子から成る粗製銅フタロシアニンを用いた場合と比べて、乾式磨砕時間が従来の約1/2〜1/4で従来と同等以上の品質のβ型銅フタロシアニン顔料が得られる。
【0023】
ビーズミル法では、従来使用されている平均一次粒子径が数十〜数百μmのβ型結晶粗大粒子から成る粗製銅フタロシアニンを用いた場合には達成し得なかった上記ソルベントソルトミリング法と同等以上の品質のβ型銅フタロシアニン顔料が得られる。
【0024】
前記(1)〜(3)の方法で得られた銅フタロシアニン顔料は、濾過・洗浄を行い、ウェットケーキで、或いは更に乾燥してパウダーで、各種用途に使用することができる。必要ならば粉砕や分級を行ってもよい。
【0025】
本発明の製造方法において、各種着色用途毎により優れた分散性や、分散安定性、流動性等の諸適性とするために、必要に応じて表面処理を行うことが好ましい。
【0026】
上記表面処理を行う際の表面処理剤としては、界面活性剤、ロジン類、銅フタロシアニン誘導体、樹脂ワニス、金属塩等が挙げられる。例えば、銅フタロシアニン誘導体としては、銅フタロシアニンの4個のベンゼン核の1個以上に置換基を有し、置換基としてはスルホン酸基又はその金属塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0027】
本発明の製造方法では、印刷インキ、例えば、平版印刷インキ等の調製に好適なβ型銅フタロシアニン顔料を得ることが可能である。
【0028】
【実施例】
次に本発明を実施例、比較例にて具体的に説明する。以下、断りのない限り、%は質量%、部は質量部を意味する。
【0029】
<合成例1>(微細な粗製銅フタロシアニンの合成)
10Lグラスライニング製オートクレーブ容器に、無水フタル酸1000部、尿素1800部、塩化第一銅180部、モリブデン酸アンモニウム5部、塩化マグネシウム1000部、塩化ナトリウム1000部を加え、170℃まで除々に加熱した後、170℃で4時間加熱攪拌を続け反応を終了させた。冷却後、反応物を取り出し、10倍量の2%NaOH水溶液、1%HCl水溶液、温水の順で洗浄、濾過を繰り返し、次いで乾燥し、粗製銅フタロシアニン780部を得た。上記で得られた粗製銅フタロシアニンは、前記した測定方法に従った測定から平均一次粒子径が0.05〜0.3μmで、β型結晶100%からなる微細な粗製銅フタロシアニンであった。尚、透過型電子顕微鏡としては、日本電子(株)製JEM−2010を、X線回折装置としては、(株)リガク製LINT1100を用いた(以下、同様。)。
【0030】
<実施例1> (ソルベントソルトミリング法顔料化−1)
2L双腕型ニーダーに、上記合成例1で得られた微細な粗製銅フタロシアニン225部、食塩675部、ジエチレングリコール140部を加え、90〜95℃で7時間加熱磨砕した。その間、内容物が均一な粘調性を保つように適宜ジエチレングリコールを加えた。得られた磨砕物を20倍の温水で洗浄、濾過、乾燥し、β型銅フタロシアニン顔料を得た。
【0031】
<実施例2> (ソルベントソルトミリング法顔料化−2)
上記合成例1で得られた微細な粗製銅フタロシアニン120部、食塩840部、ジエチレングリコール140部を用いる以外は実施例1と全く同様の操作を行って、β型銅フタロシアニン顔料を得た。
【0032】
<実施例3>(ソルベント法顔料化)
5Lアトライターに3/8インチスチールビーズ13Kgを充填し、上記合成例1で得られた微細な粗製銅フタロシアニン500部を加え、90℃で20分間乾式磨砕し、α型結晶60%及びβ型結晶40%から構成される、平均一次粒子径が0.001〜0.1μmの粗製銅フタロシアニンを得た。次に、500mlフラスコに上記粗製銅フタロシアニン30部、イソブタノール100部、水200部を加え89℃で4時間加熱処理した後、イソブタノールを留去し、濾過、洗浄、乾燥して、β型銅フタロシアニン顔料を得た。
【0033】
<比較合成例1> (粗製銅フタロシアニンの合成)
10Lグラスライニング製オートクレーブ容器に無水フタル酸1200部、尿素1565部、塩化第一銅200部、モリブデン酸アンモニウム5部、tert−アミルベンゼン(商品名、ハイゾールP、日本石油(株)製、アルキルベンゼン混合物)4Lを入れ200℃まで除々に加熱した後、2時間加熱攪拌し反応を終了させる。冷却後、反応物を取り出し、10倍量の2%NaOH水溶液、1%HCl水溶液、温水の順で洗浄、濾過を繰り返し、次いで乾燥し粗製銅フタロシアニン1065部を得た。上記で得られた粗製銅フタロシアニンは、平均一次粒子径が2〜100μmの粗大粒子で、β型結晶100%からなる粗製銅フタロシアニンであった。
【0034】
<比較例1>(ソルベントソルトミリング法顔料化)
上記比較合成例1で得られた粗製銅フタロシアニン120部、食塩840部、ジエチレングリコール140部を用いる以外は実施例1と全く同様の操作を行って、β型銅フタロシアニン顔料を得た。
【0035】
<比較例2>(ソルベント法顔料化)
上記比較合成例1で得られた粗製銅フタロシアニン500部を加え、90℃で60分間乾式磨砕する以外は実施例3と全く同様の操作を行って、β型銅フタロシアニン顔料を得た。
【0036】
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られたβ型銅フタロシアニン顔料を用いて、以下の各試験方法で平版印刷インキを作製し、鮮明性と着色力の比較評価を行った。
【0037】
[試験例]
《平版印刷インキ展色試験》
この試験法はJIS K−5101−4 甲法(1985年)に準じて行った。
【0038】
(濃色インキ)
実施例1〜3及び比較例1〜2のβ型銅フタロシアニン顔料0.32部及び平版印刷インキ用樹脂ワニス1.68部(大日本インキ化学工業(株)製)をフーバーマーラー(東洋精機(株)製)を用いて150lbの荷重のもと100回転を3回繰り返して練肉を行い、平版印刷インキ(濃色インキ)を作成した。
【0039】
(淡色インキ)
上記で得られた濃色インキ0.10部と白インキ2.00部(大日本インキ化学工業(株)製〔白顔料30%〕)をフーバーマーラー(東洋精機(株)製)を用いて50lbの荷重のもと50回転を3回繰り返して練肉を行い、平版印刷インキ(淡色インキ)を作成した。
【0040】
得られた各濃色インキ、淡色インキを試験インキとし、濃色インキをプルーフバウ印刷機でアート紙に展色し、そのアート紙を測色分光器(GRETAG MACBETH社製 SPM50)を用いて着色力を測定した。鮮明性は上記アート紙を目視判定9段階〔1(鮮明性小)>>5(標準)>>9(鮮明性大)〕で判定した。着色力は各比較例の顔料を標準(100%)としてシアン濃度の比で表した。
【0041】
上記の実施例1〜3及び比較例1〜2の平版印刷インキの鮮明性、着色力に関する測定結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
表1
【0043】
上記表1の結果から、微細な粗製銅フタロシアニンを顔料化処理して得た顔料を用いた最終平版印刷インキは、従来使用されている平均一次粒子径が数十〜数百μmのβ型結晶粗大粒子から成る粗製銅フタロシアニンを同様に顔料化処理して得た顔料を用いた最終平版印刷インキと比較した結果、着色力と鮮明性により優れていることが明らかである。さらに、同一着色力対比での単位時間当たりの顔料の生産性にも優れていることが明らかである。
従来は着色力が飽和した後でも、顔料化時間の経過に伴って、着色力が少しずつ上昇する傾向があるのに対して、本発明の製造方法においては、その傾向が見られず、実製造時での顔料化処理の時間制御がより容易となる。
【0044】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、平均一次粒子径が0.01〜1.00μm、且つβ型結晶が質量換算で85%以上の粗製銅フタロシアニンを用いて顔料化処理することにより、従来法の粗製銅フタロシアニンでは得られなかった平版印刷インキ用途において着色力と鮮明性により優れたβ型銅フタロシアニン顔料を製造できるという格別顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜2及び比較例1における、顔料化時間と平版印刷インキの着色力の関係を示した図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、β型銅フタロシアニン顔料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のβ型銅フタロシアニン顔料の製造方法としては、平均一次粒子径が数十〜数百μmのβ型結晶粗大粒子から成る粗製銅フタロシアニンを合成し、該粗製銅フタロシアニンを食塩等の磨砕助剤と共に有機溶剤の存在下で、ニーダー等の混練設備を使い機械的磨砕を行うソルベントソルトミリング法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
また別法として、該粗製銅フタロシアニンをアトライター等により乾式磨砕し、得られた微細な粗製銅フタロシアニン(α型結晶とβ型結晶の混晶磨砕物)を有機溶剤中で加熱処理するソルベント法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、前記記載の製造方法により得られる顔料では、より高度の着色力や鮮明性を有する着色物が得られないという欠点があった。
【0003】
【非特許文献1】
色材協会、顔料技術研究会、日本顔料技術協会共著、「第41回顔料入門講座テキスト(1999)」(第207頁〜第208頁)。
【特許文献1】
特開平10−101955号公報(第2頁〜第5頁)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、印刷インキ、塗料、着色成型品等の着色物の着色力、鮮明性をより優れたものとできるβ型銅フタロシアニン顔料の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、顔料化処理に用いる原料として、平均一次粒子径が数十〜数百μmのβ型結晶粗大粒子から成る粗製銅フタロシアニンに代えて、平均一次粒子径が0.01〜1.00μm、且つβ型結晶が質量換算で85%以上の粗製銅フタロシアニンを用いることにより、印刷インキ、塗料、着色成型品等の着色物の着色力と鮮明性により優れたβ型銅フタロシアニン顔料を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、平均一次粒子径が0.01〜1.00μm、且つβ型結晶が質量換算で85%以上の粗製銅フタロシアニンを顔料化処理することを特徴とするβ型銅フタロシアニン顔料の製造方法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に使用する粗製銅フタロシアニンは、平均一次粒子径が0.01〜1.00μm、且つβ型結晶が質量換算で85%以上の粗製銅フタロシアニン(以下、微細な粗製銅フタロシアニンと称す。)である。ここで微細な粗製銅フタロシアニンは、前記した範囲内で出来るだけ小さい平均一次粒子径であり、且つ前記した範囲内で出来るだけβ型結晶含有割合が高いものであることが好ましい。
【0008】
本発明における平均一次粒子径とは、透過型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影し、二次元画像上の、凝集体を構成する粗製銅フタロシアニン一次粒子の50個につき、その長い方の径(長径)を各々求め、それを平均した値である。この際、試料である前記粗製銅フタロシアニンは、これを溶媒に超音波分散させてから顕微鏡で撮影する。
【0009】
またβ型結晶の含有割合は、X線回折測定装置等による測定等の公知慣用の方法により定めることができる。β型結晶の含有割合(%)は、例えば、原料の粗製銅フタロシアニン及び銅フタロシアニン顔料のα型及びβ型結晶形を表す、CuKα線、波長0.1541nmによる粉末X線回折図のピークの高さをLα及びLβとした場合、Lα/Lβと含有率の検量線から求めることができる。α型結晶又はβ型結晶の100%結晶は、各々公知慣用の製造方法にて調製できる。尚、粉末X線回折図におけるLαは特異ブラッグ角2θが6.8゜±0.2°の、Lβは9.2゜±0.2°のピークの高さをとった。
【0010】
尚、この微細な粗製銅フタロシアニンはどの様な方法で製造されたものであっても良い。
【0011】
本発明に使用する微細な粗製銅フタロシアニンは、例えば、無水フタル酸及び/又はその誘導体、銅及び/又はその化合物、尿素及び/又はその誘導体を、触媒の存在下、磨砕助剤中又はその不存在下、有機溶剤中又はその不存在下において、150〜300℃で常圧又は加圧下で加熱反応させることで得ることができる。ここで得られた反応物は無機及び有機不純物を除去するために、アルカリ水溶液及び/又は酸性水溶液中に分散し、濾過・洗浄することが好ましい。尚、上記反応において、圧力の条件に制約はないが、熱分解の抑制による尿素及び/又はその誘導体の節約、副反応の抑制による品質向上の点で加圧下による反応が好ましい。
【0012】
前記無水フタル酸及び/又はその誘導体としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、フタルイミド、フタル酸ナトリウム等の塩類、フタルアミド酸及びその塩またはそのエステル、フタロニトリル等が挙げられ、また、これらの混合物であってもよい。更に、無水フタル酸及び/又はその誘導体には、クロル基、アルキル基、ベンジル基、フェニル基等の置換基があってもよい。
【0013】
前記銅及び/又はその化合物としては、例えば、金属銅、第一銅または第二銅のハロゲン化物、酸化銅、硫酸銅、硫化銅、水酸化銅等が挙げられる。銅及び/又はその化合物の使用量は、無水フタル酸及び/又はその誘導体1モルに対して0.2〜0.4モルであり、好ましくは0.25〜0.35モルである。
【0014】
前記尿素及び/又はその誘導体としては、例えば、尿素、ビューレット、アンモニア等が挙げられる。尿素及び/又はその誘導体の使用量は、無水フタル酸及び/又はその誘導体1モルに対して2.5〜4.5モルであり、好ましくは3〜4モルである。
【0015】
前記触媒としては、例えば、モリブデン酸アンモニウム、酸化モリブデン、リンモリブデン酸等のモリブデン化合物、四塩化チタン、チタン酸エステル等のチタン化合物、塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物、ホウ酸、酸化アンチモン等が挙げられる。
【0016】
前記磨砕助剤としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム等のアルカリ金属塩、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム等のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、これらは2種以上を混合して存在させることもできる。
【0017】
前記有機溶剤としては、合成に際して無水フタル酸等の原料に対して不活性なものであればよく、種々の文献で公知の種々の化合物を特に制限なく使用することができる。例えば、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、テトラリン等の芳香族炭化水素;アルキルシクロヘキサン、デカリン、アルキルデカリン等の脂環式炭化水素;デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素;ニトロベンゼン、O−ニトロトルエン等の芳香族ニトロ化合物;トリクロロベンゼン、クロルナフタレン等の芳香族ハロゲン化炭化水素;ジフェニルエーテル等のエーテル類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、メチルスルホラン、ジメチルスルホラン、N−メチルスルホラン等の硫黄化合物、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等の複素環式化合物等が挙げられる。これらは2種以上の混合物であってもよい。
【0018】
前記反応器としては、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ボールミル、振動ミル、押出機、キルン、回転乾燥機、グラスライニング製反応釜等が挙げられる。
【0019】
本発明に使用する微細な粗製銅フタロシアニンとしては、中でも有機溶剤の不存在下で反応を行う固相法によって得られるものが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法における顔料化処理は、従来公知の粗製銅フタロシアニンの顔料化法と同じ方法である。ここで「顔料化」とは、粗製銅フタロシアニンを着色剤として使用可能な粒子径まで微細化することをいう。顔料化処理としては、具体的には以下の方法が挙げられる。
(1)ソルベントソルトミリング法
粗製銅フタロシアニンに食塩等の磨砕助剤と、β型への結晶転移を促進させる有機溶剤とを加えてニーダー等の磨砕装置で機械的に磨砕する方法。磨砕助剤としては、例えば、食塩、硫酸ナトリウム等の水溶性無機塩が用いられる。有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の水溶性で粘性の高い液体が用いられる。同法は質量換算で粗製銅フタロシアニン100部当たり、磨砕助剤100〜1000部、有機溶剤50〜500部を用い、温度80〜200℃で1〜10時間の範囲で行うことができる。磨砕装置としては、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ナウターミキサー、押し出し機の密閉系をなす装置が挙げられる。同法は、以下(2)、(3)の顔料化法に比べて最も着色力、鮮明性に優れたβ型銅フタロシアニン顔料が得られる。
(2)ソルベント法
粗製銅フタロシアニンをアトライター等で乾式磨砕した後に、有機溶剤等で加熱処理する方法。有機溶剤としては、例えば、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系有機溶剤が用いられる。これらの有機溶剤は、2種以上の混合物として用いることもでき、或いは、これらの有機溶剤は又はそれらの混合物と水との混合系を用いることもできる。同法は質量換算で粗製銅フタロシアニン100部当たり、有機溶剤1〜100部を用い、温度30〜200℃で0.5〜20時間の範囲で行うことができる。同法は、上記ソルベントソルトミリング法に比べて工程が簡略化されており、β型銅フタロシアニン顔料をより生産性高く製造する上で非常に有効な手段である。
(3)ビーズミル法
粗製銅フタロシアニンを含んだ水性分散体を磨砕助剤、有機溶剤の存在下又は不存在下でビーズミル等の分散装置にかけて機械的に磨砕する方法。分散装置としては、例えば、ボールミル、アトライター、ダイノーミル、ナノミル、ドライスミル等が挙げられる。同法は質量換算で粗製銅フタロシアニン100部当たり、水性媒体200〜2000部、磨砕助剤0〜200部を用い、温度20〜150℃で0.5〜24時間、或いはパス回数1〜10パスで行うことができる。
【0021】
本発明の製造方法において、顔料化処理としてソルベントソルトミリング法を採用すると、従来使用されている平均一次粒子径が数十〜数百μmのβ型結晶粗大粒子から成る粗製銅フタロシアニンを用いた場合と比べて、磨砕助剤の使用量が従来比で約1/2〜1/4と大幅に削減でき、磨砕時間も従来比で約1/2〜1/4と大幅に短縮でき、従来より高品質のβ型銅フタロシアニン顔料が生産性高く得られる。さらに、従来公知の条件で顔料化処理を行うと、従来では予想し得なかった着色力と鮮明性により優れたβ型銅フタロシアニン顔料が得られる。
【0022】
同様にソルベント法では、従来使用されている平均一次粒子径が数十〜数百μmのβ型結晶粗大粒子から成る粗製銅フタロシアニンを用いた場合と比べて、乾式磨砕時間が従来の約1/2〜1/4で従来と同等以上の品質のβ型銅フタロシアニン顔料が得られる。
【0023】
ビーズミル法では、従来使用されている平均一次粒子径が数十〜数百μmのβ型結晶粗大粒子から成る粗製銅フタロシアニンを用いた場合には達成し得なかった上記ソルベントソルトミリング法と同等以上の品質のβ型銅フタロシアニン顔料が得られる。
【0024】
前記(1)〜(3)の方法で得られた銅フタロシアニン顔料は、濾過・洗浄を行い、ウェットケーキで、或いは更に乾燥してパウダーで、各種用途に使用することができる。必要ならば粉砕や分級を行ってもよい。
【0025】
本発明の製造方法において、各種着色用途毎により優れた分散性や、分散安定性、流動性等の諸適性とするために、必要に応じて表面処理を行うことが好ましい。
【0026】
上記表面処理を行う際の表面処理剤としては、界面活性剤、ロジン類、銅フタロシアニン誘導体、樹脂ワニス、金属塩等が挙げられる。例えば、銅フタロシアニン誘導体としては、銅フタロシアニンの4個のベンゼン核の1個以上に置換基を有し、置換基としてはスルホン酸基又はその金属塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0027】
本発明の製造方法では、印刷インキ、例えば、平版印刷インキ等の調製に好適なβ型銅フタロシアニン顔料を得ることが可能である。
【0028】
【実施例】
次に本発明を実施例、比較例にて具体的に説明する。以下、断りのない限り、%は質量%、部は質量部を意味する。
【0029】
<合成例1>(微細な粗製銅フタロシアニンの合成)
10Lグラスライニング製オートクレーブ容器に、無水フタル酸1000部、尿素1800部、塩化第一銅180部、モリブデン酸アンモニウム5部、塩化マグネシウム1000部、塩化ナトリウム1000部を加え、170℃まで除々に加熱した後、170℃で4時間加熱攪拌を続け反応を終了させた。冷却後、反応物を取り出し、10倍量の2%NaOH水溶液、1%HCl水溶液、温水の順で洗浄、濾過を繰り返し、次いで乾燥し、粗製銅フタロシアニン780部を得た。上記で得られた粗製銅フタロシアニンは、前記した測定方法に従った測定から平均一次粒子径が0.05〜0.3μmで、β型結晶100%からなる微細な粗製銅フタロシアニンであった。尚、透過型電子顕微鏡としては、日本電子(株)製JEM−2010を、X線回折装置としては、(株)リガク製LINT1100を用いた(以下、同様。)。
【0030】
<実施例1> (ソルベントソルトミリング法顔料化−1)
2L双腕型ニーダーに、上記合成例1で得られた微細な粗製銅フタロシアニン225部、食塩675部、ジエチレングリコール140部を加え、90〜95℃で7時間加熱磨砕した。その間、内容物が均一な粘調性を保つように適宜ジエチレングリコールを加えた。得られた磨砕物を20倍の温水で洗浄、濾過、乾燥し、β型銅フタロシアニン顔料を得た。
【0031】
<実施例2> (ソルベントソルトミリング法顔料化−2)
上記合成例1で得られた微細な粗製銅フタロシアニン120部、食塩840部、ジエチレングリコール140部を用いる以外は実施例1と全く同様の操作を行って、β型銅フタロシアニン顔料を得た。
【0032】
<実施例3>(ソルベント法顔料化)
5Lアトライターに3/8インチスチールビーズ13Kgを充填し、上記合成例1で得られた微細な粗製銅フタロシアニン500部を加え、90℃で20分間乾式磨砕し、α型結晶60%及びβ型結晶40%から構成される、平均一次粒子径が0.001〜0.1μmの粗製銅フタロシアニンを得た。次に、500mlフラスコに上記粗製銅フタロシアニン30部、イソブタノール100部、水200部を加え89℃で4時間加熱処理した後、イソブタノールを留去し、濾過、洗浄、乾燥して、β型銅フタロシアニン顔料を得た。
【0033】
<比較合成例1> (粗製銅フタロシアニンの合成)
10Lグラスライニング製オートクレーブ容器に無水フタル酸1200部、尿素1565部、塩化第一銅200部、モリブデン酸アンモニウム5部、tert−アミルベンゼン(商品名、ハイゾールP、日本石油(株)製、アルキルベンゼン混合物)4Lを入れ200℃まで除々に加熱した後、2時間加熱攪拌し反応を終了させる。冷却後、反応物を取り出し、10倍量の2%NaOH水溶液、1%HCl水溶液、温水の順で洗浄、濾過を繰り返し、次いで乾燥し粗製銅フタロシアニン1065部を得た。上記で得られた粗製銅フタロシアニンは、平均一次粒子径が2〜100μmの粗大粒子で、β型結晶100%からなる粗製銅フタロシアニンであった。
【0034】
<比較例1>(ソルベントソルトミリング法顔料化)
上記比較合成例1で得られた粗製銅フタロシアニン120部、食塩840部、ジエチレングリコール140部を用いる以外は実施例1と全く同様の操作を行って、β型銅フタロシアニン顔料を得た。
【0035】
<比較例2>(ソルベント法顔料化)
上記比較合成例1で得られた粗製銅フタロシアニン500部を加え、90℃で60分間乾式磨砕する以外は実施例3と全く同様の操作を行って、β型銅フタロシアニン顔料を得た。
【0036】
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られたβ型銅フタロシアニン顔料を用いて、以下の各試験方法で平版印刷インキを作製し、鮮明性と着色力の比較評価を行った。
【0037】
[試験例]
《平版印刷インキ展色試験》
この試験法はJIS K−5101−4 甲法(1985年)に準じて行った。
【0038】
(濃色インキ)
実施例1〜3及び比較例1〜2のβ型銅フタロシアニン顔料0.32部及び平版印刷インキ用樹脂ワニス1.68部(大日本インキ化学工業(株)製)をフーバーマーラー(東洋精機(株)製)を用いて150lbの荷重のもと100回転を3回繰り返して練肉を行い、平版印刷インキ(濃色インキ)を作成した。
【0039】
(淡色インキ)
上記で得られた濃色インキ0.10部と白インキ2.00部(大日本インキ化学工業(株)製〔白顔料30%〕)をフーバーマーラー(東洋精機(株)製)を用いて50lbの荷重のもと50回転を3回繰り返して練肉を行い、平版印刷インキ(淡色インキ)を作成した。
【0040】
得られた各濃色インキ、淡色インキを試験インキとし、濃色インキをプルーフバウ印刷機でアート紙に展色し、そのアート紙を測色分光器(GRETAG MACBETH社製 SPM50)を用いて着色力を測定した。鮮明性は上記アート紙を目視判定9段階〔1(鮮明性小)>>5(標準)>>9(鮮明性大)〕で判定した。着色力は各比較例の顔料を標準(100%)としてシアン濃度の比で表した。
【0041】
上記の実施例1〜3及び比較例1〜2の平版印刷インキの鮮明性、着色力に関する測定結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
表1
【0043】
上記表1の結果から、微細な粗製銅フタロシアニンを顔料化処理して得た顔料を用いた最終平版印刷インキは、従来使用されている平均一次粒子径が数十〜数百μmのβ型結晶粗大粒子から成る粗製銅フタロシアニンを同様に顔料化処理して得た顔料を用いた最終平版印刷インキと比較した結果、着色力と鮮明性により優れていることが明らかである。さらに、同一着色力対比での単位時間当たりの顔料の生産性にも優れていることが明らかである。
従来は着色力が飽和した後でも、顔料化時間の経過に伴って、着色力が少しずつ上昇する傾向があるのに対して、本発明の製造方法においては、その傾向が見られず、実製造時での顔料化処理の時間制御がより容易となる。
【0044】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、平均一次粒子径が0.01〜1.00μm、且つβ型結晶が質量換算で85%以上の粗製銅フタロシアニンを用いて顔料化処理することにより、従来法の粗製銅フタロシアニンでは得られなかった平版印刷インキ用途において着色力と鮮明性により優れたβ型銅フタロシアニン顔料を製造できるという格別顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜2及び比較例1における、顔料化時間と平版印刷インキの着色力の関係を示した図である。
Claims (2)
- 平均一次粒子径が0.01〜1.00μm、且つβ型結晶が質量換算で85%以上の粗製銅フタロシアニンを顔料化処理することを特徴とするβ型銅フタロシアニン顔料の製造方法。
- 粗製銅フタロシアニンが固相法によって得られる粗製銅フタロシアニンである請求項1記載の製造方法。
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