JP2004057642A - ゴルフシャフト - Google Patents
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Abstract
【課題】ゴルフシャフト細径側の先端部に積層する補強プリプレグシートの強化繊維の配列角度を最適な配列角度とすることによって、前記先端部の曲げ剛性を増加させることなくゴルフシャフト全長に渡って最適な曲げ剛性を得ることと、曲げ変形や捩り変形によって生じる応力を低減してゴルフシャフトの折損を防止することを両立し、且つ、耐久性の向上したゴルフシャフトを提供する。
【解決手段】ゴルフシャフト10の細径側5の先端部8には、補強用のプリプレグシートとして、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して±19.5°〜±20.5°に傾斜して配列させた補強プリプレグシート3を有している。
【選択図】 図2
【解決手段】ゴルフシャフト10の細径側5の先端部8には、補強用のプリプレグシートとして、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して±19.5°〜±20.5°に傾斜して配列させた補強プリプレグシート3を有している。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化樹脂製のゴルフシャフトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、繊維強化樹脂製のゴルフシャフトにおいては、種々の製造方法により形成されたゴルフシャフトが提案されている。
例えば、シートワインディング法と呼ばれる製造方法によって形成されたゴルフシャフトは、一般に、強化繊維を一方向に引き揃え、これに合成樹脂を含浸したプリプレグシートを、所定の形状寸法に裁断し、所定枚数だけを芯材となるテーパー付きのマンドレルの周囲に巻き付け、前記プリプレグシートのマトリックス樹脂を硬化して、その後、脱芯、研磨、塗装等の工程を経て形成される。
【0003】
また、前記プリプレグシートの積層構成としては、ゴルフシャフト全長にわたり配設されてシャフト本体を構成するプリプレグシートと、ゴルフシャフトの長さ方向の適所に、必要に応じて所定範囲に配設される補強プリプレグシートで構成されている。
前記ゴルフシャフト本体を構成するプリプレグシートは、通常、該プリプレグシートを構成する強化繊維の配列角度を、前記ゴルフシャフトの軸方向を0°とした時、±30°〜±60°の範囲内の角度に傾斜するよう配列させたバイアスプリプレグと、前記軸方向に対して平行となるように配列させたストレートプリプレグとが使用され、これらを用いて、所定の特性を有するように積層させた構成となっている。
【0004】
また、繊維強化樹脂製のゴルフシャフトの開発は軽量化が進んでいて、その軽量化を達成するために、ゴルフシャフトの肉厚を薄く形成させていることから、打撃時の衝撃によって、特にゴルフヘッドのスイートスポットを外して打撃した場合や地面に打ちつけた場合、ゴルフヘッドとの結合部付近で前記ゴルフシャフトが折損するといった問題が発生している。
【0005】
上記した、軽量化のために肉厚を薄肉化した繊維強化樹脂製のゴルフシャフトの折損の要因の一つとして、以下のようなことが挙げられる。
【0006】
即ち、通常、ゴルフクラブでゴルフボールを打撃した場合、その衝撃力によってゴルフヘッドはもとより、ゴルフシャフトにも多大な応力が生じ、前記ゴルフシャフトに急激な曲げ変形がおこる。この時、前記ゴルフシャフトの軸方向に生じる応力には、前記曲げ変形の引張側と圧縮側でそれぞれ均等に、且つ、相対的に応力が生じている。一方、前記ゴルフシャフトに用いられる強化繊維の多くは一般的に炭素繊維が用いられているが、前記炭素繊維は、引張方向においては高い強度を示すものであるが圧縮方向には強度が低いといった特性を有するものである。したがって、前記ゴルフシャフトの急激な曲げ変形によって発生した圧縮側の応力が原因となって、前記ゴルフシャフトが折損するというものであった。
【0007】
また、ゴルフクラブは、その構造上、ゴルフヘッドがゴルフシャフトの軸線上よりもオフセットした位置に構成されることから、ゴルフボールを打撃した場合、前記ゴルフシャフトには、上述した曲げ変形とともに捩り変形も生じている。したがって、前記捩り変形によって捩り方向にも応力が発生するため、ゴルフシャフトを構成する強化繊維が前記捩り方向に発生する応力に対応するように配列されていない場合には、前記ゴルフシャフトが折損し易いというものであった。
【0008】
これらの問題を解決するための方法として、所定の長さに裁断された補強プリプレグシートを前記ゴルフシャフトの細径側の先端部に配設することが公知である。また、前記補強プリプレグシートの強化繊維の配列角度については、前記ゴルフシャフトの軸方向に対して平行に配列させたものや傾斜して配列させたものが一般的に使用されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
補強プリプレグシートをゴルフシャフト細径側の先端部に配設させた従来のゴルフシャフトにおいては、以下のような欠点を有するものであった。
【0010】
即ち、補強プリプレグシートの強化繊維の配列角度をゴルフシャフトの軸方向に対して平行に配列させたものは、前記ゴルフシャフトに生じた曲げ変形の引張側では高い強度を保持し応力に耐えうるものの、圧縮側の応力には強度を保持できずに前記ゴルフシャフトが前記圧縮側で破損するといった問題があった。また、捩りの方向には強化繊維が配列されていないことから、捩り変形によって生じた応力に対応できないため、前記捩りによる破壊によっても前記ゴルフシャフトが折損するといった問題があった。
さらに、前記軸方向に対して平行に配列させた補強プリプレグシートを配設させたことによって、ゴルフクラブをスイングする際にゴルフシャフトの全長に渡って撓らせようという設計意図に反して、曲げ剛性が前記ゴルフシャフト細径側の先端部で急激に増加してしまうといった問題もあった。
【0011】
また、補強プリプレグシートの強化繊維の配列角度をゴルフシャフトの軸方向に対して傾斜して配列させたものは、前記配列角度が、前記軸方向を0°とした時に概ね±30°〜±60°の範囲となるように配設することで、前記軸方向に対して平行に配列させた補強プリプレグシートを配設したものに比べて、曲げ剛性の急激な増加を回避し、さらに、前記ゴルフシャフトに生じた曲げ変形の圧縮側に柔軟性を生みだすことが可能となるため、前記圧縮側の応力に耐えうることができるが、その反面、前記ゴルフシャフトの曲げ変形によって、前記ゴルフシャフトの軸方向に生じる剪断応力に耐えることができなくなるため、プリプレグ層間でのズレが大きくなり剥離が生じるといった問題があった。
【0012】
さらに、その他の技術的課題として、軽量化したゴルフシャフトは、アベレージゴルファーにとって最適なフィーリングを得られるように、しなやかに前記ゴルフシャフトの全長が撓むように最適な曲げ剛性で設計されているものであるが、肉厚を薄く形成させている結果、前記ゴルフシャフトの折損を防止するための補強プリプレグシートをゴルフシャフト細径側の先端部に配設した場合において、前記曲げ剛性に及ぼす影響が特に大きくなるため、実質的には設計の意図通りの最適な曲げ剛性を得ることは困難であった。
【0013】
つまり、補強プリプレグシートをゴルフシャフト細径側の先端部に配設させたゴルフシャフトにおいては、前記ゴルフシャフト全長に渡って最適な曲げ剛性を得ることと、打撃時の前記ゴルフシャフトに生じる曲げや捩りといった変形による前記先端部の折損を防止することを両立させることが困難であった。
【0014】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑み、ゴルフシャフト細径側の先端部に積層する補強プリプレグシートの強化繊維の配列角度を最適な配列角度とすることによって、前記先端部の曲げ剛性を増加させることなくゴルフシャフト全長に渡って最適な曲げ剛性を得ることと、曲げ変形や捩り変形によって生じる応力を低減してゴルフシャフトの折損を防止することを両立し、且つ、耐久性の向上したゴルフシャフトを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記目的を達成するために、請求項1の発明は、強化繊維を引き揃えて成るプリプレグシートを巻回積層して形成された繊維強化樹脂製のゴルフシャフトにおいて、前記ゴルフシャフト細径側の最外層に、ゴルフシャフト軸方向を0°とした時の該軸方向に対する前記強化繊維の配列角度を±19.5°〜±20.5°の範囲となるように配列させた補強プリプレグシートを積層させたことを特徴とするゴルフシャフトである。
【0016】
請求項2の発明は、前記補強プリプレグシートは、前記ゴルフシャフト細径側の最先端の位置から太径側へ向かって配置され、30mm〜300mmの長さとしたことを特徴とする請求項1記載のゴルフシャフトである。
【0017】
請求項3の発明は、前記補強プリプレグシートにおける強化繊維は、引張弾性率が147GPa〜392GPaの範囲のPAN系炭素繊維であることを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフシャフトである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明のゴルフシャフト10は、図1に示すように、ゴルフヘッド11が装着される細径側5からグリップ18が装着される太径側6にかけて、外径が次第に拡径するテーパー状となっている。また、ゴルフシャフト10は、強化繊維を引き揃えてなるプリプレグシートを適宜形状に切断してなる複数のプリプレグシートを巻回積層することによって形成されたものである。
【0019】
前記プリプレグシートは、具体的には図2に示すように、ゴルフシャフト10の全長を形成する本体プリプレグシートとして、ゴルフシャフト10の軸方向を0°とした時の該軸方向に対する強化繊維の配列角度を±30°〜±60°に傾斜して配列させたバイアスプリプレグ1と、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して平行に配列させたストレートプリプレグ2を有している。
さらに、ゴルフシャフト10の細径側5の先端部8には、補強用のプリプレグシートとして、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して±19.5°〜±20.5°に傾斜して配列させた補強プリプレグシート3を有した構成としている。
【0020】
具体的には、本発明のゴルフシャフト10は、細径側5から太径側6に向かって順次太径となるテーパ付きマンドレル4に、まず、あらかじめ強化繊維の配列角度を+30°〜+60°と−30°〜−60°としたプリプレグを互いに交差するように貼り合わせた前記バイアスプリプレグ1を巻回し、この上に、前記ストレートプリプレグ2を巻回する。そして、細径側5の先端部8に、強化繊維の配列角度を+19.5°〜+20.5°と−19.5°〜−20.5°としたプリプレグを互いに交差するよう貼り合わせた前記補強プリプレグシート3を巻回する。その後、ラッピングして加熱硬化の後、マンドレル4を抜きとって、研磨、仕上げ等の工程を経てゴルフシャフト10を成形したものである。
【0021】
この時、前記補強プリプレグシート3の、強化繊維の配列角度は、ゴルフシャフト10の軸方向を0°とした時、該軸方向に対して+20°と−20°とが互いに反対方向となるように配置されるのがより効果的であるが、マンドレル4に形成されたテーパの勾配率の大きさや補強プリプレグシート3の積層範囲あるいはマンドレル4にプリプレグを巻き付ける製造装置などの影響によって、巻回された後の補強プリプレグシート3における前記軸方向に対する強化繊維の配列角度に誤差が現れることが考えられる。しかし、上述した補強プリプレグシート3のゴルフシャフト10の軸方向に対する強化繊維の配列角度が±19.5°〜±20.5°の範囲内であれば、±20°と同様の作用効果を維持できるものである。
【0022】
本発明のゴルフシャフトは、複数のプリプレグシートを巻回積層して形成されたゴルフシャフトにおいて、ゴルフシャフト細径側の先端部の最も外側の層に、ゴルフシャフト軸方向に対する強化繊維の配列角度を±19.5°〜±20.5°の範囲となるよう配列させた補強プリプレグシートを積層したことによって、前記先端部の曲げ剛性を増大させることなく、前記先端部の強度を確保できる。さらに、打撃によるゴルフシャフトの曲げ変形や捩り変形によって生じる応力にも耐えることができるため、前記ゴルフシャフトの前記先端部での折損を防止できる。
【0023】
前記補強プリプレグシートのゴルフシャフト軸方向に対する強化繊維の配列角度は、上述した±19.5°〜±20.5°の範囲以外の配列角度では以下に示すような不具合が発生するため好ましくない。
即ち、前記配列角度の絶対値が、19.5°より小さい角度では、ゴルフクラブの打撃時におけるゴルフシャフトの急激な変形によって発生した圧縮側の応力によって、前記ゴルフシャフトの前記圧縮側で折損しやすくなることや、前記ゴルフシャフトの前記先端部の曲げ剛性が必要以上に高くなりすぎてしまうため好ましくない。また、20.5°より大きい角度では、ゴルフシャフトの変形によって発生する前記ゴルフシャフト軸方向に生じる剪断応力に耐えうることができず、プリプレグ層間でのズレが大きくなり剥離が生じるため好ましくない。
【0024】
また、図2に示す、本発明のゴルフシャフト10の細径側5の先端部8に積層される補強プリプレグシート3は、前記先端部8の領域内における前記ゴルフシャフト10の軸方向の位置関係において、前記細径側5の最先端の位置から太径側6へ向かって配置されている。さらに、前記プリプレグシート3の長さ7は、前記最先端の位置からの長さ7であって、該長さ7を30mm〜300mmの範囲内とすることが好ましい。
前記長さ7が、30mmより短い場合はゴルフシャフト10の細径側5の先端部8の補強としての役割を果たせずにゴルフシャフト10が折損してしまい、また、300mmより長い場合は補強プリプレグシート3が、ゴルフシャフト10の全長に渡る曲げ剛性などに影響することによって、ゴルフシャフト10のスイング性能に影響を及ぼすため好ましくない。
【0025】
尚、通常、ゴルフシャフトは、該ゴルフシャフト細径側の先端部の一部を切断するなどの手段を講じた後、ゴルフヘッドのホーゼル穴に挿入して接着結合される。したがって、上述した長さ7の範囲内に構成された補強プリプレグシート3を備えたゴルフシャフト10は、図3に示すように、ゴルフシャフト10における補強プリプレグシート3が積層された領域13を、ホーゼル穴12の結合底部14から結合境界部15までの結合長さ16よりも突出して長くなるように配置させる。前記領域13の最適な配置の位置としては、前記結合境界部15からの突出長さ17を、10mm〜200mmの範囲内とさせることでゴルフシャフト10の折損防止に特に効果を発揮する。
また、前記結合長さ16は、ゴルフクラブの種類によって様々であるが、ゴルフヘッドとの結合に必要とされる強度との兼ね合いから、最も短いものでも約20mm程度である。したがって、前記補強プリプレグシート3の前記長さ7を30mm〜300mmの範囲内とすれば、どのようなゴルフクラブの前記結合長さ16であっても上述した突出長さ17を維持できることになり、ゴルフシャフト10の折損を効率的に防止できる。
【0026】
本発明のゴルフシャフトは、該ゴルフシャフトを形成するプリプレグシートに用いられる強化繊維の材料や弾性率、マトリックス樹脂、又、ゴルフシャフトの外径や肉厚といった要素に影響されることなく、ゴルフシャフト軸方向に対する強化繊維の配列角度を±19.5°〜±20.5°の範囲となるよう配列させた補強プリプレグシートをゴルフシャフト細径側の先端部の最も外側の層に積層させることで、前記先端部の強度を確保することが可能であるが、前記補強プリプレグシートにおける強化繊維の引張弾性率を147GPa〜392GPaの範囲内とすれば、さらにゴルフシャフトの曲げ剛性特性に悪影響を及ぼすことなく前記先端部での折損を防止する効果を高めることができる。
【0027】
上記引張弾性率の範囲外では、例えば、炭素繊維の場合、前記引張弾性率の低い繊維は、引張強度も低い傾向を示す特性を有するため、曲げ剛性は増大しないものの、ゴルフシャフト細径側の先端部を補強するといった効果を得られない。また、前記引張弾性率が高い繊維は、繊維の伸延性に劣るため、打撃時に生じるゴルフシャフトの変形に対応できなくなることによって、前記ゴルフシャフト自身が柔軟性を失ってしまう。したがって、前記ゴルフシャフトが折損しやすくなり好ましくない。
【0028】
本発明に使用される補強プリプレグシートの強化繊維の種類としては、金属繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、チタンカリウム繊維及び炭素繊維などが用いられ、中でも炭素繊維が軽量であるため好ましく、さらに、炭素繊維の中でもPAN系炭素繊維が圧縮強度に優れるため好適である。
【0029】
【実施例】
本発明の実施例を図面に基づき説明する。
本実施例のゴルフシャフトにおいては、ゴルフシャフトを形成するプリプレグシートの積層構成を以下に示すように配置した。
【0030】
即ち、実施例のゴルフシャフトは、本体プリプレグシートとしては、引張弾性率343GPaのPAN系炭素繊維を互いに並行かつシート状に引き揃えたものに未硬化状態のエポキシ樹脂を含浸してなる一方向性のプリプレグシートを用意した。また、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂中の炭素繊維含有率は76wt%とし、前記プリプレグシートの厚みは0.10mmであった。
補強プリプレグシートとしては、引張弾性率294GPaのPAN系炭素繊維を互いに並行かつシート状に引き揃えたものに未硬化状態のエポキシ樹脂を含浸してなる一方向性のプリプレグシートを用意した。また、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂中の炭素繊維含有率は76wt%とし、前記プリプレグシートの厚みは0.0961mmであった。
【0031】
又、前記本体プリプレグシートの内、図2に示すバイアスプリプレグ1は、強化繊維の配列角度をゴルフシャフト軸方向を0°とした時、該軸方向に対して+45°と−45°に傾斜して配列させるように裁断形成されたものを用意し、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して互いに反対方向となるように重ね合せたものである。本実施例では前記軸方向の長さを980mmとし、マンドレル4の外周に巻回させる幅を1.5周回巻回する幅としたものを、幅方向にマンドレル4の外周の0.5周回分ずらして重ね合わせたものを使用した。
【0032】
ストレートプリプレグ2は、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して平行に配列させるように裁断形成されたものである。本実施例では前記軸方向の長さを980mmとし、マンドレル4の外周に巻回させる幅を3周回巻回する幅としたものを使用した。
【0033】
補強プリプレグシート3は、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して+20°と−20°に傾斜して配列させるように裁断形成されたものを用意し、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して互いに反対方向となるように重ね合せて構成したものである。本実施例では補強プリプレグシート3の長さ7を200mmとし、マンドレル4の外周に巻回させる幅を1.5周回巻回する幅としたものを、幅方向にマンドレル4の外周の0.5周回分ずらして重ね合わせたものを使用した。
【0034】
尚、本実施例のゴルフシャフトを製造するために用いられたマンドレル4は、細径側5の外径が5mm、太径側6の外径が10mmのテーパー状に形成され、その長さは1000mmであった。
【0035】
上記プリプレグシートの卷回積層構成は、図2に示すように、まず、バイアスプリプレグ1をマンドレル4に巻回し、ストレートプリプレグ2を前記バイアスプリプレグ1の外側に巻回した後、補強プリプレグシート3を細径側5の先端部8の最外層に巻回した。
その後、ラッピングテープを巻き付け、130℃で2時間加熱し、エポキシ樹脂を硬化させた後、マンドレル4を抜き取って研磨、仕上げを行い、本実施例のゴルフシャフトを得た。
【0036】
比較例1のゴルフシャフトは、補強プリプレグシート3として、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して平行に配列させるように裁断形成されたものを重ねあわせて構成したものを使用した以外は実施例と全く同一にした。
【0037】
比較例2のゴルフシャフトは、補強プリプレグシート3として、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して+10°と−10°に傾斜して配列させるように裁断形成されたものを強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して互いに反対方向となるように重ねあわせて構成したものを使用した以外は実施例と全く同一にした。
【0038】
比較例3のゴルフシャフトは、補強プリプレグシート3として、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して+30°と−30°に傾斜して配列させるように裁断形成されたものを強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して互いに反対方向となるように重ねあわせて構成したものを使用した以外は実施例と全く同一にした。
【0039】
比較例4のゴルフシャフトは、補強プリプレグシート3として、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して+45°と−45°に傾斜して配列させるように裁断形成されたものを強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して互いに反対方向となるように重ねあわせて構成したものを使用した以外は実施例と全く同一にした。
【0040】
本実施例のゴルフシャフトと比較例1、2、3及び4のゴルフシャフトについて、それぞれにゴルフヘッドを取り付けた後、ゴルフファーのミスショットを想定して、最もゴルフシャフト折損に影響の大きいゴルフヘッドのホーゼル部周辺にボールを打撃し、ゴルフシャフトに応力集中を生じさせ、さらに、前記打撃のスピードを段階的に増していき、前記ゴルフシャフトが折損した時点での最大の衝撃強度を求める試験を行なった。その試験結果を図4に示す。
図3は、比較例1の衝撃強度の値を1.00として、本実施例および比較例2、3、4の衝撃強度の値との比較を比率で表わしたグラフである。
【0041】
また、本実施例のゴルフシャフトと比較例1、2、3及び4のゴルフシャフトにおいて、補強プリプレグシートを積層した細径側の先端部の曲げ剛性を計測した。その結果を図5に示す。
図4は、最も曲げ剛性値の高い比較例1の値を100として、本実施例および比較例2、3、4の曲げ剛性値との比較を比率で表わしたグラフである。
【0042】
本実施例のゴルフシャフトは、他の比較例のゴルフシャフトに比べて、衝撃強度がもっとも優れるという結果が得られた。また、ゴルフシャフト細径側の先端部の曲げ剛性においては、最も曲げ剛性の高い比較例1のゴルフシャフトに比べて約90%に抑えられているという結果が得られた。
【0043】
【発明の効果】
以上により、本発明のゴルフシャフトは、強化繊維の配列角度をゴルフシャフト軸方向に対して±19.5°〜±20.5°の範囲となるよう配列させた補強プリプレグシートをゴルフシャフト細径側の先端部の最も外側の層に積層したことによって、前記先端部の曲げ剛性の増加を抑制できるため、ゴルフシャフト全長に渡って最適な曲げ剛性を得られる。さらに、打撃時におけるゴルフシャフトの曲げ変形や捩り変形によって生じる応力にも耐えることができるため、前記ゴルフシャフトの折損を防止できる。
【0044】
また、前記補強プリプレグシートは、前記ゴルフシャフト細径側の最先端の位置から太径側へ向かって配置され、30mm〜300mmの長さとしたことによって、ゴルフシャフトのスイング性能に影響することなく、耐久性の向上したゴルフシャフトが得られる。
【0045】
さらに、前記補強プリプレグシートにおける強化繊維を引張弾性率が147GPa〜392GPaのPAN系炭素繊維としたことによって、ゴルフシャフトの軽量化を保持しつつ、圧縮側の圧縮応力に耐えうることができ、且つ、ゴルフシャフト細径側の先端部の柔軟性を維持できるため、ゴルフシャフト全長に渡って適度な曲げ剛性を得ることとゴルフシャフトの折損を防止することを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゴルフシャフトを示す説明図である。
【図2】本発明のゴルフシャフトを形成するプリプレグシートの積層構成を説明する図である。
【図3】本発明のゴルフシャフトに積層される補強プリプレグシートの領域を説明する図である。
【図4】本実施例における衝撃強度の試験結果を表わすグラフである。
【図5】本実施例における曲げ剛性の計測結果を表わすグラフである。
【符号の説明】
1 バイアスプリプレグ
2 ストレートプリプレグ
3 補強プリプレグシート
4 マンドレル
5 細径側
6 太径側
7 長さ
8 先端部
10 ゴルフシャフト
11 ゴルフヘッド
12 ホーゼル穴
13 領域
14 結合底部
15 結合境界部
16 結合長さ
17 突出長さ
18 グリップ
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化樹脂製のゴルフシャフトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、繊維強化樹脂製のゴルフシャフトにおいては、種々の製造方法により形成されたゴルフシャフトが提案されている。
例えば、シートワインディング法と呼ばれる製造方法によって形成されたゴルフシャフトは、一般に、強化繊維を一方向に引き揃え、これに合成樹脂を含浸したプリプレグシートを、所定の形状寸法に裁断し、所定枚数だけを芯材となるテーパー付きのマンドレルの周囲に巻き付け、前記プリプレグシートのマトリックス樹脂を硬化して、その後、脱芯、研磨、塗装等の工程を経て形成される。
【0003】
また、前記プリプレグシートの積層構成としては、ゴルフシャフト全長にわたり配設されてシャフト本体を構成するプリプレグシートと、ゴルフシャフトの長さ方向の適所に、必要に応じて所定範囲に配設される補強プリプレグシートで構成されている。
前記ゴルフシャフト本体を構成するプリプレグシートは、通常、該プリプレグシートを構成する強化繊維の配列角度を、前記ゴルフシャフトの軸方向を0°とした時、±30°〜±60°の範囲内の角度に傾斜するよう配列させたバイアスプリプレグと、前記軸方向に対して平行となるように配列させたストレートプリプレグとが使用され、これらを用いて、所定の特性を有するように積層させた構成となっている。
【0004】
また、繊維強化樹脂製のゴルフシャフトの開発は軽量化が進んでいて、その軽量化を達成するために、ゴルフシャフトの肉厚を薄く形成させていることから、打撃時の衝撃によって、特にゴルフヘッドのスイートスポットを外して打撃した場合や地面に打ちつけた場合、ゴルフヘッドとの結合部付近で前記ゴルフシャフトが折損するといった問題が発生している。
【0005】
上記した、軽量化のために肉厚を薄肉化した繊維強化樹脂製のゴルフシャフトの折損の要因の一つとして、以下のようなことが挙げられる。
【0006】
即ち、通常、ゴルフクラブでゴルフボールを打撃した場合、その衝撃力によってゴルフヘッドはもとより、ゴルフシャフトにも多大な応力が生じ、前記ゴルフシャフトに急激な曲げ変形がおこる。この時、前記ゴルフシャフトの軸方向に生じる応力には、前記曲げ変形の引張側と圧縮側でそれぞれ均等に、且つ、相対的に応力が生じている。一方、前記ゴルフシャフトに用いられる強化繊維の多くは一般的に炭素繊維が用いられているが、前記炭素繊維は、引張方向においては高い強度を示すものであるが圧縮方向には強度が低いといった特性を有するものである。したがって、前記ゴルフシャフトの急激な曲げ変形によって発生した圧縮側の応力が原因となって、前記ゴルフシャフトが折損するというものであった。
【0007】
また、ゴルフクラブは、その構造上、ゴルフヘッドがゴルフシャフトの軸線上よりもオフセットした位置に構成されることから、ゴルフボールを打撃した場合、前記ゴルフシャフトには、上述した曲げ変形とともに捩り変形も生じている。したがって、前記捩り変形によって捩り方向にも応力が発生するため、ゴルフシャフトを構成する強化繊維が前記捩り方向に発生する応力に対応するように配列されていない場合には、前記ゴルフシャフトが折損し易いというものであった。
【0008】
これらの問題を解決するための方法として、所定の長さに裁断された補強プリプレグシートを前記ゴルフシャフトの細径側の先端部に配設することが公知である。また、前記補強プリプレグシートの強化繊維の配列角度については、前記ゴルフシャフトの軸方向に対して平行に配列させたものや傾斜して配列させたものが一般的に使用されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
補強プリプレグシートをゴルフシャフト細径側の先端部に配設させた従来のゴルフシャフトにおいては、以下のような欠点を有するものであった。
【0010】
即ち、補強プリプレグシートの強化繊維の配列角度をゴルフシャフトの軸方向に対して平行に配列させたものは、前記ゴルフシャフトに生じた曲げ変形の引張側では高い強度を保持し応力に耐えうるものの、圧縮側の応力には強度を保持できずに前記ゴルフシャフトが前記圧縮側で破損するといった問題があった。また、捩りの方向には強化繊維が配列されていないことから、捩り変形によって生じた応力に対応できないため、前記捩りによる破壊によっても前記ゴルフシャフトが折損するといった問題があった。
さらに、前記軸方向に対して平行に配列させた補強プリプレグシートを配設させたことによって、ゴルフクラブをスイングする際にゴルフシャフトの全長に渡って撓らせようという設計意図に反して、曲げ剛性が前記ゴルフシャフト細径側の先端部で急激に増加してしまうといった問題もあった。
【0011】
また、補強プリプレグシートの強化繊維の配列角度をゴルフシャフトの軸方向に対して傾斜して配列させたものは、前記配列角度が、前記軸方向を0°とした時に概ね±30°〜±60°の範囲となるように配設することで、前記軸方向に対して平行に配列させた補強プリプレグシートを配設したものに比べて、曲げ剛性の急激な増加を回避し、さらに、前記ゴルフシャフトに生じた曲げ変形の圧縮側に柔軟性を生みだすことが可能となるため、前記圧縮側の応力に耐えうることができるが、その反面、前記ゴルフシャフトの曲げ変形によって、前記ゴルフシャフトの軸方向に生じる剪断応力に耐えることができなくなるため、プリプレグ層間でのズレが大きくなり剥離が生じるといった問題があった。
【0012】
さらに、その他の技術的課題として、軽量化したゴルフシャフトは、アベレージゴルファーにとって最適なフィーリングを得られるように、しなやかに前記ゴルフシャフトの全長が撓むように最適な曲げ剛性で設計されているものであるが、肉厚を薄く形成させている結果、前記ゴルフシャフトの折損を防止するための補強プリプレグシートをゴルフシャフト細径側の先端部に配設した場合において、前記曲げ剛性に及ぼす影響が特に大きくなるため、実質的には設計の意図通りの最適な曲げ剛性を得ることは困難であった。
【0013】
つまり、補強プリプレグシートをゴルフシャフト細径側の先端部に配設させたゴルフシャフトにおいては、前記ゴルフシャフト全長に渡って最適な曲げ剛性を得ることと、打撃時の前記ゴルフシャフトに生じる曲げや捩りといった変形による前記先端部の折損を防止することを両立させることが困難であった。
【0014】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑み、ゴルフシャフト細径側の先端部に積層する補強プリプレグシートの強化繊維の配列角度を最適な配列角度とすることによって、前記先端部の曲げ剛性を増加させることなくゴルフシャフト全長に渡って最適な曲げ剛性を得ることと、曲げ変形や捩り変形によって生じる応力を低減してゴルフシャフトの折損を防止することを両立し、且つ、耐久性の向上したゴルフシャフトを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記目的を達成するために、請求項1の発明は、強化繊維を引き揃えて成るプリプレグシートを巻回積層して形成された繊維強化樹脂製のゴルフシャフトにおいて、前記ゴルフシャフト細径側の最外層に、ゴルフシャフト軸方向を0°とした時の該軸方向に対する前記強化繊維の配列角度を±19.5°〜±20.5°の範囲となるように配列させた補強プリプレグシートを積層させたことを特徴とするゴルフシャフトである。
【0016】
請求項2の発明は、前記補強プリプレグシートは、前記ゴルフシャフト細径側の最先端の位置から太径側へ向かって配置され、30mm〜300mmの長さとしたことを特徴とする請求項1記載のゴルフシャフトである。
【0017】
請求項3の発明は、前記補強プリプレグシートにおける強化繊維は、引張弾性率が147GPa〜392GPaの範囲のPAN系炭素繊維であることを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフシャフトである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明のゴルフシャフト10は、図1に示すように、ゴルフヘッド11が装着される細径側5からグリップ18が装着される太径側6にかけて、外径が次第に拡径するテーパー状となっている。また、ゴルフシャフト10は、強化繊維を引き揃えてなるプリプレグシートを適宜形状に切断してなる複数のプリプレグシートを巻回積層することによって形成されたものである。
【0019】
前記プリプレグシートは、具体的には図2に示すように、ゴルフシャフト10の全長を形成する本体プリプレグシートとして、ゴルフシャフト10の軸方向を0°とした時の該軸方向に対する強化繊維の配列角度を±30°〜±60°に傾斜して配列させたバイアスプリプレグ1と、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して平行に配列させたストレートプリプレグ2を有している。
さらに、ゴルフシャフト10の細径側5の先端部8には、補強用のプリプレグシートとして、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して±19.5°〜±20.5°に傾斜して配列させた補強プリプレグシート3を有した構成としている。
【0020】
具体的には、本発明のゴルフシャフト10は、細径側5から太径側6に向かって順次太径となるテーパ付きマンドレル4に、まず、あらかじめ強化繊維の配列角度を+30°〜+60°と−30°〜−60°としたプリプレグを互いに交差するように貼り合わせた前記バイアスプリプレグ1を巻回し、この上に、前記ストレートプリプレグ2を巻回する。そして、細径側5の先端部8に、強化繊維の配列角度を+19.5°〜+20.5°と−19.5°〜−20.5°としたプリプレグを互いに交差するよう貼り合わせた前記補強プリプレグシート3を巻回する。その後、ラッピングして加熱硬化の後、マンドレル4を抜きとって、研磨、仕上げ等の工程を経てゴルフシャフト10を成形したものである。
【0021】
この時、前記補強プリプレグシート3の、強化繊維の配列角度は、ゴルフシャフト10の軸方向を0°とした時、該軸方向に対して+20°と−20°とが互いに反対方向となるように配置されるのがより効果的であるが、マンドレル4に形成されたテーパの勾配率の大きさや補強プリプレグシート3の積層範囲あるいはマンドレル4にプリプレグを巻き付ける製造装置などの影響によって、巻回された後の補強プリプレグシート3における前記軸方向に対する強化繊維の配列角度に誤差が現れることが考えられる。しかし、上述した補強プリプレグシート3のゴルフシャフト10の軸方向に対する強化繊維の配列角度が±19.5°〜±20.5°の範囲内であれば、±20°と同様の作用効果を維持できるものである。
【0022】
本発明のゴルフシャフトは、複数のプリプレグシートを巻回積層して形成されたゴルフシャフトにおいて、ゴルフシャフト細径側の先端部の最も外側の層に、ゴルフシャフト軸方向に対する強化繊維の配列角度を±19.5°〜±20.5°の範囲となるよう配列させた補強プリプレグシートを積層したことによって、前記先端部の曲げ剛性を増大させることなく、前記先端部の強度を確保できる。さらに、打撃によるゴルフシャフトの曲げ変形や捩り変形によって生じる応力にも耐えることができるため、前記ゴルフシャフトの前記先端部での折損を防止できる。
【0023】
前記補強プリプレグシートのゴルフシャフト軸方向に対する強化繊維の配列角度は、上述した±19.5°〜±20.5°の範囲以外の配列角度では以下に示すような不具合が発生するため好ましくない。
即ち、前記配列角度の絶対値が、19.5°より小さい角度では、ゴルフクラブの打撃時におけるゴルフシャフトの急激な変形によって発生した圧縮側の応力によって、前記ゴルフシャフトの前記圧縮側で折損しやすくなることや、前記ゴルフシャフトの前記先端部の曲げ剛性が必要以上に高くなりすぎてしまうため好ましくない。また、20.5°より大きい角度では、ゴルフシャフトの変形によって発生する前記ゴルフシャフト軸方向に生じる剪断応力に耐えうることができず、プリプレグ層間でのズレが大きくなり剥離が生じるため好ましくない。
【0024】
また、図2に示す、本発明のゴルフシャフト10の細径側5の先端部8に積層される補強プリプレグシート3は、前記先端部8の領域内における前記ゴルフシャフト10の軸方向の位置関係において、前記細径側5の最先端の位置から太径側6へ向かって配置されている。さらに、前記プリプレグシート3の長さ7は、前記最先端の位置からの長さ7であって、該長さ7を30mm〜300mmの範囲内とすることが好ましい。
前記長さ7が、30mmより短い場合はゴルフシャフト10の細径側5の先端部8の補強としての役割を果たせずにゴルフシャフト10が折損してしまい、また、300mmより長い場合は補強プリプレグシート3が、ゴルフシャフト10の全長に渡る曲げ剛性などに影響することによって、ゴルフシャフト10のスイング性能に影響を及ぼすため好ましくない。
【0025】
尚、通常、ゴルフシャフトは、該ゴルフシャフト細径側の先端部の一部を切断するなどの手段を講じた後、ゴルフヘッドのホーゼル穴に挿入して接着結合される。したがって、上述した長さ7の範囲内に構成された補強プリプレグシート3を備えたゴルフシャフト10は、図3に示すように、ゴルフシャフト10における補強プリプレグシート3が積層された領域13を、ホーゼル穴12の結合底部14から結合境界部15までの結合長さ16よりも突出して長くなるように配置させる。前記領域13の最適な配置の位置としては、前記結合境界部15からの突出長さ17を、10mm〜200mmの範囲内とさせることでゴルフシャフト10の折損防止に特に効果を発揮する。
また、前記結合長さ16は、ゴルフクラブの種類によって様々であるが、ゴルフヘッドとの結合に必要とされる強度との兼ね合いから、最も短いものでも約20mm程度である。したがって、前記補強プリプレグシート3の前記長さ7を30mm〜300mmの範囲内とすれば、どのようなゴルフクラブの前記結合長さ16であっても上述した突出長さ17を維持できることになり、ゴルフシャフト10の折損を効率的に防止できる。
【0026】
本発明のゴルフシャフトは、該ゴルフシャフトを形成するプリプレグシートに用いられる強化繊維の材料や弾性率、マトリックス樹脂、又、ゴルフシャフトの外径や肉厚といった要素に影響されることなく、ゴルフシャフト軸方向に対する強化繊維の配列角度を±19.5°〜±20.5°の範囲となるよう配列させた補強プリプレグシートをゴルフシャフト細径側の先端部の最も外側の層に積層させることで、前記先端部の強度を確保することが可能であるが、前記補強プリプレグシートにおける強化繊維の引張弾性率を147GPa〜392GPaの範囲内とすれば、さらにゴルフシャフトの曲げ剛性特性に悪影響を及ぼすことなく前記先端部での折損を防止する効果を高めることができる。
【0027】
上記引張弾性率の範囲外では、例えば、炭素繊維の場合、前記引張弾性率の低い繊維は、引張強度も低い傾向を示す特性を有するため、曲げ剛性は増大しないものの、ゴルフシャフト細径側の先端部を補強するといった効果を得られない。また、前記引張弾性率が高い繊維は、繊維の伸延性に劣るため、打撃時に生じるゴルフシャフトの変形に対応できなくなることによって、前記ゴルフシャフト自身が柔軟性を失ってしまう。したがって、前記ゴルフシャフトが折損しやすくなり好ましくない。
【0028】
本発明に使用される補強プリプレグシートの強化繊維の種類としては、金属繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、チタンカリウム繊維及び炭素繊維などが用いられ、中でも炭素繊維が軽量であるため好ましく、さらに、炭素繊維の中でもPAN系炭素繊維が圧縮強度に優れるため好適である。
【0029】
【実施例】
本発明の実施例を図面に基づき説明する。
本実施例のゴルフシャフトにおいては、ゴルフシャフトを形成するプリプレグシートの積層構成を以下に示すように配置した。
【0030】
即ち、実施例のゴルフシャフトは、本体プリプレグシートとしては、引張弾性率343GPaのPAN系炭素繊維を互いに並行かつシート状に引き揃えたものに未硬化状態のエポキシ樹脂を含浸してなる一方向性のプリプレグシートを用意した。また、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂中の炭素繊維含有率は76wt%とし、前記プリプレグシートの厚みは0.10mmであった。
補強プリプレグシートとしては、引張弾性率294GPaのPAN系炭素繊維を互いに並行かつシート状に引き揃えたものに未硬化状態のエポキシ樹脂を含浸してなる一方向性のプリプレグシートを用意した。また、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂中の炭素繊維含有率は76wt%とし、前記プリプレグシートの厚みは0.0961mmであった。
【0031】
又、前記本体プリプレグシートの内、図2に示すバイアスプリプレグ1は、強化繊維の配列角度をゴルフシャフト軸方向を0°とした時、該軸方向に対して+45°と−45°に傾斜して配列させるように裁断形成されたものを用意し、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して互いに反対方向となるように重ね合せたものである。本実施例では前記軸方向の長さを980mmとし、マンドレル4の外周に巻回させる幅を1.5周回巻回する幅としたものを、幅方向にマンドレル4の外周の0.5周回分ずらして重ね合わせたものを使用した。
【0032】
ストレートプリプレグ2は、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して平行に配列させるように裁断形成されたものである。本実施例では前記軸方向の長さを980mmとし、マンドレル4の外周に巻回させる幅を3周回巻回する幅としたものを使用した。
【0033】
補強プリプレグシート3は、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して+20°と−20°に傾斜して配列させるように裁断形成されたものを用意し、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して互いに反対方向となるように重ね合せて構成したものである。本実施例では補強プリプレグシート3の長さ7を200mmとし、マンドレル4の外周に巻回させる幅を1.5周回巻回する幅としたものを、幅方向にマンドレル4の外周の0.5周回分ずらして重ね合わせたものを使用した。
【0034】
尚、本実施例のゴルフシャフトを製造するために用いられたマンドレル4は、細径側5の外径が5mm、太径側6の外径が10mmのテーパー状に形成され、その長さは1000mmであった。
【0035】
上記プリプレグシートの卷回積層構成は、図2に示すように、まず、バイアスプリプレグ1をマンドレル4に巻回し、ストレートプリプレグ2を前記バイアスプリプレグ1の外側に巻回した後、補強プリプレグシート3を細径側5の先端部8の最外層に巻回した。
その後、ラッピングテープを巻き付け、130℃で2時間加熱し、エポキシ樹脂を硬化させた後、マンドレル4を抜き取って研磨、仕上げを行い、本実施例のゴルフシャフトを得た。
【0036】
比較例1のゴルフシャフトは、補強プリプレグシート3として、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して平行に配列させるように裁断形成されたものを重ねあわせて構成したものを使用した以外は実施例と全く同一にした。
【0037】
比較例2のゴルフシャフトは、補強プリプレグシート3として、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して+10°と−10°に傾斜して配列させるように裁断形成されたものを強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して互いに反対方向となるように重ねあわせて構成したものを使用した以外は実施例と全く同一にした。
【0038】
比較例3のゴルフシャフトは、補強プリプレグシート3として、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して+30°と−30°に傾斜して配列させるように裁断形成されたものを強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して互いに反対方向となるように重ねあわせて構成したものを使用した以外は実施例と全く同一にした。
【0039】
比較例4のゴルフシャフトは、補強プリプレグシート3として、強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して+45°と−45°に傾斜して配列させるように裁断形成されたものを強化繊維の配列角度を前記軸方向に対して互いに反対方向となるように重ねあわせて構成したものを使用した以外は実施例と全く同一にした。
【0040】
本実施例のゴルフシャフトと比較例1、2、3及び4のゴルフシャフトについて、それぞれにゴルフヘッドを取り付けた後、ゴルフファーのミスショットを想定して、最もゴルフシャフト折損に影響の大きいゴルフヘッドのホーゼル部周辺にボールを打撃し、ゴルフシャフトに応力集中を生じさせ、さらに、前記打撃のスピードを段階的に増していき、前記ゴルフシャフトが折損した時点での最大の衝撃強度を求める試験を行なった。その試験結果を図4に示す。
図3は、比較例1の衝撃強度の値を1.00として、本実施例および比較例2、3、4の衝撃強度の値との比較を比率で表わしたグラフである。
【0041】
また、本実施例のゴルフシャフトと比較例1、2、3及び4のゴルフシャフトにおいて、補強プリプレグシートを積層した細径側の先端部の曲げ剛性を計測した。その結果を図5に示す。
図4は、最も曲げ剛性値の高い比較例1の値を100として、本実施例および比較例2、3、4の曲げ剛性値との比較を比率で表わしたグラフである。
【0042】
本実施例のゴルフシャフトは、他の比較例のゴルフシャフトに比べて、衝撃強度がもっとも優れるという結果が得られた。また、ゴルフシャフト細径側の先端部の曲げ剛性においては、最も曲げ剛性の高い比較例1のゴルフシャフトに比べて約90%に抑えられているという結果が得られた。
【0043】
【発明の効果】
以上により、本発明のゴルフシャフトは、強化繊維の配列角度をゴルフシャフト軸方向に対して±19.5°〜±20.5°の範囲となるよう配列させた補強プリプレグシートをゴルフシャフト細径側の先端部の最も外側の層に積層したことによって、前記先端部の曲げ剛性の増加を抑制できるため、ゴルフシャフト全長に渡って最適な曲げ剛性を得られる。さらに、打撃時におけるゴルフシャフトの曲げ変形や捩り変形によって生じる応力にも耐えることができるため、前記ゴルフシャフトの折損を防止できる。
【0044】
また、前記補強プリプレグシートは、前記ゴルフシャフト細径側の最先端の位置から太径側へ向かって配置され、30mm〜300mmの長さとしたことによって、ゴルフシャフトのスイング性能に影響することなく、耐久性の向上したゴルフシャフトが得られる。
【0045】
さらに、前記補強プリプレグシートにおける強化繊維を引張弾性率が147GPa〜392GPaのPAN系炭素繊維としたことによって、ゴルフシャフトの軽量化を保持しつつ、圧縮側の圧縮応力に耐えうることができ、且つ、ゴルフシャフト細径側の先端部の柔軟性を維持できるため、ゴルフシャフト全長に渡って適度な曲げ剛性を得ることとゴルフシャフトの折損を防止することを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゴルフシャフトを示す説明図である。
【図2】本発明のゴルフシャフトを形成するプリプレグシートの積層構成を説明する図である。
【図3】本発明のゴルフシャフトに積層される補強プリプレグシートの領域を説明する図である。
【図4】本実施例における衝撃強度の試験結果を表わすグラフである。
【図5】本実施例における曲げ剛性の計測結果を表わすグラフである。
【符号の説明】
1 バイアスプリプレグ
2 ストレートプリプレグ
3 補強プリプレグシート
4 マンドレル
5 細径側
6 太径側
7 長さ
8 先端部
10 ゴルフシャフト
11 ゴルフヘッド
12 ホーゼル穴
13 領域
14 結合底部
15 結合境界部
16 結合長さ
17 突出長さ
18 グリップ
Claims (3)
- 強化繊維を引き揃えて成るプリプレグシートを巻回積層して形成された繊維強化樹脂製のゴルフシャフトにおいて、前記ゴルフシャフト細径側の最外層に、ゴルフシャフト軸方向を0°とした時の該軸方向に対する前記強化繊維の配列角度を±19.5°〜±20.5°の範囲となるように配列させた補強プリプレグシートを積層させたことを特徴とするゴルフシャフト。
- 前記補強プリプレグシートは、前記ゴルフシャフト細径側の最先端の位置から太径側へ向かって配置され、30mm〜300mmの長さとしたことを特徴とする請求項1記載のゴルフシャフト。
- 前記補強プリプレグシートにおける強化繊維は、引張弾性率が147GPa〜392GPaの範囲のPAN系炭素繊維であることを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフシャフト。
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