JP2004053810A - 画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】クリーニングブレードと感光体の感光層との接触状態を良好な接触状態にすることにより、長期に亘って良好なクリーニング性能を保持し、高速で高画質な電子写真画像を形成できる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】感光体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置において、前記感光体の感光層は、25℃環境下でのクリープ率Cが2.0≦C≦10.0(%)、弾性仕事比Wが25.0≦W≦50.0(%)であり、前記感光体の感光層と前記クリーニングブレードとの摩擦係数μが0.2≦μ≦1.7であること。
【選択図】 図1
【解決手段】感光体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置において、前記感光体の感光層は、25℃環境下でのクリープ率Cが2.0≦C≦10.0(%)、弾性仕事比Wが25.0≦W≦50.0(%)であり、前記感光体の感光層と前記クリーニングブレードとの摩擦係数μが0.2≦μ≦1.7であること。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関し、特に、感光体表面の残留トナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式の画像形成装置に用いられる像担持体としては、可視光から赤外光まで各種露光光源に対応した材料が開発し易いこと、環境汚染のない材料を選択できること、製造コストが安いこと等が他の感光体に対して有利であることから、有機光導電性物質を含有する有機感光体(以下、単に感光体ともいう。)が最も広く用いられている。
【0003】
一方、電子写真方式の画像形成装置は、近年のデジタル技術の進展により、デジタル方式の画像形成装置が主流と成ってきており、デジタル方式の画像形成装置においては、1画素単位の小さなドット画像を顕像化することを基本としており、これらの小さなドット画像を忠実に再現する高画質化の技術が要求されている。
【0004】
このような高画質化の技術の1つとして、トナーの微細化技術があり、例えば、特開2000−214629公報に、重合トナー等を用いた電子写真用の現像剤が提案されている。
【0005】
重合トナーは原料モノマーを水系で均一に分散した後に重合させトナーを製造することから、トナーの粒度分布、および形状が均一で小粒径のトナーが得られ、このようなトナーを用いた現像剤を用いると原画像を忠実に再現しやすくなるので、前述のデジタル方式の画像形成装置に多用されるようになってきた。
【0006】
しかし、重合トナーを有機感光体を用いた画像形成装置に採用するとき新たな技術課題が発生している。
【0007】
すなわち、重合トナーは前述のように、トナー形状がモノマーの重合過程等で形成されるため、ほぼ球形の形状で作製され、一般に、粉砕トナー(粒径10μm程度)よりも小粒径であるため、画像形成装置の感光体に残留したトナーのクリーニングが困難である。
【0008】
特に、長期間に渡って使われて摩耗が進んだクリーニングブレードと、分離爪や紙との摩擦で表面が傷ついた感光体との間では、球形で小粒径のトナーのクリーニング不良が発生しやすい。
【0009】
また、クリーニング不良を繰り返すうちに、紙粉やトナーの外添剤等が感光体の表面に付着して層状化する「フィルミング」を発生しやすい。
【0010】
これらのクリーニング不良やフィルミングが原因となって、転写性能を低下させたり、画像ムラ等を発生させて高画質化を阻害する問題を発生させることがある。
【0011】
これを防止するために、クリーニングブレードの材質に反発弾性が高いゴムを用いることが考えられ、反発弾性を60〜80%と高くしたものとして特開平5−35156号公報、また、反発弾性を62±8%と高くしたものとして特開平6−274079号公報等が知られている。
【0012】
しかしながら、反発弾性が高いクリーニングブレードは、クリーニング時における感光体との接触で、クリーニングブレードのエッジ(先端部)が感光体を擦るような往復運動が活発になり、感光体に残留したトナーや紙粉を良く掻き落とすのでクリーニング性能は優れるが、その反面、クリーニングブレードのエッジが早く摩耗したり、「ブレード鳴き」と称する異常音や「めくれ」と称し、クリーニングブレードのフリー部(エッジを含む自由端部)が感光体の回転方向にめくれ上がり損傷したりする現象が発生していた。
【0013】
上記の現象は、特に、感光体が新しい状態、つまり、感光体の表面が無傷で平滑であり、トナーや外添剤が付着していないためにクリーニングブレードとの摩擦係数が高い状態で発生しやすい。
【0014】
これを防止するために、例えば、研磨効果の大きい大粒径の外添剤を添加すると、クリーニングブレードとの摩擦等で、感光体の表面摩耗が大きくなり、擦り傷もつきやすく、感光体の耐久性が小さくなるという問題があった。
【0015】
感光体を製造する場合は、画像形成装置の性能や機能等の仕様により異なるが、例えば、アルミニウムで形成された円筒状基材の外周面に、下引き層(UCL)、電荷輸送層(CTL)、電荷発生層(CGL)等からなる感光層を連続塗布乾燥装置等で塗布し、100℃程度(乾燥炉内の制御温度)で乾燥させて、例えば、全体として25μm程度の層厚になるように製作する。
【0016】
感光体1を乾燥させる乾燥温度が低い場合は、感光層を形成する塗布液の溶媒の蒸発が不十分で良好な乾燥が得られず、詳細は後述するが、永久変形の生じ易さを示すクリープ率や変形の戻り易さを示す弾性仕事比が大きい、すなわち、比較的軟らかい感光層を有する感光体を形成することがある。
【0017】
このように比較的軟らかい感光体の感光層には、クリーニングブレードが深く食い込んでしまい、クリーニングブレードと感光体との摩擦係数が高くなるので、前述の「ブレード鳴き」や「めくれ」等の現象の他に、「バウンディング」と称して、感光体に対して垂直に飛び跳ねるような運動をして異常音が発生したり、クリーニングブレードや感光体を損傷してしまう現象を発生させることがあった。
【0018】
また、逆に感光体を必要以上に高温で乾燥させると、感光体の表面が硬化し、感光体の摩擦係数が過剰に低くなってしまい、感光体に残留したトナーや紙粉がクリーニングブレードのエッジに引っかからなくなってしまう「すり抜け」と称するクリーニング不良が発生したり、熱により感光層の下引き層の特性が変化して、帯電性能を低下させる等の問題があった。
【0019】
このような「ブレード鳴き」や「めくれ」、「バウンディング」、あるいは「すり抜け」等の現象が発生する問題は、前述のようにクリーニングブレードと感光体との接触状態、すなわち、クリーニングブレードと直に接触する感光体の感光層との接触状態が不適切であるために発生する問題であることから、感光体の感光層とクリーニングブレードとを総合的に解析し、早期に、クリーニングブレードと感光体の感光層との良好な接触条件を確立し高画質な画像形成ができる技術開発が求められていた。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑み、クリーニングブレードと感光体の感光層との接触状態を良好な接触状態にすることにより、長期に亘って良好なクリーニング性能を保持し、高速で高画質な電子写真画像を形成できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために、本発明は感光体の感光層とクリーニングブレードの接触状態を総合的に解析し、感光層のクリープ率や弾性仕事比が乾燥温度に関係しクリーニングブレードとの摩擦係数に関係することを見出し、その結果、良好な接触状態が維持できる感光層の条件やクリーニングブレードの条件を見出したものである。
【0022】
すなわち、請求項1に記載の発明は、感光体上に形成された静電潜像を、トナーにより現像し、顕像化されたトナー像を前記感光体から転写材に転写した後、前記感光体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置において、前記感光体の感光層は、25℃環境下でのクリープ率Cが2.0≦C≦10.0(%)、弾性仕事比Wが25.0≦W≦50.0(%)であり、前記感光体の感光層と前記クリーニングブレードとの摩擦係数μが0.2≦μ≦1.7であることを特徴とする。
【0023】
これにより、感光体の感光層とクリーニングブレードとの接触状態が良好となり、「ブレード鳴き」や「めくれ」、「バウンディング」等の現象が発生せず、感光体の回転が滑らかとなり、クリーニングブレードや感光体の感光層等の耐久性が向上すると共に、感光体に残留したトナーや紙粉等を綺麗に除去できるので、「すり抜け」や「フィルミング」といったクリーニング不良を発生させず、転写性能を低下させたり、画像ムラ等が発生することなく高速で高画質な電子写真画像を形成できる画像形成装置を提供することができる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記感光層の乾燥温度Tが100≦T≦115(℃)であることを特徴とする。
【0025】
これにより、感光体の感光層を適切に乾燥でき、感光層のクリープ率や弾性仕事比およびクリーニングブレードとの摩擦係数を所定の範囲内に維持することができるので、耐摩耗性が向上し、長期に亘って良好な感度を有する感光体の感光層が得られ、高画質な画像形成ができる。
【0026】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記クリーニングブレードは25℃環境下での反発弾性が40〜75(%)のウレタンゴムであり、前記感光体の中心方向への当接荷重が単位長さ当たり0.147〜0.245(N/cm)に設定されていることを特徴とする。
【0027】
これにより、クリーニングブレードの適切な当接荷重で感光体の感光層との接触状態が良好となり、「ブレード鳴き」や「めくれ」、「バウンディング」等の現象が発生せず、クリーニングブレードや感光体の感光層等の耐摩耗性が向上すると共に、感光体に残留したトナーや紙粉等を綺麗に除去できるので、「すり抜け」や「フィルミング」といったクリーニング不良が発生せず、長期に亘って良好な感度を有する感光体の感光層で高画質な画像形成ができる。
【0028】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、個数粒度分布における個数変動係数が0〜27(%)であり、個数平均粒径が3〜8μmであり、形状係数が0.940〜0.985の範囲にあるトナー粒子の割合が65〜100(%)であるトナーを用いていることを特徴とする。
【0029】
これにより、粒形が球形に近く粒径が小さいトナーを使用しても、感光体に残留したトナーや紙粉等を綺麗に除去できるので、「すり抜け」や「フィルミング」といったクリーニング不良が発生せず、デジタル方式の1画素単位の小さなドット画像を綺麗に顕像化することができ、高画質な画像を忠実に再現するデジタル方式の画像形成装置を提供することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0031】
図1は本発明に係る画像形成装置の画像形成部を示す概略図である。図2は本発明に係る感光体の押し込み試験結果を示すグラフである。図3は本発明に係る感光体の乾燥温度と摩擦係数を示すグラフである。
【0032】
図1により、本発明の画像形成装置の画像形成部について説明する。
なお、本発明の実施の形態においては、電子写真方式の画像形成装置の画像形成部に関して説明するが、この構成は一般に良く知られているので、詳細は割愛する。
【0033】
図中、10は画像形成部の全体を示し、1は感光体で、2は帯電手段、3は現像スリーブ3aを備えた現像手段、4は転写手段、5は分離手段であり、6はクリーニング手段でクリーニングブレード7を備えている。8は原稿画像を読み取り感光体1に静電潜像を形成するために露光を与える露光手段(図示せず)からの露光光である。
【0034】
感光体1は、一般に、画像形成装置の仕様等により外形形状が異なるだけでなく、感光体の基体の外周面に形成する光導電体層の厚さや層の構成等が異なるが、例えば、アルミニウム等の材質で円筒状に加工された基体の外周面に下引き層(UCL)を形成し、次に正帯電用の場合は電荷輸送層(CTL)、電荷発生層(CGL)等の順で各層を構成し、負帯電用の場合は電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)等の順で各層を構成して、導電層および有機感光層(OPC)の光導電体層(以下、全ての層を含めて単に感光層ともいう。)が形成された、いわゆる有機感光体といわれるものであり、導電層を接地された状態で矢印Aで示す時計方向に回転される。
【0035】
感光体1の感光層とクリーニングブレードとの接触状態に着目して検討した結果、感光体1の感光層における摩擦係数は、感光層のクリープ率や弾性仕事比の大きさが影響することを見出した。
【0036】
つまり、感光層の乾燥温度との関係で、100℃より低い温度で乾燥された感光層は、感光層を形成する樹脂の高分子同志の絡まり合いが疎で軟らかく、クリープ率や弾性仕事比が大きくなり、ブレードエッジが食い込みやすいので摩擦係数が高くなり、115℃より高い温度で乾燥された感光層は、感光層を形成する樹脂の高分子同志の絡まり合いが密で硬く、クリープ率や弾性仕事比が小さくなるので、ブレードエッジが食い込みにくくなり摩擦係数が低くなるという関係がある。
【0037】
また、必要以上に高い温度で乾燥すると感光層に含まれる樹脂等の特性が変化して、耐電性能を低下させるという別の問題を生じることがある。
【0038】
すなわち、感光体1の感光層とクリーニングブレードとの接触状態が良好となるクリープ率や弾性仕事比および摩擦係数を有する感光層を形成するためには、乾燥温度を100〜115℃に設定すれば良いことを見出した。
【0039】
感光体1の感光層を形成する場合は、例えば、連続塗布乾燥装置といわれる装置を使用して形成することが多い。
【0040】
連続塗布乾燥装置に関して、詳細な説明は割愛するが、一般に、連続塗布乾燥装置は、感光層を形成する塗布液を塗布するために筒状の塗布部を備えた塗布装置と筒状の乾燥部を備えた乾燥装置とを備え、煙突のように地面に対して垂直に、筒状の塗布装置の上部に筒状の乾燥装置を積み重ねた構造をした装置である。
【0041】
感光体1の円筒状の基体に塗布液を塗布する場合は、塗布装置の下部に設けられた基体搬送装置により、感光体1の円筒状の基体を塗布装置の筒状の塗布部の下部から連続的に挿入して、感光体1の円筒状の基体の筒軸を合わせるように垂直に積み重ねながら上方に押し出し、連続的に移動させる。
【0042】
そして、塗布装置により塗布液を円筒状の基体の外周面に均一に塗布する塗布工程を終了した後に、所定の乾燥温度に設定された乾燥装置の乾燥経路内を所定の速度で通過させながら塗布液の溶媒を適切に蒸発させて乾燥する乾燥工程を経て感光体1の感光層を形成するようになっている。
【0043】
つまり、感光層の乾燥状態は、乾燥工程における乾燥温度と乾燥経路内を通過させる速度が関係するが、乾燥工程の終了時において、所定のクリープ率や弾性仕事比および摩擦係数を有する感光層を高品質で形成するためには、速やかに塗布液の溶媒を蒸発させる必要があり、感光体1に塗布された塗布液の溶媒を最も適切に蒸発させることができる温度を乾燥温度として設定する必要がある。
【0044】
そこで、本発明の実施の形態においては、詳細は後述するが、感光体1の感光層を形成する場合に、感光体1に塗布された塗布液の溶媒を最も適切に蒸発させることができる温度を100〜115℃にすれば良いことを見出し、乾燥装置の乾燥温度(乾燥経路内の温度)を100〜115℃に設定することにより、25℃環境下でのクリープ率Cが2.0〜10.0(%)、弾性仕事比Wが25.0〜50.0(%)であり、感光体1の感光層とクリーニングブレードとの摩擦係数μが0.2〜1.7となる感光層を形成した。
【0045】
帯電手段2は、例えば、スコロトロン帯電器等により、トナーと同極性のコロナ放電によって、感光体1の感光層に対し一様な電位を与えるものである。
【0046】
現像手段3は、現像剤を内包した筐体に磁石体を内蔵し、現像剤を保持して回転する搬送体としての、例えば、現像スリーブ3aによって一定の層厚に規制されて現像域へと搬送され、感光体1上に形成された静電潜像を現像しトナー像として顕像化する。
【0047】
転写手段4は、トナーと反対極性の直流電圧等からなる転写バイアスを印加し、転写領域に転写電界を形成することにより、感光体1上に形成されたトナー像を紙等の記録部材上に転写する。
【0048】
分離手段5は、除電手段でもあり、好ましくはコロナ放電器により構成され、感光体1から記録紙等の記録部材を分離するものである。
【0049】
クリーニング手段6は、転写後に感光体1の表面上に残った不用なトナー(残留トナーともいう。)や紙粉等をクリーニングブレード7により掻き落とし、除去清掃するものである。
【0050】
クリーニングブレード7は、適度な弾性が必要で、JIS(日本工業標準)規格のJIS−K6301に規定されている反発弾性が、25℃環境下で、40〜75(%)以内になるように、例えば、イソシアネートとポリオールおよび各種水素含有化合物との付加反応を経て合成されるポリウレタン樹脂を素材とするウレタンゴムからなる弾性体として形成され、感光体1の回転中心方向への当接荷重が単位長さ当たり0.147〜0.245(N/cm)に設定されてクリーニング手段6に取り付けられている。
【0051】
因に、クリーニングブレード7の当接荷重が0.147(N/cm)より小さいと「すり抜け」が発生しクリーニング不良となる。また、0.245(N/cm)より大きくなると、感光体の感光層との摩擦により、例えば、感光体の非印字領域にトナーが付着してしまう「かぶり」等の発生原因となる。
【0052】
なお、クリーニングブレードの反発弾性を所定の範囲に収まるようにしたり、感光体1の感光層との接触状態を良好にするために、例えば、クリーニングブレードの素材のポリウレタン樹脂に硬化剤を適切に選択し適宜に加えたり、感光層の表面層にシリコンオイル等を混入させたりしても良い。
【0053】
次に、画像形成装置の作動について説明する。
画像形成装置の電源(図示せず)を投入し起動させ、スタートボタン(図示せず)を押すと、感光体1はモータ等の駆動源(図示せず)により矢印A方向に回転を開始し、画像読取部(図示せず)で原稿画像の読み取りを開始すると共に、帯電手段2が感光体1の感光層に対し一様な電位を与える
読み取られた原稿画像は制御手段(図示せず)により、例えば、デジタル画像信号等に変換され、露光手段(図示せず)から感光体1の一様な電位が与えられた感光層に対して、露光光8が照射され、感光体1の感光層に静電潜像が形成される。
【0054】
現像手段3の現像スリーブ3aにより、感光体1の感光層に形成された静電潜像をトナーで顕像化してトナー像を形成する。
【0055】
感光体1の回転によるトナー像形成工程に同期して、紙等の記録部材(図示せず)が搬送され、転写手段4によりトナー像が記録部材に転写され、分離手段により記録部材が感光体1から分離された後に、記録部材は定着手段(図示せず)に搬送され、定着手段の加熱押圧によりトナーが記録部材に溶着固定されて排出される。
【0056】
感光体1は、記録部材を分離した後も回転を続け、記録部材に転写されなかった残留トナーや、例えば、紙粉等がクリーニング手段6のクリーニングブレード7により掻き落とされ除去清掃されると、感光体1の回転が停止し、一連の画像形成工程を終了する。
【0057】
引き続いて、画像形成を行う場合は、スタートボタンを押せば良く、画像形成を行わない場合は画像形成装置の電源を遮断して総ての作動を終了する。
【0058】
本発明の実施の形態における感光体の感光層のクリープ率や弾性仕事比について説明する。
【0059】
クリープ率や弾性仕事比は、JIS(日本工業標準)規格のJIS−Z2244にビッカース硬さ試験として詳細に測定方法等が規定されており、測定結果からクリープ率や弾性仕事比を求めることができる。なお、ビッカース硬さ試験を通称として押し込み試験とも言う。
【0060】
図2は、具体的には、本発明の実施の形態における感光体の感光層の押し込み試験をビッカース硬さ試験に基づき実施した結果の一例を示すもので、縦軸に変形量(μm)、横軸に荷重(N)を示すグラフであり、F1は押し込み時の押し込み荷重と変形量との関係を示す曲線で、F2は押し込みを停止したときの直線であり、F3は除荷した時の曲線を示すものである。aは一定荷重を保持している間の変形量を示し、bは最大変形量、cは永久変形量を示す。
【0061】
ビッカース硬さ試験の測定方法に関し詳細な説明は割愛するが、ビッカース硬さ試験(JIS−Z2244)に基づき押し込み試験を行う場合、感光体1の感光層と同じ条件で乾燥させた感光層をアルミニウム平板上に形成した試料をビッカース硬さ試験器に固定し、試料に対して垂直にダイヤモンドで形成されたビッカース圧子を規定の速度と荷重で押し込んで行く。
【0062】
図2に示すように、押し込み時には、押し込み荷重が「0」の状態からビッカース圧子を試料に押しこんでいき、規定の押し込み荷重になったときの変形量をグラフに記入すると、押し込み荷重と変形量との関係を示す曲線F1が得られる。
【0063】
次に、規定の位置で押し込みを停止するとbで示す最大変形量が得られ、規定時間だけ規定の荷重を保持すると、押し込みを停止したにもかかわらずF2の直線で示すように変形量aだけ変形する。
【0064】
その後、押し込み時とは逆に荷重を減少(除荷)していくと、押し込み時と同様に除荷と変形量との関係がF3で示す曲線として得られる。
【0065】
永久変形量cは、押し込み開始時点の変形量「0」の状態と除荷が終了した時点での変形量との差として得られる。
【0066】
クリープ率Cは、C=a/b(%)の式で表され、押し込み試験での測定値として、一定荷重を保持している間の変形量aと最大変形量bが得られるとクリープ率が求まる。
【0067】
なお、クリープ率Cは、永久変形の生じ易さを示し、大きいほど軟らかいことを表す。クリープ率Cが大きい感光体の感光層にはクリーニングブレードのエッジが食い込みやすいと言える。
【0068】
また、弾性仕事比Wは、W=Wr/(Wr+Wp)(%)の式で表され、図2の斜線部の面積Wrと、曲線F1、直線F2、曲線F3とで囲われた面積Wpが得られると、弾性仕事比Wを求めることができる。
【0069】
因に、弾性仕事比Wは変形の戻り易さを示し、大きいほど変形が戻りやすいことを表しており、Wrの面積が大きいほどゴムに近く(元に戻りやすい)、Wpの面積が大きいほどプラスチックに近い(元に戻りにくい)ことを示している。弾性仕事比Wが大きい感光体の感光層にはクリーニングブレードのエッジが食い込みやすいと言える。
【0070】
次に、本発明の実施の形態における感光層の摩擦係数に関して説明する。
なお、感光層の摩擦係数μは、一般に、感光体の回転トルク(N・cm)を測定することで求められる。
【0071】
感光体の回転トルクを測定する場合は、25℃環境下において、感光体が回転できる測定治具に設置し、具体的には、先ず、負荷のない状態での感光体の回転トルクT1(N・cm)と、クリーニングブレードのエッジにトナーを塗布して、感光体の回転中心方向に単位長さ当たりの荷重F(N/cm)で圧接した状態の感光体の回転トルクT2(N・cm)を測定器としてトルクゲージを使用して測定する。
【0072】
そして、測定された回転トルクT1(N・cm)と回転トルクT2(N・cm)により摩擦係数μを下記の式により算出する。
【0073】
摩擦係数μ=(T2−T1)/(F・d)
d:感光体の半径(cm)
F:感光体の回転中心方向に加える単位長さあたりの荷重(N/cm)
図3は、前述の回転トルク測定方法に基づき測定した感光体の回転トルクから求められた摩擦係数μと感光体の感光層の乾燥温度との関係を一例として示したもので、縦軸に摩擦係数μ、横軸に感光体の乾燥温度(℃)を示したグラフである。
【0074】
乾燥温度が100℃より低い領域、例えば、90℃で感光体を乾燥した場合には、感光体の感光層が軟らかくクリーニングブレードとの摩擦係数μが高くなり、この感光体を使用して、後述する実験をした時には、バウンディングが発生した。
【0075】
本発明に係わる感光体の感光層とクリーニングブレードとの接触状態に関する実験について説明する。
【0076】
感光体の感光層の乾燥温度が100〜115℃の範囲内に入る3種類の試料(実施例1〜3)と、乾燥温度が前述の温度範囲から外れた試料を3種類(比較例1〜3)とを準備して実験を行った。
【0077】
なお、乾燥温度については(1)に示し、感光体とクリーニングブレードの条件を(2)、(3)に、実験条件を(4)、(5)に示す。また、実験の結果を(6)に示した。なお、乾燥温度以外の条件は実施例1〜3と比較例1〜3とは全て同じ条件とした。
(1)感光体の感光層の乾燥温度
・実施例1:115℃ ・比較例1:125℃
・実施例2:110℃ ・比較例2: 90℃
・実施例3:100℃ ・比較例3: 80℃
(2)感光体の条件
・感光体ドラム:長さ34.6cm、半径5cm
・感光体自体の回転トルク:2.94N・cm
(3)クリーニングブレードの条件(単に、ブレードとも言う。)
・ブレード材質:北辰製234700(反発弾性68%)
・単位長さあたりのブレード荷重0.147〜0.245(N/cm)
(4)環境条件
・低温低湿(L.L.):10℃/20%RH
・常温常湿(N.N.):20℃/50%RH
・高温高湿(H.H.):30℃/80%RH
(5)実写テスト
・250,000コピーの実写テストを行った。
・トナーは、個数粒度分布における個数変動係数が0〜27(%)で、個数平均粒径が3〜8μmと小粒径で、形状係数が0.940〜0.985と球に近い形状で、トナー粒子の割合が65〜100(%)であるものを使用した。
(6)結果
感光層 クリープ率 弾性仕事比 摩擦係数 備考
(試料) C(%) W(%) μ
実施例1 2.0 24.9 0.2 A
実施例2 3.2 39.6 1.1 B
実施例3 10.0 50.0 1.7 C
比較例1 1.8 24.2 0.1 D
比較例2 11.3 51.4 1.8 E
比較例3 13.0 56.7 2.1 F
(備考)
A:鳴き・バウンディング・めくれ等の不具合発生なし。
【0078】
B:同上
C:同上
D:L.L.で、約130,000コピーからクリーニング不良が断続的に発生した。また、H.H.で、約50,000コピーから、一晩放置した翌朝の画像でボケ(画像が不鮮明になる状態)が発生した。
【0079】
E:全環境で、断続的にブレード鳴き、バウンディングが発生した。
F:H.H.で、テスト開始時にめくれが多発したのでテスト中断。
【0080】
以上の実験結果によれば、乾燥温度が高いものは摩擦係数が低く、乾燥温度が低いものは摩擦係数が高く、感光体の乾燥温度が摩擦係数に大きく影響することが実証された。
【0081】
なお、クリープ率Cの2.0〜10.0(%)の範囲内を満足しなかったのは比較例1〜3で、弾性仕事比Wの25.0〜50.0(%)の範囲内を満足しなかったのは比較例2、3で、感光体の感光層とブレードとの摩擦係数μの0.2〜1.7の範囲内を満足しなかったのは比較例1〜3であり、実施例1〜3は全てを満足した。
【0082】
すなわち、クリープ率C、弾性仕事比W、摩擦係数μの全てを満足できなかった比較例1〜3は、備考欄のD〜Fに記載された不具合を生じたが、全てを満足した実施例1〜3の実験結果は良好であった。
【0083】
特に、実験にはトナーとして小粒径で、球に近い形状のものを使用したが、実施例1〜3には、「すり抜け」等のクリーニング不良や「ブレード鳴き」や「めくれ」、「バウンディング」といった現象が発生することはなかった。
【0084】
従って、感光体の感光層とクリーニングブレードの接触状態を良好にする条件は、感光体の感光層を100〜115℃で乾燥させて形成し、クリープ率Cが2.0〜10.0(%)の範囲内で、弾性仕事比Wが25.0〜50.0(%)の範囲内であり、反発弾性が40〜75(%)の範囲内のクリーニングブレードを使用した場合の感光体の感光層との摩擦係数μが0.2〜1.7の範囲内を満足することが必要である。
【0085】
以上、本発明の実施の形態において、有機光導電性物質からなる感光層を有する感光体について説明してきたが、これに限るものではなく、無機光導電性物質からなる感光層を有するものであっても良い。
【0086】
【発明の効果】
本願発明は、感光体の感光層とクリーニングブレードとの接触状態が良好となる感光体の感光層のクリープ率や弾性仕事比およびクリーニングブレードとの摩擦係数等の条件やクリーニングブレードの反発弾性や感光体との当接荷重等の条件を設定できるので、クリーニングブレードが接触した状態において感光体の回転が滑らかとなり、「ブレード鳴き」や「めくれ」、「バウンディング」等の現象が発生せず、クリーニングブレードや感光体の感光層等の耐久性が向上する。
【0087】
また、感光体に残留したトナーや紙粉等を綺麗に除去できるので、「すり抜け」や「フィルミング」といったクリーニング不良を発生させず、長期に亘って良好な感度を有する感光体の感光層が得られ、転写性能を低下させたり、画像ムラ等が発生することなく高速で高画質な電子写真画像を形成できる画像形成装置を提供することができる。
【0088】
更に、粒形が球形に近く粒径が小さいトナーを使用しても、感光体に残留したトナーや紙粉等を綺麗に除去できるので、「すり抜け」や「フィルミング」といったクリーニング不良を発生せず、デジタル方式の1画素単位の小さなドット画像を綺麗に顕像化することができ、高画質な画像を忠実に再現するデジタル方式の画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る画像形成装置の画像形成部を示す概略図である。
【図2】本発明に係る感光体の押し込み試験結果を示すグラフである。
【図3】本発明に係る感光体の乾燥温度と摩擦係数を示すグラフである。
【符号の説明】
1 感光体
2 帯電手段
3 現像手段
4 転写手段
5 分離手段
6 クリーニング手段
7 クリーニングブレード
8 露光光
10 画像形成部
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関し、特に、感光体表面の残留トナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式の画像形成装置に用いられる像担持体としては、可視光から赤外光まで各種露光光源に対応した材料が開発し易いこと、環境汚染のない材料を選択できること、製造コストが安いこと等が他の感光体に対して有利であることから、有機光導電性物質を含有する有機感光体(以下、単に感光体ともいう。)が最も広く用いられている。
【0003】
一方、電子写真方式の画像形成装置は、近年のデジタル技術の進展により、デジタル方式の画像形成装置が主流と成ってきており、デジタル方式の画像形成装置においては、1画素単位の小さなドット画像を顕像化することを基本としており、これらの小さなドット画像を忠実に再現する高画質化の技術が要求されている。
【0004】
このような高画質化の技術の1つとして、トナーの微細化技術があり、例えば、特開2000−214629公報に、重合トナー等を用いた電子写真用の現像剤が提案されている。
【0005】
重合トナーは原料モノマーを水系で均一に分散した後に重合させトナーを製造することから、トナーの粒度分布、および形状が均一で小粒径のトナーが得られ、このようなトナーを用いた現像剤を用いると原画像を忠実に再現しやすくなるので、前述のデジタル方式の画像形成装置に多用されるようになってきた。
【0006】
しかし、重合トナーを有機感光体を用いた画像形成装置に採用するとき新たな技術課題が発生している。
【0007】
すなわち、重合トナーは前述のように、トナー形状がモノマーの重合過程等で形成されるため、ほぼ球形の形状で作製され、一般に、粉砕トナー(粒径10μm程度)よりも小粒径であるため、画像形成装置の感光体に残留したトナーのクリーニングが困難である。
【0008】
特に、長期間に渡って使われて摩耗が進んだクリーニングブレードと、分離爪や紙との摩擦で表面が傷ついた感光体との間では、球形で小粒径のトナーのクリーニング不良が発生しやすい。
【0009】
また、クリーニング不良を繰り返すうちに、紙粉やトナーの外添剤等が感光体の表面に付着して層状化する「フィルミング」を発生しやすい。
【0010】
これらのクリーニング不良やフィルミングが原因となって、転写性能を低下させたり、画像ムラ等を発生させて高画質化を阻害する問題を発生させることがある。
【0011】
これを防止するために、クリーニングブレードの材質に反発弾性が高いゴムを用いることが考えられ、反発弾性を60〜80%と高くしたものとして特開平5−35156号公報、また、反発弾性を62±8%と高くしたものとして特開平6−274079号公報等が知られている。
【0012】
しかしながら、反発弾性が高いクリーニングブレードは、クリーニング時における感光体との接触で、クリーニングブレードのエッジ(先端部)が感光体を擦るような往復運動が活発になり、感光体に残留したトナーや紙粉を良く掻き落とすのでクリーニング性能は優れるが、その反面、クリーニングブレードのエッジが早く摩耗したり、「ブレード鳴き」と称する異常音や「めくれ」と称し、クリーニングブレードのフリー部(エッジを含む自由端部)が感光体の回転方向にめくれ上がり損傷したりする現象が発生していた。
【0013】
上記の現象は、特に、感光体が新しい状態、つまり、感光体の表面が無傷で平滑であり、トナーや外添剤が付着していないためにクリーニングブレードとの摩擦係数が高い状態で発生しやすい。
【0014】
これを防止するために、例えば、研磨効果の大きい大粒径の外添剤を添加すると、クリーニングブレードとの摩擦等で、感光体の表面摩耗が大きくなり、擦り傷もつきやすく、感光体の耐久性が小さくなるという問題があった。
【0015】
感光体を製造する場合は、画像形成装置の性能や機能等の仕様により異なるが、例えば、アルミニウムで形成された円筒状基材の外周面に、下引き層(UCL)、電荷輸送層(CTL)、電荷発生層(CGL)等からなる感光層を連続塗布乾燥装置等で塗布し、100℃程度(乾燥炉内の制御温度)で乾燥させて、例えば、全体として25μm程度の層厚になるように製作する。
【0016】
感光体1を乾燥させる乾燥温度が低い場合は、感光層を形成する塗布液の溶媒の蒸発が不十分で良好な乾燥が得られず、詳細は後述するが、永久変形の生じ易さを示すクリープ率や変形の戻り易さを示す弾性仕事比が大きい、すなわち、比較的軟らかい感光層を有する感光体を形成することがある。
【0017】
このように比較的軟らかい感光体の感光層には、クリーニングブレードが深く食い込んでしまい、クリーニングブレードと感光体との摩擦係数が高くなるので、前述の「ブレード鳴き」や「めくれ」等の現象の他に、「バウンディング」と称して、感光体に対して垂直に飛び跳ねるような運動をして異常音が発生したり、クリーニングブレードや感光体を損傷してしまう現象を発生させることがあった。
【0018】
また、逆に感光体を必要以上に高温で乾燥させると、感光体の表面が硬化し、感光体の摩擦係数が過剰に低くなってしまい、感光体に残留したトナーや紙粉がクリーニングブレードのエッジに引っかからなくなってしまう「すり抜け」と称するクリーニング不良が発生したり、熱により感光層の下引き層の特性が変化して、帯電性能を低下させる等の問題があった。
【0019】
このような「ブレード鳴き」や「めくれ」、「バウンディング」、あるいは「すり抜け」等の現象が発生する問題は、前述のようにクリーニングブレードと感光体との接触状態、すなわち、クリーニングブレードと直に接触する感光体の感光層との接触状態が不適切であるために発生する問題であることから、感光体の感光層とクリーニングブレードとを総合的に解析し、早期に、クリーニングブレードと感光体の感光層との良好な接触条件を確立し高画質な画像形成ができる技術開発が求められていた。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑み、クリーニングブレードと感光体の感光層との接触状態を良好な接触状態にすることにより、長期に亘って良好なクリーニング性能を保持し、高速で高画質な電子写真画像を形成できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために、本発明は感光体の感光層とクリーニングブレードの接触状態を総合的に解析し、感光層のクリープ率や弾性仕事比が乾燥温度に関係しクリーニングブレードとの摩擦係数に関係することを見出し、その結果、良好な接触状態が維持できる感光層の条件やクリーニングブレードの条件を見出したものである。
【0022】
すなわち、請求項1に記載の発明は、感光体上に形成された静電潜像を、トナーにより現像し、顕像化されたトナー像を前記感光体から転写材に転写した後、前記感光体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置において、前記感光体の感光層は、25℃環境下でのクリープ率Cが2.0≦C≦10.0(%)、弾性仕事比Wが25.0≦W≦50.0(%)であり、前記感光体の感光層と前記クリーニングブレードとの摩擦係数μが0.2≦μ≦1.7であることを特徴とする。
【0023】
これにより、感光体の感光層とクリーニングブレードとの接触状態が良好となり、「ブレード鳴き」や「めくれ」、「バウンディング」等の現象が発生せず、感光体の回転が滑らかとなり、クリーニングブレードや感光体の感光層等の耐久性が向上すると共に、感光体に残留したトナーや紙粉等を綺麗に除去できるので、「すり抜け」や「フィルミング」といったクリーニング不良を発生させず、転写性能を低下させたり、画像ムラ等が発生することなく高速で高画質な電子写真画像を形成できる画像形成装置を提供することができる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記感光層の乾燥温度Tが100≦T≦115(℃)であることを特徴とする。
【0025】
これにより、感光体の感光層を適切に乾燥でき、感光層のクリープ率や弾性仕事比およびクリーニングブレードとの摩擦係数を所定の範囲内に維持することができるので、耐摩耗性が向上し、長期に亘って良好な感度を有する感光体の感光層が得られ、高画質な画像形成ができる。
【0026】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記クリーニングブレードは25℃環境下での反発弾性が40〜75(%)のウレタンゴムであり、前記感光体の中心方向への当接荷重が単位長さ当たり0.147〜0.245(N/cm)に設定されていることを特徴とする。
【0027】
これにより、クリーニングブレードの適切な当接荷重で感光体の感光層との接触状態が良好となり、「ブレード鳴き」や「めくれ」、「バウンディング」等の現象が発生せず、クリーニングブレードや感光体の感光層等の耐摩耗性が向上すると共に、感光体に残留したトナーや紙粉等を綺麗に除去できるので、「すり抜け」や「フィルミング」といったクリーニング不良が発生せず、長期に亘って良好な感度を有する感光体の感光層で高画質な画像形成ができる。
【0028】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、個数粒度分布における個数変動係数が0〜27(%)であり、個数平均粒径が3〜8μmであり、形状係数が0.940〜0.985の範囲にあるトナー粒子の割合が65〜100(%)であるトナーを用いていることを特徴とする。
【0029】
これにより、粒形が球形に近く粒径が小さいトナーを使用しても、感光体に残留したトナーや紙粉等を綺麗に除去できるので、「すり抜け」や「フィルミング」といったクリーニング不良が発生せず、デジタル方式の1画素単位の小さなドット画像を綺麗に顕像化することができ、高画質な画像を忠実に再現するデジタル方式の画像形成装置を提供することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0031】
図1は本発明に係る画像形成装置の画像形成部を示す概略図である。図2は本発明に係る感光体の押し込み試験結果を示すグラフである。図3は本発明に係る感光体の乾燥温度と摩擦係数を示すグラフである。
【0032】
図1により、本発明の画像形成装置の画像形成部について説明する。
なお、本発明の実施の形態においては、電子写真方式の画像形成装置の画像形成部に関して説明するが、この構成は一般に良く知られているので、詳細は割愛する。
【0033】
図中、10は画像形成部の全体を示し、1は感光体で、2は帯電手段、3は現像スリーブ3aを備えた現像手段、4は転写手段、5は分離手段であり、6はクリーニング手段でクリーニングブレード7を備えている。8は原稿画像を読み取り感光体1に静電潜像を形成するために露光を与える露光手段(図示せず)からの露光光である。
【0034】
感光体1は、一般に、画像形成装置の仕様等により外形形状が異なるだけでなく、感光体の基体の外周面に形成する光導電体層の厚さや層の構成等が異なるが、例えば、アルミニウム等の材質で円筒状に加工された基体の外周面に下引き層(UCL)を形成し、次に正帯電用の場合は電荷輸送層(CTL)、電荷発生層(CGL)等の順で各層を構成し、負帯電用の場合は電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)等の順で各層を構成して、導電層および有機感光層(OPC)の光導電体層(以下、全ての層を含めて単に感光層ともいう。)が形成された、いわゆる有機感光体といわれるものであり、導電層を接地された状態で矢印Aで示す時計方向に回転される。
【0035】
感光体1の感光層とクリーニングブレードとの接触状態に着目して検討した結果、感光体1の感光層における摩擦係数は、感光層のクリープ率や弾性仕事比の大きさが影響することを見出した。
【0036】
つまり、感光層の乾燥温度との関係で、100℃より低い温度で乾燥された感光層は、感光層を形成する樹脂の高分子同志の絡まり合いが疎で軟らかく、クリープ率や弾性仕事比が大きくなり、ブレードエッジが食い込みやすいので摩擦係数が高くなり、115℃より高い温度で乾燥された感光層は、感光層を形成する樹脂の高分子同志の絡まり合いが密で硬く、クリープ率や弾性仕事比が小さくなるので、ブレードエッジが食い込みにくくなり摩擦係数が低くなるという関係がある。
【0037】
また、必要以上に高い温度で乾燥すると感光層に含まれる樹脂等の特性が変化して、耐電性能を低下させるという別の問題を生じることがある。
【0038】
すなわち、感光体1の感光層とクリーニングブレードとの接触状態が良好となるクリープ率や弾性仕事比および摩擦係数を有する感光層を形成するためには、乾燥温度を100〜115℃に設定すれば良いことを見出した。
【0039】
感光体1の感光層を形成する場合は、例えば、連続塗布乾燥装置といわれる装置を使用して形成することが多い。
【0040】
連続塗布乾燥装置に関して、詳細な説明は割愛するが、一般に、連続塗布乾燥装置は、感光層を形成する塗布液を塗布するために筒状の塗布部を備えた塗布装置と筒状の乾燥部を備えた乾燥装置とを備え、煙突のように地面に対して垂直に、筒状の塗布装置の上部に筒状の乾燥装置を積み重ねた構造をした装置である。
【0041】
感光体1の円筒状の基体に塗布液を塗布する場合は、塗布装置の下部に設けられた基体搬送装置により、感光体1の円筒状の基体を塗布装置の筒状の塗布部の下部から連続的に挿入して、感光体1の円筒状の基体の筒軸を合わせるように垂直に積み重ねながら上方に押し出し、連続的に移動させる。
【0042】
そして、塗布装置により塗布液を円筒状の基体の外周面に均一に塗布する塗布工程を終了した後に、所定の乾燥温度に設定された乾燥装置の乾燥経路内を所定の速度で通過させながら塗布液の溶媒を適切に蒸発させて乾燥する乾燥工程を経て感光体1の感光層を形成するようになっている。
【0043】
つまり、感光層の乾燥状態は、乾燥工程における乾燥温度と乾燥経路内を通過させる速度が関係するが、乾燥工程の終了時において、所定のクリープ率や弾性仕事比および摩擦係数を有する感光層を高品質で形成するためには、速やかに塗布液の溶媒を蒸発させる必要があり、感光体1に塗布された塗布液の溶媒を最も適切に蒸発させることができる温度を乾燥温度として設定する必要がある。
【0044】
そこで、本発明の実施の形態においては、詳細は後述するが、感光体1の感光層を形成する場合に、感光体1に塗布された塗布液の溶媒を最も適切に蒸発させることができる温度を100〜115℃にすれば良いことを見出し、乾燥装置の乾燥温度(乾燥経路内の温度)を100〜115℃に設定することにより、25℃環境下でのクリープ率Cが2.0〜10.0(%)、弾性仕事比Wが25.0〜50.0(%)であり、感光体1の感光層とクリーニングブレードとの摩擦係数μが0.2〜1.7となる感光層を形成した。
【0045】
帯電手段2は、例えば、スコロトロン帯電器等により、トナーと同極性のコロナ放電によって、感光体1の感光層に対し一様な電位を与えるものである。
【0046】
現像手段3は、現像剤を内包した筐体に磁石体を内蔵し、現像剤を保持して回転する搬送体としての、例えば、現像スリーブ3aによって一定の層厚に規制されて現像域へと搬送され、感光体1上に形成された静電潜像を現像しトナー像として顕像化する。
【0047】
転写手段4は、トナーと反対極性の直流電圧等からなる転写バイアスを印加し、転写領域に転写電界を形成することにより、感光体1上に形成されたトナー像を紙等の記録部材上に転写する。
【0048】
分離手段5は、除電手段でもあり、好ましくはコロナ放電器により構成され、感光体1から記録紙等の記録部材を分離するものである。
【0049】
クリーニング手段6は、転写後に感光体1の表面上に残った不用なトナー(残留トナーともいう。)や紙粉等をクリーニングブレード7により掻き落とし、除去清掃するものである。
【0050】
クリーニングブレード7は、適度な弾性が必要で、JIS(日本工業標準)規格のJIS−K6301に規定されている反発弾性が、25℃環境下で、40〜75(%)以内になるように、例えば、イソシアネートとポリオールおよび各種水素含有化合物との付加反応を経て合成されるポリウレタン樹脂を素材とするウレタンゴムからなる弾性体として形成され、感光体1の回転中心方向への当接荷重が単位長さ当たり0.147〜0.245(N/cm)に設定されてクリーニング手段6に取り付けられている。
【0051】
因に、クリーニングブレード7の当接荷重が0.147(N/cm)より小さいと「すり抜け」が発生しクリーニング不良となる。また、0.245(N/cm)より大きくなると、感光体の感光層との摩擦により、例えば、感光体の非印字領域にトナーが付着してしまう「かぶり」等の発生原因となる。
【0052】
なお、クリーニングブレードの反発弾性を所定の範囲に収まるようにしたり、感光体1の感光層との接触状態を良好にするために、例えば、クリーニングブレードの素材のポリウレタン樹脂に硬化剤を適切に選択し適宜に加えたり、感光層の表面層にシリコンオイル等を混入させたりしても良い。
【0053】
次に、画像形成装置の作動について説明する。
画像形成装置の電源(図示せず)を投入し起動させ、スタートボタン(図示せず)を押すと、感光体1はモータ等の駆動源(図示せず)により矢印A方向に回転を開始し、画像読取部(図示せず)で原稿画像の読み取りを開始すると共に、帯電手段2が感光体1の感光層に対し一様な電位を与える
読み取られた原稿画像は制御手段(図示せず)により、例えば、デジタル画像信号等に変換され、露光手段(図示せず)から感光体1の一様な電位が与えられた感光層に対して、露光光8が照射され、感光体1の感光層に静電潜像が形成される。
【0054】
現像手段3の現像スリーブ3aにより、感光体1の感光層に形成された静電潜像をトナーで顕像化してトナー像を形成する。
【0055】
感光体1の回転によるトナー像形成工程に同期して、紙等の記録部材(図示せず)が搬送され、転写手段4によりトナー像が記録部材に転写され、分離手段により記録部材が感光体1から分離された後に、記録部材は定着手段(図示せず)に搬送され、定着手段の加熱押圧によりトナーが記録部材に溶着固定されて排出される。
【0056】
感光体1は、記録部材を分離した後も回転を続け、記録部材に転写されなかった残留トナーや、例えば、紙粉等がクリーニング手段6のクリーニングブレード7により掻き落とされ除去清掃されると、感光体1の回転が停止し、一連の画像形成工程を終了する。
【0057】
引き続いて、画像形成を行う場合は、スタートボタンを押せば良く、画像形成を行わない場合は画像形成装置の電源を遮断して総ての作動を終了する。
【0058】
本発明の実施の形態における感光体の感光層のクリープ率や弾性仕事比について説明する。
【0059】
クリープ率や弾性仕事比は、JIS(日本工業標準)規格のJIS−Z2244にビッカース硬さ試験として詳細に測定方法等が規定されており、測定結果からクリープ率や弾性仕事比を求めることができる。なお、ビッカース硬さ試験を通称として押し込み試験とも言う。
【0060】
図2は、具体的には、本発明の実施の形態における感光体の感光層の押し込み試験をビッカース硬さ試験に基づき実施した結果の一例を示すもので、縦軸に変形量(μm)、横軸に荷重(N)を示すグラフであり、F1は押し込み時の押し込み荷重と変形量との関係を示す曲線で、F2は押し込みを停止したときの直線であり、F3は除荷した時の曲線を示すものである。aは一定荷重を保持している間の変形量を示し、bは最大変形量、cは永久変形量を示す。
【0061】
ビッカース硬さ試験の測定方法に関し詳細な説明は割愛するが、ビッカース硬さ試験(JIS−Z2244)に基づき押し込み試験を行う場合、感光体1の感光層と同じ条件で乾燥させた感光層をアルミニウム平板上に形成した試料をビッカース硬さ試験器に固定し、試料に対して垂直にダイヤモンドで形成されたビッカース圧子を規定の速度と荷重で押し込んで行く。
【0062】
図2に示すように、押し込み時には、押し込み荷重が「0」の状態からビッカース圧子を試料に押しこんでいき、規定の押し込み荷重になったときの変形量をグラフに記入すると、押し込み荷重と変形量との関係を示す曲線F1が得られる。
【0063】
次に、規定の位置で押し込みを停止するとbで示す最大変形量が得られ、規定時間だけ規定の荷重を保持すると、押し込みを停止したにもかかわらずF2の直線で示すように変形量aだけ変形する。
【0064】
その後、押し込み時とは逆に荷重を減少(除荷)していくと、押し込み時と同様に除荷と変形量との関係がF3で示す曲線として得られる。
【0065】
永久変形量cは、押し込み開始時点の変形量「0」の状態と除荷が終了した時点での変形量との差として得られる。
【0066】
クリープ率Cは、C=a/b(%)の式で表され、押し込み試験での測定値として、一定荷重を保持している間の変形量aと最大変形量bが得られるとクリープ率が求まる。
【0067】
なお、クリープ率Cは、永久変形の生じ易さを示し、大きいほど軟らかいことを表す。クリープ率Cが大きい感光体の感光層にはクリーニングブレードのエッジが食い込みやすいと言える。
【0068】
また、弾性仕事比Wは、W=Wr/(Wr+Wp)(%)の式で表され、図2の斜線部の面積Wrと、曲線F1、直線F2、曲線F3とで囲われた面積Wpが得られると、弾性仕事比Wを求めることができる。
【0069】
因に、弾性仕事比Wは変形の戻り易さを示し、大きいほど変形が戻りやすいことを表しており、Wrの面積が大きいほどゴムに近く(元に戻りやすい)、Wpの面積が大きいほどプラスチックに近い(元に戻りにくい)ことを示している。弾性仕事比Wが大きい感光体の感光層にはクリーニングブレードのエッジが食い込みやすいと言える。
【0070】
次に、本発明の実施の形態における感光層の摩擦係数に関して説明する。
なお、感光層の摩擦係数μは、一般に、感光体の回転トルク(N・cm)を測定することで求められる。
【0071】
感光体の回転トルクを測定する場合は、25℃環境下において、感光体が回転できる測定治具に設置し、具体的には、先ず、負荷のない状態での感光体の回転トルクT1(N・cm)と、クリーニングブレードのエッジにトナーを塗布して、感光体の回転中心方向に単位長さ当たりの荷重F(N/cm)で圧接した状態の感光体の回転トルクT2(N・cm)を測定器としてトルクゲージを使用して測定する。
【0072】
そして、測定された回転トルクT1(N・cm)と回転トルクT2(N・cm)により摩擦係数μを下記の式により算出する。
【0073】
摩擦係数μ=(T2−T1)/(F・d)
d:感光体の半径(cm)
F:感光体の回転中心方向に加える単位長さあたりの荷重(N/cm)
図3は、前述の回転トルク測定方法に基づき測定した感光体の回転トルクから求められた摩擦係数μと感光体の感光層の乾燥温度との関係を一例として示したもので、縦軸に摩擦係数μ、横軸に感光体の乾燥温度(℃)を示したグラフである。
【0074】
乾燥温度が100℃より低い領域、例えば、90℃で感光体を乾燥した場合には、感光体の感光層が軟らかくクリーニングブレードとの摩擦係数μが高くなり、この感光体を使用して、後述する実験をした時には、バウンディングが発生した。
【0075】
本発明に係わる感光体の感光層とクリーニングブレードとの接触状態に関する実験について説明する。
【0076】
感光体の感光層の乾燥温度が100〜115℃の範囲内に入る3種類の試料(実施例1〜3)と、乾燥温度が前述の温度範囲から外れた試料を3種類(比較例1〜3)とを準備して実験を行った。
【0077】
なお、乾燥温度については(1)に示し、感光体とクリーニングブレードの条件を(2)、(3)に、実験条件を(4)、(5)に示す。また、実験の結果を(6)に示した。なお、乾燥温度以外の条件は実施例1〜3と比較例1〜3とは全て同じ条件とした。
(1)感光体の感光層の乾燥温度
・実施例1:115℃ ・比較例1:125℃
・実施例2:110℃ ・比較例2: 90℃
・実施例3:100℃ ・比較例3: 80℃
(2)感光体の条件
・感光体ドラム:長さ34.6cm、半径5cm
・感光体自体の回転トルク:2.94N・cm
(3)クリーニングブレードの条件(単に、ブレードとも言う。)
・ブレード材質:北辰製234700(反発弾性68%)
・単位長さあたりのブレード荷重0.147〜0.245(N/cm)
(4)環境条件
・低温低湿(L.L.):10℃/20%RH
・常温常湿(N.N.):20℃/50%RH
・高温高湿(H.H.):30℃/80%RH
(5)実写テスト
・250,000コピーの実写テストを行った。
・トナーは、個数粒度分布における個数変動係数が0〜27(%)で、個数平均粒径が3〜8μmと小粒径で、形状係数が0.940〜0.985と球に近い形状で、トナー粒子の割合が65〜100(%)であるものを使用した。
(6)結果
感光層 クリープ率 弾性仕事比 摩擦係数 備考
(試料) C(%) W(%) μ
実施例1 2.0 24.9 0.2 A
実施例2 3.2 39.6 1.1 B
実施例3 10.0 50.0 1.7 C
比較例1 1.8 24.2 0.1 D
比較例2 11.3 51.4 1.8 E
比較例3 13.0 56.7 2.1 F
(備考)
A:鳴き・バウンディング・めくれ等の不具合発生なし。
【0078】
B:同上
C:同上
D:L.L.で、約130,000コピーからクリーニング不良が断続的に発生した。また、H.H.で、約50,000コピーから、一晩放置した翌朝の画像でボケ(画像が不鮮明になる状態)が発生した。
【0079】
E:全環境で、断続的にブレード鳴き、バウンディングが発生した。
F:H.H.で、テスト開始時にめくれが多発したのでテスト中断。
【0080】
以上の実験結果によれば、乾燥温度が高いものは摩擦係数が低く、乾燥温度が低いものは摩擦係数が高く、感光体の乾燥温度が摩擦係数に大きく影響することが実証された。
【0081】
なお、クリープ率Cの2.0〜10.0(%)の範囲内を満足しなかったのは比較例1〜3で、弾性仕事比Wの25.0〜50.0(%)の範囲内を満足しなかったのは比較例2、3で、感光体の感光層とブレードとの摩擦係数μの0.2〜1.7の範囲内を満足しなかったのは比較例1〜3であり、実施例1〜3は全てを満足した。
【0082】
すなわち、クリープ率C、弾性仕事比W、摩擦係数μの全てを満足できなかった比較例1〜3は、備考欄のD〜Fに記載された不具合を生じたが、全てを満足した実施例1〜3の実験結果は良好であった。
【0083】
特に、実験にはトナーとして小粒径で、球に近い形状のものを使用したが、実施例1〜3には、「すり抜け」等のクリーニング不良や「ブレード鳴き」や「めくれ」、「バウンディング」といった現象が発生することはなかった。
【0084】
従って、感光体の感光層とクリーニングブレードの接触状態を良好にする条件は、感光体の感光層を100〜115℃で乾燥させて形成し、クリープ率Cが2.0〜10.0(%)の範囲内で、弾性仕事比Wが25.0〜50.0(%)の範囲内であり、反発弾性が40〜75(%)の範囲内のクリーニングブレードを使用した場合の感光体の感光層との摩擦係数μが0.2〜1.7の範囲内を満足することが必要である。
【0085】
以上、本発明の実施の形態において、有機光導電性物質からなる感光層を有する感光体について説明してきたが、これに限るものではなく、無機光導電性物質からなる感光層を有するものであっても良い。
【0086】
【発明の効果】
本願発明は、感光体の感光層とクリーニングブレードとの接触状態が良好となる感光体の感光層のクリープ率や弾性仕事比およびクリーニングブレードとの摩擦係数等の条件やクリーニングブレードの反発弾性や感光体との当接荷重等の条件を設定できるので、クリーニングブレードが接触した状態において感光体の回転が滑らかとなり、「ブレード鳴き」や「めくれ」、「バウンディング」等の現象が発生せず、クリーニングブレードや感光体の感光層等の耐久性が向上する。
【0087】
また、感光体に残留したトナーや紙粉等を綺麗に除去できるので、「すり抜け」や「フィルミング」といったクリーニング不良を発生させず、長期に亘って良好な感度を有する感光体の感光層が得られ、転写性能を低下させたり、画像ムラ等が発生することなく高速で高画質な電子写真画像を形成できる画像形成装置を提供することができる。
【0088】
更に、粒形が球形に近く粒径が小さいトナーを使用しても、感光体に残留したトナーや紙粉等を綺麗に除去できるので、「すり抜け」や「フィルミング」といったクリーニング不良を発生せず、デジタル方式の1画素単位の小さなドット画像を綺麗に顕像化することができ、高画質な画像を忠実に再現するデジタル方式の画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る画像形成装置の画像形成部を示す概略図である。
【図2】本発明に係る感光体の押し込み試験結果を示すグラフである。
【図3】本発明に係る感光体の乾燥温度と摩擦係数を示すグラフである。
【符号の説明】
1 感光体
2 帯電手段
3 現像手段
4 転写手段
5 分離手段
6 クリーニング手段
7 クリーニングブレード
8 露光光
10 画像形成部
Claims (4)
- 感光体上に形成された静電潜像を、トナーにより現像し、顕像化されたトナー像を前記感光体から転写材に転写した後、前記感光体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置において、前記感光体の感光層は、25℃環境下でのクリープ率Cが2.0≦C≦10.0(%)、弾性仕事比Wが25.0≦W≦50.0(%)であり、前記感光体の感光層と前記クリーニングブレードとの摩擦係数μが0.2≦μ≦1.7であることを特徴とする画像形成装置。
- 前記感光層の乾燥温度Tが100≦T≦115(℃)であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
- 前記クリーニングブレードは25℃環境下での反発弾性が40〜75(%)のウレタンゴムであり、前記感光体の中心方向への当接荷重が単位長さ当たり0.147〜0.245(N/cm)に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
- 個数粒度分布における個数変動係数が0〜27(%)であり、個数平均粒径が3〜8μmであり、形状係数が0.940〜0.985の範囲にあるトナー粒子の割合が65〜100(%)であるトナーを用いていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
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- 2002-07-18 JP JP2002209540A patent/JP2004053810A/ja active Pending
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