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JP2004029757A - 無端ベルト、その製造方法、及びそれを用いた画像定着装置 - Google Patents

無端ベルト、その製造方法、及びそれを用いた画像定着装置 Download PDF

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JP2004029757A
JP2004029757A JP2003123296A JP2003123296A JP2004029757A JP 2004029757 A JP2004029757 A JP 2004029757A JP 2003123296 A JP2003123296 A JP 2003123296A JP 2003123296 A JP2003123296 A JP 2003123296A JP 2004029757 A JP2004029757 A JP 2004029757A
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JP2003123296A
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English (en)
Inventor
Masayuki Takei
武井 雅之
Yosuke Tsutsumi
堤 洋介
Kenji Nakatogawa
中戸川 健司
Jun Kimura
木村 潤
Atsumi Kurita
栗田 篤実
Tetsuo Yamada
山田 哲夫
Atsuhito Tokuyama
徳山 篤人
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Fujifilm Business Innovation Corp
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Fuji Xerox Co Ltd
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Abstract

【課題】無端ベルトの、内周面周方向の表面粗さが、内周面軸方向の表面粗さよりも小さい無端ベルトを作製することができる無端ベルト製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも、周方向に切削加工が施された芯体表面にポリイミド前駆体を含む溶液を塗布することにより塗膜を形成する工程を含むことを特徴とする無端ベルト製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真複写機やレーザープリンタ等の画像形成装置において、感光体、帯電ベルト、転写ベルト、あるいは、定着ベルトなどに好適に使用される無端ベルト、その製造方法、及びそれを用いた画像定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真機器では、トナー像を用紙上に加熱定着するための定着体などに、金属や各種プラスチック、またはゴム製の回転体が使用されている。
電子写真機器の小型化或いは高性能化のために、定着体等の回転体は変形可能であることが好ましい場合があり、このような回転体としては肉厚が薄いプラスチック製のフィルムからなるベルトが用いられる。この場合、ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるため、継ぎ目のない無端ベルトが用いられる。このような無端ベルトに用いられる材料としては、強度や寸法安定性、耐熱性等の面でポリイミド樹脂が好適に用いられている(以降、ポリイミドを「PI」と略す場合がある)。
【0003】
無端ベルトを用いる定着装置としては、例えば、ベルトニップ方式のものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。前記定着装置は、回転可能な定着ロールと、該定着ロールに接触し従動回転するように配置された無端ベルトと、から主に構成されている。このような構成を有する定着装置を用いた定着は、表面が加熱された定着ロールと、無端ベルトと、の接触部を、トナー像を形成した記録紙を通過させることにより、前記トナー像を前記記録紙表面に加熱定着することにより行われる。その際、前記接触部(ニップ)において、無端ベルトを定着ロールに圧接させるために、無端ベルトの内周面に圧力パッドおよび摺動シートが設けられる。
【0004】
PI樹脂無端ベルトの製造方法としては、例えば、円筒体の内面にPI前駆体溶液を塗布し、回転しながら乾燥させる遠心成形法(例えば、特許文献2参照)や、円筒体内面にPI前駆体溶液を展開する内面塗布法(例えば、特許文献3参照)があった。但し、これらの円筒体内面に塗布する方法では、前記円筒体の内面に形成された塗布膜中に含まれる溶剤を乾燥させる必要があるため、乾燥に時間を要するという問題があった。
【0005】
他の無端ベルトの製造方法としては、例えば、芯体の表面に、浸漬塗布法によってPI前駆体溶液を塗布して乾燥し、加熱した後、PI樹脂皮膜を芯体から剥離する方法もある(例えば、特許文献4参照)。この方法では、芯体の外面に形成された塗布膜に含まれる溶剤を乾燥させるので、乾燥時間は短縮できる利点がある。
【0006】
一方、これらの無端ベルト製造方法に用いられる、PI前駆体溶液の溶剤としては、非プロトン系極性溶剤が用いられており、いずれも沸点が高く、乾燥が非常に遅いという性質がある。また、円筒体内面や芯体表面に塗布形成されたPI樹脂皮膜はガス透過性が低いため、前記PI樹脂皮膜中に含まれる溶剤を乾燥させようとしても一部が残留しやすい。
【0007】
浸漬塗布方法など、芯体表面にPI樹脂皮膜を形成した後で剥離する方法では、溶剤乾燥後の加熱工程において、残留溶剤や、イミド化反応が進行する段階で発生する水が、皮膜内部や芯体と皮膜との間に滞留していると、加熱時の熱で膨張して高圧のガスとなり、PI樹脂皮膜に膨れが生じて変形し、膜厚や外径が不均一になることがある。これは特に皮膜の膜厚が50μmを越えるような厚い場合に顕著である。
【0008】
一方、無端ベルトを電子写真機器において利用する場合、無端ベルトが利用される用途によっては、無端ベルト内周面と接触するように配置された摺動シートとの摺動抵抗を下げることや、前記無端ベルトが回転した際に発生する摺動音を抑制することが要求される場合がある。
また、画質の点から、外周面は平滑面であり、ベルト走行性の点から、内周面は粗面である、というような、外周面と内周面との粗さが異なる無端ベルトが必要とされることがある。しかし、遠心成形法や内面塗布法を用いた製造方法では、外周面は粗面であり、内周面は平滑面であるという無端ベルトを製造することはできても、これとは逆の無端ベルトを作製することはできなかった。
【0009】
【特許文献1】
特開平8−262903号公報
【特許文献2】
特開昭57−74131号公報
【特許文献3】
特開昭62−19437号公報
【特許文献4】
特開昭61−273919号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、1)摺動音を抑制することが可能な無端ベルト摺動音を抑制することが可能な無端ベルトと、2)無端ベルトの、内周面周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さい無端ベルトを作製することができる無端ベルト製造方法と、3)この無端ベルトを用いた画像定着装置とを提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1> 少なくともポリイミド樹脂を含む無端ベルトにおいて、
該無端ベルトの内周面軸方向の表面粗さRaが、0.5〜3.0μmの範囲内であり、且つ、前記無端ベルトの、内周面周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さいことを特徴とする無端ベルトである。
【0012】
<2> 前記内周面周方向の表面粗さRaが、0.5μm未満であることを特徴とする<1>に記載の無端ベルトである。
【0013】
<3> 前記無端ベルトの、外周面の表面粗さRaが、内周面の表面粗さRaより小さいことを特徴とする<1>または<2>に記載の無端ベルトである。
【0014】
<4> 前記無端ベルト内周面の少なくとも一部に、略一方向に配向した筋状凹凸粗さが形成されていることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1つに記載の無端ベルトである。
【0015】
<5> 前記筋状凹凸粗さの筋が、前記無端ベルト内周面の周方向に対して鋭角を成すように形成されていることを特徴とする<4>に記載の無端ベルトである。
【0016】
<6> 前記筋状凹凸粗さの筋と、前記無端ベルト内周面の周方向との成す角度が、少なくとも2種類以上であることを特徴とする<4>または<5>のいずれか1つに記載の無端ベルトである。
【0017】
<7> 少なくとも、周方向に切削加工が施された芯体表面にポリイミド前駆体溶液を塗布することにより塗膜を形成する工程を含むことを特徴とする無端ベルト製造方法である。
【0018】
<8> 前記芯体表面の軸方向の表面粗さRaが、0.8〜3.0μmの範囲内であり、前記芯体表面の周方向の表面粗さRaが、前記芯体表面の軸方向の表面粗さRaより小さいことを特徴とする<7>に記載の無端ベルト製造方法である。
【0019】
<9> 前記芯体表面の周方向の表面粗さRaが、0.5μm以下であることを特徴とする<7>または<8>に記載の無端ベルト製造方法である。
【0020】
<10> 1つ以上の駆動部材と、前記1つ以上の駆動部材により従動回転可能な無端ベルトと、押圧部材とを少なくとも備え、
前記1つ以上の駆動部材のいずれか1つの駆動部材表面と、前記無端ベルト外周面とが、前記無端ベルト内周面に接して配置され、前記無端ベルト外周面を前記駆動部材表面へと押圧する前記押圧部材により圧接部(ニップ部)を形成し、
未定着トナー像をその表面に保持する記録シートを加熱しながら前記ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー像を前記記録シート表面に定着させる画像定着装置において、
前記無端ベルトが、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の無端ベルトであることを特徴とする画像定着装置である。
【0021】
<11> 前記無端ベルトの内周面に、潤滑剤が塗布されていることを特徴とする<10>に記載の画像定着装置である。
【0022】
<12> 前記ニップ部の前記無端ベルト軸方向の圧力分布が、前記押圧部材により調整可能であることを特徴とする<10>または<11>に記載の画像定着装置である。
【0023】
【発明の実施の形態】
(無端ベルト製造方法)
本発明の無端ベルト製造方法は、少なくとも、周方向に切削加工が施された芯体表面にポリイミド前駆体溶液を塗布することにより塗膜を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の無端ベルト製造方法は、上記したように、少なくとも、周方向に切削加工が施された芯体表面にポリイミド前駆体を含む溶液を塗布することにより塗膜を形成する工程(以下、「PI前駆体塗膜形成工程」と略す場合がある)を含むものであれば特に限定されないが、PI前駆体塗膜形成工程を経た後に、前記塗膜を乾燥する乾燥工程(以下、「PI前駆体乾燥工程」と略す場合がある)と、前記PI前駆体乾燥工程を経た塗膜を加熱する加熱工程(以下、「PI樹脂皮膜形成工程」と略す場合がある)と、前記PI樹脂皮膜形成工程を経て形成されたPI樹脂皮膜を芯体表面から剥離する工程と、剥離したPI樹脂皮膜を周方向に切断する工程と、を含むことが好ましい。
また、これらの工程に加えて、必要に応じて他の工程を有していてもよく、あるいは、PI前駆体塗膜形成工程後の工程が、上記以外の工程からなるものであってもよい。
【0025】
−PI前駆体塗膜形成工程−
PI前駆体塗膜形成工程では、芯体表面に塗膜を形成するためにポリイミド前駆体溶液を用いる。該ポリイミド前駆体溶液に含まれるPI前駆体としては、公知のものを用いることができる。また、前記PI前駆体を溶解させる溶剤としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等、公知の非プロトン系極性溶剤を用いることができる。
なお、PI前駆体溶液の濃度、粘度等は、適宜選択して行われ、また、PI前駆体溶液には、必要に応じて、導電性粒子等の他の材料や添加剤等を加えてもよい。
【0026】
芯体表面への、PI前駆体溶液の塗布方法としては、芯体の形状にもよるが、芯体をPI前駆体溶液に浸漬して引き上げる浸漬塗布法、軸方向が水平方向にほぼ平行となるように設置され、周方向に回転している芯体の表面に、前記芯体のほぼ真上に設置されたノズル等からPI前駆体溶液を吐出しながら、前記芯体または前記ノズルを軸方向に平行移動させる流し塗り法、該流し塗り法において、前記芯体表面に形成された塗膜をブレードでメタリングするブレード塗布法等、公知の方法が利用できる。
なお、上記流し塗り法やブレード塗布法では、芯体表面に形成される塗膜は芯体の軸方向にらせん状に形成されるため、継ぎ目が出来るものの、PI前駆体溶液に含まれる溶剤は常温での乾燥が遅いために継ぎ目は自然に平滑化される。
【0027】
以下、上記に説明した各種塗布法のうち、浸漬塗布法について、詳述するが、本発明の無端ベルト製造方法において、PI前駆体塗膜の形成方法は、これに限定されるものではない。
浸漬塗布法により、芯体表面にPI前駆体溶液を塗布するには、芯体を、PI前駆体溶液中に浸漬し、その後引き上げることにより実施される。但し、PI前駆体溶液は粘度が非常に高いため、浸漬塗布法で塗布すると、芯体表面に形成される塗膜の膜厚が必要以上に厚くなる場合がある。
従って、芯体の外径よりも大きな円形の孔を設けた環状体を、PI前駆体溶液の液面に浮設させ、前記環状体の孔を通して、芯体をPI前駆体溶液中に浸漬し、引き上げることが好ましい。なお、引き上げ時には、前記環状体が、自由に移動可能なように液面上に浮遊した状態であることが好ましい。また、PI前駆体溶液液面からの環状体の高さが一定範囲内に収まるように、芯体の引き上げ速度を調節しながら、前記芯体を前記PI前駆体溶液から相対的に上昇させることが好ましい。
【0028】
このような環状体を用いた浸漬塗布方法について、以下に図面を用いて説明する。図1は、環状体を用いた浸漬塗布方法の一例について示した模式断面図であり、一旦、PI前駆体溶液中に浸漬した芯体を上昇させることにより、前記芯体表面に、塗膜が形成されている状態を示したものである。なお、図1は、環状体を用いた浸漬塗布に関する主要部のみを示したものであり、浸漬/引き上げ装置等の周辺部については省略している。図1中、1は芯体を、2はPI前駆体溶液を、3は塗布槽を、4は塗膜(PI前駆体塗膜)を、5は環状体を、6は環状体の孔を表す。
【0029】
なお、本発明において、「芯体上に塗布する」とは、芯体の表面上、及び該表面に層を有する場合はその層上に塗布することを意味する。また、「芯体を上昇」とは、PI前駆体溶液の液面に対する相対的な上昇を意味し、「芯体を停止し、PI前駆体溶液の液面を下降」させる場合を含む。
図1に示す環状体を用いた浸漬塗布方法では、塗布槽3中のPI前駆体溶液2の液面に環状体5を自由に移動できるように浮設する。次に、芯体1を、環状体の孔6を通して、PI前駆体溶液2中へ浸漬し、次いで、矢印U方向へ上昇させることにより芯体1表面に塗膜4が形成される。また、塗膜4の膜厚は、芯体1の外径と、環状体の孔6の孔径と、の差に応じて調整される。
【0030】
環状体5は、PI前駆体溶液に用いられる溶剤により侵食されない種々の金属、プラスチック等から作られ、軽量化のために中空構造を有するものであってもよい。また、環状体5が、PI前駆体溶液2中に沈没するのを防止するために、環状体の外周面および/または塗布槽に、環状体5を支える足や腕を設けてもよい。
【0031】
芯体1の外径と、環状体の孔6の最小孔径と、の差を2で割った値(以下、「間隙幅」と略す)は、所望する塗膜4の塗布直後の厚み(以下、「濡れ膜厚」と略す)が得られるように調整される。乾燥後の塗膜4の膜厚(以下、「乾燥膜厚」と略す)は、濡れ膜厚およびPI前駆体溶液2の不揮発分濃度の積で表され、この関係から所望の濡れ膜厚が求められる。
但し、使用するPI前駆体溶液2の粘度及び/又は表面張力などにより、間隙幅が、そのまま濡れ膜厚として反映されるとは限らない。このため、使用するPI前駆体溶液2に応じて、間隙幅を、所望する濡れ膜厚の1倍〜2倍の範囲内にすることが好ましい。
【0032】
環状体5の孔6の形状は、図1に示すように、PI前駆体溶液2の液面に対して下部が広く、上部が狭い形状であれば特に限定されないが、下部から上部へと、直線的に徐々に狭くなる形状のほか、階段状や曲線状に徐々に狭くなる形状でもよい。
【0033】
次に、図1に示す環状体を用いた浸漬塗布方法の他の例について説明する。図2は、環状体を用いた浸漬塗布方法の他の例を示した模式断面図であり、一旦、PI前駆体溶液中に浸漬した芯体を上昇させることにより、前記芯体表面に、塗膜が形成されている状態を示したものである。図2中、符号1、2、4、5および6は図1中に符号で示したものと実質的に同等のものであり、7は環状塗布槽を、8は環状シール材を、9は中間体をあらわす。
なお、図2に示す浸漬塗布方法は、図1に示す浸漬塗布方法と比較すると、必要とされるPI前駆体溶液2の液量が少なくてすむという利点がある。
【0034】
図2に示す環状体を用いた浸漬塗布方法では、環状塗布槽7の底部には、芯体1が通過する孔が設けられており、この孔からPI前駆体溶液が漏れないように、ポリエチレンやシリコーンゴム、フッ素樹脂等の柔軟性板材から成る環状のシール材8が取り付けられる。また、軸方向が垂直方向となるように配置された芯体1は、上側の端面が中間体9に固定され、不図示の昇降装置に接続された中間体9を介して垂直方向に移動可能である。
【0035】
また、PI前駆体溶液2の液面に環状体5を浮設する。但し、図2においても、環状体5は、芯体の引き上げ時に際しては、図1に示すようにPI前駆体溶液2の液面に完全に自由に浮遊させてもよい。また、環状体5の外周面を、ロールやベアリングで支えたり、押圧体を介して空気圧をかけることにより支えたりしてもよいが、均一な膜厚の塗膜4が形成できるように、環状体5の液面垂直および水平方向に対して自由に移動することができるように支えることが好ましい。環状体の孔6を通して、中間体9を介して芯体1をPI前駆体溶液2から矢印U’方向に上昇させると、PI前駆体溶液2の介在により、芯体1と環状体5との間に摩擦抵抗が生じ、環状体5には上昇力が作用し、環状体5は矢印U‘方向に少し持ち上げられる。
【0036】
このように環状体5が少し持ち上げられた際、環状体5は芯体1との摩擦抵抗が円周方向で一定になるように水平方向に移動し、間隙幅が一定になる。環状体5と芯体1との間隙幅が変化した場合、狭まろうとした部分では摩擦抵抗が大きくなり、その反対側では間隙幅が広がって摩擦抵抗が小さくなる不均衡状態が生じるが、摩擦抵抗が大きな部分は小さくなるよう、すなわち間隙幅が広くなるように環状体5が水平方向に移動するので、環状体5が芯体1と接触することはなく、常に一定の間隙幅が保たれる。
【0037】
芯体1を上昇させる際、芯体1が多少傾いていても、あるいは、芯体1の上昇手段にフレを有する場合でも、環状体5は芯体に追随して水平方向に動きうるので、濡れ膜厚が一定保たれるという利点もある。
【0038】
上記したように環状体5が機能するには、環状体5は、液面からある程度、持ち上げられなくてはならず、液面から2mm以上持ちげられること好ましい。液面から持ち上げられる高さは、芯体1の上昇速度が速いほど大きくなる。但し、環状体5が持ち上げられて液面から離れてしまうと、芯体1の最下部が、環状体の孔6を通過し終えた時点で、環状体5が液面に落下することになる。この場合、PI前駆体溶液2中に泡が巻き込まれてしまうため、塗布作業を繰り返す際には非常に不都合である。
【0039】
以上のような理由により、芯体1を上昇させる際には、環状体5の液面に対する持ち上げ高さは、高すぎず低すぎず、一定の範囲内に保たれることが必要である。そのためには、環状体5の液面からの高さを検出して、芯体1の上昇速度を調節することが好ましい。すなわち、環状体5が高く持ち上げらて、液面から離れようとした場合には、上昇速度を遅くし、逆に環状体の持ち上げ高さが小さい場合には、上昇速度を速くする。簡便には、目視で環状体5の液面からの高さを判断し、手動で速度を調整することもできる。
【0040】
−PI前駆体乾燥工程−
PI前駆体乾燥工程では、上記に説明したように芯体表面に形成された塗膜中に含まれる溶剤を除去する。乾燥温度は50〜250℃の範囲内が好ましく、乾燥時間は30〜200分程度が好ましい。乾燥中に重力の影響により、芯体表面に形成された塗膜が垂れる場合には、芯体を、軸方向を水平にして、10〜60rpm程度で回転させながら乾燥させることも好ましい。
また、溶剤の除去を促進するために、塗膜が形成された芯体を水中に浸漬し、塗膜中に残留する溶剤と水とを置換させてもよい。
【0041】
−PI樹脂皮膜形成工程−
上記したPI前駆体乾燥工程を経て乾燥された塗膜の加熱によるPI樹脂皮膜の形成は、350〜450℃の温度範囲で、20〜60分間程度で実施される。その際、形成される皮膜に膨れが生じにくいよう、前記温度に達するまでに、温度をすぐに上昇させるのではなく、段階的に上昇させたり、ゆっくりと一定速度で上昇させることが好ましい。
次に、上記した加熱処理を経て芯体表面に形成されたPI樹脂皮膜を、前記芯体から剥離することにより無端ベルトを得る。このようにして得られた無端ベルトには、更に必要に応じて端部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等が施されることもある。
なお、本発明の無端ベルト製造方法により無端ベルトを得る場合、前記無端ベルトの内周面とは、芯体表面に接していた面を意味する。
【0042】
−芯体−
本発明の無端ベルト製造方法に用いられる芯体の形状としては、円柱状又は円筒状等の、柱状又は筒状の形状が挙げられれ、その断面は一般的に円形状のものが好適に用いられるが、楕円状等のその他の断面形状を有するものを用いることも可能である。
なお、本発明において、「芯体表面」とは、特に説明が無い場合には、芯体が、筒状である場合は、芯体の外周面を意味し、芯体が、柱状である場合は、柱の軸方向と平行な面を意味する。
芯体の材質は、アルミニウムや銅、ステンレス等の金属が好ましい。その際、芯体表面をクロムやニッケルでメッキしたり、フッ素樹脂やシリコーン樹脂で表面を被覆したり、あるいは芯体表面に形成される皮膜が接着して剥離が困難とならないように、前記芯体表面に離型剤を塗布してもよい。
【0043】
一方、既述したように、芯体表面に形成された塗膜を加熱した場合に、塗膜中に残留する溶剤等が気化して発生するガスによって、PI樹脂皮膜に膨れが発生する場合があった。このため、加熱処理した際に、塗膜中に発生するガスを効果的に放出することができるように、従来、芯体表面にブラスト加工を施すことにより、前記芯体表面に表面粗さRaが、0.8〜1.0μm程度の粗面を形成していた。
【0044】
一方、本発明の無端ベルト製造方法に用いられる芯体にも、該芯体表面の周方向に切削加工が施される。これにより、芯体表面に形成された塗膜が加熱時に収縮する際、前記塗膜と前記芯体表面の凹凸とにずれが生じ、塗膜と芯体表面との間に僅かながら隙間ができて、塗膜中に含まれる残留溶剤および/または水分を効果的に除去することができる。
【0045】
さらに、このような加工を芯体表面に施すことにより、上記したようなガス抜き性能を確保すると共に、本発明の無端ベルト製造方法により無端ベルトを作製した場合、この無端ベルトの、内周面周方向の表面粗さRaを、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さくすることができる。一方、従来の技術では、ブラスト加工された芯体表面の表面粗さは等方的であるため、上記したような異方的な表面粗さRaを有する無端ベルトを作製することは出来なかった。
【0046】
なお、「周方向に切削加工が施され」とは、切削加工により芯体表面に形成される加工目の方向が、芯体の周方向に対してほぼ平行に形成された状態のみを意味するのみならず、周方向に対してやや斜めに形成された場合も意味する。
また、芯体表面に形成される加工目は、周方向に対して、実質的に一定の角度を成すもののみであってもよく、複数の角度を成すものが混在していてもよい。
【0047】
図3は、本発明の無端ベルト製造方法に用いられる芯体において、その表面の周方向に形成された切削加工目の例を示す模式図であり、図3(a)は、周方向に対してほぼ平行に形成された加工目の例を示し、図3(b)は、周方向に対してやや斜め方向に形成された加工目の例を示し、図3(c)は、周方向に対して2種類の角度でやや斜め方向に形成された加工目の例を示し、1は芯体を示し、符号Aと符号A’とで示される一点鎖線は、芯体1の軸方向を示す。なお、図1に示す加工目は、説明のために強調して描かれたものであり、必ずしも実際に形成される加工目に対応するものではない。
【0048】
切削加工は芯体を周方向に回転させながら、前記芯体表面にバイトを当接させる公知の加工方法で実施され、バイトの形状や送り速度により芯体表面の表面粗さRaを制御することができるが、これらの加工条件は芯体の外径に応じて調整される。
【0049】
ガス抜き性能を確保し、且つ、作製される無端ベルトの内周面周方向の表面粗さRaが、前記無端ベルトの内周面軸方向よりも小さくなるようにするためには、芯体表面の軸方向の表面粗さRaが、0.8〜3.0μmの範囲内であり、前記芯体表面の周方向の表面粗さRaが、前記芯体表面の軸方向の表面粗さRaよりも小さくなるように、芯体表面の周方向に切削加工が施されることが好ましい。なお、前記芯体表面の軸方向の表面粗さRaは、0.8〜2.5μmの範囲内がより好ましく、0.9〜1.8μmの範囲内が特に好ましい。
【0050】
ガス抜きに必要な芯体表面の表面粗さRaは、加熱処理後に形成されるPI樹脂皮膜の膜厚によって異なってくる。しかしながら、芯体表面の表面粗さRaが大きくなるとガス抜きがしやすくなる反面、得られる無端ベルト内周面の表面粗さRaも大きくなる。
従来のようなブラスト加工された芯体を用いた場合では、芯体表面の表面粗さRa、特に周方向の表面粗さRaが大きくなると画像形成部材として使用する際に支障をきたすことがあったが、本発明の無端ベルト製造方法に用いられる芯体の表面には、周方向に切削加工が施されているため、芯体周方向の表面粗さRaは軸方向より小さく抑えることが可能である。
【0051】
芯体表面の表面粗さRaと、作製される無端ベルト内周面の表面粗さRaと、の関係はほぼ直線的で、芯体表面の表面粗さRaが大きくなるに従い、無端ベルト内周面の表面粗さRaも大きくなる。一方、無端ベルト外周面の表面粗さRaは、前記無端ベルトの膜厚(以下、「ベルト膜厚」と略す)によっても左右される。
ベルト膜厚が薄い程、無端ベルト外周面の表面粗さRaは、芯体表面の表面粗さRaが反映されやすく、ベルト膜厚が厚くなる程、無端ベルト外周面の表面粗さRaは、芯体表面の表面粗さRaが反映されにくくなる傾向にある。
【0052】
既述したように、ガス抜きに必要な芯体の表面粗さRaは、加熱処理後に形成されるPI樹脂皮膜の膜厚、即ちベルト膜厚によって異なってくる。
従って、所望のベルト膜厚に応じた芯体表面の好ましい軸方向の表面粗さRaについて、1)ベルト膜厚が10μm以上25μm未満の場合、2)ベルト膜厚が25μm以上50μm未満の場合、3)ベルト膜厚が50μm以上120μm以下の場合、の3つに分けて以下に説明する。
【0053】
1)ベルト膜厚が10μm以上25μm未満の場合
ベルト膜厚が10〜25μmである場合、ガスの発生量が少ないことと、芯体表面に形成された皮膜からある程度はガスが透過するので、芯体表面の軸方向表面粗さRaは、0.1μm未満でも膨れを生じることはない。
但し、無端ベルト内周面が粗面を有する必要がある場合には、ベルト膜厚が薄いことから、芯体表面の表面粗さRaが無端ベルト外周面の表面粗さRaに反映され易いので、芯体表面の軸方向表面粗さRaは、0.05〜0.8μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜0.3μmの範囲内であることが好ましい。
【0054】
2)ベルト膜厚が25μm以上50μm未満の場合
ベルト膜厚が25μm以上50μm未満の場合には、上記1)項に説明した場合と比較するとガスの発生量が増加し、皮膜のガス透過性も低下するため、芯体表面を粗す必要があるが、無端ベルト外周面の表面粗さRaを考慮すると、芯体表面の軸方向表面粗さRaは、0.1〜1.5μmの範囲であることが好ましく、0.2〜1.2μmの範囲内であることがより好ましく、0.3〜0.8μmの範囲内であることが特に好ましい。
【0055】
3)ベルト膜厚が50μm以上120μm以下の場合
ベルト膜厚が51μm以上120μm以下の場合は、上記1)項や2)項に説明した場合と比較すると、さらにガスの発生量が増加し、皮膜のガス透過性も低下するため、芯体表面を粗す必要があるが、無端ベルト外周面の表面粗さRaを考慮すると、芯体表面の軸方向表面粗さRaは、0.5〜3.0μmの範囲内であることが好ましく、0.8〜2.5μmの範囲内であることがより好ましく、0.9〜1.8μmの範囲内であることが特に好ましい。
【0056】
このように、芯体表面の軸方向の表面粗さRaについては、ガス抜き性能や、所望のベルト膜厚、無端ベルトの内周面や外周面の表面粗さRaを考慮して決定することが可能である。
【0057】
なお、上記1)〜3)のいずれにおいても、芯体表面の周方向の表面粗さRaは、芯体表面の軸方向の表面粗さRaよりも小さければ特に限定されないが、前記周方向の表面粗さRaは、ガス抜き性能には依存していないために、ベルト膜厚によらず、0.5μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることがより好ましく、0.3μm以下であることが特に好ましい。
このような芯体を用いて作製された無端ベルトを、電子写真機器内において利用した場合には、無端ベルト回転時の負荷トルクを小さくすることができる。
【0058】
なお、表面粗さRaとは、粗さの尺度の一つである算術平均粗さであり、公知の触針式表面粗さRa測定機(例えばサーフコム1400A、東京精密社製等)を使用して測定することができる。
本発明における表面粗さRaの測定は、サーフコム1400Aを用いて、JIS B0601−1994に準拠し、評価長さLn=4mm、基準長さL=0.8mm、カットオフ値=0.8mmからなる測定条件で実施されたものである。なお、これ以外の条件で測定することも可能であるが、上記した本発明に係わる測定条件と相関が取れる条件で測定されることが好ましく、測定された値は、本発明に係わる測定条件で評価した値に換算することにより評価される。
【0059】
(無端ベルト)
本発明の無端ベルトは、少なくともポリイミド樹脂を含む無端ベルトにおいて、該無端ベルトの内周面軸方向の表面粗さRaが、0.5〜3.0μmの範囲内であり、且つ、前記無端ベルトの、内周面周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さいことを特徴とする。
また、前記無端ベルトの内周面軸方向の表面粗さRaは、0.5〜3.0μmの範囲内がより好ましく、0.8〜2.5μmの範囲内であることがより好ましい。
【0060】
上記の本発明によれば、摺動音を抑制することが可能な無端ベルトを提供することが可能である。本発明の無端ベルトは、上記した条件を満たすことが可能な無端ベルトが得られる製造方法によって作製できるものであれば、その製造方法は特に限定されないが、既述したような本発明の無端ベルト製造方法を利用して作製されることが好ましい。
【0061】
本発明の無端ベルトは、少なくともポリイミド樹脂を含む無端ベルトであれば特に限定されない。但し、本発明において、「少なくともポリイミド樹脂を含む無端ベルト」とは、ポリイミド樹脂層、あるいは、ポリイミド樹脂を主成分とする層からなる単層の無端ベルト(以下、「単層無端ベルト」と略す場合がある)のみに限定されるものではなく、単層無端ベルトの内周面および/または外周面に他の層を積層した2層以上の構成を有する無端ベルト(以下、「多層無端ベルト」と略す場合がある)も意味する。
なお、当該主成分とは、単層無端ベルト中のポリイミド樹脂の含有量が50質量%以上であることを意味する。
【0062】
また、本発明の無端ベルトは、該無端ベルトの、内周面周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さいことを特徴とする。但し、当該小さいとは、表面粗さRaを測定した時の測定誤差の範囲や、無端ベルト製造時のバラツキの範囲を明かに超えて小さいことを意味し、具体的には前記内周面軸方向の表面粗さRaに対する前記内周面周方向の表面粗さRaの比(周方向表面粗さRa/軸方向表面粗さRa)が、0.95以下であることを意味する。
【0063】
また、無端ベルトの内周面周方向の表面粗さRaは、0.5μm未満であることが好ましく、0.4μm以下であることがより好ましく、0.3μm以下であることが特に好ましい。
無端ベルトの内周面周方向の表面粗さRaが、0.5μm以上の場合には無端ベルトを回転させた際の負荷トルクが大きくなる場合がある。
【0064】
さらに、本発明の無端ベルトは、該無端ベルトの、外周面の表面粗さRaが、内周面の表面粗さRaより小さいことが好ましい。
外周面と内周面との表面粗さRaが上記したような関係を有する無端ベルトは、画質の点から、外周面は平滑面であり、ベルト走行性の点から、内周面は粗面である、という無端ベルトのニーズにも対応することが可能である。
【0065】
なお、無端ベルトの外周面の表面粗さRaは、使用目的によって異なるが、総じて前記外周面の表面粗さRaが0.3μm以上となると、画像欠陥等の問題が生じやすくなる場合があるため、無端ベルトの外周面の表面粗さRaは、0.3μm以下であることが好ましい。
【0066】
次に、本発明の無端ベルト内周面に付与される具体的な凹凸粗さの形状・態様について説明する。
本発明の無端ベルト内周面の凹凸粗さは、上記に説明したような表面粗さRaを有するものであればその具体的な形状・態様については特に限定されないが、無端ベルト内周面の少なくとも一部に、略一方向に配向した筋状凹凸粗さが形成されていることが好ましく、このような筋状凹凸粗さは無端ベルト内周面の全面に形成されていることがより好ましい。
【0067】
但し、「略一方向に配向した筋状凹凸粗さ」とは、無端ベルト内周面を目視や光学顕微鏡により観察した際に、概ね特定の方向に配向した筋状の凹凸が確認できる状態を意味する。また、配向の程度は、完全に規則的なものであってもよいが多少不規則的なものであってもよく、筋状凹凸の断面形状も、筋に対して直交する方向の断面が凹凸を繰り返すものであるならば、V溝、U溝等,如何様な断面形状であってもよい。隣接する筋状の凸部と凸部(あるいは凹部と凹部)との間隔(ピッチ)も特に限定されず、不規則なピッチであってもよいが規則的なピッチであることが好ましい。またピッチの間隔は特に限定されないが、50μm〜250μm程度の範囲内とすることが好ましい。
なお、筋状凹凸粗さの具体的な形状や筋の配向具合は、図3に例示したような無端ベルトの作製に用いる芯体表面に形成される加工目の形状を調整することにより制御することができる。
【0068】
このような筋状凹凸粗さを無端ベルトの内周面に設けることにより、内周面面内で上記に説明したような表面粗さRaの異方性の付与および周方向/軸方向の表面粗さRaを所望の値に制御が容易となる。さらに、このような無端ベルトを画像定着装置等に組み込んで用いた場合、無端ベルトの内周面側に接して設けられる駆動部材や押圧部材等に対して、無端ベルトの内周面が、その軸方向において点接触を形成でき、周方向(無端ベルトの回転方向)に対して内周面に接して設けられる部材表面との引っ掛かりも少なくなる。このため、無端ベルトを回転させた際の負荷トルクや騒音を抑制することができる。
【0069】
また、負荷トルクや騒音を抑制するために無端ベルトの内周面に液体状の潤滑剤を塗布して用いることがあるが、無端ベルトの内周面が等方的な凹凸粗さからなる場合には、潤滑剤を特定の方向に移動させることが困難であるため、例えば、押圧部材と接する部分で潤滑剤が無端ベルトの両端に押し出される形で移動し装置内を汚染してしまう場合があった。
しかしながら、無端ベルトの内周面に、筋状凹凸粗さが形成されている場合には、筋状凹凸粗さの筋(溝部分)方向に沿って潤滑剤を移動させることができる。このような特性を利用して潤滑剤を無端ベルトの一方の端部に集めて回収できるようにしたり、中央部に集めるようにして無端ベルトの両端へ漏れないようにすることにより、潤滑剤による汚染を防止することが可能である。
【0070】
筋状凹凸粗さの筋は、無端ベルト内周面の周方向に対して平行に形成されていてもよいが、鋭角を成すように形成されていてもよい。筋が周方向に対して鋭角を成す無端ベルトの内周面に潤滑剤を塗布して用いた場合、無端ベルト回転時に内周面が押圧部材等により押圧された際に、潤滑剤が筋状凹凸粗さの凹部(溝)から凸部へと押出され、押圧部材等と接触する接触点(凸部)に効率的に潤滑剤を供給することができる。また、潤滑剤を無端ベルトの一方の端部に集めて回収することもできる。
なお、筋状凹凸粗さの筋と無端ベルト内周面の周方向との成す角度(鋭角)は特に限定されないが0°より大きく60°以下であることが好ましい。
【0071】
また、筋状凹凸粗さの筋と、無端ベルト内周面の周方向との成す角度は、少なくとも2種類以上であってもよい。例えば、無端ベルトの周方向に沿って「ハ」の字状に筋を設けてもよい。このような場合、上記と同様に接触点(凸部)へと効率的に潤滑剤を供給することができると共に、「ハ」の字の底辺側が、回転方向を向くように無端ベルトを装置内に設けることにより、潤滑剤を無端ベルトの中央部側に集めるように移動させることができ、無端ベルト端部からの潤滑剤の横漏れを防ぐことができる。
【0072】
以上に説明したような筋状凹凸粗さを有する無端ベルトは、例えば、図3(a)〜(c)に例示したような、切削加工等を利用して特定の方向に加工目を設けたような芯体を用いて容易に作製することができる。なお、無端ベルト周方向に対して鋭角を成すように筋状凹凸粗さの筋を形成し、且つ、凸部と凸部(凹部と凹部)との間隔(ピッチ)を一定値に揃えるような場合には、フォトリソグラフィやエッチングを利用して芯体表面に加工目を形成することが好ましい。
【0073】
ベルト膜厚は、10〜120μmの範囲であることが好ましく、20〜100μmの範囲がより好ましく、40〜90μmの範囲内が特に好ましい。
【0074】
無端ベルトを転写ベルトや接触帯電フィルムのような帯電体として使用する場合には、無端ベルト中に導電性粒子を分散させることができ、既述した本発明の無端ベルト製造方法を利用して本発明の無端ベルトを作製する場合には、PI前駆体溶液にこれらの導電性粒子を添加することが好ましい。
前記導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO−In複合酸化物等の導電性金属酸化物、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー等が挙げられる。
【0075】
また、無端ベルトを定着体として使用する場合には、無端ベルト外周面に付着するトナーの剥離性の向上のため、単層無端ベルト外周面にトナーに対する離型性を有する樹脂被膜を形成することが有効である。
このような離型性の樹脂被膜の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂が好ましい。フッ素樹脂被膜の厚さは2〜30μmの範囲が好ましい。また、離型性の樹脂被膜には、耐久性や静電オフセットの向上のためにカーボン粉末が分散含有されていてもよい。
【0076】
これらフッ素樹脂被膜を形成するには、フッ素樹脂を含む水性の分散液を単層無端ベルト外周面に塗布して焼き付け処理する方法が好ましい。また、単層無端ベルト表面と、フッ素樹脂被膜と、の間の密着性が不足する場合には、必要に応じて、単層無端ベルト外周面にプライマー層をあらかじめ塗布形成することも好ましい。
前記プライマー層を形成する材料としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド及びこれらの誘導体が挙げられ、さらに上記したフッ素樹脂から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物を含むことが好ましい。また、プライマー層の厚さは0.5〜10μmの範囲が好ましい。
【0077】
単層ベルト上にプライマー層、及びフッ素樹脂被膜を形成するには、本発明の無端ベルト製造方法等を利用して得られた単層無端ベルトの外周面に、プライマー層およびフッ素樹脂皮膜を塗布形成することができる。
あるいは、本発明の無端ベルト製造方法において、芯体表面に形成された、乾燥処理後の塗膜の表面に、プライマー層、及び、フッ素樹脂皮膜を順次形成し分散液を塗布し、その後に加熱処理することにより前記塗膜のイミド転化完結反応およびフッ素樹脂被膜の焼成処理を同時に行ってもよい。なお、このような場合、プライマー層が介在しなくても、単層無端ベルトの外周面と、フッ素樹脂被膜と、の間の密着性が十分に確保できるため、プライマー層の形成を省くことも可能である。
【0078】
(画像定着装置)
次に、本発明の無端ベルトを用いた画像定着装置について説明する。本発明の画像定着装置は、本発明の無端ベルトを利用することが可能な公知の画像定着装置であれば如何なる画像定着装置であってもよいが、具体的には以下のような構成を有するものであることが好ましい。
すなわち、本発明の画像定着装置は、1つ以上の駆動部材と、前記1つ以上の駆動部材により従動回転可能な無端ベルトと、押圧部材とを少なくとも備え、前記1つ以上の駆動部材のいずれか1つの駆動部材表面と、前記無端ベルト外周面とが、前記無端ベルト内周面に接して配置され、前記無端ベルト外周面を前記駆動部材表面へと押圧する前記押圧部材により圧接部(ニップ部)を形成し、未定着トナー像をその表面に保持する記録シートを加熱しながら前記ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー像を前記記録シート表面に定着させる画像定着装置において、前記無端ベルトとして本発明の無端ベルトを用いることが好ましい。
【0079】
本発明の画像定着装置は、本発明の無端ベルトを用いているため、駆動部材の負荷トルクを抑え、また、騒音を小さくすることができる。
なお、本発明の画像定着装置は、上記に説明したような構成・機能の他にも必要に応じて他の構成・機能を有していてもよく、例えば、無端ベルトの内周面に潤滑剤を塗布して用いてもよい。潤滑剤としては公知の液体状の潤滑剤(例えば、シリコーンオイル等)を用いることができる。また潤滑剤は、無端ベルト内周面と接して設けられたフェルト等を介して連続的に供給することができる。
【0080】
また本発明の画像定着装置は、押圧部材により、ニップ部の無端ベルト軸方向の圧力分布が調整できることが好ましい。例えば、潤滑剤を用いる場合には、圧力分布を調整することにより、潤滑剤を無端ベルトの一端に寄せたり、中央部に集めたり等、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態を任意に制御することができる。このため、例えば、無端ベルトの一端に余分な潤滑剤を集めて回収したり、無端ベルトの中央部に潤滑剤を移動させるようにしたりすることができ、無端ベルト端部からの潤滑剤の漏れによる装置内の汚染を防ぐことができる。
【0081】
なお、このような圧力分布の調整は、潤滑剤を用いると共に、更に使用する無端ベルトの内周面に既述したような筋状凹凸粗さが付与されている場合に特に有用である。この場合、筋状凹凸粗さの筋の方向も考慮してニップ部の圧力分布を調整することにより、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態の制御がより容易となる。
【0082】
【実施例】
以下に本発明を、無端ベルトの製造方法と、無端ベルトと、に大きくわけて実施例を挙げてより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0083】
<無端ベルトの製造方法>
(実施例A1)
芯体表面へのPI前駆体を含む溶液(以下、「PI前駆体溶液」と略す)の塗布は、図1に示す構成を有する塗布装置を用いて以下のように実施した。
PI前駆体溶液としては、PI前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:Uワニス、宇部興産(株)製、固形分濃度:18%、粘度:約5Pa・s)を利用し、これを内径80mm、高さ600mmの円筒容器からなる塗布槽に満たした。
【0084】
また、芯体としては、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより、芯体表面の表面粗さRaが、軸方向で、2.0μm、周方向で、0.3μmとしたものを用意した。さらに芯体表面にはシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理した。
【0085】
一方、環状体としては、外径65mm、内径40mm、高さ30mmのステンレス製の中空状のリングの内側に、外径が40mmで、断面が三角形であるテフロン(R)製リングを嵌合させたもを用いた。このテフロン(R)製リングの最小孔径は31.3mmであった。
【0086】
次に、上記環状体を塗布溶液に浮かべた後、環状体を動かないよう固定し、芯体の軸方向を垂直にして、前記環状体の孔へ500mm/minの速度で挿入し、浸漬した。次いで環状体の固定を解除し、150mm/minの速度で芯体を引き上げた。引き上げ途中では環状体が芯体に接触することはなく、芯体表面には濡れ膜厚が約650μmのPI前駆体塗膜が形成された。
【0087】
次に、PI前駆体塗膜がその表面に形成された芯体を、すぐに水中に浸漬し、6分間放置した。水中から芯体を引き上げた際、芯体表面に形成されたPI前駆体塗膜は黄白色となっていた。次いで芯体表面に付着した水滴を拭き取り、乾燥炉に入れた。設定温度は最初が30℃で、1時間後に100℃になるよう、徐々に温度が上昇するようにした。この乾燥後、塗膜は透明化した。
【0088】
その後、350℃で30分間加熱して、芯体表面にPI樹脂皮膜を形成した。室温に冷えてからPI樹脂皮膜を剥離、ベルト膜厚が70μmと均一であり、膨れ欠陥のない、実施例1の無端ベルトを得ることができた。また、芯体表面には予め離型剤が塗布されていたため、剥離に際して、無端ベルトの内周面が芯体と接着することはなかった。
【0089】
(実施例A2)
芯体として、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより軸方向の表面粗さRaを、1.0μm、周方向の表面粗さRaを、0.3μmとした以外は、実施例A1と同様にして、実施例A2の無端ベルトを得た。
【0090】
(実施例A3)
芯体として、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより軸方向の表面粗さRaを、0.5μm、周方向の表面粗さRaを、0.3μmとした以外は、実施例A1と同様にして、実施例A3の無端ベルトを得た。
【0091】
(実施例A4)
芯体として、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより軸方向の表面粗さRaを、3.5μm、周方向の表面粗さRaを、0.3μmとした以外は、実施例A1と同様にして、実施例A4の無端ベルトを得た。
【0092】
(比較例A1)
芯体として、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、ブラスト加工することにより軸方向および周方向の表面粗さRaを、1.0μmとした以外は、実施例A1と同様にして、比較例A1の無端ベルトを得た。
【0093】
(実施例A5)
芯体として、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより軸方向の表面粗さRaを、2.0μm、周方向の表面粗さRaを、0.3μmとし、最小孔径が31.5mmである環状体を用い、且つ、塗膜形成後の芯体の水浸時間を7分間とした以外は、実施例A1と同様にして、ベルト膜厚が90μmと均一である、実施例A5の無端ベルトを得た。
【0094】
(実施例A6)
芯体として、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより軸方向の表面粗さRaを、1.0μm、周方向の表面粗さRaを、0.3μmとした以外は、実施例A5と同様にして、実施例A6の無端ベルトを得た。
【0095】
(実施例A7)
芯体として、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより軸方向の表面粗さRaを、0.5μm、周方向の表面粗さRaを、0.3μmとした以外は、実施例A5と同様にして、実施例A7の無端ベルトを得た。
【0096】
(実施例A8)
芯体として、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより軸方向の表面粗さRaを、3.5μm、周方向の表面粗さRaを、0.3μmとした以外は、実施例A5と同様にして、実施例A8の無端ベルトを得た。
【0097】
(比較例A2)
芯体として、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、ブラスト加工することにより軸方向および周方向の表面粗さRaを、1.0μmとした以外は、実施例A5と同様にして、比較例A2の無端ベルトを得た。
【0098】
実施例A1〜実施例A8、および、比較例A1〜比較例A2で用いた芯体表面と、作製された無端ベルトと、の評価結果を表1に示す。但し、表1中の外径膨れ(膨れ欠陥)および表面凹凸(無端ベルト外周面の凹凸)は下記に示す判定基準に基づいて実施した。
<外径膨れの判定基準>
○:膨れ発生無し。実用上問題無し。
△:膨れ若干発生。但し、実用上問題無し。
×:膨れ有り(大きさ約5cm、高さ約200μmの膨れ)。実用上問題有り。
<表面凹凸の判定基準>
○:表面粗さRaが、0.3μm以下。
×:表面粗さRaが、0.3μmよりも大きい、もしくは、突起有り。
【0099】
【表1】
Figure 2004029757
【0100】
<無端ベルト>
(実施例B1)
実施例A2に示す無端ベルトの製造過程において、室温に冷却した乾燥処理後の芯体表面に形成されたPI前駆体塗膜の表面に、PFAのディスパージョン水性塗料(商品名:AD−2CR、ダイキン工業(株)製)を浸漬塗布した。
すなわち、乾燥後のPI前駆体塗膜がその表面に形成された芯体を、その長手方向を垂直にして前記ディスパージョン水性塗料中に浸漬し、次いで300mm/minの速度で引き上げ、PI前駆体塗膜表面に膜厚が20μmのPFA塗膜を形成した。
【0101】
続いて室温で5分間の乾燥させた後、60℃で10分間加熱乾燥させることにより、PFA塗膜から水を除去した。その後、380℃で30分間加熱して、PI樹脂皮膜を形成すると共に、PFA塗膜を焼成した。室温に冷却後、芯体表面からPI樹脂皮膜を剥離することにより、膜厚70μmのPI樹脂層の外周面にに、膜厚20μmのPFA層が形成された実施例B1の無端ベルト(電子写真用定着ベルト)を得ることができた。この無端ベルトのPI樹脂層と、PFA層と、の間の密着性は十分であった。
【0102】
(比較例B1)
比較例A1に示す無端ベルトの製造過程において、室温に冷却した乾燥処理後の芯体表面に形成されたPI前駆体塗膜の表面に、実施例B1と同様にしてPFA層を塗布形成して、比較例B1の無端ベルト(電子写真用定着ベルト)を得た。
【0103】
これらの無端ベルト(定着ベルト)を評価するために、図4に示すような、空回し評価機を用いた。
図4は、無端ベルト(定着ベルト)を評価するための空回し評価機の模式断面図であり、21が、加熱定着ロールを表し、22が、加熱源(ハロゲンヒーター)を表し、23が、圧力パッドを表し、24が、オイル供給源を表し、25が、摺動シートを表し、26が、無端ベルト(定着ベルト)を表し、27が空回しユニットを、30が空回し評価機を表す。
【0104】
図4中、加熱定着ロール21は不図示のモーターに接続され、回転可能であると共に、加熱定着ロール21の内部には、加熱源22が設置されている。
一方、圧力パッド23とオイル供給源24と摺動シート25とを備えた空回しユニット27は、その外周部に定着ベルト26が、回転可能なように取りつけられている。なお、定着ベルト26は、その外周面が加熱定着ロール21表面と圧接し、圧接部(ニップ)を形成すると共に、加熱定着ロール21の矢印R方向への回転に伴い従動回転することができる。
【0105】
定着ベルト26には、実施例B1および比較例B1で得られた定着ベルトを幅330mmに切断したものを用いた。また、定着ベルト26の内周面には、前記ニップが形成できるように、摺動シート25を介して、圧力パッド23が定着ベルト26の内周面を押圧するように配置されており、圧力パッド23の押圧力を調整することにより前記ニップ部におけるニップ荷重が調整される。
摺動シート25は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含浸させたガラス繊維シートに覆われたもの(中興化成製)からなり、摺動シート25の定着ベルト26に接する面の表面粗さRaは3.1μmである。
また、オイル供給源24は、定着ベルト26の回転時に、定着ベルト26内周面に対して、単位時間当たりに一定量のオイルが供給可能なように、定着ベルト24内周面と当接して配置されている。
【0106】
空回し評価に際しては、摺動シート25の定着ベルト26に接する面に適量の粘度300csのアミノ変性シリコーンオイル(信越化学製)を塗布した後、定着ベルト26を空回しユニット27の外周部に装着した。
次に、空回し評価機30のニップ荷重を34kgf、加熱定着ロール21の回転数を74.4rpm、加熱定着ロール21の表面温度を175℃に設定し、加熱定着ロールを矢印A方向に回転させ、加熱定着ロール21に接続されたモーターの負荷トルクと、ニップ部の騒音レベルを測定することにより実施した。
【0107】
なお、負荷トルクは、モーターに流れる電流値を測定し、これを換算して求めた。また、騒音レベルの測定はニップ部から30mm離れたところに集音マイクを設置し、積分平均型精密騒音計(リオン製、NL−14)を用いて実施した。これらの測定は空回しスタート直後、20分後、2時間後で行い、さらに空回し開始から2時間後の定着ベルト26の表面の状態等を目視で観察した。
【0108】
実施例B1および比較例B1の定着ベルトの空回し評価の結果を表2に示す。実施例B1および比較例B1ともに負荷トルクに差はなく、かつ2時間後の定着ベルトの状態観察でも問題は見られなかった。一方、摺動音は、実施例B1が62dBであるのに対し、比較例B1では66〜67dBと大きかった。すなわち、実施例B1の定着ベルトは、比較例B1の定着ベルトと比較して摺動シートと接する内周面の周方向の表面粗さRaが小さいために、摺動音の発生が抑制されていることがわかる。
なお、摺動音は、定着ベルト内周面の表面粗さRa以外にも、ニップ荷重やオイル注油量、摺動シートの材質・形状等にも左右されるが、上記の空回し評価では、これらの条件は、実施例B1および比較例B1共に同一の条件にて実施した。
【0109】
【表2】
Figure 2004029757
【0110】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、1)摺動音を抑制することが可能な無端ベルト摺動音を抑制することが可能な無端ベルトと、2)無端ベルトの、内周面周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さい無端ベルトを作製することができる無端ベルト製造方法と、3)この無端ベルトを用いた画像定着装置とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】環状体を用いた浸漬塗布方法の一例について示した模式断面図である。
【図2】環状体を用いた浸漬塗布方法の他の例を示した模式断面図である。
【図3】本発明の無端ベルト製造方法に用いられる芯体において、その表面の周方向に形成された切削加工目の例を示す模式図であり(a)は、周方向に対してほぼ平行に形成された加工目の例を示し、(b)は、周方向に対してやや斜め方向に形成された加工目の例を示し、(c)は、周方向に対して2種類の角度でやや斜め方向に形成された加工目の例を示す。
【図4】無端ベルト(定着ベルト)を評価するための空回し評価機の模式断面図である。
【符号の説明】
1 芯体
2 PI前駆体溶液
3 塗布槽
4 塗膜
5 環状体
6 環状体の孔
7 環状塗布槽
8 環状シール材
9 中間体
21 加熱定着ロール
22 加熱源(ハロゲンヒーター)
23 圧力パッド
24 オイル供給源
25 摺動シート
26 無端ベルト(定着ベルト)
27 空回しユニット
30 空回し評価機

Claims (12)

  1. 少なくともポリイミド樹脂を含む無端ベルトにおいて、
    該無端ベルトの内周面軸方向の表面粗さRaが、0.5〜3.0μmの範囲内であり、且つ、前記無端ベルトの、内周面周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さいことを特徴とする無端ベルト。
  2. 前記内周面周方向の表面粗さRaが、0.5μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
  3. 前記無端ベルトの、外周面の表面粗さRaが、内周面の表面粗さRaより小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無端ベルト。
  4. 前記無端ベルト内周面の少なくとも一部に、略一方向に配向した筋状凹凸粗さが形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の無端ベルト。
  5. 前記筋状凹凸粗さの筋が、前記無端ベルト内周面の周方向に対して鋭角を成すように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の無端ベルト。
  6. 前記筋状凹凸粗さの筋と、前記無端ベルト内周面の周方向との成す角度が、少なくとも2種類以上であることを特徴とする請求項4または5のいずれか1つに記載の無端ベルト。
  7. 少なくとも、周方向に切削加工が施された芯体表面にポリイミド前駆体溶液を塗布することにより塗膜を形成する工程を含むことを特徴とする無端ベルト製造方法。
  8. 前記芯体表面の軸方向の表面粗さRaが、0.8〜3.0μmの範囲内であり、前記芯体表面の周方向の表面粗さRaが、前記芯体表面の軸方向の表面粗さRaより小さいことを特徴とする請求項7に記載の無端ベルト製造方法。
  9. 前記芯体表面の周方向の表面粗さRaが、0.5μm以下であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の無端ベルト製造方法。
  10. 1つ以上の駆動部材と、前記1つ以上の駆動部材により従動回転可能な無端ベルトと、押圧部材とを少なくとも備え、
    前記1つ以上の駆動部材のいずれか1つの駆動部材表面と、前記無端ベルト外周面とが、前記無端ベルト内周面に接して配置され、前記無端ベルト外周面を前記駆動部材表面へと押圧する前記押圧部材により圧接部(ニップ部)を形成し、未定着トナー像をその表面に保持する記録シートを加熱しながら前記ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー像を前記記録シート表面に定着させる画像定着装置において、
    前記無端ベルトが、請求項1〜6のいずれか1つに記載の無端ベルトであることを特徴とする画像定着装置。
  11. 前記無端ベルトの内周面に、潤滑剤が塗布されていることを特徴とする請求項10に記載の画像定着装置。
  12. 前記ニップ部の前記無端ベルト軸方向の圧力分布が、前記押圧部材により調整可能であることを特徴とする請求項10または11に記載の画像定着装置。
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