JP2004025963A - ゴム材と氷との接触シミュレーション方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】精度良く氷とゴム材との接触状態をシミュレーションする。
【解決手段】ゴム材を数値解析が可能な複数個の要素を用いてモデル化したゴム材モデルを設定するステップS1と、氷を数値解析が可能な複数個の要素を用いてモデル化した氷モデルを設定するステップS2と、前記ゴム材モデルと氷モデルとを予め定めた境界条件で接触させ各々の変形計算を行ない必要な物理量を取得するシミュレーションステップS4〜S8とを含むとともに、氷モデルの変形計算は、各要素について、破壊の有無を判定する処理と、破壊と判定されたときに該要素を取り除いて破壊を表現する処理を含むことを特徴とするゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【選択図】 図2
【解決手段】ゴム材を数値解析が可能な複数個の要素を用いてモデル化したゴム材モデルを設定するステップS1と、氷を数値解析が可能な複数個の要素を用いてモデル化した氷モデルを設定するステップS2と、前記ゴム材モデルと氷モデルとを予め定めた境界条件で接触させ各々の変形計算を行ない必要な物理量を取得するシミュレーションステップS4〜S8とを含むとともに、氷モデルの変形計算は、各要素について、破壊の有無を判定する処理と、破壊と判定されたときに該要素を取り除いて破壊を表現する処理を含むことを特徴とするゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば氷路面などを頻繁に走行するスタッドレスタイヤなどの開発に役立つゴム材と氷との接触シミュレーション方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
スパイク夕イヤは、凍結路を走行する夕イヤとして使用されていたが、アスファルトより硬度が大きい金属ピンを使用しているため、走行時にアスファルトを損傷させてしまい粉塵を発生させる。このため、現在、殆どの地域で使用が禁止され、近年では、スパイク夕イヤに代えてスタッドレスタイヤが採用されつつある。スタッドレスタイヤは、前記金属ピンがないため、スパイクタイヤに比べると氷上性能に劣るが、近年では種々の改良が重ねられ、発売当初と比較して氷上性能が大きく向上しつつある。しかし、凍結路運転時の安全性をより一層高めるために、さらに高い氷上性能の実現が期待され、開発が続けられている。
【0003】
例えばタイヤの氷上走行性能を種々改善するにあたっては、やはり現実の車両テストを数多く必要とする。とりわけ凍結路は人工的に作り出すのが困難であるため、限られた期間でしかテストできず、この種のタイヤの開発コストや開発期間を増大させる原因となっていた。
【0004】
そこで、近年では有限要素法といった数値解析手法を用いたコンピューターシミュレーションにより、タイヤを試作しなくてもある程度の性能を予測・解析する方法が提案されている。しかしながら、従来の提案では、タイヤを舗装路面或いは水膜が存在する路面上を走行させるシミュレーションに止まる。水は、解析モデルでは一般に非圧縮性の完全流体として取り扱われる。一方、氷は、一定の応力内では実質的に形状が変化しないものの、ある一定の応力を超えると破壊し形状が変化する特性を有する。このような特性を有した氷とゴムとの接触シミュレーションには、上記従来の提案では対応することができない。
【0005】
発明者らは、鋭意研究の結果、前述した氷を数値解析が可能な要素を用いてモデル化するとともに、その各要素に破壊応力を設定し、該破壊応力と、計算により得られた該要素に作用する応力とを比較して計算された応力の方が大きければ該要素を取り除くことにより破壊を表現でき、氷の物理現象をシミュレーション上に的確に取り込み得ること、また氷の表面形状を再構築することで、新たに生成された氷の形状が接触するゴムに与える影響といった相互作用を解析しうることを見出した。そして、これによって、例えばタイヤでの凍結路走行を行う際のゴムと氷の接触シミュレーションを精度良く行いうることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0006】
以上のように、本発明は、氷路面などを頻繁に走行するスタッドレスタイヤなどの開発に役立つゴム材と氷との接触シミュレーション方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、ゴム材を数値解析が可能な複数個の要素を用いてモデル化したゴム材モデルを設定するステップと、氷を数値解析が可能な複数個の要素を用いてモデル化した氷モデルを設定するステップと、前記ゴム材モデルと氷モデルとを予め定めた境界条件で接触させ各々の変形計算を行ない必要な物理量を取得するシミュレーションステップとを含むとともに、前記氷モデルの変形計算は、該氷モデルの各要素について、破壊の有無を判定する処理と、破壊と判定されたときに該要素を取り除いて要素の破壊を表現する処理とを含むことを特徴とするゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0008】
また請求項2の発明は、前記破壊の有無を判定する処理は、前記氷モデルの要素に作用する主応力、主ひずみ、せん断応力、ミーゼス応力又はひずみエネルギーの値を予め定めた値と比較することにより行われることを特徴とする請求項1記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記氷モデルの変形計算は、破壊された要素を取り除いた後に新たな表面形状を認識するステップを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0010】
また請求項4記載の発明は、前記ゴム材モデルは、ゴム部分をモデル化したゴムモデルと、このゴム部分よりも硬度が大きくかつ該ゴム部分から突出し前記氷モデルに接触する硬質材をモデル化した硬質材モデルとを含むとともに、前記氷モデルの各々の要素が、前記硬質材モデルよりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0011】
また請求項5記載の発明は、前記硬質材モデルは、前記ゴムモデルの表面から略垂直に突出した軸状体をなすことを特徴とする請求項4記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0012】
また請求項6記載の発明は、前記軸状体が6ないし8角形状であることを特徴とする請求項5記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0013】
また請求項7記載の発明は、前記ゴム材モデルは、タイヤのトレッドゴムの転動時の挙動に合わせて移動しつつ前記氷モデルと接触する境界条件が与えられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には、本発明のシミュレーション方法を実施するためのシミュレーション装置1の一例が示されている。この装置1は、本体1aと、入力手段としてのキーボード1b、マウス1cと、出力手段としてのディスプレイ装置1dとから構成されている。本体1aには、図示していないが、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリー、磁気ディスクなどの大容量記憶装置、CD−ROMやフレキシブルディスクのドライブ1a1、1a2などの記憶装置を適宜具えている。そして、前記大容量記憶装置は後述するシミュレーション方法を実行するための処理手順(プログラム)が記憶された記憶媒体を含んでいる。
【0015】
図2には、本発明のシミュレーション方法の処理手順の一例が示されている。先ず本実施形態では、数値解析が可能な要素でゴム材をモデル化したゴム材モデルを設定する(ステップS1)。数値解析が可能とは、例えば有限要素法、有限体積法、差分法又は境界要素法といった少なくとも一つの数値解析法にて系全体の変位などを計算により求め得ることを意味し、本例ではこの数値解析法として有限要素法を採用する。
【0016】
図3は、ゴム材モデル2の一例を3次元上に視覚化して表し、図4はその一部を取り出して拡大したものである。本実施形態では、ゴム材として、スタッドレスタイヤのトレッドに配されているゴムブロックの一部をモデル化したものを例示している。例えば図5に拡大して示すように、ゴムブロックGは、ゴムからなるゴム部分G1と、このゴム部分G1に埋着された氷よりも硬くかつアスファルトよりも柔らかい繊維、例えばガラス繊維等などの短繊維からなる硬質材G2とから構成されている。前記硬質材G2は、ゴムブロックGの路面と接地する接地面Pから略垂直に突出して形成されている。
【0017】
本実施形態のゴム材モデル2は、このようなゴムブロックGをモデル化している。即ち、ゴム材モデル2は、ゴム部分G1をモデル化したゴムモデル2Aと、このゴムモデル2Aよりも硬度が大きくかつ該ゴム部分G1から突出する硬質材G2をモデル化した硬質材モデル2Bとを含んでいる。
【0018】
ゴムモデル2A、硬質材モデル2Bは、いずれも有限個の小さな要素2a、2b、2c…に分割してモデル化されることにより、前記コンピュータ装置1にて取り扱い可能な数値データを構成する。具体的には、各要素2a、2b、2c…を特定する要素番号、節点座標値、要素形状などが記憶される。また例えばゴムモデル2Aでは、モデル化の対象となったゴム部分G1の材料特性、例えば密度、ヤング率、減衰係数などに応じた材料特性が定義される。
【0019】
同様に、硬質材モデル2Aについては、モデル化の対象となった硬質材G2の材料特性を参考として、各要素にその特性が定義される。この材料特性の中には破断強度が含まれる。従って、この硬質材モデル2Aに大きな曲げ応力などが作用すると折損が表現できる。このような材料特性は、各々の要素について変形計算を行う際に利用される。
【0020】
特に限定はされないが、ゴムモデル2Aについては、3次元要素、とりわけ4ないし6面体ソリッド要素が好ましく、本実施形態では6面体要素を主体的に使用している。また短繊維をなす硬質材モデル2Bについては、前記ゴムモデル2Aの表面から略垂直に突出した軸状体でモデル化されており、図5に示したゴム内部に属する硬質材ないしその部分については省略している。なお実際の短繊維は、ほぼ円柱状をなすものであるが、これを要素分割するに際しては、前記軸状体として例えば全体が6ないし8角形状でモデル化することが好適である。端面が6角柱未満の軸状体では計算精度が低下する傾向があり、逆に8角柱よりも多くしても計算時間が増加し好ましくない。なおタイヤに使用される短繊維をモデル化した硬質材モデル2Bの外径は、概ね数十μm程度である。従って、ゴム材モデル2の全体の一辺の大きさも、せいぜい0.5〜1mm程度で設定するのが望ましい。
【0021】
次に本実施形態では、氷をモデル化した氷モデル(路面形成物モデル)を設定する処理を行う(ステップS2)。氷モデルは、ゴム材モデル2と同様に数値解析が可能な要素を用いてモデル化される。
【0022】
図6(A)には氷モデル3の全体例を視覚化して示し、図6(B)にはその一部を取り出して拡大した図を示す。本実施形態の氷モデル3は、厚さT、巾W、長さLの矩形状をなす氷板をモデル化したものを示す。該氷モデル3は、前記氷板を小さな6面体ソリッド要素3a、3b、3c…で分割することによりモデル化されたものを例示している。氷モデル3は、その一方の面が前記ゴム材モデル2を接触させる接触面Saとなる。本実施形態では、初期状態において、この接触面Saを水平かつ平坦な面として構成している。ただし、必要に応じて凹凸面としたり又勾配を設けたり適宜形状を変化させることもできる。
【0023】
図7には、氷モデル3を構成する各要素の特性として、主応力と歪との関係を示す。前記各要素3、3b、3c…は、一定の応力値σaまではフックの法則に従って弾性変形するものとして取り扱われる。ヤング率は、例えば−10℃において、9.0×1010(dyn/cm2 )〜9.9×1010(dyn/cm2 )程度、またポアソン比は0.31〜0.37程度に設定するのが望ましい。従って、前記応力値σaまでは実質的に弾性体としての特性を示す。一方、各要素にσaを超える応力が作用すると、その要素は破壊するように設定される。
【0024】
図5に示したようなゴムブロックGを有するスタッドレスタイヤで氷結路を走行した場合、ゴム表面から突出した短繊維状の硬質材G2は氷面に貫入して高いグリップ力を発揮する。これは放射光等を利用した種々の実験により確認されている。このような現象は、氷の弾性変形によるものではなく、硬質材G2が氷を破砕しかつ破砕により形成された穴に貫入しているためと考えられる。このため、氷との接触をコンピュータを用いて解析する場合、氷が破壊応力以上の力で破壊されることをシミュレーション上に的確に取り込まなければ精度の良い解析を行うことはできない。そこで、本実施形態では、上述のような応力値σaを氷モデル3の破壊応力として定義している。前記破壊応力σaは、特に限定されることなく種々定めることができるが、実測値などを参考として、例えば圧縮応力で70MPa、せん断応力として0.1MPa程度に設定するのが好ましい。なお破壊した要素の取り扱い等については後述する。
【0025】
本実施形態では、氷モデル3の要素の破壊の有無を判定するパラメータとして、主応力を用いているが、これに代えて例えば主ひずみ、せん断応力、ミーゼス応力又はひずみエネルギーといったパラメータを用いることも可能である。そして、採用する各パラメータ毎に要素の破壊を判定する閾値が予め設定され、この閾値よりも計算されたパラメータが大きければ要素の破壊と判定することができる。なお応力状態は、通常3つの直交する主応力(ベクトル)で表されるが、これを下記式により単軸引張応力σvmに置き換えたものがフォンミーゼス応力である。このフォンミーゼス応力σvmは、スカラー量となるため強度判定が比較的容易となる。
σvm=√[{(σ1 −σ2 )2 +(σ2 −σ3 )2 +(σ3 −σ1 )2 }/2]
ここで、σ1 、σ2 、σ3 は、主応力である。
【0026】
また本実施形態の氷モデル3の各要素3a、3b、c…は、その全てが前記硬質材モデル2Bよりも小さいものを例示している。ここで、硬質材モデル2Bと氷モデル3の個々の要素とにおいて大きさを比較する場合、硬質材モデル2Bの大きさについてはその軸状体の最大外径とし、氷モデル3の各要素3a、3b、3c…の大きさはについては、図6(B)に示すように、接触面Saと平行な面における一辺の長さx、y又はzの最も大きい値とし、これら対比することにより行うことができる。このように氷モデル3の要素3a、3b、3c…を硬質材モデル2Bよりも小さく設定することによって、氷モデル3に硬質材モデル2Bが突き刺さる際に形成される穴の輪郭形状、深さなどをより現実のものに近づけ、シミュレーション精度を高めるのに役立つ。
【0027】
また本実施形態の氷モデル3は、図6(A)に示したように、X軸に沿って小さな要素が並ぶ細分化領域Xaと、前記要素よりも大きな要素が並ぶ非細分化領域Xbとを交互に設定するとともに、Y軸側にも細分化領域Yaと、非細分化領域Ybとを設定し細分化領域Xa、Yaとが交差する交差部Aに、最も小さな要素を区画している。このような交差部Aは、例えばゴム材モデル2の硬質材モデル2Bとの接触部とすることにより、コンピュータによる計算時間の増大を抑制しつつ精度の向上に役立つ。なお以上のステップS1、S2は、実行順序を逆としても良く、また並列処理しても良い。
【0028】
次に本実施形態では、境界条件等を設定する(ステップS3)。本実施形態のシミュレーションでは、図8に略示するように、ゴム材モデル2と氷モデル3とを接触させかつ接触面Saに沿ってゴム材モデル2をスライドさせるシミュレーションを行う。このために設定される条件としては、氷モデル3の接触面Saの初期状態の形状、ゴム材モデル2を氷モデル3に押し付ける垂直力Fa、ゴム材モデル2と氷モデル3との間のせん断力Fb、ゴム材モデル2と氷モデル3との間の静ないし動摩擦係数μ、ゴム材モデル2、及び/又は氷モデル3の変形計算を行う際の時間増分などが挙げられる。前記摩擦係数としては、氷の状態に応じて種々設定することができ、例えば0.01〜0.4程度が好適である。また変形開始からの計算を行う時間増分としては、特に限定はされないが、10−9〜 10−5sec程度とするのが望ましい。
【0029】
次に本実施形態では、前記ゴム材モデル2と氷モデル3とを前記境界条件で接触させ各々の変形計算を行ない必要な物理量を取得するシミュレーションステップを行う(ステップS4ないしS8)。
【0030】
図2において、ステップS4ないしS8から明らかなように、本実施形態では、ゴム材モデル2の変形計算と氷モデル3の変形計算とを個別に行う。そして、ゴム材モデル2の変形計算で得られた該ゴム材モデル2の形状や速度データを氷モデル3の変形計算時の境界条件として与えるとともに(ステップS8)、氷モデル3の変形計算で得られた接触面の形状をゴム材モデル2の変形計算時の境界条件として与える(ステップS7)ものを例示する。いわゆる「連成」である。以下、詳細に説明する。
【0031】
ゴム材モデル2の変形計算の一例は図9に示される。
本例では先ず時間増分△tを経過した後のゴム材モデル2の変形計算を行う(ステップS41)。ゴム材モデル2の変形計算においては、氷モデル3の接触面Saは変位しない壁として取り扱われる。従ってゴム材モデル2の変位は該氷モデル3の接触面Saにより規制される。
【0032】
ゴム材モデル2の変形計算には、本例では有限要素法を採用し、例えば下記式で示される運動方程式が用いられる。この運動方程式からゴム材モデル2の時刻Δtでの加速度、速度、変位などを求めることができる。
【数1】
【0033】
そして、所定時刻が経過したか否かを判断し(ステップS42)、結果が真の場合(ステップS42でY)、処理を終える。ステップS42で偽の場合には、時間増分を加算して再度変形計算を行う(ステップS41)。これにより、各時刻での変位が逐次計算できる。
【0034】
図10には、氷モデル3の変形計算の具体的な処理手順の一例を示す。
氷モデル3の変形計算においては、例えば氷モデル3の各要素に付された要素番号に対応した序数iを1に初期化し(ステップS51)、要素番号iの要素に作用する応力を計算する(ステップS52)。氷モデル3の変形計算には、ゴム材モデル2の形状、速度のデータが参照されて行われる。即ち、図11(A)に示すように、ゴム材モデル2(この例では硬質材モデル2B)の位置を参照し、、このゴム材モデル2を介して垂直力Faが作用する状態で応力計算が行われる。
【0035】
次に、要素番号iの要素について計算された応力が、予め設定された前記破壊応力σaよりも大きいか否かを判断する(ステップS53)。計算された応力が前記破壊応力σaと同等ないしそれよりも小さい場合(ステップS53でN)、前記序数iが最終要素の番号か否かを判断する(ステップS56)。ステップS56で最終要素を示す番号ではないと判断された場合、序数iに1を加算し(ステップS57)、ステップS52以降を繰り返す。また最終要素を示す番号である場合(ステップS56でY)、即ち全ての要素について処理を終えた場合には、指定した時間が経過している場合(ステップS58でY)には氷モデル3の変形計算の処理を終え、図2のステップS6以後を実行する。指定した時間が経過していない場合(ステップS58でN)、ステップS51以降を新たに時間増分を加算して繰り返す。
【0036】
一方、計算された応力が前記破壊応力σaよりも大きいと判断された場合(ステップS53でY)、当該要素番号iの要素を氷モデル3から取り除く(ステップS54)。例えば図11(A)において、硬質材モデル2Bが接触している要素3a1〜3a6について、上記ステップS53の結果がいずれもYと判断された場合、図11(B)に示すように、要素3a1〜3a6は氷モデル3から取り除かれる。これにより要素(氷モデル)の破壊が表現される。
【0037】
次に、氷モデル3の接触面Saの更新を行う(ステップS55)。接触面Saの更新は、取り除かれた要素番号iの要素が無いとした場合の氷モデル3の表面形状を新たに再認識し、このデータをシミュレーション装置1のメモリ等に記憶させることにより行われる。従って、図11(B)の例では、このステップS55により、氷モデル3の接触面Saは、元の水平面を保持した水平面部Sa1と、この水平面部Sa1から1要素分凹んだ凹部Sa2とを含むものとして更新されかつ記憶される。なお以後は、同様にステップS56を繰り返す。
【0038】
次に図2に示すように、ステップS7、S8では、それぞれ別々に独立させて計算されたゴム材モデル2と氷モデル3との変形計算結果から、お互いに必要なデータを受け渡しさせ両モデル2、3の連成を行う。例えば次ループでのゴム材モデル2の変形計算には、図12(A)に示すように、新たに更新された氷モデル3の接触面Saの形状データが境界条件(壁)として与えられる。他方、次ループでの氷モデル3の変形計算には、図12(B)に示すように、ゴム材モデル2の新たに計算された位置や速度などが条件として与えられる。なおこの連成は、同時刻におけるゴム材モデル2、氷モデル3の状態で行われる。図13、図14には、氷モデル3にゴム材モデル2を先ず接触させかつ水平方向に所定の速度でスライドさせたときの氷モデル3の破砕状況の一例を視覚化している。
【0039】
上述のような処理を行うことにより、氷モデル3にはゴム材モデル2の位置の変化に伴う新たな応力を作用させることができ、他方、ゴム材モデル2については、氷モデル3の要素が破砕することによって形成される新たな接触面Saが与えられる。そして、このような計算を微小時間毎に繰り返すことによって、ゴム材モデル2と氷モデル3との間の相互作用を考慮に入れつつ、ゴム材モデル2、氷モデル3の時々刻々と変化する変形状態を連成させて計算しうる。なおこれらの連成処理の計算手順は例えば一般に知られている有限要素法解析プログラム(例えばLS−Dyna(LSTC社製)などを用いて自動計算することができる。
【0040】
またステップS6では、計算終了となる予め指定した時間が経過したかを判断し、ステップS6でYと判断された場合、計算結果を出力し(ステップS9)、処理を終える。ステップS6での計算を終える時間は、実行するシミュレーションに応じ安定した計算結果が得られるよう種々定めることができる。
【0041】
計算結果の出力には種々の情報を含むことができる。例えば、ゴム材モデル2に水平力Fbを与えた場合、そのときに氷モデル3へと伝えられる前後方向力を取り出すことにより、凍結路におけるスタッドレスタイヤの駆動性能(又は制動性能)を評価、改善するのに役立つ。そして、これらの出力結果から、必要なゴム材の材料特性の改良、硬質材の硬度、外径の改良などを行い、さらにはゴム材にサイピングや細溝などを追加してその形状、深さ、厚さなどを種々変化させることにより、好適なシミュレーション結果が得られたゴム材、ひいてはタイヤを実際に試作することができる。これにより、例えば冬用のタイヤ、とりわけ短繊維をゴム部に配合したスタッドレスタイヤの開発期間を大幅に短縮するとともに開発コストを低減できる。
【0042】
またゴム材モデル2にスリップ角を与えて氷モデル3上を走行させた場合、ゴム材モデル2に生じる横力を出力することにより、氷上でのタイヤのコーナリング性能を評価、解析することができる。なお出力する情報は、これらの値に限定されず、必要に応じて種々のものを出力することができる。
【0043】
またゴム材モデル2は、例えば図15に示すように、タイヤ全体を小さな要素Ta、Tb、Tc…でモデル化したタイヤモデルTの一部として構成することもできる。この場合、タイヤの氷路走行時における制・駆動性能や、コーナリング性能を精度良く計算する事ができる点で望ましい。しかしながら、このような方法では、硬質材モデルの短繊維の外径が数十μm と非常に小さいため、要素数が通常の有限要素モデルよりも大となり、また計算ステップもより細かくなるなど非常に多くの計算時間を必要とする。従って、計算時間を考慮すると、上述のようにタイヤのトレッドに含まれるゴムブロックの一部ないし全体を抜き出してたゴム材モデルでシミュレーションを行うことにより、より実用的な解析を行うことができる。
【0044】
図16には本発明の他の実施形態を示す。
この実施形態では、例えば図16(A)に示すように、タイヤモデルTを用いて路面モデルRで転動シミュレーションを行い、接地するトレッドゴムの任意の一要素STaについて、転動時の挙動を調べる。この挙動には、同図(B)に示すように、前記要素STaの転動時の軌跡、各時刻における垂直力fa、水平力fbなどを含む。そして、この挙動を前記ゴム材モデル2の境界条件として与えてシミュレーションを行うことが望ましい。これにより、少ない要素数でタイヤの転動により近づけてシミュレーションを行うことができ、計算時間の大幅な増大を招くことなく氷路でのタイヤの性能をシミュレーションすることができる。
【0045】
図17には、垂直圧力100kPa、水平移動速度55cm/s、硬質材モデル2Bと氷モデル3との摩擦係数を0.05、ゴムモデル2Aと氷モデル3との摩擦係数を0.1としてシミュレーションを行い、氷モデル3からの抗力の大きさを時刻歴として出力したグラフを示す。なおタイプAのゴム材モデルとして、硬質材モデル2Bの最大外径を33μmとしその配設密度は硬質材モデル間距離が320μmとなるように設定した。またタイプBのゴム材モデルとして、硬質材モデル2Bの最大外径を11μmとしその配設密度はタイプAの4倍とした。
【0046】
同じ速度でゴム材モデル2を氷モデル3上を移動させた場合、ゴム材モデル2と氷モデル3との間に働く抗力が大きいものは氷上グリップ力が高いと言える。図17から、硬質材モデル2Bの配設密度は小さいが外径が大きいタイプAの方が氷上グリップ力に優れることが判る。
【0047】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定される訳ではない。例えばゴム材モデル2を固定された氷モデル3の上でスライドさせる際にゴム材モデル2を固定し該ゴム材モデル2と接触している氷モデル3を移動させることもできる。またゴム材モデル2は、硬質材モデル2Bを含まなくても良い。さらにゴム材モデル2は、解析対象をタイヤに限定するものではない。
【0048】
【発明の効果】
上述したように、本発明のシミュレーション方法にあっては、ゴム材を実際に試作しなくとも、氷との接触時の性能を大凡知ることができる。従って氷と接触するゴム部を有する例えばスタッドレスタイヤなどの開発期間、開発コストを低減するのに役立つ。また本発明のシミュレーション方法では、氷モデルの変形計算において、その要素について計算された応力が予め設定された破壊応力よりも大きいときに該要素を取り除いて破壊を表現するステップを含むことにより、実際に生じる氷の破壊現象をシミュレーション上に的確に取り込むことができる。従って、より精度の高い、シミュレーションが可能となる。また請求項3記載の発明のように、氷モデルの変形計算において、破壊された要素を取り除いた後、新たな表面形状を認識するステップを含むときには、この形状の変化がゴム材に及ぼす相互作用をも考慮でき、さらに解析精度を高めうる。
【0049】
また請求項4記載の発明のように、前記ゴム材モデルは、ゴムをモデル化したゴムモデルと、このゴムよりも硬度が大きくかつ該ゴム材から突出する硬質材をモデル化した硬質材モデルとを含むとともに、前記氷モデルの各々の要素を前記硬質材モデルよりも小さく設定したときには、硬質材が氷を貫く貫通孔などをより精度良く解析できる。
【0050】
また請求項5記載の発明のように、前記硬質材モデルは、前記ゴムモデルの表面から略垂直に突出した軸状体をなすときには、スタッドレスタイヤのトレッド面と同様の構成をモデル化するのに特に有効となる。従って、スタッドレスタイヤの氷上走行性能の解析に役立つ。
【0051】
また請求項7記載の発明のように、前記ゴム材モデルは、タイヤのトレッドゴムの転動時の挙動に合わせて移動しつつ前記氷モデルと接触する境界条件が与えられたときには、ゴム材モデルをタイヤの挙動と同様の条件で氷モデルに接触させることができるため、スタッドレスタイヤの氷上走行性能の解析に役立つ。またタイヤ全体をモデル化する必要がないため、モデルの作成時間や計算時間の短縮化にも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシミュレーション方法を実施するためのコンピュータ装置の構成図である。
【図2】本発明のシミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明のゴム材モデルの斜視図である。
【図4】その要部拡大図である。
【図5】タイヤのトレッドのゴムブロックの断面図である。
【図6】(A)は氷モデルの一例を示す斜視図、(B)はその一部拡大図である。
【図7】氷モデルの要素の応力と体積との関係を示すグラフである。
【図8】氷モデルと硬質材モデルとの接触を説明するための線図である。
【図9】ゴム材モデルの変形計算の一例を示すフローチャートである。
【図10】氷モデルの変形計算の一例を示すフローチャートである。
【図11】(A)、(B)は氷モデルと硬質材モデルとの接触を説明するための線図である。
【図12】(A)、(B)は氷モデルと硬質材モデルとの接触を説明するための線図である。
【図13】氷モデルのシミュレーションを視覚化して示す線図図である。
【図14】氷モデルのシミュレーションを視覚化して示す線図図である。
【図15】タイヤモデルの一例を示す斜視図である。
【図16】(A)は本発明の他の実施形態を示す他意やモデルの転動状態を示す線図、(B)はその一要素の軌跡を示す線図である。
【図17】シミュレーションから得た抗力の時刻歴を示すグラフである。
【図18】(A)、(B)は実施例に用いた硬質材モデルの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 シミュレーション装置
2 ゴム材モデル
2A ゴムモデル
2B 硬質材モデル
3 氷モデル
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば氷路面などを頻繁に走行するスタッドレスタイヤなどの開発に役立つゴム材と氷との接触シミュレーション方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
スパイク夕イヤは、凍結路を走行する夕イヤとして使用されていたが、アスファルトより硬度が大きい金属ピンを使用しているため、走行時にアスファルトを損傷させてしまい粉塵を発生させる。このため、現在、殆どの地域で使用が禁止され、近年では、スパイク夕イヤに代えてスタッドレスタイヤが採用されつつある。スタッドレスタイヤは、前記金属ピンがないため、スパイクタイヤに比べると氷上性能に劣るが、近年では種々の改良が重ねられ、発売当初と比較して氷上性能が大きく向上しつつある。しかし、凍結路運転時の安全性をより一層高めるために、さらに高い氷上性能の実現が期待され、開発が続けられている。
【0003】
例えばタイヤの氷上走行性能を種々改善するにあたっては、やはり現実の車両テストを数多く必要とする。とりわけ凍結路は人工的に作り出すのが困難であるため、限られた期間でしかテストできず、この種のタイヤの開発コストや開発期間を増大させる原因となっていた。
【0004】
そこで、近年では有限要素法といった数値解析手法を用いたコンピューターシミュレーションにより、タイヤを試作しなくてもある程度の性能を予測・解析する方法が提案されている。しかしながら、従来の提案では、タイヤを舗装路面或いは水膜が存在する路面上を走行させるシミュレーションに止まる。水は、解析モデルでは一般に非圧縮性の完全流体として取り扱われる。一方、氷は、一定の応力内では実質的に形状が変化しないものの、ある一定の応力を超えると破壊し形状が変化する特性を有する。このような特性を有した氷とゴムとの接触シミュレーションには、上記従来の提案では対応することができない。
【0005】
発明者らは、鋭意研究の結果、前述した氷を数値解析が可能な要素を用いてモデル化するとともに、その各要素に破壊応力を設定し、該破壊応力と、計算により得られた該要素に作用する応力とを比較して計算された応力の方が大きければ該要素を取り除くことにより破壊を表現でき、氷の物理現象をシミュレーション上に的確に取り込み得ること、また氷の表面形状を再構築することで、新たに生成された氷の形状が接触するゴムに与える影響といった相互作用を解析しうることを見出した。そして、これによって、例えばタイヤでの凍結路走行を行う際のゴムと氷の接触シミュレーションを精度良く行いうることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0006】
以上のように、本発明は、氷路面などを頻繁に走行するスタッドレスタイヤなどの開発に役立つゴム材と氷との接触シミュレーション方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、ゴム材を数値解析が可能な複数個の要素を用いてモデル化したゴム材モデルを設定するステップと、氷を数値解析が可能な複数個の要素を用いてモデル化した氷モデルを設定するステップと、前記ゴム材モデルと氷モデルとを予め定めた境界条件で接触させ各々の変形計算を行ない必要な物理量を取得するシミュレーションステップとを含むとともに、前記氷モデルの変形計算は、該氷モデルの各要素について、破壊の有無を判定する処理と、破壊と判定されたときに該要素を取り除いて要素の破壊を表現する処理とを含むことを特徴とするゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0008】
また請求項2の発明は、前記破壊の有無を判定する処理は、前記氷モデルの要素に作用する主応力、主ひずみ、せん断応力、ミーゼス応力又はひずみエネルギーの値を予め定めた値と比較することにより行われることを特徴とする請求項1記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記氷モデルの変形計算は、破壊された要素を取り除いた後に新たな表面形状を認識するステップを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0010】
また請求項4記載の発明は、前記ゴム材モデルは、ゴム部分をモデル化したゴムモデルと、このゴム部分よりも硬度が大きくかつ該ゴム部分から突出し前記氷モデルに接触する硬質材をモデル化した硬質材モデルとを含むとともに、前記氷モデルの各々の要素が、前記硬質材モデルよりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0011】
また請求項5記載の発明は、前記硬質材モデルは、前記ゴムモデルの表面から略垂直に突出した軸状体をなすことを特徴とする請求項4記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0012】
また請求項6記載の発明は、前記軸状体が6ないし8角形状であることを特徴とする請求項5記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0013】
また請求項7記載の発明は、前記ゴム材モデルは、タイヤのトレッドゴムの転動時の挙動に合わせて移動しつつ前記氷モデルと接触する境界条件が与えられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には、本発明のシミュレーション方法を実施するためのシミュレーション装置1の一例が示されている。この装置1は、本体1aと、入力手段としてのキーボード1b、マウス1cと、出力手段としてのディスプレイ装置1dとから構成されている。本体1aには、図示していないが、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリー、磁気ディスクなどの大容量記憶装置、CD−ROMやフレキシブルディスクのドライブ1a1、1a2などの記憶装置を適宜具えている。そして、前記大容量記憶装置は後述するシミュレーション方法を実行するための処理手順(プログラム)が記憶された記憶媒体を含んでいる。
【0015】
図2には、本発明のシミュレーション方法の処理手順の一例が示されている。先ず本実施形態では、数値解析が可能な要素でゴム材をモデル化したゴム材モデルを設定する(ステップS1)。数値解析が可能とは、例えば有限要素法、有限体積法、差分法又は境界要素法といった少なくとも一つの数値解析法にて系全体の変位などを計算により求め得ることを意味し、本例ではこの数値解析法として有限要素法を採用する。
【0016】
図3は、ゴム材モデル2の一例を3次元上に視覚化して表し、図4はその一部を取り出して拡大したものである。本実施形態では、ゴム材として、スタッドレスタイヤのトレッドに配されているゴムブロックの一部をモデル化したものを例示している。例えば図5に拡大して示すように、ゴムブロックGは、ゴムからなるゴム部分G1と、このゴム部分G1に埋着された氷よりも硬くかつアスファルトよりも柔らかい繊維、例えばガラス繊維等などの短繊維からなる硬質材G2とから構成されている。前記硬質材G2は、ゴムブロックGの路面と接地する接地面Pから略垂直に突出して形成されている。
【0017】
本実施形態のゴム材モデル2は、このようなゴムブロックGをモデル化している。即ち、ゴム材モデル2は、ゴム部分G1をモデル化したゴムモデル2Aと、このゴムモデル2Aよりも硬度が大きくかつ該ゴム部分G1から突出する硬質材G2をモデル化した硬質材モデル2Bとを含んでいる。
【0018】
ゴムモデル2A、硬質材モデル2Bは、いずれも有限個の小さな要素2a、2b、2c…に分割してモデル化されることにより、前記コンピュータ装置1にて取り扱い可能な数値データを構成する。具体的には、各要素2a、2b、2c…を特定する要素番号、節点座標値、要素形状などが記憶される。また例えばゴムモデル2Aでは、モデル化の対象となったゴム部分G1の材料特性、例えば密度、ヤング率、減衰係数などに応じた材料特性が定義される。
【0019】
同様に、硬質材モデル2Aについては、モデル化の対象となった硬質材G2の材料特性を参考として、各要素にその特性が定義される。この材料特性の中には破断強度が含まれる。従って、この硬質材モデル2Aに大きな曲げ応力などが作用すると折損が表現できる。このような材料特性は、各々の要素について変形計算を行う際に利用される。
【0020】
特に限定はされないが、ゴムモデル2Aについては、3次元要素、とりわけ4ないし6面体ソリッド要素が好ましく、本実施形態では6面体要素を主体的に使用している。また短繊維をなす硬質材モデル2Bについては、前記ゴムモデル2Aの表面から略垂直に突出した軸状体でモデル化されており、図5に示したゴム内部に属する硬質材ないしその部分については省略している。なお実際の短繊維は、ほぼ円柱状をなすものであるが、これを要素分割するに際しては、前記軸状体として例えば全体が6ないし8角形状でモデル化することが好適である。端面が6角柱未満の軸状体では計算精度が低下する傾向があり、逆に8角柱よりも多くしても計算時間が増加し好ましくない。なおタイヤに使用される短繊維をモデル化した硬質材モデル2Bの外径は、概ね数十μm程度である。従って、ゴム材モデル2の全体の一辺の大きさも、せいぜい0.5〜1mm程度で設定するのが望ましい。
【0021】
次に本実施形態では、氷をモデル化した氷モデル(路面形成物モデル)を設定する処理を行う(ステップS2)。氷モデルは、ゴム材モデル2と同様に数値解析が可能な要素を用いてモデル化される。
【0022】
図6(A)には氷モデル3の全体例を視覚化して示し、図6(B)にはその一部を取り出して拡大した図を示す。本実施形態の氷モデル3は、厚さT、巾W、長さLの矩形状をなす氷板をモデル化したものを示す。該氷モデル3は、前記氷板を小さな6面体ソリッド要素3a、3b、3c…で分割することによりモデル化されたものを例示している。氷モデル3は、その一方の面が前記ゴム材モデル2を接触させる接触面Saとなる。本実施形態では、初期状態において、この接触面Saを水平かつ平坦な面として構成している。ただし、必要に応じて凹凸面としたり又勾配を設けたり適宜形状を変化させることもできる。
【0023】
図7には、氷モデル3を構成する各要素の特性として、主応力と歪との関係を示す。前記各要素3、3b、3c…は、一定の応力値σaまではフックの法則に従って弾性変形するものとして取り扱われる。ヤング率は、例えば−10℃において、9.0×1010(dyn/cm2 )〜9.9×1010(dyn/cm2 )程度、またポアソン比は0.31〜0.37程度に設定するのが望ましい。従って、前記応力値σaまでは実質的に弾性体としての特性を示す。一方、各要素にσaを超える応力が作用すると、その要素は破壊するように設定される。
【0024】
図5に示したようなゴムブロックGを有するスタッドレスタイヤで氷結路を走行した場合、ゴム表面から突出した短繊維状の硬質材G2は氷面に貫入して高いグリップ力を発揮する。これは放射光等を利用した種々の実験により確認されている。このような現象は、氷の弾性変形によるものではなく、硬質材G2が氷を破砕しかつ破砕により形成された穴に貫入しているためと考えられる。このため、氷との接触をコンピュータを用いて解析する場合、氷が破壊応力以上の力で破壊されることをシミュレーション上に的確に取り込まなければ精度の良い解析を行うことはできない。そこで、本実施形態では、上述のような応力値σaを氷モデル3の破壊応力として定義している。前記破壊応力σaは、特に限定されることなく種々定めることができるが、実測値などを参考として、例えば圧縮応力で70MPa、せん断応力として0.1MPa程度に設定するのが好ましい。なお破壊した要素の取り扱い等については後述する。
【0025】
本実施形態では、氷モデル3の要素の破壊の有無を判定するパラメータとして、主応力を用いているが、これに代えて例えば主ひずみ、せん断応力、ミーゼス応力又はひずみエネルギーといったパラメータを用いることも可能である。そして、採用する各パラメータ毎に要素の破壊を判定する閾値が予め設定され、この閾値よりも計算されたパラメータが大きければ要素の破壊と判定することができる。なお応力状態は、通常3つの直交する主応力(ベクトル)で表されるが、これを下記式により単軸引張応力σvmに置き換えたものがフォンミーゼス応力である。このフォンミーゼス応力σvmは、スカラー量となるため強度判定が比較的容易となる。
σvm=√[{(σ1 −σ2 )2 +(σ2 −σ3 )2 +(σ3 −σ1 )2 }/2]
ここで、σ1 、σ2 、σ3 は、主応力である。
【0026】
また本実施形態の氷モデル3の各要素3a、3b、c…は、その全てが前記硬質材モデル2Bよりも小さいものを例示している。ここで、硬質材モデル2Bと氷モデル3の個々の要素とにおいて大きさを比較する場合、硬質材モデル2Bの大きさについてはその軸状体の最大外径とし、氷モデル3の各要素3a、3b、3c…の大きさはについては、図6(B)に示すように、接触面Saと平行な面における一辺の長さx、y又はzの最も大きい値とし、これら対比することにより行うことができる。このように氷モデル3の要素3a、3b、3c…を硬質材モデル2Bよりも小さく設定することによって、氷モデル3に硬質材モデル2Bが突き刺さる際に形成される穴の輪郭形状、深さなどをより現実のものに近づけ、シミュレーション精度を高めるのに役立つ。
【0027】
また本実施形態の氷モデル3は、図6(A)に示したように、X軸に沿って小さな要素が並ぶ細分化領域Xaと、前記要素よりも大きな要素が並ぶ非細分化領域Xbとを交互に設定するとともに、Y軸側にも細分化領域Yaと、非細分化領域Ybとを設定し細分化領域Xa、Yaとが交差する交差部Aに、最も小さな要素を区画している。このような交差部Aは、例えばゴム材モデル2の硬質材モデル2Bとの接触部とすることにより、コンピュータによる計算時間の増大を抑制しつつ精度の向上に役立つ。なお以上のステップS1、S2は、実行順序を逆としても良く、また並列処理しても良い。
【0028】
次に本実施形態では、境界条件等を設定する(ステップS3)。本実施形態のシミュレーションでは、図8に略示するように、ゴム材モデル2と氷モデル3とを接触させかつ接触面Saに沿ってゴム材モデル2をスライドさせるシミュレーションを行う。このために設定される条件としては、氷モデル3の接触面Saの初期状態の形状、ゴム材モデル2を氷モデル3に押し付ける垂直力Fa、ゴム材モデル2と氷モデル3との間のせん断力Fb、ゴム材モデル2と氷モデル3との間の静ないし動摩擦係数μ、ゴム材モデル2、及び/又は氷モデル3の変形計算を行う際の時間増分などが挙げられる。前記摩擦係数としては、氷の状態に応じて種々設定することができ、例えば0.01〜0.4程度が好適である。また変形開始からの計算を行う時間増分としては、特に限定はされないが、10−9〜 10−5sec程度とするのが望ましい。
【0029】
次に本実施形態では、前記ゴム材モデル2と氷モデル3とを前記境界条件で接触させ各々の変形計算を行ない必要な物理量を取得するシミュレーションステップを行う(ステップS4ないしS8)。
【0030】
図2において、ステップS4ないしS8から明らかなように、本実施形態では、ゴム材モデル2の変形計算と氷モデル3の変形計算とを個別に行う。そして、ゴム材モデル2の変形計算で得られた該ゴム材モデル2の形状や速度データを氷モデル3の変形計算時の境界条件として与えるとともに(ステップS8)、氷モデル3の変形計算で得られた接触面の形状をゴム材モデル2の変形計算時の境界条件として与える(ステップS7)ものを例示する。いわゆる「連成」である。以下、詳細に説明する。
【0031】
ゴム材モデル2の変形計算の一例は図9に示される。
本例では先ず時間増分△tを経過した後のゴム材モデル2の変形計算を行う(ステップS41)。ゴム材モデル2の変形計算においては、氷モデル3の接触面Saは変位しない壁として取り扱われる。従ってゴム材モデル2の変位は該氷モデル3の接触面Saにより規制される。
【0032】
ゴム材モデル2の変形計算には、本例では有限要素法を採用し、例えば下記式で示される運動方程式が用いられる。この運動方程式からゴム材モデル2の時刻Δtでの加速度、速度、変位などを求めることができる。
【数1】
【0033】
そして、所定時刻が経過したか否かを判断し(ステップS42)、結果が真の場合(ステップS42でY)、処理を終える。ステップS42で偽の場合には、時間増分を加算して再度変形計算を行う(ステップS41)。これにより、各時刻での変位が逐次計算できる。
【0034】
図10には、氷モデル3の変形計算の具体的な処理手順の一例を示す。
氷モデル3の変形計算においては、例えば氷モデル3の各要素に付された要素番号に対応した序数iを1に初期化し(ステップS51)、要素番号iの要素に作用する応力を計算する(ステップS52)。氷モデル3の変形計算には、ゴム材モデル2の形状、速度のデータが参照されて行われる。即ち、図11(A)に示すように、ゴム材モデル2(この例では硬質材モデル2B)の位置を参照し、、このゴム材モデル2を介して垂直力Faが作用する状態で応力計算が行われる。
【0035】
次に、要素番号iの要素について計算された応力が、予め設定された前記破壊応力σaよりも大きいか否かを判断する(ステップS53)。計算された応力が前記破壊応力σaと同等ないしそれよりも小さい場合(ステップS53でN)、前記序数iが最終要素の番号か否かを判断する(ステップS56)。ステップS56で最終要素を示す番号ではないと判断された場合、序数iに1を加算し(ステップS57)、ステップS52以降を繰り返す。また最終要素を示す番号である場合(ステップS56でY)、即ち全ての要素について処理を終えた場合には、指定した時間が経過している場合(ステップS58でY)には氷モデル3の変形計算の処理を終え、図2のステップS6以後を実行する。指定した時間が経過していない場合(ステップS58でN)、ステップS51以降を新たに時間増分を加算して繰り返す。
【0036】
一方、計算された応力が前記破壊応力σaよりも大きいと判断された場合(ステップS53でY)、当該要素番号iの要素を氷モデル3から取り除く(ステップS54)。例えば図11(A)において、硬質材モデル2Bが接触している要素3a1〜3a6について、上記ステップS53の結果がいずれもYと判断された場合、図11(B)に示すように、要素3a1〜3a6は氷モデル3から取り除かれる。これにより要素(氷モデル)の破壊が表現される。
【0037】
次に、氷モデル3の接触面Saの更新を行う(ステップS55)。接触面Saの更新は、取り除かれた要素番号iの要素が無いとした場合の氷モデル3の表面形状を新たに再認識し、このデータをシミュレーション装置1のメモリ等に記憶させることにより行われる。従って、図11(B)の例では、このステップS55により、氷モデル3の接触面Saは、元の水平面を保持した水平面部Sa1と、この水平面部Sa1から1要素分凹んだ凹部Sa2とを含むものとして更新されかつ記憶される。なお以後は、同様にステップS56を繰り返す。
【0038】
次に図2に示すように、ステップS7、S8では、それぞれ別々に独立させて計算されたゴム材モデル2と氷モデル3との変形計算結果から、お互いに必要なデータを受け渡しさせ両モデル2、3の連成を行う。例えば次ループでのゴム材モデル2の変形計算には、図12(A)に示すように、新たに更新された氷モデル3の接触面Saの形状データが境界条件(壁)として与えられる。他方、次ループでの氷モデル3の変形計算には、図12(B)に示すように、ゴム材モデル2の新たに計算された位置や速度などが条件として与えられる。なおこの連成は、同時刻におけるゴム材モデル2、氷モデル3の状態で行われる。図13、図14には、氷モデル3にゴム材モデル2を先ず接触させかつ水平方向に所定の速度でスライドさせたときの氷モデル3の破砕状況の一例を視覚化している。
【0039】
上述のような処理を行うことにより、氷モデル3にはゴム材モデル2の位置の変化に伴う新たな応力を作用させることができ、他方、ゴム材モデル2については、氷モデル3の要素が破砕することによって形成される新たな接触面Saが与えられる。そして、このような計算を微小時間毎に繰り返すことによって、ゴム材モデル2と氷モデル3との間の相互作用を考慮に入れつつ、ゴム材モデル2、氷モデル3の時々刻々と変化する変形状態を連成させて計算しうる。なおこれらの連成処理の計算手順は例えば一般に知られている有限要素法解析プログラム(例えばLS−Dyna(LSTC社製)などを用いて自動計算することができる。
【0040】
またステップS6では、計算終了となる予め指定した時間が経過したかを判断し、ステップS6でYと判断された場合、計算結果を出力し(ステップS9)、処理を終える。ステップS6での計算を終える時間は、実行するシミュレーションに応じ安定した計算結果が得られるよう種々定めることができる。
【0041】
計算結果の出力には種々の情報を含むことができる。例えば、ゴム材モデル2に水平力Fbを与えた場合、そのときに氷モデル3へと伝えられる前後方向力を取り出すことにより、凍結路におけるスタッドレスタイヤの駆動性能(又は制動性能)を評価、改善するのに役立つ。そして、これらの出力結果から、必要なゴム材の材料特性の改良、硬質材の硬度、外径の改良などを行い、さらにはゴム材にサイピングや細溝などを追加してその形状、深さ、厚さなどを種々変化させることにより、好適なシミュレーション結果が得られたゴム材、ひいてはタイヤを実際に試作することができる。これにより、例えば冬用のタイヤ、とりわけ短繊維をゴム部に配合したスタッドレスタイヤの開発期間を大幅に短縮するとともに開発コストを低減できる。
【0042】
またゴム材モデル2にスリップ角を与えて氷モデル3上を走行させた場合、ゴム材モデル2に生じる横力を出力することにより、氷上でのタイヤのコーナリング性能を評価、解析することができる。なお出力する情報は、これらの値に限定されず、必要に応じて種々のものを出力することができる。
【0043】
またゴム材モデル2は、例えば図15に示すように、タイヤ全体を小さな要素Ta、Tb、Tc…でモデル化したタイヤモデルTの一部として構成することもできる。この場合、タイヤの氷路走行時における制・駆動性能や、コーナリング性能を精度良く計算する事ができる点で望ましい。しかしながら、このような方法では、硬質材モデルの短繊維の外径が数十μm と非常に小さいため、要素数が通常の有限要素モデルよりも大となり、また計算ステップもより細かくなるなど非常に多くの計算時間を必要とする。従って、計算時間を考慮すると、上述のようにタイヤのトレッドに含まれるゴムブロックの一部ないし全体を抜き出してたゴム材モデルでシミュレーションを行うことにより、より実用的な解析を行うことができる。
【0044】
図16には本発明の他の実施形態を示す。
この実施形態では、例えば図16(A)に示すように、タイヤモデルTを用いて路面モデルRで転動シミュレーションを行い、接地するトレッドゴムの任意の一要素STaについて、転動時の挙動を調べる。この挙動には、同図(B)に示すように、前記要素STaの転動時の軌跡、各時刻における垂直力fa、水平力fbなどを含む。そして、この挙動を前記ゴム材モデル2の境界条件として与えてシミュレーションを行うことが望ましい。これにより、少ない要素数でタイヤの転動により近づけてシミュレーションを行うことができ、計算時間の大幅な増大を招くことなく氷路でのタイヤの性能をシミュレーションすることができる。
【0045】
図17には、垂直圧力100kPa、水平移動速度55cm/s、硬質材モデル2Bと氷モデル3との摩擦係数を0.05、ゴムモデル2Aと氷モデル3との摩擦係数を0.1としてシミュレーションを行い、氷モデル3からの抗力の大きさを時刻歴として出力したグラフを示す。なおタイプAのゴム材モデルとして、硬質材モデル2Bの最大外径を33μmとしその配設密度は硬質材モデル間距離が320μmとなるように設定した。またタイプBのゴム材モデルとして、硬質材モデル2Bの最大外径を11μmとしその配設密度はタイプAの4倍とした。
【0046】
同じ速度でゴム材モデル2を氷モデル3上を移動させた場合、ゴム材モデル2と氷モデル3との間に働く抗力が大きいものは氷上グリップ力が高いと言える。図17から、硬質材モデル2Bの配設密度は小さいが外径が大きいタイプAの方が氷上グリップ力に優れることが判る。
【0047】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定される訳ではない。例えばゴム材モデル2を固定された氷モデル3の上でスライドさせる際にゴム材モデル2を固定し該ゴム材モデル2と接触している氷モデル3を移動させることもできる。またゴム材モデル2は、硬質材モデル2Bを含まなくても良い。さらにゴム材モデル2は、解析対象をタイヤに限定するものではない。
【0048】
【発明の効果】
上述したように、本発明のシミュレーション方法にあっては、ゴム材を実際に試作しなくとも、氷との接触時の性能を大凡知ることができる。従って氷と接触するゴム部を有する例えばスタッドレスタイヤなどの開発期間、開発コストを低減するのに役立つ。また本発明のシミュレーション方法では、氷モデルの変形計算において、その要素について計算された応力が予め設定された破壊応力よりも大きいときに該要素を取り除いて破壊を表現するステップを含むことにより、実際に生じる氷の破壊現象をシミュレーション上に的確に取り込むことができる。従って、より精度の高い、シミュレーションが可能となる。また請求項3記載の発明のように、氷モデルの変形計算において、破壊された要素を取り除いた後、新たな表面形状を認識するステップを含むときには、この形状の変化がゴム材に及ぼす相互作用をも考慮でき、さらに解析精度を高めうる。
【0049】
また請求項4記載の発明のように、前記ゴム材モデルは、ゴムをモデル化したゴムモデルと、このゴムよりも硬度が大きくかつ該ゴム材から突出する硬質材をモデル化した硬質材モデルとを含むとともに、前記氷モデルの各々の要素を前記硬質材モデルよりも小さく設定したときには、硬質材が氷を貫く貫通孔などをより精度良く解析できる。
【0050】
また請求項5記載の発明のように、前記硬質材モデルは、前記ゴムモデルの表面から略垂直に突出した軸状体をなすときには、スタッドレスタイヤのトレッド面と同様の構成をモデル化するのに特に有効となる。従って、スタッドレスタイヤの氷上走行性能の解析に役立つ。
【0051】
また請求項7記載の発明のように、前記ゴム材モデルは、タイヤのトレッドゴムの転動時の挙動に合わせて移動しつつ前記氷モデルと接触する境界条件が与えられたときには、ゴム材モデルをタイヤの挙動と同様の条件で氷モデルに接触させることができるため、スタッドレスタイヤの氷上走行性能の解析に役立つ。またタイヤ全体をモデル化する必要がないため、モデルの作成時間や計算時間の短縮化にも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシミュレーション方法を実施するためのコンピュータ装置の構成図である。
【図2】本発明のシミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明のゴム材モデルの斜視図である。
【図4】その要部拡大図である。
【図5】タイヤのトレッドのゴムブロックの断面図である。
【図6】(A)は氷モデルの一例を示す斜視図、(B)はその一部拡大図である。
【図7】氷モデルの要素の応力と体積との関係を示すグラフである。
【図8】氷モデルと硬質材モデルとの接触を説明するための線図である。
【図9】ゴム材モデルの変形計算の一例を示すフローチャートである。
【図10】氷モデルの変形計算の一例を示すフローチャートである。
【図11】(A)、(B)は氷モデルと硬質材モデルとの接触を説明するための線図である。
【図12】(A)、(B)は氷モデルと硬質材モデルとの接触を説明するための線図である。
【図13】氷モデルのシミュレーションを視覚化して示す線図図である。
【図14】氷モデルのシミュレーションを視覚化して示す線図図である。
【図15】タイヤモデルの一例を示す斜視図である。
【図16】(A)は本発明の他の実施形態を示す他意やモデルの転動状態を示す線図、(B)はその一要素の軌跡を示す線図である。
【図17】シミュレーションから得た抗力の時刻歴を示すグラフである。
【図18】(A)、(B)は実施例に用いた硬質材モデルの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 シミュレーション装置
2 ゴム材モデル
2A ゴムモデル
2B 硬質材モデル
3 氷モデル
Claims (7)
- ゴム材を数値解析が可能な複数個の要素を用いてモデル化したゴム材モデルを設定するステップと、
氷を数値解析が可能な複数個の要素を用いてモデル化した氷モデルを設定するステップと、
前記ゴム材モデルと氷モデルとを予め定めた境界条件で接触させ各々の変形計算を行ない必要な物理量を取得するシミュレーションステップとを含むとともに、
前記氷モデルの変形計算は、該氷モデルの各要素について、破壊の有無を判定する処理と、破壊と判定されたときに該要素を取り除いて要素の破壊を表現する処理とを含むことを特徴とするゴム材と氷との接触シミュレーション方法。 - 前記破壊の有無を判定する処理は、前記氷モデルの要素に作用する主応力、主ひずみ、せん断応力、ミーゼス応力又はひずみエネルギーの値を予め定めた値と比較することにより行われることを特徴とする請求項1記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法。
- 前記氷モデルの変形計算は、破壊された要素を取り除いた後に新たな表面形状を認識するステップを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法。
- 前記ゴム材モデルは、ゴム部分をモデル化したゴムモデルと、このゴム部分よりも硬度が大きくかつ該ゴム部分から突出し前記氷モデルに接触する硬質材をモデル化した硬質材モデルとを含むとともに、
前記氷モデルの各々の要素が、前記硬質材モデルよりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法。 - 前記硬質材モデルは、前記ゴムモデルの表面から略垂直に突出した軸状体をなすことを特徴とする請求項4記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法。
- 前記軸状体が6ないし8角形状であることを特徴とする請求項5記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法。
- 前記ゴム材モデルは、タイヤのトレッドゴムの転動時の挙動に合わせて移動しつつ前記氷モデルと接触する境界条件が与えられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のゴム材と氷との接触シミュレーション方法。
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JP2008158910A (ja) * | 2006-12-26 | 2008-07-10 | Central Glass Co Ltd | ガラス板の曲げ成形難易度判定方法 |
JP2008242666A (ja) * | 2007-03-26 | 2008-10-09 | Kanazawa Univ | シミュレーション装置、及びシミュレーション方法 |
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-
2002
- 2002-06-24 JP JP2002183217A patent/JP2004025963A/ja active Pending
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