JP2004017758A - シフト制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】同期機構の耐久性を低下させることなく変速時間を短くし、変速期間について運転者に違和感を抱かせないようにする。
【解決手段】シフト制御装置のシフトレバー49は、シフト要求領域と、中立位置を含むニュートラル領域とを有する操作領域内で操作される。ストロークセンサ52はシフトレバー49の操作位置を検出する。ECU(電子制御装置)57はシフトレバー49が、中立位置からニュートラル領域内のシフト要求領域寄りの所定位置へ操作されたことがストロークセンサ52によって検出されると、変速機用アクチュエータ38により、変速機15内の変速用ハブスリーブを同期機構が作動する直前の位置へ移動させて待機させる。そして、シフトレバー49が所定位置からシフト要求領域へ操作されたことが検出されると、ハブスリーブをさらに移動させ、同期機構を通じて変速機15をシフトダウンさせる。
【選択図】 図1
【解決手段】シフト制御装置のシフトレバー49は、シフト要求領域と、中立位置を含むニュートラル領域とを有する操作領域内で操作される。ストロークセンサ52はシフトレバー49の操作位置を検出する。ECU(電子制御装置)57はシフトレバー49が、中立位置からニュートラル領域内のシフト要求領域寄りの所定位置へ操作されたことがストロークセンサ52によって検出されると、変速機用アクチュエータ38により、変速機15内の変速用ハブスリーブを同期機構が作動する直前の位置へ移動させて待機させる。そして、シフトレバー49が所定位置からシフト要求領域へ操作されたことが検出されると、ハブスリーブをさらに移動させ、同期機構を通じて変速機15をシフトダウンさせる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シフトレバー等のシフト操作部材の操作位置を検出し、その検出結果に基づき変速機用アクチュエータを駆動制御することにより、変速機の変速段を切替えるようにしたシフト制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
手動変速機の変速動作を自動化した、シーケンシャルマニュアルトランスミッション(順次変速手動変速機)と呼ばれる技術が知られている。この技術では、運転席の近傍にシフト装置が設けられている。シフト装置は、中立位置を基準とし、その両側の操作領域(シフトアップ要求領域及びシフトダウン要求領域)で操作されるシフトレバーを備えている。
【0003】
一方、前記変速機が選択歯車式変速機と呼ばれるタイプの場合、その変速機には複数対の変速ギヤ列(変速段)と複数個の変速用スリーブとが設けられている。また、変速用スリーブを移動させて変速段を切替えるために変速機用アクチュエータが設けられている。そして、シフト装置において、シフトレバーが中立位置からシフトダウン要求領域へ操作されると、変速機では変速用スリーブが変速機用アクチュエータによって移動されてギヤが噛合う。この噛合いにより、変速段が変速比の大きな低速段側へ1段変速(シフトダウン)される。これとは逆に、シフトレバーが中立位置からシフトアップ要求領域へ操作されると、変速用スリーブが変速機用アクチュエータによって前記シフトダウン時とは逆方向へ移動されてギヤ同士が噛合う。この噛合いにより、変速段が変速比の小さな高速側へ1段変速(シフトアップ)される。このように中立位置と基準として、シフトレバーがシフトダウン要求領域又はシフトアップ要求領域へ操作されると、変速機の複数の前進変速段がシフトアップ又はシフトダウンされる。
【0004】
また、前記変速機が同期機構を備えるタイプの場合、変速用スリーブによってギヤ同士が噛合わされる際、シンクロナイザリングとの摩擦力によって両ギヤの回転速度が近づけられる(同期される)。この同期によりギヤの噛合いが容易になる。
【0005】
そして、前記同期機構を備えた選択歯車式変速機にあっては、変速を行う場合、運転者はクラッチを操作してエンジン及び変速機間での動力伝達を切断する。この状態で、シフトレバーを中立位置からシフトダウン要求領域又はシフトアップ要求領域へ操作する。この操作に応じ、変速機では、変速機用アクチュエータによって変速用スリーブが移動させられ、それまで噛合っていたギヤから外れる。続いて、シンクロナイザリングの摩擦力によって変速機の入力側ギヤの周速度が上昇させられる。そして、入力側ギヤの周速度が出力側ギヤの周速度に略一致(同期)された状態で、変速用スリーブが出力側ギヤに噛合わされる。その後に運転者がクラッチを操作してエンジン及び変速機を接続すると、変速が終了し、エンジン及び変速機間での動力伝達が可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記同期機構を有する選択歯車式変速機においては、入力軸について変速前の回転速度と変速後の回転速度との差が比較的大きな状況下での変速、例えば1速、2速等への変速(シフトダウン)の際、運転者により変速要求が出されてから変速が終了するまでに比較的時間がかかる。これに対しては、シンクロナイザリングの摩擦力を利用した回転の同期時間が前記変速時間の多くを占めることから、この同期時間を短くすることが有効である。そして、その対策として、シンクロナイザリングを高い荷重でギヤ側へ押して摩擦力を増大させ同期時間を短縮することが考えられるが、反面、シンクロナイザリングを含む同期機構の構成部品等が摩耗する等して、耐久性が低下するおそれがある。
【0007】
また、同期機構の作動中には、通常、運転者による操作が行われない。しかも、この作動中には変速が終了していないことから、運転者が車両の駆動力を感ずることもない。従って、この同期機構の作動期間は運転者にとって、何ら操作をせずに待っている期間(待ち期間)となる。その結果、運転者は変速時間が長いと感じ、違和感を抱くおそれがある。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、同期機構の耐久性を低下させることなく変速時間を短くし、変速期間について運転者に違和感を抱かせないようにすることのできるシフト制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明では、同期機構を有する変速機と、クラッチ操作部材の操作状態に応じてエンジンから前記変速機への動力伝達を断続するクラッチとを備えた乗物に用いられるものであって、シフト要求領域と中立位置を含むニュートラル領域とを有する操作領域内で操作されるシフト操作部材と、前記シフト操作部材の操作位置を検出する検出手段と、前記シフト操作部材が、前記中立位置から前記ニュートラル領域内の前記シフト要求領域寄りの所定位置へ操作されたことが前記検出手段により検出されると、変速機用アクチュエータにより変速用可動部材を前記同期機構が作動する直前の位置へ移動させて待機させる待機手段と、前記シフト操作部材が前記シフト要求領域へ操作されたことが前記検出手段により検出されると、前記待機手段により待機されている前記変速用可動部材を前記変速機用アクチュエータによりさらに移動させ、前記同期機構を通じて前記変速機を変速させるシフト制御手段とを備えるものとする。
【0010】
上記の構成によれば、変速機の変速に際し、運転者がシフト操作部材を中立位置からシフト要求領域側へ操作する。この操作によりシフト操作部材が所定位置を通過すると、そのことが検出手段によって検出され、待機手段によって変速機用アクチュエータが駆動制御される。この制御により、変速用可動部材は、同期機構が作動する直前の位置へ移動させられる。変速用可動部材は、運転者の操作によりシフト操作部材がニュートラル領域からシフト要求領域へ移るまで、この位置に待機される。そして、シフト操作部材がシフト要求領域へ操作されたことが検出手段によって検出されると、待機している変速用可動部材が変速機用アクチュエータによってさらに移動させられる。この変速用可動部材の移動にともない同期機構を通じて変速機が作動され、現状とは異なる変速段に変速される。
【0011】
このように、シフト操作部材が所定位置へ操作された後、ニュートラル領域からシフトダウン要求領域へ移るまでの期間、変速機では変速用可動部材が、同期機構の作動する直前の位置に待機される。この期間には変速機はニュートラル状態、すなわち入力軸から出力軸への動力伝達が遮断された状態となる。そのため、運転者がこの期間において、1回の変速にクラッチ操作部材の断続操作を2度行う、いわゆるダブルクラッチ操作を行うことが可能となる。
【0012】
このダブルクラッチ操作に際しては、運転者は、クラッチを切断操作してエンジンから変速機への動力伝達を遮断する。シフト操作部材を中立位置から所定位置へ操作し、その位置又はその近傍で一旦止める。続いて、クラッチを接続操作して、エンジンから変速機への動力を伝達させる。アクセルペダル等のアクセル操作部材を操作して、エンジンの回転速度を上昇させ、出力側ギヤの回転を上げて変速用可動部材と出力側ギヤの各周速度を近づける。そして、クラッチを切断操作してエンジンから変速機への動力伝達を遮断する。その後、シフト操作部材をシフト要求領域へ操作して変速機を所望の変速段に変速させるとともに、クラッチを接続操作してエンジンから変速機へ動力を伝達する。
【0013】
従って、ダブルクラッチ操作により、出力側ギヤの周速度が変速用可動部材の周速度に近づけられる分、両周速度を同期させるために同期機構が作動する量(仕事量)が少なくなる。そのため、同期機構についてシンクロナイザリングを高い荷重で押して摩擦力を増大させなくても変速時間を短くすることが可能となり、同期機構の摩耗等に起因する耐久性低下を抑えることができる。
【0014】
さらに、運転者による変速要求から変速が終了するまでの期間(変速期間)の一部は、運転者によるダブルクラッチ操作の期間によって占められる。その分、前記変速期間のうち、運転者が何ら操作をせずに待っている期間(待ち期間)が短くなる。その結果、この待ち期間が長いことに起因する違和感を運転者に抱かせないようにすることが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記シフト要求領域は、前記ニュートラル領域を挟んで互いに対向するシフトアップ要求領域及びシフトダウン要求領域からなり、前記所定位置は、前記ニュートラル領域内の前記シフトダウン要求領域寄りの箇所に設定されており、前記シフト制御手段は、前記シフト操作部材が前記シフトダウン要求領域へ操作されたことが前記検出手段により検出されると、前記待機手段により待機されている前記変速用可動部材を前記変速機用アクチュエータによりさらに移動させ、前記同期機構を通じて前記変速機をシフトダウンさせるシフトダウン制御手段を含むものとする。
【0016】
上記の構成によれば、運転者の操作によりシフト操作部材が所定位置を通過したことが検出手段によって検出されると、待機手段による変速機用アクチュエータの駆動制御を通じ、変速用可動部材は、同期機構が作動する直前の位置へ移動させられる。この待機は、シフト操作部材がニュートラル領域からシフトダウン要求領域へ移るまで継続される。そして、運転者によってシフト操作部材がシフトダウン要求領域へ操作されたことが検出手段によって検出されると、シフトダウン制御手段では、待機している変速用可動部材が変速機用アクチュエータによってさらに移動させられる。この変速用可動部材の移動にともない同期機構を通じて変速機がシフトダウンされる。
【0017】
このように、シフト操作部材が所定位置へ操作された後、シフトダウン要求領域へ操作されるまでの期間、変速機では変速用可動部材が、同期機構の作動する直前の位置に待機される。この期間には変速機がニュートラル状態となるため、運転者がダブルクラッチ操作を行うことにより、変速段がそれまでよりも低い変速段に切替えられる(シフトダウンされる)。
【0018】
従って、シフトダウン時にダブルクラッチ操作を行うことにより、同期機構の仕事量を少なくして、同期機構の構成部品等の耐久性低下を抑えることができる。また、シフトダウンに際し、運転者が何ら操作をせずに待っている期間を短くして、違和感を運転者に抱かせないようにすることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記シフト操作部材が前記中立位置から前記シフトアップ要求領域側へ操作されて、そのシフト操作部材が前記ニュートラル領域を越えたことが前記検出手段により検出されると、前記変速用可動部材を、前記同期機構が作動する直前の位置で待機させることなく前記変速機用アクチュエータにより移動させ、前記同期機構を通じて前記変速機をシフトアップさせるシフトアップ制御手段をさらに備えるものとする。
【0020】
上記の構成によれば、運転者によるシフト操作部材のシフトアップ要求領域側への操作により、そのシフト操作部材がニュートラル領域を越えると、そのことが検出手段によって検出される。この検出に応じ、シフトアップ制御手段は変速機用アクチュエータを駆動制御し、変速用可動部材を同期機構が作動する直前の位置で待機させることなく移動させる。この移動にともない同期機構を通じて変速機が現状の変速段よりも上の変速段に変速(シフトアップ)される。従って、ダブルクラッチ操作をさほど必要としないシフトアップ時には、シフト操作部材のシフトアップ要求領域への操作に応じ、変速用可動部材を一気に移動させて所望の変速段に変速させることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記シフトアップ制御手段は、前記シフト操作部材が前記所定位置へ操作された後に、前記シフトダウン要求領域まで操作されることなく前記シフトアップ要求領域へ操作されたことが前記検出手段により検出されると、前記シフト操作部材が前記シフトダウン要求領域側へ操作される前の変速段に戻すものとする。
【0022】
上記の構成によれば、運転者が、シフトダウンのためにシフト操作部材を所定位置へ操作した後に、状況が変化した場合や、ダブルクラッチ操作による回転合せがうまくできない場合も起り得る。この場合、運転者がシフト操作部材をシフトダウン要求領域まで操作することなくシフトアップ要求領域へ操作すると、変速機の変速段はシフトアップ制御手段により、シフト操作部材がシフトダウン要求領域側へ操作される前の変速段に戻される。従って、前記のように状況が変化した場合に変速機がシフトダウンされるのを防ぎ、運転者の要求に合った変速段にすることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明では、請求項2〜4のいずれか1つに記載の発明において、前記ニュートラル領域について、前記中立位置から前記シフトダウン要求領域側の端までは、同中立位置から前記シフトアップ要求領域側の端までよりも長く設定されているものとする。
【0024】
上記の構成によれば、ニュートラル領域において、中立位置からシフトダウン要求領域側の端までの方がシフトアップ要求領域側の端までよりも長いため、所定位置を容易に設定することができる。これにともない、変速用可動部材を同期機構が作動する直前の位置に確実に待機させることが可能となり、ダブルクラッチ操作がしやすくなる。また、中立位置からシフトアップ要求領域側の端までが短いことから、シフト操作部材をシフトアップ要求領域側へ短い距離操作するだけで変速機をシフトアップさせることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を車両用のシフト制御装置に具体化した一実施形態について、図面に従って説明する。
【0026】
図1に示すように、車両10には動力源としてエンジン11が搭載されている。エンジン11の出力軸であるクランク軸12には、フライホイール13が一体回転可能に取付けられている。フライホイール13には、クラッチ14を介して変速機15が接続されている。クラッチ14は、クランク軸12の回転を変速機15に伝達したり、その回転伝達を遮断したりするためのものである。
【0027】
クラッチ14としては、例えば、図2に示す周知の乾式単板式摩擦クラッチを用いることができる。このタイプのクラッチ14の構成について説明すると、フライホイール13にはクラッチカバー16が一体回転可能に取付けられている。一方、変速機15の入力軸17にはクラッチディスク18が軸方向(図2の左右方向)へのスライド可能にスプライン結合されている。
【0028】
クラッチディスク18とクラッチカバー16との間にはプレッシャプレート19が配置されている。プレッシャプレート19は、ダイヤフラムスプリング21の外端部によってフライホイール13側へ押付けられている。この押付けにより、プレッシャプレート19とクラッチディスク18との間、及びクラッチディスク18とフライホイール13との間でそれぞれ摩擦力が発生する。これらの摩擦力により、クラッチ14がいわゆる接続(継合)された状態となり、プレッシャプレート19、クラッチディスク18及びフライホイール13が一体となって回転する。このようにして、エンジン11から変速機15への動力伝達が行われる。
【0029】
前記動力伝達の程度を調整したり、動力伝達を遮断したりする機構として、入力軸17にはレリーズベアリング22が軸方向へのスライド可能に装着されている。また、レリーズベアリング22の近傍にはレリーズフォーク23が軸24により回動可能に支持されており、その一端部(図2の下端部)がレリーズベアリング22に当接している。レリーズフォーク23の他端部(図2の上端部)には、ロッド27及びピストン26を介してレリーズシリンダ25が連結されている。レリーズシリンダ25には、リニアソレノイドバルブを介してオイルポンプ(図示略)が接続されている。そして、これらのレリーズシリンダ25、リニアソレノイドバルブ、オイルポンプ等によってクラッチ用アクチュエータ28が構成されている。
【0030】
前記クラッチ用アクチュエータ28では、オイルポンプによって作動油がレリーズシリンダ25に供給される。また、リニアソレノイドバルブの開度調整によりレリーズシリンダ25のピストン26に作用する油圧が調整される。この油圧調整によりピストン26及びロッド27が図2中右方へ移動すると、レリーズフォーク23が時計周り方向へ回動させられる。レリーズベアリング22がフライホイール13側へ押され、ダイヤフラムスプリング21の内端部が同方向へ弾性変形する。その結果、ダイヤフラムスプリング21のプレッシャプレート19を押付ける力が弱まり、上記摩擦力が減少する。このように、レリーズシリンダ25におけるピストン26の移動量に応じて上記摩擦力が変化する。
【0031】
変速機15は、車両10の走行状態に応じてエンジン11の回転速度及びトルクを変換して駆動輪に伝える装置である。本実施形態での変速機15は、一般に選択歯車式変速機と呼ばれる手動変速機と同様の構成をなしており、同期機構39を有している。図3は、変速機15の内部構造の一部を示している。変速機15は、前記入力軸17のほかに出力軸31を備えている。出力軸31はドライブシャフト、ディファレンシャルギヤ、車軸等を介して駆動輪に接続されており、出力軸31の回転がこれら各部材を通じて駆動輪に伝達される。
【0032】
変速機15では、入力軸17及び出力軸31が同一直線上に配置されている。入力軸17にはギヤ(メインドライブギヤとも呼ばれる)32が一体に設けられている。また、出力軸31上には歯数の異なる複数のギヤ(スピードギヤとも呼ばれる)33が回転自在に設けられている。また、複数のギヤ35を有するカウンタギヤ34が、入力軸17及び出力軸31に平行に配置されている。そして、カウンタギヤ34のギヤ35が、ギヤ32,33のうち対応するものに噛合っている。
【0033】
出力軸31上には、複数のクラッチハブ36がスプライン結合されている。各クラッチハブ36の外周には、変速用可動部材として、ハブスリーブ37が軸方向への摺動可能にスプライン結合されている。そして、ハブスリーブ37がいずれのギヤ32,33にも噛合っていない場合には、各ギヤ33が出力軸31上を空転し、入力軸17から出力軸31への動力伝達が遮断される。すなわち、変速機15はニュートラル状態となる。
【0034】
これに対し、ハブスリーブ37が軸方向へ移動していずれかのギヤ32,33に噛合うと、エンジン11の回転が入力軸17、カウンタギヤ34、ギヤ32,33、ハブスリーブ37、クラッチハブ36等を介して出力軸31に伝達される。そして、ハブスリーブ37を異なるギヤ32,33に噛合わせることで、動力伝達に関わるギヤ32〜34の組合わせが切替えられる。このギヤ32〜34の組合わせについて、変速比の大きいものから順に1速、2速、3速、…と呼ばれる。
【0035】
変速機15においてハブスリーブ37を軸方向に移動させるために、前記クラッチ用アクチュエータ28のレリーズシリンダ25と同様に、シリンダ(シフトシリンダ、セレクトシリンダ)、バルブ、オイルポンプ等からなる変速機用アクチュエータ38が設けられている(図1参照)。なお、このオイルポンプとしては、前述したレリーズシリンダ25にオイルを供給するオイルポンプを共用することができる。
【0036】
図4は同期機構39の概略を示している。同期機構39は、ハブスリーブ37とギヤ32,33の各周速度を一致させる機構であり、前述したクラッチハブ36、ハブスリーブ37のほかにシンクロナイザリング41、シフティングキー42等を主要な構成部品としている。シンクロナイザリング41は出力軸31上のギヤ32,33のコーン(円錐)部43に軸方向へのスライド可能に被せられている。シフティングキー42は、クラッチハブ36外周の溝に係合されていて、スプリング44によってハブスリーブ37に押付けられている。
【0037】
上記構成の同期機構39では、変速機用アクチュエータ38がハブスリーブ37を例えば図4の左方向へ移動させると、ハブスリーブ37とシフティングキー42とが突起の部分で係合していることから、ハブスリーブ37に加えられた力はシフティングキー42に伝わる。シフティングキー42がシンクロナイザリング41をコーン部43に押付ける(図4の状態)。この押付けにより、コーン部43とシンクロナイザリング41との間に摩擦力が生じて、ギヤ32,33の回転が上昇し始める。ハブスリーブ37がさらに移動すると、そのハブスリーブ37とシフティングキー42との係合が外れる。そして、ハブスリーブ37内周のスプラインがシンクロナイザリング41の歯に当って、同リング41が強い力でコーン部43に押付けられ、強い同期(シンクロ)作用が働く。最終的には、ギヤ32,33の周速度がハブスリーブ37の周速度に一致して、それら両者が噛合い、ギヤ32,33が出力軸31に相対回転不能に係止される。このようにして入力軸17と出力軸31とが駆動連結される。
【0038】
図1に示すように、運転席の近傍には、クラッチ14を断続する際に運転者によって操作されるクラッチ操作部材が設けられている。ここでは、クラッチ操作部材として、運転者によって踏込み操作されるクラッチペダル45が、軸46により回動可能に支持されている。クラッチペダル45は、前記レリーズシリンダ25に対し機械的に接続されていない。クラッチペダル45の近傍には、その操作荷重(クラッチ踏力)を調整するための操作荷重調整装置47が設けられている。
【0039】
また、運転席の近傍にはシフト装置48が組付けられている。シフト装置48には、シフト操作部材として、シフトレバー49がシフトゲート(図示略)に沿って変位可能に設けられている。図5は、シフトゲートのうち、複数の前進変速段について変速される際に、運転者によってシフトレバー49が操作される領域(操作領域)を概念的に示している。
【0040】
この操作領域は、所定位置P2と所定位置P3とによって挟まれたニュートラル領域RNと、そのニュートラル領域RNの両側に互いに対向して設けられたシフト要求領域(シフトダウン要求領域RD及びシフトアップ要求領域RU)とを有する。ニュートラル領域RNは中立位置Pnを含んでいる。この中立位置Pnと所定位置P2とは距離b離れ、中立位置Pnと所定位置P3とは距離c離れている。シフトアップ要求領域RUは、変速機15のシフトアップに際しシフトレバー49が操作される領域であり、シフトダウン要求領域RDは、シフトダウンに際しシフトレバー49が操作される領域である。
【0041】
なお、シフトゲートには、図示はしないが前記操作領域以外にもリバース(R)位置、ニュートラル(N)位置等の変速位置も設定されている。ニュートラル位置は、変速機15における入力軸17と出力軸31との連結を遮断するために選択される位置である。リバース位置は、車両10を後退させるために選択される位置である。さらに、シフト装置48には、シフトアップ要求領域RU側又はシフトダウン要求領域RD側へ操作されたシフトレバー49を中立位置Pnに復帰させるための復帰機構(図示略)が設けられている。
【0042】
図1に示すように、車両10には、その状態を検出するために各種のセンサが用いられている。例えば、クラッチペダル45の近傍には、その操作状態を検出する手段としてストロークセンサ51が設けられている。ここでの操作状態は、クラッチペダル45の操作量、すなわち踏込み量(ペダルストローク)である。また、シフト装置48には、シフトレバー49の操作位置を検出する手段(検出手段)として、中立位置Pnを基準としたシフトレバー49の移動距離(ストローク量)を検出するストロークセンサ52が設けられている。
【0043】
変速機15には、変速に関わるハブスリーブ37,及びそのハブスリーブ37の移動方向をそれぞれ検出する2つのストロークセンサ53,54が設けられている。これらのセンサ53,54の検出値は、例えばそのときに採られている実際の変速段を特定(検出)するために用いられる。そのほかにも、車両10の走行速度(車速)を検出する車速センサ55、エンジン11の回転速度を検出する回転速度センサ56等が設けられている。なお、これらは一例にすぎず、他のセンサが用いられてもよい。
【0044】
さらに、車両10には電子制御装置(以下「ECU」という)57が設けられている。ECU57は、クラッチ用アクチュエータ28の制御を通じてクラッチ14の断続を制御する手段として用いられている。また、ECU57は、変速機用アクチュエータ38の制御を通じて変速機15の変速を制御する手段として用いられている。ECU57はマイクロコンピュータを中心として構成されており、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、制御マップ等に従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。
【0045】
例えば、ECU57はクラッチ14の断続制御に際し、ROMに記憶されている複数のクラッチ特性マップから、車両10の状況に関する所定の状態量に最も適したものを1つ選択する。続いて、選択したクラッチ特性マップを参照し、ストロークセンサ51によって検出されたそのときのペダルストロークに対するクラッチ用アクチュエータ28の目標ストロークを算出する。そして、この目標ストロークに従ってクラッチ用アクチュエータ28を制御する。このように、ストロークセンサ51によって検出されたペダルストロークに基づきクラッチ用アクチュエータ28が制御される。この制御にともない作動するクラッチ用アクチュエータ28によって、クラッチ14が接続(継合)又は切断され、エンジン11から変速機15へ動力が伝達又は遮断される。
【0046】
次に、ECU57による変速機15の変速制御について説明する。図6のフローチャートは、要求変速段、変速許可フラグ等、変速制御に必要な各種条件を設定するための条件設定ルーチンを示している。
【0047】
変速許可フラグは、ハブスリーブ37による変速を許可するか又は禁止するかを判定するためのものである。変速許可フラグは、変速を許可する場合に「1」に設定される。本実施形態では、シフトレバー49がニュートラル領域RNから外れてシフトアップ要求領域RU又はシフトダウン要求領域RDに移行する際に変速許可フラグが「1」に設定される。そして、変速許可フラグは変速が終了するまで「1」に保持される。前述した以外の期間では、エンジン11の始動時を含めて変速許可フラグは「0」に設定される。
【0048】
また、図7のフローチャートは、前記要求変速段、変速許可フラグ等に基づいて変速機用アクチュエータ38を駆動制御するための変速実行ルーチンを示している。
【0049】
図6の条件設定ルーチンでは、ECU57はまずステップ110において、シフトレバー49の操作方向と操作量とに基づき、運転者のシフトダウン要求の有無を判定する。具体的には、ストロークセンサ52の検出値の変化に基づき、シフトレバー49がシフトダウン要求領域RD側へ操作されたかどうかを判定する。また、ストロークセンサ52の検出値に基づきシフトレバー49が所定位置P1よりもシフトダウン要求領域RD側へ操作されたかどうかを判定する。ここで、所定位置P1は、図5に示すようにニュートラル領域RN内において、中立位置Pnからシフトダウン要求領域RD側へ距離a離れた位置である。そして、この判定条件が満たされるまでステップ110の処理を繰返す。
【0050】
前記ステップ110の判定条件が満たされると、シフトダウン要求があることから、次のステップ120において、ストロークセンサ53,54によって検出された現在の変速段よりも所定段(例えば1段)下の変速段を要求変速段として設定する。
【0051】
次に、ステップ130において、シフトレバー49の操作方向と操作量とに基づき、前記シフトダウン要求の後にその要求を取消すためのシフト操作が運転者によってなされたかどうかを判定する。具体的には、ストロークセンサ52の検出値の変化に基づき、シフトレバー49がシフトアップ要求領域RU側へ操作されたかどうかを判定する。また、ストロークセンサ52の検出値に基づきシフトレバー49が所定位置P2よりもシフトアップ要求領域RU側へ操作されたかどうか、すなわちシフトレバー49がニュートラル領域RNからシフトアップ要求領域RUへ移ったかどうかを判定する。
【0052】
前記ステップ130の判定条件が満たされているとステップ150へ移行し、満たされていないとステップ140へ移行する。ステップ150では、前記ステップ120で設定される前の変速段(元の変速段)を要求変速段として設定する。そして、この設定処理を経た後、ステップ160へ移行する。
【0053】
一方、ステップ140では、シフトレバー49の操作方向と操作量とに基づき、所定位置P1まで又は越えて操作されたシフトレバー49がさらにシフトダウン要求領域RD側へ操作されたかどうかを判定する。具体的には、ストロークセンサ52の検出値の変化に基づき、シフトレバー49がシフトダウン要求領域RD側へ操作されたかどうかを判定する。また、ストロークセンサ52の検出値に基づきシフトレバー49が所定位置P3よりもシフトダウン要求領域RD側へ操作されたかどうか、すなわちシフトレバー49がニュートラル領域RNからシフトダウン要求領域RDへ移ったかどうかを判定する。そして、前記ステップ140の判定条件が満たされていないと前記ステップ130へ戻り、満たされていると次のステップ160へ移行する。
【0054】
前記ステップ140又は150から移行したステップ160では、ハブスリーブ37による変速を許可すべく変速許可フラグを「1」に切替える。この切替えにより、ハブスリーブ37の移動にともなう変速機15のシフトダウン又はシフトアップが可能となる。次に、ステップ170において、変速が終了したかどうかを判定する。例えば、ストロークセンサ53,54によって検出される現在の変速段が、前記ステップ120又は150で設定された要求変速段と同じであるかどうかを判定する。この判定条件が満たされるまでステップ170の処理を繰返す。そして、ステップ170の判定条件が満たされると、ステップ180においてハブスリーブ37による変速を禁止すべく変速許可フラグを「0」に切替えて、条件設定ルーチンを一旦終了する。
【0055】
次に、図7の変速実行ルーチンが開始されると、ECU57はまずステップ210において、前記条件設定ルーチンのステップ120又は150で設定された要求変速段が、ストロークセンサ53,54によって検出された現状の変速段と異なるかどうかを判定する。この判定条件が満たされていないと、すなわち両変速段が一致しているとステップ210の処理を繰返し、満たされていると、ステップ220へ移行する。ステップ220では、変速機用アクチュエータ38を駆動制御することにより、ハブスリーブ37を同期機構39が作動する直前の位置まで移動させる。
【0056】
そして、ステップ230において、前述した条件設定ルーチンで設定された変速許可フラグが「1」であるか否かを判定する。この判定条件が満たされるまでステップ230の処理を繰返す。そして、ステップ230の判定条件が満たされると、ハブスリーブ37による変速が許可されていることから、ステップ240において、ハブスリーブ37をさらに移動させてギヤ32,33に噛合わせる。この噛合わせによりギヤ32,33が出力軸31に一体回転可能に係止され、入力軸17及び出力軸31が、ギヤ32,33、カウンタギヤ34、同期機構39、ハブスリーブ37、クラッチハブ36等を介して駆動連結される。ステップ240の処理を経た後、変速実行ルーチンを一旦終了する。
【0057】
上述した条件設定ルーチン及び変速実行ルーチンにおいて、ECU57によるステップ110,120,220,230の処理等が待機手段に相当する。また、ステップ140,160,230,240の処理等が、シフトダウン制御手段を含むシフト制御手段に相当する。また、ステップ130,150の処理等がシフトアップ制御手段に相当する。
【0058】
そして、 これら両ルーチンに従うと、例えば変速機15のシフトダウンが次のように行われる。
運転者の操作により、シフトレバー49が所定位置P1及びP2間にある場合、条件設定ルーチンではステップ110の処理が繰返され、変速実行ルーチンではステップ210の処理が繰返される。ハブスリーブ37は移動せず、変速段は現状のままである。また、シフトレバー49が所定位置P1と所定位置P3との間にある場合、条件設定ルーチンでは、ステップ110→120→130→140→130→140→…の順に処理が行われる。この一連の処理により、現在よりも下の変速段が要求変速段として設定される。このとき、変速許可フラグは「0」である。一方、変速実行ルーチンでは、ステップ210→220→230の順に処理が行われる。この一連の処理により、変速機用アクチュエータ38が駆動制御され、ハブスリーブ37が、同期機構39の作動する直前の位置へ移動させられる。ハブスリーブ37は、運転者がシフトレバー49をシフトダウン要求領域RDへ操作して変速許可フラグが「1」に切替えられるまで、前記の位置に待機させられる。そして、運転者によりシフトレバー49がシフトダウン要求領域RDへ操作されると、条件設定ルーチンでは、ステップ140→160の処理が行われ、変速許可フラグが「1」に切替えられる。この切替えに応じ、変速実行ルーチンでは、ステップ230→240→リターンの順に処理が行われる。これらの一連の処理により、待機していたハブスリーブ37が変速機用アクチュエータ38によってさらに移動させられ、同期機構39を通じて変速機15がシフトダウンされる。
【0059】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)シフトレバー49が所定位置P1へ操作された後、ニュートラル領域RNからシフトダウン要求領域RDへ移るまでの期間、変速機15ではハブスリーブ37が、同期機構39の作動する直前の位置に待機される。この期間には変速機15がニュートラル状態となるため、運転者は、1回の変速にクラッチペダル45の切断操作を2度行う、いわゆるダブルクラッチ操作を行うことが可能となる。
【0060】
このダブルクラッチ操作に際しては、運転者はクラッチペダル45の踏込み操作によりクラッチ14を切断して、エンジン11から変速機15への動力伝達を遮断する。シフトレバー49を中立位置Pnから所定位置P1へ操作し、その位置又はその近傍で一旦止める。クラッチ14を接続操作して、エンジン11から変速機15へ動力を伝達させる。アクセルペダルを踏込み操作して、エンジン回転速度を上昇させ、変速機15の入力軸17の回転速度を上げてギヤ32,33の周速度をハブスリーブ37の周速度に近づける。そして、クラッチ14を切断操作してエンジン11から変速機15への動力伝達を遮断する。その後、シフトレバー49をシフトダウン要求領域RDへ操作するとともに、クラッチ14を接続操作してエンジン11から変速機15へ動力を伝達する。このように、ダブルクラッチ操作により、変速段をそれまでよりも1段下の変速段に切替える(シフトダウンする)ことができる。
【0061】
(2)前述したダブルクラッチ操作により、ギヤ32,33の周速度がハブスリーブ37の周速度に近づけられる分、両周速度を同期させるために同期機構39が作動する量(仕事量)が少なくなる。そのため、シンクロナイザリング41を高い荷重で押してギヤ32,33との間の摩擦力を増大させなくても、変速時間を短くすることが可能となる。また、摩擦力の増大がないことから同期機構39の構成部品等の摩耗に起因する耐久性の低下を抑えることができる。
【0062】
さらに、運転者によるシフトダウン要求から変速が終了するまでの期間(変速期間)の一部は、運転者によるダブルクラッチ操作の期間によって占められる。その分、前記変速期間のうち、運転者が何ら操作をせずに待っている期間(待ち期間)が短くなる。その結果、この待ち期間が長いことに起因する違和感を運転者に抱かせないようにすることができる。
【0063】
このように、本実施形態のシフト制御装置によると、ダブルクラッチ操作を可能にすることで、同期機構39の耐久性を低下させることなく変速時間を短くでき、運転者に違和感を抱かせないようにすることができる。
【0064】
(3)シフトレバー49を所定位置P1で一旦止めずに、一気にシフトダウン要求領域RDへ操作することで、従来と同様のシングルクラッチ操作による変速も可能である。従って、運転者は、自身の嗜好やそのときの状況に応じてダブルクラッチ操作及びシングルクラッチ操作を任意に選んでクラッチ操作を行うことができる。
【0065】
(4)ニュートラル領域RNにおいて、中立位置Pnよりもシフトアップ要求領域RU側には、シフトダウン要求領域RD側の所定位置P1に相当する位置を設定していない。
【0066】
そのため、運転者の操作により、シフトレバー49がニュートラル領域RNからシフトアップ要求領域RUに移ると、ハブスリーブ37は同期機構39が作動する直前位置で待機させられることなく移動させられる。この移動にともない同期機構39を通じて変速機15が現状の変速段よりも1つ上の変速段に変速(シフトアップ)される。従って、ダブルクラッチ操作がさほど必要のないシフトアップ時には、シフトレバー49のシフトアップ要求領域RUへの操作に応じ、ハブスリーブ37を一気に移動させて所望の変速段に変速させることができる。
【0067】
(5)運転者が、シフトダウンのためにシフトレバー49を所定位置P1へ操作した後に、状況が変化した場合や、ダブルクラッチ操作による回転合せがうまくできない場合が起り得る。この場合、運転者はシフトレバー49をシフトダウン要求領域RDへ操作することなくシフトアップ要求領域RUへ操作することができる。シフトレバー49が所定位置P2へ移動したことがストロークセンサ52によって検出されると、運転者によるシフトダウン要求がその運転者自身により取消されたとみなされる。そして、変速機15の変速段が、シフトレバー49がシフトダウン要求領域RD側へ操作される前の変速段に戻される。すなわち、ステップ120で、一旦現状変速段より下の変速段が要求変速段として設定され、それにともないハブスリーブ37が移動されても、ステップ150で元の変速段が要求変速段として設定される。従って、前記のように状況が変化した場合、回転合せがうまくできなかった場合等にも、変速機15が運転者の意に反してシフトダウンされるのを防ぎ、運転者の要求に合った変速段にすることができる。
【0068】
(6)ニュートラル領域RNにおいて、中立位置Pnからシフトダウン要求領域RD側の端(所定位置P3)までの距離cを、シフトアップ要求領域RU側の端(所定位置P2)までの距離bよりも長く設定している。このため、前記のように長い中立位置Pn及び所定位置P3間に、所定位置P1を容易に設定することができる。これにともない、ハブスリーブ37を同期機構39が作動する直前の位置に確実に待機させることが可能となり、ダブルクラッチ操作がしやすくなる。また、中立位置Pn及び所定位置P2間の距離bが短いことから、中立位置Pnからシフトレバー49をさほど操作しなくても変速機15をシフトアップさせることができる。
【0069】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・シフト装置48に、シフトレバー49の操作荷重を変化させるための機構を組込む。そして、この機構により、シフトレバー49が所定位置P1,P2,P3の付近へ操作されたとき、それまでとは異なる操作荷重となるようにしてもよい。こうすれば、運転者は操作荷重の変化により、シフトレバー49をどの位置へ操作しているかを、レバー操作を通じて、手から受ける感触により即座に把握することができる。
【0070】
・ニュートラル領域RNにおいて、中立位置Pnよりもシフトアップ要求領域RU側にも、シフトダウン要求領域RD側と同様、所定位置P1に相当する位置を設定してもよい。これは、シフトアップに時間がかかり、入力軸17の回転速度が出力軸31の回転速度よりも低下する場合も起り得るからである。このような状況になっても、前記実施形態と同様にダブルクラッチ操作を行うことにより、同期機構39の耐久性を低下させることなく変速時間を短くし、運転者に違和感を抱かせにくくすることができる。
【0071】
・本発明は、クラッチペダルとレリーズシリンダとを機械的に接続したコンベンショナルなクラッチを有する車両にも適用可能である。この場合、コンベンショナルなマスタシリンダによってレリーズシリンダにオイルを供給してもよい。また、この場合は、シフト系のみに例えば油圧アクチュエータを使用する。また、油圧アクチュエータに代えて電動モータを用いてもよい。
【0072】
・クラッチ操作部材として、クラッチペダル以外のもの、例えば押しボタン等を用いてもよい。
・検出手段として、ストロークセンサ52以外のセンサを用いてもよい。例えば、所定位置P1,P2,P3の各々に、シフトレバー49の位置を検出するセンサを配置してもよい。
【0073】
・本発明は、車両10以外の乗物におけるシフト制御装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した一実施形態におけるシフト制御装置の構成を示す略図。
【図2】クラッチの概略構成図。
【図3】変速機の内部構造の一部を示す概略断面図。
【図4】同期機構の部分断面図。
【図5】シフトレバーの操作領域を説明する概念図。
【図6】変速制御に必要な各種条件を設定する手順を説明するフローチャート。
【図7】変速用アクチュエータを駆動制御する手順を説明するフローチャート。
【符号の説明】
10…車両、11…エンジン、14…クラッチ、15…変速機、37…ハブスリーブ(変速用可動部材)、38…変速機用アクチュエータ、39…同期機構、45…クラッチペダル(クラッチ操作部材)、49…シフトレバー(シフト操作部材)、52…ストロークセンサ(検出手段)、57…ECU(待機手段、シフト制御手段、シフトダウン制御手段、シフトアップ制御手段)、P1,P2,P3…所定位置、Pn…中立位置、RN…ニュートラル領域、RD…シフトダウン要求領域、RU…シフトアップ要求領域。
【発明の属する技術分野】
本発明は、シフトレバー等のシフト操作部材の操作位置を検出し、その検出結果に基づき変速機用アクチュエータを駆動制御することにより、変速機の変速段を切替えるようにしたシフト制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
手動変速機の変速動作を自動化した、シーケンシャルマニュアルトランスミッション(順次変速手動変速機)と呼ばれる技術が知られている。この技術では、運転席の近傍にシフト装置が設けられている。シフト装置は、中立位置を基準とし、その両側の操作領域(シフトアップ要求領域及びシフトダウン要求領域)で操作されるシフトレバーを備えている。
【0003】
一方、前記変速機が選択歯車式変速機と呼ばれるタイプの場合、その変速機には複数対の変速ギヤ列(変速段)と複数個の変速用スリーブとが設けられている。また、変速用スリーブを移動させて変速段を切替えるために変速機用アクチュエータが設けられている。そして、シフト装置において、シフトレバーが中立位置からシフトダウン要求領域へ操作されると、変速機では変速用スリーブが変速機用アクチュエータによって移動されてギヤが噛合う。この噛合いにより、変速段が変速比の大きな低速段側へ1段変速(シフトダウン)される。これとは逆に、シフトレバーが中立位置からシフトアップ要求領域へ操作されると、変速用スリーブが変速機用アクチュエータによって前記シフトダウン時とは逆方向へ移動されてギヤ同士が噛合う。この噛合いにより、変速段が変速比の小さな高速側へ1段変速(シフトアップ)される。このように中立位置と基準として、シフトレバーがシフトダウン要求領域又はシフトアップ要求領域へ操作されると、変速機の複数の前進変速段がシフトアップ又はシフトダウンされる。
【0004】
また、前記変速機が同期機構を備えるタイプの場合、変速用スリーブによってギヤ同士が噛合わされる際、シンクロナイザリングとの摩擦力によって両ギヤの回転速度が近づけられる(同期される)。この同期によりギヤの噛合いが容易になる。
【0005】
そして、前記同期機構を備えた選択歯車式変速機にあっては、変速を行う場合、運転者はクラッチを操作してエンジン及び変速機間での動力伝達を切断する。この状態で、シフトレバーを中立位置からシフトダウン要求領域又はシフトアップ要求領域へ操作する。この操作に応じ、変速機では、変速機用アクチュエータによって変速用スリーブが移動させられ、それまで噛合っていたギヤから外れる。続いて、シンクロナイザリングの摩擦力によって変速機の入力側ギヤの周速度が上昇させられる。そして、入力側ギヤの周速度が出力側ギヤの周速度に略一致(同期)された状態で、変速用スリーブが出力側ギヤに噛合わされる。その後に運転者がクラッチを操作してエンジン及び変速機を接続すると、変速が終了し、エンジン及び変速機間での動力伝達が可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記同期機構を有する選択歯車式変速機においては、入力軸について変速前の回転速度と変速後の回転速度との差が比較的大きな状況下での変速、例えば1速、2速等への変速(シフトダウン)の際、運転者により変速要求が出されてから変速が終了するまでに比較的時間がかかる。これに対しては、シンクロナイザリングの摩擦力を利用した回転の同期時間が前記変速時間の多くを占めることから、この同期時間を短くすることが有効である。そして、その対策として、シンクロナイザリングを高い荷重でギヤ側へ押して摩擦力を増大させ同期時間を短縮することが考えられるが、反面、シンクロナイザリングを含む同期機構の構成部品等が摩耗する等して、耐久性が低下するおそれがある。
【0007】
また、同期機構の作動中には、通常、運転者による操作が行われない。しかも、この作動中には変速が終了していないことから、運転者が車両の駆動力を感ずることもない。従って、この同期機構の作動期間は運転者にとって、何ら操作をせずに待っている期間(待ち期間)となる。その結果、運転者は変速時間が長いと感じ、違和感を抱くおそれがある。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、同期機構の耐久性を低下させることなく変速時間を短くし、変速期間について運転者に違和感を抱かせないようにすることのできるシフト制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明では、同期機構を有する変速機と、クラッチ操作部材の操作状態に応じてエンジンから前記変速機への動力伝達を断続するクラッチとを備えた乗物に用いられるものであって、シフト要求領域と中立位置を含むニュートラル領域とを有する操作領域内で操作されるシフト操作部材と、前記シフト操作部材の操作位置を検出する検出手段と、前記シフト操作部材が、前記中立位置から前記ニュートラル領域内の前記シフト要求領域寄りの所定位置へ操作されたことが前記検出手段により検出されると、変速機用アクチュエータにより変速用可動部材を前記同期機構が作動する直前の位置へ移動させて待機させる待機手段と、前記シフト操作部材が前記シフト要求領域へ操作されたことが前記検出手段により検出されると、前記待機手段により待機されている前記変速用可動部材を前記変速機用アクチュエータによりさらに移動させ、前記同期機構を通じて前記変速機を変速させるシフト制御手段とを備えるものとする。
【0010】
上記の構成によれば、変速機の変速に際し、運転者がシフト操作部材を中立位置からシフト要求領域側へ操作する。この操作によりシフト操作部材が所定位置を通過すると、そのことが検出手段によって検出され、待機手段によって変速機用アクチュエータが駆動制御される。この制御により、変速用可動部材は、同期機構が作動する直前の位置へ移動させられる。変速用可動部材は、運転者の操作によりシフト操作部材がニュートラル領域からシフト要求領域へ移るまで、この位置に待機される。そして、シフト操作部材がシフト要求領域へ操作されたことが検出手段によって検出されると、待機している変速用可動部材が変速機用アクチュエータによってさらに移動させられる。この変速用可動部材の移動にともない同期機構を通じて変速機が作動され、現状とは異なる変速段に変速される。
【0011】
このように、シフト操作部材が所定位置へ操作された後、ニュートラル領域からシフトダウン要求領域へ移るまでの期間、変速機では変速用可動部材が、同期機構の作動する直前の位置に待機される。この期間には変速機はニュートラル状態、すなわち入力軸から出力軸への動力伝達が遮断された状態となる。そのため、運転者がこの期間において、1回の変速にクラッチ操作部材の断続操作を2度行う、いわゆるダブルクラッチ操作を行うことが可能となる。
【0012】
このダブルクラッチ操作に際しては、運転者は、クラッチを切断操作してエンジンから変速機への動力伝達を遮断する。シフト操作部材を中立位置から所定位置へ操作し、その位置又はその近傍で一旦止める。続いて、クラッチを接続操作して、エンジンから変速機への動力を伝達させる。アクセルペダル等のアクセル操作部材を操作して、エンジンの回転速度を上昇させ、出力側ギヤの回転を上げて変速用可動部材と出力側ギヤの各周速度を近づける。そして、クラッチを切断操作してエンジンから変速機への動力伝達を遮断する。その後、シフト操作部材をシフト要求領域へ操作して変速機を所望の変速段に変速させるとともに、クラッチを接続操作してエンジンから変速機へ動力を伝達する。
【0013】
従って、ダブルクラッチ操作により、出力側ギヤの周速度が変速用可動部材の周速度に近づけられる分、両周速度を同期させるために同期機構が作動する量(仕事量)が少なくなる。そのため、同期機構についてシンクロナイザリングを高い荷重で押して摩擦力を増大させなくても変速時間を短くすることが可能となり、同期機構の摩耗等に起因する耐久性低下を抑えることができる。
【0014】
さらに、運転者による変速要求から変速が終了するまでの期間(変速期間)の一部は、運転者によるダブルクラッチ操作の期間によって占められる。その分、前記変速期間のうち、運転者が何ら操作をせずに待っている期間(待ち期間)が短くなる。その結果、この待ち期間が長いことに起因する違和感を運転者に抱かせないようにすることが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記シフト要求領域は、前記ニュートラル領域を挟んで互いに対向するシフトアップ要求領域及びシフトダウン要求領域からなり、前記所定位置は、前記ニュートラル領域内の前記シフトダウン要求領域寄りの箇所に設定されており、前記シフト制御手段は、前記シフト操作部材が前記シフトダウン要求領域へ操作されたことが前記検出手段により検出されると、前記待機手段により待機されている前記変速用可動部材を前記変速機用アクチュエータによりさらに移動させ、前記同期機構を通じて前記変速機をシフトダウンさせるシフトダウン制御手段を含むものとする。
【0016】
上記の構成によれば、運転者の操作によりシフト操作部材が所定位置を通過したことが検出手段によって検出されると、待機手段による変速機用アクチュエータの駆動制御を通じ、変速用可動部材は、同期機構が作動する直前の位置へ移動させられる。この待機は、シフト操作部材がニュートラル領域からシフトダウン要求領域へ移るまで継続される。そして、運転者によってシフト操作部材がシフトダウン要求領域へ操作されたことが検出手段によって検出されると、シフトダウン制御手段では、待機している変速用可動部材が変速機用アクチュエータによってさらに移動させられる。この変速用可動部材の移動にともない同期機構を通じて変速機がシフトダウンされる。
【0017】
このように、シフト操作部材が所定位置へ操作された後、シフトダウン要求領域へ操作されるまでの期間、変速機では変速用可動部材が、同期機構の作動する直前の位置に待機される。この期間には変速機がニュートラル状態となるため、運転者がダブルクラッチ操作を行うことにより、変速段がそれまでよりも低い変速段に切替えられる(シフトダウンされる)。
【0018】
従って、シフトダウン時にダブルクラッチ操作を行うことにより、同期機構の仕事量を少なくして、同期機構の構成部品等の耐久性低下を抑えることができる。また、シフトダウンに際し、運転者が何ら操作をせずに待っている期間を短くして、違和感を運転者に抱かせないようにすることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記シフト操作部材が前記中立位置から前記シフトアップ要求領域側へ操作されて、そのシフト操作部材が前記ニュートラル領域を越えたことが前記検出手段により検出されると、前記変速用可動部材を、前記同期機構が作動する直前の位置で待機させることなく前記変速機用アクチュエータにより移動させ、前記同期機構を通じて前記変速機をシフトアップさせるシフトアップ制御手段をさらに備えるものとする。
【0020】
上記の構成によれば、運転者によるシフト操作部材のシフトアップ要求領域側への操作により、そのシフト操作部材がニュートラル領域を越えると、そのことが検出手段によって検出される。この検出に応じ、シフトアップ制御手段は変速機用アクチュエータを駆動制御し、変速用可動部材を同期機構が作動する直前の位置で待機させることなく移動させる。この移動にともない同期機構を通じて変速機が現状の変速段よりも上の変速段に変速(シフトアップ)される。従って、ダブルクラッチ操作をさほど必要としないシフトアップ時には、シフト操作部材のシフトアップ要求領域への操作に応じ、変速用可動部材を一気に移動させて所望の変速段に変速させることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記シフトアップ制御手段は、前記シフト操作部材が前記所定位置へ操作された後に、前記シフトダウン要求領域まで操作されることなく前記シフトアップ要求領域へ操作されたことが前記検出手段により検出されると、前記シフト操作部材が前記シフトダウン要求領域側へ操作される前の変速段に戻すものとする。
【0022】
上記の構成によれば、運転者が、シフトダウンのためにシフト操作部材を所定位置へ操作した後に、状況が変化した場合や、ダブルクラッチ操作による回転合せがうまくできない場合も起り得る。この場合、運転者がシフト操作部材をシフトダウン要求領域まで操作することなくシフトアップ要求領域へ操作すると、変速機の変速段はシフトアップ制御手段により、シフト操作部材がシフトダウン要求領域側へ操作される前の変速段に戻される。従って、前記のように状況が変化した場合に変速機がシフトダウンされるのを防ぎ、運転者の要求に合った変速段にすることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明では、請求項2〜4のいずれか1つに記載の発明において、前記ニュートラル領域について、前記中立位置から前記シフトダウン要求領域側の端までは、同中立位置から前記シフトアップ要求領域側の端までよりも長く設定されているものとする。
【0024】
上記の構成によれば、ニュートラル領域において、中立位置からシフトダウン要求領域側の端までの方がシフトアップ要求領域側の端までよりも長いため、所定位置を容易に設定することができる。これにともない、変速用可動部材を同期機構が作動する直前の位置に確実に待機させることが可能となり、ダブルクラッチ操作がしやすくなる。また、中立位置からシフトアップ要求領域側の端までが短いことから、シフト操作部材をシフトアップ要求領域側へ短い距離操作するだけで変速機をシフトアップさせることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を車両用のシフト制御装置に具体化した一実施形態について、図面に従って説明する。
【0026】
図1に示すように、車両10には動力源としてエンジン11が搭載されている。エンジン11の出力軸であるクランク軸12には、フライホイール13が一体回転可能に取付けられている。フライホイール13には、クラッチ14を介して変速機15が接続されている。クラッチ14は、クランク軸12の回転を変速機15に伝達したり、その回転伝達を遮断したりするためのものである。
【0027】
クラッチ14としては、例えば、図2に示す周知の乾式単板式摩擦クラッチを用いることができる。このタイプのクラッチ14の構成について説明すると、フライホイール13にはクラッチカバー16が一体回転可能に取付けられている。一方、変速機15の入力軸17にはクラッチディスク18が軸方向(図2の左右方向)へのスライド可能にスプライン結合されている。
【0028】
クラッチディスク18とクラッチカバー16との間にはプレッシャプレート19が配置されている。プレッシャプレート19は、ダイヤフラムスプリング21の外端部によってフライホイール13側へ押付けられている。この押付けにより、プレッシャプレート19とクラッチディスク18との間、及びクラッチディスク18とフライホイール13との間でそれぞれ摩擦力が発生する。これらの摩擦力により、クラッチ14がいわゆる接続(継合)された状態となり、プレッシャプレート19、クラッチディスク18及びフライホイール13が一体となって回転する。このようにして、エンジン11から変速機15への動力伝達が行われる。
【0029】
前記動力伝達の程度を調整したり、動力伝達を遮断したりする機構として、入力軸17にはレリーズベアリング22が軸方向へのスライド可能に装着されている。また、レリーズベアリング22の近傍にはレリーズフォーク23が軸24により回動可能に支持されており、その一端部(図2の下端部)がレリーズベアリング22に当接している。レリーズフォーク23の他端部(図2の上端部)には、ロッド27及びピストン26を介してレリーズシリンダ25が連結されている。レリーズシリンダ25には、リニアソレノイドバルブを介してオイルポンプ(図示略)が接続されている。そして、これらのレリーズシリンダ25、リニアソレノイドバルブ、オイルポンプ等によってクラッチ用アクチュエータ28が構成されている。
【0030】
前記クラッチ用アクチュエータ28では、オイルポンプによって作動油がレリーズシリンダ25に供給される。また、リニアソレノイドバルブの開度調整によりレリーズシリンダ25のピストン26に作用する油圧が調整される。この油圧調整によりピストン26及びロッド27が図2中右方へ移動すると、レリーズフォーク23が時計周り方向へ回動させられる。レリーズベアリング22がフライホイール13側へ押され、ダイヤフラムスプリング21の内端部が同方向へ弾性変形する。その結果、ダイヤフラムスプリング21のプレッシャプレート19を押付ける力が弱まり、上記摩擦力が減少する。このように、レリーズシリンダ25におけるピストン26の移動量に応じて上記摩擦力が変化する。
【0031】
変速機15は、車両10の走行状態に応じてエンジン11の回転速度及びトルクを変換して駆動輪に伝える装置である。本実施形態での変速機15は、一般に選択歯車式変速機と呼ばれる手動変速機と同様の構成をなしており、同期機構39を有している。図3は、変速機15の内部構造の一部を示している。変速機15は、前記入力軸17のほかに出力軸31を備えている。出力軸31はドライブシャフト、ディファレンシャルギヤ、車軸等を介して駆動輪に接続されており、出力軸31の回転がこれら各部材を通じて駆動輪に伝達される。
【0032】
変速機15では、入力軸17及び出力軸31が同一直線上に配置されている。入力軸17にはギヤ(メインドライブギヤとも呼ばれる)32が一体に設けられている。また、出力軸31上には歯数の異なる複数のギヤ(スピードギヤとも呼ばれる)33が回転自在に設けられている。また、複数のギヤ35を有するカウンタギヤ34が、入力軸17及び出力軸31に平行に配置されている。そして、カウンタギヤ34のギヤ35が、ギヤ32,33のうち対応するものに噛合っている。
【0033】
出力軸31上には、複数のクラッチハブ36がスプライン結合されている。各クラッチハブ36の外周には、変速用可動部材として、ハブスリーブ37が軸方向への摺動可能にスプライン結合されている。そして、ハブスリーブ37がいずれのギヤ32,33にも噛合っていない場合には、各ギヤ33が出力軸31上を空転し、入力軸17から出力軸31への動力伝達が遮断される。すなわち、変速機15はニュートラル状態となる。
【0034】
これに対し、ハブスリーブ37が軸方向へ移動していずれかのギヤ32,33に噛合うと、エンジン11の回転が入力軸17、カウンタギヤ34、ギヤ32,33、ハブスリーブ37、クラッチハブ36等を介して出力軸31に伝達される。そして、ハブスリーブ37を異なるギヤ32,33に噛合わせることで、動力伝達に関わるギヤ32〜34の組合わせが切替えられる。このギヤ32〜34の組合わせについて、変速比の大きいものから順に1速、2速、3速、…と呼ばれる。
【0035】
変速機15においてハブスリーブ37を軸方向に移動させるために、前記クラッチ用アクチュエータ28のレリーズシリンダ25と同様に、シリンダ(シフトシリンダ、セレクトシリンダ)、バルブ、オイルポンプ等からなる変速機用アクチュエータ38が設けられている(図1参照)。なお、このオイルポンプとしては、前述したレリーズシリンダ25にオイルを供給するオイルポンプを共用することができる。
【0036】
図4は同期機構39の概略を示している。同期機構39は、ハブスリーブ37とギヤ32,33の各周速度を一致させる機構であり、前述したクラッチハブ36、ハブスリーブ37のほかにシンクロナイザリング41、シフティングキー42等を主要な構成部品としている。シンクロナイザリング41は出力軸31上のギヤ32,33のコーン(円錐)部43に軸方向へのスライド可能に被せられている。シフティングキー42は、クラッチハブ36外周の溝に係合されていて、スプリング44によってハブスリーブ37に押付けられている。
【0037】
上記構成の同期機構39では、変速機用アクチュエータ38がハブスリーブ37を例えば図4の左方向へ移動させると、ハブスリーブ37とシフティングキー42とが突起の部分で係合していることから、ハブスリーブ37に加えられた力はシフティングキー42に伝わる。シフティングキー42がシンクロナイザリング41をコーン部43に押付ける(図4の状態)。この押付けにより、コーン部43とシンクロナイザリング41との間に摩擦力が生じて、ギヤ32,33の回転が上昇し始める。ハブスリーブ37がさらに移動すると、そのハブスリーブ37とシフティングキー42との係合が外れる。そして、ハブスリーブ37内周のスプラインがシンクロナイザリング41の歯に当って、同リング41が強い力でコーン部43に押付けられ、強い同期(シンクロ)作用が働く。最終的には、ギヤ32,33の周速度がハブスリーブ37の周速度に一致して、それら両者が噛合い、ギヤ32,33が出力軸31に相対回転不能に係止される。このようにして入力軸17と出力軸31とが駆動連結される。
【0038】
図1に示すように、運転席の近傍には、クラッチ14を断続する際に運転者によって操作されるクラッチ操作部材が設けられている。ここでは、クラッチ操作部材として、運転者によって踏込み操作されるクラッチペダル45が、軸46により回動可能に支持されている。クラッチペダル45は、前記レリーズシリンダ25に対し機械的に接続されていない。クラッチペダル45の近傍には、その操作荷重(クラッチ踏力)を調整するための操作荷重調整装置47が設けられている。
【0039】
また、運転席の近傍にはシフト装置48が組付けられている。シフト装置48には、シフト操作部材として、シフトレバー49がシフトゲート(図示略)に沿って変位可能に設けられている。図5は、シフトゲートのうち、複数の前進変速段について変速される際に、運転者によってシフトレバー49が操作される領域(操作領域)を概念的に示している。
【0040】
この操作領域は、所定位置P2と所定位置P3とによって挟まれたニュートラル領域RNと、そのニュートラル領域RNの両側に互いに対向して設けられたシフト要求領域(シフトダウン要求領域RD及びシフトアップ要求領域RU)とを有する。ニュートラル領域RNは中立位置Pnを含んでいる。この中立位置Pnと所定位置P2とは距離b離れ、中立位置Pnと所定位置P3とは距離c離れている。シフトアップ要求領域RUは、変速機15のシフトアップに際しシフトレバー49が操作される領域であり、シフトダウン要求領域RDは、シフトダウンに際しシフトレバー49が操作される領域である。
【0041】
なお、シフトゲートには、図示はしないが前記操作領域以外にもリバース(R)位置、ニュートラル(N)位置等の変速位置も設定されている。ニュートラル位置は、変速機15における入力軸17と出力軸31との連結を遮断するために選択される位置である。リバース位置は、車両10を後退させるために選択される位置である。さらに、シフト装置48には、シフトアップ要求領域RU側又はシフトダウン要求領域RD側へ操作されたシフトレバー49を中立位置Pnに復帰させるための復帰機構(図示略)が設けられている。
【0042】
図1に示すように、車両10には、その状態を検出するために各種のセンサが用いられている。例えば、クラッチペダル45の近傍には、その操作状態を検出する手段としてストロークセンサ51が設けられている。ここでの操作状態は、クラッチペダル45の操作量、すなわち踏込み量(ペダルストローク)である。また、シフト装置48には、シフトレバー49の操作位置を検出する手段(検出手段)として、中立位置Pnを基準としたシフトレバー49の移動距離(ストローク量)を検出するストロークセンサ52が設けられている。
【0043】
変速機15には、変速に関わるハブスリーブ37,及びそのハブスリーブ37の移動方向をそれぞれ検出する2つのストロークセンサ53,54が設けられている。これらのセンサ53,54の検出値は、例えばそのときに採られている実際の変速段を特定(検出)するために用いられる。そのほかにも、車両10の走行速度(車速)を検出する車速センサ55、エンジン11の回転速度を検出する回転速度センサ56等が設けられている。なお、これらは一例にすぎず、他のセンサが用いられてもよい。
【0044】
さらに、車両10には電子制御装置(以下「ECU」という)57が設けられている。ECU57は、クラッチ用アクチュエータ28の制御を通じてクラッチ14の断続を制御する手段として用いられている。また、ECU57は、変速機用アクチュエータ38の制御を通じて変速機15の変速を制御する手段として用いられている。ECU57はマイクロコンピュータを中心として構成されており、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、制御マップ等に従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。
【0045】
例えば、ECU57はクラッチ14の断続制御に際し、ROMに記憶されている複数のクラッチ特性マップから、車両10の状況に関する所定の状態量に最も適したものを1つ選択する。続いて、選択したクラッチ特性マップを参照し、ストロークセンサ51によって検出されたそのときのペダルストロークに対するクラッチ用アクチュエータ28の目標ストロークを算出する。そして、この目標ストロークに従ってクラッチ用アクチュエータ28を制御する。このように、ストロークセンサ51によって検出されたペダルストロークに基づきクラッチ用アクチュエータ28が制御される。この制御にともない作動するクラッチ用アクチュエータ28によって、クラッチ14が接続(継合)又は切断され、エンジン11から変速機15へ動力が伝達又は遮断される。
【0046】
次に、ECU57による変速機15の変速制御について説明する。図6のフローチャートは、要求変速段、変速許可フラグ等、変速制御に必要な各種条件を設定するための条件設定ルーチンを示している。
【0047】
変速許可フラグは、ハブスリーブ37による変速を許可するか又は禁止するかを判定するためのものである。変速許可フラグは、変速を許可する場合に「1」に設定される。本実施形態では、シフトレバー49がニュートラル領域RNから外れてシフトアップ要求領域RU又はシフトダウン要求領域RDに移行する際に変速許可フラグが「1」に設定される。そして、変速許可フラグは変速が終了するまで「1」に保持される。前述した以外の期間では、エンジン11の始動時を含めて変速許可フラグは「0」に設定される。
【0048】
また、図7のフローチャートは、前記要求変速段、変速許可フラグ等に基づいて変速機用アクチュエータ38を駆動制御するための変速実行ルーチンを示している。
【0049】
図6の条件設定ルーチンでは、ECU57はまずステップ110において、シフトレバー49の操作方向と操作量とに基づき、運転者のシフトダウン要求の有無を判定する。具体的には、ストロークセンサ52の検出値の変化に基づき、シフトレバー49がシフトダウン要求領域RD側へ操作されたかどうかを判定する。また、ストロークセンサ52の検出値に基づきシフトレバー49が所定位置P1よりもシフトダウン要求領域RD側へ操作されたかどうかを判定する。ここで、所定位置P1は、図5に示すようにニュートラル領域RN内において、中立位置Pnからシフトダウン要求領域RD側へ距離a離れた位置である。そして、この判定条件が満たされるまでステップ110の処理を繰返す。
【0050】
前記ステップ110の判定条件が満たされると、シフトダウン要求があることから、次のステップ120において、ストロークセンサ53,54によって検出された現在の変速段よりも所定段(例えば1段)下の変速段を要求変速段として設定する。
【0051】
次に、ステップ130において、シフトレバー49の操作方向と操作量とに基づき、前記シフトダウン要求の後にその要求を取消すためのシフト操作が運転者によってなされたかどうかを判定する。具体的には、ストロークセンサ52の検出値の変化に基づき、シフトレバー49がシフトアップ要求領域RU側へ操作されたかどうかを判定する。また、ストロークセンサ52の検出値に基づきシフトレバー49が所定位置P2よりもシフトアップ要求領域RU側へ操作されたかどうか、すなわちシフトレバー49がニュートラル領域RNからシフトアップ要求領域RUへ移ったかどうかを判定する。
【0052】
前記ステップ130の判定条件が満たされているとステップ150へ移行し、満たされていないとステップ140へ移行する。ステップ150では、前記ステップ120で設定される前の変速段(元の変速段)を要求変速段として設定する。そして、この設定処理を経た後、ステップ160へ移行する。
【0053】
一方、ステップ140では、シフトレバー49の操作方向と操作量とに基づき、所定位置P1まで又は越えて操作されたシフトレバー49がさらにシフトダウン要求領域RD側へ操作されたかどうかを判定する。具体的には、ストロークセンサ52の検出値の変化に基づき、シフトレバー49がシフトダウン要求領域RD側へ操作されたかどうかを判定する。また、ストロークセンサ52の検出値に基づきシフトレバー49が所定位置P3よりもシフトダウン要求領域RD側へ操作されたかどうか、すなわちシフトレバー49がニュートラル領域RNからシフトダウン要求領域RDへ移ったかどうかを判定する。そして、前記ステップ140の判定条件が満たされていないと前記ステップ130へ戻り、満たされていると次のステップ160へ移行する。
【0054】
前記ステップ140又は150から移行したステップ160では、ハブスリーブ37による変速を許可すべく変速許可フラグを「1」に切替える。この切替えにより、ハブスリーブ37の移動にともなう変速機15のシフトダウン又はシフトアップが可能となる。次に、ステップ170において、変速が終了したかどうかを判定する。例えば、ストロークセンサ53,54によって検出される現在の変速段が、前記ステップ120又は150で設定された要求変速段と同じであるかどうかを判定する。この判定条件が満たされるまでステップ170の処理を繰返す。そして、ステップ170の判定条件が満たされると、ステップ180においてハブスリーブ37による変速を禁止すべく変速許可フラグを「0」に切替えて、条件設定ルーチンを一旦終了する。
【0055】
次に、図7の変速実行ルーチンが開始されると、ECU57はまずステップ210において、前記条件設定ルーチンのステップ120又は150で設定された要求変速段が、ストロークセンサ53,54によって検出された現状の変速段と異なるかどうかを判定する。この判定条件が満たされていないと、すなわち両変速段が一致しているとステップ210の処理を繰返し、満たされていると、ステップ220へ移行する。ステップ220では、変速機用アクチュエータ38を駆動制御することにより、ハブスリーブ37を同期機構39が作動する直前の位置まで移動させる。
【0056】
そして、ステップ230において、前述した条件設定ルーチンで設定された変速許可フラグが「1」であるか否かを判定する。この判定条件が満たされるまでステップ230の処理を繰返す。そして、ステップ230の判定条件が満たされると、ハブスリーブ37による変速が許可されていることから、ステップ240において、ハブスリーブ37をさらに移動させてギヤ32,33に噛合わせる。この噛合わせによりギヤ32,33が出力軸31に一体回転可能に係止され、入力軸17及び出力軸31が、ギヤ32,33、カウンタギヤ34、同期機構39、ハブスリーブ37、クラッチハブ36等を介して駆動連結される。ステップ240の処理を経た後、変速実行ルーチンを一旦終了する。
【0057】
上述した条件設定ルーチン及び変速実行ルーチンにおいて、ECU57によるステップ110,120,220,230の処理等が待機手段に相当する。また、ステップ140,160,230,240の処理等が、シフトダウン制御手段を含むシフト制御手段に相当する。また、ステップ130,150の処理等がシフトアップ制御手段に相当する。
【0058】
そして、 これら両ルーチンに従うと、例えば変速機15のシフトダウンが次のように行われる。
運転者の操作により、シフトレバー49が所定位置P1及びP2間にある場合、条件設定ルーチンではステップ110の処理が繰返され、変速実行ルーチンではステップ210の処理が繰返される。ハブスリーブ37は移動せず、変速段は現状のままである。また、シフトレバー49が所定位置P1と所定位置P3との間にある場合、条件設定ルーチンでは、ステップ110→120→130→140→130→140→…の順に処理が行われる。この一連の処理により、現在よりも下の変速段が要求変速段として設定される。このとき、変速許可フラグは「0」である。一方、変速実行ルーチンでは、ステップ210→220→230の順に処理が行われる。この一連の処理により、変速機用アクチュエータ38が駆動制御され、ハブスリーブ37が、同期機構39の作動する直前の位置へ移動させられる。ハブスリーブ37は、運転者がシフトレバー49をシフトダウン要求領域RDへ操作して変速許可フラグが「1」に切替えられるまで、前記の位置に待機させられる。そして、運転者によりシフトレバー49がシフトダウン要求領域RDへ操作されると、条件設定ルーチンでは、ステップ140→160の処理が行われ、変速許可フラグが「1」に切替えられる。この切替えに応じ、変速実行ルーチンでは、ステップ230→240→リターンの順に処理が行われる。これらの一連の処理により、待機していたハブスリーブ37が変速機用アクチュエータ38によってさらに移動させられ、同期機構39を通じて変速機15がシフトダウンされる。
【0059】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)シフトレバー49が所定位置P1へ操作された後、ニュートラル領域RNからシフトダウン要求領域RDへ移るまでの期間、変速機15ではハブスリーブ37が、同期機構39の作動する直前の位置に待機される。この期間には変速機15がニュートラル状態となるため、運転者は、1回の変速にクラッチペダル45の切断操作を2度行う、いわゆるダブルクラッチ操作を行うことが可能となる。
【0060】
このダブルクラッチ操作に際しては、運転者はクラッチペダル45の踏込み操作によりクラッチ14を切断して、エンジン11から変速機15への動力伝達を遮断する。シフトレバー49を中立位置Pnから所定位置P1へ操作し、その位置又はその近傍で一旦止める。クラッチ14を接続操作して、エンジン11から変速機15へ動力を伝達させる。アクセルペダルを踏込み操作して、エンジン回転速度を上昇させ、変速機15の入力軸17の回転速度を上げてギヤ32,33の周速度をハブスリーブ37の周速度に近づける。そして、クラッチ14を切断操作してエンジン11から変速機15への動力伝達を遮断する。その後、シフトレバー49をシフトダウン要求領域RDへ操作するとともに、クラッチ14を接続操作してエンジン11から変速機15へ動力を伝達する。このように、ダブルクラッチ操作により、変速段をそれまでよりも1段下の変速段に切替える(シフトダウンする)ことができる。
【0061】
(2)前述したダブルクラッチ操作により、ギヤ32,33の周速度がハブスリーブ37の周速度に近づけられる分、両周速度を同期させるために同期機構39が作動する量(仕事量)が少なくなる。そのため、シンクロナイザリング41を高い荷重で押してギヤ32,33との間の摩擦力を増大させなくても、変速時間を短くすることが可能となる。また、摩擦力の増大がないことから同期機構39の構成部品等の摩耗に起因する耐久性の低下を抑えることができる。
【0062】
さらに、運転者によるシフトダウン要求から変速が終了するまでの期間(変速期間)の一部は、運転者によるダブルクラッチ操作の期間によって占められる。その分、前記変速期間のうち、運転者が何ら操作をせずに待っている期間(待ち期間)が短くなる。その結果、この待ち期間が長いことに起因する違和感を運転者に抱かせないようにすることができる。
【0063】
このように、本実施形態のシフト制御装置によると、ダブルクラッチ操作を可能にすることで、同期機構39の耐久性を低下させることなく変速時間を短くでき、運転者に違和感を抱かせないようにすることができる。
【0064】
(3)シフトレバー49を所定位置P1で一旦止めずに、一気にシフトダウン要求領域RDへ操作することで、従来と同様のシングルクラッチ操作による変速も可能である。従って、運転者は、自身の嗜好やそのときの状況に応じてダブルクラッチ操作及びシングルクラッチ操作を任意に選んでクラッチ操作を行うことができる。
【0065】
(4)ニュートラル領域RNにおいて、中立位置Pnよりもシフトアップ要求領域RU側には、シフトダウン要求領域RD側の所定位置P1に相当する位置を設定していない。
【0066】
そのため、運転者の操作により、シフトレバー49がニュートラル領域RNからシフトアップ要求領域RUに移ると、ハブスリーブ37は同期機構39が作動する直前位置で待機させられることなく移動させられる。この移動にともない同期機構39を通じて変速機15が現状の変速段よりも1つ上の変速段に変速(シフトアップ)される。従って、ダブルクラッチ操作がさほど必要のないシフトアップ時には、シフトレバー49のシフトアップ要求領域RUへの操作に応じ、ハブスリーブ37を一気に移動させて所望の変速段に変速させることができる。
【0067】
(5)運転者が、シフトダウンのためにシフトレバー49を所定位置P1へ操作した後に、状況が変化した場合や、ダブルクラッチ操作による回転合せがうまくできない場合が起り得る。この場合、運転者はシフトレバー49をシフトダウン要求領域RDへ操作することなくシフトアップ要求領域RUへ操作することができる。シフトレバー49が所定位置P2へ移動したことがストロークセンサ52によって検出されると、運転者によるシフトダウン要求がその運転者自身により取消されたとみなされる。そして、変速機15の変速段が、シフトレバー49がシフトダウン要求領域RD側へ操作される前の変速段に戻される。すなわち、ステップ120で、一旦現状変速段より下の変速段が要求変速段として設定され、それにともないハブスリーブ37が移動されても、ステップ150で元の変速段が要求変速段として設定される。従って、前記のように状況が変化した場合、回転合せがうまくできなかった場合等にも、変速機15が運転者の意に反してシフトダウンされるのを防ぎ、運転者の要求に合った変速段にすることができる。
【0068】
(6)ニュートラル領域RNにおいて、中立位置Pnからシフトダウン要求領域RD側の端(所定位置P3)までの距離cを、シフトアップ要求領域RU側の端(所定位置P2)までの距離bよりも長く設定している。このため、前記のように長い中立位置Pn及び所定位置P3間に、所定位置P1を容易に設定することができる。これにともない、ハブスリーブ37を同期機構39が作動する直前の位置に確実に待機させることが可能となり、ダブルクラッチ操作がしやすくなる。また、中立位置Pn及び所定位置P2間の距離bが短いことから、中立位置Pnからシフトレバー49をさほど操作しなくても変速機15をシフトアップさせることができる。
【0069】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・シフト装置48に、シフトレバー49の操作荷重を変化させるための機構を組込む。そして、この機構により、シフトレバー49が所定位置P1,P2,P3の付近へ操作されたとき、それまでとは異なる操作荷重となるようにしてもよい。こうすれば、運転者は操作荷重の変化により、シフトレバー49をどの位置へ操作しているかを、レバー操作を通じて、手から受ける感触により即座に把握することができる。
【0070】
・ニュートラル領域RNにおいて、中立位置Pnよりもシフトアップ要求領域RU側にも、シフトダウン要求領域RD側と同様、所定位置P1に相当する位置を設定してもよい。これは、シフトアップに時間がかかり、入力軸17の回転速度が出力軸31の回転速度よりも低下する場合も起り得るからである。このような状況になっても、前記実施形態と同様にダブルクラッチ操作を行うことにより、同期機構39の耐久性を低下させることなく変速時間を短くし、運転者に違和感を抱かせにくくすることができる。
【0071】
・本発明は、クラッチペダルとレリーズシリンダとを機械的に接続したコンベンショナルなクラッチを有する車両にも適用可能である。この場合、コンベンショナルなマスタシリンダによってレリーズシリンダにオイルを供給してもよい。また、この場合は、シフト系のみに例えば油圧アクチュエータを使用する。また、油圧アクチュエータに代えて電動モータを用いてもよい。
【0072】
・クラッチ操作部材として、クラッチペダル以外のもの、例えば押しボタン等を用いてもよい。
・検出手段として、ストロークセンサ52以外のセンサを用いてもよい。例えば、所定位置P1,P2,P3の各々に、シフトレバー49の位置を検出するセンサを配置してもよい。
【0073】
・本発明は、車両10以外の乗物におけるシフト制御装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した一実施形態におけるシフト制御装置の構成を示す略図。
【図2】クラッチの概略構成図。
【図3】変速機の内部構造の一部を示す概略断面図。
【図4】同期機構の部分断面図。
【図5】シフトレバーの操作領域を説明する概念図。
【図6】変速制御に必要な各種条件を設定する手順を説明するフローチャート。
【図7】変速用アクチュエータを駆動制御する手順を説明するフローチャート。
【符号の説明】
10…車両、11…エンジン、14…クラッチ、15…変速機、37…ハブスリーブ(変速用可動部材)、38…変速機用アクチュエータ、39…同期機構、45…クラッチペダル(クラッチ操作部材)、49…シフトレバー(シフト操作部材)、52…ストロークセンサ(検出手段)、57…ECU(待機手段、シフト制御手段、シフトダウン制御手段、シフトアップ制御手段)、P1,P2,P3…所定位置、Pn…中立位置、RN…ニュートラル領域、RD…シフトダウン要求領域、RU…シフトアップ要求領域。
Claims (5)
- 同期機構を有する変速機と、クラッチ操作部材の操作状態に応じてエンジンから前記変速機への動力伝達を断続するクラッチとを備えた乗物に用いられるものであって、
シフト要求領域と中立位置を含むニュートラル領域とを有する操作領域内で操作されるシフト操作部材と、
前記シフト操作部材の操作位置を検出する検出手段と、
前記シフト操作部材が、前記中立位置から前記ニュートラル領域内の前記シフト要求領域寄りの所定位置へ操作されたことが前記検出手段により検出されると、変速機用アクチュエータにより変速用可動部材を前記同期機構が作動する直前の位置へ移動させて待機させる待機手段と、
前記シフト操作部材が前記シフト要求領域へ操作されたことが前記検出手段により検出されると、前記待機手段により待機されている前記変速用可動部材を前記変速機用アクチュエータによりさらに移動させ、前記同期機構を通じて前記変速機を変速させるシフト制御手段と
を備えることを特徴とするシフト制御装置。 - 前記シフト要求領域は、前記ニュートラル領域を挟んで互いに対向するシフトアップ要求領域及びシフトダウン要求領域からなり、
前記所定位置は、前記ニュートラル領域内の前記シフトダウン要求領域寄りの箇所に設定されており、
前記シフト制御手段は、前記シフト操作部材が前記シフトダウン要求領域へ操作されたことが前記検出手段により検出されると、前記待機手段により待機されている前記変速用可動部材を前記変速機用アクチュエータによりさらに移動させ、前記同期機構を通じて前記変速機をシフトダウンさせるシフトダウン制御手段を含む請求項1に記載のシフト制御装置。 - 前記シフト操作部材が前記中立位置から前記シフトアップ要求領域側へ操作されて、そのシフト操作部材が前記ニュートラル領域を越えたことが前記検出手段により検出されると、前記変速用可動部材を、前記同期機構が作動する直前の位置で待機させることなく前記変速機用アクチュエータにより移動させ、前記同期機構を通じて前記変速機をシフトアップさせるシフトアップ制御手段をさらに備える請求項2に記載のシフト制御装置。
- 前記シフトアップ制御手段は、前記シフト操作部材が前記所定位置へ操作された後に、前記シフトダウン要求領域まで操作されることなく前記シフトアップ要求領域へ操作されたことが前記検出手段により検出されると、前記シフト操作部材が前記シフトダウン要求領域側へ操作される前の変速段に戻す請求項3に記載のシフト制御装置。
- 前記ニュートラル領域について、前記中立位置から前記シフトダウン要求領域側の端までは、同中立位置から前記シフトアップ要求領域側の端までよりも長く設定されている請求項2〜4のいずれか1つに記載のシフト制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002174445A JP2004017758A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | シフト制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002174445A JP2004017758A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | シフト制御装置 |
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JP2004017758A true JP2004017758A (ja) | 2004-01-22 |
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ID=31173409
Family Applications (1)
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JP2002174445A Pending JP2004017758A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | シフト制御装置 |
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JP (1) | JP2004017758A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100836337B1 (ko) * | 2006-09-28 | 2008-06-09 | 현대자동차주식회사 | 자동화 수동 변속기의 변속 충격방지장치 및 방법 |
CN100443780C (zh) * | 2005-12-28 | 2008-12-17 | 雅马哈发动机株式会社 | 换档致动器、有换档致动器的车辆和安装换档致动器的方法 |
-
2002
- 2002-06-14 JP JP2002174445A patent/JP2004017758A/ja active Pending
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