JP2004010032A - 車両用路面状態検知装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の走行状態に応じて各車輪に一定の駆動力若しくは制動力を付与し、その時の路面状況や車両の挙動を反映した路面摩擦係数に基づいて、車両が走行中の路面を直接的且つ高精度に検出する車両用路面状態検知装置を提供する。
【解決手段】各輪毎の路面摩擦係数μを演算するμ演算手段45と、各輪毎の横路面摩擦係数μsを演算するμs演算手段46と、車両の現在の挙動を判定して車輪の制御モードを可変する走行状態判断手段47と、判定された車両挙動に応じてスロットルコントロールモータ11を制御する駆動力制御手段48と、判定された車両挙動に応じて電磁制御弁6を制御する制動力制御手段と、上記制御中の各輪毎の路面摩擦係数μc若しくは横路面摩擦係数μscに基づいて走行路面状態を判定する路面状態判定手段50とを備える。
【選択図】 図7
【解決手段】各輪毎の路面摩擦係数μを演算するμ演算手段45と、各輪毎の横路面摩擦係数μsを演算するμs演算手段46と、車両の現在の挙動を判定して車輪の制御モードを可変する走行状態判断手段47と、判定された車両挙動に応じてスロットルコントロールモータ11を制御する駆動力制御手段48と、判定された車両挙動に応じて電磁制御弁6を制御する制動力制御手段と、上記制御中の各輪毎の路面摩擦係数μc若しくは横路面摩擦係数μscに基づいて走行路面状態を判定する路面状態判定手段50とを備える。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は路面状態検知装置に係わり、詳しくは、あらゆる車両の運動状態下においても走行する路面の滑り易さ(最大路面摩擦係数、転がり摩擦係数)等の路面状態を適切に検出する路面状態検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両においては、発進時の車両の駆動力を制御するトラクション・コントロール・システム(TCS)やブレーキ制動時の制動力を制御するアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)、トルク配分制御等について様々な制御技術が提案され、実用化に至っている。これらの制御では、必要な制御パラメータの演算若しくは補正演算に路面情報を用いるものが多く、これら制御技術の高精度且つ高信頼性を実現するためには、様々な車両の走行環境に応じた路面情報(路面μ)をリアルタイムに計測する必要がある。
【0003】
路面情報の検出手法としては、車両の運動方程式に基づいて予め設定された車両運動モデルに、車両の運動状態を入力することによって得られる所定パラメータの基準値に対して、車輪速度センサやヨーレイトセンサ等の各種センサから得られる実測値と比較して路面情報を推定する技術が一般的に知られている。例えば、特開2001−334921号公報に記載の発明では、オブザーバにより推定した車体すべり角(実ヨーレイト)を車両運動モデルに基づいた高μ路および低μ路での車体すべり角(ヨーレイト)基準値と比較して路面μを推定すると共に、振動センサ等を利用して路面の凹凸状態を認識し、走行時の路面の凹凸状態に応じて路面μ推定の応答性を可変する構成が開示されている。また、特開2000−329783号公報に記載の発明では、高μ路、中μ路及び低μ路で成立する車輪減速度と車体加速度との関係を予めメモリ18Mに記憶しておき、その関係と、実際に車輪速度センサから得られる車輪減速度及び車体加速度センサから検出される車体加速度との比較から、車両が走行する路面状態を推定する手法が開示されている。
【0004】
また、路面摩擦係数μを直接計測する手法としては、車両走行時においてブレーキ油圧をパルス波形状に入力することによって、そのときのブレーキ油圧の上昇降下に応じた路面摩擦係数μの変動値から車両が走行する路面状態を検出する手法が、同一出願人によって開示されている(特開平4−83147号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来例のほとんどが、路面μが直接的に計測できない物理量であるとした前提の上に成り立っているものであり、オブザーバ等による推定演算要素が含まれているため、実際に車両が走行している路面状態を反映した直接的な計測ではなく、あくまでも二次的な計測に過ぎない。また、ある限定された条件下でのみ成立する運動方程式に基づいて設定された車両運動モデルを用いていることから、時々刻々と変化する車両の走行環境(路面状態、運動状態)の全てに適応した路面情報の検出は困難である。
【0006】
路面情報を推定演算で求めようとする場合、一般的にその即応性と正確性、安定性はトレードオフの関係になる。つまり、路面状態の急変を早く察知しようとすると、外乱やセンサノイズまで反応して誤推定を起こす可能性が高くなる。一方、このような誤推定を極力回避しようとすると、推定演算処理に強力なフィルタ処理を施すなど、その変動を低く抑える処理を加える必要がある。一例を挙げると、車両走行中、良乾燥舗装路(高μ路状態)であった路面が急激に凍結路面(低μ路状態)に変わった状況では、走行路面が低μ路状態であることをいち早く認識するのが理想であるが、低μ路状態では概して車輪減速度やヨーレイト値の変動が小さく、低μ路認識が遅れてしまうという問題がある。また、この低μ路認識に敏感にし過ぎると、通常の良乾燥路走行中でも僅かのノイズ成分によって低μ路と誤認識するという計測精度の問題がある。
【0007】
さらに従来例では、車輪減速度やヨーレイト値の変動を大きくするために、車輪に駆動若しくは制動を付与して強制的に大きな加減速を与える必要性があるが、それらは車輪の空転やスリップ現象を引き起こし車両の挙動不安定を招くという危険性が伴い、安全性の高い車両制御への適用には不向きである。
【0008】
一方、路面状態を判別するパラメータとして最大路面摩擦係数μmaxを利用するのが一般的であり、前述した従来例においても最終的に最大路面摩擦係数μmaxを推定演算によって求める点で共通している。しかしながら、砂利道や圧雪路のような一部の路面では、転がり摩擦係数μrは異なるものの、最大路面摩擦係数μmaxが同等であることが試験的に確認されており、最大路面摩擦係数μmaxのみを求める従来例ではその識別は困難である。また、従来例では、転がり摩擦係数μrを求める構成について一切開示されていない。
【0009】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、推定演算要素を含まず、走行する路面の滑り易さを直接的に反映した路面摩擦係数に基づいて最大摩擦係数μmaxや転がり摩擦係数μrを捉え、車輪空転やスリップ現象などの挙動不安定を引き起こす事無く、車両の発進(加速)、定常、制動(減速)等の想定され得る走行環境に応じた路面情報の高精度且つリアルタイム計測を実現する車両用路面状態検知装置を提供することを、その課題とする。
【0010】
【発明の開示】
上記課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
本願発明の第1の側面によれば、車両の運動状態に基づいて各車輪と路面との間に作用する路面μを検出する路面μ検出手段を備えた車両の路面状態検知装置において、各車輪の支持部材内部に埋設固着され、各車輪と路面との間に作用する路面摩擦力Fに応じた路面摩擦力情報と、垂直抗力Nに応じた垂直抗力情報とを剪断応力として検知することができる任意数の第1のセンサと、車両の運動状態に応じて車輪毎に付与される駆動力若しくは制動力を各別に制御する車輪制御手段とを有し、車輪制御手段は、車両の運動状態に応じて車輪の制御モードを可変することを特徴とする、車両用路面状態検知装置を提供する。
【0012】
路面摩擦力Fとは、車輪の進行方向に対して作用する摩擦力であって、垂直抗力Nは路面に対して垂直方向に作用する力を意味する。これら路面摩擦力Fや垂直抗力Nは、各々1個のセンサから直接得ても良いし、センサからの検出信号を演算することにより得ても良い。さらには、複数のセンサからの検出信号を演算することにより得る構成としても良い。
【0013】
本願発明の好適な実施の形態によれば、車両制御手段は、車両が停車状態から発進状態に移行した場合、ある一定時間若しくは所定の設定速度まで、予め定められた加速度で加速されるように駆動輪側に付与する駆動力を調整する制御モードに可変される。
【0014】
駆動輪側に付与される駆動力を調整する手段としては、たとえば予め設定された加速度に応じてエンジンのスロットルバルブの開度を算出し、算出された開度に応じてスロットルコントロールモーターを制御する。
【0015】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、車両制御手段は、車両が定常走行状態に至る場合、駆動輪側に所定の駆動力を付与すると共に、従動輪側に所定のブレーキ制動力を付与するように車輪の制御モードを可変する。
【0016】
従動輪側に付与される制動力を調整する手段としては、たとえば油圧配管内に組み込まれた電磁制御弁を制御する。
【0017】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、車輪に駆動力を伝達する車両の駆動系を切り離し可能とするクラッチ制御手段を備え、車輪制御手段は、クラッチ制御手段を稼動して慣性による走行へと移行させるように車両の制御モードを可変する。
【0018】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、路面μ検出手段は、車輪制御手段により決定された車輪の制御モードに応じて、第1のセンサからの路面摩擦力情報と垂直抗力情報との比に応じた各輪毎の路面摩擦係数μパラメータを演算する路面摩擦係数μ演算手段と、路面摩擦係数μ演算手段から得られる駆動輪側路面摩擦係数情報を時間積分することにより、車両走行時に走行路面に応じて損失される駆動摩擦エネルギーEdを演算する駆動摩擦演算手段とを備え、駆動摩擦演算手段により演算された駆動摩擦エネルギーEdに基づいて、車両走行中の路面μを検出する。
【0019】
駆動輪側路面摩擦係数情報の時間積分は、駆動輪側路面摩擦係数情報をディジタルデータとして処理する場合、たとえば所定時間毎の駆動輪側路面摩擦係数情報を累積加算することにより実現できる。
【0020】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、路面μ検出手段は、車輪制御手段により決定された車輪の制御モードに応じて、第1のセンサからの路面摩擦力情報と垂直抗力情報との比に応じた各輪毎の路面摩擦係数μパラメータを演算する路面摩擦係数μ演算手段と、路面摩擦係数μ演算手段から得られる各輪毎の路面摩擦係数μパラメータのうち、駆動輪側路面摩擦係数情報と従動輪側路面摩擦係数情報との差に応じた差分パラメータμd−rを演算する摩擦差分パラメータ演算手段とを備え、摩擦差分パラメータ演算手段により演算された差分パラメータμd−rに基づいて、車両走行中の路面μを検出する。
【0021】
摩擦差分パラメータ演算手段は、路面摩擦力Fに応じた路面摩擦力情報と、垂直抗力Nに応じた垂直抗力情報とから、各輪毎の路面摩擦係数μ=F/Nを演算し、駆動輪側の路面摩擦係数μdと従動輪側の路面摩擦係数μrとの差分パラメータμd−r=α1(α2μd−α3μr)を演算する。ここで、α1,α2,α3は、予め決められた0以外の定数であり、たとえばα1=α2=α3=1の場合には、μd−r=μd−μrになる。
【0022】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、車両に作用する重力加速度Gに応じた重力加速度情報を得ることができる任意数の第2のセンサを有し、摩擦差分パラメータ演算手段は、重力加速度情報に基づく重力加速度Gにより差分パラメータμd−rを補正演算する。
【0023】
重力加速度情報は、車両重心に設置された1個のセンサから直接得ても良いし、センサからの検出信号を演算することにより得ても良い。さらには、複数のセンサからの検出信号を演算することにより得ても良い。
【0024】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、車輪制御手段により決定された車輪の制御モードに基づいて、上記の路面μ検出手段の何れかを選択する。
【0025】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、 車両旋回運動時に、路面摩擦力Fの代わりに、車両の進行方向と直交する方向に車輪と路面間に作用するコーナリングフォースFsを用い、コーナリングフォースFsに応じた横力情報と垂直抗力情報とに基づいて横路面摩擦係数μsパラメータを求める。
【0026】
横路面摩擦係数μsは、コーナリングフォースFsに応じた横力情報と、垂直抗力Nに応じた垂直抗力情報とから、μs=Fs/Nを演算することで求められる。これらコーナリングフォースFsは、1個のセンサから直接得ても良いし、センサからの検出信号を演算することにより得ても良い。さらには、複数のセンサから検出信号を演算することにより得ても良い。
【0027】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、第1のセンサは、車輪の支持部材であるサスペンション構造体の任意の位置に設けられた孔内部に埋設固着され、孔は、サスペンション構造体に存在する応力中心帯を内包する位置に形成される。
【0028】
応力中心帯は、車輪の支持部材であるサスペンション構造体にある複数方向からの外力が作用した時の内部応力の分布を考えた場合、測定を目的とする方向成分の外力による応力のみが存在し、かつそれ以外の方向成分による外力により作用する内部応力の影響が無いか若しくは極めて小さいような分布帯を示すものである。
【0029】
このように本願発明によれば、路面摩擦力Fと垂直抗力Nとに基づいて得られる路面摩擦係数μや、コーナリングフォースFsと垂直抗力Nとに基づいて得られる横路面摩擦係数μsを用いて検出するので、従来のように車輪速度センサや加速度センサ、ヨーレイトセンサ等からの出力信号を用いた車両モデルに基づく計測手法と比較して、時々刻々と変化する路面状態や車両の運動状態等の走行環境に係わらず正確な計測が実現できる。しかも、路面摩擦係数μや横路面摩擦係数μsは、路面状態を直接的に反映したパラメータであるため、オブザーバ等による推定演算要素を一切含んでいないことからも、計測の精度をより一層向上させることが出来る。
【0030】
また、路面摩擦力FやコーナリングフォースFs、垂直抗力Nは車両サスペンション構造体に埋設固着されたセンサによって検知する構成としており、路面とタイヤとの間に生じる力学的変化は音速の速さでサスペンション構造体に伝達されることから、路面認識遅れが生じる事の無いリアルタイムな計測が実現される。さらに、センサをサスペンション構造体内部に存在する応力中心帯に配設することで、路面摩擦力FやコーナリングフォースFs、垂直抗力Nの計測精度はより一層向上し、高精度な路面認識が可能となる。
【0031】
また、従来のように車輪減速度やヨーレイト値の変動を大きくするための過大な加減速を与える必要がなく、車輪の空転やスリップといった車両挙動の不安定が生じないため、安全性の高い車両制御への適用が可能である。さらに、本願発明によれば、車両走行時の路面摩擦係数μを随時監視することが可能であるため、ブレーキ制動時の最大路面摩擦係数μmaxだけでなく、定常走行時の転がり摩擦係数μrや加速時の駆動摩擦係数μdをも検知することができる。これにより、砂利道や圧雪路のような路面の性質が全く異なるものの最大路面摩擦係数μmaxは同値であるという一部の路面に対しても、その識別が容易に可能となる。
【0032】
本願発明のその他の特徴および利点は、貼付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、ここに示すのは好ましい実施形態の一例であって、特許請求の範囲はここに示す実施例に限定されるものではない。
【0034】
図1は、本願発明に係わる車両用路面状態検知装置全体の構成を示した説明図であって、車両1の各車輪2a〜2dに対応して、応力検知センサ3a〜3dが設けられている。応力検知センサ3a〜3dは、各車輪2a〜2dを支持するサスペンション構造体(ステアリングナックル)4a〜4dの内部に埋設固着されており、路面とタイヤとの間で作用する路面摩擦力、垂直抗力及び横力を、ステアリングナックル4a〜4dに伝達される剪断応力の変化として検知する。応力検知センサ3a〜3dから検出される応力検知信号は、増幅回路、ROM、RAM等により構成される公知の電子制御回路(CPU)5に入力され、増幅処理を含む所定の信号処理が行われる。尚、図1では、中・大型乗用車両に広く採用されているFR車(前エンジン・後輪駆動)を例にとって説明しており、前車輪1a、1bが従動輪に、後車輪1c、1dが駆動輪にそれぞれ相当しているが、これに限定されるものではなく、例えば前後車輪共に駆動輪である4WD車や中・小型乗用車に多く見られる前エンジン・前輪駆動であるFF車であっても良い。
【0035】
電子制御回路5は、内部演算処理の結果に基づいて、ブレーキ油圧配管内に組み込まれた電磁制御弁6a〜6dのソレノイド励磁電流を制御し、連通されるホイールシリンダ7a〜7dに励磁電流の大きさに応じたブレーキ油圧を供給する。ホイールシリンダ7a〜7dは、車輪2a〜2dと追随して従動するブレーキディスク9a〜9dに対しブレーキキャリパ8a〜8dを構成する摩擦部材を押圧せしめることで、所定の制動力を車輪2a〜2dに発生させる。
【0036】
また、電子制御回路5は、エンジン等からなる駆動系装置10を構成するスロットルコントロールモータ11を制御してスロットルバルブ12の開度を調整し、スロットルバルブ12の開度に応じてエンジンタンク19内部で生み出された駆動力は、トランスミッション14を介してプロペラシャフト15を軸転するエネルギーに変換されて、デフ16を介して接続されているドライブシャフト17に伝達し、駆動輪側の車輪2c、2dを転動させる。さらに、電子制御回路5は、駆動系装置10とトランスミッション14との間を結ぶクラッチ13と電気的に接続されており、クラッチ13を着脱動作させることによって、駆動系装置10で発生した駆動力のトランスミッション14への伝達を制御している。
【0037】
重力加速度センサ18は、車体重心の位置に取り付けられており、車両に作用する重力加速度を検知する。重力加速度センサ18から検出される重力加速度信号は、電子制御回路5に入力され、増幅演算処理を含む所定の信号処理が行われる。
【0038】
次に、各車輪2a〜2dを支持するサスペンション構造体4a〜4dに装着される応力検知センサの構成と計測原理について説明する。図2は、本願発明に係わる車両用路面状態検知装置における応力検知センサ3の構成を示した概観図である。なお、ここでは1輪に対する応力検知センサのみを図示しているが、その他の車輪についても同様の構成を備えているものとし、これ以降の説明においては各符号の添字は省略するものとする。
【0039】
応力検知センサ3は、たとえばサスペンション構造体4と同等の機械的性質を備える金属材料若しくはセラミック系材料からなる平板形状の基体20と、その表面に形成された抵抗薄膜からなる4個の歪感知部21、22、23、24とから構成される。ここで歪感知部とは、基体20にある一方向から外力が負荷された場合、この外力により発生する内部歪に対応して、歪感知部の抵抗薄膜が変形することによる電気抵抗変動を出力値として検出するものであり、一般的には市販の金属抵抗体若しくは半導体プロセスによる薄膜技術を利用した歪ゲージが知られているが、それに限るものではない。
【0040】
なお、歪感知部21と22及び23と24は、それぞれが基体20の貼着面の中心線に対して互いに45°の傾きを為して直交するように配置されている。また、歪感知部21と23、22と24とは、各々面対称な位置関係を有するように配設されている。さらに、図2には図示していないが、各歪感知部21〜24の両端には、例えばAl配線から構成される導体の一端が接続されており、これら導体の他端は、基体20の外部に設けられるブリッジ回路25に接続されている。
【0041】
図3は、本願発明に係わる車両用路面状態検知装置における信号処理回路の一例であって、応力検知センサ3の歪感知部21〜24は、それぞれ3個の定抵抗素子26と組み合わさって1つのブリッジ回路25を構成している。すなわち、信号処理回路内部には、各歪感知部21〜24それぞれに対応した4つのブリッジ回路が存在する。各ブリッジ回路25は、増幅回路27と直流電源29とに接続され、さらに演算回路28に電気的に接続されている。
【0042】
ここで、応力検知センサ3に応力が作用することに伴って、歪感知部21〜24は、基体20の面内に生じる歪みを検知する。この歪みにより生じる各歪感知部21〜24の微小な抵抗変動は、それに対応するブリッジ回路25によって電圧信号に変換され、さらに増幅回路27を介して応力に比例した電圧信号に増幅される。
演算回路28では、各増幅回路27より出力される電圧信号を総括してロジック演算が処理される。具体的には、演算回路28は、増幅回路27から出力された各電圧信号を加減算するロジック演算手段と、ロジック演算手段により演算された出力信号を歪量に換算する歪量変換手段、さらに換算された歪量に対応した外力に変換する力演算手段とから構成されている。なお、ここでのロジック演算手段としては、剪断応力を算出するための公知の演算手法を採用すれば良い。
【0043】
このような歪感知部の構成を備える応力検知センサを採用することによって、路面摩擦力や横力、垂直抗力の計測が実現され、路面摩擦力と垂直抗力、若しくは横力と垂直抗力との比を算出することによって、車両が走行している路面状況や車両の運動状態を反映した路面摩擦係数を精度良く検出することが可能となる。以下に、その理由について理論的に考察する。
【0044】
図4は、本願発明に係わる車両用路面状態検知装置における応力検知センサ3のサスペンション構造体への装着例であって、本実施形態では、乗用車に多く用いられているマルチリンク型ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造を例にとって説明する。ステアリングナックル4は、車輪2を支持するサスペンション構造体であって、応力検知センサ3は、ステアリングナックル4に形成された孔30、31、32に対し、それぞれ所定の位置と所定の姿勢で埋設固着される。
【0045】
いま、車両の進行方向に平行な軸をx、タイヤの軸心方向、すなわち車幅方向に平行な軸をy、x軸とy軸の双方に直交する軸をzと仮想すると、車両の走行時には、車輪2と路面との間に存在する接地面を力点とした路面摩擦力F(x軸方向)、垂直抗力(z軸方向)及び横力S(コーナリングフォースとも呼ぶ)(y軸方向)がベクトル的に合算された状態で、ステアリングナックル4に同時に作用する。これら各軸方向の力のうち、例えば路面摩擦力Fのみを剪断応力として分離測定しようとする場合、図4に示すように応力検知センサ3を配置すればよい。すなわち、x軸方向に沿って孔30をステアリングナックル4に設け、その内部に、基体20の歪感知部21〜24が形成された面をx−y平面に対して並行となるような姿勢で、応力検知センサ3を内蔵すればよい。
【0046】
一方、垂直抗力Nを剪断応力として分離計測しようとする場合には、図4に示したように、z軸方向に沿って孔31を設け、その内部に、基体20の歪感知部21〜24が形成された面をx−z平面に対して並行となるような姿勢で、応力検知センサ3を内蔵すればよい。また、横力Sに対しても同様にして、y軸方向に沿って孔32を設け、その内部に、基体20の歪感知部21〜24が形成された面をy−z平面に対して並行となるような姿勢で、応力検知センサ3を内蔵すればよい。
【0047】
次に、応力検知センサ3の固定位置に関してであるが、孔30〜32は、それぞれがステアリングナックル4に存在する応力中心帯を内包する位置に形成されており、応力検知センサ3は、応力中心帯に一致するか、あるいはその近傍に配設される。ここで応力中心帯とは、ステアリングナックル4に同時且つ複数の方向から外力が作用した時の内部応力の分布を考えた場合、測定を目的とする方向の外力による応力成分が存在し、且つそれ以外の方向の外力により作用する内部応力の影響が無いか若しくは極めて小さいような分布帯であると定義される。この応力中心帯を求めるに際しては、たとえば計算力学的手法の一つとされる有限要素法を用いたFEM(finite element method)解析を利用する手法が一般的である。すなわち、ステアリングナックル4に作用する各軸方向の力が単独で作用した場合の剪断応力分布図をFEM解析によって求め、たとえば路面摩擦力Fのみを計測しようとする場合においては、x−y平面におけるその他の方向力(垂直抗力Nや横力S)による応力分布図を重ね合わせて、両外力による剪断応力が共に最小である範囲を決定し、その決定範囲と、x−y平面における路面摩擦力Fによる剪断応力分布図とを照合して、路面摩擦力Fによる剪断応力のみが最大に検知される最適位置を含むように決定すればよい。垂直抗力Nを計測する場合においても、対象となる平面をx−z方向に変更することで、同様のステップを踏むことによって最適位置が決定される。すなわち、x−z平面における他の方向力(路面摩擦力Fや横力S)による応力分布図を重ね合わせて、両外力による剪断応力が共に最小である範囲を決定し、その決定された範囲と、x−z平面における垂直抗力Nによる剪断応力分布図を照合して、垂直抗力Nによる剪断応力のみが最大に検知される最適位置を含むように決定すればよい。また、横力Sを計測する場合においても、同様のステップを踏まえることにより、y−z平面における他の方向力(路面摩擦力Fや垂直抗力N)による剪断応力の影響が最小であり、且つ横力Sによる剪断応力が最大に検知される最適位置が決定される(特開平7−35632号公報参照)。
【0048】
このようにして応力検知センサ3の装着位置及び姿勢を決定することによって、測定すべき方向の力以外の外力による影響を良好に排除でき、干渉誤差の少ない剪断応力の測定、換言すると路面摩擦力Fや垂直抗力N、横力Sを直接的に分離検出することができ、これらの比を演算することによって、高精度な路面摩擦係数μや横路面摩擦係数μsの計測を実現することが可能となる。また、材料力学の応力分布の観点から、剪断応力はそれに作用する構造体の同一断面内において一様に分布する事が公知であることから、このような剪断応力を計測対象として選定することで、力点とは異なるステアリングナックル4に応力検知センサ3を配設しても、その計測精度をより一層向上させることが出来る。
【0049】
なお、本実施形態では、3つの応力検知センサを採用することにより、路面摩擦力Fや垂直抗力N、横力Sのそれぞれを検出するようにしたが、たとえば図5に示すような立方体形状の基体35を備える応力検知センサ33を用いて、歪感知部21〜24をx−y平面、y−z平面、x−z平面のそれぞれに並行な各面に構成することによって、1つの応力検知センサで路面摩擦力Fや垂直抗力N、横力Sを検知するようにしてもよい(特開平4−331336号公報参照)。
【0050】
図6は、本願発明に係わる車両用路面状態検知装置において実現される回路ブロック図であって、この車両用路面状態検知装置は、車両用路面状態検知装置全体を制御するCPU(central processing unit)40、CPU40のワークメモリとして用いられるRAM(random access memory)41、各種プログラムやデータ等が格納されたROM(read only memory)42、およびCPU40とセンサや電磁弁などの入出力機器との間の信号授受を制御するインターフェイス43を備えている。インターフェイス43は、入力されるアナログ信号をディジタル信号に変換する機能や、出力するディジタル信号をアナログ信号に変換する機能などを有しており、インターフェイス43には、車両のタイヤと走行路面との間に作用する路面摩擦力Fに比例した電圧信号を出力する路面摩擦力センサ36と、垂直抗力Nに比例した電圧信号を出力する垂直抗力センサ37と、横力Sに比例した電圧信号を出力する横力センサ38と、車両そのものに作用する前後方向の重力加速度Gに比例した電圧信号を出力する重力加速度センサ18と、各車輪毎のホイールシリンダ7に供給されるブレーキ油圧を制御する電磁制御弁6と、駆動系装置10に組み込まれたスロットルバルブ12の開度を制御するスロットルコントロールモータ11と、駆動系装置10とトランスミッション14との間を機械的に接続しているクラッチ13とが接続されている。なお、ここでの路面摩擦力センサ36及び垂直抗力センサ37、横力センサ38については、前述した応力検知センサ3と同様の構成を備えるものである。また、路面摩擦力センサ36、垂直抗力センサ37、横力センサ38及び電磁制御弁6は、各輪毎に各別に設置されている。電磁制御弁6はソレノイドを複数個有しており、それらのソレノイドを個別に制御することで、各車輪毎のブレーキ油圧の増圧、減圧、保持が実現される。
【0051】
図7は、CPU40がROM42に格納されたプログラムに基づいて動作することにより実現される仮想的な回路ブロック図であって、CPU40は、μ演算手段45、μs演算手段46、走行状態判断手段47、駆動力制御手段48、制動力制御手段49及び路面判定手段50を実現している。これらの回路は、車両のイグニッションスイッチがON状態に移行することにより、CPU40がROM42に格納されているプログラムを実行することによって実現される。
【0052】
μ演算手段45は、路面摩擦力センサ36及び垂直抗力センサ37からインターフェイス43を介して入力される路面摩擦力Fと垂直抗力Nとに基づいて、各輪毎の路面摩擦係数μ=F/Nを演算する。
【0053】
μs演算手段46は、横力センサ38及び垂直抗力センサ37からインターフェイス43を介して入力される横力Sと垂直抗力Nとに基づいて、各輪毎の横路面摩擦係数μs=S/Nを演算する。
【0054】
走行状態判断手段47は、μ演算手段45からの路面摩擦係数μとμs演算手段46からの横路面摩擦係数μsとに基づいて、車両の現時点での運動状態を検知し、動作識別信号を生成する。具体的には、μ演算手段46からの各輪毎の路面摩擦係数μのうち、駆動輪(後輪)側路面摩擦係数μdと従動輪(前輪)側路面摩擦係数μrとを比較することによって、車両の前後方向に対する運動状態を識別することができ、識別された車両の運動状態に応じた動作信号を駆動力制御手段48及び制動力制御手段49に出力する。また、μs演算手段47からの各輪毎の横路面摩擦係数μsのうち、右輪側横路面摩擦係数μsrと左輪側横路面摩擦係数μslとを比較することによって、車両の旋回方向に対する運動状態を識別することができ、識別された車両の運動状態に応じた動作信号を駆動力制御手段48及び制動力制御手段49に出力する。ここで車両1が、図1にあるようなFR車(前エンジン・後輪駆動)タイプである場合、駆動輪とは後車輪に相当し、従動輪とは前車輪であることを意味する。
【0055】
ところで、車両の運動状態は、基本的に“走る(加速)”、“曲がる(旋回)”、“停まる(減速)”3種類の動作によって支配されることは周知の通りである。このような3種類の動作のうち、“走る(加速)”と“停まる(減速)”は、各輪毎の路面摩擦係数μの変動を検知することによって定量的に表わすことができる。図8は、車両が発進してから直進走行を行い、ブレーキ制動によって停車状態に至る迄の各種パラメータの変動を説明するための波形図であって、図中におけるVfは前輪の車輪回転速度を、Vrは後輪の車輪回転速度を、Pはブレーキ油圧をそれぞれ示している。図8によると、たとえば車両が加速状態にある場合(Vf、Vr共に増加傾向)、区間T0〜T1においては、路面摩擦係数μr、μdは全て正の値であり且つ増加する特性を示している。また、区間T1〜T2のように、路面摩擦係数μr、μdが全て正の値であり且つほぼ一定値μ0に収束している場合は、車両が一定速度で走行している定常走行状態(Vf=Vr)にあると判断できる。さらに、区間T2〜T3のように、ブレーキペダル操作等によるブレーキ油圧Pの増大に伴い車両が減速状態にある場合、車輪のスリップ現象発生の有無に係わらず、路面摩擦係数μr、μdが全て負の値に至る特性を示している。尚、車両が直進走行状態にある場合では、横路面摩擦係数μsは、車両の動作状態に係わらず常に0若しくはその近傍の非常に小さな値を示している。
【0056】
一方、“曲がる(旋回)”については、横路面摩擦係数μsの変動によって定量的に表わすことができる。たとえば、左右の車輪の横路面摩擦係数μsをそれぞれ比較して、左側車輪の横路面摩擦係数μslが十分大きな正の値(右側車輪の横路面摩擦係数μsrは0若しくは負の値)をとる場合には、車両は右回転の旋回運動状態にあると判断できる。また、車両が左回転の旋回運動状態にある場合には、右側車輪の横路面摩擦係数μsrは、十分大きな正の値(左側車輪の横路面摩擦係数μslは0若しくは負の値)を示す特性を有する。
【0057】
車両の運動状態のうち、加速あるいは減速と旋回が複合して発生した場合においても、同様の判断手段を適用することができる。図9は、車両が右旋回運動を行いながら加速状態にあるときの各種パラメータの変動を説明するための波形図であって、区間t0からtrまでは車両は直進走行をしており、tr以降で右旋回走行に移行するものとし、車両は常に加速状態であると仮定する。図9によると、μ演算手段45から得られる路面摩擦係数μr、μdは全て正の値で且つ増加傾向にあり、加速状態時の特性を示している。また区間tr以降では、μs演算手段46からの各輪毎の横路面摩擦係数μsは、左車輪の横路面摩擦係数μslが十分大きな正の値にあり、且つ右車輪の横路面摩擦係数μsrはほぼ0の値であるような旋回運動時の特性を示している。従って、走行状態判断手段47において、各輪毎の路面摩擦係数μと横路面摩擦係数μsとの変動をそれぞれ比較することによって、車両の現時点の運動が加速中、減速中あるいは旋回中の何れの動作にあるかを判別することができる。
【0058】
ところで、路面摩擦係数μは、路面の滑り易さの状態を定量的に示した唯一のパラメータであることは周知の通りである。しかしながら、路面摩擦係数μは、車両の速度や加速度の大きさに応じて同一路面であっても異なる値を示す特性を有することが知られており、純粋に路面の滑り易さの状態を路面摩擦係数μで表わそうとした場合、このような車両の運動状態の変動による影響因子を極力排除する必要がある。そこで本実施例では、車輪に一定の駆動力若しくは制動力を付与することによって車両の運動状態を制御し、これらの変動因子による影響を抑制若しくは取り除くこととした。
【0059】
駆動力制御手段48は、走行状態判断手段47によって識別された車両の運動状態に応じた動作識別信号に基づいて、スロットルコントロールモータ11の通電状態を切り換える。具体的には、走行状態判断手段47によって車両が定常走行状態にあると判断された場合、すなわち各車輪の路面摩擦係数μが正の値で且つ一定値に収束しているような状況であれば、スロットルバルブ12が予め定められた周期で開閉を繰り返すことで、一定の駆動力が後輪に付与されるようにスロットルコントロールモータ11を制御される。ここで後輪側に付与される駆動力としては、後輪の空転現象を引き起こさない程度のものである必要があり、たとえば50msecの間スロットルバルブ12を15°開き、その後25msecの間スロットルバルブ12を閉じるという一連の動作を4回繰り返すという設定にすればよい。また、車両が加速状態、すなわち各車輪の路面摩擦係数μが正の値で且つ増加傾向にある状況においても、同様のスロットルコントロールモータ11の制御が実行される。
【0060】
また駆動力制御手段48は、走行状態判断手段47から出力された動作識別信号に基づいて、クラッチ13の通電状態を切り換える。具体的には、走行状態判断手段47によって車両が減速状態にあると判断された場合、すなわち各車輪の路面摩擦係数μが負の値にある状況であれば、クラッチ13の通電状態をOFFにすることで駆動系装置10とクラッチ13との接続を切り離し、駆動系装置10からトランスミッション14を介して伝達される駆動力から後輪を解放する。また、後述する制動力制御手段49による一連の電磁制御弁6の動作が完了すると、駆動力制御手段48は、クラッチ13の通電状態をONにして、駆動系装置10とクラッチ13とを接続させる。
【0061】
制動力制御手段49は、走行状態判断手段47から出力された動作識別信号に基づいて、電磁制御弁6のソレノイドの通電状態を切り換える。具体的には、走行状態判断手段47によって車両が定常走行状態にあると判断された場合、すなわち各車輪の路面摩擦係数μが正の値で且つ一定値に収束しているような状況であれば、予め定められた周期でブレーキ油圧の加圧処理・減圧処理を繰り返すことで、一定の制動力が前輪に付与されるように電磁制御弁6を制御すればよい。ここで前輪側に付与される制動力としては、前輪のスリップ現象を引き起こさない程度のものである必要があり、たとえば50msecの間加圧指示信号を生成し、その後10msecの間減圧指示信号を生成するという一連の動作を2回繰り返すという設定にすればよい。また、車両が減速状態、すなわち各車輪の路面摩擦係数μが負の値である状況においても、同様の電磁制御弁6の制御が実行される。
【0062】
従って、車両が加速走行状態にある場合は、駆動力制御手段48によって後輪側に任意の駆動力が付与される。また、車両が減速走行状態にある場合は、駆動力制御手段48によってクラッチ13を駆動系装置10から切り離すと共に、制動力制御手段49によって前輪側に任意の制動力が付与される。さらに、車両が定常走行状態にある場合は、駆動力制御手段48によって後輪側に任意の駆動力が付与されると共に、制動力制御手段49によって前輪側に任意の制動力が付与される。
【0063】
このような車両の運動状態に応じた各種制御が実現されることによって、路面判定手段50が実行され、車両が現在走行中の路面の状態を検知することができる。路面判定手段50は、複数の演算処理手段を有しており、走行状態判断手段47から出力される動作識別信号に応じて、使用する演算処理手段を決定する。なお、路面判定手段50で実現される各種動作については、後述にて詳細に説明することとする。
【0064】
すなわち、路面摩擦力センサ36、垂直抗力センサ37及び横力センサ38は、車両の車輪と走行路面との間に作用する路面摩擦力Fに応じた路面摩擦力情報と、垂直抗力Nに応じた垂直抗力情報と、横力Sに応じた横力情報を得ることができる任意数の第1のセンサを構成している。μ演算手段45は、第1のセンサからの路面摩擦力情報と垂直抗力情報との比に応じた路面摩擦係数μを演算する路面摩擦係数演算手段を構成している。μs演算手段46は、第1のセンサからの横力情報と垂直抗力情報との比に応じた横路面摩擦係数μsを演算する横路面摩擦係数演算手段を構成している。重力加速度センサ18は、車両に作用する重力加速度Gに応じた重力加速度情報を得ることができる任意数の第2のセンサを構成している。
【0065】
走行状態判断手段47は、路面摩擦係数演算手段により演算された各輪毎の路面摩擦係数μが、全て正の値であり且つ増加傾向にあると認識された時点で、車両の動作が加速中であると識別する加速走行識別信号を生成する加速状態判定手段を構成している。また走行状態判断手段47は、路面摩擦係数演算手段により演算された各輪毎の路面摩擦係数μが、全て正の値であり且つ一定値に収束している状態にあると認識された時点で、車両の動作が定常走行中であると識別する定常走行識別信号を生成する定常走行判定手段を構成している。また走行状態判断手段47は、路面摩擦係数演算手段により演算された各輪毎の路面摩擦係数μが、全て負の値であると認識された時点で、車両の動作が減速中であると識別する減速走行識別信号を生成する減速状態判定手段を構成している。さらに、走行状態判断手段47は、横路面摩擦係数演算手段により演算された各輪毎の横路面摩擦係数μsのうち、左輪あるいは右輪何れか一方の横路面摩擦係数μsが十分大きな正の値であると認識された時点で、車両の動作が旋回走行中であると識別する旋回走行識別信号を生成する旋回走行判定手段を構成している。
【0066】
駆動力制御手段48は、加速状態判定手段によって出力される加速走行識別信号に基づいて、一定の駆動力が駆動輪に作用するようスロットルバルブ12の開度を調整するスロットルバルブ制御手段を構成している。また駆動力制御手段48は、定常走行判定手段によって出力される定常走行識別信号に基づいて、一定の駆動力が駆動輪に作用するようスロットルバルブ12の開度を調整するスロットルバルブ制御手段を構成している。さらに、駆動力制御手段48は、減速状態判定手段によって出力される減速走行識別信号に基づいて、駆動系装置10とクラッチ13との接続を切り離し、駆動系装置10からトランスミッション14を介して伝達される駆動力から駆動輪を解放するクラッチ制御手段を構成している。
【0067】
制動力制御手段49は、定常走行判定手段によって出力される定常走行識別信号に基づいて、一定の制動力が従動輪に作用するようブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御手段を構成している。また制動力制御手段49は、減速状態判定手段によって出力される減速走行識別信号に基づいて、一定の制動力が従動輪に作用するようブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御手段を構成している。
【0068】
路面状態判断手段50は、スロットルバルブ制御手段及び/若しくはブレーキ液圧制御手段による動作が実行されている間、路面摩擦係数演算手段から演算される各輪毎の路面摩擦係数μと、横路面摩擦係数演算手段から演算される各輪毎の横路面摩擦係数μsとから、路面の滑り易さを定量的に表わすパラメータを演算する路面状態演算手段を構成している。さらに、路面状態判断手段50は、車両の運動状態に応じて使用する演算処理を決定する演算処理選択手段を構成している。
【0069】
次に、上記の車両用路面状態検知装置の動作を説明する。車両が走行している間、走行状態判断手段47が、μ演算手段45からの各輪毎の路面摩擦係数μとμs演算手段46からの各輪毎の横路面摩擦係数μsとを随時監視し、路面摩擦係数μの変動に応じて電磁制御弁6を制御し、たとえば50msecの増圧と10msecの油圧保持とを交互に2回繰り返すことにより、従動輪に作用するブレーキ油圧を調整する。と同時に、路面摩擦係数μの変動に応じてスロットルバルブ12の開度を制御し、たとえば50msecの間スロットルバルブ12を15°開き、25msecの間スロットルバルブ12を閉じるという一連の動作を交互に4回繰り返すことにより、駆動輪に作用する駆動力を調整する。そして路面状態判断手段50が、路面摩擦係数μ及び横路面摩擦係数μsに基づいて、走行状態判断手段47により選定された演算処理を実行することによって、車両が現在走行中の路面の状態を検出する。
【0070】
以後、上記のような走行路面の検出が、車両の停止時まで繰り返される。
【0071】
以下、上記動作により優れた路面状体の検出が実現される理由について、路面状態判断手段50において実現される各種動作に関し、理論的に考察する。
【0072】
図10は、CPU40がROM42に格納されたプログラムに基づいて動作することにより、路面判定手段50において実現される仮想的な回路ブロック図であって、CPU40は、制御中μ演算手段51、制御中μs演算手段52、E演算手段53、Edc−rc演算手段54及びErc−dc演算手段55を実現している。これらの回路は、前述した駆動力制御手段48によるスロットルバルブ12の動作、若しくは制動力制御手段49による電磁制御弁6の動作が実行されている間、CPU40がROM42に格納されているプログラムを実行することによって実現される。
【0073】
制御中μ演算手段51は、路面摩擦力センサ36及び垂直抗力センサ37からインターフェイス43を介して入力された路面摩擦力Fと垂直抗力Nとに基づいて、各輪毎の路面摩擦係数μc=F/Nを演算する。尚、制御中μ演算手段51は、μ演算手段45と同等の機能を果たすものであるが、車両の走行状態を識別する目的で算出される路面摩擦係数μと便宜上区別するため、以下では制御中μ演算手段51で演算される路面摩擦係数をμcと呼称する。
【0074】
制御中μs演算手段52は、μs演算手段46と同じく、横力センサ38及び垂直抗力センサ37からインターフェイス43を介して入力された横力Sと垂直抗力Nとに基づいて、各輪毎の横路面摩擦係数μsc=S/Nを演算する。尚、制御中μs演算手段51では、車両の走行状態を識別する目的で算出される横路面摩擦係数μsと便宜上区別するため、以下では制御中μs演算手段52で演算される横路面摩擦係数をμscと呼称する。
【0075】
E演算手段53は、ある一定時間内における路面摩擦力センサ36からの路面摩擦力F、及び垂直抗力センサ37からの垂直抗力Nとに基づいて、摩擦エネルギーE=Σμcを演算する。具体的には、摩擦エネルギーEは、制御中μ演算手段51から得られる路面摩擦係数μcのうち、駆動輪側の路面摩擦係数μdcを、予め定められた時間範囲内で積分することにより求められる。ここで、路面摩擦係数μcの積分は、路面摩擦力Fと垂直抗力Nをディジタルデータとして処理する場合、たとえば、所定時間毎に路面摩擦力Fと垂直抗力Nの比を演算し、それらを累積加算することにより実現できる。なお、予め定められた時間範囲としては、スロットルバルブ12で実行される制御の1サイクルに要する時間としてもよく、たとえば75m秒が選択される。
【0076】
さらにE演算手段53は、路面の滑り易さの状況に応じた閾値aを備えており、演算された摩擦エネルギーEと予め定められた閾値aとを比較することによって、その大小関係から路面状態を識別する。閾値aとしては、たとえば路面の種類に応じて高μ用a1、中μ用a2、砂利路用a3、圧雪路用a4、及び低μ用a5の5種類の所定値が予め実験的に求められており、ROM42に格納されている。ここで、高μ用の閾値a1は中μ用の閾値a2より大きく、中μ用の閾値a2は砂利路用の閾値a3よりも大きく、また砂利路用の閾値a3は圧雪路用の閾値a4よりも大きく、さらに圧雪路用の閾値a4は低μ用の閾値a5よりも大きいという関係を有している。なお、ここでの“高μ路面”とは乾燥したアスファルト路面に相当し、“中μ路面”とは降雨等によって濡れたアスファルト路面若しくは湿潤状態のコンクリート路面を、“砂利路面”とは小石の多い若しくは小石と砂の混合した路面を、“圧雪路面”とは圧力によって降雪が潰された状態の路面を、“低μ路面”とは氷結路面やアイスバーンを意味するものである。
【0077】
図11は、車両制御を実現する上において識別が必要とされる代表的な5種類の路面に対する路面摩擦係数μの分布図であって、横軸に最大路面摩擦係数μmaxを、縦軸に駆動路面摩擦係数μdを採用している。最大路面摩擦係数μmaxとは、過剰な駆動力若しくは制動力の付与により、車輪に空転あるいはスリップが引き起こされる直前の路面摩擦係数μの値であって、車両の安定挙動に係わる限界値として位置付けられている。一方、駆路面摩擦係数μdは、車輪が安定して転動している状態(自由転動を含む)にあるときの路面摩擦係数の値であって、路面特性に応じて駆動路面摩擦係数μdは変化する。すなわち、本実施例における摩擦エネルギーEは、駆動輪が安定して転動するレベルの駆動力を付与したとき、若しくは慣性により自由転動しているときの路面摩擦係数の積分値であることから、駆動路面摩擦係数μdに応じたパラメータであると言い換えることができる。
【0078】
図11より明らかなように、特に砂利路面や圧雪路面では、最大路面摩擦係数μmaxはほとんど同値をとることが知られており、最大路面摩擦係数μmaxではこれらの路面状態を識別することは困難である。しかしながら、駆動摩擦係数μdについて着目してみると、路面状態に応じて駆動摩擦係数μdの分布に差異が認められる。図12は、各種路面走行時における摩擦エネルギーEを示した説明図であって、図11における各種路面状態における駆動摩擦係数μdの分布とほぼ近似した傾向が確認されている。すなわち、E演算手段53において、摩擦エネルギーEと上述の閾値aとの大小関係を比較することによって、現在走行中の路面状態が高μ路面、中μ路面、砂利路面、圧雪路面あるいは低μ路面の何れの状態にあるかを判断することができる。より具体的に説明すると、制御中μ演算手段51から得られる駆動輪側の路面摩擦係数μdcに基づいて、E演算手段53より演算される摩擦エネルギーEと閾値aとを比較して、摩擦エネルギーEが高μ用閾値よりも十分大きな場合は、現在走行中の路面が高μであると判断する。また、摩擦エネルギーEが高μ用閾値よりも小さく且つ中μ用閾値よりも大きな場合は、現在走行中の路面状態を中μ路と判断し、摩擦エネルギーEが中μ用閾値よりも小さく且つ砂利路用閾値よりも大きな場合は、砂利路であると判断すればよい。さらに、摩擦エネルギーEが砂利路用閾値よりも小さく且つ圧雪路用閾値よりも大きい場合は、走行中路面の状態が圧雪路であると判断し、摩擦エネルギーEが圧雪路用閾値よりも小さく且つ低μ用閾値よりも大きい、若しくは摩擦エネルギーEが低μ用閾値よりも小さい場合においては、車両が走行中の路面が低μ状態であると判断すればよい。なお、本実施例では、車両制御への適用を考慮して代表的な5種類の路面状態に対して閾値をそれぞれ設定することとしたが、その他の複数種類の路面状況を細かく設定して、その設定された路面状況に応じた閾値aを決定するという構成にしても良い。
【0079】
一方、図10では、本願発明に係わる別の実施形態における路面判定手段50が開示されており、この実施形態では、走行状態判断手段47より加速走行識別信号が出力された場合、Edc−rc演算手段54により、ある一定時間範囲内の路面摩擦力センサ36からの路面摩擦力F、垂直抗力センサ37からの垂直抗力N、及び重力加速度センサ18からの重力加速度Gとに基づいて、摩擦エネルギーの差分値Edc−rc=Σ(μdc−μrc)が演算される。具体的には、摩擦エネルギーの差分値Edc−rcは、走行状態判断手段47からの加速走行識別信号に基づくスロットルバルブ12の制御が実行され一定の駆動力が駆動輪に付与されている間、制御中μ演算手段51から得られる路面摩擦係数μcのうち、駆動輪に相当する後輪側の路面摩擦係数μdcと従動輪に相当する前輪側の路面摩擦係数μrcとの差分値μdc−μrcを演算して、予め定められた時間範囲内で差分値μdc−μrcを積分することによって求められる。ここで各路面摩擦係数μcの積分演算としては、路面摩擦力Fと垂直抗力Nをディジタルデータとして処理する場合、たとえば、所定時間毎に路面摩擦力Fと垂直抗力Nの比を演算し、それらを累積加算することにより実現できる。なお、予め定められた時間範囲としては、スロットルバルブ12で実行される制御の1サイクルに要する時間としてもよく、たとえば75m秒が選択される。
【0080】
図13より、走行状態判断手段47より加速走行識別信号が出力されたときの駆動輪側及び従動輪側の各種パラメータの変動について考察する。図中の記号sigは、走行判断手段47からの加速走行識別信号に基づいて、駆動力制御手段48よりスロットルコントロールモータ11に出力された制御信号であって、制御信号sigが正の値にあるときはスロットルバルブ12を15°開き、制御信号sigが0でスロットルバルブ12を閉じるというような動作を実現している。このようなスロットルバルブ12の動作により一定の駆動力が生み出され、加速度G0で車両は加速される。駆動輪側路面摩擦係数μdcは、車両が発進すると同時に立ち上がりが生じ、重力加速度センサ18から出力される車両の前後方向の重力加速度Gの発生(加速状態)に伴って駆動輪側路面摩擦係数μdcは上昇する傾向を示す。やがて、スロットルバルブ12の制御が終了して重力加速度Gが減少傾向に至り0に収束する(定常走行に移行する)と、駆動輪側路面摩擦係数μdcの増加の傾きも小さくなり、一定値μ0に収束する。つまり、駆動輪側路面摩擦係数μdcには、車輪に伝達される駆動力に応じて増大し、車両が一定速度で定常走行状態にあるときには一定値μ0に収束するという特性を有していることが分かる。一方、従動輪側路面摩擦係数μrcは、重力加速度Gの大きさに束縛されず、ほぼ一定の傾きを持って直線的に増加する傾向を有することが実験的に確認されている。また、車両が定常走行状態にあるときには、従動輪側路面摩擦係数μrcも一定値に収束する特性を示しており、その一定値は駆動輪側路面摩擦係数μdcと同値のμ0である。
【0081】
すなわち、路面摩擦係数μには、車輪が自由転動することにより生じるタイヤと路面との間の接地面の剥離現象に基づく粘着効果による影響と、車輌を前方に押し出そうとする駆動力に対する反力による影響とが含まれており、車両の挙動に応じた路面の滑り易さの状態を求めようとする場合においては、後者の駆動力に対する反力による影響を考察する必要がある。つまり、駆動輪側路面摩擦係数μdcと従動輪側路面摩擦係数μrcとの差分値μdc−μrcを演算し、その差分値μdc−μrcを積分して摩擦エネルギーの差分値Edc−rcを算出することによって、接地面の剥離現象に伴う粘着効果の影響を排除した、純粋に現在の車両の挙動が反映されたパラメータを得ることができる。
【0082】
より望ましくは、摩擦エネルギーの差分値Edc−rcを重力加速度センサ18からの重力加速度Gで補正する。摩擦エネルギーの差分値Edc−rcには、車両そのものの慣性イナーシャによる影響因子が含まれており、これを排除することによって、より純粋に現在の車両の挙動が反映された摩擦エネルギーの差分値E*dc−rcを得ることができる。摩擦エネルギーの差分値Edc−rcに混入する慣性イナーシャ成分は、車両重心位置に設置された重力加速度センサ18から出力される重力加速度Gと比例関係にあることが分かっており、慣性イナーシャによる影響因子を排除した摩擦エネルギーの差分値E*dc−rcは、下記数式1により求めることができる。なお、下記数式1において、Gは車両の前後方向の加速度、αは比例定数である。
【0083】
【0084】
Edc−rc演算手段54は、路面の滑り易さの状況に応じた閾値bを備えており、演算された摩擦エネルギーの差分値E*dc−rcと予め定められた閾値bとを比較することによって、その大小関係から路面状態を識別する。閾値bとしては、たとえば路面の種類に応じて高μ用b1、中μ用b2、砂利路用b3、圧雪路用b4、及び低μ用b5の5種類の所定値が予め実験的に求められており、ROM42に格納されている。なお、各種路面毎の閾値b1〜b5の関係や、摩擦エネルギーの差分値E*dc−rcと閾値bとの比較については、前述したE演算手段53により演算される摩擦エネルギーEと閾値aとの比較と同じであるため、ここでの詳細な説明は省略するものとする。
【0085】
また、図10では、本願発明に係わる更に別の実施形態における路面判定手段50が開示されており、この実施形態では、走行状態判断手段47より減速走行識別信号が出力された場合、Erc−dc演算手段55により、ある一定時間範囲内の路面摩擦力センサ36からの路面摩擦力F、垂直抗力センサ37からの垂直抗力N、及び重力加速度センサ18からの重力加速度Gとに基づいて、摩擦エネルギーの差分値Erc−dc=Σ(μrc−μdc)が演算される。具体的には、摩擦エネルギーの差分値Erc−dcは、走行状態判断手段47からの減速走行識別信号に基づくクラッチ13の制御と電磁制御弁6の制御が実行され一定の制動力が従動輪に付与されている間、制御中μ演算手段51から得られる路面摩擦係数μcのうち、従動輪に相当する前輪側の路面摩擦係数μrcと駆動輪に相当する後輪側の路面摩擦係数μdcとの差分値μrc−μdcを演算して、予め定められた時間範囲内で差分値μrc−μdcを積分することによって求められる。ここで各路面摩擦係数μcの積分演算としては、路面摩擦力Fと垂直抗力Nをディジタルデータとして処理する場合、たとえば、所定時間毎に路面摩擦力Fと垂直抗力Nの比を演算し、それらを累積加算することにより実現できる。なお、予め定められた時間範囲としては、電磁制御弁6で実行される制御の1サイクルに要する時間としてもよく、たとえば60m秒が選択される。
【0085】
図14より、走行状態判断手段47より減速走行識別信号が出力されたときの駆動輪側及び従動輪側の各種パラメータの変動について考察する。図中の記号sigは、走行判断手段47からの減速走行識別信号に基づいて、制動力制御手段49により電磁制御弁6に出力された制御信号であって、制御信号sigが正の値にあるときはブレーキ油圧を増圧し、制御信号sigが負の値にあるときにはブレーキ油圧を減圧するというような動作を実現している。また同時に、駆動力制御手段48によって駆動系装置10とクラッチ13とが切り離される。このような電磁制御弁6及びクラッチ13の動作により一定の制動力が生み出され、減速度G0で車両は減速される。従動輪側路面摩擦係数μrcは、ブレーキ油圧の発生と同時に立ち上がりが生じ、重力加速度センサ18から出力される車両の前後方向の重力加速度Gの発生(減速状態)に伴って従動輪側路面摩擦係数μrcは減少する傾向を示す。やがて、電磁制御弁6の制御が終了して重力加速度Gが0に収束する(定常走行に移行する)と、従動輪側路面摩擦係数μrcの減少の傾きも小さくなり、一定値μ0に収束する。つまり、従動輪側路面摩擦係数μrcには、車輪に伝達される制動力に応じて増大し、車両が一定速度で定常走行状態にあるときには一定値μ0に収束するという特性を有していることが分かる。一方、駆動輪側路面摩擦係数μdcは、クラッチ13が駆動系装置10より切り離されていることから駆動輪が慣性による自由転動をしている状態であるため、ほぼ一定の傾きを持って直線的に増加する傾向を有することが実験的に確認されている。また、車両が定常走行状態にあるときには、駆動輪側路面摩擦係数μdcも一定値に収束する特性を示しており、その一定値は駆動輪側路面摩擦係数μdcと同値のμ0である。
【0086】
以上のことから、図14に生じている状況は、図13にて説明した一定の駆動力が作用している場合の駆動輪と従動輪とを入れ替えたものであると換言することができる。すなわち、路面摩擦係数μには、車輪が自由転動することにより生じるタイヤと路面間の接地面の剥離現象に基づく粘着効果による影響と、車両の前進を押し止めようとする制動力に対する反力による影響とが含まれており、従動輪側路面摩擦係数μrcと駆動輪側路面摩擦係数μdcとの差分値μrc−μdcを演算し、その差分値μrc−μdcを積分した摩擦エネルギーの差分値Erc−dcを算出することによって、接地面の剥離現象に伴う粘着効果を影響を排除した、純粋に現在の車両の挙動を反映したパラメータを得ることができる。
【0087】
より望ましくは、摩擦エネルギーの差分値Erc−dcを重力加速度センサ18からの重力加速度Gで補正する。摩擦エネルギーの差分値Erc−dcには、前述したように車両そのものの慣性イナーシャによる影響因子が含まれており、これを排除することによって、より純粋に現在の車両の挙動が反映された摩擦エネルギーの差分値E*rc−dcを得ることができる。摩擦エネルギーの差分値Erc−dcに混入する慣性イナーシャ成分は、車両重心位置に設置された重力加速度センサ18から出力される重力加速度Gと比例関係にあることが分かっており、慣性イナーシャによる影響因子を排除した摩擦エネルギーの差分値E*rc−dcは、下記数式2により求めることができる。なお、下記数式1において、Gは車両の前後方向の加速度、βは比例定数である。
【0088】
【0089】
また、Erc−dc演算手段55は、路面の滑り易さの状況に応じた閾値cを備えており、演算された摩擦エネルギーの差分値E*rc−dcと予め定められた閾値cとを比較することによって、その大小関係から路面状態を識別する。閾値cとしては、たとえば路面の種類に応じて高μ用c1、中μ用c2、砂利路用c3、圧雪路用c4、及び低μ用c5の5種類の所定値が予め実験的に求められており、ROM42に格納されている。なお、各種路面毎の閾値c1〜c5の関係や、摩擦エネルギーの差分値E*rc−dcと閾値cとの比較については、前述したE演算手段53により演算される摩擦エネルギーEと閾値aとの比較と同じであるため、ここでの詳細な説明は省略するものとする。
【0090】
このようにすることで、その時々の車両の運動状態に応じて最適な演算手法が選択されるので、高精度な路面判定を実現することができる。また、路面判定を行うに際し、車両の走行状態に応じて各車輪に一定の制動力若しくは駆動力を付与するという構成にしているので、車両の運動状態の変動という外乱要素が含まれず、計測精度を一層向上させることが可能となる。また、電磁制御弁6とスロットルコントロールモータ11を車両の走行状態に応じて適宜制御することで、非常に短期間且つ微小な制動力及び駆動力を各車輪に付与する構成としているため、ドライバを含む車両搭乗者に過大な加減速に伴う違和感や不快感を与えることなく、さらに車輪の空転やスリップといった車両挙動の不安定が生じないので、安全性の高い車両制御への適用が可能である。
【0091】
また、路面の滑り易さを定量的に示すパラメータである車両走行中の路面摩擦係数μ(駆動路面摩擦係数や転がり路面摩擦係数)を用いていることから、従来例のようなオブザーバによる推定演算要素を一切含む事無く、より直接的且つ高精度な路面状態の計測が可能となる。さらに、このような路面摩擦係数μを、路面とタイヤ間に作用する路面摩擦力Fと垂直抗力Nとの比を演算することで求めており、路面摩擦力F及び垂直抗力Nはサスペンション構造体に作用する剪断応力を持って検知する構成としているので、時々刻々と変化する路面状況や車両の運動状態に応じたリアルタイムな路面計測を実現することができる。
【0092】
なお、本実施例における路面判定手段50では、直進走行時において制御中μ演算手段51から得られる路面摩擦係数μcを用いる構成としたが、走行状態判断手段47より加速、定常、減速何れかの走行識別信号と共に旋回走行識別信号が出力された場合、路面摩擦係数μcの代わりに制御中μs演算手段52から得られる横路面摩擦係数μscを用いる構成としても良い。具体的には、制御中μs演算手段52から演算される横路面摩擦係数μscのうち、外輪側の横路面摩擦係数μscが演算パラメータとして選定される。たとえば、車両が左旋回加速状態にあってEdc−rc演算手段54を用いた路面判定が適用された場合、摩擦エネルギーの差分値Edc−rcは、外輪に相当する右後輪側の横路面摩擦係数μsdcと、同じく外輪に相当する右前輪側の横路面摩擦係数μsrcとの差分値μsdc−μsrcを演算し、予め定められた時間範囲内で差分値μsdc−μsrcを積分することによって求められる。そして、このようにして求められた摩擦エネルギーの差分値Edc−rcと所定の閾値とを比較することによって、その大小関係から路面状態が識別するようにしればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明における車両用路面状態検知装置の構成を示した説明図である。
【図2】本願発明における車両用路面状態検知装置に係わる応力検知センサの概観図である。
【図3】本願発明における車両用路面状態検知装置に係わる信号処理回路図である。
【図4】本願発明における車両用路面状態検知装置に係わる応力検知センサの配置説明図である。
【図5】本願発明における車両用路面状態検知装置に係わる別の実施形態での応力検知センサの概観図である。
【図6】本願発明における車両用路面状態検知装置の回路ブロック図である。
【図7】本願発明における車両用路面状態検知装置に備えられたCPUにより実現される仮想的な回路ブロック図である。
【図8】車両が直進走行したときの路面摩擦係数μの変動を示した波形図である。
【図9】車両が旋回走行したときの路面摩擦係数μの変動を示した波形図である。
【図10】本願発明における車両用路面状態検知装置に備えられたCPUにより実現される仮想的な回路ブロック図である。
【図11】代表的な路面状態に対する最大路面摩擦係数μmaxと駆動路面摩擦係数μdとの関係を示した分布図である。
【図12】本願発明に係おける車両用路面状態検知装置に係わる摩擦エネルギーと路面状態との関係を示したグラフである。
【図13】本願発明における車両用路面状態検知装置に係わる各部信号波形図である。
【図14】本願発明における車両用路面状態検知装置に係わる各部信号波形図である。
【符号の説明】
2 車輪
3 応力検知センサ
4 ステアリングナックル
5 電子制御回路
6 電磁制御弁
10 駆動系装置
11 スロットルコントロールモータ
12 スロットルバルブ
13 クラッチ
14 トランスミッション
18 重力加速度センサ
36 路面摩擦力センサ
37 垂直抗力センサ
38 横力センサ
40 CPU
41 RAM
42 ROM
43 インターフェイス
45 μ演算手段
46 μs演算手段
47 走行状態判断手段
48 駆動力制御手段
49 制動力制御手段
50 路面判定手段
51 制御中μ演算手段
52 制御中μs演算手段
53 E演算手段
54 Ed−r演算手段
55 Er−d演算手段
【発明の属する技術分野】
本発明は路面状態検知装置に係わり、詳しくは、あらゆる車両の運動状態下においても走行する路面の滑り易さ(最大路面摩擦係数、転がり摩擦係数)等の路面状態を適切に検出する路面状態検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両においては、発進時の車両の駆動力を制御するトラクション・コントロール・システム(TCS)やブレーキ制動時の制動力を制御するアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)、トルク配分制御等について様々な制御技術が提案され、実用化に至っている。これらの制御では、必要な制御パラメータの演算若しくは補正演算に路面情報を用いるものが多く、これら制御技術の高精度且つ高信頼性を実現するためには、様々な車両の走行環境に応じた路面情報(路面μ)をリアルタイムに計測する必要がある。
【0003】
路面情報の検出手法としては、車両の運動方程式に基づいて予め設定された車両運動モデルに、車両の運動状態を入力することによって得られる所定パラメータの基準値に対して、車輪速度センサやヨーレイトセンサ等の各種センサから得られる実測値と比較して路面情報を推定する技術が一般的に知られている。例えば、特開2001−334921号公報に記載の発明では、オブザーバにより推定した車体すべり角(実ヨーレイト)を車両運動モデルに基づいた高μ路および低μ路での車体すべり角(ヨーレイト)基準値と比較して路面μを推定すると共に、振動センサ等を利用して路面の凹凸状態を認識し、走行時の路面の凹凸状態に応じて路面μ推定の応答性を可変する構成が開示されている。また、特開2000−329783号公報に記載の発明では、高μ路、中μ路及び低μ路で成立する車輪減速度と車体加速度との関係を予めメモリ18Mに記憶しておき、その関係と、実際に車輪速度センサから得られる車輪減速度及び車体加速度センサから検出される車体加速度との比較から、車両が走行する路面状態を推定する手法が開示されている。
【0004】
また、路面摩擦係数μを直接計測する手法としては、車両走行時においてブレーキ油圧をパルス波形状に入力することによって、そのときのブレーキ油圧の上昇降下に応じた路面摩擦係数μの変動値から車両が走行する路面状態を検出する手法が、同一出願人によって開示されている(特開平4−83147号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来例のほとんどが、路面μが直接的に計測できない物理量であるとした前提の上に成り立っているものであり、オブザーバ等による推定演算要素が含まれているため、実際に車両が走行している路面状態を反映した直接的な計測ではなく、あくまでも二次的な計測に過ぎない。また、ある限定された条件下でのみ成立する運動方程式に基づいて設定された車両運動モデルを用いていることから、時々刻々と変化する車両の走行環境(路面状態、運動状態)の全てに適応した路面情報の検出は困難である。
【0006】
路面情報を推定演算で求めようとする場合、一般的にその即応性と正確性、安定性はトレードオフの関係になる。つまり、路面状態の急変を早く察知しようとすると、外乱やセンサノイズまで反応して誤推定を起こす可能性が高くなる。一方、このような誤推定を極力回避しようとすると、推定演算処理に強力なフィルタ処理を施すなど、その変動を低く抑える処理を加える必要がある。一例を挙げると、車両走行中、良乾燥舗装路(高μ路状態)であった路面が急激に凍結路面(低μ路状態)に変わった状況では、走行路面が低μ路状態であることをいち早く認識するのが理想であるが、低μ路状態では概して車輪減速度やヨーレイト値の変動が小さく、低μ路認識が遅れてしまうという問題がある。また、この低μ路認識に敏感にし過ぎると、通常の良乾燥路走行中でも僅かのノイズ成分によって低μ路と誤認識するという計測精度の問題がある。
【0007】
さらに従来例では、車輪減速度やヨーレイト値の変動を大きくするために、車輪に駆動若しくは制動を付与して強制的に大きな加減速を与える必要性があるが、それらは車輪の空転やスリップ現象を引き起こし車両の挙動不安定を招くという危険性が伴い、安全性の高い車両制御への適用には不向きである。
【0008】
一方、路面状態を判別するパラメータとして最大路面摩擦係数μmaxを利用するのが一般的であり、前述した従来例においても最終的に最大路面摩擦係数μmaxを推定演算によって求める点で共通している。しかしながら、砂利道や圧雪路のような一部の路面では、転がり摩擦係数μrは異なるものの、最大路面摩擦係数μmaxが同等であることが試験的に確認されており、最大路面摩擦係数μmaxのみを求める従来例ではその識別は困難である。また、従来例では、転がり摩擦係数μrを求める構成について一切開示されていない。
【0009】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、推定演算要素を含まず、走行する路面の滑り易さを直接的に反映した路面摩擦係数に基づいて最大摩擦係数μmaxや転がり摩擦係数μrを捉え、車輪空転やスリップ現象などの挙動不安定を引き起こす事無く、車両の発進(加速)、定常、制動(減速)等の想定され得る走行環境に応じた路面情報の高精度且つリアルタイム計測を実現する車両用路面状態検知装置を提供することを、その課題とする。
【0010】
【発明の開示】
上記課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
本願発明の第1の側面によれば、車両の運動状態に基づいて各車輪と路面との間に作用する路面μを検出する路面μ検出手段を備えた車両の路面状態検知装置において、各車輪の支持部材内部に埋設固着され、各車輪と路面との間に作用する路面摩擦力Fに応じた路面摩擦力情報と、垂直抗力Nに応じた垂直抗力情報とを剪断応力として検知することができる任意数の第1のセンサと、車両の運動状態に応じて車輪毎に付与される駆動力若しくは制動力を各別に制御する車輪制御手段とを有し、車輪制御手段は、車両の運動状態に応じて車輪の制御モードを可変することを特徴とする、車両用路面状態検知装置を提供する。
【0012】
路面摩擦力Fとは、車輪の進行方向に対して作用する摩擦力であって、垂直抗力Nは路面に対して垂直方向に作用する力を意味する。これら路面摩擦力Fや垂直抗力Nは、各々1個のセンサから直接得ても良いし、センサからの検出信号を演算することにより得ても良い。さらには、複数のセンサからの検出信号を演算することにより得る構成としても良い。
【0013】
本願発明の好適な実施の形態によれば、車両制御手段は、車両が停車状態から発進状態に移行した場合、ある一定時間若しくは所定の設定速度まで、予め定められた加速度で加速されるように駆動輪側に付与する駆動力を調整する制御モードに可変される。
【0014】
駆動輪側に付与される駆動力を調整する手段としては、たとえば予め設定された加速度に応じてエンジンのスロットルバルブの開度を算出し、算出された開度に応じてスロットルコントロールモーターを制御する。
【0015】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、車両制御手段は、車両が定常走行状態に至る場合、駆動輪側に所定の駆動力を付与すると共に、従動輪側に所定のブレーキ制動力を付与するように車輪の制御モードを可変する。
【0016】
従動輪側に付与される制動力を調整する手段としては、たとえば油圧配管内に組み込まれた電磁制御弁を制御する。
【0017】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、車輪に駆動力を伝達する車両の駆動系を切り離し可能とするクラッチ制御手段を備え、車輪制御手段は、クラッチ制御手段を稼動して慣性による走行へと移行させるように車両の制御モードを可変する。
【0018】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、路面μ検出手段は、車輪制御手段により決定された車輪の制御モードに応じて、第1のセンサからの路面摩擦力情報と垂直抗力情報との比に応じた各輪毎の路面摩擦係数μパラメータを演算する路面摩擦係数μ演算手段と、路面摩擦係数μ演算手段から得られる駆動輪側路面摩擦係数情報を時間積分することにより、車両走行時に走行路面に応じて損失される駆動摩擦エネルギーEdを演算する駆動摩擦演算手段とを備え、駆動摩擦演算手段により演算された駆動摩擦エネルギーEdに基づいて、車両走行中の路面μを検出する。
【0019】
駆動輪側路面摩擦係数情報の時間積分は、駆動輪側路面摩擦係数情報をディジタルデータとして処理する場合、たとえば所定時間毎の駆動輪側路面摩擦係数情報を累積加算することにより実現できる。
【0020】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、路面μ検出手段は、車輪制御手段により決定された車輪の制御モードに応じて、第1のセンサからの路面摩擦力情報と垂直抗力情報との比に応じた各輪毎の路面摩擦係数μパラメータを演算する路面摩擦係数μ演算手段と、路面摩擦係数μ演算手段から得られる各輪毎の路面摩擦係数μパラメータのうち、駆動輪側路面摩擦係数情報と従動輪側路面摩擦係数情報との差に応じた差分パラメータμd−rを演算する摩擦差分パラメータ演算手段とを備え、摩擦差分パラメータ演算手段により演算された差分パラメータμd−rに基づいて、車両走行中の路面μを検出する。
【0021】
摩擦差分パラメータ演算手段は、路面摩擦力Fに応じた路面摩擦力情報と、垂直抗力Nに応じた垂直抗力情報とから、各輪毎の路面摩擦係数μ=F/Nを演算し、駆動輪側の路面摩擦係数μdと従動輪側の路面摩擦係数μrとの差分パラメータμd−r=α1(α2μd−α3μr)を演算する。ここで、α1,α2,α3は、予め決められた0以外の定数であり、たとえばα1=α2=α3=1の場合には、μd−r=μd−μrになる。
【0022】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、車両に作用する重力加速度Gに応じた重力加速度情報を得ることができる任意数の第2のセンサを有し、摩擦差分パラメータ演算手段は、重力加速度情報に基づく重力加速度Gにより差分パラメータμd−rを補正演算する。
【0023】
重力加速度情報は、車両重心に設置された1個のセンサから直接得ても良いし、センサからの検出信号を演算することにより得ても良い。さらには、複数のセンサからの検出信号を演算することにより得ても良い。
【0024】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、車輪制御手段により決定された車輪の制御モードに基づいて、上記の路面μ検出手段の何れかを選択する。
【0025】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、 車両旋回運動時に、路面摩擦力Fの代わりに、車両の進行方向と直交する方向に車輪と路面間に作用するコーナリングフォースFsを用い、コーナリングフォースFsに応じた横力情報と垂直抗力情報とに基づいて横路面摩擦係数μsパラメータを求める。
【0026】
横路面摩擦係数μsは、コーナリングフォースFsに応じた横力情報と、垂直抗力Nに応じた垂直抗力情報とから、μs=Fs/Nを演算することで求められる。これらコーナリングフォースFsは、1個のセンサから直接得ても良いし、センサからの検出信号を演算することにより得ても良い。さらには、複数のセンサから検出信号を演算することにより得ても良い。
【0027】
本願発明の他の好適な実施の形態によれば、第1のセンサは、車輪の支持部材であるサスペンション構造体の任意の位置に設けられた孔内部に埋設固着され、孔は、サスペンション構造体に存在する応力中心帯を内包する位置に形成される。
【0028】
応力中心帯は、車輪の支持部材であるサスペンション構造体にある複数方向からの外力が作用した時の内部応力の分布を考えた場合、測定を目的とする方向成分の外力による応力のみが存在し、かつそれ以外の方向成分による外力により作用する内部応力の影響が無いか若しくは極めて小さいような分布帯を示すものである。
【0029】
このように本願発明によれば、路面摩擦力Fと垂直抗力Nとに基づいて得られる路面摩擦係数μや、コーナリングフォースFsと垂直抗力Nとに基づいて得られる横路面摩擦係数μsを用いて検出するので、従来のように車輪速度センサや加速度センサ、ヨーレイトセンサ等からの出力信号を用いた車両モデルに基づく計測手法と比較して、時々刻々と変化する路面状態や車両の運動状態等の走行環境に係わらず正確な計測が実現できる。しかも、路面摩擦係数μや横路面摩擦係数μsは、路面状態を直接的に反映したパラメータであるため、オブザーバ等による推定演算要素を一切含んでいないことからも、計測の精度をより一層向上させることが出来る。
【0030】
また、路面摩擦力FやコーナリングフォースFs、垂直抗力Nは車両サスペンション構造体に埋設固着されたセンサによって検知する構成としており、路面とタイヤとの間に生じる力学的変化は音速の速さでサスペンション構造体に伝達されることから、路面認識遅れが生じる事の無いリアルタイムな計測が実現される。さらに、センサをサスペンション構造体内部に存在する応力中心帯に配設することで、路面摩擦力FやコーナリングフォースFs、垂直抗力Nの計測精度はより一層向上し、高精度な路面認識が可能となる。
【0031】
また、従来のように車輪減速度やヨーレイト値の変動を大きくするための過大な加減速を与える必要がなく、車輪の空転やスリップといった車両挙動の不安定が生じないため、安全性の高い車両制御への適用が可能である。さらに、本願発明によれば、車両走行時の路面摩擦係数μを随時監視することが可能であるため、ブレーキ制動時の最大路面摩擦係数μmaxだけでなく、定常走行時の転がり摩擦係数μrや加速時の駆動摩擦係数μdをも検知することができる。これにより、砂利道や圧雪路のような路面の性質が全く異なるものの最大路面摩擦係数μmaxは同値であるという一部の路面に対しても、その識別が容易に可能となる。
【0032】
本願発明のその他の特徴および利点は、貼付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、ここに示すのは好ましい実施形態の一例であって、特許請求の範囲はここに示す実施例に限定されるものではない。
【0034】
図1は、本願発明に係わる車両用路面状態検知装置全体の構成を示した説明図であって、車両1の各車輪2a〜2dに対応して、応力検知センサ3a〜3dが設けられている。応力検知センサ3a〜3dは、各車輪2a〜2dを支持するサスペンション構造体(ステアリングナックル)4a〜4dの内部に埋設固着されており、路面とタイヤとの間で作用する路面摩擦力、垂直抗力及び横力を、ステアリングナックル4a〜4dに伝達される剪断応力の変化として検知する。応力検知センサ3a〜3dから検出される応力検知信号は、増幅回路、ROM、RAM等により構成される公知の電子制御回路(CPU)5に入力され、増幅処理を含む所定の信号処理が行われる。尚、図1では、中・大型乗用車両に広く採用されているFR車(前エンジン・後輪駆動)を例にとって説明しており、前車輪1a、1bが従動輪に、後車輪1c、1dが駆動輪にそれぞれ相当しているが、これに限定されるものではなく、例えば前後車輪共に駆動輪である4WD車や中・小型乗用車に多く見られる前エンジン・前輪駆動であるFF車であっても良い。
【0035】
電子制御回路5は、内部演算処理の結果に基づいて、ブレーキ油圧配管内に組み込まれた電磁制御弁6a〜6dのソレノイド励磁電流を制御し、連通されるホイールシリンダ7a〜7dに励磁電流の大きさに応じたブレーキ油圧を供給する。ホイールシリンダ7a〜7dは、車輪2a〜2dと追随して従動するブレーキディスク9a〜9dに対しブレーキキャリパ8a〜8dを構成する摩擦部材を押圧せしめることで、所定の制動力を車輪2a〜2dに発生させる。
【0036】
また、電子制御回路5は、エンジン等からなる駆動系装置10を構成するスロットルコントロールモータ11を制御してスロットルバルブ12の開度を調整し、スロットルバルブ12の開度に応じてエンジンタンク19内部で生み出された駆動力は、トランスミッション14を介してプロペラシャフト15を軸転するエネルギーに変換されて、デフ16を介して接続されているドライブシャフト17に伝達し、駆動輪側の車輪2c、2dを転動させる。さらに、電子制御回路5は、駆動系装置10とトランスミッション14との間を結ぶクラッチ13と電気的に接続されており、クラッチ13を着脱動作させることによって、駆動系装置10で発生した駆動力のトランスミッション14への伝達を制御している。
【0037】
重力加速度センサ18は、車体重心の位置に取り付けられており、車両に作用する重力加速度を検知する。重力加速度センサ18から検出される重力加速度信号は、電子制御回路5に入力され、増幅演算処理を含む所定の信号処理が行われる。
【0038】
次に、各車輪2a〜2dを支持するサスペンション構造体4a〜4dに装着される応力検知センサの構成と計測原理について説明する。図2は、本願発明に係わる車両用路面状態検知装置における応力検知センサ3の構成を示した概観図である。なお、ここでは1輪に対する応力検知センサのみを図示しているが、その他の車輪についても同様の構成を備えているものとし、これ以降の説明においては各符号の添字は省略するものとする。
【0039】
応力検知センサ3は、たとえばサスペンション構造体4と同等の機械的性質を備える金属材料若しくはセラミック系材料からなる平板形状の基体20と、その表面に形成された抵抗薄膜からなる4個の歪感知部21、22、23、24とから構成される。ここで歪感知部とは、基体20にある一方向から外力が負荷された場合、この外力により発生する内部歪に対応して、歪感知部の抵抗薄膜が変形することによる電気抵抗変動を出力値として検出するものであり、一般的には市販の金属抵抗体若しくは半導体プロセスによる薄膜技術を利用した歪ゲージが知られているが、それに限るものではない。
【0040】
なお、歪感知部21と22及び23と24は、それぞれが基体20の貼着面の中心線に対して互いに45°の傾きを為して直交するように配置されている。また、歪感知部21と23、22と24とは、各々面対称な位置関係を有するように配設されている。さらに、図2には図示していないが、各歪感知部21〜24の両端には、例えばAl配線から構成される導体の一端が接続されており、これら導体の他端は、基体20の外部に設けられるブリッジ回路25に接続されている。
【0041】
図3は、本願発明に係わる車両用路面状態検知装置における信号処理回路の一例であって、応力検知センサ3の歪感知部21〜24は、それぞれ3個の定抵抗素子26と組み合わさって1つのブリッジ回路25を構成している。すなわち、信号処理回路内部には、各歪感知部21〜24それぞれに対応した4つのブリッジ回路が存在する。各ブリッジ回路25は、増幅回路27と直流電源29とに接続され、さらに演算回路28に電気的に接続されている。
【0042】
ここで、応力検知センサ3に応力が作用することに伴って、歪感知部21〜24は、基体20の面内に生じる歪みを検知する。この歪みにより生じる各歪感知部21〜24の微小な抵抗変動は、それに対応するブリッジ回路25によって電圧信号に変換され、さらに増幅回路27を介して応力に比例した電圧信号に増幅される。
演算回路28では、各増幅回路27より出力される電圧信号を総括してロジック演算が処理される。具体的には、演算回路28は、増幅回路27から出力された各電圧信号を加減算するロジック演算手段と、ロジック演算手段により演算された出力信号を歪量に換算する歪量変換手段、さらに換算された歪量に対応した外力に変換する力演算手段とから構成されている。なお、ここでのロジック演算手段としては、剪断応力を算出するための公知の演算手法を採用すれば良い。
【0043】
このような歪感知部の構成を備える応力検知センサを採用することによって、路面摩擦力や横力、垂直抗力の計測が実現され、路面摩擦力と垂直抗力、若しくは横力と垂直抗力との比を算出することによって、車両が走行している路面状況や車両の運動状態を反映した路面摩擦係数を精度良く検出することが可能となる。以下に、その理由について理論的に考察する。
【0044】
図4は、本願発明に係わる車両用路面状態検知装置における応力検知センサ3のサスペンション構造体への装着例であって、本実施形態では、乗用車に多く用いられているマルチリンク型ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造を例にとって説明する。ステアリングナックル4は、車輪2を支持するサスペンション構造体であって、応力検知センサ3は、ステアリングナックル4に形成された孔30、31、32に対し、それぞれ所定の位置と所定の姿勢で埋設固着される。
【0045】
いま、車両の進行方向に平行な軸をx、タイヤの軸心方向、すなわち車幅方向に平行な軸をy、x軸とy軸の双方に直交する軸をzと仮想すると、車両の走行時には、車輪2と路面との間に存在する接地面を力点とした路面摩擦力F(x軸方向)、垂直抗力(z軸方向)及び横力S(コーナリングフォースとも呼ぶ)(y軸方向)がベクトル的に合算された状態で、ステアリングナックル4に同時に作用する。これら各軸方向の力のうち、例えば路面摩擦力Fのみを剪断応力として分離測定しようとする場合、図4に示すように応力検知センサ3を配置すればよい。すなわち、x軸方向に沿って孔30をステアリングナックル4に設け、その内部に、基体20の歪感知部21〜24が形成された面をx−y平面に対して並行となるような姿勢で、応力検知センサ3を内蔵すればよい。
【0046】
一方、垂直抗力Nを剪断応力として分離計測しようとする場合には、図4に示したように、z軸方向に沿って孔31を設け、その内部に、基体20の歪感知部21〜24が形成された面をx−z平面に対して並行となるような姿勢で、応力検知センサ3を内蔵すればよい。また、横力Sに対しても同様にして、y軸方向に沿って孔32を設け、その内部に、基体20の歪感知部21〜24が形成された面をy−z平面に対して並行となるような姿勢で、応力検知センサ3を内蔵すればよい。
【0047】
次に、応力検知センサ3の固定位置に関してであるが、孔30〜32は、それぞれがステアリングナックル4に存在する応力中心帯を内包する位置に形成されており、応力検知センサ3は、応力中心帯に一致するか、あるいはその近傍に配設される。ここで応力中心帯とは、ステアリングナックル4に同時且つ複数の方向から外力が作用した時の内部応力の分布を考えた場合、測定を目的とする方向の外力による応力成分が存在し、且つそれ以外の方向の外力により作用する内部応力の影響が無いか若しくは極めて小さいような分布帯であると定義される。この応力中心帯を求めるに際しては、たとえば計算力学的手法の一つとされる有限要素法を用いたFEM(finite element method)解析を利用する手法が一般的である。すなわち、ステアリングナックル4に作用する各軸方向の力が単独で作用した場合の剪断応力分布図をFEM解析によって求め、たとえば路面摩擦力Fのみを計測しようとする場合においては、x−y平面におけるその他の方向力(垂直抗力Nや横力S)による応力分布図を重ね合わせて、両外力による剪断応力が共に最小である範囲を決定し、その決定範囲と、x−y平面における路面摩擦力Fによる剪断応力分布図とを照合して、路面摩擦力Fによる剪断応力のみが最大に検知される最適位置を含むように決定すればよい。垂直抗力Nを計測する場合においても、対象となる平面をx−z方向に変更することで、同様のステップを踏むことによって最適位置が決定される。すなわち、x−z平面における他の方向力(路面摩擦力Fや横力S)による応力分布図を重ね合わせて、両外力による剪断応力が共に最小である範囲を決定し、その決定された範囲と、x−z平面における垂直抗力Nによる剪断応力分布図を照合して、垂直抗力Nによる剪断応力のみが最大に検知される最適位置を含むように決定すればよい。また、横力Sを計測する場合においても、同様のステップを踏まえることにより、y−z平面における他の方向力(路面摩擦力Fや垂直抗力N)による剪断応力の影響が最小であり、且つ横力Sによる剪断応力が最大に検知される最適位置が決定される(特開平7−35632号公報参照)。
【0048】
このようにして応力検知センサ3の装着位置及び姿勢を決定することによって、測定すべき方向の力以外の外力による影響を良好に排除でき、干渉誤差の少ない剪断応力の測定、換言すると路面摩擦力Fや垂直抗力N、横力Sを直接的に分離検出することができ、これらの比を演算することによって、高精度な路面摩擦係数μや横路面摩擦係数μsの計測を実現することが可能となる。また、材料力学の応力分布の観点から、剪断応力はそれに作用する構造体の同一断面内において一様に分布する事が公知であることから、このような剪断応力を計測対象として選定することで、力点とは異なるステアリングナックル4に応力検知センサ3を配設しても、その計測精度をより一層向上させることが出来る。
【0049】
なお、本実施形態では、3つの応力検知センサを採用することにより、路面摩擦力Fや垂直抗力N、横力Sのそれぞれを検出するようにしたが、たとえば図5に示すような立方体形状の基体35を備える応力検知センサ33を用いて、歪感知部21〜24をx−y平面、y−z平面、x−z平面のそれぞれに並行な各面に構成することによって、1つの応力検知センサで路面摩擦力Fや垂直抗力N、横力Sを検知するようにしてもよい(特開平4−331336号公報参照)。
【0050】
図6は、本願発明に係わる車両用路面状態検知装置において実現される回路ブロック図であって、この車両用路面状態検知装置は、車両用路面状態検知装置全体を制御するCPU(central processing unit)40、CPU40のワークメモリとして用いられるRAM(random access memory)41、各種プログラムやデータ等が格納されたROM(read only memory)42、およびCPU40とセンサや電磁弁などの入出力機器との間の信号授受を制御するインターフェイス43を備えている。インターフェイス43は、入力されるアナログ信号をディジタル信号に変換する機能や、出力するディジタル信号をアナログ信号に変換する機能などを有しており、インターフェイス43には、車両のタイヤと走行路面との間に作用する路面摩擦力Fに比例した電圧信号を出力する路面摩擦力センサ36と、垂直抗力Nに比例した電圧信号を出力する垂直抗力センサ37と、横力Sに比例した電圧信号を出力する横力センサ38と、車両そのものに作用する前後方向の重力加速度Gに比例した電圧信号を出力する重力加速度センサ18と、各車輪毎のホイールシリンダ7に供給されるブレーキ油圧を制御する電磁制御弁6と、駆動系装置10に組み込まれたスロットルバルブ12の開度を制御するスロットルコントロールモータ11と、駆動系装置10とトランスミッション14との間を機械的に接続しているクラッチ13とが接続されている。なお、ここでの路面摩擦力センサ36及び垂直抗力センサ37、横力センサ38については、前述した応力検知センサ3と同様の構成を備えるものである。また、路面摩擦力センサ36、垂直抗力センサ37、横力センサ38及び電磁制御弁6は、各輪毎に各別に設置されている。電磁制御弁6はソレノイドを複数個有しており、それらのソレノイドを個別に制御することで、各車輪毎のブレーキ油圧の増圧、減圧、保持が実現される。
【0051】
図7は、CPU40がROM42に格納されたプログラムに基づいて動作することにより実現される仮想的な回路ブロック図であって、CPU40は、μ演算手段45、μs演算手段46、走行状態判断手段47、駆動力制御手段48、制動力制御手段49及び路面判定手段50を実現している。これらの回路は、車両のイグニッションスイッチがON状態に移行することにより、CPU40がROM42に格納されているプログラムを実行することによって実現される。
【0052】
μ演算手段45は、路面摩擦力センサ36及び垂直抗力センサ37からインターフェイス43を介して入力される路面摩擦力Fと垂直抗力Nとに基づいて、各輪毎の路面摩擦係数μ=F/Nを演算する。
【0053】
μs演算手段46は、横力センサ38及び垂直抗力センサ37からインターフェイス43を介して入力される横力Sと垂直抗力Nとに基づいて、各輪毎の横路面摩擦係数μs=S/Nを演算する。
【0054】
走行状態判断手段47は、μ演算手段45からの路面摩擦係数μとμs演算手段46からの横路面摩擦係数μsとに基づいて、車両の現時点での運動状態を検知し、動作識別信号を生成する。具体的には、μ演算手段46からの各輪毎の路面摩擦係数μのうち、駆動輪(後輪)側路面摩擦係数μdと従動輪(前輪)側路面摩擦係数μrとを比較することによって、車両の前後方向に対する運動状態を識別することができ、識別された車両の運動状態に応じた動作信号を駆動力制御手段48及び制動力制御手段49に出力する。また、μs演算手段47からの各輪毎の横路面摩擦係数μsのうち、右輪側横路面摩擦係数μsrと左輪側横路面摩擦係数μslとを比較することによって、車両の旋回方向に対する運動状態を識別することができ、識別された車両の運動状態に応じた動作信号を駆動力制御手段48及び制動力制御手段49に出力する。ここで車両1が、図1にあるようなFR車(前エンジン・後輪駆動)タイプである場合、駆動輪とは後車輪に相当し、従動輪とは前車輪であることを意味する。
【0055】
ところで、車両の運動状態は、基本的に“走る(加速)”、“曲がる(旋回)”、“停まる(減速)”3種類の動作によって支配されることは周知の通りである。このような3種類の動作のうち、“走る(加速)”と“停まる(減速)”は、各輪毎の路面摩擦係数μの変動を検知することによって定量的に表わすことができる。図8は、車両が発進してから直進走行を行い、ブレーキ制動によって停車状態に至る迄の各種パラメータの変動を説明するための波形図であって、図中におけるVfは前輪の車輪回転速度を、Vrは後輪の車輪回転速度を、Pはブレーキ油圧をそれぞれ示している。図8によると、たとえば車両が加速状態にある場合(Vf、Vr共に増加傾向)、区間T0〜T1においては、路面摩擦係数μr、μdは全て正の値であり且つ増加する特性を示している。また、区間T1〜T2のように、路面摩擦係数μr、μdが全て正の値であり且つほぼ一定値μ0に収束している場合は、車両が一定速度で走行している定常走行状態(Vf=Vr)にあると判断できる。さらに、区間T2〜T3のように、ブレーキペダル操作等によるブレーキ油圧Pの増大に伴い車両が減速状態にある場合、車輪のスリップ現象発生の有無に係わらず、路面摩擦係数μr、μdが全て負の値に至る特性を示している。尚、車両が直進走行状態にある場合では、横路面摩擦係数μsは、車両の動作状態に係わらず常に0若しくはその近傍の非常に小さな値を示している。
【0056】
一方、“曲がる(旋回)”については、横路面摩擦係数μsの変動によって定量的に表わすことができる。たとえば、左右の車輪の横路面摩擦係数μsをそれぞれ比較して、左側車輪の横路面摩擦係数μslが十分大きな正の値(右側車輪の横路面摩擦係数μsrは0若しくは負の値)をとる場合には、車両は右回転の旋回運動状態にあると判断できる。また、車両が左回転の旋回運動状態にある場合には、右側車輪の横路面摩擦係数μsrは、十分大きな正の値(左側車輪の横路面摩擦係数μslは0若しくは負の値)を示す特性を有する。
【0057】
車両の運動状態のうち、加速あるいは減速と旋回が複合して発生した場合においても、同様の判断手段を適用することができる。図9は、車両が右旋回運動を行いながら加速状態にあるときの各種パラメータの変動を説明するための波形図であって、区間t0からtrまでは車両は直進走行をしており、tr以降で右旋回走行に移行するものとし、車両は常に加速状態であると仮定する。図9によると、μ演算手段45から得られる路面摩擦係数μr、μdは全て正の値で且つ増加傾向にあり、加速状態時の特性を示している。また区間tr以降では、μs演算手段46からの各輪毎の横路面摩擦係数μsは、左車輪の横路面摩擦係数μslが十分大きな正の値にあり、且つ右車輪の横路面摩擦係数μsrはほぼ0の値であるような旋回運動時の特性を示している。従って、走行状態判断手段47において、各輪毎の路面摩擦係数μと横路面摩擦係数μsとの変動をそれぞれ比較することによって、車両の現時点の運動が加速中、減速中あるいは旋回中の何れの動作にあるかを判別することができる。
【0058】
ところで、路面摩擦係数μは、路面の滑り易さの状態を定量的に示した唯一のパラメータであることは周知の通りである。しかしながら、路面摩擦係数μは、車両の速度や加速度の大きさに応じて同一路面であっても異なる値を示す特性を有することが知られており、純粋に路面の滑り易さの状態を路面摩擦係数μで表わそうとした場合、このような車両の運動状態の変動による影響因子を極力排除する必要がある。そこで本実施例では、車輪に一定の駆動力若しくは制動力を付与することによって車両の運動状態を制御し、これらの変動因子による影響を抑制若しくは取り除くこととした。
【0059】
駆動力制御手段48は、走行状態判断手段47によって識別された車両の運動状態に応じた動作識別信号に基づいて、スロットルコントロールモータ11の通電状態を切り換える。具体的には、走行状態判断手段47によって車両が定常走行状態にあると判断された場合、すなわち各車輪の路面摩擦係数μが正の値で且つ一定値に収束しているような状況であれば、スロットルバルブ12が予め定められた周期で開閉を繰り返すことで、一定の駆動力が後輪に付与されるようにスロットルコントロールモータ11を制御される。ここで後輪側に付与される駆動力としては、後輪の空転現象を引き起こさない程度のものである必要があり、たとえば50msecの間スロットルバルブ12を15°開き、その後25msecの間スロットルバルブ12を閉じるという一連の動作を4回繰り返すという設定にすればよい。また、車両が加速状態、すなわち各車輪の路面摩擦係数μが正の値で且つ増加傾向にある状況においても、同様のスロットルコントロールモータ11の制御が実行される。
【0060】
また駆動力制御手段48は、走行状態判断手段47から出力された動作識別信号に基づいて、クラッチ13の通電状態を切り換える。具体的には、走行状態判断手段47によって車両が減速状態にあると判断された場合、すなわち各車輪の路面摩擦係数μが負の値にある状況であれば、クラッチ13の通電状態をOFFにすることで駆動系装置10とクラッチ13との接続を切り離し、駆動系装置10からトランスミッション14を介して伝達される駆動力から後輪を解放する。また、後述する制動力制御手段49による一連の電磁制御弁6の動作が完了すると、駆動力制御手段48は、クラッチ13の通電状態をONにして、駆動系装置10とクラッチ13とを接続させる。
【0061】
制動力制御手段49は、走行状態判断手段47から出力された動作識別信号に基づいて、電磁制御弁6のソレノイドの通電状態を切り換える。具体的には、走行状態判断手段47によって車両が定常走行状態にあると判断された場合、すなわち各車輪の路面摩擦係数μが正の値で且つ一定値に収束しているような状況であれば、予め定められた周期でブレーキ油圧の加圧処理・減圧処理を繰り返すことで、一定の制動力が前輪に付与されるように電磁制御弁6を制御すればよい。ここで前輪側に付与される制動力としては、前輪のスリップ現象を引き起こさない程度のものである必要があり、たとえば50msecの間加圧指示信号を生成し、その後10msecの間減圧指示信号を生成するという一連の動作を2回繰り返すという設定にすればよい。また、車両が減速状態、すなわち各車輪の路面摩擦係数μが負の値である状況においても、同様の電磁制御弁6の制御が実行される。
【0062】
従って、車両が加速走行状態にある場合は、駆動力制御手段48によって後輪側に任意の駆動力が付与される。また、車両が減速走行状態にある場合は、駆動力制御手段48によってクラッチ13を駆動系装置10から切り離すと共に、制動力制御手段49によって前輪側に任意の制動力が付与される。さらに、車両が定常走行状態にある場合は、駆動力制御手段48によって後輪側に任意の駆動力が付与されると共に、制動力制御手段49によって前輪側に任意の制動力が付与される。
【0063】
このような車両の運動状態に応じた各種制御が実現されることによって、路面判定手段50が実行され、車両が現在走行中の路面の状態を検知することができる。路面判定手段50は、複数の演算処理手段を有しており、走行状態判断手段47から出力される動作識別信号に応じて、使用する演算処理手段を決定する。なお、路面判定手段50で実現される各種動作については、後述にて詳細に説明することとする。
【0064】
すなわち、路面摩擦力センサ36、垂直抗力センサ37及び横力センサ38は、車両の車輪と走行路面との間に作用する路面摩擦力Fに応じた路面摩擦力情報と、垂直抗力Nに応じた垂直抗力情報と、横力Sに応じた横力情報を得ることができる任意数の第1のセンサを構成している。μ演算手段45は、第1のセンサからの路面摩擦力情報と垂直抗力情報との比に応じた路面摩擦係数μを演算する路面摩擦係数演算手段を構成している。μs演算手段46は、第1のセンサからの横力情報と垂直抗力情報との比に応じた横路面摩擦係数μsを演算する横路面摩擦係数演算手段を構成している。重力加速度センサ18は、車両に作用する重力加速度Gに応じた重力加速度情報を得ることができる任意数の第2のセンサを構成している。
【0065】
走行状態判断手段47は、路面摩擦係数演算手段により演算された各輪毎の路面摩擦係数μが、全て正の値であり且つ増加傾向にあると認識された時点で、車両の動作が加速中であると識別する加速走行識別信号を生成する加速状態判定手段を構成している。また走行状態判断手段47は、路面摩擦係数演算手段により演算された各輪毎の路面摩擦係数μが、全て正の値であり且つ一定値に収束している状態にあると認識された時点で、車両の動作が定常走行中であると識別する定常走行識別信号を生成する定常走行判定手段を構成している。また走行状態判断手段47は、路面摩擦係数演算手段により演算された各輪毎の路面摩擦係数μが、全て負の値であると認識された時点で、車両の動作が減速中であると識別する減速走行識別信号を生成する減速状態判定手段を構成している。さらに、走行状態判断手段47は、横路面摩擦係数演算手段により演算された各輪毎の横路面摩擦係数μsのうち、左輪あるいは右輪何れか一方の横路面摩擦係数μsが十分大きな正の値であると認識された時点で、車両の動作が旋回走行中であると識別する旋回走行識別信号を生成する旋回走行判定手段を構成している。
【0066】
駆動力制御手段48は、加速状態判定手段によって出力される加速走行識別信号に基づいて、一定の駆動力が駆動輪に作用するようスロットルバルブ12の開度を調整するスロットルバルブ制御手段を構成している。また駆動力制御手段48は、定常走行判定手段によって出力される定常走行識別信号に基づいて、一定の駆動力が駆動輪に作用するようスロットルバルブ12の開度を調整するスロットルバルブ制御手段を構成している。さらに、駆動力制御手段48は、減速状態判定手段によって出力される減速走行識別信号に基づいて、駆動系装置10とクラッチ13との接続を切り離し、駆動系装置10からトランスミッション14を介して伝達される駆動力から駆動輪を解放するクラッチ制御手段を構成している。
【0067】
制動力制御手段49は、定常走行判定手段によって出力される定常走行識別信号に基づいて、一定の制動力が従動輪に作用するようブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御手段を構成している。また制動力制御手段49は、減速状態判定手段によって出力される減速走行識別信号に基づいて、一定の制動力が従動輪に作用するようブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御手段を構成している。
【0068】
路面状態判断手段50は、スロットルバルブ制御手段及び/若しくはブレーキ液圧制御手段による動作が実行されている間、路面摩擦係数演算手段から演算される各輪毎の路面摩擦係数μと、横路面摩擦係数演算手段から演算される各輪毎の横路面摩擦係数μsとから、路面の滑り易さを定量的に表わすパラメータを演算する路面状態演算手段を構成している。さらに、路面状態判断手段50は、車両の運動状態に応じて使用する演算処理を決定する演算処理選択手段を構成している。
【0069】
次に、上記の車両用路面状態検知装置の動作を説明する。車両が走行している間、走行状態判断手段47が、μ演算手段45からの各輪毎の路面摩擦係数μとμs演算手段46からの各輪毎の横路面摩擦係数μsとを随時監視し、路面摩擦係数μの変動に応じて電磁制御弁6を制御し、たとえば50msecの増圧と10msecの油圧保持とを交互に2回繰り返すことにより、従動輪に作用するブレーキ油圧を調整する。と同時に、路面摩擦係数μの変動に応じてスロットルバルブ12の開度を制御し、たとえば50msecの間スロットルバルブ12を15°開き、25msecの間スロットルバルブ12を閉じるという一連の動作を交互に4回繰り返すことにより、駆動輪に作用する駆動力を調整する。そして路面状態判断手段50が、路面摩擦係数μ及び横路面摩擦係数μsに基づいて、走行状態判断手段47により選定された演算処理を実行することによって、車両が現在走行中の路面の状態を検出する。
【0070】
以後、上記のような走行路面の検出が、車両の停止時まで繰り返される。
【0071】
以下、上記動作により優れた路面状体の検出が実現される理由について、路面状態判断手段50において実現される各種動作に関し、理論的に考察する。
【0072】
図10は、CPU40がROM42に格納されたプログラムに基づいて動作することにより、路面判定手段50において実現される仮想的な回路ブロック図であって、CPU40は、制御中μ演算手段51、制御中μs演算手段52、E演算手段53、Edc−rc演算手段54及びErc−dc演算手段55を実現している。これらの回路は、前述した駆動力制御手段48によるスロットルバルブ12の動作、若しくは制動力制御手段49による電磁制御弁6の動作が実行されている間、CPU40がROM42に格納されているプログラムを実行することによって実現される。
【0073】
制御中μ演算手段51は、路面摩擦力センサ36及び垂直抗力センサ37からインターフェイス43を介して入力された路面摩擦力Fと垂直抗力Nとに基づいて、各輪毎の路面摩擦係数μc=F/Nを演算する。尚、制御中μ演算手段51は、μ演算手段45と同等の機能を果たすものであるが、車両の走行状態を識別する目的で算出される路面摩擦係数μと便宜上区別するため、以下では制御中μ演算手段51で演算される路面摩擦係数をμcと呼称する。
【0074】
制御中μs演算手段52は、μs演算手段46と同じく、横力センサ38及び垂直抗力センサ37からインターフェイス43を介して入力された横力Sと垂直抗力Nとに基づいて、各輪毎の横路面摩擦係数μsc=S/Nを演算する。尚、制御中μs演算手段51では、車両の走行状態を識別する目的で算出される横路面摩擦係数μsと便宜上区別するため、以下では制御中μs演算手段52で演算される横路面摩擦係数をμscと呼称する。
【0075】
E演算手段53は、ある一定時間内における路面摩擦力センサ36からの路面摩擦力F、及び垂直抗力センサ37からの垂直抗力Nとに基づいて、摩擦エネルギーE=Σμcを演算する。具体的には、摩擦エネルギーEは、制御中μ演算手段51から得られる路面摩擦係数μcのうち、駆動輪側の路面摩擦係数μdcを、予め定められた時間範囲内で積分することにより求められる。ここで、路面摩擦係数μcの積分は、路面摩擦力Fと垂直抗力Nをディジタルデータとして処理する場合、たとえば、所定時間毎に路面摩擦力Fと垂直抗力Nの比を演算し、それらを累積加算することにより実現できる。なお、予め定められた時間範囲としては、スロットルバルブ12で実行される制御の1サイクルに要する時間としてもよく、たとえば75m秒が選択される。
【0076】
さらにE演算手段53は、路面の滑り易さの状況に応じた閾値aを備えており、演算された摩擦エネルギーEと予め定められた閾値aとを比較することによって、その大小関係から路面状態を識別する。閾値aとしては、たとえば路面の種類に応じて高μ用a1、中μ用a2、砂利路用a3、圧雪路用a4、及び低μ用a5の5種類の所定値が予め実験的に求められており、ROM42に格納されている。ここで、高μ用の閾値a1は中μ用の閾値a2より大きく、中μ用の閾値a2は砂利路用の閾値a3よりも大きく、また砂利路用の閾値a3は圧雪路用の閾値a4よりも大きく、さらに圧雪路用の閾値a4は低μ用の閾値a5よりも大きいという関係を有している。なお、ここでの“高μ路面”とは乾燥したアスファルト路面に相当し、“中μ路面”とは降雨等によって濡れたアスファルト路面若しくは湿潤状態のコンクリート路面を、“砂利路面”とは小石の多い若しくは小石と砂の混合した路面を、“圧雪路面”とは圧力によって降雪が潰された状態の路面を、“低μ路面”とは氷結路面やアイスバーンを意味するものである。
【0077】
図11は、車両制御を実現する上において識別が必要とされる代表的な5種類の路面に対する路面摩擦係数μの分布図であって、横軸に最大路面摩擦係数μmaxを、縦軸に駆動路面摩擦係数μdを採用している。最大路面摩擦係数μmaxとは、過剰な駆動力若しくは制動力の付与により、車輪に空転あるいはスリップが引き起こされる直前の路面摩擦係数μの値であって、車両の安定挙動に係わる限界値として位置付けられている。一方、駆路面摩擦係数μdは、車輪が安定して転動している状態(自由転動を含む)にあるときの路面摩擦係数の値であって、路面特性に応じて駆動路面摩擦係数μdは変化する。すなわち、本実施例における摩擦エネルギーEは、駆動輪が安定して転動するレベルの駆動力を付与したとき、若しくは慣性により自由転動しているときの路面摩擦係数の積分値であることから、駆動路面摩擦係数μdに応じたパラメータであると言い換えることができる。
【0078】
図11より明らかなように、特に砂利路面や圧雪路面では、最大路面摩擦係数μmaxはほとんど同値をとることが知られており、最大路面摩擦係数μmaxではこれらの路面状態を識別することは困難である。しかしながら、駆動摩擦係数μdについて着目してみると、路面状態に応じて駆動摩擦係数μdの分布に差異が認められる。図12は、各種路面走行時における摩擦エネルギーEを示した説明図であって、図11における各種路面状態における駆動摩擦係数μdの分布とほぼ近似した傾向が確認されている。すなわち、E演算手段53において、摩擦エネルギーEと上述の閾値aとの大小関係を比較することによって、現在走行中の路面状態が高μ路面、中μ路面、砂利路面、圧雪路面あるいは低μ路面の何れの状態にあるかを判断することができる。より具体的に説明すると、制御中μ演算手段51から得られる駆動輪側の路面摩擦係数μdcに基づいて、E演算手段53より演算される摩擦エネルギーEと閾値aとを比較して、摩擦エネルギーEが高μ用閾値よりも十分大きな場合は、現在走行中の路面が高μであると判断する。また、摩擦エネルギーEが高μ用閾値よりも小さく且つ中μ用閾値よりも大きな場合は、現在走行中の路面状態を中μ路と判断し、摩擦エネルギーEが中μ用閾値よりも小さく且つ砂利路用閾値よりも大きな場合は、砂利路であると判断すればよい。さらに、摩擦エネルギーEが砂利路用閾値よりも小さく且つ圧雪路用閾値よりも大きい場合は、走行中路面の状態が圧雪路であると判断し、摩擦エネルギーEが圧雪路用閾値よりも小さく且つ低μ用閾値よりも大きい、若しくは摩擦エネルギーEが低μ用閾値よりも小さい場合においては、車両が走行中の路面が低μ状態であると判断すればよい。なお、本実施例では、車両制御への適用を考慮して代表的な5種類の路面状態に対して閾値をそれぞれ設定することとしたが、その他の複数種類の路面状況を細かく設定して、その設定された路面状況に応じた閾値aを決定するという構成にしても良い。
【0079】
一方、図10では、本願発明に係わる別の実施形態における路面判定手段50が開示されており、この実施形態では、走行状態判断手段47より加速走行識別信号が出力された場合、Edc−rc演算手段54により、ある一定時間範囲内の路面摩擦力センサ36からの路面摩擦力F、垂直抗力センサ37からの垂直抗力N、及び重力加速度センサ18からの重力加速度Gとに基づいて、摩擦エネルギーの差分値Edc−rc=Σ(μdc−μrc)が演算される。具体的には、摩擦エネルギーの差分値Edc−rcは、走行状態判断手段47からの加速走行識別信号に基づくスロットルバルブ12の制御が実行され一定の駆動力が駆動輪に付与されている間、制御中μ演算手段51から得られる路面摩擦係数μcのうち、駆動輪に相当する後輪側の路面摩擦係数μdcと従動輪に相当する前輪側の路面摩擦係数μrcとの差分値μdc−μrcを演算して、予め定められた時間範囲内で差分値μdc−μrcを積分することによって求められる。ここで各路面摩擦係数μcの積分演算としては、路面摩擦力Fと垂直抗力Nをディジタルデータとして処理する場合、たとえば、所定時間毎に路面摩擦力Fと垂直抗力Nの比を演算し、それらを累積加算することにより実現できる。なお、予め定められた時間範囲としては、スロットルバルブ12で実行される制御の1サイクルに要する時間としてもよく、たとえば75m秒が選択される。
【0080】
図13より、走行状態判断手段47より加速走行識別信号が出力されたときの駆動輪側及び従動輪側の各種パラメータの変動について考察する。図中の記号sigは、走行判断手段47からの加速走行識別信号に基づいて、駆動力制御手段48よりスロットルコントロールモータ11に出力された制御信号であって、制御信号sigが正の値にあるときはスロットルバルブ12を15°開き、制御信号sigが0でスロットルバルブ12を閉じるというような動作を実現している。このようなスロットルバルブ12の動作により一定の駆動力が生み出され、加速度G0で車両は加速される。駆動輪側路面摩擦係数μdcは、車両が発進すると同時に立ち上がりが生じ、重力加速度センサ18から出力される車両の前後方向の重力加速度Gの発生(加速状態)に伴って駆動輪側路面摩擦係数μdcは上昇する傾向を示す。やがて、スロットルバルブ12の制御が終了して重力加速度Gが減少傾向に至り0に収束する(定常走行に移行する)と、駆動輪側路面摩擦係数μdcの増加の傾きも小さくなり、一定値μ0に収束する。つまり、駆動輪側路面摩擦係数μdcには、車輪に伝達される駆動力に応じて増大し、車両が一定速度で定常走行状態にあるときには一定値μ0に収束するという特性を有していることが分かる。一方、従動輪側路面摩擦係数μrcは、重力加速度Gの大きさに束縛されず、ほぼ一定の傾きを持って直線的に増加する傾向を有することが実験的に確認されている。また、車両が定常走行状態にあるときには、従動輪側路面摩擦係数μrcも一定値に収束する特性を示しており、その一定値は駆動輪側路面摩擦係数μdcと同値のμ0である。
【0081】
すなわち、路面摩擦係数μには、車輪が自由転動することにより生じるタイヤと路面との間の接地面の剥離現象に基づく粘着効果による影響と、車輌を前方に押し出そうとする駆動力に対する反力による影響とが含まれており、車両の挙動に応じた路面の滑り易さの状態を求めようとする場合においては、後者の駆動力に対する反力による影響を考察する必要がある。つまり、駆動輪側路面摩擦係数μdcと従動輪側路面摩擦係数μrcとの差分値μdc−μrcを演算し、その差分値μdc−μrcを積分して摩擦エネルギーの差分値Edc−rcを算出することによって、接地面の剥離現象に伴う粘着効果の影響を排除した、純粋に現在の車両の挙動が反映されたパラメータを得ることができる。
【0082】
より望ましくは、摩擦エネルギーの差分値Edc−rcを重力加速度センサ18からの重力加速度Gで補正する。摩擦エネルギーの差分値Edc−rcには、車両そのものの慣性イナーシャによる影響因子が含まれており、これを排除することによって、より純粋に現在の車両の挙動が反映された摩擦エネルギーの差分値E*dc−rcを得ることができる。摩擦エネルギーの差分値Edc−rcに混入する慣性イナーシャ成分は、車両重心位置に設置された重力加速度センサ18から出力される重力加速度Gと比例関係にあることが分かっており、慣性イナーシャによる影響因子を排除した摩擦エネルギーの差分値E*dc−rcは、下記数式1により求めることができる。なお、下記数式1において、Gは車両の前後方向の加速度、αは比例定数である。
【0083】
【0084】
Edc−rc演算手段54は、路面の滑り易さの状況に応じた閾値bを備えており、演算された摩擦エネルギーの差分値E*dc−rcと予め定められた閾値bとを比較することによって、その大小関係から路面状態を識別する。閾値bとしては、たとえば路面の種類に応じて高μ用b1、中μ用b2、砂利路用b3、圧雪路用b4、及び低μ用b5の5種類の所定値が予め実験的に求められており、ROM42に格納されている。なお、各種路面毎の閾値b1〜b5の関係や、摩擦エネルギーの差分値E*dc−rcと閾値bとの比較については、前述したE演算手段53により演算される摩擦エネルギーEと閾値aとの比較と同じであるため、ここでの詳細な説明は省略するものとする。
【0085】
また、図10では、本願発明に係わる更に別の実施形態における路面判定手段50が開示されており、この実施形態では、走行状態判断手段47より減速走行識別信号が出力された場合、Erc−dc演算手段55により、ある一定時間範囲内の路面摩擦力センサ36からの路面摩擦力F、垂直抗力センサ37からの垂直抗力N、及び重力加速度センサ18からの重力加速度Gとに基づいて、摩擦エネルギーの差分値Erc−dc=Σ(μrc−μdc)が演算される。具体的には、摩擦エネルギーの差分値Erc−dcは、走行状態判断手段47からの減速走行識別信号に基づくクラッチ13の制御と電磁制御弁6の制御が実行され一定の制動力が従動輪に付与されている間、制御中μ演算手段51から得られる路面摩擦係数μcのうち、従動輪に相当する前輪側の路面摩擦係数μrcと駆動輪に相当する後輪側の路面摩擦係数μdcとの差分値μrc−μdcを演算して、予め定められた時間範囲内で差分値μrc−μdcを積分することによって求められる。ここで各路面摩擦係数μcの積分演算としては、路面摩擦力Fと垂直抗力Nをディジタルデータとして処理する場合、たとえば、所定時間毎に路面摩擦力Fと垂直抗力Nの比を演算し、それらを累積加算することにより実現できる。なお、予め定められた時間範囲としては、電磁制御弁6で実行される制御の1サイクルに要する時間としてもよく、たとえば60m秒が選択される。
【0085】
図14より、走行状態判断手段47より減速走行識別信号が出力されたときの駆動輪側及び従動輪側の各種パラメータの変動について考察する。図中の記号sigは、走行判断手段47からの減速走行識別信号に基づいて、制動力制御手段49により電磁制御弁6に出力された制御信号であって、制御信号sigが正の値にあるときはブレーキ油圧を増圧し、制御信号sigが負の値にあるときにはブレーキ油圧を減圧するというような動作を実現している。また同時に、駆動力制御手段48によって駆動系装置10とクラッチ13とが切り離される。このような電磁制御弁6及びクラッチ13の動作により一定の制動力が生み出され、減速度G0で車両は減速される。従動輪側路面摩擦係数μrcは、ブレーキ油圧の発生と同時に立ち上がりが生じ、重力加速度センサ18から出力される車両の前後方向の重力加速度Gの発生(減速状態)に伴って従動輪側路面摩擦係数μrcは減少する傾向を示す。やがて、電磁制御弁6の制御が終了して重力加速度Gが0に収束する(定常走行に移行する)と、従動輪側路面摩擦係数μrcの減少の傾きも小さくなり、一定値μ0に収束する。つまり、従動輪側路面摩擦係数μrcには、車輪に伝達される制動力に応じて増大し、車両が一定速度で定常走行状態にあるときには一定値μ0に収束するという特性を有していることが分かる。一方、駆動輪側路面摩擦係数μdcは、クラッチ13が駆動系装置10より切り離されていることから駆動輪が慣性による自由転動をしている状態であるため、ほぼ一定の傾きを持って直線的に増加する傾向を有することが実験的に確認されている。また、車両が定常走行状態にあるときには、駆動輪側路面摩擦係数μdcも一定値に収束する特性を示しており、その一定値は駆動輪側路面摩擦係数μdcと同値のμ0である。
【0086】
以上のことから、図14に生じている状況は、図13にて説明した一定の駆動力が作用している場合の駆動輪と従動輪とを入れ替えたものであると換言することができる。すなわち、路面摩擦係数μには、車輪が自由転動することにより生じるタイヤと路面間の接地面の剥離現象に基づく粘着効果による影響と、車両の前進を押し止めようとする制動力に対する反力による影響とが含まれており、従動輪側路面摩擦係数μrcと駆動輪側路面摩擦係数μdcとの差分値μrc−μdcを演算し、その差分値μrc−μdcを積分した摩擦エネルギーの差分値Erc−dcを算出することによって、接地面の剥離現象に伴う粘着効果を影響を排除した、純粋に現在の車両の挙動を反映したパラメータを得ることができる。
【0087】
より望ましくは、摩擦エネルギーの差分値Erc−dcを重力加速度センサ18からの重力加速度Gで補正する。摩擦エネルギーの差分値Erc−dcには、前述したように車両そのものの慣性イナーシャによる影響因子が含まれており、これを排除することによって、より純粋に現在の車両の挙動が反映された摩擦エネルギーの差分値E*rc−dcを得ることができる。摩擦エネルギーの差分値Erc−dcに混入する慣性イナーシャ成分は、車両重心位置に設置された重力加速度センサ18から出力される重力加速度Gと比例関係にあることが分かっており、慣性イナーシャによる影響因子を排除した摩擦エネルギーの差分値E*rc−dcは、下記数式2により求めることができる。なお、下記数式1において、Gは車両の前後方向の加速度、βは比例定数である。
【0088】
【0089】
また、Erc−dc演算手段55は、路面の滑り易さの状況に応じた閾値cを備えており、演算された摩擦エネルギーの差分値E*rc−dcと予め定められた閾値cとを比較することによって、その大小関係から路面状態を識別する。閾値cとしては、たとえば路面の種類に応じて高μ用c1、中μ用c2、砂利路用c3、圧雪路用c4、及び低μ用c5の5種類の所定値が予め実験的に求められており、ROM42に格納されている。なお、各種路面毎の閾値c1〜c5の関係や、摩擦エネルギーの差分値E*rc−dcと閾値cとの比較については、前述したE演算手段53により演算される摩擦エネルギーEと閾値aとの比較と同じであるため、ここでの詳細な説明は省略するものとする。
【0090】
このようにすることで、その時々の車両の運動状態に応じて最適な演算手法が選択されるので、高精度な路面判定を実現することができる。また、路面判定を行うに際し、車両の走行状態に応じて各車輪に一定の制動力若しくは駆動力を付与するという構成にしているので、車両の運動状態の変動という外乱要素が含まれず、計測精度を一層向上させることが可能となる。また、電磁制御弁6とスロットルコントロールモータ11を車両の走行状態に応じて適宜制御することで、非常に短期間且つ微小な制動力及び駆動力を各車輪に付与する構成としているため、ドライバを含む車両搭乗者に過大な加減速に伴う違和感や不快感を与えることなく、さらに車輪の空転やスリップといった車両挙動の不安定が生じないので、安全性の高い車両制御への適用が可能である。
【0091】
また、路面の滑り易さを定量的に示すパラメータである車両走行中の路面摩擦係数μ(駆動路面摩擦係数や転がり路面摩擦係数)を用いていることから、従来例のようなオブザーバによる推定演算要素を一切含む事無く、より直接的且つ高精度な路面状態の計測が可能となる。さらに、このような路面摩擦係数μを、路面とタイヤ間に作用する路面摩擦力Fと垂直抗力Nとの比を演算することで求めており、路面摩擦力F及び垂直抗力Nはサスペンション構造体に作用する剪断応力を持って検知する構成としているので、時々刻々と変化する路面状況や車両の運動状態に応じたリアルタイムな路面計測を実現することができる。
【0092】
なお、本実施例における路面判定手段50では、直進走行時において制御中μ演算手段51から得られる路面摩擦係数μcを用いる構成としたが、走行状態判断手段47より加速、定常、減速何れかの走行識別信号と共に旋回走行識別信号が出力された場合、路面摩擦係数μcの代わりに制御中μs演算手段52から得られる横路面摩擦係数μscを用いる構成としても良い。具体的には、制御中μs演算手段52から演算される横路面摩擦係数μscのうち、外輪側の横路面摩擦係数μscが演算パラメータとして選定される。たとえば、車両が左旋回加速状態にあってEdc−rc演算手段54を用いた路面判定が適用された場合、摩擦エネルギーの差分値Edc−rcは、外輪に相当する右後輪側の横路面摩擦係数μsdcと、同じく外輪に相当する右前輪側の横路面摩擦係数μsrcとの差分値μsdc−μsrcを演算し、予め定められた時間範囲内で差分値μsdc−μsrcを積分することによって求められる。そして、このようにして求められた摩擦エネルギーの差分値Edc−rcと所定の閾値とを比較することによって、その大小関係から路面状態が識別するようにしればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明における車両用路面状態検知装置の構成を示した説明図である。
【図2】本願発明における車両用路面状態検知装置に係わる応力検知センサの概観図である。
【図3】本願発明における車両用路面状態検知装置に係わる信号処理回路図である。
【図4】本願発明における車両用路面状態検知装置に係わる応力検知センサの配置説明図である。
【図5】本願発明における車両用路面状態検知装置に係わる別の実施形態での応力検知センサの概観図である。
【図6】本願発明における車両用路面状態検知装置の回路ブロック図である。
【図7】本願発明における車両用路面状態検知装置に備えられたCPUにより実現される仮想的な回路ブロック図である。
【図8】車両が直進走行したときの路面摩擦係数μの変動を示した波形図である。
【図9】車両が旋回走行したときの路面摩擦係数μの変動を示した波形図である。
【図10】本願発明における車両用路面状態検知装置に備えられたCPUにより実現される仮想的な回路ブロック図である。
【図11】代表的な路面状態に対する最大路面摩擦係数μmaxと駆動路面摩擦係数μdとの関係を示した分布図である。
【図12】本願発明に係おける車両用路面状態検知装置に係わる摩擦エネルギーと路面状態との関係を示したグラフである。
【図13】本願発明における車両用路面状態検知装置に係わる各部信号波形図である。
【図14】本願発明における車両用路面状態検知装置に係わる各部信号波形図である。
【符号の説明】
2 車輪
3 応力検知センサ
4 ステアリングナックル
5 電子制御回路
6 電磁制御弁
10 駆動系装置
11 スロットルコントロールモータ
12 スロットルバルブ
13 クラッチ
14 トランスミッション
18 重力加速度センサ
36 路面摩擦力センサ
37 垂直抗力センサ
38 横力センサ
40 CPU
41 RAM
42 ROM
43 インターフェイス
45 μ演算手段
46 μs演算手段
47 走行状態判断手段
48 駆動力制御手段
49 制動力制御手段
50 路面判定手段
51 制御中μ演算手段
52 制御中μs演算手段
53 E演算手段
54 Ed−r演算手段
55 Er−d演算手段
Claims (10)
- 車両の運動状態に基づいて各車輪と路面との間に作用する路面μを検出する路面μ検出手段を備えた車両の路面状態検知装置において、
前記各車輪の支持部材内部に埋設固着され、各車輪と路面との間に作用する路面摩擦力Fに応じた路面摩擦力情報と、垂直抗力Nに応じた垂直抗力情報とを剪断応力として検知することができる任意数の第1のセンサと、
前記車両の運動状態に応じて前記車輪毎に付与される駆動力若しくは制動力を各別に制御する車輪制御手段とを有し、
前記車輪制御手段は、前記車両の運動状態に応じて前記車輪の制御モードを可変することを特徴とした、車両用路面状態検知装置。 - 前記車輪制御手段は、
前記車両が停車状態から発進状態に移行した場合、ある一定時間若しくは所定の設定速度まで、予め定められた加速度で加速されるように駆動輪側に付与する駆動力を調整する制御モードに可変されることを特徴とした、請求項1に記載の車両用路面状態検知装置。 - 前記車輪制御手段は、
前記車両が定常走行状態に至る場合、駆動輪側に所定の駆動力を与えると共に、従動輪側に所定のブレーキ制動力を付与するように前記車輪の制御モードを可変することを特徴とした、請求項1に記載の車両用路面状態検知装置。 - 前記車輪に駆動力を伝達する前記車両の駆動系を切り離し可能とするクラッチ制御手段を備え、
前記車輪制御手段は、前記クラッチ制御手段を稼動して慣性による走行へと移行させるように前記車輪の制御モードを可変することを特徴とした、請求項1に記載の車両用路面状態検知装置。 - 前記路面μ検出手段は、
前記車輪制御手段により決定された前記車輪の制御モードに応じて、前記第1のセンサからの路面摩擦力情報と垂直抗力情報との比に応じた各輪毎の路面摩擦係数情報を演算する路面摩擦係数μ演算手段と、
前記路面摩擦係数μ演算手段から得られる駆動輪側路面摩擦係数情報を時間積分することにより、車両走行時に走行路面に応じて損失される駆動摩擦エネルギーEdを演算する駆動摩擦演算手段と備え、
前記駆動摩擦演算手段により演算された駆動摩擦エネルギーに基づいて、車両走行中の路面μを検出することを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の車両用路面状態検知装置。 - 前記路面μ検出手段は、
前記車輪制御手段により決定された前記車輪の制御モードに基づいて、前記第1のセンサからの路面摩擦力情報と垂直抗力情報との比に応じた各輪毎の路面摩擦係数情報を演算する路面摩擦係数μ演算手段と、
前記路面摩擦係数μ演算手段から得られる各輪毎の路面摩擦係数情報のうち、駆動輪側路面摩擦係数情報と従動輪側路面摩擦係数情報との差に応じた差分パラメータμd−rを演算する摩擦差分パラメータ演算手段とを備え、
前記摩擦差分パラメータ演算手段により演算された差分パラメータμd−rに基づいて、車両走行中の路面μを検出することを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の車両用路面状態検知装置。 - 前記車両に作用する重力加速度Gに応じた重力加速度情報を得ることができる任意数の第2のセンサを有し、
前記摩擦差分パラメータ演算手段は、前記重力加速度情報に基づく重力加速度Gにより差分パラメータμd−rを補正演算することを特徴とする、請求項6に記載の車両用路面状態検知装置。 - 前記車輪制御手段により決定された前記車輪の制御モードに基づいて、請求項5乃至請求項7の何れかに記載の路面μ検出手段を選択することを特徴とする、車両用路面状態検知装置。
- 車両旋回運動時に、前記路面摩擦力Fの代わりに、車両の進行方向と直交する方向に車輪と路面間に作用するコーナリングフォースFsを用い、前記コーナリングフォースFsに応じた横力情報と前記垂直抗力情報とに基づいて横路面摩擦係数μsパラメータを求める構成としたことを特徴とする、請求項1乃至請求項8の何れかに記載の車両用路面状態検知装置。
- 前記第1のセンサは、
前記車輪の支持部材であるサスペンション構造体の任意の位置に設けられた孔内部に埋設固着され、
前記孔は、前記サスペンション構造体に存在する応力中心帯を内包する位置に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項9の何れかに記載の車両用路面状態検知装置。
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