JP2004009012A - 微多孔膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度、伸度等の力学強度が高く、かつ、透水性能に優れた微多孔膜を提供すること。
【解決手段】変性層状ケイ酸塩の積層構造が剥離によって崩壊した状態で微分散している微多孔膜であり、この微多孔膜は、高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデンと、変性層状ケイ酸塩、例えば、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロマイドで変性された層状ケイ酸塩である合成フッ素化マイカ、とを含有するドープを貧溶媒に接触させ、湿式凝固させることによって製造することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】変性層状ケイ酸塩の積層構造が剥離によって崩壊した状態で微分散している微多孔膜であり、この微多孔膜は、高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデンと、変性層状ケイ酸塩、例えば、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロマイドで変性された層状ケイ酸塩である合成フッ素化マイカ、とを含有するドープを貧溶媒に接触させ、湿式凝固させることによって製造することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油水分離、液ガス分離、上下水の浄化、ウイルスや細菌等の除去、濃縮又は培地、薬液や処理水等から微粒子を除去する産業プロセス用フィルター、リチウムイオン電池等のセパレーター、ポリマー電池用の固体電解質支持体等、広範囲な用途に利用できる微多孔膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、微多孔膜は様々な用途において需要が伸びている。例えば、リチウムイオン2次電池用セパレーター等の用途に注目が集まっている。従来はセパレーターの材質としては、耐薬品性を考慮して、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマーが使用されてきた。ポリオレフィン系セパレーターは高強度という利点を有する反面、その耐薬品性故に電解液との親和性に乏しい。
【0003】
しかし、近年では電解液との高い親和性を有するポリフッ化ビニリデン高分子化合物やポリアクリロニトリル高分子化合物を材質とする試みが見られるようになった。ポリフッ化ビニリデン等の高分子化合物をセパレーターの材質として使用すると、その高い親和性故に、極めて高いイオン伝導性が期待でき、注目を浴びている。
しかし、従来のポリフッ化ビニリデン製の微多孔膜は強度が低かったため、電極と重ね合わせて電池を作製する際に、電極表面の突起物等により損傷を受け、内部短絡等のトラブルを起こすことが問題となっていた。したがって、ポリフッ化ビニリデン高分子化合物本来の高いイオン伝導性という利点を活かせないのが現状であり、ポリオレフィン系セパレーター並みの高強度微多孔膜の開発が切望されている。
【0004】
ポリフッ化ビニリデン製微多孔膜のその他の用途としては、油水分離や液ガス分離に用いる分離膜、上下水の浄化を目的とする分離膜等、血漿分画製剤やバイオ医薬品等の製剤から細菌やウィルス等の病原体を除去する分離膜、薬液や処理水等から微粒子や固形不純物を除去する産業プロセスフィルター等のように、何れも高いろ過圧に耐えうる高強度微多孔膜を必要とする用途へ適用できる。
ポリフッ化ビニリデン製微多孔膜の一般的製造方法としては、いわゆる湿式法と呼ばれる非溶媒誘起型相分離による技術が従来より多数開示されており、例えば、特開昭58−91732号公報及び特開昭59−16503号公報には、孔径が小さく、透水性能の高い微多孔膜の製造法が開示されている。非溶媒誘起型相分離により形成された微多孔膜は、空孔率が高く、透水性能に優れるが、膜の力学強度が極めて低いという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、強度、伸度等の力学強度が高く、かつ、透水性能に優れた微多孔膜を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、微多孔膜中に、積層構造が崩壊した状態の変性層状ケイ酸塩を微分散させることよって、透水性能を落とすことなく、力学強度が高い微多孔膜が得られることを見出した。特に、高分子化合物として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた場合は、膜の湿式製法において、その溶媒や凝固条件を最適化することによって、著しく高い力学強度を有する微多孔膜を得ることができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 変性層状ケイ酸塩の積層構造が剥離によって崩壊した状態で微分散していることを特徴とする微多孔膜。
(2) 微多孔膜を構成する高分子化合物がポリフッ化ビニリデンであることを特徴とする(1)に記載の微多孔膜。
(3) 高分子化合物と変性層状ケイ酸塩を含有するドープを貧溶媒に接触させ、湿式凝固させることを特徴とする(1)に記載の微多孔膜の製造方法。
(4) 溶媒がN−メチルピロリドンであり、貧溶媒として水を用いることを特徴とする(3)に記載の微多孔膜の製造方法。
(5) 貧溶媒である水の温度が50℃以上であることを特徴とする(3)又は(4)に記載の微多孔膜の製造方法
(6) ドープを貧溶媒に接触させる前に、50℃〜120℃で乾式凝固させることを特徴とする(3)〜(5)のいずれか1つに記載の微多孔膜の製造方法。
【0008】
以下に、本発明の微多孔膜及びその製法について詳細に説明する。
本発明に用いられる変性層状ケイ酸塩は、タルク、ピロフィライト、スメクタイト、バーミキュライト、マイカ等の2:1型の粘土鉱物を、後に述べるように、適切な変性剤で処理したものであり、これらの中でも、スメクタイト及び合成マイカが好ましい。
スメクタイトとして、モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、サポナイト等が挙げられる。これらは、天然鉱物を精製したもの、水熱合成、溶融合成、、焼成合成等によって得られたもの等である。
【0009】
層状ケイ酸塩の変性法には限定は無く、様々な方法を用いることができる。例えば、層状ケイ酸塩の各層の負電荷と水素結合できる化合物を層間に挿入する方法、層状ケイ酸塩の末端のシラノール基をカップリング剤処理する方法等が挙げられる。層間挿入法のための化合物には限定はなく、有機化合物及び無機化合物、例えば、長鎖のアルコール、カルボン酸、界面活性剤、シランカップリング剤等が用いられるが、中でも、界面活性剤が好ましい。
【0010】
界面活性剤として、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性の界面活性剤を用いることができる。好ましくはカチオン性及びノニオン性界面活性剤、より好ましくはカチオン性界面活性剤である。
カチオン性界面活性剤の例としては、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド又はクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアミン等のアミン類等が挙げられる。アミンの場合は、適量の酸を添加することによって使用可能となる。
【0011】
非イオン性界面活性剤の例として、親水部にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はその共重合体、水酸基等をもち、疎水部として、長鎖の飽和又は不飽和のアルキル基等をもつ化合物が挙げられる。このような化合物として、例えば、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル等のポリエチレングリコールのエーテル類、ポリエチレングリコールステアレート、ポリエチレングリコールラウレート等のポリエチレングリコールのカルボン酸エステル類等が挙げられる。
【0012】
界面活性剤による変性方法としては、水又はアルコールに膨潤させた層状ケイ酸塩と、エタノール、メタノール、水等の溶媒に溶解した界面活性剤を混合した後、得られる変性層状ケイ酸塩を濾別、洗浄、乾燥する方法が挙げられる。
界面活性剤として非イオン性界面活性剤を用いる場合は、別法として、非イオン性界面活性剤の融点、又はガラス転移点より10〜50℃高い温度で層状ケイ酸塩と混合後、同温度で一定時間放置する方法がある。この方法では、溶融状態又は運動性の高い状態の非イオン性界面活性剤が層状ケイ酸塩の層間に侵入する。この方法は、上記の溶媒法に比べて、著しく製造コストが低い。
【0013】
本発明において、変性層状ケイ酸塩の積層構造が剥離によって崩壊した状態で微分散しているとは、微多孔膜のX線回折において、変性層状ケイ酸塩の層間距離に相当するピークが消失している状態をいう。
これを、図1を例に説明する。図1の曲線1は、実施例1に説明するように、カチオン性界面活性剤ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロマイドで変性した変性層状ケイ酸塩を含有するPVDF微多孔膜のX線回折プロファイルである。図1の曲線2は、原料である変性層状ケイ酸塩のX線回折プロファイルである。図1の1と2を対比すると、図1の1には、図1の2で示すように、原料である変性層状ケイ酸塩が示すピークが認められない。このような状態が、変性層状ケイ酸塩の積層構造が剥離によって崩壊して微分散している状態である。
【0014】
一方、図1の3曲線は、比較例3に示すように、実施例1とは異なる層状ケイ酸塩を含有する微多孔膜のX線である。この場合は、図1の曲線4で示すように、原料である層状ケイ酸塩のピーク位置と全く同じ位置にピークを示し、積層構造が崩壊して微分散していないことを示している。
変性層状ケイ酸塩が微分散していない場合には、孔径及び孔形状が不均一となり、安定した透水性能及び力学物性が得られない。
【0015】
変性層状ケイ酸塩が微分散した微多孔膜を得るためには、変性層状ケイ酸塩の変性法を高分子化合物に併せて選ぶことが好ましい。具体的には、ドープ調製前の変性層状ケイ酸塩の層間距離(h0)を調製することが好ましく、h0が0.6〜2.0nmの場合には、有機化微多孔膜中に微分散しやすい。
層間距離(h0)は、以下の式に基づいて算出する。
h0(nm)=d(nm)−0.95 (1)
ここで、0.95nmは、変性層状ケイ酸塩のシート1枚の厚みで、どの変性層状ケイ酸塩を用いても値は殆ど変わらない。dは、X線回折測定によって、変性変性層状ケイ酸塩の001面の底面反射に相当するピーク位置(2θ)からBraggの式を用いて算出することができる。
【0016】
d=0.154/2sinθ (2)
h0は、例えば、界面活性剤を変性剤として用いる場合は、その疎水部の鎖長によって制御することができる。一般的には、鎖長が長い程、h0は大きくなる。カチオン性界面活性剤を用いる場合は、アンモニウム塩のヘッドグループ(1級、2級or3級)によってもh0を変化させることができる。同じ界面活性剤を用いる場合でも、イオン交換量(charge exchange capacity:CEC)の異なる層状ケイ酸塩を用いることによって、h0を制御することができる。
【0017】
変性層状ケイ酸塩の添加量には限定はないが、好ましくは、高分子化合物に対して0.01〜40質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、最も好ましくは0.5〜5質量部である。
本発明の微多孔膜を構成する基本となる高分子化合物の種類には限定はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリスルフォン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができるが、ポリフッ化ビニリデンを用いた場合、力学強度向上の効果が大きくなるので好ましい。
【0018】
本発明の微多孔膜は、湿式法又は溶融法により製造することができ。湿式法により製造することが好ましい。
湿式法により製造する場合、高分子化合物と変性層状ケイ酸塩を含有するドープを貧溶媒に接触させて、湿式凝固して微多孔膜を製造する。
本発明の微多孔膜の製造に用いられるドープは、溶媒、高分子化合物及び変性層状ケイ酸塩を含む。これらの組成比は、製造する膜の構造によって異なるが、好ましくは60〜98質量部/1〜40質量部/0.05〜2.0質量部、より好ましくは70〜80質量部/19.0〜28.5質量部/0.5〜1.5質量部である。
【0019】
溶媒は、高分子化合物を溶解することができ、かつ、変性層状ケイ酸塩を微分散できるものを用いる。例えば、高分子化合物として、ポリフッ化ビニリデンを用いる場合、溶媒として、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、トルエン等が用いられるが、溶解性及び高分散性の観点からNMPが好ましい。
高分子化合物を溶媒に溶解させる方法、及び変性層状ケイ酸塩を溶媒に微分散させる方法には限定はなく、通常の方法を用いることができる。すなわち、高分子化合物、変性層状ケイ酸塩及び溶媒を所定濃度で混合し、スリーワンモーター、スターラー等で攪拌する。攪拌時間は、濃度、種類によって異なるが、おおよそ1〜10時間である。その際、加熱攪拌することが好ましい。高分子化合物の溶解及び変性層状ケイ酸塩の分散状態は目視で判定する。この他に、変性層状ケイ酸塩の分散液及び高分子化合物溶液をそれぞれ調製して所定濃度になるように混合してドープを調整してもよい。
【0020】
ドープと接触させる貧溶媒とは、ドープ中の高分子化合物を溶解しない溶媒のことを意味する。貧溶媒は、溶媒の種類によって大きく変化するが、ポリフッ化ビニリデン/NMP系の場合を例にとると、水、エタノール、メタノール、又はこれらの混合溶媒が好ましい。中でも、水を用いた場合に、力学強度及び透水性能に優れた微多孔膜が得られる。
貧溶媒の温度は、得られる膜の物性に大きな影響を及ぼす。貧溶媒の種類やドープの種類にも依存するが、貧溶媒の温度が高いほど、微多孔膜の力学物性が向上する。貧溶媒の温度が50℃以上の条件から得られた微多孔膜は、著しく力学強度が高い。
【0021】
ドープを貧溶媒に接触させる方法には制限はなく、通常、工業的に用いられる方法が使用できる。例えば、中空糸型の微多孔膜の場合、ドープを中空ノズルから貧溶媒中に吐出させ、必要に応じて、水洗処理や延伸処理をしながら巻き取る方法であれば、いずれの紡糸方法(緯引き、縦引き、流管)も採用できる。フィルムの場合は、スリット紡口、アプリケーター等で流延成膜した後、貧溶媒に浸漬させ、水洗/乾燥させることにより微多孔膜を得ることができる。乾燥温度、及び乾燥時間には限定はないが、30℃から60℃で1時間くらいが好ましい。また、貧溶媒を一種以上組み合わせ、多段で使用してもよい。ドープと貧溶媒との接触時間は限定されない。
【0022】
微多孔膜の製造において、ドープを貧溶媒に接触させる前に、50〜120℃で乾式凝固させて微多孔膜を製造する方法について説明する。この方法は、上記の方法と同様に、中空ノズルからドープを吐出させた後、貧溶媒に接触させる前に加熱処理によって乾式凝固プロセス導入する。フィルムの場合は、スリット紡口、アプリケーター等で流延成膜し、所定の温度で乾式凝固を施した後、貧溶媒に接触させる。その後の水洗、乾燥方法については上述と同様の方法を採用できる。
乾式凝固温度が50℃以上120℃以下の場合には、得られる微多孔膜の力学強度は著しく高くなる。乾式凝固温度が120℃を越えると、ゲル化が進行して、微多孔膜が得られにくくなる。乾式凝固時間は、高分子化合物や貧溶媒の種類によっても異なるが、おおよそ、10秒から20分である。
【0023】
次に、溶融法について説明する。溶融法の場合は、特開昭58−93734号公報に示されるような一般的な方法を適用することができる。すなわち、高分子化合物及びシリカに代表される親水性無機微粉体を混合した後、溶融成型し、次いで、その成型物から親水性無機粉体を抽出する方法である。この高分子化合物にあらかじめ変性層状ケイ酸塩を混合しておくことにより、公知の方法と同じ方法で微多孔膜を製造することができる。
無機粉体がシリカの場合には、抽出液は、通常、アルカリ水溶液が用いられるが、この抽出過程で変性層状ケイ酸塩は抽出されず、微多孔膜のセル壁に微分散したまま残存する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
本発明で用いる評価法は以下のとおりである。
(1)変性層状ケイ酸塩の分散状態の評価
変性層状ケイ酸塩の分散状態は、X線回折測定によって判定する。
X線測定は、微多孔膜をリガク社製X線回折装置を用いて行う。
分散状態は以下のように○、×で分類する。本発明における微分散とは、○の状態を意味する。
○:X線回折測定において、図1の曲線1に示すように、変性層状ケイ酸塩の0
01面のピークが消失している。
×:X線回折測定において、図1の曲線3に示すように、変性層状ケイ酸塩の0
01面のピークが存在する。
【0025】
(2)破断強度測定
破断強度(kgf/cm2)及び伸度(%)は、幅10mmの短冊状片の試料を用いて、ASTMD882に準拠して測定する。
(3)空孔率測定
微多孔膜の体積(cm3)と質量(g)を測定し、得られた結果から次式を用いて空孔率(%)を計算する。
空孔率=100×(1−質量/(高分子化合物の密度×体積))
【0026】
【実施例1】
カチオン性界面活性剤(ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロマイド、Aldrich社製)7.57gをエタノール100gに溶解した(A液とする)。次に、層状ケイ酸塩である合成フッ素化マイカ(DMA、トピー工業社製、CEC=90meq/100g)10gを脱イオン水500gにホモミキサーを用いて分散させた(B液とする)。A液とB液を50℃で12時間混合した。得られた沈殿を濾別し、エタノールで数回洗浄後、100℃で5時間真空乾燥して変性層状ケイ酸塩1を得た。この変性層状ケイ酸塩0.4gを市販のN−メチルピロリドン(NMP)80gに添加し、マグネチックスターラーを用いて3時間攪拌した。これに、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:solef(登録商標)6010、San Diego Plastis社製)19.6gを添加し、スリーワンモーターを用いて60℃で6時間攪拌してドープを得た。このドープを20cm×20cmのガラス板上にスパイラルバーコーター(wet膜厚:175μm)を用いてキャストした。そのガラス板を、貧溶媒である25℃の脱イオン水3L中に浸漬し、5分凝固させた。その後、50℃で30分乾燥してPVDF微多孔膜を得た。
【0027】
【実施例2】
実施例1の変性層状ケイ酸塩を、市販の変性層状ケイ酸塩(closite(登録商標)93A、Southern Clay社製)に代えた以外は実施例1と同様の手法でPVDF微多孔膜を得た。
【実施例3】
実施例1の貧溶媒(脱イオン水)の温度が48℃であること以外は実施例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【実施例4】
実施例1の貧溶媒(脱イオン水)の温度が50℃であること以外は実施例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【0028】
【実施例5】
実施例1の貧溶媒(脱イオン水)温度が80℃であること以外は実施例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【実施例6】
実施例5において、ガラス板上にキャストした溶液を貧溶媒に浸漬する前に、110℃のホットプレート上で、4分乾式凝固する以外は実施例5と同じ条件でPVDF微多孔膜を得た。
【実施例7】
実施例6において乾式凝固時間が10分であること以外は実施例6と同じ条件で微多孔膜を得た。
【0029】
【比較例1】
変性層状ケイ酸塩を使わないこと以外は実施例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【比較例2】
変性層状ケイ酸塩として、市販の有機化モンモリロナイト(Closite(登録商標)25A、SouthernClay社製)を用いる以外は実施例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【比較例3】
変性層状ケイ酸塩のかわりに未処理の層状ケイ酸塩(合成フッ素化マイカ(DMA、トピー工業社製、CEC=90meq/100g)を用いた以外は実施例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【0030】
【比較例4】
貧溶媒(脱イオン水)の温度が48℃であること以外は比較例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【比較例5】
貧溶媒(脱イオン水)の温度が50℃であること以外は比較例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【比較例6】
貧溶媒(脱イオン水)温度が80℃であること以外は比較例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
上記の実施例及び比較例に基づき、表1には、微分散の効果、表2には、湿式法における凝固温度の効果、表3には、湿式凝固に先立つ乾式凝固の効果を示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】
本発明の微多孔膜は、高い空孔率を有し、高強度を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】微多孔膜及び変性層状ケイ酸塩のX線回折チャート。
【発明の属する技術分野】
本発明は、油水分離、液ガス分離、上下水の浄化、ウイルスや細菌等の除去、濃縮又は培地、薬液や処理水等から微粒子を除去する産業プロセス用フィルター、リチウムイオン電池等のセパレーター、ポリマー電池用の固体電解質支持体等、広範囲な用途に利用できる微多孔膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、微多孔膜は様々な用途において需要が伸びている。例えば、リチウムイオン2次電池用セパレーター等の用途に注目が集まっている。従来はセパレーターの材質としては、耐薬品性を考慮して、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマーが使用されてきた。ポリオレフィン系セパレーターは高強度という利点を有する反面、その耐薬品性故に電解液との親和性に乏しい。
【0003】
しかし、近年では電解液との高い親和性を有するポリフッ化ビニリデン高分子化合物やポリアクリロニトリル高分子化合物を材質とする試みが見られるようになった。ポリフッ化ビニリデン等の高分子化合物をセパレーターの材質として使用すると、その高い親和性故に、極めて高いイオン伝導性が期待でき、注目を浴びている。
しかし、従来のポリフッ化ビニリデン製の微多孔膜は強度が低かったため、電極と重ね合わせて電池を作製する際に、電極表面の突起物等により損傷を受け、内部短絡等のトラブルを起こすことが問題となっていた。したがって、ポリフッ化ビニリデン高分子化合物本来の高いイオン伝導性という利点を活かせないのが現状であり、ポリオレフィン系セパレーター並みの高強度微多孔膜の開発が切望されている。
【0004】
ポリフッ化ビニリデン製微多孔膜のその他の用途としては、油水分離や液ガス分離に用いる分離膜、上下水の浄化を目的とする分離膜等、血漿分画製剤やバイオ医薬品等の製剤から細菌やウィルス等の病原体を除去する分離膜、薬液や処理水等から微粒子や固形不純物を除去する産業プロセスフィルター等のように、何れも高いろ過圧に耐えうる高強度微多孔膜を必要とする用途へ適用できる。
ポリフッ化ビニリデン製微多孔膜の一般的製造方法としては、いわゆる湿式法と呼ばれる非溶媒誘起型相分離による技術が従来より多数開示されており、例えば、特開昭58−91732号公報及び特開昭59−16503号公報には、孔径が小さく、透水性能の高い微多孔膜の製造法が開示されている。非溶媒誘起型相分離により形成された微多孔膜は、空孔率が高く、透水性能に優れるが、膜の力学強度が極めて低いという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、強度、伸度等の力学強度が高く、かつ、透水性能に優れた微多孔膜を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、微多孔膜中に、積層構造が崩壊した状態の変性層状ケイ酸塩を微分散させることよって、透水性能を落とすことなく、力学強度が高い微多孔膜が得られることを見出した。特に、高分子化合物として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた場合は、膜の湿式製法において、その溶媒や凝固条件を最適化することによって、著しく高い力学強度を有する微多孔膜を得ることができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 変性層状ケイ酸塩の積層構造が剥離によって崩壊した状態で微分散していることを特徴とする微多孔膜。
(2) 微多孔膜を構成する高分子化合物がポリフッ化ビニリデンであることを特徴とする(1)に記載の微多孔膜。
(3) 高分子化合物と変性層状ケイ酸塩を含有するドープを貧溶媒に接触させ、湿式凝固させることを特徴とする(1)に記載の微多孔膜の製造方法。
(4) 溶媒がN−メチルピロリドンであり、貧溶媒として水を用いることを特徴とする(3)に記載の微多孔膜の製造方法。
(5) 貧溶媒である水の温度が50℃以上であることを特徴とする(3)又は(4)に記載の微多孔膜の製造方法
(6) ドープを貧溶媒に接触させる前に、50℃〜120℃で乾式凝固させることを特徴とする(3)〜(5)のいずれか1つに記載の微多孔膜の製造方法。
【0008】
以下に、本発明の微多孔膜及びその製法について詳細に説明する。
本発明に用いられる変性層状ケイ酸塩は、タルク、ピロフィライト、スメクタイト、バーミキュライト、マイカ等の2:1型の粘土鉱物を、後に述べるように、適切な変性剤で処理したものであり、これらの中でも、スメクタイト及び合成マイカが好ましい。
スメクタイトとして、モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、サポナイト等が挙げられる。これらは、天然鉱物を精製したもの、水熱合成、溶融合成、、焼成合成等によって得られたもの等である。
【0009】
層状ケイ酸塩の変性法には限定は無く、様々な方法を用いることができる。例えば、層状ケイ酸塩の各層の負電荷と水素結合できる化合物を層間に挿入する方法、層状ケイ酸塩の末端のシラノール基をカップリング剤処理する方法等が挙げられる。層間挿入法のための化合物には限定はなく、有機化合物及び無機化合物、例えば、長鎖のアルコール、カルボン酸、界面活性剤、シランカップリング剤等が用いられるが、中でも、界面活性剤が好ましい。
【0010】
界面活性剤として、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性の界面活性剤を用いることができる。好ましくはカチオン性及びノニオン性界面活性剤、より好ましくはカチオン性界面活性剤である。
カチオン性界面活性剤の例としては、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド又はクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアミン等のアミン類等が挙げられる。アミンの場合は、適量の酸を添加することによって使用可能となる。
【0011】
非イオン性界面活性剤の例として、親水部にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はその共重合体、水酸基等をもち、疎水部として、長鎖の飽和又は不飽和のアルキル基等をもつ化合物が挙げられる。このような化合物として、例えば、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル等のポリエチレングリコールのエーテル類、ポリエチレングリコールステアレート、ポリエチレングリコールラウレート等のポリエチレングリコールのカルボン酸エステル類等が挙げられる。
【0012】
界面活性剤による変性方法としては、水又はアルコールに膨潤させた層状ケイ酸塩と、エタノール、メタノール、水等の溶媒に溶解した界面活性剤を混合した後、得られる変性層状ケイ酸塩を濾別、洗浄、乾燥する方法が挙げられる。
界面活性剤として非イオン性界面活性剤を用いる場合は、別法として、非イオン性界面活性剤の融点、又はガラス転移点より10〜50℃高い温度で層状ケイ酸塩と混合後、同温度で一定時間放置する方法がある。この方法では、溶融状態又は運動性の高い状態の非イオン性界面活性剤が層状ケイ酸塩の層間に侵入する。この方法は、上記の溶媒法に比べて、著しく製造コストが低い。
【0013】
本発明において、変性層状ケイ酸塩の積層構造が剥離によって崩壊した状態で微分散しているとは、微多孔膜のX線回折において、変性層状ケイ酸塩の層間距離に相当するピークが消失している状態をいう。
これを、図1を例に説明する。図1の曲線1は、実施例1に説明するように、カチオン性界面活性剤ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロマイドで変性した変性層状ケイ酸塩を含有するPVDF微多孔膜のX線回折プロファイルである。図1の曲線2は、原料である変性層状ケイ酸塩のX線回折プロファイルである。図1の1と2を対比すると、図1の1には、図1の2で示すように、原料である変性層状ケイ酸塩が示すピークが認められない。このような状態が、変性層状ケイ酸塩の積層構造が剥離によって崩壊して微分散している状態である。
【0014】
一方、図1の3曲線は、比較例3に示すように、実施例1とは異なる層状ケイ酸塩を含有する微多孔膜のX線である。この場合は、図1の曲線4で示すように、原料である層状ケイ酸塩のピーク位置と全く同じ位置にピークを示し、積層構造が崩壊して微分散していないことを示している。
変性層状ケイ酸塩が微分散していない場合には、孔径及び孔形状が不均一となり、安定した透水性能及び力学物性が得られない。
【0015】
変性層状ケイ酸塩が微分散した微多孔膜を得るためには、変性層状ケイ酸塩の変性法を高分子化合物に併せて選ぶことが好ましい。具体的には、ドープ調製前の変性層状ケイ酸塩の層間距離(h0)を調製することが好ましく、h0が0.6〜2.0nmの場合には、有機化微多孔膜中に微分散しやすい。
層間距離(h0)は、以下の式に基づいて算出する。
h0(nm)=d(nm)−0.95 (1)
ここで、0.95nmは、変性層状ケイ酸塩のシート1枚の厚みで、どの変性層状ケイ酸塩を用いても値は殆ど変わらない。dは、X線回折測定によって、変性変性層状ケイ酸塩の001面の底面反射に相当するピーク位置(2θ)からBraggの式を用いて算出することができる。
【0016】
d=0.154/2sinθ (2)
h0は、例えば、界面活性剤を変性剤として用いる場合は、その疎水部の鎖長によって制御することができる。一般的には、鎖長が長い程、h0は大きくなる。カチオン性界面活性剤を用いる場合は、アンモニウム塩のヘッドグループ(1級、2級or3級)によってもh0を変化させることができる。同じ界面活性剤を用いる場合でも、イオン交換量(charge exchange capacity:CEC)の異なる層状ケイ酸塩を用いることによって、h0を制御することができる。
【0017】
変性層状ケイ酸塩の添加量には限定はないが、好ましくは、高分子化合物に対して0.01〜40質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、最も好ましくは0.5〜5質量部である。
本発明の微多孔膜を構成する基本となる高分子化合物の種類には限定はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリスルフォン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができるが、ポリフッ化ビニリデンを用いた場合、力学強度向上の効果が大きくなるので好ましい。
【0018】
本発明の微多孔膜は、湿式法又は溶融法により製造することができ。湿式法により製造することが好ましい。
湿式法により製造する場合、高分子化合物と変性層状ケイ酸塩を含有するドープを貧溶媒に接触させて、湿式凝固して微多孔膜を製造する。
本発明の微多孔膜の製造に用いられるドープは、溶媒、高分子化合物及び変性層状ケイ酸塩を含む。これらの組成比は、製造する膜の構造によって異なるが、好ましくは60〜98質量部/1〜40質量部/0.05〜2.0質量部、より好ましくは70〜80質量部/19.0〜28.5質量部/0.5〜1.5質量部である。
【0019】
溶媒は、高分子化合物を溶解することができ、かつ、変性層状ケイ酸塩を微分散できるものを用いる。例えば、高分子化合物として、ポリフッ化ビニリデンを用いる場合、溶媒として、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、トルエン等が用いられるが、溶解性及び高分散性の観点からNMPが好ましい。
高分子化合物を溶媒に溶解させる方法、及び変性層状ケイ酸塩を溶媒に微分散させる方法には限定はなく、通常の方法を用いることができる。すなわち、高分子化合物、変性層状ケイ酸塩及び溶媒を所定濃度で混合し、スリーワンモーター、スターラー等で攪拌する。攪拌時間は、濃度、種類によって異なるが、おおよそ1〜10時間である。その際、加熱攪拌することが好ましい。高分子化合物の溶解及び変性層状ケイ酸塩の分散状態は目視で判定する。この他に、変性層状ケイ酸塩の分散液及び高分子化合物溶液をそれぞれ調製して所定濃度になるように混合してドープを調整してもよい。
【0020】
ドープと接触させる貧溶媒とは、ドープ中の高分子化合物を溶解しない溶媒のことを意味する。貧溶媒は、溶媒の種類によって大きく変化するが、ポリフッ化ビニリデン/NMP系の場合を例にとると、水、エタノール、メタノール、又はこれらの混合溶媒が好ましい。中でも、水を用いた場合に、力学強度及び透水性能に優れた微多孔膜が得られる。
貧溶媒の温度は、得られる膜の物性に大きな影響を及ぼす。貧溶媒の種類やドープの種類にも依存するが、貧溶媒の温度が高いほど、微多孔膜の力学物性が向上する。貧溶媒の温度が50℃以上の条件から得られた微多孔膜は、著しく力学強度が高い。
【0021】
ドープを貧溶媒に接触させる方法には制限はなく、通常、工業的に用いられる方法が使用できる。例えば、中空糸型の微多孔膜の場合、ドープを中空ノズルから貧溶媒中に吐出させ、必要に応じて、水洗処理や延伸処理をしながら巻き取る方法であれば、いずれの紡糸方法(緯引き、縦引き、流管)も採用できる。フィルムの場合は、スリット紡口、アプリケーター等で流延成膜した後、貧溶媒に浸漬させ、水洗/乾燥させることにより微多孔膜を得ることができる。乾燥温度、及び乾燥時間には限定はないが、30℃から60℃で1時間くらいが好ましい。また、貧溶媒を一種以上組み合わせ、多段で使用してもよい。ドープと貧溶媒との接触時間は限定されない。
【0022】
微多孔膜の製造において、ドープを貧溶媒に接触させる前に、50〜120℃で乾式凝固させて微多孔膜を製造する方法について説明する。この方法は、上記の方法と同様に、中空ノズルからドープを吐出させた後、貧溶媒に接触させる前に加熱処理によって乾式凝固プロセス導入する。フィルムの場合は、スリット紡口、アプリケーター等で流延成膜し、所定の温度で乾式凝固を施した後、貧溶媒に接触させる。その後の水洗、乾燥方法については上述と同様の方法を採用できる。
乾式凝固温度が50℃以上120℃以下の場合には、得られる微多孔膜の力学強度は著しく高くなる。乾式凝固温度が120℃を越えると、ゲル化が進行して、微多孔膜が得られにくくなる。乾式凝固時間は、高分子化合物や貧溶媒の種類によっても異なるが、おおよそ、10秒から20分である。
【0023】
次に、溶融法について説明する。溶融法の場合は、特開昭58−93734号公報に示されるような一般的な方法を適用することができる。すなわち、高分子化合物及びシリカに代表される親水性無機微粉体を混合した後、溶融成型し、次いで、その成型物から親水性無機粉体を抽出する方法である。この高分子化合物にあらかじめ変性層状ケイ酸塩を混合しておくことにより、公知の方法と同じ方法で微多孔膜を製造することができる。
無機粉体がシリカの場合には、抽出液は、通常、アルカリ水溶液が用いられるが、この抽出過程で変性層状ケイ酸塩は抽出されず、微多孔膜のセル壁に微分散したまま残存する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
本発明で用いる評価法は以下のとおりである。
(1)変性層状ケイ酸塩の分散状態の評価
変性層状ケイ酸塩の分散状態は、X線回折測定によって判定する。
X線測定は、微多孔膜をリガク社製X線回折装置を用いて行う。
分散状態は以下のように○、×で分類する。本発明における微分散とは、○の状態を意味する。
○:X線回折測定において、図1の曲線1に示すように、変性層状ケイ酸塩の0
01面のピークが消失している。
×:X線回折測定において、図1の曲線3に示すように、変性層状ケイ酸塩の0
01面のピークが存在する。
【0025】
(2)破断強度測定
破断強度(kgf/cm2)及び伸度(%)は、幅10mmの短冊状片の試料を用いて、ASTMD882に準拠して測定する。
(3)空孔率測定
微多孔膜の体積(cm3)と質量(g)を測定し、得られた結果から次式を用いて空孔率(%)を計算する。
空孔率=100×(1−質量/(高分子化合物の密度×体積))
【0026】
【実施例1】
カチオン性界面活性剤(ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロマイド、Aldrich社製)7.57gをエタノール100gに溶解した(A液とする)。次に、層状ケイ酸塩である合成フッ素化マイカ(DMA、トピー工業社製、CEC=90meq/100g)10gを脱イオン水500gにホモミキサーを用いて分散させた(B液とする)。A液とB液を50℃で12時間混合した。得られた沈殿を濾別し、エタノールで数回洗浄後、100℃で5時間真空乾燥して変性層状ケイ酸塩1を得た。この変性層状ケイ酸塩0.4gを市販のN−メチルピロリドン(NMP)80gに添加し、マグネチックスターラーを用いて3時間攪拌した。これに、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:solef(登録商標)6010、San Diego Plastis社製)19.6gを添加し、スリーワンモーターを用いて60℃で6時間攪拌してドープを得た。このドープを20cm×20cmのガラス板上にスパイラルバーコーター(wet膜厚:175μm)を用いてキャストした。そのガラス板を、貧溶媒である25℃の脱イオン水3L中に浸漬し、5分凝固させた。その後、50℃で30分乾燥してPVDF微多孔膜を得た。
【0027】
【実施例2】
実施例1の変性層状ケイ酸塩を、市販の変性層状ケイ酸塩(closite(登録商標)93A、Southern Clay社製)に代えた以外は実施例1と同様の手法でPVDF微多孔膜を得た。
【実施例3】
実施例1の貧溶媒(脱イオン水)の温度が48℃であること以外は実施例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【実施例4】
実施例1の貧溶媒(脱イオン水)の温度が50℃であること以外は実施例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【0028】
【実施例5】
実施例1の貧溶媒(脱イオン水)温度が80℃であること以外は実施例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【実施例6】
実施例5において、ガラス板上にキャストした溶液を貧溶媒に浸漬する前に、110℃のホットプレート上で、4分乾式凝固する以外は実施例5と同じ条件でPVDF微多孔膜を得た。
【実施例7】
実施例6において乾式凝固時間が10分であること以外は実施例6と同じ条件で微多孔膜を得た。
【0029】
【比較例1】
変性層状ケイ酸塩を使わないこと以外は実施例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【比較例2】
変性層状ケイ酸塩として、市販の有機化モンモリロナイト(Closite(登録商標)25A、SouthernClay社製)を用いる以外は実施例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【比較例3】
変性層状ケイ酸塩のかわりに未処理の層状ケイ酸塩(合成フッ素化マイカ(DMA、トピー工業社製、CEC=90meq/100g)を用いた以外は実施例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【0030】
【比較例4】
貧溶媒(脱イオン水)の温度が48℃であること以外は比較例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【比較例5】
貧溶媒(脱イオン水)の温度が50℃であること以外は比較例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
【比較例6】
貧溶媒(脱イオン水)温度が80℃であること以外は比較例1と同様の方法でPVDF微多孔膜を得た。
上記の実施例及び比較例に基づき、表1には、微分散の効果、表2には、湿式法における凝固温度の効果、表3には、湿式凝固に先立つ乾式凝固の効果を示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】
本発明の微多孔膜は、高い空孔率を有し、高強度を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】微多孔膜及び変性層状ケイ酸塩のX線回折チャート。
Claims (6)
- 変性層状ケイ酸塩の積層構造が剥離によって崩壊した状態で微分散していることを特徴とする微多孔膜。
- 微多孔膜を構成する高分子化合物がポリフッ化ビニリデンであることを特徴とする請求項1記載の微多孔膜。
- 高分子化合物と変性層状ケイ酸塩を含有するドープを貧溶媒に接触させ、湿式凝固させることを特徴とする請求項1記載の微多孔膜の製造方法。
- 溶媒がN−メチルピロリドンであり、貧溶媒として水を用いることを特徴とする請求項3記載の微多孔膜の製造方法。
- 貧溶媒である水の温度が50℃以上であることを特徴とする請求項3又は4記載の微多孔膜の製造方法
- ドープを貧溶媒に接触させる前に、50〜120℃で乾式凝固させることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の微多孔膜の製造方法。
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