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JP2004002795A - ノルボルネン系開環重合体、ノルボルネン系開環重合体水素化物及びそれらの製造方法 - Google Patents

ノルボルネン系開環重合体、ノルボルネン系開環重合体水素化物及びそれらの製造方法 Download PDF

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JP2004002795A
JP2004002795A JP2003103934A JP2003103934A JP2004002795A JP 2004002795 A JP2004002795 A JP 2004002795A JP 2003103934 A JP2003103934 A JP 2003103934A JP 2003103934 A JP2003103934 A JP 2003103934A JP 2004002795 A JP2004002795 A JP 2004002795A
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Japan
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norbornene
group
ring
formula
catalyst
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Pending
Application number
JP2003103934A
Other languages
English (en)
Inventor
Kazunori Taguchi
田口 和典
Yasuo Tsunokai
角替 靖男
Seiji Okada
岡田 誠司
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Zeon Corp
Original Assignee
Nippon Zeon Co Ltd
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Publication date
Application filed by Nippon Zeon Co Ltd filed Critical Nippon Zeon Co Ltd
Priority to JP2003103934A priority Critical patent/JP2004002795A/ja
Publication of JP2004002795A publication Critical patent/JP2004002795A/ja
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  • Polyoxymethylene Polymers And Polymers With Carbon-To-Carbon Bonds (AREA)

Abstract

【課題】特定の立体配置のカルボキシル基及び/又はエステル基を置換基として有するノルボルネン系単量体から得られるノルボルネン系開環重合体及びその水素化物、並びにそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】分子内に、下記に示す繰り返し単位(1)を有し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量が1,000〜1,000,000である開環重合体及びその製造方法、並びに前記開環重合体の二重結合のうち50%以上が水素化されてなる水素化物及びその製造方法。
Figure 2004002795

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又はヘテロ原子を含有する官能基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表し、式:COORで表される基と式:COORで表される基とはトランスの位置にある。mは0又は1である。)
【選択図】 なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なノルボルネン系開環重合体及び該重合体水素化物、並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カルボキシル基又はエステル基などの極性官能基を置換基として有するノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素化物は、耐熱性、電気特性、低吸水性などに優れた極性官能基含有ポリマーとして注目されている。また、該ポリマーは、金属やガラスなどの無機材料に対する密着性に優れ、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤、硬化剤、難燃剤などの有機材料との相溶性にも優れるため、広範な複合材料用途への利用が期待されている。
【0003】
従来、かかる極性官能基含有ポリマーを製造する方法としては、例えば、エステル基を含有するノルボルネン系単量体をタングステンのカルベン錯体を用いて開環重合する方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、この方法においては、製造原料として用いる官能基含有ノルボルネン系単量体の重合反応性が低いため、収率よく開環重合体を得るためには多量の重合触媒を必要とするという問題があった。また、官能基含有ノルボルネン系単量体は、官能基を持たないノルボルネン系単量体よりも重合反応性が低く、これらを共重合しようとしても、多量の官能基含有ノルボルネン系単量体を必要とする上、所望の組成比と分子量をもつ共重合体が得られない場合があった。
【0005】
また、カルボキシル基を置換基として有するノルボルネン類は、特に重合反応性が低く、このノルボルネン系単量体をそのまま開環重合させても、効率よく開環重合体を得ることが出来なかった。このため、従来、カルボキシル基を置換基として有するノルボルネン系開環重合体は、例えば、エステル基を含有するノルボルネン系単量体を開環重合した後、場合によってはさらに水素化した後、ポリマー中に導入されたエステル基を加水分解する方法(特許文献2,3);カルボン酸無水物基を含有するノルボルネン系単量体を開環重合した後、場合によってはさらに水素化した後、ポリマー中に導入されたカルボン酸無水物基を加水分解又は加アルコール分解する方法(特許文献4);等によって製造されていた。
しかしながら、これらの方法は、重合工程後にさらにエステル基又は酸無水物基を加水分解(又は加アルコール分解)する工程が必要であり、作業が煩雑であった。
【0006】
ところで、シクロペンタジエンと官能基含有オレフィンとのディールス・アルダー付加反応においては、5位若しくは6位、又は5、6位の両方に官能基を有するノルボルネン系単量体はエンド体とエキソ体の混合物として得られるが、エンド体の生成量が多くなるのが一般的である。また、官能基含有ノルボルネン系単量体をメタセシス重合触媒の存在下に開環重合する場合、官能基含有ノルボルネン系単量体のエキソ体は容易に重合するのに対し、エンド体は重合速度が遅く、重合転化率が低いことが知られている(非特許文献1等)。
【0007】
そこで、官能基含有ノルボルネン系単量体の開環重合体を製造するに際し、官能基含有ノルボルネン系単量体のエキソ体のみを分離精製する試みや、該単量体のエンド体をエキソ体に異性化する試みがこれまでに数多く行われてきた。
しかしながら、純度の高いエキソ体を得るには、分離精製工程や異性化する工程が必要であるため、多大な労力を要していた。
【0008】
【特許文献1】
特公昭60−43365号公報
【特許文献2】
特開平5−97978号公報
【特許文献3】
特開2001−139776号公報
【特許文献4】
特開平11−130843号公報
【非特許文献1】
Macromolecules,第33巻,6239−6248頁,2000年、Polymer,第39巻,1007−1014頁,1998年
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、特定の立体配置のカルボキシル基及び/又はエステル基を置換基として有するノルボルネン系単量体から容易に得られるノルボルネン系開環重合体及びその水素化物、並びにそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究した結果、特定の立体配置のカルボキシル基及び/又はエステル基を置換基として有するノルボルネン系単量体は、メタセシス重合触媒の存在下の開環重合反応における重合反応性が高く、高収率でカルボキシル基及び/又はエステル基を有するノルボルネン系開環重合体が得られることを見出した。また、得られるノルボルネン系開環重合体を水素化触媒の存在下に水素化することにより、ノルボルネン系開環重合体水素化物を効率よく得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
かくして本発明の第1によれば、分子内に、式(1)
【0012】
【化3】
Figure 2004002795
【0013】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含有する官能基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表し、式:COORで表される基と式:COORで表される基とはトランスの位置にある。mは0又は1である。)で表されるノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位を含有し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより求められる重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることを特徴とするノルボルネン系開環重合体が提供される。
【0014】
本発明の第2によれば、式(2)
【0015】
【化4】
Figure 2004002795
【0016】
(式中、R〜Rは前記と同じ意味を表す。また、式:COORで表される基と式:COORで表される基とはトランスの位置にある。)で表されるノルボルネン系単量体を、メタセシス重合触媒の存在下に開環メタセシス重合することを特徴とするノルボルネン系開環重合体の製造方法が提供される。
本発明の製造方法においては、前記メタセシス重合触媒として、ルテニウムカルベン錯体触媒を用いるのが好ましい。
【0017】
本発明の第3によれば、本発明のノルボルネン系開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化して得られるノルボルネン系開環重合体水素化物であって、前記二重結合の50%以上が水素化されたものであることを特徴とするノルボルネン系開環重合体水素化物が提供される。
【0018】
また本発明の第4によれば、本発明のノルボルネン系開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化触媒存在下で水素化することを特徴とするノルボルネン系開環重合体水素化物の製造方法が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、1)ノルボルネン系単量体、2)ノルボルネン系開環重合体及びその製造方法、並びに、3)ノルボルネン系開環重合体水素化物及びその製造方法に項分けして詳細に説明する。
【0020】
1)ノルボルネン系単量体
本発明においては、前記式(2)で表されるノルボルネン系単量体を用いる。前記式(2)で表されるノルボルネン系単量体は、COOR基とCOOR基のいずれか一方の基がエンド(endo)位にあり、他方の基がエキソ(exo)位にあることを特徴とする。このような特定の立体配置を有するノルボルネン系単量体は重合反応性が高く、COOR基とCOOR基のいずれか一方又は両方の基がカルボキシル基であるノルボルネン系単量体を用いる場合であっても、効率よく目的とするノルボルネン系開環重合体を得ることができる。
【0021】
前記式(2)において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含有する官能基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
【0022】
前記ヘテロ原子を含有する官能基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基等が挙げられる。
【0023】
ヘテロ原子は周期律表(短周期型)第5族又は第6族の原子であり、例えば、N、O、P、S、As、Se原子等が挙げられる。また、ハロゲン原子としては、例えば、F、Cl、Br、I原子等が挙げられる。
【0024】
ヘテロ原子を含有する官能基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の置換基を有しない炭素数1〜10のアルキル基;
【0025】
メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、4−メトキシブチル基等の酸素原子を含有する官能基で置換された炭素数1〜10のアルキル基;メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、2−メチルチオエチル基、3−メチルチオプロピル基、4−メチルチオブチル基等の硫黄原子を含有する官能基で置換された炭素数1〜10のアルキル基;
【0026】
ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、2−ジメチルアミノエチル基等の窒素原子を含有する官能基で置換された炭素数1〜10のアルキル基;フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基等のハロゲン原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基;等が挙げられる。
【0027】
ヘテロ原子を含有する官能基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、2−クロロシクロプロピル基、2−メチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−フルオロシクロペンチル基、3−メトキシシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0028】
また、ヘテロ原子を含有する官能基又はハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有しない炭素数1〜10のアルキル基であるのが好ましく、両方が水素原子であるのが特に好ましい。また、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有しない炭素数1〜10のアルキル基であるのが好ましく、RかRの少なくとも一方が水素原子であるのがより好ましく、両方が水素原子であるのが特に好ましい。
【0030】
前記式(2)で表されるノルボルネン系単量体において、mは0又は1を表し、合成・精製が容易であること、及び目的とする開環重合体が効率よく得られること等から、mが0であるのが好ましい。
【0031】
mが0であるノルボルネン系単量体の具体例としては、5−endo−6−exo−ジカルボキシ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−endo−6−exo−ジカルボキシ−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−5−endo−6−exo−ジカルボキシ−2−ノルボルネン等の2つのカルボキシル基を有するノルボルネン系単量体;5−endo−カルボキシ−6−exo−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−カルボキシ−6−exo−エトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−カルボキシ−6−exo−n−プロポキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−カルボキシ−6−exo−イソプロポキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−カルボキシ−6−exo−n−ブトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−カルボキシ−6−exo−tert−ブトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−カルボキシ−6−exo−メトキシメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−カルボキシ−6−exo−メチルチオメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−カルボキシ−6−exo−ジメチルアミノメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−カルボキシ−6−exo−トリフルオロメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−カルボキシ−6−exo−シクロペンチルオキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−カルボキシ−6−exo−フェノキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−カルボキシ−6−exo−ベンジルオキシカルボニル−2−ノルボルネン、及びこれらの化合物の5位と6位の置換基の立体配置がそれぞれ逆になった化合物等の、一つのカルボキシル基と一つのエステル基とを有するノルボルネン系単量体;
【0032】
5−endo−6−exo−ジメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−6−exo−ジエトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−メトキシカルボニル−6−exo−エトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−メトキシカルボニル−6−exo−tert−ブトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−6−exo−ジ(n−プロポキシカルボニル)−2−ノルボルネン、5−endo−6−exo−ジイソプロポキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−endo−6−exo−ジ(n−ブトキシカルボニル)−2−ノルボルネン、5−endo−6−exo−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−2−ノルボルネン、5−endo−6−exo−ジ(メトキシメトキシカルボニル)−2−ノルボルネン、5−endo−6−exo−ジ(メチルチオメトキシカルボニル)−2−ノルボルネン、5−endo−6−exo−ジ(ジメチルアミノメトキシカルボニル)−2−ノルボルネン、5−endo−6−exo−ジ(トリフルオロメトキシカルボニル)−2−ノルボルネン、5−endo−6−exo−ジ(シクロペンチルオキシカルボニル)−2−ノルボルネン、5−endo−6−exo−ジ(フェノキシカルボニル)−2−ノルボルネン等の二つのエステル基を有するノルボルネン系単量体;等が挙げられる。
【0033】
また、mが1であるテトラシクロドデセン類としては、上記ノルボルネン系単量体にさらにシクロペンタジエンが付加した化合物を挙げることができる。
【0034】
前記式(2)で表されるノルボルネン系単量体は、例えば、次のようにして、容易に製造することができる。
【0035】
【化5】
Figure 2004002795
【0036】
(式中、R〜Rは前記と同じ意味を表す。)
すなわち、式(2)で表されるノルボルネン系単量体のうち、mが0であるノルボルネン系単量体(2−1)は、シクロペンタジエン(3)と、トランス−α,β−不飽和ジカルボン酸又はそのエステル(4)とのディールス・アルダー付加反応により得ることができる。
【0037】
また、mが1であるテトラシクロドデセン類(2−2)は、上記ディールス・アルダー付加反応で得られたノルボルネン系単量体(2−1)と、シクロペンタジエン(3)とのディールス・アルダー付加反応により得ることができる(下記反応式)。
【0038】
【化6】
Figure 2004002795
【0039】
(式中、R〜Rは、前記と同じ意味を表す。)
いずれの反応においても、反応液を蒸留法、カラムクロマトグラフィー法、再結晶化法等の公知の分離・精製手段により精製して、目的とする式(2−1)及び(2−2)で表されるノルボルネン系単量体を効率よく単離することができる。
【0040】
2)ノルボルネン系開環重合体及びその製造方法
本発明のノルボルネン系開環重合体は、分子内に、前記式(1)で表されるノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位を有する。
前記ノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位の全繰り返し単位に対する割合は、重合体の製造目的によって任意に選択することができるが、耐熱性、電気特性、低吸水性と密着性、相溶性のバランスを考慮すると、1〜90%が好ましく、1〜80%がより好ましい。ノルボルネン系開環重合体に含まれる式(1)で表される繰り返し単位の全繰り返し単位に対する割合は、例えば、得られた開環重合体のH−NMRスペクトルを測定することにより求めることができる。
【0041】
また、ノルボルネン系開環重合体の重量平均分子量は特に制限されないが、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは3,000〜500,000、より好ましくは5,000〜50,000である。前記開環重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として求められる値である。
【0042】
本発明のノルボルネン系開環重合体は、(i)前記式(2)で表されるノルボルネン系単量体の1種を単独重合して得られるものであっても、(ii)前記式(2)で表されるノルボルネン系単量体の2種以上を共重合して得られるものであっても、(iii)前記式(2)で表されるノルボルネン系単量体の少なくとも1種と、ノルボルネン系単量体と共重合可能な他の任意のモノマーとを共重合して得られるものであってもよい。
【0043】
前記(iii)において用いる他の任意のモノマーとしては、例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−シクロへキシル−2−ノルボルネン、5−シクロへキセニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン等の、置換基を有しない又は置換基として炭化水素基を有するノルボルネン系モノマー;5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、2−ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物、2−ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸イミド、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン等の官能基を有するモノマー;シクロペンテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン類;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン等の環状ジオレフィン類;等が挙げられる。中でも、置換基を有しない、又は置換基として炭化水素基を有するノルボルネン系モノマーが、所望の組成比と分子量を持つ共重合体を容易に得ることができるので好ましい。
【0044】
本発明のノルボルネン系開環重合体は、前記式(2)で表されるノルボルネン系単量体の少なくとも1種を、メタセシス重合触媒の存在下に開環重合することにより製造することができる。
【0045】
メタセシス重合触媒は、周期表第4〜8族遷移金属化合物であって、前記式(2)で表されるノルボルネン系単量体を開環メタセシス重合する触媒であればどのようなものでもよい。例えば、Olefin Metathesis andMetathesis Polymerization(K.J.Ivin and J.C.Mol,Academic Press,San Diego
1997)に記載されているような開環メタセシス重合触媒が使用できる。
【0046】
用いることができる開環メタセシス重合触媒としては、例えば、(a)遷移金属ハロゲン化合物と助触媒との組み合わせによる開環メタセシス重合触媒、(b)周期表第4〜8族遷移金属−カルベン錯体触媒、(c)メタラシクロブタン錯体触媒等が挙げられる。これらのメタセシス重合触媒は単独で、あるいは2種類以上を混合して使用することができる。これらの中でも、助触媒を必要とせず、しかも高活性であることから、(b)の周期表第4〜8族の遷移金属−カルベン錯体触媒を使用するのが好ましく、ルテニウムカルベン錯体触媒の使用が特に好ましい。
【0047】
前記(a)の遷移金属ハロゲン化合物の具体例としては、MoBr、MoBr、MoBr、MoCl、MoCl、MoF、MoOCl、MoOF、等のモリブデンハロゲン化物;WBr、WCl、WBr、WCl、WCl、WCl、WF、WI、WOBr、WOCl、WOF、WCl(OCCl等のタングステンハロゲン化物;VOCl、VOBr等のバナジウムハロゲン化物;TiCl、TiBr等のチタンハロゲン化物;等が挙げられる。
【0048】
また助触媒の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリへキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジ−n−ブチルアルミニウムモノクロリド、ジエチルアルミニウムモノアイオダイド、ジエチルアルミニウムモノヒドリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等の有機アルミニウム化合物;
【0049】
テトラメチルスズ、ジエチルジメチルスズ、テトラエチルスズ、ジブチルジエチルスズ、テトラブチルスズ、テトラオクチルスズ、トリオクチルスズフロリド、トリオクチルスズクロリド、トリオクチルスズブロミド、トリオクチルスズアイオダイド、ジブチルスズジフロリド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジブロミド、ジブチルスズジアイオダイド、ブチルスズトリフロリド、ブチルスズトリクロリド、ブチルスズトリブロミド、ブチルスズトリアイオダイド等の有機スズ化合物;
【0050】
メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム化合物;n−ペンチルナトリウム等の有機ナトリウム化合物;メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムブロミド、n−プロピルマグネシウムブロミド、t−ブチルマグネシウムクロリド、アリールマグネシウムクロリド等の有機マグネシウム化合物;ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物;ジエチルカドミウム等の有機カドミウム化合物;トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリ−n−ブチルホウ素、トリフェニルホウ素、トリス(パーフルオロフェニル)ホウ素、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート等の有機ホウ素化合物;等が挙げられる。
【0051】
前記(b)の周期表第4〜8族遷移金属−カルベン錯体触媒としては、例えば、タングステンアルキリデン錯体触媒、モリブデンアルキリデン錯体触媒、レニウムアルキリデン錯体触媒、ルテニウムカルベン錯体触媒等が挙げられる。
【0052】
前記タングステンアルキリデン錯体触媒の具体例としては、W(N−2,6−Pr )(CHBu)(OBu、W(N−2,6−Pr )(CHBu)(OCMeCF、W(N−2,6−Pr )(CHBu)(OCMe(CF、W(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OBu、W(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMeCF、W(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF等が挙げられる。
【0053】
モリブデンアルキリデン錯体触媒の具体例としては、Mo(N−2,6−Pr )(CHBu)(OBu、Mo(N−2,6−Pr )(CHBu)(OCMeCF、Mo(N−2,6−Pr )(CHBu)(OCMe(CF、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OBu、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMeCF、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(BIPHEN)、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(BINO)(THF)等が挙げられる。
【0054】
レニウムアルキリデン錯体触媒の具体例としては、Re(CBu)(CHBu)(O−2,6−Pr 、Re(CBu)(CHBu)(O−2−Bu、Re(CBu)(CHBu)(OCMeCF、Re(CBu)(CHBu)(OCMe(CF、Re(CBu)(CHBu)(O−2,6−Me等が挙げられる。
【0055】
上記式中、Prはイソプロピル基を、Buはtert−ブチル基を、Meはメチル基を、Phはフェニル基を、BIPHENは、5,5’,6,6’−テトラメチル−3,3’−ジ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオキシ基を、BINOは、1,1’−ジナフチル−2,2’−ジオキシ基を、THFはテトラヒドロフランをそれぞれ表す。
【0056】
また、ルテニウムカルベン錯体触媒の具体例としては、下記の式(A)又は式(B)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
【化7】
Figure 2004002795
【0058】
上記式(A)及び(B)中、=CR及び=C=CRは、反応中心のカルベン炭素を含むカルベン化合物である。R及びRは、それぞれ独立して水素原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、これらのカルベン化合物はヘテロ原子を含有していてもいなくてもよい。Lはヘテロ原子含有カルベン化合物を表し、Lはヘテロ原子含有カルベン化合物又は任意の中性の電子供与性化合物を表す。
【0059】
ここで、ヘテロ原子含有カルベン化合物とは、カルベン炭素及びヘテロ原子とを含有する化合物をいう。L及びLの両方又はLは、ヘテロ原子含有カルベン化合物であり、これらに含まれるカルベン炭素にはルテニウム金属原子が直接に結合しており、ヘテロ原子を含む基が結合している。
【0060】
及びLは、それぞれ独立して任意のアニオン性配位子を示す。また、R、R、L、L、L及びLの2個、3個、4個、5個又は6個は、互いに結合して多座キレート化配位子を形成してもよい。また、ヘテロ原子の具体例としては、N、O、P、S、As、Se原子等を挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、S原子等が好ましく、N原子が特に好ましい。
【0061】
前記式(A)及び式(B)において、アニオン(陰イオン)性配位子L、Lは、中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ジケトネート基、アルコキシ基、アリールオキシ基やカルボキシル基等の酸素を含む炭化水素基;塩化シクロペンタジエニル基等のハロゲン原子で置換された脂環式炭化水素基等を挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0062】
が中性の電子供与性化合物の場合は、Lは中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよい。その具体例としては、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネート類等が挙げられる。これらの中でも、ホスフィン類やピリジン類が好ましく、トリアルキルホスフィンがより好ましい。
【0063】
前記一般式(A)で表されるルテニウム錯体触媒としては、例えば、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド等のヘテロ原子含有カルベン化合物と中性の電子供与性化合物が結合したルテニウムカルベン錯体;
【0064】
ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド等の2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウムカルベン錯体;等が挙げられる。
【0065】
前記一般式(B)で表されるルテニウムカルベン錯体触媒としては、例えば、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t−ブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリド等が挙げられる。
また、(c)のメタラシクロブタン錯体触媒の具体例としては、チタナシクロブタン類等が挙げられる。
【0066】
メタセシス重合触媒の使用量は、触媒に対する単量体のモル比で、触媒:単量体=1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1:1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000である。触媒量が前記モル比よりも多すぎると触媒除去が困難となることがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られないことがある。
【0067】
メタセシス重合触媒を用いるノルボルネン系単量体の開環重合は、溶媒中又は無溶媒で行なうことができる。重合反応終了後、生成した重合体を単離することなく、そのまま水素化反応を行う場合は、溶媒中で重合するのが好ましい。
【0068】
用いる溶媒は生成する重合体を溶解し、かつ重合反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されない。
用いる溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等の含窒素系炭化水素;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエ−テル類;アセトン、エチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、安息香酸メチル等のエステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;等が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類、ケトン類又はエステル類の使用が好ましい。
【0069】
溶媒中のノルボルネン系単量体の濃度は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜45重量%、さらに好ましくは5〜40重量%である。ノルボルネン系単量体の濃度が1重量%未満では重合体の生産性が悪くなることがあり、50重量%を超えると重合後の粘度が高すぎて、その後の水素化等が困難となることがある。
【0070】
また、メタセシス重合触媒は溶媒に溶解して反応系に添加してもよいし、溶解させることなくそのまま添加してもよい。触媒溶液を調製する溶媒としては、前記重合反応に用いる溶媒と同様の溶媒が挙げられる。
【0071】
重合温度は特に制限はないが、通常、−100℃〜+200℃、好ましくは−50℃〜+180℃、より好ましくは−30℃〜+160℃、さらに好ましくは0℃〜+140℃である。重合時間は、通常1分から100時間であり、反応の進行状況に応じて適宜調節することができる。
【0072】
また、重合反応においては、重合体の分子量を調整するために分子量調整剤を反応系に添加することができる。分子量調整剤としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン類;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等酸素含有ビニル化合物;アクリロニトリル、アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物等を用いることができる。前記式(2)で表されるノルボルネン系単量体に対して、分子量調整剤を0.1〜100モル%使用することにより、所望の分子量を有する重合体を得ることができる。
【0073】
3)ノルボルネン系開環重合体水素化物及びその製造方法
本発明のノルボルネン系開環重合体水素化物は、本発明のノルボルネン系開環重合体の炭素−炭素二重結合が水素化されたものである。
本発明のノルボルネン系開環重合体水素化物において、炭素−炭素二重結合の水素化された割合(水素化率)は、通常50%以上であり、耐熱性の観点から、70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのがさらに好ましい。
【0074】
ノルボルネン系開環重合体水素化物の水素化率は、例えば、ノルボルネン系開環重合体のH−NMRスペクトルにおける炭素−炭素二重結合に由来するピーク強度と、水素化物のH−NMRスペクトルにおける炭素−炭素二重結合に由来するピーク強度とを比較することにより求めることができる。
【0075】
ノルボルネン系開環重合体の水素化反応は、水素化触媒の存在下に水素ガスを用いて、ノルボルネン系開環重合体の主鎖中の炭素−炭素二重結合を飽和単結合に変換することにより行なうことができる。
【0076】
用いる水素化触媒は、均一系触媒、不均一系触媒等特に限定されず、オレフィン化合物の水素化に際して一般的に用いられているものを適宜使用することができる。
【0077】
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn−ブチルリチウムの組み合わせ、ジルコノセンジクロリドとsec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウム等の遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなるチーグラー系触媒;前記開環メタセシス重合触媒の項で記述したルテニウムカルベン錯体触媒、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、特開平7−2929、特開平7−149823、特開平11−109460、特開平11−158256、特開平11−193323、特開平11−109460等に記載されているルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
【0078】
不均一系触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた水素化触媒が挙げられる。より具体的には、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等を用いることができる。これらの水素化触媒は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
これらの中でも、ノルボルネン系開環重合体に含まれる官能基の変性等の副反応を起こすことなく、該重合体中の炭素−炭素二重結合を選択的に水素化できる点から、ロジウム、ルテニウム等の貴金属錯体触媒及びパラジウム/カーボン等のパラジウム担持触媒の使用が好ましく、ルテニウムカルベン錯体触媒又はパラジウム担持触媒の使用がより好ましい。
【0080】
ルテニウムカルベン錯体触媒は、前述した開環メタセシス重合触媒及び水素化触媒として使用することができる。この場合には、開環メタセシス反応と水素化反応とを連続的に行なうことができる。
【0081】
また、ルテニウムカルベン錯体触媒を使用して開環メタセシス反応と水素化反応を連続的に行う場合、エチルビニルエーテル等のビニル化合物やα−オレフィン等の触媒改質剤を添加して該触媒を活性化させてから、水素化反応を開始する方法も好ましく採用される。さらに、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアセトアミド等の塩基を添加して活性を向上させる方法を採用するのも好ましい。
【0082】
水素化反応は、通常、有機溶媒中で行なわれる。有機溶媒としては、生成する水素化物の溶解性により適宜選択することができ、前記重合溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、重合反応後、溶媒を入れ替えることなく、反応液又は該反応液から開環メタセシス重合触媒をろ別して得られるろ液に水素化触媒を添加して反応させることもできる。
【0083】
水素化反応の条件は、使用する水素化触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。水素化触媒の使用量は、開環重合体100重量部に対して,通常0.01〜50重量部、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部である。反応温度は、通常−10℃〜+250℃、好ましくは−10℃〜+210℃、より好ましくは0℃〜+200℃である。−10℃未満では反応速度が遅くなり、逆に250℃を超えると副反応が起こりやすくなる。水素の圧力は、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.05〜8MPa、より好ましくは0.1〜5MPaである。水素圧力が0.01MPa未満では水素化速度が遅くなり、10MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となる。
【0084】
水素化反応の時間は、水素化率を制御するために適宜選択される。反応時間は、通常0.1〜50時間の範囲であり、重合体中の主鎖の炭素−炭素二重結合のうち50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上を水素化することができる。
【0085】
以上のようにして得られるノルボルネン系開環重合体及び水素化物は、耐熱性や電気特性等に優れる。従って、プラスチックレンズ、球形レンズ、非球形レンズ、複写機レンズ、ビデオカメラコンバータレンズ、光ディスク用ピックアップレンズ、車両部品用レンズ等の耐熱性光学部品材料;半導体封止用材料、半導体アンダーフィルム用材料、半導体保護膜用材料、液晶封止用材料、回路基材材料、回路保護用材料、平坦化膜材料、電気絶縁膜材料等の電子部品用材料;等の用途に好適に使用することができる。
【0086】
【実施例】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0087】
(1)数平均分子量及び重量平均分子量
数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、開環重合体又は水素化物をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定して、ポリスチレン換算して求めた。
(2)モノマー組成比及び水素化率
開環共重合体の組成比及び開環共重合体の水素化物の水素化率(%)は、H−NMRスペクトル測定により求めた。
【0088】
実施例1 5−endo−6−exo−ジカルボキシ−2−ノルボルネンとテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンとの開環共重合体の製造
攪拌機付きガラス反応器に、テトラヒドロフラン87部、5−endo−6−exo−ジカルボキシ−2−ノルボルネン17.0部、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン15.0部、及び1−ヘキセン0.16部を仕込んだ(5−endo−6−exo−ジカルボキシ−2−ノルボルネン/テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン仕込み比=50/50(モル/モル))。次いで、テトラヒドロフラン13部に溶解した(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.016部を添加して、70℃で重合を行った。2時間後、重合反応液を多量の貧溶媒に注いで固形分を析出させ、ろ別洗浄後、60℃で18時間減圧乾燥して開環メタセシス重合体を得た。
【0089】
得られた重合体の収量は31部(収率=97%)であった。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)が18,900、重量平均分子量(Mw)が41,200であった。重合体中の単量体組成比は(5−endo−6−exo−ジカルボキシ−2−ノルボルネン)/(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン)=50/50(モル/モル)で、仕込み比通りの開環共重合体が得られた。
【0090】
実施例2 5−endo−6−exo−ジカルボキシ−2−ノルボルネンとテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンとの開環共重合体水素化物の製造
実施例1で得られた共重合体1部をテトラヒドロフラン80部に溶解した後、攪拌機付きオートクレーブに仕込み、次いでビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.05部及びエチルビニルエーテル0.4部をテトラヒドロフラン10部に溶解した水素化触媒溶液を添加し、水素圧1MPa、100℃で6時間水素化反応を行った。反応終了後、反応液を多量のn−ヘキサンに注いでポリマーを完全に析出させ、ろ別洗浄後、90℃で18時間減圧乾燥して、水素化物を得た。得られた水素化物の分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)が17,800、重量平均分子量(Mw)が39,200であった。カルボキシル基が完全に保存され、主鎖中の炭素−炭素二重結合の99%以上が水素化されていることをH−NMRにより確認した。
【0091】
参考例1 5−endo−6−endo−ジカルボキシ−2−ノルボルネンとテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンとの開環共重合体の製造
5−endo−6−exo−ジカルボキシ−2−ノルボルネン17.0部に代えて、5−endo−6−endo−ジカルボキシ−2−ノルボルネン17.0部を用いた以外は、実施例1と同様に重合した(5−endo−6−endo−ジカルボキシ−2−ノルボルネン/テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン仕込み比=50/50(モル/モル))。得られた重合体の収量は14.8部(収率46%)であった。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=13,700、重量平均分子量(Mw)=24,300であった。また、重合体中の単量体組成比は、(5−endo−6−endo−ジカルボキシ−2−ノルボルネン)/(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン)=21/79(モル/モル)で、仕込み比とは大きく異なった組成の共重合体であった。
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の立体配置のカルボキシル基及び/又はエステル基を置換基として有するノルボルネン系単量体を用いて、メタセシス重合触媒の存在下に開環重合することにより、工業的に有利にノルボルネン系開環重合体及びノルボルネン系開環重合体水素化物を製造することができる。
本発明に用いるノルボルネン系単量体は重合反応性が高いので、メタセシス重合触媒の使用量が少なくてすみ、かつ官能基を持たないノルボルネン系単量体と所望の組成比と分子量を持つ共重合体を容易に製造することができる。
また、本発明のノルボルネン系開環重合体及びノルボルネン系開環重合体水素化物は、耐熱性や電気特性等に優れるので、耐熱性光学部品材料、電子部品用材料等として有用である。

Claims (5)

  1. 分子内に、式(1)
    Figure 2004002795
    (式中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又はヘテロ原子を含有する官能基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表し、式:COORで表される基と式:COORで表される基とはトランスの位置にある。mは0又は1である。)で表されるノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位を含有し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより求められる重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることを特徴とするノルボルネン系開環重合体。
  2. 式(2)
    Figure 2004002795
    (式中、R〜R及びmは前記と同じ意味を表す。また、式:COORで表される基と式:COORで表される基とはトランスの位置にある。)で表されるノルボルネン系単量体を、メタセシス重合触媒の存在下に開環メタセシス重合することを特徴とするノルボルネン系開環重合体の製造方法。
  3. 前記メタセシス重合触媒として、ルテニウムカルベン錯体触媒を用いる請求項2に記載のノルボルネン系開環重合体の製造方法。
  4. 請求項1に記載のノルボルネン系開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化して得られるノルボルネン系開環重合体水素化物であって、前記二重結合の50%以上が水素化されたものであることを特徴とするノルボルネン系開環重合体水素化物。
  5. 請求項1に記載のノルボルネン系開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化触媒存在下で水素化することを特徴とするノルボルネン系開環重合体水素化物の製造方法。
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