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JP2003297375A - アルカリ亜鉛電池 - Google Patents

アルカリ亜鉛電池

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Publication number
JP2003297375A
JP2003297375A JP2002102981A JP2002102981A JP2003297375A JP 2003297375 A JP2003297375 A JP 2003297375A JP 2002102981 A JP2002102981 A JP 2002102981A JP 2002102981 A JP2002102981 A JP 2002102981A JP 2003297375 A JP2003297375 A JP 2003297375A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
zinc
alkaline
sample
cationic organic
organic substance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002102981A
Other languages
English (en)
Inventor
Gentaro Kano
巌大郎 狩野
Masahiro Aoki
正裕 青木
Takuya Endo
琢哉 遠藤
Goro Shibamoto
悟郎 柴本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sony Corp filed Critical Sony Corp
Priority to JP2002102981A priority Critical patent/JP2003297375A/ja
Publication of JP2003297375A publication Critical patent/JP2003297375A/ja
Pending legal-status Critical Current

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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 負極表面での水素ガス発生が抑制された耐漏
液性に優れるアルカリ亜鉛電池を提供することを目的と
する。さらに、アルカリ亜鉛二次電池においては、耐漏
液性に優れるとともに負極における亜鉛析出形態が均一
化されサイクル寿命に優れたアルカリ亜鉛電池を提供す
ることを目的とする。 【解決手段】 本発明に係るアルカリ亜鉛電池は、負極
活物質として亜鉛あるいは亜鉛合金を含有する負極と、
正極と、セパレータと、アルカリ電解液とを備えてなる
アルカリ亜鉛電池であって、上記アルカリ電解液が、1
0重量%〜30重量%の水酸化カリウム水溶液にカチオ
ン性有機物を含有させてなることを特徴とするものであ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は負極に亜鉛あるいは
亜鉛化合物を含有したアルカリ亜鉛電池に関し、特に負
極表面での水素ガス発生が抑制された耐漏液性に優れた
アルカリ亜鉛電池に関する。
【0002】
【従来の技術】亜鉛あるいは亜鉛合金を負極活物質とし
て用いた電池に亜鉛電池があり、亜鉛電池は亜鉛一次電
池と亜鉛二次電池とに大別される。そして、アルカリ亜
鉛二次電池はエネルギー密度が高く、近年の電子機器の
小型軽量化において有効であるため、ニッケル−亜鉛二
次電池、酸化銀−亜鉛二次電池などにおいて種々の検討
が行われてきた。特に、ニッケル−亜鉛二次電池は、ニ
ッケル−カドミウム二次電池、ニッケル−水素二次電池
と比較してエネルギー密度が高く安価であり、加えてカ
ドミウムのような有害な材料が使用されておらず低公害
であるといった利点を有することから、その実用化に対
して大きな期待が寄せられている。
【0003】しかしながら、亜鉛を負極活物質として使
用したアルカリ亜鉛一次電池やアルカリ亜鉛二次電池で
は、マンガン乾電池などと同様に、保存時に亜鉛負極に
おいて水素発生を伴う腐食反応が激しく起こり、電池内
圧が上昇して電池の膨張、漏液を引き起こすという問題
がある。亜鉛の腐食反応を抑制するには水銀による亜鉛
負極のアマルガム化が有効であることが知られている
が、廃電池の水銀による環境汚染に対して社会的な関心
が高まるにつれて電池の無水銀化技術が強く要望される
ようになっている。このため、水銀に代わって亜鉛合金
や無機系インヒビター、有機系インヒビターなどを用い
ることが検討されている。
【0004】例えば、インジウム、ビスマスなどの元素
は水素過電圧の高い材料として知られており、耐食亜鉛
合金の合金添加元素として、また、特開平1−1054
66号公報ではこれらの化合物が無機系インヒビターと
して用いられている。
【0005】また、有機系インヒビターとしては、特開
平5−151975号公報ではアミン、ジエタノールア
ミン、オレイン酸、ラウリルエーテル、あるいはエチレ
ンオキサイド重合体、あるいはパーフルオロアルキル第
四級アンモニウム塩、パーフルオロアルキル第四級ホス
ホニウム塩、パーフルオロアルキルスルホニウム塩が提
案されている。
【0006】さらに、無機系インヒビターと有機系イン
ヒビターとの複合添加の例として、特開平2−7936
7号公報においては、水酸化インジウムとエトキシフル
オロアルコール系ポリフッ化化合物の複合添加が提案さ
れている。
【0007】また、アルカリ亜鉛二次電池においては、
保存時の亜鉛腐食による水素ガス発生に加えて、過充電
時における亜鉛負極表面での水分子の還元反応に伴う水
素ガス発生により電池内圧が上昇して電池の膨張、破裂
や漏液を引き起こす虞がある。そこで、亜鉛負極の過充
電に伴う水素ガス発生を抑制するために、アルカリ二次
電池では一般的に正極容量規制の電池設計がなされてい
る。
【0008】また、アルカリ亜鉛二次電池では、放電時
の反応生成物がアルカリ電解液に可溶であるため、充放
電時には亜鉛負極が溶解・析出を繰り返すこととなり、
このため、充電時に樹枝状あるいは海綿状の亜鉛が負極
表面に析出する。そして、充放電を繰り返すにつれてこ
れらが成長して絶縁性セパレータを貫通し、さらには正
極に到達して内部短絡を引き起こし、その結果サイクル
寿命を低下させるという問題がある。
【0009】このような内部短絡を防止するため、特開
昭57−163963号公報においては、酸化マグネシ
ウム層からなる多孔性層を亜鉛負極表面に密着形成する
ことにより亜鉛酸イオンの電解液への溶出を防止してデ
ンドライト成長を抑制する検討がなされている。また、
特開平6−203819号公報においては、絶縁性セパ
レータに第四級アンモニウム基を有する高分子を含有さ
せることにより樹枝状あるいは海綿状の亜鉛の成長を抑
制して内部短絡を防止することが提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たようなインジウム、ビスマスなどの添加元素を添加し
た耐食性亜鉛合金を用いた負極では、使用初期において
は亜鉛腐食反応が抑制されるものの、一部放電した後の
ガス発生までは十分に抑制できないため、実用上十分な
耐漏液性を確保することはできない。また、充電に伴う
析出反応では、インジウム、ビスマスなどの添加元素は
亜鉛と均一に析出せず、耐食亜鉛合金の合金組成が変化
することにより腐食抑制効果が低下するため、耐漏液性
を確保することはできない。また、亜鉛合金のみでは亜
鉛の析出形態を制御することができないため、充放電の
繰り返しによる内部短絡を防止することはできない。
【0011】また、インジウム、ビスマスなどの化合物
を無機インヒビターとして添加した電池においても、上
述した負極に耐食性亜鉛合金を用いた場合と同様に、耐
漏液性の確保および内部短絡の防止をすることはできな
い。
【0012】また、従来の有機系インヒビターを添加し
た電池や無機系インヒビターと複合添加した電池では、
ある程度の効果を期待できるものもあるが、耐漏液性の
確保や内部短絡の防止は実用上十分ではない。そして、
例えば有機インヒビターとして第四級アンモニウム塩、
第四級ホスホニウム塩、第三級スルホニウム塩を電解液
中に添加することにより漏液を防止する方法において
も、通常のアルカリ二次電池の電解液として使用される
35wt%〜40wt%の水酸化カリウム水溶液に対す
る前記インヒビターの溶解性が低いために、電池内部に
含まれる電解液量が少ない場合には、有機インヒビター
を必要十分な量だけ添加することができず、実用上十分
な効果を得ることができない。
【0013】また、アルカリ亜鉛二次電池では正極規制
の容量設計をすることにより、負極の過充電を防止して
いるが、実際の電池内部では充放電時の電流密度の分布
は不均一であり、電流密度の高い箇所においては負極の
過充電状態が起こり得る。特に、充放電サイクルが進ん
だ電池ではこの電流密度分布の不均一性は更に増大さ
れ、負極の過充電状態による水素ガス発生が増大するた
め、耐漏液性を確保することはできない。
【0014】また酸化マグネシウム層からなる多孔性層
を亜鉛負極表面に密着形成することにより亜鉛酸イオン
の電解液への溶出を防止する方法は、亜鉛酸イオンを吸
着固定することによって亜鉛デンドライトの成長を防止
する技術であるが、この技術では亜鉛酸イオンからの亜
鉛自体の析出形態が樹枝状もしくは海綿状であるため
に、充放電サイクル、特に深い充放電を繰り返す場合に
は亜鉛デンドライトの成長を十分に抑制することはでき
ない。加えて、この方法では、水素ガス発生に対する抑
制効果は十分ではない。
【0015】また、絶縁性セパレータに第四級アンモニ
ウム基を有する高分子を含有させることにより亜鉛の樹
脂状あるいは海綿状成長を抑制し内部短絡を防止する方
法では、セパレータに達するまでは亜鉛デンドライトが
成長を続けるため、負極からの亜鉛デンドライトの脱落
による容量低下を防止することはできない。また、セパ
レータの目詰まりによる電池性能の低下を防止すること
もできない。加えて、亜鉛負極表面での水素ガス発生を
抑制することはできず、さらに亜鉛デンドライトからも
水素ガス発生が生じてしまう。
【0016】したがって、本発明は上述した従来の実情
に鑑みて創案されたものであり、負極表面での水素ガス
発生が抑制された耐漏液性に優れるアルカリ亜鉛電池を
提供することを目的とするものである。
【0017】さらに、アルカリ亜鉛二次電池において
は、耐漏液性に優れるとともに負極における亜鉛析出形
態が均一化されサイクル寿命に優れたアルカリ亜鉛電池
を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】以上の目的を達成する本
発明に係るアルカリ亜鉛電池は、負極活物質として亜鉛
あるいは亜鉛合金を含有する負極と、正極と、セパレー
タと、アルカリ電解液とを備えてなるアルカリ亜鉛電池
であって、アルカリ電解液が10重量%〜30重量%の
水酸化カリウム水溶液にカチオン性有機物を含有させて
なることを特徴とするものである。
【0019】以上のように構成された本発明に係るアル
カリ亜鉛電池では、アルカリ電解液中にカチオン性有機
物を含有することにより、亜鉛負極表面における水素ガ
スの発生を抑制することができる。
【0020】そして、本発明に係るアルカリ亜鉛電池で
は、アルカリ電解液である水酸化カリウム水溶液の濃度
を、カチオン性有機物に対して良好な溶解度を有すると
ともに、電池特性に悪影響を及ぼさない10重量%〜3
0重量%の範囲に規定している。これにより、本発明に
係るアルカリ亜鉛電池では、アルカリ電解液内に十分な
量のカチオン性有機物を溶解させることが可能となる。
したがって、電池内部に含まれる電解液量が少ない場合
においても、電解液量に因らずカチオン性有機物を必要
十分な量だけ含有することが可能となり、実用上十分な
効果を得ることができる。
【0021】また、前記アルカリ亜鉛電池において、前
記カチオン性有機物が第四級アンモニウム塩、第四級ホ
スホニウム塩、第三級スルホニウム塩のいずれか1種以
上であることが好ましい。
【0022】また、前記アルカリ亜鉛電池において、上
記アルカリ電解液が、亜鉛化合物を含有することが好ま
しく、飽和量以上含有することが好ましい。
【0023】また、前記アルカリ亜鉛電池において、前
記カチオン性有機物はヘテロ原子に結合した置換基のう
ち1つの置換基は炭素数が3以上20以下である直鎖ア
ルキル基であり、残りの置換基は炭素数が1または2で
あるアルキル基であることが好ましい。
【0024】また、前記アルカリ亜鉛電池において、ア
ルカリ電解液に亜鉛化合物を飽和量以上添加することが
望ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るアルカリ亜鉛
電池について図面を参照しながら詳細に説明する。な
お、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本
発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であ
る。
【0026】まず、本発明を適用したアルカリ亜鉛一次
電池について説明する。図1は、本発明を適用して構成
したアルカリ亜鉛一次電池の縦断面図である。
【0027】図1において1は正極缶、2は負極蓋、3
は絶縁パッキング、4は真鍮製の負極集電棒、5は中空
円筒状の正極、6は絶縁性セパレータ、7はゲル状負極
である。このように構成された図1に示すアルカリ亜鉛
一次電池は、インサイドアウト型と呼ばれている構造の
アルカリ亜鉛一次電池であり、中空円筒状の正極5の中
空部に、円筒フィルム状の絶縁性セパレータ6を介して
ゲル状の負極7が充填されたものである。
【0028】正極缶1には、中空円筒体の外周面を正極
缶1の円筒部の内周面に当接させて中空円筒状の正極5
が収納されている。また、前記中空円筒体の内周面に
は、外周面を当接させて絶縁性セパレータ6が圧接され
ており、絶縁性セパレータ6で囲まれた空間内には、ゲ
ル状の負極7が充填されている。
【0029】負極7の円形断面の中央部には、正極缶1
と負極蓋2とを電気的に絶縁する絶縁パッキング3によ
り一端を支持された負極集電棒4が挿入されている。正
極缶1の開口部は、負極蓋2により閉蓋されている。ま
た、正極缶1の開口部に絶縁パッキング3をはめこみ、
その上に負極蓋2を載置した後、正極缶の閉口端を内側
にかしめることにより電池が密閉されている。
【0030】次に、アルカリ亜鉛一次電池の主要構成部
材に関して詳述する。正極5は主として正極活物質と導
電剤とにより構成される。正極5には電極強度向上のた
めに、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
などの結着剤を添加してもよい。正極活物質としては、
アルカリ亜鉛一次電池に用いることのできる正極であれ
ば従来公知のいかなる電極を用いてもよく、例えばオキ
シ水酸化ニッケル、酸化銀、二酸化マンガン、酸素など
が挙げられる。
【0031】正極に含まれる導電剤としては、例えば金
属コバルトや酸化コバルトなどの無機導電剤や、ファー
ネスブラックやアセチレンブラック、サーマルブラック
などのカーボンブラックや鱗片状や繊維状の天然黒鉛や
人造黒鉛などの炭素材料導電剤を挙げることができる。
【0032】このような正極は、例えば正極活物質と導
電剤と電解液とを混合した後、この混合物を発泡ニッケ
ルなどの集電体上に塗布して加圧成型することにより作
製することができる。
【0033】負極7は、少なくとも亜鉛及び亜鉛合金を
活物質とする負極であれば、従来公知のいかなる負極で
あってもかまわない。このような負極としては、例え
ば、亜鉛粉末と酸化亜鉛等をアルカリ電解液およびアク
リル酸樹脂等のゲル化剤とを混合したゲル負極が挙げら
れる。
【0034】また、絶縁性セパレータ6としては、耐ア
ルカリ性を有するとともにある程度の機械的強度を有
し、且つ電気抵抗が大きく保液性が良好な材料であれ
ば、従来公知のいかなる材料を用いてもかまわない。例
えば、ナイロン、ポリプロピレン、ジカルボン酸等によ
り架橋したポリビニルアルコール等の微孔を有する合成
樹脂の薄膜、またはこれらの繊維を織った織布及び不織
布または、セルロース繊維、ガラス繊維等が挙げられ
る。また、これらの複数種または同種の積層体であって
もかまわない。
【0035】また、電池内に注入されるアルカリ電解液
としては、水酸化カリウム水溶液を使用する。そして、
アルカリ電解液である水酸化カリウム水溶液には、所定
の量のカチオン性有機物が溶解されている。また、アル
カリ電解液である水酸化カリウム水溶液は、カチオン性
有機物の溶解度を向上させ、電池内部の電解液中へのカ
チオン性有機物の添加量を増加させるために、10重量
%〜30重量%の水酸化カリウム水溶液とされている。
そして、水酸化カリウム水溶液は、20重量%〜30重
量%の水酸化カリウム水溶液とされることがより好まし
い。
【0036】亜鉛を負極活物質として使用したアルカリ
亜鉛一次電池では、マンガン乾電池などと同様に、保存
時に亜鉛負極において水素発生を伴う腐食反応が激しく
起こり、電池内圧が上昇して電池の膨張、漏液を引き起
こすという問題がある。そこで、このアルカリ亜鉛一次
電池においては、アルカリ電解液である水酸化カリウム
水溶液にカチオン性有機物を含有させることにより、水
素ガス発生に伴う電池の膨張、漏液を防止することがで
きる。
【0037】しかしながら、カチオン性有機物は、水に
は良好な溶解性を示すが、アルカリ水溶液には溶解しづ
らく、アルカリ濃度が高くなるにしたがってさらに溶解
性が低下する。そして、アルカリ電解液におけるカチオ
ン性有機物の含有量、すなわち、溶解量が少なすぎる場
合には、上述した効果を十分に得ることができない。一
方、アルカリ電解液の濃度が低すぎる場合には、上述し
た効果を十分に得ることはできるが電池特性が低下して
しまう。
【0038】そこで、本発明においては、アルカリ電解
液である水酸化カリウム水溶液の濃度を、カチオン性有
機物に対して良好な溶解度を有し、且つ電池特性に悪影
響を及ぼさない10重量%〜30重量%の範囲に規定す
る。アルカリ電解液である水酸化カリウム水溶液の濃度
を上記のように規定することにより、アルカリ電解液内
に十分な量のカチオン性有機物を溶解させることが可能
となり、電池内部に含まれる電解液量が少ない場合にお
いても、カチオン性有機物を必要十分な量だけ含有する
ことが可能となり実用上十分な効果を得ることができ
る。これにより、このアルカリ亜鉛一次電池では、電池
特性を実用に十分なレベルに維持しつつ耐漏液性に優れ
たアルカリ亜鉛一次電池が実現されている。
【0039】また、水酸化カリウム水溶液の濃度は、2
0重量%〜30重量%の範囲とすることがより好まし
い。水酸化カリウム水溶液の濃度をこのような範囲とす
ることにより、より確実に実用上十分な効果を得るとと
もに良好な電池特性を実現することができる。
【0040】ここで、このアルカリ亜鉛一次電池におけ
るアルカリ電解液へのカチオン性有機物添加による改善
効果のメカニズムについては明らかではないが、以下の
ように推察される。
【0041】アルカリ亜鉛一次電池の亜鉛負極表面で
は、保存時に亜鉛溶出により生成した電子は亜鉛負極の
表面突起部などの電流が集中しやすい箇所、いわゆる反
応活性点に集中する。このため、アルカリ電解液にカチ
オン性有機物を添加していない電池では、保存時には、
この反応活性点において水分子が還元反応を受けて水素
ガスを発生する。しかしながら、本発明における水酸化
カリウム水溶液からなるアルカリ電解液にカチオン性有
機物を添加した電池では、カチオン性有機物はそれ自体
がもつ正電荷の影響で亜鉛負極上の電流集中部に選択的
に移動し吸着して反応活性点をマスキングすることによ
り、水分子の還元反応を抑制し、亜鉛負極表面における
水素ガスの発生を抑制する。これにより、水素ガスの発
生に起因した電池の漏液、膨張、破裂が防止される。
【0042】そして、上述の理由により、本発明におい
て用いるカチオン性有機物は正電荷を持った分子である
アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩であ
ることが好ましいが、強アルカリ電解液中ではヘテロ原
子に結合した水素原子はプロトンとして失われ、アンモ
ニウム塩からカチオン性を有していないアミンに変化す
るため、ヘテロ原子に水素原子が結合していない第四級
アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第三級スルホ
ニウム塩を用いることが好ましい。
【0043】第四級アンモニウム塩としては、例えば、
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリ
ルトリエチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチル
アンモニウム、臭化ステアリルトリエチルアンモニウ
ム、水酸化ステアリルトリメチルアンモニウム、水酸化
ステアリルトリエチルアンモニウム、塩化ラウリルトリ
メチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルア
ンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニ
ウム、臭化ヘキシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキ
シルトリエチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチル
アンモニウム、塩化ドデシルトリエチルアンモニウム、
臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキサデ
シルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメ
チルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモ
ニウム等が挙げられる。
【0044】第四級ホスホニウム塩としては、例えば、
塩化ステアリルトリメチルホスホニウム、塩化ドデシル
トリメチルホスホニウム、塩化アセトニルトリフェニル
ホスホニウム、臭化メチルトリフェニルホスホニウム、
沃化メチルトリフェニルホスホニウム、塩化ドデシルト
リメチルホスホニウム等が挙げられる。
【0045】第三級スルホニウム塩としては、例えば、
塩化ステアリルジメチルスルホニウム、臭化トリメチル
スルホニウム、臭化トリフェニルスルホニウム、塩化ド
デシルジメチルスルホニウム等が挙げられる。
【0046】また、前記カチオン性有機物において、ヘ
テロ原子に結合した置換基のうち1つは炭素数が3以上
20以下の長鎖アルキル基であること好ましく、炭素数
が3以上15以下の長鎖アルキル基であることがより好
ましい。これは、反応活性点と水分子あるいは亜鉛酸イ
オンとの反応を抑制するためには、カチオン性有機物が
ある程度の大きさをもって立体障害とならねばならず、
ヘテロ原子に結合した置換基の長鎖アルキル基の炭素数
が2以下の場合には十分な抑制効果が得られない虞があ
るからである。また、逆にヘテロ原子に結合した置換基
の長鎖アルキル基の炭素数が21以上の場合には、立体
障害が大きすぎて亜鉛の溶解反応を必要以上に阻害し、
放電容量が低下する虞があるためである。
【0047】また、前記カチオン性有機物において、ヘ
テロ原子に結合した置換基のうち長鎖アルキル基以外の
置換基は、素数が1あるいは2であるものが好ましい。
これは、カチオン性有機物が有効に亜鉛負極表面に吸着
するためには、正電荷を有するヘテロ原子と亜鉛負極表
面とが接近する必要があるためである。そして、ヘテロ
原子に結合した置換基のうち長鎖アルキル基以外の置換
基の炭素数が3以上の場合には、カチオン性有機物が有
効に亜鉛負極表面に吸着できない虞があるためである。
【0048】また、前記カチオン性有機物においては、
フッ化アルキル基などの置換基を有するものも耐アルカ
リ性が高いため好ましい。
【0049】上述したように、本発明においてはアルカ
リ電解液は10重量%〜30重量%の水酸化カリウム水
溶液とされる。そして、20重量%〜30重量%の水酸
化カリウム水溶液とすることがより好ましい。
【0050】また、アルカリ電解液である水酸化カリウ
ム水溶液におけるカチオン性有機物の含有量は、0.1
M以上飽和量以下が好ましく、これは以下の理由による
ものである。前記カチオン性有機物はアルカリ電解液に
対する溶解性が低く、水酸化カリウム水溶液に対しては
水酸化カリウムの濃度が増加するとともに該カチオン性
有機物の溶解性は大きく低下する。電池内部において、
カチオン性有機物は亜鉛負極表面の反応活性点をマスキ
ングできるだけの十分な量が含有されている必要がある
が、電池内部に電解液としての水酸化カリウム水溶液が
少量しか含有されていない場合には、反応活性点の数に
対するカチオン性有機物の含有量の不足により反応活性
点のマスキング効果が不十分となり、水素ガス発生の抑
制において十分に効果を発揮することができない。そこ
で、水素ガス発生の抑制において十分に効果を発揮させ
るためには、アルカリ電解液である水酸化カリウム水溶
液におけるカチオン性有機物の含有量を0.1M以上と
することが好ましい。カチオン性有機物の含有量を0.
1M以上とすることにより、十分な反応活性点のマスキ
ング効果を得ることができ、その結果、水素ガス発生の
抑制において十分に効果を得ることが可能となる。
【0051】一方、カチオン性有機物の含有量が水酸化
カリウム水溶液の飽和量以上の場合には、未溶解のカチ
オン性有機物が亜鉛負極表面に過剰に吸着することによ
り亜鉛の溶解反応を必要以上に阻害し、その結果、電池
特性の低下を引き起こすため好ましくない。
【0052】したがって、アルカリ電解液である水酸化
カリウム水溶液におけるカチオン性有機物の含有量を
0.1M以上飽和量以下とすることにより、良好な電池
特性を維持しつつ確実に亜鉛負極表面における水素ガス
の発生を抑制することが可能となる。
【0053】また、アルカリ電解液である水酸化カリウ
ム水溶液は、亜鉛化合物を含有することが好ましい。酸
化亜鉛などの亜鉛化合物をアルカリ電解液に添加するこ
とにより、アルカリ電解液中における亜鉛酸イオン濃度
が増大し、保存時の亜鉛の溶解反応による腐食反応を抑
制することができる。したがって、アルカリ電解液に亜
鉛化合物を添加することにより、カチオン性有機物が亜
鉛負極表面の反応活性点へ付着する前に起こる腐食反応
を抑制することができ、また、前記腐食反応により発生
した水素ガスの亜鉛表面への付着を抑制することができ
るため、カチオン性有機物の反応活性点への吸着が促進
される。これにより、アルカリ電解液にカチオン性有機
物のみを添加した場合と比べて、さらに水素ガス発生の
抑制効果を向上させることができる。したがって、アル
カリ電解液が亜鉛化合物を含有することにより、水素ガ
ス発生に起因する電池の漏液、膨張をより確実に防止す
ることが可能となる。
【0054】ここで、アルカリ電解液における亜鉛化合
物の含有量が少ない場合には水素ガス発生の抑制効果を
十分に得ることができないため、亜鉛化合物の添加によ
る水素ガス発生の抑制効果を十分に得るためにはアルカ
リ電解液の亜鉛化合物の含有量が十分に多いことが好ま
しく、アルカリ電解液の飽和濃度以上含有することが好
ましい。
【0055】また、通常正極性能向上のためにアルカリ
電解液に添加される水酸化リチウム等の添加剤は本発明
の効果に悪影響を及ぼすことがないため、必要に応じて
適宜添加してもかまわない
【0056】以上において説明したように、本発明に係
るアルカリ亜鉛一次電池では、アルカリ電解液が、10
重量%〜30重量%の水酸化カリウム水溶液にカチオン
性有機物を含有させてなるため、十分な量のカチオン性
有機物がアルカリ電解液中に含有される。そして、該カ
チオン性有機物が亜鉛負極上の電流集中部に選択的に移
動し吸着して反応活性点をマスキングするため、水分子
の還元反応を抑制し、亜鉛負極表面における水素ガスの
発生を抑制することができる。
【0057】したがって、本発に係るアルカリ亜鉛一次
電池では、亜鉛負極表面における水素ガスの発生に起因
した電池の漏液や膨張を防止し、耐漏液性に優れたアル
カリ亜鉛一次電池を実現することが可能である。
【0058】なお、上記においては、インサイドアウト
型と呼ばれている構造のアルカリ亜鉛一次電池を例に挙
げて説明したが、本発明に係るアルカリ亜鉛一次電池の
構成はこれに限られるものではなく、例えば、例えば、
電極、セパレータの積層体を渦巻状に巻いたスパイラル
方式等、種々の構成とすることが可能である。この場合
においても上記と同様の効果を得ることができる。
【0059】次に、本発明をアルカリ亜鉛二次電池に適
用した場合について説明する。図2は、本発明を適用し
て構成したアルカリ亜鉛二次電池の縦断面図である。
【0060】図2において11は正極缶、12は負極
蓋、13は絶縁パッキング、14は真鍮製の負極集電
棒、15は中空円筒状の正極、16は絶縁性セパレー
タ、17はゲル状負極である。以上のように構成された
図2に示すアルカリ亜鉛二次電池は、インサイドアウト
型と呼ばれている構造のアルカリ亜鉛二次電池であり、
中空円筒状の正極15の中空部に、円筒フィルム状の絶
縁性セパレータ16を介して、ゲル状の負極17が充填
されたものである。
【0061】なお、下記においては、インサイドアウト
型と呼ばれている構造のアルカリ亜鉛二次電池を例に挙
げて説明するが、本発明に係るアルカリ亜鉛二次電池の
構成はこれに限られるものではなく、例えば、電極、セ
パレータの積層体を渦巻状に巻いたスパイラル方式等、
種々の構成とすることが可能である。この場合において
も本発明の効果を得ることができる。
【0062】正極缶11には、中空円筒体の外周面を正
極缶11の円筒部の内周面に当接させて中空円筒状の正
極15が収納されている。また、前記中空円筒体の内周
面には、外周面を当接させて絶縁性セパレータ16が圧
接されており、絶縁性セパレータ16で囲まれた空間内
には、ゲル状の負極17が充填されている。
【0063】負極17の円形断面の中央部には、正極缶
11と負極蓋12とを電気的に絶縁する絶縁パッキング
13により一端を支持された負極集電棒14が挿入され
ている。正極缶11の開口部は、負極蓋12により閉蓋
されている。また、正極缶11の開口部に絶縁パッキン
グ13をはめこみ、その上に負極蓋12を載置した後、
正極缶の閉口端を内側にかしめることにより電池が密閉
されている。
【0064】次に、アルカリ亜鉛二次電池の主要構成部
材に関して更に詳述する。正極15は主として正極活物
質と導電剤とにより構成される。正極15には電極強度
向上のために、例えばPTFEなどの結着剤を添加して
もよい。正極活物質としては、アルカリ亜鉛二次電池に
用いることのできる正極であれば従来公知のいかなる電
極を用いてもよく、例えばオキシ水酸化ニッケル、酸化
銀、二酸化マンガン、酸素などが挙げられる。
【0065】正極15に含まれる導電剤としては、例え
ば金属コバルトや酸化コバルトなどの無機導電剤や、フ
ァーネスブラックやアセチレンブラック、サーマルブラ
ックなどのカーボンブラックや鱗片状や繊維状の天然黒
鉛や人造黒鉛などの炭素材料導電剤を挙げることができ
る。
【0066】このような正極15は、例えば正極活物質
と導電剤と電解液とを混合した後、この混合物を発泡ニ
ッケルなどの集電体上に塗布して加圧成型することによ
り作製することができる。
【0067】また、例えばスパイラル方式のアルカリ亜
鉛二次電池の場合には、正極は前記正極活物質と前記導
電剤との混合物を発泡ニッケルなどの集電体上に塗布し
て加圧成型したものなどが用いられる。
【0068】負極17は、少なくとも亜鉛及び亜鉛合金
を活物質とする負極であれば、従来公知のいかなる負極
であってもかまわない。このような負極17としては、
例えば、亜鉛粉末と酸化亜鉛等をアルカリ電解液および
アクリル酸樹脂等のゲル化剤とを混合したゲル負極が挙
げられる。
【0069】また、スパイラル方式のアルカリ亜鉛二次
電池の場合には、例えば亜鉛粉末、酸化亜鉛、水酸化亜
鉛等を例えばカルボキシメチルセルロースなどの結着剤
を溶かした水で混合し、集電体等の活物質支持体に充
填、成型、電解するペースト式により作製された負極
や、亜鉛粉末や亜鉛化合物を不活性雰囲気で焼結する焼
結式により作製された負極等が使用できる。
【0070】前記集電体としては、高導電度であり水素
過電圧の高いものであれば従来公知の集電体のすべてが
適用可能である。このような集電体としては、例えば、
銅やニッケルのメッシュあるいはパンチングメタルにス
ズメッキをしたもの等が挙げられる。
【0071】また、絶縁性セパレータ16としては、耐
アルカリ性を有するとともにある程度の機械的強度を有
し、且つ電気抵抗が大きく保液性が良好な材料であれ
ば、従来公知のいかなる材料を用いてもかまわない。例
えば、ナイロン、ポリプロピレン、ジカルボン酸等によ
り架橋したポリビニルアルコール等の微孔を有する合成
樹脂の薄膜、またはこれらの繊維を織った織布及び不織
布または、セルロース繊維、ガラス繊維等が挙げられ
る。また、これらの複数種または同種の積層体であって
もかまわない。
【0072】また、電池内に注入されるアルカリ電解液
としては、水酸化カリウム水溶液を使用する。そして、
アルカリ電解液である水酸化カリウム水溶液には、所定
の量のカチオン性有機物が溶解されている。また、アル
カリ電解液である水酸化カリウム水溶液は、上述したア
ルカリ亜鉛一次電池の場合と同様に、カチオン性有機物
の溶解度を向上させて電池内部の電解液中へのカチオン
性有機物の添加量を増加させるために、10重量%〜3
0重量%の水酸化カリウム水溶液とされている。そし
て、20重量%〜30重量%の水酸化カリウム水溶液と
されることがより好ましい。
【0073】亜鉛を負極活物質として使用したアルカリ
亜鉛二次電池では、マンガン乾電池や上述したアルカリ
亜鉛一次電池などと同様に、保存時に亜鉛負極において
水素発生を伴う腐食反応が激しく起こり、電池内圧が上
昇して電池の膨張、漏液を引き起こすという問題があ
る。
【0074】また、アルカリ亜鉛二次電池においては、
保存時の亜鉛腐食による水素ガス発生に加えて、過充電
時における亜鉛負極表面での水分子の還元反応に伴う水
素ガス発生により電池内圧が上昇して電池の膨張、破裂
や漏液を引き起こす虞がある。
【0075】また、アルカリ亜鉛二次電池においては、
放電時の反応生成物がアルカリ電解液に可溶であるた
め、充放電時には亜鉛負極が溶解・析出を繰り返すこと
となり、このため、充電時に樹枝状あるいは海綿状の亜
鉛が負極表面に析出する。そして、充放電を繰り返すに
つれてこれらの樹枝状あるいは海綿状の亜鉛が不均一な
形態で成長して絶縁性セパレータを貫通し、さらには正
極に到達して内部短絡を引き起こしてサイクル寿命を低
下させるという問題がある。
【0076】そこで、このアルカリ亜鉛二次電池におい
ては、アルカリ電解液である水酸化カリウム水溶液にカ
チオン性有機物を含有させることにより、水素ガス発生
に伴う電池の膨張、漏液や、亜鉛負極における樹枝状あ
るいは海綿状の亜鉛の不均一な成長による内部短絡を防
止し、漏液性やサイクル寿命に優れたアルカリ亜鉛二次
電池を実現する。
【0077】しかしながら、カチオン性有機物は、水に
は良好な溶解性を示すが、アルカリ水溶液には溶解しづ
らく、アルカリ濃度が高くなるにしたがってさらに溶解
性が低下する。そして、アルカリ電解液におけるカチオ
ン性有機物の含有量、すなわち、溶解量が少なすぎる場
合には、上述した電池の膨張、漏液や内部短絡を防止す
る効果を十分に得ることができない。一方、アルカリ電
解液の濃度が低すぎる場合には、上述した効果を十分に
得ることはできるが電池特性が低下してしまう。
【0078】そこで、本発明においては、アルカリ電解
液である水酸化カリウム水溶液の濃度を、カチオン性有
機物に対して良好な溶解度を有し、且つ電池特性に悪影
響を及ぼさない10重量%〜30重量%の範囲に規定す
る。アルカリ電解液である水酸化カリウム水溶液の濃度
を上記のように規定することにより、アルカリ電解液内
に十分な量のカチオン性有機物を溶解させることが可能
となり、電池内部に含まれる電解液量が少ない場合にお
いても、カチオン性有機物を必要十分な量だけ含有する
ことが可能となり、実用上十分な効果を得ることができ
る。これにより、このアルカリ亜鉛二次電池では、電池
特性を実用上十分なレベルに維持しつつ耐漏液性やサイ
クル寿命に優れたアルカリ亜鉛二次電池が実現されてい
る。
【0079】また、水酸化カリウム水溶液の濃度は、2
0重量%〜30重量%の範囲とすることがより好まし
い。水酸化カリウム水溶液の濃度をこのような範囲とす
ることにより、より確実に実用上十分な効果を得るとと
もに良好な電池特性を実現することができる。
【0080】ここで、このアルカリ亜鉛二次電池におけ
るアルカリ電解液へのカチオン性有機物添加による改善
効果のメカニズムについては明らかではないが、以下の
ように推察される。
【0081】アルカリ亜鉛二次電池の亜鉛負極表面で
は、保存時に亜鉛溶出により生成した電子あるいは充電
時に亜鉛負極に流れ込んだ電子は、亜鉛負極の表面突起
部などの電流が集中しやすい箇所、いわゆる反応活性点
に集中する。このため、カチオン性有機物を添加してい
ない電池では、保存時あるいは充電時には、この反応活
性点において水分子が還元反応を受けて水素ガスを発生
する。また、充電時には亜鉛は電流集中部に析出しやす
くなり、亜鉛負極は不均一な形態となる。しかしなが
ら、本発明におけるカチオン性有機物を添加したアルカ
リ亜鉛二次電池では、カチオン性有機物はそれ自体がも
つ正電荷の影響で亜鉛負極上の電流集中部に選択的に移
動し吸着して反応活性点をマスキングすることにより、
水分子の還元反応を抑制し、亜鉛負極表面における水素
ガスの発生を抑制する。また、反応活性点がカチオン性
有機物によりマスキングされることにより亜鉛は電流集
中部、すなわち反応活性点に集中して析出することな
く、負極表面において分散して析出するために亜鉛負極
形態は均一となる。これにより、水素ガスの発生に起因
した電池の漏液、膨張や亜鉛負極の不均一な形態に起因
した内部短絡が防止される。
【0082】そして、上述の理由により、カチオン性添
加剤は正電荷を持った分子であるアンモニウム塩、ホス
ホニウム塩、スルホニウム塩が好ましいが、強アルカリ
電解液中ではヘテロ原子に結合した水素原子はプロトン
として失われ、アンモニウム塩からカチオン性を有して
いないアミンに変化するため、ヘテロ原子に水素原子が
結合していない第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニ
ウム塩、第三級スルホニウム塩が好ましい。
【0083】第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウ
ム塩及び第三級スルホニウム塩としては、例えば上述し
たアルカリ亜鉛一次電池の場合と同様のものが挙げられ
る。
【0084】また、前記カチオン性有機物においては、
上述したアルカリ亜鉛一次電池の場合と同様にヘテロ原
子に結合した置換基のうち1つは炭素数が3以上20以
下の長鎖アルキル基であること好ましく、炭素数が6以
上15以下の長鎖アルキル基であることがより好まし
い。これは、反応活性点と水分子あるいは亜鉛酸イオン
との反応を抑制するためには、カチオン性有機物がある
程度の大きさをもって立体障害とならねばならず、ヘテ
ロ原子に結合した置換基の長鎖アルキル基の炭素数が2
以下の場合には十分な抑制効果が得られない虞があるか
らである。また、逆にヘテロ原子に結合した置換基の長
鎖アルキル基の炭素数が21以上の場合には、立体障害
が大きすぎて亜鉛の溶解析出反応を必要以上に阻害し、
放電容量が低下する虞があるためである。
【0085】また、前記カチオン性有機物において、ヘ
テロ原子に結合した置換基のうち長鎖アルキル基以外の
置換基は、素数が1あるいは2であるものが好ましい。
これはカチオン性有機物が有効に亜鉛負極表面に吸着す
るためには正電荷を有するヘテロ原子と亜鉛負極表面と
が接近する必要があるためである。そして、ヘテロ原子
に結合した置換基のうち長鎖アルキル基以外の置換基の
炭素数が3以上の場合には、カチオン性有機物が有効に
亜鉛負極表面に吸着できない虞があるためである。
【0086】また、前記カチオン性有機物において、フ
ッ化アルキル基などの置換基を有するものも耐アルカリ
性が高いため好ましい。
【0087】上述したように、本発明においてアルカリ
電解液は10重量%〜30重量%の水酸化カリウム水溶
液とされる。そして、20重量%〜30重量%の水酸化
カリウム水溶液とすることがより好ましい。
【0088】また、アルカリ電解液である水酸化カリウ
ム水溶液におけるカチオン性有機物の含有量は、0.1
M以上飽和量以下が好ましく、これは上記と同様の理由
によるものである。すなわち、前記カチオン性有機物は
アルカリ電解液に対する溶解性が低く、水酸化カリウム
水溶液に対しては水酸化カリウムの濃度が増加するとと
もに該カチオン性有機物の溶解性は大きく低下する。電
池内部において、カチオン性有機物は亜鉛負極表面の反
応活性点をマスキングできるだけの十分な量が含有され
ている必要があるが、電池内部に電解液としての水酸化
カリウム水溶液が少量しか含有されていない場合には、
反応活性点の数に対するカチオン性有機物の含有量の不
足により反応活性点のマスキング効果が不十分となり、
水素ガス発生の抑制及び負極表面の亜鉛析出形態の制御
において十分に効果を発揮することができない。
【0089】そこで、水素ガス発生の抑制において十分
に効果を発揮させるためには、アルカリ電解液である水
酸化カリウム水溶液におけるカチオン性有機物の含有量
を0.1M以上とすることが好ましい。カチオン性有機
物の含有量を0.1M以上とすることにより、十分な反
応活性点のマスキング効果を得ることができ、その結
果、水素ガス発生の抑制において十分に効果を得ること
が可能となる。
【0090】一方、カチオン性有機物の含有量が水酸化
カリウム水溶液の飽和量以上の場合には、未溶解のカチ
オン性有機物が亜鉛負極表面に過剰に吸着することによ
り亜鉛の溶解析出反応を必要以上に阻害し、その結果、
電池特性の低下を引き起こすため好ましくない。
【0091】したがって、アルカリ電解液である水酸化
カリウム水溶液におけるカチオン性有機物の含有量を
0.1M以上飽和量以下とすることにより、良好な電池
特性を維持しつつ確実に亜鉛負極表面における水素ガス
の発生を抑制することが可能となる。
【0092】また、アルカリ電解液である水酸化カリウ
ム水溶液は、亜鉛化合物を含有することが好ましい。こ
れは上記と同様の理由によるものである。すなわち、酸
化亜鉛などの亜鉛化合物をアルカリ電解液に添加するこ
とにより、アルカリ電解液中における亜鉛酸イオン濃度
が増大し、保存時の亜鉛の溶解反応による腐食反応を抑
制することができる。したがって、アルカリ電解液に亜
鉛化合物を添加することにより、カチオン性有機物が亜
鉛負極表面の反応活性点へ付着する前に起こる腐食反応
を抑制することができ、また、前記腐食反応により発生
した水素ガスの亜鉛表面への付着を抑制することができ
るため、カチオン性有機物の反応活性点への吸着が促進
される。これにより、アルカリ電解液にカチオン性有機
物のみを添加した場合と比べて、さらに水素ガス発生の
抑制効果を向上させることができ、負極表面の亜鉛析出
形態をより確実に均一化することができる。したがっ
て、アルカリ電解液が亜鉛化合物を含有することによ
り、水素ガス発生に起因する電池の漏液、膨張をより確
実に防止することが可能となるとともに、亜鉛析出形態
を制御して電池の内部短絡をより確実に防止することが
可能となる。
【0093】ここで、アルカリ電解液における亜鉛化合
物の含有量が少ない場合には水素ガス発生の抑制効果を
十分に得ることができないため、亜鉛化合物の添加によ
る水素ガス発生の抑制効果を十分に得るためにはアルカ
リ電解液の亜鉛化合物の含有量が十分に多いことが好ま
しく、アルカリ電解液の飽和濃度以上含有することが好
ましい。
【0094】また、通常正極性能向上のためにアルカリ
電解液に添加される水酸化リチウム等の添加剤は本発明
の効果に悪影響を及ぼすことがないため、必要に応じて
適宜添加してもかまわない
【0095】以上において説明したように、本発明に係
るアルカリ亜鉛二次電池では、アルカリ電解液が、10
重量%〜30重量%の水酸化カリウム水溶液にカチオン
性有機物を含有させてなるため、十分な量のカチオン性
有機物がアルカリ電解液中に含有される。そして、該カ
チオン性有機物が亜鉛負極上の電流集中部に選択的に移
動し吸着して反応活性点をマスキングするため、水分子
の還元反応を抑制し、亜鉛負極表面における水素ガスの
発生を抑制することができる。また、反応活性点をカチ
オン性有機物によりマスキングすることにより亜鉛負極
形態を均一とすることができる。
【0096】したがって、本発明に係るアルカリ亜鉛二
次電池では、水素ガスの発生に起因した電池の漏液、膨
張や亜鉛負極における亜鉛の不均一な析出形態に起因し
た内部短絡を防止することができ、耐漏液性及びサイク
ル寿命に優れたアルカリ亜鉛二次電池を実現することが
可能である。
【0097】
【実施例】以下、本発明を具体的に実験結果に基づいて
さらに詳細に説明するが、本発明は下記の記述に限定さ
れるものではない。
【0098】<実験1>実験1では、本発明をアルカリ
亜鉛一次電池に適用した場合の漏液の抑制効果について
検討した。
【0099】[サンプル1]サンプル1では、以下のよ
うにしてアルカリ亜鉛一次電池を作製した。
【0100】アルカリ電解液の調製 アルカリ電解液としては、5重量%水酸化カリウム水溶
液を調製した。
【0101】正極の作製 まず、正極活物質であるオキシ水酸化ニッケル80重量
部と、水酸化カルシウム1重量部と、黒鉛粉末10重量
部と、アルカリ電解液9重量部とを、らいかい乳鉢で3
0分間混合して混合物を得た。次に、この混合物を加圧
成形して、外径1.3cm、内径0.9cm、高さ1.
5cmの中空円筒状の成型体を作製した。なお、電池の
作製においては、この中空円筒状の正極を3個直列に重
ねて、全体として1個の中空円筒状をなす正極として使
用した。
【0102】負極の作製 負極活物質である亜鉛合金粉末(Al:50ppm、B
i:100ppm、In:500ppm)70重量部
と、アルカリ電解液29重量部と、ゲル化剤としてのア
クリル酸樹脂1重量部とを混合して、ゲル状の負極を作
製した。
【0103】電池の組立 正極缶に上記において作製した中空円筒状の正極を収納
して正極中空部に袋状のポリプロピレン不織布製セパレ
ータを挿入し、前記アルカリ電解液を1g添加した後、
ゲル状の負極を充填した。
【0104】電池の密閉は、正極缶の開口部に絶縁パッ
キングをはめこみ、その上に負極集電棒を有する負極蓋
を載置した後、正極缶の閉口端を内側にかしめることに
より行った。
【0105】また、この電池においては、電池容量を正
極容量で規制するために、正極と負極との電気化学的な
容量比を1:1.5とした。更に、電池缶内の空隙率は
10体積%とした。
【0106】[サンプル2]アルカリ電解液に5重量%
水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物として
塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M添加し
たこと以外は、サンプル1と同様にしてサンプル2のア
ルカリ亜鉛一次電池を作製した。
【0107】[サンプル3]アルカリ電解液に5重量%
水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物として
塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.01
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル1と同様にしてサンプル3のアルカリ亜鉛一次電池
を作製した。
【0108】[サンプル4]アルカリ電解液に5重量%
水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物として
塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
1と同様にしてサンプル4のアルカリ亜鉛一次電池を作
製した。
【0109】[サンプル5]アルカリ電解液に5重量%
水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物として
塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M、およ
び酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル1と
同様にしてサンプル5のアルカリ亜鉛一次電池を作製し
た。
【0110】[サンプル6]アルカリ電解液に5重量%
水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物として
塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを2M、およ
び酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル1と
同様にしてサンプル6のアルカリ亜鉛一次電池を作製し
た。なお、アルカリ電解液には、カチオン性有機物であ
る塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムの未溶解分
が存在した。
【0111】[サンプル7]アルカリ電解液に添加剤を
添加していない10重量%水酸化カリウム水溶液を用い
たこと以外は、サンプル1と同様にしてサンプル7のア
ルカリ亜鉛一次電池を作製した。
【0112】[サンプル8]アルカリ電解液に10重量
%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物とし
て塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M添加
したこと以外は、サンプル1と同様にしてサンプル8の
アルカリ亜鉛一次電池を作製した。
【0113】[サンプル9]アルカリ電解液に10重量
%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物とし
て塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.01
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル1と同様にしてサンプル9のアルカリ亜鉛一次電池
を作製した。
【0114】[サンプル10]アルカリ電解液に10重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル1と同様にしてサンプル10のアルカリ亜鉛一次電
池を作製した。
【0115】[サンプル11]アルカリ電解液に10重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
1と同様にしてサンプル11のアルカリ亜鉛一次電池を
作製した。
【0116】[サンプル12]アルカリ電解液に10重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを2M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
1と同様にしてサンプル12のアルカリ亜鉛一次電池を
作製した。なお、アルカリ電解液には、カチオン性有機
物である塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムの未
溶解分が存在した。
【0117】[サンプル13]アルカリ電解液に添加剤
を添加していない20重量%水酸化カリウム水溶液を用
いたこと以外は、サンプル1と同様にしてサンプル13
のアルカリ亜鉛一次電池を作製した。
【0118】[サンプル14]アルカリ電解液に20重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M添
加したこと以外は、サンプル1と同様にしてサンプル1
4のアルカリ亜鉛一次電池を作製した。
【0119】[サンプル15]アルカリ電解液に20重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.0
1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サ
ンプル1と同様にしてサンプル15のアルカリ亜鉛一次
電池を作製した。
【0120】[サンプル16]アルカリ電解液に20重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル1と同様にしてサンプル16のアルカリ亜鉛一次電
池を作製した。
【0121】[サンプル17]アルカリ電解液に20重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
1と同様にしてサンプル17のアルカリ亜鉛一次電池を
作製した。
【0122】[サンプル18]アルカリ電解液に20重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを2M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
1と同様にしてサンプル18のアルカリ亜鉛一次電池を
作製した。なお、アルカリ電解液には、カチオン性有機
物である塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムの未
溶解分が存在した。
【0123】[サンプル19]アルカリ電解液に添加剤
を添加していない30重量%水酸化カリウム水溶液を用
いたこと以外は、サンプル1と同様にしてサンプル19
のアルカリ亜鉛一次電池を作製した。
【0124】[サンプル20]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M添加したこと以外は、サンプル1と同様にしてサンプ
ル20のアルカリ亜鉛一次電池を作製した。
【0125】[サンプル21]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.0
1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サ
ンプル1と同様にしてサンプル21のアルカリ亜鉛一次
電池を作製した。
【0126】[サンプル22]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル1と同様にしてサンプル22のアルカリ亜鉛一次電
池を作製した。
【0127】[サンプル23]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
1と同様にしてサンプル23のアルカリ亜鉛一次電池を
作製した。なお、アルカリ電解液には、カチオン性有機
物である塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムの未
溶解分が存在した。
【0128】[サンプル24]アルカリ電解液に添加剤
を添加していない40重量%水酸化カリウム水溶液を用
いたこと以外は、サンプル1と同様にしてサンプル24
のアルカリ亜鉛一次電池を作製した。
【0129】[サンプル25]アルカリ電解液に40重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.0
1M添加したこと以外は、サンプル1と同様にしてサン
プル25のアルカリ亜鉛一次電池を作製した。
【0130】[サンプル26]アルカリ電解液に40重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.0
1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サ
ンプル1と同様にしてサンプル26のアルカリ亜鉛一次
電池を作製した。
【0131】[サンプル27]アルカリ電解液に40重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル1と同様にしてサンプル27のアルカリ亜鉛一次電
池を作製した。なお、アルカリ電解液には、カチオン性
有機物である塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウム
の未溶解分が存在した。
【0132】以上のようにして作製したサンプル1〜サ
ンプル27のアルカリ亜鉛一次電池について漏液率及び
初期放電時間の評価を行った。以下、漏液率および初期
放電時間の評価方法について説明する。なお、サンプル
1〜サンプル6のアルカリ亜鉛一次電池においては、初
期放電時間のみ評価を行った。
【0133】上記のようなサンプル1〜サンプル27の
アルカリ亜鉛一次電池をそれぞれ条件毎に100個ずつ
用意し、100mAの定電流連続放電で終止電圧1.0
Vまで放電し、60℃中に80日間保存した。その後、
目視判定で漏液が観察された電池の個数を漏液率(%)
として評価を行った。
【0134】また、定電流連続放電した際の放電時間を
初期放電時間とした。その結果を、各サンプルのアルカ
リ電解液の作製条件とともに表1に示す。
【0135】
【表1】
【0136】表1より、電解液である水酸化カリウム水
溶液にカチオン性有機物を添加したアルカリ亜鉛一次電
池は、水酸化カリウム水溶液にカチオン性有機物を添加
しないアルカリ亜鉛一次電池よりも漏液率が大幅に低下
していることが判る。
【0137】これは、カチオン性有機物が、それ自体が
有する正電荷の影響で亜鉛負極上の電流集中部に選択的
に移動し、吸着することにより反応活性点をマスキング
し、この結果、水分子の還元反応が抑制され、電池の漏
液、膨張、破裂が防止されるものと考えられる。したが
って、電解液である水酸化カリウム水溶液にカチオン性
有機物を添加することにより、アルカリ亜鉛一次電池の
漏液を効果的に抑制し、漏液率を大幅に低下させること
ができるといえる。
【0138】そして、電解液である水酸化カリウム水溶
液にカチオン性有機物の他に亜鉛化合物を添加したアル
カリ亜鉛一次電池は、さらに漏液率が大幅に低下してい
ることが判る。これより、電解液である水酸化カリウム
水溶液にカチオン性有機物を含有させ、さらに亜鉛化合
物を飽和量含有することにより、アルカリ亜鉛一次電池
の漏液をさらに効果的に抑制して良好な漏液防止効果を
得ることが可能であるといえる。
【0139】この亜鉛化合物の添加の効果については、
以下のように考えられる。亜鉛酸イオン濃度が増大し、
亜鉛の腐食反応が抑制されることにより、カチオン性有
機物が亜鉛表面の反応活性点へ付着する前に起こる腐食
反応を抑制することができ、また、前記腐食反応により
発生した水素ガスの亜鉛表面への付着を抑制することに
よりカチオン性有機物の反応活性点への吸着が促進され
るため、カチオン性有機物のみを添加した場合と比べて
より効果が向上する。
【0140】また、表1より、カチオン性有機物を0.
1M以上、および亜鉛化合物を飽和量添加した場合に
は、アルカリ亜鉛一次電池の漏液が著しく抑制され、カ
チオン性有機物の添加量が飽和量以上である場合には初
期放電容量が低下していることが判る。これは、カチオ
ン性有機物の添加が少なく負極の亜鉛量と比べて過小な
場合には、亜鉛負極表面の反応活性点のマスキング効果
が不十分なため水素ガス発生の抑制において十分に効果
を発揮することができず、またカチオン性有機物の添加
量が飽和量以上である場合には、未溶解のカチオン性有
機物が亜鉛表面に過剰に吸着することにより内部抵抗が
必要以上に増大し、放電容量を低下させるものと考えら
れる。したがって、電解液である水酸化カリウム水溶液
におけるカチオン性有機物の含有量は0.1M以上飽和
量以下が好ましいといえる。
【0141】また、カチオン性有機物を0.1M以上飽
和量以下において確実に溶解させるには、水酸化カリウ
ム水溶液の濃度を30重量%以下とすることが好ましい
といえる。
【0142】また、表1から、アルカリ電解液である水
酸化カリウム水溶液の濃度が10%より低いアルカリ亜
鉛一次電池では、他のアルカリ亜鉛一次電池に比べて初
期放電時間が非常に短くなっていることが判る。一方、
アルカリ電解液である水酸化カリウム水溶液の濃度が1
0%以上であるアルカリ亜鉛一次電池は、良好な初期放
電時間が得られている。これは、アルカリ電解液である
水酸化カリウム水溶液の濃度が10%よりも低い電解液
は、アルカリ電解液の導電率が大きく低下するため放電
作動電圧の低下とともに放電時間が短くなると考えられ
る。したがって、アルカリ電解液である水酸化カリウム
水溶液の濃度は10%以上とすることが好ましいといえ
る。また、導電率の低下に伴う放電容量の低下を考慮す
ると、アルカリ電解液である水酸化カリウム水溶液の濃
度は20%以上がより好ましいといえる。
【0143】したがって、これらのことより、漏液が防
止され、且つ実用に適した放電容量を備えたアルカリ亜
鉛一次電池を実現するには、水酸化カリウム水溶液の濃
度は10重量%〜30重量%の範囲とすることが好まし
いといえる。さらに、水酸化カリウム水溶液の濃度を2
0重量%〜30重量%の範囲とすることにより、耐漏液
性、放電容量ともにより優れたアルカリ亜鉛一次電池を
実現可能であるといえる。
【0144】次に、カチオン性有機物のアルキル鎖長さ
による、アルカリ亜鉛一次電池の漏液防止に及ぼす効果
について説明する。
【0145】[サンプル28]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化テトラメチルアンモニウムを0.1M、および
酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル1と同
様にしてサンプル28のアルカリ亜鉛一次電池を作製し
た。
【0146】[サンプル29]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化トリメチルエチルアンモニウムを0.1M、お
よび酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル1
と同様にしてサンプル29のアルカリ亜鉛一次電池を作
製した。
【0147】[サンプル30]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化プロピルトリメチルアンモニウムを0.1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
1と同様にしてサンプル30のアルカリ亜鉛一次電池を
作製した。
【0148】[サンプル31]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ヘキシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル1と同様にしてサンプル31のアルカリ亜鉛一次電
池を作製した。
【0149】[サンプル32]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ペンタデシルトリメチルアンモニウムを
0.1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外
は、サンプル1と同様にしてサンプル32のアルカリ亜
鉛一次電池を作製した。
【0150】[サンプル33]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−エイコシルトリメチルアンモニウムを0.
1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サ
ンプル1と同様にしてサンプル33のアルカリ亜鉛一次
電池を作製した。
【0151】[サンプル34]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ヘネイコシルトリメチルアンモニウムを
0.1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外
は、サンプル1と同様にしてサンプル34のアルカリ亜
鉛一次電池を作製した。
【0152】以上のようにして作製したサンプル28〜
サンプル34のアルカリ亜鉛一次電池について上記と同
様にして耐漏液性及び初期放電時間の評価を行った。そ
の結果を、各サンプルのアルカリ電解液の作製条件とと
もに表2に示す。
【0153】
【表2】
【0154】表2より、カチオン性有機物の長鎖アルキ
ル基の炭素数が3以上の場合に、アルカリ亜鉛一次電池
の漏液が著しく抑制されることが判る。但し、前記置換
基が炭素数15より大きい場合、特に21以上の場合に
おいては放電容量が低下するため、カチオン性有機物の
長鎖アルキル基の炭素数は3〜20、特に3〜15の範
囲が好ましいといえる。
【0155】これは、反応活性点と水分子との反応を阻
害するためには、カチオン性有機物が立体障害とならね
ばならないため、カチオン性有機物の長鎖アルキル基の
炭素数が2以下の小さな置換基では十分な効果が得られ
ないものと考えられる。また置換基が大きすぎる場合に
は亜鉛の溶解反応を必要以上に阻害するものと考えられ
る。したがって、カチオン性有機物の長鎖アルキル基の
炭素数は3〜20、特に3〜15の範囲とすることによ
り、良好な耐漏液性と放電容量を備えたアルカリ亜鉛一
次電池を実現可能であるといえる。
【0156】次に、カチオン性有機物の長鎖アルキル基
以外の置換基の長さによる、アルカリ亜鉛一次電池の漏
液の抑制効果について説明する。
【0157】[サンプル35]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化プロピルトリメチルアンモニウムを0.1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
1と同様にしてサンプル35のアルカリ亜鉛一次電池を
作製した。
【0158】[サンプル36]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化プロピルトリエチルアンモニウムを0.1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
1と同様にしてサンプル36のアルカリ亜鉛一次電池を
作製した。
【0159】[サンプル37]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化ジメチルジプロピルアンモニウムを0.1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
1と同様にしてサンプル37のアルカリ亜鉛一次電池を
作製した。
【0160】以上のようにして作製したサンプル35〜
サンプル37のアルカリ亜鉛一次電池について上記と同
様にして耐漏液性及び初期放電時間の評価を行った。そ
の結果を、各サンプルのアルカリ電解液の作製条件とと
もに表3に示す。
【0161】
【表3】
【0162】表3より、カチオン性有機物における長鎖
アルキル基以外の置換基の炭素数が2以下の場合におい
て、アルカリ亜鉛一次電池の漏液の抑制効果が見られ
る。これは、カチオン性有機物において長鎖アルキル基
以外の置換基が炭素数が3以上の場合には、カチオン性
有機物が有効に亜鉛負極表面に吸着できないためと考え
られる。
【0163】次に、カチオン性有機物として第四級アン
モニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第三級スルホニウ
ム塩を用いたときの、アルカリ亜鉛一次電池の漏液の抑
制効果について説明する。
【0164】[サンプル38]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル1と同様にしてサンプル38のアルカリ亜鉛一次電
池を作製した。
【0165】[サンプル39]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルホスホニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル1と同様にしてサンプル39のアルカリ亜鉛一次電
池を作製した。
【0166】[サンプル40]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルジメチルスルホニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル1と同様にしてサンプル40のアルカリ亜鉛一次電
池を作製した。
【0167】[サンプル41]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物を
添加せず、酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル1と同様にしてサンプル41のアルカリ亜鉛一次電
池を作製した。
【0168】以上のようにして作製したサンプル38〜
サンプル41のアルカリ亜鉛一次電池について上記と同
様にして耐漏液性及び初期放電時間の評価を行った。そ
の結果を、各サンプルのアルカリ電解液の作製条件とと
もに表4に示す。
【0169】
【表4】
【0170】表4より、カチオン性有機物として第四級
アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第三級スルホ
ニウム塩を添加した場合においても、アルカリ亜鉛一次
電池の漏液が著しく抑制されることが判る。これは、第
四級ホスホニウム塩、第三級スルホニウム塩においても
第四級アンモニウム塩と同様に亜鉛表面の活性点に効果
的に吸着するためと考えられる。したがって、カチオン
性有機物として第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニ
ウム塩、第三級スルホニウム塩を電解液である水酸化カ
リウム水溶液添加した場合においても本発明における効
果が得られるといえる。
【0171】<実験2>実験2では、本発明をアルカリ
亜鉛二次電池に適用した場合の漏液および内部短絡の抑
制効果について検討した。
【0172】[サンプル51]サンプル51では、以下
のようにしてアルカリ亜鉛二次電池を作製した。
【0173】アルカリ電解液の調製 アルカリ電解液としては、5重量%水酸化カリウム水溶
液を調製した。
【0174】正極の作製 まず、正極活物質であるオキシ水酸化ニッケル80重量
部と、水酸化カルシウム1重量部と、黒鉛粉末10重量
部と、アルカリ電解液9重量部とを、らいかい乳鉢で3
0分間混合して混合物を得た。次に、この混合物を加圧
成形して、外径1.3cm、内径0.9cm、高さ1.
5cmの中空円筒状の成型体を作製した。なお、電池の
作製においては、この中空円筒状の正極を3個直列に重
ねて、全体として1個の中空円筒状をなす正極として使
用した。
【0175】負極の作製 負極活物質である亜鉛合金粉末(Al:50ppm、B
i:100ppm、In:500ppm)70重量部
と、アルカリ電解液29重量部と、ゲル化剤としてのア
クリル酸樹脂1重量部とを混合して、ゲル状の負極を作
製した。
【0176】電池の組立 正極缶に上記において作製した中空円筒状の正極を収納
して正極中空部に袋状のポリプロピレン不織布製セパレ
ータを挿入し、前記アルカリ電解液を1g添加した後、
ゲル状の負極を充填した。
【0177】電池の密閉は、正極缶の開口部に絶縁パッ
キングをはめこみ、その上に負極集電棒を有する負極蓋
を載置した後、正極缶の閉口端を内側にかしめることに
より行った。
【0178】また、この電池においては、電池容量を正
極容量で規制するために、正極と負極との電気化学的な
容量比を1:1.5とした。更に、電池缶内の空隙率は
10体積%とした。
【0179】[サンプル52]アルカリ電解液に5重量
%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物とし
て塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M添加
したこと以外は、サンプル51と同様にしてサンプル5
2のアルカリ亜鉛二次電池を作製した。
【0180】[サンプル53]アルカリ電解液に5重量
%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物とし
て塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.01
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル51と同様にしてサンプル53のアルカリ亜鉛二次
電池を作製した。
【0181】[サンプル54]アルカリ電解液に5重量
%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物とし
て塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル51と同様にしてサンプル54のアルカリ亜鉛二次
電池を作製した。
【0182】[サンプル55]アルカリ電解液に5重量
%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物とし
て塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M、お
よび酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル5
1と同様にしてサンプル55のアルカリ亜鉛二次電池を
作製した。
【0183】[サンプル56]アルカリ電解液に5重量
%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物とし
て塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを2M、お
よび酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル5
1と同様にしてサンプル56のアルカリ亜鉛二次電池を
作製した。なお、アルカリ電解液には、カチオン性有機
物である塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムの未
溶解分が存在した。
【0184】[サンプル57]アルカリ電解液に添加剤
を添加していない10重量%水酸化カリウム水溶液を用
いたこと以外は、サンプル51と同様にしてサンプル5
7のアルカリ亜鉛二次電池を作製した。
【0185】[サンプル58]アルカリ電解液に10重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M添
加したこと以外は、サンプル51と同様にしてサンプル
58のアルカリ亜鉛二次電池を作製した。
【0186】[サンプル59]アルカリ電解液に10重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.0
1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サ
ンプル51と同様にしてサンプル59のアルカリ亜鉛二
次電池を作製した。
【0187】[サンプル60]アルカリ電解液に10重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル51と同様にしてサンプル60のアルカリ亜鉛二次
電池を作製した。
【0188】[サンプル61]アルカリ電解液に10重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
51と同様にしてサンプル61のアルカリ亜鉛二次電池
を作製した。
【0189】[サンプル62]アルカリ電解液に10重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを2M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
51と同様にしてサンプル62のアルカリ亜鉛二次電池
を作製した。なお、アルカリ電解液には、カチオン性有
機物である塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムの
未溶解分が存在した。
【0190】[サンプル63]アルカリ電解液に添加剤
を添加していない20重量%水酸化カリウム水溶液を用
いたこと以外は、サンプル51と同様にしてサンプル6
3のアルカリ亜鉛二次電池を作製した。
【0191】[サンプル64]アルカリ電解液に20重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M添
加したこと以外は、サンプル51と同様にしてサンプル
64のアルカリ亜鉛二次電池を作製した。
【0192】[サンプル65]アルカリ電解液に20重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.0
1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サ
ンプル51と同様にしてサンプル65のアルカリ亜鉛二
次電池を作製した。
【0193】[サンプル66]アルカリ電解液に20重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル51と同様にしてサンプル66のアルカリ亜鉛二次
電池を作製した。
【0194】[サンプル67]アルカリ電解液に20重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
51と同様にしてサンプル67のアルカリ亜鉛二次電池
を作製した。
【0195】[サンプル68]アルカリ電解液に20重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを2M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
51と同様にしてサンプル68のアルカリ亜鉛二次電池
を作製した。なお、アルカリ電解液には、カチオン性有
機物である塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムの
未溶解分が存在した。
【0196】[サンプル69]アルカリ電解液に添加剤
を添加していない30重量%水酸化カリウム水溶液を用
いたこと以外は、サンプル51と同様にしてサンプル6
9のアルカリ亜鉛二次電池を作製した。
【0197】[サンプル70]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M添加したこと以外は、サンプル51と同様にしてサン
プル70のアルカリ亜鉛二次電池を作製した。
【0198】[サンプル71]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.0
1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サ
ンプル51と同様にしてサンプル71のアルカリ亜鉛二
次電池を作製した。
【0199】[サンプル72]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル51と同様にしてサンプル72のアルカリ亜鉛二次
電池を作製した。
【0200】[サンプル73]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
51と同様にしてサンプル73のアルカリ亜鉛二次電池
を作製した。なお、アルカリ電解液には、カチオン性有
機物である塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムの
未溶解分が存在した。
【0201】[サンプル74]アルカリ電解液に添加剤
を添加していない40重量%水酸化カリウム水溶液を用
いたこと以外は、サンプル51と同様にしてサンプル7
4のアルカリ亜鉛二次電池を作製した。
【0202】[サンプル75]アルカリ電解液に40重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.0
1M添加したこと以外は、サンプル51と同様にしてサ
ンプル75のアルカリ亜鉛二次電池を作製した。
【0203】[サンプル76]アルカリ電解液に40重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.0
1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サ
ンプル51と同様にしてサンプル76のアルカリ亜鉛二
次電池を作製した。
【0204】[サンプル77]アルカリ電解液に40重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル51と同様にしてサンプル77のアルカリ亜鉛二次
電池を作製した。なお、アルカリ電解液には、カチオン
性有機物である塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウ
ムの未溶解分が存在した。
【0205】以上のようにして作製したサンプル51〜
サンプル77のアルカリ亜鉛二次電池について漏液率、
内部短絡率及び初期放電時間の評価を行った。以下、漏
液率、内部短絡率および初期放電時間の評価方法につい
て説明する。なお、サンプル51〜サンプル56のアル
カリ亜鉛二次電池においては、初期放電時間のみ評価を
行った。
【0206】まず、アルカリ亜鉛二次電池の漏液率の評
価方法について以下に説明する。上記のようなサンプル
51〜サンプル77のアルカリ亜鉛二次電池をそれぞれ
条件毎に100個ずつ用意し、充放電サイクルを行った
後、前記サイクル後充電電池を更に60℃中に20日間
保存して、目視判定で漏液が観察された電池の個数を漏
液率(%)として評価を行った。なお、充放電サイクル
では100mAの定電流にて終止電圧が1.0Vになる
まで放電、200mAの定電流1.90V定電圧にて1
0時間充電を1サイクルとして、20サイクル繰り返し
行った。その結果を、各サンプルのアルカリ電解液の作
製条件とともに表5に示す。
【0207】次に、アルカリ亜鉛二次電池の内部短絡率
の評価方法について以下に説明する。上記のようなサン
プル51〜サンプル77のアルカリ亜鉛二次電池をそれ
ぞれ条件毎に100個ずつ用意し、充放電サイクルを行
った後の充電後電池を2時間室温にて放置して開路電圧
を測定し、更に24時間室温にて放置した後に再度開路
電圧を測定し、室温24時間放置前後の電圧降下幅(Δ
V)が100mV以上の電池を内部短絡電池として、そ
の個数より内部短絡率(%)の評価を行った。
【0208】なお、充放電サイクルでは100mAの定
電流にて終止電圧が1.0Vになるまで放電、200m
A定電流1.90V定電圧にて10時間充電を1サイク
ルとして、50サイクル繰り返し行った。その結果を表
5に示す。
【0209】また、上記の充放電サイクルの初回の放電
時間を初期放電時間とした。その結果を表5に示す。
【0210】
【表5】
【0211】表5より、電解液である水酸化カリウム水
溶液にカチオン性有機物を添加したアルカリ亜鉛二次電
池は、水酸化カリウム水溶液にカチオン性有機物を添加
しないアルカリ亜鉛二次電池よりも漏液率および内部短
絡率が大幅に低下していることが判る。
【0212】これは、カチオン性有機物が、それ自体が
有する正電荷の影響で亜鉛負極上の電流集中部に選択的
に移動し、吸着することにより反応活性点をマスキング
し、この結果、水分子の還元反応が抑制され、電池の漏
液、膨張、破裂および内部短絡が防止されるものと考え
られる。したがって、電解液である水酸化カリウム水溶
液にカチオン性有機物を添加することにより、アルカリ
亜鉛二次電池の漏液および内部短絡を効果的に抑制し、
漏液率および内部短絡を大幅に低下させることができる
といえる。
【0213】そして、電解液である水酸化カリウム水溶
液にカチオン性有機物の他に亜鉛化合物を添加したアル
カリ亜鉛二次電池は、さらに漏液率および内部短絡率が
大幅に低下していることが判る。これより、電解液であ
る水酸化カリウム水溶液にカチオン性有機物を含有さ
せ、さらに亜鉛化合物を飽和量含有することにより、ア
ルカリ亜鉛二次電池の漏液および内部短絡をさらに効果
的に抑制して良好な漏液防止効果および内部短絡防止効
果を得ることが可能であるといえる。
【0214】この亜鉛化合物の添加の効果については、
以下のように考えられる。亜鉛酸イオン濃度が増大し、
亜鉛の腐食反応が抑制されることにより、カチオン性有
機物が亜鉛表面の反応活性点へ付着する前に起こる腐食
反応を抑制することができ、また、前記腐食反応により
発生した水素ガスの亜鉛表面への付着を抑制することに
よりカチオン性有機物の反応活性点への吸着が促進され
るため、カチオン性有機物のみを添加した場合と比べて
より効果が向上する。
【0215】また、表5より、カチオン性有機物を0.
1M以上、および亜鉛化合物を飽和量添加した場合に
は、アルカリ亜鉛二次電池の漏液および内部短絡が著し
く抑制され、カチオン性有機物の添加量が飽和量以上で
ある場合には初期放電容量が低下していることが判る。
これは、カチオン性有機物の添加が少なく負極の亜鉛量
と比べて過小な場合には、亜鉛負極表面の反応活性点の
マスキング効果が不十分なため水素ガス発生の抑制およ
び亜鉛析出形態の制御において十分に効果を発揮するこ
とができず、またカチオン性有機物の添加量が飽和量以
上である場合には、未溶解のカチオン性有機物が亜鉛表
面に過剰に吸着することにより亜鉛の溶解析出反応を必
要以上に阻害するものと考えられる。したがって、電解
液である水酸化カリウム水溶液におけるカチオン性有機
物の含有量は0.1M以上飽和量以下が好ましいといえ
る。
【0216】また、カチオン性有機物を0.1M以上飽
和量以下において確実に溶解させるには、水酸化カリウ
ム水溶液の濃度を30重量%以下とすることが好ましい
といえる。
【0217】また、表5から、アルカリ電解液である水
酸化カリウム水溶液の濃度が10%より低いアルカリ亜
鉛二次電池では、他のアルカリ亜鉛二次電池に比べて初
期放電時間が非常に短くなっていることが判る。一方、
アルカリ電解液である水酸化カリウム水溶液の濃度が1
0%以上であるアルカリ亜鉛二次電池は、良好な初期放
電時間が得られている。これは、アルカリ電解液である
水酸化カリウム水溶液の濃度が10%よりも低い電解液
は、アルカリ電解液の導電率が大きく低下するため放電
作動電圧の低下とともに放電時間が短くなると考えられ
る。したがって、アルカリ電解液である水酸化カリウム
水溶液の濃度は10%以上とすることが好ましいといえ
る。また、導電率の低下に伴う放電容量の低下を考慮す
ると、アルカリ電解液である水酸化カリウム水溶液の濃
度は20%以上がより好ましいといえる。
【0218】したがって、これらのことより、漏液およ
び内部短絡が防止され、且つ実用に適した放電容量を備
えたアルカリ亜鉛二次電池を実現するには、水酸化カリ
ウム水溶液の濃度は10重量%〜30重量%の範囲とす
ることが好ましいといえる。さらに、水酸化カリウム水
溶液の濃度を20重量%〜30重量%の範囲とすること
により、漏液および内部短絡がより確実に防止され、放
電容量にも優れたアルカリ亜鉛二次電池を実現可能であ
るといえる。
【0219】次に、カチオン性有機物のアルキル鎖長さ
による、アルカリ亜鉛二次電池の漏液防止に及ぼす効果
について説明する。
【0220】[サンプル78]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化テトラメチルアンモニウムを0.1M、および
酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル51と
同様にしてサンプル78のアルカリ亜鉛二次電池を作製
した。
【0221】[サンプル79]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化トリメチルエチルアンモニウムを0.1M、お
よび酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル5
1と同様にしてサンプル79のアルカリ亜鉛二次電池を
作製した。
【0222】[サンプル80]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化プロピルトリメチルアンモニウムを0.1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
51と同様にしてサンプル80のアルカリ亜鉛二次電池
を作製した。
【0223】[サンプル81]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ヘキシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル51と同様にしてサンプル81のアルカリ亜鉛二次
電池を作製した。
【0224】[サンプル82]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ペンタデシルトリメチルアンモニウムを
0.1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外
は、サンプル51と同様にしてサンプル82のアルカリ
亜鉛二次電池を作製した。
【0225】[サンプル83]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−エイコシルトリメチルアンモニウムを0.
1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サ
ンプル51と同様にしてサンプル83のアルカリ亜鉛二
次電池を作製した。
【0226】[サンプル84]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ヘネイコシルトリメチルアンモニウムを
0.1M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外
は、サンプル51と同様にしてサンプル84のアルカリ
亜鉛二次電池を作製した。
【0227】以上のようにして作製したサンプル78〜
サンプル84のアルカリ亜鉛二次電池について上記と同
様にして漏液率および内部短絡率及び初期放電時間の評
価を行った。その結果を、各サンプルのアルカリ電解液
の作製条件とともに表6に示す。
【0228】
【表6】
【0229】表6より、カチオン性有機物の長鎖アルキ
ル基の炭素数が3以上の場合に、アルカリ亜鉛二次電池
の漏液および内部短絡が著しく抑制されることが判る。
但し、前記置換基が炭素数15より大きい場合、特に2
1以上の場合においては放電容量が低下するため、カチ
オン性有機物の長鎖アルキル基の炭素数は3〜20、特
に3〜15の範囲が好ましいといえる。
【0230】これは、反応活性点と水分子との反応を阻
害するためには、カチオン性有機物が立体障害とならね
ばならないため、カチオン性有機物の長鎖アルキル基の
炭素数が2以下の小さな置換基では十分な効果が得られ
ないものと考えられる。また置換基が大きすぎる場合に
は亜鉛の溶解析出反応を必要以上に阻害するものと考え
られる。したがって、カチオン性有機物の長鎖アルキル
基の炭素数は3〜20、特に3〜15の範囲とすること
により、漏液および内部短絡が確実に防止され、良好な
放電容量を備えたアルカリ亜鉛二次電池を実現可能であ
るといえる。
【0231】次に、カチオン性有機物の長鎖アルキル基
以外の置換基の長さによる、アルカリ亜鉛二次電池の漏
液の抑制効果について説明する。
【0232】[サンプル85]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化プロピルトリメチルアンモニウムを0.1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
51と同様にしてサンプル85のアルカリ亜鉛二次電池
を作製した。
【0233】[サンプル86]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化プロピルトリエチルアンモニウムを0.1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
51と同様にしてサンプル86のアルカリ亜鉛二次電池
を作製した。
【0234】[サンプル87]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化ジメチルジプロピルアンモニウムを0.1M、
および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サンプル
51と同様にしてサンプル87のアルカリ亜鉛二次電池
を作製した。
【0235】以上のようにして作製したサンプル85〜
サンプル87のアルカリ亜鉛二次電池について上記と同
様にして耐漏液性及び初期放電時間の評価を行った。そ
の結果を、各サンプルのアルカリ電解液の作製条件とと
もに表7に示す。
【0236】
【表7】
【0237】表7より、カチオン性有機物における長鎖
アルキル基以外の置換基の炭素数が2以下の場合におい
て、アルカリ亜鉛二次電池の漏液および内部短絡の抑制
効果が見られる。これは、カチオン性有機物において長
鎖アルキル基以外の置換基が炭素数が3以上の場合に
は、カチオン性有機物が有効に亜鉛負極表面に吸着でき
ないためと考えられる。
【0238】次に、カチオン性有機物として第四級アン
モニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第三級スルホニウ
ム塩を用いたときの、アルカリ亜鉛二次電池の漏液およ
び内部短絡の抑制効果について説明する。
【0239】[サンプル88]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル51と同様にしてサンプル88のアルカリ亜鉛二次
電池を作製した。
【0240】[サンプル89]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルトリメチルホスホニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル51と同様にしてサンプル89のアルカリ亜鉛二次
電池を作製した。
【0241】[サンプル90]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物と
して塩化n−ドデシルジメチルスルホニウムを0.1
M、および酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル51と同様にしてサンプル90のアルカリ亜鉛二次
電池を作製した。
【0242】[サンプル91]アルカリ電解液に30重
量%水酸化カリウム水溶液を用い、カチオン性有機物を
添加せず、酸化亜鉛を飽和量添加したこと以外は、サン
プル51と同様にしてサンプル91のアルカリ亜鉛二次
電池を作製した。
【0243】以上のようにして作製したサンプル88〜
サンプル91のアルカリ亜鉛二次電池について上記と同
様にして耐漏液性及び初期放電時間の評価を行った。そ
の結果を、各サンプルのアルカリ電解液の作製条件とと
もに表8に示す。
【0244】
【表8】
【0245】表8より、カチオン性有機物として第四級
アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第三級スルホ
ニウム塩を添加した場合においても、アルカリ亜鉛二次
電池の漏液および内部短絡が著しく抑制されることが判
る。これは、第四級ホスホニウム塩、第三級スルホニウ
ム塩においても第四級アンモニウム塩と同様に亜鉛表面
の活性点に効果的に吸着するためと考えられる。したが
って、カチオン性有機物として第四級アンモニウム塩、
第四級ホスホニウム塩、第三級スルホニウム塩を電解液
である水酸化カリウム水溶液添加した場合においても本
発明における効果が得られるといえる。
【0246】
【発明の効果】本発明に係るアルカリ亜鉛電池は、負極
活物質として亜鉛あるいは亜鉛合金を含有する負極と、
正極と、セパレータと、アルカリ電解液とを備えてなる
アルカリ亜鉛電池であって、上記アルカリ電解液が、1
0重量%〜30重量%の水酸化カリウム水溶液にカチオ
ン性有機物を含有させてなるものである。
【0247】以上のように構成された本発明に係るアル
カリ亜鉛電池では、アルカリ電解液として10重量%〜
30重量%の水酸化カリウム水溶液を用い、該アルカリ
電解液にカチオン性有機物を含有させているため、アル
カリ電解液中に十分な量のカチオン性有機物が含有され
る。これにより、亜鉛負極表面における水素ガスの発生
を抑制することができる。
【0248】したがって、本発明に係るアルカリ亜鉛電
池では、亜鉛負極表面における水素ガスに起因した漏液
を防止することが可能である、耐漏液性が高く貯蔵性に
優れたアルカリ亜鉛電池を提供することが可能である。
【0249】また、本発明をアルカリ亜鉛二次電池に適
用することにより、亜鉛負極表面における水素ガスの発
生を抑制するとともに、亜鉛負極形態を均一化して亜鉛
負極形態の不均一に起因した内部短絡を防止することが
可能であり、貯蔵性及びサイクル寿命に優れたアルカリ
亜鉛二次電池を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルカリ亜鉛一次電池の一構成例
を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係るアルカリ亜鉛二次電池の一構成例
を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 正極缶 2 負極蓋 3 絶縁パッキング 4 負極集電棒 5 正極 6 絶縁性セパレータ 7 ゲル状負極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 遠藤 琢哉 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 柴本 悟郎 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 Fターム(参考) 5H024 AA14 CC02 EE09 FF09 FF36 FF40 HH01 5H028 AA06 EE01 EE02 EE06 FF05 HH01

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 負極活物質として亜鉛あるいは亜鉛合金
    を含有する負極と、正極と、セパレータと、アルカリ電
    解液とを備えてなるアルカリ亜鉛電池であって、 上記アルカリ電解液が、10重量%〜30重量%の水酸
    化カリウム水溶液にカチオン性有機物を含有させてなる
    ことを特徴とするアルカリ亜鉛電池。
  2. 【請求項2】 上記カチオン性有機物が、第四級アンモ
    ニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第三級スルホニウム
    塩のいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1
    記載のアルカリ亜鉛電池。
  3. 【請求項3】 上記アルカリ電解液における上記カチオ
    ン性有機物の含有量が0.1M以上飽和量以下であるこ
    とを特徴とする請求項1記載のアルカリ亜鉛電池。
  4. 【請求項4】 上記カチオン性有機物のヘテロ原子に結
    合した置換基のうち1つの置換基は炭素数が3以上20
    以下である直鎖アルキル基であり、残りの置換基は炭素
    数が1または2であるアルキル基であることを特徴とす
    る請求項1記載のアルカリ亜鉛電池。
  5. 【請求項5】 上記アルカリ電解液が、亜鉛化合物を飽
    和量以上含有することことを特徴とする請求項1のアル
    カリ亜鉛電池。
  6. 【請求項6】 一次電池であることを特徴とする請求項
    1記載のアルカリ亜鉛電池。
  7. 【請求項7】 二次電池であることを特徴とする請求項
    1記載のアルカリ亜鉛電池。
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