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JP2003260565A - アーク長揺動パルスアーク溶接制御方法 - Google Patents

アーク長揺動パルスアーク溶接制御方法

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JP2003260565A
JP2003260565A JP2002061662A JP2002061662A JP2003260565A JP 2003260565 A JP2003260565 A JP 2003260565A JP 2002061662 A JP2002061662 A JP 2002061662A JP 2002061662 A JP2002061662 A JP 2002061662A JP 2003260565 A JP2003260565 A JP 2003260565A
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JP
Japan
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peak
period
welding
voltage
arc
Prior art date
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JP2002061662A
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Kogun Do
紅軍 仝
Tomoyuki Kamiyama
智之 上山
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Daihen Corp
Original Assignee
Daihen Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アーク長を周期的に所定幅で揺動させて波目
模様のビード外観を形成するアーク長揺動パルスアーク
溶接において、スパッタ、ヒューム等の発生量を大幅に
減少させて、良好な溶接品質を確保する。 【解決手段】 本発明は、ピーク電圧値HVp及びLV
pによってアーク長Laを正確に検出し、その目標値で
ある高ピーク電圧設定値HVpsと低ピーク電圧設定値L
Vpsを設定して周期的に切り換えることによって、高ア
ーク長HLaと低アーク長LLaとを周期的に揺動させ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アーク長を周期的
に揺動させる消耗電極式パルスアーク溶接のアーク長制
御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ピーク期間Tp中のピーク電流Ipの通
電とベース期間Tb中のベース電流Ibの通電とを繰り
返して行う消耗電極式パルスアーク溶接において、上記
のピーク電流Ip及び上記のピーク期間Tpを予め定め
た低周波(数Hz〜数十Hz)の切換周期Tc毎に変化
させることによって、アーク長を高低に揺動させる溶接
方法が従来から行われている。この溶接方法では、アー
ク長の揺動によってアークの広がりを変化させて美しい
波目模様のビード外観を得ることができるので、外観を
重視するオートバイのフレームの溶接等に利用されてい
る。さらに、この溶接方法では、アーク長の揺動によっ
てアーク力を変化させて溶融池を攪拌することで、ブロ
ーホール等の溶接欠陥の発生を抑制することができる。
以下、従来技術としてこのアーク長揺動パルスアーク溶
接方法について、図面を参照して説明する。
【0003】図1は、従来技術のアーク長揺動パルスア
ーク溶接の電流・電圧波形図である。同図(A)は切換
周期信号Ttcの時間変化を示し、同図(B)は溶接電流
Iwの時間変化を示し、同図(C)は溶接電圧Vwの時
間変化を示し、同図(D)はアーク長Laの時間変化を
示す。以下、同図を参照して説明する。
【0004】同図(A)に示すように、切換周期信号T
tcは、予め定めたHighレベルの高アーク長期間HT
と、予め定めたLowレベルの低アーク長期間LTとを
切換周期Tc毎に繰り返す。これに応動して、同図
(D)に示すように、アーク長Laは、上記の高アーク
長期間HT中は高アーク長HLaとなり、上記の低アー
ク長期間LT中は低アーク長LLaとなる。
【0005】 高アーク長期間HT 同図(B)に示すように、高ピーク期間HTp中は高ピ
ーク電流HIpを通電し、高ベース期間HTb中は高ベ
ース電流HIbを通電し、これらの通電を高パルス周期
HTfとして高アーク長期間HT中繰り返して通電す
る。同様に、同図(C)に示すように、高ピーク期間H
Tp中は高ピーク電圧HVpが印加し、高ベース期間H
Tb中は高ベース電圧HVbが印加し、これらの印加を
高アーク長期間HT中繰り返して行う。
【0006】 低アーク長期間LT 同図(B)に示すように、低ピーク期間LTp中は低ピ
ーク電流LIpを通電し、低ベース期間LTb中は低ベ
ース電流LIbを通電し、これらの通電を低パルス周期
LTfとして低アーク長期間LT中繰り返して通電す
る。同様に、同図(C)に示すように、低ピーク期間L
Tp中は低ピーク電圧LVpが印加し、低ベース期間L
Tb中は低ベース電圧LVbが印加し、これらの印加を
低アーク長期間LT中繰り返して行う。
【0007】上記の高ピーク電流HIpと高ピーク期間
HTpとの組合せ及び上記の低ピーク電流LIpと低ピ
ーク期間LTpとの組合せは、溶接ワイヤが1パルス1
溶滴移行する範囲内で予め設定される。このピーク電流
とピーク期間との組合せは、一般的にユニットパルス条
件と呼ばれる。また、上記の高ベース電流HIb及び上
記の低ベース電流LIbは、溶接ワイヤが溶融しないよ
うに数十A以下の低い値に予め設定される。同図(D)
に示す高アーク長HLaと低アーク長Llaとの変化幅
を数mm以上と大きくするためには、上記の高ピーク電流
HIpと低ピーク電流LIpとの差及び高ピーク期間H
Tpと低ピーク期間LTpとの差を、1パルス1溶滴移
行する範囲内で大きくなるように設定するのが通常であ
る。これは、アーク長Laの変化幅が数mm以上の所定値
よりも小さいと、前述したビード外観の波目模様のメリ
カリが少なくなり、美しさの度合いが下がるからであ
る。さらに、前述した溶融池の攪拌作用によるブローホ
ール発生数の削減効果も、同様に小さくなるからであ
る。すなわち、本アーク長揺動パルスアーク溶接方法に
特有の効果を得るためには、アーク長の揺動幅を数mm以
上の所定値にする必要があり、そのためには上記のユニ
ットパルス条件を大きく変化させる必要がある。溶接ワ
イヤに直径1.2mmのアルミニウム−マグネシウム合金
ワイヤを使用し、溶接電流が100Aであるときの上記
のユニットパルス条件の設定例を下記に示す。 (設定例1) 高ピーク電流HIp=360A,高ピーク期間HTp=
2。0ms 低ピーク電流LIp=280A,低ピーク期間LTp=
1.2ms
【0008】また、同図(C)に示すように、溶接電圧
Vwを大きな時定数で平滑して算出した切換周期Tc中
の溶接電圧平均値が予め定めた電圧設定値Vsと略等し
くなるようにフィードバック制御されて、操作量として
の高パルス周期HTf又は低パルス周期LTfが制御さ
れる。これによって、切換周期Tc中の平均アーク長が
制御される。溶接電圧Vwを大きな時定数で平滑する理
由は、図2〜3で後述するように、アーク長とは比例関
係にない種々の異常電圧が発生して溶接電圧Vwに重畳
することがときどき生じる。この結果、異常電圧の影響
によってアーク長の検出に誤差が生じ、アーク長制御が
不安定になる。このランダムに発生する異常電圧の影響
を抑制するために、溶接電圧Vwを大きな時定数で平滑
する必要がある。したがって、従来技術では、平均アー
ク長を上記の溶接電圧平均値で制御すると共に、前述し
たように、高/低ピーク電流と高/低ピーク期間との組
合せ(ユニットパルス条件)の設定値の差を大きくする
ことでアーク長の変化幅を大きくしている。
【0009】上記においては、ピーク電流とピーク期間
との組合せをユニットパルス条件として、このユニット
パルス条件及びベース電流を予め設定し、パルス周期を
制御する場合について説明した。ここで、ピーク電流と
パルス周期との組合せをユニットパルス条件とし、この
ユニットパルス条件及びベース電流を予め設定し、ピー
ク期間を制御する場合も従来から行われている。この場
合には、ピーク電流とパルス周期との組合せの設定値を
大きく変化させることによって、アーク長の変化幅を大
きくする。
【0010】上述したように、従来技術では、溶接電圧
Vwをフィードバックしてアーク長を制御する。しか
し、溶接中には外乱となる種々のアーク現象がランダム
に発生しており、これらのアーク現象に起因して溶接電
圧Vwに異常電圧が重畳されることがある。本来、この
異常電圧はアーク長とは何ら関係しない電圧であるため
に、異常電圧が重畳した溶接電圧Vwによってはアーク
長を正確に検出することはできない。一般的に、上記の
異常電圧の発生は、シールドガス中に酸化性成分が少な
いほど顕著である。したがって、アルゴンガス、ヘリウ
ムガス等の不活性ガスを主成分とするシールドガスを使
用するパルスMIG溶接では、この異常電圧の発生頻度
が高く、アーク長の誤検出の悪影響は大きくなる。以
下、アルミニウム合金のパルスMIG溶接において、異
常電圧が発生する2つの典型的な例について説明する。
【0011】 微小短絡直後の異常電圧 図2は、ベース期間中に微小短絡が発生したときの電圧
・電流波形図であり、同図(A)は溶接電圧Vwの時間
変化を示し、同図(B)は溶接電流Iwの時間変化を示
す。同図は、前述した図1の高パルス周期HTf及び低
パルス周期LTfのどちらの期間中にも当てはまる。以
下、同図を参照して説明する。前述したように、パルス
アーク溶接では、1回のピーク電流の通電によって1パ
ルス1溶滴移行するようにピーク期間を設定するので、
溶滴移行に伴って溶接ワイヤ先端部が長く伸びて溶滴と
母材とが短時間接触(微小短絡)することが生じる。同
図(A)に示すように、時刻t1において短絡が発生し
短時間後の時刻t2において短絡が開放されると、その
直後の時刻t2〜t3の間は、点線で示す通常値よりも
非常に大きな値の異常電圧が重畳することがある。この
理由は、時刻t1の短絡発生によってアークがいったん
消滅し、時刻t2においてアークが再点弧する。この再
点弧時には、陰極点は溶接ワイヤ直下の最短距離となる
溶融池上に形成される。しかし、溶融池表面の酸化皮膜
は通常既にクリーニングされているために、陰極点は酸
化皮膜のない部分に形成されることになる。このため
に、陰極降下電圧値が非常に大きな値となり、異常電圧
として重畳することになる。この陰極降下電圧値は、ア
ーク長とは比例関係にないために、異常電圧が重畳した
溶接電圧Vwによっては、アーク長を正しく検出するこ
とができない。この陰極降下電圧値は、母材の酸化皮膜
のクリーニング状態、陰極点の形成位置等によって影響
されるので、その値が小さくなり発生期間も短い場合も
ある。逆に、その値が大きくなり発生期間も長い場合も
ある。
【0012】 ベース期間中の陰極点の移動に伴う異
常電圧 図3は、ベース期間中に陰極点が移動したときの電圧・
電流波形図であり、同図(A)は溶接電圧Vwの時間変
化を示し、同図(B)は溶接電流Iwの時間変化を示
す。同図は、図1で前述した高パルス周期HTf及び低
パルス周期LTfのどちらの期間中にも当てはまる。以
下、同図を参照して説明する。前述したように、ベース
電流値は数十A程度と低い値であるために、アークの指
向性が弱くなり、ベース期間中の陰極点は酸化皮膜を求
めて移動しやすい。そして、陰極点が移動して新たに形
成されるときに、母材表面の酸化皮膜の状態によって上
記の陰極降下電圧値が変動することになり、溶接電圧V
wに異常電圧が重畳する場合が生じる。同図(A)に示
すように、時刻t1〜t2の期間中に陰極点が移動する
と、この期間中の溶接電圧Vwは変動して異常電圧とな
る。この異常電圧は、点線で示す通常値から大きく変動
しており、かつアーク長とは関係しない値であるため
に、この異常電圧が重畳した溶接電圧Vwによっては、
アーク長を正しく検出することはできない。
【0013】上述したように、種々のアーク現象に伴っ
てアーク長とは関係のない異常電圧が発生すると、この
異常電圧を含む溶接電圧Vwによっては、アーク長を正
確に検出することができない。そこで、前述したよう
に、ランダムに発生する異常電圧の悪影響を抑制するた
めに、溶接電圧Vwを大きな時定数で平滑した溶接電圧
平均値によって、平均アーク長を制御している。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】図4は、従来技術の課
題を説明するための低アーク長期間LT及び高アーク長
期間HT中の溶滴移行の状態を示す図である。同図
(A)は低アーク長期間LT中の溶滴移行の状態及び溶
接電流波形を示し、同図(B)は高アーク長期間HT中
の溶滴移行の状態及び溶接電流波形を示す。前述したよ
うに、LIp<HIpであり、かつLTp<HTpであ
る。また、前述したように、アーク長の変化幅を大きく
するために、ピーク電流とピーク期間との組合せは、1
パルス1溶滴移行の範囲内において大きく変化するよう
に設定される。このために、通常、低ピーク電流LIp
と低ピーク期間LTpとの組合せは、溶滴移行がピーク
期間の終了時点の直前又は直後に行われるように、1パ
ルス1溶滴移行の範囲の下限値近くに設定される。他
方、高ピーク電流HIpと高ピーク期間HTpとの組合
せは、アーク長の変動幅を大きくするために、1パルス
1溶滴移行の範囲の上限値近くに設定される。以下、同
図を参照して説明する。
【0015】 低アーク長期間LT中の溶滴移行の状
態 同図(A)に示すように、低ピーク期間LTp中の低ピ
ーク電流LIpの通電によって、溶接ワイヤ1の先端部
が溶融されて、溶滴1aが形成される。その後、低ピー
ク期間LTpの終了直後において、溶滴1aは離脱して
母材へと落下し、溶接ワイヤ1の先端部には溶滴1aの
一部が残留溶滴1bとして残る。このとき、溶滴1aは
低ピーク期間LTp中に形成されて、低ピーク期間LT
pの終了直後に移行するので、上記の残留溶滴1bはわ
ずかな量となる。この結果、良好な溶滴移行状態とな
り、スパッタ、ヒューム等の発生量も非常に少ない。
【0016】 高アーク長期間HT中の溶滴移行の状
態 同図(B)に示すように、高ピーク電流HIp及び高ピ
ーク期間HTpの組合せは、前述したように、上記の低
アーク長期間時と比べて大きな値に設定される。このた
めに、溶滴1aは、高ピーク期間HTpの半ばで移行す
ることになり、溶滴移行後の残留溶滴1bが高ピーク電
流HIpによって過熱されて大きくなる。そして、この
残留溶滴1bは多数のスパッタ1c及びヒュームとなっ
て飛散する。したがって、この期間中は、スパッタ1c
及びヒュームが大量に発生することになり、ビード外観
が悪くなる。このビード外観の一例を図5に示す。溶接
条件は、直径1.2mmのアルミニウム−マグネシウム合
金ワイヤを使用して、高ピーク電流HIp=360A、
高ピーク期間HTP=2。0ms、低ピーク電流LIp=
280A及び低ピーク期間LTP=1.2 msに設定
し、溶接電流100AでパルスMIG溶接を行った場合
である。同図から明らかなように、ビード2aは波目模
様が形成されているが、母材2上には大量のスパッタ1
cが付着している。
【0017】上述したように、従来技術では、アーク長
の変化幅を大きくするために、ユニットパルス条件を大
きく変化させなければならないために、どうしても高ア
ーク長期間中にスパッタ、ヒューム等が多く発生するこ
とになる。
【0018】そこで、本発明では、アーク長の変化幅を
大きくすることができ、かつスパッタ、ヒューム等の発
生量を減少させることができるアーク長揺動パルスアー
ク溶接制御方法を提供する。
【0019】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、図6〜7
に示すように、溶接ワイヤを定速で送給し、ピーク期間
Tp中のピーク電流Ipの通電とベース期間Tb中のベ
ース電流Ibの通電とをパルス周期Tfとして繰り返し
て通電すると共に、上記ピーク期間Tp中のピーク電圧
値Vpがピーク電圧設定値Vpsと略等しくなるように操
作量として上記パルス周期Tf又は上記ピーク期間Tp
を変化させてアーク長を制御するパルスアーク溶接にお
いて、上記ピーク電圧設定値Vpsを予め定めた切換周期
Tcで変化させることによってアーク長を周期的に所定
値で揺動させることを特徴とするアーク長揺動パルスア
ーク溶接制御方法である。
【0020】第2の発明は、図8〜9に示すように、操
作量がパルス周期Tfであるときにはピーク電流Ip又
はピーク期間Tpの少なくとも1つ以上を、上記操作量
が上記ピーク期間Tpであるときには上記上記ピーク電
流Ip又はパルス周期Tfの少なくとも1つ以上を、溶
接ワイヤの溶滴移行が上記ピーク期間Tpの終了時点の
直前又は直後に行われる範囲内で切換周期Tcに応動し
て変化させることを特徴とする第1の発明記載のアーク
長揺動パルスアーク溶接制御方法である。
【0021】第3の発明は、図10に示すように、ピー
ク電圧値Vpが、ピーク期間Tpの開始時の電圧が過渡
的に変動する過渡ピーク期間Tpaを除いた定常ピーク期
間Tpb中の定常ピーク電圧値Vpaであることを特徴とす
る第1又は第2の発明記載のアーク長揺動パルスアーク
溶接制御方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態とし
て、実施例1〜3について図面を参照して説明する。 [実施例1]アーク長揺動パルスアーク溶接方法におい
て、ビード外観に美しい波目模様を形成する効果、溶融
池攪拌によるブローホール発生を抑制する効果等の特有
の効果は、アーク長を周期的に揺動させてアークの広が
り、アーク力を変化させることによって生じる。そこ
で、実施例1の発明では、ユニットパルス条件(ピーク
電流Ipとピーク期間Tpとの組合せ)を高アーク長期
間HT及び低アーク長期間LTで同一値に設定し、アー
ク長をピーク期間Tp中のピーク電圧Vpによって検出
し、その目標値であるピーク電圧設定値Vpsを高アーク
長期間HTと低アーク長期間LTとで切り換えることに
よってアーク長を周期的に揺動させる方法である。上記
のユニットパルス条件は、溶滴移行がピーク期間Tpの
終了時点の直前又は直後に行われるように予め設定す
る。このことで、溶滴移行後の残留溶滴への過熱を防止
し、スパッタ、ヒューム等の発生を抑制する。また、ア
ーク長をピーク電圧Vpによって検出する理由は、以下
のとおりである。すなわち、ピーク期間Tp中は数百A
の高いピーク電流Ipが通電するために、アークの指向
性が非常に高くなる。このために、ピーク期間Tp中の
アークは、溶接ワイヤの送給方向に形成されて、かつ、
指向性が高いためにその陰極点は酸化皮膜を求めて移動
することができない。この結果、ピーク期間Tp中のア
ーク形状はほぼ一定になるので、アーク長とピーク電圧
Vpとは正確な比例関係になる。さらには、ピーク期間
Tp中は、図2で前述した微小短絡はほとんど発生しな
い。また、ピーク期間Tp中は、図3で前述した陰極点
の移動もほぼないために、異常電圧の発生頻度は少なく
なり、異常電圧によるピーク電圧Vpへの影響は小さ
い。このために、ピーク電圧Vpは、前述した溶接電圧
平均値の算出のときのように異常電圧の影響を抑制する
目的で大きな時定数で平滑する必要がないので、平滑の
時定数を小さくすることができ、アーク長検出の応答性
を速くすることができる。すなわち、ピーク電圧Vpに
よるアーク長検出では、パルス周期毎のアーク長の変化
を検出することができる。したがって、高アーク長期間
HT中の高ピーク電圧設定値HVpsと、低アーク長期間
LT中の低ピーク電圧設定値LVpsとを予め設定し、周
期的に切り換えることによってアーク長を揺動させるこ
とができる。以下、図面を参照して説明する。
【0023】図6は、実施例1の発明のアーク長揺動パ
ルスアーク溶接の電流・電圧波形図である。同図(A)
は切換周期信号Ttcの時間変化を示し、同図(B)は溶
接電流Iwの時間変化を示し、同図(C)は溶接電圧V
wの時間変化を示し、同図(D)はアーク長Laの時間
変化を示す。以下、同図を参照して説明する。
【0024】同図(A)に示すように、切換周期信号T
tcは、予め定めたHighレベルの高アーク長期間HT
と、予め定めたLowレベルの低アーク長期間LTとを
切換周期Tc毎に繰り返す。これに応動して、同図
(D)に示すように、アーク長Laは、上記の高アーク
長期間HT中は高アーク長HLaとなり、上記の低アー
ク長期間LT中は低アーク長LLaとなる。
【0025】 高アーク長期間HT 同図(B)に示すように、ピーク期間Tp中はピーク電
流Ipを通電し、高ベース期間HTb中はベース電流I
bを通電し、これらの通電を高パルス周期HTfとして
高アーク長期間HT中繰り返して通電する。同様に、同
図(C)に示すように、ピーク電圧が予め定めた高ピー
ク電圧設定値HVpsと略等しくなるようにフィードバッ
ク制御されて、操作量として上記のパルス周期が制御さ
れる。したがって、パルス周期はフィードバック制御に
よって刻々変化して、後述する低アーク長期間LTとは
異なる高パルス周期HTfとなり、ピーク期間Tpは一
定であるので、ベース期間も刻々変化して上記の高ベー
ス期間HTbとなる。また、同図(C)に示すように、
ピーク電圧は上記の高ピーク電圧設定値HVpsと略等し
い値の高ピーク電圧値HVpとなり、ベース電圧は高ベ
ース電圧値HVbとなる。
【0026】 低アーク長期間LT 同図(B)に示すように、上記項と同一値のピーク期
間Tp中はピーク電流Ipを通電し、低ベース期間LT
b中はベース電流Ibを通電し、これらの通電を低パル
ス周期LTfとして低アーク長期間LT中繰り返して通
電する。同様に、同図(C)に示すように、ピーク電圧
が予め定めた低ピーク電圧設定値LVpsと略等しくなる
ようにフィードバック制御されて、操作量として上記の
パルス周期が制御される。したがって、パルス周期はフ
ィードバック制御によって刻々変化し、前述した高アー
ク長期間HTとは異なる低パルス周期LTfとなり、ピ
ーク期間Tpは一定であるので、ベース期間も刻々変化
して上記の低ベース期間LTbとなる。また、同図
(C)に示すように、ピーク電圧は上記の低ピーク電圧
設定値LVpsと略等しい値の低ピーク電圧値LVpとな
り、ベース電圧は低ベース電圧値LVbとなる。
【0027】上述したように、操作量がパルス周期であ
るときには、ユニットパルス条件のピーク電流とピーク
期間との組合せを、溶滴移行がピーク期間の終了時点の
直前又は直後に行われるように予め設定する。他方、操
作量がピーク期間であるときには、ユニットパルス条件
のピーク電流とパルス周期との組合せを、溶滴移行がピ
ーク期間の終了時点の直前又は直後に行われるように予
め設定する。
【0028】以上のように、実施例1の発明では、ピー
ク電圧によってアーク長を検出し、所定値の高アーク長
HLaに対応する高ピーク電圧設定値HVpsと、所定値
の低アーク長LLaに対応する低ピーク電圧設定値LV
psとを、切換周期Tc毎に切り換えることによって、ア
ーク長を揺動させることができる。
【0029】図7は、上述した実施例1の発明を実施す
るための溶接電源装置のブロック図である。以下、同図
を参照して各回路ブロックについて説明する。出力制御
回路INVは、3相200V等の商用電源を入力とし
て、後述する電流誤差増幅信号Eiに従って、インバー
タ制御、サイリスタ位相制御等の出力制御を行い、溶接
に適した溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する。溶
接ワイヤ1は、ワイヤ送給装置の送給ロール5の回転に
よって送給されて、母材2との間でアーク3が発生し
て、溶接が行われる。
【0030】電圧検出回路VDは、溶接電圧Vwを検出
して、電圧検出信号Vdを出力する。ピーク電圧検出回
路DVPは、上記の電圧検出信号Vdを入力として、ピ
ーク電圧検出信号DVpを出力する。切換周期信号生成
回路TTCは、予め定めた高アーク長期間HT中はHi
ghレベルとなり、予め定めた低アーク長期間LT中は
Lowレベルとなる切換周期信号Ttcを出力する。高ピ
ーク電圧設定回路HVPSは、予め定めた高ピーク電圧
設定信号HVpsを出力する。低ピーク電圧設定回路LV
PSは、予め定めた低ピーク電圧設定信号LVpsを出力
する。電圧設定信号切換回路SWVは、上記の切換周期
信号TtcがHighレベル(高アーク長期間HT)のと
きにはa側に切り換わり上記の高ピーク電圧設定信号H
Vpsをピーク電圧設定信号Vpsとして出力し、Lowレ
ベル(低アーク長期間LT)のときにはb側に切り換わ
り上記の低ピーク電圧設定信号LVpsをピーク電圧設定
信号Vpsとして出力する。
【0031】電圧誤差増幅回路EVは、上記のピーク電
圧検出信号DVpと上記のピーク電圧設定信号Vpsとの
誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。電
圧周波数変換回路V/Fは、上記の電圧誤差増幅信号E
vに反比例した周期毎に短時間Highレベルとなるパ
ルス周期信号Ttfを出力する。ピーク期間設定回路TP
Sは、予め定めたピーク期間設定信号Tpsを出力する。
ピーク期間タイマ回路TTPは、上記のパルス周期信号
TtfがHighレベルに変化した時点から上記のピーク
期間設定信号Ttpによって定まる期間だけHighレベ
ルとなるピーク期間信号Ttpを出力する。
【0032】ピーク電流設定回路IPSは、予め定めた
ピーク電流設定信号Ipsを出力する。ベース電流設定回
路IBSは、予め定めたベース電流設定信号Ibsを出力
する。電流制御設定回路ISCは、上記のピーク期間信
号TtpがHighレベル(ピーク期間)のときには上記
のピーク電流設定信号Ipsを電流制御設定信号Iscとし
て出力し、Lowレベル(ベース期間)のときには上記
のベース電流設定信号Ibsを電流制御設定信号Iscとし
て出力する。電流検出回路IDは、溶接電流Iwを検出
して、電流検出信号Idを出力する。電流誤差増幅回路
EIは、上記の電流検出信号Idと上記の電流制御設定
信号Iscとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを
出力する。上述した溶接電源装置によって、切換周期信
号Ttc毎にアーク長を揺動させてパルスアーク溶接を行
うことができる。
【0033】[実施例2]実施例2の発明では、上述し
た実施例1の発明において、高アーク長期間HTと低ア
ーク長期間LTとで、ユニットパルス条件(ピーク電流
Ipとピーク期間Tpとの組合せ又はピーク電流Ipと
パルス周期Tfとの組合せ)を、溶滴移行がピーク期間
の終了時点の直前又は直後に行われる範囲内で切り換え
る方法である。ユニットパルス条件を切り換える理由
は、以下のとおりである。すなわち、ピーク電流及びピ
ーク期間が一定値であるときは、ピーク電圧設定値Vps
に反比例してパルス周期が定まる。したがって、ピーク
電圧設定値Vpsが大きな値に設定されると、それに対応
してアーク長を長くするために溶接電流平均値が大きく
なる。このために、パルス周期は非常に短くなるが、パ
ルス周期があまり短くなるとフィードバック制御の調整
範囲の限界値に近くなり、外乱に対してアーク長制御を
行うことができず、溶接状態が不安定になる。このとき
に、ピーク電流又はピーク期間の少なくとも1つ以上を
大きくすると、パルス周期は長くなるので、上記の問題
が解消されて溶接状態は安定になる。逆に、ピーク電圧
設定値Vpsが小さい値に設定されると、それに対応して
アーク長を短くするために溶接電流平均値は小さくな
る、このために、パルス周期は非常に長くなり、ビード
外観が悪くなる。このときに、ピーク電流又はピーク期
間の少なくとも1つ以上を小さくすると、パルス周期が
短くなるので、ビード外観は良好になる。このように、
ユニットパルス条件を切換周期信号Ttcに応動して変化
させることによって、パルス周期を所定範囲内に制限す
ることができ、この結果、溶接状態を常に安定に維持す
ることができる。
【0034】図8は、実施例2の発明のアーク長揺動パ
ルスアーク溶接の電流・電圧波形図である。同図(A)
は切換周期信号Ttcの時間変化を示し、同図(B)は溶
接電流Iwの時間変化を示し、同図(C)は溶接電圧V
wの時間変化を示し、同図(D)はアーク長Laの時間
変化を示す。同図において、低アーク長期間LTの低ピ
ーク電流LIp及び低ピーク期間LTpは、前述した図
6のピーク電流Ip及びピーク期間Tpと同一値に設定
されている。他方、高アーク長期間HTの高ピーク電流
HIp及び高ピーク期間HTpは、溶滴移行がピーク期
間の終了時点の直前又は直後に行われる範囲内において
図6のときの値よりも大きい値に設定されたときであ
る。すなわち、HIP>LIp=Ipであり、HTp>
LTp=Tpである。以下、同図を参照して説明する。
【0035】 高アーク長期間HT 同図(B)に示すように、高ピーク期間HTp中は高ピ
ーク電流HIpを通電し、高ベース期間HTb中はベー
ス電流Ibを通電し、これらの通電を高パルス周期HT
fとして高アーク長期間HT中繰り返して通電する。同
様に、同図(C)に示すように、ピーク電圧が前述した
図6と同一値の高ピーク電圧設定値HVpsと略等しくな
るようにフィードバック制御されて、操作量として上記
のパルス周期が制御される。前述したように、HIp>
IpでありかつHTp>Tpであるので、パルス周期H
Tf2>HTfとなり、パルス周期が短くなりすぎて溶接
状態が不安定になることを抑制することができる。
【0036】 低アーク長期間LT 同図(B)に示すように、低ピーク期間LTp中は低ピ
ーク電流LIpを通電し、低ベース期間LTb中はベー
ス電流Ibを通電し、これらの通電を低パルス周期LT
fとして低アーク長期間LT中繰り返して通電する。同
様に、同図(C)に示すように、ピーク電圧が前述した
図6のときと同一値の低ピーク電圧設定値LVpsと略等
しくなるようにフィードバック制御されて、操作量とし
て上記のパルス周期が制御される。前述したように、L
Ip=IpでありかつLTp=Tpであるので、低パル
ス周期LTfは図6のときと同一値となる。
【0037】上記においては、ユニットパルス条件がピ
ーク電流とピーク期間との組合せときであるが、ユニッ
トパルス条件がピーク電流とパルス周期との組合せであ
るときには、操作量はピーク期間となり、この場合でも
上記と同様である。すなわち、ピーク電圧設定値が大き
いとピーク期間が長くなりすぎて溶接状態が不安定にな
りやすく、逆にピーク電圧設定値が小さいとピーク期間
が短くなりすぎて上記と同様に溶接状態が不安定になり
やすい。このようなときには、高アーク長期間と低アー
ク長期間とで、ユニットパルス条件を異なった値に設定
することで、ピーク期間を所定範囲内に制限することが
でき、良好な溶接状態を維持することができる。
【0038】図9は、上述した実施例2の発明を実施す
るための溶接電源装置のブロック図である。同図におい
て、前述した図7と同一の回路ブロックには同一符号を
付してそれらの説明は省略する。以下、図7とは異なる
点線で示す回路ブロックについて、図面を参照して説明
する。
【0039】高ピーク期間設定回路HTPは、予め定め
た高ピーク期間設定信号HTpを出力する。低ピーク期
間設定回路LTPは、予め定めた低ピーク期間設定信号
LTpを出力する。期間設定信号切換回路SWTは、切
換周期信号TtcがHighレベル(高アーク長期間)の
ときにはa側に切り換わり上記の高ピーク期間設定信号
HTpをピーク期間設定信号Tpsとして出力し、Low
レベル(低アーク長期間)のときには上記の低ピーク期
間設定信号LTpをピーク期間設定信号Tpsとして出力
する。
【0040】高ピーク電流設定回路HIPは、予め定め
た高ピーク電流設定信号HIpを出力する。低ピーク電
流設定回路LIPは、予め定めた低ピーク電流設定信号
LIpを出力する。電流設定信号切換回路SWIは、切
換周期信号TtcがHighレベル(高アーク長期間)の
ときにはa側に切り換わり上記の高ピーク電流設定信号
HIpをピーク電流設定信号Ipsとして出力し、Low
レベル(低アーク長期間)のときにはb側に切り換わり
上記の低ピーク電流設定信号LIpをピーク電流設定信
号Ipsとして出力する。
【0041】[実施例3]実施例3の発明は、実施例1
又は2の発明において、ピーク電圧検出信号DVpが、
ピーク期間の開始時の電圧が過渡的に変動する過渡ピー
ク期間を除いた定常ピーク期間中の定常ピーク電圧検出
信号Vpaであるアーク長揺動パルスアーク溶接制御方法
である。以下、図面を参照して実施例3の発明について
説明する。
【0042】図10は、実施例3における定常ピーク電
圧値の算出方法を説明するためのピーク電圧波形図であ
る。同図は、高アーク長期間及び低アーク長期間の両方
のピーク期間中のピーク電圧波形である。同図に示すよ
うに、時刻t1のピーク期間Tpの開始時において、過
渡ピーク期間Tpa中のピーク電圧は、アークの発生状態
に応じて曲線Y1〜Y3のように大きく変動する。そし
て、この過渡ピーク期間Tpaが経過して定常ピーク期間
Tpbに入ると、アーク発生状態は安定するので、このと
きのピーク電圧値は安定した略定常値(以下、定常ピー
ク電圧値Vpaという)になり、アーク長と正確に比例す
る。したがって、この定常ピーク電圧値Vpaによってア
ーク長を正確に検出して、アーク長を揺動させれば、よ
り安定したアーク長揺動パルスアーク溶接を行うことが
できる。
【0043】上記の定常ピーク電圧値Vpaとしては、以
下のような算出値を使用することができる。 特定時点の定常ピーク電圧瞬時値Vpc 同図に示すように、ピーク期間Tpの開始時点から予め
定めた遅延時間Tpcが経過した時点の定常ピーク電圧瞬
時値Vpcを、定常ピーク電圧値Vpaとして使用すること
ができる。上記の遅延時間Tpcは、過渡ピーク期間Tpa
が経過した後から、曲線Y4に示す溶滴移行時の陽極点
の移動に伴う電圧変動が発生する前までの期間中の特定
時点になるように、予め設定される。例えば、前述した
ピーク期間Tpの真ん中の時点に設定することが考えら
れる。
【0044】 所定期間中の定常ピーク電圧平均値V
pd 上記項は瞬時値であるが、検出誤差を減少させるため
に、上記の遅延時間Tpc経過後から所定の平均化期間T
pd中の定常ピーク電圧の平均値Vpdを、定常ピーク電圧
値Vpaとして使用することができる。
【0045】 定常ピーク期間中の定常ピーク電圧平
均値Vpb 上記項においてピーク電圧を平均化する期間を、定常
ピーク期間Tpbの全期間中とするのが、定常ピーク期間
中の定常ピーク電圧平均値Vpbである。
【0046】 上記〜項の移動平均値 第n回目のピーク期間Tp(n)中の上記項の定常ピー
ク電圧瞬時値をVpc(n)とし、今周期から前の所定周期
m回にわたる移動平均値Vpcrは、下式となる。 Vpcr=(Vpc(n)+Vpc(n-1)+…+Vpc(n-m+1))/m 上式では、各周期の定常ピーク電圧瞬時値Vpcは均等の
重みで平均化しているが、今周期に近い周期の値の重み
を重くする重み付け移動平均値であってもよい。このよ
うに移動平均値を算出して定常ピーク電圧値Vpaとする
理由は、以下のとおりである。すなわち、定常ピーク期
間Tpb中は、陰極点はほぼ移動することなく形成されて
いてが、溶融池の状態、溶滴の状態等は毎周期ごとに少
しは変動しているために、アーク長も変動することにな
る。この変動を平均化してより正確なアーク長を検出す
るために移動平均値を算出している。また、上記項及
び項の定常ピーク電圧平均値Vpd及びVpbの過去所定
周期にわたる移動平均値についても、上記と同様にして
算出することができる。
【0047】上述した実施例3の発明を実施するための
溶接電源装置の構成は、前述した図7及び9におけるピ
ーク電圧検出回路DVPによって、上記の定常ピーク電
圧検出信号Vpaを算出するように変更する以外は同一で
ある。
【0048】[効果]以下に、本発明の効果について図
面を参照して説明する。図11は、前述した図5に対応
する本発明のビード外観図である。溶接条件は、前述し
たように、直径1.2mmのアルミニウム−マグネシウム
合金ワイヤを使用して、高ピーク電流HIp=320
A、高ピーク期間HTp=1.6ms、低ピーク電流LI
p=280A、低ピーク期間LTp=1.2 ms、高ピ
ーク電圧設定値HVps=22V、低ピーク電圧設定値L
Vps=26V及び溶接電流=100Aに設定し、アルミ
ニウム合金のパルスMIG溶接の場合である。このとき
の高アーク長HLa=8mmとなり、低アーク長LLa=
3mmとなった。同図から明らかなように、ビード2aに
は美しい波目模様が形成されており、かつ、図5のとき
とは異なり母材2上にはほとんどスパッタ1cが付着し
ていない。また、溶接中のヒュームの発生量も大きく減
少した。
【0049】図12は、溶接中のヒューム発生量の比較
図である。溶接条件は、従来技術のときには図5の条件
に設定し、本発明のときには図11の条件に設定して、
アーク長揺動パルスMIG溶接を行った場合である。ヒ
ュームの測定値は、溶接ワイヤ1g当りのヒューム発生
量に換算した。同図から明らかなように、従来技術では
ヒューム発生量は14mg/gであった。これに対して、本
発明では、ヒューム発生量は9mg/gへと大きく減少し
た。
【0050】
【発明の効果】本発明のアーク長揺動パルスアーク溶接
制御方法では、ユニットパルス条件を溶滴移行がピーク
期間の終了時点の直前又は直後に行われる範囲に設定
し、ピーク電圧によってアーク長を正確に検出し、その
目標値であるピーク電圧設定値を周期的に変化させるこ
とによってアーク長を所定幅で揺動させることができる
ので、スパッタ、ヒューム等の発生量を大幅に減少させ
た上に、本溶接方法の特徴である波目模様のビード外観
の形成、溶融池攪拌によるブローホール発生数の削減等
の効果も同時に有している。さらに、実施例2の発明で
は、ユニットパルス条件を高アーク長期間と低アーク長
期間とで変化させることによって、パルス周期又はピー
ク期間が短く又は長くなりすぎて溶接状態が不安定にな
ることを抑制することができる。したがって、アーク長
の揺動幅を大きく設定しても、溶接状態は常に安定して
おり、良好な溶接品質を得ることができる。さらに、実
施例3の発明では、定常ピーク電圧値によってアーク長
を正確に検出することができるので、アーク長の揺動制
御がさらに安定になり、溶接品質もさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術のアーク長揺動パルスアーク溶接の電
流・電圧波形図
【図2】従来技術での微小短絡直後の異常電圧波形図
【図3】従来技術でのベース期間中の異常電圧波形図
【図4】従来技術の課題を示す溶滴移行の状態図
【図5】従来技術のビード外観図
【図6】実施例1のアーク長揺動パルスアーク溶接の電
流・電圧波形図
【図7】実施例1の溶接電源装置のブロック図
【図8】実施例2のアーク長揺動パルスアーク溶接の電
流・電圧波形図
【図9】実施例2の溶接電源装置のブロック図
【図10】実施例3の定常ピーク電圧値の算出方法を示
すピーク電圧波形図
【図11】本発明の効果を示すビード外観図
【図12】本発明の効果を示すヒューム発生量の比較図
【符号の説明】
1 溶接ワイヤ 1a 溶滴 1b 残留溶滴 1c スパッタ 2 母材 2a ビード 5 送給ロール DVP ピーク電圧検出回路 DVp ピーク電圧検出信号 EI 電流誤差増幅回路 Ei 電流誤差増幅信号 EV 電圧誤差増幅回路 Ev 電圧誤差増幅信号 HIb 高ベース電流 HIP 高ピーク電流設定回路 HIp 高ピーク電流(設定信号) HLa 高アーク長 HT 高アーク長期間 HTb 高ベース期間 HTf 高パルス周期 HTP 高ピーク期間設定回路 HTp 高ピーク期間(設定信号) HVb 高ベース電圧 HVp 高ピーク電圧 HVPS 高ピーク電圧設定回路 HVps 高ピーク電圧設定(値/信号 Ib ベース電流 IBS ベース電流設定回路 Ibs ベース電流設定信号 ID 電流検出回路 Id 電流検出信号 INV 出力制御回路 Ip ピーク電流 IPS ピーク電流設定回路 Ips ピーク電流設定信号 ISC 電流制御設定回路 Isc 電流制御設定信号 Iw 溶接電流 La アーク長 LIb 低ベース電流 LIP 低ピーク電流設定回路 LIp 低ピーク電流(設定信号) LLa 低アーク長 LT 低アーク長期間 LTb 低ベース期間 LTf 低パルス周期 LTP 低ピーク期間設定回路 LTp 低ピーク期間(設定信号) LVb 低ベース電圧 LVp 低ピーク電圧 LVPS 低ピーク電圧設定回路 LVps 低ピーク電圧設定(値/信号) SWI 電流設定信号切換回路 SWT 期間設定信号切換回路 SWV 電圧設定信号切換回路 Tc 切換周期 Tp ピーク期間 Tpa 過渡ピーク期間 Tpb 定常ピーク期間 Tpc 遅延時間 Tpd 平均化期間 TPS ピーク期間設定回路 Tps ピーク期間設定信号 TTC 切換周期信号生成回路 Ttc 切換周期信号 Ttf パルス周期信号 TTP ピーク期間タイマ回路 Ttp ピーク期間信号 V/F 電圧周波数変換回路 VD 電圧検出回路 Vd 電圧検出信号 Vpa 定常ピーク電圧値 Vpb、Vpd 定常ピーク電圧平均値 Vpc 定常ピーク電圧瞬時値 Vpcr 定常ピーク電圧移動平均値 Vps ピーク電圧設定信号 Vs 電圧設定値 Vw 溶接電圧 Y1〜Y4 電圧変動曲線

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶接ワイヤを定速で送給し、ピーク期間
    中のピーク電流の通電とベース期間中のベース電流の通
    電とをパルス周期として繰り返して通電すると共に、前
    記ピーク期間中のピーク電圧値がピーク電圧設定値と略
    等しくなるように操作量として前記パルス周期又は前記
    ピーク期間を変化させてアーク長を制御するパルスアー
    ク溶接において、 前記ピーク電圧設定値を予め定めた切換周期で変化させ
    ることによってアーク長を周期的に所定幅で揺動させる
    ことを特徴とするアーク長揺動パルスアーク溶接制御方
    法。
  2. 【請求項2】 操作量がパルス周期であるときにはピー
    ク電流又はピーク期間の少なくとも1つ以上を、前記操
    作量が前記ピーク期間であるときには前記ピーク電流又
    は前記パルス周期の少なくとも1つ以上を、溶接ワイヤ
    の溶滴移行が前記ピーク期間の終了時点の直前又は直後
    に行われる範囲内で切換周期に応動して変化させること
    を特徴とする請求項1記載のアーク長揺動パルスアーク
    溶接制御方法。
  3. 【請求項3】 ピーク電圧値が、ピーク期間の開始時の
    電圧が過渡的に変動する過渡ピーク期間を除いた定常ピ
    ーク期間中の定常ピーク電圧値であることを特徴とする
    請求項1又は請求項2記載のアーク長揺動パルスアーク
    溶接制御方法。
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