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JP2003180339A - 芳香性酵母または芳香組成物の製造方法、それを用いた芳香性発酵飲食品およびその製造方法 - Google Patents

芳香性酵母または芳香組成物の製造方法、それを用いた芳香性発酵飲食品およびその製造方法

Info

Publication number
JP2003180339A
JP2003180339A JP2001380357A JP2001380357A JP2003180339A JP 2003180339 A JP2003180339 A JP 2003180339A JP 2001380357 A JP2001380357 A JP 2001380357A JP 2001380357 A JP2001380357 A JP 2001380357A JP 2003180339 A JP2003180339 A JP 2003180339A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aromatic
yeast
producing
fermentation
drink
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001380357A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroshi Shoji
博志 小路
Akira Wanikawa
彰 鰐川
Hiromi Ozaki
裕美 尾崎
Kenji Hosoi
健二 細井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Breweries Ltd
Nikka Whisky Distilling Co Ltd
Original Assignee
Asahi Breweries Ltd
Nikka Whisky Distilling Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Breweries Ltd, Nikka Whisky Distilling Co Ltd filed Critical Asahi Breweries Ltd
Priority to JP2001380357A priority Critical patent/JP2003180339A/ja
Publication of JP2003180339A publication Critical patent/JP2003180339A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高価な出発原料や化学的合成方法を使用せ
ず、飲食品に用いても安全な芳香性酵母または芳香組成
物の製造方法ならびにその生成物を用いた芳香性飲食品
または蒸留酒の製造方法の提供。 【解決手段】 醸造工程から回収した酵母液を、熟成処
理するかまたは一旦凍結した後解凍処理する、ことを特
徴とする芳香性酵母または芳香組成物の製造方法ならび
にその生成物を用いた芳香性飲食品または蒸留酒の製造
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、芳香性酵母または
芳香組成物の製造方法、ならびにその生成物を用いた芳
香性発酵飲食品または蒸留酒の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】エチル−9−デセノエイトは下記化学式
(1)に示される化合物でありカリンの特徴香として知
られ(Miharaら、J.Agric.Food C
hem、1987,35,532−537)、さわやか
な香りがする。2−エチル4−ヒドロキシ−5−メチル
−3(2H)−フラノン(以下HEMFと略す)は下記
化学式(2)に示される化合物であり、しょうゆ(Nu
nomuraら、Agric.Biol.Chem、1
976,40,491−495)やメロン(Huber
ら、Perfum.Flavor、1992,17,1
5−19)等に含まれる。2,5−ジメチル−4−ヒド
ロキシ−3(2H)−フラノン(以下HDMFと略す)
は下記化学式(3)に示される化合物であり、パイナッ
プル(Rodinら、J.Food Sci、196
5,30,280−285)やグレープ(Rappら、
Vitis、1980,19,13−23)等に含まれ
る。HEMFとHDMFはともにカラメル様で甘くフル
ーティーな香りを持つ。水に溶解している場合の両者の
閾値はHEMFで20μg/kg、HDMFで160μ
g/kgと極めて低いことが報告されている(Hube
rら、Perfum.Flavor、1992,17,
15−19)。これらは、食品、香粧品の調合用素材と
しても有用である。
【0003】
【化1】
【0004】エチル−9−デセノエイトはカリンなどの
天然物に、HEMFはメロンなどの天然物に、HDMF
はパイナップルなどの天然物に、それぞれ含有されてい
るが、一般的に含有量が極めて少ないため天然物から分
離精製して利用することは極めて困難である。
【0005】エチル−9−デセノエイトについては化学
的な合成方法が開示されている(Miharaら、J.
Agric.Food Chem.1987,35,5
32−537)。しかしながら、これらの化学合成法は
どれも高価な試薬を使用する上、工程が複雑で大量生産
には不向きである。しかも、大量の有機溶媒を用いる必
要があるため、食品などに応用するには問題が多い。H
EMFやHDMFの化学的な合成方法は開示されていな
いが、酵母を用いてHEMFやHDMFを生成させる方
法が開示されている(Sasakiら、J.Agri
c.Food Chem.1991,39,934−9
38、Hecquetら、J.Agric.Food
Chem.1996,44,1357−1360)。し
かしながらD−ribose 5−phosphate
やD−Fructose 1,6−bisphosph
ateなどの高価な試薬を用いることから大量に生産す
るには問題がある。
【0006】一方、果実等に含まれるエチル−9−デセ
ノエイト、HEMF、HDMFのそれぞれの生合成に関
するメカニズムの解明も試みられている。しかし、植物
中での生合成のメカニズムが明らかになっても、実際に
食品にも用いることができるように合成された例はな
い。
【0007】エチル−9−デセノエイト、HEMF、H
DMFは芳香成分の一つとして香料の添加が必要とされ
る商品、例えば香水、化粧品、洗剤、シャンプー等に添
加して利用することが考えられるが、同様に香料として
食品に添加したり、芳香成分として高濃度含有する食
品、飲料、アルコール飲料などを製造する用途も考えら
れる。最終的に食品として用いる場合には、食品として
の安全性を先ず第一に考慮する必要があり、添加される
芳香成分の合成においても複雑な化学合成工程は含まな
いことが望ましい。さらに、合成に用いる微生物も古く
から食品に用いられ、有害な副産物の産生のないことが
確認されており、安全性の確立した微生物であることが
望ましい。さらに、エチル−9−デセノエイト、HEM
F、HDMFを生産する原材料として特定された高価な
物質を必要とせず、従来より食品製造に用いられてきた
天然物のみで製造する方法の開発が強く望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高価
な出発原料や化学的合成方法を使用せず、飲食品に用い
ても安全な芳香性酵母または芳香組成物の製造方法なら
びにその生成物を用いた芳香性飲食品または蒸留酒の製
造方法を提供する点にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の第1は、醸造工
程から回収した酵母液を好ましくは0〜50℃の条件下
において、熟成処理するか、または前記酵母液を一旦凍
結した後解凍処理する、ことを特徴とする芳香性酵母の
製造方法に関する。本発明の第2は、請求項1記載の製
造方法により得られた芳香性酵母を、水および/または
有機溶媒に浸漬、抽出することを特徴とする芳香組成物
の製造方法に関する。本発明の第3は、請求項1記載の
製造方法により得られた芳香性酵母の存在下に、発酵用
原料の発酵を行うことを特徴とする芳香性発酵飲食品の
製造方法に関する。本発明の第4は、前記芳香性酵母と
共に他の酵母をも用いて発酵を行うものである請求項3
記載の芳香性発酵飲食品の製造方法に関する。本発明の
第5は、請求項2記載の製造方法により得られた芳香組
成物の存在下に、発酵用原料の発酵を行うことを特徴と
する芳香性発酵飲食品の製造方法に関する。本発明の第
6は、請求項3〜5いずれか記載の芳香性発酵飲食品の
製造方法により発酵用原料の発酵を行って芳香性発酵飲
食品を得、ついでそれを蒸留することを特徴とする蒸留
酒の製造方法に関する。本発明の第7は、請求項3〜5
いずれか記載の芳香性発酵飲食品の製造方法により発酵
用原料の発酵を行って芳香性発酵飲食品を得、ついでこ
れにエチルアルコールまたはそれを含む液体を加えて蒸
留することを特徴とする蒸留酒の製造方法に関する。
【0010】本発明の製造方法により得られた芳香性酵
母や芳香組成物が放つフルーツ様の香りについて分析を
行ったところ、エチル−9−デセノエイト、HEMF、
HDMF、エチルカプロエイト、エチルカプリレイト、
エチルカプレイト、2−フェネチルアルコール、2−フ
ェネチルアセテート、桂皮酸エチルが主要成分として含
まれていることが分った。
【0011】本発明において醸造工程から回収した酵母
液は、いったん酒類、しょうゆ、みそなどの発酵食品の
製造に使用した後のものであればどのようなものでもよ
い。このように醸造に用いられた酵母液は、デカンテー
ション、遠心分離、ろ過などにより容易に発酵工程から
分離され、必要に応じて濃縮して泥状状態とする。濃縮
しない段階でつぎの処理にかけてもよいが、処理量が多
くなるため経済的に有利ではないので、泥状状態にして
からつぎの処理にかけることが好ましい。また、原料と
なる酵母は水などで洗浄してあってもかまわない。さら
に香りつけのためだけなら死滅していてもかまわない。
【0012】醸造工程から回収した酵母液の熟成または
凍結、解凍の処理は、好気的雰囲気下で行うことが好ま
しい。好気的にしておくことにより好ましい香りが発生
する傾向があるので、好気的条件は好ましい条件であ
る。
【0013】前記本発明における熟成処理は、酵母液ま
たはその泥状物を好ましくは0〜50℃の条件で保持す
るだけでよい。50℃以上では酵母の代謝が本来のもの
と大幅に異ったり、酵母が死滅したり、好ましくない香
り(硫黄臭、アミン臭など)が発生するので好ましくな
く、0℃以下では凍結するので、熟成とは別の本発明の
もう1つの処理工程になる。
【0014】回収した酵母液または泥状物を0℃以下で
凍結させると、細胞膜や液胞などのオルガネラ(細胞内
小器官)、細胞骨格の破壊がおこり、これが結果的に熟
成と同様の効果を発揮することになる。
【0015】本発明の請求項1の方法で得られた芳香性
酵母に水または適当な有機溶媒を添加し、望ましくはエ
タノールを添加し、既知の方法により芳香成分を抽出す
ればエチル−9−デセノエイト、HEMF、HDMFを
高濃度含有する芳香組成物が得られる。これを有機溶媒
での抽出や蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの手段
によって精製した後、有機溶媒を留去し、高純度、高品
質のエチル−9−デセノエイト、HEMF、HDMFな
どの香料を提供することができる。
【0016】本発明の製造方法により得られた芳香性酵
母を適当な糖を含有する液体、例えば粉砕した麦芽を温
水で抽出して作製した麦汁やYPD培地(酵母エキス1
%、ペプトン2%、ぶどう糖2%)の様な天然培地ある
いはウィッカーハム改変培地の様な合成培地に添加し、
約5℃から約40℃、好ましくは10℃から25℃にて
発酵を行う。本発明の製造方法により得られた芳香性酵
母の添加量が増加すると、それにより持ち込まれるエチ
ル−9−デセノエイト、HEMF、HDMFなども増加
する。そこで、請求項3の発明においては、請求項1の
製造方法で得られた芳香性酵母を選択し、さらにそれら
が増加するように該酵母を、発酵用原料を発酵するため
の酵母として使用することが望ましい。通常発酵用とし
て添加する醸造用酵母は、圧搾した状態で糖化液の0.
1%〜1%程度であるが、香りつけという点では前述の
ように芳香性酵母を大量に添加する方が明らかに香り高
いものができる。ただし隠し味程度に用いることも一案
であるから、目的に応じ発酵用原料(乾燥重量)に対し
て1〜10000重量%と広い範囲で添加すればよい。
発酵液中の香気成分は、低温で培養すると増加すること
から、できるだけ低い温度で培養したほうが好ましい。
しかし、低温では酵母菌の増殖が緩慢になり、発酵に長
い時間が必要となるので、用いる醸造に使用した酵母と
工程に応じて適切な発酵温度を設定すればよい。発酵に
要する時間は、用いる醸造に使用した酵母や培地、発酵
条件などによって異なるが、通常24時間から360時
間が必要である。発酵が終了すれば、エチル−9−デセ
ノエイト、HEMF、HDMFを高濃度含有する発酵飲
食品が得られる。発酵の終了した液は、そのまま芳香組
成物の製造工程に進めてもよいが、いったん遠心、ろ過
などの公知の方法により、酵母残渣を除いた清澄液を作
製し、得られた清澄液を次工程に進めてもよい。
【0017】本発明の芳香性酵母から芳香組成物を回収
するためには、一般に用いられている方法を用いて生成
した芳香性酵母よりエチル−9−デセノエイト、HEM
F、HDMFなどを回収したり、単離することもでき
る。請求項1の方法で得られた芳香性酵母を含有する処
理液にはエチル−9−デセノエイト、HEMF、HDM
Fが蓄積しているので、遠心処理などによって処理液を
清澄化した後、あるいは、混濁した状態のまま、エチル
−9−デセノエイト、HEMF、HDMFなどを抽出精
製することもできる。エチル−9−デセノエイト、HE
MF、HDMFなどを有機溶媒に溶解し、有機溶媒での
抽出や蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの手段によ
って精製した後、有機溶媒を留去し、高純度、高品質の
エチル−9−デセノエイト、HEMF、HDMFなどを
回収することができる。
【0018】エチル−9−デセノエイト、HEMF、H
DMFなどを含有する芳香組成物は、そのまま、あるい
は精製した後、香料のように用いることができる。トロ
ピカルで甘い香りを付与させる目的で、アルコール飲料
や清涼飲料水のほか、ヨーグルトなどの食品に添加した
り、化粧品、歯磨き等に添加することもできる。さら
に、エタノールまたはそれを含有する液体を添加し、蒸
留してもよい。エタノールを含有する液体としては、例
えば、アルコール飲料を製造するために醸造した発酵
液、エタノールを含有する水溶液などがあげられる。前
記発酵液としては、ウイスキー、ビール、ワイン、焼
酎、清酒などを製造する途中の醸造液でもよい。
【0019】本発明に用いる発酵用原料としては、従来
から発酵用原料として用いられているものはすべて対象
とすることができる。芳香性発酵飲食品が酒類や酢の場
合には、発酵用原料は糖であり、糖としては、米由来の
もの、イモ類由来のもの、果実由来のもの、そば由来の
もの、さとうきび由来のもの、麦由来のもの、とうもろ
こし由来のものなどを挙げることができる。また、芳香
性発酵飲食品が、ヨーグルトやチーズの場合には牛乳
を、パンの場合には麦が、しょう油、みそ、納豆の場合
には豆を、漬物の場合にはそれぞれの対象となる原料
を、発酵用原料として用いることができる。発酵用原料
として具体例を以下に示す。 穀類・・むぎ(大麦、小麦、ライ麦、燕麦、はと麦
等)、米、そば、とうろもこし、アマランサス、あわ、
きび、ひえ、もろこし、コウリャン、さとうきび等 イモ類・・菊芋、キャッサバ、こんにゃく、さつまい
も、さといも、じゃがいも、山芋等 豆類・・小豆、いんげんまめ、えんどう、ささげ、そら
まめ、だいず、ピジョンビーン、ひよこまめ、ビルマま
め、ライまめ等 野菜類・・かぼちゃ、ゆりね、くわい、かたくり、あけ
び、さとうダイコン(ビートまたは甜菜)等 果実類・・りんご、かき、もも、ぶどう、すいか、バナ
ナ等 種実類・・アーモンド、ごま、カシューナッツ、ぎんな
ん、くり、くるみ、らっかせい、松の実等 きのこ類・・えのきたけ、しいたけ、しめじ、なめこ、
ひらたけ等 藻類・・こんぶ、わかめ、モズク等 乳類・・牛乳、ヤギ乳、馬乳、人乳等
【0020】本発明の方法により得られた芳香組成物の
存在下に、発酵用原料の発酵を行うときは、本発明の方
法で得られた芳香性酵母を用いてもよいし、他の酵母を
使用してもよく、また両者を併用してもよい点は、芳香
性酵母を用いた芳香性発酵飲食品の製造方法の場合と同
様である。なお、他の酵母としてはとくに制限を設ける
ものではないが、通常その飲食品の製造に用いられてい
る酵母を使用するのが無難である。
【0021】前記他の酵母としては、とくに制限はな
い。一例としてグルコース発酵など酒類製造時に使用で
きる酵母としては、Brettanomyces属、C
andida属、Debaryomyces属、Geo
trichum属、Hanseniaspora属、M
etschnikowia属、Kloeckera属、
Kluyveromyces属、Pichia属、Sa
ccharomyces属、Saccharomyco
des属、Schizosaccharomyces
属、Torulaspora属、Zygosaccha
romyces属等を挙げることができ、またグルコー
ス発酵はできないが発酵に用いることが可能な酵母とし
てはYarrowia lipolytica、Rho
dotorula属、Crytococcus属等を挙
げることができる。
【0022】本発明において、芳香性酵母が死滅してい
ないときは、それのみでも、また他の酵母と併用しても
よいが、両者を併用する場合は、先に他の酵母を添加す
ると発酵速度を速めアルコール収率を高めたり、残糖を
減少させ蒸留の際の焦げ付きを防ぐことができる。また
発酵液中に混在する野生酵母のなかには、グルコースか
らさまざまな香気成分を生成し、これらの香気性分が蒸
留液中の香気を芳醇にするので、先にこれらの香気成分
を作らせてから芳香性酵母を加えることが好ましい。先
に、芳香性酵母を添加すると、これがアルコール発酵性
の場合は、まずアルコールが生成し、同時に芳香性酵母
の自己消化が進む。そこに他の酵母を添加すると、芳香
性酵母由来の成分を代謝することになる。
【0023】
【実施例】以下に実施例を記して具体的に説明するが、
本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるもの
ではない。下記の実施例中、エチル−9−デセノエイ
ト、HEMF、HDMFの分析は、試料から適当な有機
溶媒を用いて固層抽出した後、ガスクロマトマススペク
トルによって定性を行なった。
【0024】実施例1(醸造工程から回収した酵母液の
熟成) YPD培地で培養した上面ビール醸造用酵母を遠心分離
により集菌した。残渣を滅菌水に懸濁し再度遠心分離に
より集菌した。この工程を再度行い酵母の洗浄を行っ
た。素焼き板にて脱水・圧搾を行ったところ水分含量は
70重量%であった。このようにして得られたプレス酵
母を対照酵母として香気を観察した。一方、エールビー
ルの発酵工程に使用した上面ビール酵母を遠心分離し、
残渣を素焼き板にて脱水・圧搾を行ったところ、水分含
量は75重量%であった。このプレス酵母を試験酵母と
して香気を観察した。香気観察は専門パネラー5名によ
る官能検査を行った。両方のプレス酵母を10℃で保存
した場合の香気の変化を表1に示す。10℃で4週間熟
成後のエールビール醸造酵母(水分75重量%)1g中
にはエチル−9−デセノエイトを0.06mg、9−デ
セノイック酸を0.10mg含有していた。
【0025】
【表1】
【0026】実施例2(醸造工程から回収した酵母液の
凍結解凍処理) 実施例1で使用したプレス酵母を凍結保存した後解凍し
た場合の香気変化を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】実施例3(醸造に使用した酵母の選択) 比重1.06の麦汁10mlに清酒醸造、ワイン醸造、
ビール醸造にそれぞれ使用した酵母を接種し、28℃で
24時間発酵した。得られた結果を表3に示したが、特
にビールの醸造に使用した酵母を用いた場合にトロピカ
ルフルーツや花様の香りが顕著に感じられた。
【0029】
【表3】
【0030】実施例4(エチル−9−デセノエイト、H
EMF、HDMFを含有する蒸留酒の製造) 比重1.06の麦汁1.8Lにエールビールの醸造に使
用した上面ビール酵母を0.2kg添加し25℃で48
時間培養した。得られた発酵終了液(これは、1種の新
しいビールであり、これも本発明の芳香性発酵飲食品の
1つである)1.8Lにアルコール度数95%の原料用
アルコール1.2Lを添加し、銅製ポットスティルを用
いて蒸留し蒸留酒を製造した。また対照例として、比重
1.06の麦汁1.8Lに実施例1のYPD培地培養プ
レス酵母を0.2kg添加し25℃で48時間熟成し、
アルコール度数95%の原料用アルコール1.2Lを添
加し、銅製ポットスティルを用いて蒸留し蒸留酒を製造
した。蒸留酒中の芳香成分を調べるため、得られた蒸留
酒各200mlに等量のジエチルエーテルを添加し10
分間振とうした。上層を取り出し下層に再度ジエチルエ
ーテルを添加し10分間振とうし、上層を取り出し先の
上層と混合した。再度同じことを行い先の上層と混合し
た。無水硫酸ナトリウムにて脱水を行い、窒素ガスを吹
き込み濃縮し、ガスクロマトグラフィーマススペクトロ
メトリーにより化学分析を行ったところ、ビールの醸造
に使用した酵母を用いて製造した蒸留酒にはエチル−9
−デセノエイト、HEMF、HDMFが含まれている
が、YPD培地培養プレス酵母を用いて製造した蒸留酒
にはエチル−9−デセノエイト、HEMF、HDMFが
含まれていないことが判明した。一方、エールビールの
醸造に使用した上面ビール酵母を用いて製造した蒸留酒
とYPD培地培養プレス酵母を用いて製造した蒸留酒を
対象として10名の専門パネラーによる官能検査を行っ
た。結果を表4に示した。官能検査の評点は4点を中心
とした7点満点とし、全員の平均点で示した。この結
果、エールビールの醸造に使用した上面ビール酵母を用
いて製造したエチル−9−デセノエイト、HEMF、H
DMFを含む蒸留酒は、フルーツ様な香気を持ち、対照
例の蒸留酒と充分差別化できる品質であることが判明し
た。
【0031】
【表4】
【0032】実施例5(ラージスケールでの芳香性蒸留
酒の製造) 80℃の温水70Lに米粉10kgとアミラーゼK(天
野エンザイム社製、α−アミラーゼの1種で、米粉のデ
ンプンを分解して液化するための酵素)1gを添加し3
0分間撹拌した。30℃に冷却後、グルクザイムAF6
(天野エンザイム社製、グルコアミラーゼの1種で、米
粉のデンプンを分解して液化するための酵素)9gを添
加し60分間撹拌した。YPD培地培養プレス酵母1k
g添加し30℃で20時間静置した。エールビールの醸
造に使用した上面ビール酵母を圧搾したもの50kgを
添加し30℃で1時間静置した。アルコール度数95.
5%の原料用アルコール347L添加し室温で24時間
放置した。アルコール度数40%になるように水を添加
した。−540mmHgで減圧蒸留を行い、アルコール
度数73.9%の蒸留液452Lを得た。この蒸留液を
ポンプにて24時間循環させた後、1ヶ月間保存し、香
気の安定を行った。この蒸留酒にはエチル−9−デセノ
エイト、HEMF、HDMFが著量含まれ、官能的には
フレッシュでトロピカルな感じであった。
【0033】
【発明の効果】本発明によって、トロピカルまたは花様
の甘い香りの成分(例えばエチル−9−デセノエイト、
HEMF、HDMF)を高濃度含有する芳香性酵母や芳
香組成物の製造法が確立した。この方法では、従来から
食品の製造に用いられてきた原材料を用いて、高価な物
質を添加したり、新規の設備を導入したりすることな
く、エチル−9−デセノエイト、HEMF、HDMFな
どのトロピカルまたは花様の甘い香りの成分を高濃度含
有する芳香性酵母や芳香組成物が製造できる。これらの
芳香性酵母や芳香性組成物は、使用酵母やその処理法に
応じて種々の芳香性成分を非常に多数含んでいるため、
いくつかの合成品を配合するだけでは再現できない香り
を有する。また、本発明では、飲食品用の原材料を用い
てエチル−9−デセノエイト、HEMF、HDMFなど
を含むトロピカルまたは花様の甘い香りの成分が製造で
きるため、食品に添加できる安全性の高い香料の製造法
を提供できる。さらに、本発明によれば前記芳香性酵母
を利用して芳香性発酵飲食品の製造、ひいてはこれを発
展させた芳香性蒸留酒の製造方法が提供できた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A23L 2/38 C11B 9/00 A 4H059 C11B 9/00 C12G 3/06 C12G 3/06 C12P 17/04 C12P 17/04 A23L 2/00 B (72)発明者 鰐川 彰 茨城県北相馬郡守谷町緑1丁目1番21 ア サヒビール株式会社酒類研究所内 (72)発明者 尾崎 裕美 茨城県北相馬郡守谷町緑1丁目1番21 ア サヒビール株式会社酒類研究所内 (72)発明者 細井 健二 千葉県柏市増尾字松山967番地 ニッカウ ヰスキー株式会社生産技術研究所内 Fターム(参考) 4B015 JP06 MA01 MA03 NG17 4B017 LC02 LK06 LK21 LL01 LP05 4B047 LB03 LB07 LB09 LG06 LG56 LP01 LP19 4B064 AD67 AE45 CA06 CC06 CC12 CC15 CE08 DA10 4B065 AA72X AC20 BA21 CA12 CA18 CA42 CA50 CA51 4H059 BA22 BB03 BB19 BB22 BC10 BC48 DA09

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 醸造工程から回収した酵母液を、熟成処
    理するかまたは一旦凍結した後解凍処理する、ことを特
    徴とする芳香性酵母の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の製造方法により得られた
    芳香性酵母を、水および/または有機溶媒に浸漬、抽出
    することを特徴とする芳香組成物の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の製造方法により得られた
    芳香性酵母の存在下に、発酵用原料の発酵を行うことを
    特徴とする芳香性発酵飲食品の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記芳香性酵母と共に他の酵母をも用い
    て発酵を行うものである請求項3記載の芳香性発酵飲食
    品の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項2記載の製造方法により得られた
    芳香組成物の存在下に、発酵用原料の発酵を行うことを
    特徴とする芳香性発酵飲食品の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項3〜5いずれか記載の芳香性発酵
    飲食品の製造方法により発酵用原料の発酵を行って芳香
    性発酵飲食品を得、ついでそれを蒸留することを特徴と
    する蒸留酒の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項3〜5いずれか記載の芳香性発酵
    飲食品の製造方法により発酵用原料の発酵を行って芳香
    性発酵飲食品を得、ついでこれにエチルアルコールまた
    はそれを含む液体を加えて蒸留することを特徴とする蒸
    留酒の製造方法。
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