JP2003097560A - エンジン駆動補機用転がり軸受 - Google Patents
エンジン駆動補機用転がり軸受Info
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- JP2003097560A JP2003097560A JP2001298228A JP2001298228A JP2003097560A JP 2003097560 A JP2003097560 A JP 2003097560A JP 2001298228 A JP2001298228 A JP 2001298228A JP 2001298228 A JP2001298228 A JP 2001298228A JP 2003097560 A JP2003097560 A JP 2003097560A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 製造時における作業環境上の問題がなく、し
かも生産性および品質に優れ、金属接触に基づく水素の
発生を防止して、水素脆性的な短寿命剥離を生じること
のないエンジン駆動補機用転がり軸受を提供する。 【解決手段】 オイルやグリースによる潤滑下あるい
は、HFCとこれに可溶な潤滑剤との混合潤滑下で使用
される転がり軸受において、軸受の玉やころなどの転動
体、およびこれら転動体に潤滑剤を介して当接する内輪
や外輪、軌道輪などの部材の少なくともいずれかの表面
に、転動中の炭化水素の分解を抑え水素の発生を抑制す
るりん酸鉄系の皮膜を形成する。
かも生産性および品質に優れ、金属接触に基づく水素の
発生を防止して、水素脆性的な短寿命剥離を生じること
のないエンジン駆動補機用転がり軸受を提供する。 【解決手段】 オイルやグリースによる潤滑下あるい
は、HFCとこれに可溶な潤滑剤との混合潤滑下で使用
される転がり軸受において、軸受の玉やころなどの転動
体、およびこれら転動体に潤滑剤を介して当接する内輪
や外輪、軌道輪などの部材の少なくともいずれかの表面
に、転動中の炭化水素の分解を抑え水素の発生を抑制す
るりん酸鉄系の皮膜を形成する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オルタネーター、
電磁クラッチ、アイドラプーリ等のグリース封入軸受
や、油浴中で使用される燃料噴射ポンプ用転がり軸受、
エアコンディショナーのコンプレッサー内で冷媒として
使用されるHFC(ヒドロフルオロカーボン類)とこれ
に可溶な潤滑剤との混合潤滑下で使用される軸受など、
自動車に使用されるエンジン補機用転がり軸受に係わ
り、これら軸受の転動中に、潤滑剤あるいは混入水分の
分解等によって発生した水素が軸受部材を構成する鋼中
へ侵入することに起因する水素脆性的な短寿命剥離を抑
制することのできる軸受に関するものである。
電磁クラッチ、アイドラプーリ等のグリース封入軸受
や、油浴中で使用される燃料噴射ポンプ用転がり軸受、
エアコンディショナーのコンプレッサー内で冷媒として
使用されるHFC(ヒドロフルオロカーボン類)とこれ
に可溶な潤滑剤との混合潤滑下で使用される軸受など、
自動車に使用されるエンジン補機用転がり軸受に係わ
り、これら軸受の転動中に、潤滑剤あるいは混入水分の
分解等によって発生した水素が軸受部材を構成する鋼中
へ侵入することに起因する水素脆性的な短寿命剥離を抑
制することのできる軸受に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】近年、自動車等に使わ
れるパワートレインは、燃費向上、高出力化等の観点か
ら、小型、軽量化が求められている。それに伴い、これ
らに使用される転がり軸受、歯車等の転動、摺動部材は
小型・軽量化に加え、高荷重化、高回転化という厳しい
環境下での運転を余儀なくされている。
れるパワートレインは、燃費向上、高出力化等の観点か
ら、小型、軽量化が求められている。それに伴い、これ
らに使用される転がり軸受、歯車等の転動、摺動部材は
小型・軽量化に加え、高荷重化、高回転化という厳しい
環境下での運転を余儀なくされている。
【0003】例えば、オルタネーターや電磁クラッチ等
に使われるグリース封入軸受の場合、小型化、高速回転
化に加え、エンジンからの振動を受けるため、高荷重、
高速回転、高振動という厳しい環境下で使用される。そ
の結果、NTT Tecnical Review N
o.61や、NSK Technical Journ
al No.656に記載されているように、転走面内
部に特異な形態の組織変化を伴って短寿命で剥離すると
の報告がある。
に使われるグリース封入軸受の場合、小型化、高速回転
化に加え、エンジンからの振動を受けるため、高荷重、
高速回転、高振動という厳しい環境下で使用される。そ
の結果、NTT Tecnical Review N
o.61や、NSK Technical Journ
al No.656に記載されているように、転走面内
部に特異な形態の組織変化を伴って短寿命で剥離すると
の報告がある。
【0004】この短寿命剥離の原因は、NTT Tec
nical Review No.61に記載されてい
るように、高荷重、高速回転、高振動という厳しい環境
下での使用が転走面の鏡面摩耗を引き起こし、それによ
る金属新生面の形成が触媒的な作用をなして、グリース
を分解し、その際に発生した水素が鋼中(軸受部品)に
侵入して、水素脆性的な剥離を招いたためと考えられ
る。
nical Review No.61に記載されてい
るように、高荷重、高速回転、高振動という厳しい環境
下での使用が転走面の鏡面摩耗を引き起こし、それによ
る金属新生面の形成が触媒的な作用をなして、グリース
を分解し、その際に発生した水素が鋼中(軸受部品)に
侵入して、水素脆性的な剥離を招いたためと考えられ
る。
【0005】また、エアコンディショナーのコンプレッ
サーの中で冷媒と共に潤滑剤を混合した潤滑条件下で使
用される転がり軸受の場合、従来冷媒として使用されて
いたフロンが地球環境に影響を及ぼすことから、ヒドロ
フルオロカーボン類(HFC)に代替されつつある。こ
のような冷媒代替に伴って、潤滑剤もフロンに可溶なナ
フテン系、パラフィン系等の鉱油系潤滑剤から、HFC
に可溶なポリアルキレングリコール(PGA)やポリオ
ールエステルなどに変更されている。
サーの中で冷媒と共に潤滑剤を混合した潤滑条件下で使
用される転がり軸受の場合、従来冷媒として使用されて
いたフロンが地球環境に影響を及ぼすことから、ヒドロ
フルオロカーボン類(HFC)に代替されつつある。こ
のような冷媒代替に伴って、潤滑剤もフロンに可溶なナ
フテン系、パラフィン系等の鉱油系潤滑剤から、HFC
に可溶なポリアルキレングリコール(PGA)やポリオ
ールエステルなどに変更されている。
【0006】その結果、トライボロジスト第37巻11
号(1992)や特開平08−177864号公報に記
載されているように、転走面内部に特異な形態の組織変
化が生じ、従来に比べて短寿命で剥離するとの報告があ
る。この原因は潤滑剤の変更により、潤滑膜の形成状態
が変化したことで、転動体、軌道輪間でミクロな金属接
触を生じ、金属接触により露出された金属新生面が潤滑
剤中の炭化水素または混合水分を分解し、その際に発生
した水素が金属内部に侵入し、内部の組織を脆化させた
ことによると考えられている。
号(1992)や特開平08−177864号公報に記
載されているように、転走面内部に特異な形態の組織変
化が生じ、従来に比べて短寿命で剥離するとの報告があ
る。この原因は潤滑剤の変更により、潤滑膜の形成状態
が変化したことで、転動体、軌道輪間でミクロな金属接
触を生じ、金属接触により露出された金属新生面が潤滑
剤中の炭化水素または混合水分を分解し、その際に発生
した水素が金属内部に侵入し、内部の組織を脆化させた
ことによると考えられている。
【0007】これまで、このような水素脆性的な短寿命
剥離現象は、前述のようにオルタネーターや、電磁クラ
ッチ、アイドラプーリ等、自動車補機に使用されるグリ
ース封入軸受や、エアコンディショナーのコンプレッサ
ーに使用される軸受などで発生する場合があるとの報告
があるが、エンジンの燃料噴射ポンプに使用される転が
り軸受等についても、小型、軽量化、あるいは大容量化
していく中で、前述の水素脆性的な現象が起こる可能性
がある。
剥離現象は、前述のようにオルタネーターや、電磁クラ
ッチ、アイドラプーリ等、自動車補機に使用されるグリ
ース封入軸受や、エアコンディショナーのコンプレッサ
ーに使用される軸受などで発生する場合があるとの報告
があるが、エンジンの燃料噴射ポンプに使用される転が
り軸受等についても、小型、軽量化、あるいは大容量化
していく中で、前述の水素脆性的な現象が起こる可能性
がある。
【0008】従来、このような水素脆性的な短寿命剥離
対策としては、黒染め処理により転動面に四三酸化鉄を
形成させたもの(特開平2−190615号公報など)
がある。これは、転走表面に不活性皮膜を形成させ、新
生面生成による触媒作用を抑制することで、炭化水素ま
たは混入水分の分解反応を起こりにくくして、発生する
水素量を減らすことを狙ったものであるが、この黒染め
処理は、水酸化ナトリウムを成分とする強アルカリ溶液
を用いる処理方法であって、この強アルカリ溶液を13
0〜160℃に加熱し、この中に部材を10〜30分間
浸漬するものである。したがって、濃度の高い強アルカ
リ溶液を使用することに加えて、処理温度が非常に高温
であることから、作業環境としては劣悪で危険であると
いう問題点がある。また、表面状態によって成長する皮
膜の膜厚がばらつくため、生産性が低く、工業的には好
ましいものではなく、これらの問題点を解消して水素脆
性に基づく短寿命剥離を防止することが上記のような転
がり軸受における課題となっていた。
対策としては、黒染め処理により転動面に四三酸化鉄を
形成させたもの(特開平2−190615号公報など)
がある。これは、転走表面に不活性皮膜を形成させ、新
生面生成による触媒作用を抑制することで、炭化水素ま
たは混入水分の分解反応を起こりにくくして、発生する
水素量を減らすことを狙ったものであるが、この黒染め
処理は、水酸化ナトリウムを成分とする強アルカリ溶液
を用いる処理方法であって、この強アルカリ溶液を13
0〜160℃に加熱し、この中に部材を10〜30分間
浸漬するものである。したがって、濃度の高い強アルカ
リ溶液を使用することに加えて、処理温度が非常に高温
であることから、作業環境としては劣悪で危険であると
いう問題点がある。また、表面状態によって成長する皮
膜の膜厚がばらつくため、生産性が低く、工業的には好
ましいものではなく、これらの問題点を解消して水素脆
性に基づく短寿命剥離を防止することが上記のような転
がり軸受における課題となっていた。
【0009】
【発明の目的】本発明は、このような従来の課題に鑑み
てなされたものであって、製造時における作業環境上の
問題がなく、しかも生産性および品質に優れ、金属接触
に基づく水素の発生を防止して、水素脆性的な短寿命剥
離を生じることのないエンジン駆動補機用転がり軸受を
提供することを目的としている。
てなされたものであって、製造時における作業環境上の
問題がなく、しかも生産性および品質に優れ、金属接触
に基づく水素の発生を防止して、水素脆性的な短寿命剥
離を生じることのないエンジン駆動補機用転がり軸受を
提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来技術
における上記問題点を考慮して鋭意検討を重ねた結果、
特定のりん酸鉄系皮膜を軸受部材の金属表面に形成する
ことによって転走中における金属接触を防止することが
でき、もって水素による短寿命剥離を抑制することがで
きることを見出し、本発明を完成するに到った。
における上記問題点を考慮して鋭意検討を重ねた結果、
特定のりん酸鉄系皮膜を軸受部材の金属表面に形成する
ことによって転走中における金属接触を防止することが
でき、もって水素による短寿命剥離を抑制することがで
きることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】本発明に係わるエンジン駆動補機用転がり
軸受は、上記知見に基づくものであって、エンジン駆動
補機に用いられ、オイル潤滑、グリース潤滑あるいは、
冷媒としてのHFC(ヒドロフルオロカーボン類)と該
HFCに可溶な潤滑剤との混合潤滑下で使用される転が
り軸受において、転動体および該転動体に潤滑剤を介し
て当接する部材の少なくともいずれかの表面に、転動中
の炭化水素の分解を抑え水素の発生を抑制するりん酸鉄
系の皮膜が形成されている構成としたことを特徴として
おり、エンジン駆動補機用転がり軸受におけるこのよう
な構成を前述した従来の課題を解決するための手段とし
ている。
軸受は、上記知見に基づくものであって、エンジン駆動
補機に用いられ、オイル潤滑、グリース潤滑あるいは、
冷媒としてのHFC(ヒドロフルオロカーボン類)と該
HFCに可溶な潤滑剤との混合潤滑下で使用される転が
り軸受において、転動体および該転動体に潤滑剤を介し
て当接する部材の少なくともいずれかの表面に、転動中
の炭化水素の分解を抑え水素の発生を抑制するりん酸鉄
系の皮膜が形成されている構成としたことを特徴として
おり、エンジン駆動補機用転がり軸受におけるこのよう
な構成を前述した従来の課題を解決するための手段とし
ている。
【0012】本発明に係わる転がり軸受の好適形態は、
上記エンジン駆動補機が、燃料ポンプ、オルタネータ
ー、アイドラプーリ、電磁クラッチまたはエアコンのコ
ンプレッサーであることを特徴としている。
上記エンジン駆動補機が、燃料ポンプ、オルタネータ
ー、アイドラプーリ、電磁クラッチまたはエアコンのコ
ンプレッサーであることを特徴としている。
【0013】また、本発明のエンジン駆動駆動補機用転
がり軸受の他の好適形態においては、りん酸鉄系皮膜の
皮膜付着量をりんに換算して100〜300mg/m2
としすることができ、さらに、りん酸鉄系皮膜にモリブ
デン酸化物を複合添加することができる。そしてこのと
き、りん酸鉄系皮膜に添加されたモリブデン酸化物の付
着量がモリブデンに換算して10〜60mg/m2であ
るものとしたり、りん酸鉄系皮膜中におけるモリブデン
とりんの重量比(Mo/P)が0.3以下であるものと
したりすることが望ましい。
がり軸受の他の好適形態においては、りん酸鉄系皮膜の
皮膜付着量をりんに換算して100〜300mg/m2
としすることができ、さらに、りん酸鉄系皮膜にモリブ
デン酸化物を複合添加することができる。そしてこのと
き、りん酸鉄系皮膜に添加されたモリブデン酸化物の付
着量がモリブデンに換算して10〜60mg/m2であ
るものとしたり、りん酸鉄系皮膜中におけるモリブデン
とりんの重量比(Mo/P)が0.3以下であるものと
したりすることが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明に係わるエンジン駆動補機
用転がり軸受は、軸受を構成する内輪、外輪、転動体、
あるいは軌道輪などの金属表面にりん酸鉄系皮膜を形成
させたものであり、りん酸鉄系皮膜が形成されているこ
とにより、潤滑時にミクロ的な金属接触が抑制されるこ
とになる。一般に、潤滑時にミクロ的な金属接触が生じ
ると金属新生面が発生する。この新生面は非常に高い活
性を有しており、このために、この新生面上で潤滑油
(炭化水素等)が分解し、分解物として水素が発生し、
これが鋼中に浸入し水素脆化を引き起こし、軸受の寿命
が短いものとなってしまう。本発明において、りん酸鉄
系皮膜は金属接触を防ぐことにより新生面の発生を抑
え、ひいては水素の発生を抑制して、軸受の耐久性を向
上させることに寄与する。
用転がり軸受は、軸受を構成する内輪、外輪、転動体、
あるいは軌道輪などの金属表面にりん酸鉄系皮膜を形成
させたものであり、りん酸鉄系皮膜が形成されているこ
とにより、潤滑時にミクロ的な金属接触が抑制されるこ
とになる。一般に、潤滑時にミクロ的な金属接触が生じ
ると金属新生面が発生する。この新生面は非常に高い活
性を有しており、このために、この新生面上で潤滑油
(炭化水素等)が分解し、分解物として水素が発生し、
これが鋼中に浸入し水素脆化を引き起こし、軸受の寿命
が短いものとなってしまう。本発明において、りん酸鉄
系皮膜は金属接触を防ぐことにより新生面の発生を抑
え、ひいては水素の発生を抑制して、軸受の耐久性を向
上させることに寄与する。
【0015】軸受の水素脆化は、軸受のレース部分(外
輪および内輪)と、玉やコロなどの転動体部分の両方に
発生する。一般に、コスト低減のためには、水素脆化が
生じ、疲労破壊が起こりやすい部材の側にりん酸鉄系皮
膜を施すことが好ましい。しかし、より万全を期すため
に両側に施しても特に問題はない。
輪および内輪)と、玉やコロなどの転動体部分の両方に
発生する。一般に、コスト低減のためには、水素脆化が
生じ、疲労破壊が起こりやすい部材の側にりん酸鉄系皮
膜を施すことが好ましい。しかし、より万全を期すため
に両側に施しても特に問題はない。
【0016】りん酸鉄系皮膜の形成方法については、特
に限定されるものではないが、工業的には、低コストで
このような皮膜を形成させることができる水系の処理液
を用いた化成処理を適用することが望ましい。
に限定されるものではないが、工業的には、低コストで
このような皮膜を形成させることができる水系の処理液
を用いた化成処理を適用することが望ましい。
【0017】すなわち、アルカリ系の洗浄剤を使用し
て、皮膜を形成させる部位の汚れを洗浄したのちに、水
洗し、りん酸を主成分とする酸性の化成処理液に接触さ
せる。化成処理液中では、部材の金属がエッチングさ
れ、このときの界面pH上昇を利用して、りん酸鉄系皮
膜が表面に成長する。化成処理された部材は、水ですす
がれ、未反応の処理液が部材表面から除去される。この
後、乾燥し、表面にりん酸鉄系皮膜が完全に形成され
る。
て、皮膜を形成させる部位の汚れを洗浄したのちに、水
洗し、りん酸を主成分とする酸性の化成処理液に接触さ
せる。化成処理液中では、部材の金属がエッチングさ
れ、このときの界面pH上昇を利用して、りん酸鉄系皮
膜が表面に成長する。化成処理された部材は、水ですす
がれ、未反応の処理液が部材表面から除去される。この
後、乾燥し、表面にりん酸鉄系皮膜が完全に形成され
る。
【0018】このとき、りん酸鉄系化成処理液のpHは
3程度であり、処理温度も50〜70℃、処理時間も数
分程度なので、前述の四三酸化鉄を形成させる黒染め処
理に比べると、作業環境条件が温和であると言える。さ
らに、りん酸鉄系の化成処理の場合には、素材の材質が
一定であれば、濃度、温度、時間等の処理条件によって
膜厚をコントロールすることが容易であって、形成させ
る膜厚のばらつきを一定の条件下において狭い範囲内に
管理することができる。このようなりん酸鉄系の化成処
理は、工業的な生産性が高く、軸受のような高い精度を
求められる場合に好適である。
3程度であり、処理温度も50〜70℃、処理時間も数
分程度なので、前述の四三酸化鉄を形成させる黒染め処
理に比べると、作業環境条件が温和であると言える。さ
らに、りん酸鉄系の化成処理の場合には、素材の材質が
一定であれば、濃度、温度、時間等の処理条件によって
膜厚をコントロールすることが容易であって、形成させ
る膜厚のばらつきを一定の条件下において狭い範囲内に
管理することができる。このようなりん酸鉄系の化成処
理は、工業的な生産性が高く、軸受のような高い精度を
求められる場合に好適である。
【0019】りん酸鉄系皮膜の付着量としては、りんに
換算して100mg/m2以上、300mg/m2以下
の範囲とすることが好ましい。これは、りんの付着量が
100mg/m2未満では、潤滑時の皮膜の金属接触を
防ぐ作用が弱くて、十分な耐水素脆化性が得られないた
めである。一方、300mg/m2を超えたとしても耐
水素脆化性が特に悪化するわけではないが、コストが高
くなるので好ましくない。また、軸受は高い精度が求め
られるため、不必要に皮膜が厚いことは好ましくない。
なお、付着量と皮膜厚は相関関係があり、一般的には、
りんに換算して付着量が100mg/m2のときには、
りん酸鉄系皮膜厚が約0.6μm、付着量が300mg
/m2のときには、皮膜厚が約1.8μmとなる。
換算して100mg/m2以上、300mg/m2以下
の範囲とすることが好ましい。これは、りんの付着量が
100mg/m2未満では、潤滑時の皮膜の金属接触を
防ぐ作用が弱くて、十分な耐水素脆化性が得られないた
めである。一方、300mg/m2を超えたとしても耐
水素脆化性が特に悪化するわけではないが、コストが高
くなるので好ましくない。また、軸受は高い精度が求め
られるため、不必要に皮膜が厚いことは好ましくない。
なお、付着量と皮膜厚は相関関係があり、一般的には、
りんに換算して付着量が100mg/m2のときには、
りん酸鉄系皮膜厚が約0.6μm、付着量が300mg
/m2のときには、皮膜厚が約1.8μmとなる。
【0020】また、前記りん酸鉄系皮膜には、皮膜の耐
水素脆化性を向上させる観点から、モリブデン酸化物が
複合添加されていることが好ましい。モリブデン酸化物
を複合することによって皮膜の耐摩耗性、皮膜残存性が
向上する。このモリブデン酸化物の付着量としては、モ
リブデンに換算して、10mg/m2以上、60mg/
m2以下の範囲とすることが好ましい。これは、モリブ
デンの付着量が10mg/m2未満では、耐水素脆化性
の向上効果が不十分であり、逆に60mg/m 2を超え
ても耐水素脆化性が特に悪化するわけではないが、コス
トが高くなるので好ましくないことによる。
水素脆化性を向上させる観点から、モリブデン酸化物が
複合添加されていることが好ましい。モリブデン酸化物
を複合することによって皮膜の耐摩耗性、皮膜残存性が
向上する。このモリブデン酸化物の付着量としては、モ
リブデンに換算して、10mg/m2以上、60mg/
m2以下の範囲とすることが好ましい。これは、モリブ
デンの付着量が10mg/m2未満では、耐水素脆化性
の向上効果が不十分であり、逆に60mg/m 2を超え
ても耐水素脆化性が特に悪化するわけではないが、コス
トが高くなるので好ましくないことによる。
【0021】さらに、りん酸鉄系皮膜中のモリブデンと
りんの重量比(Mo/P)は、素材に対する皮膜の密着
性を確保する観点から、0.3以下にすることが好まし
い。
りんの重量比(Mo/P)は、素材に対する皮膜の密着
性を確保する観点から、0.3以下にすることが好まし
い。
【0022】なお、りん酸鉄系皮膜にモリブデン酸化物
を複合添加するためには、モリブデン含有の化成処理液
を用いることによって調整することができる。また、モ
リブデン付着量は、化成処理液中のモリブデンの添加濃
度および処理条件(温度、時間等)によりコントロール
することができる。
を複合添加するためには、モリブデン含有の化成処理液
を用いることによって調整することができる。また、モ
リブデン付着量は、化成処理液中のモリブデンの添加濃
度および処理条件(温度、時間等)によりコントロール
することができる。
【0023】りんおよびモリブデンの付着量について
は、市販の蛍光X線分析装置により定量することができ
る。先ず、付着量が既知の複数種類のサンプルを分析す
ることにより、それぞれの特性X線強度を測定し、この
強度と付着量の検量線をりんおよびモリブデンについて
作成しておく。そして、未知のサンプルを分析し、その
X線強度と予め作成した検量線(強度-付着量)から、
このサンプルのりんおよびモリブデンの付着量を求める
ことができる。そして、このモリブデンとりんの付着量
より、重量比(Mo/P)を求めることができる。
は、市販の蛍光X線分析装置により定量することができ
る。先ず、付着量が既知の複数種類のサンプルを分析す
ることにより、それぞれの特性X線強度を測定し、この
強度と付着量の検量線をりんおよびモリブデンについて
作成しておく。そして、未知のサンプルを分析し、その
X線強度と予め作成した検量線(強度-付着量)から、
このサンプルのりんおよびモリブデンの付着量を求める
ことができる。そして、このモリブデンとりんの付着量
より、重量比(Mo/P)を求めることができる。
【0024】
【発明の効果】本発明に係わるエンジン駆動補機用転が
り軸受においては、軸受を構成する内輪,外輪,転動体
にりん酸鉄系の皮膜が形成されているので、潤滑時にミ
クロ的な金属接触が防止され、新生面の発生を抑制して
水素の発生を防止することができ、軸受の耐久性を向上
させることができるという極めて優れた効果がもたらさ
れる。
り軸受においては、軸受を構成する内輪,外輪,転動体
にりん酸鉄系の皮膜が形成されているので、潤滑時にミ
クロ的な金属接触が防止され、新生面の発生を抑制して
水素の発生を防止することができ、軸受の耐久性を向上
させることができるという極めて優れた効果がもたらさ
れる。
【0025】本発明の転がり軸受の好適形態において
は、エンジン駆動補機が燃料ポンプ、オルタネーター、
アイドラプーリ、電磁クラッチ、エアコンのコンプレッ
サーから選ばれるものであるから、すなわち従来水素脆
化により寿命が短かったこれらの機器の軸受に本発明の
転がり軸受が使用されるので、これら機器における軸受
の交換頻度を大幅に減少させることができる。
は、エンジン駆動補機が燃料ポンプ、オルタネーター、
アイドラプーリ、電磁クラッチ、エアコンのコンプレッ
サーから選ばれるものであるから、すなわち従来水素脆
化により寿命が短かったこれらの機器の軸受に本発明の
転がり軸受が使用されるので、これら機器における軸受
の交換頻度を大幅に減少させることができる。
【0026】本発明に係わるエンジン駆動補機用転がり
軸受の他の好適形態においては、りん酸鉄系の皮膜の皮
膜付着量をりんに換算して100mg/m2以上、30
0mg/m2以下の範囲としたものであるから、潤滑時
の皮膜の金属接触を防ぐに必要かつ十分な量の皮膜が得
られ、且つ工業的にも安価なコストで作成することがで
き、さらに他の好適形態においては、りん酸鉄系の皮膜
にモリブデン酸化物が複合添加されていることから、耐
水素脆化性をより向上させることができるという優れた
効果がもたらされる。
軸受の他の好適形態においては、りん酸鉄系の皮膜の皮
膜付着量をりんに換算して100mg/m2以上、30
0mg/m2以下の範囲としたものであるから、潤滑時
の皮膜の金属接触を防ぐに必要かつ十分な量の皮膜が得
られ、且つ工業的にも安価なコストで作成することがで
き、さらに他の好適形態においては、りん酸鉄系の皮膜
にモリブデン酸化物が複合添加されていることから、耐
水素脆化性をより向上させることができるという優れた
効果がもたらされる。
【0027】さらに、本発明に係わるエンジン駆動補機
用転がり軸受の別の好適形態においては、モリブデンの
付着量をモリブデンに換算して10mg/m2以上、6
0mg/m2以下の範囲としており、さらに別の好適形
態においては、モリブデンとりんの重量比(Mo/P)
を0.3以下としているので、潤滑時の耐水素脆化作用
が十分に与えられ、且つ皮膜の密着性が良く、工業的に
も安価なコストで作成することができるというさらに優
れた効果がもたらせる。
用転がり軸受の別の好適形態においては、モリブデンの
付着量をモリブデンに換算して10mg/m2以上、6
0mg/m2以下の範囲としており、さらに別の好適形
態においては、モリブデンとりんの重量比(Mo/P)
を0.3以下としているので、潤滑時の耐水素脆化作用
が十分に与えられ、且つ皮膜の密着性が良く、工業的に
も安価なコストで作成することができるというさらに優
れた効果がもたらせる。
【0028】
【実施例】以下に、本発明に係わるエンジン駆動補機用
転がり軸受に関し、いくつかの実施例を挙げて、その有
用性を比較例と対比して示す。なお、当該実施例におい
て各測定値は以下の方法で測定した。
転がり軸受に関し、いくつかの実施例を挙げて、その有
用性を比較例と対比して示す。なお、当該実施例におい
て各測定値は以下の方法で測定した。
【0029】[リンおよびモリブデン付着量の測定方
法]リンおよびモリブデンの付着量は市販の蛍光X線分
析装置にて定量した。すなわち、リンの付着量が既知で
その量が異なる複数個のサンプルについてそれぞれの特
性X線強度を測定し、強度−付着量の検量線をあらかじ
め作成しておき、当該実施例に係わるりん酸鉄系の皮膜
を形成させた軸受部材を適当なサイズに切り出した試料
について同様の条件で特性X線強度を測定し、測定強度
をあらかじめ作成した検量線に基づてリン付着量に換算
することによって付着量を求めた。モリブデン付着量に
ついても同様の要領によって定量し、これらの値からモ
リブデンとリンの重量比(Mo/P)を求めた。
法]リンおよびモリブデンの付着量は市販の蛍光X線分
析装置にて定量した。すなわち、リンの付着量が既知で
その量が異なる複数個のサンプルについてそれぞれの特
性X線強度を測定し、強度−付着量の検量線をあらかじ
め作成しておき、当該実施例に係わるりん酸鉄系の皮膜
を形成させた軸受部材を適当なサイズに切り出した試料
について同様の条件で特性X線強度を測定し、測定強度
をあらかじめ作成した検量線に基づてリン付着量に換算
することによって付着量を求めた。モリブデン付着量に
ついても同様の要領によって定量し、これらの値からモ
リブデンとリンの重量比(Mo/P)を求めた。
【0030】[リン酸鉄系皮膜の形成方法]当該実施例
においては、高炭素クロム軸受鋼としてJIS G 4
805に規定される市販のSUJ2鋼を用いて製造した
スラストころ軸受(図1参照)、および深溝玉軸受(図
2参照)の各部品の少なくともいずれかに、下記条件に
よってそれぞれ皮膜を形成させた。なお、これらの試料
部品は、皮膜処理に先立って、予め60℃に加温した市
販のアルカリ脱脂剤(日本ハ゜ーカーライシ゛ンク゛社製 ファイン
クリーナー4360(登録商標))の2%水溶液中に5
分間浸漬したのち、十分に水洗して表面を清浄化したも
のを用いた。また、リン酸鉄系皮膜処理がなされた後に
も、十分に水洗して未反応の付着処理溶液を洗浄したの
ち、温度100℃に設定された熱風乾燥炉にて15分間
乾燥した。
においては、高炭素クロム軸受鋼としてJIS G 4
805に規定される市販のSUJ2鋼を用いて製造した
スラストころ軸受(図1参照)、および深溝玉軸受(図
2参照)の各部品の少なくともいずれかに、下記条件に
よってそれぞれ皮膜を形成させた。なお、これらの試料
部品は、皮膜処理に先立って、予め60℃に加温した市
販のアルカリ脱脂剤(日本ハ゜ーカーライシ゛ンク゛社製 ファイン
クリーナー4360(登録商標))の2%水溶液中に5
分間浸漬したのち、十分に水洗して表面を清浄化したも
のを用いた。また、リン酸鉄系皮膜処理がなされた後に
も、十分に水洗して未反応の付着処理溶液を洗浄したの
ち、温度100℃に設定された熱風乾燥炉にて15分間
乾燥した。
【0031】〈スラストころ軸受試験1〉燃料ポンプ用
のころ軸受を想定して、図1に示したタイプのスラスト
ころ軸受B(NSK製FNTA−2542C)のころ
(12本)のみ、あるいはころと軌道輪に、下記に示す
条件によって、それぞれりん酸皮膜処理を施した実施例
1ないし7の軸受について、図に示すようなスラスト試
験機を用い、エンジンオイル中に水分を加えて、約10
00ppmの水分を含む潤滑油L1を調整し、その中で
転動疲労試験を行い、軸受部品にりん酸鉄系皮膜処理を
施さない比較例の場合と比較した。なお、転動疲労寿命
は、振動センサーにて振動を検知し、転動体(ころ)が
フレーキングに到るまでの試験時間を寿命とした。この
結果を表1に示す。なお、剥離はすべて転動体(ころ)
に発生していた。
のころ軸受を想定して、図1に示したタイプのスラスト
ころ軸受B(NSK製FNTA−2542C)のころ
(12本)のみ、あるいはころと軌道輪に、下記に示す
条件によって、それぞれりん酸皮膜処理を施した実施例
1ないし7の軸受について、図に示すようなスラスト試
験機を用い、エンジンオイル中に水分を加えて、約10
00ppmの水分を含む潤滑油L1を調整し、その中で
転動疲労試験を行い、軸受部品にりん酸鉄系皮膜処理を
施さない比較例の場合と比較した。なお、転動疲労寿命
は、振動センサーにて振動を検知し、転動体(ころ)が
フレーキングに到るまでの試験時間を寿命とした。この
結果を表1に示す。なお、剥離はすべて転動体(ころ)
に発生していた。
【0032】また、転動疲労試験後の軸受から転動部を
切り出し、代表的な長寿命のものと短寿命のものにおけ
る鋼中の拡散性水素量を測定し、未使用の新品と比較し
た結果を表2に示す。なお、拡散性水素の測定について
は、昇温脱離ガス分析装置(日本真空技術(株)製UP
M−ST−200R型)を用い、加熱温度400℃以下
にて放出された水素量を拡散性水素量とした。
切り出し、代表的な長寿命のものと短寿命のものにおけ
る鋼中の拡散性水素量を測定し、未使用の新品と比較し
た結果を表2に示す。なお、拡散性水素の測定について
は、昇温脱離ガス分析装置(日本真空技術(株)製UP
M−ST−200R型)を用い、加熱温度400℃以下
にて放出された水素量を拡散性水素量とした。
【0033】(実施例1)pHが3.8となるように苛
性ソーダを添加した3%のリン酸水溶液を50℃に加温
し、その中に転動体(ころ)を3分間浸漬して、リン酸
鉄系の皮膜を形成させた。
性ソーダを添加した3%のリン酸水溶液を50℃に加温
し、その中に転動体(ころ)を3分間浸漬して、リン酸
鉄系の皮膜を形成させた。
【0034】(実施例2)市販の表面処理剤(日本パー
カライジング(株)製 パルホス1077(登録商標)
建浴剤)の8%水溶液を50℃に加温し、その中に転動
体(ころ)を1分間浸漬して、リン酸鉄系の皮膜を形成
させた。
カライジング(株)製 パルホス1077(登録商標)
建浴剤)の8%水溶液を50℃に加温し、その中に転動
体(ころ)を1分間浸漬して、リン酸鉄系の皮膜を形成
させた。
【0035】(実施例3)市販の上記表面処理剤(日本
パーカライジング(株)製 パルホス1077(登録商
標)建浴剤)の8%水溶液を50℃に加温し、その中に
転動体(ころ)を3分間浸漬して、リン酸鉄系の皮膜を
形成させた。
パーカライジング(株)製 パルホス1077(登録商
標)建浴剤)の8%水溶液を50℃に加温し、その中に
転動体(ころ)を3分間浸漬して、リン酸鉄系の皮膜を
形成させた。
【0036】(実施例4)市販の表面処理剤(日本パー
カライジング(株)製 パルホス3480(登録商標)
建浴剤)の12%水溶液を65℃に加温し、そこへ転動
体(ころ)を10分間浸漬して、モリブデン酸化物を複
合添加したリン酸鉄系の皮膜を形成させた。
カライジング(株)製 パルホス3480(登録商標)
建浴剤)の12%水溶液を65℃に加温し、そこへ転動
体(ころ)を10分間浸漬して、モリブデン酸化物を複
合添加したリン酸鉄系の皮膜を形成させた。
【0037】(実施例5)市販の表面処理剤(日本パー
カライジング(株)製 パルホス3480(登録商標)
建浴剤)の24%水溶液を65℃に加温し、その中に転
動体(ころ)を10分間浸漬して、モリブデン酸化物を
複合添加したリン酸鉄系の皮膜を形成させた。
カライジング(株)製 パルホス3480(登録商標)
建浴剤)の24%水溶液を65℃に加温し、その中に転
動体(ころ)を10分間浸漬して、モリブデン酸化物を
複合添加したリン酸鉄系の皮膜を形成させた。
【0038】(実施例6)市販の表面処理剤(日本パー
カライジング(株)製 パルホス3480(登録商標)
建浴剤)の24%水溶液を65℃に加温し、そこへ転動
体(ころ)と軌道輪とを10分間浸漬して、モリブデン
酸化物を複合添加したリン酸鉄系の皮膜を形成させた。
カライジング(株)製 パルホス3480(登録商標)
建浴剤)の24%水溶液を65℃に加温し、そこへ転動
体(ころ)と軌道輪とを10分間浸漬して、モリブデン
酸化物を複合添加したリン酸鉄系の皮膜を形成させた。
【0039】(実施例7)市販の表面処理剤(日本パー
カライジング(株)製 パルホス3480(登録商標)
建浴剤)の24%水溶液に、さらに燐酸を1.5g/L
添加した水溶液を65℃に加温し、そこへ転動体(こ
ろ)を10分間浸漬して、モリブデン酸化物を複合添加
したリン酸鉄系の皮膜を形成させた。
カライジング(株)製 パルホス3480(登録商標)
建浴剤)の24%水溶液に、さらに燐酸を1.5g/L
添加した水溶液を65℃に加温し、そこへ転動体(こ
ろ)を10分間浸漬して、モリブデン酸化物を複合添加
したリン酸鉄系の皮膜を形成させた。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】〈深溝玉軸受試験〉図2に示す深溝玉軸受
(6303タイプ)を使用するオルタネーター実機を用
い、当該軸受の外輪のみ、あるいは外輪,内輪,玉(転
動体)に、下記に示す条件によってそれぞれりん酸皮膜
処理を施した実施例8ないし9の軸受について、図3に
示すようなベンチ急加減速試験を行った。軸荷重約1.
8kNでプーリー回転数を数秒間で2000rpm→1
4000rpm→2000rpmというように急加減速
を繰返しながら評価した。また、転動疲労寿命は、振動
センサーにて振動を検知し、フロント側軸受の内輪また
は外輪のベアリング溝部がフレーキングに至るまでの試
験時間を寿命とした。この結果を表3に示す。なお、剥
離はすべて外輪に発生していた。
(6303タイプ)を使用するオルタネーター実機を用
い、当該軸受の外輪のみ、あるいは外輪,内輪,玉(転
動体)に、下記に示す条件によってそれぞれりん酸皮膜
処理を施した実施例8ないし9の軸受について、図3に
示すようなベンチ急加減速試験を行った。軸荷重約1.
8kNでプーリー回転数を数秒間で2000rpm→1
4000rpm→2000rpmというように急加減速
を繰返しながら評価した。また、転動疲労寿命は、振動
センサーにて振動を検知し、フロント側軸受の内輪また
は外輪のベアリング溝部がフレーキングに至るまでの試
験時間を寿命とした。この結果を表3に示す。なお、剥
離はすべて外輪に発生していた。
【0043】また、転動疲労試験後の軸受から転動部を
切り出し、上記と同様に、代表的な長寿命のものと短寿
命のものにおける鋼中の拡散性水素量を測定し、未使用
の新品と比較した結果を表4に示す。
切り出し、上記と同様に、代表的な長寿命のものと短寿
命のものにおける鋼中の拡散性水素量を測定し、未使用
の新品と比較した結果を表4に示す。
【0044】(実施例8)市販の表面処理剤(日本パー
カライジング(株)製 パルホス1077(登録商標)
建浴剤)の8%水溶液を50℃に加温し、その中に外輪
を3分間浸漬して、リン酸鉄系の皮膜を形成させた。
カライジング(株)製 パルホス1077(登録商標)
建浴剤)の8%水溶液を50℃に加温し、その中に外輪
を3分間浸漬して、リン酸鉄系の皮膜を形成させた。
【0045】(実施例9)市販の表面処理剤(日本パー
カライジング(株)製 パルホス3480(登録商標)
建浴剤)の24%水溶液を65℃に加温し、そこへ外輪
を10分間浸漬して、モリブデン酸化物を複合添加した
リン酸鉄系の皮膜を形成させた。
カライジング(株)製 パルホス3480(登録商標)
建浴剤)の24%水溶液を65℃に加温し、そこへ外輪
を10分間浸漬して、モリブデン酸化物を複合添加した
リン酸鉄系の皮膜を形成させた。
【0046】(実施例10)市販の表面処理剤(日本パ
ーカライジング(株)製 パルホス3480(登録商
標)建浴剤)の24%水溶液を65℃に加温し、そこへ
外輪、内輪、玉(転動体)を10分間浸漬して、モリブ
デン酸化物を複合添加したリン酸鉄系の皮膜を形成させ
た。
ーカライジング(株)製 パルホス3480(登録商
標)建浴剤)の24%水溶液を65℃に加温し、そこへ
外輪、内輪、玉(転動体)を10分間浸漬して、モリブ
デン酸化物を複合添加したリン酸鉄系の皮膜を形成させ
た。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】〈スラストころ軸受試験2〉コンプレッサ
ー用ころ軸受を想定して、図1に示したタイプのスラス
トころ軸受B(NSK製FNTA−2542C)のころ
(12本)のみ、あるいはころと軌道輪に、下記に示す
条件によって、それぞれりん酸皮膜処理を施した実施例
11ないし13の軸受について、図に示すようなスラス
ト試験機を用いて、白灯油97%に、潤滑剤としてポリ
アルキレングリコール(PGA)3%を配合した潤滑混
合液L2を作成し、その中で転動疲労試験を行った。ま
た、転動疲労寿命は、同様に振動センサーにて振動を検
知し、転動体(ころ)がフレーキングに至るまでの試験
時間を寿命とした。この結果を表5に示す。なお、剥離
はすべて転動体(ころ)に発生していた。
ー用ころ軸受を想定して、図1に示したタイプのスラス
トころ軸受B(NSK製FNTA−2542C)のころ
(12本)のみ、あるいはころと軌道輪に、下記に示す
条件によって、それぞれりん酸皮膜処理を施した実施例
11ないし13の軸受について、図に示すようなスラス
ト試験機を用いて、白灯油97%に、潤滑剤としてポリ
アルキレングリコール(PGA)3%を配合した潤滑混
合液L2を作成し、その中で転動疲労試験を行った。ま
た、転動疲労寿命は、同様に振動センサーにて振動を検
知し、転動体(ころ)がフレーキングに至るまでの試験
時間を寿命とした。この結果を表5に示す。なお、剥離
はすべて転動体(ころ)に発生していた。
【0050】また、上記と同様に、転動疲労試験後の軸
受から転動部を切り出し、鋼中の拡散性水素量を測定し
た結果を表6に示す。
受から転動部を切り出し、鋼中の拡散性水素量を測定し
た結果を表6に示す。
【0051】(実施例11)市販の表面処理剤(日本パ
ーカライジング(株)製 パルホス1077(登録商
標)建浴剤)の8%水溶液を50℃に加温し、その中に
転動体(ころ)を3分間浸漬して、リン酸鉄系の皮膜を
形成させた。
ーカライジング(株)製 パルホス1077(登録商
標)建浴剤)の8%水溶液を50℃に加温し、その中に
転動体(ころ)を3分間浸漬して、リン酸鉄系の皮膜を
形成させた。
【0052】(実施例12)市販の表面処理剤(日本パ
ーカライジング(株)製 パルホス3480(登録商
標)建浴剤)の24%水溶液を65℃に加温し、その中
に転動体(ころ)を10分間浸漬して、モリブデン酸化
物を複合添加したリン酸鉄系の皮膜を形成させた。
ーカライジング(株)製 パルホス3480(登録商
標)建浴剤)の24%水溶液を65℃に加温し、その中
に転動体(ころ)を10分間浸漬して、モリブデン酸化
物を複合添加したリン酸鉄系の皮膜を形成させた。
【0053】(実施例13)市販の表面処理剤(日本パ
ーカライジング(株)製 パルホス3480(登録商
標)建浴剤)の24%水溶液を65℃に加温し、その中
に転動体(ころ)と軌道輪とを10分間浸漬して、モリ
ブデン酸化物を複合添加したリン酸鉄系の皮膜を形成さ
せた。
ーカライジング(株)製 パルホス3480(登録商
標)建浴剤)の24%水溶液を65℃に加温し、その中
に転動体(ころ)と軌道輪とを10分間浸漬して、モリ
ブデン酸化物を複合添加したリン酸鉄系の皮膜を形成さ
せた。
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】図4および図5は、深溝玉軸受試験終了後
の外輪に発生した剥離部近傍の転がり方向断面の組織写
真を示すものである。すなわち、図4は長寿命の試料に
観察される組織を示すものであって、内部でやや黒く腐
食される組織が確認されるだけで白色組織は存在しな
い。一方、短寿命の試料には、図5に示すように、いび
つな形態の白色組織が観察された。これら2種類の組織
変化はスラストころ軸受の剥離部近傍にも同様の傾向が
確認された。表1および3には、転動疲労試験結果と併
せて、黒く腐食される組織の場合をDEC、いびつな白
色組織の場合を水素脆性型として組織変化形態を示して
いる。
の外輪に発生した剥離部近傍の転がり方向断面の組織写
真を示すものである。すなわち、図4は長寿命の試料に
観察される組織を示すものであって、内部でやや黒く腐
食される組織が確認されるだけで白色組織は存在しな
い。一方、短寿命の試料には、図5に示すように、いび
つな形態の白色組織が観察された。これら2種類の組織
変化はスラストころ軸受の剥離部近傍にも同様の傾向が
確認された。表1および3には、転動疲労試験結果と併
せて、黒く腐食される組織の場合をDEC、いびつな白
色組織の場合を水素脆性型として組織変化形態を示して
いる。
【0057】また、表2、4、6の結果から、短寿命で
フレーキングを生じた場合、長寿命品に比べて、水素侵
入量が多いことがわかる。このことから、いびつな形態
の白色組織を伴う短寿命剥離は侵入水素に起因する水素
脆性的な剥離形態であるといえる。つまりは新生面生成
を抑制することで、オイルまたは油中水分等の分解によ
り発生する水素を抑制することによって組織変化形態が
水素脆性型からDEC型にシフトし、長寿命化するもの
とが考えられる。
フレーキングを生じた場合、長寿命品に比べて、水素侵
入量が多いことがわかる。このことから、いびつな形態
の白色組織を伴う短寿命剥離は侵入水素に起因する水素
脆性的な剥離形態であるといえる。つまりは新生面生成
を抑制することで、オイルまたは油中水分等の分解によ
り発生する水素を抑制することによって組織変化形態が
水素脆性型からDEC型にシフトし、長寿命化するもの
とが考えられる。
【図1】スラストころ軸受およびこれを用いたスラスト
型疲労試験装置の概要を示す断面図である。
型疲労試験装置の概要を示す断面図である。
【図2】深溝玉軸受の構造を示す断面説明図である。
【図3】オルタネーター実機を用いたベンチ急加減速試
験装置の概要を示す説明図である。
験装置の概要を示す説明図である。
【図4】深溝玉軸受の外輪に発生した剥離部近傍におけ
るDEC型組織変化形態を示す組織写真である。
るDEC型組織変化形態を示す組織写真である。
【図5】深溝玉軸受の外輪に発生した剥離部近傍におけ
る水素脆性型組織変化形態を示す組織写真である。
る水素脆性型組織変化形態を示す組織写真である。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 藤脇 健史
東京都中央区日本橋1丁目15番1号 日本
パーカライジング株式会社内
(72)発明者 木野 伸郎
神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産
自動車株式会社内
(72)発明者 尾谷 敬造
神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産
自動車株式会社内
Fターム(参考) 3H022 AA01 BA06 CA12 CA51 DA13
3J101 AA03 AA32 AA42 AA62 BA01
BA51 EA78 FA31 GA21
Claims (6)
- 【請求項1】 エンジン駆動補機に用いられ、オイル潤
滑、グリース潤滑あるいは、冷媒としてのHFC(ヒド
ロフルオロカーボン類)と該HFCに可溶な潤滑剤との
混合潤滑下で使用される転がり軸受において、転動体お
よび該転動体に潤滑剤を介して当接する部材の少なくと
もいずれかの表面に、転動中の炭化水素の分解を抑え水
素の発生を抑制するりん酸鉄系の皮膜が形成されている
ことを特徴とするエンジン駆動補機用転がり軸受。 - 【請求項2】 エンジン駆動補機が、燃料ポンプ、オル
タネーター、アイドラプーリ、電磁クラッチまたはエア
コンのコンプレッサーであることを特徴とする請求項1
記載のエンジン駆動補機用転がり軸受。 - 【請求項3】 りん酸鉄系皮膜の皮膜付着量が、りんに
換算して100〜300mg/m2であることを特徴と
する請求項1または請求項2記載のエンジン駆動補機用
転がり軸受。 - 【請求項4】 りん酸鉄系皮膜にモリブデン酸化物が複
合添加されていることを特徴とする請求項1〜3のいず
れかに記載のエンジン駆動補機用転がり軸受。 - 【請求項5】 りん酸鉄系皮膜に添加されたモリブデン
酸化物の付着量がモリブデンに換算して10〜60mg
/m2であることを特徴とする請求項4記載のエンジン
駆動補機用転がり軸受。 - 【請求項6】 りん酸鉄系皮膜中におけるモリブデンと
りんの重量比(Mo/P)が0.3以下であることを特
徴とする請求項4または請求項5記載のエンジン駆動補
機用転がり軸受
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001298228A JP2003097560A (ja) | 2001-09-27 | 2001-09-27 | エンジン駆動補機用転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001298228A JP2003097560A (ja) | 2001-09-27 | 2001-09-27 | エンジン駆動補機用転がり軸受 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003097560A true JP2003097560A (ja) | 2003-04-03 |
Family
ID=19119158
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001298228A Pending JP2003097560A (ja) | 2001-09-27 | 2001-09-27 | エンジン駆動補機用転がり軸受 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003097560A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113483016A (zh) * | 2021-07-22 | 2021-10-08 | 浙江清华柔性电子技术研究院 | 一种智能轴承 |
-
2001
- 2001-09-27 JP JP2001298228A patent/JP2003097560A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113483016A (zh) * | 2021-07-22 | 2021-10-08 | 浙江清华柔性电子技术研究院 | 一种智能轴承 |
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