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JP2003073146A - 防曇鏡およびその製造方法 - Google Patents

防曇鏡およびその製造方法

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Publication number
JP2003073146A
JP2003073146A JP2001267370A JP2001267370A JP2003073146A JP 2003073146 A JP2003073146 A JP 2003073146A JP 2001267370 A JP2001267370 A JP 2001267370A JP 2001267370 A JP2001267370 A JP 2001267370A JP 2003073146 A JP2003073146 A JP 2003073146A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
mirror
metal oxide
fog
forming
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001267370A
Other languages
English (en)
Inventor
Seiji Yamazaki
誠司 山崎
Takayuki Ogawa
小川  貴之
Yasuo Moriguchi
泰夫 森口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Central Glass Co Ltd
Original Assignee
Central Glass Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Central Glass Co Ltd filed Critical Central Glass Co Ltd
Priority to JP2001267370A priority Critical patent/JP2003073146A/ja
Publication of JP2003073146A publication Critical patent/JP2003073146A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 透明性及び耐汚染性に優れた防曇鏡を得るこ
と 。 【解決手段】 透明基材の裏面に鏡面加工が施された鏡
の表面に、少なくともシリカ及びジルコニアよりなるマ
トリックス形成用金属酸化物中に平均粒子径が30〜6
0nmである表面に水酸基を有するコロイダルシリカ等
の金属酸化物微粒子及びノニオン系界面活性剤が添加さ
れてなる防曇膜を被覆し、膜表面の凹凸組織との相乗効
果により水膜を形成し長期に亘り優れた保水性を有する
ようにすること。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鏡の表面に水膜タ
イプの防曇膜が形成されてなる透明性および耐汚染性に
優れた防曇鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、基材に親水性、防曇性または防汚
性を付与するために基材の表面に光触媒機能を有する被
膜を形成することが行われている。例えば、特開平5ー
253544号公報に記載のアナターゼ型チタニアを主
体とする光触媒微粉末をその一部がバインダ層表面から
露出するようにした板状部材、特開平7−232080
号公報に記載の光触媒微粒子がチタニア、酸化亜鉛、チ
タン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化タングステン、チ
タン酸鉄、酸化ビスマス、酸化錫等であり、光触媒粒子
の間隙充填粒子が錫、チタン、銀、銅、亜鉛、鉄、白
金、コバルト、ニッケルの金属または酸化物である光触
媒機能を有する多機能材、特開平9−59042号公報
記載の光触媒性の平均結晶粒子径が約0.1μm以下の
チタニアの粒子を含有する親水性被膜で覆われた透明基
材等が知られている。
【0003】また従来より、界面活性剤を基材表面に塗
布することで表面を親水性に改質することは古くから知
られており、界面活性剤にポリアクリル酸やポリビニル
アルコールなどの水溶性有機高分子を添加・配合するこ
とで、親水性の持続性を上げることが、例えば、特開昭
52−101680号公報等で知られている。
【0004】さらに、疎水性ポリマーよりなる多孔質膜
の表面および内部にポリビニルアルコールと酢酸ビニル
の共重合体の被膜を介して、セルロースやグリコール類
およびグリセリンなどの親水性ポリマーを被膜固定化す
る方法が、例えば、特公平5ー67330号公報等で知
られている。
【0005】また、物理的方法として、プラズマ処理、
レーザー照射処理などの親水化処理が、さらに化学的方
法として、表面にラジカルを発生させ親水性の残基を有
する重合性化合物をグラフト重合させる方法や、酸、塩
基性物質などの表面の結合を切断し、親水性の残基に変
化させる方法などが知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、光触媒
膜においては、紫外線が当たることが必須であり、紫外
線が当たらない浴室においては、親水性および防曇性を
発現することは極めて困難であり、そのために浴室用鏡
に紫外線が当たるように新たに光源を設置する必要があ
る。また、紫外線が当たって一旦親水性および防曇性と
なった表面であっても、その性能を維持できるのは短時
間であり、数時間後には失われてしまう。従って、頻繁
に紫外線を照射するなどの操作が必要となる。さらに、
光触媒膜を基材に被覆した場合、光触媒機能を発現する
チタニアは高屈折率膜であるために反射率が高くなった
り着色し、特に、鏡においては裏面側に鏡面処理が施さ
れているため二重像が発生し、鏡としての本来の機能を
損なったり、意匠性を損なう場合もある。
【0007】また、物理的な処理による防曇性も短期的
にしか効果を維持することができず、またポリエチレン
オキシド系有機ポリマー膜では、耐水性や機械的強度が
低いために用途によっては実用上十分なものとは言えな
い。
【0008】さらに、前記多孔質膜の表面および内部に
ポリビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体の被膜を
介してセルロースなどの被膜を固定化する方法において
も、被膜は極めて柔らかいものであり、しかも化学的耐
久性も期待でき難いものであり、使用する用途が限定さ
れる。
【0009】以上、これらの方法は、いずれの方法も一
時的もしくは比較的短時間の間だけ防曇性を付与するも
ので、防曇効果の十分な持続性は期待し難いばかりでな
く、またコスト高となり実用化においては採用が困難な
ものであった。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来のこのよ
うな事情に鑑みてなされたものであって、紫外線が不要
なマトリックス形成用の金属酸化物と特定の粒径を有す
る表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子を均一に分散
させた防曇膜を鏡の表面に被覆し、該膜表面の凹凸組織
との相乗効果により優れた保水性が付与され、透明性及
び汚染耐性に優れた防曇鏡およびその製造方法を提供す
るものである。
【0011】すなわち、本発明の防曇鏡は、透明基材の
裏面に鏡面加工が施された鏡の表面に、少なくともシリ
カ及びジルコニアよりなるマトリックス形成用金属酸化
物中に平均粒子径が30〜60nmである表面に水酸基
を有する金属酸化物微粒子及びノニオン系界面活性剤が
添加されてなる防曇膜が被覆されてなることを特徴とす
る。
【0012】また、本発明の防曇鏡は、防曇膜は、表面
に水酸基を有する金属酸化物微粒子の含有量が40〜6
0重量%、マトリックス形成用金属酸化物の含有量が4
0〜60重量%であることを特徴とし、さらに、マトリ
ックス形成用金属酸化物は、シリカとジルコニアよりな
り、その含有比(重量%換算)は、SiO2:ZrO2
15:25〜25:35であることを特徴とする。
【0013】さらに、本発明の防曇鏡は、マトリックス
形成用成分としてのシリカの原料は、一般式:R4Si
(Rは炭素数1〜2のアルコキシ基)で表されるアルコ
キシシランを用いることを特徴とする。
【0014】またさらに、本発明の防曇鏡は、表面に水
酸基を有する金属酸化物微粒子は、コロイダルシリカお
よび/またはコロイダルアルミナであることを特徴とす
る。
【0015】さらにまた、本発明の防曇鏡は、防曇膜は
表面の中心線平均粗さ(Ra)が1〜50nmおよび曇
価(ヘイズ値)が1%以下であることを特徴とする。
【0016】また、本発明の防曇鏡の製造方法は、下記
の工程により防曇鏡を製造することを特徴とする。 (a)透明基材の裏面に鏡面加工を施し鏡を製造する工
程と、(b)平均粒子径が30〜60nmである表面に
水酸基を有する金属酸化物微粒子、マトリックス形成用
金属酸化物原料、ノニオン系界面活性剤および溶媒とを
均一に混合した塗布液を調製する工程と、(c)前記塗
布液を鏡の表面に塗布し成膜する工程と、(d)成膜後
に乾燥し、鏡の表面に水膜タイプの防曇膜を被覆する工
程。
【0017】さらに、前記塗布液中のノニオン系界面活
性剤の含有量が0.01〜1重量%であることを特徴と
する請求項7記載の防曇鏡。
【0018】さらに、本発明の防曇鏡の製造方法は、成
膜後の乾燥は、100℃〜200℃の温度で加熱乾燥す
ることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の防曇鏡は、透明基材の裏
面に鏡面加工が施された鏡の表面に、少なくともシリカ
及びジルコニアよりなるマトリックス形成用金属酸化物
中に平均粒子径が30〜60nmである表面に水酸基を
有する金属酸化物微粒子及びノニオン系界面活性剤が添
加されてなる防曇膜が被覆されてなることを特徴とす
る。
【0020】前記マトリックス形成用金属酸化物成分と
しての一つであるシリカの主な原料としては、金属アル
コキド類では、シリカアルコキシド類として、テトラエ
トキシシラン、テトラメトキシシラン、モノメチルトリ
エトキシシラン、モノメチルトリメトキシシラン、ジメ
チルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、そ
の他のテトラアルコキシシラン化合物、その他のアルキ
ルアルコキシシラン化合物等を用いることができ、特
に、一般式:R4Si(Rは炭素数1〜2のアルコキシ
基)で表わされるアルコキシシランの加水分解物を用い
ると、親水維持性が良好となるのでより好ましい。
【0021】また、マトリックス形成用金属酸化物とし
ての他方の成分であるZrO2の原料としては、耐久
性、特に耐摩耗性と耐酸性および耐アルカリ性の点よ
り、Zrの塩化物または硝酸塩を用いることが好まし
く、例えば、Zrの塩化物としては、塩化ジルコニウム
やオキシ塩化ジルコニウム(8水和物)や、塩素含有ジ
ルコニウムアルコキシドZr(OCm2m+1xCl
y(m、x、y:整数、x+y=4)などが使用でき、
Zrの硝酸塩としては、オキシ硝酸ジルコニウム(2水
和物)などが使用でき、また、アルコキシド類では、ジ
ルコニウムブトキシド、ジルコニアアセテート類では、
ジルコニウムアセチルアセトナート等の有機金属化合物
を用いることができる。
【0022】上記金属アルコキシドの原料は、無機強酸
もしくは有機強酸を触媒として水と混合し、加水分解・
重縮合させることにより水溶性加水分解物が得られる。
なお、加水分解を行ううえで、反応液中のSiO2濃度
を高く、触媒添加量を多くするほど加水分解が短時間に
進行する。但し、短時間で加水分解させてものは、Si
2濃度が高いままでは、短時間にゲル化しやすいた
め、水でSiO2濃度を5重量%程度に希釈することに
より1週間以上安定させることが可能となる。
【0023】前記マトリックス形成用金属酸化物として
の金属酸化物膜中におけるシリカとジルコニアの含有比
(重量%換算)は、SiO2:ZrO2=15:25〜2
5:35が好ましく、SiO2が5重量%未満である場
合は、機械的強度および耐酸性が低下し、ZrO2が1
5重量%未満である場合は、耐アルカリ性、耐温水性が
低下するので好ましくない。
【0024】また、表面に水酸基を有する金属酸化物微
粒子としては、特にその種類を限定するものではない
が、その平均粒子径が30〜60nmであることが必要
であり、その内コロイダルシリカ及び/又はコロイダル
アルミナが好ましい。コロイダルシリカとしては、水溶
性でナトリウムやアンモニウム等の1価の陽イオンで安
定化したものが好ましく、例えば、市販品としては、ス
ノーテックス(日産化学製)、ルドックス(デュポン社
製)、カタロイド(触媒化成製)等を用いることができ
る。また、コロイダルアルミナの場合もコロイダルシリ
カと同様に、ナトリウムやアンモニウム等の1価の陽イ
オンで安定化したもので、例えば、市販品としては、ア
ルミナクリアゾル(川研ファインケミカル製)等を用い
ることができる。
【0025】なお、前記金属酸化物微粒子の平均粒子径
は30〜60nmの範囲とする必要があるが、30nm
未満では、浴室内におけるシャンプー、リンス、石鹸水
などの汚染物が繰り返し膜表面に付着すると、膜表面の
水膜形成能が著しく低下し汚染耐性が悪化する。一方、
60nmを超えると膜の曇価(ヘイズ値)が大きくな
り、本来鏡が持っている品質が損なわれてしまうので好
ましくなく、40〜50nmの範囲の粒径がより好まし
い。
【0026】また、金属酸化物膜中の前記金属酸化物微
粒子の含有量は、40〜60重量%が好ましい。40重
量%未満では、被膜表面の水膜形成能が十分とはなら
ず、実使用において防曇鏡の効果を十分に発揮できるも
のとはならず、60重量%を超えると、マトリックス形
成用金属酸化物の含有割合が少なくなるため、基材表面
との密着性および機械的、化学的耐久性が低下する。な
お、より好ましくは40〜50重量%である。
【0027】防曇膜中に添加するノニアオン系界面活性
剤としては、特に限定するものではないが、累積原子団
としてポリオキシエチレン単位を有するアルキルエーテ
ル型、アルキルアリルエーテル型などのエーテル型、ア
ルキルエステル型、ソルビタンモノアルキルアミン型な
どのエステル型、ポリオキシエチレンアルキルアマイド
などのアミンとの縮合型、ポリオキシエチレンアルキル
アマイドなどのアミドとの縮合型、ポリオキシエチレン
ポリオキシプロピレンなどのポリオキシプロピレンとの
縮合型、その他としてポリエチレンイミン系などのもの
を挙げることができる。 また、累積原子団を持たない
ものとしては、ソルビタンアルキルエステルなどのエス
テル型、各種グリセリンもの脂肪酸エステル、ペンタエ
リスリットエステル、サッカロースエステルなどのその
他の多価アルコールと脂肪酸とのエステル、脂肪酸エタ
ノールアミド、メチロールアミド、オキシメチルエタノ
ールアミド、脂肪酸エタノールアミド誘導体などのアミ
ド型、高級アルコール、グルコシド、高級アルキルエー
テルなどのものが挙げられる。
【0028】ノニアオン系界面活性剤の添加量は、塗布
液中に重量%として0.01〜1重量%添加することが
好ましい。0.01重量%未満では、吸水性金属酸化物
微粒子が凝集し金属酸化物膜中に均一に分散されずに汚
染耐性が不充分となり、一方1重量%を超えると耐薬品
性など化学的耐久性が低下する。なお、塗布液中の添加
量は、0.05〜0.5重量%がより好ましい。
【0029】上記の塗布液を調整する際に、水、希釈溶
媒、グリコール類を加えて成膜方法により固形分濃度を
調整し、必要であればレベリング剤等の各種添加剤の添
加することもできる。なお、塗布液中の全固形分濃度は
1〜10重量%とするのが均一な塗布膜を形成する上で
好ましい。
【0030】希釈溶媒としては、アルコ−ル系溶媒が好
ましく、具体例としては、メタノ−ル、エタノ−ル、プ
ロパノ−ル、ブタノ−ル、エチレングリコ−ル、プロピ
レングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリ
コール、ヘキシレングリコ−ル、さらには酢酸エチル、
酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル類、さらにはメ
チルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ
などのセロソルブ類及びこれらを混合した溶媒で、レベ
リング剤としてジメチルシリコーンなどのメチルシリコ
ーン類やフッ素系レベリング剤を適量加えても良い。本
来溶液中に含まれるアルコ−ル系やセロソルブ系のもの
単独または混合物を、該溶液の蒸発速度や被膜粘度を勘
案して選択すればよい。
【0031】塗布法としては、特に限定されるものでは
ないが、生産性などの面からは、例えば、スピンコート
法あるいはディップコ−ト法、リバ−スコ−ト法、フレ
キソ印刷法、スクリーン印刷法、バーコート法、その他
のロールコート法、カーテンコート法であり、さらには
ノズルコ−ト法、スプレーコ−ト法などの公知手段が採
用でき、適宜マスキングすることにより、部分的な成膜
はもちろん、任意の形状、図柄に被膜形成することがで
きる。なお、これらの塗布法で塗布成膜する際の塗布液
中の全固形分濃度としては約1〜10重量%程度、塗布
液粘度としては2〜6センチポイズ程度が好ましい。
【0032】塗布後の乾燥としては、100〜200℃
の比較的低温で、10〜30分間乾燥することが好まし
く、より好ましくは、前記乾燥温度が160〜180℃
程度、乾燥時間が20分間程度である。
【0033】なお、金属酸化物膜の膜厚は、特に限定さ
れるものではないが、10〜100nmの範囲が好まし
く、10nm未満では一旦水を濡らすと濡れた直後は映
像の歪みもなく防曇性は良好であるが、浴室の高湿度下
では膜の厚み方向での吸水性が小さいために、水膜の厚
みが不均一となり徐々に映像が歪み、鏡の機能としては
不十分なものとなる。100nm以下にすることで、光
の乱反射による白濁を防止することができ、干渉色、二
重像などの問題もない外観は一般鏡と何ら変わらないも
のとすることができる。
【0034】防曇膜の膜表面の中心線平均粗さ(Ra)
は、1〜50nmの範囲であることが好ましく、50n
m以上となると膜の曇価(ヘイズ値)が1%以上となっ
てしまう。なお、膜表面の中心線平均粗さRaは、15
〜30nmであることがより好ましい。
【0035】本発明に使用する基材としては、透明であ
れば特に限定するものではなく、ガラス、プラスチック
等を用いることができる。例えば、浴室用の鏡として
は、厚みが5.0mm程度のクリアのフロートガラスが
適当であるが、鏡の大きさ等により適宜選択して、使用
することができる。なお、浴室の環境条件は特に限定す
るものではないが、本発明の防曇性鏡の機能をより有効
に発揮するためには、室温10〜40℃、湿度70〜9
5%RHの環境が好ましく、基材が鏡である浴室用の防
曇鏡が特に好ましい。なお、防曇膜の形成は、透明基材
の裏面に鏡面処理が施された鏡の表面に行うことが好ま
しいが、場合によっては、基材表面に金属酸化物膜を形
成後、その反対面に鏡面を施すことは差し支えない。
【0036】
【作用】防曇性に係わる物性は、防曇膜の膜表面の水酸
基の量と表面から内部に渡る保水性および水膜を均一に
形成できる膜表面形状への依存性が極めて高い。つま
り、できるだけ多くの水を吸収または吸着し、この際に
均一な水膜を形成できれば、防曇効果を長時間持続する
ことが可能となる。本発明により、鏡表面に形成された
凹凸表面を有する防曇膜が、一旦水に濡れると長時間防
曇性を持続できるのは、膜組織中には吸水性物質である
表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子が多量に分散さ
れており、これらは表面に水酸基を持っているため水と
吸着しやすく、また保水性も同時に発揮される。この効
果と凹凸表面により、吸着した水は均一な水膜となり水
切れが起こりにくい。さらには、使用環境が高湿度下の
浴室である場合には膜表面に吸着した水は脱離しにくい
ものとなるため、一旦水に濡らすと長時間防曇性を発揮
できるとともに、二重像もなく非常に鮮明に見える。ま
た、膜表面が均一な水膜で覆われているために油類等の
汚れも付きにくく防汚性も付与される。
【0037】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。但し、本発明はかかる実施例に限定されるものでな
い。なお、本発明および比較例で得られた浴室用防曇鏡
は、以下に示す測定法により諸物性を測定した。 〔蒸気耐性評価〕:沸騰水蒸気に30分接触後、防曇性
を評価した。なお、合否判定は、接触部位を払拭後に金
属酸化物膜の剥離がないものを合格とした。 〔アルカリ耐性評価〕:5%−NaOH(aq)を含ん
だ布を金属酸化物膜に24時間接触させ、水洗後の外観
変化を評価した。なお、合否判定は、金属酸化物膜の剥
離がないものを合格とした。 〔汚染耐性評価〕:シャンプー、リンス、石鹸水などの
浴室内の汚染物を繰り返し金属酸化物膜表面に付着させ
る試験を行った後、表面の水膜形成能を評価した。な
お、合否判定は、汚染前と比較して水膜形成能に変化が
ないものを合格とした。 〔成膜性評価〕:親水性を有する金属酸化物膜の曇価が
1%以下であるものを合格とした。 〔膜表面の表面中心線平均粗さ(Ra)〕原子間力顕微
鏡を用いて、被膜の任意の箇所における2.5μm×
2.5μmの表面形状を測定することにより求め、表面
中心線平均粗さ(Ra)が50nm以下のものを合格と
した。 〔膜厚〕自動エリプソメーター〔溝尻光学工業所製 D
VA−FL3G〕で測定した。なお、下記の実施例の評
価結果を表1に、比較例の評価結果を表2に示すが、表
中の○印は合格、×印は不合格を示す。
【0038】実施例1 (1)塗布液の調整 メタノール分散コロイダルシリカ(商品名「MA−ST
−L」日産化学社製、SiO2の含有量:40.7重量
%、平均粒径:40〜50nm)、マトリックス形成用
のシリカゾルとしてケイ酸エチル(試薬:キシダ化学
製)と加水分解酸触媒であるオキシ塩化ジルコニウム
(試薬)を使用し、溶媒としてエキネンF−1(キシダ
化学製、主成分;エタノール:イソプロピルアルコール
=9:1)とメチルプロピレングリコール(キシダ化学
製)とイオン交換水の混合溶媒(重量%が、エキネンF
−1:メチルプロピレングリコール:イオン交換水=6
4:28:8)で希釈して、固形分濃度が3重量%とな
るように調製した。
【0039】なお、塗布液の調製は下記の手順により行
った。先ず、所定量の溶媒に、金属酸化物膜中における
シリカマトリックス:コロイダルシリカ=25:40重
量%となるようにケイ酸エチルと水分散コロイダルシリ
カとを混合・攪拌し、均一に分散し、金属酸化物膜中で
35重量%のジルコニアに相当するオキシ塩化ジルコニ
ウムを添加した後、0.04重量%のノニオン系界面活
性剤に相当するオルフィンST−G(日信化学社製)を
添加し、室温で攪拌して塗布液とした。
【0040】(2)浴室用防曇鏡の作製 透明ガラス基板の裏面に鏡面加工を施した鏡(厚さ5m
m)を6m/minの速度で搬送させ、リバースロール
コート法により該鏡の表面に前記で調整した塗布液を塗
布したのち、該鏡表面が180℃の温度になるように設
定した乾燥炉内で約20分間加熱乾燥させることによ
り、鏡表面に膜厚70〜80nmの透明な金属酸化物膜
が被覆された防曇鏡を作製した。なお、成膜された金属
酸化物膜の膜構成(重量%換算)は、SiO2:Zr
2:コロイダルシリカ=25:35:40であった。
なお、得られた膜は表面中心線平均粗さ(Ra)が30
nmで、曇価は0.4%であった。得られた防曇鏡を評
価した結果、表1に示すように、アルカリ耐性、蒸気耐
性、汚染耐性の何れにも優れていた。
【0041】
【表1】
【0042】実施例2 塗布液中のノニオン系界面活性剤の添加量を0.3重量
%とした以外は実施例1と同様に行った。評価の結果、
得られた膜の表面中心線平均粗さ(Ra)は28nm
で、曇価は0.6%であり、その他の特性についても表
1に示すように、アルカリ耐性、蒸気耐性、汚染耐性の
何れも優れていた。
【0043】実施例3 塗布液中のノニオン系界面活性剤の添加量を1.0重量
%とした以外は実施例1と同様に行った。評価の結果、
得られた膜の表面中心線平均粗さ(Ra)は33nm
で、曇価は0.8%であり、その他の特性についても表
1に示すように、アルカリ耐性、蒸気耐性、汚染耐性の
何れにも優れていた。
【0044】比較例1 塗布液中に界面活性剤を添加しない以外は実施例1と同
様に行った。得られた防曇鏡を評価した結果、得られた
膜の表面中心線平均粗さ(Ra)は14nmで、曇価は
1.3%であった。その他の特性については表2に示す
ように、アルカリ耐性、蒸気耐性および汚染耐性は合格
であったが、成膜性に劣っていた。
【0045】
【表2】
【0046】比較例2 塗布液中にアニオン系界面活性剤に相当するサーフィノ
ールCT−324(日信化学社製)の含有量を0.25
重量%とした以外は、実施例1と同様に行った。得られ
た防曇鏡を評価した結果、表2に示すように、汚染耐性
及び成膜性は合格であったが、アルカリ耐性及び蒸気耐
性に劣っていた。なお、表面中心線平均表面粗さ(R
a)は12nmであった。
【0047】比較例3 塗布液中に界面活性剤を添加せず、レベリング剤に相当
するS030(GERMAN ADDITIVES社
製)を0.01重量%添加した以外は、実施例1と同様
に行った。得られた防曇鏡を評価した結果、表2に示す
ように、成膜性は合格であったが、アルカリ耐性、蒸気
耐性および汚染耐性に劣っていた。
【0048】比較例4 塗布液中に界面活性剤を添加せず、レベリング剤に相当
するS030(GERMAN ADDITIVES社
製)を0.04重量%添加した以外は、実施例3と同様
に行った。得られた防曇鏡を評価した結果、表2に示す
ように、成膜性は合格であったが、汚染耐性、アルカリ
耐性及び蒸気耐性に劣っていた。
【0049】比較例5 (1)塗布液の調整 コロイダルシリカ用の原料として、粒径の大きいイソプ
ロピルアルコール分散コロイダルシリカ(商品名「IP
A−ST−ZL」日産化学製、SiO2の含有量:3
0.4重量%、平均粒径:70〜100nm)を用い、
さらに塗布溶液中に界面活性剤を添加しない以外は実施
例1と同様に行った。得られた防曇鏡を評価した結果、
表2に示すように、汚染耐性は優れていたが、アルカリ
耐性、成膜性及び蒸気耐性は不合格であった。
【0050】比較例6 コロイダルシリカ用の原料として、粒径の大きいイソプ
ロピルアルコール分散コロイダルシリカ(商品名「IP
A−ST−ZL」日産化学製、SiO2の含有量:3
0.4重量%、平均粒径:70〜100nm)を用い、
さらに塗布溶液中にアニオン系界面活性剤であるサーフ
ィノールCT−324を1.5重量%添加した以外は、
実施例3と同様に行った。得られた防曇鏡を評価した結
果、表2に示すように、汚染耐性及び成膜性は合格であ
ったが、アルカリ耐性及び蒸気耐性に劣っていた。
【0051】比較例7 」 コロイダルシリカを粒径の大きいもの(商品名「IPA
−ST−ZL」日産化学社製、重量%、平均粒径:70
〜100nm)を用いた以外は実施例1と同様に行っ
た。得られた防曇鏡を評価した結果、表2に示すよう
に、蒸気耐性、アルカリ耐性、は合格であったが、成膜
性に劣っていた。
【0052】
【発明の効果】本発明は、マトリックス形成用金属酸化
物中に平均粒子径が30〜60nmである表面に水酸基
を有する金属酸化物微粒子およびノニオン系の界面活性
剤が均一に添加されてなる防曇膜が鏡表面に形成された
防曇鏡であって、該防曇膜表面の中心線平均粗さ(R
a)が大きいために保水効果が高く汚染耐性に優れると
ともに、曇価が小さいために曇価が小さく透明性を損な
うことがないので、一旦水が濡れると該膜表面に水膜が
形成され、優れた保水性も付与されるため、例えば浴室
内の高い相対湿度の環境下での使用では、極めて防曇性
に優れる等の効果を有し、特に浴室用の防曇鏡として好
適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森口 泰夫 三重県松阪市大口町1510 セントラル硝子 株式会社硝子研究所内 Fターム(参考) 3B111 AA01 AC01 AC03 4G059 AA01 AC21 EA01 EA05 EA18 EB07 FA03 FA05 FB06

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明基材の裏面に鏡面加工が施された鏡の
    表面に、少なくともシリカ及びジルコニアよりなるマト
    リックス形成用金属酸化物中に平均粒子径が30〜60
    nmである表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子及び
    ノニオン系界面活性剤が添加されてなる防曇膜が被覆さ
    れてなることを特徴とする防曇鏡。
  2. 【請求項2】前記防曇膜は、表面に水酸基を有する金属
    酸化物微粒子の含有量が40〜60重量%、マトリック
    ス形成用金属酸化物の含有量が60〜40重量%である
    ことを特徴とする請求項1記載の防曇鏡。
  3. 【請求項3】マトリックス形成用金属酸化物は、シリカ
    とジルコニアよりなり、その含有比(重量%換算)は、
    SiO2:ZrO2=15:25〜25:35であること
    を特徴とする請求項1または2のいづれかに記載の防曇
    鏡。
  4. 【請求項4】マトリックス形成用成分としてのシリカの
    原料は、一般式:R4Si(Rは炭素数1〜2のアルコ
    キシ基)で表されるアルコキシシランを用いることを特
    徴とする請求項3記載の防曇鏡。
  5. 【請求項5】表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子
    は、コロイダルシリカおよび/またはコロイダルアルミ
    ナであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに
    記載の防曇鏡。
  6. 【請求項6】前記防曇膜は、膜表面の中心線平均粗さ
    (Ra)が1〜50nmおよび曇価が1%以下であるこ
    とを特徴とする請求項1乃至5のいづれかに記載の防曇
    鏡。
  7. 【請求項7】下記の工程により防曇鏡を製造することを
    特徴とする防曇鏡の製造方法。(a)透明基材の裏面に
    鏡面加工を施し鏡を製造する工程と、(b)平均粒子径
    が30〜60nmである表面に水酸基を有する金属酸化
    物微粒子、マトリックス形成用金属酸化物原料、ノニオ
    ン系界面活性剤および溶媒とを均一に混合した塗布液を
    調製する工程と、(c)前記塗布液を鏡の表面に塗布し
    成膜する工程と、(d)成膜後に乾燥し、鏡の表面に水
    膜タイプの防曇膜を被覆する工程。
  8. 【請求項8】前記塗布液中のノニオン系界面活性剤の含
    有量が0.01〜1重量%であることを特徴とする請求
    項7記載の防曇鏡。
  9. 【請求項9】成膜後の乾燥は、100℃〜200℃の温
    度で加熱乾燥することを特徴とする請求項7記載の防曇
    鏡の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7638961B2 (en) 2005-01-17 2009-12-29 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Drive system and control method of the same
JP2015110314A (ja) * 2013-11-08 2015-06-18 セントラル硝子株式会社 親水性被膜形成物品、親水性被膜形成用塗布液及び親水性被膜形成物品の製造方法
JP2015110313A (ja) * 2013-10-31 2015-06-18 セントラル硝子株式会社 親水性被膜形成物品、親水性被膜形成用塗布液及び親水性被膜形成物品の製造方法

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JP2015110313A (ja) * 2013-10-31 2015-06-18 セントラル硝子株式会社 親水性被膜形成物品、親水性被膜形成用塗布液及び親水性被膜形成物品の製造方法
JP2015110314A (ja) * 2013-11-08 2015-06-18 セントラル硝子株式会社 親水性被膜形成物品、親水性被膜形成用塗布液及び親水性被膜形成物品の製造方法

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