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JP2002038219A - マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法 - Google Patents

マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法

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Publication number
JP2002038219A
JP2002038219A JP2000223634A JP2000223634A JP2002038219A JP 2002038219 A JP2002038219 A JP 2002038219A JP 2000223634 A JP2000223634 A JP 2000223634A JP 2000223634 A JP2000223634 A JP 2000223634A JP 2002038219 A JP2002038219 A JP 2002038219A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cooling
temperature
pipe
point
tube
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000223634A
Other languages
English (en)
Inventor
Shigeto Shoji
成人 東海林
Michiharu Hannoki
道春 播木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP2000223634A priority Critical patent/JP2002038219A/ja
Publication of JP2002038219A publication Critical patent/JP2002038219A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Rigid Pipes And Flexible Pipes (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】割れが発生せず、しかも短時間焼入れが可能な
マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法を提供す
る。 【解決手段】本発明の方法は、管の外面温度が(Ms点
+400℃)以下からMs点よりも高い範囲内の温度に
なるまで水で強冷却(第1冷却)し、次いで管の外面温度
が{aMs点+(1−a)Mf点;(ただし、a=0.9〜0.
5)}になるまでガス冷却(第2冷却)した後、管の外面温
度が室温になるまで水で強冷却(第3冷却)する際、第2
冷却から第3冷却への切り替えを管外面の実測温度に基
づいておこなう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マルテンサイト系
ステンレス鋼管、特に耐炭酸ガス腐食性と耐硫化物応力
割れ性に優れることが要求されるマルテンサイト系ステ
ンレス鋼管を、焼割れを発生させることなく製造する方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、エネルギ事情から石油や天然ガス
採取用の油井管の需要が高まり、生産性の高い鋼管製造
技術が望まれている。この石油や天然ガスを採取する過
酷な環境下では、マルテンサイト系ステンレス鋼に代表
される高い強度と耐食性を持つ鋼管が用いられる。この
種の鋼管は焼割れに対する感受性が高いので、空気焼入
れといった冷却速度の遅い焼入れ法が一般に採用されて
いる。
【0003】しかし、空気焼入れでは、焼割れは防止で
きても、生産性が悪く、また耐炭酸ガス腐食性や耐硫化
物応力割れ性をはじめとした種々の特性が劣化してしま
うという問題があった。
【0004】そこで、このような問題を解決する方法と
して、特開平6−100935号公報には、Mo、C
u、Niの積極添加とC、P、S、Nの低減を図ったマ
ルテンサイト系ステンレス鋼を素材とし、750℃以上
の冷却開始温度から550〜350℃の冷却停止温度ま
でを2℃/sec以上の冷却速度で冷却し、その後室温
まで空冷以上の冷却速度で冷却する方法が提案されてい
る。
【0005】また、特開平10−17934号公報に
は、焼入開始温度から管外面の温度が(Ms点+400
℃)より低くMs点より高い温度になるまで強冷却(第
1冷却)し、次いで、この強冷却終了時の1/2以下の
平均熱伝達係数にて管外面の温度がMs点未満で、かつ
(Ms点とMf点の中間温度)より高い温度になるまで
弱冷却(第2冷却)した後、管外面の温度がMf点以下
になるまでの温度域を管内面の平均冷却速度が8℃/s
ec以上となるように管外面を強冷却(第3冷却)する
方法が提案されている。
【0006】しかし、上記の特開平6−100935号
公報に示される方法は、マルテンサイト系ステンレス鋼
管の特性を向上させるために高価な合金元素の必須添加
が必要で、製品の製造コストが高くなるという問題があ
る。
【0007】一方、特開平10−17934号公報に示
される方法は、高価な合金元素の添加なしでも焼割れの
発生が防止でき、マルテンサイト系ステンレス鋼管の焼
入れ方法としては理想的である。しかし、そこに示され
る方法における弱冷却の第2冷却をスプレー水などによ
る水冷却にした場合には、過冷却になりやすいだけでな
く、第2冷却から第3冷却への切り替えを精度よくおこ
なうことが困難で、焼割れの発生を確実に防ぐことがで
きないという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高価
な合金元素の添加なしでも焼割れの発生が確実に防げ、
しかも耐炭酸ガス腐食性や耐硫化物応力割れ性をはじめ
とした種々の特性も良好なマルテンサイト系ステンレス
鋼管の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を達成するために研究を重ねた結果、上記特開平10
−17934号公報に示される方法における第2冷却の
冷却終了時の管外面の温度を{aMs点+(1−a)M
f点;(ただし、a=0.9〜0.5)}の範囲内と
し、その弱冷却を水冷却ではなくガス冷却にすれば、焼
割れが発生しなくなり、しかも良好な耐炭酸ガス腐食
性、耐硫化物応力割れ性を有するマルテンサイト系ステ
ンレス鋼管の安定製造が可能であることを知見した。
【0010】上記の知見に基づく本発明の要旨は、下記
のマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法にある。
【0011】焼入開始温度から管の外面温度が(Ms点
+400℃)以下からMs点よりも高い範囲内の温度に
なるまで管外面を強冷却する第1冷却に引き続き、管の
外面温度が{aMs点+(1−a)Mf点;(ただし、
a=0.9〜0.5とする)}の温度になるまで管外面
を弱冷却する第2冷却と、この第2冷却後に管の外面温
度が室温になるまで管外面を強冷却する第3冷却をおこ
なうマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法であっ
て、第1冷却および第3冷却は水、第2冷却はガスでお
こなうとともに、第2冷却から第3冷却への切り替えを
管外面の実測温度に基づいておこなうマルテンサイト系
ステンレス鋼管の製造方法。
【0012】上記本発明の方法における第1冷却は、そ
の冷却開始から冷却終了までの冷却所要時間や冷却所要
水量などの水冷却条件を、管外面の焼入開始実測温度と
冷却終了目標温度とに基づいて予め求め、この予め求め
た条件で開始するのが好ましい。
【0013】また、第2冷却は、管の長手方向に分割し
て配置された複数のガス冷却手段のガス流量を、第2冷
却終了時点における管長手方向の温度が均一になるよう
に、第1冷却終了時点における管長手方向の管外面の実
測温度に基づいて変化させるのが好ましい。
【0014】ここで、第2冷却のガス冷却とは、放冷ま
たは空気、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスの
吹き付けによる冷却をいう。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明のマルテンサイト系
ステンレス鋼管の製造方法について詳細に説明する。
【0016】まず、本発明で対象とする素材のマルテン
サイト系ステンレス鋼は、いわゆるマルテンサイト系ス
テンレス鋼と称される鋼で、良好な耐食性を具備するこ
とを目的として成分設計されたものであればよく、特に
その化学組成は制限しない。しかし、石油や天然ガス採
取用の油井管として用いられるマルテンサイト系ステン
レス鋼管には、一般に、質量%で、C:0.3%以下、
Cr:11〜15%のマルテンサイト系ステンレス鋼が
用いられる。したがって、本発明においても、素材のマ
ルテンサイト系ステンレス鋼には、C:0.3%以下、
Cr:11〜15%以外に、適量のSi、Mnを含み、
不純物としてのP、Sの含有量ができるだけ低いものを
用いるのがよい。より好ましくは、前記の成分以外に、
必要に応じて、適量のMo、Ni、Al、N、Nb、T
i、V、Cu、Ca、MgおよびBのうちから選ばれた
1種または2種以上を含む鋼を用いるのが望ましい。
【0017】次に、図1に示す模式図を参照して本発明
の焼入れ方法について説明する。
【0018】図1に示すように、本発明においては、焼
入開始から管の外面温度が(Ms点+400℃)以下か
らMs点よりも高い範囲内の温度T1 (第1冷却終了温
度)になるまで水で強冷却する第1冷却をおこなう。こ
の第1冷却時における焼入開始温度は、焼入れ前におこ
なわれる加熱温度と同じか、それよりも若干(100℃
程度)低い温度であり、通常、750〜1100℃であ
る。
【0019】この第1冷却においては、高温域で管外面
側に引張り塑性変形を生じさせる必要があり、そのため
には管の外面温度が(Ms点+400℃)以下になるま
で水で強冷却する必要がある。しかし、管の外面温度が
Ms点以下になるまで水で強冷却すると、外面側と内面
側の変態開始時期が大きくずれるため、変態に伴う内部
応力が生じて、焼割れが発生する。よって、第1冷却
は、管の外面温度が(Ms点+400℃)以下からMs
点よりも高い範囲内の温度になるまで水で強冷却するこ
ととした。通常、本発明の対象となる鋼のMs点は20
0〜300℃であるので、第1冷却における冷却終了温
度T1 の上限は大体700〜600℃見当となる。
【0020】なお、上記第1冷却における冷却終了温度
1 は、次のことを顧慮して(Ms点+20℃)〜(M
s点+100℃)とするのが望ましい。すなわち、焼入
れ前の加熱時に生じた温度むらが第1冷却後にも残る可
能性があること。次に述べる第2冷却におけるMs点直
上での温度むらをできるだけなくすこと。第1冷却の冷
却終了温度T1 を高くし過ぎると次の第2冷却の所要時
間が著しく長くなって生産性が低下すること。
【0021】また、第1冷却の水による強冷却の方法
は、特に限定するものではないが、顕著な温度むらの発
生が抑制可能なように設計された冷却装置であることが
望ましい。この観点から、鋼管は静止状態にあるよりも
常に運動していて冷媒の水が鋼管外面の1部のみに集中
して当らないように配慮された冷却装置であることが好
ましい。具体的には、例えば、管軸心を回転軸として円
周方向に回転される管外面に対してラミナ水を供給する
ようにした冷却装置や、長手方向に搬送される管外面に
対して環状ノズルから水を供給するようにした冷却装置
を挙げることができる。
【0022】第1冷却は、熱伝達係数で数千〜1000
0W/m2 Kの強冷却であり、数秒から十数秒で冷却を
終了する。したがって、水による冷却の開始と終了は、
応答性が良好である必要があり、この観点から水の供給
手段と冷却対象の鋼管との間に、鋼管に対する水の供給
を瞬時に遮断する開閉自在なシャッタを設けた冷却装置
を用いるのがよい。
【0023】次に、第2冷却について説明する。図1に
示すように、本発明においては、上記の第1冷却に引き
続き、管の外面温度が{aMs点+(1−a)Mf;
(ただし、a=0.9〜0.5)}になるまで、放冷ま
たは空気、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスの
吹き付けによるいわゆるガスによる弱冷却をおこなう。
【0024】ここで、第2冷却をガスによる弱冷却と
し、その冷却終了温度T2 を、{aMs点+(1−a)
Mf;(ただし、a=0.9〜0.5)}としたのは、
次の理由による。
【0025】(1) Ms点よりも高い温度からガスによる
弱冷却をおこなう場合には、主に鋼管内の伝導伝熱によ
って第1冷却で生じた温度むらの均一化が促される。そ
の結果、外面がほぼ同時にマルテンサイト変態を開始
し、偏った変態に伴う鋼管内の応力発生が抑制され、焼
割れが発生しなくなる。
【0026】(2) 冷媒に水を用いる第1冷却直後の管外
面は、水が付着した、いわゆる「ぬれ」状態である。こ
の「ぬれ」状態の管外面を間をおかずにスプレー水や気
液混合水であるミストで弱冷却しようとしても、所望の
弱冷却が安定して実現されず、過冷却になりやすく、焼
割れが発生する。これは、スプレー水やミストによるい
わゆる水冷却では、被冷却面が乾いている高温から冷却
した場合には、膜沸騰と類似した伝熱形態となり、比較
的弱い冷却能が得られるが、「ぬれ」状態の被冷却面を
冷却した場合には、遷移沸騰や核沸騰に類似した伝熱形
態となり、高い冷却能を示すようになるためである。
【0027】そこで、本発明では、第2冷却を放冷また
は空気、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスの吹
き付けによるいわゆるガス冷却とする。したがって、そ
のガス冷却が放冷の場合には、第1冷却により生じた
「ぬれ」状態を構成する水が蒸発して消滅し、空気、窒
素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスの吹き付け(強
制空冷など)の場合には、そのブロー圧によって除去さ
れるので、「ぬれ」に起因する温度むらの拡大が防止さ
れる。
【0028】(3) さらに、第2冷却をガス冷却とする場
合には、水による冷却では計測不可能であった第2冷却
中の管外面温度を計測することが可能となり、第2冷却
における冷却終了温度T2 を正確に管理できるので、焼
割れの発生をより確実に防ぐことができる他、後述する
ように管長手方向の温度むらの解消をも図ることができ
る。
【0029】上記の第2冷却は、冷却所要時間が著しく
長くならないようにするためには放冷はできるだけ避け
て、空気、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスの
吹き付けによるガス冷却を採用するのが望ましい。な
お、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスはコスト
高につくので空気による強制空冷とするのが最も好まし
い。
【0030】また、ガス冷却装置は、第1冷却をおこな
う冷却装置と併設され、両者の切替えが瞬時におこなえ
るように設計されている必要がある。
【0031】さらに、第2冷却では、その冷却終了温度
2 を{aMs点+(1−a)Mf点;(ただし、a=
0.9〜0.5)}としたが、その理由は次の通りであ
る。すなわち、この第2冷却においては、ある程度のマ
ルテンサイト変態を促し、特に管外面の全領域において
マルテンサイト変態の未変態部分が存在しないようにす
ることが重要である。しかし、その冷却終了温度T2
あまりにもMs点に近いと、管外面の僅かな温度むらに
よってマルテンサイト変態が開始されていない部分が存
在する可能性が高くなる。特に、複数個所の管外面温度
を測定していない場合、その危険性はより高くなる。し
たがって、その冷却終了温度T2 は、管外面の温度むら
の影響を十分吸収できるよう、Ms点よりも低い温度に
設定する必要がある。しかし、その冷却終了温度T2
あまりにも低すぎると、冷却速度の小さいこの第2冷却
においてマルテンサイト変態が過度に進行してオーステ
ナイトの残留量が多くなり、耐食性の低下を招くように
なる。よって、本発明では、上記両者の影響を考慮して
第2冷却の冷却終了温度T2 を{aMs点+(1−a)
Mf点;(ただし、a=0.9〜0.5)}とした。
【0032】なお、第2冷却における上記の冷却終了温
度T2 は、{aMs点+(1−a)Mf点;(ただし、
a=0.7〜0.5)}とするのが好ましい。これは、
係数aが0.7を超える場合、マルテンサイト変態に伴
って発生する内部応力が大きく、これが場合によって
は、冷却後、焼戻しまでの間に割れを誘起する危険性が
あるからである。
【0033】次に、第3冷却について説明する。図1に
示すように、本発明においては、上記の第2冷却に引き
続き、管の外面温度が室温になるまで水で強冷却する第
3冷却をおこなう。この第3冷却は上記の第1冷却と同
じ冷却方法を採用してもよいし、その他の方法によって
もよい。しかし、設備の簡略化を図る観点からは、第1
冷却と同じ冷却方法を採用するのが好ましい。
【0034】なお、第3冷却で留意すべきは、中途半端
な冷却はおこなわず第3冷却開始時点から積極的に強冷
却をおこなうことであり、その理由は次の通りである。
すなわち、第2冷却終了時点における管の外表面は乾い
ており、ここで中途半端な冷却をおこなうと、「ぬれ」
が生じる部分と生じない部分に分かれて両者間に著しい
温度むらが生じ、これが原因で焼割れが発生することが
あるからである。したがって、第3冷却ではその冷却開
始時点から積極的な強冷却をおこなって外表面全面で瞬
時に「ぬれ」が生じるようにして温度むらの発生を抑制
する必要があるからである。
【0035】以上に述べた第1冷却から第3冷却の工程
を経る方法によれば、焼割れを発生させることなくマル
テンサイト系ステンレス鋼管を冷却(焼入れ)すること
ができる。ただし、この焼入れ後のマルテンサイト系ス
テンレス鋼管には多少の残留応力が発生しており、その
まま長時間放置すると残留応力に起因して割れが発生す
ることがある。このため、焼入れ後のマルテンサイト系
ステンレス鋼管は、できるだけ早い時期、具体的には焼
入れ後24時間以内、望ましくは12時間以内に焼戻し
をおこなうのがよい。
【0036】なお、焼戻しは、AC1変態点以下でおこな
えばよく、焼戻し温度は特に制限しないが、例えばAP
I(アメリカ石油協会)規格に規定されるL80グレー
ド品を製造する場合には、593℃以上AC1変態点以
下、望ましくは650℃以上A C1変態点以下で焼戻すの
がよい。
【0037】次に、上記の第1冷却から第3冷却を高精
度におこなうための具体的な方法とその方法に用いて好
適な冷却装置について説明する。
【0038】上記に説明した焼入れ法における最も大き
な特徴点は、第2冷却をガス冷却とした点であり、これ
によって冷媒が水の場合には水が邪魔になって実測不可
能であった冷却途中の管の外表面温度の実測が可能にな
ったことである。
【0039】すなわち、上記の第1冷却から第3冷却の
工程を経る場合は、焼割れが発生しないことは前述した
通りであるが、中でも第2冷却での冷却終了温度T2
焼割れの発生に最も大きな影響を及ぼし、第2冷却での
冷却終了温度T2 を正確に知ることが極めて重要であ
る。
【0040】しかし、第2冷却の弱冷却方法としてスプ
レー水などの水冷却方法を採用すると、最も重要な第2
冷却での実際の冷却終了温度T2 が実測できないため、
第2冷却の冷却終了タイミングは、事前の実験結果やシ
ュミレーション結果に基づいて第1冷却開始時点から第
2冷却終了までの所要時間や冷却水量などで管理せざる
を得ない。その結果、実際には、第2冷却における冷却
終了温度T2 が所定の温度になる以前に第3冷却がおこ
なわれることがあり、この場合に焼割れが発生し、前述
したように、焼割れのないマルテンサイト系ステンレス
鋼管を安定して製造することができない。
【0041】これに対して、本発明のように、第2冷却
の弱冷却方法にガス冷却方法を採用する場合には、第2
冷却の冷却終了温度T2 を実測することができるので、
例えば、非接触式の放射温度計などからなる温度計測手
段を冷却装置に併設して第2冷却中の管外面温度を監視
すれば、その温度が所定の冷却終了温度T2 になった時
点で第3冷却に正確に移行することができ、焼割れのな
いマルテンサイト系ステンレス鋼管を安定して製造する
ことが可能となる。
【0042】また、上記の冷却手段がターニングローラ
上で管を回転させるものである場合には、温度計測手段
を冷却装置の長手方向に複数基設ける一方、第2冷却手
段を冷却装置の長手方向に複数に分割して併設し、管長
手方向の温度むらに応じて複数分割された第2冷却手段
に対するガス流量を調整する場合には、第2冷却におけ
る管長手方向の冷却終了温度の均一化が図れるので、焼
割れのないマルテンサイト系ステンレス鋼管をより安定
して製造することが可能である。
【0043】上記のターニングローラを用いる方法は、
ターニングローラ2、2と接触する管部分の温度低下を
抑えたり、管長手方向、中でも長尺管の管長手方向の温
度均一化を図るのに特に有効である。
【0044】さらに、上記の温度計測手段を用いて第1
冷却開始直前の管外面温度(焼入開始温度)を実測する
場合には、実際の焼入開始温度を正確に知ることがで
き、この焼入開始実測温度に基づいて管1本毎の第1冷
却開始から第1冷却終了までの冷却水量や冷却所要時間
などの水冷却条件を予め求めることができる。したがっ
て、この予め求めた水冷却条件で第1冷却をおこなう場
合には、第1冷却から第2冷却への移行を、管1本毎に
正確におこなうことができ、焼割れのないマルテンサイ
ト系ステンレス鋼管をより一層安定して製造することが
可能である。
【0045】また、上記の場合には、管1本毎の細かな
冷却制御によって、第1冷却における冷却終了温度T1
を、よりMs点に近い低目の温度にコントロールするこ
とができる。その結果、第2冷却の所要時間を最低限に
抑えた最適な冷却パターンを実現することが可能で、生
産性が一段と向上する他、第1冷却において管外面側に
適切な引張り塑性変形が付与され、以後のマルテンサイ
ト変態に伴う応力の発生が抑えられ、焼割れの抑制効果
も得られる。
【0046】なお、上記の冷却所要時間や冷却所要水量
などの水冷却条件は、事前の実験結果やシュミレーショ
ン結果を元に決定され、例えば冷却所要時間t(se
c)については下式によて求めることができる。
【0047】t=A(X/Q)ln{(T1S−TW)/
(T1E−TW)} ここで、 A:冷却条件によって決定される係数で正の値(l・se
c/mm・min)、 X:被冷却管の肉厚(mm)、 Q:冷却水量(l/min)、 T1S:焼入開始実測温度(℃)、 T1E:冷却終了目標温度(℃)、 TW :冷却水の水温(℃)。
【0048】図2は、本発明の方法に用いて好適な焼入
れ装置の概略を示す正面図であり、被処理対象の管1は
ターニングローラ2、2によりその軸心周りに回転され
る。ターニングローラ2、2の上方には、管1の軸心を
はさむように2列に配されたラミナ水3a、3aを管1
の外面に向けて供給するスリットノズル3、3が配置さ
れている。また、ターニングローラ2、2とスリットノ
ズル3、3との間には、管1の外面に向けて供給される
ラミナ水3a、3aを瞬時に遮蔽する開閉自在なシャッ
タ4が配置されている。さらに、ターニングローラ2、
2の側方には、ガス供給ノズル5、5と温度計6が配置
されている。
【0049】上記のように構成された焼入れ装置による
本発明の方法は、次の手順によりおこなわれる。
【0050】第1冷却:シャッタ4を開(図中の実線状
態)、ガス供給ノズル5、5を閉とし、ターニングロー
ラ2、2を駆動させて管1をその軸心周りに回転させな
がらスリットノズル3、3からラミナ水3a、3aを管
1の外面に向けて供給する。
【0051】第2冷却:ターニングローラ2、2による
管1の回転を継続したまま、シャッタ4を閉(図中の破
線状態)、ガス供給ノズル5、5を開とし、ガス供給ノ
ズル5、5から管1の外面に向けてガスを供給する。こ
の時、温度計6によって管1の外面温度を測定し、その
温度が冷却終了温度T2 になると同時に次の第3冷却に
移行する。
【0052】第3冷却:ターニングローラ2、2による
管1の回転を継続したまま、シャッタ4を開(図中の実
線状態)、ガス供給ノズル5、5を閉とし、スリットノ
ズル3、3からラミナ水3a、3aを管1の外面に向け
て供給する。
【0053】なお、上記のスリットノズルは、管1の軸
心の直上に一条のラミナ水を供給するようにしたスリッ
トノズルであってもよい。また、ガス供給ノズル5、5
は管1の長手方向に複数に分割されて連接配置されてい
るものであることが好ましく、この場合、温度計6はガ
ス供給ノズル5、5の分割数だけ管1の長手方向に配置
されていることが好ましいことは前述した通りである。
【0054】
【実施例】表1に示す化学組成を有する外径151m
m、肉厚5.5mm、長さ1mの継目無しの供試管と図
2に示す焼入れ装置を準備し、表2に示す各条件で、そ
れぞれ10本の供試管を焼入れする試験をおこなった。
【0055】その際、供試管は、いずれの場合も980
℃に加熱してから試験に供し、その軸心周りに回転速度
60rpmで回転させた。また、ラミナ水およびスプレ
ー水には水温30℃のものを用い、ガス冷却(強制空
冷)には室温状態の空気を用いた。さらに、試番2の本
発明の方法においては、非接触式の放射温度計を用いて
第2冷却の冷却終了温度を測定し、その測定結果に基づ
いて第2冷却から第3冷却に切り替えた。
【0056】
【表1】
【表2】 なお、表2中、試番1は第2冷却の冷却終了温度が本発
明で規定する範囲を外れる比較法、試番2は本発明の方
法、試番3は第2冷却にスプレー水冷却を用いた比較
法、試番4は焼入れ開始から終了までをラミナ水のみで
おこなう比較法、試番5は焼入れ開始から終了までを放
冷とする従来法、試番6は焼入れ開始から終了までを強
制空冷(ガス冷却)のみでおこなう従来法である。
【0057】そして、焼入れ直後の管表面を目視観察
し、一部にでも焼割れの発生が認められる管本数を調べ
た。また、焼入れ開始から焼入れ終了までに要した所要
時間と、焼入れ後の組織をミクロ観察して組織に占める
マルテンサイト率(体積%)も合わせて調べた。これら
の調査結果を、表2に併せて示した。
【0058】表2に示すように、試番2の本発明の方法
では、焼割れは発生せず、マルテンサイト率が99%の
良好な組織が得られ、所要時間も51秒と短くて済ん
だ。
【0059】これに対し、試番1と3の比較法では、組
織はマルテンサイト率が99%と100%で良好であ
り、所要時間も32秒と13秒と短くて済んだが、それ
ぞれ10本中、4本と6本に焼割れが発生した。
【0060】また、試番4の焼入れ開始から終了までを
ラミナ水のみでおこなう比較法では、所要時間が12秒
と極めて短く、組織もマルテンサイト率が100%と良
好であったが、10本中7本に焼割れが発生した。
【0061】さらに、試番5の焼入れ開始から終了まで
を放冷とする従来法では、焼割れは発生しなかったが、
マルテンサイト率が90%で組織がやや不芳であり、し
かも所要時間が4500秒と極めて長かった。
【0062】また更に、試番6の焼入れ開始から終了ま
でを強制空冷(ガス冷却)のみでおこなう従来法では、
焼割れは発生しなかったが、マルテンサイト率が93%
で組織がやや不芳であり、しかも所要時間が467秒と
長かった。
【0063】なお、比較法中、試番3の所要時間が13
秒と極端に短いのは、第1冷却に引き続く第2冷却が
「ぬれ」状態下の被冷却面に対するスプレー水冷却であ
るために過冷却となり、本発明のガスによる第2冷却の
ような弱冷却が実現されなかったためである。
【0064】
【発明の効果】本発明の方法によれば、高価な合金元素
の添加なしでも焼割れが発生するのを防ぐことができる
ので、耐食性の良好なマルテンサイト系ステンレス鋼管
を安価かつ高歩留まりで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の冷却パターンを示す模式図である。
【図2】本発明の方法に用いて好適な焼入れ装置の一例
を示す模式的正面図である。
【符号の説明】
1:鋼管、 2:ターニングローラ、 3:スリットノズル、 3a:ラミナ水、 4:シャッタ、 5:ガス供給ノズル、 6:温度計。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3H111 AA01 BA03 DA08 DA26 DB08 DB27 EA12 4K042 AA06 BA06 BA14 CA16 DA01 DD02 DD05 DE01 DE06 EA02

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】焼入開始温度から管の外面温度が(Ms点
    +400℃)以下からMs点よりも高い範囲内の温度に
    なるまで管外面を強冷却する第1冷却に引き続き、管の
    外面温度が{aMs点+(1−a)Mf点;(ただし、
    a=0.9〜0.5とする)}の温度になるまで管外面
    を弱冷却する第2冷却と、この第2冷却後に管の外面温
    度が室温になるまで管外面を強冷却する第3冷却をおこ
    なうマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法であっ
    て、第1冷却および第3冷却は水、第2冷却はガスでお
    こなうとともに、第2冷却から第3冷却への切り替えを
    管外面の実測温度に基づいておこなうマルテンサイト系
    ステンレス鋼管の製造方法。
  2. 【請求項2】第1冷却開始から第1冷却終了までの水冷
    却条件を、管外面の焼入開始実測温度と第1冷却による
    冷却終了目標温度とに基づいて予め求め、この予め求め
    た水冷却条件で第1冷却を開始する請求項1に記載のマ
    ルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
  3. 【請求項3】ガスで冷却をおこなう第2冷却のガス冷却
    手段が管の長手方向に分割して配置されており、それぞ
    れのガス冷却手段のガス流量を、第2冷却終了時点にお
    ける管長手方向の温度が均一になるように、第1冷却終
    了時点における管長手方向の管外面の実測温度に基づい
    て変化させる請求項1または2に記載のマルテンサイト
    系ステンレス鋼管の製造方法。
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