JP2000319731A - 疲労特性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法 - Google Patents
疲労特性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法Info
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Abstract
製造方法を提供する。 【解決手段】 C:0.03〜0.20%、Cu:0.
2〜2.0%、B:2〜20ppmを含む鋼片を粗圧延
終了後、高圧デスケーリングを行ない、Ar3 変態点以
上で熱間仕上圧延を終了した後、Ar3 変態点からAr
1 変態点までの温度域で1〜10秒間滞留し、その後、
20℃/s以上の冷却速度で冷却して、350℃以下の
巻取温度で巻き取り、ミクロ組織が、フェライトを主相
とし、マルテンサイトを第二相とする複合組織であり、
フェライト相におけるCuの存在状態は、Cu単独で構
成される粒子の大きさが2nm以下の析出状態および/
または固溶状態である鋼板を得ることを特徴とする疲労
特性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法。
Description
加工用熱延鋼板の製造方法に関するものであり、特に、
自動車の足廻り部品やロードホイール等の耐久性と加工
性の両立が求められる素材として好適な疲労特性に優れ
た加工用熱延鋼板の製造方法に関するものである。
量化を目的として、Al合金等の軽金属や高強度鋼板の
自動車部材への適用が進められている。ただ、Al合金
等の軽金属は、比強度が高いという利点があるものの、
鋼に比較して著しく高価であるため、その適用は特殊な
用途に限られてきた。より広い範囲で自動車の軽量化を
推進するためには、安価な高強度鋼板の適用が強く求め
られている。一般に、材料は、高強度になるほど延性が
低下して加工性(成形性)が悪くなるばかりでなく、切
り欠き感受性も高くなる。そのため、複雑な形状をして
いる自動車の足廻り部品等への高強度鋼板の適用にあた
っては、その成形性だけでなく、疲労耐久性も重要な検
討課題となる。
に、低降伏比でかつ延性の優れた高強度鋼板を、フェラ
イトとマルテンサイトを主体とするミクロ組織で得る発
明が、例えば、特開昭58−6937号公報や特開昭6
0−121225号公報等で開示されている。また、特
に、伸びフランジ性(穴拡げ性)の優れた高強度鋼板
を、フェライトとベイナイトを主体とするミクロ組織で
得る発明が、例えば、特開昭57−145965号公報
や特開昭61−96057号公報等で開示されている。
さらにまた、これらの特性を兼ね備えた高強度鋼板を、
フェライト、ベイナイトとマルテンサイトを主体とする
ミクロ組織で得る発明が、例えば、特開平3−2646
45号公報等で開示されている。
しては、特開平4−276016号公報、特開平5−3
31591号公報、特開平6−145792号公報、特
開平8−60240号公報等で、疲労特性を向上させる
ために特定の添加元素に注目して、Pの固溶強化および
/またはCuの析出強化を利用する発明が開示されてい
る。すなわち、上記の特開平4−276016号公報に
は、Pの固溶強化とCuの析出強化によって疲労強度を
向上させる技術が開示されている。
は、ミクロ組織をフェライトとマルテンサイトまたはフ
ェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイトと
し、フェライト相にε−Cuを析出させて疲労強度と伸
びフランジ性を向上させる技術が開示されている。ま
た、特開平6−145792号公報では、ミクロ組織を
フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの三相と
し、それぞれの相の体積分率を規定して強度と伸びフラ
ンジ性を確保するとともに、Cuの析出強化によって疲
労特性を向上させる技術が開示されている。
は、ミクロ組織をフェライト、ベイナイトおよびマルテ
ンサイトの三相とし、それぞれの相の体積分率を規定し
て強度延性バランスを確保し、巻取温度を400℃以上
としてCuの析出強化によって疲労特性を向上させる技
術が開示されている。一方、特開平9−137349号
公報では、ミクロ組織をフェライト、ベイナイトおよび
マルテンサイトの三相とし、それぞれの相の体積分率を
特定するとともにTi、Nbの炭化物でフェライト相を
析出強化し、さらに表面近傍のフェライト粒径と鋼板表
面の粗さを規定して疲労特性を向上させる技術が開示さ
れている。
ホィールのディスク等の一部の部品においては、伸び、
低降伏比等の加工性とともに疲労耐久性が大変に重要で
あり、上記従来技術では、満足する特性が得られないと
いわざるを得ない。すなわち、上記特開平4−2760
16号公報に記載の発明では、結晶粒界に偏析し粒界脆
化を引き起こすPが0.05〜0.12%添加されるこ
とが必須であるため、疲労破壊の起点となる粒界破壊が
起こった場合、疲労特性が著しく劣化する可能性があ
る。
を抑制するBの添加については何も記載されていない。
また、上記特開平5−331591号公報に記載の発明
では、フェライト相にε−Cuを析出させているため延
性が低下して加工性が悪くなる可能性がある。また、上
記特開平6−145792号公報に記載の発明では、熱
履歴等によりフェライト、ベイナイトおよびマルテンサ
イトの各相の体積分率が変動しやすく、それによって延
性等の特性が大きく影響されるため鋼板の長手方向や幅
方向の材質のばらつきを生じやすいという問題点があ
る。
記載の発明では、巻取温度を400℃以上と規定してい
るため、ミクロ組織に多量のベイナイトやパーライトが
生成し、十分なマルテンサイトを得られず低降伏比でな
いばかりか、十分な疲労限度比が得られない。さらに、
上記特開平9−137349号公報に記載の発明では、
析出強化に有効なTi、Nbの炭化物を得るために熱間
圧延前の加熱炉工程において高い溶体化温度での加熱が
必要なため操業コストや省エネルギーの観点から好まし
くない。そこで、本発明は、疲労特性と加工性を両立さ
せるための鋼板特性の製造方法を明らかにして、上記従
来技術の課題を有利に解決できる、疲労特性に優れた加
工用熱延鋼板の製造方法を提供することを目的とするも
のである。
に採用されている連続熱間圧延設備により工業的規模で
生産されている熱延鋼板の製造プロセスを念頭におい
て、熱延鋼板の疲労特性と加工性の両立を達成すべく鋭
意研究を重ねた。その結果、固溶しているCuもしくは
Cu単独で構成される粒子サイズが2nm以下のCu析
出物が疲労特性向上に非常に有効であり、かつ加工性も
損なわないことを見出し、本発明をなしたものである。
いて説明する。まず、フェライト相におけるCu単独で
構成される粒子サイズの疲労特性に及ぼす効果について
の調査を行った。そのための供試材は、次のようにして
準備した。すなわち、0.05%C−1.0%Si−
1.4%Mn−1.0%Cu−0.5%Ni−0.00
03%Bに成分調整し溶製した鋳片を熱間圧延して常温
で巻き取った鋼板を、100〜600℃で1時間等温保
持した後、炉冷する熱処理を施し、ミクロ組織が、フェ
ライトを主相とし、マルテンサイトを第二相とする複合
組織を有し、フェライト相におけるCu単独で構成され
る粒子のサイズを変化させた鋼板を得た。
ンサイトであるが、一部残留オーステナイトを含むこと
も許容されるものである。これらの鋼板について疲労試
験を行った結果を、図1に示す。この結果より、フェラ
イトとマルテンサイトおよび一部残留オーステナイトを
含む複合組織からなる鋼板において、そのフェライト相
におけるCu単独で構成される粒子の平均サイズと疲労
限度比には強い相関があり、フェライト相におけるCu
単独で構成される粒子の平均サイズが2nm以下で疲労
限度比が著しく向上することを新規に知見した。
が、固溶しているCuもしくはCu単独で構成される粒
子サイズが2nm以下のCu析出物はフェライト相にお
いて繰返し荷重下での交差すべりを抑制し、繰返し荷重
による表面のすべりステップの形態を粗で深い状態から
密で浅い状態に変化させ、そこでの応力集中が緩和され
るために疲労き裂の発生抵抗を向上させると推測され
る。また、熱間圧延条件等を制限することによって、フ
ェライト相におけるCu単独で構成される粒子の平均サ
イズが2nm以下という鋼板を製造できることも新たに
知見した。
いての調査を行った。そのための供試材は、次のように
して準備した。すなわち、0.05%C−1.0%Si
−1.4%Mn−0.5%Ni鋼をベースにして、1.
0%のCuを添加した鋼とCuを添加しない鋼に、さら
に、B含有濃度を変化させた鋼を成分調整し溶製した鋳
片を、熱間圧延して常温で巻き取り、ミクロ組織が、フ
ェライトを主相とし、マルテンサイトを第二相とする複
合組織を有する鋼板を得た。これらの鋼板について疲労
試験を行った結果を、図2に示す。この結果より、1.
0%のCuを添加した鋼に限り、B含有濃度と疲労限度
比に強い相関があり、さらに、Bの含有濃度が2ppm
以上で疲労限度比が著しく向上することを新規に知見し
た。
は、JIS Z 2201記載の5号試験片にて、JI
S Z 2241記載の試験方法で測定した。また、鋼
板の疲労特性は、図3に示すような板厚3.0mm、長
さ98mm、幅38mm、最小断面部の幅が20mm、
切り欠きの曲率半径が30mmである疲労試験片を用
い、完全両振りの平面曲げ疲労試験によって得られた2
×106 回での疲労強度σWを鋼板の引張り強さσBで
除した値(疲労限度比σW/σB)で評価した。
成される粒子は、供試鋼の1/4厚のところから透過型
電子顕微鏡サンプルを採取し、エネルギー分散型X線分
光(Energy Dispersive X−ray
Spectroscope:EDS)や電子エネルギ
ー損失分光(Electron Energy Los
s Spectroscope:EELS)の組成分析
機能を加えた、200kVの加速電圧の電界放射型電子
銃(Field Emission Gun:FEG)
を搭載した透過型電子顕微鏡によって観察した。観察さ
れる粒子の組成は、上記EDSおよびEELSによりC
u単独であることを確認した。また、本願で規定するフ
ェライト相におけるCu単独で構成される粒子のサイズ
は、観察される粒子のサイズをそれぞれ測定したものの
その一視野での平均の値である。本発明は、上記知見に
より構成したもので、その要旨は、以下の通りである。
0%、Si:0.1〜1.4%、、Mn:0.5〜3.
0%、P:≦0.02%、S:≦0.01%、Al:
0.005〜1.0%、Cu:0.2〜2.0%、B:
0.0002〜0.0020%を含み、残部がFe及び
不可避的不純物からなる鋼片を粗圧延終了後、高圧デス
ケーリングを行ない、Ar3 変態点以上で熱間仕上圧延
を終了した後、Ar3 変態点からAr1 変態点までの温
度域で1〜10秒間滞留し、その後、20℃/s以上の
冷却速度で冷却して、350℃以下の巻取温度で巻き取
り、ミクロ組織が、フェライトを主相とし、マルテンサ
イトを第二相とする複合組織であり、フェライト相にお
けるCuの存在状態は、Cu単独で構成される粒子の大
きさが2nm以下の析出状態および/または固溶状態で
ある鋼板を得ることを特徴とする疲労特性に優れた加工
用熱延鋼板の製造方法。
i:0.1〜1.0%を含有することを特徴とする上記
(1)に記載の疲労特性に優れた加工用熱延鋼板の製造
方法。(3)前記鋼が、さらに、質量%にて、Ca:
0.005〜0.02%、REM=0.005〜0.2
%の一種または二種を含有することを特徴とする、上記
(1)または(2)に記載の疲労特性に優れた加工用熱
延鋼板の製造方法。(4)前記鋼が、さらに、質量%に
て、Mo:0.05〜1.0%、V:0.02〜0.2
%、Ti:0.01〜0.2%、Nb:0.01〜0.
1%、Cr:0.01〜1.0%、Zr:0.02〜
0.2%の一種または二種以上を含有することを特徴と
する、上記(1)ないし(3)いずれか1項に記載の疲
労特性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法にある。
まず、本発明の鋼板のミクロ組織およびCuの存在状態
について説明する。鋼板のミクロ組織は、優れた加工性
を確保するために、フェライトを主相とし、マルテンサ
イトを第二相とする複合組織とする。ただし、第二相に
は一部残留オーステナイトを含むことを許容するもので
ある。なお、良好な加工性を保証する良好な延性や70
%以下の低降伏比を確保するためには、フェライトの体
積分率が50%以上でかつ残留オーステナイトの体積分
率が5%未満が好ましい。ここで、フェライト、マルテ
ンサイトおよび残留オーステナイトの体積率とは鋼板の
圧延方向断面厚みの1/4厚における光学顕微鏡で20
0〜500倍で観察されたミクロ組織中のそれらの組織
の面積分率で定義される。
態は、Cu単独で構成される粒子の大きさが2nm以下
の析出状態および/または固溶状態とする。これによ
り、加工性の劣化につながる静的強度の上昇を抑えつ
つ、すなわち、フェライトとマルテンサイトの複合組織
鋼板の優れた加工性を損なうことなく、疲労特性を向上
させることができる。一方、フェライト相におけるCu
単独で構成される粒子の大きさが2nm超であると、C
uの析出強化により鋼板の静的強度が著しく上昇するた
め、加工性が著しく劣化することになる。また、このよ
うなCuの析出強化では、疲労限は静的強度の上昇ほど
には向上しないので疲労限度比が低下してしまう。その
ため、フェライト相におけるCu単独で構成される粒子
の大きさは、2nm以下とする必要がある。
て説明する。Cは、0.20%超含有していると加工性
及び溶接性が劣化するので、0.20%以下とする。ま
た0.03%未満であると組織中のマルテンサイトの体
積率が減少し、強度が低下するので0.03%以上とす
る。Siは、フェライト変態の促進と未変態オーステナ
イト中のC濃度をあげて複合組織を生成する効果があ
る。ただし、0.1%以下では、その効果が失われ、
1.4%超添加してもその効果は飽和する。従って、S
iの含有量は0.1%超、1.4%以下とする。
サイトを得るために、0.5%以上必要である。また、
3.0%超添加するとスラブ割れを生ずるため、3.0
%以下とする。Pは、0.02%超添加すると加工性や
溶接性に悪影響を及ぼすだけでなく、粒界に偏析して粒
界強度を低下させ粒界脆化を起こすので、0.02%以
下とする。
起こすので極力低減させるべきであるが、0.01%以
下ならば許容できる範囲である。Alは、溶鋼脱酸のた
めに0.005%以上添加する必要があるが、コストの
上昇を招くため、その上限を1.0%とする。また、あ
まり多量に添加すると、非金属介在物を増大させ伸びを
劣化させるので好ましくは0.5%以下とする。
り、固溶もしくは2nm以下の粒子サイズに析出させる
ことにより疲労特性を改善する効果がある。ただし、
0.2%未満では、その効果は少なく、2.0%を超え
て添加しても効果が飽和するので、0.2〜2.0%と
添加範囲を限定する。Bは、本発明の最も重要な元素の
一つであり、Cuと複合添加されることによって疲労限
を上昇させる効果がある。ただし、0.0002%未満
ではその効果を得るために不十分であり、0.0020
%超添加するとスラブ割れが起こる。よって、Bの添加
は、0.0002%以上、0.0020%以下とする。
めに添加する。ただし、0.1%未満ではその効果が少
なく、1.0%を超えて添加してもその効果が飽和する
ので、0.1〜1.0%とする。CaおよびREMは、
破壊の起点となったり、加工性を劣化させる非金属介在
物の形態を変化させて無害化する元素である。ただし、
0.005%未満添加してもその効果がなく、Caなら
ば0.02%超、REMならば0.2%超添加してもそ
の効果が飽和するのでCa=0.005〜0.02%、
REM=0.005〜0.2%とする。
V、Ti、Nb、Cr、Zrの析出強化もしくは固溶強
化元素の一種または二種以上を添加しても良い。ただ
し、それぞれ、0.05%、0.02%、0.01%、
0.01%、0.01%、0.02%未満ではその効果
を得ることができない。また、それぞれ、1.0%、
0.2%、0.2%、0.1%、1.0%、0.2%を
超え添加してもその効果は飽和する。
て、以下に詳細に述べる。本発明では、目的の成分含有
量になるように成分調整した溶鋼を鋳込むことによって
得たスラブを、高温鋳片のまま熱間圧延機に直送しても
よいし、室温まで冷却後に加熱炉にて再加熱した後に熱
間圧延してもよい。再加熱温度については特に制限はな
いが、1350℃以上であると、スケールオフ量が多量
になり歩留まりが低下するので、再加熱温度は1350
℃未満が望ましい。
スケーリングを行う。高圧デスケーリングの条件は、鋼
板表面での高圧水の衝突圧P(MPa)×流量L(リッ
トル/cm2)≧0.0025の条件を満たすことが好
ましい。鋼板表面での高圧水の衝突圧Pは以下のように
記述される。(「鉄と鋼」1991 vol.77 N
o.9 p1450参照) P(MPa)=5.64×P0×V/H2 ただし、 P0(MPa):液圧力 V(リットル/min):ノズル流液量 H(cm):鋼板表面とノズル間の距離
いる幅 v(cm/min):通板速度
yが15μm(15μmRy,l2.5mm,ln1
2.5mm)以下であることが好ましい。これは、例え
ば金属材料疲労設計便覧、日本材料学会編、84ページ
に記載されている通り熱延または酸洗ままの鋼板の疲労
強度は鋼板表面の最大高さRyと相関があることから明
らかである。また、その後の仕上げ圧延はデスケーリン
グ後に再びスケールが生成してしまうのを防ぐために5
秒以内に行うのが望ましい。続く仕上げ圧延は、最終パ
ス温度(FT)がAr3 変態点以上の温度域で終了する
必要がある。これは、熱間圧延中に圧延温度がAr3 変
態点を切るとフェライト粒にひずみが残留して延性が低
下するためである。
r3 変態点からAr1 変態点までの温度域(フェライト
とオーステナイトの二相域)で1〜10秒間滞留する。
ここでの滞留は、二相域でフェライト変態を促進させる
ために行うが、1秒未満では、二相域におけるフェライ
ト変態が不十分なため、十分な延性が得られない。一
方、10秒超では、パーライトが生成し、目的とするフ
ェライトを主相とし、マルテンサイトを第二相とするミ
クロ組織が得られない。また、1〜10秒間の滞留をさ
せる温度域はフェライト変態を容易に促進させるためA
r1 変態点以上800℃以下が望ましく、そのために
は、仕上げ圧延終了後20℃/s以上の冷却速度で当該
温度域に迅速に到達させることが好ましい。
では20℃/s以上の冷却速度で冷却するが、20℃/
s未満の冷却速度では、パーライトもしくはベイナイト
(ベイニティックフェライトを含む、以下同じ)が生成
してしまい十分なマルテンサイトが得られず目的とする
フェライトを主相とし、マルテンサイトを第二相とする
ミクロ組織が得られない。巻取温度が350℃超では、
ベイナイトが生成して十分なマルテンサイトが得られず
目的とするフェライトを主相とし、マルテンサイトを第
二相とするミクロ組織が得られないだけでなく、巻き取
り後に静的強度における析出強化能が大きいサイズのC
uの析出が起こる恐れがあるため、巻取温度は、350
℃以下と限定する。また、巻取温度の下限値は特に限定
する必要はないが、コイルが長時間水濡れの状態にある
と錆による外観不良が懸念されるため、50℃以上が望
ましい。
る。表1に示す化学成分を有するA〜Zの鋼は、転炉に
て溶製して、連続鋳造後、表2に示す加熱温度(SR
T)で再加熱し、粗圧延後に高圧デスケーリング(条
件:衝突圧P=2.7MPa,流量L=0.001リッ
トル/cm2)を行い、同じく表2に示す仕上げ圧延温
度(FT)で1.2〜5.4mmの板厚に圧延した後、
表2に示す時間で滞留後、表2に示す冷却速度(CR)
で冷却し巻取温度(CT)でそれぞれ巻き取った。ただ
し、表中の化学組成についての表示は質量%である。こ
のようにして得られた熱延板の引張試験は、供試材を、
まず、JISZ 2201記載の5号試験片に加工し、
JIS Z 2241記載の試験方法に従って行った。
表2に鋼板の組織の体積率とその試験結果を示す。鋼板
圧延方向断面厚みの1/4厚を光学顕微鏡で200〜5
00倍で観察した組織の体積率を合わせて表2に示す。
幅38mm、最小断面部の幅が20mm、切り欠きの曲
率半径が30mmである平面曲げ疲労試験片にて、完全
両振りの平面曲げ疲労試験を行った。鋼板の疲労特性
は、2×106回での疲労強度σWを鋼板の引張り強さ
σBで除した値(疲労限度比σW/σB)で評価した。
また、フェライト相におけるCu単独で構成される粒子
は、供試鋼の1/4厚のところから透過型電子顕微鏡サ
ンプルを採取し、エネルギー分散型X線分光(EDS)
や電子エネルギー損失分光(EELS)の組成分析機能
を加えた、200kVの加速電圧の電界放射型電子銃
(FEG)を搭載した透過型電子顕微鏡によって観察し
た。観察される粒子の組成は、上記EDSおよびEEL
SによりCu単独であることを確認した。また、本願で
規定するフェライト相におけるCu単独で構成される粒
子のサイズは、観察される粒子のサイズをそれぞれ測定
したもののその一視野での平均の値である。
B−1、C−1、D−1、F−1、H−1、I−1、J
−1、J−2、J−4、K−1、L−2、N−1、P−
1、R−1、S−1、T−1、W−1、X−1、Z−1
の21鋼であり、主相であるフェライト相におけるCu
単独で構成される粒子の大きさが2nm以下である疲労
特性に優れた加工用熱延鋼板が得られている。
明の範囲外である。すなわち、鋼A−2は、仕上圧延終
了温度(FT)が本発明の範囲外であるのでフェライト
粒にひずみが残留して延性が低下するたけでなく低降伏
比(YR)も得られていない。鋼A−3は、熱間圧延後
の巻取温度(CT)が本発明の範囲外であるので目的と
する第二相のマルテンサイトを十分に得られない。ま
た、Cu単独で構成される粒子の大きさが2nm以上に
なる。そのため十分な疲労限度比(σW/σB)が得ら
れていない。
本発明の範囲外であるのでパーライトが生成してしまい
目的とするフェライトを主相とし、マルテンサイトを第
二相とするミクロ組織が得られず低降伏比(YR)で十
分な疲労限度比も得られていない。鋼E−1は、Pの含
有量が本発明の範囲外であるのでPが粒界に偏析して粒
界強度を低下させるため十分な疲労限度比が得られてい
ない。鋼G−1は、Cuの含有量が本発明の範囲外であ
るので疲労特性を改善する効果が少なく十分な疲労限度
比が得られていない。
滞留時間が本発明の範囲外であるので目的とするフェラ
イトを主相とし、マルテンサイトを第二相とするミクロ
組織が得られず低降伏比で十分な疲労限度比も得られて
いない。鋼M−1は、Bの含有量が本発明の範囲外であ
るのでCuと複合添加されることで発現する疲労特性向
上効果を得ることができず十分な疲労限度比も得られて
いない。鋼O−1、鋼Q−1は、Si含有量が本発明の
上限を超えているのでスケールの性状が悪くなり表面性
状が劣化するため十分な疲労限度比が得られていない。
を割っているのでフェライト変態の促進効果と未変態オ
ーステナイト中へのC元素の濃化による複合組織の生成
効果が得られず目的とするフェライトを主相とし、マル
テンサイトを第二相とするミクロ組織が得られず十分な
疲労限度比も得られていない。鋼V−1は、Mnの含有
量が本発明の範囲外であるので目的とする第二相のマル
テンサイトを十分に得られず低降伏比も得られていな
い。鋼Y−1は、Cの含有量が本発明の範囲外であるの
でミクロ組織中のマルテンサイトの体積率が十分でなく
低降伏比で十分な疲労限度比も得られていない。
性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法を提供するもので
あり、これらの熱延鋼板を用いることにより、伸びを始
めとする加工性を十分に確保しつつ疲労特性の大幅な改
善が期待できるため、本発明は、工業的価値が高い発明
であると言える。
成される粒子の大きさと疲労限度比の関係で示す図であ
る。
と疲労限度比の関係で示す図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 質量%にて、 C:0.03〜0.20%、 Si:0.1〜1.4%、 Mn:0.5〜3.0%、 P:≦0.02%、 S:≦0.01%、 Al:0.005〜1.0%、 Cu:0.2〜2.0%、 B:0.0002〜0.0020% を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼片を
粗圧延終了後、高圧デスケーリングを行ない、Ar3 変
態点以上で熱間仕上圧延を終了した後、Ar3 変態点か
らAr1 変態点までの温度域で1〜10秒間滞留し、そ
の後、20℃/s以上の冷却速度で冷却して、350℃
以下の巻取温度で巻き取り、ミクロ組織が、フェライト
を主相とし、マルテンサイトを第二相とする複合組織で
あり、フェライト相におけるCuの存在状態は、Cu単
独で構成される粒子の大きさが2nm以下の析出状態お
よび/または固溶状態である鋼板を得ることを特徴とす
る疲労特性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 前記鋼が、さらに、質量%にて、 Ni:0.1〜1.0% を含有することを特徴とする、請求項1に記載の疲労特
性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法。 - 【請求項3】 前記鋼が、さらに、質量%にて、 Ca:0.005〜0.02%、 REM:0.005〜0.2% の一種または二種を含有することを特徴とする、請求項
1または請求項2に記載の疲労特性に優れた加工用熱延
鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 前記鋼が、さらに、質量%にて、 Mo:0.05〜1.0%、 V:0.02〜0.2%、 Ti:0.01〜0.2%、 Nb:0.01〜0.1%、 Cr:0.01〜1.0%、 Zr:0.02〜0.2% の一種または二種以上を含有することを特徴とする、請
求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の疲労特性
に優れた加工用熱延鋼板の製造方法。
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