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JP2000310948A - 近赤外光吸収性化合物、その製造方法並びに近赤外光吸収剤及びディスプレイ前面板 - Google Patents

近赤外光吸収性化合物、その製造方法並びに近赤外光吸収剤及びディスプレイ前面板

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Publication number
JP2000310948A
JP2000310948A JP11199132A JP19913299A JP2000310948A JP 2000310948 A JP2000310948 A JP 2000310948A JP 11199132 A JP11199132 A JP 11199132A JP 19913299 A JP19913299 A JP 19913299A JP 2000310948 A JP2000310948 A JP 2000310948A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
infrared light
compound
copper
alkyl group
absorbing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP11199132A
Other languages
English (en)
Inventor
Kazuhiko Sunakawa
和彦 砂川
Hajime Hoshi
元 星
Mitsunori Hakozaki
充徳 箱崎
Hiroki Katono
浩樹 上遠野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kureha Corp
Original Assignee
Kureha Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kureha Corp filed Critical Kureha Corp
Priority to JP11199132A priority Critical patent/JP2000310948A/ja
Publication of JP2000310948A publication Critical patent/JP2000310948A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 近赤外光吸収性能に優れ、熱的及び化学的な
安定性に優れると共に、製造方法及び材料の選択性及び
成形加工性を向上させることが可能な近赤外光吸収性化
合物を提供する。 【解決手段】 本発明の近赤外光吸収性化合物は、下記
式(1)で表されるリン酸エステル化合物と銅化合物と
の反応により得られるリン酸エステル銅化合物であるこ
とを特徴とする。 【化1】 [式中、Rは、下記式(2)又は下記式(3)で表され
る基を示し、nは1又は2である。 【化2】 (式中、R1は、炭素数が6〜20のアリール基(但
し、アリール基の水素が、炭素数1〜6のアルキル基、
又はハロゲンによって少なくともひとつ置換されていて
もよく、該アルキル基の水素がハロゲンによって少なく
ともひとつ置換されていてもよい)を示し、R2は、炭
素数が1〜4のアルキル基を示し、mは1〜6の整数で
ある。)]

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、近赤外領域の光に
対して吸収特性を有する近赤外光吸収性化合物及びその
製造方法、並びに近赤外領域の光に対して吸収特性を有
する近赤外光吸収剤及び該近赤外光吸収剤を用いたディ
スプレイ前面板に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の近赤外光吸収特性を有する化合物
としては、特開平6−118228号公報、特開平10
−045995号公報、特開平10−114848号公
報、特開平10−152598号公報、特開平10−1
53964号公報、特開平10−187055号公報、
特開平10−212373号公報等に記載されているよ
うなリン原子含有化合物と銅イオンを主成分とするイオ
ン性金属成分とを含有して成るものが挙げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の
近赤外光吸収性の化合物に含まれるリン原子含有化合物
は、分子内に重合性の官能基(不飽和二重結合を有する
基)を有している。したがって、このようなリン原子含
有化合物及びその銅塩は、紫外光に曝されたり熱が加え
られると重合反応が進行して徐々に硬化してしまうた
め、近赤外光吸収性化合物として提供される形態が重合
性の樹脂組成物に限られていた。そして、この樹脂組成
物を重合させることによってのみ近赤外光吸収性の光学
部材が製造されており、製造方法や材料の選択性が十分
ではなかった。
【0004】また、このような樹脂組成物の成形方法と
しては、加工性、生産性及び経済性等の観点から、樹脂
ペレットの熱プレス成形や液状材料の注型重合等が広く
用いられている。しかし、従来のディスプレイ前面板に
用いられるリン原子含有化合物及びその銅塩は、上述の
如く熱に対する安定性が十分ではなく、熱プレス成形に
必ずしも適しているとは言えなかった。また、注型重合
する際に、型に癒着して離型が困難であり、しかも熱に
よる再成形が困難であった。
【0005】そこで、本発明は、このような課題に鑑み
て、近赤外光吸収性能に優れ、従来に比して、熱的及び
化学的な安定性に優れると共に、製造方法及び材料の選
択性及び成形加工性を向上させることが可能な近赤外光
吸収性化合物、その製造方法及び近赤外光吸収剤を提供
することを目的とする。また、本発明は、このような近
赤外光吸収剤を用いることにより、近赤外光吸収性能、
熱的及び化学的な安定性に優れるディスプレイ前面板を
提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する為
に、本発明らは、リン酸エステル化合物及びその銅化合
物の分光学特性や物性について多角的に鋭意研究を重ね
たところ、熱的及び化学的な安定性に優れると共に、製
造方法及び材料の選択性及び成形加工性を向上させるこ
とが可能な近赤外光吸収性化合物を見出し、本発明に到
達した。すなわち、本発明の近赤外光吸収性化合物は、
下記式(1)で表されるリン酸エステル化合物と銅化合
物との反応により得られるリン酸エステル銅化合物であ
ることを特徴とする。
【0007】
【化7】 [式(1)中、Rは、それぞれ独立して下記式(2)又
は下記式(3)で表される基を示し、nは1又は2であ
る。
【0008】
【化8】 (式(2)及び式(3)中、R1は、独立に炭素数が6
〜20のアリール基(但し、アリール基の水素が、炭素
数1〜6のアルキル基、又はハロゲンによって少なくと
もひとつ置換されていてもよく、該アルキル基の水素が
ハロゲンによって少なくともひとつ置換されていてもよ
い)を示し、R2は、独立に炭素数が1〜4のアルキル
基を示し、mは1〜6の整数である。)]
【0009】また、本発明の近赤外光吸収性化合物は、
下記式(4)で表されるリン酸エステル化合物と銅化合
物との反応により得られるリン酸エステル銅化合物であ
ることを特徴とする。
【0010】
【化9】 [式(4)中、Rは、それぞれ独立して下記式(5)又
は下記式(6)で表される基を示し、nは1又は2であ
る。
【0011】
【化10】 (式(5)及び式(6)中、R3、R4は、独立に炭素数
が1〜20のアルキル基、又はアリール基(但し、アリ
ール基の水素が、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロ
ゲンによって少なくともひとつ置換されていてもよく、
該アルキル基の水素がハロゲンによって少なくともひと
つ置換されていてもよい)を示す。)]
【0012】さらに、本発明の近赤外光吸収性化合物
は、下記式(7)で表されるリン酸エステル化合物と銅
化合物との反応により得られるリン酸エステル銅化合物
であることを特徴とする。
【0013】
【化11】 [式(7)中、Rは、下記式(8)で表される基を示
し、nは1又は2である。
【0014】
【化12】 (式(8)中、R5は、炭素数が1〜20のアルキル
基、又はアリール基(但し、アリール基の水素が、炭素
数1〜6のアルキル基、又はハロゲンによって少なくと
もひとつ置換されていてもよく、該アルキル基の水素が
ハロゲンによって少なくともひとつ置換されていてもよ
い)を示し、R6、R7、R8は、独立に水素、又は炭素
数が1〜4のアルキル基(但し、R6、R7、R8が全て
水素の場合を除く)を示し、mは1〜6の整数であ
る。)]
【0015】これらの本発明の近赤外光吸収性化合物に
よれば、リン酸エステル化合物のリン酸基が配位結合及
び/又はイオン結合により銅イオンに結合し、この銅イ
オンはリン酸エステルに囲まれた状態で、組成物中に溶
解又は分散されており、この銅イオンのd軌道間の電子
遷移によって近赤外光が選択的に吸収される。したがっ
て、従来と同等以上の近赤外光吸収性能が達成される。
また、上記式(1)、上記式(4)及び上記式(7)で
表されるリン酸エステル化合物及び該化合物と銅化合物
との反応生成物は、分子構造中に不飽和二重結合を有さ
ず、紫外線や熱によって硬化し難いので、樹脂と共に重
合させて安定化させなくても、例えば、溶媒に溶解又は
分散させた液状を成す近赤外光吸収剤を得ることが可能
である。さらに、上記式(1)、上記式(4)及び上記
式(7)で表されるリン酸エステル化合物及び該化合物
と銅化合物との反応生成物は、分子構造中に不飽和二重
結合を有さず、樹脂と混合して型中で重合させる際の離
型性が良好である。また、熱的な負荷が与えられても
(例えば、熱プレスによる成形が行われても)分光特性
の劣化が殆どない。さらに、成形品は熱可塑性を有し、
且つ熱的安定性が高いため、重合した後でも熱による再
成形が容易となる。
【0016】また、本発明の近赤外光吸収性化合物の製
造方法は、上記式(1)上記式(4)及び上記式(7)
で表されるリン酸エステル化合物のうち少なくとも一つ
の化合物と銅化合物とを反応せしめてリン酸エステル銅
化合物を得るステップを備えることを特徴とする。この
ような方法によれば、近赤外光吸収性に優れ、熱的及び
化学的に安定で樹脂と混合しなくとも用いることがで
き、樹脂と混合した場合でも、離型性に優れ且つ再成形
が容易であり、然も熱的な負荷が与えられても(例え
ば、熱プレスによる成形が行われても)分光特性の劣化
が殆どないリン酸エステル銅化合物から成る近赤外光吸
収性化合物が得られる。
【0017】ここで、上記ステップにおいて、リン酸エ
ステル化合物と銅化合物とを有機溶剤中で反応させ、該
反応によって生成される酸成分と前記有機溶剤とを除去
すると好適である。このようにすれば、リン酸エステル
化合物と銅化合物との反応において、銅化合物から遊離
される陰イオンである酸成分が除去され、このような酸
成分が存在する場合に引き起こされる近赤外光吸収性化
合物及び該化合物を含む近赤外光吸収剤の耐湿性及び熱
安定性の低下が防止される。
【0018】また、本発明の近赤外光吸収剤は、上述の
本発明の近赤外光吸収性化合物を含有して成ることを特
徴とする。このような本発明の近赤外光吸収剤は、近赤
外光吸収性に優れ、熱的及び化学的に安定で樹脂と混合
しなくとも用いることができ、樹脂と混合した場合で
も、離型性に優れ且つ再成形が容易であり、然も熱的な
負荷が与えられても(例えば、熱プレスによる成形が行
われても)分光特性の劣化が殆どない。
【0019】さらに、近赤外光吸収性化合物が樹脂中に
含有されて成る樹脂組成物で形成されると一層好適であ
る。このように樹脂組成物とすることにより、用途に応
じた各種形状の近赤外光吸収剤や該近赤外光吸収剤を用
いたものを簡易に得ることができる。ここで、樹脂とし
ては、可視光透過性、耐候性、成形加工性等の観点で優
れているアクリル系樹脂を好ましく用いることができ
る。
【0020】また、本発明のディスプレイ前面板は、上
述の本発明の近赤外光吸収剤を含有して成る近赤外光吸
収層を備えることを特徴とする。このようなディスプレ
イ前面板によれば、近赤外光吸収性、可視光透過性、耐
熱及び化学的安定性及び成形加工性を向上させることが
可能な近赤外光吸収層を有するので、そのような性能に
優れたディスプレイ前面板を提供することが可能とな
る。
【0021】そして、上記ディスプレイは、プラズマ・
ディスプレイ・パネルであると好適である。プラズマ・
ディスプレイ・パネルは電子ディスプレイの中でもとり
わけ近赤外光の発生強度が高く、プラズマ・ディスプレ
イ・パネルの周辺に置かれた、例えば、赤外線リモコン
等の機器が誤動作する可能性が高いが、本発明のディス
プレイ前面板をプラズマ・ディスプレイ・パネルへ適用
することにより、このような誤動作が有効に防止され
る。また、プラズマ・ディスプレイ・パネルは大面積の
画面を持つ大型ディスプレイとして有望な装置であっ
て、このような大型画面に合わせてディスプレイ前面板
も大型化が要求される。本発明のディスプレイ前面板
は、近赤外光吸収層を樹脂組成物として形成するときの
成形加工性に優れ、また、液状の近赤外光吸収剤を透明
基板等に塗布することによっても近赤外光吸収層を形成
できるので、従来よりも大型のディスプレイ形状に対応
したディスプレイ前面板が簡易に得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態に関
し、近赤外光吸収性化合物及びその製造方法及び該近赤
外光吸収性化合物を用いた近赤外光吸収剤並びに該近赤
外光吸収剤を用いたディスプレイ前面板等について説明
する。また、その後で、本発明の近赤外光吸収性化合物
を用いた他の部材について説明する。
【0023】〈近赤外光吸収性化合物及びその製造方
法〉本発明の近赤外光吸収性化合物は、上記式(1)、
上記式(4)又は上記式(7)で表されるリン酸エステ
ル化合物(以下、「特定のリン酸エステル化合物」と云
う。)と銅化合物との反応により得られるリン酸エステ
ル銅化合物である。銅化合物(以下、銅塩とも云う。)
は銅イオンを供給する為のものであり、具体例として
は、酢酸銅、蟻酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅、エ
チルアセト酢酸銅、ピロリン酸銅、ナフテン酸銅、クエ
ン酸銅等の有機酸の銅塩無水物や水和物、或いは水酸化
銅、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅、塩基性炭酸銅等の無機酸
の銅塩の無水物や水和物が挙げられるが、有機酸塩を用
いることが好ましく、特に好ましくは酢酸銅、安息香酸
銅である。なお、本発明の近赤外光吸収性化合物には、
銅イオン以外の金属イオン(以下、「他の金属イオン」
という。)が含有されていてもよい。かかる他の金属イ
オンの具体例としては、ナトリウム、カリウム、カルシ
ウム、鉄、マンガン、マグネシウム、ニッケル等の金属
によるイオンが挙げられる。また、上記の特定のリン酸
エステル化合物は、例えば以下の第1の方法、第2の方
法及び第3の方法のいずれかによって製造される。
【0024】〔第1の方法〕:この第1の方法は、無溶
媒又は適宜の有機溶剤中で、特定の分子構造を有するア
ルコールと五酸化リンとを反応させる方法である。ここ
で、特定の分子構造を有するアルコールとしては、上記
式(1)で表されるリン酸エステル化合物を得る為の下
記式(9)又は下記式(10)で表されるアルコールが
用いられる。
【0025】
【化13】 [式(9)及び式(10)中、R1は、独立に炭素数が
6〜20のアリール基(但し、アリール基の水素が、炭
素数1〜6のアルキル基、又はハロゲンによって少なく
ともひとつ置換されていてもよく、該アルキル基の水素
がハロゲンによって少なくともひとつ置換されていても
よい)を示し、R2は、独立に炭素数が1〜4のアルキ
ル基を示し、mは1〜6の整数である。]
【0026】上記式(9)で表されるアルコールの好適
な具体例としては、下記式(11)又は下記式(12)
で表されるものが挙げられる。
【0027】
【化14】
【0028】また、上記式(4)で表されるリン酸エス
テル化合物を得る為の下記式(13)又は下記式(1
4)で表されるアルコールが用いられる。
【0029】
【化15】 [式(13)及び式(14)中、R3、R4は、独立に炭
素数が1〜20のアルキル基、又はアリール基(但し、
アリール基の水素が、炭素数1〜6のアルキル基、又は
ハロゲンによって少なくともひとつ置換されていてもよ
く、該アルキル基の水素がハロゲンによって少なくとも
ひとつ置換されていてもよい)を示す。]
【0030】上記式(13)で表されるアルコールの好
適な具体例としては、下記式(15)で表されるものが
挙げられる。
【0031】
【化16】
【0032】また、上記式(7)で表されるリン酸エス
テル化合物を得る為の下記式(16)で表されるアルコ
ールが用いられる。
【0033】
【化17】 [式(16)中、R5は、炭素数が1〜20のアルキル
基、又はアリール基(但し、アリール基の水素が、炭素
数1〜6のアルキル基、又はハロゲンによって少なくと
もひとつ置換されていてもよく、該アルキル基の水素が
ハロゲンによって少なくともひとつ置換されていてもよ
い)を示し、R6、R7、R8は、独立に水素、又は炭素
数が1〜4のアルキル基(但し、R6、R7、R8が全て
水素の場合を除く)を示し、mは1〜6の整数であ
る。]
【0034】上記式(16)で表されるアルコールの好
適な具体例としては、下記式(17)で表されるものが
挙げられる。
【0035】
【化18】
【0036】なお、上記式(9)、上記式(10)、上
記式(13)、上記式(14)及び上記式(16)で表
されるアルコールを、以下、特定のアルコールとも云
う。
【0037】ここで、特定のアルコールと五酸化リンと
の反応に用いられる有機溶剤としては、五酸化リンと反
応しない有機溶剤であって、例えばヘキサン、シクロヘ
キサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キ
シレン、石油スピリット等の炭化水素系溶剤、クロロホ
ルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン等
のハロゲン化炭化水素系溶剤、ジエチルエーテル、ジイ
ソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロ
フラン等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケ
トン、ジブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられ、
これらの中では、トルエン、キシレンが好ましい。ま
た、特定のアルコールと五酸化リンとの反応条件は、反
応温度が0〜100℃、好ましくは40〜80℃であ
り、反応時間が1〜96時間、好ましくは4〜72時間
である。
【0038】この第1の方法においては、例えば特定の
アルコール及び五酸化リンをモル比で3:1となる割合
で用いることにより、前記式(1)、前記式(4)及び
前記式(7)で表される水酸基の数が2であるリン酸モ
ノエステル化合物(以下、単に「モノエステル」と云
う。)と、これら水酸基の数が1であるリン酸ジエステ
ル化合物(以下、単に「ジエステル」と云う。)との割
合が略1:1の混合物が得られる。また、特定のアルコ
ールと五酸化リンとの割合及び反応条件を適宜選択する
ことにより、モノエステルとジエステルとの割合は、モ
ル比で99:1〜40:60となる範囲内で調整され
る。
【0039】〔第2の方法〕:この第2の方法は、無溶
媒又は適宜の有機溶剤中で、特定のアルコールとオキシ
ハロゲン化リンとを反応させ、得られる生成物に水を添
加して加水分解する方法である。オキシハロゲン化リン
としては、オキシ塩化リン、オキシ臭化リンを用いるこ
とが好ましく、特に好ましくはオキシ塩化リンである。
また、特定のアルコールとオキシハロゲン化リンとの反
応に用いられる有機溶剤としては、オキシハロゲン化リ
ンと反応しない有機溶剤であって、例えばヘキサン、シ
クロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン、石油スピリット等の炭化水素系溶剤、ク
ロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベン
ゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ジエチルエーテ
ル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエ
ーテル系溶剤が挙げられ、これらの中では、トルエン、
キシレンが好ましい。そして、特定のアルコールとオキ
シハロゲン化リンとの反応条件は、反応温度が0〜11
0℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間が1〜
20時間、好ましくは2〜8時間である。また、この第
2の方法においては、例えば特定のアルコール及びオキ
シハロゲン化リンをモル比で1:1となる割合で用いる
ことにより、モノエステルを得ることができる。
【0040】さらに、上記式(10)、上記式(14)
又は上記式(16)(但しR6が水素原子の場合)で表
される特定のアルコールを用いる場合には、この特定の
アルコールとオキシハロゲン化リンとの割合及び反応条
件を選択すると共に、反応触媒としては、四塩化チタン
(TiCl4)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化
アルミニウム(AlCl3)等のルイス酸触媒、副生す
る塩酸のキャッチ剤としては、トリエチルアミン、トリ
ブチルアミン等のアミン類や、ピリジン等が好ましく用
いられる。これらの反応触媒や塩酸キャッチ剤を用いる
ことにより、モノエステルとジエステルとの混合物が得
られる。そして、この特定のアルコールとオキシハロゲ
ン化リンとの割合及び反応触媒を含む反応に係る条件を
適宜選択することにより、モノエステルとジエステルと
の割合は、モル比で99:1〜1:99となる範囲内で
調整される。
【0041】また、上記式(9)、上記式(13)又は
上記式(16)(但しR6がアルキル基の場合)で表さ
れる特定のアルコールを用いる場合には、この特定のア
ルコールとオキシハロゲン化リンとの割合及び反応条件
を選択すると共に、ルイス酸触媒及び塩酸キャッチ剤を
併用することにより、モノエステルとジエステルとの混
合物が得られ、このとき、その割合がモル比で99:1
〜1:99となる範囲内で調整される。但し、特定のア
ルコールとしてアルキレンオキサイド基の繰り返し単位
数mが小さいものを用いる場合には、得られるリン酸エ
ステル化合物が水溶性のものとなるため、アミン類等の
塩酸キャッチ剤を用いると、生成されるアミン塩酸塩を
水による洗浄によって除去することが困難となる傾向に
ある。以上において、反応触媒の使用量としては、オキ
シハロゲン化リン1モルに対して0.005〜0.2モ
ル、好ましくは0.01〜0.05モルである。
【0042】〔第3の方法〕:この第3の方法は、無溶
媒又は適宜の有機溶剤中で、特定のアルコールと三ハロ
ゲン化リンとを反応させることにより、ホスホン酸エス
テル化合物を合成し、その後、得られたホスホン酸エス
テル化合物を酸化する方法である。三ハロゲン化リンと
しては、三塩化リン、三臭化リンを用いることが好まし
く、特に好ましくは三塩化リンである。また、特定のア
ルコールと三ハロゲン化リンとの反応に用いられる有機
溶剤としては、三ハロゲン化リンと反応しない有機溶剤
であって、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタ
ン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油ス
ピリット等の炭化水素系溶剤、クロロホルム、四塩化炭
素、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭
化水素系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエー
テル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤が挙げら
れ、これらの中では、ヘキサン、ヘプタンが好ましい。
そして、特定のアルコールと三ハロゲン化リンとの反応
条件は、反応温度が0〜90℃、好ましくは40〜75
℃であり、反応時間が1〜10時間、好ましくは2〜5
時間である。
【0043】上記ホスホン酸エステル化合物を酸化する
手段としては、ホスホン酸エステル化合物に例えば塩素
ガス等のハロゲンを反応させることにより、ホスホロハ
ロリデート化合物を合成し、このホスホロハロリデート
化合物を加水分解する手段を利用することができる。こ
こで、ホスホン酸エステル化合物とハロゲンとの反応温
度は0〜40℃が好ましく、特に好ましくは5〜25℃
である。また、ホスホン酸エステル化合物を酸化する前
に、このホスホン酸エステル化合物を蒸留して精製して
もよい。この第3の方法においては、例えば特定のアル
コール及び三ハロゲン化リンをモル比で3:1となる割
合で用いることにより、ジエステルが高い純度で得られ
る。また、特定のアルコールと三ハロゲン化リンとの割
合及び反応条件を選択することにより、モノエステルと
ジエステルとの混合物が得られ、このとき、その割合は
モル比で99:1〜1:99となる範囲で調整される。
【0044】次に、特定のリン酸エステル化合物と銅塩
との反応は、適宜の条件下で両者を接触させることによ
り行われる。具体的には、(イ)特定のリン酸エステル
化合物と銅塩とを混合して両者を反応させる方法、
(ロ)適宜の有機溶剤中において特定のリン酸エステル
化合物と銅塩とを反応させる方法、(ハ)特定のリン酸
エステル化合物が有機溶剤中に含有されて成る有機溶剤
層と、銅塩が溶解又は分散されて成る水層とを接触させ
ることにより、特定のリン酸エステル化合物と銅塩とを
反応させる方法、等が挙げられる。この特定のリン酸エ
ステル化合物と銅塩との反応条件は、反応温度が0〜1
50℃、好ましくは40〜120℃であり、反応時間が
0.5〜10時間、好ましくは1〜7時間である。
【0045】上記(ロ)の方法において用いられる有機
溶剤としては、用いられる特定のリン酸エステル化合物
を溶解又は分散し得るものであれば、特に限定されず、
例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合
物、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピ
ルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エ
チルセロソルブ等のグリコールエーテル類、ジエチルエ
ーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等
のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケト
ン類、酢酸エチル等のエステル類、ヘキサン、ケロシ
ン、石油エーテル等が挙げられる。また、(メタ)アク
リレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレ
ン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等の重
合性を有する有機溶剤も用いられる。
【0046】一方、上記(ハ)の方法において用いられ
る有機溶剤としては、水に不溶又は難溶であって、用い
られる特定のリン酸エステル化合物を溶解又は分散し得
るものであれば、特に限定されず、例えば(ロ)の方法
において用いられる有機溶剤として例示したもののう
ち、芳香族化合物、エーテル類、エステル類、ヘキサ
ン、ケロシン、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族
ビニル化合物等が挙げられる。
【0047】また、特定のリン酸エステル化合物と銅塩
との反応においては、銅塩から陰イオンである酸成分が
遊離される。このような酸成分は、アクリル系樹脂組成
物の耐湿性及び熱安定性を低下させる原因となり得るた
め、必要に応じて除去することが好ましい。上記(イ)
又は(ロ)の方法によりリン酸エステル銅化合物を製造
する場合には、特定のリン酸エステル化合物と銅塩とを
反応させた後、生成された酸成分((ロ)の方法におい
ては生成された酸成分及び有機溶剤)を蒸留によって除
去することができる。さらに、上記(ハ)の方法により
リン酸エステル銅化合物を製造する場合には、酸成分を
除去する好ましい方法として、水に不溶又は難溶の有機
溶剤に特定のリン酸エステル化合物が含有されて成る有
機溶剤層に、アルカリを添加することによって中和した
後、この有機溶剤層と銅塩が溶解又は分散された水層と
を接触させることより、特定のリン酸エステル化合物と
銅塩とを反応させ、その後、有機溶剤層と水層とを分離
する方法がある。ここで、アルカリとしては、水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる
が、これらに限定されるものではない。この方法によれ
ば、銅塩から遊離される酸成分とアルカリとによって水
溶性の塩が形成され、この塩が水層に移行すると共に、
生成される特定のリン酸エステル銅化合物は、有機溶剤
層に移行するため、この水層と有機溶剤層とを分離する
ことにより、酸成分が除去される。
【0048】ところで、上記式(1)、上記式(4)又
は上記式(7)で表される特定のリン酸エステル化合物
は、その分子構造中にある程度の極性を有するアルコキ
シ基が存在するため、溶媒や樹脂等の媒体に対する溶解
性又は分散性が良好である。ここで、特定のリン酸エス
テル化合物において、基Rは、アルキレンオキサイド基
が結合されたアルキル基又はアリール基(アリール基の
水素がアルキル基で置換されたもの(アリールアルキル
基)、又は、アリール基の水素がハロゲンで置換された
ものを含む)である。また、上記式(1)及び上記式
(7)で表されるリン酸エステル化合物におけるアルキ
レンオキサイド基の繰り返し単位数mは、1〜6、好ま
しくは1〜3の整数である。このmの値が6を超える
と、樹脂組成物としたときの硬度が大幅に低下する。一
方、mの値が0すなわちアルキレンオキサイド基が結合
されていない場合には、樹脂中に銅イオンを分散させる
性能が著しく低下する。
【0049】また、リン酸エステル化合物及びリン酸エ
ステル銅化合物の熱的安定性及び耐環境性の観点から、
このアルキレンオキサイド基の繰り返し単位数mが1で
あると特に好適である。このmが1であるアルキレンオ
キサイド基を有するリン酸エステル化合物の銅塩及びリ
ン酸エステル銅化合物は、mが2以上の整数であるアル
キレンオキサイド基を有するそれらに比して、高い熱分
解温度を持つので、mが1であるアルキレンオキサイド
基を有するリン酸エステル化合物の銅塩及びリン酸エス
テル銅化合物を含む組成物を熱成形する際に、その成形
温度を高めることができる。よって、成形が容易とな
り、成形加工性をより向上させることが可能となる。ま
た、mが1であるアルキレンオキサイド基を有するリン
酸エステル化合物の銅塩及びリン酸エステル銅化合物
は、mが2以上の整数であるアルキレンオキサイド基を
有するそれらに比して、優れた耐環境性を有する。具体
的には、mが1であるアルキレンオキサイド基を有する
リン酸エステル化合物の銅塩及びリン酸エステル銅化合
物は、高温高湿環境下における可視領域の光線透過率の
経時的な劣化が殆ど無いのに対し、mが2以上の整数で
あるアルキレンオキサイド基を有するものは、経時的な
劣化が起こる傾向にある。
【0050】さらに、上述したように、特定のリン酸エ
ステル化合物は、上記式(1)、上記式(4)又は上記
式(7)において水酸基の数が2であるモノエステル、
及び水酸基の数が1であるジエステルが用いられるが、
水酸基が結合していないトリエステルは、銅イオンと配
位結合及び/又はイオン結合が可能な水酸基を有しない
ため、例えば樹脂組成物としたときに、銅イオンを樹脂
中に分散させ難い。
【0051】またさらに、上記式(2)又は上記式
(3)におけるR1は、炭素数が6〜20のアリール基
(但し、アリール基の水素が炭素数1〜6のアルキル
基、又は、ハロゲンによって少なくともひとつ置換され
ていてもよく、そのアルキル基の水素がハロゲンによっ
て少なくともひとつ置換されていてもよい。)を示し、
上記式(5)、上記式(6)又は上記式(8)における
3、R4、R5は、炭素数が1〜20、好ましくは1〜
10のアルキル基、又はアリール基(但し、アリール基
の水素が炭素数1〜6のアルキル基、又は、ハロゲンに
よって少なくともひとつ置換されていてもよく、そのア
ルキル基の水素がハロゲンによって少なくともひとつ置
換されていてもよい。)である。これらR1、R3
4、R5の炭素数が20を超える場合には、アクリル系
樹脂等の樹脂との相溶性が低下するため、樹脂中に銅イ
オンを含む金属イオンを分散させ難い。また、上記式
(2)又は上記式(3)におけるR2は、炭素数が1〜
4のアルキル基であり、また上記式(8)における
6、R7又はR8は、水素又は炭素数が1〜4のアルキ
ル基である。すなわち、アルキレンオキサイド基として
は、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基等
が挙げられ、特にプロピレンオキサイド基が好ましい。
これらのアルキル基R2、R6、R7又はR8の炭素数が4
を超える場合には、樹脂中に高い割合で分散させること
が困難である。
【0052】また、特定のリン酸エステル化合物と銅イ
オンとの割合は、銅イオン1モルに対して特定のリン酸
エステル化合物における水酸基又は水酸基由来の酸素原
子が0.5〜10モル、特に1.5〜5モルであること
が好ましい。この割合が0.5モル未満である場合に
は、銅イオンをアクリル系樹脂等の樹脂中に分散させる
ことが困難となる傾向にある。この割合が10モルを超
える場合には、銅イオンとの配位結合及び/又はイオン
結合に関与しない水酸基の割合が過大となるため、この
ような組成割合の組成物は、吸湿性が比較的大きくなる
傾向にある。よって、この割合を0.5〜10モルとす
ることにより、銅イオンが樹脂中に良好に分散されて近
赤外光吸収特性に優れ、且つ吸湿性を有しない樹脂組成
物から成る近赤外光吸収剤を得ることが可能となる。
【0053】さらに、本発明の近赤外光吸収性化合物
を、例えばアクリル系樹脂等の樹脂に含有させて樹脂組
成物とする場合には、銅イオンの含有割合が樹脂組成物
全体の0.1〜60重量%、好ましくは0.1〜20重
量%、より好ましくは0.3〜15重量%、更に好まし
くは0.5〜5重量%となるように調整される。この割
合が0.1重量%未満であるときには、近赤外光を高い
効率で吸収する性能が得られない傾向にあり、一方、こ
の割合が60重量%を超えるときには、銅イオンを樹脂
中に分散させることが極めて困難となる傾向にある。よ
って、銅イオンの含有割合を樹脂組成物全体の0.1〜
60重量%とすることにより、可視光透過性に優れた近
赤外光吸収性化合物を確実に得ることができる。
【0054】さらに、前述の金属イオンの使用割合は、
銅イオンを含む全金属イオンにおける50重量%以下で
あることが好ましく、より好ましくは30重量%以下、
更に好ましくは20重量%以下である。この割合が50
重量%を超える場合には、銅イオンとリン酸エステル化
合物との結合配位が他の金属イオンの影響を受けるた
め、近赤外光吸収率が十分大きい近赤外光吸収性化合物
を得ることが困難な傾向にある。
【0055】〈近赤外光吸収剤〉本発明の近赤外光吸収
剤は、上述の本発明の近赤外光吸収性化合物を含有して
成るものであり、その形態としては、近赤外光吸収性化
合物そのもの、液状の組成物及び樹脂組成物が好まし
い。
【0056】[液状の組成物]:本発明の近赤外光吸収
剤としての液状の組成物は、上記本発明の近赤外光吸収
性化合物を、適宜の溶媒中に溶解又は分散させたもので
あり、溶媒を蒸発させて生成される薄膜が光学的に透明
であれば、液状の組成物自体は、透明なもの、半透明な
もの又は不透明なものであってもよい。ここに、溶媒と
しては、水又は有機溶媒を用いることができ、有機溶媒
としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソ
プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール
類、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のグリコー
ルエーテル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエー
テル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、
メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン
類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸
ブチルセルソルブ等のエステル類、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン等の芳香族化合物、ヘキサン、ケロシン、
石油エーテル等が用いられる。また、(メタ)アクリレ
ート等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α
−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等の重合性を
有する有機溶媒も用いられ得る。そして、このような液
状の組成物を、例えば基板表面に塗布した後、溶媒のみ
蒸発させることにより、優れた近赤外光吸収特性を有す
る薄膜を簡易に得ることができる。
【0057】上記液状の組成物における本発明の近赤外
光吸収性化合物の含有割合は、使用される溶媒の種類、
得られる近赤外光吸収剤の用途又は使用目的によって異
なるが、調合後の粘度の観点から、通常、液状媒体10
0質量部に対して、0.1〜1900質量部、好ましく
は、1〜900質量部、特に好ましくは、5〜400質
量部となる範囲で調整される。
【0058】[樹脂組成物]:本発明の近赤外光吸収性
化合物は、上述の如く、樹脂への溶解性又は分散性が良
好である。例えば、アクリル系樹脂、特に(メタ)アク
リル酸エステル系樹脂への分散性が良好であり、それら
樹脂への相溶性が高いものである。この特定のリン酸エ
ステル化合物との相溶性が高い他の樹脂としては、ポリ
エチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、さ
らにはスチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレ
ン、ジブロムスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息
香酸、ヒドロキシメチルスチレン等の芳香族ビニル化合
物等の重合体が挙げられる。なお、上記()で囲まれた
「メタ」の意味は、アクリル酸若しくはその誘導体、及
びメタクリル酸若しくはその誘導体の両方を記載する必
要があるときに、記載を簡潔にするため便宜上使用され
ている記載方法であり、本明細書においても採用したも
のである。
【0059】本発明の近赤外光吸収剤としての樹脂組成
物としては、上述の本発明の近赤外光吸収性化合物を、
上記樹脂中に含有して成るものである。ここでは、樹脂
組成物の例として、まず、アクリル系樹脂組成物につい
て説明するが、アクリル系樹脂組成物以外の樹脂組成物
についても同様である。このアクリル系樹脂組成物は、
本発明の近赤外光吸収性化合物をアクリル系樹脂中に含
有させることにより調製される。
【0060】アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリ
ル酸エステル系単量体から得られる重合体が好ましく用
いられる。かかる(メタ)アクリル酸エステル系単量体
の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチ
ル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリ
レート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル
(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)ア
クリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−
オクチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)ア
クリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、2−
ヒドロシキエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロシ
キプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル
(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレ
ート、メトキシポリエチレン(メタ)アクリレート、フ
ェノキシ(メタ)アクリレート等の変性(メタ)アクリ
レート類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポ
リエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプ
ロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−
ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−
ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキ
サンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグ
リコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−
1,3−ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−
(メタ)アクリロキシエトキシフェニル〕プロパン、2
−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メ
タ)アクリロキシプロパン、トリメチロールプロパント
リ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットトリ(メ
タ)アクリレート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)
アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類等が挙
げられる。これらの単量体は、単独で又は2種類以上組
み合わせて用いられ得る。
【0061】また、別のアクリル系樹脂としては、上記
の(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、この(メ
タ)アクリル酸エステル系単量体との共重合が可能な他
の共重合性単量体との共重合体も用いられる。かかる共
重合性単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−
(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸等の不飽和
カルボン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド等のアク
リルアミド類、スチレン、α−メチルスチレン、クロル
スチレン、ジブロムスチレン、メトキシスチレン、ビニ
ル安息香酸、ヒドロキシメチルスチレン等の芳香族ビニ
ル化合物等が挙げられる。これらの単量体は、単独で又
は2種以上組み合わせて用いられる。
【0062】このようなアクリル系樹脂組成物の具体的
な調製方法は、特に限定されるものではないが、好適な
方法として、以下の2つの方法が挙げられる。なお、本
発明の近赤外光吸収剤としてのアクリル系樹脂組成物に
おける近赤外光吸収性化合物の含有割合は、得られる近
赤外光吸収剤の用途又は使用目的によって異なるが、成
形性(又は成型性)の観点から、通常、樹脂100質量
部に対して、0.1〜400質量部、好ましくは、0.
3〜200質量部、特に好ましくは、1〜100質量部
となる範囲で調整される。また、前述したように、可視
光透過性に優れた樹脂組成物を確実に得るためには、樹
脂組成物における銅イオンの割合が、例えばアクリル系
樹脂組成物全体の0.1〜60重量%であることが望ま
しい。
【0063】[第1の方法]:この第1の方法は、アク
リル系樹脂を得るための単量体中に、特定のリン酸エス
テル化合物と銅化合物を混合したもの及び/又は両者の
反応により得られたリン酸エステル銅化合物(本発明の
近赤外光吸収性化合物)が含有されて成る単量体組成物
を調製し、この単量体組成物をラジカル重合処理する方
法である。この方法において、単量体組成物のラジカル
重合処理の具体的な方法としては、特に限定されるもの
ではなく、通常のラジカル重合開始剤を用いるラジカル
重合法、例えば塊状(キャスト)重合法、懸濁重合法、
乳化重合法、溶液重合法等の公知の方法を利用し得る。
【0064】[第2の方法]:この第2の方法は、アク
リル系樹脂中に、特定のリン酸エステル化合物と銅化合
物を混合したもの及び/又は両者の反応により得られた
リン酸エステル銅化合物を添加して混合する方法であ
る。この方法は、アクリル系樹脂として熱可塑性樹脂を
用いるときに利用される。具体的には、溶融させたア
クリル系樹脂中に、特定のリン酸エステル化合物と銅化
合物を混合したもの及び/又は両者の反応により得られ
たリン酸エステル銅化合物を添加して混練する方法、
アクリル系樹脂を適宜の有機溶剤に溶解、分散又は膨潤
させ、この溶液に特定のリン酸エステル化合物と銅化合
物を混合したもの及び/又は両者の反応により得られた
リン酸エステル銅化合物を添加して混合した後、この溶
液から有機溶剤を除去する方法がある。
【0065】上記の方法において、アクリル系樹脂と
特定のリン酸エステル化合物と銅化合物を混合したもの
及び/又は両者の反応により得られたリン酸エステル銅
化合物とを混練する手段としては、熱可塑性樹脂の溶融
混練法として一般に用いられている手段、例えばミキシ
ングロールによって溶融混練する手段、ヘンシェルミキ
サー等によって予備混合した後、押出機によって溶融混
練する手段が挙げられる。一方、上記の方法で用いら
れる有機溶剤としては、上記アクリル系樹脂を溶解、分
散又は膨潤し得るものであれば、特に限定されるもので
はなく、その具体例としては、メチルアルコール、エチ
ルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール
類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ベン
ゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化
メチレン等の塩素系炭化水素類、ジメチルアクリルアミ
ド、ジメチルフォルムアミド等のアミド化合物等が挙げ
られる。
【0066】以上のアクリル系樹脂組成物の調製におい
て、特定のリン酸エステル化合物と銅化合物を混合した
ものを用いる場合には、特定のリン酸エステル化合物と
銅塩とが反応する結果、銅塩から陰イオンである酸成分
が遊離される。このような酸成分は、前述と同様の理由
により、必要に応じて除去することが好ましい。そのた
めの方法としては、(a)アクリル樹脂組成物を適宜の
有機溶剤に浸漬させることにより、酸成分を抽出する方
法、(b)単量体組成物の重合処理を行う前に、この単
量体組成物を冷却処理することにより、酸成分を析出さ
せて分離するといった方法が例示される。
【0067】上記(a)の方法において用いられる有機
溶剤としては、遊離される酸成分を溶解することがで
き、用いられるアクリル系樹脂に対して適度な親和性
(アクリル系樹脂を溶解しないが、このアクリル系樹脂
中に浸透する程度の親和性)を有するものであれば、特
に限定されるものではない。このような溶剤の具体例と
しては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プ
ロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級脂
肪族アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチ
ルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、
石油エーテル等のエーテル類、n−ペンタン、n−ヘキ
サン、n−ヘプタン、クロロホルム、メチレンクロライ
ド、四塩化炭素等の脂肪族系炭化水素類及びそのハロゲ
ン化物、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭
化水素類等が挙げられる。一方、上記(b)の方法にお
いては、特定のリン酸エステル化合物と銅化合物を混合
したものを構成する銅化合物として、遊離される酸成分
が単量体に溶解し難いものを用いることが好ましく、具
体的には、安息香酸等の芳香環を有するカルボン酸の銅
塩が挙げられる。
【0068】なお、本発明の近赤外光吸収剤としての樹
脂組成物に用いられる他の好適な樹脂としては、ポリビ
ニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合
体、該共重合体の部分鹸化物を挙げることができる。こ
れらのポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビ
ニル共重合体又は該共重合体の部分鹸化物は、ガラス材
又はプラスチック材から成る基材に対する接着性が優れ
ており、且つそれ自体が柔軟性を有し、さらに温度依存
性が小さいため、接着剤を用いなくとも基材への接着が
確実であり、よって成形加工性に優れた近赤外光吸収性
を有する成形品を簡易に得ることができると共に、温度
変化に対する耐性を向上できる成形品が得られる。
【0069】また、本発明の近赤外光吸収剤としての樹
脂組成物には、他の成分として樹脂成分と相溶性を有す
る種々の可塑剤を含有させることができ、これにより、
近赤外光吸収成分として用いられる銅イオンの樹脂成分
中への分散性を高めることができる。このような可塑剤
の具体例としては、リン酸トリクレジル、リン酸トリフ
ェニル等のリン酸エステル系可塑剤、ジオクチルフタレ
ート、ジブチルフタレート等のフタル酸系可塑剤、ジブ
チルセバケート、ブチルリシノレート、メチルアセチル
リシノレート、ブチルサクシネート等の脂肪酸系可塑
剤、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレン
グリコールジブチレート、トリエチレングリコールジ−
2−エチルブチラート、ポリエチレングリコール等のグ
リコール系可塑剤等が挙げられる。さらに、本発明の近
赤外光吸収剤としての樹脂組成物には、ベンゾトリアゾ
ール系、ベンゾフェノン系又はサリチル酸系の紫外線吸
収剤、その他の抗酸化剤、安定剤等を含有させることも
できる。
【0070】〈ディスプレイ前面板〉本発明のディスプ
レイ前面板は、上述の本発明の近赤外光吸収剤を含有し
て成る近赤外光吸収層を備えるものである。図13は、
本発明のディスプレイ前面板に係る好適な一実施形態を
示す図であって、図13(a)は断面図であり、図13
(b)は積層構造を示す斜視図である。図13に示すデ
ィスプレイ前面板1は、プラズマ・ディスプレイ・パネ
ル(以下、PDPと云う。)の前面に取り付けられる光
学的に透明な板状体であり、本発明の近赤外光吸収剤を
含有して成る近赤外光吸収層を有する略平板状の透明部
材11の一方の面に、導電性を有する細線が縦横に編み
込まれてメッシュ状を成すシールドメッシュ13が、樹
脂製、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製
の透明フィルム14で覆われるように貼付されて成って
いる。また、透明部材11の他方の面の全域には反射低
減膜12が形成されている。更に、シールドメッシュ1
3と接していない透明フィルム14の面には反射防止層
としての反射防止膜15が形成されている。
【0071】本実施形態で採用される透明部材11とし
ては、以下の3種類の形態が好適である。 [第1の形態]:本発明の近赤外光吸収剤としての樹脂
組成物より形成されるもの、又はガラス若しくは透明な
樹脂板等から成る透明基板にこの近赤外光吸収剤が貼合
されたもの。 [第2の形態]:ガラス若しくは透明な樹脂板等から成
る透明基板に、本発明の近赤外光吸収剤より成る近赤外
光吸収層としての近赤外光吸収性膜16が形成されたも
の。 [第3の形態]:本発明の近赤外光吸収性化合物のみを
含有する近赤外光吸収剤で形成されるもの、又はガラス
若しくは透明な樹脂板等から成る透明基板にこの近赤外
光吸収剤が貼合されたもの。
【0072】上記のどの形態においても、近赤外光を選
択的に吸収するという銅イオンに特徴的な特性が発現さ
れる一方、本発明の近赤外光吸収性化合物は可視領域の
光(可視光)の波長に相当するエネルギー準位をもたな
いので、可視光は吸収されない。したがって、本発明の
近赤外光吸収剤を含有して成る本発明のディスプレイ前
面板1によれば、従来に比して同等以上の優れた近赤外
光吸収性能及び可視光透過性能が達成される。
【0073】上記第1の形態は、本発明の近赤外光吸収
剤としての樹脂組成物を重合硬化させることにより製造
される。このとき、特定のリン酸エステル化合物は、分
子構造中に不飽和二重結合を有しないため、上記樹脂組
成物を型中で重合硬化させる際に、硬化後の樹脂組成物
の離型性が従来に比して格段に高められる。これは、上
記樹脂組成物の架橋度が従来よりも低いため、従来の二
重結合を有するリン原子含有化合物を含有する樹脂組成
物に比して重合収縮度が小さいことに因ると推定され得
る。さらに、上記樹脂組成物は熱可塑性を有し、且つ熱
的に安定であるため、成形後の熱による再成形に適して
いる。したがって、上記第1の形態の透明部材11を備
えるディスプレイ前面板1によれば、従来に比して成形
加工性を格段に向上させることが可能となる。
【0074】一方、上記第2の形態の透明部材11は、
例えば、本発明の近赤外光吸収剤としての上記液状の組
成物を基板面に塗布し、溶媒を蒸発させることにより生
成される。或いは、基板面上に、本発明の近赤外光吸収
性化合物そのもの、又はこの近赤外光吸収性化合物を含
む粉末を粉体スプレー等で吹き付けて付着させることに
よっても、近赤外光吸収性膜16を形成させることがで
きる。なお、接着剤等の粘着性物質を介してこれら粉体
を付着させてもよい。このようにすると、本発明の近赤
外光吸収性化合物が、紫外線や熱に対する感受性の高い
不飽和二重結合をその分子構造中に含んでいないため、
上記第2の形態において形成される近赤外光吸収性膜1
6は紫外線や熱に対して安定である。よって、樹脂組成
物として重合硬化させなくとも、近赤外光吸収性能に優
れると共に熱的及び化学的に安定で劣化し難いディスプ
レイ前面板1を得ることができる。すなわち、ディスプ
レイ前面板1を製造する方法及び材料の選択性を向上さ
せることが可能となる。
【0075】他方、上記第3の形態の透明部材11は、
本発明の近赤外光吸収性化合物のみから成る成分を、例
えば加圧成形することにより、フィルム状又は板状の成
形品として製造される。この第3の形態の透明部材11
を用いると、近赤外光吸収特性に優れると共に、樹脂等
による若干の可視光の吸収をもなくすことが可能とな
る。
【0076】ここで、上記各形態の透明部材11を備え
るディスプレイ前面板1においては、波長800nm〜
1000nmの波長領域におけるディスプレイ前面板1
としての近赤外光の透過率が20%以下、好ましくは1
0%以下、特に好ましくは5%以下となるように、上記
近赤外光吸収剤(又は近赤外光吸収性化合物)の種類、
濃度、層厚(塗布若しくは積層される場合にはその層の
厚さ、樹脂層に分散される場合には樹脂層の厚さ)が調
整されている。このようにすれば、例えば赤外線通信等
で主に利用されている波長950nm近傍の近赤外光が
十分に減衰されるので、ディスプレイの周囲に赤外線リ
モコン等がある場合でも、その赤外線リモコン等が誤動
作する虞がない。
【0077】また、シールドメッシュ13は、例えば、
銅やニッケルといった遷移金属で被覆されたプラスチッ
ク繊維で編成されており、数MHz〜数100MHzの
周波数範囲の電磁波を有効に遮へいする機能を有してい
る。また、反射低減膜12及び反射防止膜15は共に、
例えば二酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の低屈折率材
料から成る薄膜と、例えば二酸化チタンや酸化イットリ
ウム等の高屈折率材料の薄膜とが交互に積層されて成っ
ている。
【0078】図14は、本発明のディスプレイ前面板に
係る上記実施形態の使用状態を示す斜視図である。図1
3に示す積層構造を有するディスプレイ前面板1は、図
14に示すように、反射防止膜15が形成された面を前
方にして、PDP2のパネル面21を覆うように配置さ
れる。そして、PDP2のパネル面21から発せられた
近赤外光は、近赤外光吸収層としての透明部材11によ
り吸収されて強度が20%以下、好ましくは10%以
下、特に好ましくは5%以下に減じられる。
【0079】一方、PDP2のパネル面21から近赤外
光と同時に発せられる可視光は、上述の如く、ディスプ
レイ前面板1に含まれる近赤外光吸収性化合物によって
吸収されないので、ディスプレイ前面板1による可視光
の吸収は近赤外光の場合に比して非常に少ない。したが
って、図14に示すPDP2の周辺に、近赤外光で作動
するような機器が置かれていても、PDP2のパネル面
21から出射される近赤外光がそれら機器の誤動作を起
こすことを有効に防止できると共に、パネル面21に映
し出される映像等を支障なく観賞できる。
【0080】また、PDP2のパネル面21からは、電
磁波が放出されるが、このような電磁波は、図13に示
すシールドメッシュ13によって有効に遮へいされるの
で、PDP2の観賞中にこのような電磁波に曝されるこ
とがない。さらに、このシールドメッシュ13は、金属
並の導電性を有するため、ディスプレイ前面板1に静電
気が殆ど帯電せず、静電気によりディスプレイ前面板1
に埃等が付着してしまうことが防止される。また、シー
ルドメッシュ13は、プラスチック繊維を主成分として
いるため、ディスプレイ前面板1を軽量化することが可
能である。しかも、シールドメッシュ13は柔軟性に富
むので、ディスプレイ前面板1が凹凸形状を有する場合
でも容易に貼合できる利点がある。
【0081】また、ディスプレイ前面板1側からパネル
面21へ入射する外光(主に自然光や電灯からの光)
は、ディスプレイ前面板1の反射防止膜15に入射する
と、反射防止膜15を形成する屈折率の異なる多層の作
用によって反射することが防止されるので、PDP2の
周囲が明るくても、外光の反射によってパネル面21の
映像等が見え難くなることが防止される。このとき、上
記外光のごく一部は反射防止膜15を透過するが、この
透過光は透明部材11の面に形成された反射低減膜12
によって反射が低減されるので、外光の反射によってパ
ネル面21に写った映像等が見え難くなることが一層防
止される。
【0082】ここで、近赤外光や赤外光は熱線であり、
上述の本発明の近赤外光吸収性化合物は、熱線吸収性が
必要とされる部材への適用も可能である。以下に、この
ような部材として、熱線吸収性コーティング剤及び熱線
吸収性複合体並びに熱線吸収性粘着剤等について説明す
る。
【0083】〈熱線吸収性コーティング剤〉熱線吸収性
コーティング剤としては、本発明の近赤外光吸収剤とし
ての液状の組成物が有用であり、液状溶媒を蒸発させて
生成される薄膜が光学的に透明であれば、熱線吸収性コ
ーティング剤自体は、透明なもの、半透明なもの又は不
透明なものであってもよい。ここに、液状媒体として
は、水又は有機溶媒を用いることができ、有機溶媒とし
ては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロ
ピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類、
メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のグリコールエ
ーテル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル
等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチ
ルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸ブチ
ルセルソルブ等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キ
シレン等の芳香族化合物、ヘキサン、ケロシン、石油エ
ーテル等が用いられる。また、(メタ)アクリレート等
の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α−メチ
ルスチレン等の芳香族ビニル化合物等の重合性を有する
有機溶媒も好ましく用いられる。
【0084】また、上記近赤外光吸収性化合物の液状媒
体への溶解性又は分散性や熱線吸収性コーティング剤に
よってコーティングした面の平坦性等を高めるための溶
解補助剤等を添加剤として加えてもよい。このような添
加剤としては、例えば、レベリング剤、消泡剤としての
各種の界面活性剤が好ましく用いられる。さらに、液状
であれば、樹脂を加えてもよい。なお、熱線吸収性コー
ティング剤における本発明の近赤外光吸収性化合物の含
有割合は、使用される液状媒体の種類や、熱線吸収性コ
ーティング剤の用途又は使用目的によって異なるが、調
合後の粘度の観点から、通常、液状媒体100質量部に
対して、0.1〜1900質量部、好ましくは、1〜9
00質量部、特に好ましくは、5〜400質量部となる
範囲で調整される。
【0085】〈熱線吸収性複合体〉熱線吸収性複合体と
しては、透光性を有する基材の一方の面に、近赤外光吸
収剤から成る近赤外光吸収層が設けられたものが有用で
あり、この近赤外光吸収層の一方の面に透光性を有する
もうひとつの基材が貼合されていてもよい。基材を構成
する材料としては、可視光透過性を有するものであれ
ば、特に限定されるものではなく、熱線吸収性複合体の
用途に応じて適宜選択されるが、硬度、耐熱性、耐薬品
性、耐久性等の観点から、無機ガラス若しくは有機ガラ
ス等のガラス材、又は、例えば、ポリカーボネイト、ア
クリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメチルメタク
リレート、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン、ポリエス
テル等のプラスチック材料を用いると好適である。ま
た、基材は、それぞれ同じ種類の材料で構成されていて
もよく、或いは互いに異なる材料で構成されていてもよ
い。さらに、基材の近赤外光吸収層と接していない面が
硬化処理されていると、その面の損傷防止及び耐久性の
観点から好ましい。また、基材には更に他の透光性材料
より成る層が設けられていてもよい。
【0086】近赤外光吸収層としては、透光性を有する
フィルム状或いはシート状材料又は透光性を有する板材
の一方又は両方の面に、前述した熱線吸収性コーティン
グ剤を塗布して液状媒体(溶媒)を蒸発させたものが好
ましく用いられる。ここで、用いられる透光性を有する
フィルム状或いはシート状材料又は透光性を有する板材
としては、上記基材を形成するようなガラス材やプラス
チック材から成るものを用いることができる。
【0087】また、近赤外光吸収層としては、本発明の
近赤外光吸収剤としての樹脂組成物を用いても好適であ
る。このような樹脂成分としては、優れた透光性を有す
るものが好ましく用いられ、具体的には、塩化ビニル系
樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ
エステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルブチ
ラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体及びそ
の部分鹸化物等が挙げられる。これら樹脂は単独で又は
2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、特
にガラス材やプラスチック材への接着性の観点から、ポ
リビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体又
は該共重合体の部分鹸化物が好ましく用いられる。ま
た、可視光透過性や成型加工性の観点等から、アクリル
系樹脂も好ましく用いられる。
【0088】これら樹脂を含有する樹脂組成物から成る
近赤外光吸収層には、他の成分として、樹脂成分と相溶
性を有する上述の種々の可塑剤や、上述したベンゾトリ
アゾール系、ベンゾフェノン系又はサリチル酸系の紫外
線吸収剤、その他の抗酸化剤、安定剤等を含有させても
よい。また、樹脂組成物から成る近赤外光吸収層を基材
上に形成して熱線吸収性複合体を得る為には、例えば、
本発明の近赤外光吸収性化合物と、上記樹脂成分と、必
要に応じて用いられる上記他の成分とを混合することに
より、近赤外光吸収層の形成材料を調製し、この材料を
フィルム状又はシート状に成形することにより、近赤外
光吸収層を形成するといった方法を用いることができ
る。但し、近赤外光吸収層を形成して熱線吸収性複合体
を得る方法は、これに限定されるものではない。そし
て、近赤外光吸収層を予め用意された基材に接着させ
る。
【0089】上記各成分を混合して近赤外光吸収層を形
成する為の材料を調製する手段としては、ヘンシェルミ
キサー等の混合機により混合する手段、ロール混練機、
或いは混練押出機等により混練混合する手段を用いるこ
ともできる。また、各成分を適宜の有機溶剤に分散さ
せ、この分散液から有機溶剤を除去する手段を用いるこ
とができる。また、近赤外光吸収層用成形体を製造する
手段としては、熱可塑性樹脂の成形加工法である溶融押
出成形法、カレンダー成形法、プレス成形法などを用い
ることができる。近赤外光吸収層を基材に接着させる手
段としては、プレス法、マルチロール法、減圧法などの
加圧又は減圧により接着する手段、オートクレーブ等を
用いて加熱することにより接着させる手段、又はこれら
の組み合わせによる手段を用いることができる。そし
て、樹脂成分として、ポリビニルブチラール、エチレン
−酢酸ビニル共重合体又はその部分鹸化物を用いる場合
には、近赤外光吸収層と基材とが十分な強度で接着され
た熱線吸収性複合体が得られる。
【0090】このようにして形成される近赤外光吸収層
は、その厚さが0.1〜10mm、特に0.3〜5mm
であることが好ましい。近赤外光吸収層の厚さが0.1
mm未満の場合には、近赤外光吸収性が十分に高い近赤
外光吸収層を得ることが困難な傾向にあり、得られる熱
線吸収性複合体の熱線吸収性が不十分なものとなる傾向
にある。一方、近赤外光吸収層の厚さが10mmを超え
る場合には、可視光の透過率が高い近赤外光吸収層を得
ることが困難な傾向にあり、得られる熱線吸収性複合体
の可視光透過性が低いものとなる傾向にある。なお、熱
線吸収性複合体としては、上述したアクリル系樹脂組成
物から成る近赤外光吸収層を有しても好適である。な
お、熱線吸収性複合体の基材及び近赤外光吸収層の少な
くとも一つの面には、反射低減層又は反射防止層が設け
られていてもよい。この反射低減層又は反射防止層は、
無機酸化物、無機ハロゲン化物等より成る公知の材料を
用いて、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリ
ングといった種々公知の方法によって形成させることが
できる。また、必要に応じて、特定波長の可視光を吸収
する可視光吸収剤、例えば波長500nm〜600nm
を選択的に吸収するコバルトイオンを含む金属イオン含
有成分等やその他の添加剤を樹脂組成物中に混合しても
よい。
【0091】〈熱線吸収性粘着剤〉熱線吸収性粘着剤と
しては、粘着性を有する樹脂と本発明の近赤外光吸収性
化合物とを含有して成るものが有用である。このような
粘着性を有する樹脂としては、粘着性を有するアクリル
系樹脂を好ましく用いることができる。このような、粘
着性を有するアクリル系樹脂は、粘着成分を構成するア
クリル系樹脂単量体を含有する単量体組成物を重合処理
することにより得られる。この粘着成分として用いられ
るアクリル系樹脂単量体としては、アルキル基の炭素数
が4〜12であって、ホモポリマーのガラス転移点が−
70℃〜−30℃であるアクリル酸アルキルエステルを
好適に用いることができ、具体的には、n−ブチルアク
リレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチル
アクリレート、デシルアクリレート等が挙げられる。
【0092】また、粘着性を有するアクリル系樹脂を得
るための単量体組成物には、上記の粘着成分として用い
られるアクリル系樹脂単量体の他に、凝集成分を構成す
る単量体及び改質成分を構成する単量体を含有させるこ
とが望ましい。この凝集成分を有する単量体としては、
粘着成分として用いられるアクリル系樹脂単量体と共重
合可能なものであって、得られる共重合体のガラス転移
点を高める作用を有するものが用いられ、具体的には、
炭素数が1〜3の低級アルキル基を有するアクリル酸ア
ルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、酢酸
ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、スチレン
等が挙げられる。また、上記改質成分として用いられる
単量体としては、上記粘着成分として用いられるアクリ
ル系樹脂単量体と共重合可能であって、官能基を有する
ものが用いられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル
酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル等のカルボキ
シル基含有化合物、2−ヒドロキシエチルアクリレー
ト、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含
有化合物、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−t
ert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリル
アミド等の酸アミド化合物、グリシジルアクリレート、
グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体
等が挙げられる。
【0093】上記単量体組成物における各単量体の使用
割合は、用いられる単量体の種類、得られるアクリル系
樹脂組成物の使用目的等によって異なるが、通常、粘着
成分として用いられるアクリル系樹脂単量体が30〜9
5質量%、凝集成分として用いられる単量体が5〜50
質量%、改質成分として用いられる単量体が0.1〜1
0質量%である。
【0094】この単量体組成物を重合処理する方法とし
ては、溶液重合法及び乳化重合法を用いることができ
る。これら重合処理に用いられる触媒としては、例えば
ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチルニトリ
ル、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過酸化物
が挙げられる。溶液重合法により単量体樹脂組成物の重
合処理を行う場合には、重合溶媒として種々の有機溶媒
を用いることができ、例えば酢酸エチル等のエステル
類、芳香族炭化水素類、ケトン類等が挙げられる。ま
た、乳化重合法により単量体組成物の重合処理を行う場
合には、乳化剤として、通常の乳化重合に使用されてい
る公知の種々のものを用いることができる。
【0095】そして、上記のように単量体組成物を重合
処理することにより、粘着性を有するアクリル系樹脂が
ポリマー溶液又はラテックスの状態で得られる。本発明
の熱線吸収性粘着剤は、このようにして得られたポリマ
ー溶液又はラテックスに、本発明の近赤外光吸収性化合
物を混合することにより得ることができ、必要に応じ
て、特定波長の可視光を吸収する可視光吸収剤、例えば
波長500nm〜600nmを選択的に吸収するコバル
トイオンを含む金属イオン含有成分等や、その他の添加
剤を混合してもよい。なお、熱線吸収性粘着剤における
本発明の近赤外光吸収性化合物の含有割合は、粘着性を
有するアクリル系樹脂の透光性や粘着性を損なわない範
囲でできるだけ多い方が望ましいが、粘着性を有するア
クリル系樹脂100質量部に対して、0.1〜400質
量部、好ましくは0.3〜200質量部、より好ましく
は1〜100質量部の範囲で調整される。
【0096】また、以上説明した熱線吸収性コーティン
グ剤、熱線吸収性複合体及び熱線吸収性粘着剤は、熱線
の遮へいが要求される透光性部材等へ好ましく適用され
るものであり、具体例としては、住宅その他の建造物の
窓材、自動車や電車等の車両の窓材、航空機や船舶等の
車両の窓材といった採光と眺望を得るための部材へ適用
すると好適である。上述の熱線吸収性コーティング剤、
熱線吸収性複合体及び熱線吸収性粘着剤を適用した窓材
は、熱線遮へい性を得るために可視光を吸収するような
遮光部材を用いる場合に比して、同等以上の熱線吸収性
を有しつつ、可視光透過性に優れているので、窓の外部
の風景の視認性に優れており、開放感を得易い傾向にあ
る。また、熱的及び化学的安定性や耐環境性に優れて劣
化し難い透光性光部材を得ることができる。
【0097】また、他の用途としては、植物栽培雰囲気
を覆う温室施設を構築するための農業用被覆材が挙げら
れる。温室施設は内部の保温を目的としているが、夏季
には外部からの熱線によって内部の温度が必要以上に上
昇してしまう虞がある。上述の熱線吸収性コーティング
剤、熱線吸収性複合体及び熱線吸収性粘着剤を適用した
被覆材によれば、そのような過剰な温度上昇を有効に抑
制できるので、温室施設の利用期間を延長でき、稼働率
を向上させることが可能となる。また、可視光透過性に
優れているので、温室外部からの内部の視認性も向上さ
れる。また、熱的及び化学的安定性や耐環境性に優れて
劣化し難い被覆材を得ることが可能となる。
【0098】
【実施例】以下、本発明に係る具体的な実施例について
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0099】〈実施例1〉フェノール103.4g
(1.1モル)をジメトキシエタン(以下DMEとも云
う。)225mlに溶解し、苛性ソーダ2.1gとプロ
ピレンオキサイド66g(1.1モル)を加え、24時
間80℃で還流させた。DMEを減圧留去し、トルエン
抽出、アルカリ水洗浄し、トルエンを減圧留去した。そ
の後、減圧蒸留(〜1mmHg、70〜75℃)し、無
色オイル139gを得た。生成したアルコールの成分比
をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、1−
フェノキシ−2−プロパノールと2−フェノキシ−1−
プロパノールの比が9:1の混合物であった。得られた
アルコール混合物125g(0.8モル)をトルエン1
60mlに溶解させ、約5℃で五酸化リン37.8gを
少量ずつ加えた。室温で2日攪拌した後、60℃で4時
間、水15mlを加え、80℃で3時間攪拌した。その
後、トルエンを減圧留去し、164gの粘調なオイルを
得た。核磁気共鳴(以下NMRと云う。)測定装置等を
用いて混合体成分を同定したところ、このオイルは、下
記式(18)、下記式(19)、下記式(20)、下記
式(21)及び下記式(22)で表されるリン酸エステ
ル化合物の混合物であり、アルカリ滴定による酸価数は
5.28mmol/gであった。五酸化リンが全て下記
式(18)及び下記式(19)で表されるモノエステル
と下記式(20)、下記式(21)及び下記式(22)
で表されるジエステルになったとすると、上記酸価数か
らモノエステルとジエステルのモル比率は61:39で
ある。
【0100】
【化19】
【0101】次に、得られたリン酸エステル51.3g
をトルエン150mlに溶解させ、酢酸銅27gを加え
て脱水還流させた。脱水、脱酢酸後、溶媒を留去し、近
赤外光吸収性化合物としての緑青色の粘調な銅錯体5
9.9gを得た。この銅錯体は、トルエン、酢酸エチ
ル、ジメトキシエタン、メタクリル酸メチルと自由に溶
解し、液状の近赤外光吸収剤としての淡青色透明な液体
となった。
【0102】〈実施例2〉上記実施例1で得られた銅錯
体5gをメチルメタクリレート95gに溶解し、更に、
α−メチルスチレン0.2gとt−ブチルパーオキシネ
オデカネート1gを添加後、この混合物をガラス製の型
に注入し、40℃で8時間、65℃で2時間、100℃
で1時間と順次異なる温度で加熱して注型重合を行うこ
とにより、樹脂組成物より成る厚み3mmの淡青色で透
明な近赤外光吸収性の板状体を得た。
【0103】〈実施例3〉グリシジルフェニルエーテル
201g、メタノール200ml、28%ソジウムメト
キサイド10gを混合し、室温で2日攪拌した後、50
℃で5時間攪拌した。メタノールを減圧留去し、トルエ
ン抽出、水洗、トルエン留去し、残査を減圧蒸留(1〜
2mmHg、96〜100℃)し、1−メトキシ−3−
フェノキシ−2−プロパノール172gを得た。得られ
たこのアルコール164g(0.9モル)をトルエン1
80mlに溶解させ、約5℃で五酸化リン42.5gを
少量ずつ加えた。室温で3日攪拌した後、60℃で3時
間、水15mlを加え、80℃で3時間攪拌した。トル
エンを減圧留去し、209.5gの粘調なオイルを得
た。NMR測定装置等を用いて混合体成分を同定したと
ころ、このオイルは、下記式(23)及び下記式(2
4)で表されるリン酸エステル化合物の混合物であり、
アルカリ滴定による酸価数は4.92mmmol/gで
あった。五酸化リンが全て下記式(23)で表されるモ
ノエステルと下記式(24)で表されるジエステルにな
ったとすると、上記酸価数からモノエステルとジエステ
ルのモル比率は60:40である。
【0104】
【化20】
【0105】次に、得られたリン酸エステル47.8g
をトルエン150mlに溶解させ、酢酸銅23.5gを
加えて脱水還流させた。脱水、脱酢酸後、溶媒を留去
し、近赤外光吸収性化合物としての緑青色半固体状の銅
錯体56.2gを得た。この銅錯体は、トルエン、酢酸
エチル、ジメトキシエタン、メタクリル酸メチルと自由
に溶解し、液状の近赤外光吸収剤としての淡青色透明な
液体となった。
【0106】〈実施例4〉上記実施例3で得られた銅錯
体5gをメチルメタクリレート95gに溶解し、更に、
α−メチルスチレン0.2gとt−ブチルパーオキシネ
オデカネート1gを添加後、この混合物をガラス製の型
に注入し、40℃で8時間、65℃で2時間、100℃
で1時間と順次異なる温度で加熱して注型重合を行うこ
とにより、樹脂組成物より成る厚み3mmの淡青色で透
明な近赤外光吸収性の板状体を得た。
【0107】〈実施例5〉60%水素化ナトリウム41
gをヘキサンで洗浄し、DME350mlを加え、プロ
ピレングリコール84gをゆっくり滴下した。4−クロ
ロベンジルクロライド161g/DME50mlを加
え、80℃で終夜攪拌した。DMEを減圧留去し、トル
エン抽出、水洗、トルエン留去して185gのオイルを
得た。これを減圧蒸留(1〜2mmHg、91〜98
℃)し、無色のオイル122gを得た。生成したアルコ
ールの成分比をガスクロマトグラフィーにより測定した
ところ、1−(4−クロロベンジルオキシ)−2−プロ
パノールと2−(4−クロロベンジルオキシ)−1−プ
ロパノールの比が9:1の混合物であった。得られたア
ルコール混合物100g(0.5モル)をトルエン10
0mlに溶解させ、約5℃で五酸化リン23.6gを少
量ずつ加えた。室温で2日攪拌した後、60℃で3時
間、水3mlを加え、100℃で4時間攪拌した。その
後、トルエンを減圧留去し、124.5gの粘調なオイ
ルを得た。NMR測定装置等を用いて混合体成分を同定
したところ、このオイルは、下記式(25)、下記式
(26)、下記式(27)、下記式(28)及び下記式
(29)で表されるリン酸エステル化合物の混合物であ
り、アルカリ滴定による酸価数は4.32mmol/g
であった。五酸化リンが全て下記式(25)及び下記式
(26)で表されるモノエステルと下記式(27)、下
記式(28)及び下記式(29)で表されるジエステル
になったとすると、上記酸価数からモノエステルとジエ
ステルのモル比率は60:40である。
【0108】
【化21】
【0109】次に、得られたリン酸エステル45.6g
をトルエン150mlに溶解させ、酢酸銅19.6gを
加えて脱水還流させた。脱水、脱酢酸後、溶媒を留去
し、近赤外光吸収性化合物としての緑青色の銅錯体5
2.4gを得た。この銅錯体は、トルエン、酢酸エチ
ル、ジメトキシエタン、メタクリル酸メチルと自由に溶
解し、液状の近赤外光吸収剤としての淡青色透明な液体
となった。
【0110】〈実施例6〉上記実施例5で得られた銅錯
体5gをメチルメタクリレート95gに溶解し、更に、
α−メチルスチレン0.2gとt−ブチルパーオキシネ
オデカネート1gを添加後、この混合物をガラス製の型
に注入し、40℃で8時間、65℃で2時間、100℃
で1時間と順次異なる温度で加熱して注型重合を行うこ
とにより、樹脂組成物より成る厚み3mmの淡青色で透
明な近赤外光吸収性の板状体を得た。
【0111】〈実施例7〉3−メトキシ−1−ブタノー
ル104g(1モル)をトルエン200mlに溶解さ
せ、約5℃で五酸化リン47.3gを少量ずつ加えた。
室温で2日攪拌した後、60℃で4時間、水15mlを
加え、80℃で3時間攪拌した。トルエンを減圧留去
し、148gの粘調なオイルを得た。混合体成分を同定
したところ、このオイルは、下記式(30)及び下記式
(31)で表されるリン酸エステル化合物の混合物であ
り、アルカリ滴定による酸価数は7.23mmol/g
であった。
【0112】五酸化リンが全て下記式(30)で表され
るモノエステルと下記式(31)で表されるジエステル
になったとすると、上記酸価数からモノエステルとジエ
ステルのモル比率は60:40である。
【0113】
【化22】
【0114】次に、得られたリン酸エステル30gをト
ルエン100mlに溶解させ、酢酸銅21.7gを加え
て脱水還流させた。脱水、脱酢酸後、溶媒を留去し、近
赤外光吸収性化合物としての緑青色粉末状の銅錯体37
gを得た。この銅錯体は、トルエン、酢酸エチル、ジメ
トキシエタン、メタクリル酸メチルに良く溶解し、液状
の近赤外光吸収剤としての淡青色透明な液体となった。
【0115】〈実施例8〉上記実施例7で得られた銅錯
体5gをメチルメタクリレート95gに溶解し、更に、
α−メチルスチレン0.2gとt−ブチルパーオキシネ
オデカネート1gを添加後、この混合物をガラス製の型
に注入し、40℃で8時間、65℃で2時間、100℃
で1時間と順次異なる温度で加熱して注型重合を行うこ
とにより、樹脂組成物より成る厚み3mmの淡青色で透
明な近赤外光吸収性の板状体を得た。
【0116】〈比較例1〉2−ブトキシエタノール15
0gをトルエン200mlに溶解させ、約5℃で五酸化
リン60gを少量ずつ加えた。室温で2日攪拌した後、
60℃で4時間、水15mlを加え、80℃で3時間攪
拌した。トルエンを減圧留去し、204gの粘調なオイ
ルを得た。このオイルのアルカリ滴定による酸価数は
6.65mmol/gであった。五酸化リンが全てモノ
エステルとジエステルになったとすると、この酸価数か
らモノエステルとジエステルのモル比率は60:40で
ある。得られたリン酸エステル40gをトルエン130
mlに溶解させ、酢酸銅26.7gを加え、脱水還流さ
せた。脱水、脱酢酸後、溶媒を留去し、淡青色粉末状の
銅錯体49gを得た。この銅錯体はトルエン、酢酸エチ
ル、ジメトキシエタン、メタクリル酸メチルに殆ど溶解
しなかった。このように、この銅錯体では実用濃度で透
明な溶液や樹脂板を作成することはできなかった。
【0117】〈比較例2〉4−メトキシ−1−ブタノー
ル95gをトルエン180mlに溶解させ、約5℃で五
酸化リン43gを少量ずつ加えた。室温で2日攪拌した
後、60℃で4時間、水15mlを加え、80℃で3時
間攪拌した。トルエンを減圧留去し、129gの粘調な
オイルを得た。このオイルのアルカリ滴定による酸価数
は7.54mmol/gであった。五酸化リンが全てモ
ノエステルとジエステルになったとすると、この酸価数
からモノエステルとジエステルのモル比率は60:40
となる。得られたリン酸エステル40gをトルエン13
0mlに溶解させ、酢酸銅30.3gを加えて脱水還流
させた。脱水、脱酢酸後、溶媒を留去し、緑青色グリー
ス状の銅錯体53gを得た。この銅錯体はトルエン、酢
酸エチル、ジメトキシエタン、メタクリル酸メチルに殆
ど溶解しなかった。このように、この銅錯体では実用濃
度で透明な溶液や樹脂板を作成することはできなかっ
た。
【0118】〈比較例3〉下記式(32)及び下記式
(33)で表され、分子構造中に重合性の不飽和二重結
合を有するリン酸エステル化合物の混合物8.66gと
酢酸銅3.80gを混合し、メチルメタクリレート9
1.34gに添加して溶解させた。これにα−メチルス
チレン0.30gと、重合開始剤t−ブチルパーオキシ
ネオデカネート1.0gと、離型剤アルキルリン酸エス
テル塩0.10gとを添加し、2枚のガラス基板から成
る型に注入し、40℃で8時間、65℃で2時間、10
0℃で1時間の重合プログラムで重合して板状体を得
た。
【0119】
【化23】
【0120】〈熱的安定性に関する比較試験1〉 (1)上記実施例4で製造した板状体について、分光光
度計(株式会社日立製作所製U−4000)を用いて分
光透過率曲線を測定した。それから、150℃、40k
gf/cm2の圧力で10分間加熱プレスし、再度板状
体の分光透過率曲線を測定した。加熱プレス前後のそれ
ら分光透過率曲線の測定結果を図1に示す。図1に示す
ように、この板状体は、近赤外領域において良好な吸収
特性を有すると共に、可視領域における光線透過性に優
れたものであることが確認された。また、図1より、こ
の板状体は、上記条件の加熱プレス前後において、可視
領域の光線透過率が殆ど変化しないことが理解される。
この板状体を目視により観察したところ、加熱プレス前
後における色の変化はなかった。 (2)上記実施例6で製造した板状体について、分光光
度計(株式会社日立製作所製U−4000)を用いて分
光透過率曲線を測定した。それから、150℃、40k
gf/cm2の圧力で10分間加熱プレスし、再度板状
体の分光透過率曲線を測定した。加熱プレス前後のそれ
ら分光透過率曲線の測定結果を図2に示す。図2に示す
ように、この板状体は、近赤外領域において良好な吸収
特性を有すると共に、可視領域における光線透過性に優
れたものであることが確認された。また、図2より、こ
の板状体は、上記条件の加熱プレス前後において、近赤
外領域の分光特性が殆ど変化せず、且つ可視領域の光線
透過率が最大でも2%程度しか低下せず殆ど変化しない
ことが理解される。この板状体を目視により観察したと
ころ、加熱プレス前後における色の変化はなかった。 (3)上記実施例8で製造した板状体について、分光光
度計(株式会社日立製作所製U−4000)を用いて分
光透過率曲線を測定した。それから、150℃、40k
gf/cm2の圧力で10分間加熱プレスし、再度板状
体の分光透過率曲線を測定した。加熱プレス前後のそれ
ら分光透過率曲線の測定結果を図3に示す。図3に示す
ように、この板状体は、近赤外領域において良好な吸収
特性を有すると共に、可視領域における光線透過性に優
れたものであることが確認された。また、図3より、こ
の板状体は、上記条件の加熱プレス前後において、可視
領域から近赤外領域において、光線透過率が最大でも2
%程度しか低下せず殆ど変化しないことが理解される。
この板状体を目視により観察したところ、加熱プレス前
後における色の変化はなかった。 (4)上記比較例3で製造した板状体について、分光光
度計(株式会社日立製作所製U−4000)を用いて分
光透過率曲線を測定した。それから、150℃、40k
gf/cm2の圧力で10分間加熱プレスし、再度板状
体の分光透過率曲線を測定した。加熱プレス前後のそれ
ら分光透過率曲線の測定結果を図4に示す。図4に示す
ように、この板状体の上記条件における加熱プレス後の
光線透過率は、上記(1)〜(3)に示す本発明に係る
板状体に比して、可視領域から近赤外領域までの広い領
域において大きく低下することが確認された。この板状
体を目視により観察したところ、加熱プレス後において
黄ばみが生じることが確認された。
【0121】上記(1)〜(4)の結果より、本発明に
係る板状体は、従来の重合性を有するリン酸エステル化
合物を含有する板状体に比して熱的に安定しており、熱
成形に適したものであることが理解される。
【0122】〈熱的安定性に関する比較試験2〉上記熱
的安定性に関する比較試験1と同様の加熱プレス条件に
おいて、上記実施例4、上記実施例6、上記実施例8及
び上記比較例3で製造した板状体の加熱プレス前後の分
光吸収率曲線を測定した結果を、それぞれ図5、図6、
図7及び図8に示す。このような分光吸収率曲線の測定
結果からも、上記熱的安定性に関する比較試験1で確認
されたように、本発明で用いられるリン酸エステル銅化
合物を含有する板状体は、従来の重合性を有するリン酸
エステル化合物を含有するものよりも熱的に安定してお
り、熱成形に適したものであることが理解される。
【0123】〈熱的安定性に関する比較試験3〉 (1)上記実施例3で得られた銅錯体(リン酸エステル
銅化合物)の熱分解特性を、以下の装置及び条件で測定
した。 a)測定装置:メトラー製TA4000熱分析システム b)測定条件 ・昇温速度:10℃/分 ・温度範囲:30〜300℃ ・雰囲気 :窒素雰囲気 図9は、実施例3に係るリン酸エステル銅化合物の熱分
解チャートを示すグラフである。図9に示すように、実
施例3に係るリン酸エステル銅化合物は200℃付近ま
での重量変化が殆どなかった。 (2)上記実施例5で得られた銅錯体(リン酸エステル
銅化合物)の熱分解特性を、上記(1)と同じ装置及び
条件で測定した。図10は、実施例5に係るリン酸エス
テル銅化合物の熱分解チャートを示すグラフである。図
10に示すように、実施例5に係るリン酸エステル銅化
合物は200℃付近までの重量変化が殆どなかった。 (3)上記実施例7で得られた銅錯体(リン酸エステル
銅化合物)の熱分解特性を、上記(1)と同じ装置及び
条件で測定した。図11は、実施例7に係るリン酸エス
テル銅化合物の熱分解チャートを示すグラフである。図
11に示すように、実施例7に係るリン酸エステル銅化
合物は230℃付近までの重量変化が殆どなかった。 (4)上記比較例3で用いたリン酸エステル化合物と酢
酸銅とから得られる銅錯体(リン酸エステル銅化合物)
の熱分解特性を、上記(1)と同じ装置及び条件で測定
した。図12は、比較例3に係るリン酸エステル銅化合
物の熱分解チャートを示すグラフである。図12より、
比較例3に係る従来の重合性を示すリン酸エステル銅化
合物は150℃付近から重量が漸次減少しており、上記
(1)〜(3)における本発明に係るリン酸エステル銅
化合物よりも低温で熱分解が生じることが判明した。
【0124】上記(1)〜(4)の結果より、本発明に
係る熱線吸収性化合物としてのリン酸エステル銅化合物
は、従来の重合性を有するリン酸エステル銅化合物に比
して熱的に安定していることが理解される。そして、上
記熱安定性に関する比較試験1及び2の結果を併せて評
価すると、本発明に係る近赤外光吸収性化合物としての
リン酸エステル銅化合物及びこの化合物を含有する近赤
外光吸収剤並びにこの近赤外光吸収剤を用いて成るも
の、例えばディスプレイ前面板は、従来に比して、熱的
安定性に優れており、熱プレス等の熱加工に適したもの
であることが理解される。
【0125】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、近
赤外光吸収性能に優れ、従来に比して、熱的及び化学的
な安定性に優れると共に、製造方法及び材料の選択性及
び成形加工性を向上させることが可能な近赤外光吸収性
化合物、その製造方法及び近赤外光吸収剤を得ることが
可能となる。また、本発明によれば、このような近赤外
光吸収剤を用いることにより、近赤外光吸収性能、並び
に、熱的及び化学的な安定性に優れるディスプレイ前面
板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例4に係る板状体の加熱プレス前後におけ
る分光透過率曲線を示すグラフである。
【図2】実施例6に係る板状体の加熱プレス前後におけ
る分光透過率曲線を示すグラフである。
【図3】実施例8に係る板状体の加熱プレス前後におけ
る分光透過率曲線を示すグラフである。
【図4】比較例3に係る板状体の加熱プレス前後におけ
る分光透過率曲線を示すグラフである。
【図5】実施例4に係る板状体の加熱プレス前後におけ
る分光吸収率曲線を示すグラフである。
【図6】実施例6に係る板状体の加熱プレス前後におけ
る分光吸収率曲線を示すグラフである。
【図7】実施例8に係る板状体の加熱プレス前後におけ
る分光吸収率曲線を示すグラフである。
【図8】比較例3に係る板状体の加熱プレス前後におけ
る分光吸収率曲線を示すグラフである。
【図9】実施例3に係るリン酸エステル銅化合物の熱分
解チャートを示すグラフである。
【図10】実施例5に係るリン酸エステル銅化合物の熱
分解チャートを示すグラフである。
【図11】実施例7に係るリン酸エステル銅化合物の熱
分解チャートを示すグラフである。
【図12】比較例3に係るリン酸エステル銅化合物の熱
分解チャートを示すグラフである。
【図13】本発明のディスプレイ前面板に係る一実施形
態を示す図であって、図13(a)は断面図であり、図
13(b)は積層構造を示す分解斜視図である。
【図14】本発明のディスプレイ前面板に係る一実施形
態の使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…ディスプレイ前面板、2…PDP(ディスプレ
イ)、16…近赤外光吸収性膜(近赤外光吸収剤から成
る近赤外光吸収層)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 箱崎 充徳 福島県いわき市錦町落合16 呉羽化学工業 株式会社内 (72)発明者 上遠野 浩樹 福島県いわき市錦町落合16 呉羽化学工業 株式会社内 Fターム(参考) 2H048 CA04 CA09 CA12 CA19 CA24 2K009 AA02 BB14 BB24 4J002 BB031 BB121 BC031 BC091 BC111 BC121 BD041 BG011 BG041 BG051 BG061 BG071 BG131 CD191 CF061 CG001 CH051 EW046 FD020 FD046 5G435 AA17 BB06 KK07

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1)で表されるリン酸エステル
    化合物と銅化合物との反応により得られるリン酸エステ
    ル銅化合物であることを特徴とする近赤外光吸収性化合
    物。 【化1】 [式(1)中、Rは、それぞれ独立して下記式(2)又
    は下記式(3)で表される基を示し、nは1又は2であ
    る。 【化2】 (式(2)及び式(3)中、R1は、独立に炭素数が6
    〜20のアリール基(但し、アリール基の水素が、炭素
    数1〜6のアルキル基、又はハロゲンによって少なくと
    もひとつ置換されていてもよく、該アルキル基の水素が
    ハロゲンによって少なくともひとつ置換されていてもよ
    い)を示し、R2は、独立に炭素数が1〜4のアルキル
    基を示し、mは1〜6の整数である。)]
  2. 【請求項2】 下記式(4)で表されるリン酸エステル
    化合物と銅化合物との反応により得られるリン酸エステ
    ル銅化合物であることを特徴とする近赤外光吸収性化合
    物。 【化3】 [式(4)中、Rは、それぞれ独立して下記式(5)又
    は下記式(6)で表される基を示し、nは1又は2であ
    る。 【化4】 (式(5)及び式(6)中、R3、R4は、独立に炭素数
    が1〜20のアルキル基、又はアリール基(但し、アリ
    ール基の水素が、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロ
    ゲンによって少なくともひとつ置換されていてもよく、
    該アルキル基の水素がハロゲンによって少なくともひと
    つ置換されていてもよい)を示す。)]
  3. 【請求項3】 下記式(7)で表されるリン酸エステル
    化合物と銅化合物との反応により得られるリン酸エステ
    ル銅化合物であることを特徴とする近赤外光吸収性化合
    物。 【化5】 [式(7)中、Rは、下記式(8)で表される基を示
    し、nは1又は2である。 【化6】 (式(8)中、R5は、炭素数が1〜20のアルキル
    基、又はアリール基(但し、アリール基の水素が、炭素
    数1〜6のアルキル基、又はハロゲンによって少なくと
    もひとつ置換されていてもよく、該アルキル基の水素が
    ハロゲンによって少なくともひとつ置換されていてもよ
    い)を示し、R6、R7、R8は、独立に水素、又は炭素
    数が1〜4のアルキル基(但し、R6、R7、R8が全て
    水素の場合を除く)を示し、mは1〜6の整数であ
    る。)]
  4. 【請求項4】 前記式(1)、前記式(4)及び前記式
    (7)で表されるリン酸エステル化合物のうち少なくと
    も一つの化合物と銅化合物とを反応せしめてリン酸エス
    テル銅化合物を得るステップを備えることを特徴とする
    近赤外光吸収性化合物の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記ステップにおいて、前記リン酸エス
    テル化合物と前記銅化合物とを有機溶剤中で反応させ、
    該反応によって生成される酸成分と前記有機溶剤とを除
    去することを特徴とする請求項4記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜3記載の近赤外光吸収性化合
    物のうち少なくとも一つの化合物を含有して成ることを
    特徴とする近赤外光吸収剤。
  7. 【請求項7】 前記化合物が樹脂中に含有されて成る樹
    脂組成物で形成されることを特徴とする請求項6記載の
    近赤外光吸収剤。
  8. 【請求項8】 請求項6又は7記載の近赤外光吸収剤を
    含有して成る近赤外光吸収層を備えることを特徴とする
    ディスプレイ前面板。
  9. 【請求項9】 前記ディスプレイは、プラズマ・ディス
    プレイ・パネルであることを特徴とする請求項8記載の
    ディスプレイ前面板。
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